(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088623
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】レーザー工作機械のレーザー機械加工プロセスを監視するための方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/36 20140101AFI20240625BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20240625BHJP
【FI】
B23K26/36
B23K26/00 M
B23K26/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023214332
(22)【出願日】2023-12-19
(31)【優先権主張番号】22214999
(32)【優先日】2022-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】519198557
【氏名又は名称】ジー・エフ マシーニング ソリューションズ アー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】GF Machining Solutions AG
【住所又は居所原語表記】Roger-Federer-Allee 7,2504 Biel,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ファブリス ジャック
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィ コンセイユ
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AD18
4E168CA05
4E168CA13
4E168CB03
4E168CB08
4E168CB22
4E168DA02
4E168DA03
4E168DA45
4E168DA46
4E168DA47
4E168DA54
4E168EA15
4E168KA15
4E168KA17
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、レーザー工作機械のレーザー機械加工プロセス、特にテクスチャを彫り込んだり、またはキャビティを彫り込んだりするためのプロセスを監視するための方法を提供する。
【解決手段】レーザー源は、加工物の表面上にパルスレーザービームを放出して加工物の材料をアブレーションし、レーザービームと加工物の材料との相互作用により、プラズマが生成される。
a.生成されたプラズマの光放出を検出し、感知デバイスによってプラズマ信号を生成するステップと、
b.信号処理ユニットにより、複数のパルスを含む電気信号である生成されたプラズマ信号と、レーザービーム制御信号とを受信するステップと、
c.信号処理ユニットによってプラズマ信号のパルスから特性値を決定し、プラズマ信号とレーザービーム制御信号とを組み合わせることによって加工物上のアブレーション位置にマッピングするステップとを含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー機械加工プロセス、特にレーザー工作機械(100)によって加工物上にテクスチャを彫り込んだり、またはキャビティを彫り込んだりするためのプロセスを監視するための方法であって、レーザー源(1)が設けられ、前記レーザー源(1)は、前記加工物(7)の表面上にパルスレーザービームを放出して前記加工物の材料をアブレーションするためにレーザービーム制御信号によって制御され、前記レーザービームと前記加工物の前記材料との相互作用により、プラズマが生成され、
前記方法は、
a.前記生成されたプラズマの光放出を検出し、感知デバイス、特にフォトダイオード(13)によってプラズマ信号を生成するステップであって、前記フォトダイオードの前面に、前記加工物の表面から反射されたレーザービームの波長をフィルタリングする光学フィルタ(14)が設けられている、ステップと、
b.信号処理ユニット(30)により、複数のパルスを含む電気信号である生成された前記プラズマ信号と、前記レーザービーム制御信号とを受信するステップと、
c.前記信号処理ユニットによって前記プラズマ信号のパルスから特性値を決定し、前記決定された特性値を、前記プラズマ信号と前記レーザービーム制御信号とを組み合わせることによって前記加工物上のアブレーション位置にマッピングするステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記信号処理ユニットは、前記プラズマ信号のパルスの振幅のピーク値を前記特性値として決定するように構成されている、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記信号処理ユニットは、前記プラズマ信号の少なくとも1つのパルスの振幅のピーク値の平均値を、前記特性値として決定するように構成されている、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記アブレーションは、ダッシュ毎に行われ、各ダッシュは、機械加工経路を表し、前記機械加工経路は、複数のレーザーパルスにより、前記レーザービーム制御信号を継続的に高振幅に設定することによって連続的にアブレーションされ、前記信号処理ユニットは、ダッシュ平均値を前記特性値として決定するように構成され、前記ダッシュ平均値は、1つのダッシュのアブレーション中に生成されるプラズマ信号のパルスの振幅のピーク値の平均値によって定義される、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記ダッシュは、複数の区分に分割され、これらの区分の平均値が少なくとも1つの区分についての特性値として決定され、前記区分平均値は、1つの区分のアブレーション中に生成されたプラズマ信号のパルスの振幅のピーク値の平均値によって定義される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記信号処理ユニットは、ダッシュカウンタ(40)として定義されるユニットを含み、前記ユニットは、前記レーザービーム制御信号に基づいて各ダッシュを識別するように構成されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
ダッシュカウンタは、ダッシュの決定された特性値を対応するダッシュに関連付けることができるように、ダッシュを連続的にカウントするように構成されている、請求項6記載の方法。
【請求項8】
閾値が定義され、前記特性値は、前記アブレーションの異常性、特に前記加工物上のその位置にマッピングされる異常性を決定するために前記閾値と比較される、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記異常性が識別された場合に、
a.前記機械加工を停止するアクションと、
b.前記機械加工パラメータを調整するアクションと、
c.機械的な機械加工条件を調整するアクションと、
のうちの1つが実行される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記特性値は、
a.機械要素の故障を検出するステップと、
b.機械テーブル上の前記加工物の不良な位置決めを検出するステップと、
c.不良なブロー条件を検出するステップと、
d.集束軸(Z)に沿った前記レーザービームの焦点を検出するステップと、
e.レーザー処理中の電力シフトを検出するステップと、
f.不良な加工物幾何形状を検出するステップと、
g.不規則な機械加工を検出するステップと、
h.光学素子によって引き起こされる集束シフトを検出するステップと、
i.前記加工物の材料の変化を検出するステップと、
j.反復的な機械加工に基づいて、最良の結果をもたらすパラメータ設定を決定するステップと、
k.アブレーションされた前記材料の体積を計算するステップと、
のうちの1つまたは複数を行わせるために適用される、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
