(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088787
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】イオン架橋化ポリマー組成物又はオリゴマー組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 67/00 20060101AFI20240625BHJP
C08K 3/18 20060101ALI20240625BHJP
C08K 3/16 20060101ALI20240625BHJP
A61L 27/18 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
C08L67/00
C08K3/18
C08K3/16
A61L27/18
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024064125
(22)【出願日】2024-04-11
(62)【分割の表示】P 2023049456の分割
【原出願日】2018-06-08
(31)【優先権主張番号】62/517,377
(32)【優先日】2017-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/517,418
(32)【優先日】2017-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】502224803
【氏名又は名称】ザ ペン ステイト リサーチ ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ジアン
(72)【発明者】
【氏名】ゲルハルト,エタン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】生理的環境で使用され得る改善された自己硬化性材料を提供する。
【解決手段】本発明の重合性組成物は、(i)アルコキシル化若しくはアルケノキシル化、又は非アルコキシル化及び非アルケノキシル化クエン酸、シトレート又はクエン酸のエステル/アミドのうちの1種、(ii)ポリオール又はポリアミン、例えばジオール若しくはジアミン、並びに(iii)一価、二価又は三価の金属陽イオンを含む少なくとも1種の会合塩又は解離塩を含む。一部の場合、重合性組成物は、追加のモノマーを含む。一部の場合、重合性組成物から形成されたポリマー又はオリゴマーを含む。他の例では、金属酸化物架橋剤とシトレートベースポリマーとの混合物を含む自己硬化性コンポジット材料、並びにそれを調製する方法が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(A1)の1種以上のモノマー、
場合により式(A2)の1種以上のモノマー、
式(B1)、(B2)又は(B3)の1種以上のモノマー、及び
式ABの追加の塩:
【化1】
(式中、
X
1、X
2、X
3及びX
4は、それぞれ独立して、-O-又は-NH-であり、
R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、-H、C1~C22アルキル基又はアルケニル基、M
+、M
2+又はM
3+であり、
R
4は、H又はM
+であり、
R
5は、C(O)R
23であり、
R
6は、-H、-NH、-OH、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
7は、-H又はC1~C23アルキル基又はアルケニル基-CH
3であり、
R
8は、-H、C3~C22アルキル基又はアルケニル基、-CH
2CH
2OH又は-CH
2CH
2NH
2であり、
R
23は、C14~C22アルキル基又はアルケニル基であり、
n及びmは、独立して、1~2000の範囲の整数であり、
M
+は、一価の金属陽イオンであり、
M
2+は、二価の金属陽イオンであり、
M
3+は、三価の金属陽イオンであり、
Aは、一価、二価又は三価の金属陽イオンであり、
Bは、陰イオンである)
を含む、重合性組成物。
【請求項2】
R1、R2及びR3が、それぞれ独立して、-H、-CH3又は-CH2CH3である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
式(A2)の1種以上のモノマーを含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
R1、R2及びR3のうちの少なくとも1つが、M2+又はM3+である、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
式(A1)の1種以上のモノマーが、クエン酸一ナトリウム、クエン酸二ナトリウム及び/又はクエン酸三ナトリウムを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
式(A1)の1種以上のモノマーが、クエン酸カルシウムを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
Aが、Na+、K+及びLi+からなる群から選択される一価の陽イオンである、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
Aが二価の陽イオンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
式ABの塩が、CaCl2、Ca(NO3)2、CaI2、CaBr2、CaCO3及びクエン酸カルシウムから選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
Aが三価の陽イオンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
式(C)、式(D1)、式(D2)、式(D3)、式(D4)、式(E1)、式(E2)、式(F)、式(G)、式(H1)、式(H2)、式(H3)、式(I1)、式(I2)、式(I3)、式(I4)、式(I5)及び/又は式(I6)のうちの1種以上のモノマー:
【化2】
(式中、
R
9、R
10、R
11及びR
12は、それぞれ独立して、-H、-OH、-CH
2(CH
2)
xNH
2、-CH
2(CHR
13)NH
2、-CH
2(CH
2)
xOH、-CH
2(CHR
13)OH又は-CH
2(CH
2)
xCOOHであり、
R
13は、-COOH又は-(CH
2)
yCOOHであり、
xは、0~10の範囲の整数であり、
yは、1~10の範囲の整数であり、
pは、1~10の範囲の整数であり、
R
14は、-OH、-OCH
3、-OCH
2CH
3又は-Clであり、
R
15は、アミノ酸側鎖であり、
qは、1~20の範囲の整数であり、
X
5は、-O-又は-NH-であり、
R
16は、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
17及びR
18は、それぞれ独立して、-CH
2N
3、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
X
6及びYは、それぞれ独立して、-O-又は-NH-であり、
R
19及びR
20は、それぞれ独立して、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
21は、-O(CO)C≡CH、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
22は、-CH
3、-OH又は-NH
2である)
をさらに含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
式(C)のモノマーを含み、式(C)のモノマーが、ドーパミン、L-DOPA、D-DOPA及び3,4-ジヒドロキシヒドロ桂皮酸から選択される、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
マレイン酸、無水マレイン酸、及びフマル酸から選択される1つ以上のモノマーを含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
式(G)の1種以上のモノマーを含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項15】
1つ以上のアルキン部分又は1つ以上のアジド部分を含む1種以上のモノマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
1つ以上のアジド部分を含む1種以上のモノマーを含み、1つ以上のアジド部分を含む1種以上のモノマーが、式(H1)、(H2)又は(H3)のモノマー:
【化3】
(式中、
X
5は、-O-又は-NH-であり、
R
16は、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
17及びR
18は、それぞれ独立して、-CH
2N
3、-CH
3又は-CH
2CH
3である)
を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
1つ以上のアルキン部分を含む1種以上のモノマーを含み、1つ以上のアルキン部分を含む1種以上のモノマーが、式(I1)、(I2)、(I3)、(I4)、(I5)又は(I6)のモノマー:
【化4】
(式中、
X
6及びYは、それぞれ独立して、-O-又は-NH-であり、
R
19及びR
20は、それぞれ独立して、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
21は、-O(CO)C≡CH、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
22は、-CH
3、-OH又は-NH
2である)
を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
1つ以上のアルキン部分又は1つ以上のアジド部分を含む1種以上のモノマーが、ペプチド、ポリペプチド、核酸又は多糖を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項19】
溶媒をさらに含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
溶媒が水である、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
溶媒が水と有機溶媒との混合物である、請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
式ABの塩が、25℃において、少なくとも50g/100mLの水への溶解度を有する、請求項20に記載の組成物。
【請求項23】
塩が、25℃において、5.0g/L以下の水への溶解度を有する、請求項20に記載の組成物。
【請求項24】
塩が、25℃において、1.0g/L以下の水への溶解度を有する、請求項20に記載の組成物。
【請求項25】
式(A1)の1種以上のモノマー、場合により式(A2)の1種以上のモノマー、式(B1)、(B2)又は(B3)のうちの1種以上のモノマー、及び式ABの追加の塩:
【化5】
(式中、
X
1、X
2、X
3及びX
4は、それぞれ独立して、-O-又は-NH-であり、
R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、-H、C1~C22アルキル基又はアルケニル基、M
+、M
2+又はM
3+であり、
R
4は、H又はM
+であり、
R
5は、C(O)R
23であり、
R
6は、-H、-NH、-OH、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
7は、-H又はC1~C23アルキル基又はアルケニル基-CH
3であり、
R
8は、-H、C3~C22アルキル基又はアルケニル基、-CH
2CH
2OH又は-CH
2CH
2NH
2であり、
R
23は、C14~C22アルキル基又はアルケニル基であり、
n及びmは、独立して、1~2000の範囲の整数であり、
M
+は、一価の金属陽イオンであり、
M
2+は、二価の金属陽イオンであり、
M
3+は、三価の金属陽イオンであり、
Aは、一価、二価又は三価の金属陽イオンであり、
Bは、陰イオンである)
から形成されるポリマー又はオリゴマー
を含む、組成物。
【請求項26】
R1、R2及びR3が、それぞれ独立して、-H、-CH3又は-CH2CH3である、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
ポリマー又はオリゴマーが、式(A2)の1種以上のモノマーから形成される、請求項25に記載の組成物。
【請求項28】
R1、R2及びR3のうちの少なくとも1つが、M2+又はM3+である、請求項25に記載の組成物。
【請求項29】
式(A1)の1種以上のモノマーが、クエン酸一ナトリウム、クエン酸二ナトリウム及び/又はクエン酸三ナトリウムを含む、請求項25に記載の組成物。
【請求項30】
式(A1)の1種以上のモノマーが、クエン酸カルシウムを含む、請求項25に記載の組成物。
【請求項31】
Aが、Na+、K+及びLi+からなる群から選択される一価の陽イオンである、請求項25に記載の組成物。
【請求項32】
Aが二価の陽イオンである、請求項25に記載の組成物。
【請求項33】
式ABの塩が、CaCl2、Ca(NO3)2、CaI2、CaBr2、CaCO3及びクエン酸カルシウムから選択される、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
Aが三価の陽イオンである、請求項25に記載の組成物。
【請求項35】
ポリマー又はオリゴマーが、式(A)の1種以上のモノマー、場合により式(A2)の1種以上のモノマー、式(B1)、(B2)又は(B3)のうちの1種以上のモノマー、式ABの追加の塩、並びに式(C)、式(D1)、式(D2)、式(D3)、式(D4)、式(E1)、式(E2)、式(F)、式(G)、式(H1)、式(H2)、式(H3)、式(I1)、式(I2)、式(I3)、式(I4)、式(I5)及び/又は式(I6)のうちの1種以上のモノマー:
【化6】
(式中、
R
9、R
10、R
11及びR
12は、それぞれ独立して、-H、-OH、-CH
2(CH
2)
xNH
2、-CH
2(CHR
13)NH
2、-CH
2(CH
2)
xOH、-CH
2(CHR
13)OH又は-CH
2(CH
2)
xCOOHであり、
R
13は、-COOH又は-(CH
2)
yCOOHであり、
xは、0~10の範囲の整数であり、
yは、1~10の範囲の整数であり、
pは、1~10の範囲の整数であり、
R
14は、-OH、-OCH
3、-OCH
2CH
3又は-Clであり、
R
15は、アミノ酸側鎖であり、
qは、1~20の範囲の整数であり、
X
5は、-O-又は-NH-であり、
R
16は、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
17及びR
18は、それぞれ独立して、-CH
2N
3、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
X
6及びYは、それぞれ独立して、-O-又は-NH-であり、
R
19及びR
20は、それぞれ独立して、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
21は、-O(CO)C≡CH、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
22は、-CH
3、-OH又は-NH
2である)
から形成される、請求項25から34のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項36】
ポリマー又はオリゴマーが、式(C)のモノマーから形成され、式(C)のモノマーが、ドーパミン、L-DOPA、D-DOPA及び3,4-ジヒドロキシヒドロ桂皮酸から選択される、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
ポリマー又はオリゴマーが、マレイン酸、無水マレイン酸及びフマル酸から選択される1種以上のモノマーから形成される、請求項35に記載の組成物。
【請求項38】
ポリマー又はオリゴマーが、式(A)の1種以上のモノマー、場合により式(A2)の1種以上のモノマー、式(B1)、(B2)又は(B3)のうちの1種以上のモノマー、式ABの追加の塩、及びジアミンを含む1種以上のモノマーから形成される、請求項25から37のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項39】
ジアミンが、式(G)の構造:
【化7】
(式中、qは、1~20の範囲の整数である)
を有する、請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
ポリマー又はオリゴマーが、式(A)の1種以上のモノマー、場合により式(A2)の1種以上のモノマー、式(B1)、(B2)又は(B3)のうちの1種以上のモノマー、式ABの追加の塩、及び1つ以上のアルキン部分又は1つ以上のアジド部分を含む1種以上のモノマーから形成される、請求項25に記載の組成物。
【請求項41】
ポリマー又はオリゴマーが、1つ以上のアジド部分を含む1種以上のモノマーから形成され、1つ以上のアジド部分を含む1種以上のモノマーが、式(H1)、(H2)又は(H3)のモノマー:
【化8】
(式中、
X
5は、-O-又は-NH-であり、
R
16は、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
17及びR
18は、それぞれ独立して、-CH
2N
3、-CH
3又は-CH
2CH
3である)
を含む、請求項40に記載の組成物。
【請求項42】
ポリマー又はオリゴマーが、1つ以上のアルキン部分を含む1種以上のモノマーから形成され、1つ以上のアルキン部分を含む1種以上のモノマーが、式(I1)、(I2)、(I3)、(I4)のモノマー:
【化9】
(式中、
X
6及びYは、それぞれ独立して、-O-又は-NH-であり、
R
19及びR
20は、それぞれ独立して、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
21は、-O(CO)C≡CH、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
22は、-CH
3、-OH又は-NH
2である)
を含む、請求項40に記載の組成物。
【請求項43】
1つ以上のアルキン部分又は1つ以上のアジド部分を含む1種以上のモノマーが、ペプチド、ポリペプチド、核酸又は多糖を含む、請求項40に記載の組成物。
【請求項44】
ポリマー又はオリゴマーを作製する方法であって、
式(A1)の1種以上のモノマー、場合により式(A2)の1種以上のモノマー、式(B1)、(B2)又は(B3)のうちの1種以上のモノマー、及び式ABの塩:
【化10】
(式中、
X
1、X
2、X
3及びX
4は、それぞれ独立して、-O-又は-NH-であり、
R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、-H、C1~C22アルキル基又はアルケニル基、M
+、M
2+又はM
3+であり、
R
4は、H又はM
+であり、
R
5は、C(O)R
23であり、
R
6は、-H、-NH、-OH、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
7は、-H又はC1~C23アルキル基又はアルケニル基-CH
3であり、
R
8は、-H、C3~C22アルキル基又はアルケニル基、-CH
2CH
2OH又は-CH
2CH
2NH
2であり、
R
