(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088749
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】ヒドロキシアルキルメチルセルロースを含む徐放性組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 47/38 20060101AFI20240625BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240625BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240625BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20240625BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20240625BHJP
A61K 31/167 20060101ALI20240625BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
A61K47/38
A61K9/14
A61K47/02
A61K9/48
A61K47/42
A61K31/167
A61P29/00
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024062326
(22)【出願日】2024-04-08
(62)【分割の表示】P 2021534784の分割
【原出願日】2019-12-17
(31)【優先権主張番号】18213429.6
(32)【優先日】2018-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】521153216
【氏名又は名称】ニュートリション アンド バイオサイエンシズ ユーエスエー 1,リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】弁理士法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピーターマン、オリバー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】剤形の全体的なサイズの減少を可能にするため、そしてその徐放性特性を損なうことなく飲み込み性を改善するために、減少された量の賦形剤と一緒に薬剤が配合される経口剤形を提供する。
【解決手段】経口投与用の徐放性組成物は、ヒドロキシアルキルメチルセルロースと一緒に混合された生理活性成分の粒子を含み、エーテル置換基は、メチル基、ヒドロキシアルキル基、及び任意選択的にメチルとは異なるアルキル基であり、ヒドロキシアルキルメチルセルロースは、0.05~1.00のMS(ヒドロキシアルキル)を有し、且つアンヒドログルコース単位のヒドロキシ基は、[s23/s26-0.2*MS(ヒドロキシアルキル)]が0.30以下であるようにメチル基によって置換され、且つヒドロキシアルキルメチルセルロースの濃度は、活性成分の乾燥重量を基準として0.1~10%である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシアルキルメチルセルロースと一緒に混合された生理活性成分の粒子を含む、経口投与用の徐放性組成物であって、エーテル置換基は、メチル基、ヒドロキシアルキル基、及び任意選択的にメチルとは異なるアルキル基であり、
前記ヒドロキシアルキルメチルセルロースは、0.05~1.00のMS(ヒドロキシアルキル)を有し、且つ
アンヒドログルコース単位のヒドロキシ基は、[s23/s26-0.2*MS(ヒドロキシアルキル)]が0.30以下であるようにメチル基によって置換され、
s23は、アンヒドログルコース単位の2位及び3位の2つのヒドロキシ基のみがメチル基によって置換されるアンヒドログルコース単位のモル分率であり、
s26は、アンヒドログルコース単位の2位及び6位の2つのヒドロキシ基のみがメチル基によって置換されるアンヒドログルコース単位のモル分率であり、且つ
ヒドロキシアルキルメチルセルロースの濃度は、前記活性成分の乾燥重量を基準として0.1~10%である、徐放性組成物。
【請求項2】
前記ヒドロキシアルキルメチルセルロースの濃度は、前記活性成分の乾燥重量を基準として0.2~5%、好ましくは0.5~4%、より好ましくは0.75~2%、さらにより好ましくは1~1.8%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ヒドロキシアルキルメチルセルロースの濃度は、前記活性成分の乾燥重量を基準として約1.5%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ヒドロキシアルキルメチルセルロースはヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、且つ[s23/s26-0.2*MS(ヒドロキシアルキル)]は0.27以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ヒドロキシアルキルメチルセルロースはヒドロキシエチルメチルセルロースであり、且つ[s23/s26-0.2*MS(ヒドロキシアルキル)]は0.30以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記ヒドロキシアルキルメチルセルロースは、1.2~2.2のDS(メチル)を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記ヒドロキシアルキルメチルセルロースは、前記活性成分の粒子が包埋されるポリマーマトリックスの少なくとも50重量%、好ましくは60~100重量%を構成する、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
界面活性剤をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記界面活性剤の濃度は、前記組成物の0.1~1.5重量%の範囲にある、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
胃液と反応して、ガスを発生させることが可能である添加剤をさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記添加剤は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属炭酸塩、例えばCaCO3又はNa2CO3から選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
乾燥粉末の形態である、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物を含む単位剤形。
【請求項14】
500~1000mgの前記活性成分を含む、請求項13に記載の単位剤形。
【請求項15】
前記活性成分は、メトホルミン、塩酸メトホルミン、アセトアミノフェン及びアセチルサルチル酸からなる群から選択される、請求項14に記載の単位剤形。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理活性成分と、ヒドロキシアルキルメチルセルロースとを含む、新規徐放性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
徐放性剤形は、パーソナルケア及び農業用途、水処理、並びに特に製薬用途などの様々な技術分野における広範囲の用途が見出された。徐放性剤形は、長期間、水性環境中に有限量の活性成分を放出するように設計されている。徐放性製薬剤形は、過量服用することなく1回の適用で持続的な用量を送達する方法を提供するため、望ましい。既知の徐放性製薬剤形は薬剤又はビタミンを含み、その放出は、例えば1つ又はそれ以上の水溶性セルロースエーテルを含み得るポリマーマトリックスによって制御される。水溶性セルロースエーテルは、錠剤の表面上で水和して、ゲル層を形成する。ゲル層の急速な形成は、内部の湿潤及び錠剤中心部の崩壊を防ぐために重要である。ゲル層が形成されると、それは錠剤中への追加的な水の侵入を制御する。外層は完全に水和し、溶解するため、内部層はそれに代わらなければならず、且つ水の流入を遅らせるため、及び薬剤拡散を制御するために十分に凝集性であり、連続的でなければならない。
