(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088616
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】最適化された形状を有する外科用フライス工具
(51)【国際特許分類】
A61B 17/22 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
A61B17/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023212795
(22)【出願日】2023-12-18
(31)【優先権主張番号】10 2022 134 173.9
(32)【優先日】2022-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】521389815
【氏名又は名称】エースクラップ・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Aesculap AG
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 和久
(74)【代理人】
【識別番号】100230640
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 望
(72)【発明者】
【氏名】ロンプ,レオ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】切削効率を向上させながら、あらゆる方向での穴あけ加工と穏やかなフライス加工の両方を可能にする外科用フライス工具を提供する。
【解決手段】外科用フライス工具(1)は、工具容器に連結するためであって、フライス工具(1)の回転軸(6)に沿って延びる工具シャフト(2)と、外周にブレード(8)が配置された遠位フライスヘッド(4)と、を備え、フライスヘッド(4)には、正確に3つのブレードが配置され、フライスヘッド(1)のブレード(8)は、回転軸(6)に対して可変ブレード半径を有して回転軸(6)の周りで螺旋状に延び、正のねじれ角(β)または正のピッチ(12)を有し、ブレード(8)はそれぞれ、逃げ角(α;α2)とブレード(8)の間にチップフルート(14)とを有し、ブレード半径は、回転軸(6)に沿ってブレード半径の最大値から出発して遠位方向に減少し、特に連続的に減少する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織、特に骨組織または軟骨組織をフライス加工するための外科用フライス工具(1)であって、
工具容器に結合するためであって、前記フライス工具(1)の回転軸(6)に沿った近位工具シャフト(2)と、
外周にブレード(8)が配置された遠位フライスヘッド(4)と、を備え、
前記フライスヘッド(4)には、正確に3つのブレードが配置され、
前記フライスヘッド(1)の前記ブレード(8)は、前記回転軸(6)に対して可変ブレード半径(10)を有して前記回転軸(6)の周りで螺旋状に延び、正のねじれ角(β)または正のピッチ(12)を有し、
前記ブレード(8)はそれぞれ、逃げ角(α;α2)と前記ブレード(8)の間にチップフルート(14)とを有し、
好ましくは、前記ブレード半径(10)は、前記回転軸(6)に沿って前記ブレード半径(10)の最大値から出発して遠位方向に減少し、特に連続的に減少する、外科用フライス工具(1)。
【請求項2】
前記ブレードの1つのブレード(8.1)は、前記回転軸まで延びて、遠位ブレード半径(10)がゼロの遠位先端(16)を形成し、
残りのブレードは、不連続ブレード(8.2)として構成され、前記回転軸(6)の方向において前記遠位先端(16)までの距離(18)とブレード半径(10)とがゼロよりも大きい、請求項1に記載の外科用フライス工具(1)。
【請求項3】
前記回転軸(6)の方向における前記遠位先端(16)までの前記不連続ブレード(8.2)の距離は、それぞれの場合において同じである、または
前記遠位先端(16)までの前記不連続ブレード(8.2)の距離は、前記回転軸(6)の方向において、前記ブレード(8)の数の段階的な増加を達成するために、異なる、請求項2に記載の外科用フライス工具(1)。
