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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008866
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】ケーブル
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/18 20060101AFI20240112BHJP
   H01B 7/04 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
H01B7/18 D
H01B7/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105615
(22)【出願日】2023-06-28
(31)【優先権主張番号】P 2022108733
(32)【優先日】2022-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000226932
【氏名又は名称】日星電気株式会社
(72)【発明者】
【氏名】池ケ谷 孝巳
(72)【発明者】
【氏名】大石 恭輔
【テーマコード(参考)】
5G311
5G313
【Fターム(参考)】
5G311AA04
5G311AB05
5G311AC06
5G311AD03
5G313AA10
5G313AB02
5G313AB05
5G313AC05
5G313AC06
5G313AC12
5G313AD01
5G313AD07
5G313AE04
5G313AE08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】シールド効果を維持しつつ、柔軟性に優れた細径ケーブルを提供することにある。
【解決手段】ケーブル1は、複数本の絶縁電線10で構成されたコア線20の外周に螺旋状にテープ31を巻き付けたテープ層30と、テープ層の外周に螺旋状にシールド素線41を巻き付けたシールド層40と、シールド層の外周の外皮50と、を有する。テープ層は、テープ同士が重ならないよう巻き付けられているとともに、シールド素線は、テープの巻き付け方向とは逆方向に巻き付けられる。コア線とテープ層の間には第2テープ層を設けても良い。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の絶縁電線で構成されたコア線と、
該コア線の外周に螺旋状にテープを巻き付けることで形成されたテープ層と、
該テープ層の外周に螺旋状にシールド素線を巻き付けることで形成されたシールド層とを有するケーブルであって、
該テープ層は該テープ同士が重ならないよう、巻き付けられているとともに、
該シールド素線は該テープの巻き付け方向とは逆方向に巻き付けられていることを特徴とするケーブル。
【請求項2】
該テープが金属層を有することを特徴とする、請求項1に記載のケーブル。
【請求項3】
該テープが金属層と樹脂層とが積層された多層テープであることを特徴とする、請求項1に記載のケーブル。
【請求項4】
該ケーブルの長さ方向に対してなす該テープの巻き付け角度の絶対値と、該ケーブルの長さ方向に対してなす該シールド素線の巻き付け角度の絶対値との差が、20°以内であることを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載のケーブル。
【請求項5】
該ケーブルの長さ方向に対してなす該テープの巻き付け角度が、5~45°の範囲にあることを特徴とする、請求項4に記載のケーブル。
【請求項6】
該金属層に該シールド素線が接触していることを特徴とする、請求項2または3に記載のケーブル。
【請求項7】
複数本の絶縁電線で構成されたコア線と、
該コア線の外周に螺旋状に第2テープを巻き付けることで形成された第2テープ層と、
該第2テープ層の外周に螺旋状に第1テープを巻き付けることで形成された第1テープ層と、
該第1テープ層の外周に螺旋状にシールド素線を巻き付けることで形成されたシールド層とを有するケーブルであって、
該第1テープ層は該第1テープ同士が重ならないよう、巻き付けられているとともに、
該シールド素線は該第1テープの巻き付け方向とは逆方向に巻き付けられていることを特徴とするケーブル。
【請求項8】
該第1テープが金属層を有することを特徴とする、請求項7に記載のケーブル。
【請求項9】
該第1テープが金属層と樹脂層とが積層された多層テープであることを特徴とする、請求項7に記載のケーブル。
