(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088769
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】ラウロラクタムの製造方法、その合成装置、これにより製造されたラウロラクタム組成物、これを用いたポリラウロラクタムの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 225/02 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
C07D225/02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024063254
(22)【出願日】2024-04-10
(62)【分割の表示】P 2022532733の分割
【原出願日】2020-10-27
(31)【優先権主張番号】10-2019-0161823
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】501014658
【氏名又は名称】ハンワ ソリューションズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】HANWHA SOLUTIONS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク, ジンホ
(72)【発明者】
【氏名】キム, ジヨン
(72)【発明者】
【氏名】ソ, ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】チャン, ナムジン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】合成されたラウロラクタムを簡素化した工程で精製することで、残留触媒を除去し、高純度のラウロラクタムを製造する方法を提供する。
【解決手段】a)触媒系下で、シクロドデカノンオキシムをベックマン転位反応(Bechmann rearrangement)によりラウロラクタムとして合成するステップと、b)前記a)ステップで合成されたラウロラクタムを良溶媒に混合し、前記触媒系を除去するステップと、c)前記b)ステップで前記触媒系が除去されたラウロラクタムを貧溶媒に混合し、再結晶化するステップとを含む、ラウロラクタムの製造方法とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)触媒系下で、シクロドデカノンオキシムをベックマン転位反応(Bechmann rearrangement)によりラウロラクタムとして合成するステップと、
b)前記a)ステップで合成されたラウロラクタムを良溶媒に混合し、前記触媒系を除去するステップと、
c)前記b)ステップで前記触媒系が除去されたラウロラクタムを貧溶媒に混合し、再結晶化するステップとを含む、ラウロラクタムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラウロラクタムの製造方法、その合成装置、これにより製造されたラウロラクタム組成物、これを用いたポリラウロラクタムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、工業上アミド化合物を製造する方法は、対応するオキシム化合物をベックマン転位反応を用いて変換させることである。例えば、ラウロラクタムは、シクロドデカノンオキシムをベックマン転位反応により合成することができる。ただし、ベックマン転位反応の工程は、相当複雑なプロセスに属し、触媒として濃硫酸および発煙硫酸が使用されるが、これらは、強酸として高含量が求められ、中和時に大量の硫酸アンモニウムの副生成物が発生するため、これを処理するための設備を要するという限界がある。また、ベックマン転位反応は、溶媒上で行われるが、前記溶媒は、シクロドデカノンオキシムの溶解度が大きいものでなければならず、前記触媒である濃硫酸および発煙硫酸と反応しないものに該当しなければならず、その選択に制約がある。
【0003】