レーザー機械加工プロセス、特にレーザー工作機械(100)によって加工物上にテクスチャを彫り込んだり、またはキャビティを彫り込んだりするためのプロセスを監視するためのシステムであって、レーザー源(1)が設けられ、前記レーザー源(1)は、前記加工物の表面上にパルスレーザービームを放出して前記加工物の材料をアブレーションするためにレーザービーム制御信号によって制御され、前記レーザービームと前記加工物の前記材料との相互作用により、プラズマが生成され、
前記システムは:
a.前記生成されたプラズマの光放出を検出し、プラズマ信号を生成するように構成された感知デバイス、特にフォトダイオード(13)と、
b.前記感知デバイス上に追加され、反射されたレーザービームの波長をフィルタリングする光学フィルタ(14)と、
c.複数のパルスを含む電気信号である前記プラズマ信号と、前記レーザービーム制御信号とを受信し、前記プラズマ信号のパルスから特性値を決定し、前記プラズマ信号と前記レーザービーム制御信号とを組み合わせることによって、前記決定された特性値を前記加工物上のアブレーション位置にマッピングするように構成された信号処理ユニット(30)と、
を含む、システム。
【請求項12】
加工物上にテクスチャを彫り込んだり、またはキャビティを彫り込んだりするためのレーザー工作機械(100)であって、
前記レーザー工作機械(100)は:
a.前記加工物の表面上にパルスレーザービームを放出し、前記加工物の材料をアブレーションするためのレーザー源(1)を含むレーザーヘッド(3)と、
b.高振幅と低振幅とを有するレーザービーム制御信号を生成し、前記制御信号が高振幅の場合に前記レーザービームをターンオンさせ、前記制御信号が低振幅の場合に前記レーザービームをターンオフさせるように構成されたコントローラ(21)と、
c.前記加工物が位置決めされる機械加工領域と、
d.請求項11記載のレーザー機械加工プロセスを監視するシステムと、
を含む、レーザー工作機械(100)。
【請求項13】
前記信号処理ユニットおよび前記コントローラは、1つの産業用コンピュータに統合されている、請求項12記載のレーザー工作機械。
【請求項14】
前記工作機械は、ディスプレイを含み、前記ディスプレイ上には:
a.レーザー/材料相互作用の特性値の表現と、
b.前記加工物上のその位置とのうちの1つまたは複数と、
が表示可能である、請求項12または13記載のレーザー工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー工作機械のレーザー機械加工プロセスを監視するための方法に関する。付加的に、本発明は、レーザー工作機械に関する。
【0002】
発明の背景
レーザーアブレーション法は、対象物の表面上の材料を昇華させることによって、物理的対象物の表面上にテクスチャまたはキャビティを彫り込むために広く使用されている。対象物の表面上に所望の構造やテクスチャを生成するために使用される原理は、例えば、独国特許出願公開第4209933号明細書に記載されている。このプロセスは、例えばさらなる刊行物、欧州特許出願公開第1189724号明細書および国際公開第0074891号に記載されているように、造形用のコートを引き上げる代わりに、材料がレーザー機械加工によって層毎に昇華される「逆立体造形法」と見なすことができる。
【0003】
レーザーアブレーションによって対象物を加工するための工作機械も同様によく知られている。例えば、欧州特許出願第2301706号明細書には、そのような装置の可能な技術的設計が記載されている。この工作機械は、加工される三次元立体対象物をその上に設置するための対象物ホルダーと、材料を除去するために対象物上にレーザービームを放出するためのレーザーヘッドとを含んでいる。複数の機械加工構想、例えば、3軸方向(直交X,Y,Z系)に直線移動可能な対象物ホルダーまたはレーザーヘッドが考えられる。好適には、より高い精度と柔軟性とを可能にするために、対象物ホルダーまたはレーザーヘッドは、付加的に、2つの回転軸線周りで高精度に回転することができる。
【0004】
工作機械のレーザーヘッドが定義された位置に位置決めされると、レーザービームは限られた範囲内で移動させることができる。レーザービームのこの移動は、異なる光学的セットアップを使用して、異なるやり方で実現することができる。既知の例の1つでは、マシンヘッドに複数のミラーとアクチュエータとが取り付けられ、レーザービームをX、Y、Z方向に向けることができる。
【0005】
レーザーアブレーション機械加工は、複数のプロセスステップで行われ、その中で表面構造が層状に機械加工される。対象物の表面上での2次元もしくは3次元のテクスチャの実現には、多くの層を加工し、対象物の曲率に依存してあらゆる層の表面を複数のパッチに分割する必要がある。パッチは、対象物上の定義された機械加工領域であり、この領域の機械加工中、マシンヘッドは1つの位置に留まり、レーザービームのみがこの領域を移動する。通常、これらのパッチは、例えば175x175mmのサイズを超えることはない。対象物を複数の層において機械加工することは、レーザービームが表面を限られた厚さまでしかアブレーションすることができないという単純な事実に起因する。実際には、レーザーは、1つの層において1~5μmの材料の厚さを除去することができる。典型的な金属対象物のレーザーアブレーションによる彫り込みは、通常、対象物の表面上にテクスチャを彫り込むために1~200層、キャビティ通路を彫り込むために1~3000層の加工が必要である。
【0006】
機械加工された部品の品質を保証するためには、機械加工プロセスを監視することが重要である。例えば、材料の除去量は、アブレーションの品質にアクセスするための重要なパラメータの1つである。この材料除去量はレーザー出力に強く依存するため、加工物上に放出されるレーザービームの実際のレーザー出力を測定することで、アブレーション品質の指標を提供することができる。この達成のために、電力計を、レーザー源の電力出力を測定するために使用することができる。しかしながら、この値は、機械加工される部品のアブレーションのために電力が使用されるかどうかを示すものではない。
【0007】
別の公知の方法は、音響信号に基づいている。米国特許出願公開第2013025373号明細書は、パルスレーザーアブレーションにおいてターゲットから除去された材料の量を測定するための方法を開示している。この方法は、ターゲットをアブレーションするためのレーザー発生器を用いてレーザービームを発生させるステップと、レーザー発生器を遅延発生器を用いて駆動するステップと、ターゲットがレーザービームによってアブレーションされるときに発生する音響信号を獲得し、マイクロホンを用いて相応に電気信号を生成するステップと、マイクロホンによって生成された電気信号を前置増幅器を用いて増幅するステップと、遅延発生器および前置増幅器に接続されたデジタルオシロスコープを用いて、レーザービームによりターゲットがアブレーションされるときに発生する音響信号の強度を示す音響波形を表示するステップと、音響波形に従って、パルスレーザーアブレーションにおいてターゲットから除去された材料の量をリアルタイムで推論するステップと、を含む。
【0008】
しかしながら、音響センサを使用することによってレーザー機械加工プロセスを監視する方法にはいくつかの欠点がある。第1に、音速が遅いため、レーザー照射制御と測定との間に大きな遅延が存在し、例えば、この遅延は、音響センサが照射領域から30センチメートル離れたところに位置決めされている場合、約1ミリ秒となり得る。
【0009】
第2に、加工物上の連続したレーザーショットは、多くの異なる方向において起こるため、音の遅延は一定ではなく、したがって、ドップラー効果により誘起される遅延は変化する。その上さらに、レーザー動作周波数(10~1000kHz)に依存して、簡素な音響マイクロホンの代わりに複雑なセンサが必要になる。これはシステムのコストを増加させる。付加的に、レーザー動作周波数はむしろ高い方が好適なため、あるパルスの音響信号は、次のパルスの音響信号と相互作用する。意味のある値を得るためには、複雑なリアルタイムアルゴリズムを実装する必要がある。
発明の概要
【0010】
