(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088648
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】フッ素化胆汁酸誘導体
(51)【国際特許分類】
C07J 9/00 20060101AFI20240625BHJP
A61P 3/06 20060101ALN20240625BHJP
A61P 1/16 20060101ALN20240625BHJP
A61K 31/575 20060101ALN20240625BHJP
【FI】
C07J9/00 CSP
A61P3/06
A61P1/16
A61K31/575
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024038682
(22)【出願日】2024-03-13
(62)【分割の表示】P 2021529531の分割
【原出願日】2019-07-30
(31)【優先権主張番号】1812382.8
(32)【優先日】2018-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】517174500
【氏名又は名称】エヌゼットピー ユーケー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー チャールズ ウェイマウス‐ウイルソン
(72)【発明者】
【氏名】ゲマ パッカー
(72)【発明者】
【氏名】ブルーノ ジャン ポル リンクラウ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル キッド‐シンクレアー
(72)【発明者】
【氏名】キンバリー アン ワトソン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】非アルコール性脂肪性肝炎、原発性胆汁性胆管炎等の疾患及び症状の治療又は予防に有用な化合物を提供する。
【解決手段】式(I)の化合物又はその塩若しくは同位体バリアントを提供する。
式中、R
2a、R
2b、R
3a、R
3bは、独立してH若しくはF;R
2b及びR
3bの少なくとも1つは、F;R
5は、CR
6aR
6bR
8、OR
8、SR
8若しくはNR
6aR
8;R
6a、R
6b及びR
8は、独立してH若しくはメチル;Yは、結合又はC
1-4アルキレン若しくはC
2-4アルケニレンのリンカー基;R
7は、C(O)NR
17S(O)
2R
15、NR
17C(O)NR
18S(O)
2R
15等;R
15は任意に、C
1-6アルキル、C
1-6ハロアルキル、ハロ等で置換されている、5~10員のアリール若しくはヘテロアリール環;R
17及びR
18は、独立してH若しくはメチルである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)の化合物:
【化1】
(式中、
それぞれのR
2a、R
2b、R
3a及びR
3bは独立してH若しくはFであるが、R
2b及びR
3bの少なくと
も1つはFであり;
R
5はCR
6aR
6bR
8、OR
8、SR
8若しくはNR
6aR
8であり;
それぞれのR
6a、R
6b及びR
8は、独立してH若しくはメチルであり、
Yは、結合又はC
1-4アルキレン若しくはC
2-4アルケニレンのリンカー基であって、それら
のいずれかは1以上のR
10で任意に置換されており;
それぞれのR
10は、独立してハロ若しくはOHであり;
R
7は、C(O)NR
17S(O)
2R
15、NR
17C(O)NR
18S(O)
2R
15、NR
17C(S)NR
18S(O)
2R
15及びNR
17C(NR
20
)NR
18S(O)
2R
15から選択され;
R
15は任意に、C
1-6アルキル、C
1-6ハロアルキル、ハロ、O(C
1-6アルキル)及びO(C
1-6ハ
ロアルキル)から選択された1以上の置換基で置換されている、5~10員のアリール若しく
はヘテロアリール環であり;
それぞれのR
17及びR
18は、独立してH若しくはメチルであり;
R
20は、H、メチル若しくはCNである)
又は、その塩若しくは同位体バリアント。
【請求項2】
R3bはFであって、それぞれのR3a、R2a及びR2bはHである、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
R2bはFであって、それぞれのR2a、R3a及びR3bはHである、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
R3bはFであり、R3aはHであり、R2a及びR2bの1つはFであって、残りのR2a及びR2bはHで
ある;又は、R3a及びR3bは両方ともFであって、R2a及びR2bは両方ともHである、請求項1記
載の化合物。
【請求項5】
R5はエチルである、請求項1~4のいずれか一項記載の化合物。
【請求項6】
Yは結合又は1以上のOH基で任意に置換されているC1-3アルキレンリンカー基である、請
求項1~5のいずれか一項記載の化合物。
【請求項7】
R7は、C(O)NR17S(O)2R15若しくはNR17C(O)NR18S(O)2R15であって、R15、R17及びR18は
請求項1に規定されているものである、請求項1~6のいずれか一項記載の化合物。
【請求項8】
下記は独立してそうであっても、いずれかの組み合わせであってもよい請求項7記載の
化合物:
それぞれのR17及びR18(存在する場合)はHであり;並びに/又は
R15は、フェニル及び5員環若しくは6員環のヘテロアリールから選択され、それらのいず
れかは非置換でも、1以上の、請求項1に規定されている置換基で置換されてもよい。
【請求項9】
R15はフェニルであって、非置換であるか、又は、フルオロ、C1-4アルキル、C1-4フル
オロアルキル、O(C1-4アルキル)及びO(C1-4フルオロアルキル)から選択された1つの置換
基で置換されている、請求項8記載の化合物。
【請求項10】
(N,N’-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-24-ノル-5β-コラン-23-
イル)-p-トルエンスルホニル尿素(化合物1);
N,N’-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-24-ノル-5β-コラン-23-イル
)-ベンゼンスルホニル尿素(化合物2);
N,N’-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-24-ノル-5β-コラン-23-イル
)-4-(tert-ブチル)ベンゼンスルホニル尿素(化合物3);
N,N’-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-24-ノル-5β-コラン-23-イル
)-m-トルエンスルホニル尿素(化合物4);
N,N’-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-24-ノル-5β-コラン-23-イル
)-o-トルエンスルホニル尿素(化合物5);
N,N’-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-24-ノル-5β-コラン-23-イル
)-p-フルオロベンゼンスルホニル尿素(化合物6);
N,N’-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-24-ノル-5β-コラン-23-イル
)-m-フルオロベンゼンスルホニル尿素(化合物7);
N,N’-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-24-ノル-5β-コラン-23-イル
)-o-フルオロベンゼンスルホニル尿素(化合物8);
N,N’-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-24-ノル-5β-コラン-23-イル
)-p-(トリフルオロメチル)ベンゼンスルホニル尿素(化合物9);
N,N’-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-24-ノル-5β-コラン-23-イル
)-m-(トリフルオロメチル)ベンゼンスルホニル尿素(化合物10);
N,N’-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-24-ノル-5β-コラン-23-イル
)-o-(トリフルオロメチル)ベンゼンスルホニル尿素(化合物11);
N,N’-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-24-ノル-5β-コラン-23-イル
)-4-(トリフルオロメトキシ)ベンゼンスルホニル尿素(化合物12);
N,N’-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-24-ノル-5β-コラン-23-イル
)-p-メトキシベンゼンスルホニル尿素(化合物13);
N-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-5β-コラン-24-イル)-p-トリフル
オロメトキシベンゼンスルホンアミド(化合物14);
N-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-5β-コラン-24-オイル)-p-フルオ
ロベンゼンスルホンアミド(化合物15);
N-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-5β-コラン-24-オイル)-m-フルオ
ロフェニルスルホンアミド(化合物16);
N-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-5β-コラン-24-オイル)-o-フルオ
ロフェニルスルホンアミド(化合物17);
N-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-5β-コラン-24-オイル)-4-トリフ
ルオロメチルフェニルスルホンアミド(化合物18);
N-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-5β-コラン-24-オイル)-3-トリフ
ルオロメチルフェニルスルホンアミド(化合物19);
N-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-5β-コラン-24-オイル)-2-トリフ
ルオロメチルフェニルスルホンアミド(化合物20);
N,N’-(3α,7α-ジヒドロキシル-4,4-ジフルオロ-6α-エチル-24-ノル-5β-コラン-23-イ
ル)-ベンゼンスルホニル尿素(化合物21)
N-(3α,7α-ジヒドロキシル-4,4-ジフルオロ-6α-エチル-5β-コラン-24-オイル)-ベンゼ
ンスルホンアミド(化合物22);
並びに、それらの塩及び同位体バリアントから選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項11】
医薬に使用するための、請求項1~10のいずれか一項記載の化合物。
【請求項12】
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH);原発性胆汁性肝硬変;原発性硬化性胆管炎;胆道閉鎖
症;胆汁鬱滞性肝疾患;C型肝炎感染症;アルコール性肝疾患;線維症;又は線維症から生じる
肝障害、の治療又は予防に使用するための、請求項1~10のいずれか一項記載の化合物。
【請求項13】
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH);原発性胆汁性肝硬変;原発性硬化性胆管炎;胆道閉鎖
症;胆汁鬱滞性肝疾患;C型肝炎感染症;アルコール性肝疾患;線維症;又は線維症から生じる
肝障害、の治療又は予防のための薬剤の調製における、請求項1~10のいずれか一項記載
の化合物の使用。
【請求項14】
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH);原発性胆汁性肝硬変;原発性硬化性胆管炎;胆道閉鎖
症;胆汁鬱滞性肝疾患;C型肝炎感染症;アルコール性肝疾患;線維症;又は線維症から生じる
肝障害、の治療又は予防のための方法であって、請求項1~10のいずれか一項記載の化合
物の有効量をその処置を必要とする患者へ投与することを含む、前記方法。
【請求項15】
線維症は、肝臓、腎臓及び腸の線維症から選択される、請求項12記載の使用のための化
合物、請求項13記載の使用、又は請求項14記載の方法。
【請求項16】
肝線維症は、NASH、アルコール性肝疾患若しくは非アルコール性脂肪性肝疾患に関連す
るか、又は肝炎、特にB型肝炎若しくはC型肝炎、若しくは寄生虫性肝疾患等の感染症に関
連するか、又は、ウィルソン病、ゴーシェ病、グリコーゲン貯蔵障害ヘモクロマトーシス
、ツェルウェガー症候群及び先天的な肝線維症等の先天性障害によって引き起こされた損
傷に起因するか、又はクロルプロマジン、トルブタミド、メトトレキサート、イソニアジ
ド及びメチルドーパ等の薬物によって引き起こされたものであり;及び/又は
腎線維症は、糖尿病性腎症、高血圧性腎硬化症、糸球体腎炎、間質性腎炎、移植に関連
する糸球体症及び多発性嚢胞腎疾患等の疾患に関連するものであり;及び/又は
腸線維症は、腸障害と関連するものである、
請求項15記載の、使用のための化合物、使用、又は方法。
【請求項17】
請求項1~10のいずれか一項記載の化合物、及び医薬として許容し得る賦形剤又はキャ
リアを含む、医薬組成物。
【請求項18】
更に、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH);原発性胆汁性肝硬変;原発性硬化性胆管炎;胆
道閉鎖症;胆汁鬱滞性肝疾患;C型肝炎感染症;アルコール性肝疾患;線維症;及び線維症から
生じる肝障害を含む代謝症候群の、治療又は予防に適切な1以上の追加的な活性剤を含む
、請求項17記載の医薬組成物。
【請求項19】
下記を含む請求項1~10のいずれか一項記載の化合物を調製するための方法:
A. R
7が、NHC(O)N(R
18)S(O)
2R
15である一般式(I)の化合物のために:
一般式(III)の化合物:
【化2】
(式中、Y、R
2a、R
2b、R
3a、R
3b及びR
5は請求項1に規定されているものであり、R
40は保護
されたOH基である)を;
一般式(IV)のスルホンアミド:
【化3】
(式中、R
15及びR
18は請求項1に規定されているものである)と、1,8-ジアザビシクロ[5.4.
0]ウンデカ-7-エン(DBU)等の触媒の存在下で反応させ;
一般式(II)の化合物を生成し:
【化4】
(式中、Y、R
2a、R
2b、R
3a、R
3b及びR
5は請求項1に規定されているものであり、R
40は保護
されたOH基である);そして
一般式(II)の化合物を脱保護すること;又は
B. R
7が、NHC(O)N(R
18)S(O)
2R
15である一般式(I)の化合物のために:
一般式(XIII)の化合物:
【化5】
(式中、Y、R
2a、R
2b、R
3a、R
3b及びR
5は請求項1に規定されているものであり、それぞれ
のR
45及びR
46は独立して保護されたOH基である)を;
上で規定した一般式(IV)のスルホンアミドと、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エ
ン(DBU)等の触媒の存在下で反応させて一般式(XII)の化合物を生成し:
【化6】
(式中、Y、R
2a、R
2b、R
3a、R
3b及びR
5は請求項1に規定されているものであり、それぞれ
のR
45及びR
46は独立して保護されたOH基である);そして
一般式(XII)の化合物を脱保護すること;又は
C. R
7が、C(O)N(R
17)S(O)
2R
15である一般式(I)の化合物のために:
一般式(XXIII)の化合物:
【化7】
(式中、Y、R
2a、R
2b、R
3a、R
3b及びR
5は請求項1に規定されているものであり、R
46は保護
されたOH基である)を;
一般式(XXIV)のスルホンアミド:
【化8】
(式中、R
15及びR
17は請求項1に規定されているものである)と、1-エチル-3(3-ジメチルア
ミノプロピル)カルボジイミド(EDCI)等のカップリング剤及びジメチルアミノピリジン等
の塩基の存在下で反応させ;
一般式(XXII)の化合物を得て:
【化9】
(式中、Y、R
2a、R
2b、R
3a、R
3b、R
5、R
15及びR
17は請求項1に規定されているものであり
、R
46は一般式(XII)のために規定されているものである);そして
一般式(XXII)の化合物を脱保護すること。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、胆汁酸の誘導体であり、肝疾患の治療に使用することができる化合物に関す
る。特に、本発明は、ファルネソイドX受容体の選択的アゴニストであり、従って、非ア
ルコール性脂肪性肝炎(NASH)及び原発性胆汁性胆管炎等の疾患の治療に使用される化合物
に関する。本発明は又、本発明の化合物を含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、世界中の慢性肝疾患の最も顕著な原因の1つで
あり、肝移植のための主な指標に急速になりつつある(Bellentaniの文献、2017)。NAFLD
は、肝臓内の単純な脂質蓄積(脂肪症)から、肝小葉炎症と肝細胞傷害の両方を特徴とする
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)にわたる範囲の生理学的症状を表現する(Haas、Francqu
e及びStaelsの文献、2016年)。西欧では、NAFLDは重大な公衆衛生上の負担であって、英
国人口の推定30%に影響を及ぼしていると考えられる(Dyson、Anstee及びMcPhersonの文
献、2014年)。NAFLDの有病率の増加は、肥満病及び2型糖尿病の有病率の増加を反映して
おり、NAFLDは代謝症候群の肝臓症状であると考えられる(Caveらの文献、2016年)。
【0003】
NAFLD患者のうち、少なくとも10~20%がNASH発症へと進み、これは、線維症、肝硬変
、肝細胞癌腫(HCC)及び心血管疾患等の、肝臓内合併症及び肝臓外合併症の両方へ向かう
患者の傾向を伴う。あまりよく解明されていないが、脂肪症からNASHへの病理学的進行は
、脂肪毒性、酸化ストレス、小胞体ストレスを伴う複数の「ヒット」で構成され、肝臓を
感作して、先天的な免疫防御システムが介在する追加の傷害をもたらし、サイトカイン誘
導された細胞損傷へ導く、と考えられている(Pacana及びSanyalの文献、2015年)。1つの
「ヒット」には、高インスリン血症及び炭水化物リッチな食事によって活性化される、肝
臓のデノボの脂質生合成が含まれる。更に、インスリン抵抗性の結果、機能不全の脂肪細
胞内での脂肪分解は非活性化されず、循環への遊離脂肪酸(FFA)の漏出をもたらす。これ
らのFFAは、肝臓等の異所性組織内に蓄積し、そこでトリグリセリドとして保存される。
ただし、トリグリセリド貯蔵のしきい値を超えてFFAが過剰に蓄積すると、最終的にはト
リグリセリド由来の毒性代謝物による脂肪毒性が発生する。更に、トリグリセリドクリア
ランスの低下及び超低密度リポタンパク質(VLDL)移出の減少は、肝臓内での脂肪の蓄積に
寄与する。これらのイベントは、脂肪酸を酸化しようとするミトコンドリア及びペルオキ
シソームによって抑えられるが、最終的にはこれらのオルガネラの損傷につながり、活性
酸素種(ROS)及びダメージ関連分子パターン(DAMP)分子の過剰生成をもたらす。第二の「
ヒット」では、脂質過酸化並びにFFA及びROSによる炎症性サイトカインの活性化が、炎症
とアポトーシスを引き起こし、Toll様受容体を介して天然免疫防御システムを活性化させ
ることができ、更に、インスリン抵抗性を悪化させ、線維形成を開始することでNASHの進
行を永続させる(Cusiの文献、2012年)。更に又、最近の証拠は、腸肝軸がこの疾患の進行
に関係していることを示した。NAFLD患者では、腸内細菌叢の組成変化及び腸管壁浸漏性
の増加が観察され、インフラマソーム介在性共生バランス失調も又、NASH進行を促進する
と考えられる(Henao-mejiaらの文献、2012年、Mouzakiらの文献、2013年)。つまり、脂肪
毒性の肝臓イベントは、脂肪組織、腸及び免疫システムからの炎症性メディエータの間接
的な効果に加えて、この代謝障害の複雑な多因子性クロスシステム的性質に光を当て、重
要なことに、NASHの複数の潜在的な治療の標的を反映する(Haas、Francque及びStaelsの
文献、2016年)。
【0004】
現在、NASHの治療又は予防のための効果的な医学的治療法はない。ほとんどの場合、食
事やライフスタイルの変更による体重減少及びインスリン感受性の改善が推奨されるが、
多くの患者がこれらの変更を開始又は維持できないため、薬理学的であって長期的な解決
策が求められている(Neuschwander-Tetriらの文献、2015年)。NR1サブファミリーのいく
つかの核内ホルモン受容体を含む、NASHの治療のために可能性のある分子標的に焦点を当
てて研究が行われてきた。これらの受容体、特にファルネソイドX受容体(FXR)は、この疾
患の病因に関係するいくつかの経路内でそれらの基礎をなす役割を果たしているために、
魅力的な標的である。
【0005】
全ての核内受容体と同様に、ファルネソイドX受容体(FXR)は、転写を制御する後生的変
化の理由となる細胞機構を調節するリガンド活性化転写因子として作用する。FXRをコー
ドする2つの遺伝子;多くの種で高度に保存されているFXRα(NR1H4)、及びヒトの偽遺伝子
として存在するFXRβ(NR1H5)がある。FXRα遺伝子は、異なるプロモーターの使用及び代
替的なmRNAスプライシングの組み合わせにより生じる4つの異なるアイソフォームをコー
ドする。4つのアイソフォーム全てが高度に保存されたリガンド結合ドメインを有するが
、これはFXRリガンドが非選択的な様式でどんなアイソフォームにも結合し、それらは差
次的発現変動することが示され、それによって、2つのアイソフォームは主に肝細胞及び
ステロイド代謝活性を有する細胞内で発現し、他のものは、結腸、腸及び、腸肝循環に関
与する他の細胞内で発現する(Huberらの文献、2002年;Vaqueroらの文献、2013年)。更に
、いくつかのFXR標的遺伝子は、特定のアイソフォームに対して他のものよりも反応性が
高く、アイソフォーム発現全体のパターンは、FXRリガンドに対する特定の組織の感度及