一方、脂肪族カーボネート系高分子、ポリラウロラクタムなどの高分子物質は、ラウロラクタム単量体などをアニオン重合して合成されることができ、前記ラウロラクタム単量体の純度が重合反応活性に大きな影響を及ぼす。従来、ベックマン転位反応でラウロラクタムを含む反応生成物を製造し、使用された溶媒を蒸留して除去した後、固相および/または液相で高分子物質(Heavies)を除去することでラウロラクタムを精製していたが、最終のラウロラクタム生成物に微量の触媒が残留し、アニオン重合反応の活性を急激に低下させる問題が発生している。そのため、ベックマン転位反応後に残留する触媒を簡素化した工程で除去して高純度のラウロラクタムを精製し、ラウロラクタム単量体などのアニオン重合活性を高める方法が求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、シクロドデカノンオキシムをベックマン転位反応によりラウロラクタムとして製造し、合成されたラウロラクタムを簡素化した工程で精製することで、残留触媒を除去し、高純度のラウロラクタムを製造する方法を提供することである。
【0005】
また、前記ラウロラクタムの合成装置を提供する。
【0006】
また、前記ラウロラクタムの製造方法により合成されたラウロラクタム組成物を提供する。
【0007】
また、合成されたラウロラクタムに対して、アニオン重合反応を用いて高い転化率でポリラウロラクタムを製造する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一具現例は、a)触媒系下で、シクロドデカノンオキシムをベックマン転位反応(Bechmann rearrangement)によりラウロラクタムとして合成するステップと、b)前記a)ステップで合成されたラウロラクタムを良溶媒に混合し、前記触媒系を除去するステップと、c)前記b)ステップで前記触媒系が除去されたラウロラクタムを貧溶媒に混合し、再結晶化するステップとを含むラウロラクタムの製造方法を提供する。
【0009】
前記a)ステップにおいて、ベックマン転位反応は、イソプロピルシクロヘキサン(IPCH)を含む溶媒下で、塩化シアヌル(TCT)および塩化亜鉛(ZnCl2)を含む触媒系によりシクロドデカノンオキシムをラウロラクタムとして合成するものであることができる。
【0010】
前記a)ステップは、合成されたラウロラクタムを蒸留して前記溶媒を除去するステップをさらに含むことができる。
【0011】
前記b)ステップは、前記触媒系とラウロラクタムに対する良溶媒の溶解度の差を用いて触媒系を除去するものであることができる。
【0012】
前記良溶媒は、ヒドロキシ基、アミン基およびチオール基からなる群から選択される一つまたは二つ以上の官能基を含有するC1~C4炭化水素有機溶媒であることができる。
【0013】
前記c)ステップは、前記ラウロラクタムの良溶媒に対する溶解度および貧溶媒に対する溶解度の差を用いてラウロラクタムを再結晶化するものであることができる。
【0014】
前記良溶媒および貧溶媒は混和性であることができる。
【0015】
前記貧溶媒は、蒸留水または脱イオン水(deionized water)であることができる。
【0016】
前記良溶媒および貧溶媒は、1:1.5~1:3の重量比で注入されることができる。
【0017】
前記再結晶化されたラウロラクタムを蒸発させて液相および/または固相で高分子物質(Heavies)を除去し、気相でラウロラクタムを分離するステップをさらに含むことができる。
【0018】
他の一具現例は、触媒系下で、シクロドデカノンオキシムをベックマン転位反応(Bechmann rearrangement)によりラウロラクタムとして合成する第1反応器と、前記第1反応器で合成されたラウロラクタムの溶媒を除去する蒸発器と、前記蒸発器で溶媒を除去したラウロラクタムを良溶媒に混合し、前記触媒系を除去する第2反応器と、前記第2反応器で前記触媒系が除去されたラウロラクタムを貧溶媒に混合し、再結晶化する第3反応器とを含むラウロラクタムの合成装置を提供する。
【0019】
前記第2反応器で析出された触媒系を除去するフィルタをさらに含むことができる。
【0020】
前記再結晶化されたラウロラクタムから高分子物質(Heavies)を分離するフィルム蒸発器(Film evaporator)をさらに含むことができる。
【0021】
さらに他の一具現例は、前記ラウロラクタムの製造方法により合成されたラウロラクタム組成物を提供する。
【0022】
