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特開2024-88761通信制御方法、ユーザ装置、プロセッサ及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088761
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】通信制御方法、ユーザ装置、プロセッサ及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 4/06 20090101AFI20240625BHJP
   H04W 28/16 20090101ALI20240625BHJP
【FI】
H04W4/06 150
H04W28/16
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024062846
(22)【出願日】2024-04-09
(62)【分割の表示】P 2022557465の分割
【原出願日】2021-10-14
(31)【優先権主張番号】63/093,386
(32)【優先日】2020-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001106
【氏名又は名称】弁理士法人キュリーズ
(72)【発明者】
【氏名】藤代 真人
(72)【発明者】
【氏名】チャン ヘンリー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】移動通信システム(5Gシステム(NR))において、基地局からユーザ装置に対する改善されたマルチキャスト・ブロードキャストサービス(MBS)を実現する通信制御方法を提供する。
【解決手段】基地局gNBからユーザ装置UEに対してMBSを提供する移動通信システムで用いる通信制御方法であって、基地局は、制御チャネルを介して、ヘッダ圧縮処理によって送信が省略されているヘッダ情報を送信する。UEのPacket Data Convergence Protocol(PDCP)レイヤは、ヘッダ情報をgNBから受信したヘッダ情報(ヘッダ解凍コンテキスト)を保持し、gNBが、MBSトラフィックチャネルを介して、ヘッダ圧縮処理が行われた圧縮MBSパケットを1対多(PTM)で送信すると、圧縮MBSパケットを受信し、保持したヘッダ情報を用いて圧縮MBSパケットのヘッダを復元し、MBSパケットを上位レイヤに渡す。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局からユーザ装置に対してマルチキャスト・ブロードキャストサービス(MBS)を提供する移動通信システムで用いる通信制御方法であって、
前記基地局が、1つのMBSセッションに属する1つ又は複数のQoS(Quality of Service)フローを複数のMBSデータベアラにマッピングすることと、
前記基地局が、前記複数のMBSデータベアラに対応する複数の論理チャネルに対して1つのRNTIを設定すること、を有する
通信制御方法。
【請求項2】
マルチキャスト・ブロードキャストサービス(MBS)をサポートするユーザ装置であって、
1つのMBSセッションに属する1つ又は複数のQoS(Quality of Service)フローにマッピングされる複数のMBSデータベアラに対応する複数の論理チャネルに対して1つのRNTIを設定する設定情報を基地局から受信する受信部を備える
ユーザ装置。
【請求項3】
マルチキャスト・ブロードキャストサービス(MBS)をサポートするユーザ装置を制御するプロセッサであって、
1つのMBSセッションに属する1つ又は複数のQoS(Quality of Service)フローにマッピングされる複数のMBSデータベアラに対応する複数の論理チャネルに対して1つのRNTIを設定する設定情報を基地局から受信する処理を実行する
プロセッサ。
【請求項4】
マルチキャスト・ブロードキャストサービス(MBS)をサポートするユーザ装置に、
1つのMBSセッションに属する1つ又は複数のQoS(Quality of Service)フローにマッピングされる複数のMBSデータベアラに対応する複数の論理チャネルに対して1つのRNTIを設定する設定情報を基地局から受信することを実行させる
プログラム。
【請求項5】
請求項2に記載のユーザ装置及び基地局を有するシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動通信システムで用いる通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、第5世代(5G)の移動通信システムが注目されている。5Gシステムの無線アクセス技術(RAT:Radio Access Technology)であるNR(New Radio)は、第4世代の無線アクセス技術であるLTE(Long Term Evolution)に比べて、高速・大容量かつ高信頼・低遅延といった特徴を有する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】3GPP技術仕様書「3GPP TS 38.300 V16.3.0 (2020-09)」
【発明の概要】
【0004】
第1の態様に係る通信制御方法は、基地局からユーザ装置に対してマルチキャスト・ブロードキャストサービス(MBS)を提供する移動通信システムで用いる通信制御方法であって、前記基地局が、MBSパケットのヘッダに含まれる静的な情報であるヘッダ情報の送信を省略するヘッダ圧縮処理を行いつつ、前記ヘッダ圧縮処理が行われた圧縮MBSパケットを送信することと、前記基地局が、前記圧縮MBSパケットの送信を開始した後、前記圧縮MBSパケットとは別に前記ヘッダ情報を送信することと、を有する。
【0005】
第2の態様に係る通信制御方法は、基地局からユーザ装置に対してマルチキャスト・ブロードキャストサービス(MBS)を提供する移動通信システムで用いる通信制御方法であって、前記ユーザ装置が、前記基地局からMBSパケットを受信することと、前記ユーザ装置のPDCP(Packet Data Convergence Protocol)エンティティが、前記基地局から最初に受信したMBSパケットに含まれるPDCPシーケンス番号を、所定PDCP動作に用いる変数の初期値として設定することと、を有する。
【0006】
