(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088754
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】生体分子回収デバイス並びに方法、生体分子分析デバイス並びに方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/26 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
C12M1/26
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024062470
(22)【出願日】2024-04-09
(62)【分割の表示】P 2020569703の分割
【原出願日】2020-01-29
(31)【優先権主張番号】P 2019014906
(32)【優先日】2019-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】519035643
【氏名又は名称】Craif株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174252
【弁理士】
【氏名又は名称】赤津 豪
(74)【代理人】
【識別番号】100158366
【弁理士】
【氏名又は名称】井戸 篤史
(72)【発明者】
【氏名】小野瀬 隆一
(72)【発明者】
【氏名】赤津 豪
(57)【要約】 (修正有)
【課題】生体分子を体液などの溶液から分離、抽出、回収する実用的な生体分子回収デバイスを提供する。
【解決手段】生体分子回収デバイスは、流体チャンバ800と、前記流体チャンバの、少なくとも一対の対向する内壁824の両方に配置されたナノワイヤ834と、を備え、前記流体チャンバは、前記ナノワイヤが配置された表面が対向するように接合された一対の基板810と、を備え、前記基板内に形成された内部空間内に、内部空間を規定する内壁とは別の構造体814を有し、前記構造体は、一つの内壁から他の内壁又は対向する内壁まで連続して構成され、前記生体分子回収デバイスにより回収する生体分子が細胞外小胞である。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体分子回収デバイスであって、
流体チャンバと、
前記流体チャンバの、少なくとも一対の対向する内壁の両方に配置されたナノワイヤと、を備え、
前記流体チャンバは、
前記ナノワイヤが配置された表面が対向するように接合された一対の基板と、
を備え、
前記基板内に形成された内部空間内に、内部空間を規定する内壁とは別の構造体を有し、
前記構造体は、一つの内壁から他の内壁又は対向する内壁まで連続して構成され、
前記生体分子回収デバイスにより回収する生体分子が細胞外小胞である、
生体分子回収デバイス。
【請求項2】
前記細胞外小胞がエクソソームである、請求項1に記載の生体分子回収デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は生体分子の回収に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の生体分子は、生体内の生理的な状態を表す指標(例えばバイマーカ)として用いることができる。生体分子を体液などの溶液から分離、抽出、回収などするには、遠心分離やフィルターなどの物理的な方法、試薬による凝集法などの化学的な方法などがある。
【0003】
しかし既存の方法では、サンプル量が少ない場合や、濃度が低い場合には、それらを検出できないことがある。また、コストがかかる手法など、実用性に欠けている場合がある。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、生体分子の回収デバイスを含む。本開示の一実施形態に係る抗原の測定方法 は、を備えていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】一実施形態に係る流体デバイスを模式的に示す断面図である。
【
図2】一実施形態に係る流体デバイスを模式的に示す断面図である。
【
図3】一実施形態に係る流体デバイスを模式的に示す断面図である。
【
図4】一実施形態に係る流体デバイスを模式的に示す断面図である。
【
図5】一実施形態に係る流体デバイスを模式的に示す断面図である。
【
図6】一実施形態に係る流体デバイスを模式的に示す断面図である。
【
図7】一実施形態に係る流体デバイスを模式的に示す断面図である。
【
図8】一実施形態に係る流体デバイスを模式的に示す断面図である。
【
図9】一実施形態に係る流体デバイスを模式的に示す断面図である。
【
図10】一実施形態に係る流体デバイスを模式的に示す断面図である。
【
図11】一実施形態に係る流体デバイスを模式的に示す断面図である。
【
図12】一実施形態に係る流体デバイスの内壁を模式的に示す上面図である。
【
図13】一実施形態に係る流体デバイスの内壁を模式的に示す上面図である。
【
図14】一実施形態に係る流体デバイスの内壁を模式的に示す上面図である。
【
図15】一実施形態に係る流体デバイスの内壁を模式的に示す上面図である。
【
図16】一実施形態に係る流体デバイスの内壁を模式的に示す上面図である。
【
図17】一実施形態に係る流体デバイスの内壁を模式的に示す上面図である。
【
図18】一実施形態に係る流体デバイスの内壁を模式的に示す上面図である。
【
図19】一実施形態に係る流体デバイスの内壁を模式的に示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
生体分子とは、生体物質であってもよい。生体物質は、生体に含まれ、生命現象に関して機能する高分子の有機化合物の総称であり、例えばたんぱく質・脂質・核酸・ホルモン・糖・アミノ酸などを指す。生体分子は、生体分子の複合体であってもよく、例えばタンパク質の複合体であってもよく、多タンパク複合体であってもよい。生体分子は核酸であってもよい。生体分子は小胞であってもよい。回収(抽出、収集など。以下、回収ともいう。)される物質は、生体分子でなくてもよく、非生体分子であってもよい。回収される物質は、無機分子、有機分子などであってもよい。
【0007】