び転写応答に重大な影響を有すると考えられる(Zhang、Kast-woelbern及びEdwards、2003
年;Vaqueroらの文献、2013年)。
【0006】
FXRは、構造的組織及び活性化の両方において通常の典型的な核内受容体を表す。簡単
に言えば、FXRはN末端DNA結合ドメイン(DBD)を含み、それはコンセンサスホルモン応答エ
レメントを認識し、かつこのエレメントへの結合に関与する2つのZn2+フィンガーで構成
されていて、可変ヒンジ領域を介してC末端リガンド結合ドメイン(LBD)に接続され、それ
は、小分子リガンドを同定し、入り込ませるのに必要な疎水性ポケットとして存在する(C
hiangの文献、2013年)。他の核内受容体と同様に、FXRは、義務付けられたパートナーで
あるレチノイドX受容体(RXR)を有するヘテロダイマーとしてDNAに結合する。リガンドが
存在しない場合、FXRは不活性である。一般的に、FXR/RXRヘテロダイマーは、コリプレッ
サーペプチドとの複合体中の、その標的遺伝子のAGGTCA逆方向反復応答エレメントへ予備
結合している(Neuschwander-Tetriの文献、2012年)。リガンド結合で活性化されると、受
容体は立体構造が変化し、それによってコリプレッサー複合体が放出され、リガンド結合
ポケットの疎水性溝にあるLXXLL共活性化モチーフのための結合部位が露出する(Copple及
びLiの文献、2016年)。「チャージクランプ」が、LBD表面と、サイトに動員されるコアク
チベータータンパク質の両端との間の水素結合によって形成される。最終的に、これは標
的遺伝子のクロマチン構造の変化を引き起こし、一般的な転写因子及びRNAポリメラーゼ
がそれらのプロモーターへアクセスすることを可能にし、その結果それらの転写を開始す
る(Ananthanarayananらの文献、2004年)。
【0007】
FXRのための古典的な内因性リガンドは、胆汁酸である。胆汁酸は、哺乳類の胆汁内で
見られるステロイド酸であり、コール酸、ケノデオキシコール酸、リトコール酸、デオキ
シコール酸等の化合物を含み、これらは全て、ヒトにおいても認められる。
【0008】
下記に、ステロイドの一般的な番号付けシステム及びケノデオキシコール酸の炭素原子
の番号付けを示す。
【化1】
【0009】
FXRは、胆汁酸代謝の主要な制御因子として機能する。FXRの主な役割は、摂食状態及び
絶食状態の両方で、腸肝脂肪軸に沿った栄養素及びエネルギーの移動を促進することであ
る(Evans及びMangelsdorfの文献、2014年)。食後刺激を受けると、胆汁酸は、脂質吸収を
可能にすると共に、FXR介在性シグナル伝達経路を活性化する。これは、腸からの栄養素
の取り込みを促進し、FXR標的遺伝子線維芽細胞増殖因子19(FGF19)の作用を介して、肝臓
内のエネルギー代謝を刺激するように作用する。腸のFGF19に加えて、FXR転写標的である
、肝臓内の短いヘテロダイマーパートナー(SHP)の発現は、デノボでの胆汁酸合成のダウ
ンレギュレーションを生じ、代謝の必要性に応じて腸肝の胆汁酸プールを厳密に調節する
。NASH患者を研究したところ、FXR並びに胆汁酸生合成酵素、コレステロール7アルファヒ
ドロキシラーゼ(CYP7A1)及びステロール27ヒドロキシラーゼ(CYP27A1)、の両方の発現が
、疾患の重症度に比例して減少することが示され;NAFLD患者は又、肝臓FGF19に対する応
答障害を示すことも示された(Yang、Shen及びSunの文献、2010年;Minらの文献、2013年;C
aveらの文献、2016年)。
【0010】
更に最近では、FXRは、脂質、グルコース及びコレステロールのホメオスタシスの主要
なプレーヤーであり、肝臓の脂質生合成、VLDL合成、インスリン感受性、並びに、他の核
内受容体との相互作用に部分的に起因する、糖新生及びグリコーゲン合成に関与する遺伝
子の調節を行っていることか明らかになっている(Kastらの文献、2001年;Watanabeらの文
献、2004年;Maらの文献、2006年;Zhangらの文献、2006年)。SHPシグナル伝達カスケード
を介して作用することで、FXRは、ステロール制御エレメント結合タンパク質(SREBP1)を
ダウンレギュレートして脂肪酸合成を減少させ、一方ではペルオキシソーム増殖因子活性
化受容体アルファ(PPARα)をアップレギュレートして、ミトコンドリアでのβ酸化による
脂肪酸の異化作用を増加させ、その結果、肝臓脂肪酸の蓄積を減少させる。FXRは又、VLD
Lの加水分解とクリアランスに関与する、アポリポタンパク質C2(APOC2)及びVLDL受容体の
発現レベルを高める働きもする。FXR欠損マウスを使用した研究では、有意な、肝臓のト
リグリセリドレベルの上昇、循環FFA及び脂肪肝の増加を含む、ヒトNASH患者と類似する
表現型が示された(Maloneyらの文献、2000年;Zhangらの文献、2004年)。更に又、天然及
び合成アゴニストによるFXR活性化は、齧歯類の血漿トリグリセリドレベルを改善するこ
とができた(Kastらの文献、2001年)。トリグリセリド及びFFAのレベルを下げることによ
り、FXR活性化は又、肝臓及び筋肉の両方で軽度の耐糖能障害及びインスリンシグナル伝
達抑制を示していたFXR欠損マウスで観察されたのと同様に、肝臓及び末梢組織の両方で
インスリン感受性も高めることができると考えられる(Maらの文献、2006年)。この発見と
一致することには、インスリン感受性は、NASH罹患ヒト対象及び動物肥満症モデルの両方
において、半合成FXRアゴニストであるオベチコール酸(OCA)によって改善された(Ciprian
iらの文献、2010年;Mudaliarらの文献、2013年)。同様に、FXRは、主にFGF19シグナル伝
達を介して、グルコースホメオスタシスにおける重要な役割を果たしていると提言されて
おり、それは;血漿グルコース濃度を低下させ、3つの主要な糖新生酵素である、ホスホエ
ノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)、フルクトース-1,6-ビスホスファターゼ(F
BP1)及びグルコース-6-ホスファターゼ(G6Pase)の発現及び活性を低下させ、並びに、cAM
P制御因子結合タンパク質(CREB)及び下流のPPARガンマコアクチベーター1-アルファ(PGC1
α)を阻害して、グルコースをグリコーゲンとして貯蔵することを促進する(Zhangらの文
献、2006年)。しかし、動物モデルからの矛盾する結果は、FXRの関与が受容体及び経路の
複雑なネットワークの一部にすぎない可能性があることも示唆している(Watanabeらの文
献、2011年)。
【0011】
とりわけ、FXRは肝炎の抑制に関係しており、それは特定の核因子カッパB(NF-κB)標的
遺伝子及び炎症誘発性サイトカインの負の制御を導く精巧な経路に関与している(Wangら
の文献、2008年)。更に、基本的なメカニズムはまだほとんど解明されていないが、FXRは
腸の保護、及び、腸内細菌叢に対する腸のバリアの維持において重要な役割を果たしてい
ると考えられる(Inagakiらの文献、2006年)。高脂肪食を与えられたFXRノックアウトマウ
スは、腸内細菌の異常増殖、並びに、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)、メタロプロテイナ
ーゼの組織阻害剤(TIMP)、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFβ-1)等の、炎症誘
発性メディエーター及び線維形成促進性メディエーターのレベル上昇を示した(Kongらの
文献、2009年)。更に又、前臨床試験の証拠は、FXRアゴニストによる関与が、初代肝細胞
及びNASHのマウスモデルにおいて、NFκB発現を阻害して炎症性微小環境及び線維症を改
善したことを示唆する(Kongらの文献、2009年;Maらの文献、2013年)。
【0012】
NASH、特にHCCにおけるその役割を更にサポートするように、FXRは、腫瘍抑制遺伝子の
発現を制御することが示されており、FXRアゴニストは、マウス肝臓異種移植片腫瘍モデ
ルにおいて腫瘍の増殖及び転移を減少させることが示された(Deuschleらの文献、2012年;
Jiangらの文献、2013年)。従って、この証拠は、腸肝脂肪軸におけるその中心的な役割、
即ち、腸バリアの完全性の維持、炎症の抑制、並びに、胆汁酸、グルコース及び脂質代謝
の制御に加えて、FXRの制御不全がNASHの発症に寄与するという考えを支持し、そのため
にFXRがNASH治療のための理想的な標的であることを確認するものである。
【0013】
様々な非ステロイド性化合物を含む多くのFXRアゴニストが公知である。更に最近、FXR
アゴニスト活性を有する胆汁酸アナログが開発された。これらには、国際公開WO02/07259
8及びEP1568706に記載のオベチコール酸(OCA;INT-747)が含まれる。OCAのアナログ並びに
、OCA及びアナログの医療用途並びにその調製方法は、国際公開WO2005/092925、国際公開
WO2005/089316、国際公開WO2006/122977、国際公開WO2007095174、国際公開WO2008/00257
3、国際公開WO2008/091540、国際公開WO2010/014836、国際公開WO2010/059853、国際公開
WO2010/059859、国際公開WO2013/192097、国際公開WO2014/066819、国際公開WO2015/0854
74、国際公開WO2014/184271、国際公開WO2016/127019、国際公開WO2016/144946、国際公
開WO2016/164413、国際公開WO2016/176208、国際公開WO2016/205475、国際公開WO2017/01
9524、国際公開WO2017/027396、国際公開WO2017/053428、国際公開WO2017/053826、国際
公開WO2017/062763、国際公開WO2017/079062、国際公開WO2017/111979及び国際公開WO201
7/156024(全てIntercept Pharmaceuticals,Inc)に記載されている。
【0014】
更に、改変された側鎖を有する6-アルキル胆汁酸アナログは、国際公開WO2016/073767
、国際公開WO2016/086115、国際公開WO2016/086134、国際公開WO2016/086169、国際公開W
O2016/086218、国際公開WO2016/130809、国際公開WO2016/161003、WO2017/147137、国際
公開WO2017/147159及び国際公開WO2017/147174(全てEnanta Pharmaceuticals,Inc)に記載
されている。
【0015】
類似化合物に関する他の文献には、中国特許出願公開105646634、国際公開WO2016/1735
24、国際公開WO2016/173397、中国特許出願公開105348365、米国特許出願公開2014/02066
57が含まれる。
【0016】
発明者の先の出願である、国際公開WO2016/079518、国際公開WO2016/079518、国際公開
WO2016/079519、国際公開WO2016/079520、国際公開WO2017/199036、国際公開WO2017/1990
39及び国際公開WO2017/199033は、これら胆汁酸アナログの調製方法、及びその合成にお
ける中間体に関する。
【0017】
先行技術に記載されている胆汁酸アナログの問題の1つは、FXRアゴニストとしてのそれ
らの活性に加えて、それらがGタンパク質共役型受容体TGR5のモジュレーターでもあるこ
とである。これは、Gタンパク質共役型受容体のロドプシン様スーパーファミリーのメン
バーであり、胆汁酸シグナル伝達網において重要な役割を果たす。例えば、OCAの使用に
関係する副作用の1つは掻痒症であり、これはTGR5等のオフターゲット受容体のOCA活性化
から生じると考えられる(Alemiらの文献、2013年)。
【0018】
Xiaoらの文献(2017年)は、FXRアゴニストとしてのOCA及びOCAの一連の誘導体の合成並
びに生物学的評価に関する。これら誘導体では、カルボン酸基が様々な代替基に置換され
た。この著者らは、試験した全ての化合物が低から中程度のTGR5効能を示し、得られた最
高の選択性はFXRの30倍の選択性であり、これはテトラゾール誘導体と共に達成されたと
述べている。肝臓;血漿濃度比が最も高い化合物は、CH2CH2C(O)NH-S(O)2CH3側鎖を有する
化合物18であった。
【発明の概要】
【0019】
本発明は、FXRアゴニスト活性を維持し、かつ、FXRに対する選択性がTGR5よりも強化さ
れている新規化合物に関する。
【0020】
更に又、2位及び/又は4位でフッ素化され、かつアリールスルホンアミド又はアリール
スルホニル尿素の側鎖を有する胆汁酸誘導体は、公知の胆汁酸誘導体と比較して、FXR受
容体におけるアゴニスト活性が増加している。本発明者らは、この増加したアゴニスト活
性は、FXRリガンド結合ドメインのカノニカル(canonical)ポケット及びアロステリックポ
ケット両方に結合する分子によるものであると推測する。しかしながら、本発明の化合物
の有効性は、この推測が正しくてもそうでなくても影響を受けない。
【0021】
(発明の概要)
従って、本発明では、一般式(I)の化合物:
【化2】
(式中、
それぞれのR
2a、R
2b、R
3a及びR
3bは独立してH若しくはFであるが、R
2b及びR
3bの少なくと
も1つはFであり;
R
5はCR
6aR
6bR
8、OR
8、SR
8若しくはNR
6aR
8であり;
それぞれのR
6a、R
6b及びR
8は、独立してH若しくはメチルであり、
Yは、結合又はC
1-4アルキレン若しくはC
2-4アルケニレンのリンカー基であってそれらの
いずれかは1以上のR
10で任意に置換されており;
それぞれのR
10は、独立してハロ若しくはOHであり;
R
7は、C(O)NR
17S(O)
2R
15、NR
17C(O)NR
18S(O)
2R
15、NR
17C(S)NR
18S(O)
2R
15及びNR
17C(NR
20
)NR
18S(O)
2R
15から選択され;
R
15は任意に、C
1-6アルキル、C
1-6ハロアルキル、ハロ、O(C
1-6アルキル)及びO(C
1-6ハ
ロアルキル)から選択された1以上の置換基で置換されている、5~10員のアリール若しく
はヘテロアリール環であり;
それぞれのR
17及びR
18は、独立してH若しくはメチルであり;
R
20は、H、メチル若しくはCNであり;
又は、その塩若しくは同位体バリアント、が提供される。
【0022】
幾つかのフッ素化胆汁酸誘導体は公知である。例えば、Rodaらの文献(1995年)、Honori
oらの文献(2006年)、米国特許5,175,320、及び国際公開WO97/44043の全ては、ウルソデオ
キシコール酸の6-フルオロアナログに関する一方、国際公開WO2014/160441は6,6-ジフル
オロ胆汁酸アナログを記載している。Satoらの文献(2008年)は7-フルオロリトコール酸誘
導体に関するものであり、Sievanenらの文献(2008年)、及びCushmanらの文献(1995年)は
それぞれ3,3-ジフルオロコラン-24-酸及びそのメチルエステルを開示する。欧州特許3290
429は、FXR介在性疾患の治療に有用であるといわれている胆汁酸誘導体を開示する。開示
された化合物は、いくつかの4-フルオロ胆汁酸誘導体を含む。Clericiらの文献(2006年)
及びMacchiaruloらの文献(2008年)の両方は、3α-6α-ジヒドロキシ-7α-フルオロ-5β-
コラノエートに関し、それは肝疾患の治療に有用であるといわれている。国際公開WO2016
/154216は神経変性障害の治療に使用するためのUDCAの3-及び7-フッ素化誘導体に関する
。国際公開WO2016/173493は、胆汁酸誘導体に関し、それは改変された側鎖を有し、かつF
XR及び/又はTGR5のモジュレーターである。米国特許出願公開2018/0148470は、4β-フッ
素化胆汁酸誘導体に関し、それはFXR介在性疾患の治療に有用であるといわれている。し
かし、一般式(I)の化合物は先行技術中に教示されていない。
【0023】
一般式(I)の化合物は、選択的なFXRアゴニストであり、従って、非アルコール性脂肪性
肝炎(NASH);原発性胆汁性肝硬変(PBC);原発性硬化性胆管炎;胆道閉鎖症;胆汁鬱滞性肝疾
患;C型肝炎感染症;アルコール性肝疾患;線維症;及び線維症から生じる肝障害等の疾患及
び症状の治療に、有用である。
【0024】
この理論に縛られるものではないが、本発明者らは、環内のフッ素の存在が3αヒドロ
キシ基の水素結合能を変化させ、その結果、FXR受容体及びTGR5受容体における化合物の
活性及び選択性に影響すると推測した。更に又、ステロイド環系の2位又は4位にフルオロ
を有する化合物は、代謝安定性が上昇する可能性があることも判明した。
本発明者らはまた、下記実施例に示されるように、側鎖基(-Y-R7)の性質がFXRアゴニス
ト活性に有意な影響を与えることを発見した。
【0025】
本明細書では、言葉又は必然的な含意表現によって文脈が別の意味を必要とする場合を
除いて、用語「含む」、又は「含む」若しくは「含んでいる」等の変形は、包括的意味で
使用される。即ち、即ち、述べられた特徴の存在を明示しているが、本発明の様々な実施
態様における更なる特徴の存在又は追加を排除するものではない。
【0026】
本明細書では、言及「医薬的な使用」は、疾患又は医学的症状の治療又は予防のための
、ヒト又は動物、特にヒト又は哺乳類、例えば家庭用哺乳類又は家畜用哺乳類、への投与
のための使用を指す。用語「医薬組成物」は、医薬的な使用に適した組成物を指し、「医
薬として許容し得る」は、医薬組成物での使用に適した薬剤を指す。他の類似の用語は、
適宜解釈されるべきである。
本明細書の文脈において、用語「複数」は、2以上を指す。
【0027】
本明細書で引用される、特許及び特許出願を含むがこれらに限定されない全ての刊行物
は、個々の刊行物が本明細書に完全に記載されて引用により本明細書に組み込まれるため
に、具体的かつ個別に表示されているかのように、引用により本明細書に組み込まれる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(発明の詳細な説明)
本出願では、用語「C1-6」アルキルは、1~6個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状の
完全飽和炭化水素基を指す。この用語は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、
n-ブチル、イソブチル、s-ブチル及びt-ブチルを含む。他のアルキル基、例えば、C1-4ア
ルキル、C1-3アルキル、又はC1-2アルキルは、前記のとおりであるが、異なる数の炭素原
子を含む。
【0029】
用語「アルキレン」は、直鎖状又は分岐状の完全飽和炭化水素鎖を指す。適切には、ア
ルキレンは、C1-4アルキレン、C1-3アルキレン、又はC1-2アルキレンである。アルキレン
基の例は、-CH2-、-CH2CH2-、-CH(CH3)-CH2-、-CH2CH(CH3)-、-CH2CH2CH2-及び-CH2CH(CH
2CH3)-を含む。
【0030】
用語「アルケニレン」は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む、直鎖状又は分岐
状炭化水素鎖を指す。適切には、アルケニレンは、C2-4アルケニレン、又はC2-3アルケニ
レンである。アルケニレン基の例は、-CH=CH-、-CH=C(CH3)-、-CH2CH=CH-、-CH=CHCH2-、
-CH2CH2CH=CH-及び-CH2CH=C(CH3)-を含む。
【0031】
用語「アリール」及び「芳香族」は、6~14個の環炭素原子(他に明記しない限り、例え
ば6~10個の環炭素原子)を有する芳香族性を有する環状基であって、最大3個の環を含む
ものを指す。アリール基が1を超える環を含む場合、全ての環が芳香族性である必要はな
い。例には、フェニル、ナフチル、及びアントラセニル、並びに、テトラヒドロナフチル
、インダニル、及びインデニル等の部分飽和系が含まれる。アリール基の更なる例は、1,
2,3,4-テトラヒドロナフタレンである。
【0032】
用語「ヘテロアリール」及び「ヘテロ芳香族」は、5~14個の環原子(他に明記しない限
り、例えば5~10個の環原子)を有する芳香族性を有する環状基であって、その少なくとも
1つはN、O及びSから選択されたヘテロ原子であり、最大3個の環を含むものを指す。ヘテ
ロアリール基が1を超える環を含む場合、全ての環が芳香族性である必要はない。ヘテロ
アリール基の例には、ピリジン、ピリミジン、インドール、ベンゾフラン、ベンズイミダ
ゾール及びインドレンが含まれる。更なるヘテロアリール基の例は、キノリン及びイソキ
ノリンを含む。
用語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素を指し、用語「ハロ」は、フル
オロ基、クロロ基、ブロモ基、又はヨード基を指す。
【0033】
用語「C1-6ハロアルキル」は、前記のように1~6個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐
状アルキル基であって、1以上のハロ原子で置換され、最大でペルハロ置換されたものを
指す。例には、トリフルオロメチル、クロロエチル及び1,1-ジフルオロエチルが含まれる
。他のハロアルキル基、例えば、C1-5ハロアルキル、C1-4ハロアルキル、C1-3ハロアルキ
ル又はC1-2ハロアルキルは、前記のとおりであるが、異なる数の炭素原子を含む。
用語「側鎖」は、-Y-R7成分を指す。UDCAでは、-YR7は、-CH2CH2-C(O)OHであり、バリ
アント側鎖の言及は、これ以外の-YR7成分を指す。
【0034】
用語「同位体バリアント」は、同位体標識された化合物を指し、それは、1以上の原子
が、自然界で最も一般的に見られる原子質量若しくは質量数とは異なる原子質量若しくは
質量数を有する原子で置換されている、又は自然界であまり一般的ではない原子質量又は
質量数を有する原子の割合が高い(後者の概念は「同位体富化」と称する)以外は、式(I)
で示されたものと同一である。本発明の化合物に組み込むことができる同位元素の例は、
2H(重水素)、3H、11C、13C、14C、18F、123I又は125I等(例えば、3H、11C、14C、18F、12
3I又は125I)の、水素、炭素、窒素、酸素、フッ素、ヨウ素及び塩素の同位体を含み、こ
れらは天然型又は非天然型同位元素でもよい。
【0035】
