(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008878
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】ジシダルの調製方法
(51)【国際特許分類】
C07C 45/50 20060101AFI20240112BHJP
C07C 47/347 20060101ALI20240112BHJP
C07C 29/157 20060101ALI20240112BHJP
C07C 35/37 20060101ALI20240112BHJP
C07B 61/00 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
C07C45/50
C07C47/347
C07C29/157
C07C35/37
C07B61/00 300
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023108018
(22)【出願日】2023-06-30
(31)【優先権主張番号】22183347.8
(32)【優先日】2022-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロバート フランケ
(72)【発明者】
【氏名】キャロリン シュナイダー
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ ジャックステル
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ベラー
(72)【発明者】
【氏名】ディーター ロイシュ
(72)【発明者】
【氏名】ハーラルド ヘーガー
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC41
4H006AC45
4H006BA23
4H006BA26
4H006BA40
4H006BA44
4H006BA48
4H006BB11
4H006BC11
4H006BC12
4H006BC34
4H006BE20
4H006BE40
4H006FC36
4H006FE12
4H039CA60
4H039CA62
4H039CB20
4H039CF10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】収率の増加をもたらす、新規のヒドロホルミル化方法を提供する。
【解決手段】a)最初にジシクロペンタジエンを入れ、b)式(I)の化合物を添加し、c)錯体を形成できるPt化合物を添加し、d)ヨウ素化合物を添加し、e)COおよびH
2中に入れ、f)工程a)~工程e)からの反応混合物を加熱し、ジシクロペンタジエンをジシダルに転化する工程を含む方法とする。
(R
1~R
8は、H、アルキル、Phから選択される。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)最初にジシクロペンタジエンを入れ、
b)式(I):
【化1】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8は、-H、-(C
1-C
12)-アルキル、-Phから選択される。)
の化合物を添加し、
c)錯体を形成できるPt化合物を添加し、
d)ヨウ素化合物を添加し、
e)COおよびH
2中に入れ、
f)前記工程a)~前記工程e)からの前記反応混合物を加熱し、前記ジシクロペンタジエンをジシダル(dicidal)に転化する工程
を含む方法。
【請求項2】
前記R1および前記R4が-Hである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記R5、前記R6、前記R7、前記R8が-Phである、請求項1または請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記R2および前記R3が-(C1-C12)-アルキルである、請求項1~請求項3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記R2および前記R3が-CH3である、請求項1~請求項4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記化合物(I)が構造(1):
【化2】
を有する、請求項1~請求項5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記Pt化合物がPt(II)I2、Pt(IV)I4、ジフェニル(1,5-COD)Pt(II)、Pt(II)(acac)2、Pt(0)(PPh3)4、Pt(0)(DVTS)溶液(CAS:68478-92-2)、Pt(0)(エチレン)(PPh3)2、トリス(ベンジリデンアセトン)Pt(0)、Pt(II)(OAC)2溶液、Pt(0)(t-Bu)2、Pt(II)(COD)Me2、Pt(II)(COD)I2、Pt(IV)IMe3、Pt(II)(ヘキサフルオロアセチルアセトネート)2から選択される、請求項1~請求項6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記ヨウ素化合物は、Pt(II)I2、LiIから選択される、請求項1~請求項7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記PtI2は、前記ジシクロペンタジエンを基準にしてモル%で測定した値が0.1モル%~5モル%の範囲となる量で添加される、請求項1~請求項8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
追加工程として、
e’)溶媒を添加する工程
を含む、請求項1~請求項9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記COおよび前記H2が1MPa(10バール)~6MPa(60バール)の範囲の圧力で供給される、請求項1~請求項10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記反応混合物が25℃~150℃の範囲の温度に加熱される、請求項1~請求項11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
追加工程として、
g)ジシダル(dicidal)をジシドル(dicidol)に転化する工程
を含む、請求項1~請求項12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記ジシダル(dicidal)からジシドル(dicidol)への転化が「Shvo触媒」(CAS:104439-77-2)を用いて行われる、請求項13記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジシダル(dicidal)の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許出願公開第2009/0171125号明細書は、環状オレフィンのヒドロホルミル化方法を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0171125号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、新規のヒドロホルミル化方法を提供することである。この方法は、従来技術から知られている方法と比較して、収率の増加をもたらさなければならない。
【0005】
この目的は、請求項1記載の方法により達成される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
a)最初にジシクロペンタジエンを入れ、
b)式(I):
【0007】