生体分子は、リボ核酸(RNA)であってもよく、リボ核酸(RNA)を含んでいてもよい。RNAは、非限定的に、伝令RNA(メッセンジャーRNA、mRNA)、運搬RNA(トランスファーRNA、tRNA)、リボソームRNA(rRNA)、ノンコーディングRNA(ncRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボザイム、二重鎖RNA(dsRNA)などであってもよく、それらの複数を含んでいてもよい。RNAは修飾されていてもよい。RNAやmiRNAは、がん、心血管疾患、神経変性疾患、精神疾患、慢性炎症性疾患などの発症や進行に関わっていてもよい。miRNAは、がん化を促進する又は正の制御をするタイプのRNA(onco miRNA (oncogenic miRNA、がん促進型miRNA))でもよく、がん化を抑制する又は負の制御をするタイプのRNA(Tumor Suppressor miRNA(がん抑制型miRNA))でもよい。生体分子は、エクソソーム、エクソソーム複合体であってもよい。
【0008】
核酸は、デオキシリボ核酸(DNA)であってもよく、DNAを含んでいてもよい。
【0009】
生体分子は、細胞小器官であってもよく、小胞であってもよい。小胞は、非限定的に、液胞、リソソーム、輸送小胞、分泌、ガス小胞、細胞外マトリックス小胞、細胞外小胞などであってもよく、それらの複数を含んでいてもよい。細胞外小胞は、非限定的に、エクソソーム、エクソトーム、シェディングマイクロベシクル、微小小胞体、膜粒子、原形質膜、ポトーシス性水疱などであってもよい。小胞は、核酸を内容していてもよい。
【0010】
生体分子は、非限定的に、細胞であってもよく、細胞を含んでいてもよい。細胞は、赤血球、白血球、免疫細胞などであってもよい。生体分子は、ウィルス、細菌などであってもよい。
【0011】
溶液は、体液、体液由来の液体(希釈液、処理液など)であってもよい。溶液は、体液でない(非体液由来)溶液でもよく、人工的に準備された液体でもよく、体液又は体液由来の溶液と非体液由来の溶液の混合液であってもよい。溶液は、サンプル測定に使用される溶液であってもよく、校正用の測定に使用される溶液であってもよい。溶液、原液のままで使用されてもよく、または、原液を希釈若しくは濃縮された液体であってもよい。溶液は、標準液や校正液であってもよい。測定対象となる試料は、検体であってもよい。溶液は、回収される物質を含む、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)やN-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-アミノエタンスルホン酸緩衝液(TES)などの生理緩衝液を含んでいてもよい。体液は添加剤を含んでいてもよい。添加剤には、例えば、安定化剤やpH調整剤が加えられていてもあってもよい。
【0012】
「体液」は溶液であってもよい。体液は、液体状態であってもよく、固体状態例えば凍結状態であってもよい。溶液は、生体分子などの回収対象物質を含んでいてもよく、又は回収対象物質が含まれていなくてもよく、回収対象物質を測定するための物質を含んでいてもよい。
【0013】
体液は、動物の体液であってもよい。動物は、爬虫類、哺乳類、両生類であってもよい。哺乳類は、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ハムスター、ネズミ、リス、およびサル、ゴリラ、チンパンジー、ボノボ、ヒトなどの霊長類であってもよい。
【0014】
体液は、リンパ液であってもよく、組織間液、細胞間液、間質液などの組織液であってもよく、体腔液、漿膜腔液、胸水、腹水、心嚢液、脳脊髄液(髄液)、関節液(滑液)、眼房水(房水)であってもよい。体液は、唾液、胃液、胆汁、膵液、腸液などの消化液であってもよく、汗、涙、鼻水、尿、精液、膣液、羊水、乳汁であってもよい。
【0015】
「尿」とは、腎臓により生産される液体状の排泄物を意味する。尿は、尿道を介して対外に排出された液体又は物質であってもよく、膀胱内で蓄積された液体又は物質であってもよい。「唾液」とは、唾液腺から口腔内に分泌される分泌液を意味する。
【0016】
体液は、体内から注射器などの抽出器を用いて抽出又は収集・採集されてもよい。溶液は、健常対象の体液であってもよく、特定の疾患(非限定的に例えば、肺がん、肝臓がん、すい臓がん、膀胱がん、および前立腺がんなど)の対象の体液であってもよいし、特定の疾患に罹患している疑いのある対象の体液であってもよい。
【0017】
抽出とは、吸着であってもよい。デバイス又は流体チャンバ内に測定対象物質を捕捉してもよく、その内部の部分に吸着させてもよい。
【0018】
基板やスペーサなど流体チャンバや流路は、一部又は全部が、無機材料で形成されていてもよく、有機材料で形成されてもよい。基板を形成する無機材料は、例えば、金属、シリコンその他の半導体材料、ガラス、セラミックスや金属酸化物などの絶縁材料であってもよい。
【0019】
基板やスペーサなど流体チャンバや流路は、高分子材料で形成されていてもよい。高分子材料は、天然樹脂であってもよく、合成樹脂であってもよく、それらの混合物であってもよい。合成樹脂は、熱硬化性樹脂であってもよく、熱可塑性樹脂であってもよく、他の樹脂であってもよい。
【0020】
熱硬化性樹脂は、非限定的に例えば、フェノール樹脂(PF)、エポキシ樹脂(EP)、メラミン樹脂(MF)、尿素樹脂(ユリア樹脂、UF)、不飽和ポリエステル樹脂(UP)、アルキド樹脂、ポリウレタン(PUR)、熱硬化性ポリイミド(PI)などであってもよい。
【0021】
熱可塑性樹脂は、非限定的に例えば、ポリエチレン(PE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン(PS)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリウレタン(PUR)、テフロン―(ポリテトラフルオロエチレン、PTFE)、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂)、AS樹脂、アクリル樹脂(PMMA)などの汎用プラスチックであってもよく;ポリアミド(PA)、ナイロン、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE、変性PPE、PPO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、グラスファイバー強化ポリエチレンテレフタレート(GFマイナスPET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、環状ポリオレフィン(COP)などエンジニアリングプラスチックであってもよく;ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリテトラフロロエチレン(PTFE)(一般的にテフロン(登録商標)と呼ばれる。)、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、非晶ポリアリレート(PAR)、液晶ポリマ(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、熱可塑性ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)などのスーパーエンジニアリングプラスチックであってもよい。