前記ラウロラクタム組成物は、ベックマン転位反応に使用された触媒系をラウロラクタム組成物の全重量に対して5重量%以下で含むことができる。
【0023】
さらに他の一具現例は、前記ラウロラクタム組成物をアニオン開始剤下でアニオン重合してポリラウロラクタムを製造するポリラウロラクタムの製造方法を提供する。
【0024】
前記アニオン開始剤は、NaH、n-BuLi、KHおよびLiHからなる群から選択される一つまたは二つ以上を含むことができる。
【0025】
前記アニオン重合は、250~350℃で10~60分間行うものであることができる。
【0026】
前記重合されたポリラウロラクタムの重量平均分子量は6,000超であることができる。
【発明の効果】
【0027】
ベックマン転位反応によりラウロラクタムを合成した後、反応生成物に残留する触媒系および溶媒を簡素化した工程だけで効果的に除去することができる。
【0028】
精製されたラウロラクタム単量体を用いて、高い転化率でアニオン重合反応を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明について具体的に説明する。本明細書で使用されている用語は、特別に定義しない限り、当該分野において通常の知識を有する者が一般的に理解している内容に解釈すべきである。本明細書の図面および実施例は、通常の知識を有する者が本発明を容易に理解し実施するためのものであり、図面および実施例で発明の要旨を不明瞭にし得る内容は省略されることがあり、本発明は図面および実施例に限定されるものではない。
【0030】
本発明で使用されている用語の単数形態は、特別な説明がない限り、複数形態も含むものと解釈することができる。
【0031】
本発明の明細書において、触媒系とは、二つ以上の化合物を含む複合触媒システム(Catalyst system)、例えば、主触媒と助触媒を含む触媒システムを意味し得る。
【0032】
以下、一具現例によるラウロラクタムの製造方法について説明する。
【0033】
前記ラウロラクタムの製造方法は、a)触媒系下で、シクロドデカノンオキシムをベックマン転位反応(Bechmann rearrangement)によりラウロラクタムとして合成するステップと、b)前記a)ステップで合成されたラウロラクタムを良溶媒に混合し、前記触媒系を除去するステップと、c)前記b)ステップで前記触媒系が除去されたラウロラクタムを貧溶媒に混合し、再結晶化するステップとを含む。
【0034】
前記a)ステップは、触媒系下で、シクロドデカノンオキシムをベックマン転位反応によりラウロラクタムとして合成するステップであり、前記ベックマン転位反応は、溶媒下で、塩化シアヌル(TCT、Cyanuric chloride)および塩化亜鉛(Zinc chloride、ZnCl2)を含む触媒によりシクロドデカノンオキシムをラウロラクタムとして合成するものであることができる。
【0035】
具体的には、前記a)ステップにおいて、ベックマン転位反応は、70~130℃、好ましくは90~110℃、さらに好ましくは95~100℃の温度で、1~20分、好ましくは5~20分、さらに好ましくは5~15分間行うことができる。前記反応において反応温度が過剰に高いと、高分子物質(Heavies)などの副生成物が多く発生し、過剰に低いと、反応速度が十分に速くないため、商業工程に適用し難い。また、反応時間が1分未満であると、シクロドデカノンオキシムがラウロラクタムに十分に転位されることができず、20分を超えると、副反応が過剰に発生して好ましくない。
【0036】
一方、ベックマン転位反応は、ケトオキシムが酸アミドに変化する転位反応を意味し、特に、本発明では、前記シクロドデカノンオキシムがラウロラクタムに転位される反応を意味し得る。
【0037】
前記触媒系は、塩化シアヌル(TCT、Cyanuric chloride)および塩化亜鉛(Zinc chloride、ZnCl2)を含むことができ、塩化シアヌルなどを主触媒として含み、塩化亜鉛などを助触媒として、前記主触媒とともに使用することができる。具体的には、シクロドデカノンオキシム100重量部に対して、前記主触媒および助触媒をそれぞれ0.1~10重量部、好ましくは0.1~5重量部、さらに好ましくは0.5~2重量部含むことができる。前記触媒系の含量が過剰に低いと、ベックマン転位反応を十分に行うことができず、触媒系の含量が過剰に高いと、反応が終了した後に反応生成物に触媒系物質が高い含量で残留するため、精製ステップでこれを効果的に除去することが難しい。