本発明の課題は、既知の方法の欠点を克服するために、レーザー機械加工プロセス、特に、加工物上にテクスチャを彫り込んだり、またはキャビティを彫り込んだりするためのプロセスを監視するための方法を提供することである。本発明の課題は、レーザー機械加工プロセスのリアルタイム監視を提供することである。本発明のさらなる課題は、監視の精度を最適化することである。特に、本発明の課題は、少ないデータ量でレーザー機械加工プロセスを監視する方法を練り上げることにある。
【0011】
本発明によれば、これらの課題は、独立請求項の特徴によって解決される。付加的に、さらなる有利な実施形態は、従属請求項および明細書に引き継がれる。
【0012】
本発明は、レーザー工作機械のレーザー機械加工プロセス、特にレーザー工作機械によってテクスチャを彫り込んだり、またはキャビティを彫り込んだりするためのプロセスを監視するための方法に関する。レーザー源が設けられており、該レーザー源は、加工物の表面上にパルスレーザービームを放出して加工物の材料をアブレーションするためにレーザービーム制御信号によって制御されている。レーザービームと加工物の材料との相互作用により、プラズマが生成される。本方法は、以下のステップ:
-生成されたプラズマの光放出を検出し、感知デバイス、特にフォトダイオードによってプラズマ信号を生成するステップであって、ここで、フォトダイオードの前面に、加工物の表面から反射されたレーザービームの波長をフィルタリングする光学フィルタが設けられているステップと、
-信号処理ユニットにより、複数のパルスを含む電気信号である生成されたプラズマ信号と、レーザービーム制御信号とを受信するステップであって、ここで、放出された各レーザーパルスはプラズマ信号の1つのパルスを引き起こすステップと、
-信号処理ユニットによってプラズマ信号のパルスから特性値を決定し、決定された特性値を、プラズマ信号とレーザービーム制御信号とを組み合わせることによって加工物上のアブレーション位置にマッピングするステップとを含む。
【0013】
レーザーアブレーションは、レーザービームを固体表面に放出することにより、固体表面から材料を除去するプロセスである。加工物の材料はレーザービームからのエネルギーを吸収し、吸収されたエネルギーによって加熱される。このようにして、材料は蒸発もしくは昇華する。同時に、レーザービームと加工物の材料との間の相互作用によりプラズマが形成される。プラズマは、レーザービームと材料との間の相互作用によって生成されるため、プラズマ信号は、実際のアブレーション条件を反映する。したがって、生成されたプラズマを監視することで、機械加工品質に関する情報を直接提供することができる。このやり方によれば、信頼性の高い機械加工プロセスの監視を達成することができる。本発明は、レーザー溶接やレーザー切断には適用されない。
【0014】
プラズマの光放出は、感知デバイスによって検出することができる。1つの有利な変形形態では、フォトダイオードがプラズマの光放出を記録するために適用され、検出された光信号をフォトダイオードの出力信号として電気信号に変換し、これをプラズマ信号と定義する。代替的に、プラズマの検出に適した他の感知デバイス、例えば高解像度カメラを使用することも可能である。しかしながら、カメラによって捕捉した画像の信号処理は難しく、監視の精度もカメラの画素分解能に依存する。フォトダイオードを適用することにより、プラズマの光放出の時間に伴う変動は、簡単な信号処理アルゴリズムによって正確に捕捉して分析することができる。
【0015】
レーザービームが加工物上に放出された場合、レーザービームの一部は加工物の表面から反射される。それゆえ、光学フィルタを感知デバイスの前方に配置して、レーザービームの波長をフィルタリングし、それによって、プラズマの光のみが感知デバイスに到達可能になる。フォトダイオードおよび光学フィルタは、工作機械における機械加工領域に固定的に取り付けることができる。代替的に、それらを1つのユニットとして構築し、工作機械において取り外し可能に取り付けることも可能である。
【0016】
工作機械の柔軟性を向上させるため、2つ以上のレーザー源をレーザー工作機械に設けることができる。これにより、異なる用途に適した異なるタイプのレーザーを放出することができ、例えば、第1のレーザー源は515nmの波長を有し、第2のレーザー源は、1030nmの波長を有し、第3のレーザー源は、1064nmの波長を有する。この変形形態では、異なる波長を有するレーザービームをフィルタリングするのに適した複数の光学フィルタまたは1つのフィルタが、フォトダイオードの前方に含まれる。
【0017】
レーザー加工に対しては、連続レーザーまたはパルスレーザーのいずれかを使用することができる。本発明では、パルスレーザーが適用される。レーザービームの各パルスは、例えばナノ秒、ピコ秒、またはフェムト秒の非常に短い時間で非常に大きな熱入力を引き起こし、その結果、加工物の固体材料が蒸発もしくは昇華し、これがプラズマの生成に結び付いている。各レーザーショットはプラズマを生成し、放出される光はこのプラズマに直接依存する。通常の測定デバイスは、フェムト秒スケールにおいて実際に起こっていることを示すためには遅すぎるが、フォトダイオードはそのような信号を検出するのに適している。
【0018】
通常、1つのレーザーショットは、1つのレーザーパルスを発生する。しかしながら、いわゆるバーストモードでは、各レーザーショットはサブパルスのトレインを生成する。これは、1つのレーザーパルスが数ナノ秒でサブパルスのトレインに分割されることを意味する。測定デバイスが低速の場合、すべてのサブパルスによって引き起こされるプラズマは、プラズマ信号の単一パルスに統合される。したがって、各プラズマパルスは、バーストモードにおける1つのレーザーショットのサブパルスによって引き起こされたプラズマ信号を表している。しかしながら、高速感知デバイスを適用すれば、各サブパルスを検出することが可能である。このケースでは、各プラズマパルスは、1つのサブパルスによって引き起こされるプラズマ信号を表すことができる。バースト中のサブパルスの数は既知であるため、期待されるプラズマパルスの数は、レーザーショットの数とバースト中のサブパルスの数との乗算を用いて計算することができる。バーストモードでさえも、レーザーショットの数は、レーザー周波数によって直接決定することができる。例えば、レーザー周波数が200kHzでバースト回数が3回の場合、秒毎のレーザーショットの数は200k、サブパルスの総数は600kとなる。低速の感知デバイスが適用された場合、200kのプラズマパルスが期待できる。高速の感知デバイスが適用された場合、600kのプラズマパルスが期待できる。
【0019】
いくつかの実施形態では、適用されるレーザービームは、ナノ秒レーザー、ピコ秒レーザー、またはフェムト秒レーザーである。
【0020】
信号処理ユニットは、センシングデバイスからの出力信号および工作機械、特に工作機械のコントローラからのレーザービーム制御信号の両方を受信し、次いで、電気信号を解析し、その場でのプロセス監視を達成するように構成されている。信号処理ユニットは、部分的にもしくは全体的に工作機械に組み込まれている。特に、信号処理ユニットとコントローラとの間の高速通信を保証するために、それらは工作機械のコントローラに近接して、特に収集ボード上に配置される。典型的には、工作機械を制御するために、産業用コンピュータが、工作機械の電気キャビネット内に取り付けられている。例えば、産業用コンピュータは、工作機械のコントローラとして機能することができる。信号処理ユニットを同じコンピュータ内に直接組み込むことも可能である。このようにして、プラズマ信号と信号処理ユニットの出力とが工作機械のディスプレイ上にリアルタイムで直接表示され得る。しかしながら、信号処理ユニットが工作機械のコンピュータの外部に配置されることも排除されない。このケースでは、データが遅延を伴って記録され、表示される。
【0021】