【請求項4】
前記ブレード(8)のすくい角(γ)及び/または逃げ角(α;α2)は、前記ブレードの延在とともに変化する、請求項1から3のいずれか一項に記載の外科用フライス工具(1)。
【請求項5】
前記回転軸(6)まで延びる前記ブレード(8.1)の前記すくい角(γ)は、前記遠位先端において最小-5°及び/または最大+10°、特に正確に0°である、請求項1から4のいずれか一項に記載の外科用フライス工具(1)。
【請求項6】
先端から間隔を有する残りの部分における前記ブレード(8)の前記すくい角(γ)は、最小0°及び/または最大+15°、特に正確に+10°である、請求項5に記載の外科用フライス工具(1)。
【請求項7】
前記回転軸(6)まで延びる前記ブレード(8.1)の逃げ角(α)は、前記遠位先端(16)において、最小+10°及び/または最大+25°、特に正確に+23°である、請求項1から6のいずれか一項に記載の外科用フライス工具(1)。
【請求項8】
前記先端(16)から最小2mm及び/または最大3mm、特に2.6mmの距離における前記ブレード(8)の逃げ角(α)は、最小+10°及び/または最大+25°、特に正確に+18°である、請求項1から7のいずれか一項に記載の外科用フライス工具(1)。
【請求項9】
連続逃げ角(α2)は、最小+15°及び/または最大+40°、特に正確に+25°である、請求項1から8のいずれか一項に記載の外科用フライス工具(1)。
【請求項10】
前記ブレード(8)のねじれ角(β)は、最小+15°及び/または最大+20°、特に正確に+17.4°である、及び/または、
前記ブレード(8)のピッチ(12)は、最小40mm及び/または最大80mm、特に60mmである、請求項1から9のいずれか一項に記載の外科用フライス工具(1)。
【請求項11】
前記ブレード(8)は、前記回転軸(6)に沿って前記工具シャフト(2)まで近位方向に引かれて、特に前記工具シャフト(2)に直接合流する、請求項1から10のいずれか一項に記載の外科用フライス工具(1)。
【請求項12】
前記ブレード(8)のそれぞれは、2つの逃げ面を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の外科用フライス工具(1)。
【請求項13】
前記工具シャフト(2)を起点として、前記ブレード半径(10)は、前記回転軸(6)に沿って遠位方向において、前記ブレード半径(10)の最大まで連続的に増加し、そのあと連続的に減少し、一種のベリー形状(belly-shaped)を有する半径方向の外側輪郭を形成する、請求項1から12のいずれか一項に記載の外科用フライス工具(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、組織、特に骨組織または軟骨組織を(回転)フライス加工/機械加工するための外科用フライス工具に関する。フライス工具は、工具容器に結合するために、フライス工具の回転軸または縦軸に沿って近位シャフト/工具シャフト/クランプ部分を有し、さらに、遠位フライスヘッドを有し、遠位フライスヘッドの外周の上には、フライス加工の機能を果たすブレードが配置されている。
【背景技術】
【0002】
ローズヘッドバー(rose head burs)は一般に、骨の一般的なフライス加工用の標準的なバーとして知られている。ブレードの数が多く、通常は10枚前後であるため、切断する組織、特に骨組織を加工する際、比較的スムーズに加工できる。しかし、このようにブレードの数が多いということは、通常、フライス工具が平均よりも加熱されることを意味し、その結果、幾何学的に小さいチップフルートはすぐに組織で詰まってしまう。さらに、ブレードはすべてフライス工具の遠位先端で収束するため、先端は切断に適しているというより鈍い。さらに、先行技術のローズヘッドバーでは、後方/近位ブレード端とフライス工具の工具シャフトとの間に(移行)領域があり、この領域は切削機能を果たさないため、発熱の増加につながり、同時に、可能な加工方向を制限する。言い換えれば、フライスヘッドの近位整列領域は、切削加工用に構成されておらず、例えば、フライスカッターを横方向に移動させたときに、組織外への回転軸の方向におけるフライスカッターの一種の後退を抑制する。