【0038】
より具体的には、前記触媒系は、塩化シアヌルおよび塩化亜鉛を2:1~1:1の重量比、好ましくは1.5:1~1:1の重量比、さらに好ましくは1.3:1~1:1の重量比で含むことができる。これにより、ベックマン転位反応に制限される水分含量による転化率の減少現象を抑制して、ラウロラクタムを効果的に合成することができ、反応終了後、反応生成物に残留する触媒系を簡素化した工程だけで容易に除去することができる。
【0039】
前記溶媒としては、例えば、イソプロピルシクロヘキサン(IPCH)を含む有機溶媒であることが好ましい。前記溶媒は、非極性が強い特徴によって、ベックマン転位反応を用いて、成功的にシクロドデカノンオキシムをラウロラクタムとして製造するために使用されることができ、反応生成物と沸点(boiling point)差が大きい特徴によって、反応生成物を蒸留して溶媒を容易に除去することができる。したがって、高純度のラウロラクタムを効果的に製造することができる。
【0040】
前記IPCHを含む有機溶媒は、シクロドデカノンオキシム100重量部に対して30~50重量部使用されることができる。前記含量範囲で含まれる場合、シクロドデカノンオキシムのベックマン転位反応が容易であり、反応生成物を蒸留して溶媒を容易に除去することができる。したがって、高純度のラウロラクタムを効果的に製造することができる。
【0041】
次いで、前記b)ステップは、前記a)ステップで合成されたラウロラクタムを良溶媒に混合し、前記触媒系を除去するステップであり、前記良溶媒は、C1~C4炭化水素有機溶媒、好ましくは、ヒドロキシ基、アミン基およびチオール基からなる群から選択される一つまたは二つ以上の官能基を含有するC1~C4炭化水素有機溶媒であることができ、さらに好ましくは、ヒドロキシ基を含むC1~C4炭化水素、またはC1~C4アルコールであることができる。
【0042】
前記良溶媒を混合する場合、前記触媒系およびラウロラクタムに対する良溶媒の溶解度の差を用いて、触媒系を除去することができる。具体的には、前記触媒系は、良溶媒に溶解されず固形質粒子として析出されるのに対し、ラウロラクタムは、良溶媒に対する溶解度が高いため、良溶媒に実質的にすべて溶解されて析出されないこともある。次に、粒子として析出された触媒系をフィルタで容易に除去することができる。この際、良溶媒を過剰に少ない量で注入する場合、一部のラウロラクタムが溶解されず固体として存在し、残留する触媒とともにフィルタで除去されることがあり、ラウロラクタム取得率が低下し、良溶媒に溶解されない一部のラウロラクタムが残留する触媒系と凝集してフィルタを通過し、残留することがある。逆に、良溶媒を過剰に多い量で注入する場合、以降、c)ステップで、ラウロラクタムの再結晶化が容易でないこともある。したがって、a)ステップで合成されたラウロラクタムと前記良溶媒は、1:4~1:7の重量比で混合することができ、好ましくは1:5~1:7、さらに好ましくは1:6~1:7重量比で混合することが好ましい。
【0043】
一方、本発明の明細書において、良溶媒(good solvent)は、ラウロラクタム(solute)と親和性が高くこれをよく溶解することができる溶媒を意味し、貧溶媒(poor solvent)は、ラウロラクタムに対する親和性が低く、これをよく溶解させない溶媒を意味し得る。
【0044】
次いで、前記c)ステップは、前記b)ステップで前記触媒系が除去されたラウロラクタムを貧溶媒に混合し、再結晶化するものであり、前記貧溶媒は、前記良溶媒と混和性がある物質が採択されることができ、具体的には、蒸留水または脱イオン水(deionized water)であることができる。前記貧溶媒を混合する場合、前記ラウロラクタムの良溶媒に対する溶解度と貧溶媒に対する溶解度との差を用いて、ラウロラクタムを再結晶化することができる。具体的には、前記ラウロラクタムは、良溶媒に対する溶解度が高く、貧溶媒に対する溶解度が低い特性を有し、前記b)ステップでラウロラクタムが溶解された良溶媒に前記貧溶媒を混合する場合、良溶媒の濃度が減少することによってラウロラクタムに対する溶解度が減少し、結果、ラウロラクタムが再結晶化して固体として析出されることができる。
