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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088662
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】方法、及び、表示デバイス
(51)【国際特許分類】
   G09G 3/36 20060101AFI20240625BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20240625BHJP
   G09G 3/34 20060101ALI20240625BHJP
   G02F 1/133 20060101ALI20240625BHJP
   H04N 5/66 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
G09G3/36
G09G3/20 641P
G09G3/20 650M
G09G3/20 612U
G09G3/20 641C
G09G3/34 J
G09G3/20 631V
G09G3/20 680A
G09G3/20 621F
G09G3/20 641R
G02F1/133 550
H04N5/66 B
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024047609
(22)【出願日】2024-03-25
(62)【分割の表示】P 2020564196の分割
【原出願日】2019-04-15
(31)【優先権主張番号】62/677,564
(32)【優先日】2018-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/116,862
(32)【優先日】2018-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】502161508
【氏名又は名称】シナプティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100205350
【弁理士】
【氏名又は名称】狩野 芳正
(74)【代理人】
【識別番号】100117617
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭策
(72)【発明者】
【氏名】モリン、スティーブン・エル
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ディスプレイのピクセル要素それぞれに適用されるオーバードライブの量を正確に行う方法及び装置を提供する。
【解決手段】表示デバイス200は、ピクセルアレー210と、ピクセルアレー210の第1ピクセル要素についての現在のピクセル値とターゲットピクセル値を決定するオーバードライブ回路部240を備え、オーバードライブ回路部240は、第1時刻までに、第1ピクセル要素に印加されるべき、第1ピクセル要素を現在のピクセル値からターゲットピクセル値へ遷移させる第1電圧を決定するように更に構成されて、第1電圧は、ピクセルアレー210における第1ピクセル要素の位置に少なくとも部分的に基づいて決定され、表示デバイス200は、第1時刻より前に、第1ピクセル要素に第1電圧を印加するデータドライバ212と、第1時刻においてピクセルアレー210を照らすバックライトと、を更に備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピクセルアレーのピクセル値を更新する方法であって、
前記ピクセルアレーの複数の行のうち第1行に配置された第1ピクセル要素についての現在のピクセル値とターゲットピクセル値とを決定し、
前記第1ピクセル要素を前記ターゲットピクセル値に安定させるターゲット電圧を決定し、
前記ピクセルアレーに関する表示期間と、前記表示期間に先立つピクセル調節期間において前記複数の行に電圧が印加される順番と、に少なくとも部分的に基づいて、前記第1ピクセル要素に印加されるべき第1の量のオーバードライブ電圧を決定し、
前記ピクセル調節期間に、前記第1ピクセル要素に前記第1の量のオーバードライブ電圧を印加し、
前記表示期間に、1以上の光源を活性化させて前記ピクセルアレーを照らす、
ことを含み、
前記オーバードライブ電圧は前記ターゲット電圧よりも大きい、
方法。
【請求項2】
前記第1の量のオーバードライブ電圧が、前記表示期間の開始までに前記第1ピクセル要素を前記現在のピクセル値から前記ターゲットピクセル値へ遷移させるように決定される、
請求項1の方法。
【請求項3】
前記複数の行のうち第2行に配置された第2ピクセル要素についての現在のピクセル値とターゲットピクセル値とを決定し、
前記表示期間と、前記ピクセル調節期間において前記ピクセルアレーの前記複数の行に電圧が印加される前記順番と、に少なくとも部分的に基づいて、前記第2ピクセル要素に印加されるべき第2の量のオーバードライブ電圧を決定する、
ことを更に含み、
前記第2ピクセル要素の前記現在のピクセル値から前記ターゲットピクセル値へのピクセル値の変化量が、前記第1ピクセル要素の前記現在のピクセル値から前記ターゲットピクセル値へのピクセル値の変化量と等しく、
前記第2の量のオーバードライブ電圧は前記第1の量のオーバードライブ電圧とは異なる、
請求項1の方法。
【請求項4】
前記第1の量のオーバードライブ電圧が、複数のルックアップテーブル(LUT)に少なくとも部分的に基づいて決定され、
前記複数のLUTのそれぞれが、前記複数の行のうち対応する行のピクセル要素についての複数のオーバードライブ電圧を示す、
請求項3の方法。
【請求項5】
前記第1の量のオーバードライブ電圧を決定することが、
前記オーバードライブ電圧を供給するように構成されたデータドライバの電圧レンジに基づいて、前記第1ピクセル要素に印加可能なオーバードライブ電圧の最大量を決定することと、
前記第1行に関するライン番号が前記ピクセルアレーの閾値ライン番号以上であるかを決定し、
前記ライン番号が前記閾値ライン番号以上であると決定したことに応答して、前記第1の量のオーバードライブ電圧を前記最大量と等しくなるように選択する、
ことを含む、
請求項1の方法。
【請求項6】
表示デバイスであって、
1以上のプロセッサと、
命令を記憶したメモリであって、前記命令が、前記1以上のプロセッサによって実行されたときに、前記表示デバイスに、
ピクセルアレーの複数の行のうち第1行に配置された第1ピクセル要素についての現在のピクセル値とターゲットピクセル値とを決定し、
前記第1ピクセル要素を前記ターゲットピクセル値に安定させるターゲット電圧を決定し、
前記ピクセルアレーに関する表示期間と、前記表示期間に先立つピクセル調節期間において前記複数の行に電圧が印加される順番と、に少なくとも部分的に基づいて、前記第1ピクセル要素に印加されるべき第1の量のオーバードライブ電圧を決定し、
前記ピクセル調節期間に、前記第1ピクセル要素に前記第1の量のオーバードライブ電圧を印加し、
前記表示期間に、1以上の光源を活性化させて前記ピクセルアレーを照らす、
ことを実行させるメモリと、
を備え、
前記オーバードライブ電圧は前記ターゲット電圧よりも大きい、
表示デバイス。
【請求項7】
前記第1の量のオーバードライブ電圧が、前記表示期間の開始までに前記第1ピクセル要素を前記現在のピクセル値から前記ターゲットピクセル値へ遷移させるように決定される、
請求項6の表示デバイス。
【請求項8】
前記命令の実行が、前記表示デバイスに、
前記複数の行のうち第2行に配置された第2ピクセル要素についての現在のピクセル値とターゲットピクセル値とを決定することと、
前記表示期間と、前記ピクセル調節期間において前記ピクセルアレーの前記複数の行に電圧が印加される前記順番と、に少なくとも部分的に基づいて、前記第2ピクセル要素に印加されるべき第2の量のオーバードライブ電圧を決定することと、
を更に実行させ、
前記第2ピクセル要素の前記現在のピクセル値から前記ターゲットピクセル値へのピクセル値の変化量が、前記第1ピクセル要素の前記現在のピクセル値から前記ターゲットピクセル値へのピクセル値の変化量と等しく、
前記第2の量のオーバードライブ電圧は前記第1の量のオーバードライブ電圧とは異なる、
請求項6の表示デバイス。
【請求項9】
前記第1の量のオーバードライブ電圧が、複数のルックアップテーブル(LUT)に少なくとも部分的に基づいて決定され、
前記複数のLUTのそれぞれが、前記複数の行のうち対応する行のピクセル要素についての複数のオーバードライブ電圧を示す、
請求項6の表示デバイス。
【請求項10】
前記第1の量のオーバードライブ電圧を決定するための前記命令の実行が、前記表示デバイスに、
前記オーバードライブ電圧を供給するように構成されたデータドライバの電圧レンジに基づいて、前記第1ピクセル要素に印加可能なオーバードライブ電圧の最大量を決定することと、
前記第1行に関するライン番号が前記ピクセルアレーの閾値ライン番号以上であるかを決定することと、
前記ライン番号が前記閾値ライン番号以上であると決定したことに応答して、前記第1の量のオーバードライブ電圧を前記最大量と等しくなるように選択することと、
を実行させる、
請求項6の表示デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、一般には液晶ディスプレイ(LCD)に関し、詳細にはLCDデバイスのためのオーバードライブ技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドマウントディスプレイ(head-mounted display)(HMD)デバイスは、ユーザの頭に着用又は取り付けるように構成されている。HMDデバイスは、ユーザの目の一方又は両方の前方に配置される1以上のディスプレイを備える。HMDは、ユーザの周辺環境(例えば、カメラでキャプチャされた)からの情報及び/又は画像を重ねられた、画像ソースからの画像(例えば、静止画像、連続した画像、及び/又は、動画)を表示し、例えば、ユーザを仮想世界に没頭させ得る。HMDデバイスは、医療、軍事、ゲーミング、航空、工学、及び、様々な他のプロフェッショナル及び/又はエンターテイメント産業において応用される。
【0003】
HMDデバイスは、そのディスプレイにおいて液晶ディスプレイ(liquid-crystal display)(LCD)の技術を用いる場合がある。LCD表示パネルは、行及び列に配列されたピクセル要素(例えば、液晶セル)のアレーから形成されている場合がある。ピクセル要素の各行は、それぞれのゲートラインに接続され、ピクセル要素の各列はそれぞれのデータ(あるいはソース)ラインに接続される。ゲートラインを相対的に高い電圧で駆動してピクセル要素の対応する行を「選択」あるいは活性化することによって、また、他の電圧で対応するデータラインを駆動して選択されたピクセル要素を更新することによって、ピクセル要素にアクセス(たとえば、新たなピクセルデータで更新)する場合がある。データラインの電圧レベルは、ターゲットピクセル値の所望の色及び/又は強度に依存する場合がある。そのため、LCD表示パネルは、ピクセルアレーの各行が更新されるまで、ピクセル要素の行を(例えば1度に1行ずつ)連続して「スキャン」することにより更新される場合がある。
【0004】