【0003】
先行技術によるフライス工具の別の例は、例えば、2つのブレードのみを有し、それによって、少なくともより大きなチップフルートが形成され、大きなチップフルートは少なくとも非常に詰まりにくい。しかし、ここでの欠点は、スムーズな加工のために必要な支持エッジが追加されることである。支持エッジは、個々のブレードを適宜支持するために、ブレードの間に配置される。支持エッジはワークピースを鈍くこすり、不必要で不利な熱を発生させる。この両刃フライスカッターもローズヘッドバーと同様に、ブレードとフライス工具の(工具)シャフトとの間に鈍い領域を有し、前述のローズヘッドバーと同じ欠点を有する。両刃フライスカッターの遠位先端に収束するブレードが2つのみであるということは、少なくともこれらのブレードと、さらに先端を、ローズヘッドバーの刃よりもアグレッシブまたは切削しやすい(より顕著な加工切れ刃を有する)構成にできることを意味する。よりアグレッシブな先端は、フライス工具を非常によくセンタリングするため、両刃フライスカッターは、加工するワークピースや骨を長手方向にプランジ加工しなければならない穴あけのような加工に理想的である。しかし、前述の特性により、両刃フライスカッターにおいて、穴あけ機能からフライス機能に切り替えて、縦軸または回転軸を横切る特定方向にフライス加工を継続することは困難である。
【発明の概要】
【0004】
したがって、本開示の目的は、従来技術の欠点を回避するか、少なくとも低減することであり、特に、柔軟な使用を保証し、可能な限り低い発熱を達成するために切削効率を向上させながら、(特に急な(hard)移行なしで)あらゆる方向での穴あけ加工と(「穏やかな」)フライス加工の両方を可能にする外科用フライス工具を提供することである。もうひとつの仕事は、「組織」チップをうまく除去し、スムーズな加工を確保することである。別の部分的な目的は、組織への正確な挿入を可能にするフライス工具のセンタリング機能を提供することである。
【0005】
本開示の目的は、請求項1の特徴によって、本発明による汎用外科用フライス工具に関して解決される。
【0006】
したがって、本発明の基本的な考え方は、最適化された形状の外科用フライス工具を提供することである。本開示によるフライス工具(好ましくは「3枚刃カッター」とも呼ばれ得る)は、3つのブレードを有する遠位フライスヘッドによって特徴付けられ、特に、正確に3つのブレードと、その間に位置する逃げ角/逃げ角(clearance angle)及びチップフルート/チップ溝とから構成される。3つのブレード、特に工具シャフトまでほぼ直接または直接延びるブレードと、正のねじれ角(好ましくは対応する切断角度を有する)との組み合わせは、存在する逃げ面が小さいこと、及び、例えば両刃フライス工具の場合のように、さらなる支持面を必要としないことを保証する。その結果、(組織を有する)フライス工具のすべての(潜在的な)接触面が切断するように構成され、これは非常に低い発熱をもたらす(特に摩擦熱が発生しないか、少なくとも最小限の摩擦熱しか発生しないため)。実際には鈍い摩擦を発生させる接触面はないが、フライスヘッドの接触面はすべて切削するように構成されているため、フライス工具の切削効率を高めることができる。正のねじれ角により、チップフルートとブレードは、好ましくはほぼ完全にまたは完全に工具シャフトまで引き上げることができる。そのため、工具は実際に全方向にフライス加工することができる。この幾何学的な構成はまた、本開示のフライス工具のチップ除去に有利な大きなチップフルートをもたらす。
【0007】
すなわち、本開示によれば、組織、特に骨組織または軟骨組織を(回転)フライス加工/機械加工するための外科用フライス工具は、工具容器に結合するためのものであって、フライス工具の回転軸/縦軸に沿った近位工具シャフト/クランプ部分と、外周にはブレードが配置された遠位フライスヘッドとを備える。正確に3つのブレードはフライスヘッドの上に配置され、(回転軸の近位方向で見た場合)フライスヘッドのブレードは回転軸に対して可変ブレード半径で回転軸の周りに螺旋状に延び(例えば、近位方向で見ると、アルキメデスの螺旋に似ており、ブレードの刃先が螺旋を定義している)、正のねじれ角または正のピッチを有する。ブレードは、ブレードの間に逃げ角とチップフルートも有する。ブレード半径もまた、好ましくは、回転軸に沿ってブレード半径の最大値から出発して遠位方向に減少し、特に連続的に減少する。基本的に、工具は、縦軸に沿って、クランプ機能を有する近位工具シャフトと、組織処理用の近位部分との2つの部分に分割される。