【0022】
流路チャンバを構成する部材の一部又は全部は、平板であってもよく、曲面を有していてもよい、それ以外の形状を有していてもよい(例えば、折れ曲がっているなど)。
【0023】
いくつかの実施形態では、流路チャンバ又は流路(本開示では、単に流路チャンバとも言う。)は、複数の内壁を有していてもよい。流路チャンバ又は流路は、実質的に複数の内壁により囲まれた空間を有していてもよい。流路チャンバ又は流路は、一部における断面が多角形を有していてもよい。多角形は、例えば、3角形、4角形、5角形、6角形、8角形などであってもよい。複数の内壁は、平坦な内壁、曲面を有する内壁、それらの組み合わせで構成されていてもよい。
【0024】
いくつかの実施形態では、流路チャンバ又は流路は、内部空間を規定する内壁以外に、内部に内壁を構成する部材を有していてもよい。例えば、流路チャンバ内に壁や柱状構造を設けてもよい。それらの表面が内部内壁を構成してもよい。壁や柱状構造は、内壁から突出や凹んだ構造を有していてもよく、ある内壁から対抗する内壁又は他の内壁まで連続して内部空間を部分的に横切る構造を有していてもよい。
【0025】
いくつかの実施形態では、流路チャンバ又は流路は、曲面で連続した内壁を有していてもよい。例えば、流路チャンバ又は流路は、一部における断面が円や楕円その他の曲線で構成される形状を有していてもよい。
【0026】
いくつかの実施形態では、流路チャンバは、内壁で囲まれた閉空間を構成してもよい。溶液は開閉可能な導入口から導入されてもよい。いくつかの実施形態では、流路チャンバは、溶液の導入口と排出口を有していてもよい。いくつかの実施形態では、流路チャンバは流路として構成され、他のチャンバ又は構成要素と流体連結されていてもよい。いくつかの実施形態では、流体チャンバは、空気孔を有していてもよい。
【0027】
ナノワイヤは、それが配置された壁面に対して実質的に垂直に配置されていてもよい。ナノワイヤは、それが配置された壁面に対して非垂直に配置されていてもよい。複数のナノワイヤは、それが配置された壁面に対して異なった角度で配置されていてもよい。ナノワイヤは、それが配置された壁面に対して平行に配置されていてもよい。ナノワイヤは、分岐鎖を有していてもよい。ナノワイヤは分岐鎖のない・非分岐の一本構造を有していてもよい。複数のナノワイヤは、分岐鎖を有するナノワイヤと、非分岐のナノワイヤとを含んでいてもよい。ナノワイヤは、それが配置された壁面に、一定の間隔、周期的に配置されていてもよい。ナノワイヤは、それが配置された壁面に、ランダム又は非周期的に配置されていてもよい。ナノワイヤは、壁面上の起点から成長して形成されていてもよい。ナノワイヤは、壁面上の起点から延びるように配置されていてもよい。
【0028】
いくつかの実施形態では、ナノワイヤは、流路又は流体チャンバを形成する材料に直接固定されていてもよい。ナノワイヤは、壁面から直接成長していてもよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、ナノワイヤは、一部が壁面に埋め込まれていてもよい。ナノワイヤは、壁面に埋め込まれた成長ワイヤを起点として成長していてもよい。
【0030】
いくつかの実施形態では、ナノワイヤは壁面全体に亘って配置されていてもよい。いくつかの実施形態では、ナノワイヤは壁面の一部に配置されていてもよい。
【0031】
ナノワイヤは内壁に対して物理化学的に固定されていなくてもよい。例えば、ナノワイヤ又はその集合体が内壁に接触してあるいは内壁の近傍に配置されていてもよい。ナノワイヤは、溶液が導入されることにより巨視的に動かなくてもよく、あるいは動いてもよい。いくつかの実施形態では、ナノワイヤは、機械的に内壁に接触するように、機械的に内壁に対して実質的に接触するように、又は内壁の近傍に機械的に実質的に固定されていてもよい。例えばナノワイヤの集合体(例えば巨視的に又は顕微鏡的にシート状の集合体)は、内壁に対して、はめ込みや接着剤などを用いて固定してもよい。
【0032】
いくつかの実施形態では、ナノワイヤを形成又は成長させる基板(内壁)表面又は触媒層表面に対して、活性化処理、親水化処理、熱処理、水熱処理などの表面処理を行ってもよい。表面処理は、例えばプラズマ処理、粒子(イオン、ラジカル、中性原子など)ビーム照射、UV、EUVなどの光(電磁波)照射、電子ビーム照射、研磨などの機械的処理などであってもよい。表面処理は、例えば金属と結合してルイス酸となる酸素の存在を高める処理であってもよい。
【0033】
本明細書では、「ナノワイヤ」は、ナノメートルオーダーの断面形状や直径などのサイズ(非限定的に例えば、直径1~数百ナノメートルの直径)を有する棒状、ワイヤ状の構造体を意味する。
【0034】
ナノワイヤの材料は、無機材料であっても、有機材料であってもよい。ナノワイヤは、金属、非金属、半導体、それらの混合物若しくは合金、又はそれらの酸化物や窒化物であってもよく、含んでいてもよい。ナノワイヤの材料は、高分子材料であってもよく、高分子材料を含んでいてもよい。ナノワイヤは、ワイヤであってもよく、ウィスカであってもよく、繊維であってもよく、それらの混合物又は複合物であってもよい。
【0035】