一般式(I)の化合物の塩は、適切な、医薬として許容し得る塩である。しかしながら、
医薬として許容し得ない塩もまた使用することができ、例えば、一般式(I)の化合物の調
製での中間体である化合物として、又は代替的側鎖を有する一般式(I)の化合物を調製す
るための反応を実施する場合に使用できる。
【0036】
本明細書に記載された化合物の適切な塩には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、ア
ルミニウム、亜鉛、マグネシウム及び他の金属の塩等の塩基性付加塩、並びに、コリン、
ジエタノールアミン、エタノールアミン、エチルジアミン、メグルミン及び、Paulekuhn
らの文献、J. Med. Chem. 2007、50,6665-6672にまとめられている、及び/又は、当業者
に公知である、他の周知の塩基性付加塩が含まれる。
【0037】
前記のように、一般式(I)の化合物では、それぞれのR2a、R2b、R3a及びR3bは独立してH
若しくはFであるが、R2b及びR3bの少なくとも1つはFである。
幾つかの一般式(I)の化合物では、R3bはFであり、それぞれのR2a、R2b及びR3aはH又はF
である。他の一般式(I)の化合物では、R2bはFであり、それぞれのR2a、R3a及びR3bはH又
はFである。
【0038】
本発明の幾つかの適切な化合物は、モノフッ素化されている。
幾つかのモノフッ素化化合物では、R3bはFであり、それぞれのR3a、R2a及びR2bはHであ
り、即ち、一般式(I)の化合物は、4β-フルオロ置換基を有する。
他のモノフッ素化化合物では、R2bはFであり、それぞれのR2a、R3a及びR3bはHであり、
即ち、一般式(I)の化合物は2β-フルオロ置換基を有する。
【0039】
幾つかの適切な一般式(I)の化合物はジフッ素化されている。幾つかの適切な一般式(I)
のジフッ素化化合物では、R3bはFであり、R3aはHであり、R2a及びR2bの1つはFであって、
残りのR2a及びR2bはHであり、即ち、一般式(I)の化合物は、2-フルオロ置換基及び4β-フ
ルオロ置換基を有する。
他の適切な一般式(I)のジフッ素化化合物では、一般式(I)の化合物は4,4-ジフルオロ置
換された化合物であるように、R3a及びR3bは両方ともFであって、R2a及びR2bは両方ともH
である。
【0040】
一般式(I)の化合物は、R2a、R2b、R3a及びR3bの中の3つがFであって、残りはHであるト
リフッ素化化合物でもよく、R2a、R2b、R3a及びR3bの全てがFであるテトラフッ素化化合
物でもよい。
一般式(I)の化合物では、適切には、R6a及びR6bの両方が水素であり、及び/又は、R8
はメチルである。
【0041】
幾つかの適切な化合物では、R5はエチル、OH又はメトキシ、特にエチル又はメトキシで
あり、特別にエチルである。
幾つかのより適切な化合物では、R5はメトキシである。
特に適切な化合物では、R5はエチルである。
【0042】
幾つかの適切な一般式(I)の化合物では、Yは結合である。
他の適切な一般式(I)の化合物では、YはC1-4アルキレン又はC2-4アルケニレンのリンカ
ー基であり、それらのいずれかは任意に、上記で規定されたように1以上のR10で置換され
ている。
【0043】
これらの化合物で更に適切には、Yは、C1-4、C1-3又はC1-2アルキレンリンカー基であ
り、それは任意に、上記で規定されたように1以上のR10基で置換されている。
幾つかの一般式(I)の化合物では、Yは置換されていない。
【0044】
他の一般式(I)の化合物では、Yは1以上の置換基R10により置換されている。
場合によっては、R10はハロである。
他の場合では、R10はOHである。
【0045】
適切なリンカーYの例には、結合、-CH2-、-CH2CH2-、-CH(OH)-CH2-、-CH=CH-又は-CH=C
(CH3)-、特に結合、-CH2-、-CH2CH2-、-CH=CH-又は-CH=C(CH3)-、特別に-CH2-、-CH2CH2-
、-CH=CH-又は-CH=C(CH3)-が含まれる。
【0046】
更に適切には、Yは結合、又は1以上のOH基で任意に置換されているC1-3アルキレンリン
カー基である。より一層適切には、Yは、1以上のOH基で任意に置換されているC1-3アルキ
レンリンカー基である。
幾つかの特別に適切な化合物では、Yは非置換のC1-3アルキレンリンカーである。
特に適切な一般式(I)の化合物では、Yは-CH2-又は-CH2-CH2-、特別に-CH2-CH2-である
。
【0047】
本発明の化合物では、R7は、より適切には、C(O)NR17S(O)2R15若しくはNR17C(O)NR18S(
O)2R15であり、R15、R17及びR18は一般式(I)で規定されたとおりである。
更に適切には、それぞれのR17及びR18は(存在する場合には)Hである。
【0048】
幾つかの適切な一般式(I)の化合物では、R15はフェニル及び5員環若しくは6員環のヘテ
ロアリール、例えば、ピリジル、ピリミジニル又はピロリルから選択され、それらのいず
れかは非置換でも、上記で規定された1以上の置換基、特に1~3の置換基、より通常は1又
は2の置換基、特別に1つの置換基で置換されていてもよい。更に適切には、R15はフェニ
ル又は6-員環のヘテロアリール基であって、それらのいずれかは非置換でも、上記で規定
された1以上の置換基、特に1~3の置換基、より通常は1又は2の置換基、特別に1つの置換
基で置換されていてもよい。
【0049】
R15成分のための特別に適切な置換基は、フルオロ、C1-4アルキル、C1-4フルオロアル
キル、O(C1-4アルキル)及びO(C1-4フルオロアルキル)から選択される。
一般式(I)の化合物のR15基の例は、非置換フェニル又は1つの置換基で置換されている
フェニルを含み、その置換基はフルオロ、C1-4アルキル、C1-4フルオロアルキル、O(C1-4
アルキル)及びO(C1-4フルオロアルキル)、特にフルオロ、メチル、エチル、n-プロピル、
i-プロピル、n-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、トリフルオロメチル、メトキシ及びトリフ
ルオロメトキシから選択される。
【0050】
R7がNR17C(O)NR18S(O)2R15であり、R15が1つの置換基を有するフェニルである場合、そ
の置換基は環状のいずれの位置にあるものでよいが、最も適切にはm-又はp-置換基、特に
p-置換基である。特に、R7がNR17C(O)NR18S(O)2R15でありR15がCF3で置換されたフェニル
の場合に、CF3置換基はm-又はp-位にあることが好ましい。
【0051】
一般式(I)の化合物の例には、下記が含まれる:
N,N’-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-24-ノル-5β-コラン-23-イル
)-p-トルエンスルホニル尿素(化合物1);
N,N’-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-24-ノル-5β-コラン-23-イル
)-ベンゼンスルホニル尿素(化合物2);
N,N’-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-24-ノル-5β-コラン-23-イル
)-4-(tert-ブチル)ベンゼンスルホニル尿素(化合物3);
N,N’-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-24-ノル-5β-コラン-23-イル
)-m-トルエンスルホニル尿素(化合物4);
N,N’-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-24-ノル-5β-コラン-23-イル
)-o-トルエンスルホニル尿素(化合物5);
N,N’-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-24-ノル-5β-コラン-23-イル
)-p-フルオロベンゼンスルホニル尿素(化合物6);
N,N’-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-24-ノル-5β-コラン-23-イル
)-m-フルオロベンゼンスルホニル尿素(化合物7);
N,N’-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-24-ノル-5β-コラン-23-イル
)-o-フルオロベンゼンスルホニル尿素(化合物8);
N,N’-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-24-ノル-5β-コラン-23-イル
)-p-(トリフルオロメチル)ベンゼンスルホニル尿素(化合物9);
N,N’-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-24-ノル-5β-コラン-23-イル
)-m-(トリフルオロメチル)ベンゼンスルホニル尿素(化合物10);
N,N’-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-24-ノル-5β-コラン-23-イル
)-o-(トリフルオロメチル)ベンゼンスルホニル尿素(化合物11);
N,N’-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-24-ノル-5β-コラン-23-イル
)-4-(トリフルオロメトキシ)ベンゼンスルホニル尿素(化合物12);
N,N’-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-24-ノル-5β-コラン-23-イル
)-p-メトキシベンゼンスルホニル尿素(化合物13);
N-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-5β-コラン-24-オイル)-p-トリフ
ルオロメトキシベンゼンスルホンアミド(化合物14);
N-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-5β-コラン-24-オイル)-p-フルオ
ロベンゼンスルホンアミド(化合物15);
N-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-5β-コラン-24-オイル)-3-フルオ
ロフェニルスルホンアミド(化合物16);
N-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-5β-コラン-24-オイル)-2-フルオ
ロフェニルスルホンアミド(化合物17);
N-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-5β-コラン-24-オイル)-4-トリフ
ルオロメチルフェニルスルホンアミド(化合物18);
N-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-5β-コラン-24-オイル)-3-トリフ
ルオロメチルフェニルスルホンアミド(化合物19);
N-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-5β-コラン-24-オイル)-2-トリフ
ルオロメチルフェニルスルホンアミド(化合物20);
N,N’-(3α,7α-ジヒドロキシル-4,4-ジフルオロ-6α-エチル-24-ノル-5β-コラン-23-イ
ル)-ベンゼンスルホニル尿素(化合物21)
N-(3α,7α-ジヒドロキシル-4,4-ジフルオロ-6α-エチル-5β-コラン-24-オイル)-ベンゼ
ンスルホンアミド(化合物22);
及びその塩及び同位体バリアント。
【0052】
R
7がNHC(O)N(R
18)S(O)
2R
15である一般式(I)の化合物は、一般式(II)の化合物:
【化3】
(式中、Y、R
2a、R
2b、R
3a、R
3b及びR
5は一般式(I)で規定されたとおりであり、R
40は保護
されたOH基である)の、脱保護により調製できる。
【0053】
適切には、保護基は、塩基での処理により除去可能なものである。この種の保護された
OH基の例には、R41C(O)Oが含まれ、R41はC1-6アルキル又はベンジル、特にメチルである
。シリルエーテル保護基もまた使用できる。他の適切なOH保護基は、当業者に周知である
(P.G.M.Wuts及びT.W.Greeneの文献(2006年)を参照されたい)。
【0054】
一般式(II)の化合物は、一般式(III)の化合物:
【化4】
(式中、Y、R
2a、R
2b、R
3a、R
3b及びR
5は一般式(I)で規定されたとおりであり、R
40は一般
式(II)で規定されたとおりである)から、
一般式(IV)のスルホンアミド:
【化5】
(式中、R
15及びR
18は一般式(I)で規定されたとおりである)との、1,8-ジアザビシクロ[5.
4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)等の触媒の存在下、トルエン等の適切な有機溶媒中での反応に
より、調製してもよい。
一般式(IV)のスルホンアミドは公知であり、容易に入手可能であるか公知の方法により
調製できる。
【0055】
一般式(III)の化合物は、一般式(V)の化合物:
【化6】
(式中、Y、R
2a、R
2b、R
3a、R
3b及びR
5は一般式(I)で規定されたとおりであり、R
40は一般
式(II)で規定されたとおりである)を、例えばアルゴン雰囲気下等の不活性雰囲気中で加
熱することにより調製してもよい。
適切には、一般式(V)の化合物は、約100~150℃まで、典型的には約125℃まで加熱され
る。
【0056】
一般式(V)の化合物は、一般式(VI)の化合物:
【化7】
(式中、Y、R
2a、R
2b、R
3a、R
3b及びR
5は一般式(I)で規定されたとおりであり、R
40は一般
式(II)で規定されたとおりである)から、ジフェニルリン酸アジドとの、塩基性条件下、
例えばトリエチルアミンの存在下での反応により、調製してもよい。
この反応は適切には、例えばアルゴン雰囲気下等の不活性雰囲気中で実施される。
【0057】
一般式(VI)の化合物は、一般式(VII)の化合物:
【化8】
(式中、Y、R
2a、R
2b、R
3a、R
3b及びR
5は一般式(I)で規定されたとおりである)を、保護す
ることにより調製してもよい。
例えば、保護されたOH基R
40がアセトキシの場合は、一般式(VII)の化合物は、穏やかな
塩基性条件下、例えば炭酸水素ナトリウムの存在下で無水酢酸を反応させてもよい。
この反応は適切には、例えばアルゴン雰囲気下等の不活性雰囲気中で実施される。
【0058】
一般式(VII)の化合物は、一般式(VIII)の化合物:
【化9】
(式中、Y、R
2a、R
2b、R
3a、R
3b及びR
5は一般式(I)で規定されたとおりであり、R
47はC
1-6
アルキル又はベンジルである)の、加水分解により調製してもよい。
この加水分解は、例えば、水酸化ナトリウム又は水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸
化物を使用する、塩基触媒性の加水分解でもよい。適切には、反応はメタノール等のアル
コール性溶媒中で行われる。
【0059】
R
3bがFである一般式(VIII)の化合物は、適切な一般式(XX)の化合物:
【化10】
(式中、Y、R
2a、R
2b、R
3a、R
3b及びR
5は一般式(I)で規定されたとおりであり、R
47は一般
式(VIII)で規定されたとおりである)の還元により、調製してもよい。
適切な還元剤には、例えば水素化ホウ素ナトリウム等の水素化物が含まれる。反応は適
切には、アルゴン等の不活性雰囲気下で、テトラヒドロフラン等の有機溶媒中で実施され
る。
【0060】
R
2bがFである一般式(XX)の化合物及び一般式(VIII)の化合物の調製方法を下記に記す。
別の手順では、R
7がNHC(O)N(R
18)S(O)
2R
15である一般式(I)の化合物は、一般式(XII)の
化合物の脱保護により調製できる:
【化11】
(式中、Y、R
2a、R
2b、R
3a、R
3b及びR
5は一般式(I)で規定されたとおりであり、それぞれ
のR
45及びR
46は独立して保護されたOH基である)。
【0061】
適切には、それぞれのR45及びR46は独立してシリルエーテル、例えば、tert-ブチルジ
メチルシリルオキシ又はトリメチルシリルオキシである。R45及びR46がシリルエーテルの
場合、それらは同一又は異なり、テトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)等の試薬で
処理することにより脱保護を実現できる。代替的な保護基、例えば上記一般式(II)での基
R41C(O)Oも又、使用してもよい。他の保護基は当分野で周知である(P.G.M.Wuts及びT.W.G
reeneの文献(2006)年を参照されたい)。
【0062】
一般式(XII)の化合物は、一般式(XIII)の化合物:
【化12】
(式中、Y、R
2a、R
2b、R
3a、R
3b及びR
5は一般式(I)で規定されたとおりであり、R
45及びR
4
6は一般式(XII)で規定されたとおりである)から、前記のように一般式(IV)のスルホンア
ミドとの、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)等の触媒の存在下で、及び
適切には、トルエン等の有機溶媒中での反応により、調製してもよい。
【0063】
一般式(XIII)の化合物は、一般式(XIV)の化合物:
【化13】
(式中、Y、R
2a、R
2b、R
3a、R
3b及びR
5は一般式(I)で規定されたとおりであり、R
45及びR
4
6は一般式(XII)で規定されたとおりである)を、例えばアルゴン雰囲気下等の不活性雰囲
気中で加熱することにより調製してもよい。
【0064】
一般式(XIV)の化合物は、一般式(XV)の化合物:
【化14】
(式中、Y、R
2a、R
2b、R
3a、R
3b及びR
5は一般式(I)で規定されたとおりであり、R
45及びR
4
6は一般式(XII)で規定されたとおりである)から、ジフェニルリン酸アジドとの、塩基性
条件下、例えばトリエチルアミンの存在下での反応により、調製してもよい。
【0065】
一般式(XV)の化合物は、一般式(XVI)の化合物:
【化15】
(式中、Y、R
2a、R
2b、R
3a、R
3b及びR
5は一般式(I)で規定されたとおりであり、R
45及びR
4
6は一般式(XII)で規定されたとおりであり、かつR
47は一般式(VIII)で規定されたとおり
である)の、加水分解により調製してもよい。
適切には、加水分解は、例えば、水酸化ナトリウム又は水酸化リチウム等のアルカリ金
属水酸化物での処理により、塩基性条件下で実施される。適切には、反応はアルコール性
溶媒中で行われる。
【0066】
一般式(XVI)の化合物は、一般式(XVII)の化合物:
【化16】
(式中、Y、R
2a、R
2b、R
3a、R
3b及びR
5は一般式(I)で規定されたとおりであり、R
46は一般
式(XII)で規定されたとおりであり、かつR
47は一般式(VIII)で規定されたとおりである)
の、保護により調製してもよい。
【0067】
保護されたOH基R45がシリルエーテルの場合、この保護は一般式(XVII)の化合物を一般
式(XVIII)の化合物と反応させることにより達成できる:
(R50)3Si-R48 (XVIII)
(式中、R48は脱離基であり、典型的には、ハロゲン化物、例えばフッ化物、クロライド若
しくはブロマイド等、又はトリフリル、トシル若しくはメシル等のスルホニル基であり;
かつそれぞれのR50は独立して例えばC1-6アルキル又はフェニル等であり、一般式(XVI)の
化合物中の基R45が(R50)3Si-Oとなるようなものである)。
この反応は、不活性雰囲気下、2,6-ルチジン等の塩基の存在下で、約-5~5℃、典型的
には約0℃の温度で実施することができる。適切な溶媒には、ジクロロメタン等の有機溶
媒が含まれる。
【0068】
一般式(XVII)の化合物は、一般式(XIX)の化合物:
【化17】
(式中、Y、R
2a、R
2b、R
3a、R
3b及びR
5は一般式(I)で規定されたとおりであり、R
46は一般
式(XII)で規定されたとおりであり、かつR
47は一般式(VIII)で規定されたとおりである)
の、還元により、調製してもよい。
適切な還元剤には、例えば水素化ホウ素ナトリウム等の水素化物が含まれる。還元は適
切には、例えばアルゴン等の不活性雰囲気中で、約15~25℃の温度、典型的には室温で、
テトラヒドロフラン等の有機溶媒中で実施される。
【0069】
R
3bがFである一般式(XIX)の化合物は、一般式(XX)の化合物:
【化18】
(式中、Y、R
2a、R
2b、R
3a、R
3b及びR
5は一般式(I)で規定されたとおりであり、R
47は一般
式(VIII)で規定されたとおりである)を、保護することにより調製してもよい。
保護されたOH基R
46がシリルエーテルの場合は、保護は、n-ブチルリチウム等の塩基の
存在下で、適切なシリルハライド又はシリルスルホネート(例えば、トリフラート、メシ
ラート又はトシラート)と反応させて達成してもよい。例えば、R
46がトリメチルシリルオ
キシの場合は、一般式(XX)の化合物はトリメチルシリルクロライドと反応させることがで
きる。
【0070】
R
7がC(O)N(R
17)S(O)
2R
15である一般式(I)の化合物は、一般式(XXII)の化合物:
【化19】
(式中、Y、R
2a、R
2b、R
3a、R
3b、R
5、R
15及びR
17は一般式(I)で規定されたとおりであり
、R
46は一般式(XII)で規定されたとおりである)の、脱保護により調製できる。
保護されたOH基R
46がシリルエーテルの場合は、TBAF等の塩基で処理して脱保護できる
。反応は適切には、例えばアルゴン等の不活性雰囲気下で、テトラヒドロフラン等の無水
有機溶媒中で実施される。
【0071】
一般式(XXII)の化合物は、一般式(XXIII)の化合物:
【化20】
(式中、Y、R
2a、R
2b、R
3a、R
3b及びR
5は一般式(I)で規定されたとおりであり、R
46は一般
式(XII)で規定されたとおりである)から、
一般式(XXIV)のスルホンアミドとの:
【化21】
(式中、R
15及びR
17は一般式(I)で規定されたとおりである)、
1-エチル-3(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDCI)等のカップリング剤及びジ
メチルアミノピリジン等の塩基の存在下での反応により、調製してもよい。
【0072】