【0003】
経口剤形から活性成分の徐放を提供するために一般に使用されるセルロースエーテルは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である。例えば、米国特許第4,734,285号明細書は、固体錠剤の賦形剤として微粒子サイズのHPMCを利用することによって、活性成分の放出を長期化することができることを開示する。HPMCは、ポリマーマトリックスの成分として市販の経口製薬配合物中で使用され、通常、経口剤形の30重量%~60重量%の濃度で薬剤の徐放をもたらす。
【0004】
患者の中には、特に小児若しくは高齢者、又は嚥下障害のある患者の中には、カプセル又は錠剤などの従来の経口剤形を飲み込むことが困難であるものがいることは、製薬技術における周知の課題である。特に、そのような剤形で投与される薬剤が高用量薬剤であり、市販の剤形に含まれる典型的な量の製薬賦形剤と一緒に薬剤が配合される場合、それぞれの剤形を非常に長く製造するか、又は同時に飲み込まれなければならない2つ以上の剤形に用量が分割される必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、剤形の全体的なサイズの減少を可能にするため、そしてその徐放性特性を損なうことなく飲み込み性を改善するために、減少された量の賦形剤と一緒に薬剤が配合される経口剤形を開発することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
驚くべきことに、特定の置換パターンによるヒドロキシアルキルメチルセルロースが、生理活性成分との混合物中で賦形剤として使用される場合、体温(すなわち、約37℃)における水性環境で安定なヒドロゲルを形成することが可能であり、そして活性成分の徐放がもたらされることが判明した。それが市販の配合物中で使用されるHPMCの濃度よりもはるかに低い濃度で使用される場合でも該当する。
【0007】
したがって、本発明は、ヒドロキシアルキルメチルセルロースと一緒に混合された生理活性成分の粒子を含む、経口投与用の徐放性組成物であって、エーテル置換基は、メチル基、ヒドロキシアルキル基、及び任意選択的にメチルとは異なるアルキル基であり、
ヒドロキシアルキルメチルセルロースは、0.05~1.00のMS(ヒドロキシアルキル)を有し、且つ
アンヒドログルコース単位のヒドロキシ基は、[s23/s26-0.2*MS(ヒドロキシアルキル)]が0.30以下であるようにメチル基によって置換され、
s23は、アンヒドログルコース単位の2位及び3位の2つのヒドロキシ基のみがメチル基によって置換されるアンヒドログルコース単位のモル分率であり、
s26は、アンヒドログルコース単位の2位及び6位の2つのヒドロキシ基のみがメチル基によって置換されるアンヒドログルコース単位のモル分率であり、且つ
ヒドロキシアルキルメチルセルロースの濃度は、活性成分の乾燥重量を基準として0.1~10%である、経口投与用の徐放性組成物に関する。
【0008】
驚くべきことに、[s23/s26-0.2*MS(ヒドロキシアルキル)]が0.30以下であるヒドロキシアルキルメチルセルロースエーテルは、体温において低濃度でヒドロゲルを形成することが可能であることが判明した。このため、それは徐放性剤形用の賦形剤として特に有用となり、このことは、それが長期間、剤形からの活性成分の放出を調節する機能を有することを意味する。本目的のために、これらのヒドロキシアルキルメチルセルロースは、以下、「G」(ゲル化を意味する)ヒドロキシアルキル(ヒドロキシプロピル又ははヒドロキシエチル)メチルセルロースと記載される(実施例においてはG-HPMCと略される)。対照的に、[s23/s26-0.2*MS(ヒドロキシアルキル)]が0.30より高い、METHOCEL(商標)K4M及びMETHOCEL(商標)E4Mなどの市販のHPMCグレードは、低濃度で沈澱し、体温においてヒドロゲルを形成しない。
【0009】
欧州特許第2627676B1号明細書は、0.05~1.00のMS(ヒドロキシアルキル)及び0.30以下の[s23/s26-0.2*MS(ヒドロキシアルキル)]を有するヒドロキシアルキルメチルセルロースを開示する。ヒドロキシアルキルメチルセルロースは、剤形のためのカプセル及びコーティングの製造のために提案されている。その徐放性特性を保持しながら、活性成分の濃度と比較して固体剤形中で非常に低濃度でポリマーマトリックス材料としてヒドロキシアルキルメチルセルロースを使用することができることは示唆されていない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】組成物を含有し、そして50℃で一晩乾燥させたゼラチンカプセルを900mlの0.1N HCl(pH1.1)に浸漬させた場合の、本明細書に記載されるヒドロゲル形成ヒドロキシプロピルメチルセルロース(G-HPMC)の3%溶液を含有する本発明の組成物からのアセトアミノフェン(APAP)の経時的放出を示すグラフである。
【
図2】組成物を含有するゼラチンカプセルを900mlの0.1N HCl(pH1.1)に浸漬させた場合の、METHOCEL(商標)K4M HPMCの3%溶液を含有する組成物からのアセトアミノフェン(APAP)の経時的放出を示すグラフである。湿潤カプセルからの放出は-◆-として示され、そして50℃で一晩乾燥させたカプセルからの放出は-■-として示される。
【
図3】900mlの0.1N HCl(pH1.1)に浸漬させた、METHOCEL(商標)E4M HPMCの3%溶液を含有する組成物を含有するゼラチンカプセルからのアセトアミノフェン(APAP)の経時的放出を示すグラフである。湿潤カプセルからの放出は-◆-として示され、そして50℃で一晩乾燥させたカプセルからの放出は-■-として示される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本組成物において徐放性マトリックス材料として使用されるGヒドロキシアルキルメチルセルロースエーテル中、エーテル置換基は、メチル基、ヒドロキシアルキル基、及び任意選択的にメチルとは異なるアルキル基である。
【0012】
ヒドロキシアルキル基は、同一であることも、又は互いに異なることも可能である。好ましくは、ヒドロキシアルキルメチルセルロースは、1種又は2種のヒドロキシアルキル基、より好ましくは1種又はそれ以上の種のヒドロキシ-C1~3-アルキル基、例えばヒドロキシプロピル及び/又はヒドロキシエチルを含む。有用な任意選択的なアルキル基は、例えば、エチル又はプロピルであり、エチルが好ましい。好ましい3元セルロースエーテルは、エチルヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルメチルセルロース又はヒドロキシエチルヒドロキシプロピルメチルセルロースである。好ましいGヒドロキシアルキルメチルセルロースは、Gヒドロキシプロピルメチルセルロース(G-HPMC)又はGヒドロキシエチルメチルセルロース(G-HEMC)であり、Gヒドロキシプロピルメチルセルロースが特に好ましい。
【0013】
Gヒドロキシアルキルメチルセルロースエーテルの本質的な特徴は、[s23/s26-0.2*MS(ヒドロキシアルキル)]が0.30以下、好ましくは0.27以下、より好ましくは0.25以下、例えば0.23以下であるようなアンヒドログルコース単位上のメチル基のそれらのユニークな分布である。典型的に[s23/s26-0.2*MS(ヒドロキシアルキル)]は、0.07以上、より典型的に0.10以上、そして最も典型的に0.13以上である。さらに特に、ヒドロキシエチルメチルセルロースの場合、[s23/s26-0.2*MS(ヒドロキシアルキル)]の上限は、0.30、好ましくは0.27である。ヒドロキシプロピルメチルセルロースの場合、[s23/s26-0.2*MS(ヒドロキシアルキル)]の上限は、0.30、好ましくは0.27;より好ましくは0.25、そして最も好ましくは0.23である。0.30より高いs23/s26比を有するヒドロキシアルキルメチルセルロースは室温(21~25℃)において溶解するのに対して、この置換パターンを有するヒドロキシアルキルメチルセルロースは、10℃以下の溶解温度などの低い溶解温度を有することが判明した。低い溶解温度のため、G-ヒドロキシアルキルメチルセルロースは体温で溶解することがなくて、それにもかかわらず、薬剤物質と一緒に配合される場合、おそらく膨潤のため、体温において水性液体中でヒドロゲルを形成する。