【0045】
前記良溶媒および貧溶媒は、例えば、1:1.5~1:3の重量比、好ましくは1:2~1:3の重量比、さらに好ましくは1:2~1:2.5の重量比で注入されることができる。貧溶媒に対して良溶媒を過剰な含量で注入する場合、ラウロラクタムの一部が固体として析出されることができず、良溶媒に溶解された状態で存在することがあり、精製されたラウロラクタムの取得率が低くなり得るため好ましくない。
【0046】
次いで、前記再結晶化されたラウロラクタムを蒸発させて液相および/または固相で高分子物質(Heavies)を除去し、気相でラウロラクタムを分離するステップをさらに行うことができる。その結果として、高純度のラウロラクタムを精製することができるため好ましい。
【0047】
前記蒸発は、例えば、フィルム蒸発器(film evaporator)で行われることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0048】
一方、フィルム蒸発器は、混合されている物質(液体)から蒸留反応により必要な物質を高純度で得るために使用される蒸発装置である。すなわち、液体混合物を物理的な力によって薄いフィルム(薄膜)を形成して混合物の表面積を極大化することで、蒸発率を高めることができ、高純度で物質を分離することができる。
【0049】
また、本発明は、上述のラウロラクタムの製造方法によるラウロラクタムの合成装置を提供することができる。この場合、前記ラウロラクタムの製造方法で言及した内容と実質的に同じ技術的思想に該当するため、使用される物質、反応条件などは、上述の内容と実質的に同様に解釈されなければならないことは言うまでもない。
【0050】
以下、他の一具現例による前記ラウロラクタムの合成装置について説明する。
【0051】
本発明によるラウロラクタムの合成装置は、触媒系下で、シクロドデカノンオキシムをベックマン転位反応によりラウロラクタムとして合成する第1反応器と、前記第1反応器で合成されたラウロラクタムから溶媒を除去する蒸発器と、前記蒸発器で溶媒を除去したラウロラクタムを良溶媒に混合し、前記触媒系を除去する第2反応器と、前記第2反応器で前記触媒系が除去されたラウロラクタムを貧溶媒に混合し、再結晶化する第3反応器とを含む。
【0052】
前記ラウロラクタムの合成装置は、前記第2反応器で析出された固体の触媒系を除去するフィルタをさらに含むことができる。
【0053】
前記ラウロラクタムの合成装置は、再結晶化されたラウロラクタムから高分子物質(Heavies)を分離するフィルム蒸発器(Film evaporator)をさらに含むことができる。
【0054】
本発明で言及する「反応器」、「(フィルム)蒸発器」および「フィルタ」としては、公知の様々な反応器、(フィルム)蒸発器およびフィルタが使用されることができ、その規格、サイズは、工程の規模、環境に応じて適切に調節されることができるため制限されない。また、各反応器、(フィルム)蒸発器およびフィルタで物質が流入されるか物質を流入させるための様々な流入管、流出管などが備えられることができ、これらの流入量、流出量を調節するための様々な装置およびこれらを制御するために様々な装置を使用することは、当業者にとって適切に調節可能な事項である。
【0055】
以下、他の一具現例による前記ラウロラクタムの製造方法により合成されたラウロラクタム組成物を提供する。
【0056】
前記ラウロラクタム組成物は、シクロドデカノンオキシムの転化率が98~99%、好ましくは99~99.5%、さらに好ましくは99.5~99.9%であることができ、ラウロラクタムの選択度が97~98%、好ましくは98~99%、さらに好ましくは99~99.5%であることができる。
【0057】
また、前記ラウロラクタム組成物は、ベックマン転位反応に使用された触媒系をラウロラクタム組成物の全重量に対して、5重量%以下、好ましくは5重量%未満、さらに好ましくは3重量%以下、最も好ましくは1重量%以下または0.5重量%以下で含むことができる。前記触媒系の含量範囲を超えると、アニオン重合で使用するアニオン開始剤の活性度を著しく低下させるため、重合反応の進行が容易でない。
【0058】
一方、前記ラウロラクタム組成物に含まれた触媒系の含量は、ICP(Inductively Coupled Plasma Spectrometer)分析計で測定することができる。