第3の態様に係る通信制御方法は、基地局からユーザ装置に対してマルチキャスト・ブロードキャストサービス(MBS)を提供する移動通信システムで用いる通信制御方法であって、前記ユーザ装置が、前記基地局からMBSデータベアラを介してMBSパケットを受信することと、前記ユーザ装置のSDAP(Service Data Adaptation Protocol)レイヤが、前記MBSパケットにSDAPヘッダが付与されていないとみなすことにより、前記MBSパケットに対するSADPヘッダ除去処理を行わずに、前記MBSパケットを上位レイヤに渡すことと、を有する。
【0007】
第4の態様に係る通信制御方法は、基地局からユーザ装置に対してマルチキャスト・ブロードキャストサービス(MBS)を提供する移動通信システムで用いる通信制御方法であって、前記基地局が、1つのMBSセッションに属する1つ又は複数のQoS(Quality of Service)フローを複数のMBSデータベアラにマッピングすることと、前記基地局が、前記複数のMBSデータベアラに対応する複数の論理チャネルを1つのRNTI(Radio Network Temporary Identifier)で多重して送信することと、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る移動通信システムの構成を示す図である。
図2】一実施形態に係るUE(ユーザ装置)の構成を示す図である。
図3】一実施形態に係るgNB(基地局)の構成を示す図である。
図4】データを取り扱うユーザプレーンの無線インターフェイスのプロトコルスタックの構成を示す図である。
図5】シグナリング(制御信号)を取り扱う制御プレーンの無線インターフェイスのプロトコルスタックの構成を示す図である。
図6】一実施形態に係る下りリンクの論理チャネル(Logical channel)とトランスポートチャネル(Transport channel)との対応関係を示す図である。
図7】一実施形態に係るMBSデータの配信方法を示す図である。
図8】一実施形態に係る下りリンクにおけるgNBのレイヤ2構造を示す図である。
図9】一実施形態に係るヘッダ圧縮処理に関する移動通信システムの動作例を示す図である。
図10】一実施形態に係るヘッダ圧縮処理に関する移動通信システムの他の動作例を示す図である。
図11】一実施形態に係るPDCP変数に関する移動通信システムの動作例を示す図である。
図12】一実施形態に係るgNB及びUEにおけるデータフローを示す図である。
図13】一実施形態に係る複数論理チャネルの多重送信の動作例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
5Gシステム(NR)にマルチキャスト・ブロードキャストサービスを導入することが検討されている。NRのマルチキャスト・ブロードキャストサービスは、LTEのマルチキャスト・ブロードキャストサービスよりも改善されたサービスを提供することが望まれる。
【0010】
そこで、本発明は、改善されたマルチキャスト・ブロードキャストサービスを実現することを目的とする。
【0011】
図面を参照しながら、実施形態に係る移動通信システムについて説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。
【0012】
(移動通信システムの構成)
まず、実施形態に係る移動通信システムの構成について説明する。図1は、一実施形態に係る移動通信システムの構成を示す図である。この移動通信システムは、3GPP(登録商標)規格の第5世代システム(5GS:5th Generation System)に準拠する。以下において、5GSを例に挙げて説明するが、移動通信システムにはLTE(Long Term Evolution)システムが少なくとも部分的に適用されてもよいし、第6世代(6G)システムが少なくとも部分的に適用されてもよい。
【0013】
図1に示すように、移動通信システムは、ユーザ装置(UE:User Equipment)100と、5Gの無線アクセスネットワーク(NG-RAN:Next Generation Radio Access Network)10と、5Gのコアネットワーク(5GC:5G Core Network)20とを有する。
【0014】
UE100は、移動可能な無線通信装置である。UE100は、ユーザにより利用される装置であればどのような装置であっても構わないが、例えば、UE100は、携帯電話端末(スマートフォンを含む)やタブレット端末、ノートPC、通信モジュール(通信カード又はチップセットを含む)、センサ若しくはセンサに設けられる装置、車両若しくは車両に設けられる装置(Vehicle UE)、飛行体若しくは飛行体に設けられる装置(Aerial UE)である。
【0015】
NG-RAN10は、基地局(5Gシステムにおいて「gNB」と呼ばれる)200を含む。gNB200は、基地局間インターフェイスであるXnインターフェイスを介して相互に接続される。gNB200は、1又は複数のセルを管理する。gNB200は、自セルとの接続を確立したUE100との無線通信を行う。gNB200は、無線リソース管理(RRM)機能、ユーザデータ(以下、単に「データ」という)のルーティング機能、モビリティ制御・スケジューリングのための測定制御機能等を有する。「セル」は、無線通信エリアの最小単位を示す用語として用いられる。「セル」は、UE100との無線通信を行う機能又はリソースを示す用語としても用いられる。1つのセルは1つのキャリア周波数に属する。
【0016】
なお、gNBがLTEのコアネットワークであるEPC(Evolved Packet Core)に接続することもできる。LTEの基地局が5GCに接続することもできる。LTEの基地局とgNBとが基地局間インターフェイスを介して接続されることもできる。
【0017】
5GC20は、AMF(Access and Mobility Management Function)及びUPF(User Plane Function)300を含む。AMFは、UE100に対する各種モビリティ制御等を行う。AMFは、NAS(Non-Access Stratum)シグナリングを用いてUE100と通信することにより、UE100のモビリティを管理する。UPFは、データの転送制御を行う。AMF及びUPFは、基地局-コアネットワーク間インターフェイスであるNGインターフェイスを介してgNB200と接続される。
【0018】
図2は、一実施形態に係るUE100(ユーザ装置)の構成を示す図である。
【0019】
図2に示すように、UE100は、受信部110、送信部120、及び制御部130を備える。
【0020】
受信部110は、制御部130の制御下で各種の受信を行う。受信部110は、アンテナ及び受信機を含む。受信機は、アンテナが受信する無線信号をベースバンド信号(受信信号)に変換して制御部130に出力する。
【0021】