ナノワイヤの材料に使われる金属は、非限定的に例えば、典型金属(アルカリ金属:Li、Na、K、Rb、Cs、アルカリ土類金属:Ca、Sr、Ba、Ra)、マグネシウム族元素:Be、Mg、Zn、Cd、Hg、アルミニウム族元素:Al、Ga、In、希土類元素:Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、スズ族元素:Ti、Zr、Sn、Hf、Pb、Th、鉄族元素:Fe、Co、Ni、土酸元素:V、Nb、Ta、クロム族元素:Cr、Mo、W、U、マンガン族元素:Mn、Re、貴金属(銅族、貨幣金属):Cu、Ag、Au、白金族元素:Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、天然放射性元素:UおよびThを母体とする放射能壊変産物:U、Th、Ra、Rn、アクチノイド、超ウラン元素:Np、Pu、Am、Cm、Bk、Cf、Es、Fm、Md、No等、ウラン以降の元素、又はそれらの合金などであってもよい。ナノワイヤは、上記金属又は合金の何れか一つ又は合金若しくは混合物の酸化物であってもよく、酸化物を含んでいてもよい。ナノワイヤの材料又は少なくともナノワイヤの表面(例えば被覆材)は、非限定的に例えば、ZnO、SiO2、Li2O、MgO、Al2O3、CaO、TiO2、Mn2O3、Fe2O3、CoO、NiO、CuO、Ga2O3、SrO、In2O3、SnO2、Sm203、およびEuOなどであってもよい。
【0036】
ナノワイヤの成長方法はパルスレーザーデポジション、VLS(Vapor-Liquid-Solid)法等の物理蒸着法、CVD(Chemical-Vapor-Deposition)法、アーク放電法、レーザー蒸発法、有機金属気相選択成長法や水熱合成法、反応性イオンエッチング法、焼成法、溶融法であっても良い。
【0037】
ナノワイヤは電荷を帯びていてもよい。ナノワイヤは、回収又は抽出する物質の有する電荷と反対の電荷を有していてもよい。それにより、非限定的な例示として、細胞外小胞体、核酸などの電荷を有する生体分子を効率よく、引き寄せ又吸着させることができる。
【0038】
ナノワイヤは、流路又は流体チャンバを形成する材料に対して他の材料又は部材を介して固定されていてもよい。ナノワイヤと壁面材料との間の材料は、ナノワイヤ成長のための触媒を有していてもよく、非触媒材料であってもよい。
【0039】
ナノワイヤは、触媒層、接着層、成長核を介して成長していてもよい。「層」は薄膜であってもよい。「層」は連続する膜であってもよい。「層」は非連続であってもよい。「層」は連続する膜であって、膜は穴を有していてもよい。「層」は、複数の互いに離れた薄膜であってもよい。「層」は、島であってもよく、島を含んでいてもよい。「層」は、粒子であってもよく、粒子を含んでいてもよい。
【0040】
触媒層、接着層、成長核は、金属であってもよく、合金であってもよく、非金属であってもよく、半導体であってもよく、それらの酸化物、窒化物などであってもよく、それらの混合物であってもよい。金属は、非限定的に、典型金属(アルカリ金属:Li、Na、K、Rb、Cs、アルカリ土類金属:Ca、Sr、Ba、Ra)、マグネシウム族元素:Be、Mg、Zn、Cd、Hg、アルミニウム族元素:Al、Ga、In、希土類元素:Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、スズ族元素:Ti、Zr、Sn、Hf、Pb、Th、鉄族元素:Fe、Co、Ni、土酸元素:V、Nb、Ta、クロム族元素:Cr、Mo、W、U、マンガン族元素:Mn、Re、貴金属(銅族、貨幣金属):Cu、Ag、Au、白金族元素:Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、天然放射性元素:UおよびThを母体とする放射能壊変産物:U、Th、Ra、Rn、アクチノイド、超ウラン元素:Np、Pu、Am、Cm、Bk、Cf、Es、Fm、Md、No等、ウラン以降の元素。酸化物は、それらの何れか一つ又は合金の酸化物であってもよい。
【0041】
ナノワイヤの成長核は、壁面材料と異なる材料で形成されていてもよい。ナノワイヤの成長核は、ナノワイヤと異なる材料で形成されていてもよい。ナノワイヤの成長核は、壁面材料と実質的に同じ材料で形成されていてもよい。ナノワイヤの成長核は、例えば、構造的に凹凸を有する表面であってもよい。ナノワイヤの成長核は、例えば、化学的に部分部分で異なる性質を有する表面であってもよい。機械的、構造的又は化学的に異なる(まだらな)表面は、ある部分で他の部分より、ナノワイヤの成長核となりやすい場合がある。例えば、リソグラフィとドライ・ウェットエッチングなので凹凸を形成してもよい。例えば、イオンや中性原子、プラズマなどを照射することで機械的、構造的又は化学的に異なる(まだらな)表面を形成してもよい。
【0042】
ナノワイヤの長さは、非限定的に例えば、500nm、1μm、1.5μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、10μm、11μm、12μm、13μm、14μm、15μm、17μm、20μmなどの値より大きくてもよく、それ以上でもよい。ナノワイヤの長さは、非限定的に例えば、1μm、1.5μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、10μm、11μm、12μm、13μm、14μm、15μm、17μm、20μm、50μm、100μm、200μm、などの値より小さくても、それ以下でもよい。
【0043】
ナノワイヤの直径(又は太さ方向のサイズ)、非限定的に例えば、5nm、10nm、15nm、20nm、25nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、150nm、200nm、250nm、300nm、400nm、500nmなどの値より大きくてもよく、それ以上でもよい。ナノワイヤの直径(又は太さ方向のサイズ)、非限定的に例えば、10nm、15nm、20nm、25nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、150nm、200nm、250nm、300nm、400nm、500nm、1μmなどの値より小さくてもよく、それ以下でもよい。
【0044】
ナノワイヤの材料に使われる高分子は、非限定的に例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ポリヂメチルシロキサン(PDMS)、導電高分子ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)などであってもよい。
【0045】