23は、C14~C22アルキル基又はアルケニル基であり、
n及びmは、独立して、1~2000の範囲の整数であり、
M
+は、一価の金属陽イオンであり、
M
2+は、二価の金属陽イオンであり、
M
3+は、三価の金属陽イオンであり、
Aは、一価、二価又は三価の金属陽イオンであり、
Bは、陰イオンである)
を反応させるステップを含む、方法。
【請求項45】
R1、R2及びR3が、それぞれ独立して、-H、-CH3又は-CH2CH3である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
式(A2)の1種以上のモノマーを反応させて、ポリマー又はオリゴマーを形成する、請求項44又は45に記載の方法。
【請求項47】
R1、R2及びR3のうちの少なくとも1つが、M2+又はM3+である、請求項44から46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
式(A1)の1種以上のモノマーが、クエン酸一ナトリウム、クエン酸二ナトリウム及び/又はクエン酸三ナトリウムを含む、請求項44から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
式(A1)の1種以上のモノマーが、クエン酸カルシウムを含む、請求項44から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
Aが、Na+、K+及びLi+からなる群から選択される一価の陽イオンである、請求項44から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
Aが二価の陽イオンである、請求項44に記載の方法。
【請求項52】
式ABの塩が、CaCl2、Ca(NO3)2、CaI2、CaBr2、CaCO3及びクエン酸カルシウムから選択される、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
Aが三価の陽イオンである、請求項44に記載の方法。
【請求項54】
ポリマー又はオリゴマーが、式(A)の1種以上のモノマー、場合により式(A2)の1種以上のモノマー、式(B1)、(B2)又は(B3)のうちの1種以上のモノマー、式ABの追加の塩、並びに式(C)、式(D1)、式(D2)、式(D3)、式(D4)、式(E1)、式(E2)、式(F)、式(G)、式(H1)、式(H2)、式(H3)、式(I1)、式(I2)、式(I3)、式(I4)、式(I5)及び/又は式(I6)のうちの1種以上のモノマー:
【化11】
(式中、
R
9、R
10、R
11及びR
12は、それぞれ独立して、-H、-OH、-CH
2(CH
2)
xNH
2、-CH
2(CHR
13)NH
2、-CH
2(CH
2)
xOH、-CH
2(CHR
13)OH又は-CH
2(CH
2)
xCOOHであり、
R
13は、-COOH又は-(CH
2)
yCOOHであり、
xは、0~10の範囲の整数であり、
yは、1~10の範囲の整数であり、
pは、1~10の範囲の整数であり、
R
14は、-OH、-OCH
3、-OCH
2CH
3又は-Clであり、
R
15は、アミノ酸側鎖であり、
qは、1~20の範囲の整数であり、
X
5は、-O-又は-NH-であり、
R
16は、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
17及びR
18は、それぞれ独立して、-CH
2N
3、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
X
6及びYは、それぞれ独立して、-O-又は-NH-であり、
R
19及びR
20は、それぞれ独立して、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
21は、-O(CO)C≡CH、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
22は、-CH
3、-OH又は-NH
2である)
を反応させることにより形成される、請求項44から53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
式(C)のモノマーを反応させ、式(C)のモノマーは、ドーパミン、L-DOPA、D-DOPA及び3,4-ジヒドロキシヒドロ桂皮酸から選択される、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
マレイン酸、無水マレイン酸及びフマル酸から選択される1種以上のモノマーを反応させる、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
ポリマー又はオリゴマーが、式(A)の1種以上のモノマー、場合により式(A2)の1種以上のモノマー、式(B1)、(B2)又は(B3)のうちの1種以上のモノマー、式ABの追加の塩、及びジアミンを含む1種以上のモノマーを反応させることにより形成される、請求項44から57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
ジアミンが、式(G)の構造:
【化12】
(式中、qは、1~20の範囲の整数である)
を有する、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
ポリマー又はオリゴマーが、式(A)の1種以上のモノマー、場合により式(A2)の1種以上のモノマー、式(B1)、(B2)又は(B3)のうちの1種以上のモノマー、式ABの追加の塩、及び1つ以上のアルキン部分又は1つ以上のアジド部分を含む1種以上のモノマーを反応させることにより形成される、請求項44に記載の方法。
【請求項60】
1つ以上のアジド部分を含む1種以上のモノマーを反応させ、1つ以上のアジド部分を含む1種以上のモノマーが、式(H1)、(H2)又は(H3)のモノマー:
【化13】
(式中、
X
5は、-O-又は-NH-であり、
R
16は、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
17及びR
18は、それぞれ独立して、-CH
2N
3、-CH
3又は-CH
2CH
3である)
を含む、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
1つ以上のアルキン部分を含む1種以上のモノマーを反応させ、1つ以上のアルキン部分を含む1種以上のモノマーが、式(I1)、(I2)、(I3)、(I4)、(I5)又は(I6)のモノマー:
【化14】
(式中、
X
6及びYは、それぞれ独立して、-O-又は-NH-であり、
R
19及びR
20は、それぞれ独立して、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
21は、-O(CO)C≡CH、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
22は、-CH
3、-OH又は-NH
2である)
を含む、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
1つ以上のアルキン部分又は1つ以上のアジド部分を含む1種以上のモノマーが、ペプチド、ポリペプチド、核酸又は多糖を含む、請求項59に記載の方法。
【請求項63】
反応が溶媒中で行われる、請求項44から62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
溶媒が水である、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
溶媒が水と有機溶媒との混合物である、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
混合物が、主として水から形成される、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
溶媒が、少なくとも95体積%の水を含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
式ABの塩が、25℃において、少なくとも50g/100mLの水への溶解度を有する、請求項64に記載の方法。
【請求項69】
式ABの塩が、25℃において5.0g/L以下の水への溶解度を有する、請求項64に記載の方法。
【請求項70】
式ABの塩が、25℃において、1.0g/L以下の水への溶解度を有する、請求項64に記載の方法。
【請求項71】
M+、M2+、M3+及び/又は金属陽イオンAを介して、ポリマー又はオリゴマーを架橋するステップをさらに含む、請求項44から70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
ポリマー又はオリゴマーの1つ以上のペンダント基が、M+、M2+、M3+及び/又は金属陽イオンAのうちの1種以上とキレートを形成する、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
式ABの塩の未溶解粒子を介して、ポリマー又はオリゴマーを架橋するステップをさらに含む、請求項44から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
架橋が、重合と同時に行われる、請求項71から74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
金属酸化物、並びに
式(A1)の1種以上のモノマー、場合により式(A2)の1種以上のモノマー、及び式(B1)、(B2)又は(B3)のうちの1種以上のモノマー:
【化15】
(式中、
X
1、X
2、X
3及びX
4は、それぞれ独立して、-O-又は-NH-であり、
R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、-H、又はC1~C22アルキル基若しくはアルケニル基、又はM
+であり、
R
4は、Hであり、
R
5は、C(O)R
23であり、
R
6は、-H、-NH、-OH、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
7は、-H又はC1~C23アルキル基又はアルケニル基-CH
3であり、
R
8は、-H、C3~C22アルキル基又はアルケニル基、-CH
2CH
2OH又は-CH
2CH
2NH
2であり、
R
23は、C14~C22アルキル基又はアルケニル基であり、
n及びmは、独立して、1~20の範囲の整数である)
から形成されるポリマー又はオリゴマー
を含む、自己硬化性組成物。
【請求項76】
ポリマー又はオリゴマーが、式(A1)の1種以上のモノマー、場合により式(A2)の1種以上のモノマー、式(B1)、(B2)又は(B3)のうちの1種以上のモノマー、並びに式(C)、式(D1)、式(D2)、式(D3)、式(D4)、式(E1)、式(E2)、式(F)、式(G)、式(H1)、式(H2)、式(H3)、式(I1)、式(I2)、式(I3)、式(I4)、式(I5)及び/又は式(I6)のうちの1種以上のモノマー:
【化16】
(式中、
R
9、R
10、R
11及びR
12は、それぞれ独立して、-H、-OH、-CH
2(CH
2)
xNH
2、-CH
2(CHR
13)NH
2、-CH
2(CH
2)
xOH、-CH
2(CHR
13)OH又は-CH
2(CH
2)
xCOOHであり、
R
13は、-COOH又は-(CH
2)
yCOOHであり、
xは、0~10の範囲の整数であり、
yは、1~10の範囲の整数であり、
pは、1~10の範囲の整数であり、
R
14は、-OH、-OCH
3、-OCH
2CH
3又は-Clであり、
R
15は、アミノ酸側鎖であり、
qは、1~20の範囲の整数であり、
X
5は、-O-又は-NH-であり、
R
16は、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
17及びR
18は、それぞれ独立して、-CH
2N
3、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
X
6及びYは、それぞれ独立して、-O-又は-NH-であり、
R
19及びR
20は、それぞれ独立して、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
21は、-O(CO)C≡CH、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
22は、-CH
3、-OH又は-NH
2である)
から形成される、請求項75に記載の自己硬化性組成物。
【請求項77】
金属酸化物が、Zn、Mg、Cu、Ca又はそれらの組合せである金属酸化物である、請求項75に記載の自己硬化性組成物。
【請求項78】
充填剤をさらに含む、請求項75に記載の自己硬化性組成物。
【請求項79】
充填剤が、ヒドロキシアパタイト、B-リン酸三カルシウム、パール粉末及びリン酸八カルシウムのうちの少なくとも1つである、請求項78に記載の自己硬化性組成物。
【請求項80】
室温(25℃)で、120分未満の硬化時間を有する、請求項75に記載の自己硬化性組成物。
【請求項81】
室温(25℃)で、80分未満の硬化時間を有する、請求項75に記載の自己硬化性組成物。
【請求項82】
室温(25℃)で、60分未満の硬化時間を有する、請求項75に記載の自己硬化性組成物。
【請求項83】
37℃の生理的温度で、40分未満の硬化時間を有する、請求項75に記載の自己硬化性組成物。
【請求項84】
37℃の生理的温度で、20分未満の硬化時間を有する、請求項75に記載の自己硬化性組成物。
【請求項85】
硬化時間に影響を及ぼす触媒を含まない、請求項80から84のいずれか一項に記載の自己硬化性組成物。
【請求項86】
自己硬化性組成物を作製する方法であって、
金属酸化物及び液体を含む分散液を、式(A1)の1種以上のモノマー、場合により式(A2)の1種以上のモノマー、及び式(B1)、(B2)又は(B3)のうちの1種以上のモノマー:
【化17】
(式中、
X
1、X
2、X
3及びX
4は、それぞれ独立して、-O-又は-NH-であり、
R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、-H、又はC1~C22アルキル基若しくはアルケニル基、又はM
+であり、
R
4は、Hであり、
R
5は、C(O)R
23であり、
R
6は、-H、-NH、-OH、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
7は、-H又はC1~C23アルキル基又はアルケニル基-CH
3であり、
R
8は、-H、C3~C22アルキル基又はアルケニル基、-CH
2CH
2OH又は-CH
2CH
2NH
2であり、
R
23は、C14~C22アルキル基又はアルケニル基であり、
n及びmは、独立して、1~20の範囲の整数である)
から形成されるポリマー又はオリゴマーと混合することにより金属酸化物/ポリマー混合物を形成するステップ
を含む、方法。
【請求項87】
ポリマー又はオリゴマーが、式(A1)の1種以上のモノマー、場合により式(A2)の1種以上のモノマー、式(B1)、(B2)又は(B3)のうちの1種以上のモノマー、並びに式(C)、式(D1)、式(D2)、式(D3)、式(D4)、式(E1)、式(E2)、式(F)、式(G)、式(H1)、式(H2)、式(H3)、式(I1)、式(I2)、式(I3)、式(I4)、式(I5)及び/又は式(I6)のうちの1種以上のモノマー:
【化18】
(式中、
R
9、R
10、R
11及びR
12は、それぞれ独立して、-H、-OH、-CH
2(CH
2)
xNH
2、-CH
2(CHR
13)NH
2、-CH
2(CH
2)
xOH、-CH
2(CHR
13)OH又は-CH
2(CH
2)
xCOOHであり、
R
13は、-COOH又は-(CH
2)
yCOOHであり、
xは、0~10の範囲の整数であり、
yは、1~10の範囲の整数であり、
pは、1~10の範囲の整数であり、
R
14は、-OH、-OCH
3、-OCH
2CH
3又は-Clであり、
R
15は、アミノ酸側鎖であり、
qは、1~20の範囲の整数であり、
X
5は、-O-又は-NH-であり、
R
16は、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
17及びR
18は、それぞれ独立して、-CH
2N
3、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
X
6及びYは、それぞれ独立して、-O-又は-NH-であり、
R
19及びR
20は、それぞれ独立して、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
21は、-O(CO)C≡CH、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
22は、-CH
3、-OH又は-NH
2である)
から形成される、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
ポリマー又はオリゴマーが、溶媒に溶解される、請求項86に記載の方法。
【請求項89】
溶媒が水又は有機溶媒である、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
液体が水又は有機溶媒である、請求項86に記載の方法。
【請求項91】
金属酸化物/ポリマー混合物に充填剤を添加するステップをさらに含む、請求項86に記載の方法。
【請求項92】
充填剤が、ヒドロキシアパタイト、B-リン酸三カルシウム、パール粉末及びリン酸八カルシウムのうちの少なくとも1つである、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
金属酸化物/ポリマー混合物にポロゲンを添加するステップをさらに含む、請求項86に記載の方法。
【請求項94】
金属酸化物/ポリマー混合物からフィルム又は鋳型を形成するステップをさらに含む、請求項86に記載の方法。
【請求項95】
空隙に金属酸化物/ポリマー混合物を注入するステップをさらに含む、請求項86に記載の方法。
【請求項96】
空隙が、整形外科的空隙である、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
金属酸化物/ポリマー混合物の液体又は溶媒を蒸発させるステップをさらに含む、請求項86に記載の方法。
【請求項98】
金属酸化物/ポリマー混合物を熱的に架橋させるステップをさらに含む、請求項86に記載の方法。
【請求項99】
金属酸化物/ポリマー混合物の液体又は溶媒を蒸発させた後に、金属酸化物/ポリマー混合物を熱的に架橋させるステップをさらに含む、請求項97に記載の方法。
【請求項100】
付加製造する方法であって、
請求項75~85のいずれか一項に記載の組成物に由来する三次元物体の複数の層を形成するステップ
を含む、方法。
【請求項101】
空隙に請求項75~85のいずれか一項に記載の組成物を注入するステップ
を含む、空隙を充填する方法。
【請求項102】
空隙が整形外科的空隙である、請求項101に記載の方法。
【請求項103】
整形外科的空隙が骨折である、請求項101に記載の方法。
【請求項104】
生理的環境を処置する方法であって、
生理的環境において、請求項75~85のいずれか一項に記載の組成物を硬化するステップを含む、方法。
【請求項105】