【0008】
したがって、フライス工具の回転軸または縦軸は、対応する工具容器に連結されクランプされたとき、フライス工具がその周りを回転する直線軸となる。
【0009】
ブレード半径は、回転軸を横切る方向(半径方向の切削先端まで)において、回転軸からに決定される。例えば、回転軸がX方向を定義する場合、ブレード半径は直交するY方向を定義し、その結果、切削半径は半径方向における刃先の「先端」を定義する。完全を期すため、ブレード半径は、必ずしも回転軸のすべての位置におけるブレードに対して同じである必要はないことに留意すべきである。例えば、回転軸の「X位置」において、第1ブレードは第1ブレード半径を有し、第2ブレードは異なるブレード半径を有してもよい。しかし、特に、すべてのブレード(遠位(工具)先端の領域を除く場合がある)は、スムーズな加工を確保するために、回転軸の方向における各X位置で同じブレード半径を有する。
【0010】
本件の場合、「螺旋状」という用語は、回転軸の方向における遠位から近位への正面視で、個々のブレード(先端)が、少なくとも遠位先端の方向において螺旋形状を有して/螺旋状に/螺旋状な形状を有して収束することを意味し、これによって、ブレード半径において一定または連続的な減少が必ずしも起こる必要はなく、すなわち、螺旋の形状は、ある螺旋面から次の螺旋面まで必ずしも同様の距離を有する必要はない。特に、ブレードは近位に向かって螺旋形状を有して収束してもよい。したがって、ここでの決定的な要因は、フライスヘッドが回転軸に沿って一定のブレード半径を有するのではなく、ブレードが変動するブレード半径を有するということである。特に、ねじれ角やピッチは刃先の長さを増加させ、切削工程を最適化する。しかし、特に、これにより、刃先を工具シャフトの直前まで、または直接工具シャフトまで引き寄せることができるので、半径方向(及び潜在的に軸方向)の接触面はすべてブレードとして構成され、こすれて不必要な熱を発生させることがない。
【0011】
有利な実施形態は従属請求項に記載されており、以下に特に説明する。
【0012】
好ましい実施形態によれば、フライスヘッドのブレードのうちの1つの(特に単一の)ブレードは、回転軸まで(直接)延び/走り、したがって、遠位ブレード半径がゼロの遠位先端を形成してもよく、残りのブレードは、不連続ブレードとして構成され、回転軸の方向においてから遠位先端までゼロより大きい距離と、ゼロより大きいブレード半径とを有する。その結果、回転軸に沿って連続する1本のブレードが、フライス工具の遠位先端を形成する。特に、このブレードは、平らな面に穴をあけるための支持点(またはセンタリング点)を形成し、これを起点として半径を徐々に拡大するために、一種の単一の穴あけ先端(センタリング先端)を形成してもよい。したがって、フライス工具の先端はブレードの1つのみを形成し、そのブレードは回転軸まで走り、そこで先細りになっている。他の2つの刃は、手前で(先端の手前で)すでに不連続になっており、先端まで延びていないため、そこに多くのチップスペースができ、ひいては適切な切削工具の先端につながる。ドリル加工やフライス加工を行う場合、前述の工具先端は、フライス工具が問題なく組織に入ることができる一方でユーザによる送り方向の変更を妨げない程度に、工具をセンタリングする。そのため、3枚刃のフライス工具は、いわゆる「死角」を克服すること要することなく、あらゆる方向に自由にフライス加工を行うことができる。
【0013】