【0014】
本明細書で使用される場合、記号「*」は、掛け算演算子を表す。比率s23/s26において、s23は、アンヒドログルコース単位の2位及び3位の2つのヒドロキシ基のみがメチル基によって置換されるアンヒドログルコース単位のモル分率であり、そしてs26は、アンヒドログルコース単位の2位及び6位の2つのヒドロキシ基のみがメチル基によって置換されるアンヒドログルコース単位のモル分率である。s23の決定に関して、「アンヒドログルコース単位の2位及び3位の2つのヒドロキシ基のみがメチル基によって置換されるアンヒドログルコース単位のモル分率」という用語は、6位がメチルによって置換されないことを意味し;例えば、それらは、未置換ヒドロキシ基であることが可能であるか、又はそれらは、ヒドロキシアルキル基、メチル化ヒドロキシアルキル基、メチルとは異なるアルキル基、又はアルキル化ヒドロキシアルキル基によって置換されることが可能である。s26の決定に関して、「アンヒドログルコース単位の2位及び6位の2つのヒドロキシ基のみがメチル基によって置換されるアンヒドログルコース単位のモル分率」という用語は、3位がメチルによって置換されないことを意味し;例えば、それらは、未置換ヒドロキシ基であることが可能であるか、又はそれらは、ヒドロキシアルキル基、メチル化ヒドロキシアルキル基、メチルとは異なるアルキル基、又はアルキル化ヒドロキシアルキル基によって置換されることが可能である。
【0015】
下記の式Iは、アンヒドログルコース単位中のヒドロキシ基の番号付けを示す。式Iは、実例となる目的のためにのみ使用され、本Gヒドロキシアルキルメチルセルロースを表すわけではなく;ヒドロキシアルキル基による置換は式Iに示されない。
【化1】
【0016】
Gヒドロキシアルキルメチルセルロースは、好ましくは1.2~2.2、より好ましくは1.25~2.10、そして最も好ましくは1.40~2.00のDS(メチル)を有する。セルロースエーテルのメチル置換度、DS(メチル)は、アンヒドログルコース単位あたりのメチル基によって置換されたOH基の平均数である。DS(メチル)の決定に関して、「メチル基によって置換されたOH基」という用語は、ポリマー主鎖におけるメチル化OH基、すなわち、直接的にアンヒドログルコース単位の一部であるものを含むのみならず、ヒドロキシアルキル化後に形成されたメチル化OH基も含む。
【0017】
Gヒドロキシアルキルメチルセルロースは、0.05~1.00、好ましくは0.07~0.80、より好ましくは0.08~0.70、最も好ましくは0.10~0.60、特に0.10~0.50のMS(ヒドロキシアルキル)を有する。ヒドロキシアルキル置換度は、MS(モル置換)によって説明される。MS(ヒドロキシアルキル)は、アンヒドログルコース単位1モルあたりのエーテル結合によって結合されるヒドロキシアルキル基の平均数である。ヒドロキシアルキル化の間、複数の置換によって、側鎖が得られる可能性がある。
【0018】
ヒドロキシプロピルメチルセルロース中の%メトキシル及び%ヒドロキシプロポキシの測定は、米国薬局方(USP 32)に従って実行される。得られる値は、%メトキシル及び%ヒドロキシプロポキシである。これらを、その後、メチル置換基に関する置換度(DS)及びヒドロキシプロピル置換基に関するモル置換(MS)に変換する。塩の残留量は、変換において考慮された。ヒドロキシエチルメチルセルロースのDS(メチル)及びMS(ヒドロキシエチル)は、ヨウ化水素によるザイゼル裂開と、それに続くガスクロマトグラフィーによって行われる。(G.Bartelmus and R.Ketterer,Z.Anal.Chem.286(1977)161-190)。
【0019】
ヒドロキシアルキルメチルセルロースの製造方法は、参照によって本明細書に組み込まれる、欧州特許第2627676B1号明細書に詳細に記載される。ヒドロキシアルキルメチルセルロースの製造プロセスのいくつかの態様は、以下のより多くの一般用語に記載される。
【0020】
一般的に、セルロースパルプに、又はヒドロキシアルキルメチルセルロースへのセルロースパルプの反応が進行した場合、部分的に反応したセルロースパルプは、2段階以上の段階で、好ましくは2段階又は3段階で、アルカリ金属水酸化物、より好ましくは水酸化ナトリウムの水性アルカリ性溶液を含む1つ又はそれ以上の反応器中でアルカリ化される。水性アルカリ性溶液は、水性アルカリ性溶液の全重量に基づき、好ましくは、30~70パーセント、より好ましくは35~60パーセント、最も好ましくは48~52パーセントのアルカリ金属水酸化物含有量を有する。
【0021】
一実施形態において、ジメチルエーテルなどの有機溶媒は、希釈剤及び冷却剤として反応器に添加される。同様に、反応器のヘッドスペースは、任意選択的にセルロースエーテル生成物の酸素によって触媒作用を及ぼされる解重合を制御するために、不活性気体(窒素など)でパージされる。
【0022】
典型的に、セルロース中のアンヒドログルコース単位1モルあたり1.2~2.0モル当量のアルカリ金属水酸化物が第1段階において添加される。パルプの均一な膨潤及び分布は、任意選択的に混合及びかき混ぜによって制御される。第1段階において、アルカリ金属水酸化物剤の添加の速度は、あまり重要ではない。それを数回に分けて、例えば2~4回にわけて、又は連続的に添加することができる。アルカリ金属水酸化物をセルロースパルプと接触させる第1段階の温度は、典型的に約45℃以下に保持される。アルカリ化の第1段階は、典型的に15~60分間継続される。
【0023】
塩化メチル又は硫酸ジメチルなどのメチル化剤も、典型的にアルカリ金属水酸化物の添加の後にセルロースパルプに添加される。メチル化剤の総量は、一般に、アンヒドログルコース単位1モルあたり2~5.3モルである。メチル化剤を、セルロースパルプに、又はヒドロキシアルキルメチルセルロースへのセルロースパルプの反応が進行した場合、部分的に反応したセルロースパルプに単一段階で添加することができるが、好ましくはそれは2段階以上の段階で、より好ましくは2段階又は3段階で、最も好ましくは2段階で添加される。
【0024】
メチル化剤を単一段階で添加する場合、一般に、それは、アンヒドログルコース単位1モルあたり3.5~5.3モルのメチル化剤の量で添加されるが、いずれにしても、それは、反応混合物を加熱する前に、アルカリ金属水酸化物の添加された全モル量と比較して、少なくとも等モル量で添加される。メチル化剤を単一段階で添加する場合、それは、好ましくは、1分あたりアンヒドログルコース単位1モルあたり0.25~0.5モル当量のメチル化剤の速度で添加される。
【0025】
メチル化剤を2段階で添加する場合、第1段階において、一般に、それは、反応混合物を加熱する前に、アンヒドログルコース単位1モルあたり2~2.5モルのメチル化剤の量で添加されるが、いずれにしても、それは、アルカリ金属水酸化物添加の第1段階において添加されたアルカリ金属水酸化物のモル量と比較して、少なくとも等モル量で添加される。メチル化剤を2段階で添加する場合、第1段階のメチル化剤は、好ましくは、1分あたりアンヒドログルコース単位1モルあたり0.25~0.5モル当量のメチル化剤の速度で添加される。単一段階、又は第1段階のメチル化剤は、懸濁化剤と予混合されていてもよい。この場合、懸濁化剤とメチル化剤との混合物は、メチル化剤及び懸濁化剤の全重量に基づき、好ましくは、20~50重量パーセント、より好ましくは30~50重量パーセントの懸濁化剤を含む。セルロースをアルカリ金属水酸化物及びメチル化剤と接触させたら、反応温度を、典型的に30~80分間、より典型的に50~70分間の期間で、約70~85℃、好ましくは約75~80℃の温度まで増加させ、そしてこの温度で10~30分間、反応させる。
【0026】