一般式(XXIII)の化合物は、一般式(XVII)の化合物の加水分解により調製してもよく、
適切には塩基性条件下で、例えば水酸化ナトリウム又は水酸化リチウム等のアルカリ金属
水酸化物との処理によって調製してもよい。適切には、反応はアルコール性溶媒中で実施
される。
【0073】
R2bがFであり、R3a及びR3bがHであり、かつR7がC(O)N(R17)S(O)2R15である一般式(I)の
化合物のためには、R2bがFであり、R3a及びR3bがHである一般式(VII)の化合物から出発す
る、類似の経路が使用できる。
【0074】
前記のように、一般式(XVII)の化合物は、一般式(XX)の化合物から一般式(XIX)の化合
物を経由して調製できる。
一般式(XX)の化合物は、一般式(XXa)、(XXb)、(XXc)、(XXd)又は(XXe)の化合物でもよ
い:
【化22】
(式中、Y及びR
5は一般式(I)で規定されたとおりであり、R
47は一般式(VIII)で規定された
とおりである)。
【0075】
一般式(XXa)の化合物は、一般式(XXX)の化合物:
【化23】
(式中、Y及びR
5は一般式(I)で規定されたとおりであり、R
47は一般式(VIII)で規定された
とおりである)から;
(i)n-BuLi又はリチウムジイソプロピルアミド(LDA)等の強塩基、及び、例えばトリメチル
シリルクロライド等のトリアルキルシリルハライドでの処理、及びそれに続く
(ii)例えば、下記構造を有するSelectfluor(登録商標)(1-クロロメチル-4-フルオロ-1,4-
ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン ビス(テトラフルオロボラート):
【化24】
を用いた、ステップ(i)の生成物の求電子性フッ素化、を含む方法により調製できる。
Selectfluor(登録商標)を使用する場合、この反応は適切には、15~25℃の温度、通常
典型的に室温で、アセトニトリル等の極性有機溶媒中で実施される。
適切な塩基には、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)及びn-ブチルリチウムが含まれ
るが、通常典型的には、トリメチルシリルクロライドと組み合わせて使用される。
【0076】
一般式(XXb)の化合物は、一般式(XXa)の化合物から、更なるフッ素化により調製でき、
それは典型的には、一般式(XXa)の化合物のために前記で記載されたものと類似の方法に
よって、即ち:
(i)n-BuLi又はLDA等の強塩基、及び、例えばトリメチルシリルクロライド等のトリアルキ
ルシリルハライドでの処理、並びにそれに続く
(ii)例えば、Selectfluor(登録商標)と用いた、ステップ(i)の生成物の求電子性フッ素化
、を含む方法により調製できる。
【0077】
一般式(XXc)の化合物は、一般式(XXb)の化合物から、トリメチルシリルクロライド等の
トリアルキルシリルハライドと組み合わせて使用される、強塩基、典型的にはLDAでの処
理、それに続くSelectfluor(登録商標)を用いたフッ素化により調製できる。
一般式(XXd)の化合物は、一般式(XXc)の化合物から、典型的にはSelectfluor(登録商標
)及び、トリエチルアミン等の弱塩基での更なるフッ素化することにより調製できる。
【0078】
一般式(XXe)の化合物は、一般式(XXa)の化合物から、式(XXXI)の化合物:
R51-Si(R13)3 (XXXI)
(式中、それぞれのR13は、独立してC1-6アルキル及びフェニルから選択され、R51はハロ
、例えばクロロである)と、リチウムジイソプロピルアミド等の強塩基の存在下で反応さ
せ、続いて、典型的にはSelectfluor(登録商標)を用いたフッ素化することにより調製で
きる。
【0079】
一般式(XXX)の化合物は、一般式(XXXII)の化合物:
【化25】
(式中、Y及びR
5は一般式(I)で規定されたとおりであり、R
47は一般式(VIII)で規定された
とおりである)から、典型的には(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イル)オキシダニル
(TEMPO)又は(ジアセトキシヨード)ベンゼン(BAIB)等の試薬での、酸化により調製しても
よい。
【0080】
一般式(XXXII)の化合物は、一般式(XXXIII)のカルボン酸:
【化26】
(式中、Y及びR
5は一般式(I)で規定されたとおりである)の、式R
47-OHのアルコールとの、
例えばp-トルエンスルホン酸又はメタンスルホン酸等の酸の存在下での反応による、エス
テル化により調製してもよい。
一般式(XXXIII)の化合物は公知である。R
5がエチルであり、Yが-CH
2CH
2-である一般式(
XXXIII)の化合物は、オベチコール酸である(国際公開WO02/072598を参照されたい)。
【0081】
出願人の先の出願である、国際公開WO2016/079518、国際公開WO2016/079518、国際公開
WO2016/079519、国際公開WO2016/079520、国際公開WO2017/199036及び国際公開WO2017/19
9033には、スキーム1に従った、一般式(XXXIII)の化合物の調製方法が記載されている;
スキーム1
【化27】
(式中、Yは、一般式(I)で規定されたとおりである)。
【0082】
一般式(XL)及び(XLI)の幾つかの化合物は公知であり、例えば、Uekawaらの文献(2004年
)は、スチグマステロールからの(22E)-3-オキソ-4,22-コラジエン-24-酸エチルエステル:
【化28】
の合成と、それに続く(22E)-3-オキソ-4,6,22-コラトリエン-24-酸エチルエステル:
【化29】
への、その転換を記載しており、Uekawaらは、その次に、この化合物を(6α,7α,22E)-6,
7-エポキシ-3-オキソ-4,22-コラジエン-24-酸エチルエステルへ転換することも記載して
いる。
【0083】
一般式(XL)及び(XLI)の他の化合物は、スチグマステロールに類似のフィトステロール
から類似の方法により調製してもよい。
スチグマステロール及び他のフィトステロールは、植物ステロールであり、容易に入手
可能であるか公知の経路により調製できる。
【0084】
R
2bはFであり、R
2a、R
3a及びR
3bは全てHである一般式(VIII)の化合物は、一般式(XLV)
の化合物:
【化30】
(式中、Y及びR
5は一般式(I)で規定されたとおりであり、R
47は一般式(VIII)で規定された
とおりである)の還元により、調製してもよい。
適切な還元剤には、例えば、水素化ホウ素ナトリウム等の水素化物が含まれ、反応は、
例えばアルゴン等の不活性雰囲気下で実施される。
生成物は、3β-ヒドロキシ異性体との混合物として得られる。
【0085】
一般式(XLV)の化合物は、一般式(XLVI)の化合物:
【化31】
(式中、Y及びR
5は一般式(I)で規定されたとおりである)の、エステル化により調製しても
よい。
適切には、エステル化は、アルキル又はベンジル基R
47のハロゲン化物、例えばヨウ化
物等、との反応により、炭酸セシウム等の塩基存在下、メタノール等のアルコール性溶媒
中で実施される。
【0086】
一般式(XLVI)の化合物は、一般式(XLVII)の化合物:
【化32】
(式中、Y及びR
5は一般式(I)で規定されたとおりであり、R
47は一般式(VIII)で規定された
とおりである)の、エピメリ化により調製してもよい。
このエピメリ化は、一般式(XLVII)の化合物を、例えば水酸化ナトリウム等の強塩基で
処理することにより実施してもよく、これによりOR
47成分のOHへの加水分解が生じる。得
られた生成物は、一般式(XLVI)の化合物及びその2α異性体の60:40混合物である。この混
合物は次に、前記のような再エステル化ステップでの更なる分離無しに使用されるが、そ
れは一般式(XLV)のエステル化合物が、カルボン酸化合物(XLVI)よりも、その2α異性体か
ら著しく容易に分離できるためである。
【0087】
一般式(XLVII)の化合物は、一般式(XLVIII)の化合物:
【化33】
(式中、Y及びR
5は一般式(I)で規定されたとおりであり、R
47は一般式(VIII)で規定された
とおりである)の、酸化により調製してもよい。適切な酸化剤には、Dess-Martinペルヨー
ジナンが含まれる。
【0088】
一般式(XLVIII)の化合物は、一般式(XLIX)の化合物:
【化34】
(式中、Y及びR
5は一般式(I)で規定されたとおりであり、R
47は一般式(VIII)で規定された
とおりである)から、
HF-ピリジン(70%)錯体と、例えばアルゴン等の不活性雰囲気下での反応により、調製して
もよい。適切には、この反応は、ジクロロメタン等のハロゲン化溶媒中で、低温で、例え
ば-10℃~10℃、典型的には約0℃で実施される。
【0089】
一般式(XLIX)の化合物は、一般式(L)の化合物:
【化35】
(式中、Y及びR
5は一般式(I)で規定されたとおりであり、R
47は一般式(VIII)で規定された
とおりであり、かつ破線は二つの結合の一方は単結合、他方は二重結合であることを表す
);
から、例えばジクロロメタン等のハロゲン化有機溶媒中で、m-パークロロ安息香酸を使用
する酸化により、調製してもよい。適切には、この反応は、15~25℃の温度、典型的には
室温で実施される。
【0090】
一般式(L)の化合物は、一般式(LI)の化合物:
【化36】
(式中、Y及びR
5は一般式(I)で規定されたとおりであり、R
47は一般式(VIII)で規定された
とおりである)から、トリフルオロメタンスルホン酸無水物等の適切な脱水試薬を使用し
て、ジメチルアミノピリジン等の塩基の存在下での脱水反応により調製してもよい。適切
には、この反応は、ジクロロメタン等のハロゲン化有機溶媒中で、15~25℃の温度で、典
型的には室温で実施される。
【0091】
一般式(LI)の化合物は、一般式(LII)の化合物:
【化37】
(式中、Y及びR
5は一般式(I)で規定されたとおりであり、R
47は一般式(VIII)で規定された
とおりである)を、L-Selectride(登録商標)(リチウムトリ-sec-ブチルボロヒドリド)等の
還元剤と反応させ、次に過酸化水素で処理することにより、調製してもよい。
適切には、L-Selectride(登録商標)との反応は、例えばアルゴン等の不活性雰囲気下、
低温、典型的には-78℃で実施される。過酸化水素との反応は、適切には約0℃の温度で実
施される。
【0092】
一般式(LII)の化合物は、一般式(LIII)の化合物:
【化38】
(式中、Y及びR
5は一般式(I)で規定されたとおりである)の、エステル化により調製しても
よい。
適切には、エステル化は、例えばp-トルエンスルホン酸等の、脱離基を含む酸の存在下
で、アルコールR
47-OHとの反応により行われる。この反応は、約20~40℃の温度で、例え
ば約30℃で実施されてもよい。
【0093】
一般式(LIII)の化合物は公知であり、当業者に公知の方法、例えば国際公開WO2016/079
518、国際公開WO2016/079518、国際公開WO2016/079519、国際公開WO2016/079520、国際公
開WO2017/199036及び国際公開WO2017/199033に教示された方法により調製してもよい。
【0094】
一般式(I)の化合物はFXRアゴニストであり、そのためFXR介在性疾患及び症状の治療又
は予防に有用である。
従って、本発明の更なる態様では、医薬品における使用のための一般式(I)の化合物が
提供される。
本化合物は、ヒト又は獣医学用医薬品として、適切には哺乳類、特にヒトの治療のため
に、使用できる。
【0095】
一般式(I)の化合物は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH);原発性胆汁性肝硬変;原発性
硬化性胆管炎;胆道閉鎖症;胆汁鬱滞性肝疾患;C型肝炎感染症;アルコール性肝疾患;線維症
;及び線維症から生じる肝障害を含む代謝症候群の、治療又は予防での使用に特に有益で
ある。
【0096】
本発明は又、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH);原発性胆汁性肝硬変;原発性硬化性胆管
炎;胆道閉鎖症;胆汁鬱滞性肝疾患;C型肝炎感染症;アルコール性肝疾患;線維症;又は線維
症から生じる肝障害の治療又は予防のための薬剤の調製における、一般式(I)の化合物の
使用を提供する。
【0097】
同様に、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH);原発性胆汁性肝硬変;原発性硬化性胆管炎;
胆道閉鎖症;胆汁鬱滞性肝疾患;C型肝炎感染症;アルコール性肝疾患;線維症;又は線維症か
ら生じる肝障害、の治療又は予防方法であって、一般式(I)の化合物の有効量をその処置
を必要とする患者へ投与することを含む方法が提供された。
線維症には、肝臓、腎臓及び腸の線維症が含まれる。
【0098】
肝線維症は、NASH、アルコール性肝疾患若しくは非アルコール性脂肪性肝疾患に関連す
るものも含む。又、肝線維症は、肝炎、特にB型肝炎若しくはC型肝炎、又は寄生虫性肝疾
患等の感染症に関連するものも含む。肝線維症の他の原因には、ウィルソン病、ゴーシェ
病、グリコーゲン貯蔵障害ヘモクロマトーシス、ツェルウェガー症候群及び先天的な肝線
維症等の先天性障害によって引き起こされた損傷が含まれる。肝線維症は又、クロルプロ
マジン、トルブタミド、メトトレキサート、イソニアジド及びメチルドーパ等の薬物によ
って引き起こされたものも含む。
【0099】
腎線維症は、糖尿病性腎症、高血圧性腎硬化症、糸球体腎炎、間質性腎炎、移植に関連
する糸球体症及び多発性嚢胞腎疾患等の疾患に関連するものも含む。
腸線維症は、腸障害に関連するものも含む。
腸障害には、過敏腸症候群、クローン病及び潰瘍性大腸炎が含まれる。
【0100】
一般式(I)の化合物は、適切には、医薬組成物として提供され、本発明の更なる態様で
は、一般式(I)の化合物及び医薬として許容し得る賦形剤又はキャリアを含む、医薬組成
物が提供される。
【0101】
使用される特別な賦形剤又はキャリアは、選択された投与経路に依存すると共に、製剤
の他の成分と適合性があり、レシピエントに有害ではないという点において、許容可能で
なければならない。
本発明の組成物は又、1以上の上記疾患及び症状を処置するのに適した、1以上の追加的
な活性成分を含むことができる。
【0102】
製剤には、経口、経腸、経鼻、気管支経由(吸入式)、局所的(点眼、口腔内頬側及び舌
下を含む)、経膣又は非経口(皮下、筋肉内、静脈内及び皮内を含む)投与に適したものが
含まれ、製薬分野で周知の任意の方法で調製できる。
【0103】
組成物は、前記で規定された活性剤をキャリアと結合させて調製してもよい。一般的に
、製剤は、活性剤を液体キャリア若しくは細かく分離した固体キャリア、又はその両方と
均一かつ密接に結合させ、次に必要に応じて生成物を成形することによって調製される。
本発明は、一般式(I)の化合物を、医薬的又は獣医学的に許容し得る賦形剤又はキャリア
と連結又は結合することを含む、医薬組成物の調製方法にも及ぶ。
【0104】
本発明の経口投与用製剤は:それぞれが所定量の活性剤を含むカプセル、小袋(サシェ)
若しくは錠剤等の個別ユニット;粉末若しくは顆粒等;水性液体若しくは非水性液体中の活
性剤の溶液若しくは懸濁液等;又は水中油型液体エマルジョン若しくは油中水型液体エマ
ルジョン等;又は、ボーラスその他等として、提供することができる。
【0105】
経口投与用の組成物(例えば、錠剤及びカプセル)のための、用語「許容し得るキャリア
」には、一般的な賦形剤等のビヒクル、即ち、例えばシロップ、アカシア、ゼラチン、ソ
ルビトール、トラガカント、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、メチルセルロース、エチ
ルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセル
ロース、スクロース及びデンプン等の結合剤;例えばコーンスターチ、ゼラチン、ラクト
ース、スクロース、微結晶性セルロース、カオリン、マンニトール、リン酸二カルシウム
、塩化ナトリウム及びアルギン酸等の充填剤及びキャリア;並びに、ステアリン酸マグネ
シウム、ステアリン酸ナトリウム及び他のステアリン酸金属塩、ステアリン酸グリセロー
ル、ステアリン酸、シリコーン液、タルクワックス、油類及びコロイド状シリカ等の潤滑
剤、が含まれる。ペパーミント、ウィンターグリーンオイル、チェリーフレーバー等の香
味剤も又、使用できる。剤形を容易に識別可能とするために、着色剤を添加することが望
ましい場合がある。錠剤はまた、当分野で周知の方法によってコーティングすることがで
きる。
【0106】
錠剤は、任意に1以上の副成分と共に圧縮又は成形することにより調製してもよい。圧
縮錠剤は、粉末又は顆粒等の自由流動形態の活性剤を、任意に結合剤、潤滑剤、不活性希
釈剤、防腐剤、界面活性剤又は分散剤と混合して、適切な機械内で圧縮することにより調
製することができる。成形された錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合
物を、適切な機械内で成形することによって作製できる。錠剤は、任意にコーティングし
ても、刻み目を入れてもよく、活性剤の徐放又は制御放出を提供するように処方すること
もできる。
【0107】
経口投与に適した他の製剤には、フレーバー付きベース、通常はスクロース及びアカシ
ア又はトラガカント内に活性剤を含むロゼンジ;ゼラチン及びグリセリン等の不活性ベー
ス、又はスクロース及びアカシア内に活性剤を含むドロップ;並びに適切な液体キャリア
中に活性剤を含むうがい薬が含まれる。
【0108】
皮膚への局所適用のために、一般式(I)又は(II)の化合物は、クリーム、軟膏、ゼリー
、溶液又は懸濁液等として構成してもよい。この薬物に使用されてもよいクリーム又は軟
膏製剤は、例えば、British Pharmacopoeia等の医薬品の標準的な教科書に記載されてい
るような、当分野で周知の従来型製剤である。
非経口製剤は一般的に無菌であろう。
【図面の簡単な説明】
【0109】
(図面)
図中の*はP値<0.05を表し、**はP値<0.01を表し、かつ***はP値<0.001を表す
。
【
図1】
図1は、ヒト肝癌細胞株Huh7を、対照、(EC
50及びEC
90での)OCA、及び(EC
50及びEC
90での)化合物2と24時間インキュベートした後のSHP発現の変化を示す。
【
図2】
図2は、ヒト肝癌細胞株Huh7を、対照、(EC
50及びEC
90での)OCA、及び(EC
50及びEC
90での)化合物2と24時間インキュベートした後のOSTα発現の変化を示す。
【
図3】
図3は、ヒト肝細胞癌細胞株HepG2を、対照、(EC
50及びEC
90での)OCA、及び(EC
50及びEC
90での)化合物2と24時間インキュベートした後のCYP7A1発現の変化を示す。
【
図4】
図4は、ヒト肝細胞癌細胞株HepG2を、対照、(EC
50及びEC
90での)OCA、及び(EC
50及びEC
90での)化合物2と24時間インキュベートした後のTGFβ1発現の変化を示す。
【0110】
【
図5】
図5は、ヒト肝細胞株Huh7を、対照、(EC
50及びEC
90での)OCA、及び(EC
50及びEC
90での)化合物14と24時間インキュベートした後のSHP発現の変化を示す。
【
図6】
図6は、ヒト肝細胞株Huh7を、対照、(EC
50及びEC
90での)OCA、及び(EC
50及びEC
90での)化合物14と24時間インキュベートした後のOSTα発現の変化を示す。
【
図7】
図7は、ヒト肝細胞癌細胞株HepG2を、対照、(EC
50及びEC
90での)OCA、及び(EC
50及びEC
90での)化合物14と24時間インキュベートした後のCYP7A1発現の変化を示す。
【
図8】
図8は、ヒト肝細胞癌細胞株HepG2を、対照、(EC
50及びEC
90での)OCA、及び(EC
50及びEC
90での)化合物14と24時間インキュベートした後のTGFβ1発現の変化を示す。
【実施例0111】
(実施例)
実施例では、下記略語を使用した。
【表1】
【0112】
(実施例1 スルホニル尿素置換された側鎖を有する3α-ヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-
エチル-7α-ヒドロキシル-5β-コラン酸アナログの合成)
(A. メチル6α-エチル-3α,7α-ジヒドロキシル-5β-コラン-24-オアート)
【化39】
OCA(23.5 g、55.87 mmol)のMeOH(540 mL)溶液中へ室温で、para-トルエンスルホン酸(1
.02 mg、5.59 mmol、~0.1当量)を添加し、30℃で3時間、超音波処理した。反応が完了し
たら、反応混合物を真空減圧下で濃縮した。残留物をクロロホルム(500 mL)に溶解し、飽
和NaHCO
3溶液(500 mL)、H
2O(500 mL)、及び塩水(brine)(500 mL)で洗浄し、MgSO
4で乾燥
し、濾過し、真空減圧下で濃縮して標記化合物を白色固体として定量的収率で得た。得ら
れた固体を、更なる精製無しに使用した。
【化40】
LRMS(ESI
+)m/z:452.4 [M+NH
4]
+,100%.
【0113】
(B. メチル6α-エチル-7α-ヒドロキシル-3-オキソ-5β-コラン-24-オアート)
【化41】
攪拌中の、ステップAで得られたメチル6α-エチル-3α,7α-ジヒドロキシル-5β-コラ
ン-24-オアート(9.53 g、21.9 mmol)の、H
2O(22 mL)及びtert-ブタノール(88 mL)溶液へ
室温で、KBr(5.22 g、43.9 mmol、~2.0当量)、KHCO
3(22.0 g、219 mmol、~10当量)及び
TEMPO(4.45 g、28.5 mmol、~1.3当量)を添加した。反応混合物を0℃まで冷却し、NaClO(
28 mL、32.9 mmol、~1.5当量)を4 mL/時間の速度で7時間かけて滴下添加した。反応が完
了したら、反応物を、1:1飽和Na
2S
2O
3溶液(250 mL)を徐々に添加してクエンチし、EtOAc(
200 mL)で希釈した。有機相を除去し、次に水相をEtOAc(3×150 mL)で逆抽出した。有機
相を一緒にして、MgSO
4で乾燥し、濾過し、真空減圧下で濃縮して、14.2 gの疎原料を橙
色油として得た。得られた油をカラムクロマトグラフィー(PE中アセトンのグラジエント
溶出40~60、0~20%)で精製して、標記化合物を白色固体として得た(8.48 g、89%)。
【化42】
LRMS(ESI
+)m/z:450.3 [M+NH
4]
+,100%.