生理的環境の温度が、32~39℃である、請求項104に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年6月9日に出願の米国仮特許出願第62/517,377号、及び2017年6月9日に出願の米国仮特許出願第62/517,418号への優先権を主張する。上記の出願の各々の全内容は、参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本発明は、重合性組成物、及びポリマー組成物又はオリゴマー組成物、並びに重合性組成物からポリマー又はオリゴマーを作製する方法に関する。より詳細には、本発明は、イオンドープした若しくはイオン架橋化したポリマー又はオリゴマーに関する。本出願はまた、自己硬化性コンポジット材料、並びにこれを作製及び使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、生分解性ポリマー材料又はオリゴマー材料は、幅広い範囲の生体医工学用途、例えば組織工学、薬物送達、創傷ドレッシング材、診断的画像化及び医療機器の用途における多数の使用が見いだされてきた。機械特性が改善された新しい生分解性ポリマー材料又はオリゴマー材料が、非常に望まれている。
【0004】
元々の骨の機械的及び骨形成性生体活性を複製する実現可能かつ機能的な骨移植片及び材料の生成は、整形外科再建術の分野を改善する可能性を示してきた。先天性の欠損、がん切除及び外傷関連損傷の修復及び再建にとって重要性なことは、生理的骨組織の粘弾特性及び耐疲労特性、並びに生体活性を再現する、最大効率を有するこのような移植片を設計が可能となることである。さらに、不規則かつ患者に特有の欠損に対する材料及び足場の形状に容易に調節することができること、並びにインプラント用の空隙充填及び固着を実現することができることが、依然としてこの分野に重要である。現在、好適な移植片の生成は、生体に由来する物質の入手可能性、及び不十分な機械特性及び分解特性、並びに合成ポリマー材料の限られた生体適合性及び骨形成活性によって制限されている。さらに、迅速なインシチュの形成が可能な材料は、依然として見いだすことが困難である。
【0005】
骨の再建は、多くの場合、損傷組織を置き換えるための同種移植片又は自家移植片の使用を含む。これらの技法の重要な制限は、置き換えられる元々の組織形態に適合する材料の採取、及び三次元の輪郭形成が困難であることである。さらに、ドナー部位組織の不健全性又は不適合性、及び疾患の伝染により、それぞれ、自家移植片及び同種移植片の有効性が制限される。代替的に、脱細胞した骨マトリックスの使用は、ドナー部位の不健全性を排除し、患者の疾患に罹患するリスク及び免疫応答するリスクを最小化する。しかし、脱細胞した骨の使用は、依然として、骨の採取及び成形、並びに天然細胞の試験片を完全に剥離することができるかに依存している。最終的に、ポリマー足場の使用により、有機組織の採取の必要性、及びそれに伴う制限がなくなる。ポリマーは、特定の目的に応じた物理特性を有する複雑な幾何学形状を工学的に作製する能力を示す。残念ながら、多数のポリマーは、機械特性、内部細孔及び幾何学形状の不適合性、並びに有害な分解生成物のインビボでの発生を含む問題により、有用性が制限される。
【0006】
最近、複雑かつ不規則な空隙の充填及び手術中に埋め込まれた足場の固着を可能にする、並びに複雑な形状を有する足場の形成を可能にする、自己硬化性材料の合成に多大な研究努力が集中されてきた。多数の材料は、インシチュで硬化することが可能であるが、多数の材料は、UV若しくはレドックスにより活性化される架橋、又は生理学的に有害な添加物若しくは条件の適用に依存している。普及しているセメント、例えばPMMAもまた、架橋中に熱を発生し、組織を損傷する懸念が高まる。さらに、大部分の硬化可能な材料は、機械的に弱いヒドロゲル(例えば、アルギネートに基づくもの)、又は脆くかつ不適合性の純粋なセラミック(例えば、リン酸カルシウムの形成に基づく材料)である。さらに、これまでのポリマー系の一部は、材料、例えばPEG、アルギネート及びアクリル酸に依存しており、これらはすべて、過剰な水の取り込み(湿潤時機械性能を限定する)、及び不十分な細胞接着及び生体活性を受ける。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、生理的環境で使用され得る自己硬化性材料の改善が望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、1種以上のモノマーを含む組成物が本明細書に記載されており、この組成物は、反応させると、機械特性の改善した、例えば弾性及び強度の改善した生分解性ポリマー材料又はオリゴマー材料を提供することができる。このようなポリマー材料又はオリゴマー材料もまた、本明細書に記載されている。さらに別の態様では、ポリマー又はオリゴマーを作製する方法が本明細書に記載されている。
【0009】
一部の実施形態では、本明細書に記載されているモノマー組成物又は重合性組成物は、以下:アルコキシル化、アルケノキシル化(alkenoxylated)若しくは非アルコキシル化及び非アルケノキシル化クエン酸、シトレート、又はクエン酸のエステル/アミド;場合により、別のアルコキシル化、アルケノキシル化若しくは非アルコキシル化及び非アルケノキシル化クエン酸、シトレート又はクエン酸のエステル/アミド;ポリオール又はポリアミン、例えばジオール若しくはジアミン;並びに塩を含む、これらからなる、又はこれらから実質的になる。塩は、一価、二価又は三価の陽イオンを含むことができる。一部の実施形態では、本組成物は、カテコール含有化学種、アルコール/アミン、アミド、カルボン酸、イソシアネート、アミノ酸、例えばアルファ-アミノ酸、並びにアルキン部分及び/又はアジド部分を含むモノマーのうちの少なくとも1つを含む、これらからなる、又はこれらから実質的になる。一部の実施形態では、重合性組成物は、自己硬化性組成物である。
【0010】
一部の実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、以下:アルコキシル化、アルケノキシル化若しくは非アルコキシル化及び非アルケノキシル化クエン酸、シトレート、又はクエン酸のエステル/アミド;場合により、別のアルコキシル化、アルケノキシル化若しくは非アルコキシル化及び非アルケノキシル化クエン酸、シトレート又はクエン酸のエステル/アミド;ポリオール又はポリアミン、例えばジオール若しくはジアミン;並びに塩から形成される、又はこれらを反応させることにより形成されるポリマーあるいはオリゴマーを含む、これらからなる、又はこれらから実質的になる。塩は、一価、二価又は三価の陽イオンを含むことができる。さらなる実施形態では、カテコール含有化学種、アルコール/アミン、アミド、カルボン酸、イソシアネート、アミノ酸、例えばアルファ-アミノ酸、並びにアルキン部分及び/又はアジド部分を含むモノマーのうちの少なくとも1つを使用して、ポリマー若しくはオリゴマーを形成するために、又はこれらを形成する反応に使用することができる。
【0011】
一部の実施形態では、本明細書に記載されている方法は、アルコキシル化、アルケノキシル化若しくは非アルコキシル化及び非アルケノキシル化クエン酸、シトレート、又はクエン酸のエステル/アミド;場合により、別のアルコキシル化、アルケノキシル化若しくは非アルコキシル化及び非アルケノキシル化クエン酸、シトレート又はクエン酸のエステル/アミド;ポリオール又はポリアミン、例えばジオール若しくはジアミン;並びに塩を反応させて、ポリマー又はオリゴマーを形成することを含む、これからなる、又はこれから実質的になる。塩は、一価、二価又は三価の陽イオンを含むことができる。一部の実施形態では、塩が一価の陽イオンを含む場合、二価の陽イオン及び/又は三価の陽イオンもまた存在して、ポリマー又はオリゴマーを形成する。さらなる実施形態では、カテコール含有化学種、アルコール/アミン、アミド、カルボン酸、イソシアネート、アミノ酸、例えばアルファ-アミノ酸、並びにアルキン部分及び/又はアジド部分を含むモノマーのうちの少なくとも1つを反応させて、ポリマー又はオリゴマーを形成することができる。一部の実施形態では、本方法は、架橋を含んでもよい。
【0012】
さらに、上記の実施形態では、塩は除外することができるが、ただし、上記のモノマー又は反応物質のうちの1種以上は、ポリマー又はオリゴマーを架橋させて、架橋化ポリマー又はオリゴマーネットワークを形成することができる、金属陽イオン、例えば二価又は三価金属陽イオンを含むことを条件とする。例えば、一部の例では、クエン酸ベースのモノマーは、少なくとも1種の二価又は三価の金属が存在する、塩又は陽イオン-陰イオン錯体として提供される。このような場合、架橋は、本明細書の上に記載されている個別の追加の塩を使用することなく、1種以上の二価又は三価の金属陽イオンにより行われてもよい。
【0013】
したがって、一部の実施形態では、本発明は、式(A1)の1種以上のモノマー、場合により式(A2)の1種以上のモノマー、式(B1)、(B2)又は(B3)のうちの1種以上のモノマー、及び式ABの追加の塩:
【0014】
【化1】
(式中、
X
1、X
2、X
3及びX
4は、それぞれ独立して、-O-又は-NH-であり、
R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、-H、C1~C22アルキル基又はアルケニル基、M
+、M
2+又はM
3+であり、
R
4は、H又はM
+であり、
R
5は、C(O)R
23であり、
R
6は、-H、-NH、-OH、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
7は、-H又はC1~C23アルキル基又はアルケニル基-CH
3であり、
R
8は、-H、C3~C22アルキル基又はアルケニル基、-CH
2CH
2OH又は-CH
2CH
2NH
2であり、
R
23は、C14~C22アルキル基又はアルケニル基であり、
n及びmは、独立して、1~2000の範囲の整数であり、
M
+は、一価の金属陽イオンであり、
M
2+は、二価の金属陽イオンであり、
M
3+は、三価の金属陽イオンであり、
Aは、一価、二価又は三価の金属陽イオンであり、
Bは、陰イオンである)
を含む、重合性組成物を提供する。
【0015】
一部の態様では、R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、-H、-CH3又は-CH2CH3である。
【0016】
一部の実施形態では、本組成物は、式(A2)の1種以上のモノマーを含む。
【0017】
一部の態様では、R1、R2及びR3のうちの少なくとも1つは、M2+又はM3+である。
【0018】
一部の実施形態では、式(A1)の1種以上のモノマーは、クエン酸一ナトリウム、クエン酸二ナトリウム及び/又はクエン酸三ナトリウムを含む。一部の実施形態では、式(A1)の1種以上のモノマーは、クエン酸カルシウムを含む。
【0019】
一部の態様では、Aは、Na+、K+及びLi+からなる群から選択される一価の陽イオンである。他の態様では、Aは、二価の陽イオンである。一部の実施形態では、式ABの塩は、CaCl2、Ca(NO3)2、CaI2、CaBr2、CaCO3及びクエン酸カルシウムから選択される。他の実施形態では、Aは、三価の陽イオンである。
【0020】
一部の実施形態では、本発明の組成物は、式(C)、式(D1)、式(D2)、式(D3)、式(D4)、式(E1)、式(E2)、式(F)、式(G)、式(H1)、式(H2)、式(H3)、式(I1)、式(I2)、式(I3)、式(I4)、式(I5)及び/又は式(I6)のうちの1種以上のモノマー:
【0021】
【化2】
(式中、
R
9、R
10、R
11及びR
12は、それぞれ独立して、-H、-OH、-CH
2(CH
2)
xNH
2、-CH
2(CHR
13)NH
2、-CH
2(CH
2)
xOH、-CH
2(CHR
13)OH又は-CH
2(CH
2)
xCOOHであり、
R
13は、-COOH又は-(CH
2)
yCOOHであり、
xは、0~10の範囲の整数であり、
yは、1~10の範囲の整数であり、
pは、1~10の範囲の整数であり、
R
14は、-OH、-OCH
3、-OCH
2CH
3又は-Clであり、
R
15は、アミノ酸側鎖であり、
qは、1~20の範囲の整数であり、
X
5は、-O-又は-NH-であり、
R
16は、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
17及びR
18は、それぞれ独立して、-CH
2N
3、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
X
6及びYは、それぞれ独立して、-O-又は-NH-であり、
R
19及びR
20は、それぞれ独立して、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
21は、-O(CO)C≡CH、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
22は、-CH
3、-OH又は-NH
2である)
をさらに含む。
【0022】
一部の態様では、本組成物は、式(C)のモノマーを含み、式(C)のモノマーは、ドーパミン、L-DOPA、D-DOPA及び3,4-ジヒドロキシヒドロ桂皮酸から選択される。一部の態様では、本組成物は、マレイン酸、無水マレイン酸及びフマル酸から選択される1つ以上のモノマーを含む。一部の実施形態では、本組成物は、式(G)の1種以上のモノマーを含む。
【0023】
一部の実施形態では、本組成物は、1つ以上のアルキン部分又は1つ以上のアジド部分を含む1種以上のモノマーを含む。さらなる実施形態では、本組成物は、1つ以上のアジド部分を含む1種以上のモノマーを含み、1つ以上のアジド部分を含む1種以上のモノマーは、式(H1)、(H2)又は(H3)のモノマー:
【0024】
【化3】
(式中、
X
5は、-O-又は-NH-であり、
R
16は、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
17及びR
18は、それぞれ独立して、-CH
2N
3、-CH
3又は-CH
2CH
3である)
を含む。
【0025】
一部の実施形態では、本組成物は、1つ以上のアルキン部分を含む1種以上のモノマーを含み、1つ以上のアルキン部分を含む1種以上のモノマーは、式(I1)、(I2)、(I3)、(I4)、(I5)又は(I6)のモノマー:
【0026】
【化4】
(式中、
X
6及びYは、それぞれ独立して、-O-又は-NH-であり、
R
19及びR
20は、それぞれ独立して、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
21は、-O(CO)C≡CH、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
22は、-CH
3、-OH又は-NH
2である)
を含む。
【0027】
一部の態様では、1つ以上のアルキン部分又は1つ以上のアジド部分を含む1種以上のモノマーは、ペプチド、ポリペプチド、核酸又は多糖を含む。
【0028】
一部の実施形態では、本発明によって提供される組成物は、溶媒、例えば水、又は水と有機溶媒との混合物を含む。
【0029】
一部の実施形態では、式ABの塩は、25℃において、少なくとも50g/100mLの水への溶解度を有する。一部の実施形態では、塩は、25℃において、5.0g/L以下の水への溶解度を有する。一部の実施形態では、塩は、25℃において、1.0g/L以下の水への溶解度を有する。
【0030】
一部の態様では、本発明はまた、式(A1)の1種以上のモノマー、場合により式(A2)の1種以上のモノマー、式(B1)、(B2)又は(B3)のうちの1種以上のモノマー、及び式ABの追加の塩:
【0031】
【化5】
(式中、
X
1、X
2、X
3及びX
4は、それぞれ独立して、-O-又は-NH-であり、
R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、-H、C1~C22アルキル基又はアルケニル基、M
+、M
2+又はM
3+であり、
R
4は、H又はM
+であり、
R
5は、C(O)R
23であり、
R
6は、-H、-NH、-OH、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
7は、-H又はC1~C23アルキル基又はアルケニル基-CH
3であり、
R
8は、-H、C3~C22アルキル基又はアルケニル基、-CH
2CH
2OH又は-CH
2CH
2NH
2であり、
R
23は、C14~C22アルキル基又はアルケニル基であり、
n及びmは、独立して、1~2000の範囲の整数であり、
M
+は、一価の金属陽イオンであり、
M
2+は、二価の金属陽イオンであり、
M
3+は、三価の金属陽イオンであり、
Aは、一価、二価又は三価の金属陽イオンであり、
Bは、陰イオンである)
から形成されるポリマー又はオリゴマーを含む組成物を提供する。
【0032】
一部の態様では、R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、-H、-CH3又は-CH2CH3である。
【0033】
一部の実施形態では、ポリマー又はオリゴマーは、式(A2)の1種以上のモノマーから形成される。
【0034】
一部の実施形態では、R1、R2及びR3のうちの少なくとも1つは、M2+又はM3+である。
【0035】
一部の態様では、式(A1)の1種以上のモノマーは、クエン酸一ナトリウム、クエン酸二ナトリウム及び/又はクエン酸三ナトリウムを含む。一部の態様では、式(A1)の1種以上のモノマーは、クエン酸カルシウムを含む。
【0036】
一部の実施形態では、Aは、Na+、K+及びLi+からなる群から選択される一価の陽イオンである。一部の実施形態では、Aは、二価の陽イオンである。一部の実施形態では、式ABの塩は、CaCl2、Ca(NO3)2、CaI2、CaBr2、CaCO3及びクエン酸カルシウムから選択される。他の実施形態では、Aは、三価の陽イオンある。
【0037】
一部の実施形態では、ポリマー又はオリゴマーは、式(A)の1種以上のモノマー、場合により式(A2)の1種以上のモノマー、式(B1)、(B2)又は(B3)のうちの1種以上のモノマー、式ABの追加の塩、並びに式(C)、式(D1)、式(D2)、式(D3)、式(D4)、式(E1)、式(E2)、式(F)、式(G)、式(H1)、式(H2)、式(H3)、式(I1)、式(I2)、式(I3)、式(I4)、式(I5)及び/又は式(I6)のうちの1種以上のモノマー:
【0038】
【化6】
(式中、
R
9、R
10、R
11及びR
12は、それぞれ独立して、-H、-OH、-CH
2(CH
2)
xNH
2、-CH
2(CHR
13)NH
2、-CH
2(CH
2)
xOH、-CH
2(CHR
13)OH又は-CH
2(CH
2)
xCOOHであり、
R
13は、-COOH又は-(CH
2)
yCOOHであり、
xは、0~10の範囲の整数であり、
yは、1~10の範囲の整数であり、
pは、1~10の範囲の整数であり、
R
14は、-OH、-OCH
3、-OCH
2CH
3又は-Clであり、
R
15は、アミノ酸側鎖であり、
qは、1~20の範囲の整数であり、
X
5は、-O-又は-NH-であり、
R
16は、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
17及びR
18は、それぞれ独立して、-CH
2N
3、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
X
6及びYは、それぞれ独立して、-O-又は-NH-であり、
R
19及びR
20は、それぞれ独立して、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
21は、-O(CO)C≡CH、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
22は、-CH
3、-OH又は-NH
2である)
から形成される。
【0039】