【請求項10】
該ケーブルの長さ方向に対してなす該テープの巻き付け角度の絶対値と、該ケーブルの長さ方向に対してなす該シールド素線の巻き付け角度の絶対値との差が、20°以内であることを特徴とする、請求項7~9の何れか一項に記載のケーブル。
【請求項11】
該ケーブルの長さ方向に対してなす該テープの巻き付け角度が、5~45°の範囲にあることを特徴とする、請求項10に記載のケーブル。
【請求項12】
該金属層に該シールド素線が接触していることを特徴とする、請求項8または9に記載のケーブル。
【請求項13】
該第1テープは、該第2テープの巻き付け方向とは逆方向に巻き付けられていることを特徴とする、請求項7~9の何れか一項に記載のケーブル。
【請求項14】
該ケーブルの長さ方向に対してなす該テープの巻き付け角度の絶対値と、該ケーブルの長さ方向に対してなす該シールド素線の巻き付け角度の絶対値との差が、20°以内であることを特徴とする、請求項13に記載のケーブル。
【請求項15】
該ケーブルの長さ方向に対してなす該テープの巻き付け角度が、5~45°の範囲にあることを特徴とする、請求項14に記載のケーブル。
【請求項16】
該第1テープは、該第2テープの巻き付け方向とは逆方向に巻き付けられていることを特徴とする、請求項12に記載のケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はケーブルに関するものであり、特に産業用ロボットやヒューマノイド等の各種サービスロボットをはじめとするロボット類、半導体製造装置等の各種産業用装置の可動部に好適に用いられるものである。
【背景技術】
【0002】
可動部に使用されるケーブルには柔軟性が求められており、柔軟性を向上させるための様々な手法が提案されている。
【0003】
柔軟性を向上させる手法としては、ケーブル被覆の材料及び構成に注目する手法(例えば特許文献1)、押さえ巻テープの巻ピッチ及び電線の撚りピッチに注目する手法(例えば特許文献2)、シールドテープで構成された内側シールド層と金属線と絶縁糸を組合わせた混打ち編組線で構成された外側シールド層を使用する手法(特許文献3)、樹脂テープで押え巻きした信号線束の外周に信号線の撚り方向と同方向に導線を横巻してシールドとする手法(特許文献4)などが知られている。
【0004】
しかしながら、上述した手法には一長一短があり、所望する性能のケーブルを得ることが困難な場合も存在する。
【0005】
具体的には、特許文献1に記載の手法は内層、空気層、外層を設けるため、ケーブルの細径化には不向きである。特許文献2、4に記載の手法はケーブルの柔軟性を優先した結果、ケーブルのシールド効果が不十分となる可能性がある。特許文献3に記載の手法はシールドテープをラップしている(重ねている)ため、ラップ部が相対的に硬くなり柔軟性を阻害する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-175853号公報
【特許文献2】特開2019-109970号公報
【特許文献3】特開2011-192526号公報
【特許文献4】特開2007-188738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、シールド効果を維持しつつ、柔軟性に優れた細径ケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、ケーブルの構造を鋭意検討した結果、ケーブルを構成する絶縁電線群を束ねるテープを、テープ同士で重ならないよう絶縁電線群に対して巻き付けると共に、ケーブルに設けられるシールド層もシールド素線を巻き付ける態様を採用することで、柔軟性に優れたケーブルを得るに至った。
【0009】
本発明のケーブルは、複数本の絶縁電線で構成されたコア線と、コア線の外周に螺旋状にテープを巻き付けることで形成されたテープ層と、テープ層の外周に螺旋状にシールド素線を巻き付けることで形成されたシールド層とを有するケーブルであって、テープ層はテープ同士が重ならないよう巻き付けられているとともに、シールド素線はテープの巻き付け方向とは逆方向に巻き付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のケーブルにあっては、以下に記載した優れた効果が期待できる。

(1) テープ同士が重ならないことで得られる柔軟性を、シールド層が阻害しないため、ケーブルの柔軟性向上に寄与する。

(2)シールド層のみでは不足するシールド効果を、テープ層で補うことができるため、シールド効果に優れたケーブルを得ることができる。