送信部120は、制御部130の制御下で各種の送信を行う。送信部120は、アンテナ及び送信機を含む。送信機は、制御部130が出力するベースバンド信号(送信信号)を無線信号に変換してアンテナから送信する。
【0022】
制御部130は、UE100における各種の制御を行う。制御部130は、少なくとも1つのプロセッサ及び少なくとも1つのメモリを含む。メモリは、プロセッサにより実行されるプログラム、及びプロセッサによる処理に用いられる情報を記憶する。プロセッサは、ベースバンドプロセッサと、CPU(Central Processing Unit)とを含んでもよい。ベースバンドプロセッサは、ベースバンド信号の変調・復調及び符号化・復号等を行う。CPUは、メモリに記憶されるプログラムを実行して各種の処理を行う。
【0023】
図3は、一実施形態に係るgNB200(基地局)の構成を示す図である。
【0024】
図3に示すように、gNB200は、送信部210、受信部220、制御部230、及びバックホール通信部240を備える。
【0025】
送信部210は、制御部230の制御下で各種の送信を行う。送信部210は、アンテナ及び送信機を含む。送信機は、制御部230が出力するベースバンド信号(送信信号)を無線信号に変換してアンテナから送信する。
【0026】
受信部220は、制御部230の制御下で各種の受信を行う。受信部220は、アンテナ及び受信機を含む。受信機は、アンテナが受信する無線信号をベースバンド信号(受信信号)に変換して制御部230に出力する。
【0027】
制御部230は、gNB200における各種の制御を行う。制御部230は、少なくとも1つのプロセッサ及び少なくとも1つのメモリを含む。メモリは、プロセッサにより実行されるプログラム、及びプロセッサによる処理に用いられる情報を記憶する。プロセッサは、ベースバンドプロセッサと、CPUとを含んでもよい。ベースバンドプロセッサは、ベースバンド信号の変調・復調及び符号化・復号等を行う。CPUは、メモリに記憶されるプログラムを実行して各種の処理を行う。
【0028】
バックホール通信部240は、基地局間インターフェイスを介して隣接基地局と接続される。バックホール通信部240は、基地局-コアネットワーク間インターフェイスを介してAMF/UPF300と接続される。なお、gNBは、CU(Central Unit)とDU(Distributed Unit)とで構成され(すなわち、機能分割され)、両ユニット間はF1インターフェイスで接続されてもよい。
【0029】
図4は、データを取り扱うユーザプレーンの無線インターフェイスのプロトコルスタックの構成を示す図である。
【0030】
図4に示すように、ユーザプレーンの無線インターフェイスプロトコルは、物理(PHY)レイヤと、MAC(Medium Access Control)レイヤと、RLC(Radio Link Control)レイヤと、PDCP(Packet Data Convergence Protocol)レイヤと、SDAP(Service Data Adaptation Protocol)レイヤとを有する。
【0031】
PHYレイヤは、符号化・復号、変調・復調、アンテナマッピング・デマッピング、及びリソースマッピング・デマッピングを行う。UE100のPHYレイヤとgNB200のPHYレイヤとの間では、物理チャネルを介してデータ及び制御情報が伝送される。
【0032】
MACレイヤは、データの優先制御、ハイブリッドARQ(HARQ)による再送処理、及びランダムアクセスプロシージャ等を行う。UE100のMACレイヤとgNB200のMACレイヤとの間では、トランスポートチャネルを介してデータ及び制御情報が伝送される。gNB200のMACレイヤはスケジューラを含む。スケジューラは、上下リンクのトランスポートフォーマット(トランスポートブロックサイズ、変調・符号化方式(MCS))及びUE100への割当リソースブロックを決定する。
【0033】
RLCレイヤは、MACレイヤ及びPHYレイヤの機能を利用してデータを受信側のRLCレイヤに伝送する。UE100のRLCレイヤとgNB200のRLCレイヤとの間では、論理チャネルを介してデータ及び制御情報が伝送される。
【0034】
PDCPレイヤは、ヘッダ圧縮・伸張、及び暗号化・復号化を行う。
【0035】
SDAPレイヤは、コアネットワークがQoS(Quality of Service)制御を行う単位であるIPフローとAS(Access Stratum)がQoS制御を行う単位である無線ベアラとのマッピングを行う。なお、RANがEPCに接続される場合は、SDAPが無くてもよい。
【0036】
図5は、シグナリング(制御信号)を取り扱う制御プレーンの無線インターフェイスのプロトコルスタックの構成を示す図である。
【0037】
図5に示すように、制御プレーンの無線インターフェイスのプロトコルスタックは、図4に示したSDAPレイヤに代えて、RRC(Radio Resource Control)レイヤ及びNAS(Non-Access Stratum)レイヤを有する。
【0038】
UE100のRRCレイヤとgNB200のRRCレイヤとの間では、各種設定のためのRRCシグナリングが伝送される。RRCレイヤは、無線ベアラの確立、再確立及び解放に応じて、論理チャネル、トランスポートチャネル、及び物理チャネルを制御する。UE100のRRCとgNB200のRRCとの間に接続(RRC接続)がある場合、UE100はRRCコネクティッド状態にある。UE100のRRCとgNB200のRRCとの間に接続(RRC接続)がない場合、UE100はRRCアイドル状態にある。UE100のRRCとgNB200のRRCとの間の接続がサスペンドされている場合、UE100はRRCインアクティブ状態にある。
【0039】
RRCレイヤの上位に位置するNASレイヤは、セッション管理及びモビリティ管理等を行う。UE100のNASレイヤとAMF300BのNASレイヤとの間では、NASシグナリングが伝送される。
【0040】
なお、UE100は、無線インターフェイスのプロトコル以外にアプリケーションレイヤ等を有する。
【0041】
(MBS)
次に、一実施形態に係るMBSについて説明する。MBSは、NG-RAN10からUE100に対してブロードキャスト又はマルチキャスト、すなわち、1対多(PTM:Point To Multipoint)でのデータ送信を行うサービスである。MBSは、MBMS(Multimedia Broadcast and Multicast Service)と呼ばれてもよい。なお、MBSのユースケース(サービス種別)としては、公安通信、ミッションクリティカル通信、V2X(Vehicle to Everything)通信、IPv4又はIPv6マルチキャスト配信、IPTV、グループ通信、及びソフトウェア配信等がある。
【0042】
