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特開2024-88778患者層別化のための液滴単一細胞エピゲノムプロファイリングの使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088778
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】患者層別化のための液滴単一細胞エピゲノムプロファイリングの使用
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6869 20180101AFI20240625BHJP
   C12Q 1/6883 20180101ALI20240625BHJP
   C12Q 1/6806 20180101ALI20240625BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z
C12Q1/6883 Z
C12Q1/6806 Z
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024063729
(22)【出願日】2024-04-11
(62)【分割の表示】P 2021524116の分割
【原出願日】2019-07-12
(31)【優先権主張番号】18183542.2
(32)【優先日】2018-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】19000242.8
(32)【優先日】2019-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】519328604
【氏名又は名称】ハイファイバイオ エスアエス
(74)【代理人】
【識別番号】100113376
【弁理士】
【氏名又は名称】南条 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100179394
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬田 あや子
(74)【代理人】
【識別番号】100185384
【弁理士】
【氏名又は名称】伊波 興一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100137811
【弁理士】
【氏名又は名称】原 秀貢人
(72)【発明者】
【氏名】ジェラール アナベル パトリシア ヴェロニク
(72)【発明者】
【氏名】グロスリン ケビン アルマン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】患者層別化を決定するための、出現する薬物耐性または現状の薬物耐性の診断および/または予知のための改善された方法を提供する。
【解決手段】薬物耐性の診断および/または予知のための方法であって、マイクロ流体システムを用いることによって、1つまたは複数の目的のゲノム領域(単数または複数)をシーケンシングするステップを含み、単一細胞のクロマチン状態が、対象から得られた細胞においてプロファイリングされる、方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物耐性の診断および/または予知のための方法であって、
単一細胞のクロマチン状態が、マイクロ流体システムを用いることによって、対象から得られた細胞においてプロファイリングされて、
前記方法は、以下のステップ:
a.第1のタイプの少なくとも1つの液滴を提供するステップ、
ここで前記の第1のタイプの液滴は、
i.生物学的エレメント、
ii.溶解バッファー、および
iii.ヌクレアーゼ、
を含む、
b.前記ヌクレアーゼを一時的に不活性化する条件下で前記の第1のタイプの液滴を回収するステップ、
c.前記の第1のタイプの液滴をインキュベートして、それにより前記ヌクレアーゼを再活性化するステップ、
d.第2のタイプの少なくとも1つの液滴を提供するステップ、ここで前記の第2のタイプの液滴は核酸配列を含む、
e.前記の第1および第2のタイプの液滴をマージして、それにより第3のタイプの液滴を生成するステップ、
f.前記の第3のタイプの液滴をインキュベートして、それにより前記核酸配列を1つまたは複数の目的のゲノム領域(単数または複数)に結合させるステップ、
g.前記の1つまたは複数の目的のゲノム領域(単数または複数)をシーケンシングするステップ
を含む、
方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
薬物耐性は、出現する薬物耐性および/または現状の薬物耐性であってよい、
方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法であって、
薬物耐性の出現は、エピジェネティックな不均質性に起因するものであってよい、
方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、
前記の1つまたは複数の目的のゲノム領域(単数または複数)は、1つまたは複数の改変ゲノム領域(単数または複数)を含む、
方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の方法であって、
改変ゲノム領域は、核酸配列および/または核酸配列と関連したタンパク質複合体を含む、
方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の方法であって、
改変ゲノム領域は、翻訳後修飾および/またはヒストン変異体および/または改変DNA配列を含む、
方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の方法であって、
細胞は、病的状態である対象および/または病的状態である疑いがある対象または健康な対象から得られる、
方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の方法であって、
対象は病的状態であり、前記病的状態は、がん、感染性疾患、自己免疫疾患、代謝疾患、炎症疾患、遺伝性疾患および非遺伝性疾患を含む、
方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、
細胞は未処置および/または処置され、または、対象は未処置または処置される、
方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の方法であって、
前記対象における薬物耐性の診断および/または予知は、前記対象が処置または治療を受ける前、受けている最中、または受けた後、または任意の他の時点に行なわれる、
方法。
【請求項11】
請求項9に記載の方法であって、
処置された対象由来の処置された細胞は、化学療法薬物、化学的薬物、または生物学的薬物で処置される、
方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の方法であって、
単一細胞のクロマチン状態は、薬物耐性を促進する遺伝子に関するクロマチンマークが失われている、
方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、
クロマチンマークは、ヒストン修飾H3K4me3およびH3K27me3である、
方法。
【請求項14】
マイクロ流体システムを用いて1つまたは複数の目的のゲノム領域(単数または複数)を同定する方法であって、
前記方法は、以下のステップ:
a.第1のタイプの少なくとも1つの液滴を提供するステップ、
ここで前記の第1のタイプの液滴は、
i.生物学的エレメント、
ii.溶解バッファー、および
iii.ヌクレアーゼ、
を含む
b.前記ヌクレアーゼを一時的に不活性化する条件下で前記の第1のタイプの液滴を回収するステップ、
c.前記の第1のタイプの液滴をインキュベートして、それにより前記ヌクレアーゼを再活性化するステップ、
d.第2のタイプの少なくとも1つの液滴を提供するステップ、ここで前記の第2のタイプの液滴は核酸配列を含む、
e.前記の第1および第2のタイプの液滴をマージして、それにより第3のタイプの液滴を生成するステップ、
f.前記の第3のタイプの液滴をインキュベートして、それにより前記核酸配列を少なくとも1つの目的のゲノム領域(単数または複数)に結合させるステップ、
g.前記の1つまたは複数の目的のゲノム領域(単数または複数)をシーケンシングするステップ
を含む、
方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、
ステップ(b)の条件は、-20℃~10℃の範囲の温度を選択するステップを含み、ステップ(c)の条件は、20℃~40℃の範囲の温度を選択するステップを含む、
方法。
【請求項16】
請求項14に記載の方法であって、
改変ゲノム領域は、核酸配列と関連したタンパク質複合体および/または核酸配列を含む、
方法。
【請求項17】
請求項16のいずれかに記載の方法であって、
改変ゲノム領域は、アセチル化、アミド化、脱アミド化、カルボキシル化、ジスルフィド結合、ホルミル化、グリコシル化、ヒドロキシル化、メチル化、ミリストイル化、ニトロシル化、リン酸化、プレニル化、リボシル化、硫酸化、SUMO化、ユビキチン化およびそれらの誘導体を含む群から選択される翻訳後修飾を含む、
方法。
【請求項18】
請求項16または17に記載の方法であって、
核酸配列は、前記の少なくとも1つまたは複数の目的のゲノム領域(単数または複数)へ非対称的に結合される、
方法。
【請求項19】
核酸配列であって、
a.少なくとも1つのインデックス配列、
b.シーケンシングアダプター、および
c.3’末端および/または5’末端に位置する少なくとも1つの保護機能
を含む、
核酸配列。
【請求項20】
請求項19に記載の核酸配列であって、
前記核酸配列は、少なくとも1つの切断部位をさらに含む、
核酸配列。
【請求項21】
請求項19または20に記載の核酸配列であって、
保護機能は、3’末端のスペースエレメントおよび5’末端のジデオキシ修飾塩基、またはその逆を含む群から選択される、
核酸配列。
【請求項22】
請求項20または21に記載の核酸配列であって、
前記の少なくとも1つの切断部位は、回文構造領域を含む制限部位である、
核酸配列。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子生物学、薬物耐性およびマイクロ流体の分野である。特に、本発明は、薬物耐性の診断および/または予知および患者層別化のためにマイクロ流体液滴内で核酸をアッセイする方法に関する。本発明はまた、生物学的サンプル内の単一細胞のエピジェネティックおよびトランスクリプトーム状態のプロファイリングにおける使用のための核酸配列/構造も包含する。
【背景技術】
【0002】
真核生物ゲノムは、DNAを詰め込むだけでなくDNA代謝(複製、転写、修復、組換え)を調節するのを可能にするクロマチンへ編成される。現在の挑戦はしたがって、(i)機能性クロマチンドメインが、核においてどのように確立されるのか、(ii)クロマチン構造/情報が、集合、分解、修飾および再構築メカニズムを通してどのようにダイナミックであるか、および(iii)これらの事象が、疾患の確立、進行、および疾患の再発においてどのように関与/維持するか、理解することである。これらの事象を理解することは、疾患進行の新規のメカニズムおよび新しい治療学ターゲットの同定、ならびに、治療学的分子の効果の制御を可能にする。
【0003】
さらに、生物学における基本的な研究課題は、多細胞生物において、何百もの別個の細胞型が同一の遺伝物質からどのように生じるのか理解することである。多くの異なる細胞型は、遺伝学のみによって説明することはできず、むしろ表現型を遺伝子型へ橋渡しすることのできる追加の情報によって説明される。1942年に、Conrad H.Waddingtonが、「遺伝子と、表現型を生じさせるそれらの産物との間の、原因となる相互作用を研究する生物学の部門」としてエピジェネティックという用語を造り出した。「エピジェネティック情報」のこの追加の層は、クロマチンを構成するDNAとヒストンタンパク質の両方に対する化学修飾の形態で保存される。クロマチン修飾を通したエピジェネティックのメカニズムは、遺伝子発現を調節し、特異的なクロマチンのランドスケープを形成し、それにより細胞型および組織の同一性について予測することが可能となる。