データラインに印加される電圧は、特定のピクセル要素の物理状態を変更(例えば回転)することにより、ピクセル要素の色及び/又は明るさを変更する。そのため、ピクセル要素は新たな状態あるいは位置に安定するための時間を必要とする場合がある。特定のピクセル要素の安定化時間は、色及び/又は明るさの変化の度合いに依存する場合がある。例えば、最大明るさ設定(例えば、「白い」ピクセル)から最小明るさ設定(例えば、「黒い」ピクセル)への遷移は、中間の明るさ設定から他の中間の明るさ設定への(例えば、「灰色」のうち一つの色合いから「灰色」の他の色合いへの)遷移よりも長い安定化時間を必要とし得る。ピクセルの遷移における遅延は、ピクセル要素の安定化時間が連続するフレーム更新の間の時間よりも遅い場合、ディスプレイに現れるゴースト及び/又は他の視覚的なアーティファクトを生じ得る。
【0005】
LCDオーバードライブは、LCDディスプレイの更新時にピクセル遷移を加速するための技術である。詳細には、ピクセル要素は、所望の色及び/又は明るさのレベルに関するターゲット電圧より高い電圧を印加される。より高い電圧は液晶をより早く回転させるため、液晶をより短い時間でターゲットの明るさに到達させる。固定のLCDディスプレイ(例えば、テレビ、モニタ、携帯電話、等)においては、一つのオブジェクトは、複数のフレームの持続時間にわたって、しばしば同じピクセル要素によって照らされる。そこで、そのエラーが1フレームだけ持続する場合にはユーザは対応するピクセルの色及び/又は明るさにおけるエラーを検知できない場合があるため、固定のLCDディスプレイのピクセル要素に適用されるオーバードライブの量は近似し得る。しかしながら、HMDデバイス、特に仮想現実(virtual reality)(VR)のアプリケーションにおいては、ディスプレイ上で視認されるオブジェクトは、ユーザの頭及び/又は目の動きにより異なるピクセルに照らされる場合がある。そのため、HMDディスプレイのピクセル要素それぞれに適用されるオーバードライブの量は、仮想環境に没頭するユーザの感覚を維持するために、はるかに正確であるべきである。
【発明の概要】
【0006】
本概要は、以下の詳細な説明でさらに説明される、概念の選択を単純化された形態で紹介するために提供される。本概要は、請求された主題の範囲の鍵となる構成や必須の構成を特定することを意図せず、請求された主題の範囲を限定することを意図していない。
【0007】
ピクセル要素を所望の電圧でオーバードライブする方法及び装置。表示デバイスは、ピクセルアレーと、ピクセルアレーの第1ピクセル要素についての現在のピクセル値と、第1ピクセル要素についてターゲットピクセル値を決定するオーバードライブ回路部を備える。オーバードライブ回路部は、第1時刻までに第1ピクセル要素を現在のピクセル値からターゲットピクセル値へ遷移させるために第1ピクセル要素に印加されるべき第1電圧を決定するように更に構成されている。第1電圧は、ピクセルアレーにおける第1ピクセル要素の位置に少なくとも部分的に基づいて決定される。表示デバイスは、第1時刻より前に、第1ピクセル要素に第1電圧を印加するデータドライバと、第1時刻においてピクセルアレーを照らすバックライトと、を更に備える。
【0008】
第1ピクセル要素の位置は、ピクセルアレーにおける第1ピクセル要素の行の位置に対応する場合がある。いくつかの実施形態では、行の位置がピクセルアレーの閾値ライン番号より低い位置にあるときには、第1電圧はターゲット電圧に対応し、ターゲット電圧は、第1ピクセル要素をターゲットピクセル値に安定させる。いくつかの他の実施形態では、行の位置がピクセルアレーの閾値ライン番号より高い位置にあるときには、第1電圧はオーバードライブ電圧に対応し、オーバードライブ電圧はターゲット電圧とは異なる場合がある。
【0009】
いくつかの実施形態では、オーバードライブ回路部が、複数のルックアップテーブル(lookup table)(LUT)を記憶するように構成されたルックアップテーブル(LUT)レポジトリと、複数のLUTに少なくとも部分的に基づいて第1電圧を決定するオーバードライブ電圧生成器と、を備える場合がある。いくつかの態様では、複数のLUTのそれぞれが、ピクセルアレーのうち対応する行のピクセル要素についての複数のオーバードライブ電圧を示す。
【0010】
いくつかの実施形態では、オーバードライブ電圧生成器が、第1ピクセル要素の行の位置に少なくとも部分的に基づいて、複数のLUTのうち、第1及び第2LUTを選択する場合がある。例えば、第1LUTは、ピクセルアレーのうち第1ピクセル要素の行の位置より低い行に関連し得る。また、第2LUTは、ピクセルアレーのうち第1ピクセル要素の行の位置より高い行に関連し得る。オーバードライブ電圧生成器は、第1LUTと第2LUTの線形補間に少なくとも部分的に基づいて、第1電圧を更に決定する場合がある。いくつかの態様では、オーバードライブ電圧生成器が、第1及び第2LUTを、ディスプレイの温度に少なくとも部分的に基づいて選択する場合がある。
【0011】
いくつかの実施形態では、オーバードライブ電流生成器が、第1及び第2LUTの線形補間に基づいて、補間LUTを生成するLUT生成器を備える場合がある。オーバードライブ電流生成器は、現在のピクセル値に基づいて、補間LUTのうち少なくとも2つの行を選択し、ターゲットピクセル値に基づいて、補間LUTのうち少なくとも2つの列を選択する、ように構成されたオーバードライブ電圧補間器を更に備える場合がある。オーバードライブ電圧補間器は、補間LUTのうち選択された行及び列のバイリニア補間に基づいて、第1電圧を決定する、ように更に構成される。
【0012】
いくつかの実施形態では、オーバードライブ回路部が、第1時刻までに第2ピクセル要素を現在のピクセル値からターゲットピクセル値へ遷移させるためにピクセルアレーの第2ピクセル要素に印加されるべき第2電圧を決定する、ように更に構成される場合がある。より詳細には、第2電圧が第1電圧とは異なる場合がある。いくつかの態様では、データドライバが、第1時刻より前に、第2ピクセル要素に第2電圧を印加する、ように更に構成される場合がある。いくつかの態様では、第1ピクセル要素は、ピクセルアレーのうち、第1ピクセル要素とは異なる行に位置する場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
示された実施形態は、例として図示されており、添付の図面の図によって限定されることを意図されたものでは無い。
【0014】
図1図1は、本実施形態がその中で実装され得る表示システムの例を示す。
【0015】
図2図2は、1以上の実施形態に係る、オーバードライブ回路部を有する表示デバイスのブロック図の例を示す。
【0016】
図3図3は、1以上の実施形態に係る、表示デバイスにおけるピクセル更新のタイミングの例を表すタイミング図を示す。
【0017】
図4A図4Aは、1以上の実施形態に係る、プログレッシブオーバードライブの実装例を表すタイミング図を示す。
図4B図4Bは、1以上の実施形態に係る、プログレッシブオーバードライブの実装例を表すタイミング図を示す。
【0018】
図5A図5Aは、1以上の実施形態に係る、プログレッシブオーバードライブ制御器のブロック図を示す。
図5B図5Bは、1以上の実施形態に係る、プログレッシブオーバードライブ制御器のブロック図を示す。
【0019】
図6図6は、1以上の実施形態に係る、プログレッシブオーバードライブ電圧を生成するために使用可能な一対のルックアップテーブル(LUT)の例を示す。
【0020】
図7図7は、1以上の実施形態に係る、プログレッシブオーバードライブ制御器のブロック図を示す。
【0021】
図8図8は、ディスプレイのピクセル要素をターゲットピクセル値に駆動する処理例を表す例示的なフローチャートである。
【0022】
図9図9は、ピクセルアレーのピクセル要素に選択的にオーバードライブ電圧を印加する処理例を表す例示的なフローチャートである。
【0023】
図10図10は、ピクセル要素をターゲットピクセル値に駆動するために用いられるべきオーバードライブ電圧を決定する処理例を表す例示的なフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の説明では、本開示の十分な理解を提供するために、具体的なコンポーネント、回路、及び、処理の例のような、多くの具体的な詳細が示される。ここで使われる「接続された」という言葉は、直接に接続されている、又は、仲介する1以上のコンポーネント又は回路を介して接続されていることを意味する。「電子システム」や「電子デバイス」という言葉は、情報を電子的に処理可能な任意のシステムを示すために、互換可能に用いられる場合がある。更に、以下の説明において、及び、説明を目的として、本開示の態様の十分な理解を提供するために、特定の命名法が用いられる。しかし、例示的な実施形態を実施するためには、これらの具体的な詳細が必要でない場合があることが当業者には明らかであろう。他の例では、本開示が不明確になることを避けるために、周知の回路及びデバイスがブロック図の形式で示される。以下の詳細な説明のいくつかの部分は、過程、論理ブロック、処理、及び、コンピュータのメモリ内のデータービットへの操作を他の記号で表現したもの、という形で提示されている。
【0025】
これらの説明及び表現は、データ処理技術の当業者によって、彼らの仕事の実質をもっとも効果的に他の当業者に伝えるために用いられる手段である。本開示においては、過程、論理ブロック、又は、処理等は、所望の結果を導くステップ又は命令の自己無撞着なシークエンスとなるように考案された。当該ステップは、物理量の物理的な操作を必要とするステップである。通常、必須ではないものの、これらの量はコンピュータシステムにおいて、記憶、送信、合成、比較、及び他の操作が可能な電子的又は磁気的な信号の形態を取る。しかしながら、これら及び同様の文言の全てが、適切な物理量と関連付けられるべきであり、かつ、これらの量に適用される便利なラベルに過ぎないということが留意されるべきである。
【0026】
後述の議論から明らかなように、特にそうでないと述べられていない場合には、本出願を通して、「アクセスする」、「受信する」、「送信する」、「用いる」、「選択する」、「決定する」、「正規化する」、「乗算する」、「平均する」、「モニタする」、「比較する」、「適用する」、「更新する」、「計測する」、「導出する」、等のような表現を用いて行われる議論は、コンピュータシステム(又は同様の電子計算デバイス)によるアクション及び処理を参照していると認められる。これらのアクション及び処理は、コンピュータシステムのレジスタ及びメモリ内の物理(電気)量として示されるデータを、コンピュータシステムのメモリ又はレジスタ、又は他のそのような情報ストレージ、伝送器、又は表示装置内の物理量として同様に示される他のデータに操作及び変換する。
【0027】
図において、単一のブロックが一又は複数の機能を実行するように説明される場合がある。しかし、実際の実施においては、そのブロックによって実行される一又は複数の機能は、単一のコンポーネントによって、あるいは複数のコンポーネントにまたがって実行される場合があり、及び/又は、ハードウェアを用いて、ソフトウェアを用いて、又は、ハードウェア及びソフトウェアの組合せを用いて実行される場合がある。このハードウェアとソフトウェアの互換可能性を明確に示すために、様々な例示的なコンポーネント、ブロック、モジュール、回路、及び、ステップが、それらの機能性の観点から、以下で一般に説明される。そのような機能性がハードウェア又はソフトウェアのいずれとして実装されるかは、特有の用途と、システム全体に課せられる設計上の制約と、に依存する。熟練した技術者は、説明された機能性を各特有の用途に応じた多様な方法で実装し得るが、そのような実装の決定が、本発明の範囲からの逸脱を起こすと解釈されてはならない。さらに、例示的な入力デバイスは、プロセッサ、及び、メモリ等といった周知のコンポーネントを含む、示されたものとは異なるコンポーネントを含む場合がある。