さらなる実施形態によれば、(回転軸の方向における、X方向と同様)不連続ブレードから遠位先端までの距離は、それぞれの場合において同じであってもよい。その結果、すべてのブレードは回転軸方向に平面を形成する。あるいは、不連続ブレードと遠位先端との間の距離は、好ましくは、回転軸の方向へのブレードの数の段階的な増加を達成するために、異なっていてもよい。フライス工具が組織内に入ると、ブレードは徐々に遠位側に組織に接触する。言い換えれば、不連続ブレードまたは非連続ブレードの先端までの距離が、同じである構成または(わずかに)オフセットされている構成を選択できる。
【0014】
好ましくは、ブレードのすくい角及び/または逃げ角は、最適なミリング結果を達成するために、ブレードにわたって変化(変動)してもよい。フライスヘッドを回転軸方向に異なる部分に分割し、それぞれの部分にすくい角または逃げ角を割り当てることで、それぞれの処理に最適な構成を設定できる。例えば、すくい角が遠位から近位に向かって増加する場合、幾何学的構造(機械的負荷能力に関しても)を最適に設定できるように、材料除去を遠位と近位で異なるように設定してもよい。あるいは、同じチップ除去を実現してもよい。言い換えれば、すくい角及び/又は逃げ角は、ブレードにわたって、特に全ての3つのブレードにわたって、好ましくは均一に、全ての3つのブレード(好ましくは先端を除く)のすくい角又は逃げ角が回転軸の各位置で同じになるように変化してもよい。
【0015】
さらなる実施形態によれば、回転軸まで(直接)延び、したがって遠位先端を形成する(特に正確に1つの)ブレードのすくい角は、(直接)遠位先端において最小-5°及び/または最大+10°、特に正確に0°であってよい。この構成は、組織へのプランジ(穴あけ)が容易で、フライス加工中に送り方向を効率的に変えられるという点で特に有利である。
【0016】
特定の実施形態によれば、先端から間隔を有する残りの部分におけるブレードのすくい角は、最小0°及び/または最大+15°、特に正確に+10°であってもよい。したがって、すべてのブレードのすくい角は、遠位先端から回転軸の方向(近位)に間隔を有する領域で変化し、特に0°から+15°の角度範囲にある。
【0017】
好ましくは、回転軸まで延びる(特に正確に1つの)ブレードの逃げ角は、遠位先端において、最小+10°及び/または最大+25°、特に正確に23°であってもよい。遠位先端におけるブレードのこのような幾何学的配置も、高い効率とそれに対応する良好な切削結果に有利である。
【0018】
特に、先端から2mm~3mm、好ましくは2.6mmの距離におけるブレードの逃げ角、特に全ての3つのブレードの逃げ角は、最小+10°及び/または最大+25°、特に正確に18°であってよい。
【0019】
好ましくは、遠位先端まで続く、または回転軸まで延びるブレードの連続逃げ角は、最小+15°及び/または最大+40°、特に正確に25°であってもよい。
【0020】
一実施形態によれば、(工具シャフトの領域におけるフライスヘッドでのブレードの近位始端から(遠位先端を画定する少なくとも1つのブレードを有する)ブレードの遠位端までのブレードの、特に全てのブレードのねじれ角は、最小15°及び/または最大20°、特に正確に17.4°であってもよい。代替的または付加的に、ブレードのピッチは、最小40mm及び/または最大80mm、特に60mmであってもよい。
【0021】
さらなる実施形態によれば、ブレードは、回転軸に沿って工具シャフトまで近位方向に引かれてもよく、特に工具シャフトに直接合流してもよく、または、少なくとも、回転軸の方向において工具シャフトに向かってフライスヘッドの寸法の最大20%、好ましくは最大10%の距離まで延びるか、またはそこから離間していてもよい。
【0022】
特に、各ブレードは正確に2つの逃げ面を有してもよい。あるいは、ブレードが正確に1つの逃げ面を有してもよい。あるいは、ブレードは複数の逃げ面を有してもよい。言い換えれば、フライス工具はブレード1枚につき2つの逃げ面を有してもよいが、これより多いまたは少ない逃げ面を有してもよい。
【0023】
特に、3つのブレードは回転対称であるが、遠位先端の部分は例外であってもよく、その場合は1つのブレードのみが回転軸まで延びる。言い換えれば、フライスヘッドは、好ましくは、少なくとも近位領域において、特に全体的に回転対称(3つの等しい部分を有する)となるように構成される。
【0024】