メチル化剤を2段階で添加する場合、第2段階のメチル化剤は、一般に、反応混合物を10~30分間、約70~85℃の温度まで加熱した後に反応混合物に添加される。第2段階のメチル化剤は、一般に、アンヒドログルコース単位1モルあたり1.5~3.4モルの量で添加されるが、いずれにしても、それは、反応混合物中に存在するアルカリ金属水酸化物のモル量と比較して、少なくとも等モル量で添加される。したがって、第2段階のメチル化剤は、存在する場合、アルカリ金属水酸化物がセルロースパルプと過剰量で接触しないような様式で、第2及び任意選択的に第3段階のアルカリ金属水酸化物添加の前又は後に反応混合物に添加される。第2段階のメチル化剤は、好ましくは、1分あたりアンヒドログルコース単位1モルあたり0.25~0.5モル当量のメチル化剤の速度で添加される。メチル化剤を2段階で添加する場合、第1段階のメチル化剤と第2段階のメチル化剤との間のモル比は、一般に0.68:1~1.33:1である。
【0027】
アルカリ金属水酸化物を2段階で添加する場合、典型的に、単一段階又は第1段階のメチル化剤の添加後、そして存在する場合、第2段階のメチル化剤の添加と同時に、又はその後に、アンヒドログルコース単位1モルあたり1.0~2.9モル当量のアルカリ金属水酸化物が第2段階において添加される。第1段階のアルカリ金属水酸化物と第2段階のアルカリ金属水酸化物との間のモル比は、一般に0.6:1~1.2:1である。第2段階で使用されるアルカリ金属水酸化物を、ゆっくり、すなわち、1分あたりアンヒドログルコース単位1モルあたり0.04モル当量未満のアルカリ金属水酸化物の速度で、典型的に0.03モル当量未満の速度で添加することは重要である。第2段階のアルカリ金属水酸化物は、一般に、55~80℃、好ましくは60~80℃の温度で添加される。
【0028】
メチル化剤及びアルカリ金属水酸化物のそれぞれが2段階で添加される上記の手順の代わりに、第2段階のアルカリ金属水酸化物の一部分を添加した後、第2段階のメチル化剤を反応混合物に添加し、続いて、アルカリ金属水酸化物のその後の添加を行う。すなわち、メチル化剤は第2段階で添加され、それに続いて、アルカリ金属水酸化物の第3段階の添加が行われる。プロセスのこの実施形態において、第2及び第3段階において添加されるアンヒドログルコース1モルあたりのアルカリ金属水酸化物の総量は、一般にアンヒドログルコース単位1モルあたり1.0~2.9モルであり、好ましくは、その40~60パーセントが第2段階で添加され、そして60~40パーセントが第3段階で添加される。好ましくは、第3段階で使用されるアルカリ金属水酸化物を、ゆっくり、すなわち、1分あたりアンヒドログルコース単位1モルあたり0.04モル当量未満のアルカリ金属水酸化物の速度で、典型的に0.03モル当量未満の速度で添加する。第3段階のメチル化剤及びアルカリ金属水酸化物は、一般に55~80℃、好ましくは65~80℃の温度で添加される。
【0029】
1種又はそれ以上、好ましくは1種又は2種のヒドロキシアルキル化剤、例えばエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドも、セルロースパルプに、又はヒドロキシアルキルメチルセルロースへのセルロースパルプの反応が進行した場合、部分的に反応したセルロースパルプに、第1段階において添加されるアルカリ金属水酸化物の前、後又はそれと同時に添加される。好ましくは、1種のみのヒドロキシアルキル化剤が使用される。ヒドロキシアルキル化剤は、一般に、アンヒドログルコース単位1モルあたり0.2~2.0モルのヒドロキシアルキル化剤の量で添加される。ヒドロキシアルキル化剤は、有利には、反応混合物を反応温度まで加熱する前に、すなわち、30~80℃、好ましくは45~80℃の温度で添加される。
【0030】
メチル化剤とは異なる追加的なアルキル化剤が、第1段階において添加されるアルカリ金属水酸化物の前、後又はそれと同時に、セルロースパルプに添加されてもよい。有用なアルキル化剤は、エチル化剤、例えば塩化エチルである。追加的なアルキル化剤は、一般に、アンヒドログルコース単位1モルあたり0.5~6モルのアルキル化剤の量で添加される。アルキル化剤は、有利には、反応混合物を反応温度まで加熱する前に、すなわち、30~80℃、好ましくは45~80℃の温度で添加される。
【0031】
塩及び他の反応副産物を除去するために、ヒドロキシアルキルメチルセルロースを洗浄する。塩が可溶性であるいずれの溶媒も利用されてよいが、水が好ましい。ヒドロキシアルキルメチルセルロースは反応器中で洗浄されてもよいが、好ましくは反応器の下流に位置する別々の洗浄機において洗浄される。洗浄の前又は後に、残留する有機含有量を減少させるために、蒸気に曝露することによってヒドロキシアルキルメチルセルロースがストリッピングされてもよい。
【0032】
ヒドロキシアルキルメチルセルロース及び揮発性物質の重量の合計に基づき、好ましくは約0.5~約10.0重量パーセントの水、より好ましくは約0.8~約5.0重量パーセントの水及び揮発性物質の減少された水及び揮発性物質含有量になるまで、ヒドロキシアルキルメチルセルロースを乾燥させる。水及び揮発性物質含有量を減少させることによって、ヒドロキシアルキルメチルセルロースを粒子形態へとミル粉砕することが可能となる。ヒドロキシアルキルメチルセルロースは、所望のサイズの微粒子へとミル粉砕される。必要に応じて、乾燥及びミル粉砕は同時に行われてもよい。
【0033】
上記プロセスによって、一般に、2.55秒-1の剪断速度で、Haake RS600中、20℃において1.5重量%水溶液中で決定された場合に150mPa・秒超、好ましくは500~200,000mPa・秒、より好ましくは500~100,000mPa・秒、最も好ましくは1,000~80,000、特に1,000~60,000の粘度を有するヒドロキシアルキルメチルセルロースが得られる。
【0034】
20℃及び2.55秒-1の剪断速度において1.5重量%水溶液中で決定された場合に150mPa・秒より高い粘度を有する本発明のGヒドロキシアルキルメチルセルロースが高いゲル強度を有することが判明した。Gヒドロキシアルキルメチルセルロースの水溶液がG’/G’’≧1によって特徴づけられる場合、すなわち、それがゲルを形成する場合、ゲル強度は貯蔵弾性率G’として測定される。20℃及び2.55秒-1の剪断速度において1.5重量%水溶液中で決定された場合に150mPa・秒より高い粘度を有するGヒドロキシアルキルメチルセルロースは、一般に、80℃において1.5重量パーセント水溶液として測定された場合、少なくとも50Pa、好ましくは少なくとも100Pa、より好ましくは少なくとも150、最も好ましくは少なくとも200Paの貯蔵弾性率G’を有する。そのような貯蔵弾性率G’は、一般に、MS(ヒドロキシアルキル)が>0.30及び最高1.00まで、より典型的に最高0.80まで、最も典型的に最高0.60までの範囲内にある場合に達成される。MS(ヒドロキシアルキル)が0.05~0.30の範囲内にある場合、本ヒドロキシアルキルメチルセルロースは、一般に、80℃において1.5重量パーセント水溶液として測定された場合、少なくとも100Pa、好ましくは少なくとも150Pa、より好ましくは少なくとも200Pa、最も好ましくは少なくとも250Pa、そして多くの場合、少なくとも300Paの貯蔵弾性率G’を有する。最適化された条件において、80℃において1.5重量パーセント水溶液として測定された場合、最高20,000Paまで、典型的に最高10,000Paまで、より典型的に最高5,000Paまでの貯蔵率を達成可能である。上記で定義された通り、20℃及び2.55秒-1の剪断速度において1.5重量%水溶液中で決定された場合に150mPa・秒より高い粘度を有するGヒドロキシアルキルメチルセルロースのゲル強度は、相当する粘度及び種類並びに置換の百分率を有する比較セルロースエーテルのゲル強度より高い。このことによって、それらは、固体徐放性剤形を製造するためのポリマーマトリックス材料として高度に有利となる。
【0035】
