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特開2024-88613通電された電気装置の接地に対する絶縁抵抗を反復して測定するための方法、電子デバイスおよびシステム
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  • 特開-通電された電気装置の接地に対する絶縁抵抗を反復して測定するための方法、電子デバイスおよびシステム 図1
  • 特開-通電された電気装置の接地に対する絶縁抵抗を反復して測定するための方法、電子デバイスおよびシステム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088613
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】通電された電気装置の接地に対する絶縁抵抗を反復して測定するための方法、電子デバイスおよびシステム
(51)【国際特許分類】
   G01R 27/02 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
G01R27/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023211995
(22)【出願日】2023-12-15
(31)【優先権主張番号】102022000026010
(32)【優先日】2022-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(71)【出願人】
【識別番号】520088694
【氏名又は名称】マレッリ・ユーロプ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】MARELLI EUROPE S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(74)【代理人】
【識別番号】100100479
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 三喜夫
(72)【発明者】
【氏名】アウリリオ,ジャンルカ
(72)【発明者】
【氏名】パトリノストロ,シモーネ
(72)【発明者】
【氏名】スリア,ロザンナ
(72)【発明者】
【氏名】エル・グムリ,ブラヒム
【テーマコード(参考)】
2G028
【Fターム(参考)】
2G028AA01
2G028BE04
2G028CG03
2G028DH02
2G028EJ04
2G028FK05
(57)【要約】
【課題】絶縁抵抗をより迅速により正確に測定できる絶縁抵抗測定方法を提供する。
【解決手段】通電された電気装置2の負端子11と、通電された電気装置2から理想的に絶縁された接地3との間に存在する負端子絶縁抵抗Rin、および、通電された電気装置2の正端子12と、通電された電気装置2から理想的に絶縁された接地3との間に存在する正端子絶縁抵抗Ripを測定する方法は、第1スイッチング回路16を、正端子12と接地3との間に、正端子絶縁抵抗Ripと並列に配置するステップと、第2スイッチング回路15を、負端子11と接地3との間に、負端子絶縁抵抗Rinと並列に配置するステップとを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電された電気装置(2)の負端子(11)と、通電された電気装置(2)から理想的に絶縁された接地(3)との間に存在する負端子絶縁抵抗(Rin)、および、通電された電気装置(2)の正端子(12)と、通電された電気装置(2)から理想的に絶縁された前記接地(3)との間に存在する正端子絶縁抵抗(Rip)を測定する方法であって、
・第1スイッチング回路(16)を、前記正端子(12)と接地(3)との間に、前記正端子絶縁抵抗(Rip)と並列に配置するステップであって、第1スイッチング回路(16)は、正ブランチスイッチングデューティサイクル(d)を有する第1駆動信号に従って2つの状態のうちのいずれか一方をとるように構成された第1スイッチングユニットと、前記第1スイッチングユニットに対して直列に配置された第1サンプル抵抗(Rkp)とを備える、ステップと、
・第2スイッチング回路(15)を、前記負端子(11)と接地(3)との間に、前記負端子絶縁抵抗(Rin)と並列に配置するステップであって、第2スイッチング回路(15)は、負ブランチスイッチングデューティサイクル(d)を有する第2駆動信号に従って2つの状態のうちのいずれか一方をとるように構成された第2スイッチングユニットと、前記第2スイッチングユニットに対して直列に配置された第2サンプル抵抗(Rkn)とを備える、ステップと、
・通電された電気装置(2)、第1スイッチング回路(16)、および第2スイッチング回路(15)からなる回路の少なくとも2つの動作点を定義するステップであって、第1動作点は、第1正ブランチスイッチングデューティサイクル値(dp1)および第1負ブランチスイッチングデューティサイクル値(dn1)に関連付けられ、第2動作点は、第2正ブランチスイッチングデューティサイクル値(dp2)および第2負ブランチスイッチングデューティサイクル値(dn2)に関連付けられる、ステップと、
・第1スイッチング回路(16)および第2スイッチング回路(15)を、前記第1動作点に従って動作するように制御し、こうした条件において、前記負端子(11)と正端子(12)との間に存在する個々の第1バッテリ電圧値(VB1)ならびに、第1スイッチング回路(16)および第2スイッチング回路(15)のうちの一方の端に存在する電圧を表し、第1動作点によって決定され、負端子絶縁抵抗(Rin)および正端子絶縁抵抗(Rip)の両方に依存する個々の第1基準電圧値(Viso1)を測定する、ステップと、
・第1スイッチング回路(16)および第2スイッチング回路(15)を、前記第2動作点に従って動作するように制御し、こうした条件において、前記負端子(11)と正端子(12)との間に存在する個々の第2バッテリ電圧値(VB2)ならびに、第1スイッチング回路(16)および第2スイッチング回路(15)のうちの一方の端に存在する電圧を表し、第2動作点によって決定され、負端子絶縁抵抗(Rin)および正端子絶縁抵抗(Rip)の両方に依存する個々の第2基準電圧値(Viso2)を測定する、ステップと、
・前記第1バッテリ電圧値(VB1)、第1基準電圧値(Viso1)、第2バッテリ電圧値(VB2)、および第2基準電圧値(Viso2)に基づいて、前記負端子絶縁抵抗(Rin)および前記正端子絶縁抵抗(Rip)を計算する、ステップと、を含み、
少なくとも2つの動作点を定義する前記ステップは、第1基準電圧値(Viso1)および第2基準電圧値(Viso2)を、予め定めた基準目標電圧(V)に対して所定の近傍内に維持するという基準に基づいて、前記第1正ブランチスイッチングデューティサイクル値(dp1)、第1負ブランチスイッチングデューティサイクル値(dn1)、第2正ブランチスイッチングデューティサイクル値(dp2)、および第2負ブランチスイッチングデューティサイクル値(dn2)を決定する、方法。
【請求項2】
少なくとも2つの動作点を定義する前記ステップと、第1スイッチング回路(16)および第2スイッチング回路(15)を、第1動作点に従って動作するように制御する前記ステップと、個々の第1バッテリ電圧値(VB1)および個々の第1基準電圧値(Viso1)を測定する前記ステップと、第1スイッチング回路(16)および第2スイッチング回路(15)を、第2動作点に従って動作するように制御する前記ステップと、個々の第2バッテリ電圧値(VB2)および個々の第2基準電圧値(Viso2)を測定する前記ステップは、連続的かつ反復的に実行され、
その結果、負端子絶縁抵抗(Rin)および正端子絶縁抵抗(Rip)は、連続的かつ動的に計算され、
第1基準電圧値(Viso1)および第2基準電圧値(Viso2)が、予め定めた基準目標電圧(V)とは予め定めた最大誤差(E)未満の誤差(e)だけ異なる場合に、負端子絶縁抵抗(Rin)および正端子絶縁抵抗(Rip)は有効であると判断される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
・前記第1スイッチングユニットは、正ブランチスイッチングデューティサイクル(d)を備えた前記第1駆動信号に従って、オープン状態またはクローズ状態をとるように構成された第1スイッチ(SWP)を備え、クローズ状態は実質的にゼロの抵抗によって特徴付けられ、オープン状態は、前記第1スイッチ(SWP)に対して並列に配置された第1スイッチング抵抗(RSWP)としてモデル化されるような抵抗によって特徴付けられ、
・前記第2スイッチングユニットは、負ブランチスイッチングデューティサイクル(d)を備えた前記第2駆動信号に従って、オープン状態またはクローズ状態をとるように構成された第2スイッチ(SWN)を備え、クローズ状態は実質的にゼロの抵抗によって特徴付けられ、オープン状態は、前記第2スイッチ(SWN)に対して並列に配置された第2スイッチング抵抗(RSWN)としてモデル化されるような抵抗によって特徴付けられる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
