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特開2024-88622最適化された温度調整が可能なバッテリ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088622
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】最適化された温度調整が可能なバッテリ
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/654 20140101AFI20240625BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240625BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240625BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20240625BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20240625BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20240625BHJP
   H01M 50/103 20210101ALI20240625BHJP
   H01M 50/184 20210101ALI20240625BHJP
   H01M 50/342 20210101ALI20240625BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20240625BHJP
【FI】
H01M10/654
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/647
H01M4/66 A
H01M10/04 Z
H01M50/103
H01M50/184 A
H01M50/342 101
H01M10/0585
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023214248
(22)【出願日】2023-12-19
(31)【優先権主張番号】10 2022 134 057.0
(32)【優先日】2022-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】596107062
【氏名又は名称】フォルクスヴァーゲン アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】VOLKSWAGEN AKTIENGESELLSCHAFT
【住所又は居所原語表記】Berliner Ring 2, 38440 Wolfsburg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ベンヤミン ベデュアフティヒ
(72)【発明者】
【氏名】バスティアン シャー
(72)【発明者】
【氏名】アニシュ ガウシュ
(72)【発明者】
【氏名】マーヴィン チェク
(72)【発明者】
【氏名】メスト ユルトセヴェン
(72)【発明者】
【氏名】ナターシャ フォン アスペアン
【テーマコード(参考)】
5H011
5H012
5H017
5H028
5H029
5H031
【Fターム(参考)】
5H011AA02
5H011DD00
5H011FF02
5H012AA07
5H012BB01
5H017AA03
5H017AS10
5H017EE05
5H028AA05
5H028AA07
5H028CC05
5H028CC08
5H028CC11
5H029AJ12
5H029BJ22
5H029DJ02
5H029DJ03
5H029DJ05
5H029EJ01
5H029HJ12
5H029HJ20
5H031AA00
5H031AA09
5H031CC01
5H031EE01
5H031HH03
5H031KK01
5H031KK06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】自動車の電気トラクションモータを作動させるための電気エネルギが供給可能なバッテリを提供する。
【解決手段】バッテリ1は、ケーシング3内に配置された積層体4を有し、第1電極及び第2電極は、セパレータが中間に配置されて積層体に交互に配置されており、第1電極は、カバーに組み込まれた第1バッテリ極12aに電気的に接続され、第2電極は、カバーに組み込まれた第2バッテリ極12bに電気的に接続されており、第1電極及び/又は第2電極の基板は、関連するそれぞれ少なくとも1つの活物質層8の少なくとも1つの面に横方向突出部9aを形成し、第1電極の基板7の横方向突出部9a及び/又は第2電極5bの基板7の横方向突出部9aは、熱伝導性の伝導要素10に結合されており、少なくとも1つの伝導要素10は、カバーに接触しており、かつ/またはカバーの部分を形成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリ(1)であって、前記バッテリ(1)は、カバーと、前記カバー内に配置された、複数の第1電極(5a)および複数の第2電極(5b)を備えた積層体(4)とを有し、前記第1電極(5a)および前記第2電極(5b)は、それぞれ1つのセパレータ(6)が中間に配置されて前記積層体(4)に交互に配置されており、前記第1電極(5a)は、前記カバーに組み込まれた第1バッテリ極(12a)に電気的に接続されており、前記第2電極(5b)は、前記カバーに組み込まれた第2バッテリ極(12b)に電気的に接続されており、前記電極(5)は、それぞれ1つの導電性の基板(7)と、前記基板(7)の少なくとも一方の面に活物質層(8)とを有する、バッテリ(1)において、前記第1電極(5a)および/または前記第2電極(5b)の前記基板(7)は、関連するそれぞれ少なくとも1つの前記活物質層(8)の少なくとも一方の面に横方向突出部(9a)を形成し、前記第1電極(5a)の前記基板(7)の前記横方向突出部(9a)および/または前記第2電極(5b)の前記基板(7)の前記横方向突出部(9a)は、熱伝導性の伝導要素(10)に結合されており、少なくとも1つの前記伝導要素(10)は、前記カバーに接触しており、かつ/または前記カバーの部分を形成する、ことを特徴とする、バッテリ(1)。