ナノワイヤは、繊維材料であってもよく、繊維材料を含んでいてもよい。繊維材料は、合成繊維であってもよく、天然繊維であってもよく、それらの混合物又は混合繊維であってもよい。繊維材料は、非限定的に例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアクリル、ポリアミド、共重合ポリエステル系繊維、ポリオレフェン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維などであってもよい。繊維材料は、非限定的に例えば、木綿、麻、へちま等の植物繊維であってもよい。ナノワイヤに用いられる繊維材料は、織物であってもよく、不織布であってもよい。いくつかの実施形態では、ナノワイヤは、繊維材料の積層体であってもよい。いくつかの実施形態では、ナノワイヤは、短繊維の構造体であってもよい。短繊維の長さはランダムであってもよく、気息性を有していてもよい。短繊維軸がランダムに配列されていてもよく、規則的に配列されていてもよい。いくつかの実施形態では、合成繊維は、低融点材料であってもよい。低融点材料は、非限定的に例えば、共重合ポリエステル系繊維、ポリオレフェン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維などであってもよい。いくつかの実施形態では、合成繊維は、が低融点ポリマを備える芯構造を有していてもよい。
【0046】
ナノワイヤを有する一対の対抗する壁面の間隔は、ナノワイヤの長さ(又はナノワイヤが配置されている面の垂線方向のサイズ、以下同様)の2倍であってもよく、2倍未満であってもよく、1.5倍であってもよく、2倍以上であってもよく、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍であってもよく、それらより大きくてもよい。
【0047】
ナノワイヤを有する一対の対抗する壁面の間隔は、ナノワイヤの長さの10倍、9倍、8倍、7倍、6倍、5倍、4倍、3倍など未満又は以下であってもよい。
【0048】
以下、図面を用いていくつかの実施形態について説明する。
【0049】
図1に、一実施形態に係る流路デバイス(流体チャンバ)100の断面図を示す。
図1の流路チャンバ100の基板110内に断面が四角形の内部空間が形成されている。対抗する内壁121,122にナノワイヤ131,132が形成されている。
【0050】
いくつかの実施形態では、例えば
図1のように、1つの部材内部に空間を形成してもよい。いくつかの実施形態では、内部空間は、複数の部材を組み合わせることにより、内部空間を形成又は規定してもよい。
【0051】
図2に、一実施形態に係る流体チャンバ200の断面図を示す。
図2の流路チャンバ200は、平坦な第一基板211と凹部を有する第二基板212との組み合わせで構成されている。これらの基板の組み合わせにより内部空間が規定されている。第一基板211の内壁面221にナノワイヤ231が形成されている。第二基板212の凹部の底面であり第一基板の内壁面221と対抗する位置にある内壁面222にナノワイヤ232が形成されている。
【0052】
図3に、一実施形態に係る流体チャンバ300の断面図を示す。
図3の流体チャンバ300は、平坦な第一基板311と、平坦な第二基板312とを、それらの間にスペーサ313を挟んで組み合わされることで構成されている。すなわち、第一基板311と、第二基板312とスペーサとで内部空間が規定されている。第一基311の内壁面321にナノワイヤ331が形成されている。第一基板311の内壁面321と対向する第二基板312の内壁面322にナノワイヤ332が形成されている。
【0053】
ナノワイヤは、3つ以上の内壁面に形成されてもよい。ナノワイヤは、流体チャンバを規定するすべての内壁面に形成されてもよい。
【0054】
図4に、一実施形態に係る流体チャンバ400の断面図を示す。流体チャンバ400は、基板410の内部に形成された内部空間を有し、その断面は4角形である。基板410は、内壁421,422,423,424を有し、これらの内壁により内部空間が規定されている。
図4では、これらの内壁421,422,423,424にそれぞれ、ナノワイヤ431,432,433,434が形成されている。
【0055】
いくつかの実施形態では、内部空間を構成する内壁の数を規定できなくてもよい。いくつかの実施形態では、内部空間は曲面で形成されていてもよい。
【0056】
図5に、一実施形態に係る流体チャンバ500の断面図を示す。流体チャンバ500は、基板510内に断面が円形の内部空間を有する。曲面(球面、又は円柱状の内面)内壁521にナノワイヤ531が形成されている。
【0057】
いくつかの実施形態では、一つ又は複数の内壁は、凹凸を有していてもよい。
【0058】
図6に、一実施形態に係る流体チャンバ600の断面図を示す。流体チャンバ600は、平坦な第一基板611と、巨視的には平坦であって内壁上に凹凸を有する第二基板612とを、それらの間にスペーサ613を挟んで組み合わされることで構成されている。第一基板611の内壁621にナノワイヤ631が形成されている。第二基板612の内壁622は凸部622aと凹部又は底面622bとを有している。凸部622aにナノワイヤ632aが形成され、底面622bにもナノワイヤ632bが形成されている。
【0059】
図7に、一実施形態に係る流体チャンバ700の断面図を示す。流体チャンバ700は、平坦な第一基板711と、巨視的には平坦であって内壁上に凹凸を有する第二基板712とを、それらの間にスペーサ713を挟んで組み合わされることで構成されている。凸部722aにはナノワイヤが形成されておらず、底面722bにナノワイヤ732が形成されている。
【0060】
いくつかの実施形態では、凹凸を有する内壁面すべてにナノワイヤが形成されていてもよく、そのすべてに形成されていなくてもよく、凹凸面の一部にナノワイヤが形成されていてもよい。
図6に示す流体チャンバ600では、凸部の内部空間に向かう面622aと、凹部又は底面622bとにナノワイヤ632a,632bが形成されている。
図7に示す流体チャンバ700では、凹部722bにナノワイヤ732が形成されている。いくつかの実施形態では、凹凸部の横面にナノワイヤを形成されていてもよい(不図示)。
【0061】
図8に、一実施形態に係る流体チャンバ800の断面図を示す。流体チャンバ800は、基板810内に形成された内部空間内に、内部空間を規定する内壁とは別の構造体814を有している。構造体814は、一つの内壁から他の内壁又は対向する内壁まで連続して構成されている。この構造体814の表面(内壁と呼んでもよい)824にナノワイヤ834が形成されている。
【0062】
図9に、一実施形態に係る流体チャンバ900の断面図を示す。流体チャンバ900は、基板910内に形成された内部空間内に、内部空間を規定する内壁とは別の構造体914を有している。