(3)ケーブルの半径方向の寸法に占めるテープ層、シールド層の割合を抑制することができ、ケーブルの細径化に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のケーブルの基本的構造である。
図2】本発明のケーブルの斜視図である。
図3】第2テープ層も設けた本発明のケーブルである。
図4】実施例、比較例の態様である。
図5】柔軟性試験方法の概略図である。
図6】柔軟性試験の結果である。
図7】シールド効果評価試験の概略図である。
図8】シールド効果評価試験の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のケーブルについて、図面を参照しながら説明する。
【0013】
本発明のケーブル1の基本構成を図1図2に示す。ケーブル1は複数本の絶縁電線10で構成されたコア線20、コア線20の外周に螺旋状にテープ31を巻き付けることで形成されたテープ層30、テープ層30の外周に螺旋状にシールド素線41を巻き付けることで形成されたシールド層40を有し、シールド層40の外周には外被50が設けられる。
【0014】
図1、2の絶縁電線10は、導体11の外周に絶縁層12を設けた態様であるが、絶縁電線10の態様はこれに限定されず、周知の同軸ケーブルを絶縁電線10として使用しても良い。同軸ケーブルを使用する際は一部の絶縁電線10を同軸ケーブルとしても良いし、全ての絶縁電線10を同軸ケーブルとしても良い。
【0015】
本発明に使用される導体11は、電線・ケーブル用導体として公知のものを適宜選択して利用できる。耐屈曲・耐捻回の観点では、撚り線構造のものが好ましく利用できる。
【0016】
本発明に使用される絶縁層12は電線・ケーブル用の絶縁材料として公知のものを適宜選択して利用でき、PTFE、PFA、FEP、ETFEといったふっ素樹脂が好ましく利用できる。
【0017】
絶縁電線10として同軸ケーブルを使用する際も、同様の観点で構成を選択できる。
【0018】
コア線20の態様は特に限定されず、複数本の絶縁電線10を束ねた構造、複数本の絶縁電線10を撚り合わせた撚り線構造、複数本の絶縁電線10を撚り合わせた子撚り線を複数本撚り合わせた集合撚り線構造などを適宜選択して利用できる。耐屈曲・耐捻回の観点では、撚り線構造、集合撚り線構造(ロープ撚り線構造)が好ましく使用できる。
【0019】
コア線20として集合撚り線構造を使用する場合は、子撚り線と集合撚り線の撚り方向を揃えた態様、もしくは逆方向にした態様を選択することができ、ケーブル1の柔軟性を高める観点では撚り方向を揃えた態様、ケーブル1の耐捻回性を高める観点では撚り方向を逆方向にした態様が好ましく利用できる。
【0020】
外被50はケーブルの外被用材料として公知のものを適宜選択して利用でき、PVC(ポリ塩化ビニル)、TPU(熱可塑性ポリウレタン)、シリコーンゴムなどが好ましく利用できる。
【0021】
本発明で特徴的なことは、テープ31同士が重ならないよう、テープ31が螺旋状に巻き付けられることでテープ層30が構成されているとともに、シールド素線41の巻き付け方向がテープ31の巻き付け方向と逆になっていることである。
【0022】
テープ31同士が重なると、その部分でテープ31同士の摩擦が発生するとともに、重なることでテープ層30が部分的に肉厚となる。テープ31同士の摩擦やテープ層30における肉厚部分は、ケーブル1を屈曲、捻回する際の抵抗となり、ケーブル1の柔軟性を阻害する。テープ31同士が重ならないことで、ケーブル1の柔軟性が得られる。加えて、ケーブル1の細径化にも寄与する。
【0023】
テープ31の巻きピッチは、テープ31同士が重ならないようにするため、テープ31の幅の1倍以上に設定される。巻きピッチの最大値は特に制限されないが、コア線20がテープ31に拘束される領域と拘束されない領域の均衡を維持する観点、及び後述する金属層を有したテープ31を使用した際に得られるシールド効果を維持する観点から、最大でテープ31の幅の5倍以下、望ましくは3倍以下に設定される。
【0024】
テープ31を巻く際の角度については特に限定されないが、ケーブル1の長さ方向に対してなす角度(図2のA)が5~45°の範囲にあるのが好ましい。テープ31を巻く角度が5°以上であることでケーブル1が屈曲、捻回する際にテープ31に発生する負荷が抑制され、テープ31の耐久性向上に寄与する。また、テープ31を巻く角度が45°以下であることで、ケーブル1の柔軟性向上に寄与する。
【0025】
ケーブル1の柔軟性を高める観点から、テープ31を巻く際の特に好ましい角度は5~30°の範囲である。