【請求項2】
少なくとも1つの前記伝導要素(10)は、前記バッテリ極(12)の関連する1つに電気的に接続されている、ことを特徴とする、請求項1記載のバッテリ(1)。
【請求項3】
少なくとも1つの前記伝導要素(10)は、関連する前記バッテリ極(12)を含んでいる、ことを特徴とする、請求項2記載のバッテリ(1)。
【請求項4】
少なくとも1つの前記伝導要素(10)には、関連する前記バッテリ極(12)に電気的に接続されている第1部分要素(11)が含まれており、また前記第1部分要素(11)と前記カバーとの間の間隔を埋める、少なくとも部分的に電気絶縁性に、または高抵抗に作用する第2部分要素(15)が含まれている、ことを特徴とする、請求項2または3記載のバッテリ(1)。
【請求項5】
前記伝導要素(10)は部分的に、前記カバーの貫通開口部(13)に配置されている、ことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載のバッテリ(1)。
【請求項6】
前記伝導要素(10)には、前記カバーの前記貫通開口部(13)に配置された第1部分(15a)と、内側で前記カバーに接触する電気絶縁性にもしくは高抵抗に作用しかつ/またはガスの漏出に対してシールする第2部分(15b)と、が含まれている、ことを特徴とする、請求項5記載のバッテリ(1)。
【請求項7】
前記第1電極(5a)の前記基板(7)は、関連するそれぞれ少なくとも1つの前記活物質層(8)の面に長手方向突出部(9b)を形成しており、前記第1電極(5a)の前記基板(7)の前記長手方向突出部(9b)は、前記カバーの、隣り合う端面に組み込まれている前記第1バッテリ極(12a)に電気的に接続されており、かつ/または前記第2電極(5b)の前記基板(7)は、関連するそれぞれ少なくとも1つの前記活物質層(8)の面に長手方向突出部(9b)を形成しており、前記第2電極(5b)の前記基板(7)の前記長手方向突出部(9b)は、前記カバーの、隣り合う端面に組み込まれている前記第2バッテリ極(12b)に電気的に接続されている、ことを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載のバッテリ(1)。
【請求項8】
前記第1電極(5a)の前記基板(7)は、関連するそれぞれ少なくとも1つの前記活物質層(8)の2つの長手方向面に横方向突出部(9a)を形成しており、前記横方向突出部(9a)は、前記伝導要素(10)に、またはそれぞれ1つの伝導要素(10)に結合されており、前記第2電極(5b)の前記基板(7)は、前記長手方向突出部(9b)を形成している、ことを特徴とする、請求項7記載のバッテリ(1)。
【請求項9】
前記第1電極(5a)は、カソードとして作用する活物質および/またはアルミニウムから成る基板を有する、ことを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載のバッテリ(1)。
【請求項10】
少なくとも1つの前記伝導要素(10)は、剛性に形成されている、ことを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載のバッテリ(1)。
【請求項11】
少なくとも1つの前記伝導要素(10)は、対応付けられた、前記積層体(4)の面を少なくとも50%または少なくとも75%覆う、ことを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載のバッテリ(1)。
【請求項12】
少なくとも1つの前記伝導要素(10)は、少なくとも1つの貫通開口部(19)を有する、ことを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載のバッテリ(1)。
【請求項13】
前記カバーは、少なくとも1つの前記伝導要素(10)に隣り合う部分に充填開口部(18)を有し、かつ/または過剰圧力バルブを含む、ことを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載のバッテリ(1)。
【請求項14】
前記バッテリ極(12)の少なくとも1つは、前記カバーから電気的に絶縁されている、ことを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項記載のバッテリ(1)。
【請求項15】
前記バッテリ極(12)の少なくとも1つは、前記カバーに高抵抗に接続されている、ことを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項記載のバッテリ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリ、特に自動車のトラクションバッテリとして構成されたバッテリであって、このバッテリを用いて、自動車の電気トラクションモータを作動させるための電気エネルギが供給可能なバッテリに関する。
【0002】
バッテリは、電気化学ベースの電気エネルギ用の蓄積器であり、その放電時、蓄積された化学エネルギが、電気化学的な酸化還元反応によって電気エネルギに変換される。本発明の文脈では、バッテリは、1回の放電だけのために構成されておりかつ再充電のためには構成されていない、いわゆる1次バッテリでもあり、また複数回の充電のために構成されておりかつ対応して設計されている、いわゆる2次バッテリもしくは蓄電池でもあると理解される。2次バッテリの充電は、放電時に行われる、電気化学的な酸化還元反応の電解反転であり、これは電圧の印加によって実現される。
【0003】