【0004】
DNAおよびヒストン修飾は、情報を読み取ることが可能なエフェクタータンパク質に関する認識部位として作用することにより、および、クロマチンに対するそれらの結合を安定化することにより、様々なDNAに基づくプロセスに関与する。大量のヒストン修飾は、クロマチン構造の厳格な制御およびDNAに基づくプロセスの調節における大きな柔軟性を可能にする。この多様性は、異なる部位で同時に修飾され得るヒストン間のクロストークをもたらす(Wang et al.2008,Nature Genetics40(7):897-903)。
【0005】
ヒストン修飾は、互いに正または負に影響し得る。さらに、ヒストン修飾間のコミュニケーションは、DNAメチル化のような他のクロマチン修飾間にも存在し、それらは全て、生物学的機能の全体的な調節を微調整するのに関与している(Du et al.2015,Nature Reviews Molecular Cell Biology,16(9):519-532)。
【0006】
DNAおよびヒストン修飾は、別個のクロマチン状態内のエピゲノムのシグネチャの定義に寄与し、それらは細胞型および組織の同一性を高度に示す。これらのマークのゲノムワイドのプロファイリングは、ゲノム調節の全体的なランドスケープを理解して、さらに、例えば、正常および疾患の細胞の状態の関連におけるエピゲノムの違いを区別するために活用することができる(Consortium Epigenomics 2015,Nature 518(7539):317-329)。しかしながら、クロマチンプロファイリング技術の現在の状況は、細胞の不均質性を研究するのを可能にせず、クロマチン状態における細胞間変動も検出しない。
【0007】
エピジェネティック修飾、エピジェネティックマーカー/イレーザー、クロマチン状態において役割を果たす因子を、ゲノムワイドでマッピングするためには、伝統的なChIP-seq方法を用いた2Dおよび3Dでの組織化は、数多くの細胞が高品質の結合部位プロファイルを産生することを必要とする。いくつかの研究によって、富化または枯渇化された領域の検出における解像度を低下させずにインプット材料を百万単位の細胞から百単位の細胞まで減少させる、最適化されたChIP-seqプロトコルが示されている(Adli et al.2010,Nature Methods 7(8):615-618;Brind’Amour et al.2015,Nature Communications 6:6033;Ma et al.2018,Science Advances 4(4):eaar8187)。しかしながら、これらの方法は、修飾状態の平均化されたスナップショットを生じさせるだけであり、エピジェネティックな不均質性に対する見識を提供しない。
【0008】
単一細胞の解像度でヒストン修飾をプロファイリングするには挑戦が残っていて、それは部分的に、免疫沈降中の非特異的な結合と関連するノイズのレベルが、少量の出発原料では増大する傾向にあるためである。1つの単一細胞からクロマチンを免疫沈降することは技術的には実行可能であるが、非常に可変的な結果をもたらす。
【0009】
単離された単一細胞由来のクロマチンは、特有かつ固有のDNA配列(バーコード)で事前にインデックス化され得て、それから、数個~数千の細胞由来のインデックス化クロマチンと組み合わされて、伝統的なChIP-seqプロトコルのようにバルクで免疫沈降が行なわれる。この方法は、単一細胞の情報を保ちながら、少量のインプット材料の免疫沈降における大きな実験的ノイズと関連する問題を回避する。実際に、バーコードは1つの細胞に特有なので、シーケンシング後、各リードはその由来である細胞に帰することができる。しかしながら、分子インデックス化が関与する他の単一細胞技術と同様に、インデックス化されたヌクレオソームのみが増幅およびシーケンシングされる潜在性を有する。
【0010】
この点について、Rotemは、クロマチンインデックス方法を、液滴に基づくマイクロ流体と組み合わせて何千もの細胞のヒストン修飾をプロファイリングする、Drop-ChIP技術を開発した(Rotem et al.2015,Nature Biotechnol.33(11):1165-1172)。液滴方式は、単一細胞アッセイを行なうための、多目的に使用できるツールを提供する。液滴内の細胞のコンパートメント化、溶解、および、ミクロコッカスヌクレアーゼによるクロマチンのフラグメント化のステップに続いて、前記液滴は、DNAバーコードを含む液滴の第2の集団と1対1でマージされて、単一細胞レベルでのクロマチンのインデックス化を可能にする。
【0011】
Drop-ChIPを用いて、胚性幹細胞の集団内の別個のクロマチン状態が明らかにされたが、単一細胞の情報は、クロマチンインデックス化の低い有効性またはインデックス化ヌクレオソームの少ない回収に起因して、固有の富化遺伝子座の検出は細胞あたり数百という少なさに制限された。とりわけ、Drop-ChIP技術は、細胞あたり回収される情報量に負の影響を与え得る2つの主な制限によって悩まされる。第1に、対称的にインデックス化されたヌクレオソームのみが増幅され得て、シーケンシングライブラリーの部分になり得ることである。この要件は、システムの厳密性を劇的に増大させて、ヌクレオソームに対して強い(すなわち、両末端がバーコードにライゲーションされたものだけという)選択を課する。第2に、インデックス化ヌクレオソームの増幅は、非常に多くのサイクルのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)にのみ依拠していて、それにより、増幅の偏りおよびエラーが生じる蓋然性が高くなる。
【0012】
未処置細胞(または未処置対象由来の細胞)における、自然に起きる、遺伝性の、または誘導される、クロマチン状態の不均質性は、がん治療の作用のメカニズムにかかわらず、薬物耐性の獲得における重要な分子構成要素であり得る。多くのタイプのがんは、はじめは化学療法に敏感であるが、時間の経過とともに、これらおよび他のメカニズムを通して耐性になり得る。しかしながら、薬物耐性の方法は疾患特異的であり得るが、その他は進化的に保存され得る。治療(化学療法およびターゲット療法を含む)に対する耐性の出現は、がんを含む疾患の治療に関して主な挑戦である。未処置の腫瘍内の遺伝的異質性は現在では、耐性の重要な決定因子であると考えられている。さらに、非遺伝性の、および特に、転写およびエピジェネティックのメカニズムは、環境、代謝または治療関係のストレスと直面するがん細胞の適応において役割を果たすことが予想される(Rathert,P.et al.Nature 525,543-547、(2015);Kim,C.et al.Cell 173,879-893 e813,(2018))。ヒストン修飾を介したクロマチン構造の調節は、主なエピジェネティックメカニズムおよび遺伝子発現の調節因子であるが、腫瘍の不均質性および進化に対するクロマチン特徴の寄与は未知のままである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の一態様では、未処置の薬物感受性腫瘍内の細胞の希少な集団が、耐性細胞と同等のクロマチン特徴を示すことを開示する。本発明者らは、10,000遺伝子座/細胞までのカバレッジで、単一細胞の解像度で何千もの細胞のクロマチンランドスケープをプロファイリングするための液滴マイクロ流体手法を開発した。
【0014】
当技術分野で知られている方法に影響している上記の制限を考慮して、患者層別化を決定するための、出現する薬物耐性または現状の薬物耐性の診断および/または予知のための改善された方法の必要性があることが明らかであり、ここで、薬物耐性は別個のクロマチン状態と関連していて、マイクロ流体液滴における単一細胞エピジェネティックプロファイリングの使用が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様は、薬物耐性の診断および/または予知のための方法に関し、ここで単一細胞のクロマチン状態は、マイクロ流体システムを用いることによって、対象から得られた細胞においてプロファイリングされて、当該方法は、以下のステップ:
a.第1のタイプの少なくとも1つの液滴を提供するステップ、
ここで前記の第1のタイプの液滴は、
i.生物学的エレメント、
ii.溶解バッファー、および
iii.ヌクレアーゼ、
を含む
b.前記ヌクレアーゼを一時的に不活性化する条件下で前記の第1のタイプの液滴を回収するステップ、
c.前記の第1のタイプの液滴をインキュベートして、それにより前記ヌクレアーゼを再活性化するステップ、
d.第2のタイプの少なくとも1つの液滴を提供するステップ、ここで前記の第2のタイプの液滴は核酸配列を含む、
e.前記の第1および第2のタイプの液滴をマージして、それにより第3のタイプの液滴を生成するステップ、
f.前記の第3のタイプの液滴をインキュベートして、それにより前記核酸配列を1つまたは複数の目的のゲノム領域(単数または複数)に結合させるステップ、
g.前記の1つまたは複数の目的のゲノム領域(単数または複数)をシーケンシングするステップ
を含む。
【0016】
本発明の別態様は、マイクロ流体システムを用いて1つまたは複数の目的のゲノム領域(単数または複数)を同定する方法に関し、当該方法は、以下のステップ:
a.第1のタイプの少なくとも1つの液滴を提供するステップ、
ここで前記の第1のタイプの液滴は、
i.生物学的エレメント、
ii.溶解バッファー、および
iii.ヌクレアーゼ、
を含む
b.前記ヌクレアーゼを一時的に不活性化する条件下で前記の第1のタイプの液滴を回収するステップ、
c.前記の第1のタイプの液滴をインキュベートして、それにより前記ヌクレアーゼを再活性化するステップ、
d.第2のタイプの少なくとも1つの液滴を提供するステップ、ここで前記の第2のタイプの液滴は核酸配列を含む、
e.前記の第1および第2のタイプの液滴をマージして、それにより第3のタイプの液滴を生成するステップ、
f.前記の第3のタイプの液滴をインキュベートして、それにより前記核酸配列を少なくとも1つの目的のゲノム領域(単数または複数)に結合させるステップ、
g.前記の1つまたは複数の目的のゲノム領域(単数または複数)をシーケンシングするステップ
を含む。
【0017】
本発明のさらなる態様は、
a.少なくとも1つのインデックス配列、
b.シーケンシングアダプター、および
c.3’末端および/または5’末端に位置する少なくとも1つの保護機能
を含む核酸配列に関する。
【0018】
本発明のさらなる態様は、対象の予知、例えば対象の薬物耐性の、診断または予測/判定における、本発明の特定の実施態様に係る核酸配列を使用する方法に関する。
【0019】
本発明の別の態様は、対象から得られたサンプルにおけるエピジェネティック状態のプロファイリングにおける、本発明の特定の実施態様に係る核酸配列を使用する方法に関する。さらなる態様は、対象の予知、例えば対象の任意の薬物耐性の、診断または予測/判定における、エピジェネティック状態のプロファイルまたは情報の使用を含む。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一態様に係るマイクロ流体のワークフローを示す。(A)細胞を、溶解およびクロマチンフラグメント化に必要な試薬とともに45plの液滴内にコンパートメント化する。並行して、DNAバーコードを保有するヒドロゲルビーズを、ライゲーション試薬とともに100plの液滴内に封入する。2つのエマルションを、融合デバイス内に再注入して、バーコードドロップ(drop)(100pl)およびヌクレオソームドロップ(45pl)を非対称的にペアリングして(paired asymmetrically)、電場によって融合をトリガーする。融合液滴をレーザービームによって1つずつスキャンして、各液滴の組成をリアルタイムで分析する。(B)融合液滴のエマルションを、液滴におけるヌクレオソームのバーコード化のために回収する。バーコードは光切断によってビーズから放出されて、ヌクレオソームにライゲーションされる。液滴の内容物を組み合わせて、免疫沈降して、富化DNAをシーケンシングする。バーコードと関係があるビーズのデコンボリューションは、全ての配列をそれらの由来である細胞に帰属させて、単一細胞のクロマチンのプロファイルを再構築する。