【0059】
以下、さらに他の一具現例は、ポリラウロラクタムの製造方法を提供し、前記製造方法は、前記ラウロラクタム組成物をアニオン開始剤下でアニオン重合することを含むことができる。
【0060】
精製されたラウロラクタムおよび任意の新たなモノマーの重合(コモノマー)は、200~350℃で10~60分間行われることができる。具体的には、前記重合反応は、200~300℃、好ましくは220~250℃で、10~60分、好ましくは10~50分、さらに好ましくは20~40分間行われることができる。
【0061】
重合されたポリラウロラクタムは、ラウロラクタム含有ポリマー、例えば、コポリアミドまたはポリエーテル-ブロックアミドであることができ、好ましくは、ポリアミド12(ナイロン12)であることができる。
【0062】
前記アニオン開始剤は、具体的には、NaH、LiH、KHおよびn-BuLiからなる群から選択される一つまたは二つ以上を含むことができる。本発明の一具現例によるベックマン転位反応に使用される触媒系物質は、前記アニオン開始剤の活性を著しく低下(killing)させるものと知られているが、本発明の一具現例によるラウロラクタムの製造方法およびこれによるラウロラクタム組成物は、前記触媒系物質を非常に効果的に除去することによって、前記アニオン開始剤下で、ラウロラクタム単量体を高い重合度でアニオン重合することができる。
【0063】
前記アニオン重合は、バッチ式反応器(batch reactor)または連続式反応器(CSTR、PFRまたはPBR)で行われることができ、好ましくは、連続式反応器で行われることができるが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0064】
前記重合されたポリラウロラクタムの重量平均分子量は、6,000を超えることができ、好ましくは6,500~14,000、さらに好ましくは8,000~12,000または9,000~11,000であることができる。
【実施例0065】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、これらは、本発明をより詳細に説明するためのものであって、本発明の権利範囲が下記の実施例によって限定されるものではない。
【0066】
製造例1
100ml丸底フラスコにシクロドデカノンオキシム3g、イソプロピルシクロヘキサン(isopropylcyclohexane)12g、塩化シアヌル(cyanuric chloride)0.045g、塩化亜鉛(zinc chloride)0.03gを投入した。そして、ヒーティングマントルを用いて、温度を95℃に調節し、200rpm以上で撹拌して反応させた。反応完了時間は5分であり、シクロドデカノンオキシムの転化率は99%以上、ラウロラクタムの選択度は99%以上であった。
【0067】
実施例1
製造例1の生成物100gを蒸発器に注入し、150℃で蒸留してIPCHを蒸発器の上端(Top)に除去した。生成された褐色の固体(精製前のラウロラクタム)にエタノールを700g注入してフラスコで溶解させた。浮遊している固体(触媒)は、0.22μmフィルタを用いて除去し、エタノールに溶解されたラウロラクタム(LL)に水を1,600g注入してLL固体を再結晶した。再結晶されたLLは、フィルタを使用して固体を分離し、フィルム蒸発器(Film evaporator)を用いて下端(bottom)から高分子物質(Heavies)を除去し、上端(Top)からLLを分離し、残留触媒含量およびLL取得率をそれぞれ測定し、下記表1に記載した。
【0068】
次いで、製造されたLLを用いて、100ml丸底フラスコにLL50gと触媒をLL:NaH:EBS(ethylene bis stearamide):TEOS(tetraethyl orthosilicate):CO2=100:0.6:0.36:0.15:0.15の重量比で投入し、240℃で30分間アニオン重合反応を行って、PA12(ポリアミド12)を製造し、PA12の重合度を下記表1に記載した。
【0069】
実施例2
エタノールを300g注入した以外は、実施例1と同様に行ってLLを分離し、残留触媒含量およびLL取得率を測定し、それぞれ下記表1に記載した。
【0070】