バッテリには1つまたは一般に複数のバッテリ要素が含まれており、これらのバッテリ要素は、一般に、「パウチ」と称されることの多いフィルムカバーまたはケーシングの形態のカバー内に配置されている。バッテリ要素には、それぞれ2つの電極と、電極の間に配置された、電極を電気的に分離するためのセパレータと、イオン伝導体として使用される電解質とが含まれている。バッテリ要素の2つの電極は、それぞれ含まれる活物質が異なり、これにより、(それぞれバッテリセルの放電に関して)一方の電極はアノードとして、また他方の電極はカソードとして作用する。さらに、バッテリには一般に、2つのバッテリ極が含まれており、これらは、カバーに組み込まれかつカバーの内側で電極に導電接続されている。ここでは、アノードとして作用する全ての電極は、一方のバッテリ極に、またカソードとして作用する全ての電極は、他方のバッテリ極に接続可能である。
【0004】
ケーシングを備えたバッテリの構成は、フィルムカバーを備えたバッテリと比べて、バッテリの構造的な耐荷重性が高いという利点を有することができる。
【0005】
バッテリ、また特に自動車内のトラクションバッテリとして現在、主に利用されているリチウムイオンバッテリは、電力欠損、損傷および/または経年変化が速まることを回避するために、定められた温度範囲で収納され、また特に作動され、すなわち、充電および放電されるべきである。この温度範囲を上回ることは必ずしも、対応して高い周囲温度との温度均一化だけが原因であるのではなく、むしろバッテリの充電または放電時には、このバッテリが、それ自体の加熱を生じせる大量の廃熱を生成する。したがって有効であり得るのは、この温度範囲を下回るまたは上回ることを回避するために、バッテリを温度調整することである。自動車のトラクションバッテリでは、このような温度調整は通常、自動車の冷却システムにトラクションバッテリを組み込むことによって行われ、この冷却システムにより、温度調整流体を介して熱エネルギをトラクションバッテリに伝達するかまたはトラクションバッテリから排出することができる。この際には一般に、いわゆるバッテリ積層体に相互接続されてトラクションバッテリを形成する、個々のバッテリまたはバッテリモジュールのカバーもしくはケーシングが温度調整される。しかしながら、カバー内では一般に、複数の個々のバッテリセルが1つの積層体に配置されている。このことから結論されるのは、カバーを介する温度調整は、カバーの比較的近くに置かれた、積層体の要素にとっては、より効果的であり、かつカバー内の中心に向かっては、温度調整作用が著しく弱まってしまうことである。
【0006】
米国特許第6858344号明細書には、プラスチックから成る平行六面体形のケーシングを備えるバッテリが開示されており、ケーシングの、面積の大きい方の面には金属薄板が埋め込まれており、この金属薄板のそれぞれ1つの接触部分は、ケーシングから突出しており、また冷媒が通流する冷却要素との接触のために設けられている。ケーシングに金属板を組み込むことにより、ケーシングを介するより良好な熱伝導を実現しようとしている。
【0007】
米国特許第10686170号明細書には、ケーシングにフィルムカバーを備えた、バッテリの積層装置が記載されており、フィルムカバーは、少なくとも2つの面において、それぞれ枠縁状の保持要素に結合されており、この保持要素は、ケーシングにおいて、積層されたバッテリを確実に収容できるようにしようとするものである。
【0008】
米国特許第6709783号明細書には、複数の積層されたバッテリを備えたバッテリ積層体が開示されており、バッテリ間には、冷却媒体が通流するための複数の冷却通路を形成する冷却要素が配置されている。
【0009】
本発明の根底にある課題は、バッテリの可能な限り有利な温度調整を実現することである。
【0010】
この課題は、請求項1記載のバッテリにおいて解決される。このようなバッテリの好ましい実施形態は、別の請求項の対象であり、かつ/または本発明の以下の説明から明らかになる。
【0011】
本発明によると、バッテリ、特に自動車用のトラクションバッテリおよび/またはリチウムイオンバッテリが構成されており、このバッテリは、好適には平行六面体形のカバーと、このカバー内に配置された、複数の第1電極と複数の第2電極とを備えた積層体とを有し、これらの第1電極および第2電極は、それぞれ1つのセパレータが中間に配置されて積層体に交互に配置されている。カバーは、好適には、電極およびセパレータを備えた積層体を完全に取り囲み、このカバーはさらに、好ましくは(使用可能な状態において)気密に構成されている。
【0012】
第1電極は、カバーに、好適にはカバーの第1端面に組み込まれた第1バッテリ極に導電接続されており、第2電極は、同様にカバーに、好適にはカバーの第2端面に組み込まれた第2バッテリ極に電気的に接続されている。これらの電極はそれぞれ1つの、導電性の、特にフィルムとして構成された基板と、この基板の少なくとも1つの面に、好適には角柱状の、特に好ましくは平行六面体形の活物質層とを有する。この活物質層は、長さおよび幅と比較して非常に小さな高さ(層厚)を有していてよい。好ましくは構成される平行六面体形の活物質層では、積層体についても(実質的に)平行六面体形が生じていてよい。これに加えて、セパレータも同様に平行六面体形に形成されていてよく、セパレータの面積の大きい方の面は好適には、活物質層の面積の大きい方の面よりもやや大きく、これらの面の間にはセパレータが、分離のために配置されている。電極とバッテリ極との間の電気的な接続、また基板もそれぞれ、可能な限りに抵抗の少ない電流の通流に使用され、したがって好適には、これらの電気的な接続および基板が、可能な限り低い固有抵抗(例えば20℃において最大1Ω×mm/m)を有するように形成されている。第1電極および/または第2電極の基板は、少なくとも1つの面、特に、それぞれ関連する活物質層の長手方向面に横方向突出部を形成し、すなわち、これらの基板は、横方向に、もしくは幅に沿って、それぞれの活物質層の寸法を越えて突出している。第1電極の基板の横方向突出部(だけ)が(すなわち第2電極の基板の横方向突出部もそうなることなく)、かつ/または第2電極の基板の横方向突出部(だけ)が(すなわち第1電極の基板の横方向突出部もそうなることなく)、少なくとも熱伝導性の伝導要素に(場合によってはそれぞれ)結合されており、少なくとも1つの伝導要素は、カバーに接触しており、かつ/またはカバーの部分を形成するかもしくはこれに組み込まれている。例えば、少なくとも5W/(m×K)の熱伝導率が熱伝導性とみなされ、好適には、(それぞれ20℃においてかつ50%の空気湿度において)少なくとも50W/(m×K)または少なくとも100W/(m×K)または少なくとも200W/(m×K)の伝導要素の熱伝導率が実現される。少なくとも1つの伝導要素が好適には少なくとも部分的に形成される金属、特にアルミニウムは、本発明において基本的に熱伝導性であるとみなされる。