【0028】
ここで説明される技術は、特定の態様で実装されると特に記述されない場合は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はそれらの組み合わせとして実装し得る。モジュール又はコンポーネントとして説明された任意の構成は、集積ロジックデバイスに一緒に実装されることがあり、又は、別々だが相互に情報交換可能な論理デバイス、として別々に実装されることがある。ソフトウェアとして実装された場合、この技術は、少なくとも部分的に、実行されたときに後述される方法のうち1以上を実施する命令を保存する非一時的なプロセッサ読取り可能な記憶媒体によって実現され得る。この非一時的なプロセッサ読取り可能なデータ記憶媒体は、コンピュータプログラム製品の部分を形成する場合がある。コンピュータプログラム製品は、パッケージされた商品を含み得る。
【0029】
非一時的なプロセッサ読取り可能な記憶媒体は、同期ダイナミックランダムアクセスメモリ(synchronous dynamic random access memory)(SDRAM)のようなランダムアクセスメモリ(random access memory)(RAM)、リードオンリーメモリ(read only memory)(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(non-volatile random access memory)(NVRAM)、電子的消去可能プログラマブルリードオンリーメモリ(electrically erasable programmable read-only memory)(EEPROM)、フラッシュメモリ、他の既知の記憶媒体、等、を備える場合がある。本技術は追加的に、あるいは代替的に、少なくとも一部が、コードを命令又はデータ構造の形で伝達または通信し、かつ、コンピュータ又は他のプロセッサによってアクセス、読取り、及び/又は、実行可能な、プロセッサ読取り可能な通信媒体によって実現され得る。
【0030】
本明細書で開示される実施形態に関して説明される様々な例示的な論理ブロック、モジュール、回路、及び、命令は、1以上のプロセッサによって実行され得る。本明細書で用いられる「プロセッサ」という言葉は、任意の汎用プロセッサ、従来のプロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、及び/又は、メモリに記憶された1以上のソフトウェアプログラムのスクリプト又は命令を実行可能な状態機械、を示す場合がある。本明細書で用いられる「電圧源」という言葉は、直流(direct-current)(DC)の電圧源、交流(alternating-current)(AC)の電圧源、又は、(接地のような)電位を生成する他の手段を示す場合がある。
【0031】
図1は、本実施形態が実装され得る例示的な表示システム100を示す。表示システム100は、ホストデバイス110と、表示デバイス120と、を備える。表示デバイス120は、画像、又は、一連の画像(例えば、ビデオ)をユーザに表示するように構成された任意のデバイスであり得る。いくつかの実施形態では、表示デバイス120は、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)デバイスである場合がある。いくつかの態様では、ホストデバイス110は、表示デバイス120の物理的な一部として実装され得る。あるいは、ホストデバイス110は、バスやネットワークのような様々な有線及び/又は無線の相互接続及び通信技術を用いて、表示デバイス120の構成要素に対して接続される(及び構成要素と通信する)場合がある。例示的な技術は、集積回路間(Inter-Integrated Circuit)(IC),シリアル・ペリフェラル・インターフェース(Serial Peripheral Interface)(SPI)、PS/2、ユニバーサルシリアルバス(Universal Serial bus)(USB)、ブルートゥース(登録商標)、赤外線データ通信(Infrared Data Association)(IrDA)、及び、IEEE802.11基準で定義された様々な無線周波数(radio frequency)(RF)通信プロトコルを含み得る。
【0032】
ホストデバイス110は、画像ソースデータ101を画像ソース(シンプルにするために図示せず)から受信し、表示デバイス120において表示するために(例えば、表示データ102として)画像ソースデータ101を描写する。いくつかの実施形態では、ホストデバイス110は、画像ソースデータ101を表示デバイス120の1以上の能力に従って処理するように構成された描写エンジン112を備える場合がある。例えば、いくつかの態様では、表示デバイス120はユーザの目の位置に基づいて動的に更新された画像をユーザに表示する場合がある。より詳細には、表示デバイス120は、ユーザの頭及び/又は目の動きを追跡する場合があり、画像のうちユーザが凝視する点と一致する部分(例えば、中心視領域)を、画像の他の領域(例えば、フルフレーム画像)よりも高い解像度で表示する場合がある。そのため、いくつかの実施形態では、描写エンジン112は、フルフレーム画像の中心視領域に重ねられるべき高解像度の中心視画像を生成する場合がある。いくつかの他の実施形態では、描写エンジン112は、フルフレーム画像を表示デバイス120において(例えば、中心視画像よりも低解像度で)表示するためにスケーリングする場合がある。
【0033】
表示デバイス120は、表示データ102をホストデバイス110から受信し、受信した表示データ102に基づいて、対応する画像をユーザに表示する。いくつかの実施形態では、表示デバイス120はディスプレイ122と、バックライト124と、を備える場合がある。ディスプレイ122は、表示パネルの一方の表面から他方へと通過する光の量を(例えば、各ピクセル要素に印加される電圧又は電場に応じて)変化可能にするように構成されたピクセル要素(例えば、液晶セル)のアレーから形成された液晶ディスプレイ(LCD)パネルである場合がある。例えば、表示デバイス120は、各ピクセル要素に適切な電圧を印加して、(フルフレーム画像に重ねられた中心視画像を含む場合がある)画像をディスプレイ122上で描写する場合がある。上述したように、LCDは発光しないため、画像がユーザに視認可能になるように、ピクセル要素を照らす別個の光源に依存する。
【0034】
バックライト124は、背後からピクセル要素を照らすために、ディスプレイ122に近接して配置される場合がある。バックライト124は、冷陰極蛍光灯(cold cathode fluorescent lamp)(CCFL)、外部電極型蛍光灯(external electrode fluorescent lamp)(EEFL)、熱陰極蛍光灯(hot-cathode fluorescent lamp)(HCFL)、フラット型蛍光灯(flat fluorescent lamp)(FFL)、発光ダイオード(light-emitting diode)(LED)、又は、これらの任意の組合せ(しかしこれに限定されない)を含む1以上の光源を備える場合がある。いくつかの態様では、バックライト124は、ディスプレイ122の異なる領域に異なるレベルの照明を供給可能な(LEDのような)個別の光源のアレーを備える場合がある。いくつかの実施形態では、表示デバイス120は、例えば、画像の品質向上又は消費電力の節約のために、バックライト124の強度又は明るさを動的に変更可能なインバータ(シンプルにするために図示せず)を備える場合がある。
【0035】
上記で説明したように、各ピクセル要素の色及び/又は明るさは、そのピクセル要素に印加される電圧を変化することで調節される場合がある。しかしながら、単一のフレーム遷移又は更新において達成可能な色及び/又は明るさの変化の度合いは、ピクセル要素の安定化時間によって制限される場合がある。例えば、最大明るさ設定(例えば、「白い」ピクセル)から最小明るさ設定(例えば、「黒い」ピクセル)への遷移は、中間の明るさ設定から他の中間の明るさ設定への(例えば、「灰色」のうち一つの色合いから「灰色」の他の色合いへの)遷移よりも長い安定化時間を必要とし得る。ピクセル要素が連続するフレーム更新の間に所望の色及び/又は明るさを達成できないときには、表示された画像に(ゴーストのような)アーティファクトを生じ得る。
【0036】
LCDオーバードライブは、LCDディスプレイを更新するときのピクセル遷移のスピードを増加させるための技術である。詳細には、ピクセル要素が、所望の色及び/又は明るさのレベルに関連するターゲット電圧より高い電圧を印加される。より高い電圧は、各ピクセル要素の液晶をより早く回転させ、そのためより短い時間でターゲットの明るさに到達させる。そのため、いくつかの実施形態では、表示システム100は、ディスプレイ122の各ピクセル要素に印加される電圧の量を動的に調節してアーティファクトの発生を低減、及び/又は、それらがユーザの視聴体験を妨げることを防ぐことが可能なオーバードライブ回路部(シンプルにするために図示せず)を備える場合がある。
【0037】
図2は、1以上の実施形態に係る、オーバードライブ回路部を有する表示デバイス200のブロック図を示す。表示デバイス200は、図1の表示デバイス120のディスプレイ122の例示的な実施形態である場合がある。より詳細には、表示デバイス200は、ピクセルアレー210、タイミング制御器220、表示メモリ230、及び、オーバードライブ(overdrive)(OD)回路部240を備える場合がある。いくつかの実施形態では、表示デバイス200はLCD表示パネルに対応する場合がある。そのため、ピクセルアレー210は複数の液晶ピクセル要素(シンプルにするために図示せず)を備える場合がある。ピクセル要素の各行はそれぞれのゲートライン(GL)に接続されている。ピクセル要素の各列はそれぞれのデータライン(DL)に接続されている。これに応じて、アレー210の各ピクセル要素はゲートライン及びソースラインの交差点に配置されている。
【0038】
データドライバ212は、データラインDL(1)―DL(N)を介してピクセルアレー210に接続されている。いくつかの態様では、データドライバ212は、データラインDL(1)―DL(N)を介して、ピクセルデータを個別のピクセル要素に(例えば、対応する電圧の形で)ピクセルデータを駆動して、ピクセルアレー210に表示されるフレーム又は画像を更新するように構成されている場合がある。例えば、データラインDL(1)―DL(N)に印加される電圧は、ピクセルアレー210(例えば、ピクセル要素が液晶であるとき)のピクセル要素の物理状態を変える(例えば、回転)場合がある。そのため、各ピクセル要素に印加される電圧は、色、及び/又は、ピクセル要素によって発される光の強度に直接影響を与える。なお、ピクセルアレー210のピクセル要素の行は、それぞれ同じデータラインDL(1)―DL(N)に接続される。そのため、表示デバイス200は、ピクセル要素の行を逐次的にスキャンすることで、ピクセルアレー210を更新する場合がある。