図9に示す流体チャンバ900では、構造体924の表面にナノワイヤが形成されていない。内壁921にナノワイヤ931が形成されている。
【0063】
内部空間の外枠を規定する内壁以外に、凹凸部や構造体が配置されていてもよい。これらの凹凸部や構造体と内部空間の外枠を規定する内壁との表面をすべて、内壁と呼んでもよい。内部空間の外枠を規定する内壁との表面、凹凸部や構造体の表面を別の内壁と定義してもよい。
【0064】
凹凸部や構造体と内部空間の外枠を規定する内壁との表面すべてに、ナノワイヤが形成されていてもよく、それらの一部の内壁にナノワイヤが形成されていてもよい。ナノワイヤが形成されている内壁には、その全面にナノワイヤが形成されていてもいく、一部又は部分的にナノワイヤが形成されていてもよい。
【0065】
いくつかの実施形態では、内部空間内に配置された凹凸や構造体が、いわゆるカオティックミキサ(カオス混合器)であってもよく、内部空間を流れる流体に対して、非線形的及び/又は3次元的流動を起こさせる構造を有していてもよい。そのような構造は、例えば、流路内に段差や断面積の変化、流路の向きの変更などを有していてもよい。
【0066】
図10に、一実施形態に係る流体チャンバ1000の断面図を示す。流体チャンバ1000は、流路であってもよい。
図10の矢印の方向に溶液が流れる。流路1000は、対向する内壁1021,1022を有している。内壁1021は凹部1021がある。矢印の方向に流れてきた内壁面1021aと凹部1021bとの段差により、流れの向きが変わり非線形な流れになる。これにより、例示的に、溶液内の物質は、ナノワイヤ1031,1032と接触又はその近傍に到達する確率が上がると考えられる。
【0067】
段差や断面積の変化、流路の向きの変更を与える構造は、一つの内壁に設けられてもよく、少なくとも一つの内壁、又は複数の内壁に設けられてもよい。
【0068】
図11に、一実施形態に係る流体チャンバ1100の断面図を示す。流体チャンバ11には、対向する内壁に段差が設けられている。対向する内壁1121a,1122aの両方に凹部1121b,1122bが、それぞれ流路方向にずらして配置されている。通常の内壁面1121a,1122a上と、凹部1121b,1122bにもナノワイヤ1131a,1131b,1132a,1132bが配置されている。これにより、例示的に、矢印の方向に流れる溶液内の物質は、ナノワイヤと接触又はその近傍に到達する確率が上がると考えられる。
【0069】
カオティックミキサのような凹凸構造又は構造体は、種々の構成を取り得る。例えば、内壁に対して凹部を形成してもよい。凹部はストライプ状(溝)に形成されてもよい。凹部は、複数の互いに平行なストライプとして形成されてもよい。ストライプ状の凹部は、溶液が流れる方向に対して平行でもよく、角度を有していてもよい。その角度は、実質的に垂直でもよく、0度から90度の間の角度であってもよい。
【0070】
図12に、一実施形態に係る流路1200の一つの内壁の上面図を示す。内壁1221aに、凹部又は溝1221bがストライプ状に平行に繰り返して形成されている。凹部1221bは、その長手方向が矢印で示された溶液が流れる方向に対して角度を有するように配置されている。
【0071】
カオティックミキサのような凹凸構造又は構造体は、線状であってもよく、折り曲がった形状でもよい。
【0072】
図13に、一実施形態に係る流路1300の一つの内壁の上面図を示す。内壁1321aに、凹部又は溝1321bがストライプ状で一部下り曲がっていて、かつ互いに平行に繰り返して形成されている。凹部1321bは、その長手方向が矢印で示された溶液が流れる方向に対して角度を有するように配置されている。このような配置は、へリングボーン形状と呼んでもよい。
【0073】
図14に、一実施形態に係る流路1400の一つの内壁の上面図を示す。内壁1421aに、凹部又は溝1421bがストライプ状で一部下り曲がっている構造が、その折曲がり部分が互い違いにずれながら、連続して形成されている。
【0074】
流路の内壁面にヘリングボーン形状の凹凸を有するカオティックミキサは、流体の非線形流動を促進することができる。これにより例示的に、複数の内壁面又は曲面の内壁面に配置されたナノワイヤがより多くの溶液中の生体分子を捕捉することができる。
【0075】
図15に、一実施形態に係る流路1500の一つの内壁の上面図を示す。内壁1511に、構造体(壁)1514が、平行に繰り返して形成されている。壁1514は、その長手方向が矢印で示された溶液が流れる方向に対して角度を有するように配置されている。
【0076】
図16に、一実施形態に係る流路1600の一つの内壁の上面図を示す。内壁1611に、構造体(壁)1614が、互い違いに繰り返して形成されている。壁1614は、その長手方向が矢印で示された溶液が流れる方向に対して角度を有するように配置されている。
【0077】
図17に、一実施形態に係る流路1700の一つの内壁の上面図を示す。内壁1711に、ジグザグ形状の構造体(壁)1714が、形成されている。
【0078】
図18に、一実施形態に係る流路1800の一つの内壁の上面図を示す。内壁1811に、構造体(ピラー)1814が、矢印の流路方向に沿って格子状に配列されている。
【0079】
図19に、一実施形態に係る流路1900の一つの内壁の上面図を示す。内壁1911に、構造体(ピラー)1914が、矢印の流路方向に互い違いにずれて配列されている。
【0080】
流路の内壁面に配置された壁やピラーなどの構造体は、対向する内壁まで連続して形成されていてもよく、対向壁まで連続しておらず内部空間内で端部を有していてもよい。これらの構造体は、流れていく溶液を撹拌することができる。これにより、例示的に、複数の内壁面又は曲面の内壁面に配置されたナノワイヤがより多くの溶液中の生体分子を捕捉することができる。
【0081】
流路は、真っ直ぐであってもよく、曲がっていてもよく、カーブしていてもよい。
【0082】
いくつかの実施形態では、流体チャンバ又は流路デバイスは、分析デバイスに接続されていてもよく、接続されるように構成されていてもよい。いくつかの実施形態では、流体チャンバ又は流路デバイスは、分析デバイスに組み込まれてもよい。分析デバイスは、非限定的に例えば、光学的、磁気的、電気的、化学的、電気化学的など分析又は測定デバイスであってもよい。いくつかの実施形態では、分析デバイスは、測定核酸(RNA、DNA)シーケンサであってもよい。いくつかの実施形態では、マイクロアレイであってもよい。