次いで、実施例1と同様にアニオン重合反応を行ってPA12を製造し、PA12の重合度を下記表1に記載した。
【0071】
実施例3
エタノールに溶解されたラウロラクタム(LL)に水を700g注入した以外は、実施例1と同様に行ってLLを分離し、残留触媒含量およびLL取得率を測定し、それぞれ下記表1に記載した。
【0072】
次いで、実施例1と同様にアニオン重合反応を行ってPA12を製造し、PA12の重合度を下記表1に記載した。
【0073】
比較例1
製造例1の生成物100gを蒸発器に注入し、150℃で蒸留してIPCHを蒸発器の上端(Top)に除去した。生成された褐色の固体は、フィルム蒸発器(Film evaporator)を用いて下端(bottom)から高分子物質(Heavies)を除去し、上端(Top)でLLを分離し、残留触媒含量およびLL取得率を測定し、それぞれ下記表1に記載した。
【0074】
次いで、実施例1と同様にアニオン重合反応を行ってPA12を製造し、PA12の重合度を下記表1に記載した。
【0075】
比較例2
エタノールに溶解されたラウロラクタム(LL)に水を注入しない以外は、実施例1と同様に行ってLLを分離し、残留触媒含量およびLL取得率を測定し、それぞれ下記表1に記載した。
【0076】
次いで、実施例1と同様にアニオン重合反応を行ってPA12を製造し、PA12の重合度を下記表1に記載した。
【0077】
*残留触媒含量の測定方法
ラウロラクタムは、常温で固体であるため、合成時に使用された固体触媒と区別されないが、150℃で溶解した時に、触媒は黒色の固体として残っているため、固体触媒の残留可否を確認することができる。製造例1で製造されたラウロラクタムに残留する触媒は、高温で固体として分離して重量を測定するか、ラウロラクタムを溶解することができる溶媒を使用してその含量を測定する。
【0078】
*ラウロラクタムの取得率の測定方法
製造例1の生成物100gをGCで測定してラウロラクタムの含量(L1)を計算し、実施例1のフィルム蒸発器(Film evaporator)の上端で取得されるラウロラクタムの含量(L2)を測定し、ラウロラクタムの取得率(L2/L1*100、%)を計算した。
【0079】
*PA12の分子量(重合程度)の測定方法
アニオン重合反応が完了した重合反応器で、撹拌機のトルク(Torque)値を算出し、前記値を逆算してPA12の重量平均分子量を計算した。
【0080】
【0081】
表1を参照すると、実施例1~3では、残留触媒を実質的に除去しており、精製されたラウロラクタムを用いてアニオン重合反応を行ったところ、PA12を製造することができた。ただし、本発明の好ましい良溶媒および貧溶媒の重量比でLLを精製した実施例1の場合、実施例3に比べてLLの取得率がより改善することを確認することができた。一方、実施例2は、精製前にラウロラクタムの量に比べてエタノールを少量で投入したものであり、エタノールに溶解されていないラウロラクタムが残留する固体触媒とともにフィルタで除去されることによってLL取得率が低下し、ラウロラクタムと少量の触媒(500ppm)が凝集した物質がフィルタを通過して残留することで、低い分子量(6,000)のPA12が製造された。比較例1は、本発明の良溶媒および貧溶媒を投入せずに単純に蒸発器でLLを精製しており、そのため、精製されたLL組成物に高い含量で残留する触媒によってアニオン重合反応のアニオン開始剤(NaH)の活性が低下することから、PA12の重合を行うことができなかった。また、比較例2は、水に比べてエタノールを過量で投入したものであり、一部のLLが固体として析出されることができず、エタノールに溶解された状態で存在し、蒸発器でエタノールとともに飛沫同伴され、そのためLL取得率が著しく低下し、商業工程に適用し難いということを確認した。
【0082】
以上、本発明は、特定の事項と限定された実施例によって説明されているが、これは本発明のより全般的な理解を容易にするために提供されたものであって、本発明は前記の実施例に限定されるものではなく、本発明が属する分野において通常の知識を有する者であれば、このような記載から様々な修正および変形が可能である。したがって、本発明の思想は、上述の実施例に限定して定められてはならず、後述する特許請求の範囲だけでなく、本特許請求の範囲と均等または等価的変形があるすべてのものなどは、本発明の思想の範疇に属するといえる。