負端子絶縁抵抗(Rin)は、負端子絶縁コンダクタンス(Gin)の逆数として計算され、正端子絶縁抵抗(Rip)は、正端子絶縁コンダクタンスの逆数として計算され、
負端子絶縁コンダクタンス(Gin)および正端子絶縁コンダクタンス(Gip)は、測定可能な量を参照する下記パラメータ、または事前定義可能な回路パラメータを含む連立方程式を解くことによって計算される、請求項3に記載の方法。
・Viso1およびViso2(それぞれ第1動作点および第2動作点で測定された基準電圧値)
・VB1およびVB2(それぞれ第1動作点および第2動作点で測定されたバッテリ電圧値)
・Gp1およびGp2(それぞれ第1動作点および第2動作点で計算された等価正ブランチ抵抗(Rps)の逆数値)
・Gn1およびGn2(それぞれ第1動作点および第2動作点で計算された等価負ブランチ抵抗(Rns)の逆数値)
・P(基準電圧測定回路に依存するパラメータ)
【請求項5】
第1基準電圧値(Viso1)および第2基準電圧値(Viso2)を測定する前記ステップは、第1スイッチング回路(16)または第2スイッチング回路(15)と並列に配置された測定回路(17)によって実行され、
前記測定回路(17)は、相互に直列に配置された第1測定抵抗(R)および第2測定抵抗(Riso)を備えて電圧分配器を形成しており、
前記第1基準電圧値(Viso1)および第2基準電圧値(Viso2)は、第1測定抵抗(R)と第2測定抵抗(Riso)との間の接続部に存在し、第1動作点および第2動作点で測定される電圧にそれぞれ対応する、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記測定回路(17)は、第2スイッチング回路(16)、即ち、負スイッチングブランチと並列に配置され、
前記等価正ブランチ抵抗(Rps)および、1と0に等しいデューティサイクル値の場合に等価正ブランチ抵抗(Rps)によって取得される値は、第1スイッチング抵抗(RSWP)、第1サンプル抵抗(Rkp)および正ブランチスイッチングデューティサイクル(d)に依存する式を用いて計算され、
前記等価負ブランチ抵抗(Rns)および、1と0に等しいデューティサイクル値の場合に等価負ブランチ抵抗(Rns)によって取得される値は、第2スイッチング抵抗(RSWN)、第2サンプル抵抗(Rkn)および負ブランチスイッチングデューティサイクル(d)に依存する式を用いて計算され、
前記パラメータPは電圧分配器を表す、請求項4および5に記載の方法。
【請求項7】
前記測定回路(17)はさらに、前記第1測定抵抗(R)と第2測定抵抗(Riso)との間に配置され、個々の制御信号(D)に基づいて測定動作を活性化または非活性化するように構成された測定活性化スイッチ(SWI)をさらに備える、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
連続的かつ反復的に実行される前記方法ステップは、
・第1初期動作点を定義するステップであって、前記正ブランチスイッチングデューティサイクル(d)および負ブランチスイッチングデューティサイクル(d)の一方が、個々のスイッチのクローズに対応する、1の値に設定され、前記正ブランチスイッチングデューティサイクル(d)および負ブランチスイッチングデューティサイクル(d)の他方は、個々のスイッチのオープンに対応する、0の値に設定され、測定された初期基準電圧値(Viso)を、第1基準電圧値(Vt1,Viso1)として採用するステップと、
・下記のステップa)b)に従って第2動作点を定義するステップと、
a)第1正ブランチスイッチングデューティサイクル値(dp1)が、第1負ブランチスイッチングデューティサイクル値(dn1)より高い場合、第2基準目標電圧値(V)として、前回の動作点で測定された基準電圧(Viso1)から予め定めた基準電圧変動値(ΔViso)を減算したものに等しい値(Viso1-ΔViso)を定義するステップ。
b)第1正ブランチスイッチングデューティサイクル値(dp1)が、第1負ブランチスイッチングデューティサイクル値(dn1)より低い場合、第2基準目標電圧値(Vt2)として、前回の動作点で測定された基準電圧(Viso1)に予め定めた基準電圧変動値(ΔViso)を加算したものに等しい値(Vt1+ΔViso)を定義するステップ。
・基準電圧(V)を前記第2基準目標電圧値(Vt2)に近づけるという基準に従って、個々の初期値を変化させることによって、第2正ブランチスイッチングデューティサイクル値(dp2)および第2負ブランチスイッチングデューティサイクル値(dn2)を決定するステップと、を含む請求項2~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
第1動作点および第2動作点を定義する前記ステップは、
前回の第2動作点が第1動作点となり、新しい第2動作点が、請求項8に記載の第2動作点を定義するステップに従って定義される、一連の計算セッションに従って反復的に実行され、
その結果、負端子絶縁抵抗(Rin)および正端子絶縁抵抗(Rip)の動的に更新される値が各計算セッションにおいて決定される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
・第1正ブランチ駆動信号は、前記第1正ブランチスイッチングデューティサイクル(dp1,dp2)を備えたパルス幅変調(PWM)タイプの変調信号であり、
・第2負ブランチ駆動信号は、前記第2負ブランチスイッチングデューティサイクル(dn1,dn2)を備えたパルス幅変調(PWM)タイプの変調信号である、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記通電された電気装置(2)は、電気自動車バッテリであり、通電された電気装置(2)から理想的に絶縁されている前記接地(3)は、車両シャーシの接地または車両の電気制御ユニット(ECU)の絶縁された接地である、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
通電された電気装置(2)の絶縁損失を診断する方法であって、
・通電された電気装置の負端子と、通電された電気装置から理想的に絶縁された接地との間に存在する負端子絶縁抵抗(Rin)、および通電された電気装置の正端子と、通電された電気装置から理想的に絶縁された前記接地との間に存在する正端子絶縁抵抗(Rip)を測定するステップと、
・測定された負端子絶縁抵抗(Rin)および測定された正端子絶縁抵抗(Rip)に基づいて、通電された電気装置(2)の絶縁損失を診断するステップと、を含み、
前記測定ステップは、請求項1~11のいずれかに記載の方法によって実行される、方法。
【請求項13】
通電された電気装置(2)の負端子(21)と、通電された電気装置(2)から理想的に絶縁された接地(3)との間に存在する負端子絶縁抵抗(Rin)および、通電された電気装置(2)の正端子(22)と、通電された電気装置(2)から理想的に絶縁された前記接地(3)との間に存在する正端子絶縁抵抗(Rip)を測定するための電子デバイス(1)であって、
・通電された電気装置(2)の負端子(21)および正端子(22)にそれぞれ接続可能である第1デバイス端子(11)および第2デバイス端子(12)と、
・前記正端子(12)と接地(3)との間に配置され、よって前記正端子絶縁抵抗(Rip)と並列に配置された第1スイッチング回路(16)であって、正ブランチスイッチングデューティサイクル(d)を有する駆動信号に従って2つの状態のうちのいずれか一方をとるように構成された第1スイッチングユニットと、前記第1スイッチングユニットに対して直列に配置された第1サンプル抵抗(Rkp)とを備える、第1スイッチング回路(16)と、
・前記負端子(11)と接地(3)との間に配置され、よって前記負端子絶縁抵抗(Rin)と並列に配置された第2スイッチング回路(15)であって、負ブランチスイッチングデューティサイクル(d)を有する駆動信号に従って2つの状態のうちのいずれか一方をとるように構成された第2スイッチングユニットと、前記第2スイッチングユニットに対して直列に配置された第2サンプル抵抗(Rkn)とを備える、第2スイッチング回路(15)と、
・下記の動作a)b)c)d)を行うように構成された電子制御処理手段と、を備え、
a)通電された電気装置(2)、第1スイッチング回路(16)、および第2スイッチング回路(15)からなる回路の少なくとも2つの動作点を定義する動作であって、第1動作点は、第1正ブランチスイッチングデューティサイクル値(dp1)および第1負ブランチスイッチングデューティサイクル値(dn1)に関連付けられ、第2動作点は、第2正ブランチスイッチングデューティサイクル値(dp2)および第2負ブランチスイッチングデューティサイクル値(dn2)に関連付けられる、動作。