加工物上のテクスチャのアブレーションのために、レーザービームは連続的にターンオンにされるのではなく、テクスチャのパターンに依存してオン状態とオフ状態との間で切り替えられる。それゆえ、レーザービームは、高振幅と低振幅とを有する矩形の電気信号であるレーザービーム制御信号によって制御される。通常、レーザービーム制御信号は、テクスチャが典型的には不規則なパターンを有しているため、非周期的な信号である。しかしながら、レーザービーム制御信号が周期的な信号であることは除外されず、特に、一定のデューティサイクルまたは可変のデューティサイクルを有することができる。例えば、テクスチャが正方形の場合、レーザービーム制御信号は、機械加工されるすべてのラインが同じ長さを有するため、周期的な信号である。信号処理ユニットにより記録および/または分析されるデータ量を最適化するために、レーザービーム制御信号が高振幅を有する場合に特性値を決定するように構成されている。これは、レーザービームが放出されている場合にのみ、プラズマ信号が記録され、分析されることを意味する。レーザービームが放出されていない場合には、アブレーションは行われないため、プロセスを監視する必要はない。そのような手段は、処理すべきデータ量を低減することができる。
【0022】
別の実施形態では、レーザービーム制御信号が非活動化状態の場合、プラズマ信号を記録し、分析することができる。このケースでは、本発明は、不要なレーザーショットが発生する異常な条件を検出することができる。これは、例えば、レーザービーム制御信号が十分に接地されておらず、結果として低振幅値の代わりにノイズの多い信号が生じている場合などのケースであり得よう。
【0023】
一変形形態では、信号処理ユニットは、プラズマ信号のパルスの振幅のピーク値を特性値として決定するように構成されている。好適には、信号処理ユニットは、プラズマ信号のパルスのピーク値を決定するためのピーク検出器を含む。
【0024】
有利には、信号処理ユニットは、プラズマ信号の少なくとも1つのパルスの振幅のピーク値の平均値を特性値として決定するように構成されている。これにより、測定ノイズを低減し、生成されるデータ量を低減することが可能になる。これは、信号処理ユニットにダッシュ平均値モジュールを含めることによって達成される。
【0025】
本発明では、アブレーションは、ダッシュ毎に行われる。各ダッシュは、機械加工経路を表し、この機械加工経路は、複数のレーザーパルスにより、レーザービーム制御信号を継続的に高振幅に設定することによって連続的にアブレーションされる。
【0026】
加工物の表面の完全なテクスチャリング機械加工は、複数の機械加工層をアブレーションすることを含み、これは各層について、関係する層のための各位置についてパッチを加工するために機械加工ヘッドが到達しなければならない位置のセットを伴う。各パッチ内で、アブレーションはダッシュ毎に行われる。実際には、1つのパッチ内で、アブレーションはライン毎に行われるが、そのラインがアブレーションされるべきでない領域によって破断している場合には、レーザービームは、ターンオフされ、この領域の後で再びターンオンされる。このケースでは、1本のラインに沿って複数のダッシュがアブレーションされる。ダッシュの長さは、加工物上のアブレーションされるパターンに依存するため可変である。レーザービーム制御信号は、ダッシュの長さに対応するように設計されているため、典型的には非周期的である。
【0027】
機械加工プロセスをダッシュレベルで正確に監視するために、信号処理ユニットは、特性値としてダッシュ平均値を決定するように構成されている。ダッシュ平均値は、1つのダッシュをアブレーションすることによって生成されるプラズマ信号のパルスの振幅のすべてのピーク値の平均値によって定義される。これにより、各ダッシュのアブレーション品質を監視する可能性が提供される。加工物上のすべてのダッシュの位置は既知であるため、決定されたダッシュ平均値は、加工物上のアブレーション位置にマッピングすることができる。1つのダッシュ平均値が正常でないように見える場合、対応するダッシュまたは不良の機械加工位置は、簡単に位置特定することができる。
【0028】
さらに、閾値が定義され、特性値が、アブレーションの異常性を決定するために閾値と比較され、特に、特性値が閾値よりも小さい場合には異常性が識別される。
【0029】
好適な変形形態では、少なくとも1つのダッシュ平均値は、加工物上の少なくとも1つのダッシュの位置にマッピングされる。信号処理ユニットは、ダッシュカウンタとして定義されるユニットを含み、このユニットは、レーザービーム制御信号に基づいて、機械加工された加工物の開始から各ダッシュを識別するように構成されている。ダッシュカウンタは、ダッシュの決定された特性値が対応するダッシュに関連付けできるように、ダッシュを連続的にカウントするように構成されている。ダッシュカウンタは、EMと表記されるレーザービーム制御信号を使用して、ゼロから始まるダッシュをカウントするように構成されている。EM信号が高振幅に転向する場合のあらゆる時点でダッシュを検出し、カウントすることができる。例えば、第1の層が機械加工されると、ダッシュカウンタは、第1の層上のダッシュを次々にカウントし始める。次いで、第2の層が機械加工されると、ダッシュカウンタは、第2の層上のダッシュを連続的にカウントする。したがって、すべてのダッシュ平均値を対応するダッシュに割り当てることができる。さらに、ダッシュの位置は、機械加工経路を定義する機械加工ファイルを通して既知である。このようにして、ダッシュ平均値を加工物上のアブレーション位置にマッピングすることができる。
【0030】
別の変形形態では、ダッシュカウンタおよび層カウンタの両方が実装されている。ダッシュ番号は、各層の開始時にゼロにリセットされると同時に層カウンタが増分されるか、または第1の層を機械加工するケースではゼロにセットされる。例えば、第1の層が機械加工されると、層カウンタはゼロに設定され、ダッシュカウンタは、第1の層上のダッシュを次々にカウントし始める。次いで、第2の層が機械加工され、層カウンタは値1に増分され、ダッシュカウンタは、第2の層上のダッシュを開始からカウントする。
【0031】
さらなる変形形態では、3つのカウンタ:層カウンタ、パッチカウンタ、およびダッシュカウンタが実装されている。機械加工の開始時、これら3つのカウンタすべてがゼロにリセットされ、ダッシュカウンタは、第1の層上の第1のパッチの機械加工中にカウントを始める。次いで、新しいパッチが始まると、パッチカウンタが増分され、ダッシュカウンタはゼロにリセットされる。前述のように、ダッシュカウンタは新しいパッチの新しいダッシュ毎にカウントを継続する。新しい層が機械加工を施されると、パッチカウンタおよびダッシュカウンタの両方がゼロにリセットされ、層カウンタが増分され、通常のようにダッシュカウンタは新しい各ダッシュについて増分され、パッチカウンタは新しい層の新しい各パッチについて増分される。
【0032】
層カウンタおよびパッチカウンタは、それぞれパッチと層とをカウントできるように、機械加工ファイルからデータを受信するように構成されている。
【0033】
機械加工前に、機械加工データを含む機械加工ファイルは、加工物の幾何形状とその上に彫り込まれるテクスチャとに基づいて生成する必要がある。工作機械のコントローラは、機械加工ファイルがすべてのダッシュ、パッチ、および層の機械軸および光軸の座標を定義しているため、機械軸および光軸を制御し、レーザーヘッドによって放出されたレーザービームを定義された位置に移動させるために、機械加工ファイルを読み取ることができる。一般に、機械加工ファイルは工作機械から準備され、機械加工ジョブが開始されるときに工作機械にロードされる。しかしながら、機械加工ファイルが工作機械内で生成されることも除外されない。生成された機械加工ファイルは、実質的に工作機械経路からなり、工作機械経路は、加工物に関してレーザー機械加工ヘッドが占めなければならない位置の連続と、各位置について、この位置からレーザービームが実行されなければならない走査に対応するアブレーション動作の連続とを含む。それゆえ、ダッシュ番号と、ダッシュカウンタによって決定されるすべてとを知ることで、加工物上の各ダッシュの位置が機械加工ファイルにおいて定義され、コントローラから読み取ることができる。ダッシュ平均値を、加工物上のダッシュの位置にマッピングさせることにより、本方法は、機械加工の異常性と加工物上のその対応する位置とを検出することができる。
【0034】