【0114】
(C. メチル6α-エチル-4β-フルオロ-7α-ヒドロキシル-3-オキソ-5β-コラン-24-オア
ート)
【化43】
攪拌中の、予め冷却したジイソプロピルアミン(0.78 mL、5.54 mmol、~12当量)の-78
℃のドライTHF(6.9 mL)溶液へ、ヘキサン中のn-BuLi(1.44 mL、2.31 mmol、~5.0当量)を
、0.25時間かけてアルゴン雰囲気下で滴下した。添加後、トリメチルシリルクロライド(0
.29mL、2.31 mmol、~5.0当量)を添加し、1時間攪拌した。ステップBで得られたメチル6
α-エチル-7α-ヒドロキシル-3-オキソ-5β-コラン-24-オアート(200 mg、0.46 mmol)の
ドライTHF(3 mL)溶液及びトリエチルアミン(1.16 mL、8.32 mmol、~18当量)を、次に添
加した。添加後、反応物を徐々に-20℃まで温め、2時間攪拌した。反応が完了したら、反
応物を、飽和NaHCO
3溶液(5 mL)を滴下添加してクエンチし、室温まで2時間かけて温めた
。有機相を除去し、水相をEtOAc(3×10 mL)で逆抽出した。有機相を一緒にして、塩水(30
mL)で洗浄し、MgSO
4で乾燥し、濾過し、真空減圧下で濃縮して、271mgの疎原料を黄色残
留物として得た。
【0115】
攪拌中の、得られた疎原料のMeCN(13 mL)溶液へSelectfluor(登録商標)を添加し、混合
物を16時間攪拌した。反応が完了したら、反応混合物を真空減圧下で濃縮した。残留物を
EtOAC(20 mL)に溶解し、2MのHCl(30 mL)で酸性にした。有機相を除去し、水相をEtOAc(3
×15 mL)で逆抽出した。有機相を一緒にして、塩水(100 mL)で洗浄し、MgSO
4で乾燥し、
濾過し、真空減圧下で濃縮して、196 mgの疎原料を緑色固体として得た。HPLCによる精製
でヘキサン/アセトン(90/10)を溶出液として使用して、標記化合物及びメチル-2β-フル
オロ-3-オキソ-6α-エチル-7α-ヒドロキシル-5β-コラン-24-オアートの分離不能な混合
物を、無色油として得た(79 mg、0.18 mmol、37%の標記化合物、
1H NMRによると、メチル
-2β-フルオロ-3-オキソ-6α-エチル-7α-ヒドロキシル-5β-コラン-24-オアートが1%混
入していると考えられる)。
【化44】
LRMS(ESI
+)m/z:468.4 [M+NH
4]
+,100%.
【0116】
(D. メチル6α-エチル-4β-フルオロ-(3α,7α)-ジヒドロキシル-5β-コラン-24-オアー
ト)
【化45】
攪拌中の、ステップCで得られたメチル6α-エチル-4β-フルオロ-7α-ヒドロキシル-3-
オキソ-5β-コラン-24-オアート(75 mg、0.17 mmol)のドライTHF(6.7 mL)溶液へ室温で、
NaBH
4(19 mg、0.50 mmol、~3.0当量)を添加し、アルゴン雰囲気下で16時間攪拌した。反
応が完了したら、反応物を、H
2O(8 mL)を滴下添加してクエンチし、EtOAc(10 mL)で希釈
した。有機相を除去し、水相をEtOAc(3×50 mL)で逆抽出した。有機相を一緒にして、H
2O
(100 mL)で洗浄し、MgSO
4で乾燥し、濾過し、真空減圧下で濃縮して、77 mgの疎原料を白
色残留物として得た。HPLCによる精製でヘキサン/アセトン(90/10)を溶出液として使用し
て、標記化合物を無色油として得た(55 mg、0.12 mmol、74%)。
【化46】
LRMS(ESI
+)m/z:470.4 [M+NH
4]
+,100%.
【0117】
(E. 3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-5β-コラン酸)
【化47】
攪拌中の、メチル6α-エチル-4β-フルオロ-(3α,7α)-ジヒドロキシル-5β-コラン-24
-オアート(58 mg、0.13 mmol)のMeOH(5 mL)溶液へ室温で、NaOH(250 mg、5%溶液)を添加
し、18時間攪拌した。反応が完了したら、反応混合物を真空減圧下で濃縮し、残留物を1M
のHClで酸性pH 2とし、EtOAc(20 mL)で希釈した。有機相を除去し、水相をEtOAc(3×50 m
L)で逆抽出した。有機相を一緒にして、塩水(100 mL)で洗浄し、MgSO
4で乾燥し、濾過し
、真空減圧下で濃縮して、76 mgの疎原料を黄色油として得た。HPLCによる精製でヘキサ
ン/アセトン(70/30)を溶出液として使用して、標記化合物を無色油として得た(41 mg、0.
09 mmol、72%)。
【化48】
LRMS(ESI
+)m/z:456.2,[M+NH
4]
+,100%.
【0118】
(スルホニル尿素置換された側鎖を有する化合物の合成)
下記方法は、4β-フルオロ誘導体のために示されるが、2β-フッ素化、4,4-ジフッ素化
若しくは2,4-ジフルオロ化(difluoroinated)化合物のためにも又使用できる。
【0119】
(F. 3α-アセトキシ-4β-フルオロ-6α-エチル-7α-ヒドロキシル-5β-コラン酸)
【化49】
攪拌中の、ステップEで得られた3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-5
β-コラン酸(2.08 g、4.74 mmol)のドライTHF(160 mL)溶液へ、室温アルゴン雰囲気下で
、NaHCO
3(2.04 g、23.7 mmol、~5.0当量)及びAc
2O(2.29 mL、23.7 mmol、~5.0当量)を5
分間かけて滴下添加した。添加後、反応混合物を70℃で16時間加熱した。反応が完了した
ら、反応混合物を室温まで冷却し、H
2O(100 mL)を滴下添加してクエンチし、1MのHCl(20
mL)で酸性にして、EtOAc(100 mL)で希釈した。有機相を除去し、水相をEtOAc(3×150 mL)
で逆抽出した。有機相を一緒にして、塩水(400 mL)で洗浄し、MgSO
4で乾燥し、濾過し、
真空減圧下で濃縮して、黄色油を得た。得られた油を、カラムクロマトグラフィー(CH
2Cl
2中MeOHのグラジエント溶出、0~3%)で精製して、標記化合物を白色固体として得た(660
mg、29%)。
【化50】
LRMS(ESI
+)m/z:498.2,[M+NH
4]
+,100%.
【0120】
(G. 3α-アセトキシ-4β-フルオロ-6α-エチル-7α-ヒドロキシル-5β-コラン-24-オイ
ルアジド)
【化51】
攪拌中の、ステップFで得られた3α-アセトキシ-4β-フルオロ-6α-エチル-7α-ヒドロ
キシル-5β-コラン酸(200 mg、0.42 mmol)のドライTHF(4 mL)溶液へ、室温アルゴン雰囲
気下でEt
3N(0.12 mL、0.83 mmol、~2.0当量)を滴下添加した。添加後、反応混合物を0℃
まで冷却し、ジフェニルリン酸アジド(0.13 mL、0.62 mmol、~1.5当量)を滴下添加した
。添加後、反応混合物をブラストシールドの向こう側で3時間攪拌した。反応が完了した
ら、反応物を塩水(5 mL)でクエンチし、CH
2Cl
2(5 mL)で希釈した。有機相を除去し、水相
をCH
2Cl
2(3×5 mL)で逆抽出した。有機相を一緒にして、MgSO
4で乾燥し、濾過し、真空減
圧下0℃で濃縮して、黄色油を得た。得られた油を、更なる精製無しに使用した。
【化52】
【0121】
(H. 3α-アセトキシ-4β-フルオロ-6α-エチル-7α-ヒドロキシル-24-ノル-5β-コラン-
23-イルイソシアナート)
【化53】
攪拌中の、ステップGで得られた疎油3α-アセトキシ-4β-フルオロ-6α-エチル-7α-ヒ
ドロキシル-5β-コラン-24-オイルアジド(105 mg、推定0.42 mmol)のドライトルエン(3.1
mL)溶液を、125℃までアルゴン雰囲気下で加熱した。5時間後、反応物を、室温まで放置
冷却した。得られた溶液を、更なる精製無しに使用した。
【化54】
【0122】
(イソシアナートのスルホニル尿素への転換のための一般的手順1)
【化55】
攪拌中の、ステップHで得られた疎3α-アセトキシ-4β-フルオロ-6α-エチル-7α-ヒド
ロキシル-24-ノル-5β-コラン-23-イルイソシアナートのトルエン溶液へ、スルホンアミ
ド(~1.5当量)及びDBU(~1.5当量)を添加して16時間攪拌した。反応が完了したら、反応
物を、1MのHCl(2 mL)を滴下添加してクエンチし、EtOAc(5 mL)で希釈した。有機相を除去
し、水相をEtOAc(3×5 mL)で逆抽出した。有機相を一緒にして、MgSO
4で乾燥し、濾過し
、真空減圧下で濃縮した。得られた残留物を、カラムクロマトグラフィー(PE中アセトン
のグラジエント溶出40~60、5~20%)で精製して、目的のスルホニル尿素を得た。
【0123】
(N,N’-(3α-アセトキシ-4β-フルオロ-6α-エチル-7α-ヒドロキシル-24-ノル-5β-コラ
ン-23-イル)-p-トルエンスルホニル尿素(中間体1))
【化56】
53.4 mgのp-トルエンスルホンアミドを使用して一般的手順1に従い調製し、中間体1を
黄色油として得た(51.7 mg、38%)。
【化57】
LRMS(ESI
+)m/z:666.4,[M+NH
4]
+,100%.
【0124】
(N,N’-(3α-アセトキシ-4β-フルオロ-6α-エチル-7α-ヒドロキシル-24-ノル-5β-コラ
ン-23-イル)-ベンゼンスルホニル尿素(中間体2))
【化58】
49.0 mgのベンゼンスルホンアミドを使用して一般的手順1に従い調製し、中間体2を黄
色油として得た(49.9 mg、38%)。
【化59】
LRMS(ESI
+)m/z:652.3,[M+NH
4]
+,100%.
【0125】
(N,N’-(3α-アセトキシ-4β-フルオロ-6α-エチル-7α-ヒドロキシル-24-ノル-5β-コラ
ン-23-イル)-4-(tert-ブチル)ベンゼンスルホニル尿素(中間体3))
【化60】
53.2 mgの4-(tert-ブチル)ベンゼンスルホンアミドを使用して一般的手順1に従い調製
し、中間体3を無色油として得た(81.6 mg、71%)。
【化61】
LRMS(ESI
+)m/z:708.4,[M+NH
4]
+,100%.
【0126】
(N,N’-(3α-アセトキシ-4β-フルオロ-6α-エチル-7α-ヒドロキシル-24-ノル-5β-コラ
ン-23-イル)-m-トルエンスルホニル尿素(中間体4))
【化62】
42.6 mgのm-トルエンスルホンアミドを使用して一般的手順1に従い調製し、中間体4を
無色油として得た(85.7 mg、80%)。
【化63】
LRMS(ESI
+)m/z:666.3,[M+NH
4]
+,100%.
【0127】
(N,N’-(3α-アセトキシ-4β-フルオロ-6α-エチル-7α-ヒドロキシル-24-ノル-5β-コラ
ン-23-イル)-o-トルエンスルホニル尿素(中間体5))
【化64】
42.6 mgのo-トルエンスルホンアミドを使用して一般的手順1に従い調製し、中間体5を
無色油として得た(55.4 mg、51%)。
【化65】
LRMS(ESI
+)m/z:666.3,[M+NH
4]
+,100%.
【0128】
(3α-アセテートスルホニル尿素の脱保護のための一般的手順2)
【化66】
保護基を有するスルホニル尿素が投入されているフラスコへ、NaOHのMeOH(5%溶液,10 m
L)溶液を添加して16時間攪拌した。反応が完了したら、反応物を1MのHClで酸性にしてpH
7.0とし、EtOAc(10 mL)で希釈した。有機相を除去し、水相をEtOAc(3×10 mL)で逆抽出し
た。有機相を一緒にして、NaHCO
3溶液(50 mL)で洗浄し、MgSO
4で乾燥し、濾過し、真空減
圧下で濃縮した。得られた残留物を、カラムクロマトグラフィー(CH
2Cl
2中MeOHのグラジ
エント溶出、0~5%)で精製して、脱保護されたスルホニル尿素を得た。
【0129】
(N,N’-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-24-ノル-5β-コラン-23-イ
ル)-p-トルエンスルホニル尿素(化合物1))
【化67】
49.7 mgの中間体1を使用して一般的手順2に従い調製し、化合物1を無色残留物として得
た(18.6 mg、40%)。
【化68】
LRMS(ESI
+)m/z:624.4,[M+NH
4]
+,100%.
【0130】
(N,N’-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-24-ノル-5β-コラン-23-イ
ル)-ベンゼンスルホニル尿素(化合物2))
【化69】
44.8 mgの中間体2を使用して一般的手順2に従い調製し、化合物2を無色残留物として得
た(28.5 mg、64%)。
【化70】
LRMS(ESI
+)m/z:610.2,[M+NH
4]
+,100%.
【0131】
(N,N’-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-24-ノル-5β-コラン-23-イ
ル)-4-(tert-ブチル)ベンゼンスルホニル尿素(化合物3))
【化71】
79.6 mgの中間体3を使用して一般的手順2に従い調製し、化合物3を無色残留物として得
た(50.7 mg、65%)。
【化72】
LRMS(ESI
+)m/z:666.4,[M+NH
4]
+,100%.
【0132】
(N,N’-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-24-ノル-5β-コラン-23-イ
ル)-m-トルエンスルホニル尿素(化合物4))
【化73】
83.7 mgの中間体4を使用して一般的手順2に従い調製し、化合物4を無色残留物として得
た(29.0 mg、37%)。
【化74】
LRMS(ESI
+)m/z:624.3,[M+NH
4]
+,100%.
【0133】
(N,N’-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-24-ノル-5β-コラン-23-イ
ル)-o-トルエンスルホニル尿素(化合物5))
【化75】
53.4 mgの中間体5を使用して一般的手順2に従い調製し、化合物5を無色残留物として得
た(24.2 mg、48%)。
【化76】
LRMS(ESI
+)m/z:624.3,[M+NH
4]
+,100%.
【0134】
(N,N’-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-24-ノル-5β-コラン-23-イ
ル)-p-フルオロベンゼンスルホニル尿素(化合物6))
【化77】
この化合物は、化合物1~5のための上記記載と類似の方法により調製した。
【化78】
【0135】
(N,N’-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-24-ノル-5β-コラン-23-イ
ル)-m-フルオロベンゼンスルホニル尿素(化合物7))
【化79】
この化合物は、化合物1~5のための上記記載と類似の方法により調製した。
【化80】
【0136】
(N,N’-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-24-ノル-5β-コラン-23-イ
ル)-o-フルオロベンゼンスルホニル尿素(化合物8)
【化81】
この化合物は、化合物1~5のための上記記載と類似の方法により調製した。
【化82】
【0137】
(N,N’-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-24-ノル-5β-コラン-23-イ
ル)-p-(トリフルオロメチル)ベンゼンスルホニル尿素(化合物9))
【化83】
この化合物は、化合物1~5のための上記記載と類似の方法により調製した。
【化84】
【0138】
(N,N’-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-24-ノル-5β-コラン-23-イ
ル)-m-(トリフルオロメチル)ベンゼンスルホニル尿素(化合物10))
【化85】
この化合物は、化合物1~5のための上記記載と類似の方法により調製した。
【化86】
【0139】
(N,N’-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-24-ノル-5β-コラン-23-イ
ル)-o-(トリフルオロメチル)ベンゼンスルホニル尿素(化合物11))
【化87】
この化合物は、化合物1~5のための上記記載と類似の方法により調製した。
【化88】
【0140】
(N,N’-(3α,7α-ジヒドロキシル-6α-エチル-24-ノル-5β-コラン-23-イル)-ベンゼンス
ルホニル尿素(比較化合物A))
【化89】
この化合物は、化合物5~9のための上記記載と類似の方法により調製した。
【化90】
【0141】
(実施例2 スルホニル尿素置換された側鎖を有する化合物の代替的な合成)
下記方法は、4β-フルオロ誘導体のために示されるが、2β-フッ素化、4,4-ジフッ素化
若しくは2,4-ジフルオロ化(difluoroinated)化合物のためにも又使用できる。
【0142】
(A. メチル6α-エチル-4β-フルオロ-7α-トリメチルシロキシ-3-オキソ-5β-コラン-24
-オアート)
【化91】
攪拌中の、予め冷却したジイソプロピルアミン(0.78 mL、5.54 mmol、~12当量)の-78
℃のドライTHF(6.9 mL)溶液へ、ヘキサン中のn-BuLi(1.44 mL、2.31 mmol、~5.0当量)を
、0.25時間かけてアルゴン雰囲気下で滴下した。添加後、トリメチルシリルクロライド(0
.29mL、2.31 mmol、~5.0当量)を添加し、1時間攪拌した。実施例1のステップBで得られ
たメチル6α-エチル-7α-ヒドロキシル-3-オキソ-5β-コラン-24-オアート(200 mg、0.46
mmol)のドライTHF(3 mL)溶液及びトリエチルアミン(1.16 mL、8.32 mmol、~18当量)を
、次に添加した。添加後、反応物を徐々に-20℃まで温め、2時間攪拌した。反応が完了し
たら、反応物を飽和NaHCO
3溶液(5 mL)を滴下添加してクエンチし、室温まで2時間かけて
温めた。有機相を除去し、水相をEtOAc(3×10 mL)で逆抽出した。有機相を一緒にして、
塩水(30 mL)で洗浄し、MgSO
4で乾燥し、濾過し、真空減圧下で濃縮して、271mgの疎原料
を黄色残留物として得た。
【0143】
疎原料(1.16 g、2.3 mmol)のドライMeCN(55 mL)溶液へ、Selectfluor(登録商標)(1.23
g、3.47 mmol)を投入した。室温で14.5時間攪拌後、混合物を酢酸エチル(100 mL)で希釈
し、5% NaHCO3(100 mL)及び10% NaCl(50 mL)の混合物で洗浄した。水相を酢酸エチル(3×
100 mL)で抽出し、一緒にした有機相をMgSO4で乾燥し、濾過し、真空減圧下で濃縮して、
橙色/黄色油を得た。疎原料を、カラムクロマトグラフィー(SiO2、0~40%ヘプタン中EtOA
c)で精製して、標記化合物を無色油として得た(319.5 mg)。
【0144】
(B. メチル6α-エチル-4β-フルオロ-7α-トリメチルシロキシ-3α-ヒドロキシル-5β-
コラン-24-オアート)
【化92】
ステップAからの疎メチル6α-エチル-4β-フルオロ-7α-トリメチルシロキシ-3-オキソ
-5β-コラン-24-オアート(319.5 mg、0.71 mmol)を、アルゴン雰囲気下で攪拌しながらTH
F(28 mL)に溶解した。NaBH
4(80.5 mg、2.13 mmol)を投入し、反応物を室温で16.5時間攪
拌し、その後、追加的なNaBH
4(0.24 g、6.38 mmol)を投入した。混合物を追加的に4.5時
間攪拌してから、水(20 μL)を投入し、混合物を~60時間攪拌した。その後、反応物を水
(15 mL)の添加によりクエンチし、EtOAc(50 mL)で希釈した。二相を分離し、水相をEtOAc
(3×50 mL)で抽出した。一緒にした抽出液をMgSO
4で乾燥し、濾過し、真空減圧下で濃縮
して、透明シロップ状物質を得た(0.34 g)。この疎原料をカラムクロマトグラフィー(SiO
2、0~40%ヘプタン中EtOAc)で精製して、標記化合物を透明油として得た(162.3 mg)。
【0145】
(C. メチル6α-エチル-4β-フルオロ-7α-トリメチルシロキシ-3α-O-tert-ブチルジメ
チルシリル-5β-コラン-24-オアート)
【化93】
ステップBで得られたメチル6α-エチル-4β-フルオロ-7α-トリメチルシロキシ-3α-ヒ
ドロキシル-5β-コラン-24-オアート(0.48 g、0.92 mmol)をドライDCM(12 mL)に溶解し、
アルゴン雰囲気下で攪拌しながら0℃まで冷却した。2,6-ルチジン(1.1 mL、9.17 mmol)を
投入し、次にTBMDS-OTf(0.32 mL、1.38 mmol)を滴下添加した。反応物を室温まで温め24
時間攪拌し、次に0℃まで冷却し、10%クエン酸(5 mL)を滴下添加してクエンチした。二相
を分離し、水相をDCM(3×5 mL)で抽出した。一緒にした抽出液を10%クエン酸(5 mL)、NaH
CO
3水溶液(5 mL)及び水(5 mL)で洗浄し、MgSO
4で乾燥し、濾過し、真空減圧下で濃縮して
黄色油とした(0.69 g)。この疎原料をカラムクロマトグラフィー(SiO
2、0~20%ヘプタン
中EtOAc)で精製し、標記化合物を透明油として得た(0.58 g)。
【0146】
(D. 6α-エチル-4β-フルオロ-7α-トリメチルシロキシ-3α-O-tert-ブチルジメチルシ
リル-5β-コラン酸)
【化94】
ステップCで得られたメチル6α-エチル-4β-フルオロ-7α-トリメチルシロキシ-3α-O-
tert-ブチルジメチルシリル-5β-コラン-24-オアート(0.58 g)をIPA(5.8 mL)に攪拌しな
がら溶解した。0.5 MのNaOH(5.8 mL)を投入し、反応物を室温で15時間攪拌した。反応混
合物を減圧下で半分の体積まで濃縮し、次に水(5 mL)を投入し、溶液へ2 MのH
2SO
4を添加
して中和し、EtOAc(10 mL)で希釈した。混合物を2 MのH
2SO
4でpH 1酸性にし、二相を分離
し、水相をEtOAc(10 mL)で抽出した。一緒にした抽出液を水(5 mL)及び塩水(5 mL)で洗浄
し、MgSO
4で乾燥し、濾過し、真空減圧下で濃縮して、白色泡状物質(0.52 g)を得た。こ
の疎原料をカラムクロマトグラフィー(SiO
2、0~50%トルエン中アセトン)で精製し、標記
化合物を白色固体として得た(0.41 g、72%)。
【0147】
(E. 6α-エチル-4β-フルオロ-7α-トリメチルシロキシ-3α-O-tert-ブチルジメチルシ
リル-5β-コラン-24-オイルアジド)
【化95】
攪拌中のステップDで得られた6α-エチル-4β-フルオロ-7α-トリメチルシロキシ-3α-
O-tert-ブチルジメチルシリル-5β-コラン酸(197 mg、0.32 mmol)のドライTHF(3.2 mL)溶
液へ、室温アルゴン雰囲気下でEt
3N(0.09 mL、0.64 mmol、~2.0当量)を滴下添加した。
添加後、反応混合物を0℃まで冷却し、ジフェニルリン酸アジド(0.1 mL、0.48 mmol、~1
.5当量)を滴下添加した。添加後、反応混合物をブラストシールドの向こう側で2.5時間攪
拌した。反応が完了したら、反応物を塩水(3 mL)でクエンチし、DCM(3×5 mL)で抽出した
。一緒にした有機相をMgSO
4で乾燥し、濾過し、真空減圧下0℃で濃縮した。得られた油を
、更なる精製無しに使用した。
【0148】
(スルホニル尿素の形成のための一般的手順3)
【化96】
攪拌中の、実施例2のステップEで得られた疎6α-エチル-4β-フルオロ-7α-トリメチル
シロキシ-3α-O-tert-ブチルジメチルシリル-5β-コラン-24-オイルアジド(69 mg)のドラ
イトルエン(2.1 mL)溶液を、アルゴン雰囲気下で125℃まで加熱した。5時間後、反応物を
室温まで放置冷却した。得られた溶液を、更なる精製無しに使用した。この溶液をアルゴ
ン雰囲気下で攪拌し、スルホンアミド(1.5当量)及びDBU(1.5当量)を投入した。反応が完
了したら、反応物を1MのHCl(1 mL)を滴下添加してクエンチし、EtOAc(5 mL)で希釈した。
有機相を除去し、水相をEtOAc(3×5 mL)で逆抽出した。一緒にした有機相を塩水(3 mL)で
洗浄し、MgSO
4で乾燥し、濾過し、真空減圧下で濃縮した(231.7 mg)。得られた残留物を
カラムクロマトグラフィーで精製して、求めるスルホニル尿素を、分離不能な疎混合物と
して得た。
【0149】
(N,N’-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-24-ノル-5β-コラン-23-イ
ル)-4-(トリフルオロメトキシ)ベンゼンスルホニル尿素(化合物12)及びN,N’-(3α,7α-
ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-24-ノル-5β-コラン-23-イル)-p-メトキシベ
ンゼンスルホニル尿素(化合物13))
化合物12及び13を、前記一般的手順3に従い、それぞれ、疎イソシアナート生成物と4-(
トリフルオロメトキシ)ベンゼンスルホンアミドと、及び疎イソシアナート生成物と4-(メ
トキシ)ベンゼンスルホンアミドとの反応により、調製した。
純粋な生成物を得るために、疎化合物12及び13を、官能基保護した材料(中間体12及び1
3)へ転換し、それを精製してから脱保護して化合物12及び13を再生した。この方法を下記
に記載する。
【0150】
(N,N’-(3α,7α-ジ-O-tert-ブチルジメチルシリル-4β-フルオロ-6α-エチル-24-ノル-5
β-コラン-23-イル)-4-(トリフルオロメトキシ)ベンゼンスルホニル尿素(中間体12))
【化97】
N,N’-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-24-ノル-5β-コラン-23-イ
ル)-4-(トリフルオロメトキシ)ベンゼンスルホニル尿素(24.3 mg、0.036 mmol)をドライD
CM(1 mL)に溶解し、アルゴン雰囲気下で攪拌しながら0℃まで冷却した。2,6-ルチジン(0.
