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特開2024-88792光透過性の外側要素を備えるデュワーデバイス
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  • 特開-光透過性の外側要素を備えるデュワーデバイス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088792
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】光透過性の外側要素を備えるデュワーデバイス
(51)【国際特許分類】
   G04B 43/00 20060101AFI20240625BHJP
   G04B 37/02 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
G04B43/00 G
G04B37/02
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024064470
(22)【出願日】2024-04-12
(62)【分割の表示】P 2022103265の分割
【原出願日】2022-06-28
(31)【優先権主張番号】21186201.6
(32)【優先日】2021-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】507276380
【氏名又は名称】オメガ・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアーネ・ギンキーヴィッチ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】極端な温度の環境においても携行型時計を用いることができるようにする。
【解決手段】携行型時計3の機械的及び/又は機能的コンポーネント2のためのデュワーデバイス1に関し、デュワーデバイスには、ブレスレットとケーシング4があり、ケーシング4内には、エンクロージャ5が形成されており、エンクロージャ内に携行型時計のケース6を配置することができ、少なくとも1つの固定用デバイス7が、エンクロージャを形成するするケーシングの要素のセット10a、10b、10cからケースを離
しつつ、携行型時計のケースをケーシングのエンクロージャ内にて固定し、要素のセットには、光透過性のセラミックス材料、特に光透過性の多結晶セラミックス材料、によって作られた少なくとも1つの光透過
性の外側要素10aがある。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
携行型時計(3)の機械的及び/又は機能的コンポーネント(2)のためのデュワーデ
バイス(1)であって、
前記デュワーデバイス(1)には、ブレスレットとケーシング(4)があり、
前記ケーシング(4)内には、エンクロージャ(5)が形成されており、
前記エンクロージャ(5)内に前記携行型時計(3)のケース(6)を配置することが
でき、
少なくとも1つの固定用デバイス(7)が、前記エンクロージャ(5)を形成する前記
ケーシング(4)の要素のセット(10a、10b、10c)から前記ケース(6)を離
しつつ、前記携行型時計(3)の前記ケース(6)を前記ケーシング(4)の前記エンク
ロージャ(5)内にて固定し、
前記要素のセット(10a、10b、10c)には、光透過性のセラミックス材料、特
に光透過性の多結晶セラミックス材料、によって作られた少なくとも1つの光透過性の外
側要素(10a)がある
ことを特徴とするデュワーデバイス(1)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの光透過性の外側要素(10a)は、実質的に酸窒化アルミニウム
を含むセラミックス材料によって作られている
ことを特徴とする請求項1に記載のデュワーデバイス(1)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの光透過性の外側要素(10a)は、実質的にアルミナ-マグネシ
アを含むセラミックス材料によって作られている
ことを特徴とする請求項1に記載のデュワーデバイス(1)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの光透過性の外側要素(10a)は、実質的に酸化イットリウムを
含むセラミックス材料によって作られている
ことを特徴とする請求項1に記載のデュワーデバイス(1)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの光透過性の外側要素(10a)は、実質的にイットリウムアルミ
ニウムガーネットを含むセラミックス材料によって作られている
ことを特徴とする請求項1に記載のデュワーデバイス(1)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの光透過性の外側要素(10a)は、粗い材料体を焼結することに