【0013】
平行六面体は、ひいては平行六面体形のカバーならびに平行六面体形の活物質層も長さ、幅、および高さを有し、本発明では、(対応する相違がある(好適にはこのように構成される)場合)、長さは、(エッジ)寸法の最大の寸法、幅は中間の寸法、高さは最小の寸法である。この場合、平行六面体は、長さおよび幅によって張られる2つの面積の大きい方の面と、長さおよび高さによって張られる2つの長手方向面と、幅および高さによって張られる2つの端面とを有する。本発明では、作製に起因する偏差に起因して、幾何学的な平行六面体に正確には対応しない形状も平行六面体とみなし得る。
【0014】
本発明によるバッテリは、少なくとも1つの伝導要素を介して良好に温度調整できることによって特徴付けられ、この伝導要素は、好ましく構成される配置構成では、活物質層の長手方向面において、ひいては電極およびセパレータを備えた積層体の長手方向面においても、全体として比較的大きな面積で形成されていてよい。比較的良好に温度調整できることは、バッテリの性能および/または寿命に関して有利に作用する。さらに、これにより、バッテリの小型の構造が可能になる。
【0015】
カバーは好適には、形状安定型のケーシングとして形成されていてよい。ケーシングが「形状安定型」とみなされるのは、外部的な荷重がなければ、その3次元の形状が、その自重によって潰れない場合である。このようなケーシングは好適には、通常の利用時に発生する外力による荷重の際には潰れることがなく、特に好ましくは、明らかには変形されないように形状安定で構成されていてよい(「剛性」のケーシング)。ケーシングは好ましくはさらに、完全にまたは部分的に金属、例えばアルミニウムから形成可能であり、これにより、比較的簡単かつコスト的に有利に、形状安定であるのに加えて良好に熱を伝導するケーシングが実現可能である。
【0016】
本発明によるバッテリの好ましい実施形態によると、少なくとも1つの伝導要素が、バッテリ極の関連する1つに電気的に接続されるように構成可能である。この接続もまた、可能な限りに抵抗の少ない電流の通流に使用され、したがって好適には、この接続が、可能な限り小さな固有抵抗(例えば20℃において最大1Ω×mm/m)を生じさせるように形成されている。本発明によるバッテリのこの実施形態は特に、バッテリの作製可能性に関して、また具体的には電極の作製可能性に関して利点を有し得る。このことは特に、対応する伝導要素が、対応するバッテリ極を含む(好適にはこのように構成される)場合に当てはまる。この場合、カバーへのバッテリ極の組み込みは、バッテリの組付けの枠内で行われる。このために、一方では電極およびセパレータを備えた積層体ならびに場合によっては別のコンポーネント、例えば少なくとも1つの変形要素と、他方では少なくとも1つの伝導要素とを含むアセンブリが、ケーシングとして形成されたカバーのベースケーシングに挿入されるように構成可能である。ここでは少なくとも1つの伝導要素は、関連する電極に既に結合されていてよい。アセンブリを挿入するために、ベースケーシングは、対応する挿入開口部を有していてよい。この挿入開口部は、次いで、ケーシングカバーを用いて閉鎖可能である。この場合、ケーシングへのバッテリ極の組込みは好適には、ケーシングカバーの組付け後にバッテリ極が、ケーシングカバーの貫通開口部を通って突出することによって行うことができる。
【0017】
少なくとも1つの伝導要素が、バッテリ極の関連する1つに電気的に接続されている、本発明によるバッテリの好ましい実施形態によるとさらに、少なくとも1つの伝導要素には、関連するバッテリ極に電気的に接続されている第1部分要素が含まれており、また第1部分要素とカバーとの間の間隔を埋める、少なくとも部分的に電気絶縁性の第2部分要素が含まれている。コンポーネントが電気絶縁性とみなされるのは、電位差があるのにもかかわらず、コンポーネントを介して、明らかな電流の流れが阻止される場合である。これにより、伝導要素が、関連するバッテリ極に電気的に接続されているのにもかかわらず、伝導要素、具体的には導電性のその第1部分要素と、カバーとの間の電気的な接続を阻止することができる。このことは、このようなバッテリを利用する際の安全性に関して有利に作用し得る。それにもかかわらず、第2部分要素を介して、電極およびセパレータを備えた積層体から、カバーへの、もしくはカバーを介しての、熱エネルギの有利な排出を実現可能である。
【0018】
好適には、伝導要素は部分的に、カバーの貫通開口部において配置されるように構成可能である。これにより、電極およびセパレータを備えた積層体に対して、特に良好な温度調整が実現可能である。というのは、伝導要素と周囲との間の直接的な熱交換を実現できるからである。この場合に特に好ましくはさらに、カバーの貫通開口部に配置された、カバーに好適には接触しない第1部分と、内側でカバーに接触する、電気絶縁性にまたは高抵抗に形成されかつ/またはガスの漏出に対してシールする第2部分とが伝導要素に含まれるように構成可能である。これにより、導電性であることも多い熱伝導性の材料から、特に金属、好適にはアルミニウムから第1部分を形成することが可能となり、この第1部分とカバーとの間の(低抵抗の)電気接続部を回避することができる。同時に、伝導要素の第2部分により、貫通開口部の領域におけるカバーの十分なシールおよび/またはカバーにおける伝導要素の十分な支持が行われるようにすることができる。
【0019】
本発明によるバッテリの好ましい実施形態によると、第1電極の基板は、1つの面に、好適にはそれぞれ関連する(好適には平行六面体形の)活物質層の端面に長手方向突出部を形成し(すなわち、この基板が、長手方向にそれぞれの活物質層の寸法を越えて突出し)、第1電極(だけ)の基板の長手方向突出部が、第1バッテリ極に接続されているように構成可能である。択一的にまたは補足的には、第2電極の基板も1つの面に、好適にはそれぞれ関連する(好適には平行六面体形の)活物質層の端面に長手方向突出部を形成可能であり、ここでは第2電極(だけの)の基板の長手方向突出部が、第2バッテリ極に接続されている。したがって、電極と、それぞれ関連するバッテリ極との間の電気的な接続は、直接に、すなわち少なくとも1つの伝導要素を介さなくても実現可能である。これにより、場合によっては、少なくとも1つの伝導要素の有利な構造的な構成が実現可能である。