LTEにおけるMBSの送信方式には、MBSFN(Multicast Broadcast Single Frequency Network)送信及びSC-PTM(Single Cell Point To Multipoint)送信の2種類がある。図6は、一実施形態に係る下りリンクの論理チャネル(Logical channel)とトランスポートチャネル(Transport channel)との対応関係を示す図である。
【0043】
図6に示すように、MBSFN送信に用いる論理チャネルはMTCH(Multicast Traffic Channel)及びMCCH(Multicast Control Channel)であり、MBSFN送信に用いるトランスポートチャネルはMCH(Multicast Control Channel)である。MBSFN送信は、主にマルチセル送信用に設計されており、複数のセルからなるMBSFNエリアにおいて各セルが同じMBSFNサブフレームで同じ信号(同じデータ)の同期送信を行う。
【0044】
SC-PTM送信に用いる論理チャネルはSC-MTCH(Single Cell Multicast Traffic Channel)及びSC-MCCH(Single Cell Multicast Control Channel)であり、SC-PTM送信に用いるトランスポートチャネルはDL-SCH(Downlink Shared Channel)である。SC-PTM送信は、主に単一セル送信用に設計されており、セル単位でブロードキャスト又はマルチキャストでのデータ送信を行う。SC-PTM送信に用いる物理チャネルはPDCCH(Physical Downlink Control Channel)及びPDSCH(Physical Downlink Shared Channel)であり、動的なリソース割当が可能になっている。
【0045】
以下において、SC-PTM伝送方式を用いてMBSが提供される一例について主として説明するが、MBSFN伝送方式を用いてMBSが提供されてもよい。また、MBSがマルチキャストにより提供される一例について主として説明する。このため、MBSをマルチキャストと読み替えてもよい。但し、MBSがブロードキャストにより提供されてもよい。
【0046】
また、MBSデータとは、MBSにより送信されるデータをいい、MBS制御チャネルとは、MCCH又はSC-MCCHをいい、MBSトラフィックチャネルとは、MTCH又はSC-MTCHをいうものとする。但し、MBSデータは、ユニキャストで送信される場合もある。MBSデータは、MBSパケット又はMBSトラフィックと呼ばれてもよい。
【0047】
ネットワークは、MBSセッションごとに異なるMBSサービスを提供できる。MBSセッションは、TMGI(Temporary Mobile Group Identity)及びセッション識別子のうち少なくとも1つにより識別され、これらの識別子のうち少なくとも1つをMBSセッション識別子と呼ぶ。このようなMBSセッション識別子は、MBSサービス識別子又はマルチキャストグループ識別子と呼ばれてもよい。
【0048】
図7は、一実施形態に係るMBSデータの配信方法を示す図である。
【0049】
図7に示すように、MBSデータ(MBS Traffic)は、単一のデータソース(アプリケーションサービスプロバイダ)から複数のUEに配信される。5Gコアネットワークである5G CN(5GC)20は、アプリケーションサービスプロバイダからMBSデータを受信し、MBSデータのコピーの作成(Replication)を行って配信する。
【0050】
5GC20の観点からは、共有MBSデータ配信(Shared MBS Traffic delivery)及び個別MBSデータ配信(Individual MBS Traffic delivery)の2つの配信方法が可能である。
【0051】
共有MBSデータ配信では、5G無線アクセスネットワーク(5G RAN)であるNG-RAN10と5GC20との間に接続が確立され、5GC20からNG-RAN10へMBSデータを配信する。以下において、このような接続(トンネル)を「MBS接続」と呼ぶ。
【0052】
MBS接続は、Shared MBS Traffic delivery接続又は共有トランスポート(shared transport)と呼ばれてもよい。MBS接続は、NG-RAN10(すなわち、gNB200)で終端する。MBS接続は、MBSセッションと1対1で対応していてもよい。gNB200は、自身の判断でPTP(Point-to-Point:ユニキャスト)及びPTM(Point-to-Multipoint:マルチキャスト又はブロードキャスト)のいずれを選択し、選択した方法でUE100にMBSデータを送信する。
【0053】
他方、個別MBSデータ配信では、NG-RAN10とUE100との間にユニキャストのセッションが確立され、5GC20からUE100へMBSデータを個別に配信する。このようなユニキャストは、PDUセッション(PDU Session)と呼ばれてもよい。ユニキャスト(PDUセッション)は、UE100で終端する。
【0054】
以下の実施形態において、gNB200がPTMのMBS送信を行う一例について主として説明する。
【0055】
(ヘッダ圧縮処理)
次に、一実施形態に係るヘッダ圧縮処理について説明する。
【0056】
図8は、一実施形態に係る下りリンクにおけるgNB200のレイヤ2構造を示す図である。
【0057】
図8に示すように、物理レイヤは、MACレイヤにトランスポートチャネル(Transport Channels)を提供する。MACレイヤは、RLCレイヤに論理チャネル(Logical Channels)を提供する。RLCレイヤは、PDCPレイヤにRLCチャネル(RLC Channels)を提供する。PDCPレイヤは、SDAPレイヤに無線ベアラ(Radio Bearers)を提供する。SDAPレイヤは、QoSフロー(QoS Flows)を提供する。
【0058】
ここで、論理チャネル及びRLCチャネルは1対1で対応し、RLCチャネル及び無線ベアラは1対1で対応するため、論理チャネル及び無線ベアラも1対1で対応する。これに対し、QoSフロー及び無線ベアラは1対1で対応しない。このため、SDAPレイヤは、QoSフローを無線ベアラに対応付ける(マッピングする)処理を行う。
【0059】