【0026】
シールド層40としてシールド素線41を螺旋状に巻き付けた態様を採用することで、シールド層40内におけるシールド素線41同士の重なりが最小限に抑えられるため、ケーブル1を屈曲、捻回する際の抵抗が抑制され、ケーブル1の柔軟性に寄与すると共に、細径化にも寄与する。
【0027】
また、シールド素線41を螺旋状に巻き付けた態様のシールド層40は、編組構造のシールド層と比較してシールド素線の使用量を減らすことができるため、ケーブル1の軽量化にも寄与することができる。
【0028】
また、シールド素線41の巻き付け方向がテープ31の巻き付け方向と逆であることで、ケーブル1の捻回時における両者の挙動が逆となる。捻回時の挙動が逆であることで、捻回時にコア線20がテープ層30とシールド素線41の両者に締め付けられる状況が回避でき、ケーブル1の柔軟性維持、及び断線の抑制に寄与する。
【0029】
なお、コア線20として撚り線構造のものを使用する場合、コア線20の撚り方向とテープ層30となるテープ31の巻き付け方向については特に限定されず、撚り方向と巻き付け方向を揃えた態様、もしくは逆にした態様を選択することができる。
【0030】
同様に、コア線20として集合撚り線構造のものを使用する場合についても、コア線20の集合撚り方向とテープ層30となるテープ31の巻き付け方向を揃えた態様、もしくは逆にした態様を選択して利用することができる。
【0031】
本発明に使用するテープ31は、金属層を有した態様のものが好ましく利用できる。本発明で用いるシールド素線41を巻き付けた態様のシールド層40は、シールド素線41間に形成される隙間の影響で、シールド効果の観点では必ずしも好ましいとは言えない態様であるところ、金属層を有したテープ31を使用することでシールド効果を補うことができ、ケーブル1のシールド効果の向上に寄与する。
【0032】
また、金属層を有したテープ31を使用してシールド効果を補うことで、シールド素線を使用してシールド効果を補う場合よりも重量増加を抑制することができ、ケーブル1の軽量化にも寄与する。
【0033】
また、テープ31の巻き付け方向とシールド素線41の巻き付け方向とが逆であることで、ケーブル1を断面視した際において金属層を流れる電流の向きとシールド素線41を流れる電流の向きとが逆になり、発生する電磁界が互いに打ち消しあう状態となるため、コア線20から発生する電磁誘導ノイズの輻射抑制効果、及びケーブル1の外部で発生した電磁誘導ノイズの遮蔽効果が安定し、シールド効果の向上に寄与する。
【0034】
金属層を有したテープ31としては、銅やアルミニウムなどの金属箔や、樹脂層と金属層を積層させた多層テープなどが利用でき、ケーブル1の屈曲、捻回の際にシールド効果に寄与する金属層の破損を抑制できる多層テープが好ましく利用できる。
【0035】
多層テープとしては、PET、ふっ素樹脂などの樹脂基材に、蒸着などの手法によって銅、アルミニウムなどの金属を積層したものが好ましく利用できる。
【0036】
多層テープを構成する樹脂基材としては、屈曲時の摩擦を低減する観点から、PTFE、PFA、FEPなど、表面の平滑性と低摩擦性に優れる各種のふっ素樹脂が好ましく利用できる。
【0037】
テープ31の肉厚は特に限定されないが、テープ31の強度とテープ層30を形成した際の柔軟性を両立させる観点から5~50μmの範囲に設定され、望ましくは10~30μmに設定される。
【0038】
金属層の肉厚は所望するシールド効果が得られるよう、金属の種類に応じて適宜設定すれば良く、概ね5~20μmに設定される。
【0039】
金属層を有したテープ31を使用する際は、金属層とシールド素線41とが接触するように構成するのが好ましい。両者が接触し、電気的に導通することで、シールド効果の向上に寄与する。
【0040】
シールド素線41としては、直径50μm~0.3mm程度の銅線、銅合金線、アルミニウム線、アルミニウム合金線などや、これらを撚り合わせた撚り線、介在に金属箔を巻き付けた金属箔糸などが利用でき、シールド効果、耐久性の観点では、金属線の単線が好ましく利用できる。
【0041】
シールド素線41は、複数本を平行に並び揃えたものを巻き付けて使用することができる。
【0042】
シールド素線41を巻く際の角度については特に限定されないが、ケーブル1の長さ方向に対してなす角度(図2のB)が5~30°の範囲にあるのが好ましい。シールド素線41を巻く角度が5°以上であることでケーブル1が屈曲、捻回する際にシールド素線41に発生する負荷が抑制され、シールド素線41の耐久性向上に寄与する。また、シールド素線41を巻く角度が30°以下であることで、ケーブル1の柔軟性、耐久性の向上に寄与する。