図2】液滴間のMNアーゼ活性の同期化および休止を示す。特に、図2aは、MNアーゼインキュベーションの異なる時点におけるヒトJurkat T細胞由来のDNAフラグメントのゲル電気泳動を示す。t=0分においては、DNAはまだフラグメント化されておらず、MNアーゼ活性が氷上での液滴回収の際に同期化されることが確認される。t=12分+1時間(氷)の時点は、インキュベーションの12分後と同様の消化プロファイルを示し、液滴が氷上に保管される場合はMNアーゼ活性が休止されることが確認される。図2bは、固定化核から始まる(starting from fixed nuclei)、液滴におけるMNアーゼ活性の休止を示す。MNアーゼは、クロマチンを過剰消化せずに3時間休止される。
図3】液滴内のMNアーゼ活性を完全に不活性化するために必要なEGTAの濃度を示す。インキュベーション後に残っているオリゴヌクレオチドの画分をTapeStationによって測定して、消化ネガティブコントロール(すなわち、MNアーゼを含まない液滴)に対して標準化した。26mMの終濃度のEGTAは、液滴内のMNアーゼを完全に不活性化した。バープロットは、消化されなかったオリゴヌクレオチドの平均画分をデュプリケートについて示し、エラーバーは標準偏差に相当する。
図4】本発明に係る核酸配列を示す。新規の構造(v2)は、バーコードの両端にPac1制限部位の2分の1を付加することにより、バーコードコンカテマーの消化を可能にする。下側の鎖の3’末端には、ライゲーションの方向を強制するためにC3-スペーサーも付加されている。不要なライゲーションを防ぐ改変塩基による改変を含む保護基によって非全長バーコードが完成される(Non-full-length barcodes are completed with)。表は、各バーコード構造で、シーケンス後に同定された正しいバーコードの比率を示す。
図5】バーコード化ヒドロゲルビーズの品質制御を示す。(a)ヒドロゲルビーズからの光切断後のDNAバーコードのTapestationプロファイルは、全長バーコード(146bpの、より大きなピーク)、ならびに、完了しなかった中間体(72bp、94bpおよび119bpのピーク)の存在を示す。(b)落射蛍光顕微鏡を用いた、液滴内のヒドロゲルビーズのイメージング。左から右に:(i)明視野像;(ii)Illuminaシーケンシングアダプターに相補のDNAプローブの、バーコードに対するハイブリダイゼーション後のイメージング;(iii)(ii)と同様の、光切断による液滴内のバーコードの放出後。スケールバーは35μmである。(c)16個のビーズの、1番目および2番目に最も豊富な(first two most abundant)バーコードの画分を示す、単一ビーズのディープシーケンシングの結果。平均して、ビーズ上に存在するバーコードの97.7%が同一配列に適合するが、2番目に最も豊富なバーコードは、全シーケンシングリードのたった0.17%を示す。
図6】液滴におけるライゲーション効率の評価を示す。ライゲーションは、2時間、4時間およびオーバーナイトのインキュベーションで行なわれた。両方の測定方法は、ライゲーション産物の画分の同様な評価を与え、効率の有意な増大がオーバーナイトのインキュベーション後に観察された(約10%)。バープロットは、ライゲーションされたオリゴヌクレオチドの平均画分をデュプリケートについて示し(2つの異なる日に行なわれた実験)、エラーバーは標準偏差に相当する。
図7】概念研究および予想される結果の証拠を示す。(a)ヒトBおよびTリンパ球を液滴内に別々に封入して特異的にインデックス化した。それから、2つのエマルション由来のインデックス化クロマチンを、3つの別個のヒストン修飾(H3K4me3、H3K27acおよびH3K27me3)をターゲットとするChIP-seqのために組み合わせた。(b)データ分析は、無監督のクラスター手法を用いて細胞を2つのクラスターにグループ化する。それから、B細胞およびT細胞の、それらのクロマチンプロファイルに基づく正しいクラスタリングが、細胞型特異的なバーコード配列によって確認される。
図8】細胞およびヒドロゲルの液滴内封入のモニタリングを示す。(a)1.8kHzで分析した液滴に関して記録された実験的タイムトレース。オレンジの蛍光は全ての液滴において存在し、ドロップのサイズに関して制御するために用いられる(ドロップ-コード)。グリーンの蛍光は、液滴内の細胞の存在を示す(細胞-コード)。各液滴における、ドロップ-コード強度(オレンジ)に対する細胞-コード強度(グリーン)のプロット。細胞を含む液滴は高いグリーンの細胞-コード強度を有しており、ノイズレベルよりも上の細胞ゲートの定義により封入細胞のカウントを可能にする。λ=0.1に調節された細胞密度は、1つの単一細胞を含んでいる液滴を約9%もたらす。(b)650Hzで分析した100plの液滴に関して記録された実験的タイムトレース。オレンジの蛍光は全ての液滴において存在し、液滴のサイズに関して制御するためのドロップ-コードとして用いられる。レッドの蛍光は、液滴内のヒドロゲルビーズの存在を示す(ビーズ-コード)。各液滴における、ドロップ-コード強度(オレンジ)に対するビーズ-コード強度(レッド)のプロット。ビーズの最密順序(close-packed ordering)を用いることにより、液滴の65%~75%が1つのビーズを含む。
図9】液滴融合のライブモニタリングを示す。(a)150Hzで融合後の液滴に関して記録された実験的タイムトレース。オレンジの蛍光は全ての液滴において存在し、融合ドロップのサイズに関して制御するためのドロップ-コードとして用いられる。グリーンの蛍光は細胞の存在を示し、レッドの蛍光はヒドロゲルビーズの存在を示す。ブルーの蛍光は、細胞エマルションに特異的なドロップ-コードである。(b)融合後の4つの主な液滴集団を定義する、各液滴におけるドロップ-コード強度に対するドロップ-コード「細胞」の強度のプロット。中央の主な集団は、正しくペアリングして融合した液滴を示す(70%~80%)。ビーズ-エマルション由来のペアリングしなかった液滴は下側の集団であり、高いブルー蛍光強度を有する細胞-エマルション由来のペアリングしなかった液滴は上側左の集団である。最後の集団(上側右)は、1つのビーズ-液滴と融合した2つの細胞-液滴を含む、不正確にペアリングした液滴と関連する。(c)各液滴におけるビーズ-コード強度に対する細胞-コード強度のプロットは、使用可能なドロップ(1つの細胞と1つのビーズを含んでいるもの)の正確なカウントを可能にする。(a)と並行したタイムトレース由来の液滴は、異なる集団の例として示される。
図10】H3K4me3およびH3K27me3の単一細胞ChIP-seq実験において、マイクロ流体ステーション上の蛍光によって検出された、細胞の合計数およびバーコード化ヒドロゲルビーズとともに封入された細胞の数を示す。シーケンシングデータの分析は、マイクロ流体ステーション上でカウントされた細胞およびビーズの両方を含む液滴の数と密接に関係した数の同定バーコードを示し、このシステムの全体的な有効性が高いことが示された。
図11】scChIP-seq手順の、亜集団を同定する感度を示す。T細胞集団内のスパイク-イン(spiked-in)B細胞の比率を(上から下に)変化させて、バーコードあたりの固有にマップ化されるリードの閾値を(左から右に)変化させた、検出限界のインシリコのシミュレーションにおけるH3K27me3 scChIP-seqデータセットを示すt-SNEプロット。点は、細胞型特異的バーコード配列に従って色付けされている。
図12】発明者らの手順に対する、Drop-ChIPにおけるシーケンシングの性能を示す。表1は、DropChIPおよび発明者らのscChIP-seqシステムにおける、シーケンシングライブラリーあたりの予想される細胞の数、生シーケンシングリードの数、ならびに、細胞あたりの生リードの平均数を比較する。表2は、DropChIPおよび発明者らのscChIP-seqシステムにおける、シーケンシング後に同定された細胞の数、QC後の分析において用いられた細胞の最終的な数、および、QC後の細胞あたりの使用可能なリードの平均数を比較する。
図13】ヒトおよびマウスの細胞の混合が、単一細胞の解像度を確証することを示す。(a)マウス対ヒト参照ゲノムに対する、バーコードのアライニングあたりのリード数(number of reads per barcode aligning to the mouse versus human reference genome)の散布図は、バーコードの96.5%が1つの種に特異的であることを示す(同一バーコードを有するリードの少なくとも95%は、2つの種のうちの1つにマッピングされる)。マウス(26.4%)、ヒト(70.1%)および混合(3.5%)の種のパーセンテージは、液滴あたりの細胞の平均数λ=0.1で、液滴内の細胞のポアソン分布に基づく期待値(それぞれ、32.6%、65.2%および2.2%)に近かった。(b)マイクロ流体ステーション上でカウントされる細胞の予想される数(灰色のバー;1/3のマウス細胞および2/3のヒト細胞を含む混合物由来の、合計で3,000)と比較して、各種に関して同定されたバーコードの数(薄い灰色~濃い灰色-黒いバー)(細胞の数に相当する)を示すバープロット。
図14】単一細胞ChIP-seqデータのクラスタリングは、細胞型特異的な生物学的類似性を明らかにすることを示す。(a)H3K4me3およびH3K27me3の単一細胞ChIP-seqデータセットにおける、バーコードあたり(すなわち細胞あたり)のscChIP-seqの生シーケンシングリードおよび固有のシーケンシングリードの分布のヒストグラム。(b)H3K4me3単一細胞ChIP-seqデータセットを生成するために並行して回収および処理されたB細胞の同一エマルションの3つの非依存性の画分間のlog2累積カウントを示す密度散布図。リプリケート間の相関は、単一細胞にわたる5kbゲノムビン内の100万リードあたりの累積カウントに基づいて計算される。ピアソンの相関スコアおよびp値は、ゲノムワイドで計算される。(c)H3K27me3単一細胞ChIP-seqデータセットを生成するために、異なる細胞培養フラスコから回収されて異なるバッチのバーコード化ヒドロゲルビーズを用いて処理されたB細胞の2つのエマルションに相当する2つの生物学的リプリケートに関する密度散布図。リプリケート間の相関は、単一細胞にわたる50kbゲノムビン内の100万リードあたりの累積カウントに基づいて計算される。ピアソン相関のスコアおよびp値は、ゲノムワイドで計算される。(d)2つの生物学的リプリケート由来のH3K27me3 scChIP-seqデータを示すt-SNEプロットであり、由来となるバッチ(左)またはコンセンサスクラスタリング結果(右)に従って色付けされていて、細胞集団クラスタリングのバッチ効果に対して議論する。(e)左パネル:別々にバーコード化されたB細胞およびT細胞と一緒にした1:1のヒトB細胞およびT細胞の混合集団由来のH3K27me3 scChIP-seqデータに関する細胞間ピアソン相関スコアの階層的なクラスタリングおよび対応するヒートマップ。固有のリードカウント、由来となるバッチ、およびコンセンサスクラスタリング結果を、ヒートマップの上に示す。右パネル:対応するt-SNEプロットであり、混合集団由来の点は灰色で色付けて、別々にバーコード化されたB細胞およびT細胞由来の点は細胞型特異的なバーコード配列に従って異なる灰色の影で色付けている。(f)T細胞およびB細胞のデータセットについて、単一細胞およびバルクの手法によって検出されたH3K4me3ピークを比較するベン図。
図15】単一細胞ChIP-seqプロファイルからの細胞型特異的なクロマチン状態の再構築を示す。(a)単一細胞および細胞型特異的バーコードの両方を保有するヒドロゲルビーズを用いて液滴内で別々にインデックス化されて、免疫沈降のために混合された、ヒトBリンパ球およびTリンパ球由来のH3K4me3およびH3K27me3のscChIP-seqデータセットを示すt-SNEプロット。点は、細胞型特異的バーコード配列に従って色付けされている。精度は、細胞型特異的バーコードによって評価される、scChIP-seqデータのコンセンサスクラスタリング(図16a)および公知の細胞同一性による分類間の一致を示す。(b)各細胞型に関する累積的単一細胞プロファイルおよびバルクのプロファイルを用いた、ディファレンシャルに(differentially)富化された遺伝子座(図16b)のスナップショット。ウィルコクソン符号順位検定によって同定された、ディファレンシャルに結合される領域は、対応する調節されたp値およびlog2倍率変化(fold change)とともに灰色で示される。(c)H3K4me3に関して5kbゲノムビン内およびH3K27me3に関して50kbビン内で計算された、累積的単一細胞対バルクChIP-seqデータにおける、log2 RPM(100万のマップ化されたリードあたりのリードカウント)の富化を示す散布図。ピアソン相関スコアおよびp値は、ゲノムで計算される。