別の態様において、ヒドロキシアルキルメチルセルロースの粘度は、ASTM D2363-79(Reapproved 2006)に従って、20℃において2重量%水溶液として測定した場合、典型的に2~200mPa・秒、好ましくは2~100mPa・秒、より好ましくは2.5~50mPa・秒、特に3~30mPa・秒である。そのような低粘度ヒドロキシアルキルメチルセルロースは、活性成分がポリマーのマトリックス中に包埋される固体剤形の製造のために特に有用である。そのようなヒドロキシアルキルメチルセルロースは、同一粘度及び水溶液中濃度の既知のヒドロキシアルキルメチルセルロースよりも、水溶液中で低いゲル化温度を有する。ゲル化温度は、MS(ヒドロキシアルキル)次第である。低粘度Gヒドロキシプロピルメチルセルロース又は低粘度Gヒドロキシエチルメチルセルロースなどの低粘度Gヒドロキシアルキルメチルセルロースの20重量%水溶液は、一般に次の関係[(ゲル化温度[℃]/1[℃])-(150*MS(ヒドロキシアルキル)]<20、好ましくは<10、より好ましくは<0、最も好ましくは<-5に適合することが判明した。ここでは、ゲル化温度は、G’/C’’=1である℃での温度であり、G’は貯蔵弾性率であり、そしてG’’は、セルロースエーテルの20重量%水溶液の損失弾性率である。水溶液のゲル化を引き起こすために本発明のそのような低粘度セルロースエーテルの20重量%水溶液を加熱する場合、沈殿は検出されない。
【0036】
それぞれ、セルロースエーテルの20重量%水溶液の貯蔵弾性率G’、損失弾性率G’’及びG’/G’’=1のゲル化温度は、振動剪断流において、ペルティエ温度制御システムを用いて、Anton Paar Physica MCR 501を使用する温度スイープ実験で測定される。1mmの測定間隙を有する平行プレート(PP-50)ジオメトリーを使用する。ジオメトリーは、ジオメトリー周囲に金属環(内径65mm、幅5mm及び長さ15mm)で被覆され、そして溶液の外側表面はパラフィン油で被覆される。2Hzの一定振動数、及び5℃~75℃まで、又は5℃がG’及びG’’の交差にすでに近い場合、-2℃~75℃まで0.5%の一定歪み(変形振幅)において測定を実行する。これらの測定は、4ポイント/分のデータ収集速度で、1℃/分の加熱速度を用いて実行される。振動測定から得られる貯蔵弾性率G’は、溶液の弾性特性を表す。振動測定から得られる損失弾性率G’’は、溶液の粘性特性を表す。試料のゲル化プロセスの間、G’はG’’を上回る。G’及びG’’の交差は、ゲル化温度を表す。本発明のいくつかのセルロースエーテルは、2点のG’及びG’’の交差を示し得る。そのような場合、ゲル化温度は、G’/G’’=1の温度、及びG’/G’’=1より1℃低い温度におけるG’’>G’の温度である。
【0037】
低い粘度を有するGヒドロキシアルキルメチルセルロースは、部分的脱重合プロセスによって適切に調製され得る。部分的脱重合プロセスは周知の技術であり、例えば、欧州特許第1,141,029号明細書;同第210,917号明細書;同第1,423,433号明細書;及び米国特許第4,316,982号明細書に記載されている。或いは、部分的脱重合は、Gヒドロキシアルキルメチルセルロースの製造の間、例えば酸素又は酸化剤の存在によって達成可能である。そのような部分的脱重合プロセスにおいて、ASTM D2363-79(Reapproved 2006)に従って、20℃において2重量%水溶液として決定された場合、2~200mPa・秒、好ましくは2~100mPa・秒、より好ましくは2.5~50mPa・秒、特に3~30mPa・秒の粘度を有するGヒドロキシアルキルメチルセルロースを得ることができる。
【0038】
Gヒドロキシアルキルメチルセルロースは、徐放性剤形のための賦形剤として有用であり、すなわち、長期間、剤形からの活性成分の放出を調整する機能を有することを意味する。「徐放性」という用語は、本明細書中、「放出制御」という用語と同義的に使用される。徐放は、生理活性化合物などの活性成分を、意図された効果を達成するように設計された速度及び期間で利用可能にさせるアプローチである。Gヒドロキシプロピルメチルセルロースは、活性成分が包埋されるポリマーマトリックスの全部又は一部を形成するために有用である。ポリマーマトリックスは、剤形からの活性成分の徐放をもたらすことができる1つ又はそれ以上の他のポリマーを追加的に含んでもよい。Gヒドロキシアルキルメチルセルロースは、典型的に、ポリマーマトリックスの少なくとも50重量%、好ましくは60~100重量%、より好ましくは70~100重量%、さらにより好ましくは80~100重量%、そして最も好ましくは90~100重量%を構成する。1つ又はそれ以上の他のポリマーがポリマーマトリックス中に含まれる場合、それらは、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース又はカルボキシメチルセルロースなどのセルロースエーテルから選択され得るか、或いはそれらは、アルギン酸ナトリウム又はアルギン酸カルシウムなどの他の多糖類から選択されてもよい。
【0039】
Gヒドロキシアルキルメチルセルロースは、徐放性剤形、特に所望の血漿プロファイルを達成するために活性成分の吸収速度を制御するための薬剤又は他の生理活性成分の経口投与、及び消化管中へのその放出が意図される剤形に含まれてよい。剤形中のGヒドロキシアルキルメチルセルロース及び活性成分の合計量は、剤形の乾燥重量を基準として、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは少なくとも90%であり、そして剤形の乾燥重量を基準として、好ましくは最高100%まで、より好ましくは最高98%まで、最も好ましくは最高95%までである。剤形は、剤形から全て又はほぼ全ての活性成分を放出するために4~30時間、好ましくは8~24時間などの長期間をかけての活性成分の遅く連続的な放出を介して、変動が減少した状態で、血漿中一定又はほぼ一定濃度の活性成分を提供するように設計されている。
【0040】
ポリマーマトリックスが部分的に、又は完全にGヒドロキシアルキルメチルセルロースから形成される錠剤及びカプセルなどの徐放性剤形は、少なくとも4時間、好ましくは少なくとも6時間、そして最適化条件下では少なくとも8時間などの長期間にわたって損傷がないままであることが判明した。理論に束縛されることを望まないが、Gヒドロキシアルキルメチルセルロースが水和し、体温において水性液体との接触時に剤形の外側表面上で強膨張層を形成すると考えられる。強膨張層は、剤形の腐食によって引き起こされる活性成分の放出を最小化する。錠剤又はカプセル含有物が分散しない(すなわち、任意の有意な程度まで分離しない)ため、活性成分の放出は、剤形の外側表面上のGヒドロキシアルキルメチルセルロースの水和によって形成された膨張層からの遅い拡散によって制御される。強膨張層は徐放性剤形中への水の侵入を減少させ、そしてその中に水が拡散し、活性成分を溶解させる剤形の領域における水の量が減少したために、水性環境中への活性成分、特に水溶性活性成分の放出が遅くなる。
【0041】
組成物中のGヒドロキシアルキルメチルセルロースの濃度は広範な限度の間で変動し得るが、驚くべきことに、非常に低量のGヒドロキシアルキルメチルセルロースがポリマーマトリックスの全部又は部分として含まれる場合、活性成分の本質的に同一の放出速度を達成可能であることが判明した。したがって、活性成分の乾燥重量を基準として、0.1~10%、好ましくは0.2~5.0%、より好ましくは0.5~4.0%、より好ましくは0.75~2.0%、なおより好ましくは1~1.8%の濃度で単独マトリックスポリマーとして剤形中にGヒドロキシアルキルメチルセルロースが含まれる場合、約30重量%のHPMCを典型的に含有する市販の徐放性剤形と比較して、活性成分の容認できる放出速度を達成することができることが判明した。一実施形態において、Gヒドロキシアルキルメチルセルロースは、活性成分の乾燥重量を基準として約1.5%の濃度で単独マトリックスポリマーとして剤形中に含まれる。錠剤又はカプセルなどの得られた徐放性剤形はサイズがより小さく、したがって、摂取がより容易である。剤形に他の任意の賦形剤を添加することなく、満足な放出速度が得られ得ることがさらに判明したが、任意選択的に消泡剤として界面活性剤が製造プロセスの間に添加されてもよい。
【0042】