よって作られ、
全体的な形状が、前記外側要素の形状と同様であり、
前記粗い材料体は、実質的に酸窒化アルミニウム、アルミナ-マグネシア、酸化イット
リウム及び/又はイットリウムアルミニウムガーネットを含むセラミックス材料の粉末又
は粉末混合体によって実質的に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のデュワーデバイス(1)。
【請求項7】
前記少なくとも1つの光透過性の外側要素(10a)のビッカース硬度は、1223~
1632kgf・mm-2の範囲内であり、好ましくは1530kgf・mm-2である
ことを特徴とする請求項1に記載のデュワーデバイス(1)。
【請求項8】
前記少なくとも1つの光透過性の外側要素(10a)は、可視スペクトルにおける光透
過率が約2mmの厚みに対して約85%である
ことを特徴とする請求項1に記載のデュワーデバイス(1)。
【請求項9】
前記外側要素は、焼結と研磨の後の可視スペクトルにおける光吸収係数が65%以下で
ある
ことを特徴とする請求項1に記載のデュワーデバイス(1)。
【請求項10】
前記少なくとも1つの光透過性の外側要素(10a)は、前記携行型時計(3)の前記
ケース(6)のクリスタル(11)よりも実質的に大きい又は厳密に大きい面があるクリ
スタル(10a)である
ことを特徴とする請求項1に記載のデュワーデバイス(1)。
【請求項11】
前記携行型時計(3)の前記ケース(6)が前記エンクロージャ(5)内に配置されて
いるときに、前記携行型時計(3)の前記ケース(6)のクリスタル(11)が、前記ケ
ーシング(4)のクリスタル(10a)に対向するように配置される
ことを特徴とする請求項1に記載のデュワーデバイス(1)。
【請求項12】
前記エンクロージャ(5)は、真空下又は真空に近い状態である
ことを特徴とする請求項1に記載のデュワーデバイス(1)。
【請求項13】
前記少なくとも1つの固定用デバイス(7)が、前記エンクロージャ内における前記ケ
ーシング(4)の内周壁(12)に接触するように配置される
ことを特徴とする請求項1に記載のデュワーデバイス(1)。
【請求項14】
前記ケーシング(4)の外面全体に配置される干渉フィルターがある
ことを特徴とする請求項1に記載のデュワーデバイス(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携行型時計(例、腕時計、懐中時計)の機械的及び/又は機能的コンポーネ
ントのためのデュワー(Dewar)デバイスに関する。このデュワーデバイスは、光透過性
の外側要素を備える。
【背景技術】
【0002】
電子式携行型時計のような携行型時計は、伝統的に、ブレスレットと、複数の電気又は
電子コンポーネントを含む携行型時計ケースとを備える。従来技術において、これらのコ
ンポーネントの一部が極端な温度に耐えることができず、このような温度で適切に機能し
なくなることが知られている。通常、発光ダイオードを用いた液晶表示(LCD)や水晶
振動子は、最低0℃の温度から最高約80℃(摂氏)までの温度に耐える。しかし、宇宙
や月でのミッションのような特殊な環境においては、温度が約-150℃から約+125
℃に達することがよくある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、このような極端な温度になる可能性がある環境において、携行型時計、特
に電子式携行型時計、を用いることができる必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、携行型時計の機械的及び/又は機能的コンポーネントのためのデュワーデバ
イスに関し、前記デュワーデバイスには、ブレスレットとケーシングがあり、前記ケーシ
ング内には、エンクロージャ(内部空間)が形成されており、前記エンクロージャ内に前
記携行型時計のケースを配置することができ、少なくとも1つの固定用デバイスが、前記
エンクロージャを形成する前記ケーシングの要素のセットから前記ケースを離しつつ、前
記携行型時計の前記ケースを前記ケーシングの前記エンクロージャ内にて固定し、前記要
素のセットには、光透過性のセラミックス材料、特に光透過性の多結晶セラミックス材料
、によって作られた少なくとも1つの光透過性の外側要素がある。
他の実施形態は、以下の特徴を有する。
- 前記少なくとも1つの光透過性の外側要素は、実質的に酸窒化アルミニウムを含むセ
ラミックス材料によって作られている。
- 前記少なくとも1つの光透過性の外側要素は、実質的にアルミナ-マグネシアを含む
セラミックス材料によって作られている。
- 前記少なくとも1つの光透過性の外側要素は、実質的に酸化イットリウムを含むセラ
ミックス材料によって作られている。
- 前記少なくとも1つの光透過性の外側要素は、実質的にイットリウムアルミニウムガ
ーネットを含むセラミックス材料によって作られている。
- 前記少なくとも1つの光透過性の外側要素は、粗い材料体を焼結することによって作