図16】単一細胞ChIP-seqデータは、ヒトT細胞(Jurkat)をヒトB細胞(Ramos)から区別することを示す。(a)H3K4me3(上パネル)およびH3K27me3(下パネル)のscChIP-seqデータセットに関するコンセンサスクラスタリングマトリックス。コンセンサススコアは、0(白:決して一緒にクラスター化されない)から、1(濃い灰色:常に一緒にクラスター化される)までの範囲である。(b)H3K4me3(上パネル)およびH3K27me3(下パネル)のscChIP-seqデータセットに関する、B細胞およびT細胞間のクロマチン特徴を比較する差分解析(differential analysis)に関する、倍率変化に対する調節されたp値(ウィルコクソン順位検定)を示すボルケーノプロット(q値について0.01および|log2FC|について1の閾値)。(c)H3K4me3 scChIP-seqデータセットにおけるパスウェイ分析から、調節されたp値の-log10を示すバープロット。上位10個の重要な遺伝子セットがバープロットの下に示される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明者らは、液滴マイクロ流体に基づく改善された単一細胞ChIP方法を開発し、その方法は、Rotemに開示されるDrop-ChIP技術と比較して個々の細胞あたりの富化遺伝子座の数の5~10倍の増大をもたらす(図7を参照)。当該方法は、単一細胞レベルで、ヒストン修飾、DNA改変塩基(進行中のDNA複製イベントを単一細胞または任意の生物学的エレメントレベルで同定するための改変ヌクレオチドを含む)、クロマチン/DNAと関係がある因子を、高い感度および精度で評価するのを可能にする。当該方法は、他のものとは異なる特徴を有する細胞集団または任意の生物学的エレメントの同定に適用可能であり、これらの特徴は、ヒストンおよび/またはDNAの改変、因子の存在である。これらのエレメントの存在または不存在は、その結果、遺伝子発現における変動を潜在的に示し、したがって、変化を戻すための(to revert the changes)バイオマーカー、治療学的ターゲットとして用いられ得る。
【0022】
細胞は、クロマチン構造のコンパートメントとしての核を意味し得ることが十分に理解される。細胞または核または任意の生物学的エレメントは、固定化された生物学的エレメントであってよい。固定剤の例には、アルデヒド(制限されないが、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドを含む)、アルコール(制限されないが、エタノールおよびメタノールを含む)、酸化剤、水銀、ピクリン酸、Hepes-グルタミン酸バッファー介在性の有機溶媒の保護作用(Hepes-glutamic acid buffer-mediated organic solvent protection effect)(HOPE)固定剤が含まれる。
【0023】
Drop-ChIP(Rotem et al.2015,Nature Biotechnol.33(11):1165-1172)のように、細胞を含んでいる液滴およびバーコードを含んでいる液滴は、専用のマイクロ流体融合デバイス内に再注入されて1対1でマージされる前に別々に生産される(図1を参照)。しかしながら、当該方法は、バーコードストラテジーを特徴付ける少なくとも2つの面でRotemとは異なる。第1に、本発明者らは、オリゴヌクレオチドを含んでいるマイクロタイタープレートから乳化される可溶性バーコードを、何百万もの固有または最も豊富な(most abundant)DNA配列を保有するヒドロゲルビーズ(または任意の固体支持体)によって置き換えた。第2に、本発明の一態様に係るバーコード構造の新規のデザインは、Rotemのように両末端において対称的にバーコード化されたヌクレオソームだけでなく、全てのバーコード化ヌクレオソームの線形増幅を可能にする。第3に、バーコードの設計は、目的核酸のバーコード化の効率を増大させるさらなる特徴を含む。これらの特徴は、「不完全なバーコード」に対する保護部分の付加を含み、目的核酸への付着を妨げる。別の態様では、バーコードは、全長オリゴ上の保護的塩基を含んでよく(保護的塩基は、限定されないが、ホスホロチオエート(phosphorotioate)、LNA/BNA、ヌクレオチドホスホロアミダイト(phosphoramitidites)、合成サイクル、非3’OHまたは5’Pの塩基、2’-O-メチル-DNA/RNAを含む)、これらの保護的塩基は全長バーコードを保護するが、非全長バーコードはエキソヌクレアーゼによって消化され得る。
【0024】
「実験的バーコード」と呼ばれるバーコードの追加のセットは、単一の免疫沈降反応において異なる実験を多重化するために加えられ得る。その後の生物情報学的分析は、「実験的バーコード」の配列に基づいて、実験的状態を逆多重化することを可能にする。
【0025】
バーコードは、あるコンパートメント由来の核酸から他方に対して特徴の詳細を区別することのできる核酸配列であることが十分に理解される。これらのバーコードの生産は当業者に公知であり、ランダム配列を示すことができ(公知の配列が両側にある、またはない)、または、分割プール合成(split pool synthesis)によって生成される(Klein et al.,Cell,2015)。
【0026】
さらに、本発明の一態様に係る方法は、同期化/休止ステップによって特徴付けられて、それによって液滴間のクロマチン消化における細胞間変動が制限される。
【0027】
前述の利点は、本明細書において以降に、本発明の一態様を特徴付ける態様および実施態様において開示される。本発明の実施は、実施例および図面において提供される。
【0028】
本発明の一態様では、マイクロ流体システムを用いて1つまたは複数の目的のゲノム領域(単数または複数)を同定する方法が提供されて、当該方法は、以下のステップ:
a.第1のタイプの少なくとも1つの液滴を提供するステップ、
ここで前記の第1のタイプの液滴は、
i.生物学的エレメント、
ii.溶解バッファー、および
iii.ヌクレアーゼ、
を含む
b.前記ヌクレアーゼを一時的に不活性化する条件下で前記の第1のタイプの液滴を回収するステップ、
c.前記の第1のタイプの液滴をインキュベートして、それにより前記ヌクレアーゼを再活性化するステップ、
d.第2のタイプの少なくとも1つの液滴を提供するステップ、ここで前記の第2のタイプの液滴は核酸配列を含む、
e.前記の第1および第2のタイプの液滴をマージして、それにより第3のタイプの液滴を生成するステップ、
f.前記の第3のタイプの液滴をインキュベートして、それにより前記核酸配列を少なくとも1つの目的のゲノム領域(単数または複数)に結合させるステップ、
g.前記の1つまたは複数の目的のゲノム領域(単数または複数)をシーケンシングするステップ
を含む。
【0029】
本発明の一態様の方法は、マイクロ流体システムにおいて行われる。本発明の一態様の関連における用語「マイクロ流体システム」は、一般にミクロンまたはサブミクロンのスケールで製造される1つまたは複数のチャネルおよび/またはチャンバーを有するシステムまたはデバイスを指す。
【0030】
本発明の一態様の方法は、第1、第2および第3のタイプの液滴の存在によって特徴付けられる。本明細書において用いられる、液滴と関連する用語「第1」、「第2」および「第3」は、それらの内容物に従って液滴を区別するために用いられる。当該方法はマイクロ流体システムにおいて行われるので、用語「液滴」は、「マイクロ流体液滴」も指す。したがって、マイクロ流体システムの関連における用語「液滴」は、第2の流体によって囲まれている第1の流体の隔離された部分も指し、ここで第1の流体と第2の流体は非混和性である。
【0031】
本発明の一態様の方法の段階またはステップに従って、液滴は、マイクロ流体システム内(オンチップ)またはマイクロ流体システムから離れた回収デバイス内(オフチップ)に含まれてよい。液滴は、球状または非球状の形状を有してよい。
【0032】
本発明の一態様の一実施態様では、液滴は約20pl~約100plの範囲の容量を有する。好ましくは、液滴は約30pl~約70plの範囲の容量を有する。より好ましくは、液滴は、約40pl~約50plの範囲の容量を有する。理想的には、液滴は約45plの容量を有する。本明細書において用いられる用語「約」は、指定の値の±10%の値の範囲を指す。
【0033】
本明細書において用いられる用語「溶解バッファー」は、生物学的細胞を溶解することが可能なバッファーを指す。用語「溶解バッファー」の意味は、当業者の共通する一般知識の範囲内である。
【0034】
本明細書において用いられる用語「ゲノム領域」は、DNAまたはRNAによってコードされる核酸配列を指す。
【0035】
本明細書において用いられる用語「ヌクレアーゼ」は、核酸分子内のヌクレオチド残基を結合しているホスホジエステル結合を切断することが可能な酵素試薬を指す。ヌクレアーゼは、二本鎖、一本鎖、環状および線状核酸分子を消化し得る。本発明の一態様の関連において、ヌクレアーゼは、ポリヌクレオチド鎖内のホスホジエステル結合を切断するエンドヌクレアーゼ、または、ポリヌクレオチド鎖の末端でホスホジエステル結合を切断するエキソヌクレアーゼであってよく、トランスポサーゼであってよい。ヌクレアーゼは、特異的なヌクレオチド配列、例えば認識配列内の特異的なホスホジエステル結合を切断する部位特異的ヌクレアーゼであってもよい。ヌクレアーゼの非限定的な例は、ミクロコッカスヌクレアーゼ(MNアーゼ)である。特定の実施態様では、ヌクレアーゼはミクロコッカスヌクレアーゼ(MNアーゼ)である。
【0036】
本明細書において用いられる用語「生物学的エレメント」は、単一細胞、核、核酸含有オルガネラ(例えばミトコンドリア)を指してよく、生物、ヒトまたは非ヒト対象から得てよい。後者の場合、非ヒト対象は哺乳類対象に制限されない。
【0037】
液滴内で個々の生物学的エレメントについて酵素アッセイを行なうことは、細胞が異なる時間尺度で連続して処理されるので挑戦である。例えば、細胞または任意の生物学的エレメントの封入ステップは約20分続き、それはインキュベーションステップと同じ桁の範囲内である。したがって、最初に液滴内に封入される細胞または任意の生物学的エレメントは、生産の最後に液滴内に封入される細胞または任意の生物学的エレメントよりも長くヌクレアーゼと接触することになる。同様の観察が、融合デバイス内の液滴の再注入に関してなされ得る(図1の一般スキームを参照)。実際に、2つのエマルションの融合は、実験デザインに応じて1時間~4時間継続し得て、このことは、フラグメント化されたDNAを含む一部の液滴は、融合およびEGTAによるそれらのMNアーゼ不活化の前に、何時間も「待つ」ことを意味している。その結果として、酵素活性を同期化および休止することは、個々の細胞または任意の生物学的エレメントの間のクロマチン消化の変動の導入を避けるために重要である。
【0038】
とりわけ、従来のバルクChIP-seqアッセイでは、ヌクレアーゼの不活性化は、EGTAの添加によって、ヌクレアーゼインキュベーションの直後に生じる。それとは異なり、単一細胞ChIP-seqアッセイでは、EGTAを液滴内に直ちに添加することができず、ヌクレアーゼは、バーコードを含んでいる液滴との融合後にのみ不活性化される。
【0039】
細胞間または任意の生物学的エレメントのクロマチン消化における変動を制御および制限するために、本発明者らは、第1のタイプの液滴を、前記ヌクレアーゼを一時的に不活性化する条件下で回収するステップを導入した。液滴内のヌクレアーゼ活性を同期化/休止する目的の前記の回収ステップは、各インキュベーションステップの前に行なわれる。本発明者らは、液滴コンパートメントが、MNアーゼ酵素を温度変化に感受性にさせ、酵素活性を選択的に阻害/再活性化および再阻害することが可能であることを同定した。ヌクレアーゼ活性のそのような厳密な制御はバルクでは不可能である。この効果は、MNアーゼ活性だけでなく任意の酵素に依存していると考えられる。