04 mL、0.36 mmol)を投入し、次にTBMDS-OTf(0.02 mL、0.108 mmol)を滴下添加した。反
応物を室温まで温め1.5時間攪拌し、次に0℃まで冷却し、10%クエン酸(1 mL)を滴下添加
してクエンチした。二相を分離し、水相をDCM(3×1 mL)で抽出した。一緒にした抽出液を
10%クエン酸(1 mL)、NaHCO
3水溶液(1 mL)及び水(1 mL)で洗浄し、MgSO
4で乾燥し、濾過し
、真空減圧下で濃縮して黄色油とした。この疎原料をカラムクロマトグラフィー(SiO
2、0
~50%ヘプタン中EtOAc)で精製し、標記化合物を透明油として得た(9.4 mg、33%)。
【0151】
(N,N’-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-24-ノル-5β-コラン-23-イ
ル)-4-(トリフルオロメトキシ)ベンゼンスルホニル尿素(化合物12))
【化98】
N,N’-(3α,7α-ジ-O-tert-ブチルジメチルシリル-4β-フルオロ-6α-エチル-24-ノル-
5β-コラン-23-イル)-4-(トリフルオロメトキシ)ベンゼンスルホニル尿素(9.4 mg)を、ア
ルゴン雰囲気下で攪拌しながらドライTHF(1 mL)に溶解した。1 MのTBAFのTHF(31 μL、0.
03 mmol)溶液を投入し、反応物を室温で6日間攪拌した。疎溶液をシリカゲル上で乾燥し
、カラムクロマトグラフィー(SiO
2、50~100%ヘプタン中EtOAc)で精製し、標記化合物を
得た(1 mg)。
【0152】
(N,N’-(3α,7α-ジ-O-tert-ブチルジメチルシリル-4β-フルオロ-6α-エチル-24-ノル-5
β-コラン-23-イル)-p-メトキシベンゼンスルホニル尿素(中間体13))
【化99】
N,N’-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-24-ノル-5β-コラン-23-イ
ル)-p-メトキシベンゼンスルホニル尿素(26.1 mg、0.042 mmol)をドライDCM(1 mL)に溶解
し、アルゴン雰囲気下で攪拌しながら0℃まで冷却した。2,6-ルチジン(0.05 mL、0.419 m
mol)を投入し、次にTBMDS-OTf(0.03 mL、0.126 mmol)を滴下添加した。反応物を室温まで
温め16時間攪拌し、次に0℃まで冷却し、10%クエン酸(1 mL)を滴下添加してクエンチした
。二相を分離し、水相をDCM(3×1 mL)で抽出した。一緒にした抽出液を10%クエン酸(1 mL
)、NaHCO
3水溶液(1 mL)及び水(1 mL)で洗浄し、MgSO
4で乾燥し、濾過し、真空減圧下で濃
縮して黄色油とした(28.1 mg)。この疎原料をカラムクロマトグラフィー(SiO
2、0~80% D
CM中MeOH)で精製し、次にカラムクロマトグラフィー(SiO
2、0~50%トルエン中アセトン)
で再精製して、標記化合物を得た(7.8 mg)。
【0153】
(N,N’-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-24-ノル-5β-コラン-23-イ
ル)-p-メトキシベンゼンスルホニル尿素(化合物13))
【化100】
N,N’-(3α,7α-ジ-O-tert-ブチルジメチルシリル-4β-フルオロ-6α-エチル-24-ノル-
5β-コラン-23-イル)-p-メトキシベンゼンスルホニル尿素(7.8 mg)を、アルゴン雰囲気下
で攪拌しながらドライTHF(1 mL)に溶解した。1 MのTBAFのTHF(28 μL、0.03 mmol)溶液を
投入し、反応物を室温で17時間攪拌した。疎溶液をシリカゲル上で乾燥し、カラムクロマ
トグラフィー(SiO
2、0~80%トルエン中アセトン)で精製し、標記化合物を得た(3.4 mg、5
9.6%)。
【化101】
【0154】
(実施例3 スルホンアミド置換された側鎖を有する化合物の合成)
下記方法は、4β-フルオロ誘導体のために示されるが、2β-フッ素化、4,4-ジフッ素化
若しくは2,4-ジフルオロ化(difluoroinated)化合物のためにも又使用できる。ステップA
及びBは実施例2と同様である。
【0155】
(C. 6α-エチル-4β-フルオロ-7α-トリメチルシロキシ-3α-ヒドロキシル-5β-コラン
酸)
【化102】
ステップBで得られたメチル6α-エチル-4β-フルオロ-7α-トリメチルシロキシ-3α-ヒ
ドロキシル-5β-コラン-24-オアート(162.3 mg)を、攪拌しながらIPA(1.6 mL)に溶解した
。0.5 MのNaOH(1.6 mL)を投入し、反応物を室温で16時間攪拌した。反応混合物を減圧下
で半分の体積まで濃縮し、次に水(5 mL)を投入し、溶液へ2 MのH
2SO
4を添加して中和し、
EtOAc(10 mL)で希釈した。混合物を2 MのH
2SO
4でpH 1酸性にし、二相を分離し、水相をEt
OAc(10 mL)で抽出した。一緒にした抽出液を水(3 mL)及び塩水(5 mL)で洗浄し、MgSO
4で
乾燥し、濾過し、真空減圧下で濃縮して、白色泡状物質を得た(151.1 mg)。この疎原料を
カラムクロマトグラフィー(SiO
2、0~80%ヘプタン中EtOAc)で精製し、標記化合物を透明
油として得た(164.1 mg)。
【0156】
(アシルスルホンアミド側鎖の形成のための一般的手順4)
【化103】
6α-エチル-4β-フルオロ-7α-トリメチルシロキシ-3α-ヒドロキシル-5β-コラン酸(5
0 mg、0.11 mmol)を、ドライDCM(2 mL)に溶解した。EDCI(43.7 mg、0.23 mmol)及びDMAP(
27.8 mg、0.23 mmol)それに続く適切なスルホンアミド(3当量)。室温で一晩攪拌後に、水
(5 mL)を投入し,二相を分離し、水相をDCM(2×5 mL)で抽出した。一緒にした抽出液を、1
MのHCl(2 mL)及び塩水(2 mL)で洗浄し、MgSO
4で乾燥し、濾過し、真空減圧下で濃縮して
、疎原料をオフホワイト色の固体として得た。
【0157】
(N-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-5β-コラン-24-オイル)-p-トリ
フルオロメトキシベンゼンスルホンアミド(化合物14))
【化104】
疎N-(6α-エチル-4β-フルオロ-7α-トリメチルシロキシ-3α-ヒドロキシル-5β-コラ
ン-24-オイル)-トリフルオロメトキシベンゼンスルホンアミド(81.6 mg)を、トリフルオ
ロメトキシベンゼンスルホンアミドを使用して一般的手順4に従い得て、それをアルゴン
雰囲気下で攪拌しながらドライTHF(5 mL)に溶解した。1 MのTBAFのTHF(0.48 mL、0.48 mm
ol)溶液を投入し、反応物を室温で17.5時間攪拌した。疎溶液をシリカゲル上で乾燥し、
カラムクロマトグラフィー(SiO
2、0~100%ヘプタン中EtOAc)で精製した。求める生成物を
含む画分を一緒にして、真空減圧下で濃縮し、EtOAc(5 mL)に溶解して、2 MのHCl(5 mL)
で洗浄した。水相をEtOAc(2×5 mL)で抽出し、一緒にした抽出液をMgSO
4で乾燥し、濾過
し、真空減圧下で濃縮して白色固体とし、それをカラムクロマトグラフィー(SiO
2、0~25
%トルエン中アセトン)で精製して、標記化合物を透明残留物として得た(4.9 mg)。
【化105】
【0158】
(N-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-5β-コラン-24-オイル)-p-フル
オロベンゼンスルホンアミド(化合物15))
【化106】
これは、上記化合物14のために使用されたものと類似の経路により調製した。
【化107】
【0159】
(N-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-5β-コラン-24-オイル)-m-フル
オロフェニルスルホンアミド(化合物16))
【化108】
これは、上記化合物14のために使用されたものと類似の経路により調製した。
【化109】
【0160】
(N-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-5β-コラン-24-オイル)-o-フル
オロフェニルスルホンアミド(化合物17))
【化110】
これは、上記化合物14のために使用されたものと類似の経路により調製した。
【化111】
【0161】
(N-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-5β-コラン-24-オイル)-4-トリ
フルオロメチルフェニルスルホンアミド(化合物18))
【化112】
これは、上記化合物14のために使用されたものと類似の経路により調製した。
【化113】
【0162】
(N-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-5β-コラン-24-オイル)-3-トリ
フルオロメチルフェニルスルホンアミド(化合物19))
【化114】
これは、上記化合物14のために使用されたものと類似の経路により調製した。
【化115】
【0163】
(N-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-5β-コラン-24-オイル)-2-トリ
フルオロメチルフェニルスルホンアミド(化合物20))
【化116】
これは、上記化合物14のために使用されたものと類似の経路により調製した。
【化117】
【0164】
(N-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-5β-コラン-24-オイル)-シクロ
プロピルスルホンアミド(比較化合物B))
【化118】
N-(3α-ヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-7α-トリメチルシロキシ-5β-コラン-
24-イル)-シクロプロピルスルホンアミド(50 mg)を、アルゴン雰囲気下で攪拌しながらド
ライTHFに溶解した。1 MのTBAFのTHF溶液(0.3 mL、0.3 mmol)を投入し、反応物を室温で2
3時間攪拌した。反応物をEtOAc(20 mL)で希釈し、水(10 mL)及び10% NaCl水溶液で洗浄し
た。疎溶液をシリカゲル上で乾燥し、カラムクロマトグラフィー(SiO
2、0~50%トルエン
中アセトン)で精製し、標記化合物を得た(5.4 mg)。
Rf値:0.65(EtOAc/ヘプタン、50:50).
【化119】
【0165】
(N-(3α,7α-ジヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-5β-コラン-24-オイル)-メチル
スルホンアミド(比較化合物C))
【化120】
N-(3α-ヒドロキシル-4β-フルオロ-6α-エチル-7α-トリメチルシロキシ-5β-コラン-
24-イル)-メチルスルホンアミド(50 mg)を、アルゴン雰囲気下で攪拌しながらドライTHF
に溶解した。1 MのTBAFのTHF溶液(0.3 mL、0.3 mmol)を投入し、反応物を室温で16時間攪
拌した。反応物をEtOAc(5 mL)で希釈し、塩水(3 mL)で洗浄した。疎溶液をシリカゲル上
で乾燥し、カラムクロマトグラフィー(SiO
2、0~50%トルエン中アセトン)で精製した。求
める生成物を含む画分を一緒にして、減圧下で濃縮し、CDCl
3に溶解し、2 MのHCl及び水
で洗浄し、PTFEフィルターパッドを通して濾過し、真空減圧下で濃縮して標記化合物を得
た(7.1 mg)。
【化121】
【0166】
(実施例4 スルホニル尿素及びアシルスルホンアミド側鎖を有する4,4-ジフルオロ-3α,7
α-ジヒドロキシル-6α-エチル-5β-コラン酸アナログの合成)
(A. メチル6α-エチル-4,4-ジフルオロ-7α-ヒドロキシル-3-オキソ-5β-コラン-24-オ
アート)
【化122】
予め冷却したメチル6α-エチル-4β-フルオロ-7α-ヒドロキシル-3-オキソ-5β-コラン
-24-オアート(実施例1Cの生成物;7.30 g、16.0 mmol)の-78℃のドライTHF(300 mL)溶液へ
、ヘキサン中のLDA(21.1 mL、21.1 mmol、~ 1.3当量)を、0.25時間かけてアルゴン雰囲
気下で滴下した。添加後、トリメチルシリルクロライド(2.70 mL、21.1 mmol、~1.3当量
)をドライTHF(150 mL)溶液として添加し、1時間攪拌した。反応が完了したら、反応物を
飽和NaHCO
3溶液(300 mL)を滴下添加してクエンチし、室温まで0.25時間かけて温めた。有
機相を除去し、水相をジクロロメタン(2×150 mL)で逆抽出した。有機相を一緒にして、
塩水(300 mL)で洗浄し、MgSO
4で乾燥し、濾過し、真空減圧下で濃縮して、疎原料(
19F NM
Rによると、メチル6α-エチル-4β-フルオロ-7α-ヒドロキシル-3-オキソ-5β-コラン-24
-オアートが3%混入している)を黄色残留物として得た。得られた残留物を、更なる精製無
しに、次の反応に使用した。
【化123】
【0167】
攪拌中の、得られた疎原料のMeCN(360 mL)溶液へSelectfluor(登録商標)(11.4 g、32.0
mmol、~2.0当量)を添加し、16時間攪拌した。反応が完了したら、反応混合物を真空減
圧下で濃縮した。残留物をジクロロメタン(500 mL)及びH
2O(500 mL)に溶解した。有機相
を除去し、水相をジクロロメタン(2×250 mL)で逆抽出した。有機相を一緒にして、塩水(
250 mL)で洗浄し、MgSO
4で乾燥し、濾過し、真空減圧下で濃縮して、疎原料を黄色残留物
として得た。得られた残留物を、精製無しに、次の反応に使用した。
【化124】
LRMS(ESI
+)m/z:486.6,[M+NH
4]
+,100%.
【0168】
(B. メチル4,4-ジフルオロ-(3α,7α)-ジヒドロキシル-6α-エチル-5β-コラン-24-オア
ート)
【化125】
攪拌中の、ステップAで得られた疎メチル6α-エチル-4,4-ジフルオロ-7α-ヒドロキシ
ル-3-オキソ-5β-コラン-24-オアート(7.51 g、推定16.0 mmol)のドライメタノール(500
mL)溶液へ、室温アルゴン雰囲気下で、NaBH
4(3.03 g、80.1 mmol、~5.0当量)を添加して
72時間攪拌した。反応が完了したら、反応物を真空減圧下で濃縮した。残留物をジクロロ
メタン(500 mL)及びH
2O(500 mL)に溶解した。有機相を除去し、水相をジクロロメタン(2
×250 mL)で逆抽出した。有機相を一緒にして、塩水(250 mL)で洗浄し、MgSO
4で乾燥し、
SiO
2にかけて濾過し、真空減圧下で濃縮して、7.63 gの疎原料を無色残留物として得た。
フラッシュカラムクロマトグラフィー(Biotage SNAP KP-Sil 100gカートリッジ)により、
ヘキサン/アセトン(100/0~80/20)を溶出液として使用して精製し、標記化合物であるメ
チル4,4-ジフルオロ-(3α,7α)-ジヒドロキシル-6α-エチル-5β-コラン-24-オアートを
、無色残留物として得た(3.09 g、6.57 mmol、三段階で41%)。
【化126】
LRMS(ESI
+)m/z:488.6,[M+NH
4]
+,100%.
【0169】
(C. 3α,7α-ジヒドロキシル-4,4-ジフルオロ-6α-エチル-5β-コラン酸)
【化127】
攪拌中の、ステップBで得られたメチル4,4-ジフルオロ-(3α,7α)-ジヒドロキシル-6α
-エチル-5β-コラン-24-オアート(1.77 g、3.75 mmol、1.0当量)の、1,4-ジオキサン(95
mL)及び水(35 mL)溶液の溶液へ、室温で濃(37%)塩酸(11 mL、9:3:1比)を添加した。1時間
還流後、反応混合物を室温まで冷却し、飽和NaHCO
3溶液(50 mL)で中和した。有機相を除
去し、水相をジクロロメタン(3×50 mL)で逆抽出した。有機相を一緒にして、塩水(200 m
L)で洗浄し、MgSO
4で乾燥し、濾過し、真空減圧下で濃縮して、1.84 gの疎原料を茶色油
として得た。フラッシュカラムクロマトグラフィー(Biotage SNAP KP-Sil 50gカートリッ
ジ)により、ヘキサン/アセトン(100/0~90/10)を溶出液として使用して精製し、標記化合
物である3α,7α-ジヒドロキシル-4,4-ジフルオロ-6α-エチル-5β-コラン酸を、無色油
として得た(1.51 g、3.30 mmol、88%)。
【化128】
LRMS(ESI
+)m/z:474.6,[M+NH
4]
+,100%.