異常性のより正確な位置を検出することできる有利な変形形態では、ダッシュが論理的に複数の区分に分割され、区分平均値が少なくとも1つの区分の特性値として決定される。レーザービームは、同じダッシュの区間の間では停止されない。区分平均値は、前述の1つの区分をアブレーションするために適用されたレーザーパルスによって引き起こされたプラズマ信号のパルスの振幅のピーク値の平均値によって定義される。あらゆる区分は、加工物内の対応するX,Y,Z位置が検出できるように定義される。例えば、各ダッシュは、以下のように複数の区分に分割することができよう:ダッシュの第1のミリメートルは、ダッシュが1ミリメートルより長い場合、第1の区分であり、第2のミリメートル単位は、ダッシュが2ミリメートルより長い場合、第2の区分であり、最後の区分は1ミリメートル以下である。ダッシュはカウンタに関連付けられるので、区分カウンタおよびそれぞれのパルスカウンタの両方を、ダッシュ内のあらゆる区分およびそれぞれのあらゆるパルスを識別するために実装することもできる。区分カウンタは、ダッシュの開始時にゼロにセットされ、新しい区分毎に増分される。1つのダッシュのアブレーション中、レーザービームは、一定速度VLで移動する。レーザー周波数fLが適用されている場合、2つのレーザーショット間の距離は、dLS=VL/fLとして計算することができる。この値が既知であれば、区分は、プラズマ信号のパルスの数をカウントすることによって識別することができる。例えば、レーザービーム速度VL=2000mm/s、レーザー周波数fL=100kHzであれば、2つのレーザーショット間の距離dLS=(2000mm/s)/100kHz=20μmである。ある区分が1mmの長さで定義されるならば、これは、50パルス後にこの区分が終了することを意味する。これらの50パルスは、パルスカウンタを使用してダッシュを複数の区分に分割するために使用される。この例では、50パルス毎に新しい区分が開始される。
【0035】
区間平均値が閾値と異なる場合、異常性を決定することができる。ダッシュをさらに区間に分割することにより、エラーの箇所をより正確に識別することができる。特に、それはダッシュが非常に長い場合に有意である。その上さらに、少なくとも1つの区分平均値は、加工物上の少なくとも1つの区分の位置にマッピングされる。
【0036】
前述したように、特性値は、機械加工プロセスの異常性を検出するための指標として機能する。その他に、これは後述するように、さらなる診断のために適用することができる。
【0037】
1つの変形形態では、特性値は、機械要素の故障を検出するために適用することができる。例えば、ミラー、レーザー源、またはアクチュエータが壊れた場合などである。特に、複数の連続的なダッシュの決定されたダッシュ平均値がすべて第1のトリガーより低い場合、機械要素の故障が識別される。特に、第1のトリガーは構成可能である。
【0038】
別の変形形態では、特性値は、機械テーブル上の加工物の不良な位置決めを検出するために適用することができる。特に、所定の数の連続的なダッシュの決定されたダッシュ値が第2のトリガーよりも低い場合、加工物の不良な位置決めが検出される。特に、第2のトリガーは構成可能である。
【0039】
さらに、特性値は、例えばノズルの不良な配向、パイプの折れなど、不良なブロー条件を検出するために適用することができる。このケースでは、所定の数の連続的なダッシュの決定されたダッシュ平均値は、高い標準偏差を有する。したがって、複数の連続的なダッシュの測定されたダッシュ平均値の標準偏差が第3のトリガーよりも高い場合、不良なブロー条件が検出される。特に、第3のトリガーは構成可能である。
【0040】
付加的に、特性値は、集束軸(Z)に沿ったレーザービームの焦点を検出するために適用することができる。焦点距離を決定するための既知の方法は、想定される焦点距離周辺の異なるZ値で、小さなレーザー出力を使用して、加工物上にいくつかの小さな正方形(例えば2x2mm)を機械加工することである。機械加工された正方形の色を比較し、絶対的な相対ΔZの対で整理することにより、実際の焦点距離が設定されてよい。本発明を使用して、同じ正方形(例えば2x2mm)を、ダッシュ平均値の記録とともに、低減された出力あるいはフル出力で機械加工してよい。最後に、正確な焦点距離は、ダッシュ平均値がZ軸位置の放物線関数に追従すると仮定して、特定の数学的アルゴリズムを使用して計算することができる。
【0041】
別の変形形態では、特性値は、レーザー処理中の電力シフトを検出するために適用することができる。これは、測定されたダッシュ平均値が緩慢に変化し、機械加工開始時の値V1から始まり、機械加工中の後半の値V2に達することを意味する。電力シフトは、パルスエネルギーが変化しない時間範囲[t-Δ;t]を連続的に考慮し、この時間範囲で測定されたダッシュ平均値の平均勾配を計算することで取得することができる。電力シフトは、平均勾配の絶対値が第4のトリガーよりも高い場合に検出される。特に、第4のトリガーは構成可能である。この絶対値は、勾配がほぼ平坦であるべきことを示し、上昇勾配または下降勾配のいずれかが不良な条件である。
【0042】
1つの変形形態では、不良な加工物幾何形状を検出することができ、これは、部品表面が、CADにおいて計算されたZ軸値においてではないことを意味し、結果として不良な焦点が生じる。
【0043】
1つの変形形態では、特性値は、不規則な機械加工、特に一連の部品間の非反復的機械加工を検出するために適用することができる。このケースでは、良好な条件と適正な焦点距離とで機械加工された基準部品についてのすべてのダッシュ平均値の記録を含むことが想定される。新しい部品上の異常性の出現を検出するために、基準部品と新しい部品との間でダッシュ平均値を比較することができる。特に第5のトリガーが構成可能であるならば、構成可能な数の連続的なダッシュについて、新しい部品と基準部品とのダッシュ平均値の差分がすべて第5のトリガーよりも大きい場合に異常性が検出される。
【0044】
別の変形形態では、特性値は、加熱、曲げ、ビーム経路上の埃などの光学的問題によるレーザービームの集束シフトを検出するために適用することができる。このケースでは、測定されたダッシュ平均値が緩慢に変化し、特定の機械加工時点における値V1から始まり、機械加工の後半に値V2に達する。集束シフトは、平均勾配の振幅が、構成可能な第6のトリガーよりも大きい場合に検出される。
【0045】
さらなる変形形態では、特性値は、加工物の材料の変化を検出するために適用することができる。いくつかの用途については、加工物を少なくとも2つの材料で作成したり、または1つの材料で作成して別の材料でコーティングしたりすることができる。例えば、金属部品をセラミックでコーティングすることができる。機械加工中に、アブレーションされる材料が金属からセラミックに変化する。特性値は、現在どの材料が機械加工されているかを検出するために適用することもできる。このケースでは、例えば、動作コードを機械加工ファイル内に含ませたり、あるいは材料を変化させ、どの時点で検出するかの問い合わせを任意の他の手段に含ませることによって指示が与えられる。連続的なダッシュ平均値の分析は、3つの連続的なグループ:安定したダッシュ平均値を有するダッシュのための第1のグループ、第1のグループと第3のグループとの間の移行部である第2のグループ、および安定したダッシュ平均値を有しかつ第1のグループとは異なるダッシュを含んでいる第3のグループに分割してよい。安定基準は、構成可能な「n」個のダッシュ平均値の標準偏差が、構成可能な第7のトリガーよりも小さいことに基づいている。標準偏差が、構成可能なトリガーよりも小さい場合、その材料は均質であると言える。例えば、金属製部品の部分もしくはセラミック製部品の部分は均質であると言える。そうでない場合は、移行ゾーン、例えば金属からセラミックへの移行ゾーンが検出される。
【0046】
好適な変形形態では、特性値は、レーザー材料相互作用の点で最良の結果を与えるレーザーパラメーターを検出するために使用することができる。これを達成するために、例えば5x5mmのサイズを有しかつ様々なレーザーパラメーターを伴ういくつかのテスト部品が機械加工される。各テスト部品について、異なるレーザーパラメーター設定が適用される。目標は、最高ダッシュ平均値またはダッシュ平均値の最小標準偏差によって定義される最良のパフォーマンスを有するものを自動的に見つけることである。
【0047】
1つの変形形態では、特性値は、除去された材料の体積、特に各レーザーショットによって除去された材料の体積、各ダッシュをアブレーションすることによって除去された材料の体積、各区分をアブレーションすることによって除去された材料の体積を決定するために使用することができる。