【0039】
ゲートドライバ214は、ゲートラインGL(1)―GL(M)を介してピクセルアレー210に接続される。いくつかの態様では、ゲートドライバ214は、任意の所与の時刻において、データドライバ212によって駆動されるピクセルデータをピクセル要素の何れの行が受信するかを選択するように構成される場合がある。例えば、アレー210の各ピクセル要素は、アクセストランジスタ(シンプルにするために図示せず)を介して、データラインDL(1)―DL(N)のうち1つ、及び、ゲートラインGL(1)―GL(M)のうち一つと接続される場合がある。アクセストランジスタは、ゲートラインGL(1)―GL(M)のうち一つと接続されたゲートターミナルと、ソースラインDL(1)―DL(N)のうち一つと接続されたドレイン(又はソース)ターミナルと、アレー210内の対応するピクセル要素と接続されたソース(又はドレイン)ターミナルと、を有するNMOS(又はPMOS)トランジスタである場合がある。ゲートラインGL(1)―GL(M)のうち一つが十分に高い電圧を印加されたときに、選択されたゲートラインと接続されたアクセストランジスタがオンになり、データラインDL(1)―DL(N)から対応するピクセル要素の行に電流が流れることができるようになる。これに応じて、ゲートドライバ214は、ゲートラインGL(1)―GL(M)のそれぞれを、ピクセルアレー210の各行が更新されるまで、逐次に選択する、あるいは活性化するように構成される場合がある。
【0040】
タイミング制御器220は、データドライバ212とゲートドライバ214のタイミングを制御するように構成される。例えば、タイミング制御器220は、タイミング制御信号の第1セット(D_CTRL)を生成して、データドライバ212によるデータラインDL(1)―DL(N)の活性化を制御する場合がある。タイミング制御器220は、タイミング制御信号の第2セット(G_CTRL)を更に生成して、ゲートドライバ214によるゲートラインGL(1)―GL(M)の活性化を制御する場合がある。タイミング制御器220は、信号生成器222によって生成される基準クロック信号に基づいて、S_CTRL及びG_CTRL信号を生成する場合がある。例えば、信号生成器222は水晶発振器である場合がある。タイミング制御器220は、それぞれの位相オフセットを基準クロック信号に適用することに基づいて、D_CTRLとG_CTRLを駆動する場合がある。より詳細には、D_CTRL信号及びG_CTRL信号のタイミングは、データドライバ212がデータラインDL(1)―DL(N)をそのピクセル要素の行のために意図されたピクセルデータで駆動する時刻において、ゲートドライバ214が(例えば、ピクセルデータで駆動されるべきピクセル要素の行に接続された)正しいゲートラインを活性化するように、同期される場合がある。
【0041】
表示メモリ230は、ピクセルアレー210において表示されるべき表示データ203のバッファを記憶するように構成される場合がある。表示データ203は、アレー210の各ピクセル要素についての(例えば、色及び/又は強度に対応する)ピクセル値204を含む場合がある。例えば、各ピクセル要素は、赤色(R)、緑色(G)、及び、青色(B)のサブピクセルを含む(しかしこれに限定されない)複数のサブピクセルをさらに備える場合がある。いくつかの態様では、表示データ203は、表示される画像のサブピクセルについてのR、G、及び、Bの値を示す場合がある。R、G、及び、Bの値は、各ピクセルの色及び明るさのレベル(又は濃度のレベル)に影響を及ぼす場合がある。例えば、ピクセル値204はそれぞれに、256の可能な濃度レベルのうち1つを示す8ビットの値である場合がある。上記で説明したように、各ピクセル値204はターゲット電圧のレベルに関連し得る。言い換えると、ターゲット電圧が特定のピクセル要素に印加されると、ピクセル要素の色及び/又は明るさは、最終的には所望のピクセル値に安定し得る。しかしながら、ピクセル要素の安定化時間はピクセル値の変化の度合いに依存する場合がある。そのため、ピクセル値の変化が閾値量を超えたときには、ターゲット電圧は、与えられたフレーム更新期間の内でピクセル要素を所望のピクセル値に駆動するためには十分ではない場合がある。
【0042】
オーバードライブ回路部240は、ピクセル値204に少なくとも部分的に基づいて、アレー210の1以上のピクセル要素に適用されるべきオーバードライブ電圧205を決定する場合がある。より詳細には、アレー210の各ピクセル要素について、オーバードライブ回路部240は、現在のピクセル値(例えば、直前のフレーム更新からのピクセル値)をターゲットピクセル値(例えば、次のフレーム更新についてのピクセル値)と比較して、フレーム更新期間内にピクセル値の変化を達成するためにピクセル要素に印加されるべき電圧の量を決定する場合がある。いくつかの態様では、オーバードライブ回路部240は、現在のピクセル値及びターゲットピクセル値を、ルックアップテーブル(LUT)内の対応する値と比較して、ピクセル値における所望の変化を達成するためにピクセル要素に印加されるべきオーバードライブ電圧205を決定する場合がある。いくつかの実例では、オーバードライブ電圧205はターゲット電圧を超える場合がある(例えば、より高いあるいはより低い場合がある)。しかしながら、オーバードライブ電圧205はデータドライバ212の電圧レンジによって制限される(例えば、上限が定められる)場合がある。そのため、ピクセル要素は任意のフレーム更新期間内でピクセル値において閾値変化を超えない場合がある。
【0043】
上記で説明したように、ピクセルアレー210の個別の行は、逐次的に(例えば、1度に1行)更新される場合がある。しかしながら、ピクセルアレー210における画像の描写は、ピクセル要素が光源(例えば、図1のバックライト124)によって照らされないと視認することが出来ない場合がある。固定LCDディスプレイでは、バックライトはピクセルアレーに照明を継続して(例えば、バックライトが継続的にオンであるか、少なくとも所望の明るさレベルになるようにパルス幅が変調される)提供する場合がある。そのため、ピクセル値の任意の変化は、更新された電圧がピクセル要素に印加されるとすぐに認識可能となる場合がある。しかしながら、仮想現実(VR)のアプリケーションでは、ディスプレイで視認されるオブジェクトは、ユーザの頭及び/又は目が動くにつれて、異なるピクセルによって照らされる場合がある。ピクセル値の急激な変動は、LCDディスプレイに描写された画像において、仮想現実体験を損ない得るモーションブラー及び/又は他のアーティファクトを生じ得る。表示デバイスは、表示を(継続的に行うよりは)周期的に更新することによりモーションブラーを低減あるいは防ぐことがある。例えば、表示デバイスは、そのような間隔でピクセル値が急激に変化することが(例えば、人の視覚認識におけるサッカード抑制現象と同様に)抑制されるように、バックライトを周期的な間隔で点滅する場合がある。
【0044】
例えば、図3のタイミング図300の例を参照して、連続するフレーム更新期間の間、画像はピクセルアレー210によって周期的に表示され得る。より詳細には、各フレーム更新期間(例えば、時刻tからt及びtからt)は、ピクセル調節期間(例えば、時刻tからt及びtからt)とそれに続く表示期間(例えば、時刻tからt及びtからt)を含む場合がある。各ピクセル調節期間の間、ピクセルアレー210はピクセル更新(例えば、時刻tからt及びtからt)に駆動され得る。更新されたピクセル要素は、そして、続く表示期間の間ユーザに「表示」される(例えば、可視化される)。例えば、ピクセルアレー210上の画像は、ピクセルアレー210を照らすように構成された(図1のバックライト124のような)光源を活性化することより、ユーザに表示され得る。
【0045】
各ピクセル更新期間の間、ピクセルアレー210の個別の行は、(例えば、カスケード方式で)逐次に更新される場合がある。曲線301及び曲線302は、その行に関するライン番号に基づく、ピクセルアレー210の各行についてのピクセル更新時間の例を示す。そこで、図3に示すように、より高いライン番号に関連する行(例えば、カスケードの更に下)は、より低いライン番号に関連する行よりも遅れて(例えば、カスケードの開始に向けて)更新される。しかし、ピクセル要素が表示期間の間にのみ照明されるため、表示期間の前又は後に現れたピクセル値の如何なる変化も、ユーザによって視認され得ない。その結果、より高いライン番号に関連するピクセル要素(例えば、より後に更新されるピクセル要素)は、より低いライン番号に関連するピクセル要素(例えば、より早く更新されるピクセル要素)よりも、所望のピクセル値に遷移するための時間が少ない。例えば、アレー210の最上段のピクセル要素は、ターゲットピクセル値へ到達するために、ピクセル調節期間の継続時間(T)を有し得る。これに対して、アレー210の中段のピクセル要素は、それらのターゲットピクセル値に到達するために有意に短い期間(T-x)を有する場合があり、アレー210の最下段のピクセル要素は、それらのターゲットピクセル値に到達するために更に短い期間(T-2x)を有する場合がある。
【0046】
本開示の態様は、ピクセルアレー210のうち個々の行について遷移時間が異なるために、ピクセル要素の異なる行に異なる量のオーバードライブが適用され得ることを認識している。例えば、相対的に低いライン番号に関連するピクセル要素は、次の表示期間までにそれらのターゲットピクセル値に到達するために、(もしあるとしても)低いオーバードライブ電圧を要する場合がある。しかし、より高いライン番号に関連するピクセル要素は、次の表示期間までにそれらのターゲットピクセル値に到達するために、しだいにより高いオーバードライブ電圧を要する場合がある。そのため、いくつかの実施形態では、オーバードライブ回路部240は、アレー210におけるそれらの位置(例えば、ライン番号)に少なくとも部分的に基づいて、ピクセル要素の行に適用されるオーバードライブの量を漸次増加させる場合がある。より詳細には、より高いライン番号に関する(例えば、表示更新期間のうちより遅く更新される)ピクセル要素は、一般に、より低いライン番号に対応する(例えば、表示更新期間のうちより早く更新される)ピクセル要素よりも大きい量のオーバードライブを供給される。
【0047】
図4Aは、いくつかの実施形態に係る、プログレッシブオーバードライブの実装例を示すタイミング図400Aを示す。いくつかの実施形態では、図4Aに示されたプログレッシブオーバードライブの方法は、図2のオーバードライブ回路部240によって実行される場合がある。タイミング図400Aは、ピクセル調節期間(例えば、時刻tからt)と、これに続く表示期間(例えば、時刻tからt)と、を含み得る例示的なフレーム更新期間(例えば、時刻tからt)を示す。曲線401は、その行に関連するライン番号に基づく、ピクセルアレー210の各行の例示的なピクセル更新時間を表す。
【0048】