PDCPレイヤは、無線ベアラごとに設けられるPDCPエンティティを有する。各PDCPエンティティは、RoHC(Robust Header Compression)による処理を行う機能を有する。以下において、ヘッダ圧縮プロトコルとしてRoHCを用いる一例について説明するが、他のプロトコル、例えば、EHC(Ethernet Header Compression)を用いてもよい。RoHC機能は、IPヘッダの圧縮処理(以下、単に「ヘッダ圧縮処理」と呼ぶ)を行う。RoHC適用対象となるデータは、データ無線ベアラ上を流れるユーザデータである。RoHCにより圧縮可能なヘッダとしては、例えば、RTP、UDP、TCP、IPのヘッダがある。
【0060】
下りリンクにおいて、gNB200のPDCPレイヤのRoHC機能(以下、「gNB側RoHC機能」と呼ぶ)は、暗号化(ciphering)の実施前にRoHCによるヘッダ圧縮を行う。他方、UE100のPDCPレイヤのRoHC機能(以下、「UE側RoHC機能」と呼ぶ)は、暗号解除(deciphering)の実施後にRoHCによるヘッダ解凍(ヘッダ復元)を行う。
【0061】
gNB側RoHC機能は、例えば、IR(Initialization and Refresh)状態、FO(First Order)状態、及びSO(Second Order)状態の順に状態遷移を行う。IR状態では、gNB側RoHC機能は、圧縮対象となるヘッダ情報を圧縮(すなわち、送信を省略)せず、すべてのヘッダ情報をUE側RoHC機能へ送信する。
【0062】
FO状態では、RoHC圧縮対象のヘッダ情報のうち、静的フィールド(パケット単位でほとんど変動しないパラメータ)のほとんどを圧縮する。一部の静的フィールドと動的フィールド(パケット単位で変動するパラメータ)は圧縮せずにUE側RoHC機能へと送信される。
【0063】
SO状態では、ヘッダの圧縮率が最高となる。gNB側RoHC機能からはRTPシーケンス番号のみを送信することで、UE側RoHC機能で対象ヘッダの復元が可能となる。
【0064】
他方、UE側RoHC機能は、例えば、NC(No Context)状態、SC(Static Context)状態、及びFC(Full Context)状態の順に状態遷移を行う。UE側RoHC機能の初期状態はNC状態であり、ヘッダ解凍に必要な情報(ヘッダ解凍コンテキスト)がなく、解凍処理を正しく実施できない状態である。UE側RoHC機能は、ヘッダ解凍コンテキストを受信すると、FC状態へと遷移する。以降は連続的なヘッダ解凍失敗を契機にSC状態、NC状態へと遷移することになる。
【0065】
このようなRoHCによるヘッダ圧縮をMBSパケットのPTM送信に適用することにより、ヘッダによるオーバヘッドを削減可能である。しかしながら、RoHCは主としてユニキャストを想定したヘッダ圧縮プロトコルであり、次のような問題が生じ得る。
【0066】
あるMBSセッションに最初から参加したUE100は、ヘッダ圧縮処理が行われていない非圧縮MBSパケットをgNB200から受信し、非圧縮MBSパケットからヘッダ情報を取得し、ヘッダ解凍に必要な情報(ヘッダ解凍コンテキスト)を保持できる。
【0067】
他方、MBSセッションに途中から参加したUE100は、ヘッダ圧縮処理が行われていない非圧縮MBSパケットをgNB200から受信できないため、ヘッダ解凍に必要な情報(ヘッダ解凍コンテキスト)を保持できず、対象ヘッダの復元が不能である。よって、MBSセッションに途中から参加したUE100は、MBSパケットの受信処理を正常に行うことができないという問題がある。
【0068】
一実施形態において、次のような方法により、MBSセッションに途中から参加したUE100がMBSパケットの受信処理を正常に行うことを可能とする。
【0069】
一実施形態において、gNB200は、MBSパケットのヘッダに含まれる静的な情報であるヘッダ情報の送信を省略するヘッダ圧縮処理を行いつつ、ヘッダ圧縮処理が行われた圧縮MBSパケットを送信する。gNB200は、圧縮MBSパケットの送信を開始した後、圧縮MBSパケットとは別にヘッダ情報を送信する。
【0070】
これにより、MBSセッションに途中から参加したUE100は、圧縮MBSパケットとは別にgNB200から送信されるヘッダ情報を受信することにより、ヘッダ情報(ヘッダ解凍コンテキスト)を保持できる。よって、MBSセッションに途中から参加したUE100がMBSパケットの受信処理を正常に行うことが可能になる。具体的には、圧縮MBSパケット及びヘッダ情報を受信したUE100は、受信したヘッダ情報を用いて、受信した圧縮MBSパケットのヘッダを復元する。
【0071】
一実施形態において、gNB200は、MBSトラフィックチャネルを介して圧縮MBSパケットを送信する。gNB200は、MBSトラフィックチャネルと異なるチャネルを介してヘッダ情報を送信する。
【0072】
例えば、gNB200は、ブロードキャストで送信するMBS用の制御チャネル(MBS制御チャネル)によりヘッダ情報を送信する。この場合、gNB200は、MBS制御チャネルを介してヘッダ情報を周期的に送信してもよい。
【0073】
gNB200は、ユニキャストで送信する個別制御チャネル(DCCH:Dedicated Control CHannel)によりヘッダ情報を送信してもよい。この場合、gNB200は、UE100にMBS受信設定を行う際に、ヘッダ情報をUE100に送信してもよい。
【0074】
図9は、一実施形態に係るヘッダ圧縮処理に関する移動通信システムの動作例を示す図である。
【0075】
図9に示すように、ステップS101において、gNB200は、あるMBSセッションについてMBS送信を開始する。ステップS102において、当該MBSセッションに最初から参加するUE100Aは、当該MBSセッションについてMBS受信を開始する。UE100Aは、RRCコネクティッド状態、RRCアイドル状態、又はRRCインアクティブ状態にある。
【0076】
UE100Aは、制御チャネル(MBS制御チャネル又は個別制御チャネル)にてヘッダ情報が通知されなかった場合、通常と同じように、受信パケットからヘッダ情報を取得するように指示された、又は非圧縮で送信されていると判断してもよい。
【0077】
ステップS103において、gNB200は、MBSトラフィックチャネルを介して非圧縮MBSパケットをPTMで送信する。
【0078】
ステップS104において、UE100AのPDCPレイヤは、非圧縮MBSパケットをgNB200から受信すると、受信した非圧縮MBSパケットから圧縮対象のヘッダ情報を取得し、ヘッダ情報(ヘッダ解凍コンテキスト)を保持する。
【0079】
ステップS105において、gNB200は、MBSトラフィックチャネルを介して、ヘッダ圧縮処理が行われた圧縮MBSパケットをPTMで送信する。
【0080】
ステップS106において、UE100AのPDCPレイヤは、圧縮MBSパケットをgNB200から受信すると、ステップS104で保持したヘッダ情報を用いて、受信した圧縮MBSパケットのヘッダを復元し、MBSパケットを上位レイヤに渡す。