【0040】
したがって、別の実施態様によれば、当該方法は、ステップ(e)の前に、前記ヌクレアーゼを一時的に不活性化する条件下で第1のタイプの液滴を回収するステップをさらに含む。
【0041】
さらに別の実施態様では、ステップ(b)の条件は、-20℃~10℃の範囲の温度を選択するステップを含み、ステップ(c)の条件は、20℃~40℃の範囲の温度を選択するステップを含む。
【0042】
液滴は、単一細胞クロマチンのフラグメント化のためにマイクロ流体システムの外(オフチップ)でインキュベートされ得る。溶解は液滴内で生じるので、溶解した細胞由来の核DNAは、ヌクレアーゼ酵素が接近可能である。したがって、消化のカイネティックは、モノ-ヌクレオソームを優先的にもたらすのに特に重要であり、それらは液滴内に保たれる。
【0043】
特定の実施態様では、インキュベーションステップ(c)は、核DNAフラグメントをモノ-ヌクレオソームにするように合わせられる(is timed to)。
【0044】
さらに別の実施態様では、1つまたは複数の目的のゲノム領域(単数または複数)は、1つまたは複数の改変ゲノム領域(単数または複数)を含む。
【0045】
さらに別の実施態様では、1つまたは複数の目的のゲノム領域(単数または複数)は、改変ゲノム領域である。
【0046】
本発明によれば、改変ゲノム領域は、核酸配列と関連したタンパク質複合体および/または核酸配列を含む。特定の実施態様では、改変ゲノム領域は、改変モノ-ヌクレオソームである。別の実施態様では、改変ゲノム領域は、転写因子結合部位、クロマチン改変因子(modifier)結合部位、クロマチン改作(remodeler)部位、ヒストンシャペロン結合部位である。
【0047】
本発明によれば、改変ゲノム領域は、アセチル化、アミド化、脱アミド化、カルボキシル化、ジスルフィド結合、ホルミル化、グリコシル化、ヒドロキシル化、メチル化、ミリストイル化、ニトロシル化、サクシニル化(assuccinylation)、ブチリル化(butyrylation)、リン酸化、プレニル化、リボシル化、硫酸化、SUMO化、ユビキチン化およびそれらの誘導体を含む群から選択される翻訳後修飾を含んでもよい。
【0048】
本発明によれば、改変ゲノム領域は、CENP-A/CID/cse4(セントロメアのエピジェネティックマーカー)、H3.3(転写)、H2A.Z/H2AV(転写/二本鎖切断の修復)、H2A.X(二本鎖切断の修復/性染色体の減数分裂の再構築)、macroH2A(遺伝子サイレンシング/X染色体の不活性化)、H2A.Bbd(活性クロマチンのエピジェネティックマーク)、H3.Z(外部刺激に対する細胞応答の調節)、H3.Y(外部刺激に対する細胞応答の調節)を含む群から選択されるヒストン変異体を含んでもよい。
【0049】
本発明によれば、改変ゲノム領域は、メチル化およびその誘導体、EdU、BrdU、IdU、CldUおよびその他のような改変ヌクレオチドを含む群から選択される改変DNA配列を含んでもよい。塩基を改変する最も一般的な方法はメチルマークの付加であり、各種にわたってメチル化はシトシンおよびアデニンに発見されていて、5mC、N4-メチルシトシン(N4mC)、または6-メチルアデニン(6mA)、5-ヒドロキシメチルシトシン(5hmC)、5-ホルミルシトシン(5fC)および5-カルボキシルシトシン(5caC)をもたらす。
【0050】
上記に紹介したように、Rotemに開示される方法の注目すべき制限は、対称的にインデックス化されたヌクレオソームのみが増幅され得て、シーケンシングライブラリーの部分になり得るということである。この要件は、システムの厳密性を劇的に増大させ、ヌクレオソームに対して強い選択を課し、それにより、両末端がバーコードにライゲーションされたものに制限される。対照的に、Drop-ChIP方法では、本発明者らは驚くべきことに、ヌクレオソームを一方の末端のみインデックス化することにより、単一細胞のカバレッジ(coverage)を増大させて、最終的には、単一細胞クロマチンプロファイル間のより微細な変動を識別するシステムの可能性を増大させることを見いだした。
【0051】
さらに別の実施態様では、核酸配列は、前記の少なくとも1つまたは複数の目的のゲノム領域(単数または複数)へ、非対称的に結合される。
【0052】
本明細書において用いられる用語「非対称的に結合される」とは、目的のゲノム領域に結合される少なくとも1つのバーコードの存在であって、それにより、結合が、目的のゲノム領域の2つの先端のうちの一方のみに対するものであることを指す。
【0053】
本発明のさらなる態様では、
a.少なくとも1つのインデックス配列、
b.シーケンシングアダプター、および
c.3’末端および/または5’末端に位置する少なくとも1つの保護機能
を含む核酸配列が提供される。
【0054】
本明細書において用いられる用語「核酸配列」は、一本鎖または二本鎖の核酸を指す。さらに別の実施態様では、「核酸配列」はDNAまたはRNAであってよい。好ましい実施態様では、「核酸配列」は二本鎖DNAである。一部の実施態様では、「核酸配列」は、第1の鎖バーコードおよび第2の鎖バーコードを含む二本鎖DNAを含む。一部の実施態様では、第1の鎖バーコードおよび第2の鎖バーコードは相補配列を含む。一部の実施態様では、第1の鎖バーコードおよび第2の鎖バーコードは非相補配列を含む。
【0055】
本明細書において用いられる用語「インデックス配列」は、それが含まれる核酸配列内の任意の他のインデックス配列ならびに任意の他のヌクレオチド配列から区別可能な固有のヌクレオチド配列を指す。「インデックス配列」は、ランダムまたは特に設計されたヌクレオチド配列であってよい。「インデックス配列」は、任意の配列長であってよい。本発明のさらなる態様に係る核酸配列は、ある種をタグ化するために目的のゲノム領域(ターゲット)に対して付加され得て、その集団内のタグ化された種の異なるメンバーを特定および/または区別することを要する。したがって、本発明の一態様の関連における用語「インデックス配列」および「バーコード」は、相互交換可能に用いられ得る。
【0056】
本明細書において用いられる用語「シーケンシングアダプター」は、公知配列のオリゴヌクレオチドを指し、目的のポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド鎖に対するそのライゲーションまたは取り込みは、増幅の用意ができている目的の前記のポリヌクレオチドまたは前記ポリヌクレオチド鎖の産物の生成を可能にする。
【0057】
本発明のさらなる態様の一実施態様では、核酸配列は、少なくとも1つの切断部位をさらに含む。
【0058】
本明細書において用いられる用語「切断部位」は、制限されないが一本鎖または二本鎖核酸配列を切断することが可能な酵素を含む任意の手段により切断されることが可能な核酸配列の標的領域を指す。本発明の一態様の関連において、「切断部位」は、核酸配列の一部を切断または他の方法で放出する役割を果たし得る。「切断部位」は、切断試薬によって認識され、天然、合成、非改変または改変であってよい。
【0059】
本発明の一実施態様では、保護機能は、3’末端のスペースエレメントおよび5’末端のジデオキシ修飾塩基を含む群から選択される。本発明の一態様の関連において、適切な非限定のスペースエレメントは、三炭素スペーサー(C3スペーサー)である。
【0060】
本発明のさらに別の実施態様では、少なくとも1つの切断部位は、回文構造領域を含む制限部位である。
【0061】
本明細書において用いられる用語「制限部位」は、制限酵素、例えばエンドヌクレアーゼによって認識される部位を指す。当業者は、制限エンドヌクレアーゼおよびそれらの制限部位に精通している。制限部位の非限定的な例は、BamHI、BsrI、NotI、XmaI、PspAI、DpnI、MboI、MnlI、Eco57I、Ksp632I、DraIII、AhaII、SmaI、MluI、HpaI、ApaI、BclI、BstEII、TaqI、EcoRI、SacI、HindII、HaeII、DraII、Tsp509I、Sau3AI、PacIを含む。
【0062】
本発明のさらに別の実施態様では、核酸配列は、本発明の第1の態様およびその実施態様に係る方法での使用に適切である。
【0063】
本発明の別の実施態様では、核酸配列は、対象から得られたサンプルにおけるエピジェネティック状態のプロファイリングでの使用に適切である。
【0064】
本明細書において用いられる用語「サンプル」は、生物学的サンプルを指す。
【0065】
本明細書において用いられる用語「対象」は、ヒトまたは非ヒト対象を指す。後者の場合、非ヒト対象は哺乳類対象に制限されない。
【0066】
本発明の一態様に係る方法は、対象における病的状態の診断および/または予知に関与する遺伝子および因子の同定、ならびに、対象における病的状態の診断および/または予知のための方法およびクロマチンに対する治療学的分子の効果を制御するための方法において、異なる適用を見いだすことができる。
【0067】
本発明の関連において、病的状態は、ヌクレオソームまたは核酸配列、ならびに、クロマチンの構造、調節および機能に影響を及ぼすタンパク質の配置を含む任意の改変を指してよい。本明細書において用いられる表現「病的状態」は、疾患治療が細胞周期の調節を必要とするような細胞増殖の異常な速度も包含する。増殖性疾患の例は、制限されないが、がんを含む。
【0068】
本発明の一態様に係る方法は、薬物耐性のインビトロ診断および/または予知に用いることができ、ここで単一細胞のクロマチン状態は、マイクロ流体システムを用いることによって、対象から得られた細胞においてプロファイリングされて、当該方法は、以下のステップ:
a.第1のタイプの少なくとも1つの液滴を提供するステップ、
ここで前記の第1のタイプの液滴は、
a.生物学的エレメント、
b.溶解バッファー、および
c.ヌクレアーゼ、
を含む
b.前記ヌクレアーゼを一時的に不活性化する条件下で前記の第1のタイプの液滴を回収するステップ、
c.前記の第1のタイプの液滴をインキュベートして、それにより前記ヌクレアーゼを再活性化するステップ、
d.第2のタイプの少なくとも1つの液滴を提供するステップ、ここで前記の第2のタイプの液滴は核酸配列を含む、
e.前記の第1および第2のタイプの液滴をマージして、それにより第3のタイプの液滴を生成するステップ、
f.前記の第3のタイプの液滴をインキュベートして、それにより前記核酸配列を1つまたは複数の目的のゲノム領域(単数または複数)に結合させるステップ、
g.前記の1つまたは複数の目的のゲノム領域(単数または複数)をシーケンシングするステップ
を含む。
【0069】
薬物耐性は、出現する薬物耐性および/または現状の薬物耐性であってよい。薬物耐性の出現は、エピジェネティックな不均質性に起因するものであってよい。
【0070】
単一細胞クロマチンのプロファイリングは、任意の複雑な生体系内のクロマチン状態の不均質性およびダイナミクスを調べるための独特なツールであると考えられ、がんに加えて、他の疾患、とりわけ自己免疫疾患、感染性、代謝疾患および健康系(healthy systems)に、とりわけ、細胞の分化および発達、および免疫の監視を研究するために、適用され得る。
【0071】
本発明の一態様に係る方法は、患者層別化を決定するために用いることができ、ここで、薬物耐性は別個のクロマチン状態と関連していて、マイクロ流体液滴における単一細胞エピジェネティックプロファイリングの使用が必要とされる。
【0072】
本発明の実施態様では、病的状態である対象および/または病的状態であると疑われる対象における、薬物耐性の診断および/または予知のための方法が提供される。
【0073】
本発明の実施態様では、健康な対象における、薬物耐性の診断および/または予知のための方法が提供される。
【0074】
本発明によれば、対象における薬物耐性の診断および/または予知は、前記対象が処置または治療を受ける前、受けている最中、または受けた後の時点に行なわれ得る。診断および/または予知は、任意の他の時点に行なわれてもよい。処置または治療は、化学療法薬物、化学的薬物、または生物製剤薬物、例えば抗体(およびその誘導体またはフラグメント)であって以下を含むもの、抗-免疫チェックポイント治療、ケモカインなど、ホルモンなど、サイトカインなど(およびその誘導体)、または、TILs(腫瘍浸潤T細胞)注入、CAR T細胞(キメラ関連抗原)、CAR NK細胞、TCR療法(可溶性または細胞の治療形態)からなる細胞療法など、ワクチン接種など(がんワクチン、ウイルスワクチン、ワクチン接種を誘導する樹状細胞療法)、腫瘍溶解性ウイルスなど、ナノ粒子などによる処置または治療であってよい。