【0048】
上述したように、ダッシュ平均値もしくはダッシュ平均値の勾配が定義された時間範囲内で変化することに基づいて、あるいはダッシュ平均値の標準偏差に基づいて、異なる診断を実行することができる。
【0049】
有利には、レーザー機械加工パラメータおよび/または機械加工条件および/またはデバイス情報が、診断のためにダッシュ平均値に関する情報と組み合わされる。例えば、バルブおよびノズルに関する情報は、ブロー条件を検出するための付加的情報として使用することができる。
【0050】
ダッシュ平均値は、アブレーション中にコントロールパネル上にリアルタイムで表示することも、または格納して機械加工後に表示することもできる。
【0051】
付加的に、第1の加工物上のテクスチャのアブレーション中に記録された第1のプラズマ信号を基準信号として格納し、これを、第2の加工物上の同じテクスチャのアブレーション中に記録された第2のプラズマ信号と比較して、第2の加工物の機械加工の機械加工不安定性を検出することもできる。
【0052】
異なる色をダッシュ平均値に割り当てることにより、テクスチャの画像上に機械加工品質を直接表示することが可能である。このグラフィックイラストは、機械加工品質の明確な視覚的プレゼンテーションを提供するために、機械加工中にリアルタイムで表示することもできる。
【0053】
異常性が検出された場合、または診断が実行された場合、以下のアクション:
a.機械加工を停止し、加工物の2Dまたは3D表現上に異常性の箇所を示すアクションと、
b.機械加工を継続し、異常性の箇所を後の表示のために格納するアクションと、
c.機械加工パラメータを調整するアクションおよび/またはブロー、レーザー出力、レーザー周波数、Z軸位置などの機械的な機械加工条件を調整するアクションとのうちの1つが実行される。
【0054】
本発明はさらに、レーザー機械加工プロセスを監視するためのシステムに関する。このシステムは、感知デバイス、特にフォトダイオード、光学フィルタ、および信号処理ユニットを含む。感知デバイスは、レーザービームと加工物との間の相互作用によって生成されるプラズマの光放出を検出し、プラズマ信号を生成するように構成されている。光学フィルタは、反射されたレーザービームの波長をフィルタリングするために感知デバイスの前面に設けられている。信号処理ユニットは、ここで複数のパルスを含む電気信号であるプラズマ信号と、レーザービーム制御信号とを受信し、プラズマ信号のパルスから特性値を決定し、プラズマ信号とレーザー制御信号とを組み合わせることによって、決定された特性値を加工物上のアブレーション位置にマッピングするように構成されている。
【0055】
本発明は、加工物上にテクスチャを彫り込んだり、またはキャビティを彫り込んだりするためのレーザー工作機械にも関する。レーザー工作機械は、レーザーヘッド、コントローラ、機械加工領域、およびレーザー機械加工プロセスを監視するためのシステムを含む。レーザーヘッドは、加工物の表面上にパルスレーザービームを放出し、加工物の材料をアブレーションするためのレーザー源を含む。コントローラは、高振幅と低振幅とを有するレーザービーム制御信号を生成するように構成され、レーザービームは、制御信号が高振幅を有する場合にターンオンされ、レーザービームは、制御信号が低値を有する場合にターンオフされる。
【0056】
以下では、本発明のより具体的な説明をさらに行う。これらの実施形態は、添付図面を参照して詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1】レーザーアブレーション用工作機械およびそのレーザーヘッドを示した簡略図である。
【
図2】レーザーアブレーション用工作機械およびそのレーザーヘッドを示した簡略図である。
【
図3】ダッシュを有する1つのパッチの機械加工経路の一例を示した図である。
【
図5】信号処理ユニットを概略的に示した図である。
【
図9】いくつかのダッシュを有するパッチを示した図である。
【
図10】レーザー出力に関するプラズマ信号を示した図である。
【
図11】決定されたダッシュ平均値の例を示した図である。
【
図14】
図13に示されたプラズマ信号のダッシュ平均値を示した図である。
【
図15】
図13に示されたプラズマ信号に関するレーザービーム制御信号を示した図である。
【
図16】長いダッシュを含むパッチと結果として生じた区分とを示した図である。
【0058】
実施例
図1は、レーザーテクスチャリング、特にレーザー彫り込みのためのレーザー工作機械100の簡略図を示す。この工作機械は、レーザービームを放出して移動させるためのレーザーヘッド3と、その上で工作物をクランプするための機械テーブルとを含む。レーザーヘッド3は、X、Y、およびZの3方向に移動させることができる。有利には、このレーザーヘッドは、高い機械加工精度と高い機械加工柔軟性とを得るために、2つの回転軸AおよびBを中心に回転移動させることもできる。レーザーヘッドは、レーザー源1からのレーザービームを受光し、いくつかのミラーやアクチュエータなどのビーム偏向デバイスや、集光レンズなどの光学デバイスを含む。レーザーヘッド3および加工物は、5つの機械軸に従って互いに関して位置決めされ、これにより、放出されるレーザービームの方向を配向し、アブレーションのために加工物の表面上にレーザービームの焦点を位置付けることが可能になる。
【0059】
図2は、レーザーヘッドのミラーとアクチュエータとの動作を示している。レーザー源1は、レーザービーム2、より具体的にはパルスレーザービームを放出する。レーザービーム2は、ミラー4および5によって反射され、これらはそれぞれ加工物7の表面上のレーザービームの投影点の位置を定義することができる。付加的に、ミラー4および5の角度位置の制御を可能にするためのアクチュエータ8が設けられている。
【0060】
ミラーによる偏向の後、レーザービームは、一般にFθレンズと呼ばれる動的集光補正を備えたレンズ6を通過する。このデバイスは、集束範囲に位置する平面内を考慮して加工物の表面とレーザービームとの衝突点を定義するようにレーザーヘッドに配置されている。焦点距離は、アブレーションを可能にする重要なパラメータである。通常、例えば430mmの焦点距離で使用されるシステムは、レーザーヘッド3の所定の位置から、アクチュエータを使用して、マーキングフィールドと呼ばれる300x300mmの平面表面を機械加工することを可能にさせる。他方では、機械加工される加工物の表面が平面ではない場合、レンズの集束能力により、マーキングフィールドはXおよびYの方向に制限される。加工物の表面の曲率が影響を及ぼす場合、各マーキングフィールドにおけるZの変動に対して、マーキングフィールドのXおよびYの寸法を低減する必要がある。
【0061】
加工物の表面に彫り込み/テクスチャリングするためには、加工物表面をパッチと呼ばれる複数の定義された領域に分割する必要がある。
図3は、1つのパッチ10を彫り込むためにレーザービームが移動する機械加工経路を示している。レーザービームが表面に当接すると、表面の材料がアブレーションされる。暗領域は、アブレーションが行われるべき表面の領域を呈示している。白色領域は、アブレーションが不要な領域を呈示している。ラインは、レーザービームのアブレーション経路を表している。
図3は単に原理を示す目的で使用されているにすぎず、したがって、暗領域に必要なすべてのアブレーション経路が呈示されているわけではない。通常、アブレーションはパッチ内でライン毎に行われる。各ラインの始点でレーザービームがターンオンされ、各ラインの終点でレーザービームがターンオフされる。各ラインは1つのダッシュ11a,11b,11cを示す。通常、1つのダッシュはラインの一方の端部から始まり、ラインの他方の端部で終わる。しかしながら、ラインが白色領域を通過すると、白色領域のアブレーションを防ぐためにレーザービームがターンオフされる。このケースでは、新しいダッシュが暗領域の別の位置から再び始まる。例えば、参照番号11aを伴う第1のダッシュは、点Eにおける第1のラインの開始から始まり、点Fにおける第1のラインの終了で終わる。参照番号11bを伴う第2のダッシュは、点Aにおいて始まり、点Bにおいて終わる。点Bでは、次の位置が白色領域にあるため、アブレーションを継続することができず、したがって、レーザービームは、点Bにおいてターンオフされ、点Cにおいて、再びCとDとの間のダッシュ経路をアブレーションするためにターンオンされる。したがって、点Cと点Dとの間のラインは、参照番号11cの伴う第3のダッシュを形成する。ダッシュの長さは可変であり、加工物上でアブレーションされるテクスチャに依存する。