【0081】
その後、ステップS107において、UE100Bは、当該MBSセッションに途中から参加し、当該MBSセッションについてMBS受信を開始する。UE100Bは、RRCコネクティッド状態、RRCアイドル状態、又はRRCインアクティブ状態にある。
【0082】
ステップS108において、gNB200は、制御チャネル(MBS制御チャネル又は個別制御チャネル)を介して、ヘッダ圧縮処理により送信が省略されているヘッダ情報を送信する。gNB200は、ヘッダ情報を含むメッセージを送信する際に、当該ヘッダ情報に対応するMBSトラフィックチャネルの識別子、当該ヘッダ情報に対応するMBSセッションの識別子(グループRNTI、TMGI、及び/又はサービスID)、当該MBSセッションに対応するQoSフローの識別子、ベアラの識別子、RLCチャネルの識別子、論理チャネルの識別子のうち、少なくとも1つを当該メッセージに含めてもよい。
【0083】
ステップS109において、UE100BのPDCPレイヤは、ヘッダ情報をgNB200から受信すると、受信したヘッダ情報(ヘッダ解凍コンテキスト)を保持する。UE100BのPDCPレイヤは、gNB200から受信した上記の識別子をヘッダ情報(ヘッダ解凍コンテキスト)と対応付けて保持してもよい。なお、UE100Bは、gNB200からヘッダ情報が通知された場合、受信パケットからヘッダ情報を取得できない(若しくはしなくてよい)と指示されたと判断してもよい。
【0084】
ステップS110において、gNB200は、MBSトラフィックチャネルを介して、ヘッダ圧縮処理が行われた圧縮MBSパケットをPTMで送信する。
【0085】
ステップS111において、UE100BのPDCPレイヤは、圧縮MBSパケットをgNB200から受信すると、ステップS109で保持したヘッダ情報を用いて、受信した圧縮MBSパケットのヘッダを復元し、MBSパケットを上位レイヤに渡す。
【0086】
ステップS112において、UE100AのPDCPレイヤは、圧縮MBSパケットをgNB200から受信すると、ステップS104で保持したヘッダ情報を用いて、受信した圧縮MBSパケットのヘッダを復元し、MBSパケットを上位レイヤに渡す。
【0087】
図10は、一実施形態に係るヘッダ圧縮処理に関する移動通信システムの他の動作例を示す図である。本動作例において、gNB200は、ヘッダ圧縮処理が行われていない非圧縮MBSパケットを所定周期で送信する。具体的には、gNB200は、ヘッダ圧縮処理が行われた圧縮MBSパケットの送信を開始した後、所定周期で非圧縮MBSパケットを送信する。
【0088】
図10に示すように、ステップS201乃至S207の動作は、図9のステップS101乃至S107の動作と同様である。
【0089】
ステップS208において、gNB200は、MBSトラフィックチャネルを介して、非圧縮MBSパケットをPTMで送信する。gNB200は、制御チャネル(MBS制御チャネル又は個別制御チャネル)を介して非圧縮MBSパケットを送信してもよい。
【0090】
ステップS209において、UE100BのPDCPレイヤは、非圧縮MBSパケットをgNB200から受信すると、受信した非圧縮MBSパケットから圧縮対象のヘッダ情報を取得し、ヘッダ情報(ヘッダ解凍コンテキスト)を保持する。
【0091】
ステップS210乃至S212の動作は、図9のステップS110乃至S112の動作と同様である。
【0092】
本動作例において、gNB200は、非圧縮MBSパケットを送信する所定周期を、MBSセッションのQoS要求に応じて決定してもよい。もしくは、MBSセッションのQoS要求に応じて決定された周期長がコアネットワーク(AMF等)からgNB200に対して通知されてもよい。なお、UE100のMBSセッションへのアクセス遅延の許容量により周期長が決定される。
【0093】
gNB200が非圧縮MBSパケットを送信する所定周期は、MBS制御チャネルの変更タイミング(modification boundary)と紐づいて(同期して)いてもよい。例えば、gNB200は、MBS制御チャネルのmodification boundaryと同一サブフレーム(もしくはその直後のMBSトラフィックチャネル送信機会)において、非圧縮データを送信する。
【0094】
gNB200が非圧縮MBSパケットを送信する所定周期は、UE100及びgNB200で同期がとられたタイミングであることが望ましい。例えば、gNB200は、「SFN mod 256=0」という計算式で求められたフレームで非圧縮パケットを送信する。ここでSFNは、システムフレーム番号を意味する。或いは、「SFN mod N=0」という計算式で求められたフレームで非圧縮パケットを送信し、Nは、gNB200からUE100に設定される値であってもよい。
【0095】
(PDCP変数の取り扱い)
次に、一実施形態に係るPDCP変数について説明する。
【0096】
UE100のPDCPレイヤは、gNB200から受信するパケットに含まれるPDCPシーケンス番号(PDCP SN)に応じてPDCP変数を設定及び更新する。通常、UE100Bは、PDCP変数の初期値をゼロに設定し、gNB200からのパケット受信に応じてPDCP変数を更新(インクリメント)していく。
【0097】
あるMBSセッションに最初から参加したUE100は、PDCP変数を順次更新し、最新の状態にすることができる。他方、MBSセッションに途中から参加したUE100は、初期値から大きく離れた値のPDCPシーケンス番号を有するMBSパケットを受信し得るため、PDCPレイヤの動作(所定PDCP動作)を正常に行うことができない虞がある。
【0098】
一実施形態において、次のような方法により、MBSセッションに途中から参加したUE100が所定PDCP動作を正常に行うことを可能とする。
【0099】
一実施形態において、UE100のPDCPエンティティは、gNB200から最初に受信したMBSパケットに含まれるPDCPシーケンス番号を、所定PDCP動作に用いる変数(PDCP変数)の初期値として設定する。すなわち、UE100のPDCPエンティティは、PTMで送信されるMBSパケットを受信する場合、PDCP変数をゼロに設定するのではなく、gNB200から最初に受信したMBSパケットに含まれるPDCPシーケンス番号をPDCP変数の初期値として設定する。これにより、MBSセッションに途中から参加したUE100が所定PDCP動作を正常に行うことが可能になる。
【0100】
一実施形態において、所定PDCP動作は、受信ウィンドウ制御及びパケット並び替え動作のうち少なくとも一方である。
【0101】