一部の実施形態では、ポリマー又はオリゴマーは、式(C)のモノマーから形成され、式(C)のモノマーは、ドーパミン、L-DOPA、D-DOPA及び3,4-ジヒドロキシヒドロ桂皮酸から選択される。他の実施形態では、ポリマー又はオリゴマーは、マレイン酸、無水マレイン酸及びフマル酸から選択される1つ以上のモノマーから形成される。一部の実施形態では、ポリマー又はオリゴマーは、式(A)の1種のモノマー、場合により式(A2)の1種以上のモノマー、式(B1)、(B2)又は(B3)のうちの1種以上のモノマー、式ABの追加の塩、及びジアミンを含む1種以上のモノマーから形成される。
【0040】
一部の実施形態では、ジアミンは、式(G)の構造:
【0041】
【化7】
(式中、qは、1~20の範囲の整数である)
を有する。
【0042】
一部の態様では、ポリマー又はオリゴマーは、式(A)の1種以上のモノマー、場合により式(A2)の1種以上のモノマー、式(B1)、(B2)又は(B3)のうちの1種以上のモノマー、式ABの追加の塩、及び1つ以上のアルキン部分又は1つ以上のアジド部分を含む1種以上のモノマーから形成される。
【0043】
他の態様では、ポリマー又はオリゴマーは、1つ以上のアジド部分を含む1種以上のモノマーから形成され、1つ以上のアジド部分を含む1種以上のモノマーは、式(H1)、(H2)又は(H3)のモノマー:
【0044】
【化8】
(式中、
X
5は、-O-又は-NH-であり、
R
16は、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
17及びR
18は、それぞれ独立して、-CH
2N
3、-CH
3又は-CH
2CH
3である)
を含む。
【0045】
一部の実施形態では、ポリマー又はオリゴマーは、1つ以上のアルキン部分を含む1種以上のモノマーから形成され、1つ以上のアルキン部分を含む1種以上のモノマーは、式(I1)、(I2)、(I3)、(I4)、(I5)又は(I6)のモノマー:
【0046】
【化9】
(式中、
X
6及びYは、それぞれ独立して、-O-又は-NH-であり、
R
19及びR
20は、それぞれ独立して、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
21は、-O(CO)C≡CH、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
22は、-CH
3、-OH又は-NH
2である)
を含む。
【0047】
一部の態様では、1つ以上のアルキン部分又は1つ以上のアジド部分を含む1種以上のモノマーは、ペプチド、ポリペプチド、核酸又は多糖を含む。
【0048】
一部の実施形態では、本発明はまた、ポリマー又はオリゴマーを作製する方法であって、式(A1)の1種以上のモノマー、場合により式(A2)の1種以上のモノマー、式(B1)、(B2)又は(B3)のうちの1種以上のモノマー、及び式ABの塩:
【0049】
【化10】
(式中、
X
1、X
2、X
3及びX
4は、それぞれ独立して、-O-又は-NH-であり、
R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、-H、C1~C22アルキル基又はアルケニル基、M
+、M
2+又はM
3+であり、
R
4は、H又はM
+であり、
R
5は、C(O)R
23であり、
R
6は、-H、-NH、-OH、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
7は、-H又はC1~C23アルキル基又はアルケニル基-CH
3であり、
R
8は、-H、C3~C22アルキル基又はアルケニル基、-CH
2CH
2OH又は-CH
2CH
2NH
2であり、
R
23は、C14~C22アルキル基又はアルケニル基であり、
n及びmは、独立して、1~2000の範囲の整数であり、
M
+は、一価の金属陽イオンであり、
M
2+は、二価の金属陽イオンであり、
M
3+は、三価の金属陽イオンであり、
Aは、一価、二価又は三価の金属陽イオンであり、
Bは、陰イオンである)
を反応させるステップを含む、方法を提供する。
【0050】
一部の態様では、R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、-H、-CH3又は-CH2CH3である。一部の実施形態では、式(A2)の1種以上のモノマーを反応させて、ポリマー又はオリゴマーを形成する。一部の実施形態では、R1、R2及びR3のうちの少なくとも1つは、M2+又はM3+である。
【0051】
一部の実施形態では、式(A1)の1種以上のモノマーは、クエン酸一ナトリウム、クエン酸二ナトリウム及び/又はクエン酸三ナトリウムを含む。他の実施形態では、式(A1)の1種以上のモノマーは、クエン酸カルシウムを含む。
【0052】
一部の態様では、Aは、Na+、K+及びLi+からなる群から選択される一価の陽イオンである。他の態様では、Aは、二価の陽イオンである。一部の実施形態では、ABは、CaCl2、Ca(NO3)2、CaI2、CaBr2、CaCO3及びクエン酸カルシウムから選択される。一部の実施形態では、Aは、三価の陽イオンある。
【0053】
一部の実施形態では、ポリマー又はオリゴマーは、式(A)の1種以上のモノマー、場合により式(A2)の1種以上のモノマー、式(B1)、(B2)又は(B3)のうちの1種以上のモノマー、式ABの追加の塩、並びに式(C)、式(D1)、式(D2)、式(D3)、式(D4)、式(E1)、式(E2)、式(F)、式(G)、式(H1)、式(H2)、式(H3)、式(I1)、式(I2)、式(I3)、式(I4)、式(I5)及び/又は式(I6)のうちの1種以上のモノマー:
【0054】
【化11】
(式中、
R
9、R
10、R
11及びR
12は、それぞれ独立して、-H、-OH、-CH
2(CH
2)
xNH
2、-CH
2(CHR
13)NH
2、-CH
2(CH
2)
xOH、-CH
2(CHR
13)OH又は-CH
2(CH
2)
xCOOHであり、
R
13は、-COOH又は-(CH
2)
yCOOHであり、
xは、0~10の範囲の整数であり、
yは、1~10の範囲の整数であり、
pは、1~10の範囲の整数であり、
R
14は、-OH、-OCH
3、-OCH
2CH
3又は-Clであり、
R
15は、アミノ酸側鎖であり、
qは、1~20の範囲の整数であり、
X
5は、-O-又は-NH-であり、
R
16は、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
17及びR
18は、それぞれ独立して、-CH
2N
3、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
X
6及びYは、それぞれ独立して、-O-又は-NH-であり、
R
19及びR
20は、それぞれ独立して、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
21は、-O(CO)C≡CH、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
22は、-CH
3、-OH又は-NH
2である)
を反応させることによって形成される。
【0055】
一部の態様では、式(C)のモノマーを反応させ、式(C)のモノマーは、ドーパミン、L-DOPA、D-DOPA及び3,4-ジヒドロキシヒドロ桂皮酸から選択される。
【0056】
一部の実施形態では、マレイン酸、無水マレイン酸及びフマル酸から選択される1種以上のモノマーを反応させる。
【0057】
一部の態様では、ポリマー又はオリゴマーは、式(A)の1種以上のモノマー、場合により式(A2)の1種以上のモノマー、式(B1)、(B2)又は(B3)のうちの1種以上のモノマー、式ABの追加の塩、及びジアミンを含む1種以上のモノマーを反応させることにより形成される。
【0058】
一部の態様では、ジアミンは、式(G)の構造:
【0059】
【化12】
(式中、qは、1~20の範囲の整数である)
を有する。
【0060】
一部の実施形態では、ポリマー又はオリゴマーは、式(A)の1種以上のモノマー、場合により式(A2)の1種以上のモノマー、式(B1)、(B2)又は(B3)のうちの1種以上のモノマー、式ABの追加の塩、及び1つ以上のアルキン部分又は1つ以上のアジド部分を含む1種以上のモノマーを反応させることにより形成される。さらなる態様では、1つ以上のアジド部分を含む1種以上のモノマーを反応させ、1つ以上のアジド部分を含む1種以上のモノマーは、式(H1)、(H2)又は(H3)のモノマー:
【0061】
【化13】
(式中、
X
5は、-O-又は-NH-であり、
R
16は、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
17及びR
18は、それぞれ独立して、-CH
2N
3、-CH
3又は-CH
2CH
3である)
を含む。
【0062】
一部の態様では、1つ以上のアルキン部分を含む1種以上のモノマーを反応させ、1つ以上のアルキン部分を含む1種以上のモノマーは、式(I1)、(I2)、(I3)、(I4)、(I5)又は(I6)のモノマー:
【0063】
【化14】
(式中、
X
6及びYは、それぞれ独立して、-O-又は-NH-であり、
R
19及びR
20は、それぞれ独立して、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
21は、-O(CO)C≡CH、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
22は、-CH
3、-OH又は-NH
2である)
を含む。
【0064】
一部の態様では、1つ以上のアルキン部分又は1つ以上のアジド部分を含む1種以上のモノマーは、ペプチド、ポリペプチド、核酸又は多糖を含む。
【0065】
一部の実施形態では、反応は、溶媒中、例えば水、又は水と有機溶媒との混合物中で行われる。さらなる態様では、この混合物は、主に水から形成され、例えば、溶媒は、少なくとも95体積%の水を含む。
【0066】
一部の態様では、式ABの塩は、25℃において、少なくとも50g/100mLの水への溶解度を有する。一部の態様では、式ABの塩は、25℃において、5.0g/L以下の水への溶解度を有する。一部の態様では、式ABの塩は、25℃において、1.0g/L以下の水への溶解度を有する。
【0067】
一部の実施形態では、本発明によって提供される方法は、M+、M2+、M3+及び/又は金属陽イオンAを介して、ポリマー又はオリゴマーを架橋することをさらに含む。さらなる実施形態では、ポリマー又はオリゴマーの1つ以上のペンダント基は、M+、M2+、M3+及び/又は金属陽イオンAのうちの1種以上とキレートを形成する。
【0068】
一部の実施形態では、本方法は、式ABの塩の未溶解粒子を介して、ポリマー又はオリゴマーを架橋させるステップをさらに含む。さらなる態様では、架橋は、重合と同時に行われる。
【0069】
一部の実施形態では、本発明はまた、付加製造する方法であって、上記のポリマー又はオリゴマーを含む組成物に由来する三次元物体の複数の層を形成するステップを含む、方法、及びそのようにして作製された三次元物体を提供する。
【0070】
本発明はまた、金属酸化物架橋剤と、シトレートベースのポリマー、例えばオクタンジオール及びクエン酸モノマーで構成されるポリエステルとの混合物で構成される自己硬化性材料に関する。理論に拘泥することを意図するものではないが、クエン酸エステルポリマーと組み合わされた金属酸化物は、金属酸化物とポリマーの末端カルボキシル基との間の直接反応によりイオン性架橋を形成し、室温で自発的に架橋化ポリマーネットワークを生成すると考えられる。一部の実施形態では、本明細書に記載されている自己硬化性配合物は、顕著な機械的強度、弾性及び自己治癒可能性を有する空隙充填剤として作用することが可能である。本明細書に記載されている自己硬化性配合物はまた、セラミック又は他の添加物を添加することにより改変することができる。本明細書に記載されている金属酸化物により誘導される架橋は、カルシウム、マグネシウム及び亜鉛を含むイオンの取り込みが可能であり、これらは、骨形成分化能、及び抗細菌能を有する銅及び亜鉛を含むイオンを有する。したがって、本明細書に記載されている自己硬化性のシトレートベースの材料は、空隙充填剤、並びに外科用インプラント及び足場用の固着剤、並びにポロゲン及び他の添加物と組み合わせた場合、患者に特有の身体的特徴(anatomy)に基づく解剖学的補正足場として整形外科分野において可能性を有する。
【0071】
本発明は、自己硬化性の金属酸化物/シトレートベースポリマーコンポジット、並びにこれを作製及び使用する方法を記載する。シトレートは、天然の骨における天然の代謝産物及び重要な要素であり、したがって、細胞及び周囲組織に比較的良い影響を有するシトレートベースポリマーは生体適合性である。任意の特定の理論に拘泥することを望むものではないが、開示されているコンポジット中の金属酸化物は、シトレートベースポリマー中の末端カルボキシル基の大部分と反応すると考えられ、水が、主要な副生物として形成する。このような反応は、シトレートベースポリマー鎖間に、複数のイオン性架橋の形成をもたらし、固体の架橋化(「硬化性」)ネットワークを生成すると考えられる。重要なことに、これらの架橋(硬化)反応は、ポリマー若しくは金属酸化物の修飾も触媒の添加などもなしに、室温及び生理的温度で進行することができる。得られた材料は、かなりの強度及び弾性を示す。さらに、金属酸化物、例えば、CaO、MgO、ZnO、CuOなどを含めることによって、金属イオンの放出による、骨形成、抗細菌性、血管新生、創傷治癒及び止血可能性の改善が、物理特性の改善に伴うことになろう。こうして、金属酸化物/シトレートベースポリマーの自己硬化性材料は、系の迅速な硬化可能性を利用する、インシチュでの硬化、成形と組み合わせた場合の、解剖学的補正足場の形成、及び足場の3D印刷を含む、組織工学における複数の可能性を有する。さらに、金属酸化物/シトレートベースポリマーの自己硬化性材料は、空隙充填剤及び外科用インプラント及び足場用の固着剤、並びにポロゲン及び他の添加物と組み合わせた場合、患者に特有の身体的特徴に基づく解剖学的補正足場として整形外科分野における可能性を有する。
【0072】
代表的なシトレートポリマーは、ポリ(オクタンジオール-CO-クエン酸)(POC)又はポリ(エチレングリコール-CO-クエン酸)である。シトレートポリマーは、その溶解度に応じて、有機溶媒、例えばアセトン、エタノール、又は水に溶解することができる。シトレートポリマーは、金属酸化物、金属イオン及びそれらの組合せ物を取り込んで、他のポリマーでは得ることができない組合せ特徴のある物理的(例えば、機械的強度の改善及び迅速な硬化)機能及び生物的機能の増強を得られた材料に付与することができる、プラットフォーム材料である。金属酸化物が、物理的混合により、ポリマー溶液又はプレポリマー(溶媒を含まない)に取り込まれ、クエン酸のカルボキシル基との直接的な触媒不含反応に関与すると考えられる。金属酸化物に由来するイオンは、シトレートポリマーをインシチュで固体材料内で硬化することが可能な可逆性架橋ネットワークを形成すると考えられる。金属酸化物を取り込んだポリマーは、直接的なキャスト成形によりフィルム/3D充填剤に形成することができる。金属酸化物/カルボキシル基の反応に続く熱的なエステル化もまた、適用されて、この材料をさらに強化することができる。多孔質足場は、ポリマー溶液と塩化ナトリウムポロゲンとを物理的に混合し、次いで熱的架橋及びポロゲンの浸出により形成することができ、コンポジットは、ポリマーとヒドロキシアパタイト又は他の充填剤との物理的混合、及び所望の場合、その後の熱的架橋により形成することができる。
【0073】
本発明の目的は、考えられることに、金属酸化物とシトレートベースポリマー、例えばPOCのカルボキシル基との直接的な、触媒を含まない反応により、POCに金属酸化物又は金属酸化物の組合せ物を均質に取り込ませることである。
【0074】
本発明の目的は、生理的温度で迅速に自己硬化して、空隙充填剤として機能する、及び足場を固着することが可能な注入可能なシトレートベースの材料を生成することである。注入可能なシトレートベースポリマーは、水又は有機溶媒のどちらか一方に溶解することができる。
【0075】
本発明の目的は、セラミック及び他の添加物を金属酸化物/POCと混合することにより、自己硬化性コンポジットを生成することである。
【0076】
本発明の目的は、金属酸化物の取り込みによる、乾燥条件及び水和条件における、熱架橋されたPOCフィルムの機械的強度を増強することである。
【0077】
本発明の目的は、金属酸化物/POCを利用する、均質な物理特性及び改善された機械的強度を有する熱架橋された多孔質足場及びコンポジットを作製することである。
【0078】
本発明の別の目的は、金属酸化物/POCを使用して、ヒト間葉系幹細胞の骨形成の分化を促進できる材料を作製することである。
【0079】
本発明の目的は、金属酸化物/POCを使用して、抗細菌能を有する材料を作製することである。
【0080】
本発明の目的は、イオンドープしたPOCを使用して、止血可能な材料を作製することである。
【0081】
本発明の目的は、以下に限定されないが、ポリ(オクタンジオール-CO-クエン酸)(POC)、生分解性フォトルミネッセンスポリマー(BPLP)及び注入可能なシトレートベースのムール貝触発性生体接着剤(injectable citrate based mussel inspired bioadhesive:iCMBA)を含む、様々なシトレートベースの材料に金属酸化物を取り込ませることである。
【0082】
本発明は、金属酸化物/POC及びそのコンポジットを3D画像化から生成した鋳型と組み合わせることによる解剖学的補正足場を作製することである。
【0083】
本発明の目的は、3D印刷向けの上記材料の配合物を開発することである。
【0084】
金属酸化物/シトレートベースポリマー材料の用途には、以下に限定されないが:臨界サイズの部分欠損の修復及び固定、並びに脊髄固定のためのコンポジット並びに多孔質足場、並びに骨膜修復及びバリア機能化のためのフィルムを含む整形外科的組織工学材料;感染の予防及び防除のための抗細菌可能な物質;創傷の出血制御及び外科用埋め込み手技のための止血可能な材料;空隙充填及び骨折の固定用の自己硬化性材料;及び成形した又は3D印刷した足場を生成するための自己硬化性材料が含まれる。
【0085】
したがって、一部の実施形態では、本発明は、以下:
金属酸化物、及び
式(A1)の1種以上のモノマー、場合により式(A2)の1種以上のモノマー、及び式(B1)、(B2)又は(B3)のうちの1種以上のモノマー:
【0086】
【化15】
(式中、
X
1、X
2、X
3及びX
4は、それぞれ独立して、-O-又は-NH-であり、
R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、-H、又はC1~C22アルキル基若しくはアルケニル基、又はM
+であり、
R
4は、Hであり、
R
5は、C(O)R
23であり、
R
6は、-H、-NH、-OH、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
7は、-H又はC1~C23アルキル基又はアルケニル基-CH
3であり、
R
8は、-H、C3~C22アルキル基又はアルケニル基、-CH
2CH
2OH又は-CH
2CH
2NH
2であり、
R
23は、C14~C22アルキル基又はアルケニル基であり、
n及びmは、独立して、1~20の範囲の整数である)
から形成されるポリマー又はオリゴマーを含む、自己硬化性組成物を提供する。
【0087】
一部の実施形態では、ポリマー又はオリゴマーは、式(A1)の1種以上のモノマー、場合により式(A2)の1種以上のモノマー、式(B1)、(B2)又は(B3)のうちの1種以上のモノマー、並びに式(C)、式(D1)、式(D2)、式(D3)、式(D4)、式(E1)、式(E2)、式(F)、式(G)、式(H1)、式(H2)、式(H3)、式(I1)、式(I2)、式(I3)、式(I4)、式(I5)及び/又は式(I6)のうちの1種以上のモノマー:
【0088】
【化16】
(式中、
R
9、R
10、R
11及びR
12は、それぞれ独立して、-H、-OH、-CH
2(CH
2)
xNH
2、-CH
2(CHR
13)NH
2、-CH
2(CH
2)
xOH、-CH
2(CHR
13)OH又は-CH
2(CH
2)
xCOOHであり、
R
13は、-COOH又は-(CH
2)
yCOOHであり、
xは、0~10の範囲の整数であり、
yは、1~10の範囲の整数であり、
pは、1~10の範囲の整数であり、
R
14は、-OH、-OCH
3、-OCH
2CH
3又は-Clであり、
R
15は、アミノ酸側鎖であり、
qは、1~20の範囲の整数であり、
X
5は、-O-又は-NH-であり、
R
16は、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
17及びR
18は、それぞれ独立して、-CH
2N
3、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
X
6及びYは、それぞれ独立して、-O-又は-NH-であり、
R
19及びR
20は、それぞれ独立して、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
21は、-O(CO)C≡CH、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
22は、-CH
3、-OH又は-NH
2である)
から形成される。
【0089】
一部の態様では、金属酸化物は、Zn、Mg、Cu、Ca又はそれらの組合せ物である金属酸化物である。
【0090】
一部の実施形態では、本発明の自己硬化性組成物は、充填剤、例えば、ヒドロキシアパタイト、B-リン酸三カルシウム、パール粉末及びリン酸八カルシウムのうちの少なくとも1つである、充填剤をさらに含む。
【0091】
一部の態様では、本発明の自己硬化性組成物は、室温(25℃)で120分未満、例えば室温(25℃)で80分未満、又は室温(25℃)で60分未満の硬化時間を有する。一部の態様では、本発明の自己硬化性組成物は、37℃の生理的温度で40分未満、例えば37℃の生理的温度で20分未満の硬化時間を有する。一部の態様では、本組成物は、硬化時間に影響を及ぼす触媒を含まない。
【0092】
一部の実施形態では、本発明はまた、自己硬化性組成物を作製する方法であって、
金属酸化物及び液体を含む分散液を、式(A1)の1種以上のモノマー、場合により式(A2)の1種以上のモノマー、及び式(B1)、(B2)又は(B3)のうちの1種以上のモノマー:
【0093】
【化17】
(式中、
X
1、X
2、X
3及びX
4は、それぞれ独立して、-O-又は-NH-であり、
R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、-H、又はC1~C22アルキル基若しくはアルケニル基、又はM
+であり、
R
4は、Hであり、
R
5は、C(O)R
23であり、
R
6は、-H、-NH、-OH、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
7は、-H又はC1~C23アルキル基又はアルケニル基-CH
3であり、
R
8は、-H、C3~C22アルキル基又はアルケニル基、-CH
2CH
2OH又は-CH
2CH
2NH
2であり、
R
23は、C14~C22アルキル基又はアルケニル基であり、
n及びmは、独立して、1~20の範囲の整数である)
から形成されるポリマー又はオリゴマーと混合することにより、金属酸化物/ポリマー混合物を形成するステップを含む、方法を提供する。
【0094】
一部の実施形態では、ポリマー又はオリゴマーは、式(A1)の1種以上のモノマー、場合により式(A2)の1種以上のモノマー、式(B1)、(B2)又は(B3)のうちの1種以上のモノマー、並びに式(C)、式(D1)、式(D2)、式(D3)、式(D4)、式(E1)、式(E2)、式(F)、式(G)、式(H1)、式(H2)、式(H3)、式(I1)、式(I2)、式(I3)、式(I4)、式(I5)及び/又は式(I6)のうちの1種以上のモノマー:
【0095】
【化18】
(式中、
R
9、R
10、R
11及びR
12は、それぞれ独立して、-H、-OH、-CH
2(CH
2)
xNH
2、-CH
2(CHR
13)NH
2、-CH
2(CH
2)
xOH、-CH
2(CHR
13)OH又は-CH
2(CH
2)
xCOOHであり、
R
13は、-COOH又は-(CH
2)
yCOOHであり、
xは、0~10の範囲の整数であり、
yは、1~10の範囲の整数であり、
pは、1~10の範囲の整数であり、
R
14は、-OH、-OCH
3、-OCH
2CH
3又は-Clであり、
R
15は、アミノ酸側鎖であり、
qは、1~20の範囲の整数であり、
X
5は、-O-又は-NH-であり、
R
16は、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
17及びR
18は、それぞれ独立して、-CH
2N
3、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
X
6及びYは、それぞれ独立して、-O-又は-NH-であり、
R
19及びR
20は、それぞれ独立して、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
21は、-O(CO)C≡CH、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
22は、-CH
3、-OH又は-NH
2である)
から形成される。
【0096】
一部の態様では、ポリマー又はオリゴマーは、溶媒、例えば、水、有機溶媒又はそれらの混合物に溶解する。
【0097】
一部の実施形態では、自己硬化性組成物を作製する方法は、金属酸化物/ポリマー混合物に充填剤を添加するステップをさらに含む。さらなる実施形態では、充填剤は、ヒドロキシアパタイト、B-リン酸三カルシウム、パール粉末及びリン酸八カルシウムのうちの少なくとも1つである。
【0098】
一部の態様では、本方法は、金属酸化物/ポリマー混合物にポロゲンを添加するステップをさらに含む。一部の実施形態では、本方法は、金属酸化物/ポリマー混合物からフィルム又は鋳型を形成するステップをさらに含む。一部の態様では、本方法は、空隙、例えば、整形外科的空隙に金属酸化物/ポリマー混合物を注入するステップをさらに含む。一部の態様では、本方法は、金属酸化物/ポリマー混合物の液体又は溶媒を蒸発させるステップをさらに含む。
【0099】
一部の実施形態では、本方法は、例えば、金属酸化物/ポリマー混合物の液体又は溶媒を蒸発させた後に、金属酸化物/ポリマー混合物を熱的に架橋させるステップをさらに含む。
【0100】
一部の実施形態では、本発明はまた、付加製造する方法であって、本発明の自己硬化性組成物に由来する三次元物体の複数の層を形成するステップを含む、方法を提供する。
【0101】
一部の実施形態では、本発明はまた、空隙を充填する方法であって、空隙、例えば整形外科的空隙、例えば骨折に、本発明の自己硬化性組成物を注入するステップを含む、方法を提供する。
【0102】
一部の実施形態では、本発明はまた、生理的環境を処置する方法であって、本発明の自己硬化性組成物を生理的環境で硬化させるステップを含む、方法を提供する。さらなる実施形態では、生理的環境の温度は、32~39℃である。
【0103】
これらの実施形態及び他の実施形態、組成物並びに用途が、以下に続く詳細な説明において一層詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【
図1】応力のない、塩化カルシウムをドープしたPOCの提案される「自己治癒」機構を例示する模式図である。具体的には、パネルAは、機械的な力の適用により、イオン性結合の破壊が機械的に誘発されることを示している。機械的な力を除くと、イオン性結合は、再構成又は「自己治癒」することができる。パネルBは、パネルA中で示されている方法の概略図である。
【
図2】応力のない、クエン酸カルシウムをドープしたPOCの提案される「自己治癒」機構を例示する模式図である。
【
図3】塩化カルシウム(CaCl
2)を使用して、イオンをドープしたポリマー又はオリゴマー組成物を調製する例示的な方法を例示する模式図である。
【
図4】クエン酸カルシウム(CaCit)を使用して、イオンをドープしたポリマー又はオリゴマー組成物を調製する例示的な方法を例示する模式図である。
【
図5】ポリ(1,8-オクタンジオール-CO-クエン酸)(POC)を調製する方法を例示した模式図である。
【
図6】イオン浸漬POCを調製する方法を例示した模式図である。
【
図7】イオンをドープしたポリマー又はオリゴマー組成物とPOCとの機械特性を比較する棒グラフである。具体的には、CaCl
2、CaCit、Ca(NO
3)
2、CaCO
3、CaBr
2及びCaI
2をドープしたポリマーの応力(MPa)をPOCの応力(MPa)と比較している。
【
図8】イオンをドープしたポリマー又はオリゴマー組成物とPOCとの機械特性を比較する棒グラフである。具体的には、CaCl
2、CaCit、Ca(NO
3)
2、CaCO
3、CaBr
2及びCaI
2をドープしたポリマーの歪(%)をPOCの歪(%)と比較している。
【
図9】様々なイオンをドープしたポリマー又はオリゴマー組成物の機械特性を比較する棒グラフである。具体的には、NaCl、LiCl、KCl、CaCl
2、MgCl
2、SrCl
2、ZnCl
2、NiCl
2、CuCl
2、AlCl
3及びFeCl
3をドープしたポリマーの応力(MPa)が示されている。
【
図10】様々なイオンをドープしたポリマー又はオリゴマー組成物の機械特性を比較する棒グラフである。具体的には、NaCl、LiCl、KCl、CaCl
2、MgCl
2、SrCl
2、ZnCl
2、NiCl
2、CuCl
2、AlCl
3及びFeCl
3をドープしたポリマーの歪(%)が示されている。
【
図11】イオンをドープしたポリマー又はオリゴマー組成物とPOCとの機械特性を比較する棒グラフである。具体的には、CaCl
2、CaCit、Ca(NO
3)
2、CaCO
3、CaBr
2及びCaI
2をドープしたポリマーの、MPaという単位で表される初期モジュラスを、POCの応力(MPa)として測定される初期モジュラスと比較している。
【
図12】様々なイオンをドープしたポリマー又はオリゴマー組成物の機械特性を比較する棒グラフである。具体的には、NaCl、LiCl、KCl、CaCl
2、MgCl
2、SrCl
2、ZnCl
2、NiCl
2、CuCl
2、AlCl
3及びFeCl
3をドープしたポリマーの、MPaの単位で表される初期モジュラスが示されている。
【
図13】イオンをドープしたポリマー又はオリゴマー組成物のPOCとの機械特性を比較する棒グラフである。具体的には、CaCl
2、CaCit、Ca(NO
3)
2、CaCO
3、CaBr
2及びCaI
2をドープし、2週間、水和させたポリマーの応力(MPa)を、2週間、水和させたPOCの応力(MPa)と比較している。
【
図14】イオンをドープしたポリマー又はオリゴマー組成物とPOCとの機械特性を比較する棒グラフである。具体的には、CaCl
2、CaCit、Ca(NO
3)
2、CaCO
3、CaBr
2及びCaI
2をドープし、2週間、水和させたポリマーの歪み(%)を、2週間、水和させたPOCの歪み(%)と比較している。
【
図15】イオンをドープしたポリマー又はオリゴマー組成物とPOCとの機械特性を比較する棒グラフである。具体的には、CaCl
2、CaCit、Ca(NO
3)
2、CaCO
3、CaBr
2及びCaI
2をドープし、2週間、水和させたポリマーの、MPaの単位で表される初期モジュラスを、2週間、水和させたPOCの応力(MPa)として測定される初期モジュラスと比較している。
【
図16】イオンをドープしたポリマー又はオリゴマー組成物とPOCとの機械特性を比較する棒グラフである。具体的には、水和条件で保存されるCaCl
2、CaCit、Ca(NO
3)
2、CaCO
3、CaBr
2及びCaI
2をドープしたポリマーの乾燥応力の%を、水和条件で保存されたPOCの乾燥応力の%と比較している。
【
図17】イオンをドープしたポリマー又はオリゴマー組成物とPOCとの機械特性を比較する棒グラフである。具体的には、水和条件で保存される、CaCl
2、CaCit、Ca(NO
3)
2、CaCO
3、CaBr
2及びCaI
2をドープしたポリマーの乾燥歪の%を、水和条件で保存されるPOCの乾燥歪の%と比較している。
【
図18】
図3及び
図4に示されている方法によって生成される組成物は、高度な均質性を有するフィルムを生成することを例示する一連の写真である。上部パネル中の一連の写真は、CaCl
2をドープしたPOCによって生成したフィルムを例示している。下部パネル中の一連の写真は、CaCitをドープしたPOCによって生成したフィルムを例示している。
【
図19】
図4に示されている方法によって生成したフィルムの写真であり、このフィルムが、クラスター様の形態を有することを例示する写真である。
【
図20】クエン酸カルシウムの形態(左の写真)、及び
図4に示されている方法によって生成した組成物(CaCitをドープしたPOC、右側写真)を例示している2枚の写真のパネルである。
【
図21】本明細書に記載されている実施形態による、CaCitをドープしたPOCの場合のカルシウムの重量%を例示する棒グラフである。
【
図22】本明細書に記載されている実施形態による、CaCl
2をドープしたPOCの場合のカルシウムの重量%を例示する棒グラフである。
【
図23】CaCl
2を浸漬したPOCの場合のカルシウムの重量%を例示している棒グラフである。
【
図24】イオン性架橋ネットワークを形成する、金属酸化物とカルボキシル基との直接的反応を介した、金属酸化物との有機溶媒ベースのプレポリマーに対して提案される反応機構を例示している模式図である。具体的には、パネル(A)は、有機溶媒中の酸化マグネシウムと混合したPOCの場合の提案された硬化機構を示す。パネル(B)は、POCのカルボキシル基とのイオン性結合による、架橋化ネットワークの形成を示している。
【
図25A】イオン性架橋ネットワークを形成する、金属酸化物とカルボキシル基との直接的反応、又は金属酸化物と水との反応により金属水酸化物中間体を形成し、次いで、カルボキシル基と反応することを介した、金属酸化物との水ベースのプレポリマーに対して提案される反応機構を例示する模式図である。具体的には、
図25Aは、水中の酸化マグネシウムと混合したCA-PEGの場合の提案された硬化機構を示す。
【
図25B】イオン性架橋ネットワークを形成する、金属酸化物とカルボキシル基との直接的反応、又は金属酸化物と水との反応により金属水酸化物中間体を形成し、次いで、カルボキシル基と反応することを介した、金属酸化物との水ベースのプレポリマーに対して提案される反応機構を例示する模式図である。
図25Bは、POCのカルボキシル基とのイオン性結合による、架橋化ネットワークの形成を示している。
【
図26】様々な温度における、POC(エタノール中30重量%)/10重量%酸化マグネシウムの硬化時間を例示するグラフであり、室温及び温度の加速で硬化する可能性を例示している。
【
図27】加速硬化を示す、エタノール中で40重量%まで向上させたPOCプレポリマー濃度を有するPOC/10重量%の酸化マグネシウムの硬化時間、及び20重量%のHAを含むコンポジットの硬化時間を例示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0105】
本発明は、重合性組成物、すなわち、反応させて、ポリマー又はオリゴマーを形成することができるモノマーを含む組成物に関する。本発明はまた、ポリマー組成物又はオリゴマー組成物、すなわち、本明細書に記載されているポリマー又はオリゴマーを含む組成物に関する。本発明のポリマー組成物は、金属陽イオン、例えば一価、二価若しくは三価の金属陽イオン又は金属酸化物を含むことができる。
【0106】
本発明のポリマー組成物又はオリゴマー組成物は、自己硬化性であってもよい。用語「自己硬化性」とは、本明細書で使用する場合、組成物が架橋化ポリマーネットワークを生成することができることを指す。一部の実施形態では、自己硬化性組成物は、重合して、硬いポリマーネットワークになることができる液体組成物とすることができる。特定の理論に拘泥することを望むものではないが、ポリマー、例えば、シトレートポリマーと組み合わせた金属陽イオン、例えば、一価、二価若しくは三価の金属陽イオン又は金属酸化物は、金属酸化物とポリマーの末端カルボキシル基との間の直接的反応によりイオン性架橋を形成して、架橋化ポリマーネットワークを生成することができると考えられる。例えば、ポリマー組成物又はオリゴマー組成物中に存在する金属陽イオン又は金属酸化物は、シトレートベースポリマー中の大多数の末端カルボキシル基との反応を受けることができ、水が、主要な副生物として形成される。このような反応により、シトレートベースポリマー鎖間に、複数のイオン性架橋が形成し、固体の架橋化(「硬化性」)ネットワークを生成すると考えられる。
【0107】
架橋(硬化)反応は、ポリマー若しくは金属酸化物の修飾も触媒の添加などもなしに、室温及び生理的温度で進行することができる。したがって、一部の実施形態では、架橋化ポリマーネットワークは、例えば、室温又は体温で、すなわち約37℃で自発的に形成することができる。一部の実施形態では、架橋化ポリマーネットワークは、本発明のポリマー組成物又はオリゴマー組成物が対象に注入された後に、対象、例えばヒト対象内で形成することができる。一例では、ポリマー組成物又はオリゴマー組成物は、金属陽イオン又は金属酸化物と混合してもよく、次に、組成物が液体形態にある間、及び架橋化ポリマーネットワークの形成前に、対象に注入することができる。別の例では、液体形態のポリマー組成物又はオリゴマー組成物、及び液体形態の金属陽イオン又は金属酸化物を含む組成物は、個別に、対象に注入することができる。この例では、ポリマー組成物又はオリゴマー組成物、及び金属陽イオン又は金属酸化物を含む組成物を対象の体内で混合して、架橋化ポリマーネットワークを形成する。
【0108】
本発明のポリマー組成物又はオリゴマー組成物は、塩、例えば一価、二価若しくは三価の金属陽イオンを含む会合塩又は解離塩、あるいは金属酸化物を、約0.001M以上、例えば、約0.005M以上、約0.01M以上、約0.05M以上、約0.1M以上、約0.5M以上、又は約1M以上の濃度で含むことができる。一部の実施形態では、本発明のポリマー組成物又はオリゴマー組成物は、塩、例えば一価、二価若しくは三価の金属陽イオンを含む会合塩又は解離塩、あるいは金属酸化物を、約0.001M~約2M、約0.001M~約0.01M、約0.005M~約0.01M、約0.005M~約0.05M、約0.01M~約0.1M、約0.05M~約0.1M、約0.1M~約1M又は約0.5M~約2Mの濃度で含むことができる。
【0109】