図4Aの例では、オーバードライブ回路部240は、ピクセルアレー210のラインlからlの間のピクセル要素の連続する行について、プログレッシブオーバードライブ電圧を生成する場合がある。より詳細には、オーバードライブ電圧の量は、ラインlからlの間のピクセル要素の連続する行それぞれについて、漸次増加する場合がある。例えば、ラインlに接続されたピクセル要素は、表示期間の開始までにピクセル値において同量の変化(例えば、濃度のレベルにおいて同量の変化)を達成するために、ラインlに接続されたピクセル要素よりも高い電圧を印加される場合がある。上記で説明したように、ピクセル要素に印加可能なオーバードライブの量は、データドライバ212の電圧レンジによって制限され得る。図4Aの例では、ラインlに接続されたピクセル要素が更新される時刻までに、オーバードライブ電圧が飽和する場合がある。そのため、オーバードライブ回路部240は、ピクセルアレー210のラインlとラインlの間のピクセル要素の行に対して最大のオーバードライブを適用する場合がある。言い換えると、ラインlとラインlの間の任意のピクセル要素がピクセル調節期間の間に更新されるときには、オーバードライブ回路部240は、そのようなピクセル要素のピクセル値を変更するために最大のオーバードライブを適用する場合がある。
【0049】
本開示の態様は、プログレッシブオーバードライブの必要性はLCDディスプレイの特性(例えば、ピクセルの数、温度、応答時間、等)に強く依存し得ることを認識している。例えば、より少ないピクセル要素を有する(又は、少なくともピクセルのラインがより少ない)LCDディスプレイは、ピクセルアレー全体の更新のために必要となる時間が短い場合がある。そのため、より少ないピクセルアレーにおいては、ピクセル要素の一つの行から他の行へのオーバードライブの変化がよりゆるやかである場合がある。本開示の態様は、いくつかの実施形態では、次の表示期間までにオーバードライブを用いることなく(例えば、ターゲット電圧のみをピクセル要素に印加することで)、1以上のピクセル要素の行がそのターゲットピクセル値で安定する場合があることを更に認識している。
【0050】
図4Bは、いくつかの実施形態に係る、プログレッシブオーバードライブの他の実装例を示すタイミング図400Bを示す。いくつかの実施形態では、図4Bに示されたプログレッシブオーバードライブの方法は、図2のオーバードライブ回路部240によって実行される場合がある。タイミング図400Bは、ピクセル調節期間(例えば、時刻tからt)と、これに続く表示期間(例えば、時刻tからt)と、を含み得る例示的なフレーム更新期間(例えば、時刻tからt)を示す。曲線402は、その行に関連するライン番号(例えば、ゲートライン)に基づく、ピクセルアレー210の各行の例示的なピクセル更新時間を表す。
【0051】
図4Bの例では、オーバードライブ回路部240は、ピクセルアレー210のラインlからlの間のピクセル要素の行について、如何なるオーバードライブも適用しない場合がある。その代わりに、ピクセル調節期間の間、ラインlからlの間の各ピクセル要素はそのターゲット電圧を印加される場合がある。オーバードライブ回路部240は、ピクセルアレー210のラインlからlの間のピクセル要素の連続する行について、プログレッシブオーバードライブ電圧を生成する場合がある。上記で説明したように、オーバードライブ電圧の量は、ラインlからlの間のピクセル要素の連続する行それぞれについて、漸次増加する場合がある。図4Bの例では、ラインlに接続されたピクセル要素が更新される時刻までに、オーバードライブ電圧が飽和する場合がある。そのため、オーバードライブ回路部240は、ピクセルアレー210のラインlとラインlの間のピクセル要素の行に対して最大のオーバードライブを適用する場合がある。言い換えると、ラインlとラインlの間の任意のピクセル要素がピクセル調節期間の間に更新されるときには、オーバードライブ回路部240は、そのようなピクセル要素のピクセル値を変更するために最大のオーバードライブを適用する場合がある。
【0052】
オーバードライブを(図4A及び4Bに示したような)漸進的な態様で適用することで、オーバードライブ回路部240はアレー210のピクセル要素のそれぞれが、次の表示期間より前に、そのターゲットピクセル値(あるいは、少なくとも、ターゲットピクセル値に実質的に近似するピクセル値)に更新されることを保証する場合がある。その上、(例えば、図4Bで示したように)オーバードライブをピクセルアレーの一部のみに選択的に適用することで、本明細書の実施形態は、ピクセルアレー210のためにオーバードライブ電圧を生成するために要するリソース(例えば、メモリ、時間、電力、及び他の処理リソース)の量を低減し得る。
【0053】
図5Aは、いくつかの実施形態に係る、プログレッシブオーバードライブ制御器500Aのブロック図を示す。プログレッシブオーバードライブ制御器500Aは、図2のオーバードライブ回路部240の実施形態の一例である場合がある。そのため、プログレッシブオーバードライブ制御器500Aは、アレー210における行の位置に少なくとも部分的に基づいて、(図2のピクセルアレー210のような)ピクセルアレーのピクセル要素の一以上の行に適用されるオーバードライブの量を漸進的に増加させるように構成されている場合がある。
【0054】
プログレッシブオーバードライブ制御器500Aは、オーバードライブ電圧生成器510と、先行画像バッファ520と、ルックアップテーブル(LUT)レポジトリ530と、を備える。オーバードライブ電圧生成器510は、関連するピクセルアレーの各ピクセル要素に印加されるべきオーバードライブピクセル電圧505を決定する場合がある。より詳細には、オーバードライブ電圧生成器510は、ターゲットピクセル値501、現在のピクセル値502、及び、オーバードライブ(OD)インデックス503に少なくとも部分的に基づいて、オーバードライブピクセル電圧505を生成する場合がある。ターゲットピクセル値501は、特定のピクセル要素が次の表示期間までに駆動されるべきピクセル値に対応する場合がある。例えば、ターゲットピクセル値501は、(図2の表示メモリ230のような)入力画像のバッファによって供給される場合がある。現在のピクセル値502は、直前の表示期間の間表示された、特定のピクセル要素についてのピクセル値に対応する場合がある。例えば、現在のピクセル値502は、先行画像バッファ520に保存され、先行画像バッファ520から取得され得る。いくつかの態様では、各フレームの更新後、オーバードライブ電圧生成器510は、(例えば、次のフレーム更新で現在のピクセル値502として用いるために)現在のフレームのターゲットピクセル値501を先行画像バッファ520に記憶する場合がある。
【0055】
いくつかの実施形態では、オーバードライブ電圧生成器510は、ターゲットピクセル値501を現在のピクセル値502と比較することで、オーバードライブピクセル電圧505を決定する場合がある。より詳細には、プログレッシブオーバードライブ制御器510は、ピクセル値を現在のピクセル値502からターゲットピクセル値501に変更するために対応するピクセル要素に印加されるべき電圧の量を決定する場合がある。いくつかの態様では、オーバードライブ電圧生成器510は、ターゲットピクセル値501及び現在のピクセル値502を、ルックアップテーブル(LUT)の対応する値と比較して、オーバードライブピクセル電圧505を決定する場合がある。例えば、LUTの行は、複数の現在の値と対応する場合があり、LUTの列は複数のターゲットピクセル値に対応する場合がある。特定の行と特定の列の交差点は、(対応する行の)現在のピクセル値から(対応する列の)ターゲットピクセル値への変更のために必要なオーバードライブ電圧を示す場合がある。
【0056】
従来のLCDディスプレイは、ピクセルアレーのピクセル要素に印加されるべきオーバードライブ電圧を決定するために、単一のルックアップテーブルを用いる。しかし、HMDデバイス(及び、特にVRアプリケーション)においては、(例えば、図3を参照して説明したように)アレーにおけるそれらの位置に基づいて、異なるピクセル要素が(例えば、ターゲットの明るさ又はピクセル値に到達するための)異なるタイミングの制約条件を有する場合がある。例えば、アレーの第1行におけるピクセル要素は、アレーの最終行のピクセル要素と比べて、それらのピクセル値に到達するための時間を有意に多く有する場合がある。そのため、プログレッシブオーバードライブ制御器500Aは、所与のピクセル値の変動を実現するために、ピクセルアレーにおけるピクセル要素の複数の連続する行について、漸進的にオーバードライブ電圧の量を増加(又は減少)させる場合がある(例えば、図4A及び4Bに関連して説明したように)。
【0057】
いくつかの実施形態では、オーバードライブ電圧生成器510は、オーバードライブピクセル電圧505を決定するために、複数のLUTを用いる場合がある。例えば、LUTレポジトリ530は、オーバードライブ電圧生成器510によって取得され得る複数のLUTを記憶する場合がある。複数のLUTはそれぞれ、対応するピクセルアレーのピクセル要素のうち異なる行に関連する場合がある。例えば、LUTレポジトリ530はピクセルアレーの最初の行に関連する第1LUTと、ピクセルアレーの最終行に対応する第2LUTと、を記憶する場合がある。第1LUTは、アレーの最初の行における任意のピクセル要素についてのピクセル値の様々な変動を実現するために用いられるべき複数のオーバードライブ電圧を示す場合がある。一方、第2LUTは、アレーの最終行における任意のピクセル要素についてのピクセル値の様々な変動を実現するために用いられるべき複数のオーバードライブ電圧を示す場合がある。アレーの最終行のピクセル要素は、ターゲットピクセル値に到達するための時間がアレーの最初の行のピクセル要素よりも少ないため、第2LUTにおけるオーバードライブ電圧は第1LUTの対応するオーバードライブ電圧よりも大きい場合がある。
【0058】
いくつかの実施形態では、オーバードライブ電圧生成器510は、ピクセル要素の特定行についてのオーバードライブ電圧を決定するために、オーバードライブインデックス503を用いる場合がある。より詳細には、オーバードライブインデックス503はLUTレポジトリ530から1以上のLUTを選択するために用いられる場合がある。例えば、いくつかの態様では、オーバードライブインデックス503は、少なくとも部分的に、駆動されるべきピクセル要素に関連するライン番号又は行番号に基づく場合がある。しかしながら、他の要因もまた、ピクセル値の所望の変動をフレーム更新期間内に達成するために必要なオーバードライブ電圧の量に影響し得る。例えば、液晶の即応性は、ディスプレイの温度によって変動する場合がある。温度がより高いピクセル要素はより早い反応速度を有する傾向があり、そのため、温度がより低いピクセル要素に比べて、同じピクセル値の変動を達成するために必要とするオーバードライブ電圧が少ない。そのため、ピクセル要素の任意の所与の行について、オーバードライブ電圧生成器510は、オーバードライブ電圧を決定するために、温度がより高い条件下では温度がより低い条件下とは異なるLUTを用いる場合がある。いくつかの実施形態では、オーバードライブインデックス503は、駆動されるべきピクセル要素に関連するライン又は行の番号と、ディスプレイの温度と、を含む(しかしこれに限定されない)複数の要因の組合わせに基づく場合がある。
【0059】