b)第1スイッチング回路(16)および第2スイッチング回路(15)を、前記第1動作点に従って動作するように制御し、こうした条件において、前記負端子(11)と正端子(12)との間に存在する個々の第1バッテリ電圧値(VB1)ならびに、第1スイッチング回路(16)および第2スイッチング回路(15)のうちの一方の端に存在する電圧を表し、第1動作点によって決定され、負端子絶縁抵抗(Rin)および正端子絶縁抵抗(Rip)の両方にも依存する個々の第1基準電圧値(Viso1)を測定する動作。
c)第1スイッチング回路(16)および第2スイッチング回路(15)を、前記第2動作点に従って動作するように制御し、こうした条件において、前記負端子(11)と正端子(12)との間に存在する個々の第2バッテリ電圧値(VB2)ならびに、第1スイッチング回路(16)および第2スイッチング回路(15)のうちの一方の端に存在する電圧を表し、第2動作点によって決定され、負端子絶縁抵抗(Rin)および正端子絶縁抵抗(Rip)の両方に依存する個々の第2基準電圧値(Viso2)を測定する動作。
d)前記第1バッテリ電圧値(VB1)、第1基準電圧値(Viso1)、第2バッテリ電圧値(VB2)、および第2基準電圧値(Viso2)に基づいて、前記負端子絶縁抵抗(Rin)および前記正端子絶縁抵抗(Rip)を計算する動作。
前記電子制御処理手段は、第1基準電圧値(Viso1)および第2基準電圧値(Viso2)を、予め定めた基準目標電圧(V)に対して所定の近傍内に維持するという基準に基づいて、前記第1正ブランチスイッチングデューティサイクル値(dp1)、第1負ブランチスイッチングデューティサイクル値(dn1)、第2正ブランチスイッチングデューティサイクル値(dp2)、および第2負ブランチスイッチングデューティサイクル値(dn2)を決定するように構成される、電子デバイス(1)。
【請求項14】
・前記第1スイッチングユニットは、正ブランチスイッチングデューティサイクル(d)を備えた前記第1駆動信号に従って、オープン状態またはクローズ状態をとるように構成された第1スイッチ(SWP)を備え、クローズ状態は実質的にゼロの抵抗によって特徴付けられ、オープン状態は、前記第1スイッチ(SWP)に対して並列に配置された第1スイッチング抵抗(RSWP)としてモデル化されるような抵抗によって特徴付けられ、
・前記第2スイッチングユニットは、負ブランチスイッチングデューティサイクル(d)を備えた前記第2駆動信号に従って、オープン状態またはクローズ状態をとるように構成された第2スイッチ(SWN)を備え、クローズ状態は実質的にゼロの抵抗によって特徴付けられ、オープン状態は、前記第2スイッチ(SWN)に対して並列に配置された第2スイッチング抵抗(RSWN)としてモデル化されるような抵抗によって特徴付けられる、請求項13に記載の電子デバイス(1)。
【請求項15】
第1スイッチング回路(16)または第2スイッチング回路(15)と並列に配置され、第1基準電圧値(Viso1)および第2基準電圧値(Viso2)を測定する前記動作を実行するように構成された測定回路(17)をさらに備え、
前記測定回路は、相互に直列に配置された第1測定抵抗(R)および第2測定抵抗(Riso)を備えて電圧分配器を形成しており、
前記第1基準電圧値(Viso1)および第2基準電圧値(Viso2)は、第1測定抵抗(R)と第2測定抵抗(Riso)との間の接続部に存在し、第1動作点および第2動作点で測定される電圧にそれぞれ対応する、請求項13または14に記載の電子デバイス(1)。
【請求項16】
前記測定回路(17)はさらに、前記第1測定抵抗(R)と第2測定抵抗(Riso)との間に配置され、個々の制御信号(D)に基づいて測定動作を活性化または非活性化するように構成された測定活性化スイッチ(SWI)をさらに備える、請求項15に記載の電子デバイス(1)。
【請求項17】
請求項1~11のいずれかに記載の方法を実行するように構成された、請求項13~16のいずれかに記載の電子デバイス(1)。
【請求項18】
通電された電気装置(2)の負端子(21)と、通電された電気装置(2)から理想的に絶縁された接地(3)との間に存在する負端子絶縁抵抗(Rin)および、通電された電気装置(2)の正端子(22)と、通電された電気装置(2)から理想的に絶縁された前記接地(3)との間に存在する正端子絶縁抵抗(Rip)を測定するための電子システム(10)であって、
・通電された電気装置(2)の負端子(21)および正端子(22)にそれぞれ接続可能である第1デバイス端子(11)および第2デバイス端子(12)を含む電子デバイス(1)であって、i)前記正端子(12)と接地(3)との間に配置された第1スイッチング回路(16)であって、正ブランチスイッチングデューティサイクル(d)を有する第1駆動信号に従って2つの状態のうちのいずれか一方をとるように構成された第1スイッチングユニットと、前記第1スイッチングユニットに対して直列に配置された第1サンプル抵抗(Rkp)とを備える、第1スイッチング回路(16)と、ii)前記負端子(11)と接地(3)との間に配置された第2スイッチング回路(15)であって、負ブランチスイッチングデューティサイクル(d)を有する第2駆動信号に従って2つの状態のうちのいずれか一方をとるように構成された第2スイッチングユニットと、前記第2スイッチングユニットに対して直列に配置された第2サンプル抵抗(Rkn)とを備える、第2スイッチング回路(15)と、を備える電子デバイス(1)と、
・前記負端子(11)と正端子(12)との間に存在するバッテリ電圧(V)および、第1スイッチング回路(16)および第2スイッチング回路(15)のうちの一方の端に存在する電圧を表す基準電圧(Viso)を測定するように構成された測定手段と、
・下記の動作a)b)c)d)e)を行うように構成された電子制御処理手段(C(s))と、を備え、
a)通電された電気装置(2)、第1スイッチング回路(16)、および第2スイッチング回路(15)からなる回路の少なくとも2つの動作点を定義する動作であって、第1動作点は、第1正ブランチスイッチングデューティサイクル値(dp1)および第1負ブランチスイッチングデューティサイクル値(dn1)に関連付けられ、第2動作点は、第2正ブランチスイッチングデューティサイクル値(dp2)および第2負ブランチスイッチングデューティサイクル値(dn2)に関連付けられる、動作。
b)第1スイッチング回路(16)および第2スイッチング回路(15)を、前記第1動作点に従って動作するように制御し、定義された第1動作点に基づいて第1駆動信号および第2駆動信号を決定し、第1スイッチング回路(16)に第1駆動信号を提供し、第2スイッチング回路(15)に第2駆動信号を提供する、動作。
c)第1スイッチング回路(16)および第2スイッチング回路(15)が第1動作点に従って動作している条件において、前記負端子(11)と正端子(12)との間で測定される個々の第1バッテリ電圧値(VB1)および、第1スイッチング回路(16)および第2スイッチング回路(15)のうちの一方の端に存在する電圧を表す個々の第1基準電圧値(Viso1)を、測定手段から受信する動作。
d)第1スイッチング回路(16)および第2スイッチング回路(15)が第2動作点に従って動作している条件において、前記負端子(11)と正端子(12)との間で測定される個々の第2バッテリ電圧値(VB2)および、第1スイッチング回路(16)および第2スイッチング回路(15)のうちの一方の端に存在する電圧を表す個々の第2基準電圧値(Viso2)を、測定手段から受信する動作。
e)前記第1バッテリ電圧値(VB1)、第1基準電圧値(Viso1)、第2バッテリ電圧値(VB2)、および第2基準電圧値(Viso2)に基づいて、前記負端子絶縁抵抗(Rin)および前記正端子絶縁抵抗(Rip)を計算する動作。
前記電子制御処理手段はさらに、第1基準電圧値(Viso1)および第2基準電圧値(Viso2)を、予め定めた基準目標電圧(V)に対して所定の近傍内に維持するという基準に基づいて、前記第1正ブランチスイッチングデューティサイクル値(dp1)、第1負ブランチスイッチングデューティサイクル値(dn1)、第2正ブランチスイッチングデューティサイクル値(dp2)、および第2負ブランチスイッチングデューティサイクル値(dn2)を決定するように構成される、電子システム(10)。
【請求項19】
電子制御処理手段(C(s))からデジタル論理駆動信号を受信し、前記正ブランチスイッチングデューティサイクル(d)および負ブランチスイッチングデューティサイクル(d)によってそれぞれ特徴付けられた予め定めた変調に従って、個々の物理的駆動信号を生成し、第1スイッチング回路(16)および第2スイッチング回路(15)に提供するように構成された変調器をさらに備える、請求項18に記載の電子システム(10)。
【請求項20】
前記物理的駆動信号は、パルス幅変調(PWM)タイプの変調で変調される、請求項19に記載の電子システム(10)。
【請求項21】
請求項1~12のいずれかに記載の方法を実行するように構成された、請求項18~20のいずれかに記載の電子システム(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通電された電気装置の接地に対する絶縁抵抗を反復して測定するため、そして、こうした機器の絶縁損失の診断のための方法、電子デバイスおよびシステムに関する。