一部の実施形態では、本発明の自己硬化性組成物を使用して生成した架橋化ポリマーネットワークは、イオン性結合しか含まない。他の実施形態では、本発明の架橋化ポリマーネットワークは、イオン性結合に加えて、ポリマー鎖間に、他の架橋、例えば非イオン性架橋、例えば共有結合性架橋をさらに含むことができる。ポリマーネットワーク中の非イオン性架橋は、例えば、本明細書に記載されているポリマー組成物又はオリゴマー組成物を硬化することにより、例えば、加熱により、及び/又はフリーラジカル重合を使用することにより生成することができる。1つの例示的な実施形態では、ポリマー鎖間のイオン性及び非イオン性結合、例えば共有結合を含む架橋化ポリマーネットワークは、まず、ポリマー組成物又はオリゴマー組成物を金属陽イオン又は金属酸化物と組み合わせて、イオン性架橋化ポリマーネットワークを生成させ、次に例えば、硬化又はフリーラジカル重合を使用することにより、イオン性架橋化ポリマーネットワーク中の非イオン性架橋を生成することにより生成することができる。別の例示的な実施形態では、架橋化ポリマーネットワークは、例えば、硬化又はフリーラジカル重合を使用することにより、ポリマー組成物又はオリゴマー組成物を非イオン的に架橋させて、非イオン性架橋化ポリマーネットワークを生成し、次に、この非イオン性架橋化ポリマーネットワークを金属陽イオン又は金属酸化物と組み合わせて、イオン性架橋を生成することにより生成することができる。
【0110】
本発明の組成物は、系の迅速な硬化可能性を利用して、インシチュでの硬化、成形と組み合わせた場合の、解剖学的補正足場の形成、及び足場の3D印刷を含む、組織工学における複数の潜在的使用を有する。さらに、本発明の組成物は、空隙充填剤として、及び外科用インプラント及び足場用の固着剤として、並びにポロゲン及び他の添加物と組み合わせた場合、患者に特有の身体的特徴に基づく解剖学的補正足場として、整形外科分野における潜在的使用を有する。
【0111】
本明細書に記載されている実施形態は、以下の詳細な説明、実施例及び図面を参照することにより一層容易に理解することができる。しかし、本明細書に記載されている要素、装置及び方法は、詳細な説明、実施例及び図面に提示されている具体的な実施形態に限定されない。これらの実施形態は、本発明の原理を単に例示しているに過ぎないことを認識すべきである。本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、多数の修正及び改変が当業者に容易に明白となろう。
【0112】
さらに、本明細書において開示されている範囲はすべて、本明細書中に含まれるありとあらゆる部分範囲を包含することを理解すべきである。例えば、「1.0~10.0」という明記された範囲は、1.0以上の最小値から始まり、10.0以下の最大値で終わるありとあらゆる部分範囲、例えば、1.0~5.3、又は4.7~10.0、又は3.6~7.9を含むと考えるべきである。
【0113】
特に明示的に明記されない限り、本明細書において開示されている範囲はすべて、その範囲の端点を含むとやはり考えるべきである。例えば、「5~10の間」、「5から10まで」又は「5~10」の範囲は、一般に、端点5及び10を含むと考えるべきである。
【0114】
さらに、量(amount)又は分量(quantity)に関連して、句「最大で」を使用する場合、その量は、少なくとも検出可能な量又は分量であると理解されたい。例えば、「最大で」ある指定量の量で存在する材料は、検出可能な量から最大で指定量まで及び指定量を含む量まで存在することができる。
【0115】
I.組成物
A.重合性モノマー含有組成物
一態様では、(i)アルコキシル化、アルケノキシル化若しくは非アルコキシル化及び非アルケノキシル化クエン酸、シトレート、又はクエン酸のエステル/アミド、場合により、別のアルコキシル化、アルケノキシル化若しくは非アルコキシル化及び非アルケノキシル化クエン酸、シトレート又はクエン酸のエステル/アミド、(ii)ポリオール又はポリアミン、例えばジオール若しくはジアミン、並びに(iii)一価、二価若しくは三価の金属陽イオンを含む少なくとも1つの会合塩又は解離塩を含む、これらからなる、又はこれらから実質的になる重合性組成物。本明細書に記載されている重合性組成物はまた、水又は水性溶媒を含んでもよい。一部の実施形態では、これらの組成物を反応させるか、又は重合して、少なくとも(i)、(ii)及び(iii)の反応生成物であるポリマー又はオリゴマーを含む組成物を形成することができる。
【0116】
本明細書に記載されている重合性モノマー組成物は、一部の場合、例えば、(i)アルコキシル化、アルケノキシル化若しくは非アルコキシル化及び非アルケノキシル化クエン酸、シトレート、又はクエン酸のエステル/アミド、場合により、別のアルコキシル化、アルケノキシル化若しくは非アルコキシル化及び非アルケノキシル化クエン酸、シトレート又はクエン酸のエステル/アミド、(ii)ポリオール又はポリアミン、例えばジオール若しくはジアミン、並びに(iii)一価、二価若しくは三価の金属陽イオンを含む少なくとも1つの会合塩又は解離塩の主要(50%より多い)モノマー又は反応物質を含有する。一部の実施形態では、重合性組成物は、60%超、70%超、80%超、90%超、95%超、99%超又は100%のモノマーを含む。一部の実施形態では、本明細書に記載されている重合性組成物は、少なくとも(i)、(ii)及び(iii)の反応生成物であるいずれのポリマーもオリゴマーも含まない。一部の場合、これらのポリマー又はオリゴマーの量は、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、又は1%未満である。
【0117】
本発明の重合性モノマー組成物では、塩、例えば一価、二価又は三価の金属陽イオンを含む会合塩又は解離塩は、約0.001M以上、例えば、約0.005M以上、約0.01M以上、約0.05M以上、約0.1M以上、約0.5M以上、又は約1M以上の濃度で存在することができる。一部の実施形態では、本発明の重合性モノマー組成物は、塩、例えば一価、二価又は三価の金属陽イオンを含む会合塩又は解離塩を、約0.001M~約2M、約0.001M~約0.01M、約0.005M~約0.01M、約0.005M~約0.05M、約0.01M~約0.1M、約0.05M~約0.1M、約0.1M~約1M又は約0.5M~約2Mの濃度で含むことができる。
【0118】
一部の実施形態では、本明細書に記載されているアルコキシル化、アルケノキシル化、若しくは非アルコキシル化及び非アルケノキシル化クエン酸、シトレート又はクエン酸のエステル/アミドを含むモノマーは、式(A1)によるモノマー:
【0119】
【化19】
(式中、
X
1、X
2及びX
3は、それぞれ独立して、-O-又は-NH-であり、
R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、-H、C1~C22アルキル基又はアルケニル基、M
+、M
2+又はM
3+であり、
R
4は、H又はM
+であり、
M
+は、一価の金属陽イオンであり、
M
2+は、二価の金属陽イオンであり、
M
3+は、三価の金属陽イオンである)
であってもよい。
【0120】
一部の実施形態では、R1、R2及びR3のうちの少なくとも1つは、独立して、H、-CH3、-CH2CH3とすることができ、他の実施形態では、R1、R2及びR3のうちの少なくとも1つは、独立して、M+、M2+又はM3+とすることができ、さらに他の実施形態では、R1、R2及びR3は、独立して、M2+又はM3+とすることができる。例えば、式(A1)によるモノマーは、クエン酸又はクエン酸カルシウムとすることができる。
【0121】
さらに、別の場合により追加されるモノマーは、式(A2)によるモノマー:
【0122】
【化20】
(式中、
X
1、X
2及びX
3は、それぞれ独立して、-O-又は-NH-であり、
R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、-H、C1~C22アルキル基又はアルケニル基、M
+、M
2+又はM
3+であり、
R
5は、C(O)R
23であり、
R
23は、C14~C22アルキル基又はアルケニル基であり、
M
+は、一価の金属陽イオンであり、
M
2+は、二価の金属陽イオンであり、
M
3+は、三価の金属陽イオンである)
であってもよい。
【0123】
一部の実施形態では、R1、R2及びR3のうちの少なくとも1つは、H、-CH3、-CH2CH3である。他の場合では、R1、R2及びR3のうちの少なくとも1つは、M+、M2+又はM3+である。さらに他の場合では、R1、R2及びR3のうちの少なくとも1つは、M2+又はM3+である。
【0124】
一部の実施形態では、本明細書に記載されている使用に好適なポリオール/ポリアミンの非限定例は、α,ω-n-アルカンジオール/ジアミン又はα,ω-アルケンジオール/ジアミンを含む、C2~C20、C2~C12又はC2~C6脂肪族アルカンジオール/ジアミンを含む。例えば、一部の場合、ポリオール/ポリアミンは、1,4-ブタンジオール/ジアミン、1,6-ヘキサンジオール/ジアミン、1,8-オクタンジオール/ジアミン、1,10-デカンジオール/ジアミン、1,12-ドデカンジオール/ジアミン、1,16-ヘキサデカンジオール/ジアミン又は1,20-イコサンジオール/ジアミンを含む。分岐α,ω-アルカンジオール/ジアミン又はα,ω-アルケンジオール/ジアミンも使用することができる。さらに、ポリオール/ポリアミンはまた、芳香族ジオール/ジアミンとすることができる。さらに、一部の実施形態では、ポリオール/ポリアミンは、末端ヒドロキシル基又はアミン基を有する、ポリ(エチレングリコール)(PEG)又はポリ(プロピレングリコール)(PPG)を含む。本発明の目的に不一致ではない任意のこのようなPEG又はPPGも使用してもよい。一部の実施形態では、例えば、PEG又はPPGは、約100~約5000の間、又は約200~約1000、又は200~約100,000の間の重量平均分子量を有する。
【0125】
一部の実施形態では、ポリオール/ポリアミン、例えばジオール又はジアミンは、式(B1)及び/又は式(B2)により表される構造:
【0126】
【化21】
(式中、
R
6は、-H、-NH、-OH、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
7は、-H、又はC1~C22アルキル基又はアルケニル基、例えば-CH
3であり、
R
8は、-H、-CH
3、-CH
2CH
3、C3~C22アルキル基又はアルケニル基、-CH
2CH
2OH又は-CH
2CH
2NH
2であり、
n及びmは、独立して、1~1000又は1~2000の範囲の整数である)
を有することができる。
【0127】
例えば、一部の場合、ポリオール又はポリアミンは、式(B3)により表される構造:
【0128】
【化22】
(式中、X
4は、O又はNHであり、nは、式(B1)及び(B2)について上で定義した通りである)
を有する。
【0129】
さらに、式(A1)、任意選択の(A2)、(B1)、(B2)及び(B3)のモノマーは、本発明の目的に不一致ではない任意の比で使用することができる。さらに、一部の実施形態では、モノマーの比を改変すると、モノマーの反応から形成されるポリマーの生分解性、機械的強度、例えば、弾性及び強度、並びに/又は他の特性を改変することができる。一部の実施形態では、モノマー(A1)とモノマー(B1)、モノマー(B2)又はモノマー(B3)との比は、約1:10~約10:1の間、又は約1:5~約5:1の間である。一部の実施形態では、モノマー(A1)とモノマー(B1)、モノマー(B2)又はモノマー(B3)との比は、約1:4~約4:1の間である。一部の実施形態では、比は約1:1である。一部の場合、(A2)を使用する場合、モノマー(A1)とモノマー(A2)との比は、約1:10~約10:1の間、又は約1:5~約5:1の間である。一部の実施形態では、モノマー(A1)とモノマー(A2)との比は、約1:4~約4:1の間の比である。一部の実施形態では、比は約1:1である。さらに、(A2)が反応する場合、モノマー(A2)とモノマー(B1)、モノマー(B2)又はモノマー(B3)との比は、一例では、約1:10~約10:1の間、又は約1:5~約5:1の間である。一部の実施形態では、モノマー(A2)とモノマー(B1)、モノマー(B2)又はモノマー(B2)との比は、約1:4~約4:1の間である。一部の実施形態では、比は約1:1である。
【0130】
式ABの塩は、本発明の目的と不一致ではない任意の塩とすることができる。例えば、一部の場合、Aは、一価、二価又は三価の金属陽イオンであり、Bは、簡単な陰イオン又は複雑な陰イオンである。本明細書に記載されている一価、二価又は三価の陽イオンは、限定されず、例えば、Mg2+、Ca2+、Zn2+、Cu2+、Co2+、Fe2+、Fe3+、Cr2+、Mn2+、Co3+、Sr2+、V2+、V3+、Ti2+、Ti3+、Sr2+、Ni2+、Al3+、Al2+、Cr3+、Ba+、Na+、K+及びLi+のうちの少なくとも1つを含むことができる。陰イオンBは限定されず、一価、二価又は三価の金属陽イオンを有する中性塩を形成する任意の陰イオンとすることができる。例えば、金属陽イオンAがCa2+である場合、Cl-、クエン酸陰イオン、Br-、CO3
2-、I-及びNO3
-が、一部の例では、好適な対イオン又は陰イオンである。当業者によって理解される通り、Cl-、Br-、I-又はNO3
-は、使用される場合、Ca2+に対して約2:1の比で存在し、CO3
2-は、使用される場合、Ca2+に対して約1:1の比で存在する。一部の場合、Bは、Cl-、Br-、I-、クエン酸陰イオン、NO3
-又はCO3
2-である。他の陰イオンも使用してもよい。
【0131】
さらに、会合塩又は解離塩ABの量は、特に限定されず、一部の実施形態では、アルコキシル化、アルケノキシル化、若しくは非アルコキシル化及び非アルケノキシル化クエン酸、シトレート又はクエン酸のエステル/アミド(例えば、式(A1)及び/又は(A2)の構造を有するモノマー)をそれぞれ1当量に対して、会合塩又は解離塩を、0.005~0.6、又はさらに高い(例えば、0.8、1.0、1.5又は2.0)当量とすることができる。一部の実施形態では、この範囲は、アルコキシル化、アルケノキシル化、若しくは非アルコキシル化及び非アルケノキシル化クエン酸、シトレート、又はクエン酸のエステル/アミドのそれぞれ1当量に対し、会合塩又は解離塩ABを0.01~0.3、0.02~0.2又は0.03~0.1当量とすることができる。
【0132】
本明細書に記載されている重合性組成物は、溶媒として、又は唯一の溶媒として、水、又は水性溶媒、若しくは水をベースの溶媒を含むことができる。水性溶媒は、主に(50%超)水を含み、60%超、70%超、80%超、90%超、95%超、99%超の水を含んでもよいが、100%の水を含まない。一部の実施形態では、水性溶媒はまた、極性又は非極性有機溶媒(例えば、アセトン又はエタノール)を含む有機共溶媒を0%超であるが50%以下の量で含む。
【0133】
本明細書に記載されている重合性組成物の一部の実施形態では、本明細書に記載されている塩は、水、又は本明細書に記載されている水性溶媒、若しくは水をベースの溶媒中に、可溶であることがあり、一部可溶であることがあり、又は不溶であることがある。一部の場合、塩の水への溶解度は、25℃で、少なくとも30g/100mL、少なくとも50g/100mL、又は少なくとも75g/100mLとすることができる。代替的に、他の実施形態では、塩の水への溶解度は、25℃において、30g/L未満、20g/L未満、10g/L未満、5g/L又は1g/L未満であってもよい。
【0134】
さらに、上記の通り、塩ABは、本明細書に記載されている組成物から完全に除外することが可能である。上記のモノマー又は反応物質のうちの1種以上が、ポリマー又はオリゴマーを架橋させて、架橋化ポリマー又はオリゴマーネットワークを形成することができる、金属陽イオン、例えば二価又は三価の金属陽イオンを含む場合、塩ABを除外することがとりわけ望ましいことがある。例えば、一部の例では、クエン酸ベースのモノマー(例えば、式(A1)又は(A2)の構造を有する)は、少なくとも1種の二価又は三価の金属が存在する(例えば、R1、R2及びR3のうちの少なくとも1つが、M2+又はM3+である)、塩又は陽イオン-陰イオン錯体として提供される。このような場合、架橋は、本明細書の上に記載されている個別の追加の塩を使用することなく、1種以上の二価又は三価の金属陽イオンにより行われてもよい。
【0135】
本明細書に記載されている組成物は、上で記載されているモノマー又は反応物質(i)、(ii)及び(iii)を含むことに加え、1種以上の追加のモノマー又は反応物質も含むことができる。例えば、一部の場合、本明細書に記載されている組成物は、(iv)カテコール含有化学種をさらに含む。一部の実施形態では、このような組成物の構成成分を反応させるか、又は重合して、上記の少なくとも(i)、(ii)、(iii)及び(iv)の反応生成物であるポリマー又はオリゴマーを形成する。
【0136】
カテコール含有化学種は、本発明の目的と不一致にならない、カテコール含有化学種を含むことができる。一部の場合、カテコール含有化学種は、モノマーが反応する実施形態では、ポリマーを形成するために使用される別の化学種を有するエステル結合又はアミド結合を形成することができる、少なくとも1つの部分を含む。例えば、一部の場合、カテコール含有化学種は、アルコール部分、アミン部分、カルボン酸部分又はそれらの組合せを含む。さらに、一部の例では、カテコール含有化学種は、カテコール部分の一部ではないヒドロキシル部分を含む。一部の実施形態では、カテコール含有化学種はドーパミンを含む。他の実施形態では、カテコール含有化学種は、L-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン(L-DOPA)又はD-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン(D-DOPA)を含む。さらに他の実施形態では、カテコール含有化学種は、没食子酸又はコーヒー酸を含む。一部の場合、カテコール含有化学種は、3,4-ジヒドロキシヒドロ桂皮酸を含む。さらに、カテコール含有化学種はまた、天然に存在する化学種又はその誘導体、例えばタンニン酸又はタンニンを含んでもよい。さらに、一部の実施形態では、カテコール含有化学種は、アミド結合を介して、ポリマーの主鎖に連結している。他の実施形態では、カテコール含有化学種は、エステル結合を介してモノマーによって形成されたポリマーの主鎖に連結している。一部の実施形態では、カテコール含有化学種は、式(C):
【0137】
【化23】
(式中、
R
9、R
10、R
11及びR
12は、それぞれ独立して、-H、-OH、-CH
2(CH
2)
xNH
2、-CH
2(CHR
13)NH
2、-CH
2(CH
2)
xOH、-CH
2(CHR
13)OH、-CH
2(CH
2)
xCOOH又はポリマー鎖への結合点であり、
R
13は、-COOH又は-(CH
2)
yCOOHであり、
xは、1~10の範囲の整数である)
によって表すことができる。
【0138】
一部の場合、式(C)のモノマーは、ドーパミン、L-DOPA、D-DOPA、没食子酸、コーヒー酸、3,4-ジヒドロキシヒドロ桂皮酸又はタンニン酸を含む。さらに一部の実施形態では、式(C)のモノマーは、アミド結合を介して、式(C)のモノマーを含む、モノマーの反応から形成したポリマー又はオリゴマーの主鎖に連結している。他の実施形態では、式(C)のモノマーは、エステル結合を介して主鎖に連結している。
【0139】
さらに、一部の実施形態では、式(B1)、(B2)又は(B3)のモノマーは、式(B1)、(B2)又は(B3)の式を有していないアルコールによって置き換えることができる。例えば、一部の実施形態では、不飽和アルコール又は不飽和ポリオールを使用することができる。さらに、式(A1)、任意選択の(A2)、(B1)、(B2)、(B3)及び(C)のモノマーは、本発明の目的に不一致にならない任意の比で使用することができる。さらに、一部の実施形態では、モノマーの比を改変すると、モノマーから形成されるポリマー又はオリゴマーの機械的特性及び他の特性を改変することができる。一部の実施形態では、モノマー(A1)及び/又はモノマー(A2)とモノマー(B1)、モノマー(B2)又はモノマー(B3)との比は、約1:10~約10:1の間、又は約1:5~約5:1の間である。一部の実施形態では、モノマー(A1)又はモノマー(A2)とモノマー(B1)、モノマー(B2)又はモノマー(B3)との比は、約1:4~約4:1の間である。一部の場合、比は約1:1である。さらに、一部の実施形態では、モノマー(A1)又はモノマー(A2)とモノマー(C)との比は、約1:10~約10:1の間である。さらに、一部の実施形態では、モノマー(A1)とモノマー(A2)の比は、約1:10~約10:1との間である。