図4は、工作機械の一部、特に機械加工領域12と電気キャビネット20とを概略的に示している。アブレーションのために加工物7の表面にレーザービーム2aを放出するために、レーザーヘッドが機械加工領域に設けられている。プラズマ15は、レーザービームと加工物の材料との間の相互作用のために形成される。同時に、放出されたレーザービーム2bの一部は、加工物の表面から反射される。フォトダイオード13は、プラズマの光を検出し、検出された光信号をDIOと表記されるプラズマ信号として定義される電気信号に変換できるように、加工物に近接する加工領域内に取り外し可能に取り付けられている。本発明では、反射されたレーザービームは、機械加工プロセスの監視のためには使用されず、したがって、フィルタリングする必要がある。反射されたレーザービーム2bとプラズマとを分離するために、光学フィルタ14がフォトダイオード13の前面に配置され、特にこのフィルタはフォトダイオード上に取り付けられている。
【0062】
電気キャビネット20内には、レーザー源1、コントローラ21、および収集ボード22が統合されている。しかしながら、収集部を電気キャビネットの外部に配置することも可能である。フォトダイオードの出力は、検出されたプラズマを表すプラズマ信号として定義される電気信号DIOを収集ボードに送信するために収集ボードに接続される。コントローラは、レーザービームの放出を含む機械加工を制御するためにレーザー源に接続されており、同様に収集ボードにも、収集ボード上に統合された信号処理ユニットに、特性値の計算に必要な情報、例えば、レーザービーム制御信号EMおよびレーザービームの周波数を供給するために接続されている。付加的に、コントローラと収集ボードとの間の双方向通信も使用可能である。
【0063】
図6および
図8は、プラズマ信号DIOおよびレーザービーム制御信号EMの一例を示している。レーザービーム制御信号は、典型的には、例えば0Vのローの振幅値と、例えば5Vのハイの振幅値とを有する矩形信号である。振幅がハイの場合、レーザー照射が始まり、すなわちレーザービームが放出される。振幅がローに設定されると、レーザー照射は停止され、レーザービームは放出されない。したがって、レーザービーム制御信号の各周期は、レーザービームがターンオンおよびターンオフされる場合の時間間隔を定義するために、それぞれ2つの時間間隔T
onおよびT
offを有する。T
onを伴う各時間間隔は、1つのダッシュのアブレーションのための時間周期を定義する。T
offを伴う時間間隔は、例えば、1つのダッシュの終わりから次のダッシュの開始までの光軸の移動のための時間周期を定義する。これらの時間間隔は、表面上でアブレーションされるテクスチャの形状に依存する。レーザー照射の時間間隔T
onは、特にダッシュの長さに依存する。
図8は、単に3つのダッシュを含んでいるだけの
図9に示されているパッチをアブレーションするために使用されるレーザービーム制御信号を示す。
図8では、レーザー照射の3つの時間間隔の持続時間T1
on、T2
on、T3
onは異なっているが、これは、照射される3つのダッシュ1、ダッシュ2、およびダッシュ3の長さが等しくないことによる。
図9に示されているように、第1のダッシュは第2のダッシュよりも長いが、第3のダッシュよりは短いので、したがって、T1
onは、T2
onよりも大きいが、T3
onよりは小さい。レーザー照射中にはプラズマが発生する。したがって、プラズマ信号は、レーザー照射の時間間隔T
on中にフォトダイオードによって検出され、レーザービーム制御信号の振幅がローの場合、すなわち時間周期T
off中に、プラズマ信号はフォトダイオードによって検出されない。例えば、レーザービームは、時間間隔T1
on、T2
on、およびT3
on中に放出され、時間間隔T1
offおよびT2
off中はターンオフされる。したがって、プラズマ信号は、
図6に示されているように、同じ周期で検出される。アブレーションが適正なやり方で働いていれば、各レーザー照射は、1パルスのプラズマ信号を生成する。1つのダッシュをアブレーションするためには、一般にいくつかのレーザーショットが必要である。それゆえ、1つのダッシュのアブレーション中に、生成されるプラズマ信号には複数のパルスが含まれる。一連のパルスが欠落しているならば、アブレーションのエラーを検出することができる。
【0064】
図7は、パルス幅P
widthおよび振幅P
ampを伴うプラズマ信号の1つの単一パルスを示す。パルスの振幅および幅は可変である。
図9は、ダッシュ上のレーザーショットの簡略図を示している。各々の黒点は、1つのレーザーショットを示している。レーザーショットの数は、レーザー周波数に依存する。例えば、500kHzのレーザー周波数は、毎秒500K回のレーザーショットを意味する。例えば、最初の3つのレーザーパルスは、ダッシュ3の位置P1、P2、およびP3において放出され、結果として生じるプラズマ信号のパルスは、
図6に符号L1、L2、およびL3で示されている。レーザーショットは重なり合うことができるが、図では簡略化されているため、重なり合いは示されていない。第1のダッシュについては、すべてのレーザーショットが適正に実行され、例えば、合計で6つのレーザーショットが適用され、したがって、6つのプラズマパルスが検出される。第2のダッシュおよび第3のダッシュについて、機械加工は完全には働いていない。いくつかのレーザーショットは欠落している。例えば、ダッシュ3については、第5のレーザーショットが欠落しており、したがって、プラズマ信号の第5のパルスL5も欠落している。次いで、その振幅はゼロとして定義される。
【0065】
図5は、信号処理ユニット30の概略図である。フォトダイオードの出力は、測定されたプラズマ信号をスケーリングするように構成された第1の増幅器31に接続されている。特に、第1の増幅器は可変利得増幅器であり、この増幅器は、プラズマ信号の振幅がmVから数ボルトの範囲で変動し得るので、プラズマ信号を異なる利得で増幅することができる。
図10は、レーザー出力に関するプラズマ信号の振幅の一例を示した図である。
図10に示すように、プラズマ信号の振幅は、レーザー出力の増加に伴って増加している。しかしながら、プラズマ信号の振幅とレーザーパワーとの間の関係は線形ではない。信号処理ユニットは、プラズマ信号の良好な分解能を保証するために、異なる範囲でプラズマ信号を検出できるように構成されている。選択可能な利得は、0dB~70dBの範囲から調整することができる。増幅器は収集ボードに統合することも、フォトダイオードに統合することもできる。
【0066】
第1のA/D変換器(A/D)32は、アナログ信号をさらなる処理のためのデジタル信号に変換するために第1の増幅器の出力側に設けられている。これは高分解能で高速のA/D変換器であり、典型的には16ビットで、10MHzのサンプリングレートを伴う。A/Dの範囲は数ミリボルト~10ボルトの間で調整可能である。選択可能な電圧範囲は、例えば-10V~10V、-5V~5V、-2V~2V、-1V~1V、-500mV~500mV、-200mV~200mV、および-100mV~100mVである。プラズマ信号DIOの振幅は、機械加工に適用されるレーザー出力に依存するが、レーザー出力に伴って線形に可変であるわけではない。例えば、レーザー出力の100%が適用されるならば、プラズマ信号の振幅は10Vであり、レーザー出力の60%が適用されるならば、プラズマ信号の振幅は5Vである。変換精度を保証するために、A/D変換器の信号範囲を調整する必要がある。1つの変形形態では、A/Dの範囲は、アブレーションのために適用されるレーザー出力に基づいて自動的に調整される。例えば、レーザー出力を制御するための信号は、A/D変換器の信号範囲を決定するために使用される。
【0067】