【0002】
本説明は、一例として、電気モータまたはハイブリッドモータ用のバッテリへの本発明の応用を特に示しているが、本発明は、接地、または一般の基準または保護接地に対して、任意の通電された電気装置またはシステムに等しく応用できることは明らかであることに留意されよう。
【背景技術】
【0003】
例えば、電気自動車やハイブリッド自動車など、高い公称電圧を備えた電気化学バッテリの使用が絶えず増加しており、こうした電圧の使用に関連した電気リスクの可能性を伴い、これらは人や物にとって潜在的に危険である。従って、電気の使用に関連する危険は、職場や家庭での電気の使用に主に関連していると今まで考えられていたが、現在では、潜在的に危険な電圧を特徴とする蓄電システムを備えた電気自動車やハイブリッド自動車にも現れている。
【0004】
今後数年間に予想される車両の電動牽引の更なる普及は、人や物の輸送のためにその頻繁で広範な使用に関連しており、牽引のためのリチウムバッテリの使用に伴う電気リスクと潜在的危険性が、将来のこうした交通手段を使用する人々の安全のリスクの主な原因の 1つになることを意味するであろう。
【0005】
何らかの不具合(例えば、電気装置のコンポーネントの老朽化、絶縁破壊、放電に起因する誤動作など)は、短絡や絶縁損失の発生など、潜在的に危険な事象からの保護という問題を引き起こす。これは、火災や爆発を引き起こす可能性があり、可燃性または爆発性物質が存在すれば特に深刻になり、例えば、人々の生命を危険にさらすことがある。
【0006】
こうした可能性のある不具合の中でも、接地、または一般の基準または保護接地(例えば、自動車シャーシ)に対するバッテリ電圧の絶縁損失は、最も頻繁に発生する可能性のある故障の1つである。
【0007】
一例を挙げると、被覆が損傷したケーブルが車体に接触して故障した場合、高電圧回路と車体との間の絶縁抵抗が大幅に減少する。こうした絶縁抵抗の減少は、絶縁抵抗を検出できる既知のタイプの電子回路によって診断できる。
【0008】
実際、高電圧システムを備えた電気自動車やハイブリッド自動車では、電気システムに適切に挿入され、高電圧回路と車両シャーシとの間の絶縁抵抗をランタイムモードで測定できる絶縁抵抗検出回路を使用することが知られている。
【0009】
種々の安全性および保護条件の中でもとりわけ、車両に設置された絶縁抵抗監視システムを使用して、接地または、一般の基準または保護接地に対するバッテリの絶縁抵抗値の自動的に実行される定期的な測定によってバッテリの高電圧回路の完全性を点検することが可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前述した既知の手法にはいくつかの不具合があり、そのうち主な不具合は、絶縁抵抗の測定に必要とされる長い時間(例えば、30秒)であり、ニーズには不十分である。
【0011】
まだ完全に満たされていない他のニーズは、ランタイムモードで実行される絶縁抵抗測定の精度の向上に関する。
【0012】
上記の観点から、主に自動車用途の分野だけでなく、他の応用分野でも(バッテリ以外の通電された装置や他の状況で使用される同様のニーズが生ずることがあることは容易に理解されよう)、そのニーズは、現在利用可能な手法に対して、絶縁抵抗をより迅速に、同時により正確に測定でき、前述したニーズをより良く満たすような絶縁抵抗を測定する方法(そして関連する電子デバイスおよび電子システム)を考案するために強く考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の目的は、先行技術に対して上記の不具合を少なくとも部分的に回避し、検討される技術分野において特に考えられる前述のニーズを満足することを可能にする、絶縁抵抗を測定する方法を提供することである。
【0014】
こうした目的は、請求項1に記載の絶縁抵抗測定方法によって達成される。
【0015】
こうした方法の更なる実施形態は、請求項2~11に定義される。
【0016】
本発明の更なる目的は、前述の絶縁抵抗測定方法に基づいて、通電された電気装置の絶縁損失を診断する方法を提供することである。こうした目的は、請求項12に記載の絶縁損失診断方法によって達成される。
【0017】
本発明の目的はまた、絶縁抵抗を測定するための電子装置を提供することである。こうした目的は、請求項13に記載のデバイスによって達成される。
【0018】
こうしたデバイスの更なる実施形態は、請求項14~17に定義される。
【0019】
本発明の他の目的は、絶縁抵抗を測定するための電子システムを提供することである。こうした目的は、請求項18に記載の装置によって達成される。
【0020】
こうしたシステムの更なる実施形態は、請求項19~21に定義される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明に係る方法、電子デバイスおよび電子システムの更なる特徴および利点は、添付図面を参照しながら、例示的で非限定的な例として与えられる好ましい実施形態の下記説明から明らかになるであろう。
【0022】
図1】本発明の方法が適用される回路の概略図を示す。特に、図1は、本発明の一実施形態に従って、絶縁抵抗が測定されるバッテリ、および電子デバイスの回路を示す。
図2】本発明に係る方法の一実施形態に含まれる絶縁抵抗計算アルゴリズムのフロー図を示す。
図3】本発明に係る方法の一実施形態に含まれる絶縁抵抗計算アルゴリズムのフロー図を示す。
図4】本発明の一実施形態に係る絶縁抵抗測定システムを簡略化して示す摸式図である。
図5】本発明の方法に含まれる信号および変数の時間的傾向を示すいくつかの例示的な図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1図5を参照して、通電された電気装置2の負端子11と、通電された電気装置2から理想的に絶縁された接地3との間に存在する負端子絶縁抵抗Rin、および、通電された電気装置2の正端子12と、通電された電気装置2から理想的に絶縁された前述の接地3との間に存在する正端子絶縁抵抗Ripを測定するための方法を説明する。
【0024】
こうした方法は、最初に、第1スイッチング回路16を前記正端子12と接地3との間に正端子絶縁抵抗Ripと並列に配置することと、第2スイッチング回路15を前記負端子11と接地3との間に負端子絶縁抵抗Rinと並列に配置することとを提供する。
【0025】
前述の第1スイッチング回路16は、正ブランチ(分岐)スイッチングデューティサイクルdを有する第1駆動信号に従って、2つの状態のうちのいずれか一方をとるように構成された第1スイッチングユニットと、前述の第1スイッチングユニットに対して直列に配置された第1サンプル抵抗Rkpとを備える。
【0026】
前述の第2スイッチング回路15は、負ブランチ(分岐)スイッチングデューティサイクルdを有する第2駆動信号に従って、2つの状態のうちのいずれか一方を取るように構成された第2スイッチングユニットと、前記第2スイッチングユニットに対して直列に配置された第2サンプル抵抗Rknとを備える。
【0027】
第1スイッチング回路16は、以下では「正ブランチ」または「正スイッチングブランチ」とも呼ばれる。第2スイッチング回路16は、以下では「負ブランチ」または「負スイッチングブランチ」とも呼ばれる。第1および第2スイッチング回路のセットは、以下では「絶縁損失(LOI)測定回路」と呼ばれる。
【0028】
そして、この方法は、通電された電気装置2、第1スイッチング回路16、および第2スイッチング回路15からなる回路の少なくとも2つの動作点を定義するステップを含む。第1動作点が、第1正ブランチスイッチングデューティサイクル値dp1および第1負ブランチスイッチングデューティサイクル値dn1に関連付けられる。第2動作点が、第2正ブランチスイッチングデューティサイクル値dp2および第2負ブランチスイッチングデューティサイクル値dn2に関連付けられる。
【0029】
この方法はさらに、第1スイッチング回路16および第2スイッチング回路15が前述の第1動作点に従って動作するように制御することと、こうした条件において、負端子11と正端子12との間に存在する個々の第1バッテリ電圧値VB1および、第1スイッチング回路16および第2スイッチング回路15のうちの一方の端に存在する電圧を表す個々の第1基準電圧値Viso1を測定することとを含む。こうした基準電圧は、第1動作点によって決定され、負端子絶縁抵抗Rinおよび正端子絶縁抵抗Ripの両方に依存する。
【0030】
そして、この方法は、第1スイッチング回路16および第2スイッチング回路15が第2動作点に従って動作するように制御することと、こうした条件において、前記負端子11と正端子12との間に存在する個々の第2バッテリ電圧値VB2および、第1スイッチング回路16および第2スイッチング回路15のうちの一方の端に存在する電圧を表す個々の第2基準電圧値Viso2を測定することとを含む。こうした基準電圧は、第2動作点によって決定され、負端子絶縁抵抗Rinおよび正端子絶縁抵抗Ripの両方に依存する。