例えば、図5Bは、LCDディスプレイの温度に基づいて、オーバードライブピクセル電圧505を動的に調節し得るプログレッシブオーバードライブ制御器500Bのブロック図を示す。(図5Aに関連して上記で説明された)オーバードライブ電圧生成器510、先行画像バッファ520、及び、LUTレポジトリ530に加えて、プログレッシブオーバードライブ制御器500Bは、プログレッシブオーバードライブ制御器500B及び/又はディスプレイドライバの外部に、プロセッサ(例えば、CPU)550に温度測定値506を供給し得る温度センサ540を更に備える。例えば、CPU550は、メモリ及び処理のリソースをディスプレイドライバよりも多く有するホストデバイス(又は表示デバイスの他の場所)に設けられる場合がある。温度センサ540が表示デバイスに(例えば、LCDディスプレイに近接して)設けられているため、温度測定値506は比較的正確なLCDディスプレイの温度の指標を提供し得る。
【0060】
いくつかの実施形態では、CPU550は、外部のLUTレポジトリ560から温度固有LUT507のセットを選択するために温度測定値506を用いる場合がある。上記で説明したように、LCDディスプレイ内の液晶の応答性は、LCDディスプレイの温度によって変動し得る。そのため、ピクセル要素の任意の所与の行について、より高い温度の条件下ではより低い温度の条件下とは異なるLUTを用いてオーバードライブ電圧を決定することが望ましい。しかしながら、本開示の態様は、ディスプレイドライバのメモリリソースは大変少ない場合があることを認識している。そのため、LUTレポジトリ530は、任意の所与の瞬間において、限定された数のLUTのみを記憶可能である場合がある。そのため、いくつかの実施形態では、CPU550は、(例えば、温度測定値506によって示されるような)LCDディスプレイの現在の温度に基づいて、外部のLUTレポジトリ560から取得した温度固有LUT507により、LUTレポジトリ530を更新及び/又は追加する場合がある。
【0061】
いくつかの実施形態では、LUTレポジトリ530はピクセルアレーの各行について異なるLUTを記憶する場合がある。例えば、オーバードライブインデックス503は、ピクセル要素の特定の行について、オーバードライブ電圧生成器510によって取得されるべき正しいLUT504を特定する場合がある。しかしながら、本開示の態様は、(LCDディスプレイが、数千でなくとも数百のピクセル要素の行を含む場合があるため)多くのLUTを記憶することは実用的でなく、実行可能でさえない場合があることを認識している。そのため、他の実施形態においては、LUTレポジトリ530はピクセルアレーの行のうち一部のみについてLUTを記憶している場合がある。これに応じて、オーバードライブ電圧生成器510は、複数のLUTのバイリニア補間に基づいて、特定のピクセル要素についてのオーバードライブピクセル電圧505を決定する場合がある。例えば、オーバードライブ電圧生成器510はLUTレポジトリから、オーバードライブインデックス503に最も近いLUT504を二つ取得する場合がある。オーバードライブ電圧生成器510は二つのLUT504においてバイリニア補間を実行して、対応するピクセル値を現在のピクセル値502からターゲットピクセル値501に変更するために、選択された行の各ピクセル要素に印加されるべきオーバードライブピクセル電圧505を決定する場合がある。
【0062】
図6は、1以上の実施形態に係る、プログレッシブオーバードライブ電圧を生成するために使用可能な一対のルックアップテーブル(LUT)601及び602の例を示す。図6の例では、LUT601及びLUT602はそれぞれ、17×17のLUTであり得る。LUTの各要素(例えば、セル)は、8ビットのグレースケールピクセル値を記憶する場合がある。LUT601及びLUT602はそれぞれ、対応するピクセルアレーのピクセル要素の異なる行に関連する。
【0063】
ある特定の例では、図4Bを参照して、第1LUT601はピクセル要素のライン番号lの行に関連する場合があり、第2LUT602はピクセル要素のライン番号lの行に関連する場合がある。そのため、第1LUT601は、ライン番号lと接続されたピクセル要素を(例えば、LUT601の行に沿ってインデックスが付された)現在のピクセル値から(例えば、LUT601の列に沿ってインデックスが付された)ターゲットピクセル値に駆動するために用いられ得る複数のオーバードライブ電圧(例えば、va1―va20)を含む場合がある。同様に、第2LUT602は、ライン番号lと接続されたピクセル要素を(例えば、LUT602の行に沿ってインデックスが付された)現在のピクセル値から(例えば、LUT602の列に沿ってインデックスが付された)ターゲットピクセル値に駆動するために用いられ得る複数のオーバードライブ電圧(例えば、vb1―vb20)を含む場合がある。ライン番号lと接続されたピクセル要素が、ターゲット値に到達するための時間をライン番号lに接続されたピクセル要素よりも多く有する場合があるため、第2LUT602のオーバードライブ電圧はそれぞれ第1LUT601の対応するオーバードライブ電圧よりも大きい場合がある(例えば、Vb1>Va1、Vb2>Va2、Vb3>Va3、等)。
【0064】
いくつかの実施形態では、LUT601及びLUT602は、(例えば、LUT601及び602のバイリニア補間に基づいて)アレーのうちライン番号lとlの間の任意の行のピクセル要素についてのオーバードライブ電圧を取得するために用いられる場合がある。いくつかの態様では、LUT601及び602は、ライン番号lとlの間の選択された行についての新たなLUT603を作成するために、線形補間により合成される場合がある。そのため、新たなLUT603の各要素は、次の式によって示されるように、第1LUT601及び第2LUT602の対応する要素の線形補間に基づいて生成される場合がある。
【数1】
ここで、iはピクセル要素の選択された行についてのオーバードライブインデックスであり、xは1から272までの任意の整数であり得る。そのため、オーバードライブインデックスに応じて、LUT601及び602からのオーバードライブ電圧の線形補間の結果は、(例えば、ピクセル要素の選択された行がラインlに近いときには)第1LUT601のそれらの電圧により近い複数の電圧になり、又は、(例えば、ピクセル要素の選択された行がラインlに近いときには)第2LUT602のそれらの電圧により近い複数の電圧になる場合がある。
【0065】
新たなLUT603の各セルは、選択された行のピクセル要素を(例えば、LUT603の行に沿ってインデックスが付された)現在のピクセル値から(例えば、LUT603の列に沿ってインデックスが付された)ターゲットピクセル値に駆動するために使用可能なオーバードライブ電圧をそれぞれに示す場合がある。新たなLUT603は、(他のLUT601及び602と同様に)可能な全てのグレースケール値の一部(例えば、0、16、32、48、64、80、96、112、128、144、160、176、192、208、224、240、及び、255)のみを含む場合がある。そのため、補間の更なるステップが、LUT603において明示的に特定されているグレースケール値の間に位置する任意のグレースケール値に関するオーバードライブ電圧を決定するために用いられる場合がある。例えば、ピクセル要素をグレースケール値の8からグレースケール値の20まで駆動するために用いられるべきオーバードライブ電圧は、現在のグレースケール値0及び16と、ターゲットのグレースケール値16及び32と、のバイリニア補間に基づいて決定される場合がある。
【0066】
図7は、1以上の実施形態に係る、プログレッシブオーバードライブ制御器700のブロック図を示す。プログレッシブオーバードライブ制御器700は図5Aのプログレッシブオーバードライブ制御器500A、及び/又は、図2のオーバードライブ回路部240の実施形態の例である場合がある。そのため、プログレッシブオーバードライブ制御器700Aは、アレー210における行の位置に少なくとも部分的に基づいて、(図2のピクセルアレー210のような)ピクセルアレーのピクセル要素の1以上の行に適用されるオーバードライブの量を漸進的に増加させるように構成されている場合がある。
【0067】
プログレッシブオーバードライブ制御器700は、オーバードライブ電圧補間器710と、先行画像バッファ720と、ルックアップテーブル(LUT)レポジトリ730と、ルックアップテーブル(LUT)生成器740と、ルックアップテーブル(LUT)バッファ750と、を備える。オーバードライブ電圧補間器710は、関連するピクセルアレーの各ピクセル要素に印加されるべきオーバードライブピクセル電圧704を決定する場合がある。より詳細には、オーバードライブ電圧補間器710は、ターゲットピクセル値701と、現在のピクセル値702と、ルックアップテーブル(LUT)に少なくとも部分的に基づいて、オーバードライブピクセル電圧704を生成する場合がある。ターゲットピクセル値701は、特定のピクセル要素が次の表示期間までに駆動されるべきピクセル値に対応する場合がある。例えば、ターゲットピクセル値701は、(図2の表示メモリ230のような)入力画像のバッファによって供給される場合がある。現在のピクセル値702は、直前の表示期間の間表示された、特定のピクセル要素についてのピクセル値に対応する場合がある。例えば、現在のピクセル値702は、先行画像バッファ720に保存され、先行画像バッファ720から取得され得る。いくつかの態様では、各フレームの更新後、オーバードライブ電圧補間器710は、(例えば、次のフレーム更新で現在のピクセル値702として用いるために)現在のフレームのターゲットピクセル値701を先行画像バッファ720に記憶する場合がある。
【0068】
いくつかの実施形態では、オーバードライブ電圧補間器710は、ターゲットピクセル値701を現在のピクセル値702と比較することで、オーバードライブピクセル電圧704を決定する場合がある。より詳細には、オーバードライブ電圧補間器710は、ピクセル値を現在のピクセル値702からターゲットピクセル値701に変更するために対応するピクセル要素に印加されるべき電圧の量を決定する場合がある。いくつかの態様では、オーバードライブ電圧補間器710は、ターゲットピクセル値701及び現在のピクセル値702を、ルックアップテーブル(LUT)の対応する値と比較して、オーバードライブピクセル電圧704を決定する場合がある。いくつかの実施形態では、プログレッシブオーバードライブ制御器700は、所与のピクセル値の変動のために、ピクセルアレーにおけるピクセル要素の複数の連続する行について、漸進的にオーバードライブ電圧の量を増加(又は減少)させる場合がある。そのために、いくつかの態様では、オーバードライブ電圧補間器710は、ピクセルアレーの異なる行について、異なる(又は更新された)LUTを用いてオーバードライブピクセル電圧704を決定する場合がある。
【0069】
いくつかの実施形態では、LUTレポジトリ730は、ピクセルアレーの異なる行に関連する複数のLUTを記憶する場合がある。より詳細には、LUTレポジトリ730はピクセルアレーの行のうち一部のみについてLUTを記憶している場合がある。いくつかの態様では、LUTレポジトリ730は所与のピクセルアレーについて、少なくとも2つの、そして5つまでのLUTを記憶する場合がある。少なくとも1つのLUTが、アレーのピクセル要素(例えば、図4Aのライン番号l、又は、図4Bのライン番号l―lと接続されたピクセル要素)の1以上の行に印加されるべき最小のオーバードライブ電圧に関連する場合がある。少なくとも1つのLUTが、アレーのピクセル要素(例えば、図4A及び4Bのライン番号l―lと接続されたピクセル要素)の1以上の行に印加されるべき最大のオーバードライブ電圧に関連する場合がある。
【0070】