【0140】
さらに、一部の場合、本明細書に記載されているモノマー含有組成物は、(i)アルコキシル化、アルケノキシル化又は非アルコキシル化及び非アルケノキシル化クエン酸、シトレート又はクエン酸のエステル/アミド、及び場合によりアルコキシル化若しくはアルケノキシル化クエン酸、シトレート、又はクエン酸のエステル/アミド、(ii)ポリオール/ポリアミン、(iii)一価、二価又は三価の金属陽イオンを含む少なくとも1つの会合塩又は解離塩、並びに(v)アルコール/アミン、アミド、カルボン酸又はイソシアネートを含むことができる。このような例では、ポリオール/ポリアミンは、上記の任意のポリオール/ポリアミンを含むことができ、クエン酸のエステル/アミンは、上記のクエン酸の任意のエステル/アミドを含むことができる。さらに、一部の実施形態では、アミンは、2~10個の炭素原子を有する1つ以上の第一級アミンを含む。他の例では、アミンは、2~15個の炭素原子を有する、1つ以上の第二級又は三級アミンを含む。一部の実施形態では、イソシアネートは、モノイソシアネートを含む。他の例では、イソシアネートは、ジイソシアネート、例えば4~20個の炭素原子を有するアルカンジイソシアネートを含む。本明細書に記載されているイソシアネートはまた、モノカルボン酸部分を含んでもよい。一部の実施形態では、これらの重合性組成物を反応させて、例えば重合して、少なくとも(i)、(ii)、(iii)及び(v)の反応生成物である1種以上のポリマー又はオリゴマーを含む組成物を形成する。
【0141】
一部の実施形態では、イソシアネートは、式(D1)、式(D2)、式(D3)及び/又は式(D4):
【0142】
【化24】
(式中、pは、1~10の範囲の整数である)
によって表すことができる。
【0143】
さらに、本明細書に記載されている重合性組成物はまた、(i)アルコキシル化、アルケノキシル化、若しくは非アルコキシル化及び非アルケノキシル化クエン酸、シトレート、又はクエン酸のエステル/アミドのうちの1種以上、(ii)ポリオール/ポリアミン、(iii)一価、二価又は三価の金属陽イオンを含む少なくとも1つの会合塩又は解離塩、並びに(vi)ポリカルボン酸、例えばジカルボン酸、又はポリカルボン酸の機能的等価体、例えばポリカルボン酸の環式無水物又は酸塩化物を含むことができる。このような例では、ポリオール/ポリアミンは、上記の任意のポリオール/ポリアミンを含むことができ、クエン酸のエステルは、上記のクエン酸の任意のエステル/アミドを含むことができる。さらに、ポリカルボン酸又はその機能的等価体は、飽和であってもよく、又は不飽和であってもよい。例えば、一部の例では、ポリカルボン酸又はその機能的等価体は、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、又は塩化フマリルを含む。ビニル含有ポリカルボン酸又はその機能的等価体、例えばアリルマロン酸、アリルマロン酸塩化物、イタコン酸、又はイタコン酸塩化物もまた使用することができる。さらに、一部の場合、ポリカルボン酸又はその機能的等価体は、ポリカルボン酸であってもよい、又はポリカルボン酸でなくてもよい、オレフィン含有モノマーで少なくとも部分的に置き換えることができる。一部の実施形態では、例えば、オレフィン含有モノマーは、ビニル含有ジオールのような不飽和ポリオールを含む。一部の実施形態では、これらの重合性組成物を反応させて、例えば重合して、少なくとも(i)、(ii)、(iii)及び(vi)の反応生成物である1種以上のポリマー又はオリゴマーを含む組成物を形成する。
【0144】
一部の実施形態では、ポリカルボン酸は、式(E1)及び/又は式(E2):
【0145】
【化25】
(式中、R
14は、-OH、-OCH
3、-OCH
2CH
3又は-Clである)
によって表すことができる。
【0146】
さらに、式(A1)、任意選択の(A2)、(B1)、(B2)、(E1)及び(E2)のモノマーは、本発明の目的に不一致にならない任意の比で使用することができる。さらに、一部の実施形態では、モノマーの比を改変すると、モノマーから形成されるポリマーの抗菌特性、生分解性、機械的強度及び/又は他の特性を改変することができる。一部の実施形態では、モノマー(A1)又はモノマー(A2)とモノマー(B1)、モノマー(B2)又はモノマー(B3)との比は、約1:10~約10:1の間、又は約1:5~約5:1の間である。一部の実施形態では、モノマー(A1)又はモノマー(A2)とモノマー(B1)、モノマー(B2)又はモノマー(B3)との比は、約1:4~約4:1の間である。一部の実施形態では、比は約1:1である。さらに、一部の実施形態では、モノマー(A1)又はモノマー(A2)とモノマー(E1)又はモノマー(E2)との比は、約1:10~約10:1の間である。一部の実施形態では、モノマー(A1)又はモノマー(A2)とモノマー(E1)又はモノマー(E2)との比は、約1:1である。一部の場合、(A2)が反応すると、モノマー(A1)とモノマー(A2)との比は、約1:10~約10:1の間、又は約1:5~約5:1の間である。一部の実施形態では、モノマー(A1)とモノマー(A2)との比は、約1:4~約4:1の間である。一部の実施形態では、比は約1:1である。
【0147】
さらに他の実施形態では、本明細書に記載されている重合性組成物は、(i)アルコキシル化、若しくはアルケノキシル化、若しくは非アルコキシル化及び非アルケノキシル化クエン酸、シトレート、又はクエン酸のエステル/アミドのうちの1種以上、(ii)ポリオール/ポリアミン、(iii)一価、二価又は三価の金属陽イオンを含む少なくとも1つの会合塩又は解離塩、並びに(vii)アミノ酸、例えばアルファ-アミノ酸を含む。本明細書に記載されているポリマーのアルファ-アミノ酸は、一部の実施形態では、L-アミノ酸、D-アミノ酸又はD,L-アミノ酸を含む。一部の場合、アルファ-アミノ酸は、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グリシン、グルタミン、グルタミン酸、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、セリン、トレオニン、チロシン、トリプトファン、バリン又はそれらの組合せを含む。さらに、一部の例では、アルファ-アミノ酸は、アルキル-置換アルファ-アミノ酸、例えば、22種の「標準」アミノ酸又はタンパク質構成アミノ酸のいずれかに由来するメチル置換アミノ酸、例えばメチルセリンを含む。一部の実施形態では、これらの重合性組成物を反応させて、例えば重合して、例えば、少なくとも(i)、(ii)、(iii)及び(vii)の反応生成物から形成される、反応生成物である1種以上のポリマー又はオリゴマーを含む組成物を形成する。
【0148】
一部の実施形態では、本明細書に記載されている重合性組成物は、以下:式(A1)の1種以上のモノマー、場合により式(A2)の1種以上のモノマー、式(B1)、(B2)又は(B3)のうちの1種以上のモノマー、一価、二価若しくは三価の金属陽イオンを含む会合塩又は解離塩、及び式(F)により表される1種以上のアミノ酸モノマー:
【0149】
【化26】
(式中、R
15は、アミノ酸側鎖である)
から形成されている。
【0150】
さらに、式(A1)、任意選択の(A2)、(B1)、(B2)、(B3)及び(F)のモノマーは、本発明の目的に不一致ではない任意の比で使用することができる。さらに、一部の実施形態では、モノマーの比を改変すると、モノマーから形成されるポリマー又はオリゴマーの機械的特性及び/又は他の特性を改変することができる。一部の実施形態では、モノマー(A1)又はモノマー(A2)とモノマー(B1)、モノマー(B2)又はモノマー(B3)との比は、反応する場合、約1:10~約10:1の間、又は約1:5~約5:1の間である。一部の実施形態では、モノマー(A1)又はモノマー(A2)とモノマー(B1)、モノマー(B2)又はモノマー(B3)との比は、使用する場合、約1:4~約4:1の間である。一部の場合、比は約1:1である。さらに、一部の実施形態では、モノマー(A1)、モノマー(A2)、モノマー(B1)、モノマー(B2)又はモノマー(B3)とモノマー(F)との比は、約1:10~約10:1の間である。(A2)が反応する場合、モノマー(A1)とモノマー(A2)との比は、一部の場合、約1:10~約10:1の間、又は約1:5~約5:1の間である。一部の実施形態では、モノマー(A1)とモノマー(A2)との比は、約1:4~約4:1の間である。一部の実施形態では、比は約1:1である。
【0151】
上記の重合性組成物は、反応生成物、又は一部の場合、特定した化学種、例えば、上記のモノマー及び会合塩又は解離塩の縮合重合反応生成物を形成することができる。一部の実施形態では、特定した化学種又はモノマーのうちの少なくとも2つが重合して、コポリマーを形成する。一部のこのような実施形態では、モノマーが反応して、交互コポリマー、又は反応したモノマーの統計コポリマーを形成する。さらに、本明細書の上に記載されている化学種又はモノマーもまた反応させて、コポリマーのペンダント基又は側鎖を形成することができるか、又はポリマー若しくはオリゴマーの主鎖の部分を形成することができる環式構造を形成することができる。さらに、一部の場合、上記の化学種、例えば、(A1)、(B)、(C)、(D)など、又は他の反応物質の量又は比は、化学種が反応した場合、例えば重合した場合、ポリマー又はオリゴマーの所望の特性を実現するよう選択することができる。
【0152】
さらに、本明細書に記載されている重合性組成物が重合されると、形成されるポリマー又はオリゴマーの1つ以上の他の特性もアルコキシル化又はアルケノキシル化シトレートの部分、例えば、式(A2)中の-C(O)R23の量に対して、及び/又は重合性組成物の構成成分の化学構造の1つ以上の他の特徴に基づいて調節することもできる。例えば、一部の場合、本明細書に記載されているポリマーの水の取り込み及び/又は分解速度は、所望の用途に調節することができる。このような調節性は、さらなる利点を実現することができる。
【0153】
さらに、本明細書に記載されている重合性組成物は、反応した場合又は重合した場合、その主鎖に少なくとも1つのエステル結合を有する1種以上のポリマー又はオリゴマーを生成することができる。一部の場合、1つ以上のポリマー又はオリゴマーは、ポリマー主鎖に、複数のエステル結合、例えば少なくとも3つのエステル結合、少なくとも4つのエステル結合、又は少なくとも5つのエステル結合を有する。一部の実施形態では、本明細書に記載されているポリマー又はオリゴマーは、ポリマーの主鎖に2つのエステル結合~50のエステル結合の間を有する。ポリマーの主鎖中の1つ以上のエステル結合を有するポリマー又はオリゴマーは、生物的環境又は他の水性環境中で加水分解されて、他の構成成分に加え、例えば、遊離クエン酸又はシトレートを放出することができる。
【0154】
一部の場合、本明細書に記載されている重合性組成物を反応又は重合することにより形成される1種以上のポリマー又はオリゴマーは、水中での驚くほどの強力な接着特性を有する。一部の実施形態では、これらのポリマー又はオリゴマーは、式(A1)の1種以上のモノマー、場合により式(A2)の1種以上のモノマー、式(B1)、(B2)又は(B3)のうちの1種以上のモノマー、及びドーパミンから形成される。他の例では、ポリマー又はオリゴマーは、水中での驚くほどの強力な接着特性を有しており、これらは、式(A1)の1種以上のモノマー、場合により式(A2)の1種以上のモノマー、式(B1)、(B2)又は(B3)のうちの1種以上のモノマー、L-DOPA、D-DOPA又は没食子酸、及びコーヒー酸、3,4-ジヒドロキシヒドロ桂皮酸又はタンニン酸を含む重合性組成物から形成される。
【0155】
一部の例では、本明細書に記載されている重合性組成物は、ジアミンを含む1種以上のモノマーを含む。一部の実施形態では、ジアミンは、式(G)の構造:
【0156】
【化27】
(式中、qは、1~20の範囲の整数である)
によって表すことができる。
【0157】
一部の場合、ジアミンは、ジオールモノマー、例えば本明細書の上に記載されている式(B1)、式(B2)又は式(B3)と少なくとも部分的に、置き換えることができる。他の例では、ジアミンは、ジオールモノマーに加えて、及び/又はジオールモノマーの代わりに使用してもよい。理論に拘泥することを意図するものではいが、ジアミンの使用により、重合性組成物の重合によって形成したポリマー又はオリゴマーにアミド連結基をもたらし、ひいては、それらから形成されたポリマー又はオリゴマーの分解は遅くなり得、ポリマー又はオリゴマーの生分解性を「調節」する手段をもたらすことができる。一部の実施形態では、これらの重合性組成物を反応させて、例えば、重合して、少なくともモノマー(A1)、場合によりモノマー(A2)及びモノマー(B1)、(B2)又は(B3)から形成される、例えば、これらの反応生成物であるポリマー又はオリゴマーを含む組成物を形成し、この場合、式(G)によるジアミンモノマーは、(B1)、(B2)又は(B3)を少なくとも部分的に置き換える。
【0158】
一部の実施形態では、重合性組成物は、1つ以上のアルキン部分又は1つ以上のアジド部分を含む1種以上のモノマーを含む。一部の場合、本明細書に記載されている重合性組成物は、(i)アルコキシル化、若しくはアルケノキシル化、若しくは非アルコキシル化及び非アルケノキシル化クエン酸、シトレート又はクエン酸のエステルのうちの1種以上、(ii)ポリオール、例えばジオール、(iii)一価、二価又は三価の金属陽イオンを含む少なくとも1つの会合塩又は解離塩、並びに(viii)アルキン部分及び/又はアジド部分を含む少なくともあるモノマーを含む。例えば、一部の場合、本明細書に記載されている組成物は、式(A1)の1種以上のモノマー、場合により式(A2)の1種以上のモノマー、式(B1)、(B2)又は(B3)のうちの1種以上のモノマー、並びに1つ以上のアルキン部分及び/又は1つ以上のアジド部分を含む1種以上のモノマーから形成されるポリマー又はオリゴマーを含む。一部の例では、1つ以上のアルキン部分及び/又は1つ以上のアジド部分を含むモノマーは、複数のアルキン及び/又はアジド部分を有する。一部の実施形態では、これらの重合性組成物を反応させて、例えば重合して、少なくとも(i)、(ii)、(iii)及び(viii)から形成する、例えば、これらの反応生成物である1種以上のポリマー又はオリゴマーを含む組成物を形成する。
【0159】
さらに、本明細書に記載されているポリマーを形成するために使用される1つ以上のアルキン及び/又はアジド部分を含むモノマーは、本発明の目的と不一致とはならない任意のアルキン及び/又はアジド含有化学種を含むことができる。例えば、一部の例では、このような1種以上のモノマーは、ポリオール/ポリアミン、例えばジオール/ジアミンを含む。このようなモノマーは、一部の場合、モノマーの1つ以上のヒドロキシル部分と式(A1)のモノマーの、又は本明細書に記載されている別のカルボキシル含有モノマー、例えば式(A2)の任意選択のモノマーのカルボキシル部分又はカルボン酸部分との反応によって、ポリマーに組み込むことができる。さらに、一部の例では、このようなモノマーは、式(B1)、(B2)又は(B3)のモノマーの代わりに使用することができる。他の例では、このようなモノマーは、式(B1)、(B2)又は(B3)のうちの1種以上のモノマーと組み合わせて使用される。さらに、このようなモノマーは、ジアジド-ジオール(DAzD)又はアルキンジオール(AID)とすることができる。
【0160】
一部の場合、1つ以上のアジド部分を含む1種以上のモノマーは、式(H1)、(H2)又は(H3)のモノマー:
【0161】
【化28】
(式中、
X
5は、-O-又は-NH-であり、
R
16は、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
17及びR
18は、それぞれ独立して、-CH
2N
3、-CH
3又は-CH
2CH
3である)
を含む。
【0162】
さらに、一部の実施形態では、1つ以上のアルキン部分を含む1種以上のモノマーは、式(I1)、(I2)、(I3)、(I4)、(I5)又は(I6)のモノマー:
【0163】
【化29】
(式中、
X
6及びYは、それぞれ独立して、-O-又は-NH-であり、
R
19及びR
20は、それぞれ独立して、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
21は、-O(CO)C≡CH、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
R
22は、-CH
3、-OH又は-NH
2である)
を含む。
【0164】
さらに、一部の実施形態では、本明細書に記載されているモノマーは、生物学的活性種により官能化することができ、このような場合、本明細書に記載されているモノマーを反応させることにより形成されるポリマー又はオリゴマーは、そのような生物学的活性種により官能化することができる。さらに、追加のモノマーは、1つ以上のアルキン部分及び/又はアジド部分を含むことができる。例えば、一部の例では、本明細書に記載されているポリマーは、ペプチド、ポリペプチド、核酸又は多糖を含む1種以上のモノマーから形成され、この場合、ペプチド、ポリペプチド、核酸又は多糖は、1つ以上のアルキン部分及び/又はアジド部分で官能化される。一部の場合、本明細書に記載されているポリマーの生物学的活性種は、成長因子又はシグナル伝達分子である。さらに、ペプチドは、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド又はより長いペプチドを含むことができる。本明細書の以下においてさらに記載されている通り、一部の実施形態では、このようなモノマーに由来するポリマーの形成により、本明細書に記載されている組成物にさらなる生物学的機能を設けることができる。
【0165】
B.ポリマー又はオリゴマーを含む組成物
さらなる態様では、ポリマー組成物又はオリゴマー組成物は、本明細書に記載されている。一部の場合、このような組成物は、本明細書の上の項目IAに記載されているモノマー含有組成物又は重合性組成物から形成されるポリマー又はオリゴマーを含む、これからなる、又はこれから実質的になる。本明細書の上の項目IAに記載されているいずれかの組成物を使用して、ポリマー又はオリゴマーを形成することができる。例えば、一部の場合、本明細書に記載されている組成物は、式(A1)の1種以上のモノマー、場合により式(A2)の1種以上のモノマー、式(B1)、(B2)又は(B3)のうちの1種以上のモノマー、式ABの1種以上の塩、並びに式(C)、式(D1)、式(D2)、式(D3)、式(D4)、式(E1)、式(E2)、式(F)、式(G)、式(H1)、式(H2)、式(H3)、式(I1)、式(I2)、式(I3)、式(I4)、式(I5)及び/又は式(I6)のうちの1種以上のモノマーから形成されるポリマー又はオリゴマーを含む。
【0166】