受信ウィンドウ制御に用いるPDCP変数は、RX_NEXT及びRX_DELIVの少なくとも一方であってもよい。RX_NEXTは、次に受信することが期待されるPDCP SDUのシーケンス番号である。RX_DELIVは、受信待ちで、未だ上位レイヤに提供していないPDCP SDUのうち最も古いもののシーケンス番号である。通常、RX_NEXT及びRX_DELIVの初期値は“0”である。
【0102】
パケット並び替え動作(Reordering)に用いるPDCP変数は、RX_REORDであってもよい。RX_REORDは、パケットの並び替えを待つ最大時間を示すタイマを始動したPDCP SDUのシーケンス番号である。例えば、UE100は、受信パケットのシーケンス番号がよりも小さい場合、当該パケットを破棄する。
【0103】
図11は、一実施形態に係るPDCP変数に関する移動通信システムの動作例を示す図である。
【0104】
図11に示すように、ステップS301において、gNB200は、あるMBSセッションについてMBS送信を開始する。ステップS302において、当該MBSセッションに最初から参加するUE100Aは、当該MBSセッションについてMBS受信を開始する。UE100Aは、RRCコネクティッド状態、RRCアイドル状態、又はRRCインアクティブ状態にある。UE100Aは、MBSベアラ(PDCP)の設定をgNB200から受信して実行してもよい。
【0105】
ステップS303において、gNB200は、MBSベアラを介してMBSパケット(PDCPパケット)をPTMで送信する。このMBSパケット(PDCPパケット)のPDCPヘッダに含まれるシーケンス番号(PDCPシーケンス番号)は“0”であるとする。
【0106】
ステップS304において、UE100AのPDCPレイヤは、MBSパケットをgNB200から受信すると、受信したMBSパケットに含まれるPDCPシーケンス番号“0”をPDCP変数の初期値として設定し、所定PDCP動作を行う。
【0107】
その後、ステップS305において、UE100Bは、当該MBSセッションに途中から参加し、当該MBSセッションについてMBS受信を開始する。UE100Bは、RRCコネクティッド状態、RRCアイドル状態、又はRRCインアクティブ状態にある。UE100Bは、MBSベアラ(PDCP)の設定をgNB200から受信して実行してもよい。
【0108】
ステップS306において、gNB200は、MBSベアラを介してMBSパケット(PDCPパケット)をPTMで送信する。このMBSパケット(PDCPパケット)のPDCPヘッダに含まれるシーケンス番号(PDCPシーケンス番号)は“n”であるとする。但し、“n”は1以上の整数である。
【0109】
ステップS307において、UE100BのPDCPレイヤは、MBSベアラを介してMBSパケット(PDCPパケット)を最初に受信すると、最初に受信したMBSパケットに含まれるPDCPシーケンス番号“n”をPDCP変数の初期値として設定し、所定PDCP動作を行う。例えば、UE100BのPDCPレイヤは、RX_DELIV=当該パケットのシーケンス番号“n”とし、RX_NEXT=当該パケットのシーケンス番号“n”とする。もしくは、(n+1) mod [SNサイズ]としてもよい。
【0110】
ステップS308において、UE100AのPDCPレイヤは、MBSベアラを介してMBSパケット(PDCPパケット)を受信すると、受信したMBSパケットに含まれるPDCPシーケンス番号“n”でPDCP変数を更新する。
【0111】
ステップS309において、gNB200は、MBSベアラを介してMBSパケット(PDCPパケット)をPTMで送信する。このMBSパケット(PDCPパケット)のPDCPヘッダに含まれるシーケンス番号(PDCPシーケンス番号)は“n+1”であるとする。
【0112】
ステップS310において、UE100BのPDCPレイヤは、MBSベアラを介してMBSパケット(PDCPパケット)を受信すると、受信したMBSパケットに含まれるPDCPシーケンス番号“n+1”でPDCP変数を更新する。
【0113】
ステップS311において、UE100AのPDCPレイヤは、MBSベアラを介してMBSパケット(PDCPパケット)を受信すると、受信したMBSパケットに含まれるPDCPシーケンス番号“n+1”でPDCP変数を更新する。
【0114】
本動作例では、受信したMBSパケットから各PDCP変数の初期値を更新したが、これに限らない。各PDCP変数の初期値は、gNB200からUE100に設定されてもよい。例えば、MBS途中受信を行うUE100Bは、dedicated signallingでMBS受信設定が行われる際に、各PDCP変数の初期値がgNB200から与えられてもよい。
【0115】
(SDAPヘッダの取り扱い)
次に、一実施形態に係るSDAPヘッダについて説明する。
【0116】
図12は、gNB200及びUE100におけるデータフローを示す図である。ここでは下りリンクについて説明する。
【0117】
図12に示すように、gNB200のSDAPレイヤは、QoSフローを無線ベアラに対応付ける(マッピングする)処理を行うとともに、QoSフローの識別子を含むSDAPヘッダをSDAP SDU(すなわち、IPパケット)に付与してPDCPレイヤに渡す。他方、UE100のSDAPレイヤは、PDCPレイヤからSDAP PDUを受け取り、SDAP PDUに付与されたSDAPヘッダを除去してSDAP SDU(すなわち、IPパケット)を上位レイヤに渡す。
【0118】
ここで、SDAPヘッダはQoSフロー識別子を含むが、MBSのように下りリンクのみの場合、当該QoSフロー識別子は、下記の理由1乃至3により、あまり意味が無い。このため、MBSについては、オーバヘッド削減のためにSDAPヘッダ無しのフォーマットとする。
【0119】
理由1:Reflective mapping(下りリンクパケットのQoSフロー識別子から上りリンクパケットのQoSフロー識別子を決める動作)は、MBSの場合はQoSフロー識別子が必要無い。
【0120】
理由2:QoSフローは、コアネットワーク内ではQoS制御の最小単位であるが、無線ではベアラ単位のQoS制御であって、UE100内では特にQoS制御も無いので、下りリンクのみのMBSではQoSフロー識別子が必要無い。
【0121】
理由3:フィードバックのための上りリンクが存在したとしても、HARQ、RLC、PDCPの各レイヤでのフィードバックであって、SDAPレイヤでのフィードバックではなく、かつ、制御PDUであるためQoSフロー単位での制御は必要無い。
【0122】
このため、一実施形態において、gNB200からMBSデータベアラを介してMBSパケットを受信するUE100は、SDAPレイヤにおいて、受信したMBSパケットにSDAPヘッダが付与されていないとみなすことにより、MBSパケットに対するSADPヘッダ除去処理を行わずに、当該MBSパケット(IPパケット)を上位レイヤに渡す。