LUT生成器740は、オーバードライブインデックス703に少なくとも部分的に基づいて、LUTレポジトリ730から1以上のLUT(LUT+及びLUT-)を取得する場合がある。いくつかの態様では、オーバードライブインデックス703は、少なくとも部分的に、駆動されるべきピクセル要素に関連するライン番号又は行番号に基づく場合がある。いくつかの実施形態では、オーバードライブインデックス703は、駆動されるべきピクセル要素に関連するライン又は行の番号と、ディスプレイの温度と、を含む(しかしこれに限定されない)複数の要因の組合わせに基づく場合がある。いくつかの実施形態では、LUT生成器740はオーバードライブインデックス703に最も近い一対のLUTを取得する。例えば、オーバードライブインデックス703がLUTレポジトリ730に記憶された特定のLUTに対応する場合、LUT生成器740は同じLUTのコピーを2つ取得する場合がある。しかし、オーバードライブインデックス703がLUTレポジトリに記憶された何れのLUTにも対応しない場合、LUT生成器740は、オーバードライブインデックス703に関連する、オーバードライブインデックス703より大きいインデックスを持つ最も近いLUT(例えば、LUT+)と、オーバードライブインデックス703より小さいインデックスを持つ最も近いLUT(例えば、LUT-)と、を取得する。
【0071】
LUT生成器740は、LUTレポジトリ730から取得したLUTを補間して、補間LUT(Int_LUT)を生成する場合がある。いくつかの実施形態では、(たとえば、図6に関連して上記で説明したように)補間LUTはLUTレポジトリ730から取得されたLUTの線形補間に少なくとも部分的に基づく場合がある。より詳細には、補間LUTの各要素は、LUT+及びLUT-の対応する要素の線形補間に基づいて生成される場合がある。そのため、オーバードライブインデックス703に基づいて、補間LUTにおけるオーバードライブ電圧は、(例えば、オーバードライブインデックス703がLUT+のそれにより近いときには)LUT+の電圧により近い場合があり、(例えば、オーバードライブインデックス703がLUT-のそれにより近いときには)LUT-の電圧により近い場合がある。補間LUTの各セルは、ピクセルアレーのうち選択された行の(例えば、オーバードライブインデックス703に関連する)ピクセル要素を現在のピクセル値からターゲットピクセル値に駆動するために使用可能なオーバードライブ電圧をそれぞれに示す場合がある。
【0072】
補間LUTは、LUTバッファ750に記憶され、オーバードライブ電圧補間器710によりアクセスされる場合がある。例えば、オーバードライブ電圧補間器710は補間LUTにおいてターゲットピクセル値701と現在のピクセル値702とを探索して、オーバードライブピクセル電圧704を決定する場合がある。いくつかの実施形態では、補間LUTは、ターゲットピクセル値と現在のピクセル値のそれぞれについて可能な全てのグレースケール値のうち一部のみを含む場合がある。そのため、いくつかの態様では、オーバードライブ電圧補間器710は、補間LUTのピクセル値を補間して、オーバードライブピクセル電圧704を生成する場合がある。例えば、オーバードライブ電圧補間器710は、(Int_LUT内で)現在のピクセル値702よりも大きく現在のピクセル値702に最も近い現在のピクセル値に関連するオーバードライブ電圧(例えば、VCP+)の行と、(Int_LUT内で)現在のピクセル値702よりも小さく現在のピクセル値702に最も近い現在のピクセル値に関連するオーバードライブ電圧(例えば、VCP-)の行と、(Int_LUT内で)ターゲットピクセル値701よりも大きくターゲットピクセル値701に最も近いターゲットピクセル値に関連するオーバードライブ電圧(例えば、VTP+)の列と、(Int_LUT内で)ターゲットピクセル値701よりも小さくターゲットピクセル値701に最も近いターゲットピクセル値に関連するオーバードライブ電圧(例えば、VTP-)の列と、を取得する場合がある。オーバードライブ電圧補間器710は、そして、VCP+、VCP-、VTP+、及び、VTP-のバイリニア補間に基づいて、オーバードライブピクセル電圧704を生成する場合がある。
【0073】
プログレッシブオーバードライブを実行するときには、オーバードライブ電圧補間器710は、アレーのピクセル要素の連続する行のそれぞれについて、異なる(又は更新された)補間LUTを用いる場合がある。そのため、いくつかの実施形態では、LUT生成器740からの補間LUTは、LUTバッファ750に二重にバッファされる場合がある。例えば、LUTバッファ750は、ピクセル要素の現在の行についての補間LUTを、オーバードライブ電圧補間器710によって処理されるべきピクセル要素の次の行についての補間LUTと同様に記憶する場合がある。これによって、オーバードライブ電圧補間器710は、ピクセル要素の次の行についてのオーバードライブピクセル電圧704を、ピクセル要素の現在の行についてのオーバードライブピクセル電圧704を処理した後すぐに(例えば、次の補間LUTをバッファするまで待つことなく)取得することができる。
【0074】
従来の表示システムでは、(例えば、図2のオーバードライブ回路部240のような)LCDオーバードライブ回路部は、表示デバイス(例えば、表示デバイス120)に設けられたディスプレイドライバ上に設けられていた(又は、ディスプレイドライバによって実現されていた)。そのため、ディスプレイドライバは、ホストから受信した表示データの各フレームを同時に描写している間に、各ピクセル要素に印加されるべきオーバードライブ電圧を生成する場合があった。しかしながら、いくつかのLUTがプログレッシブオーバードライブを実行するために用いられるため、表示デバイスは、ピクセル要素の様々な行についての各LUTを記憶及び処理するため、メモリ及び他のハードウェアリソースをかなりの量で必要とし得る。表示デバイスではリソースがホストデバイスよりも強く制限されるため、プログレッシブオーバードライブの処理のうちいくつか(又は全て)をホストデバイスにおいて実行することが望まれる場合がある。
【0075】
いくつかの実施形態では、ピクセルアレーの各ピクセル要素についてのオーバードライブ電圧は、ホストデバイスによって生成あるいは決定される場合がある。図1を参照して、ホストデバイス110は、表示デバイス120で表示するための画像ソースデータ101を処理する間と同時に、オーバードライブ電圧を生成する場合がある。これに応じて、ホストデバイス110はオーバードライブ電圧の情報を表示データ102と共に、表示デバイス120に送信する場合がある。いくつかの実施形態では、ホストデバイス110は、オーバードライブ電圧の情報を表示データ102の中に記録する。そして、ホストデバイス110から表示データ102を受信すると、表示デバイス120は、その特定のフレームにおいて、ピクセル要素の各行にとって正確なオーバードライブ電圧を用いて、ディスプレイ122上に対応する画像を描写する場合がある。
【0076】
図8は、ディスプレイのピクセル要素をターゲットピクセル値に駆動する処理例800を表す例示的なフローチャートである。図1及び2を参照して、処理例800は本開示の任意の表示デバイス(例えば、表示デバイス120又は表示デバイス200)によって実行され得る。
【0077】
表示デバイスは、ピクセルアレーの第1ピクセル要素についての現在のピクセル値を決定する(810)。例えば、現在のピクセル値は、現在のディスプレイ上での(例えば、現在のフレーム又は画像についての)第1ピクセル要素の色及び/又は強度に対応する場合がある。第1ピクセル要素は、赤色(R)、緑色(G)、及び、青色(B)のサブピクセルを含む(しかしこれに限定されない)複数のサブピクセルを備える場合がある。いくつかの態様では、現在のピクセル値は、第1ピクセル要素のサブピクセルについてのR、G、及び、Bの値に対応する場合がある。R、G、及び、Bの値は第1ピクセル要素の色及び強度(例えば、濃度レベル)に影響を及ぼす場合がある。例えば、各ピクセル値は、256の可能なグレースケールのレベルのうち一つを示す8ビットの値である場合がある。
【0078】
表示デバイスは、第1ピクセル要素についてのターゲットピクセル値を更に決定する(820)。例えば、ターゲットピクセル値は、(例えば、シークエンスの次のフレーム又は画像について)表示されるべき第1ピクセル要素の所望の色及び/又は強度に対応する場合がある。ターゲットピクセル値は、第1ピクセル要素に電圧を印加することで達成され得る。より詳細には、電圧が第1ピクセル要素の物理状態を変化(例えば、回転)させ、色及び/又は強度に対応する変化を起こす場合がある。いくつかの態様ではターゲットピクセル値は、第1ピクセル要素に印加されたときに、第1ピクセル要素をターゲットピクセル値に安定させるターゲット電圧に関連する場合がある。
【0079】
表示デバイスは、ピクセルアレーにおける第1ピクセル要素の位置に少なくとも部分的に基づいて、第1ピクセル要素に印加されるべき第1電圧を決定する場合がある(830)。より詳細には、第1電圧は、第1時刻(例えば、表示期間の開始)までに、第1ピクセル要素を現在のピクセル値からターゲットピクセル値へと遷移させる場合がある。しかし、本開示の態様は、ピクセルアレーが行ごとに更新されるため、異なるピクセル要素は、ピクセルアレーにおけるそれらの行の位置に依存して、異なる遷移時間を有する場合があることを認識している。例えば、より高いライン番号に関連するピクセル要素(例えば、より遅く更新されるピクセル要素)は、所望のピクセル値に遷移するための時間がより低いライン番号に対応するピクセル要素(例えば、より早く更新されるピクセル要素)よりも少ない場合がある。これに応じて、第1ピクセル要素の行の位置が、割り当てられた時間内に遷移を起こすために印加されるべき電圧と同様に、現在のピクセル値からターゲットピクセル値へと遷移すべき時間の量に影響を及ぼす場合がある。
【0080】
表示デバイスは、第1時刻の前に、第1ピクセル要素に第1電圧を印加する場合があり(840)、第1時刻において1以上の光源を発光させてピクセルアレーを照射する場合がある(850)。例えば、第1電圧を印加されると、第1ピクセル要素はターゲットピクセル値に向けて遷移を開始する場合がある。しかしながら、第1ピクセル要素は、その行の位置によっては、表示期間の開始までにターゲットピクセル値で安定する場合も、しない場合もある。例えば、ターゲット電圧を印加されたときに、第1ピクセル要素が、表示期間の開始までにターゲットピクセル値で安定する場合がある。オーバードライブ電圧を印加されたときには、第1ピクセル要素は表示期間の開始時においてターゲットピクセル値に到達し得るが、しかし表示期間の後においても遷移し続ける場合がある(例えば、最終的にはターゲットピクセル値よりも高い、あるいは、低いピクセル値に安定する)。しかしながら、ピクセル要素は表示期間の間にのみ照明されるため、表示期間の前又は後に現れたピクセル値の如何なる変化も、ユーザによって視認されないであろう。
【0081】
図9は、ピクセルアレーのピクセル要素に選択的にオーバードライブ電圧を印加する処理例900を表す例示的なフローチャートである。図2、5A、5B、及び、7を参照して、処理例900はオーバードライブ回路部240及び/又はプログレッシブオーバードライブ制御器500A、500B、及び/又は700によって実行され得る。いくつかの実施形態では、処理例900は、ピクセル要素に現在のピクセル値からターゲットピクセル値への遷移を起こす、特定のピクセル要素に印加されるべき電圧を決定するために用いられる場合がある。