【0020】
特に簡単な構造的な構成によって特徴付け可能な本発明によるバッテリでは、第1電極の基板が、関連する活物質層の2つの長手方向面に横方向突出部を形成しており、2つの面のこれらの横方向突出部がそれぞれ、上述の伝導要素に、またはそれぞれ1つの伝導要素に結合されているように構成可能である。これに対し、第2電極の基板はそれぞれ長手方向突出部を形成することができ、また第2バッテリ極に直接に接続可能である。特に好ましくは、この際には(または基本的にも)さらに、第1電極が、カソードとして作用する活物質および/またはアルミニウムから成る基板を有するように構成可能である。これに対し、第2電極は、アノードとして作用する活物質および/または銅もしくはアルミニウムから成る基板を有することができる。
【0021】
本発明によるバッテリの少なくとも1つの伝導要素は好適には、剛性に形成可能である。少なくとも1つの伝導要素が「剛性」とみなされるのは、想定される利用の枠内でこれに作用する荷重の際に、これが、明らかな(すなわち、識別可能でありかつ機能に影響を及ぼす)ほどに変形しない場合である。これにより、伝導要素は、電極およびセパレータの積層体、もしくはこれらのコンポーネントを含むアセンブリの安定性に有利に影響を与えることができる。このことは特に、本発明によるバッテリの組付けの枠内において有利に作用し得る。
【0022】
同じ理由から、少なくとも1つの伝導要素が、対応する面、特に積層体の長手方向面を少なくとも50%または少なくとも75%覆うように構成可能である。
【0023】
特に、少なくとも1つの伝導要素がこのように比較的大きな面積で形成されている場合にはさらに、好ましくは伝導要素が少なくとも1つの貫通開口部をするように構成可能である。このことは、一方では、伝導要素の可能な限りに少ない質量に関して、ひいてはバッテリ全体の質量に関して有利に作用し得る。さらに、このような貫通開口部は有利には、カバー内での電解質の分配について有利に作用し得る。すなわち、本発明によるバッテリの作製の枠内では、少なくとも、電極およびセパレータを備えた積層体と、少なくとも1つの伝導要素とを含むアセンブリをカバーに挿入した後、電解質をカバーに注入するように構成されていてよい。このためにはカバーは、対応する充填開口部を有していてよい。この際に特に、カバーが、その面の、好適には、少なくとも1つの伝導要素に隣り合う長手方向面の部分において充填開口部を有し、かつ/または過剰圧力バルブを含むように構成可能である。このような過剰圧力バルブは、バッテリの利用時に、ガスを発生させる損傷の結果として形成される過剰圧力を和らげるために使用可能である。ここでは伝導要素の、好適には構成される少なくとも1つの貫通開口部によって有利には、過剰圧力バルブにガスを排出できるようにすることが可能である。このような過剰圧力バルブは、充填開口部としても使用される漏出開口部を利用することができる。特に有利な実施形態によると、このような過剰圧力バルブは、定められた過剰圧力に達すると所期のように意図的に機能停止され、その際に破壊される破裂弁として形成可能である。特にこのような破裂弁は、損傷されていない状態においてカバーの漏出開口部を覆う破裂フィルムとして形成可能である。
【0024】
本発明によるバッテリの可能な限り確実な利用のためには、バッテリ極の少なくとも1つが、カバーから電気的に絶縁されており、これにより、これらのコンポーネント間で可能な限りに電流が流れることがないように構成可能である。
【0025】
さらに、バッテリ極の1つが、高抵抗でカバーに接続されているように構成可能である。1kΩ~100ΜΩのオーム抵抗を生じさせる電気的な接続が「高抵抗」とみなされる。これにより、カバーと、対応するバッテリ極もしくはこれに電気的に接続された電極との間の電位等位化が実現可能であり、この際にこれらのコンポーネント間に明らかに大きな電流が流れてしまうことはない。このような電位等位化により、特に、電位差がある場合にカバー内に収容されている電解質との化学的な相互作用に起因して発生し得る、カバーの腐食を回避することができる。これは特に、カバーが、少なくとも内側が金属から、特にアルミニウムから形成されている(好適にはこのように構成される)場合に有効である。高抵抗の接続は特に好ましくは、カバーと、カソードとして作用する活物質を有する電極に電気的に接続されているバッテリ極との間に形成可能である。
【0026】
本発明によるバッテリは、特に、自動車用のトラクションバッテリまたはこのようなトラクションバッテリの一部であってよい。このようなトラクションバッテリを用いることにより、自動車の駆動出力を供給する、自動車の電気トラクションモータに電気エネルギを供給することができる。
【0027】
本発明によると「フィルム」とみなされるのは物体であって、(フィルムの大きな面積を画定する)長さおよび幅が、高さ(つまりフィルム厚さ)よりも何倍も大きい物体である。高さは好適には、フィルムの長さおよび/または幅の最大で1/100または1/500または1/1000または1/10000または1/100000または1/1000000に対応し得る。特にフィルムは、平坦に広げられた際に、支持されなければ、それ自重により、識別可能に変形または潰れてしまい得るようにわずかなフィルム厚さで寸法設定可能である。
【0028】
以下では、図面に示した実施例に基づき、本発明を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】第1実施形態にしたがい、2つの冷却要素と組み合わせた、本発明によるバッテリを示す概略縦断面図である。
図2】バッテリの第1電極の概略平面図である。
図3】バッテリの第2電極の概略平面図である。
図4】バッテリの電極およびセパレータを備えた積層体を示す概略縦断面図である。