【0123】
これにより、MBSデータベアラについて、RRCレイヤにおける明示的なSDAPヘッダ有無の設定が不要となる。UE100は、RRCでのSDAPヘッダ有の設定に依らずに、MBSデータベアラについてはSDAPヘッダ無しで伝送されると判定する。すなわち、UE100は、SDAPレイヤの設定に関する設定情報(RRC設定情報)をgNB200から受信しても、当該設定情報にかかわらず、受信したMBSパケットに対するSADPヘッダ除去処理を行わずにMBSパケットを上位レイヤに渡す。
【0124】
(複数論理チャネルの多重送信)
次に、一実施形態に係る論理チャネルについて説明する。
【0125】
通常のユニキャスト送信の場合、gNB200は、1つのC-RNTI(Cell Radio Network Temporary Identifier)、すなわち、1つのPDSCH(Physical Downlink Shared Channel)により、複数のアプリケーションに対応する複数の論理チャネルを多重して送信できる。
【0126】
MBSの場合、PTP送信では、ユニキャスト送信と同様に1つのC-RNTI(1つのPDSCH)により、MBSパケット(MBS用の論理チャネル)と通常のユニキャストパケット(ユニキャスト用の論理チャネル)を多重して送信できると考えられる。
【0127】
一方、PTM送信の場合、多数UEへの一斉送信であること、及び、送信タイミング(周期)がMBSサービス毎に異なることから、一般的には1つのグループRNTI(1つのPDSCH)で複数の論理チャネルを多重できないと考えられる。
【0128】
しかしながら、コアネットワーク(5GC20)はQoSフロー単位でQoS制御を行うため、1つのMBSサービスが複数のQoSフローを有することもあり得る。上述のように、gNB200のSDAPレイヤは、QoSフローをベアラ(=論理チャネル)にマッピングする。
【0129】
よって、1つのMBSサービスに属する複数のQoSフローが、異なる論理チャネルにマッピングされ、MACレイヤで1つのRNTI(1つのグループRNTI)で多重して送信され得る。
【0130】
一実施形態において、gNB200は、SDAPレイヤにおいて、1つのMBSセッションに属する1つ又は複数のQoSフローを複数のMBSデータベアラにマッピングする。そして、gNB200は、当該複数のMBSデータベアラに対応する複数の論理チャネルを1つのRNTI(1つのグループRNTI)で多重して送信する。これにより、複数の論理チャネルを効率的に伝送できる。
【0131】
図13は、一実施形態に係る複数論理チャネルの多重送信の動作例を示す図である。
【0132】
図13に示すように、MBSデータのPTM送信を行うgNB200において、SDAPレイヤは、1つのMBSセッションに属する複数のQoSフローをk個のベアラにマッピングする。但し、kは2以上の整数である。1つのMBSセッションに属する複数のQoSフローとは、1つのセッション識別子と対応付けられた複数のQoSフローをいう。gNB200のRLCレイヤは、k個のベアラ(k個のRLCチャネル)に対応するk個の論理チャネルのMBSデータをMACレイヤに渡す。
【0133】
gNB200のMACレイヤは、k個の論理チャネルのMBSデータを1つのグループRNTIで多重して送信する。具体的には、gNB200の物理(PHY)レイヤは、1つのグループRNTIが適用されたPDCCH(Physical Downlink Control Channel)により、当該MBSデータを運ぶPDSCHの割当情報をUE100に送信する。
【0134】
このように、gNB200は、異なる論理チャネルにマッピングされた異なるQoSフローが1つのMBSセッションと対応付けられている場合のみ、当該異なる論理チャネルを1つのグループRNTIで多重して送信する。
【0135】
他方、UE100の物理(PHY)レイヤは、当該グループRNTIに紐づいたPDSCHを受信する。当該PDSCHを復号した結果、k個の論理チャネルを含んでいる場合、UE100のMACレイヤは、該当する論理チャネルを介してMBSデータをRLCレイヤに渡す。
【0136】
ここで、UE100は、これらのk個の論理チャネルが同一グループRNTIで伝送されたことから、これらの論理チャネルが1つのMBSセッションと対応付けられていると判断してもよい。
【0137】
そして、UE100のSDAPレイヤは、k個のベアラ(複数のQoSフロー)のMBSデータを上位レイヤ(例えば、アプリケーションレイヤ)に渡す。
【0138】
(その他の実施形態)
上述の実施形態において、基地局がNR基地局(gNB)である一例について説明したが基地局がLTE基地局(eNB)であってもよい。また、基地局は、IAB(Integrated Access and Backhaul)ノード等の中継ノードであってもよい。基地局は、IABノードのDU(Distributed Unit)であってもよい。
【0139】
UE100又はgNB200が行う各処理をコンピュータに実行させるプログラムが提供されてもよい。プログラムは、コンピュータ読取り可能媒体に記録されていてもよい。コンピュータ読取り可能媒体を用いれば、コンピュータにプログラムをインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録されたコンピュータ読取り可能媒体は、非一過性の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROMやDVD-ROM等の記録媒体であってもよい。
【0140】
また、UE100又はgNB200が行う各処理を実行する回路を集積化し、UE100又はgNB200の少なくとも一部を半導体集積回路(チップセット、SoC)として構成してもよい。
【0141】
以上、図面を参照して実施形態について詳しく説明したが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【0142】
本願は、米国仮出願第63/093386号(2020年10月19日出願)の優先権を主張し、その内容の全てが本願明細書に組み込まれている。
【符号の説明】
【0143】
10 :NG-RAN(5G RAN)
20 :5GC(5G CN)
100 :UE
110 :受信部
120 :送信部
130 :制御部
200 :gNB
210 :送信部
220 :受信部
230 :制御部
240 :バックホール通信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13