【0031】
最後に、この方法は、前述の第1バッテリ電圧値VB1、第1基準電圧値Viso1、第2バッテリ電圧値VB2、および第2基準電圧値Viso2に基づいて、前述の負端子絶縁抵抗Rinおよび正端子絶縁抵抗Ripを計算することを提供する。
【0032】
少なくとも2つの動作点を定義する前述のステップは、第1基準電圧値Viso1および第2基準電圧値Viso2を、予め定めた基準目標電圧Vに対して所定の近傍内に維持するという基準に基づいて、前述の第1正ブランチスイッチングデューティサイクル値dp1、第1負ブランチスイッチングデューティサイクル値dn1、第2正ブランチスイッチングデューティサイクル値dp2、および第2負ブランチスイッチングデューティサイクル値dn2を決定することを含む。
【0033】
この方法の一実施形態によれば、少なくとも2つの動作点を定義する前記ステップと、
第1スイッチング回路16および第2スイッチング回路15を、第1動作点に従って動作するように制御する前記ステップと、個々の第1バッテリ電圧値VB1および個々の第1基準電圧値Viso1を測定する前記ステップと、第1スイッチング回路16および第2スイッチング回路15を、第2動作点に従って動作するように制御する前記ステップと、個々の第2バッテリ電圧値VB2および個々の第2基準電圧Viso2を測定する前記ステップは、連続的かつ反復的に実行され、その結果、負端子絶縁抵抗Rinおよび正端子絶縁抵抗Ripは、連続的かつ動的に計算される。第1基準電圧値Viso1および第2基準電圧値Viso2が、予め定めた基準目標電圧Vとは予め定めた最大誤差E未満である誤差eだけ異なる場合に、および/またはそのため、負端絶縁抵抗Rinおよび正端絶縁抵抗Ripは、有効であると判断される。
【0034】
この方法の一実施形態によれば、前述の第1スイッチングユニットは、正ブランチスイッチングデューティサイクルdを備えた第1駆動信号に従って、オープン状態またはクローズ状態をとるように構成された第1スイッチSWPを備え、クローズ状態は、実質的にゼロの抵抗によって特徴付けられ、オープン状態は、第1スイッチSWPに対して並列に配置された第1スイッチング抵抗RSWPとしてモデル化されるような抵抗によって特徴付けられる。
【0035】
同様に、前述の第2スイッチングユニットは、負ブランチスイッチングデューティサイクルdを備えた第2駆動信号に従って、オープン状態またはクローズ状態をとるように構成された第2スイッチSWNを備え、クローズ状態は、実質的にゼロの抵抗によって特徴付けられ、オープン状態は、第2スイッチ(SWN)に対して並列に配置された第2スイッチング抵抗RSWNとしてモデル化されるような抵抗によって特徴付けられる。
【0036】
この方法の実装オプションによれば、負端子絶縁抵抗Rinは、負端子絶縁コンダクタンスGinの逆数として計算され、正端子絶縁抵抗Ripは、正端子絶縁コンダクタンスGipの逆数として計算される。
【0037】
こうした場合、負端子絶縁コンダクタンスGinおよび正端子絶縁コンダクタンスGipは、測定可能な量を参照するパラメータまたは事前定義可能な回路パラメータを含む連立方程式を解くことによって計算される。
【0038】
解くべき方程式の詳細は、使用する回路の正確な構成に明らかに依存する。
【0039】
特定の実装例(以下でさらに詳説する)によれば、負端子絶縁コンダクタンスGinおよび正端子絶縁コンダクタンスGipは、下記の連立方程式を解くことによって計算される。
【0040】
【数1】
【0041】
これにより下記の解が得られる。
【0042】
【数2】
【0043】
ここで、Viso1およびViso2は、それぞれ第1動作点および第2動作点で測定された基準電圧値である。VB1およびVB2は、それぞれ第1動作点および第2動作点で測定されたバッテリ電圧値である。Gp1およびGp2は、それぞれ第1動作点および第2動作点で計算された等価正ブランチ抵抗Rpsの逆数値である。Gn1およびGn2は、それぞれ第1動作点および第2動作点で計算された等価負ブランチ抵抗Rnsの逆数値である。Pは、基準電圧測定回路に依存するパラメータである。
【0044】
正ブランチおよび負ブランチの絶縁抵抗値は、Rin=1/GinおよびRip=1/Gipのように、GinおよびGipの値から容易に得られる。
【0045】
この方法の一実施形態によれば、第1基準電圧値Viso1および第2基準電圧値Viso2を測定する前述のステップは、第1スイッチング回路16または第2スイッチング回路15と並列に配置された測定回路17によって実行される。
【0046】
実装オプションによれば、前述の測定回路17は、相互に直列に配置された第1測定抵抗Rおよび第2測定抵抗Risoを備えて電圧分配器を形成する。前述の第1基準電圧値Viso1および第2基準電圧値Viso2は、第1測定抵抗Rと第2測定抵抗Risoとの間の接続部に存在し、第1動作点および第2動作点で測定された電圧にそれぞれ対応する。
【0047】
実装オプションによれば、前述の測定回路17は、第2スイッチング回路16、即ち、負スイッチングブランチと並列に配置される。
【0048】
こうした場合、前述の等価正ブランチ抵抗Rpsおよび、1と0に等しいデューティサイクル値の場合に等価正ブランチ抵抗Rpsによって得られる値は、下記の式によって計算される。
【0049】
【数3】
【0050】
同様に、前述の等価負ブランチ抵抗Rnsおよび、1と0に等しいデューティサイクル値の場合に等価負ブランチ抵抗Rnsによって得られる値は、下記の式によって計算される。
【0051】
【数4】
【0052】
こうした場合、前述のパラメータPは電圧分配器を表し、次のように計算される。
【0053】
【数5】
【0054】
この方法の実装オプションによれば、前述の測定回路17はさらに、前述の第1測定抵抗Rと第2測定抵抗Risoとの間に配置され、個々の制御信号Dに基づいて測定動作を活性化または非活性化するように構成された測定活性化スイッチSWIをさらに備える。
【0055】
一実施形態によれば、連続的かつ反復的に実行される前述の方法ステップは、下記のステップを含む。
【0056】
最初に、第1初期動作点が定義され、この場合、前述の正ブランチスイッチングデューティサイクルdおよび負ブランチスイッチングデューティサイクルdの一方が、個々のスイッチのクローズに対応する、1の値に設定される。前述の正ブランチスイッチングデューティサイクルdおよび負ブランチスイッチングデューティサイクルdの他方は、個々のスイッチのオープンに対応する、0の値に設定される。測定された初期基準電圧値Visoは、第1基準電圧値Vt1,Viso1として採用される。
【0057】
次に、下記のステップを通じて第2動作点が定義される。
・第1正ブランチスイッチングデューティサイクル値dp1が、第1負ブランチスイッチングデューティサイクル値dn1より高い場合、第2基準目標電圧値Vとして、前回の動作点で測定された基準電圧Viso1から予め定めた基準電圧変動値ΔVisoを減算したものに等しい値(Viso1-ΔViso)を定義するステップ。
・第1正ブランチスイッチングデューティサイクル値dp1が、第1負ブランチスイッチングデューティサイクル値dn1より低い場合、第2基準目標電圧値Vt2として、前回の動作点で測定された基準電圧Viso1に予め定めた基準電圧変動値ΔVisoを加算したものに等しい値(Vt1+ΔViso)を定義するステップ。
・基準電圧Vを前述の第2基準目標電圧値Vt2に近づけるという基準に従って、個々の初期値を変化させることによって、第2正ブランチスイッチングデューティサイクル値dp2および第2負ブランチスイッチングデューティサイクル値dn2を決定するステップ。
【0058】
この方法の実装オプションによれば、第1動作点および第2動作点を定義する前述のステップは、前回の第2動作点が第1動作点となり、新しい第2動作点が、上に示した第2動作点を定義するステップに従って定義される、一連の計算セッションに従って反復的に実行される。
【0059】
それにより、各計算セッション(前述したように2つの動的に可変である動作点でそれぞれ実行される)において、動的に更新される負端子絶縁抵抗値Rinおよび動的に更新される正端子絶縁抵抗値Ripが決定される。
【0060】
この方法の一実施形態によれば、第1正ブランチ駆動信号は、前述の第1正ブランチスイッチングデューティサイクル(dp1,dp2)を備えたパルス幅変調(PWM)タイプの変調信号である。第2負ブランチ駆動信号は、前述の第2負ブランチスイッチングデューティサイクル(dn1,dn2)を備えたパルス幅変調(PWM)タイプの変調信号である。
【0061】
一実施形態によれば、前述の通電された電気装置2は車両用の電気バッテリ(例えば、高牽引力用電池)であり、通電された電気装置から理想的に絶縁されている前述の接地3が、車両シャーシの接地または車両(他の低電圧バッテリ、典型的には12Vを備えることがある)の電気制御ユニット(ECU)の絶縁された接地である場合に、この方法が適用される。
【0062】
通電された電気装置2の絶縁損失を診断する方法は、以下に説明するように、