【0075】
本発明の実施態様では、薬物耐性を示している対象および/または薬物耐性を有する疑いがある対象の診断および/または予知のための方法が提供される。
【0076】
対象は、病的状態である対象および/または病的状態を有する疑いがある対象または健康な対象であってよい。
【0077】
本明細書において用いられる用語「診断」は、対象が薬物耐性を示すまたは発症する可能性があるかどうか判定することを指す。本明細書において用いられる用語「診断」は、対象が、薬物耐性、例えば、治療的薬剤、化学療法薬物、化学的薬物、または生物製剤薬物、例えば抗体(およびその誘導体またはフラグメント)であって以下を含むもの、抗-免疫チェックポイント治療、ケモカインなど、ホルモンなど、サイトカインなど(およびその誘導体)、または、TILs(腫瘍浸潤T細胞)注入、CAR T細胞(キメラ関連抗原)、CAR NK細胞、TCR療法(可溶性または細胞の治療形態)からなる細胞療法など、ワクチン接種など(がんワクチン、ウイルスワクチン、ワクチン接種を誘導する樹状細胞療法)、腫瘍溶解性ウイルスなど、ナノ粒子などに対する耐性を患っているか否か、および/またはさらに進行するか否かの蓋然性(probability)(「可能性」(likelihood))を当業者が評価および/または判定することができる方法を指す。本発明の場合、「診断」は、アッセイ、最も好ましくはscChIPの結果の使用を含む。
【0078】
本明細書において用いられる用語「予知」は、薬物耐性が原因である死またはがんなどの疾患の進行の可能性の予測を指し、再発および転移性拡散、炎症、感染性疾患、自己免疫疾患、代謝疾患、遺伝性疾患e非遺伝性疾患を含む。
【0079】
本発明に係る方法は、身体サンプルに由来する単一細胞を用いてよい。
【0080】
本発明の実施態様では、身体サンプルは、流体および/または固体である。本明細書において用いられる身体サンプルは、組織、血液、血清、血漿、つば、排泄物、尿、乳房、肺、結腸、消化管、脳、結腸、腎臓または任意の他の身体サンプル由来であってよい。
【0081】
本発明によれば、1つまたは複数の目的のゲノム領域は、改変ゲノム領域である。改変ゲノム領域は、核酸配列および/または核酸配列と関連したタンパク質複合体を含む。改変ゲノム領域は、アセチル化、アミド化、脱アミド化、カルボキシル化、ジスルフィド結合、ホルミル化、グリコシル化、ヒドロキシル化、メチル化、ミリストイル化、ニトロシル化、リン酸化、プレニル化、リボシル化、硫酸化、SUMO化、ユビキチン化およびそれらの誘導体を含む群から選択される翻訳後修飾を含む。
【0082】
さらに、細胞は、病的状態の対象および/または病的状態であると疑われる対象または健康な対象に由来する。本発明の一実施態様では、細胞は未処置および/または処置され、または、細胞は、未処置または処置された対象由来である。
【0083】
一実施態様では、処置対象由来の処置細胞は、化学療法薬物、化学的薬物、または生物学的薬物によって処置される。
【0084】
好ましい実施態様では、細胞は、化学療法薬物、化学的薬物、または生物製剤薬物、例えば抗体(およびその誘導体またはフラグメント)であって以下を含むもの、抗-免疫チェックポイント治療、ケモカインなど、ホルモンなど、サイトカインなど(およびその誘導体)、または、TILs(腫瘍浸潤T細胞)注入、CAR T細胞(キメラ関連抗原)、CAR NK細胞、TCR療法(可溶性または細胞の治療形態)からなる細胞療法など、ワクチン接種など(がんワクチン、ウイルスワクチン、ワクチン接種を誘導する樹状細胞療法)、腫瘍溶解性ウイルスなど、ナノ粒子などによって処置される。より好ましい実施態様では、細胞は化学療法薬物によって処置される。
【0085】
本発明の一実施態様では、細胞は未処置であり、または細胞は未処置対象由来である。
【0086】
本明細書において用いられる「病的状態」は、がんなどの疾患、または感染性疾患、自己免疫疾患、代謝疾患、炎症疾患、遺伝性疾患および非遺伝性疾患を指す。
【0087】
本発明の一実施態様では、対象の病的状態は、がん、感染性疾患、自己免疫疾患、炎症疾患、代謝疾患 遺伝性疾患、非遺伝性疾患を含む。
【0088】
本発明の一実施態様では、病的状態は検出されないものからステージIVまでの任意のステージのがんを含む。本発明の一実施態様では、がんは、固形がんおよび/または液性がんのような任意のタイプのがんを含む。
【0089】
本発明の好ましい実施態様では、対象の病的状態は乳がんである。
【0090】
本発明によれば、対象は雄または雌対象であってよく;本発明の好ましい実施態様では、対象は雌対象である。
【0091】
本発明の一態様に係る方法では、単一細胞のクロマチン状態は、薬物耐性を促進する遺伝子に関するクロマチンマークが失われている。クロマチンマークは、別個のヒストン修飾H3K4me3、H3K27acおよびH3K27me3を含む。H3K4me3マークは、遺伝子が永久にはサイレンシングされず必要な場合に活性化されるのを可能にすることが予想される。H3K27me3マークは、遺伝子をサイレンシングすることが予想される。遺伝子エンハンサーにおけるH3K27acマークは、遺伝子活性化を促進することが予想される。
【0092】
一実施態様では、単一細胞のクロマチン状態は、薬物耐性へ導く可能性がある遺伝子に関するクロマチンマークが失われている。クロマチンマークは、ヒストン修飾H3K4me3およびH3K27me3を含む。
【0093】
本明細書において用いられる「クロマチンマーク」、「遺伝子に関するマーク」または「マーク」は、別個のクロマチン状態内のエピゲノムのシグネチャの定義に寄与するDNAおよびヒストンの修飾および/または変異体を指し、それらは細胞型および組織の同一性を高度に示す。これらのマークのゲノムワイドのプロファイリングは、ゲノム調節の全体的なランドスケープを理解して、さらに、例えば、正常および疾患の細胞の状態の関連におけるエピゲノムの違いを区別するために活用することができる。当業者は、例えば(Consortium Epigenomics 2015,Nature 518(7539):317-329)に開示される様々なクロマチンマークまたは他の研究を知っている。
【0094】
一実施態様では、単一細胞のクロマチン状態はマークを取得していて、ここで前記マークは、脱サイレンシングの効果を有する。
【0095】
本明細書において用いられる用語「がん」および「腫瘍」は相互交換可能に用いられ、悪性新生物を指す。悪性新生物の例は、固形および血液学的な腫瘍を含む。固形腫瘍は、乳房、膀胱、骨、脳、中枢および末梢神経系、結腸、内分泌腺(例えば甲状腺および副腎皮質)、食道、子宮内膜、生殖細胞、頭頚部、腎臓、肝臓、肺、喉頭および下咽頭、中皮腫、卵巣、膵臓、前立腺、直腸、腎臓、小腸、軟組織、精巣、胃、皮膚、尿管、膣および外陰部の腫瘍によって例示される。悪性新生物は、網膜芽細胞腫およびウィルムス腫瘍によって例示される遺伝性がんを含む。さらに、悪性新生物は、前記臓器における一次腫瘍および離れた臓器内の対応する二次腫瘍(「腫瘍転移」)を含む。血液学的腫瘍は、白血病およびリンパ腫の侵襲性および緩慢性形態、すなわち非ホジキン病、慢性および急性骨髄性白血病(CML/AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、ホジキン病、多発性骨髄腫およびT細胞リンパ腫によって例示される。骨髄異形成症候群、形質細胞性新生物、腫瘍随伴症候群、未知の一次部位がん、ならびにAIDS関連の悪性腫瘍も含まれる。
【0096】
がんは典型的に、診断時における増殖および拡散の観点からがんの進行の程度を判定するためにステージI~IVで標識される。ステージIでは、がんは体の一部分に局在化していて、外科的処置によって除去することができる。ステージIIおよびIIIでは、がんは局所的に進行性であり、化学療法、放射線または外科的処置によって治療することができる。ステージIVでは、がんは他の臓器に転移または拡散していて、化学療法、放射線または外科的処置によって治療することができる(ステージVは、両方の腎臓が影響を受けているウィルムス腫瘍の影響を受けた患者でのみ用いられる)。
【0097】
本明細書において用いられる「代謝疾患」は、制限されないが、メタボリック症候群X、代謝の先天異常、ミトコンドリア疾患、リン代謝障害、ポルフィリン症、プロテオスタシスの欠陥、代謝性皮膚疾患、消耗症候群、水分電解質不均衡、代謝性脳疾患、カルシウム代謝障害、DNA修復欠陥障害、鉄代謝障害、脂質代謝障害、吸収不良症候群を含む。
【0098】
本明細書において用いられる「自己免疫疾患」は、制限されないが、多発性硬化症、アミロイドーシス、強直性脊椎炎、抗-GBM/抗-TBM腎炎、抗リン脂質抗体症候群、自己免疫性血管浮腫、自己免疫性自律神経障害、自己免疫性脳脊髄炎、自己免疫性肝炎、結節性多発動脈炎、多腺性症候群タイプI、II、III、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎筋炎、睡眠発作、壊疽性膿皮症、レイノー現象、間質膀胱炎(IC)、若年性関節炎、若年性糖尿病(1型糖尿病)、若年性筋炎(JM)反応性関節炎、新生児ループス、視神経脊髄炎、セリアック病、シャーガス病、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、プロゲステロン皮膚炎、乾癬、乾癬性慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)、横断性脊髄炎、1型糖尿病、潰瘍性大腸炎(UC)慢性再発性多巣性骨髄炎(CRMO)、チャーグ・ストラウス症候群(CSS)または好酸性肉芽腫症(EGPA)、好中球減少、眼部瘢痕性類天疱瘡、視神経炎、回帰性リウマチを含む。
【0099】
本明細書において用いられる「遺伝性疾患」は、制限されないが、重症複合免疫不全症(SCID)、鎌状赤血球症、皮膚がん、ウィルソン病、ターナー症候群、脊髄性筋萎縮症、テイ・サックス病、サラセミア、トリメチルアミン尿症、筋緊張性ジストロフィー、神経線維腫症、ヌーナン症候群、ダーカム病、ダウン症候群、デュアン眼球後退症候群、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、第V因子ライデン血栓形成傾向、自閉症、常染色体優性多発性嚢胞腎、乳がん、シャルコー・マリー・トゥース病を含む。
【0100】
本明細書において用いられる「炎症疾患」は、制限されないが、アレルギー、喘息、自己免疫疾患、セリアック病、糸球体腎炎、肝炎、炎症性腸疾患を含む。
【実施例0101】
単一細胞ChIP-seq手順のマイクロ流体ワークフロー
本発明に係るマイクロ流体方法のスキーム全般を図1に示す。(a)細胞を、細胞溶解およびクロマチンフラグメント化に必要な試薬とともに45plの液滴内にコンパートメント化する。並行して、DNAバーコードを保有するヒドロゲルビーズを、ライゲーション試薬と、MNアーゼを不活性化するEGTAとともに100plの液滴内に封入する。2つのエマルションを、融合デバイス内に再注入して、バーコードを含んでいる液滴(100pl)およびヌクレオソームを含んでいる液滴(45pl)を非対称的にペアリングして、電場によってトリガーされる電気合体(electro-coalescence)によってマージする。融合液滴をレーザービームによって1つずつスキャンして、各液滴の組成をリアルタイムで分析する。(b)融合液滴のエマルションを、液滴におけるヌクレオソームのバーコード化のために回収してオフチップでインキュベートする。バーコードは、光切断によってビーズから放出されて、ヌクレオソームにライゲーションされる。液滴の内容物を組み合わせて、免疫沈降して、富化DNAをシーケンシングする。バーコードと関係があるリードのデコンボリューションは、単一細胞クロマチンプロファイルを再構築するために全ての配列をそれらの由来である細胞に帰属させる。
【0102】
液滴におけるクロマチンフラグメント化の同期化および休止