【0043】
ケーブル1の柔軟性を高める観点から、シールド素線41を巻く際の特に好ましい角度は5~20°の範囲である。
【0044】
先述したテープ31の巻き付け方向とシールド素線41の巻き付け方向が逆であることに起因するシールド効果を高める観点から、テープ31を巻く角度とシールド素線41を巻く角度は、ケーブル1の長さ方向に対してなす角度の絶対値の差を小さくするのが好ましく、具体的には巻き角度の絶対値の差を20°以内とするのが好ましい。より好ましくは15°以内、更に好ましくは10°以内である。
【0045】
シールド素線41の巻き密度は、シールド効果を高める観点から70%以上が好ましく、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上である。
【0046】
なお、シールド素線41の巻き密度は、シールド素線41が巻き付けられるテープ層30の単位長さあたりの表面積に対する、シールド素線41による遮蔽面積の比で表される。
【0047】
以上は、コア線20の外周に、金属層を設けることを想定したテープ31を直接巻き付ける態様について述べたが、図3に示したように、コア線20の外周に第2テープ71を螺旋状に巻き付けた第2テープ層70を形成し、第2テープ層70の外周にテープ31を巻き付けたテープ層30を形成した態様としても良い。以降、テープ層30とテープ層30を構成するテープ31は、第1テープ層30、第1テープ31と表記する。
【0048】
第2テープ層70をコア線20の外周に巻き付けることにより、コア線20のみの場合ではその外周面には凹凸が存在する状態であったところ、第2テープ層70の存在によってその外周面は断面視した際に概ね円状に平滑化される。この結果、第1テープ層30は平滑面に巻き付けられる状態となり、ケーブル1の屈曲・捻回時における第1テープ層30への負荷が凹凸面に巻き付けられた際と比較して低減され、ケーブル1の耐久性向上に寄与する。
【0049】
第2テープ層70を設ける場合は、第1テープ31の巻き付け方向を、第2テープ71の巻き付け方向と逆向きにするのが好ましい。両者の巻き付け方向が逆であることで、ケーブル1の捻回時における両者の挙動が逆となる。捻回時の挙動が逆であることで、捻回時にコア線20が第1テープ層30と第2テープ層70の両者に締め付けられる状況が回避でき、ケーブル1の柔軟性維持、及び断線の抑制に寄与する。
【0050】
第2テープ層70はコア線20を束ね、その外周面を平滑化することを主目的に設けられるため、第1テープ層30とは異なり、第2テープ71同士が重なるよう巻き付けられても良い。その際、ケーブル1の柔軟性を維持する観点から、第2テープ71同士が重なる幅は第2テープ71の幅の半分以下に設定するのが望ましい。一方、ケーブル1の柔軟性を特に重視する場合は、第2テープ71同士が重ならないように巻き付ける態様を選択することができる。
【0051】
第2テープ71の材料は各種の樹脂材料、紙、不織布などを利用することができ、ケーブル1の屈曲・捻回時に発生するコア線20、及び第1テープ層30との摩擦を低減する観点では、PTFE、PFA、FEPなど、表面の平滑性と低摩擦性に優れる各種のふっ素樹脂が好ましく利用できる。また、第2テープ71を樹脂層のみで形成された単層テープとした場合、第2テープ71同士を重ねた際に発生する柔軟性の低下を制限することができる。
【0052】
第2テープ71のテープ幅、肉厚は特に限定されず、市販されているテープ幅5~50mm、肉厚10~100μm程度のものを適宜選択して利用できる。ケーブル1の柔軟性と第2テープ71の強度を考慮すると、肉厚については25~50μmの範囲とするのが望ましい。
【実施例0053】
以下、本発明の実施例として、LANケーブルとして構成されたケーブル1-1、1-2を示す。
【0054】
[実施例1]
コア線20として、絶縁電線10を対撚りした対撚り線15を4本、介在60と撚り合わせたものを使用した。
【0055】
絶縁電線10は、直径0.127mmのスズメッキ軟銅線7本を同心撚りして構成された導体11の外周に、押出成型機を用いて絶縁層12となるFEPを肉厚0.15mmで被覆し、外径0.68mmとしたものを準備した。
【0056】
2本の絶縁電線10をS方向に撚り合わせ、対撚り線15を形成した。
【0057】
4本の対撚り線15を綿製の介在60と併せて総撚りし、コア線20とした。撚り方向は対撚り線15の撚り方向と同じS方向にした。コア線20の直径は2.8mmであった。