レーザービーム制御信号EMも、最初に第2の増幅器37によって増幅され、増幅された信号は、第2のA/D変換器38に供給される。この変形形態では、増幅されたプラズマ信号と増幅されたレーザービーム制御信号とを変換するために、1つのマルチチャネルA/D変換器、例えば4つのチャネルを有するA/D変換器が適用される。マルチチャネルA/D変換器を使用することにより、プラズマ信号DIOおよびレーザービーム制御信号EMは、自動的に同期させることができる。変換の結果は、各サンプル周期において、対によって(DIO+EM)で格納されるため、これら2つの信号の同期を保証するためにさらなる手段を講じる必要はない。
【0068】
ダッシュ検出器は、第2のA/D変換器の出力側に接続され、EM信号に基づいて1つのダッシュのアブレーションの始まりと終わりとを識別するように構成されている。
【0069】
さらに、ダッシュカウンタは、各ダッシュをその順次連続する順序番号で識別し、特にダッシュを1つずつカウントするためにダッシュ検出器の出力側に接続されている。
【0070】
第1のA/D変換器の出力側には、プラズマ信号DIOとレーザー制御信号EMとを組み合わせることによって、プラズマ信号の各パルスの振幅のピーク値を識別するピーク検出器が接続されている。ピーク検出器は、信号をパルス毎に処理するように構成されている。ダッシュ検出器の出力は、1つのダッシュのアブレーションの始まりと終わりとに関する情報を提供する。ピーク検出器が1つのダッシュのアブレーションが開始されたという情報を受信すると、ピーク検出器は、このダッシュのアブレーション中に生成されたプラズマ信号の処理を始める。ピーク検出器が1つのダッシュのアブレーションが終了したという情報を受信すると、ピーク検出器は信号の処理を停止する。これらのピーク値は、ピーク検出器において決定され、ピークリストに格納される。1つのレーザーショットによって生成されたプラズマ信号の各パルスは、信号DIO上で測定され、信号ピーク値を生成する。N個の複数のレーザーショットは、N個のピーク値のリストを生成する。付加的に、レーザー周波数もピーク検出器に入力される。この情報を使用することにより、1つのダッシュ内でどのくらい多くのプラズマパルスが期待されるかを計算することができる。ダッシュ平均値は、1つのダッシュのアブレーション中に生成されたすべてのパルスのすべてのピーク値の合計を、期待されるパルスの数で割ったものとして定義されるため、たとえ異常な機械加工条件のために1つのプラズマパルスが欠落したとしても、ダッシュ平均値を適正に計算することができるように、期待されるプラズマパルスの数を適正に決定することができる。ダッシュ平均値モジュール35は、LumDioとして示されるこの値を計算するように構成されている。例えば、
図6および
図8に示されているように、時点t
4においてレーザービーム制御信号EMがローからハイに転向すると、この新しいダッシュ(ダッシュ3)のアブレーションが始まる。ピーク検出器は、パルスの振幅のピーク値(DIOピーク)の決定を始める。最初に、第1のパルスL1のピーク値がピーク検出器によって決定されてピークリストに格納され、次いで、第2のパルスL2のピーク値がピーク検出器によって決定されてピークリストに格納されるなどである。パルスL8のピーク値が決定されてピークリストに格納された後、レーザービーム制御信号は、時点t5においてローに転向し、したがって、ピーク検出器はピーク値の決定を停止し、ダッシュ平均値モジュール35が起動可能になる。
【0071】
その後、8つのパルスのピーク値の平均値LumDioがダッシュ平均値モジュールによって計算される。たとえ第5のパルスが検出されなかったとしても、レーザー周波数とレーザービーム制御信号EMとに基づいて、期待される数のパルスが適正に計算される。プラズマ信号の振幅は、異なる物理的な影響のために変動し得る。たとえ同じレーザー出力を印加していたとしても、アブレーション中に生成される光(もしくはプラズマ)は変動し得るため、生成された光の強度に依存するパルス信号の振幅も同様に変動する。LumDioで表された平均値は、各々単一のプラズマ信号パルスよりもエラー予測についての信頼性が高い。ダッシュ平均値およびダッシュ番号は、バッファ36に格納され、工作機械の制御ユニットにさらに通信することができる。
【0072】
図11は、決定されたダッシュ平均値の応用の一例を示す。各サンプルの値は、1つのダッシュのアブレーション中に生成されたプラズマ信号のパルスの振幅の平均値に対応する。ダッシュ平均値は、たとえ一定のレーザー出力が印加されたとしてもダッシュ毎に変動することが示されている。好適な実施態様では、閾値が定義され、それによって、各ダッシュ平均値は、閾値と比較することができる。ダッシュ平均値が閾値よりも低いならば、このダッシュ内でアブレーションの異常性を導出することができる。例えば、
図11で示されるダッシュ番号1,11,14~22は、閾値よりも低い値を有しており、したがって、これらのダッシュの機械加工が異常性を有していることを導出することができる。
【0073】
すべてのダッシュを機械加工するための機械軸位置と光軸位置とが
図12に示されているように、機械加工のレーザー経路を記述する機械加工ファイルにおいて明示的に定義される。各ダッシュまたはダッシュの区分について、加工物上の座標X,Y,Zを計算することができる。なぜなら、機械軸の位置(例えばX1,Y1,Z1,A1,B1)と、光軸の位置(例えばXgalvo1,Ygalvo1)とが既知だからである。それゆえ、各々検出されたプラズマ信号を加工物上の位置に割り当てることができる。1つのダッシュに対する異常性が、プラズマ信号の監視によって検出されたならば、それを加工物上で位置特定することができる。
【0074】
マシンヘッドは、1つのパッチのアブレーション中は同じ位置に留まるので、同じパッチのすべてのダッシュの機械加工のための機械軸は、同じ位置に保持される。例えば、パッチ1のすべてのダッシュの機械加工について、機械軸は、座標X1,Y1,Z1,A1およびB1を有する位置に移動され、パッチ2のすべてのダッシュの機械加工について、機械軸は、座標X2,Y2,Z2,A2およびB2を有する異なる位置に移動される。1つのパッチ内では、レーザービームは、レーザービームの高速移動を保証するために光軸によって移動される。それゆえ、ダッシュ位置は、XおよびY方向の始まりの位置(Xgalvst、Ygalvst)とXおよびY方向の終わりの位置(Xgalvend,Ygalvend)とを有する光軸によって定義される。したがって、異なるダッシュに対する光軸の座標は異なる。
【0075】
図13、
図14、
図15、および
図16は、1つのダッシュ内のサブ領域内、すなわち区分内の異常性を検出する高度なモードを示す。1つのパッチ10aが示される
図16に示されているように、参照番号11を伴うダッシュは、3つの区分に分割されている。第1の区分は点Mから点Nまでであり、第2の区分は点Nから点Oまでであり、第3の区分は点Oから点Pまでである。このダッシュのアブレーション中に生成されるプラズマ信号も、3つのセクションに対応する3つのグループに分割されている。この実施形態では、パルスの振幅のピーク値の平均値が、ダッシュ全体についてだけでなく、各グループについて計算される。
図14に示されているように、サンプル番号11、12、および13を伴った3つの区分平均値が、このダッシュについて計算される。このようにして、エラーそれぞれの位置特定や異常性をより正確に決定することができる。例えば、サンプル13は閾値よりも低い値を有しており、したがって、点Oと点Pとの間のこのダッシュの区分3においてアブレーションエラーが発生したことを検出することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 レーザー源
2,2a,2b レーザービーム
3 レーザーヘッド
4,5 ミラー
6 レンズ
7 加工物
8 アクチュエータ
10 パッチ
11a,11b,11c ダッシュ1、ダッシュ2、ダッシュ3
12 機械加工領域
13 フォトダイオード
14 光学フィルタ
15 プラズマ
20 電気キャビネット
21 コントローラ
22 収集ボード
30 信号処理ユニット
31 第1の増幅器
32 第1のA/D変換器
33 ピーク検出器
34 ピークリスト回路
35 ダッシュ平均値計算回路
36 バッファ
37 第2の増幅器
38 第2のA/D変換器
39 ダッシュ検出器
40 ダッシュカウンタ
100 レーザー工作機械
【外国語明細書】