図5】バッテリのベースケーシングを示す概略斜視図である。
図6】電極およびセパレータを備えた積層体と、バッテリの伝導要素とを含むアセンブリを示す概略図である。
図7】アセンブリの部分の概略横断面図である。
図8】バッテリの作製の枠内において、ベースケーシングにアセンブリを挿入する様子を示す概略図である。
図9】第2実施形態にしたがい、2つの冷却要素と組み合わせた、本発明によるバッテリを示す概略縦断面図である。
図10】バッテリの第1電極の概略平面図である。
図11】第3実施形態にしたがい、2つの冷却要素と組み合わせた、本発明によるバッテリを示す概略縦断面図である。
図12】バッテリの第2電極の概略平面図である。
【0030】
図1には、2つの冷却要素2と組み合わせた、本発明によるバッテリ1が図示されている。冷却システムは、平行六面体形のケーシング3の形態のカバーを有するバッテリ1において、それぞれの長手方向面に接触している。冷却要素2は、例えば、冷却媒体が循環する冷却システム(図示せず)に組み込まれていてよい。冷却要素2それ自体に冷却媒体が通流していてもよい。冷却要素により、図示したバッテリまたは複数のこのようなバッテリの有利な温度調整が実現可能である。ここでは、本発明による2つのバッテリ1の間にそれぞれ1つの冷却要素2が配置されているように構成可能である。
【0031】
図示したバッテリ1には、ケーシング3の他に、ケーシング3内に配置された、電極5およびセパレータ6を備えた積層体4が含まれており、この積層体4は図4にさらに詳しく示されている。図4では、積層体4の積層方向は、図平面に対して平行に延びているのに対し、図1では、積層体4の積層方向は、図平面に対して垂直に配向されている。
【0032】
積層体4には、平行六面体形の、薄い(すなわち低い高さで形成された)電極5と、同様に平行六面体形の、薄くかつ電気絶縁性に形成されたセパレータ6とが交互に含まれている。電極5は、積層体4においてここでも交互に、バッテリ1の放電時にカソードとして機能する第1電極5aとして、またバッテリ1の放電時にアノードとして機能する第2電極5bとして存在している。セパレータ6は、これが固体電解質としても使用されるか、またはバッテリ1の使用可能な状態において、液体電解質(図示せず)がしみ込ませられるように形成されていてよい。平行六面体形の電極5およびセパレータ6を中央揃えで積層することにより、積層体4が得られ、この積層体4も同様に、ケーシング3の平行六面体形に適合されたほぼ平行六面体形を有する。ここでは意図的に構成されているのは、積層体4の様々な要素間のわずかな突出部と、特に周縁側において電極5に比べてセパレータ6をいくらかより大きく形成することとであり、これにより、これらの要素の積層が不正確であっても、電極5の十分な分離が保証される。
【0033】
電極5にはそれぞれ、導電性材料、例えば金属から成るそれぞれ1つのフィルム状の基板7が含まれており、この基板には、1つの部分において、アノードまたはカソードとして作用する活物質から成るそれぞれの1つの層(活物質層8)が両側に備え付けられているのに対し、それぞれの基板7のコーティングされていない少なくとも1つの部分は、それぞれの電極5に属するそれぞれ1つの除電装置である。それぞれの基板7のコーティングされていないこのような部分は、関連する活物質層8についての突出部9である。第1電極5aの基板7は好適にはアルミニウムから構成可能であるのに対し、第2電極5bの基板7は好適には銅および/またはニッケルおよび/またはアルミニウムから形成可能である。
【0034】
第1電極5aの基板7は、関連する活物質層8の、それらの2つの長手方向面にそれぞれ1つの横方向突出部9aを形成し、これらの横方向突出部9aはそれぞれ、第1電極5aの全長にわたって延在している(図2も参照されたい)。これに対し、第2電極5bの基板7は、一方の端面だけに長手方向突出部9bが形成され、この長手方向突出部9bは、それぞれの第2電極5bの全幅にわたっては延在していない(図3を参照されたい)。
【0035】
全ての第1電極5aの両側の横方向突出部9aは、グループ化されて、伝導要素10に堅固に結合されている(図7参照)。この伝導要素10は、図6ではさらに詳しく示されている。横方向突出部9aと伝導要素10との間の結合は、特に材料接続的に、例えば、溶接によって実現可能である。伝導要素10には、U字形の第1部分要素11が含まれており、この第1部分要素11は、(場合によっては複数部分で)完全に金属から、特にアルミニウムから形成可能である。この第1部分要素11は、第一に導電体として使用され、さらに第1電極5aの基板7の両側の横方向突出部9aと、バッテリ1の2つのバッテリ極12の第1バッテリ極12aとを導電接続する。第1バッテリ極12aは、伝導要素10の一体の構成要素であるか、もしくは第1バッテリ極12aはまた、伝導要素10が積層体4と組み合わせられてケーシング3に挿入される(図8を参照されたい)前に、既に伝導要素10の第1部分要素11に堅固に結合されている。電極5およびセパレータ6を備えた積層体4ならびに伝導要素10を含む、対応するアセンブリをケーシング3に挿入した後、第1バッテリ極12は、周縁側においてわずかにより大きく寸法設定された、ケーシング3の貫通開口部13を通って(図5および図8を参照されたい)突出しているが、この際にケーシング3に直接に接触しない。第1バッテリ極12aを取り囲むフレーム状のシール要素14は、ケーシング3と、伝導要素の第1部分要素11との間でこの貫通開口部の周縁側に形成されている間隙のシールが行われるようにする。
【0036】
伝導要素10にはさらに、2つの第2部分要素15が含まれており、これらの第2部分要素15はそれぞれ、積層体4の長手方向面の1つを覆う、第1部分要素11の1つの部分に直接に接触して堅固に結合されている。第2部分要素15には、それぞれ1つの第1部分15aが含まれており、この第1部分15aは好適には金属、特にアルミニウムから形成可能でありかつ第1部分要素11に直接に接触する。第1バッテリ極12aに類似して、伝導要素10のそれぞれの第2部分要素15の第1部分15aは、ケーシング3の、周縁側においてわずかにより大きく寸法設定された貫通開口部13に突出しており、この際にこのケーシング3に直接に接触しない。第2部分要素15のそれぞれのフレーム状の第2部分15bは、ケーシング3と伝導要素の第1部分要素11との間の、対応付けられた貫通開口部13の周縁側に形成された間隙がシールされるようにし、また伝導要素10の第1部分要素11とケーシング3との間の間隔を埋める。