【0058】
コア線20の外周に、第2テープ層70として、幅10mm、肉厚50μmの焼成PTFEテープ71を螺旋状に巻き付けた。巻き付け方向はZ方向とし、第2テープ71同士の重なり幅は2.5mmに設定した。
【0059】
第1テープ層30として、幅8mm、肉厚26μm(うち、金属層12μm)のアルミニウム積層PETテープ31を螺旋状に巻き付けた。巻き付け方向はS方向、巻き付け角度は約18°、巻きピッチは第1テープ31の幅と同じ値に設定し、アルミニウム層が外周面となるようにした。この時、第1テープ31同士は重ならず、第1テープ31の間の隙間は計算上0mmとなるが、第1テープ31の間には僅かな隙間が形成される。
【0060】
次いで、第1テープ層30の外周にシールド層40を設ける。シールド層40は、72本のシールド素線41を互いに平行に引き揃えてなる素線束を、第1テープ層30の外周に螺旋状に巻き付けて構成する。シールド素線41として外径0.12mmのスズメッキ軟銅線を使用し、巻き付け方向はZ方向、巻き付け角度は約18°、巻き密度は約90%とした。
【0061】
最後に、押出成型機を用いて、シールド層40の外周に、外被50となるPVCを肉厚0.5mmで被覆し、本発明のケーブル1-1が完成した。ケーブル1-1の外径は最終的に4.3mmとなった。
【0062】
[実施例2]
コア線20、及び第2テープ層70は実施例1と同じ構成とした。
【0063】
第1テープ層30として、幅7mm、肉厚19.5μm(うち、金属層7μm)のアルミニウム積層ふっ素樹脂テープ31を螺旋状に巻き付けた。巻き付け方向はS方向、巻きピッチはテープの幅と同じ値、巻き付け角度は約18°に設定し、アルミニウム層が外周面となるようにした。実施例1と同様、第1テープ31同士は重ならず、第1テープ31の間には僅かな隙間が形成された状態となる。
【0064】
シールド層40、外被50の構成は実施例1と同じとした。実施例2のケーブル1-2の外径は最終的に4.2mmとなった。
【0065】
[実施例3]
実施例1のケーブル1-1から、第2テープ層70を省略したものを実施例3のケーブル1-3とした。実施例3のケーブル1-3の外径は最終的に4.2mmとなった。
【0066】
[比較例1]
コア線20’、及び第2テープ層70’は実施例1と同じ構成とし、第1テープ層30は省略した。
【0067】
シールド層40’として、素線径が0.12mmのスズメッキ軟銅線を打数16、持数5で編組した金属編組層を設け、外被50’の構成は実施例1と同じとした。比較例1のケーブル1’-1の外径は最終的に4.5mmとなった。
【0068】
[比較例2]
実施例1から、第1テープ層30を省略し、外径4.2mmに仕上げたものを比較例2のケーブル1’-2とした。
【0069】
[比較例3]
実施例1において、第1テープ31の幅を10mmとし、第1テープ31の重なり幅を3.3mm(テープ幅の3分の1)に変更した他は、実施例1と同様に構成したものを、比較例3のケーブル1’-3とした。
【0070】
各実施例、比較例の態様を図4に示す。
【0071】
以上のように作成した実施例、比較例のケーブルの柔軟性、シールド効果を評価した。
【0072】
[柔軟性確認試験]
試験方法を表す概略図を図5に示す。固定間距離が100mmになるよう、試験サンプルのケーブルの一端を捻回試験装置、他端をトルクメータに固定し、捻回試験装置を緩やかに右方向に360°回転させた場合、及び左方向に360°回転させた場合の捻回トルクを測定した。捻回トルクが小さいほど、柔軟性に優れる。測定結果を図6に示す。
【0073】
[シールド効果評価方法]
シールド効果は、IEC62153-4-5に基づく吸収クランプ法で評価した。評価装置の概要を図7に示す。シールドルーム内において、ネットワークアナライザを用いて名長さ8mに調整した評価対象のケーブルに信号を掃引し、ケーブルから外部に放射されるノイズ電力をEMIクランプを介してネットワークアナライザで受信する。測定はEMIクランプを動かしながら行い、周波数30~1000MHzにおける、定在波の最大の振れを示す箇所の放射レベル[dB]をシールド効果として扱う。測定結果を図8に示す。
【0074】
各実施例、比較例の柔軟性、シールド効果の評価結果を表1に示す。
【0075】
[表1]
【0076】
実施例1のケーブル1-1は柔軟性、シールド効果ともに優れ、良好な態様と評価できる。
【0077】
実施例2のケーブル1-2はシールド効果がやや低いものの、柔軟性が特に優れ、総合的に良好な態様と評価できる。
【0078】
実施例3のケーブル1-3は柔軟性、シールド効果ともに優れ、良好な態様と評価できる。