さらに、一部の場合、本明細書に記載されている組成物は、本明細書の上の項目IAに記載されているモノマーから形成されるポリマー又はオリゴマーを含む、複数のポリマー又はオリゴマーを含む。一部の例では、ポリマーは、クリック化学反応スキームによって互いに反応性となるよう選択される。一部の場合、例えば、本明細書に記載されている組成物は、式(A1)の1種以上のモノマー、場合により式(A2)の1種以上のモノマー、式(B1)、(B2)又は(B3)のうちの1種以上のモノマー、式ABの1種以上の塩、及び1つ以上のアルキン部分を含む1種以上のモノマーから形成される第1のポリマーを含み、式(A1)の1種以上のモノマー、場合により式(A2)の1種以上のモノマー、式(B1)、(B2)又は(B3)のうちの1種以上のモノマー、式ABの1種以上の塩、及び1つ以上のアジド部分を含む1種以上のモノマーから形成される第2のポリマーをさらに含む。したがって、一部のこのような実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、アジド-アルキン環化付加生成物、例えば1,4又は1,5-トリアゾール環を含むことができる。この方法で、本明細書に記載されている組成物の第1のポリマー及び第2のポリマーは、1つ以上のアジド-アルキン環化付加生成物を形成して、ポリマーネットワークの架橋として働かせることによって、ポリマーネットワークを形成することができる。さらに、本明細書においてさらに記載されている通り、二価又は三価の金属陽イオンのうちの1種以上がやはり、ポリマーネットワークの架橋剤として働くこともできる。ポリマーの他の組合せも可能である。
【0167】
さらに、上記の通り、塩ABは、本明細書に記載されている組成物及び/又は本明細書に記載されているポリマー若しくはオリゴマーから完全に除外することが可能である。上記のモノマー又は反応物質のうちの1種以上が、ポリマー又はオリゴマーを架橋させて、架橋化ポリマー又はオリゴマーネットワークを形成することができる、金属陽イオン、例えば二価又は三価の金属陽イオンを含む場合、塩ABを除外することがとりわけ望ましいことがある。例えば、一部の例では、クエン酸ベースのモノマー(例えば、式(A1)又は(A2)の構造を有する)は二価又は三価の金属のうちの少なくとも1種が存在する(例えば、R1、R2及びR3のうちの少なくとも1つが、M2+又はM3+である)塩又は陽イオン-陰イオン錯体として提供される。このような場合、架橋は、本明細書の上に記載されている個別の追加の塩を使用することなく、1種以上の二価又は三価の金属陽イオンにより行われてもよい。
【0168】
本明細書に記載されている組成物は、本発明の目的と不一致にはならない任意の量で上記のポリマー又はオリゴマーを含むことができる。例えば、一部の場合、本明細書に記載されている組成物は、大部分(50%超)がポリマー又はオリゴマーを含む。一部の実施形態では、組成物は、60%超、70%超、80%超、90%超、95%超、99%超又は100%のポリマー又はオリゴマーを含む。一部の実施形態では、これらの組成物は、本明細書に記載されているいずれかのモノマーが50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満又は1%未満を占める。
【0169】
本明細書においてさらに記載されている通り、本明細書に記載されている組成物のポリマー又はオリゴマーは、本明細書に記載されている金属陽イオンによる架橋を示さない、又は本明細書に記載されている「イオンドープ」法によって作製されない他のポリマー又はオリゴマーと比べることを含めて、他のポリマー又はオリゴマーと比べて、改善した機械特性を有することができる。一部の場合、本明細書に記載されているポリマー又はオリゴマーは、強度及び/又は弾性が改善されている。例えば、本組成物は、例えば、5MPa超、10MPa超、20MPa超、30MPa超、40MPa超、50MPa超又は60MPa超の高い初期モジュラスを有する。本明細書に記載されている組成物は、4~20、10~20、11~20、12~20又は12~18MPaの応力を受けることができ、20%未満から150%超までの様々な対応する歪値を有する。初期モジュラス値、応力値及び歪値は、2週間、水和させた組成物で、依然として高いままである。本明細書に記載されているポリマー又はオリゴマーの追加的な物理特性は、本明細書に記載されている本発明の方法とは異なる方法で形成されるポリマー又はオリゴマーとの比較を含めて、本明細書の項目II及び以下にさらに記載されている。
【0170】
II.ポリマー又はオリゴマーを作製する例示的な方法
別の態様では、ポリマー又はオリゴマーを作製する方法が本明細書に記載されている。一部の実施形態では、このような方法は、項目IAの対応する重合性組成物に由来する項目IBのポリマー又はオリゴマーのいずれかを形成するステップを含む。より詳細には、このような方法は、上記の項目IAに記載されている一連のモノマー及び/又は他の反応物質を反応又は重合させて、上記の項目IBに記載されているポリマー又はオリゴマーを得るステップを含む、これからなる、又はこれから実質的になることができる。例えば、一部の場合、方法は、(i)アルコキシル化若しくはアルケノキシル化、又は非アルコキシル化及び非アルケノキシル化クエン酸、シトレート、又はクエン酸化学種のエステル/アミドのうちの1種、(ii)ポリオール又はポリアミン、例えばジオール若しくはジアミン、並びに(iii)一価、二価又は三価の金属陽イオンを含む少なくとも1種の会合塩又は解離塩を反応又は重合させて、これらの構成成分に由来するポリマーを形成するステップを含む、これからなる、又はこれから実質的になる。一部の実施形態では、これらの成分は、溶媒、例えば水性溶媒中で反応させる。さらに、一部の場合、反応物質は、同一工程で、又は同時に反応させる。他の例では、すべての反応物質ではないが2種以上の反応物質を最初に反応させて、中間化学種(例えばR1、R2及びR3のうちの少なくとも1つが、M2+又はM3+である、式(A1)又は式(A2)の化学種)を形成し、次いで、この中間化学種と残りの反応物質とを反応させることができる。さらに、本明細書に記載されている方法は、本明細書に記載されている塩又は金属陽イオンの存在下で、本明細書に記載されているモノマーを重合するステップを含むことができ、こうして、金属陽イオンによるポリマー又はオリゴマーの架橋はインシチュで行うことができる。したがって、本明細書に記載されている方法は、ポリマー若しくはオリゴマー又はポリマーネットワークが重合反応により既に形成された後に、金属陽イオンがポリマー又はオリゴマーに、又はポリマーネットワークに添加され得る他の方法とは異なり得ることを理解すべきである。
【0171】
一部の場合、したがって、本明細書に記載されている方法は、金属陽イオン又は塩粒子の架橋によるものを含む、及び重合過程自体の間を含む、ポリマー又はオリゴマーを架橋するステップをさらに含むことができる。金属陽イオン(例えば、二価又は三価の金属陽イオン)によるモノマーの重合及び/又は架橋が完了した後に、追加の架橋(特に、金属陽イオン以外の架橋剤化学種による架橋)もまた行うことができる。
【0172】
不溶性又はやや不溶性の塩を使用した場合、架橋は未溶解塩粒子により行うことができることをさらに理解すべきである。特定の任意の理論に拘泥することを望むものではないが、一部の実施形態では、不溶性塩粒子は、架橋化ポリマーネットワークに対する「種」又は核生成の中心として働くと考えられる。一部のこのような実施形態では、不溶性塩は、クエン酸カルシウムである。
【0173】
一部の実施形態では、「イオンドープ」法としても呼ばれることもある、本明細書に記載されているポリマー又はオリゴマーを作製する方法は、改善された及び/又は驚くほどの物理構造及び特性を有するポリマー又はオリゴマーをもたらす。例えば、一部の場合、本明細書に記載されている方法によって形成されるポリマー又はオリゴマーは、他に類似した他のポリマー又はオリゴマーと比べて、ポリマーネットワークの全体にわたるイオン(陽イオン及び陰イオン)の実質的に均一な分布、低濃度の陰イオン(具体的には、添加した塩に由来するもの)、及び高濃度の陽イオン(例えば、添加した塩に由来するものを含む、二価及び三価の金属陽イオン)を有する。一部の実施形態では、これらの組成物中の陽イオン及び陰イオンの均質性及び濃度は、ポリマー又はオリゴマーが重合過程により形成された後に、イオン性溶液がポリマー又はオリゴマーに添加され得る、いわゆる「イオン浸漬」法によって形成される組成物ととりわけ比較される。任意の特定の理論に拘泥することを望むものではないが、陽イオン濃度の向上、並びに組成物内の陰イオン及び陽イオンの均質性向上は、「イオンドープ」法によって実現されるこれらの組成物における強度の観察された向上を少なくとも部分的に担っていると考えられる。陰イオン数が減少すると、同一物を水性環境に置いた場合、イオンドープ法により形成される組成物の量、及び又は膨潤速度が低下するとやはり考えられる。
【0174】
本明細書に記載されている「イオンドープ」法は、一価、二価又は三価の陽イオンが、以下に示されているポリマー又はオリゴマーの少なくとも2つの-COOペンダント基を架橋する組成物を提供するとさらに考えられる。任意の特定の理論に拘泥することを望むものではないが、この構造は、他の組成物、例えば「イオン浸漬」法によって形成される組成物と比べた場合、「イオンドープした」組成物内の減少した量の陰イオン(COO-基以外、又は他のペンダント陰イオン性部分)の存在下で形成されると考えられる。陽イオンを架橋する「陰イオン不足」環境が、弾性の改善を少なくとも部分的に担っているとさらに考えられ、なぜなら、架橋陽イオンは、異なる-COO(又は、他の陰イオン性ペンダント基)との初期の結合が破壊されると、ポリマーのペンダント基(又はその鎖中)の部分ではない対陰イオンによって陽イオンが迅速に「捕捉」されないで(より多数の陰イオンの存在下で起こり得るように)、新しい-COOペンダント基との新しい結合を形成することができるからである。この提案される「自己治癒」機構は、
図1及び2に示されている。本明細書に記載されている一部の実施形態によるイオンをドープしたポリマー又はオリゴマー組成物は、CaCl
2の場合、
図3に、及びCaCitの場合、
図4に例示されている方法の少なくとも1つによって調製することができる。
【0175】
III.自己硬化性のシトレートベースのコンポジットを調製する方法
POCプレポリマーは、ワンポットの重縮合反応により合成することができる。例えば、1:1のモル比のクエン酸とオクタンジオールを、10分間の撹拌下、160℃で溶融することができる。次に、反応温度を140℃まで低下させる。この反応は、プレポリマーが、粘度のために、もはや撹拌することができなくなるまで進行することができ、この時点で、この反応をジオキサンでクエンチする。重合後、プレポリマーは、DI水中での沈殿により精製し、凍結乾燥し、有機溶媒に溶解すると、プレポリマー溶液を形成することができる。次に、以下に限定されないが、ジオキサン、アセトン、エタノール及び酢酸エチルを含む有機溶媒に溶解したPOCプレポリマーを、所望の比で金属酸化物粒子と混合し(また、溶媒中に分散する)、手短に均質にして、次に、所望の形状でキャスト成形し、固体を形成する。
【0176】
シトレートベースのポリエステルは、様々なジオール及びポリオールを使用して、上記の一般手順によって合成することができる。好適なジオールは、例えば、1,2-エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール及び1,12-ドデカンジオールである。シトレートベースのポリエステルは、ポリ(エチレングリコール)を含む、様々な水溶性ジオールを使用して、上記の一般手順によって合成することができる。プレポリマーは、水、アセトン、ジオキサン、エタノール及び酢酸エチルを含む溶媒中、様々な濃度で可溶化することができる。ポリマーは、シトレート:ジオールが1.5:1~1:1.5の比で合成することができる。例示的な金属酸化物は、酸化カルシウム、酸化マグネシウム及び酸化亜鉛を含んでもよい。金属酸化物は、例えば、水、エタノール、アセトン、ジオキサン及び酢酸エチルを含む溶媒中、様々な濃度で分散することができる。金属酸化物:ポリマーの比は、様々であってもよい。例えば、金属酸化物:ポリマーの比は、1:10~10:1、金属酸化物:ポリマーは、例えば、1:10、1:8、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、8:1又は10:1の金属酸化物:ポリマーと様々とすることができる。本明細書において開示されているコンポジットは、約5~約80重量%、約10~約60重量%、約20~約50重量%、又は約30~約40重量%の金属酸化物を含むことができる。
【0177】
金属酸化物/POCフィルムは、テフロン(登録商標)製皿中で金属酸化物/プレポリマー溶液をキャスト成形し、次いで、溶媒蒸発及び熱的架橋により調製することができる。
【0178】
金属酸化物/POC多孔質足場は、ペーストが形成されるまで、金属酸化物/プレポリマー溶液と塩化ナトリウムを混合することにより調製することができ、次に、テフロン(登録商標)製皿に包み、熱的に架橋する。塩は、DI水中で浸漬し、次いで凍結乾燥することにより浸出する。
【0179】
金属酸化物/POCコンポジットは、クレイ様の稠度が実現するまで、金属酸化物/POCプレポリマーと充填材料とを混合し、次いで、所望の形状に成形して熱的架橋することによって形成することができる。充填材料の例には、以下に限定されないが、ヒドロキシアパタイト、B-リン酸三カルシウム、パール粉末、リン酸八カルシウムなどが含まれる。
【0180】
図24は、金属酸化物との有機溶媒ベースのプレポリマーに対して提案される反応機構を例示する模式図である。金属酸化物は、プレポリマー上のカルボキシル基と直接、反応し、イオン性架橋化ネットワークを形成する。
【0181】
図25A及び25Bは、金属酸化物との水ベースのプレポリマーに対して提案される反応機構を例示する模式図である。金属酸化物は、カルボキシル基と直接反応して、又は水と反応して、金属水酸化物中間体を形成し、次いで、カルボキシル基との反応により、イオン性架橋化ネットワークを形成する。
【実施例0182】
[実施例1]
イオンをドープしたポリマー又はオリゴマー組成物の調製及び特徴付け
本明細書に記載されている一部の実施形態によるイオンをドープしたポリマー又はオリゴマー組成物を調製し、ポリ(1,8-オクタンジオール-CO-クエン酸)(POC)及びイオン浸漬POCと比較した。
【0183】
ポリ(1,8-オクタンジオール-CO-クエン酸)(POC)を、
図5に例示されている方法によって調製した。Ca(NO
3)
2、CaCO
3、CaBr
2、CaI
2、NaCl、LiCl、KCl、MgCl
2、SrCl
2、ZnCl
2、NiCl
2、CuCl
2、AlCl
3及びFeCl
3を使用するイオン浸漬POCを、
図6に示した方法により調製した。
【0184】
POC及びイオンをドープしたPOCの機械特性を測定し、
図7~17に示す。具体的には、
図7は、CaCl
2、CaCit、Ca(NO
3)
2、CaCO
3、CaBr
2及びCaI
2をドープしたポリマーの応力(MPa)をPOCの応力(MPa)と比較した棒グラフである。
図8は、CaCl
2、CaCit、Ca(NO
3)
2、CaCO
3、CaBr
2及びCaI
2をドープしたポリマーの歪(%)をPOCの歪(%)と比較した棒グラフである。
図9は、NaCl、LiCl、KCl、CaCl
2、MgCl
2、SrCl
2、ZnCl
2、NiCl
2、CuCl
2、AlCl
3及びFeCl
3をドープしたポリマーの応力(MPa)を示す棒グラフである。
図10は、NaCl、LiCl、KCl、CaCl
2、MgCl
2、SrCl
2、ZnCl
2、NiCl
2、CuCl
2、AlCl
3及びFeCl
3をドープしたポリマーの歪(%)を示す棒グラフである。
図11は、CaCl
2、CaCit、Ca(NO
3)
2、CaCO
3、CaBr
2及びCaI
2をドープしたポリマーの、MPaという単位で表される初期モジュラスとPOCの応力(MPa)として測定される初期モジュラスとを比較する棒グラフである。
図12は、NaCl、LiCl、KCl、CaCl
2、MgCl
2、SrCl
2、ZnCl
2、NiCl
2、CuCl
2、AlCl
3及びFeCl
3をドープしたポリマーのMPaの単位で表される初期モジュラスを示す棒グラフである。
図13は、CaCl
2、CaCit、Ca(NO
3)
2、CaCO
3、CaBr
2及びCaI
2をドープし、2週間、水和させたポリマーの応力(MPa)と、2週間、水和させたPOCの応力(MPa)とを比較する棒グラフである。
図14は、CaCl
2、CaCit、Ca(NO
3)
2、CaCO
3、CaBr
2及びCaI
2をドープし、2週間、水和させたポリマーの歪(%)と、2週間、水和させたPOCの歪(%)とを比較する棒グラフである。
図15は、CaCl
2、CaCit、Ca(NO
3)
2、CaCO
3、CaBr
2及びCaI
2をドープし、2週間、水和させたポリマーの、MPaの単位で表される初期モジュラスと、2週間、水和させたPOCの応力(MPa)として測定される初期モジュラスとを比較する棒グラフである。
図16は、水和条件で保存される、CaCl
2、CaCit、Ca(NO
3)
2、CaCO
3、CaBr
2及びCaI
2をドープしたポリマーの、乾燥応力の%と、水和条件で保存されるPOCの乾燥応力の%とを比較した棒グラフである。
図17は、水和条件で保存される、CaCl
2、CaCit、Ca(NO
3)
2、CaCO
3、CaBr
2及びCaI
2をドープしたポリマーの乾燥歪の%と、水和条件で保存されるPOCの乾燥歪の%とを比較した棒グラフである。
【0185】
さらに、
図18によって証拠だてられるように、上の
図3及び
図4に示されている方法により形成される組成物は、高度な均質性を有するフィルムを生成する。具体的には、上部パネルに示されているフィルム(0.02M CaCl
2でPOCをドープしたもの)を
図3に示されている方法により生成し、0.02M CaCitでPOCをドープすることにより生成した底部パネルに示されているフィルムは、
図4における方法によって生成した。
【0186】
図19によって証拠だてられるように、
図4に示されている方法によって形成されたフィルムは、クラスター様形態を有する。クエン酸カルシウムの形態、及び
図4に示されている方法により生成した組成物が
図20に示されている。
【0187】
図21~22は、本明細書に記載されている実施形態による、CaCitをドープしたPOC、及びCaCl
2をドープしたPOCに存在するカルシウムの重量%を示している。
図23は、CaCl
2をドープしたPOCに存在するカルシウムの重量%を示す。0.02M CaCit及び0.02M CaCl
2をドープしたPOC中に存在するカルシウム(重量%)の量は、0.01M、0.02M、0.1M及び0.2MのCaCl
2をドープしたPOC中に存在するカルシウムの量より多い。
【0188】
[実施例2]
自己硬化性のシトレートベースのコンポジットの調製及び特徴付け
上記の方法を使用して、酸化マグネシウム/POC自己硬化性組成物を調製した。
図26は、エタノール中の30重量%の濃度のPOC、及び10重量%の濃度の酸化マグネシウムを使用して調製した組成物の様々な温度における硬化時間を示している。
図26は、室温及び温度加速における硬化可能性を実証している。
【0189】
図27は、エタノール中の30重量%又は40重量%の濃度のPOC、10重量%の濃度の酸化マグネシウム、及び20%ヒドロキシアパタイト(HA)の存在下又は非存在下を使用して調製した組成物の様々な温度における硬化時間を示している。
図27は、40重量%の濃度のPOCを使用して調製した組成物、及びHAで調製した組成物は、加速硬化を示すことを実証している。例えば、室温での硬化時間は、ブルックフィールドコーンプレート粘度計を使用することによりレオロジーに基づき決定した。
【0190】
本発明の様々な実施形態は、本発明の様々な目的の達成に記載されている。これらの実施形態は、本発明の原理を単に例示しているに過ぎないことを認識すべきである。本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、その多数の修正及び改変が当業者に容易に明白となろう。