【0008】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8は、-H、-(C1-C12)-アルキル、-Phから選択される。)
の化合物を添加し、
c)錯体を形成できるPt化合物を添加し、
d)ヨウ素化合物を添加し、
e)COおよびH2中に入れ、
f)工程a)~工程e)からの反応混合物を加熱し、ジシクロペンタジエンをジシダル(dicidal)に転化する工程
を含む方法。
【0009】
この方法において、工程a)~工程e)は、所望のいかなる順序でも実施することができる。ただし、一般的には、工程a)~工程d)において共反応物を最初に入れた後に、COおよびH2を添加する。
【0010】
工程c)および工程d)は、例えばPtI2を添加することにより、単一工程で実施されてもよい。
本方法の一変形例では、PtI2を添加することにより、Pt化合物およびヨウ素化合物を一工程で添加する。
【0011】
表現「(C1-C12)-アルキル」は、1~12個の炭素原子を有する直鎖および分岐鎖のアルキル基を包含する。これらは、好ましくは(C1-C8)-アルキル基、より好ましくは(C1-C6)-アルキル、最も好ましくは(C1-C4)-アルキルである。
【0012】
適切な(C1-C12)-アルキル基は、特に、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n?ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、2-ペンチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、1,2-ジメチルプロピル、1,1-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、n-ヘキシル、2-ヘキシル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1-エチルブチル、1-エチル-2-メチルプロピル、n-ヘプチル、2-ヘプチル、3-ヘプチル、2-エチルペンチル、1-プロピルブチル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルヘプチル、ノニル、デシルである。
【0013】
本方法の一変形例では、R1およびR4は-Hである。
【0014】
本方法の一変形例では、R5、R6、R7、R8は-Phである。
【0015】
本方法の一変形例では、R2およびR3は-(C1-C12)-アルキルである。
【0016】
本方法の一変形例では、R2およびR3は-CH3である。
【0017】
本方法の一変形例では、化合物(I)は、構造(1):
【0018】
【0019】
を有する。
【0020】
本方法の一変形例では、Pt化合物は、Pt(II)I2、Pt(IV)I4、ジフェニル(1,5-COD)Pt(II)、Pt(II)(acac)2、Pt(0)(PPh3)4、Pt(0)(DVTS)溶液(CAS:68478-92-2)、Pt(0)(エチレン)(PPh3)2、トリス(ベンジリデンアセトン)Pt(0)、Pt(II)(OAC)2溶液、Pt(0)(t-Bu)2、Pt(II)(COD)Me2、Pt(II)(COD)I2、Pt(IV)IMe3、Pt(II)(ヘキサフルオロアセチルアセトネート)2から選択される。
【0021】
本方法の一変形例では、Pt化合物は、Pt(II)I2、Pt(II)(acac)2から選択される。
【0022】
本方法の一変形例では、Pt化合物は、Pt(II)I2である。
【0023】
本方法の一変形例では、ヨウ素化合物は、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、NH4X、ハロゲン化アルキルアンモニウム、ハロゲン化ジアルキル、ハロゲン化トリアルキル、ハロゲン化テトラアルキル、ハロゲン化シクロアルキルアンモニウムから選択される。
【0024】
本方法の一変形例では、ヨウ素化合物は、Pt(II)I2 、LiIから選択される。
【0025】
本方法の一変形例では、PtI2は、ジシクロペンタジエンを基準にしてモル%で測定した値が0.1モル%~5モル%の範囲となる量で添加される。
【0026】
本方法の一変形例では、PtI2は、ジシクロペンタジエンを基準にしてモル%で測定した値が0.1モル%~3モル%の範囲となる量で添加される。
【0027】
本方法の一変形例では、PtI2は、ジシクロペンタジエンを基準にしてモル%で測定した値が0.1モル%~1モル%の範囲となる量で添加される。
【0028】
本方法の一変形例では、本方法は追加工程としてe’)溶媒を添加する工程 を含む。
【0029】
本方法の一変形例では、溶媒は、THF、DCM、ACN、ヘプタン、DMF、トルエン、テキサノール、ペンタン、ヘキサン、オクタン、イソオクタン、デカン、ドデカン、シクロヘキサン、ベンゼン、キシレン、マロサーム、プロピレンカーボネート、MTBE、ジグライム、トリグライム、ジエチルエーテル、ジオキサン、イソプロパノール、tert-ブタノール、イソノナノール、イソブタノール、イソペンタノール、酢酸エチルから選択される。
【0030】
本方法の一変形例では、溶媒は、THF、DCM、ACN、ヘプタン、DMF、トルエン、テキサノールから選択される。
【0031】
本方法の一変形例では、COおよびH2は、1MPa(10バール)~6MPa(60バール)の範囲の圧力で供給される。
【0032】
本方法の一変形例では、COおよびH2は、2MPa(20バール)~5MPa(50バール)の範囲の圧力で供給される。
【0033】
本方法の一変形例では、反応混合物は、25℃~150℃の範囲の温度に加熱される。
【0034】
本方法の一変形例では、反応混合物は、30℃~130℃の範囲の温度に加熱される。
【0035】
本方法の一変形例では、本方法は、追加工程としてg)ジシダル(dicidal)をジシドル(dicidol)に転化する工程を含む。
【0036】
本方法の一変形例では、ジシダル(dicidal)からジシドル(dicidol)への転化は、「Shvo触媒」(CAS:104439-77-2)を用いて実施される。
【0037】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
【実施例0038】
実験の説明
ジシクロペンタジエンのジシダル(dicidal)への転化
【0039】
【0040】
10ミリモルのジシクロペンタジエン(DCPD)、10mLの無水トルエン、0.5モル%のPtI2、2.2当量のキサントホス(1)(Ptベース)を、アルゴン下、Parr Instruments社製の25mL鋼製オートクレーブ内に置く。そのオートクレーブを合成ガス(CO:H2=1:1)で40 バールまで加圧し、80℃に加熱して撹拌することにより反応を開始した。この反応を40バール、80℃で18.5時間行う。次いで、オートクレーブを冷却し、圧力を解放し、GCサンプルを採取する。
【0041】
比較例では、PtI2の代わりにRh(acac)(CO)2を添加した。
ジシダル(dicidal)の収率:
PtI2:89.5%
Rh(acac)(CO)2:5%未満
【0042】
ジシダル(dicidal)からジシドル(dicidol)への転化
【0043】
【0044】
10mLのトルエン、5mLのエタノール、5.5gのジシダル(28.6 ミリモル)および62.16mgの「Shvo触媒」(CAS:104439-77-2)(ジサイダルに対して0.2モル%)を、アルゴン下、40バールの水素圧のParr社製100mL圧力オートクレーブ中で100℃に加熱し、撹拌しながら20時間反応させた。次いで、反応を止め、圧力を解放し、反応混合物を高真空中で蒸留する。140℃でジシドルの異性体混合物の無色油が留分として得られる。
ジシドルの収率:85%
【0045】
実験結果が示すように、本発明の目的は、本発明の方法により達成される。