られ、全体的な形状が、前記外側要素の形状と同様であり、前記粗い材料体は、実質的に
酸窒化アルミニウム、アルミナ-マグネシア、酸化イットリウム及び/又はイットリウム
アルミニウムガーネットを含むセラミックス材料の粉末又は粉末混合体によって実質的に
形成されている。
- 前記少なくとも1つの光透過性の外側要素のビッカース硬度は、1223~1632
kgf・mm-2の範囲内であり、好ましくは1530kgf・mm-2である。
- 前記少なくとも1つの光透過性の外側要素は、可視スペクトルにおける光透過率が約
2mmの厚みに対して約85%である。
- 前記外側要素は、焼結と研磨の後の可視スペクトルにおける光吸収係数が65%以下
である。
- 前記少なくとも1つの光透過性の外側要素は、前記携行型時計のクリスタル(光透過
性の板状体)よりも実質的に大きい又は厳密に大きい面があるクリスタルである。
- 前記携行型時計ケースが前記エンクロージャ内に配置されているときに、前記携行型
時計ケースのクリスタルが、前記ケーシングのクリスタルに対向するように配置される。
- 前記エンクロージャは、真空下又は真空に近い状態である。
- 前記少なくとも1つの固定用デバイスが、前記ケーシングの前記エンクロージャの内
周壁に接触するように配置される。
- 前記デュワーデバイスには、前記ケーシングの外面全体に配置される干渉フィルター
がある。
【0005】
図面を参照しながら以下の説明を読むことによって、他の特徴及び利点が明らかになる
。なお、この説明は、ラフなガイドとして与えられるものであって、制限するためのガイ
ドとして与えられるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の一実施形態に係る、クリスタルのような光透過性の外側要素を備える携行型時計の機械的及び/又は機能的コンポーネントのためのデュワーデバイスの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1は、機械式携行型時計、電子式携行型時計、ハイブリッド携行型時計のような携行
型時計3の機械的及び/又は機能的コンポーネント2のための恒温性計時デバイス1の概
略図を示している。この恒温性計時デバイス1は、以下の説明において「デュワー計時デ
バイス」又は単に「デュワーデバイス」とも呼ぶ。このようなデュワーデバイス1は、特
に、携行型時計3の機械的及び/又は機能的コンポーネント2に良好な断熱性を与えるこ
とに寄与することができ、携行型時計3のケース6が、このデュワーデバイス1のケーシ
ング4内に配置される。
【0008】
このデュワーデバイス1には、クリスタル/ガラスや裏部のような少なくとも1つの光
透過性の外側要素10aがある。以下に示しているように、このような光透過性の外側要
素10aは、同時に、良好な機械的及び熱的性質を有し、放射線に耐性があり、様々な酸
、塩基及び水が発生させる損傷に耐性があり、そして、良好な光透過性を有するような材
料によって作られている。この外側要素10aは、少なくとも可視波長を含む光放射にお
いて、透過率Yが68%以上、又はさらには85%以上、と評価される透過率を発生させ
ることができる光透過性の材料によって作られている。「光透過性の材料」という用語は
、ここにおいて、用いられる厚みと組み合わさって、前記光放射の少なくとも部分的な透
過を可能にする性質を有する材料を意味するものと理解することができる。
【0009】
このような外側要素10aは、光透過性であり耐火性のセラミックス材料、特に、光透
過性の多結晶セラミックス材料、によって作られている。この材料は、酸窒化アルミニウ
ム、アルミナ-マグネシア、酸化イットリウム又はイットリウムアルミニウムガーネット
、又はこれらの複数の要素の組み合わせによって構成していることができる。特に、この
外側要素は、粗い材料体を焼結することによって製造され、全体的な形状が、外側要素1
0aの形状と同様である。この粗い材料体は、実質的に、セラミックス材料の粉末又は粉
末混合体、そして、必要に応じてバインダー、によって形成され、このバインダーは、焼
結と研磨の後に、可視スペクトルにおいて光透過性の性質を有する。この粉末又は粉末混
合体は、実質的に、酸窒化アルミニウム、アルミナ-マグネシア、酸化イットリウム、及
び/又は酸窒化アルミニウムのイットリウムアルミニウムガーネットを実質的に含む光透
過性のセラミックス材料を含む。当然、この粉末又は粉末混合体は、特定の性質を有する
コンポーネントを得るように、必要に応じて、特定の数の少量の添加剤を含む。これらの
添加剤及びその効果は、当業者によく知られている。
【0010】
このようにして作られた外側要素10aは、当然、焼結後に可視スペクトルにおいて完
全に光透過性であり、ケーシング4のエンクロージャ5内に配置された携行型時計3のケ
ース6、そして特に、このケース6内に収容された機械的及び/又は機能的コンポーネン
ト2、を保護することに寄与する。
【0011】