・通電された電気装置の負端子11と、通電された電気装置から理想的に絶縁された接地との間に存在する負端子絶縁抵抗Rin、および通電された電気装置の正端子と、通電された電気装置から理想的に絶縁された前述の接地との間に存在する正端子絶縁抵抗Ripを測定し、そして、測定された負端子絶縁抵抗Rinおよび正端子絶縁抵抗Ripに基づいて、通電された電気装置2の絶縁損失を診断するステップを含む。
【0063】
前述の負端子絶縁抵抗Rinおよび正端子絶縁抵抗Ripを測定するステップは、前述の実施形態のいずれかに係る絶縁抵抗測定方法によって実行される。
【0064】
再び図1~5を参照して、通電された電気装置2の負端子21と、通電された電気装置2から理想的に絶縁された接地3との間に存在する負端子絶縁抵抗Rinおよび、通電された電気装置2の正端子22と、通電された電気装置2から理想的に絶縁された前述の接地3との間に存在する正端子絶縁抵抗Ripを測定するための電子デバイス1について説明している。
【0065】
こうした電子デバイスは、通電された電気装置2の負端子21および正端子22にそれぞれ接続可能な第1デバイス端子11および第2デバイス端子12を備え、さらに、第1スイッチング回路16および第2スイッチング回路15および電子制御処理手段を備える。
【0066】
第1スイッチング回路16は、前記正端子12と接地3との間に配置され、よって前述の正端子絶縁抵抗Ripと並列に配置される。
【0067】
こうした第1スイッチング回路16は、正ブランチスイッチングデューティサイクルdを有する駆動信号に従って2つの状態のうちのいずれか一方をとるするように構成された第1スイッチングユニットと、前述の第1スイッチングユニットに対して直列に配置された第1サンプル抵抗Rkpとを備える。
【0068】
第2スイッチング回路15は、前述の負端子11と接地3との間に配置され、よって前述の負端子絶縁抵抗Rinと並列に配置される。
【0069】
こうした第2スイッチング回路15は、負ブランチスイッチングデューティサイクルdを有する駆動信号に従って2つの状態のうちのいずれか一方をとるするように構成された第2スイッチングユニットと、前述の第2スイッチングユニットに対して直列に配置された第2サンプル抵抗Rknとを備える。
【0070】
電子制御処理手段は、下記の動作を実行するように構成される。
・通電された電気装置2、第1スイッチング回路16、および第2スイッチング回路15からなる回路の少なくとも2つの動作点を定義する動作。第1動作点は、第1正ブランチスイッチングデューティサイクル値dp1および第1負ブランチスイッチングデューティサイクル値dn1に関連付けられる。第2動作点は、第2正ブランチスイッチングデューティサイクル値dp2および第2負ブランチスイッチングデューティサイクル値dn2に関連付けられる。
・第1スイッチング回路16および第2スイッチング回路15を、第1動作点に従って動作するように制御し、こうした条件において、負端子11と正端子12との間に存在する個々の第1バッテリ電圧値VB1および、第1スイッチング回路16および第2スイッチング回路15のうちの一方の端に存在する電圧を表し、第1動作点によって決定され、負端子絶縁抵抗Rinおよび正端子絶縁抵抗Ripの両方に依存する個々の第1基準電圧値(Viso1)を測定する動作。
・第1スイッチング回路16および第2スイッチング回路15を、第2動作点に従って動作するように制御し、こうした条件において、負端子11と正端子12との間に存在する個々の第2バッテリ電圧値VB2および、第1スイッチング回路16および第2スイッチング回路15のうちの一方の端に存在する電圧を表し、第2動作点によって決定され、負端子絶縁抵抗Rinおよび正端子絶縁抵抗Ripの両方に依存する個々の第2基準電圧値Viso2を測定する動作。
・前述の第1バッテリ電圧値VB1、第1基準電圧値Viso1、第2バッテリ電圧値VB2、および第2基準電圧値Viso2に基づいて、前述の負端子絶縁抵抗Rinおよび正端子絶縁抵抗Ripを計算する動作。
【0071】
電子制御処理手段はさらに、第1基準電圧値Viso1および第2基準電圧値Viso2を、予め定めた基準目標電圧Vに対して所定の近傍内に維持するという基準に基づいて、前述の第1正ブランチスイッチングデューティサイクル値dp1、第1負ブランチスイッチングデューティサイクル値dn1、第2正ブランチスイッチングデューティサイクル値dp2、および第2負ブランチスイッチングデューティサイクル値dn2を決定するように構成される。
【0072】
デバイスの一実施形態によれば、前述の第1スイッチングユニットは、正ブランチスイッチングデューティサイクルdを備えた第1駆動信号に従って、オープン状態またはクローズ状態をとるように構成された第1スイッチSWPを備え、クローズ状態は、実質的にゼロの抵抗によって特徴付けられ、オープン状態は、第1スイッチSWPに対して並列に配置された第1スイッチング抵抗RSWPとしてモデル化されるような抵抗によって特徴付けられる。同様に、前述の第2のスイッチングユニットは、負ブランチスイッチングデューティサイクルdを備えた前記第2駆動信号に従って、オープン状態またはクローズ状態をとるように構成された第2スイッチSWNを備え、クローズ状態は、実質的にゼロの抵抗によって特徴付けられ、オープン状態は、第2スイッチSWNに対して並列に配置された第2スイッチング抵抗RSWNとしてモデル化されるような抵抗によって特徴付けられる。
【0073】
一実施形態によれば、デバイスはさらに、第1スイッチング回路16または第2スイッチング回路15と並列に配置され、第1基準電圧値Viso1および第2基準電圧値Viso2を測定する前述の動作を実行するように構成された測定回路17を備える。
【0074】
こうした測定回路17は、相互に直列に配置された第1測定抵抗Rおよび第2測定抵抗Risoを備え、電圧分配器を形成する。
【0075】
こうした場合、前述の第1基準電圧値Viso1および第2基準電圧値Viso2は、第1測定抵抗Rと第2測定抵抗Risoとの間の接続部に存在し、第1動作点および第2動作点で測定された電圧にそれぞれ対応する。
【0076】
電子デバイス1の実装オプションによれば、前述の測定回路17はさらに、前述の第1測定抵抗Rと第2測定抵抗Risoとの間に配置され、個々の制御信号Dに基づいて測定動作を活性化または非活性化するように構成された測定活性化スイッチSWIをさらに備える。
【0077】
いくつかの可能な実施形態によれば、電子デバイス1は、前に示した実施形態のいずれか1つによる絶縁抵抗測定方法を実行するように構成される。
【0078】
再び図1~5を参照して、通電された電気装置2の負端子21と、通電された電気装置2から理想的に絶縁された接地3との間に存在する負端子絶縁抵抗Rin、および通電された電気装置2の正端子22と、通電された電気装置から理想的に絶縁された前述の接地3との間に存在する正端子絶縁抵抗Ripを測定するための電子システム10を以下に説明する。
【0079】
こうした電子システム10は、電子デバイス1と、測定手段と、電子制御処理手段C(s)とを備える。
【0080】
電子デバイス1は、通電された電気装置2の負端子21および正端子22にそれぞれ接続可能な第1デバイス端子11および第2デバイス端子12を備える。
【0081】
電子デバイス1はさらに、第1スイッチング回路16と第2スイッチング回路15とを備える。
【0082】
第1スイッチング回路16は、正端子12と接地3との間に配置され、正ブランチスイッチングデューティサイクルdを有する第1駆動信号に従って2つの状態のうちのいずれか一方をとるするように構成された第1スイッチングユニットと、第1スイッチングユニットに対して直列に配置された第1サンプル抵抗Rkpとを備える。
【0083】
第2スイッチング回路15は、負端子11と接地3との間に配置され、負ブランチスイッチングデューティサイクルdを有する第2駆動信号に従って2つの状態のうちのいずれか一方をとるするように構成された第2スイッチングユニットと、第2スイッチングユニットに対して直列に配置された第2サンプル抵抗Rknとを備える。
【0084】
測定手段は、前述の負端子11と正端子12との間に存在するバッテリ電圧値Vおよび、第1スイッチング回路16および第2スイッチング回路15のうちの一方の端に存在する電圧を表す基準電圧値Visoを測定するように構成される。
【0085】
例えば、図3図4に示す電子制御処理手段C(s)は、下記の動作を実行するように構成される。
・通電された電気装置2、第1スイッチング回路16、および第2スイッチング回路15からなる回路の少なくとも2つの動作点を定義する動作。第1動作点は、第1正ブランチスイッチングデューティサイクル値dp1および第1負ブランチスイッチングデューティサイクル値dn1に関連付けられる。第2動作点は、第2正ブランチスイッチングデューティサイクル値dp2および第2負ブランチスイッチングデューティサイクル値dn2に関連付けられる。