一実施形態において、組成物は、摂取時に胃液と反応し、CO2などのガスを生成させる添加剤を含む。発生したガスはヒドロゲル中に捕捉され、その結果として、胃内容物の表面に浮いて、長期の胃保持時間がもたらされる。長期の胃保持時間は、活性成分の生物学的利用能を改善して、放出の期間を増加させて、腸の高pH環境では容易に溶解しない活性成分の溶解度を改善する。胃液との接触時にガスを生成する添加剤の例は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属塩、例えばCaCO3及びNa2CO3である。添加剤の濃度は、組成物の1~5重量%の範囲、好ましくは1.5~3重量%、例えば2重量%であり得る。
【0043】
本組成物は、任意選択的に加工助剤として界面活性剤を溶液に添加して、液体希釈剤中のGヒドロキシアルキルメチルセルロースの溶液を提供することによって適切に調製され得る。次いで、粉末又は結晶形態の活性成分、及び任意選択的に1つ又はそれ以上の固体賦形剤(集合的に本明細書中「固体」と記載される)を、Gヒドロキシアルキルメチルセルロース溶液対活性成分の重量比が0.1:1~0.85:1の範囲であるように、Gヒドロキシアルキルメチルセルロースと混合してよい。液体希釈剤は、好ましくは50~100%の水を含有する水性液体であり、そして例えば、純水、又は組成物の調製の間に消泡助剤として作用する界面活性剤を含有する水から選択され得る。液体希釈剤対固体の重量比は、好ましくは0.1:1~0.75:1、0.1:1~0.70:1、0.1:1~0.65:1、0.1:1~0.60:1、0.1:1~0.60:1、0.1:1~0.55:1、0.1:1~0.50:1、0.1:1~0.45:1又は0.1:1~0.40:1の範囲にある。
【0044】
界面活性剤の添加は、低濃度の液体希釈剤を均質に分布させ、おそらく消泡及び乳化によって、平滑な高粘性半固体ペーストを製造することの補助となる。界面活性剤は、アニオン官能基を有するアニオン界面活性剤、例えば、スルフェート、スルホネート、ホスフェート及びカルボキシレート、例えばアルキル硫酸塩、例えばラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸ナトリウム(ドデシル硫酸ナトリウム、SLS又はSDS)及びアルキルエーテル硫酸塩、例えば、ラウレス硫酸ナトリウム(ラウリルエーテル硫酸ナトリウム又はSLES)及びミレス硫酸ナトリウムなど;カチオン官能基を有するカチオン界面活性剤、例えば、臭化セトリモニウム(CTAB)、塩化セチルピリジニウム(CPC)、塩化ベンザルコニウム(BAC)、塩化ベンゼトニウム(BZT)、塩化ジメチルジオクタデシルアンモニウム、臭化ジオクタデシルジメチルアンモニウム(DODAB)など;双性イオン界面活性剤、例えば、コカミドプロピルベタインなど;並びにノニオン界面活性剤、例えば、変性ポリジメチルシロキサンベースの消泡剤などのシロキサン界面活性剤、エトキシレート、グリセロールの脂肪酸エステル、ソルビトール及びサッカロースなどからなる群から選択される従来の消泡剤から選択されてよい。界面活性剤の濃度は、組成物の0.1~1.5重量%の範囲にあってよい。
【0045】
本発明の一実施形態において、活性成分と混合させたGヒドロキシアルキルメチルセルロースを含む組成物は、乾燥粉末の形態である。本明細書に添付された
図1から明らかであるように、乾燥組成物は、下記の実施例に記載される条件下で経時的に活性成分の遅い放出をもたらす。乾燥粉末は、当該技術分野において既知の様式で、混合物が10重量%未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは3重量%、特に2重量%未満、例えば1重量%未満の含水量を有するようになるまで、40~100℃の温度でGヒドロキシアルキルメチルセルロース溶液及び活性成分の混合物を乾燥させ、続いて、所望の粒径の顆粒になるまで、混合物をミル粉砕又は製粉することによって調製されてよい。乾燥粉末は、典型的に、上記で示したように活性成分の徐放を促進するGヒドロキシアルキルメチルセルロース中に部分的に又は完全に包埋された活性成分を含む顆粒を含有するであろう。
【0046】
一実施形態において、本発明は、本組成物を含む単位剤形に関する。単位剤形は、経口投与が意図されたものであり、乾燥組成物の圧縮顆粒を含む錠剤の形態であってよい。或いは、単位剤形は、上記で記載されたように調製される半固体ペーストを押出成形し、押出成形された物体を適切な径に切り分け、続いて乾燥することによって調製される錠剤、顆粒又はペレットの形態であってもよい。錠剤は、任意選択的に1つ又はそれ以上の他の賦形剤を含んでもよいが、上記で示されるように界面活性剤も任意選択的に含まれ得ることを除き、好ましくはGヒドロキシアルキルメチルセルロースが剤形中に含まれる唯一の賦形剤である。単位剤形は、好ましくはGヒドロキシアルキルメチルセルロース及び活性成分の混合物を含有する乾燥顆粒の形態で、乾燥組成物を含むカプセルでもあり得る。
【0047】
単位剤形は、1つ又はそれ以上の生理活性成分、好ましくは1つ又はそれ以上の薬剤、1つ又はそれ以上の診断薬、或いは美容目的又は栄養目的のために有用である1つ又はそれ以上の生理活性成分を含有する。「薬剤」という用語は、個体、典型的に哺乳類、特にヒト個体に投与される時に有益な予防及び/又は治療特性を有する化合物を意味する。摂取がより容易となる径で活性成分の必要量を含む単位用量を提供することが可能であるため、この剤形は、高用量薬剤、すなわち、500mg以上の単位用量で投与される薬剤を投与するために特に適切であると考えられる。高用量薬剤の例は、メトホルミン、塩酸メトホルミン、アセトアミノフェン(パラセタモール)又はアセチルサルチル酸である。したがって、各単位剤形は、典型的に500~1000mgの活性成分を含み得る。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態を以下の実施例で詳細に記載する。
【0049】
特に明記されない限り、全ての部及び百分率は、重量による。本実施例においては、以下の試験手順を用いる。
【0050】
ヒドロキシプロピルメチルセルロース中の%メトキシル及び%ヒドロキシプロポキシの測定は、米国薬局方(USP 32)に従って実行される。得られる値は、%メトキシル及び%ヒドロキシプロポキシである。これらを、その後、メチル置換基に関する置換度(DS)及びヒドロキシプロピル置換基に関するモル置換(MS)に変換する。塩の残留量は、変換において考慮された。
【0051】
ヒドロキシエチルメチルセルロースのDS(メチル)及びMS(ヒドロキシエチル)は、ヨウ化水素によるザイゼル裂開と、それに続くガスクロマトグラフィーによって決定される。(G.Bartelmus and R.Ketterer,Z.Anal.Chem.286(1977)161-190)。
【0052】
s23/s26の決定
セルロースエーテル中のエーテル置換基の決定は一般に知られており、例えば、Bengt Lindberg、Ulf Lindquist及びOlle Stenbergによる、Carbohydrate Research,176(1988)137-144,Elsevier Science Publishers B.V.,Amsterdam,DISTRIBUTION OF SUBSTITUENTS IN O-ETHYL-O-(2-HYDROXYETHYL)CELLULOSEに記載される。
【0053】
具体的には、s23/s26の決定は、以下の通りに実行される:
10~12mgのセルロースエーテルを、撹拌下、約90℃で4.0mLの乾燥分析グレードジメチルスルホキシド(DMSO)(Merck,Darmstadt,Germany、0.3nmモレキュラーシーブビーズ上で貯蔵されたもの)中に溶解し、次いで再び室温まで冷却させる。完全な可溶化を確実にするために、溶液を一晩、室温で撹拌させたままにする。セルロースエーテルの可溶化を含む全ての反応は、4mLのスクリューキャップバイアル中、乾燥窒素雰囲気を使用して実行される。可溶化後、溶解されたセルロースエーテルを22mLのスクリューキャップバイアル中に移す。アンヒドログルコース単位のヒドロキシル基あたり30倍のモル過剰量の試薬水酸化ナトリウム及びヨウ化エチルで、粉末状の水酸化ナトリウム(新たに乳棒ですったもの、分析グレード、Merck,Darmstadt,Germany)及びヨウ化エチル(分析用、銀で安定化されたもの、Merck-Schuchardt,Hohenbrunn,Germany)を添加し、そして溶液を周囲温度で3日間、暗室中、窒素下で強力に撹拌する。第1の試薬添加と比較して3倍量の試薬水酸化ナトリウム及びヨウ化エチルを添加し、室温でさらに2日間、さらに撹拌することによって、ペルエチル化を繰り返す。反応経過中の良好な混合を確実にするために、任意選択的に、反応混合物を最高1.5mLまでのDMSOで希釈することができる。5%チオ硫酸ナトリウム水溶液5mLを反応混合物中に注ぎ入れ、次いで、得られた溶液を4mLのジクロロメタンで3回抽出する。組み合わせた抽出物を2mLの水で3回洗浄する。有機相を無水硫酸ナトリウム(約1g)によって乾燥させる。濾過後、穏やかな窒素流中で溶媒を除去し、そしてさらなる試料調製まで4℃で試料を貯蔵する。