【0170】
(D. 3α-アセトキシ-4,4-ジフルオロ-6α-エチル-7α-ヒドロキシル-5β-コラン酸)
【化129】
攪拌中の、ステップCで得られた3α,7α-ジヒドロキシル-4,4-ジフルオロ-6α-エチル-
5β-コラン酸(400 mg、0.88 mmol、1.0当量)のドライTHF(50 mL)溶液へ、室温で炭酸水素
ナトリウム(370 mg、4.38 mmol、~5.0当量)及び無水酢酸(0.41 mL、4.38 mmol、~5.0当
量)を添加した。16時間70℃にした後、反応混合物を室温まで冷却し、H
2O(50 mL)を徐々
に添加してクエンチした。有機相を除去し、水相をEtOAc(2×50 mL)で逆抽出した。有機
相を一緒にして、飽和NaHCO
3溶液(100 mL)で洗浄し、MgSO
4で乾燥し、濾過し、真空減圧
下で濃縮して、462 mgの疎原料を黄色油として得た。フラッシュカラムクロマトグラフィ
ー(Biotage SNAP KP-Sil Ultra 25gカートリッジ)により、ヘキサン/アセトン(100/0~80
/20)を溶出液として使用して精製し、標記化合物である3α-アセトキシ-4,4-ジフルオロ-
6α-エチル-7α-ヒドロキシル-5β-コラン酸を、無色油として得た(270 mg、0.54 mmol、
62%)。
【化130】
LRMS(ESI
+)m/z:516.5,[M+NH
4]
+,100%.
【0171】
(E. 3α-アセトキシ-4,4-ジフルオロ-6α-エチル-7α-ヒドロキシル-5β-コラン-24-オ
イル-アジド)
【化131】
予め冷却したステップDで得られた3α-アセトキシ-4,4-ジフルオロ-6α-エチル-7α-ヒ
ドロキシル-5β-コラン酸(240 mg、0.48 mmol、1.0当量)の0℃のドライTHF(5.3 mL)溶液
へ、トリエチルアミン(0.14 mL、0.96 mmol、~2.0当量)及びジフェニルリン酸アジド(0.
16 mL、0.72 mmol、~1.5当量)を添加した。3時間後、反応混合物を、塩水(10 mL)を徐々
に添加してクエンチした。有機相を除去し、水相をジクロロメタン(3×20 mL)で逆抽出し
た。有機相を一緒にして、MgSO
4で乾燥し、濾過し、真空減圧下0℃で濃縮して、疎原料を
淡黄色油として得た。得られた油を、更なる精製、次の反応に使用した。
【化132】
【0172】
(F. 3α-アセトキシ-4,4-ジフルオロ-6α-エチル-7α-ヒドロキシル-24-ノル-5β-コラ
ン-23-イルイソシアナート)
【化133】
攪拌中の、ステップEで得られた疎油3α-アセトキシ-4,4-ジフルオロ-6α-エチル-7α-
ヒドロキシル-5β-コラン-24-オイルアジド(252 mg、推定0.48 mmol)のドライトルエン(7
.5 mL)溶液を、125℃までアルゴン雰囲気下で加熱した。4時間後、反応物を室温まで冷却
した。得られた溶液を、更なる精製無しに使用した。
【化134】
【0173】
(G. N,N’-(3α-アセトキシ-4,4-ジフルオロ-6α-エチル-7α-ヒドロキシル-24-ノル-5
β-コラン-23-イル)-ベンゼンスルホニル尿素)
【化135】
113 mgのベンゼンスルホンアミドを使用して一般的手順1に従い調製し、標記化合物で
あるN,N’-(3α-アセトキシ-4,4-ジフルオロ-6α-エチル-7α-ヒドロキシル-24-ノル-5β
-コラン-23-イル)-ベンゼンスルホニル尿素を白色残留物として得た(235 mg、0.36 mmol
、75%)。
【化136】
LRMS(ESI
+)m/z:635.8,[M+NH
4]
+,100%.
【0174】
(N,N’-(3α,7α-ジヒドロキシル-4,4-ジフルオロ-6α-エチル-24-ノル-5β-コラン-23-
イル)-ベンゼンスルホニル尿素(化合物21))
【化137】
210 mgのN,N’-(3α-アセトキシ-4,4-ジフルオロ-6α-エチル-7α-ヒドロキシル-24-ノ
ル-5β-コラン-23-イル)-ベンゼンスルホニル尿素を使用して一般的手順2に従い調製し、
標記化合物であるN,N’-(3α,7α-ジヒドロキシル-4,4-ジフルオロ-6α-エチル-24-ノル-
5β-コラン-23-イル)-ベンゼンスルホニル尿素を白色固体として得た(102 mg、0.17 mmol
、52%)。
【化138】
LRMS(ESI
+)m/z:593.6,[M+NH
4]
+,100%.
【0175】
(N-(3α,7α-ジヒドロキシル-4,4-ジフルオロ-6α-エチル-5β-コラン-24-オイル)-ベン
ゼンスルホンアミド(化合物22))
【化139】
ステップCで得られた400 mgの3α,7α-ジヒドロキシル-4,4-ジフルオロ-6α-エチル-5
β-コラン酸を使用して一般的手順4に従い調製し、標記化合物であるN-(3α,7α-ジヒド
ロキシル-4,4-ジフルオロ-6α-エチル-5β-コラン-24-オイル)-ベンゼンスルホンアミド
を白色固体として得た(161 mg、0.27 mmol、31%)。
【化140】
LRMS(ESI
+)m/z:613.6,[M+NH
4]
+,100%.
【0176】
(実施例5 スルホニル尿素及びスルホンアミド側鎖を有する6α-エチル-2α/β,4β-ジフ
ルオロ-(3α,7α)-ジヒドロキシル-5β-コラン酸アナログの合成)
(A. メチル6α-エチル-2α/β,4β-ジフルオロ-7α-ヒドロキシル-3-オキソ-5β-コラン
-24-オアート)
【化141】
攪拌中の、予め冷却した1MのLDAのTHF/ヘキサン(1.63 mL、1.625 mmol)溶液及びTMS-Cl
(0.21 mL、1.626 mmol)の-78℃のドライTHF(6 mL)溶液へ、メチル6α-エチル-4β-フルオ
ロ-7α-ヒドロキシル-3-オキソ-5β-コラン-24-オアート(実施例1Cの生成物;170 mg、0.3
25 mmol)のドライTHF(2.5 mL)溶液を、10分間かけて滴下添加した。添加後、反応物を徐
々に室温まで温め、20時間攪拌した。反応が完了したら反応混合物を0℃まで冷却し、飽
和NaHCO
3溶液(5 mL)を滴下添加してクエンチし、H
2O(5 mL)で希釈した。有機相を除去し
、水相をEtOAc(3×5 mL)で逆抽出した。一緒にした有機体を、NaHCO
3(5 mL)、H
2O(5 mL)
及び塩水(5 mL)で洗浄した。有機相を一緒にして、MgSO
4で乾燥し、濾過し、真空減圧下
で濃縮して、黄色油を得た。得られたシロップ状物質を、更なる精製無しに、次の反応に
使用した。
【化142】
【0177】
攪拌中の、メチル-3-トリメチルシリル-6α-エチル-4β-フルオロ-7α-ヒドロキシル-5
β-コラン-2-エン-24-オアート(推定0.19 g、0.325 mmol)のドライMeCN(10 mL)溶液へ、S
electfluor(登録商標)(0.17 g、0.488 mmol)を少しずつ添加し、反応物を室温で16時間攪
拌した。反応が完了したら、反応物をEtOAc(5 mL)及び飽和NaHCO3(3 mL)で希釈した。有
機相を除去し、水相をEtOAc(3×5 mL)で逆抽出した。有機相を一緒にして、MgSO4で乾燥
し、濾過し、真空減圧下で濃縮して黄色油を得た。
上記実施例2D及び2Eで記載された手順をステップAの生成物に実施して、メチル6α-エ
チル-2α/β,4β-ジフルオロ-(3α,7α)-ジヒドロキシル-5β-コラン-24-オアートを得た
。
この化合物は、上記実施例1~3で記載されたように、一般的手順1~4を使用して同様な
スルホニル尿素又はスルホンアミドアナログへ転換できる。
【0178】
(2β-フルオロ化合物の合成)
オベチコール酸の2α-フルオロ及び4α-フルオロ誘導体を、下記のとおり調製した。
【0179】
(実施例6 スルホニル尿素及びスルホンアミド側鎖を有する2β-フルオロ-3α,7α-ジヒ
ドロキシル-6α-エチル-5β-コラン酸アナログの合成)
(A. メチル-3,7-ジオキソ-6α-エチル-5β-コラン-24-オアート)
【化143】
国際公開WO2016/079520に記載のとおり調製した(6α,5β,7α)-6-エチル-7-ヒドロキシ
-3,7-ジオキソ-コラン-24-酸(36.0 g、87.7 mmol、1.0当量)のメタノール(800 mL)溶液へ
、para-トルエンスルホン酸(1.67 g、8.78 mmol、~0.1当量)を室温で添加し、30℃で4時
間超音波処理した。反応が完了したことをTLCで確認し、反応混合物を真空減圧下で濃縮
した。残留物をクロロホルム(400 mL)に溶解し、飽和NaHCO
3溶液(400 mL)、及び塩水(400
mL)で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥し、濾過し、真空減圧下で濃縮して、37.6 gの疎原料を白色
固体として得て(87.3 mmol、99%)、更なる精製無しに使用した。
【化144】
LRMS(ESI
+)m/z:448.3 [M+NH
4]
+,100%.
【0180】
(B. メチル-3β-ヒドロキシル-6α-エチル-7-オキソ-5β-コラン-24-オアート及びメチ
ル-3α-ヒドロキシル-6α-エチル-7-オキソ-5β-コラン-24-オアート)
【化145】
ステップAのメチル-3,7-ジオキソ-6α-エチル-5β-コラン-24-オアート(10.0 g、23.2
mmol、1.0当量)のテトラヒドロフラン(340 mL)ドライ溶液へ、-78℃でアルゴン雰囲気下
でL-Selectride(35.0 mL、34.8 mmol、~2.5当量)を15分かけて滴下添加した。10分後、
反応混合物へ、過酸化水素溶液(40 mL、30% v/v)及び、2Mの水酸化ナトリウム(40 mL)の
水(400 mL)溶液を0℃で添加した。更に10分後、反応混合物へ2Mの塩酸(130 mL)を室温で
添加した。水相を分離し、酢酸エチル(2×250 mL)で抽出し、一緒にした有機画分を水(50
0 mL)で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥し、濾過し、真空減圧下で濃縮して、11.0 gの疎原料を無
色油として得た。フラッシュカラムクロマトグラフィー(Biotage SNAP KP-Sil 100 gカー
トリッジ)により、PE 40~60/アセトン(90/10~80/20)を溶出液として使用して精製し、
化合物メチル-3β-ヒドロキシル-6α-エチル-7-オキソ-5β-コラン-24-オアート及びメチ
ル-3α-ヒドロキシル-6α-エチル-7-オキソ-5β-コラン-24-オアートの分離不能な混合物
(65:35比)を、白色残留物として得た(7.83 g、18.1 mmol、78%)。この混合物は分離され
ず、両方の化合物は、次の段階で複数のアルケンの同じ混合物へと導かれた。
(化合物A:)
【化146】
LRMS(ESI
+)m/z:450.3 [M+NH
4]
+,100%.
(化合物B:)
【化147】
LRMS(ESI
+)m/z:450.4 [M+NH
4]
+,100%.
【0181】
(C. メチル-6α-エチル-7オキソ-5β-コル-2-エン-24-オアート及びメチル-6α-エチル-
7-オキソ-5β-コル-3-エン-24-オアート)
【化148】
ステップBのメチル-3β-ヒドロキシル-6α-エチル-7-オキソ-5β-コラン-24-オアート
及びメチル-3α-ヒドロキシル-6α-エチル-7-オキソ-5β-コラン-24-オアート(6.31 g、1
4.6 mmol、1.0当量)のジクロロメタン(120 mL)溶液へ、ジメチルアミノピリジン(3.56 g
、29.2 mmol、~2.0当量)を室温で添加した。反応混合物を、0℃まで冷却し、トリフルオ
ロメタンスルホン酸無水物(2.57 mL、15.3 mmol、~1.05当量)を5分かけて滴下添加した
。12℃まで加温して2時間後、反応が完了したことをTLCで確認し、反応混合物を2Mの塩酸
(100 mL)でクエンチした。水相を分離し、ジクロロメタン(3×100 mL)で抽出し、一緒に
した有機画分を塩水(200 mL)で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥し、濾過し、真空減圧下で濃縮して
、7.56 gの疎原料を橙色油として得た。フラッシュカラムクロマトグラフィー(Biotage S
NAP KP-Sil 100 gカートリッジ)により、PE 40~60/アセトン(90/10)を溶出液として使用
して精製し、メチル-6α-エチル-7オキソ-5β-コル-2-エン-24-オアート及びメチル-6α-
エチル-7-オキソ-5β-コル-3-エン-24-オアートの分離不能な混合物(80:20比)を、無色油
として得た(2.70 g、6.51 mmol、45%)。
【化149】
LRMS(ESI
+)m/z:432.20 [M+NH
4]
+,100%.
【0182】
(D. メチル-2β,3β-エポキシ-6α-エチル-7-オキソ-5β-コラン-24-オアート及びメチ
ル-3β,4β-エポキシ-6α-エチル-7-オキソ-5β-コラン-24-オアート)
【化150】
ステップCのメチル-6α-エチル-7オキソ-5β-コル-2-エン-24-オアート及びメチル-6α
-エチル-7-オキソ-5β-コル-3-エン-24-オアート(80:20比)(5.00 g、12.1 mmol、~1.0当
量)のジクロロメタン(100 mL)溶液へ、室温でmeta-パークロロ安息香酸(3.12 g、18.1 mm
ol、~1.5当量)を添加した。室温3時間後、反応が完了したことをTLCで確認し、反応混合
物を飽和Na
2S
2O
3溶液(150 mL)でクエンチした。10分間攪拌後、水相を分離し、ジクロロ
メタン(3×100 mL)で抽出し、一緒にした有機画分をNa
2SO
4で乾燥し、濾過し、真空減圧
下で濃縮して、5.28 gの疎原料を淡黄色残留物として得た。フラッシュカラムクロマトグ
ラフィー(Biotage SNAP KP-Sil 100 gカートリッジ)により、PE 40~60/アセトン(95/5~
90/10)を溶出液として使用して精製し、メチル-2β,3β-エポキシ-6α-エチル-7-オキソ-
5β-コラン-24-オアート及びメチル-3β,4β-エポキシ-6α-エチル-7-オキソ-5β-コラン
-24-オアートの分離不能な混合物を、無色油として得た(4.94 g、11.5 mmol、95%)。更に
フラッシュカラムクロマトグラフィー(Biotage SNAP KP-Sil 340 gカートリッジ)により
、PE 40~60/アセトン(95/5~90/10)を溶出液として使用して精製し、化合物メチル-2β,
3β-エポキシ-6α-エチル-7-オキソ-5β-コラン-24-オアートを無色油として(3.71 g、8.
62 mmol、72%)、及び化合物メチル-3β,4β-エポキシ-6α-エチル-7-オキソ-5β-コラン-
24-オアートを無色油として(1.18 g、2.74 mmol、23%)得た。
(化合物A:)
【化151】
LRMS(ESI
+)m/z:448.30 [M+NH
4]
+,100%.
(化合物B:)
【化152】
LRMS(ESI
+)m/z:448.26 [M+NH
4]
+,100%.
【0183】
(E. メチル-2α-フルオロ-3α-ヒドロキシル-6α-エチル-7-オキソ-5β-コラン-24-オア
ート)
【化153】
ステップDのメチル-2β,3β-エポキシ-6α-エチル-7-オキソ-5β-コラン-24-オアート(
3.33 g、7.73 mmol、1.0当量)のジクロロメタン(100 mL)ドライ溶液へ、0℃でアルゴン雰
囲気下で、HF.ピリジン(70%)錯体(100 mL、3.86 mol、~500当量)を100 mLボトルを開封
してすぐに、アルゴン定常流下でガラス漏斗を介して、冷却した反応フラスコへ注いで添
加した。試薬添加後、容器及び漏斗をジクロロメタン(20 mL)ですすいだ。0℃で3時間後
、反応混合物をジクロロメタン(200 mL)で希釈し、飽和NaHCO
3溶液(500 mL)を徐々に添加
してクエンチし、室温で1時間攪拌しつつ、5.0 gのNaHCO
3を100 mgごとに少しずつ添加し
た。次に水相を分離し、ジクロロメタン(3×250 mL)で抽出し、一緒にした有機画分をNa
2
SO
4で乾燥し、濾過し、真空減圧下で濃縮して、3.61 gの疎原料を無色油として得た。フ
ラッシュカラムクロマトグラフィー(Biotage SNAP KP-Sil 100 gカートリッジ)により、P
E 40~60/アセトン(95/5~90/150)を溶出液として使用して精製し、化合物メチル-2α-フ
ルオロ-3α-ヒドロキシル-6α-エチル-7-オキソ-5β-コラン-24-オアートを、白色残留物
として得た(2.39 g、5.30 mmol、69%)。
【化154】
LRMS(ESI
+)m/z:468.28 [M+NH
4]
+,100%.
【0184】
(F. メチル-2α-フルオロ-3,7-ジオキソ-6α-エチル-5β-コラン-24-オアート)
【化155】
ステップEのメチル-2α-フルオロ-3α-ヒドロキシル-6α-エチル-7-オキソ-5β-コラン
-24-オアート(1.00 g、2.26 mmol、1.0当量)のジクロロメタン(20 mL)溶液へ、Dess-Mart
inペルヨージナン(1.92 g、4.52 mmol、~2.0当量)及びH
2O(0.25 mL)を室温で添加した。
室温で3時間後、反応が完了したことをTLCで確認し、反応混合物を飽和NaHCO
3溶液(25 mL
)でクエンチし、Celiteにかけて濾過し、ジクロロメタン(90 mL)で洗浄した。次に水相を
分離し、ジクロロメタン(2×50 mL)で抽出し、一緒にした有機相を飽和Na
2S
2O
3溶液(150
mL)で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥し、濾過し、真空減圧下で濃縮して、1.21 gの疎原料を淡黄
色油として得た。フラッシュカラムクロマトグラフィー(Biotage SNAP KP-Sil 25 gカー
トリッジ)により、PE 40~60/アセトン(95/5~90/10)を溶出液として使用して精製し、化
合物メチル-2α-フルオロ-3,7-ジオキソ-6α-エチル-5β-コラン-24-オアートを、白色残
留物として得た(568 mg、1.27 mmol、56%)。
【化156】
LRMS(ESI
+)m/z:466.55 [M+NH
4]
+,100%.
【0185】
(G. 2α-フルオロ-3,7-ジオキソ-6α-エチル-5β-コラン酸及び2β-フルオロ-3,7-ジオ
キソ-6α-エチル-5β-コラン酸)
【化157】
メチル-2α-フルオロ-3,7-ジオキソ-6α-エチル-5β-コラン-24-オアート(ステップFの
生成物、878 mg、1.95 mmol、1.0当量)のメタノール(20 mL)溶液へ、水酸化ナトリウム(1
.0 g)を室温で添加した。室温で19時間後、反応が完了したことをTLCで確認し、反応混合
物をpH 4.0酸性にし、真空減圧下で濃縮した。残留物を酢酸エチル(50 mL)に溶解し、1M
の塩酸(50 mL)で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥し、濾過し、真空減圧下で濃縮して、968 mgの疎
原料を無色油として得た。フラッシュカラムクロマトグラフィー(Biotage SNAP KP-Sil 2
5 gカートリッジ)により、ジクロロメタン/メタノール(98/2~90/10)を溶出液として使用
して精製し、2α-フルオロ-3,7-ジオキソ-6α-エチル-5β-コラン酸及び2β-フルオロ-3,
7-ジオキソ-6α-エチル-5β-コラン酸の分離不能な混合物(40:60比)を、白色残留物とし
て得た(772 mg、1.77 mmol、91%)。
(2α-フルオロ-3,7-ジオキソ-6α-エチル-5β-コラン酸:)
【化158】
LRMS(ESI
+)m/z:452.51 [M+NH
4]
+,100%.
(2β-フルオロ-3,7-ジオキソ-6α-エチル-5β-コラン酸:)
【化159】
LRMS(ESI
+)m/z:452.51 [M+NH
4]
+,100%.
【0186】
(H. メチル-2β-フルオロ-3,7-ジオキソ-6α-エチル-5β-コラン-24-オアート)
【化160】
ステップGの2α-フルオロ-3,7-ジオキソ-6α-エチル-5β-コラン酸及び2β-フルオロ-3
,7-ジオキソ-6α-エチル-5β-コラン酸(40:60比)(750 mg、1.72 mmol、~1.0当量)のジメ
チルホルムアミド(17 mL)溶液へ、炭酸セシウム(840 mg、2.58 mmol、~1.5当量)を室温
で添加した。室温で20分後、ヨードメタン(0.54 mL、8.59 mmol、~5.0当量)を滴下添加
した。室温で19時間後、反応が完了したことをTLCで確認し、反応混合物を真空減圧下で
濃縮した。残留物を酢酸エチル(25 mL)及びH
2O(20 mL)に溶解した。水相を分離し、酢酸
エチル(3×25 mL)で抽出し、一緒にした有機相を塩水(100 mL)で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥し
、濾過し、真空減圧下で濃縮して、917 mgの疎原料を淡黄色油として得た。フラッシュカ
ラムクロマトグラフィー(Biotage SNAP Ultra KP-Sil 25 gカートリッジ)により、PE 40
~60/アセトン(95/5~90/10)を溶出液として使用して精製し、化合物メチル-2β-フルオ
ロ-3,7-ジオキソ-6α-エチル-5β-コラン-24-オアートを、白色残留物として得た(416 mg
、0.95 mmol、54%)。対応する2α-フルオロ誘導体は、単離されなかった。
【化161】
LRMS(ESI
+)m/z:466.59 [M+NH
4]
+,100%.