【0082】
最初に、オーバードライブ回路部は、選択されたピクセル要素の行の位置を決定する場合がある(910)。例えば、行の位置は対応するピクセルアレーの特定のライン番号に対応する場合がある。いくつかの態様では、行の位置が、ピクセルアレーにおいて選択されたピクセル要素が更新される順序を示す場合がある。例えば、ピクセルアレーの個々の行は、最も低いライン番号(l)から最も高いライン番号(l)まで、(例えば、一度に一行)連続的に更新される場合がある。
【0083】
オーバードライブ回路部は、選択されたピクセル要素の行の位置を、第1閾値ライン番号ITH1と比較する場合がある(920)。例えば、第1閾値ライン番号(例えば、図4Bのラインl)は、最初にオーバードライブが適用されるピクセルアレーの行と対応する場合がある。本開示の態様は、ピクセルアレーが行ごとに更新されるため、異なるピクセル要素は、ピクセルアレーにおけるそれらの行の位置に依存して、異なる遷移時間を有する場合があることを認識している。より詳細には、行の位置が第1閾値ライン番号よりも低い(例えば、ラインlとlの間の)ピクセル要素は、次の表示期間までにそれらのターゲットピクセル値に安定するための時間を十分に有する場合がある。
【0084】
そのため、選択されたピクセル要素の行が(920において試験されたように)第1閾値ライン番号よりも低い場合、オーバードライブ回路部は、ターゲット電圧を、選択されたピクセル要素に印加するされるべきとして選択する(930)。上記で説明したように、ターゲット電圧は、選択されたピクセル要素に印加されたときに、ピクセル要素をターゲットピクセル値に安定させる電圧である場合がある。
【0085】
しかしながら、選択されたピクセル要素の行の位置が(920において試験されたように)第1閾値ライン番号よりも低くない場合、オーバードライブ回路部は、選択されたピクセル要素の行の位置を、第2閾値ライン番号ITH2とさらに比較する場合がある(940)。例えば、第2閾値ライン番号(例えば、図4A及び4Bのラインl)は、最初に最大のオーバードライブが適用されるピクセルアレーの行と対応する場合がある。本開示の態様は、ピクセル要素に印加可能な電圧の量が、ピクセル要素(又はデータドライバ)の電圧レンジによって制限され得ることを認識している。これに応じて、オーバードライブ電圧は、第2閾値ライン番号よりも高い行(たとえば、ラインlより高い)の位置を有するピクセル要素が更新される時までに飽和している場合がある。
【0086】
そのため、選択されたピクセル要素の行が(940において試験されたように)第2閾値ライン番号よりも高い場合、オーバードライブ生成回路部は、最大のオーバードライブ電圧を、選択されたピクセル要素に印加するされるべきとして選択する(950)。上記で説明したように、最大のオーバードライブ電圧は、ピクセル要素(又はデータドライバ)の電圧レンジにおいて達成可能な最高(又は最低)の電圧である場合がある。
【0087】
しかしながら、選択されたピクセル要素の行の位置が(930において試験されたように)第1閾値ライン番号と(940において試験されたように)第2閾値ライン番号の間にある場合、オーバードライブ回路部は、選択されたピクセル要素にプログレッシブオーバードライブを適用する場合がある(960)。図4A及び4Bを参照して上記で説明したように、オーバードライブの量は、ラインlからlまで、ピクセル要素の連続する行毎に漸進的に増大する場合がある。例えば、ラインlに接続されたピクセル要素は、同じピクセル値の変化を生じるために、ラインlに接続されたピクセル要素よりも高い電圧が印加され得る。いくつかの実施形態では、オーバードライブ回路部は、LUTレポジトリに記憶された1以上のルックアップテーブル(LUT)に少なくとも部分的に基づいて、選択されたピクセル要素に印加されるべきオーバードライブ電圧の量を決定する場合がある。
【0088】
図10は、ピクセル要素をターゲットピクセル値に駆動するために用いられるべきオーバードライブ電圧を決定する処理例1000を表す例示的なフローチャートである。図2、5A、5B、及び、7を参照して、処理例1000はオーバードライブ回路部240及び/又はプログレッシブオーバードライブ制御器500A、500B、及び/又は700によって実行され得る。いくつかの実施形態では、処理例1000は、ピクセル要素に現在のピクセル値からターゲットピクセル値への遷移を生じさせるために、特定のピクセル要素に印加されるべき電圧を決定するために用いられる場合がある。
【0089】
オーバードライブ回路部は、最初に、オーバードライブインデックスを受信する場合がある(1010)。いくつかの態様では、オーバードライブインデックス503は、駆動されるべきピクセル要素に関連するライン番号又は行番号に少なくとも部分的に基づいて決定される場合がある。しかしながら、他の要因もまた、ピクセル値の所望の変動をフレーム更新期間内に達成するために必要なオーバードライブ電圧の量に影響し得る。例えば、液晶の即応性は、ディスプレイの温度によって変動する場合がある。そのため、いくつかの実施形態では、オーバードライブインデックス503は、駆動されるべきピクセル要素に関連するライン又は行の番号と、ディスプレイの温度と、を含む(しかしこれに限定されない)複数の要因の組合わせに基づく場合がある。
【0090】
オーバードライブ回路部は、オーバードライブインデックスに基づいて、第1ルックアップテーブル(LUT)を選択する場合がある(1020)。例えば、オーバードライブ回路部は、複数のLUTを記憶するLUTレポジトリを備える。より詳細には、(図6を参照して説明したように)各LUTは、ピクセルアレーの対応する行のピクセル要素についての複数のオーバードライブ電圧を示す場合がある。いくつかの実施形態では、LUTレポジトリはピクセルアレーの各行について異なるLUTを記憶する場合がある。いくつかの他の実施形態では、LUTレポジトリはピクセルアレーの行のうちいくつかについて(しかし全てについてでは無い)、LUTを記憶する場合がある。オーバードライブ回路部によって選択された第1LUTは、オーバードライブインデックスによって示された行の位置(又はライン番号)と同じ又はより低いもののうち最も近い行に関連するLUTに対応する場合がある。
【0091】
オーバードライブ回路部は、更に、オーバードライブインデックスに基づいて、第2LUTを選択する場合がある(1030)。オーバードライブ回路部によって選択された第2LUTは、オーバードライブインデックスによって示された行の位置(又はライン番号)と同じ又はより高いもののうち最も近い行に関連するLUTに対応する場合がある。上記で説明したように、いくつかの実施形態では、LUTレポジトリはピクセルアレーの各行について異なるLUTを記憶する場合がある。そのような実装では、オーバードライブインデックスが示す行の位置に関連するLUTそのものが存在する場合がある。そのため、いくつかの態様では、第2LUTは第1LUTと同一である場合(例えば、オーバードライブインデックスと同じかより高いもののうちに最も近いLUTが、オーバードライブインデックスと同じかより低いもののうちに最も近いLUTと同一である場合)がある。
【0092】
オーバードライブ回路部は、第1及び第2LUTの線形補間に基づいて、補間LUTを生成する場合がある(1040)。例えば、(例えば、図6を参照して説明したように)補間LUTの各要素は、第1LUTと第2LUTの対応する要素の線形補間に基づいて生成される場合がある。そのため、オーバードライブインデックスに依存して、補間LUTにおけるオーバードライブ電圧は、(例えば、オーバードライブインデックスが第1LUTに関連する行により近いときには)第1LUTの電圧により近くなり、又は、(例えば、オーバードライブインデックスが第2LUTに関連する行により近いときには)第2LUTの電圧により近くなり得る。
【0093】
最後に、オーバードライブ回路部は、補間LUTの行及び列のバイリニア補間に基づいて、オーバードライブインデックスに関連するピクセル要素の行に印加されるべきオーバードライブ電圧を決定する場合がある(1050)。例えば、(図6に関連して説明したように)補間LUTの各セルは、ピクセルアレーの選択された行のピクセル要素を現在のピクセル値からターゲットピクセル値に駆動するために使用可能なオーバードライブ電圧をそれぞれに示す場合がある。しかしながら、いくつかの実施形態では、補間LUTは、ターゲットピクセル値と現在のピクセル値のそれぞれについて可能な全てのグレースケール値のうち一部のみを含む場合がある。そのため、いくつかの態様では、オーバードライブ回路部は、(図6に関連して説明したように)補間LUTのピクセル値を補間して、任意の現在のピクセル値から任意のターゲットピクセル値への遷移を達成するためのオーバードライブ電圧を決定する場合がある。
【0094】
当業者は、様々な異なる任意のテクノロジー及び技術を用いて、情報及び信号が表し得ることを理解するであろう。例えば、上述の説明を通して参照され得るデータ、命令、コマンド、情報、信号、ビット、記号、及び、チップは、電圧、電流、電磁波、磁界又は粒子、光場又は粒子、あるいは、これらの組合せによって表し得る。
【0095】
さらに、当業者は、本開示の態様に関連して説明された様々な例示的な論理ブロック、モジュール、回路、及び、アルゴリズムのステップが、電気的なハードウェア、コンピュータソフトウェア、及び両者の組合せとして実装し得ることを理解しよう。このハードウェアとソフトウェアの交換可能性を明確に図示するために、説明のための様々なコンポーネント、ブロック、モジュール、回路、及び、ステップが、一般に、その機能の観点で説明されてきた。このような機能がハードウェア又はソフトウェアの何れで実装されるかは、システム全体に要求される特定のアプリケーションとデザイン上の制約に依存する。当業者は説明された機能を特定のアプリケーション毎に様々な方法で実装し得るが、そのような実装上の決定が、本開示の範囲からの逸脱を生じさせると解釈されてはならない。
【0096】
本開示の態様に関連して説明された方法、手順、又はアルゴリズムは、ハードウェアにより、プロセッサによって実行されるソフトウェアモジュールにより、あるいは、両者の組合せにより、直接的に具体化され得る。ソフトウェアモジュールは、RAMメモリ、フラッシュメモリ、ROMメモリ、EPROMメモリ、EEPROMメモリ、レジスタ、ハードディスク、リムーバブルディスク、CD-ROM、または当技術分野で既知の他の形式の記憶媒体に常駐することができる。例示的な記憶媒体は、プロセッサが記憶媒体から情報を読み取り、記憶媒体に情報を書き込むことができるように、プロセッサに接続される。あるいは、記憶媒体はプロセッサに統合されてもよい。
【0097】
前述の明細書では、その具体的な例を参照して実施形態が説明されてきた。しかしながら、添付の特許請求の範囲に提示されているように、本開示のより広い範囲を逸脱することなく、それらに対して様々な変形や変更が成し得ることは明らかであろう。したがって、明細書及び図面は、限定的な意味ではなく説明としての意味で解釈される。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8
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図10