【0037】
基本的には、伝導要素10の第2部分要素15の第1部分15aであって、ケーシング3のそれぞれ1つの貫通開口部13内でのそれらの配置によって外部からアクセス可能である第1部分15aは、バッテリの(第1)バッテリ極12aとしても使用可能である。しかしながら第1部分15aはもっぱら、冷却要素2のそれぞれと直接に接触することによってバッテリ1からの熱エネルギの良好な伝導、または(必要に応じて加熱のための)バッテリ1への熱エネルギの良好な伝導も可能にする、熱導体としてのみ使用される。ここでは、第1電極5aの基板7と、伝導要素10とが大きな面積で接触することにより、積層体4の内部からの、または内部への良好な熱伝導が行われる。
【0038】
第1バッテリ極12aを取り囲むシール要素14も、伝導要素10の第2部分要素15の第2部分15bも共に、それぞれ電気絶縁の作用を有する材料、または高抵抗性の材料から構成されている。第1電極5aとケーシング3との間の電位等位化を実現するために、これらの要素の少なくとも1つについて、高抵抗性の構成が好ましい。これにより、電解質との電気化学的な相互作用に起因する、ケーシング3の腐食が回避可能である。
【0039】
伝導要素10により、また具体的には剛性に実施されるその第1部分要素11により、積層体4の隣り合う長手方向面および端面がそれぞれ少なくとも50%覆われる。これによって伝導要素10により、有利にはバッテリ1の組付けの枠内において、電極5およびセパレータ6を備えた積層体4が安定化可能である。さらに、伝導要素10は有利には、これらのコンポーネントを有するアセンブリをケーシング3に挿入する際のガイド要素として使用可能である。このような挿入は、図8によると、一方の端面が開放されて形成されている、ケーシング3のベースケーシング16にアセンブリを押し込むことによって行うことができる。この際に、伝導要素10は、もしくは具体的には第2部分要素15の第1部分15aの外面は、ガイド要素として機能するために、内側でベースケーシング16と接触するか、もしくはベースケーシング16に沿って滑動することができる。ベースケーシング16の開放された端面は、積層体4および伝導要素10を備えたアセンブリを挿入した後、ケーシングカバー17を用いて閉鎖される。
【0040】
ケーシングカバー17を用いてケーシング3を閉鎖した後、ケーシング3に電解質が注入されるように構成可能である。このために、ケーシング3は、その長手方向面の1つに、対応する充填開口部18(図5および図8を参照されたい)を有することができる。電解質を注入した後、この充填開口部18を閉鎖することができる。このために、例えば、材料接続的にケーシングに、充填開口部18を覆うフィルム20を取り付けることができる。このフィルムはさらに、ケーシング3の内部が所定の過剰圧力に達すると、破れて、結果的に過剰圧力バルブを形成するように構成されていてよい。
【0041】
充填開口部18を介してケーシング3に注入される電解質の良好な分配を保証するために、伝導要素10は少なくとも、充填開口部18を含む、ケーシング3の長手方向面に隣り合う部分に複数の貫通開口部19を有する。セパレータ6には、電解質がしみ込ませられる。これによってセパレータ6は、ある程度膨らみ、これにより、積層体4の寸法が増大する。このことは特に、積層体4の高さに関して当てはまるが、わずかではあるものの長さおよび幅にも当てはまる。積層体4の寸法がこのように増大することにより、ケーシング3内で実質的に遊びなしに積層体4が収容されることになり、さらに、対応するケーシング開口部13における第2部分要素15の第2部分15bも配置されるようになる。
【0042】
全ての第2電極5bの基板7の長手方向突出部9bは、グループ化されて、バッテリ1の第2バッテリ極12bに電気的に接続されている。この第2バッテリ極12bは、ケーシングカバー17に堅固に組み込み可能であり、第2バッテリ極12bとケーシングカバー17との間では電気的な絶縁が行われる。第2電極5bの基板7の長手方向突出部9bと第2バッテリ極12bとの間の電気的な接続は、バッテリ1の組付けの枠内で、積層体4および伝導要素10を備えたアセンブリをベースケーシング16に挿入した後に、かつケーシングカバー17を取り付ける前に行うことができる。基板7の長手方向突出部9bおよび第2バッテリ極12bは、このために好適には、材料接続的に互いに結合されていてよく、例えば溶接されてよい。
【0043】
図9には、本発明によるバッテリ1の実施形態が示されており、この実施形態は、図1に示した実施形態とは、伝導要素10が、また具体的にはその第1部分要素11が、L字形に形成されていることが異なっている。これに都合がよいように、第1電極5aの基板7により、その長手方向面の1つにのみ、伝導要素10に結合されている横方向突出部9aが形成されている(図10も参照されたい)。
【0044】
図11に示した本発明によるバッテリ1には、2つのL字形の伝導要素10が含まれており、これらの伝導要素10のうち、第1伝導要素10aは、図9によると、第1電極5aの基板7をその長手方向面の1つにおいて形成する横方向突出部9aに結合されている。これに相応して、図11によるバッテリでは、第2電極5bの基板7も、それぞれ1つの長手方向面に横方向突出部9aを形成し(図12を参照されたい)、第1電極5aの横方向突出部9aと、第2電極5bの横方向突出部9aとは、電極5の、もしくは電極5およびセパレータ6を備えた積層体4の対向する長手方向面に配置されている。第2電極5bの横方向突出部9aは、伝導要素10の第2伝導要素10bに結合されている。この第2伝導要素10bは、構造的に第1伝導要素10aに対応していてよく、第2バッテリ極12bを含んでいてもよい。しかしながら場合によっては、これらは、少なくとも使用される材料が異なっていてもよい。例えば、少なくとも、第2伝導要素10bの第1部分要素11が銅から作製されるのに対し、第1伝導要素10aの第1部分要素11がアルミニウムから形成可能であるように構成されていてよい。