・第1スイッチング回路16および第2スイッチング回路15を、第1動作点に従って動作するように制御し、定義された第1動作点に基づいて第1駆動信号および第2駆動信号を決定し、第1駆動信号を第1スイッチング回路16に提供し、第2駆動信号を第2スイッチング回路15に提供する動作。
・そして、第1スイッチング回路16および第2スイッチング回路15が第2動作点に従って動作するように制御し、定義された第2動作点に基づいて第1駆動信号および第2駆動信号を決定し、第1駆動信号を第1スイッチング回路16に提供し、第2駆動信号を第2スイッチング回路15に提供する動作。
・第1スイッチング回路16および第2スイッチング回路15が第1動作点に従って動作している状態で、前述の負端子11と正端子との間で測定された個々の第1バッテリ電圧値VB1および、第1スイッチング回路16および第2スイッチング回路15のうちの一方の端に存在する電圧を表す個々の第1基準電圧値Viso1を、測定手段から受信する動作。
・第1スイッチング回路16および第2スイッチング回路15が第2動作点に従って動作している状態で、前述の負端子11と正端子との間で測定された個々の第2バッテリ電圧値VB2および、第1スイッチング回路16および第2スイッチング回路15のうちの一方の端に存在する電圧を表す個々の第2基準電圧値Viso2を、測定手段から受信する動作。
・前述の第1バッテリ電圧値VB1、第1基準電圧値Viso1、第2バッテリ電圧値VB2、および第2基準電圧値Viso2に基づいて、前述の負端子絶縁抵抗Rinおよび正端子絶縁抵抗Ripを計算する動作。
【0086】
電子制御処理手段C(s)はさらに、第1基準電圧値Viso1および第2基準電圧値Viso2を、予め定めた基準目標電圧Vに対して所定の近傍内に維持するという基準に基づいて、前述の第1正ブランチスイッチングデューティサイクル値dp1、第1負ブランチスイッチングデューティサイクル値dn1、第2正ブランチスイッチングデューティサイクル値dp2、および第2負ブランチスイッチングデューティサイクル値dn2を決定するように構成される。
【0087】
実装オプションによれば、システムの前述の測定手段は、電子デバイス1の測定回路17(既に数回言及した)と、バッテリ電圧測定回路とを備える。
【0088】
一実施形態によれば、電子システム10はさらに、電子制御処理手段からデジタル論理駆動信号を受信し、前述の正ブランチスイッチングデューティサイクルdおよび負ブランチスイッチングデューティサイクルdによってそれぞれ特徴付けられた予め定めた変調に従って、個々の物理的駆動信号を生成し、第1スイッチング回路16および第2スイッチング回路15に提供するように構成された変調器(例えば、図3図4に示す)を備える。
【0089】
実装オプションによれば、前述の物理的駆動信号は、パルス幅変調(PWM)タイプの変調で変調される。
【0090】
実装オプション(図1にも示す)によれば、システムは、正ブランチスイッチングデューティサイクルdを有する第1駆動信号に従って、2つの状態のうちのいずれか一方をとるように構成された第3スイッチングユニット(例えば、第3スイッチSWCを備える)を含む追加の第3スイッチング回路18と、前述の第3スイッチングユニットに対して直列に配置された第1サンプル抵抗RSWCとを備える。第3スイッチングユニットは、第1デバイス端子11と、通電された電気装置の負端子21との間に配置される。
【0091】
一実施形態によれば、電子システム10は、(図1Bに示すような)集積回路によって実装される。
【0092】
いくつかの可能な実施形態によれば、電子システム10は、前に示した実施形態のいずれか1つによる絶縁抵抗測定方法を実行するように構成される。
【0093】
測定方法およびシステムの追加の実装例に関して、関係する種々の量の間の関係を強調することを目的とした説明的な数学的議論とともにより正確な詳細を以下に示す。
【0094】
説明的な概要の目的のため、関係する量を個々の頭字語を使用して以下に示すことがある。これに関して、頭字語の詳細な意味および、これらが参照する量または実体は、本説明の前の部分で既に示されており、より包括的な定義についてはそれを参照することに留意する。
【0095】
上述したように、本方法は、絶縁損失(LOI:Loss of Insulation)を測定すること、即ち、接地(例えば、バッテリが搭載されている車両のシャーシの基準電圧)に対するバッテリの極の絶縁抵抗Rip,Rinを測定することを目的とする。
【0096】
ここで説明する例では、解析が実行される回路を図1に示しており、特に、2つの測定ブランチ(正ブランチと負ブランチ)を含む絶縁抵抗測定デバイスの2つの部分を示している。
【0097】
正ブランチ(以前は「第1スイッチング回路16」とも定義される)は、正ブランチスイッチ抵抗Rswpと並列に配置され、正ブランチデューティサイクルdで開閉するように切り替え可能な正ブランチスイッチSWPを備える。
【0098】
負ブランチ(以前は「第2スイッチング回路15」とも称される)は、正ブランチスイッチ抵抗Rswnと並列に配置され、負ブランチデューティサイクルdで開閉するように切り替え可能な負ブランチスイッチSWNを備える。
【0099】
必要に応じて、この例では、負ブランチはさらに、測定回路17を備え、これは、この実装オプションでは、第2スイッチング回路15と並列に配置される(以下に報告されるものと完全に類似した検討事項が、当業者は容易に理解されるように、測定回路が第1スイッチング回路16と並列に配置される代替の実装オプションにおいても準用して適用される)。
【0100】
図1から容易に推測できるように、スイッチSWP,SWN,SWIがオープン状態である場合、回路は、バッテリの各極から車両のシャーシまでの抵抗経路(正極についてはRip、負極についてはRin)を供与する。
【0101】
スイッチSWIを閉じることを想定すると、2つのスイッチSWPまたはSWNのうちの一方が閉じられた場合、正極/負極とシャーシとの間の抵抗経路は、切り替えられる抵抗Rkp、Rknによって大きく変更される。
【0102】
上述のシナリオでは、抵抗Risoに異なる電圧を発生させる。こうした電圧値は、例えば、アナログデジタルコンバータADCによって読み取られ、こうして測定された電圧値は、未知数Rip,Rinにおける連立方程式を解くために使用される(既に上述したように、そして以下に示すように)。
【0103】
2つのスイッチSWPまたはSWNの一方が閉じている場合、コンバータADCによって取得される基準電圧Visoは、回路パラメータおよび外部負荷(Rip,Rin,Cip,Cin)に依存する動態に依存して変化する。
【0104】
負ブランチでは、等価抵抗Rnsが、スイッチSWNのデューティサイクルに依存して定義される。
【0105】
【数6】
【0106】
パラメータdは、スイッチSWNのデューティサイクルであり、Rswnは、負スイッチの等価抵抗である。
【0107】
負側の合計コンダクタンスは、RnsとR+Risoとの間の並列によって与えられる。
【0108】
【数7】
【0109】
パラメータPを次のように定義するのが便利である。
【0110】
【数8】
【0111】
正ブランチでは、等価抵抗Rpsが、スイッチSWPのデューティサイクルに依存して定義される。
【0112】
【数9】
【0113】
パラメータdは、スイッチSWPのデューティサイクルであり、Rswpは、正スイッチの等価抵抗である。
【0114】
正側の合計コンダクタンスは、Rpsの逆数で与えられる。
【0115】
【数10】
【0116】
図1の回路を解くと、電圧Visoは、下記の式で求められる。
【0117】
【数11】
【0118】
ここで、方程式の未知数は、それぞれ絶縁抵抗Rip、RinのコンダクタンスGip、Ginである。
【0119】
2つの未知数が存在すると、2つの独立した方程式を記述する必要がある。
【0120】
既に上述したように、本方法によれば、これは、前回の式を、それぞれが回路の個々の動作点および個々の動作条件を参照する2つの異なる式に明確に記載することによって得られる。
【0121】
実装オプションによれば、第1動作点(動作点1)は、Gp1とGn1が計算できるデューティサイクル値のペア(dp1,dn1)を設定することによって定義される。
第2動作点(動作点2)は、Gp2とGn2が計算できるデューティサイクル値のペア(dp2,dn2)を設定することによって定義される。
【0122】
2つの独立した方程式を記述するには、下記のような基準が採用される。
【0123】
【数12】
【0124】
その結果、下記の連立方程式が得られる。
【0125】
【数13】
【0126】
未知数GipとGinの解は下記に示す。
【0127】
【数14】
【0128】
但し、下記の制約を伴う。
【0129】
【数15】
【0130】
ここでは、意味のある解を見つけるために値VBMin,VisoMinが設定される。
【0131】
例えば、下記の値は、現実的で実行可能な解が得られる状況を提供する。
【0132】
【数16】
【0133】
絶縁損失の測定時間は、既知の手法において、通常は極めて遅く(例えば、最大30秒になる場合がある)、DCバス容量に依存しており、よってこうした既知の手法の主な欠点の1つであることに留意する。