【0083】
本開示は、生体分子の回収、抽出又は収集方法(単に回収方法ともいう)を含む。いくつかの実施形態では、回収方法は、流体チャンバ又は流路(以下、流体チャンバともいう。)に溶液を導入すること、又は溶液をナノワイヤに接触させる(単に、溶液を導入する、ともいう)ことを含んでいてもよい。
【0084】
いくつかの実施形態では、溶液を流体デバイスに導入することは、溶液を導入後、実質的に溶液が流体デバイス内で静止させてもよい。いくつかの実施形態では、溶液を流体デバイスに導入することは、溶液を継続的に流体デバイス内に流し続けてもよい。例えば、流路デバイスの導入口から溶液を導入し、排出口から流路デバイスを通過した溶液を排出することを継続してもよい。例えば、溶液は流体デバイス内で常に流れた状態でナノワイヤと接触せいてもよい。
【0085】
マイクロRNAなどの電荷を帯びた分子を回収する際は、ナノワイヤが正の表面電荷を有していてもよい。例えば、ナノワイヤが正の表面電荷を有するpH条件下で、体液とナノワイヤを接触させてもよい。これにより例えば、遊離形態およびEV内包形態のマイクロRNAはナノワイヤ上に捕捉することができる。いくつかの実施形態では、体液のpHは、ナノワイヤが正の表面電荷を有するように調整されていてもよい。いくつかの実施形態では、溶液のpHに適合するように、正の表面電荷を有する材質又は方法でナノワイヤを作成してもよい。
【0086】
いくつかの実施形態では、回収方法は、溶液のpHを調整することを含んでいてもよい。溶液のpHは、ナノワイヤと接触させる前、後、または接触中に、調整してもよい。いくつかの実施形態では、体液のpHは、2、3、4、または5などの値より大きくてもそれ以上になるように調整されてもよい。いくつかの実施形態では、体液のpHは、10、9、8、7、6、または5などの値より小さくてもそれ以下になるように調整されてもよい。いくつかの実施形態では、尿のpHは、6~8に調整されてもよい。
【0087】
いくつかの実施形態では、回収方法は、溶液の流体デバイスへの導入後に、解離剤(又は遊離剤、解離溶液、解離させるための溶液などともいう。)を導入してもよい。これにより、例えば、ナノワイヤ又は流体デバイス内に捕捉された分子を、ナノワイヤから解離させることができる。いくつかの実施形態では、回収方法は、解離剤とともに補足物質を回収することを含んでいてもよい。解離剤は、緩衝剤を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、解離剤は、表面活性剤を含んでいてもよい。表面活性剤は、例えば、非イオン性表面活性剤であってもよく、イオン性表面活性剤であってもよい。これにより、例えば、ナノワイヤに捕捉されたEVの中に含まれるRNAや、溶液中に遊離形態であってナノワイヤに捕捉されたRNAをナノワイヤから解離せることができる。いくつかの実施形態では、解離剤は、RNase阻害剤を含んでいてもよい。
【0088】
いくつかの実施形態では、回収方法は、溶液の流体デバイスへの導入後に、洗浄してもよい。いくつかの実施形態では、回収方法は、遊離剤導入前に、洗浄を行ってもよい。洗浄は、流体デバイス内へ、水、緩衝液、洗浄液など(単に、洗浄液ともいう。)などを導入することを含んでいてもよい。洗浄は、洗浄後の洗浄液を排出口させてもよい。これにより、非減的に例えば、ナノワイヤに捕捉された物質以外の物質(溶液や分子)を流体デバイス外に排出することができる。いくつかの実施形態では、洗浄を行わなくてもよい。例えば、非洗浄であってもよい。
【0089】
本開示は、回収された分子を測定、分析する方法も含む。いくつかの実施形態では、流体デバイスで回収された生体分子を分析してもよい。いくつかの実施形態では、体液内のRNAの発現量を分析してもよい。RNAはマイクロRNAであってもよい。いくつかの実施形態では、流体デバイスで回収されたRNAの発現プロファイルを、マイクロアレイ又はシーケンサを用いて測定してもよい。測定は、回収されたRNAを含む溶液をマイクロアレイ又はシーケンサに導入することを含んでいてもよい。
【0090】
本開示は、診断方法も含む。いくつかの実施形態では、流体デバイスで回収されたRNAの発現プロファイル若しくは一つ又は複数の特定のRNAの発現量、又はそれらの時間的変化に基づいて、疾病の診断や疾病のリスクなどを行ってもよい。
【0091】
本開示は、測定方法、分析方法、診断方法を実施するプログラム又はソフトウェアを含む。プログラム又はソフトウェアは、記憶媒体に記録されていてもよい。流体デバイスで回収されたRNAの発現プロファイル、又は一つ又は複数の特定のRNAの発現量を、PC、サーバ、CPUなどの計算処理装置(手段)に対して送信することを含んでいてもよい。流体デバイスで回収されたRNAの発現プロファイル、又は一つ又は複数の特定のRNAの発現量を、受信することを含んでいてもよい。受信送信は、有線で行ってもよく、無線で行ってもよく、インターネットを通じて送信してもよい。データの保存、保管、送信受信はクラウドを経由して行ってもよい。分析、診断は、人工知能、機械学習、深層学習などを用いて行ってもよい。
【0092】
本開示は以下の実施形態も含む:
A01
生体分子回収デバイスであって、
複数の内壁を有する流体チャンバと、
前記流体チャンバの複数の内壁の2つ以上の内壁に配置された複数のナノワイヤと、
を備える生体分子回収デバイス。
A02
生体分子回収デバイスであって、
少なくとも一部で直方体である流体チャンバと、
前記流体チャンバの前記直方体の、少なくとも1対の対抗する内壁の両方に配置されたナノワイヤと、
を備える生体分子回収デバイス。
A02b
生体分子回収デバイスであって、
少なくとも一部の断面が長方形である流体チャンバと、
前記流体チャンバの前記直方体の、少なくとも1対の対抗する内壁の両方に配置されたナノワイヤと、
を備える生体分子回収デバイス。
A03
前記流体チャンバは、
実質的に平らな表面を有し、前記実質的に平らな表面上に配置されたナノワイヤを有する第一基板と、
前記第一基板と接触する表面を有する枠と、前記枠の内側に規定される凹部とを有し、前記凹部の表面上にナノワイヤが配置された第二基板であって、前記ナノワイヤのある空間を規定するように前記枠で前記第一基板と接合された第二基板と、
を備える、
実施形態A02に記載の生体分子回収デバイス。
A04
前記流体チャンバは、
実質的に平らな表面を有し、前記平らな表面上にナノワイヤが配置された一対の基板であって、前記ナノワイヤが配置された表面が対向するように接合された一対の基板と、