好ましくは、工具シャフトを起点として、ブレード半径は、回転軸に沿って遠位方向において、ブレード半径の最大まで連続的/着実に増加し、その後連続的に減少してもよい。ある意味、これはベリー(berry)やバラの形を模している。
【0025】
特に、回転軸のある位置におけるシース半径は、少なくとも先端部以外のフライスヘッドの領域(すなわち、場合によっては先端部を除く)において、すべてのブレードで同じであってもよい。
【0026】
フライス工具は、特にローズヘッドバーのように構成されてもよく、特にそのような外側輪郭を有してもよい。
【0027】
好ましくは、工具シャフトとブレードとの間のフライスヘッドに移行部を設けてもよく(回転軸の方向から見て)、移行部は、好ましくは、カップ状または部分的に球状の外面を有する。
【0028】
特に、フライスヘッドまたはブレードの直径は6mmであってもよい。
【0029】
好ましくは、フライス工具のうち、組織内に入るときに組織と(最初に)接触する接触面、及びフライス加工するときに組織と接触する接触面は、すべて刃先である。これにより、フライス工具が組織と擦れる不利を避け、接触面はすべて刃先のみを有する。
【0030】
特に、ブレードは円周上に均等に配置されている。
【0031】
特に、フライス工具は、フライスヘッドの以下の寸法または角度を有してもよく、フライスヘッドは6mmの直径を有する。
【0032】
【0033】
「最適な組み合わせ」の欄には、本開示のフライス工具の効率に関して特に最適な値が記載されている。「最小値」または「最大値」の欄は、フライス工具がその機能を十分に果たすことができる限度を定義している。
【0034】
特に、回転軸に対する遠位先端におけるブレードの接線の角度は、+60°から+80°の間、特に+70°である。
【0035】
以下、本開示について、添付の図を用いて好ましい実施形態を参照しながらより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本開示の好ましい実施形態による外科用フライス工具の側面図である。
【
図2】
図1のフライス工具のフライスヘッドを通るA-A断面図である。
【
図3】
図1及び
図2のフライス工具のフライスヘッドの詳細部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図は概略的なものであり、本発明の理解を助けるためのものである。同じ要素には同じ参照符号が付けられている。
【0038】
図面は、本開示による外科用フライス工具1(以下、フライス工具とのみ記載する)の好ましい実施形態を異なる図で示している。
【0039】
本実施形態のフライス工具1(回転工具として)は、骨組織のフライス加工に用いられる。フライス工具1は、本質的に2つの機能部分に、すなわち、一方で近位(工具)シャフト4(以下、シャフトとのみ記載する)に、他方で遠位フライスヘッド4に分割されている。本実施形態では、「近位」及び「遠位」という用語は、フライス工具1の回転軸6に関連して使用され、それに応じて工具を操作するユーザに関連して見られ、遠位フライスヘッド4は、ユーザから遠ざかる方向を向き、それに対応してユーザから遠位に配置される。
【0040】
フライス工具1の回転軸6または縦軸に沿った近位工具シャフト2は、フライス工具を工具容器に結合する機能を果たし、クランプシステム、例えばハンドピースのクランプシステムにクランプされるために本実施形態では円筒形である。
【0041】
遠位フライスヘッド4はフライス加工の機能を果たし、その(半径方向の)外周に対応するブレード8を有し、ブレード8は回転軸6の周りを回転する。
【0042】
先行技術とは対照的に、フライスヘッドは所定の数のブレード8、すなわち正確には3つのブレード8を備えている。この3つのブレード8の数は、以下に詳しく説明するように、静かにフライス加工を進めることと、一方では非常に低い発熱のみを有する効率的なブレード機能との間の最適な妥協点である。
【0043】