【0187】
(I. メチル-2β-フルオロ-3β,7α-ジヒドロキシル-6α-エチル-5β-コラン-24-オアー
ト及びメチル-2β-フルオロ-3α,7α-ジヒドロキシル-6α-エチル-5β-コラン-24-オアー
ト)
【化162】
ステップHのメチル-2β-フルオロ-3,7-ジオキソ-6α-エチル-5β-コラン-24-オアート(
390 mg、0.87 mmol、1.0当量)のメタノール(20 mL)ドライ溶液へ、アルゴン雰囲気下室温
で、水素化ホウ素ナトリウム(164 mg、4.44 mmol、5.0当量)を添加した。室温で1時間後
、反応混合物を真空減圧下で濃縮した。残留物をジクロロメタン(20 mL)及びH
2O(20 mL)
に溶解し、水相を分離し、ジクロロメタン(3×20 mL)で抽出した。一緒にした有機画分を
Na
2SO
4で乾燥し、濾過し、真空減圧下で濃縮して、446 mgの疎原料を淡黄色油として得た
。フラッシュカラムクロマトグラフィー(Biotage SNAP Ultra KP-Sil 25 gカートリッジ)
により、PE 40~60/アセトン(95/5~90/10)を溶出液として使用して精製し、化合物メチ
ル-2β-フルオロ-3β,7α-ジヒドロキシル-6α-エチル-5β-コラン-24-オアートを無色油
(161 mg、0.36 mmol、41%)として、化合物メチル-2β-フルオロ-3α,7α-ジヒドロキシル
-6α-エチル-5β-コラン-24-オアートを無色油(146 mg、0.32 mmol、37%)として得た。
(メチル-2β-フルオロ-3β,7α-ジヒドロキシル-6α-エチル-5β-コラン-24-オアート:
)
【化163】
LRMS(ESI
+)m/z:470.64 [M+NH
4]
+,100%.
(メチル-2β-フルオロ-3α,7α-ジヒドロキシル-6α-エチル-5β-コラン-24-オアート:
)
【化164】
LRMS(ESI
+)m/z:470.64 [M+NH
4]
+,100%.
【0188】
(J. 2β-フルオロ-3α,7α-ジヒドロキシル-6α-エチル-5β-コラン酸)
【化165】
1,4-ジオキサン(9.8 mL)及び水(3.6 mL)の溶液中の、ステップIのメチル-2β-フルオロ
-3α,7α-ジヒドロキシル-6α-エチル-5β-コラン-24-オアート(119 mg、0.26 mmol、1.0
当量)の溶液へ、濃縮(37%)塩酸(1.2 mL、9:3:1比)を室温で添加した。1時間 還流後、反
応が完了したことをTLCで確認し、反応混合物を飽和NaHCO
3溶液(20 mL)で中和した。水相
を酢酸エチル(3×15 mL)で抽出し、一緒にした有機画分をNa
2SO
4で乾燥し、濾過し、真空
減圧下で濃縮して、141 mgの疎原料を無色油として得た。フラッシュカラムクロマトグラ
フィー(Biotage SNAP Ultra KP-Sil 10 gカートリッジ)により、ジクロロメタン/メタノ
ール(95/5~90/10)を溶出液として使用して精製し、化合物2β-フルオロ-3α,7α-ジヒド
ロキシル-6α-エチル-5β-コラン酸を白色残留物として得た(92 mg、0.21 mmol、80%)。
【化166】
LRMS(ESI
+)m/z:456.60 [M+NH
4]
+,100%.
【0189】
この化合物は、上記実施例1~3で記載されたように一般的手順1~4を使用して同様なス
ルホニル尿素又はスルホンアミドアナログへ転換できる。
【0190】
(生物学的実施例)
下記生物学的実施例8及び9のために、英国レディング大学のKim Watson教授及びDannie
lle Kydd-Sinclair氏により、全ての仕事がなされ、データが快く提供された。
【0191】
(実施例7 FXR受容体におけるEC
50及び有効性の測定)
本発明の化合物を、FXR受容体におけるアゴニスト活性について分析した。表1は、本発
明の実施例化合物のEC
50値及び有効値を、比較実施例化合物である、オベチコール酸、及
び下記構造を有する公知のFXRアゴニストGW4064:
【化167】
の値と比較して示す。
有効性は用量反応曲線上の最大点として定義し、かつ、表1のGW4064の有効値を100%と
した。
表1のEC
50値は、25 nMとされたGW4064のEC
50に対して正規化した。
【0192】
オベチコール酸は、国際公開WO02/072598又は、発明者らの出願国際公開WO2016/079518
、国際公開WO2016/079518、国際公開WO2016/079519及び国際公開WO2016/079520に記載の
とおりに調製できる。
【0193】
(FXRのEC50/有効性プロトコル)
用量反応アッセイを、ヒトファルネソイドX受容体(NR1H4,FXR)レポーターアッセイシス
テムの技術マニュアル(Indigo Biosciences Human Farnesoid X Receptor (NR1H4, FXR)
Reporter Assay System, Technical Manual (7.1b版)、www.indigobiosciences.com)に記
載されたように実施した。
【0194】
ルシフェラーゼ遺伝子に機能的に結合したFXR応答性プロモーター遺伝子から構成され
るFXRレポーター細胞を解凍し、96ウェルプレートに播種し、直ちにこれらの細胞へ、製
造者のプロトコルに従い、異なる濃度(10~0.05 μM)で試験化合物を投与した。試験化合
物又は溶媒(DMSO)の存在下で24時間インキュベート後、蛍光ベースの生細胞マルチプレッ
クス(LCM)アッセイ(Indigo Biosciences Live Cell Multiplex Assay、技術マニュアル(3
.1版)、www.indigobiosciences.com)を使用して、これら処理/未処理レポーター細胞の細
胞生存性を測定し、偽陰性結果を排除した。生細胞からの蛍光は、[485nmEx|535nmEm]の
組み合わせフィルターを備えたプレートリーダーを使用して測定した。その次に、アゴニ
スト活性の尺度であるルシフェラーゼ活性の誘導を、製造者のプロトコルに従い、ルミノ
メーター(TECAN)を使用して定量分析した。
【0195】
陽性対照は、GW4064のEC50値を25nMとし、また、GW4064の有効性を100%として、各ア
ッセイで実施した。各試験化合物の有効性及びEC50をGW4064と比較した。
結果を表1に表す。
【0196】
【0197】
本発明の全ての化合物は、FXRアゴニスト活性を有する。化合物11以外の全ての化合物
は、オベチコール酸と比べて有意に改善されたEC50値を有する。更に又、本発明の全ての
化合物の有効値は、少なくともGW4064の値と同じくらい良く、ほとんどの場合はより優れ
ている。
【0198】
化合物2の結果とその非フッ素化アナログ比較化合物Aの結果との比較は、フッ素化はEC
50及び有効性の両方を改善することを示す。芳香族スルホンアミド化合物14~20の結果と
、炭素環スルホンアミド比較化合物B及びメチルスルホンアミド比較化合物Cの結果との比
較は、側鎖上の芳香族置換基の重要性を示す。
【0199】
(実施例8 TGR5受容体におけるEC50及び有効性の測定)
化合物2及び14、TGR5(対照)、並びにオベチコール酸のタウリン及びグリシン抱合体を
、DiscoverXから利用可能なHitHunter(登録商標)cAMPアッセイを使用して、アゴニストモ
ードでGi及びGsセコンドメッセンジャーシグナル伝達を介して、TGR5(GPBAR1)受容体の活
性化を監視して、TGR5受容体における活性を試験した。データは、リガンド(TGR5)対照の
存在下及びビヒクル対照の存在下で観察された最大応答及び最小応答に対して正規化した
。
【0200】
(アッセイ設計:GPCR cAMP調節)
(細胞操作)
1.cAMP Hunter細胞株を、標準的手順に従い冷凍ストックから増殖させた。
2.細胞を、白壁384ウェルマイクロプレート内に、総量20μLで播種し、試験前に37℃で適
切な時間インキュベートした。
3.cAMP調節(modulation)は、DiscoverX HitHunter(登録商標)cAMP XS+アッセイを使用し
て決定した。
【0201】
(Gsアゴニストフォーマット)
1.アゴニスト決定のために、細胞を試料と共にインキュベートして、応答を誘導した。
2.培地を細胞から吸引し、15μLの2:1のHBSS/10mM Hepes:cAMP XS+Ab試薬で置き換えた
。
3.試料ストックの中間希釈を行って、アッセイバッファ中で4×試料を作成した。
4.5μLの4×試料を細胞に添加し、37℃又は室温で、30分間又は60分間インキュベートし
た。ビヒクル濃度は1%だった。
【0202】
(シグナル検出)
1.適切な化合物インキュベーション後、室温で、20μLのcAMP XS+ED/CL溶解カクテルで1
時間インキュベートし、それに続いて20μLのcAMP XS+EA試薬で3時間インキュベートし
て、アッセイシグナルが生成された。
2. シグナル生成に続き、化学発光シグナル検出用のPerkinElmer Envision(商標)機器で
、マイクロプレートを測定にかけた。
【0203】
(データ分析)
1.化合物活性を、CBISデータ分析スイート(ChemInnovation、CA)を使用して分析した。
2.活性パーセントは、Gsアゴニストモードアッセイのためには次式;
【数1】
を使用して計算し、RLUは相対光単位(Relative Light Unit)の略語である。
【0204】
5.活性パーセントは、Giアゴニストモードアッセイのためには次式;
【数2】
を使用して計算する。
【0205】
【0206】
結果は、オベチコール酸抱合体とは異なり、化合物2又は化合物14のいずれも、TGR5受
容体におけるアゴニスト活性を持っていないことを示す。従って、これら化合物は選択的
なFXRアゴニストである。
【0207】
(実施例9 リガンド誘導された遺伝子発現の定量分析)
化合物2及びオベチコール酸について、多くのFXR標的遺伝子の発現に対するそれらの効
果を試験した。この実施例では、本発明の化合物及びオベチコール酸による細胞レベルで
のFXRの機能的な活性化を観察するための、細胞ベースのアッセイ及び遺伝子発現の分析
を記載した。
【0208】
試験化合物への応答における遺伝子発現の特異的変化を評価するために、定量的リアル
タイムPCR(qPCR)による精密な定量化及び分析を実施した。哺乳類の組織培養実験では、
肝癌細胞(Huh7)を6ウェルプレートに、1×106細胞/ウェル濃度で播種して、37℃で24時間
インキュベートして付着させた。細胞を、そのEC50若しくはEC90のいずれかのそれぞれの
試験化合物、又はビヒクル(DMSO)へ24時間曝露した。
【0209】
化合物2及びOCAも又、ヒト肝細胞癌細胞株であるHepG2で試験した。HepG2細胞は又、そ
のEC50又はEC90のいずれかの濃度の、OCA又は化合物2を含む培地で、24時間インキュベー
トした。
Huh7細胞及びHepG2細胞での試験は又、化合物2と同じ様式で化合物14でも実施した。
【0210】
(培養細胞からの全RNAの単離)
RNAqueous(商標)Total RNA Isolationキット(Ambion)を使用して全RNAを抽出し、かつ
、全ての試薬は、キットに同梱されていたものであるか、又は製造者の指示に従い調製し
た。培養細胞の場合、培地を除去し、細胞を1×PBSで洗浄し、細胞破片及び残留培地を除
去した。全RNAは新鮮細胞から抽出した。1×106細胞の場合、350μlの細胞溶解(lysis)バ
ッファをウェルに直接添加し、細胞をピペットチップで剥離採取した。溶解細胞を等容量
の64%エタノールと一緒にし、ピペッティングにより完全に混合した。エタノールと溶解
物の混合物をカラムへ移し、12,000×Gで1分間回転させ、通過液(フロースルー)を廃棄し
た。メンブレンを、洗浄バッファ1をカラムへ添加して、12,000×Gで1分間遠心分離する
ことにより洗浄し、次に通過液を廃棄し、このステップを2回、洗浄バッファ2で繰り返し
た。空になったカートリッジを追加的に回転させ、エタノールメンブレンを完全に乾燥さ
せた。最後に、全RNAを、50μlの予熱した溶出バッファ(微量のEDTAを含むヌクレアーゼ
フリー水)の2つの連続したアリコートとして溶出した。
【0211】
(RNAの量、純度、完全性の分析)
RNA濃度を、Nanodrop Lite分光光度計(Thermo Scientific)を使用して260nmで吸光度を
測定して定量化した。RNA純度は、A260:280比を分析することによって決定し、その場合
の1.8~2.1値を、タンパク質混入がなく、次の分析(downstream applications)で利用可
能であると見なした。RNAの完全性は、変性ホルムアルデヒドアガロースゲル上で試料を
泳動して決定した。核酸を可視化するために、1%アガロース(Sigma Aldrich)、1×MOPS(S
igma Aldrich)、6.6%ホルムアルデヒド(Fisher Scientific)ゲルを、1×SYBR(商標)Safe
DNA染色(Invitrogen)を添加して作成した。ロード前に、等量のホルムアルデヒドローデ
ィング色素(Ambion)を1μg RNAへ添加し、試料を70℃で10分間加熱し、すぐに氷上で2~3
分間急冷した。ゲルを90Vで1時間30分泳動し、NuGenius gel doc system(Syngene)を使用
してUV光で可視化した。28S及び18S rRNAバンドを、それぞれ約5kb及び1.9kbの鋭く強い
バンドとして精査し、ここで、上にある28Sのバンドは、下にある18Sの無傷なRNAのバン
ドの強度の2倍であると思われた。18S rRNAバンドより下のスメアリングは、分解されたR
NAを示すと考えられ、一方28S rRNAより上のスメアリング及び/又はバンドは、DNA混入を
示すと考えられる。分析後すぐに、RNAを逆転写試験に使用した。
【0212】
(逆転写)
逆転写は、RT-qPCR用のiScript(商標)Advanced cDNA合成キット(Biorad)を使用して実
施した。1μgのDNase処理したRNAへ、4μlの5×iScript(商標)Advanced反応ミックス及び
1μlのiScript(商標)Advanced逆転写酵素を添加した。ヌクレアーゼフリー水を最終容量
が20μlになるように添加して反応物を46℃で20分間インキュベートした後、95℃で1分間
不活性化した。新たに合成したcDNAをTEバッファ(10mM Tris pH 8、1mM EDTA)で10倍に希
釈し、アリコートに分けて、qPCR実験で使用するまで-20℃で保存した。
【0213】
(定性的リアルタイムPCR分析)
参照遺伝子を、既存文献からのデータに基づいて選択した。選択した標的遺伝子を表3
に示す。
(表3‐定性的リアルタイムPCR分析のために選択した標的遺伝子)
【表4】
【0214】
(qPCR用プライマーの最適化)
上記の標的遺伝子用にKicQStart(登録商標)SYBR(登録商標)Green Predesignedプライマ
ー(最高格付けに従って選択された)を、Sigma Life Scienceから購入した。ヌクレアーゼ
フリー水を、100μMストック濃度用の凍結乾燥プライマーへ加えた。プライマーを、ヌク
レアーゼフリー水で10μMの作業濃度へ希釈した。アッセイの効率、再現性、及びダイナ
ミックレンジを試験するために、10倍段階希釈液を調製し、それはHuman Reference RNA(
Agilent)から生成した、5種の濃度のcDNA(上記に概略を記載した)で構成されていた。こ
れら試料のqPCRの後に、標準曲線を、しきい値サイクル(Ct)値(y軸)対log cDNA濃度(x軸)
で構築した。指数関数的フェーズでの1サイクルのプライマー増幅効率(E)は、等式E=10(
-1/勾配)-1で決定した(Pfafflの文献、2001年)。これらqPCR反応の精度は、標準曲線
のR2値によって決定され、0.98を超える値が適切である。各プライマーの特異性は、各実
施の最後に行われた融解曲線分析によって決定され、1つの融解温度で1つのピークが生成
する場合、1つの生成物のみの増幅を示し、つまりそのプライマーは高度に特異的であっ
たことを示す。増幅された生成物は、アガロースゲル電気泳動(2%アガロース、1×TAE、
100Vで30分間泳動)で確認し、増幅産物のサイズが予想通りであり、1つの生成物だけが確
認されたことを監視した。
【0215】
(定量的PCR)
即時使用可能なマスターミックスであるiTaq(商標)Universal SYBR(登録商標)Green Su
permix(Biorad)を、全てのqPCR反応に使用した。各遺伝子の通常典型的な反応物は、5μl
の2×iTaq(商標)Universal SYBR(登録商標)Green Supermix、500nmフォワードプライマー
及び500nmリバースプライマー、約15ngのcDNA、並びにヌクレアーゼフリー水を含み、最
終容量は10μlであった。それぞれの標的遺伝子、参照遺伝子、及びテンプレートなし対
照を、Optical MicroAmp 96 ウェルプレート(Applied Biosystems)で3回実施した。プレ
ートを光学接着シール(Applied biosystems)で密封し、プレート用撹拌機上に短時間置い
て成分を混合して遠心分離した。反応を、Applied Biosystem Step One Plusリアルタイ
ムPCRシステムを使用して、下記サイクリング条件;95℃で15分間の最初の変性化ステップ
、40サイクルの、94℃で15秒間の変性化ステップ、アニーリング及び延長を組み合わせた
60℃で1分間のステップから構成される増幅、を採用し、単一の蛍光測定で実施した。融
解曲線分析を、各実施の直後に0.3℃刻みで温度を60℃から95℃に上昇させて、蛍光で解
離を測定することにより実施した。
【0216】
(データ分析)
遺伝子発現を定量化するために、ベースライン補正したCt値を、qPCRシステムソフトウ
ェア(Applied Biosystems)によって自動的に決定した。遺伝子発現の相対的変化は、Liva
k又はΔΔCtにより決定し、その方法により、ビヒクル/未処理試料で処理された試料(対
照)、及び化合物で処理された試料(試験試料)両方のために、標的遺伝子のCt値を参照遺
伝子のCt値へ正規化した。次に、試験試料のΔCt値を、対照試料のΔCt値に対して正規化
した。そして最後に、発現比を、等式2-ΔΔC
tを使用して計算した。合計すると、3つの
生物学的複製があり、全てのデータは平均値±SEとして表す。処置は、一元配置分散分析
とそれに続くTukey及びDunnetの事後検定によって比較する。
【0217】
(結果)
直接的な標的遺伝子nr0b2(SHP)及びslc51a(OSTα)は、胆汁酸ホメオスタシスに関与し
、FXRによって正に制御されることが公知であり(Goodwinらの文献、2000年;Landrierらの
文献、2006年)、化合物2でのHuh7処置で有意な増加を示す。SHPの発現レベルは、化合物2
での処置後に、1.5(EC
50濃度)から2.5倍(EC
90濃度)の間で増加する(
図1)。また、OstαmR
NAも又、化合物2での処置でかなりアップレギュレートされ、そのEC
50及びEC
90濃度にお
ける発現がそれぞれ11倍及び18倍増加したことを示した(
図2)。
【0218】
FXR活性化は、SHPを介した経路及びFGF19を介した経路の両方を介してCYP7A1の抑制を
導く。CYP7A1は、化合物2の濃度上昇とともにダウンレギュレートされる(
図3)。
HepG2細胞は、そのEC
50濃度での化合物2による処置に応答して、TGFβ1発現レベルの有
意なダウンレギュレーションを示す(
図4)。
SHPは、EC
90濃度での化合物14による処置でのその発現レベルが2倍を超える適度な増加
を示した(
図5)。化合物14は、FXR標的Ostαにおいて高度に有意な上昇を誘導し、それに
より処置された細胞は、ビヒクル処置された細胞よりも20~40倍高いmRNA発現レベルを達
成した(
図6)。
【0219】
EC
50濃度では、化合物14はCYP7A1発現を有意に減少させ、ビヒクル対照細胞で見られる
レベルの半分を超える程度にそれを減少させた(
図7)
化合物2と同様に、化合物14は、化合物濃度の上昇に伴い、TGFβ1発現の低下を誘導す
る(
図8)。
【0220】
本発明者らは、多くの背景技術の段落と共に前記生物学的実施例のための方法論及びデ
ータを提供してくれたレディング大学のDannielle Kydd-Sinclair氏、並びに、いくつか
の実施例化合物の合成を行ったサウサンプトン大学のDavid Evans氏、Simon Holland氏、
及びLawrence Tam氏に感謝したい。
【0221】