前記一対の基板の間に挟まれたスペーサであって、前記一対の基板の前記対向する表面の間に、前記ナノワイヤのある空間を規定するように構成されたスペーサと、
を備える、
実施形態A02に記載の生体分子回収デバイス。
A11
前記複数の内壁の少なくとも1つが凹凸構造(uneven structure)を有している、
実施形態A01からA04のいずれか一項に記載の生体分子回収デバイス。
A21
前記流体チャンバは、前記生体分子を含む溶液を導入する導入口と、それを排出する排出口とを有し、前記溶液が流れる流路として構成されている、
実施形態A01からA11のいずれか一項に記載の生体分子回収デバイス。
A22
前記流体チャンバは、カオス混合器を含む、
実施形態A1からA21のいずれか一項に記載の生体分子回収デバイス。
A23
前記カオス混合器の少なくとも一部の表面に前記ナノワイヤが配置されている、
実施形態A22のいずれか一項に記載の生体分子回収デバイス。
A31
前記ナノワイヤは、前記ナノワイヤが配置された表面に直接配置されている、
実施形態A1からA23のいずれか一項に記載の生体分子回収デバイス。
A32
前記ナノワイヤは、その一端が、前記ナノワイヤが配置された内壁に埋め込まれている、
実施形態A1からA31のいずれか一項に記載の生体分子回収デバイス。
A32b
前記ナノワイヤは、その一部が、前記ナノワイヤが配置された内壁に埋め込まれている、
実施形態A1からA31のいずれか一項に記載の生体分子回収デバイス。
A33
前記前記ナノワイヤが配置された内壁は、成長層を有し、
前記ナノワイヤは、前記成長層上に成長することにより形成された、
実施形態A1からA31のいずれか一項に記載の生体分子回収デバイス。
A34
前記成長層は、ナノワイヤが成長するための触媒を含んでいる、
実施形態A33に記載の生体分子回収デバイス。
B01
前記生体分子デバイスを備える生体分子分析デバイス。
C01
生体分子の回収方法であって、
複数の内壁を有する流体チャンバと、前記流体チャンバの複数の内壁の2つ以上の内壁に配置された複数のナノワイヤと、
を備える生体分子回収デバイスを提供することと、
前記生体分子回収デバイスに、生体分子を含む溶液を導入することと、
を備える方法。
C02
生体分子の回収方法であって、
前記生体分子回収デバイスに、生体分子を含む溶液を導入することは、生体分子を含む溶液を連続的に導入する、
実施形態C01に記載の方法。
C03
解離剤を前記生体分子回収デバイスに導入して、前記捕捉した前記生体分子を前記ナノワイヤから解離させること、
を更に備える、
実施形態C01又はC02に記載の方法。
C04
前記生体分子は、マイクロRNAを含む、
実施形態C01からC03のいずれか一項に記載の方法。
C05
前記溶液は、尿又は唾液である、
実施形態C04に記載の方法。
D01
RNA発現量を分析する方法であって、
複数の内壁を有する流体チャンバと、前記流体チャンバの複数の内壁の2つ以上の内壁に配置された複数のナノワイヤと、を備える生体分子回収デバイスを用いて、回収された体液中のRNAを提供又は用意することと、
前記生体分子回収デバイスを用いて回収されたRNAを測定することと、
前記測定されたRNAのデータに基づいて、前記体液中の前記RNAの発現量を推定することと、
を備える、
RNA発現量を分析する方法。
D02
前記体液中の前記RNAの発現量を推定することは、前記体液中の前記RNAの発現プロファイルを求めることを含む、
実施形態D01に記載の方法。
D03
前記体液は、尿又は唾液である、
実施形態D01又はD02に記載の方法。
【0093】
以上、本開示の幾つかの実施形態及び実施例について説明したが、これらの実施形態及び実施例は、本開示を例示的に説明するものである。例えば、上記各実施形態は本開示を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必要に応じて寸法、構成、材質、回路を追加変更してもよい。なお、上記に挙げた本開示の一または複数の特徴を任意に組み合わせた実施形態も本開示の範囲に含まれる。特許請求の範囲は、本開示の技術的思想から逸脱することのない範囲で、実施形態に対する多数の変形形態を包括するものである。したがって、本明細書に開示された実施形態及び実施例は、例示のために示されたものであり、本開示の範囲を限定するものと考えるべきではない。
【符号の説明】
【0094】
100 流路デバイス(流体チャンバ)
110 基板
121,122 内壁
131,132 ナノワイヤ
200 流体チャンバ
211 第一基板
212 第二基板
221 内壁面
231 ナノワイヤ
222 内壁面
232 ナノワイヤ
300 流体チャンバ
311 第一基板
312 第二基板
321 内壁面
331 ナノワイヤ
322 内壁面
332 ナノワイヤ
400 流体チャンバ
410 基板
421,422,423,424 内壁
431,432,433,434 ナノワイヤ
500 流体チャンバ
510 基板
521 内壁
531 ナノワイヤ
600 流体チャンバ
611 第一基板
612 第二基板
613 スペーサ
621 内壁
631 ナノワイヤ
612 第二基板
622 内壁
622a 凸部
622b 凹部又は底面
632a ナノワイヤ
632b ナノワイヤ
700 流体チャンバ
711 第一基板
712 第二基板
713 スペーサ
722a 凸部
722b 底面
732 ナノワイヤ
800 流体チャンバ
810 基板
814 構造体
824 表面(内壁)
834 ナノワイヤ
900 流体チャンバ
910 基板
914 構造体
924 構造体
921 内壁
931 ナノワイヤ
1000 流体チャンバ
10,211,022 内壁
1021 凹部
1021a 内壁面
1021b 凹部
1031,1032 ナノワイヤ
1100 流体チャンバ
1121a,1122a 内壁
1121b,1122b 凹部
1131a,1131b,1132a,1132b ナノワイヤ
1200 流路
1221a 内壁
1221b 凹部又は溝
1300 流路
1321a 内壁
1321b 凹部又は溝
1400 流路
1421a 内壁
1421b 凹部又は溝
1500 流路
1511 内壁
1514 構造体(壁)
1600 流路
1611 内壁
1614 構造体(壁)
1700 流路
1711 内壁
1714 構造体(壁)
1800 流路
1811 内壁
1814 構造体(ピラー)
1900 流路
1911 内壁
1914 構造体(ピラー)