【0079】
比較例1、3のケーブル1’-1、3はシールド効果に優れる一方、柔軟性に劣り、良好な態様とは言い難い。
【0080】
また、比較例2のケーブル1’-2は柔軟性が特に優れる一方、シールド効果は特に劣り、良好な態様とは言い難い。
【0081】
加えて、実施例のケーブル1は、比較例1のケーブル1’-1と比べて小さい外径を有するとともに、比較例2、3のケーブル1’-2、1’-3と同等の外径で柔軟性とシールド効果を両立した態様と評価することができる。
【0082】
以上の通り、本発明のケーブル1は柔軟性とシールド効果を両立できるとともに、細径化にも寄与するケーブルと言える。
【0083】
以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0084】
[1]複数本の絶縁電線(10)で構成されたコア線(20)と、該コア線(20)の外周に螺旋状にテープ(31)を巻き付けることで形成されたテープ層(30)と、該テープ層(30)の外周に螺旋状にシールド素線(41)を巻き付けることで形成されたシールド層(40)とを有するケーブル(1)であって、該テープ層(30)は該テープ(31)同士が重ならないよう巻き付けられているとともに、該シールド素線(41)は該テープ(31)の巻き付け方向とは逆方向に巻き付けられていることを特徴とするケーブル(1)。
【0085】
[2]該テープ(31)が金属層を有することを特徴とする、[1]に記載のケーブル(1)。
【0086】
[3]該テープ(31)が金属層と樹脂層とが積層された多層テープであることを特徴とする、[1]または[2]に記載のケーブル(1)。
【0087】
[4]該ケーブル(1)の長さ方向に対してなす該テープ(31)の巻き付け角度の絶対値と、該ケーブル(1)の長さ方向に対してなす該シールド素線(41)の巻き付け角度の絶対値との差が、20°以内であることを特徴とする、[1]~[3]の何れか一項に記載のケーブル(1)。
【0088】
[5]該ケーブル(1)の長さ方向に対してなす該テープ(31)の巻き付け角度が、5~45°の範囲にあることを特徴とする、[1]~[4]の何れか一項に記載のケーブル(1)。
【0089】
[6]該ケーブル(1)の長さ方向に対してなす該シールド素線(41)の巻き付け角度が、5~30°の範囲にあることを特徴とする、[1]~[5]の何れか一項に記載のケーブル(1)。
【0090】
[7]該金属層に該シールド素線(41)が接触していることを特徴とする、[2]~[6]の何れか1項に記載のケーブル(1)。
【0091】
[8]該コア線(20)と該テープ層(30)との間に、該コア線(20)の外周に螺旋状に第2テープ(71)を巻き付けることで形成された第2テープ層(70)を有することを特徴とする、[1]~[7]の何れか1項に記載のケーブル(1)。
【0092】
[9]該テープ(31)は、該第2テープ(71)の巻き付け方向とは逆方向に巻き付けられていることを特徴とする、[9]に記載のケーブル(1)。
【0093】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記に記載した実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明はその技術的思想の範囲内で適宜変形して実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明のケーブルは、産業用ロボットやヒューマノイド等の各種サービスロボットをはじめとするロボット類、半導体製造装置等の各種産業用装置の可動部に用いられる通信ケーブルとして好適に用いられるものであるが、用途はこれらに限定されるものでは無く、乗物、建設機械等の可動部に用いられるケーブルや、通信を伴わない可動部用の電源ケーブルなど、可動部であれば具体的な用途を問わず広く使用することができる他、そのシールド性能、軽量性を活用して可動部以外に使用されるケーブルとしても好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0095】
1 ケーブル
10 絶縁電線
11 導体
12 絶縁層
15 対撚り線
20 コア線
30 テープ層(第1テープ層)
31 テープ(第1テープ)
40 シールド層
41 シールド素線
50 外被
60 介在
70 第2テープ層
71 第2テープ
A テープ(第1テープ)の巻き角度
B シールド素線の巻き角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8