【符号の説明】
【0045】
1 バッテリ
2 冷却要素
3 ケーシング
4 積層体
5 電極
5a 第1電極
5b 第2電極
6 セパレータ
7 基板
8 活物質層
9 基板の突出部
9a 横方向突出部
9b 長手方向突出部
10 伝導要素
10a 第1伝導要素
10b 第2伝導要素
11 伝導要素の第1部分要素
12 バッテリ極
12a 第1バッテリ極
12b 第1バッテリ極
13 ケーシングの貫通開口部
14 シール要素
15 伝導要素の第2部分要素
15a 第2部分要素の第1部分
15b 第2部分要素の第2部分
16 ベースケーシング
17 ケーシングカバー
18 充填開口部
19 伝導要素の貫通開口部
20 フィルム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2023-12-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリ(1)であって、前記バッテリ(1)は、カバーと、前記カバー内に配置された、複数の第1電極(5a)および複数の第2電極(5b)を備えた積層体(4)とを有し、前記第1電極(5a)および前記第2電極(5b)は、それぞれ1つのセパレータ(6)が中間に配置されて前記積層体(4)に交互に配置されており、前記第1電極(5a)は、前記カバーに組み込まれた第1バッテリ極(12a)に電気的に接続されており、前記第2電極(5b)は、前記カバーに組み込まれた第2バッテリ極(12b)に電気的に接続されており、前記電極(5)は、それぞれ1つの導電性の基板(7)と、前記基板(7)の少なくとも一方の面に活物質層(8)とを有する、バッテリ(1)において、前記第1電極(5a)および/または前記第2電極(5b)の前記基板(7)は、関連するそれぞれ少なくとも1つの前記活物質層(8)の少なくとも一方の面に横方向突出部(9a)を形成し、前記第1電極(5a)の前記基板(7)の前記横方向突出部(9a)および/または前記第2電極(5b)の前記基板(7)の前記横方向突出部(9a)は、熱伝導性の伝導要素(10)に結合されており、少なくとも1つの前記伝導要素(10)は、前記カバーに接触しており、かつ/または前記カバーの部分を形成する、ことを特徴とする、バッテリ(1)。
【請求項2】
少なくとも1つの前記伝導要素(10)は、前記バッテリ極(12)の関連する1つに電気的に接続されている、ことを特徴とする、請求項1記載のバッテリ(1)。
【請求項3】
少なくとも1つの前記伝導要素(10)は、関連する前記バッテリ極(12)を含んでいる、ことを特徴とする、請求項2記載のバッテリ(1)。
【請求項4】
少なくとも1つの前記伝導要素(10)には、関連する前記バッテリ極(12)に電気的に接続されている第1部分要素(11)が含まれており、また前記第1部分要素(11)と前記カバーとの間の間隔を埋める、少なくとも部分的に電気絶縁性に、または高抵抗に作用する第2部分要素(15)が含まれている、ことを特徴とする、請求項2または3記載のバッテリ(1)。
【請求項5】
前記伝導要素(10)は部分的に、前記カバーの貫通開口部(13)に配置されている、ことを特徴とする、請求項1または2記載のバッテリ(1)。
【請求項6】
前記伝導要素(10)には、前記カバーの前記貫通開口部(13)に配置された第1部分(15a)と、内側で前記カバーに接触する電気絶縁性にもしくは高抵抗に作用しかつ/またはガスの漏出に対してシールする第2部分(15b)と、が含まれている、ことを特徴とする、請求項5記載のバッテリ(1)。
【請求項7】
前記第1電極(5a)の前記基板(7)は、関連するそれぞれ少なくとも1つの前記活物質層(8)の面に長手方向突出部(9b)を形成しており、前記第1電極(5a)の前記基板(7)の前記長手方向突出部(9b)は、前記カバーの、隣り合う端面に組み込まれている前記第1バッテリ極(12a)に電気的に接続されており、かつ/または前記第2電極(5b)の前記基板(7)は、関連するそれぞれ少なくとも1つの前記活物質層(8)の面に長手方向突出部(9b)を形成しており、前記第2電極(5b)の前記基板(7)の前記長手方向突出部(9b)は、前記カバーの、隣り合う端面に組み込まれている前記第2バッテリ極(12b)に電気的に接続されている、ことを特徴とする、請求項1または2記載のバッテリ(1)。
【請求項8】
前記第1電極(5a)の前記基板(7)は、関連するそれぞれ少なくとも1つの前記活物質層(8)の2つの長手方向面に横方向突出部(9a)を形成しており、前記横方向突出部(9a)は、前記伝導要素(10)に、またはそれぞれ1つの伝導要素(10)に結合されており、前記第2電極(5b)の前記基板(7)は、前記長手方向突出部(9b)を形成している、ことを特徴とする、請求項7記載のバッテリ(1)。
【請求項9】
前記第1電極(5a)は、カソードとして作用する活物質および/またはアルミニウムから成る基板を有する、ことを特徴とする、請求項1または2記載のバッテリ(1)。
【請求項10】
少なくとも1つの前記伝導要素(10)は、剛性に形成されている、ことを特徴とする、請求項1または2記載のバッテリ(1)。
【請求項11】
少なくとも1つの前記伝導要素(10)は、対応付けられた、前記積層体(4)の面を少なくとも50%または少なくとも75%覆う、ことを特徴とする、請求項1または2記載のバッテリ(1)。
【請求項12】
少なくとも1つの前記伝導要素(10)は、少なくとも1つの貫通開口部(19)を有する、ことを特徴とする、請求項1または2記載のバッテリ(1)。
【請求項13】
前記カバーは、少なくとも1つの前記伝導要素(10)に隣り合う部分に充填開口部(18)を有し、かつ/または過剰圧力バルブを含む、ことを特徴とする、請求項1または2記載のバッテリ(1)。
【請求項14】
前記バッテリ極(12)の少なくとも1つは、前記カバーから電気的に絶縁されている、ことを特徴とする、請求項1または2記載のバッテリ(1)。
【請求項15】
前記バッテリ極(12)の少なくとも1つは、前記カバーに高抵抗に接続されている、ことを特徴とする、請求項1または2記載のバッテリ(1)。
【外国語明細書】