細胞は溶解バッファーとMNアーゼとを含む消化ミックスとともに45plの液滴内にコンパートメント化されている(図1参照)。完全な溶解後、クロマチンは液滴内へ放出されて、MNアーゼによって切断されるように接近しやすくなる。このセクションは、ヌクレオソームのサイズのフラグメントを優先的に生じさせるための液滴内のMNアーゼ活性の典型的なキャリブレーションを示す。しかしながら、液滴内で酵素アッセイを行なうのは、細胞が異なる時間尺度で個々に処理されるので挑戦である。その結果として、酵素活性の微調整が、液滴間および単一細胞間のクロマチン消化の不一致を避けるために必要である。
【0103】
液滴における細胞のコンパートメント化
液滴あたりの細胞の数は、液滴あたりのx細胞の平均数λを発見する確率を説明するポアソン分布に従う(Howard Shapiro,Pratical Flow Cytometry,4th edition.Wiley-Liss,2003)。単一細胞ChIP-seq実験では、細胞密度は45plの液滴内にλ=0.1細胞を封入するように調節されて、空の液滴が90.5%であり、9%の液滴が1つの単一細胞を含んでいて、0.5%が2つの細胞を含んでいて、0.015%が2つよりも多い細胞を含んでいる。液滴内の細胞のコンパートメント化のリアルタイムのモニタリングは、カルセインAM(カルセインの非蛍光誘導体)による細胞の事前標識化によって行われる。細胞内に入ると、アセトメトキシ基(AM)が細胞内エステラーゼによって切断されて、強いグリーン蛍光を放出する(励起/発光:495/515nm)。蛍光は、液滴が検出ポイントにおいてレーザービームを横切ったときに得られ、封入された細胞の数をカウントするのを可能にする。
【0104】
液滴回収
液滴は、封入の最後まで(スタートの細胞の数に応じて10分~20分)、氷上で回収チューブ内に回収される。封入後、MNアーゼ消化のためにドロップを37℃でインキュベートする。
【0105】
液滴内のMNアーゼのキャリブレーション
封入の最後に、液滴は、単一細胞のクロマチンフラグメント化のためにオフチップでインキュベートされる。細胞を液滴内で溶解させて、それらの核DNAにMNアーゼ酵素が接近可能であるようにさせる。消化のカイネティックは、モノ-ヌクレオソームを優先的にもたらすのに特に重要であり、それらは液滴内に保たれる。理想的なインキュベーション時間は、核DNAの100%がモノ-ヌクレオソームにフラグメント化されるのに必要な時間と定義される。溶解バッファー組成、MNアーゼ濃度およびインキュベーション時間を含む消化条件は、経時変化試験を行なうことにより各サンプルに関して正確にキャリブレーションされる。キャリブレーションは以下のように行われる:細胞、溶解バッファーおよびMNアーゼを含んでいる45plの液滴を生産して、回収チューブ内に回収して、異なるインキュベーション時間、37℃で置く。各時点において、液滴の画分(a fraction of droplets)を破壊して(is broken)、EGTAの添加によってMNアーゼを直ちに不活性化させる(図3参照)。それから、DNAフラグメントを精製して電気泳動によって分析する。インキュベーション時間の選択は、最も高い比率のモノ-ヌクレオソームを有するが、同時に、ヌクレオソームDNAが過剰消化されるのを防ぐようにバランスがとられる。実際に、ヌクレオソームから突き出ているDNAは、手順のその後のステップにおけるバーコードの効率的なライゲーションを可能にするのに十分長くあるべきであると仮定された。
【0106】
液滴内のMNアーゼ活性の制御
液滴内のMNアーゼ活性は、細胞封入の際に液滴を氷上に回収することによって制御される(図2参照)。実際に、図2の時点t=0分は、液滴生産の最後に得られた液滴の画分に相当するがインキュベーションの直前であって、核DNAがMNアーゼによってまだ消化されていないことを示す。この証拠により、クロマチン消化が、液滴生産時には生じないが37℃でのインキュベーションによって直ちに開始することが確認される(図2参照)。
【0107】
インキュベーション後および融合デバイス内の再注入時に氷上に液滴を置くことは、MNアーゼ活性を「休止」させ得て、クロマチン消化における細胞間の変動を制限し得る。この目的のために、2つの液滴画分がMNアーゼインキュベーションの12分後に取得される:一方の画分は、消化に関して制御するために直ちに処理されて、一方で、2つめの画分はその前に氷上で1時間保管されてから、同様に処理される。予期されるとおり、図2の時点t=12分およびt=12分+1時間(氷上)によって、氷上に保管された画分においてはMNアーゼがもはや活性がないことが確認される(t=20分の時点と比較して)。その結果として、液滴を氷上に保管することは、MNアーゼ活性を「休止」させ、したがって、液滴間のクロマチン消化における変動を防止する。
【0108】
DNAバーコード化のストラテジー
DNAバーコードは、ストレプトアビジン-ビオチン結合およびUV光に曝露された場合にビーズからの放出を可能にする光切断可能部分を介して、ヒドロゲルビーズにグラフトされる(Klein et al.2015,Cell 161(5):1187-1201)。バーコードの合成は、ビーズを、ライゲーション試薬および20bpオリゴヌクレオチドの96個の組み合わせ(後でインデックス1と呼ぶ)を含んでいるマイクロタイターウェルプレート内へ分散させることによって行われる(consists in distributing)。インデックス1は、ビーズにライゲーションされて、後者は、20bpオリゴの96個の新しい組み合わせ(後でインデックス2と呼ぶ)を含んでいる第2のマイクロタイタープレート内に再度分散されるまでプールされる。この分割プール(split-pool)方法を3回繰り返すことにより、96個のあり得るバーコード組み合わせのライブラリーが容易に生産される(すなわち884,736個の組み合わせ)。
【0109】
バーコード化ヒドロゲルビーズの品質制御
バーコード化ビーズは、scChIP-seq技術のコアである試薬の1つであり、それらの品質は、技術的アーチファクトよりむしろそれらのヒストン修飾様式における真の生物学的差異に起因する細胞間変動を確認するために、体系的に制御されている。
【0110】
ビーズから放出されるDNAバーコードのTapestationプロファイルは、>75%が全長(より大きなピーク146bp)であること、ならびに、完了しなかった中間体の存在を明らかにした(図5)。平均すると、全長バーコードの数は、バーコード化ヒドロゲルビーズあたり5×10コピーであると概算される。
【0111】
ヒドロゲルビーズからのバーコードの放出を評価するために、DNAプローブをバーコードにビーズ上でハイブリダイズさせる。それから、後者を100plの液滴内に封入して、scChIP-seq実験と同様にオフチップで回収する。液滴の一部を、Eyer(Eyer et al.2017,Nature Biotechnology 35(10):977-982)によって報告されるようにマイクロメートルのチャンバー内に一列で(as a single file)再注入して、蛍光バーコードがビーズ上に結合している間、落射蛍光顕微鏡によってビーズをイメージングする。予期されるとおり、蛍光はビーズ上に局在化している(図5参照)。ビーズを含んでいる液滴の第2の画分をUV光に曝露してバーコードの放出を開始する。上述のように、光切断後の、ビーズを含んでいる液滴の落射蛍光顕微鏡は、液滴内の蛍光の均一な分布を明らかにし、完全なバーコード放出を示唆する(図5参照)。最後に、単一ビーズシーケンシングを、バーコード化ビーズの全ての新しいバッチに対して行なう。ビーズは、384ウェルプレート内に限界希釈によって分離される。1つのビーズを含んでいるウェルのみを、バーコードの増幅およびシーケンシングのために、イメージングによって選択する。シーケンシングデータの分析は、16個のビーズの、1番目および2番目に最も豊富なバーコードの画分を示す。ビーズあたり10万の異なるバーコードが同定されるが、平均して、最も豊富なバーコードは、シーケンシングリードの97.7%を示す。2番目に最も豊富なバーコードは、平均してリードの0.17%という少なさであり、他の同定されたバーコードは全て無視できることを示唆する(図5参照)。
【0112】
バーコードの設計
バーコードは、ストレプトアビジン-ビオチン結合を介してビーズに結合されて、その結合は、オリゴヌクレオチドの5’末端から光切断可能な物質によって分離される。後者は、光切断可能な基ならびに立体相互作用を最小限にするアルキルスペーサーからなる(すべての物質はPCリンカーと呼ばれる、図4参照)。第1のビオチン化およびPCリンカーオリゴヌクレオチドは全てのバーコードに共通であり、T7プロモーター配列およびIlluminaシーケンシングアダプター(SBS12配列)を含む。T7プロモーター配列は、インビトロ転写反応(IVT)における、免疫沈降後の富化バーコード化ヌクレオソームの線形増幅を開始するための、T7 RNAポリメラーゼに関する認識部位として働く。この増幅ストラテジーは、単一細胞RNA-seqプロトコルにおける、逆転写後のcDNAの偏りのない高感度かつ再現可能な増幅に広く適用される(Hashimshony et al.2012,Cell Reports 2(3):666-673)。第2のステップでは、Illuminaシーケンシングアダプターは、シーケンシングライブラリーの調製を完了するためのPCRハンドル(PCR handle)として働く。また、このアダプターは、リード#2およびバーコード配列のリーディングを開始するプライマーとして、サンプルの次世代シーケンシングに必要である。この第1の共通のオリゴヌクレオチドがグラフトされたビーズは、それから、3インデックスの連続的なライゲーションによるバーコード合成に用いられる。残念ながら、第1の単一細胞ChIP-seqデータセットの分析は、ほんのわずかなリード(約38%)が、完全かつ正しいバーコード構造を有することを示す。
【0113】
バーコードコンカテマーの消化を可能にして、ならびに、非全長バーコードのライゲーションを減少させる、最適化されたバーコード構造を図3に示す。バーコードは、Pac1制限部位の2分の1とフレーム化され、それは、コンカテマー形成の場合にのみ再構築される。これらは免疫沈降後であるが線形増幅前に消化されて、ライブラリーをクリーンアップする。バーコードの光切断側は、3’C3-スペーサーの取り込みによって改変されている。この改変は、3’塩基の3’-ヒドロキシル基にスペーサーアームを導入し、ライゲーションを阻害する。スペーサー基の付加により、ライゲーションの方向がバーコードの3’末端からヌクレオソームへ強制される。3’C3-スペーサーおよび5’逆ジデオキシ-T塩基を含む「ブロック」オリゴヌクレオチド配列によって非全長バーコードが完成される。繰り返しになるが、両方の改変は、不要なライゲーションイベントを制限することを目的とする。
【0114】
液滴内のバーコード化ビーズの封入
ヒドロゲルビーズのような個別の物体(discrete object)を液滴内にローディングすることは、ポアソン分布によって概算され得る。細胞の封入と同様に、ビーズのローディングは、液滴が検出ポイントにおいてレーザービームを横切ったときにリアルタイムでモニタリングされる。単一細胞ChIP-seq実験では、バーコード化ヒドロゲルビーズを含む液滴は、典型的に65%~75%獲得される。
【0115】
ヌクレオソームを含んでいる液滴と、バーコードを含んでいる液滴のマージ
細胞およびDNAバーコードは、MNアーゼによるバーコード消化を防ぐために別々に封入される。単一細胞レベルでクロマチンをインデックス化するために、DNAバーコードは、ヌクレオソームを含んでいる液滴内に第2のステップにおいて届けられなければならない。これは、トリガーされた電場を用いる専用のマイクロ流体デバイス内での2つの液滴集団の活性融合(active fusion)によって達成される。
【0116】
「細胞エマルション」由来の液滴および「バーコードエマルション」由来の液滴を、マイクロ流体融合デバイス内に一列で(as a single-file)再注入する。適切な電気合体(electro-coalescence)を達成するには、2つのエマルション由来の液滴の1対1のペアリングが要求される。2つの液滴が融合するためには接触が必要なので、流体力学的な力により、より速くてより小さい45plの液滴(「細胞エマルション」)が、100plの液滴(「バーコードエマルション」)に追いついて接触するのを可能にする(Mazutis et al.2009,Lab on a Chip 9(18):2665)。液滴生産と同様に、融合液滴の蛍光強度は、それらが検出ポイントにおいてレーザービームを横切ったときに得られる(図1参照)。