【0054】
約5mgのペルエチル化された試料の加水分解は、100℃で1時間の撹拌下、1mLの90%含水ギ酸を含む2mLのスクリューキャップバイアル中、窒素下で実行される。35~40℃の窒素流中で酸を除去し、そして撹拌下、不活性窒素雰囲気中、120℃で3時間、1mLの2M含水トリフルオロ酢酸を用いて加水分解を繰り返す。完了後、共蒸留のために約1mLのトルエンを使用して、周囲温度において窒素流中で酸を除去乾固する。
【0055】
加水分解の残留物は、撹拌下、室温で3時間、2Nアンモニア水溶液(新たに調製されたもの)中0.5M重水素化ホウ素ナトリウム0.5mLによって還元される。過剰量の試薬は、約200μLの濃酢酸の液滴添加によって破壊される。得られた溶液を約35~40℃の窒素流中で蒸発乾固させ、その後、室温で15分間、真空中で乾燥させる。粘性の残留物をメタノール中15%の酢酸0.5mL中に溶解し、室温で蒸発乾固させる。これを5回実行し、純粋なメタノールを用いて4回繰り返す。最終蒸発後、試料を室温で一晩、真空乾燥させる。
【0056】
還元の残留物を、90℃で3時間、600μLの無水酢酸及び150μLのピリジンを用いてアセチル化する。冷却後、試料バイアルにトルエンを充填し、室温において窒素流中で蒸発乾固させる。残留物を4mLのジクロロメタン中に溶解し、2mLの水中に注ぎ入れ、2mLのジクロロメタンで抽出する。抽出を3回繰り返す。組み合わせた抽出物を4mLの水で3回洗浄し、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥させる。その後、乾燥ジクロロメタン抽出物にGC分析を受けさせる。GCシステムの感度次第で、抽出物のさらなる希釈が必要となり得る。
【0057】
1.5バールのヘリウムキャリアガスを用いて操作された、J&WキャピラリーカラムDB5、30m、内径0.25mm、0.25μm相層厚を備えたHewlett Packard 5890A及び5890A Series II型のガスクロマトグラフによって、ガス-液体(GLC)クロマトグラフィ分析を実行する。ガスクロマトグラフは、1分間60℃で一定に保持し、20℃/分の速度で200℃まで加熱し、4℃/分の速度で250℃までさらに加熱し、20℃/分の速度で310℃までさらに加熱し、さらに10分間一定に保持されるという温度プロファイルでプログラムされる。インジェクター温度を280℃に設定し、そして水素炎イオン化検出器(FID)の温度を300℃に設定する。1μLの試料を0.5分のバルブ時間でスプリットレスモードで注入する。LabSystems Atlasワークステーションによってデータを入手し、処理する。
【0058】
FID検出を用いてGLCによって測定されるピーク面積から定量的なモノマー組成データが得られる。モノマーのモル応答は、下記の表に記載される通りに変更された有効炭素数(ECN)の概念と同調して算出される。有効炭素数(ECN)の概念は、Ackman(R.G.Ackman,J.Gas Chromatogr.,2(1964)173-179及びR.F.Addison,R.G.Ackman,J.Gas Chromatogr.,6(1968)135-138)によって説明され、そしてSweet et.al(D.P.Sweet,R.H.Shapiro,P.Albersheim,Carbohyd.Res.,40(1975)217-225)によって、部分的にアルキル化されたアルジトールアセテートの定量的な分析に適用される。
【0059】
【0060】
モノマーの種々のモル応答に関して補正するために、ピーク面積は、2,3,6-Meモノマーに対して応答として定義されるモル応答因子MRFモノマーによって乗算される。2,3,6-Meモノマーは、s23/s26の決定において分析された全ての試料中にそれが存在するため、参照として選択される。
MRFモノマー=ECN2,3,6-Me/ECNモノマー。
【0061】
モノマーのモル分率は、以下の式:
s23=[(23-Me+23-Me-6-HAMe+23-Me-6-HA+23-Me-6-HAHAMe+23-Me-6-HAHA];及び
s26=[(26-Me+26-Me-3-HAMe+26-Me-3-HA+26-Me-3-HAHAMe+26-Me-3-HAHA]
に従って、補正されたピーク面積を、全ての補正されたピーク面積によって分割することによって算出される。
ここで、s23は、以下の条件を満たすアンヒドログルコース単位のモル分率の合計である:
a)アンヒドログルコース単位の2位及び3位の2つのヒドロキシ基はメチル基で置換され、そして6位は置換されない(=23-Me);
b)アンヒドログルコース単位の2位及び3位の2つのヒドロキシ基はメチル基で置換され、そして6位は、メチル化ヒドロキシアルキルによって置換される(=23-Me-6-HAMe)、又は2つのヒドロキシアルキル基を含むメチル化側面鎖によって置換される(=23-Me-6-HAHAMe);及び
c)アンヒドログルコース単位の2位及び3位の2つのヒドロキシ基はメチル基で置換され、そして6位は、ヒドロキシアルキルによって置換される(=23-Me-6-HA)、又は2つのヒドロキシアルキル基を含む側面鎖によって置換される(=23-Me-6-HAHA)。
s26は、以下の条件を満たすアンヒドログルコース単位のモル分率の合計である:
a)アンヒドログルコース単位の2位及び6位の2つのヒドロキシ基はメチル基で置換され、そして3位は置換されない(=26-Me);
b)アンヒドログルコース単位の2位及び6位の2つのヒドロキシ基はメチル基で置換され、そして3位は、メチル化ヒドロキシアルキルによって置換される(=26-Me-3-HAMe)、又は2つのヒドロキシアルキル基を含むメチル化側面鎖によって置換される(=26-Me-3-HAHAMe);及び
c)アンヒドログルコース単位の2位及び6位の2つのヒドロキシ基はメチル基で置換され、そして3位は、ヒドロキシアルキルによって置換される(=26-Me-3-HA)、又は2つのヒドロキシアルキル基を含む側面鎖によって置換される(=26-Me-3-HAHA)。
【0062】
HAMCの置換基の決定の結果は、下記の表4に列挙される。HPMCのヒドロキシアルキル(HA)の場合、ヒドロキシプロピル(HP)及びメチル化ヒドロキシアルキル(HAMe)はメチル化ヒドロキシプロピル(HPMe)である。
【0063】
G-HPMCの2%純粋水溶液の製造
G-HPMCの2%水溶液を得るために、3-ウィング(ウイング=2cm)ブレード撹拌器を備えた、750rpmでオーバーヘッド研究室撹拌器を用いて撹拌しながら、(メチルセルロースの含水量を考慮しながら)ミル粉砕、製粉及び乾燥が行われた3gのG-HPMCを室温で147gの水道水(温度20~25℃)に添加した。次いで、溶液を約1.5℃まで冷却した。1.5℃の温度に達した後、溶液を750rpmで180分間撹拌した。使用又は分析の前に、溶液を氷浴中で15分間、100rpmで撹拌した。
【0064】
G-HPMCの粘度の決定
Anton Paar Physica MCR 501レオメーター並びにカップ及びボブ備品(CC-27)を用いて、5℃、10秒-1の剪断速度で、2重量%のG-HPM水溶液の一定-剪断-流粘度η(20℃、10秒-1、2重量%MC)を測定した。
【0065】
貯蔵弾性率G’、損失弾性率G’’、ゲル化温度t及びゲル強度の決定