【0134】
有利なことに、本方法によって提案される解決策は、測定時間を著しく短縮する。理由は、関連する安定化時間を待機する代わりに、絶縁電圧値(または基準電圧)を設定するためである。
【0135】
さらに、有利なことに、この方法は、動的かつ反復的に動作し、
両方の測定ブランチのスイッチが個々のデューティサイクルで制御され、正ブランチおよび負ブランチの抵抗を変調し、絶縁電圧(即ち、基準電圧)Visoの動的な定常状態に到達する。
【0136】
有利なことに、この方法は、2つの異なるデューティサイクルを使用することを含み、
互いに独立して制御され設定できるため、制御方策に2つの自由度を提供し、これにより、応答時間を高速化でき、測定精度を改善できる。
【0137】
上に示した式を与えると、絶縁抵抗は、ここで検討される実施形態に従って、図2に示すステップに従って求められる。
【0138】
連立方程式の解を求めるために。
【0139】
【数17】
【0140】
回路の2つの独立した動作点(添字1,2でマークしている)を識別することが適切である(既に上述したように)。
【0141】
この実施形態では、図3および下記の表1に示される内容に従って、測定は2つのステップで実行される。
【0142】
【表1】
【0143】
この実施形態の実装オプションを図3に示す。
【0144】
「アイドル」状態から開始して、測定が開始されると、最初に下記の変数が初期化される。
【0145】
【数18】
【0146】
ここで、
・変数firstTimeは、アルゴリズムが初めて開始されるかどうかを示す(例えば、上記で使用された規則によれば、値1は、アルゴリズムが初めて開始されるフェーズにいることを示し、値0は、アルゴリズムが既に開始されて実行中のフェーズにいることを示す)。
・Viso1は、起動時にサンプリングされたVisoの値に等しい。
・この例では、デューティサイクル値dp1,dn1は、正スイッチがクローズし、負スイッチがオープンして開始するように設定される(同様に、この結果に影響を与えることなく、逆の組合せを選択できることは理解されよう)。
【0147】
次のステップは、下記の条件を評価し、下記の論理サイクルを実行する。
【0148】
【数19】
【0149】
電圧Vは、絶縁電圧Visoの基準目標電圧である。
【0150】
図1の回路によれば、正ブランチデューティサイクルが負ブランチデューティサイクルよりも大きい場合、絶縁電圧Visoは増加し、それ例外は前回の状態に対して減少する。
【0151】
こうして、目標電圧Vは、前回の状態に対して反対方向に進むように設定される(上記の「if else」構文で説明したように)。こうした論理およびこうした基準を用いて絶縁電圧Viso1の発散傾向が回避される。
【0152】
前回の状態に対する電圧変化ΔVisoは、時間および精度の要求に基づいて選択され、事前に定義される。
【0153】
満足できることが証明された実装オプションによれば、電圧変動ΔVisoは100mVオーダーの大きさで選択され、典型的な特定の例によれば、100mVである。
【0154】
目標電圧Vは、コントローラ、制御プロセッサ、または制御デバイス(前述の「電子制御処理手段」に含まれる)の入力に送信される。
【0155】
そして、この方法は、コントローラによって検出された誤差eを誤差閾値Eと比較するステップを含む。誤差の絶対値が誤差閾値より小さい場合、即ち、|e|<Eの場合、そして、変数firstTimeの状態が1に等しいと評価された場合(アルゴリズムの最初の始動フェーズにあるため)、第1動作点は、絶縁電圧(即ち、基準電圧)Visoおよびバッテリ電圧Vをサンプリング(即ち、測定)することによって特定される。
【0156】
こうして、第1動作点は、下記データによって記述される。
【0157】
【数20】
【0158】
ここで第1動作点が見つかったため、変数firstTimeは0に設定される。
【0159】
次のステップは、上述したステップとかなり類似する。唯一の相違点は、変数firstTimeが今回(およびその後も)0であることをアルゴリズムが確認した場合、第2動作点は、絶縁電圧(即ち、基準電圧)Visoおよびバッテリ電圧Vをサンプリング(即ち、測定)することによって得られる。
【0160】
こうして第2動作点は、下記データによって記述される。
【0161】
【数21】
【0162】
2つの動作点の特定後に、前に示した式を用いて、回路パラメータ(Gn1,Gn2,Gp1,Gp2)の計算が実行される。
【0163】
【数22】
【0164】
最後に、絶縁コンダクタンスが計算される(従って、当然ながら絶縁抵抗はコンダクタンスの逆数として)。
【0165】
【数23】
【0166】
続いて、絶縁抵抗の連続測定値を取得するために、動作点1を動作点2に置換して反復的に続行し、後続の反復サイクルのための新しい動作点1を取得する。
【0167】
【数24】
【0168】
一実施形態によれば、上で説明したアルゴリズムおよび方法は、負フィードバックを備えた閉ループシステム(例えば、図4に図形化したもの)によって実行される。このシステムは、下記のもので構成される。
・コントローラ(即ち、プロセッサまたは制御デバイス、即ち、補償器)C(s)。
・第1および第2スイッチング回路の正SWPスイッチおよび負SWNスイッチを制御するように構成された変調デバイス(変調器)。
・コントローラおよび変調器が動作する完全な回路(LOI回路)は、例えば、図1に示す回路(電子デバイス1およびバッテリ2を含む)である。特に、電圧源Vは、外部擾乱として図形化できる。
【0169】
いくつかの可能な実装オプションに従って、変調器は、種々のアプローチに従って設計できる。
【0170】
典型的な実装オプションによれば、周知のパルス幅変調(PWM)技術が使用され、入力信号d,dは、固定した周波数(例えば、典型的には1kHz)を備えた矩形波のデューティサイクルである。
【0171】
実装オプションによれば、周波数およびパルス幅の混合変調が採用される。
【0172】
実装オプションに従って、コントローラC(s)および変調器は、下記の「if-else構文」を用いて行われる。
【0173】
【数25】
【0174】
図1に示すLOI回路によれば、電圧Visoを増加させるために、正スイッチSWPが閉じられ、負スイッチSWNが開き、一方、電圧Visoを減少させるために、正スイッチSWPが開いて、負スイッチSWNが閉じる。
【0175】
コントローラは、目標電圧Vと基準電圧(または絶縁電圧)Visoの間の誤差を最小化することを目的とする。
【0176】
この目的のために、Vは、Visoと瞬間ごとに比較される(典型的には、1ミリ秒の時間粒度)。
【0177】
がVisoより大きい場合、コントローラは、正スイッチを閉じて負スイッチを開くことによって、電圧Visoを増加させる。
【0178】
がVisoより小さい場合、コントローラは、正スイッチを開いて負スイッチを閉じることによって、電圧Visoを低下させる。
【0179】
この実施形態では、デューティサイクルd,dは、特定の間隔または時間ウインドウ内の信号(波)D,Dの平均値として計算される。デューティサイクルが計算される時間ウインドウは、目標電圧Vと絶縁電圧Visoの間の誤差が誤差閾値Eより小さい場合に開始する。
【0180】
例えば、1秒の時間ウインドウおよび1ミリ秒の計算周期の場合、デューティサイクル値d,dは、次のように計算される。
【0181】
【数26】
【0182】
ここで、N=1000であり、D(k),D(k)は、1ミリ秒の各計算タスクで設定されるD,Dの値である。
【0183】
図5は、ある実装例を示しており、目標電圧V、デューティサイクルが計算される時間ウインドウの開始瞬間、および時間ウインドウの長さが調整され、所望の精度を得ている。
【0184】
下記の表2は、本方法のアプリケーションのシミュレーションからの結果を示す。
【0185】
【表2】
【0186】
既に上述したように、本方法の利点のうちで低い計算コストおよび速度、即ち、極めて短い応答時間(典型的には<5秒)を挙げることができる。
【0187】
気付いたように、本発明の目的は、絶縁測定方法、関連する測定デバイスおよび測定システムの特徴によって完全に達成され、これらは以前に言及し議論した利点を習得することおよび技術的課題を解決することを可能にする。
【0188】
当業者は、上述の絶縁測定方法および関連する測定デバイスおよび測定システムの実施形態に対して変更および適合を行うことができ、あるいは、下記請求項の範囲を逸脱することなく、不測のニーズを満たすために、要素を機能的に等価な他の要素と置換できる。
【0189】
1つの可能性のある実施形態に属するものとして上述した特徴の各々は、説明した他の実施形態とは無関係に実装できる。
さらに、単語「備える、含む(comprising)」は、別の要素またはステップを排除するものではなく、冠詞"a"または"an"は複数を排除するものではないことに留意されよう。
開示のより明確化のために種々の部分を適切に強調表示する必要があるため、図は縮尺どおりではない。
図1
図2
図3
図4
図5
【外国語明細書】