【0117】
単一細胞ChIP-seqプロファイルからの、細胞型特異的なクロマチン状態の再構築
図7に示されるように、ヒトTリンパ球およびヒトBリンパ球を別々に封入して、2つの別個のバーコードセットでインデックス化する。液滴内でのヌクレオソームのバーコード化の後に、2つの細胞型由来のインデックス化されたクロマチンを組み合わせて、クロマチン免疫沈降を行ない、ライブラリーをシーケンシングする。
【0118】
シーケンシングライブラリーの免疫沈降または調製に関する偏りの導入(バッチ効果)は、インデックス化クロマチンを組み合わせることによって回避される。各シーケンシングリードは二重の情報を保有している:(1)単一細胞バーコード配列(リードをその由来細胞に割り当てる);(2)「細胞型特異的配列」(リードを1つの細胞型(Bリンパ球またはTリンパ球)に割り当てる)。
【0119】
バーコードが単一細胞に固有であったことを確認するために、図13に示されるように、マウスおよびヒト細胞株の混合を用いて実験が行われていて、それにより、バーコードの97%が明白に単一種に割り当てられることが示され、単一細胞を含んでいる占有(occupied)液滴のパーセンテージ(95%)と一致した。
【0120】
H3K4me3およびH3K27me3改変の単一細胞の分布から細胞同一性を再現するために、scChIP-seq手順の効率および精度を評価した。ヒトRamos(B細胞)およびJurkat(T細胞)を、バーコード化アダプターの2つの独自セットを用いて(図1a-bのように)別々に処理して、液滴内でのアダプターのライゲーション後、バーコード化ヌクレオソームをプールして免疫沈降した。H3K4me3およびH3K27me3のヒストンマークについては、それぞれ、細胞あたり1,630および1,633の固有のリードの平均カバレッジ(coverage)、および、技術的および生物学的リプリケートにわたる高い相関が達成された(図14a-c、それぞれ、p<10-15でr=0.96および0.98)。
【0121】
単一細胞クロマチンプロファイリング実験の両方について、コンセンサスクラスタリングにより、各細胞株に相当する2つの安定したクラスターが同定されて(図15aおよび図16a)、H3K4me3およびH3K27me3プロファイルに関してそれぞれ99.7%および99.5%を超える特異性で細胞同一性に一致した。集められた単一細胞プロファイルは、バルクChIP-seqプロファイルを高精度で再現した(図15b-c、H3K4me3およびH3K27me3に関してそれぞれ、p<10-15でr=0.93および0.97、図14f)。差分解析を通して、RamosおよびJurkat細胞に特異的な許容的(permissive)および抑制的(repressive)なクロマチン特徴が同定された(図16b)。転写開始部位の周辺に蓄積するH3K4me3に注目して、我々は、一致した(concordant)系統特異的な遺伝子セットを、各細胞株に特異的なクロマチン特徴のうち富化されるものとして同定した(図16c)。これらの結果により、scChIP-seq手順が、単一細胞をそれらのクロマチン状態に従って高精度で分類するため、および、細胞集団間で識別力のあるクロマチン特徴を同定するために、単一細胞レベルでクロマチンのランドスケープを検出するためのロバストな方法であることが確認された。
【0122】
単一細胞バーコードおよび細胞型特異的配列のデコンボリューション
各リンカーにおいて、1ミスマッチまでを許容して、バーコードの20マーのインデックス(indices)間に見られる不変の4bpリンカーに関する第1の検索によって、リード#2からバーコードを抽出した。正しいリンカーが同定された場合、3つの散在した(interspersed)20マーのインデックスを抽出して、一緒につないで、60bpの非冗長バーコード配列を形成した。96インデックスの3セット(96)の、全884,736の組み合わせのライブラリーを用いて、高感度のリードマッパー(read mapper)Cushaw3を用いてバーコード配列をマップ化した。一方のインデックスを他方に変換するために、3の編集距離よりも多く必要(it takes more than an edit-distance of 3)なので、インデックスの各セットはエラーを訂正するものである(is error-correcting)。したがって我々は、誤ったバーコードIdに対して配列を間違えて割り当てるのを避けるために、インデックスあたり2以下で、バーコード全体にわたって3の合計ミスマッチ閾値を設定した。2番目の、より遅いステップ(slower step)において、Cushaw3インデックス-ライブラリーにマッピングすることができなかった配列を、それらの個々のインデックスに分割して、各インデックスを96のあり得るインデックスのセットに対して比較して、それぞれの個々のインデックスにおいて2ミスマッチまでを許容した。これらの2つのステップによってバーコードIdに割り当てられない任意の配列は破棄した。
【0123】
ヒストン修飾を、単一細胞レベルで、高いカバレッジで、細胞あたり平均して10,000遺伝子座までプロファイリングすることは、腫瘍サンプル内の相対的に希少なクロマチン状態の存在を明らかにするための手段となる。単一細胞クロマチンのプロファイリングは、任意の複雑な生体系内のクロマチン状態の不均質性およびダイナミクスの役割を調べるための独特なツールであることが期待され:がんに加えて、他の疾患および健康系(healthy systems)に、とりわけ、患者層別化のために細胞の分化および発達を研究するのに適用され得る。
【0124】
本発明に係る方法は、耐性がん細胞に特有のクロマチン特徴を有する希少な細胞が存在すること、および、がん治療のために選択され得ることを、治療に明らかにするために用いることができる。
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14a-b】
図14c-f】
図15a
図15b
図15c
図16a
図16b
図16c
【手続補正書】
【提出日】2024-04-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ流体システムを用いることによる、対象から得られた細胞における単一細胞のクロマチン状態をプロファイリングする方法であって、
前記方法は、以下のステップ:
a.第1のタイプの少なくとも1つの液滴を提供するステップ、
ここで前記の第1のタイプの液滴は、
i.生物学的エレメント、
ii.溶解バッファー、および
iii.ヌクレアーゼ、
を含む、
b.前記ヌクレアーゼを一時的に不活性化する条件下で前記の第1のタイプの液滴を回収するステップ、ここで、前記条件は、-20℃から10℃の範囲の温度を選択することを含み、それにより前記ヌクレアーゼの活性を休止させる、
c.前記の第1のタイプの液滴を制御され同期化されたインキュベーションに供し、それにより前記ヌクレアーゼを再活性化するステップ、ここで、前記インキュベーションは、20℃から40℃の範囲の温度を選択することを含む、
d.第2のタイプの少なくとも1つの液滴を提供するステップ、ここで前記の第2のタイプの液滴は核酸配列を含む、
e.前記の第1および第2のタイプの液滴をマージして、それにより第3のタイプの液滴を生成するステップ、
f.前記の第3のタイプの液滴をインキュベートして、それにより前記核酸配列を1つまたは複数の目的のゲノム領域(単数または複数)に結合させるステップ、
g.前記の1つまたは複数の目的のゲノム領域(単数または複数)をシーケンシングするステップ
を含む、
方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記の1つまたは複数の目的のゲノム領域(単数または複数)は、1つまたは複数の改変ゲノム領域(単数または複数)を含む、
方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、
改変ゲノム領域は、核酸配列および/または核酸配列と関連したタンパク質複合体を含む、
方法。
【請求項4】
請求項2または3に記載の方法であって、
改変ゲノム領域は、翻訳後修飾および/またはヒストン変異体および/または改変DNA配列を含む、
方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の方法であって、
細胞は、病的状態である対象および/または病的状態である疑いがある対象または健康な対象から得られる、
方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の方法であって、
対象は病的状態であり、前記病的状態は、がん、感染性疾患、自己免疫疾患、代謝疾患、炎症疾患、遺伝性疾患および非遺伝性疾患を含む、
方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の方法であって、
単一細胞のクロマチン状態は、薬物耐性を促進する遺伝子に関するクロマチンマークが失われている、
方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、
クロマチンマークは、ヒストン修飾H3K4me3およびH3K27me3である、
方法。
【請求項9】
マイクロ流体システムを用いて1つまたは複数の目的のゲノム領域(単数または複数)を同定する方法であって、
前記1つまたは複数の目的のゲノム領域は、1または複数の改変ゲノム領域を含み、
前記方法は、以下のステップ:
a.第1のタイプの少なくとも1つの液滴を提供するステップ、
ここで前記の第1のタイプの液滴は、
i.生物学的エレメント、
ii.溶解バッファー、および
iii.ヌクレアーゼ、
を含む
b.前記ヌクレアーゼを一時的に不活性化する条件下で前記の第1のタイプの液滴を回収するステップ、ここで、前記条件は、-20℃から10℃の範囲の温度を選択することを含む、
c.前記の第1のタイプの液滴を同時にインキュベートして、それにより前記ヌクレアーゼを再活性化するステップ、ここで、前記インキュベートは、20℃から40℃の範囲の温度を選択することを含む、
d.第2のタイプの少なくとも1つの液滴を提供するステップ、ここで前記の第2のタイプの液滴は核酸配列を含む、
e.前記の第1および第2のタイプの液滴をマージして、それにより第3のタイプの液滴を生成するステップ、
f.前記の第3のタイプの液滴をインキュベートして、それにより前記核酸配列を少なくとも1つの目的のゲノム領域(単数または複数)に結合させるステップ、
g.前記の1つまたは複数の目的のゲノム領域(単数または複数)をシーケンシングするステップ
を含む、
方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、
改変ゲノム領域は、核酸配列と関連したタンパク質複合体および/または核酸配列を含む、
方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、
改変ゲノム領域は、アセチル化、アミド化、脱アミド化、カルボキシル化、ジスルフィド結合、ホルミル化、グリコシル化、ヒドロキシル化、メチル化、ミリストイル化、ニトロシル化、リン酸化、プレニル化、リボシル化、硫酸化、SUMO化、ユビキチン化およびそれらの誘導体を含む群から選択される翻訳後修飾を含む、
方法。
【請求項12】
請求項10または11に記載の方法であって、
核酸配列は、前記の少なくとも1つまたは複数の目的のゲノム領域(単数または複数)へ非対称的に結合される、
方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法における核酸配列の使用であって、前記核酸配列は、
a.少なくとも1つのインデックス配列、
b.シーケンシングアダプター、および
c.3’末端および/または5’末端に位置する少なくとも1つの保護機能
を含む、
使用。
【請求項14】
請求項13に記載の核酸配列の使用であって、
前記核酸配列は、少なくとも1つの切断部位をさらに含む、
使用。
【請求項15】
請求項13または14に記載の核酸配列の使用であって、
保護機能は、3’末端のスペースエレメントおよび5’末端のジデオキシ修飾塩基、またはその逆を含む群から選択される、
使用。
【請求項16】
請求項14に記載の核酸配列の使用であって、
前記の少なくとも1つの切断部位は、回文構造領域を含む制限部位である、
使用。
【外国語明細書】