1.5重量パーセントのセルロースエーテル水溶液の沈殿又はゲル化の温度依存的な特性を特徴づけるために、カップ及びボブセットアップ(CC-27)並びにペルティエ温度制御システムを備えたAnton Paar Physica MCR 501レオメーター(Ostfildern,Germany)を振動剪断流で使用する。これらの溶液は、粘度測定のために記載されるものと同一の溶解手順によって調製される。1℃/分の加熱速度、4点/分のデータ収集速度で、2Hzの一定振動数、及び10℃~85℃まで0.5%の一定歪み(変形振幅)において測定を実行する。振動測定から得られる貯蔵弾性率G’は、溶液の弾性特性を表す。振動測定から得られる損失弾性率G’’は、溶液の粘性特性を表す。低温で、損失弾性率G’’は貯蔵弾性率G’より高く、そして両値は、温度が増加すると、わずかに減少する。高温で沈殿が生じた場合、貯蔵弾性率は低下する。この沈殿温度は、2つの接線の交差として、ログ貯蔵弾性率G’対温度のプロットから分析される。第1の接線は、温度増加による貯蔵弾性率の減少に適合し、そして第2の接線は、1~3℃の温度領域上の貯蔵弾性率の低下に適合する。温度がさらに増加すると、貯蔵弾性率値は増加し、そして貯蔵弾性率と損失弾性率の間の交差が得られる。G’及びG’’の交差は、ゲル化温度であると決定される。本発明のいくつかのセルロースエーテルは、2点のG’及びG’’の交差を示し得る。そのような場合、ゲル化温度は、G’/G’’=1の温度、及びG’/G’’=1より1℃低い温度におけるG’’>G’の温度である。
【実施例0066】
実施例1:G-HPMCの調製
HPMCは、以下の手順によって製造された。微細製粉された木材セルロースパルプを、ジャケット付きの撹拌反応器に装填した。酸素を除去するために反応器を脱気し、窒素パージして、次いで再び脱気した。反応を2段階で実行した。第1段階において、セルロース中のアンヒドログルコース単位1モルあたり1.2モルの水酸化ナトリウムの量で50重量%の水酸化ナトリウム水溶液をセルロース上に噴霧し、そして温度を40℃に調整した。40℃で約30分間、水酸化ナトリウム水溶液及びセルロースの混合物を撹拌した後、アンヒドログルコース単位1モルあたり1.5モルのジメチルエーテル、3.5モルの塩化メチレン、及び0.33モルのプロピレンオキシドを反応器に添加した。次いで、反応器の含有物を60分間、80℃まで加熱した。80℃に達した後、第1段階の反応を20分間進行させた。
【0067】
次いで、アンヒドログルコース単位1モルあたり1.0モルの水酸化ナトリウムの量の50重量%の水酸化ナトリウム水溶液を90分間かけて添加した。添加速度は、1分あたりアンヒドログルコース単位1モルあたり0.011モルの水酸化ナトリウムであった。第2段階の添加が完了した後、反応器の含有物を120分間、80℃の温度に保持した。
【0068】
反応後、反応器を開放し、そして約50℃まで冷却した。反応器の含有物を除去し、熱水を含有するタンク中に移した。次いで、粗製HPMCをギ酸で中和し、熱水を用いて塩化物がなくなるまで洗浄し(AgNO3凝集試験によって評価する)、室温まで冷却し、空気が掃除された乾燥機中、55℃で乾燥させた。次いで、材料を製粉した。
【0069】
得られたG-HPMCは、1.50のDS(メチル)及び0.14のMS(ヒドロキシアルキル)を有し、これは24.3%のメトキシル含有量及び5.5%のヒドロキシプロポキシル含有量に相当する。G-HPMCは、20℃、10秒-1の剪断速度で2重量%溶液として測定した場合、4890MPa・秒の粘度を有し、0.18の比率s23/s26を有した。
【0070】
実施例2:G-HPMCを含む乾燥ゼラチンカプセルからのアセトアミノフェンの放出
実施例1に記載されるように調製されたG-HPMCの3重量%の水溶液を調製し、そして変性ポリジメチルシロキサンベースの消泡剤(商品名Foamstar SI2210でBASFから入手可能)を溶液に添加した。白色の均質で高度に粘性のあるペーストが得られるまで、3.5gのアセトアミノフェン(本明細書中、APAPと略される)を1.5gのG-HPMC溶液と十分混合した。ペースト中のFoamstar SI2210の含有量は0.115gであった。混合物をシリンジに充填し、ゼラチンカプセル(サイズ000)に注入し、これをその後、閉鎖し、密閉した。混合物を50℃で一晩、慎重に乾燥させた。
【0071】
乾燥カプセルを37℃で900mlの0.1N HCl(pH1.1)中に配置し、そして22時間、150rpmで振とうした。薬剤放出は、0.1mmの経路長さで、243nmの波長で測定された。
【0072】
乾燥カプセルからのAPAPの放出を
図1に示す。この図から、約90%の薬剤が21時間後に放出されたことが明らかである(図中、-●-として示す)。
【0073】
実施例3:K4M HPMCを含むゼラチンカプセルからのアセトアミノフェンの放出
METHOCEL(商標)K4M HPMC(DuPontから入手可能)の2重量%水溶液を調製し、そして変性ポリジメチルシロキサンベースの消泡剤(商品名Foamstar SI2210でBASFから入手可能)を溶液に添加した。白色の均質で高度に粘性のあるペーストが得られるまで、9.75gのアセトアミノフェン(本明細書中、APAPと略される)を5.25gのMETHOCEL(商標)K4M HPMC溶液と十分混合した。ペースト中のFoamstar SI2210の含有量は0.115gであった。混合物をシリンジに充填し、ゼラチンカプセル(サイズ000)に注入し、これをその後、閉鎖した。充填カプセルを37℃で900mlの0.1N HCl(pH1.1)中に即座に配置し、そして50時間、150rpmで振とうした。間隔を置いて250μlの試料を採取し、APAPの含有量に関して分析した。
【0074】
カプセルからのAPAPの放出を
図2に示す。この図から、約90%のAPAPが6時間以内にカプセルから放出されたことが明らかである(図中、-◆-として示す)。
【0075】
ゼラチンカプセル(サイズ000)に約1gの混合物を充填し、その後、閉鎖した。混合物を50℃で一晩、乾燥させた。乾燥カプセルを37℃で900mlの0.1N HCl(pH1.1)中に配置し、そして22時間、150rpmで振とうした。薬剤放出は、0.1mmの経路長さで、243nmの波長で測定された。
【0076】
カプセルからのAPAPの放出を
図2に示す。この図から、約90%の薬剤が1時間後に放出されたことが明らかである(図中、-■-として示す)。したがって、乾燥カプセルからの放出速度は、湿潤カプセルからの放出速度より急速である。
【0077】
したがって、マトリックスポリマーとしてMETHOCEL(商標)K4M HPMCを含有する湿潤又は乾燥カプセルは、いずれも活性成分の徐放を提供しなかった。
【0078】
実施例4:E4M HPMCを含むゼラチンカプセルからのアセトアミノフェンの放出
METHOCEL(商標)E4M HPMC(DuPontから入手可能)の2重量%水溶液を調製し、白色の均質で高度に粘性のあるペーストが得られるまで、9.75gのアセトアミノフェン(本明細書中、APAPと略される)を5.25gのMETHOCEL(商標)E4M HPMC溶液と十分混合した。混合物をシリンジに充填し、ゼラチンカプセル(サイズ000)に注入し、これをその後、閉鎖した。充填カプセルを37℃で900mlの0.1N HCl(pH1.1)中に即座に配置し、そして50時間、150rpmで振とうした。間隔を置いて250μlの試料を採取し、APAPの含有量に関して分析した。
【0079】
カプセルからのAPAPの放出を
図3に示す。この図から、約85%のAPAPがカプセルから3時間以内に放出されたこと、そして約90%のAPAPがカプセルから6時間以内に放出されたことが明らかである(図中、-◆-として示す)。
【0080】
ゼラチンカプセル(サイズ000)に約1gの混合物を充填し、その後、閉鎖した。混合物を50℃で一晩、乾燥させた。乾燥カプセルを37℃で900mlの0.1N HCl(pH1.1)中に配置し、そして22時間、150rpmで振とうした。薬剤放出は、0.1mmの経路長さで、243nmの波長で測定された。
【0081】
カプセルからのAPAPの放出を
図3に示す。この図から、約90%の薬剤が1時間後に放出されたことが明らかである(図中、-■-として示す)。したがって、乾燥カプセルからの放出速度は、湿潤カプセルからの放出速度より急速である。
【0082】
したがって、マトリックスポリマーとしてE4M HPMCを含有する湿潤又は乾燥カプセルは、いずれも活性成分の徐放を提供しなかった。