フライスヘッド1のブレード8は遠位方向で回転軸6の周りを螺旋状に回り、回転軸6に対して可変ブレード半径10を有する。ブレード8はさらに、正のねじれ角βまたは正のピッチ12を有する。これは、ブレード8がそれぞれ逃げ角αを有し、ブレード8間に逃げ角α2を有するとともに、フライス加工された骨組織を適宜除去するためにチップフルート1を有することを意味する。また、近位方向の正面から見て、刃先(すなわち、ブレードの先端)は、減少するブレード半径10とともに回転軸6の周囲を螺旋状に延びているとも言える。
【0044】
さらに、ブレード半径10は、遠位方向におけるブレード半径10の最大値から回転軸6に沿って連続的に減少する。その結果、フライスヘッド4は一種のバラの形やヘーゼルナッツの形を形成する。また、フライス工具は、ローズヘッドバーのように構成された上で、ブレードの数を3つのブレード8に減らし、以下に説明するように、遠位先端16または遠位先端の部分が特別に構成されたものともいえる。この幾何学的デザインにより、既存の逃げ面が小さくなり、さらなる支持面が不要になる。その結果、(最初に)組織に接触するフライス工具1の全ての接触面が切断するように構成できる。
【0045】
3つのブレード8のうち、2つのブレード8.2は、(第1)ブレード8.1とは異なるように形成されている。具体的には、ブレード8のうちの1つの(連続した)ブレード8.1が回転軸8まで延び、その結果、遠位ブレード半径10がゼロの遠位先端16を形成する。この遠位先端は、骨組織の上に置かれると、骨組織に入るためのセンタリング点として機能できる。他の残りのブレードは、不連続ブレード8.2として構成され、回転軸の方向から見て、遠位先端16から距離18で終わっている。さらに、これらの不連続ブレード8.2は、遠位領域でゼロより大きいブレード半径10を有する。これは、(回転軸6上に位置する)遠位先端16の領域にも大きなチップスペースを設けることができることを意味する。この実施形態では、不連続ブレード8.2と遠位先端16との間の距離18は、いずれの場合も同じである。
【0046】
さらに、すくい角γと逃げ角α、及びすべての3つのブレード8(または半径方向における切刃)の逃げ角α2は、ブレード8の延在とともに変化する。
【0047】
この特定の実施形態では、ブレード8.1の先端16におけるすくい角γは0°であるが、先端以外のブレード8の残りの部分については(近位側に)+10°まで増加する。
【0048】
遠位先端16における逃げ角αは+23°であり、遠位先端から2.6mm離れたところで逃げ角αは18°に減少する。
【0049】
連続逃げ角α2は25°であって、ねじれ角βは17.4°である。
【0050】
(連続)ブレード8.1の遠位切れ刃(またはその遠位接線)は、回転軸6に対して70°の角度、またはそれ自身と回転軸6との間に70°の角度を有する。
【0051】
さらに、それぞれのブレード8には、正確に2つの逃げ面がある。
【0052】
ブレード8は、フライスヘッド4の近位部分において同じ(またはそれぞれ回転対称な)デザインを有し、近位領域においても切削機能を提供し、材料に前進する際に回転軸6の方向にフライス状に再び引っ込めることができるように、工具シャフト2にほぼ直接合流する。
【0053】
特に
図3に見られるように、(回転軸6から見て)ブレード半径10は曲線で変化し、フライスヘッド4の近位部分では、ブレード半径は最初に最大ブレード半径10(回転軸6の方向でほぼ中央)まで増加し、その後再び連続的に減少する。
【0054】
ブレード8は三角形の切れ刃を有し、正のねじれβで回転軸6に巻き付いている。
【0055】
特に、刃先は、可能な限り耐久性があり鋭利なブレード8を提供するために、特別に硬化させられたものであってもよい。
【0056】
この実施形態では、工具シャフト2は、円筒形の外側輪郭を有し、当然、形状に適合した軸方向の固定とトルクのより良い伝達との両方を実現するために、回転軸6の方向の溝が工具シャフトに設けられてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 フライス工具
2 工具シャフト
4 フライスヘッド
6 回転軸
8 ブレード
8.1 遠位先端のブレード
8.2 不連続ブレード
10 ブレード半径
12 ピッチ
14 チップフルート
16 遠位先端
18 (回転軸の方向において遠位先端までの)距離
α 逃げ角
α2 逃げ角(連続)
γ すくい角
β ねじれ角
【外国語明細書】