このクリスタル10aのような外側要素10aは、例えば、フランス特許文献FR25
56711に記載されている製造方法にしたがって製造することができる。この文献にお
いては、出発材料として、実質的に酸窒化アルミニウム、アルミナ-マグネシア、酸化イ
ットリウム及び/又はイットリウムアルミニウムガーネットを含むセラミックス材料の粉
末混合体を用いている。
【0012】
例えば、前記セラミックス材料が、実質的に酸窒化アルミニウムを含む場合、この外側
要素の組成は、Al23-1/xO27+xN5-xである。ここで、xは0.429~2の範囲内で
ある。
【0013】
このような外側要素は、1223~1632kgf・mm-2の範囲内、好ましくは15
30kgf・mm-2、のビッカース硬度を有する。
【0014】
また、このような外側要素の可視スペクトルの光に対する透過率は、この光の反射と吸
収の関数であり、約2mmの厚みの場合で約85%である。
【0015】
この外側要素は、焼結と研磨の後の可視スペクトルにおける光吸収係数が65%以下で
ある。
【0016】
また、この光透過性の外側要素には、水晶ガラス、サファイアガラス、又はプラスチッ
クガラスによって作られた従来技術の光透過性の外側要素と比べて、以下の特徴がある。
- 潜在的ないわゆる脆性破壊に対する耐性が非常に優れている。すなわち、塑性変形し
ない。
- 化学的耐性が非常に優れている。
- 耐熱性が非常に優れており、融点が高い。
- 放射線硬化性が非常に優れている。
【0017】
ここで説明しているデュワーデバイス1は、特に、デュワーデバイス1のケーシング4
と、携行型時計3のケース6との組み合わせによって形成されており、これによって、こ
れらの機械的及び/又は機能的コンポーネント2に適した断熱性を実現する。この構成に
おいて、携行型時計3のケース6は、ケーシング4のエンクロージャ5内に配置されてお
り、同時に、前記エンクロージャ5を形成するケーシング4、すなわち、クリスタル10
a、このケーシング4のミドル部10cの内周壁12及び裏部10bのような外側要素、
の要素のセット10a~10cから離され又は特定の距離離間するようにされる。なお、
この内周壁12は、前記エンクロージャ5の内周壁でもある。
【0018】
この距離、間隔、又は分離は、ケーシング4内に携行型時計3のケース6を固定するた
めの少なくとも1つの固定用デバイス7に基づいて構成している。すなわち、固定用デバ
イス7は、前記ケース6と、このケーシング4の前記エンクロージャ5を形成するケーシ
ング4の要素のセット10a、10b、10cとの間を分離する構成であることができる
。この固定用デバイス7は、ミドル部10cの内周壁12a、及び/又は裏部10b、及
び/又はクリスタル10aの間の、携行型時計3のケース6、特に、このケース6の外面
全体、との熱伝導を低減又は排除することに寄与する。この外面全体には、この携行型時
計3のケース6のクリスタル11がある上面と、前記ケース6の裏部がある下面と、この
ケース6のミドル部の外周壁がある。下面と上面が反対側にあることがわかる。なお、固
定用デバイス7は、ケーシング4のエンクロージャ5にある内周壁12に接触するように
配置されている。この構成において、固定用デバイス7は、特に可逆的に、携行型時計3
のケース6をケーシング4のエンクロージャ5の内周壁12に機械的に接続する。また、
デュワーデバイス1は、エンクロージャ内にて互いに反対側に配置される2つの固定用デ
バイス7を備えることができる。
【0019】
なお、このようなケース6は、水晶式携行型時計のような電子式携行型時計や機械式携
行型時計であることができる携行型時計3に含まれる。
【0020】
上記の携行型時計3の機械的及び/又は機能的コンポーネント2は、計時器用ムーブメ
ント、表盤、針、リング、ガスケット、及び/又は電子的及び/又は電気的コンポーネン
ト2を含む。なお、これらに限定されず、これらがすべてを網羅するわけではない。特に
、このような電子的及び/又は電気的コンポーネント2は、例えば、表示デバイス、プロ
セッサー、メモリー、エネルギー格納コンポーネント、モーター、集積回路及び電子式発
振器などを含む。
【0021】
また、主な機械的コンポーネントは、ムーブメントのコンポーネントであり、以下を含
む。
- 機械的な力の源であるメインばね
- 振動し時間を均等に分けるバランス
- ばねの力を衝撃に変換するエスケープ
- 機械的な力を伝達するギヤ列
- ワインド用ステム(手動ワインドの場合)又はローター(自動ワインドの場合)
【0022】
したがって、この構成において、このデュワーデバイス1は、従来技術においてよく知
られているデュワーチューブ/フラスコと同様な性質や特徴を有することがわかる。上記
のように、このデュワーデバイス1の性質及び特徴は、特に、このようなデュワーデバイ
ス1が位置することがある外部環境において発生する可能性のある極端な温度からの良好
な断熱を確実にすることに寄与する。
【0023】
したがって、これに関連して、このデュワーデバイス1には、ブレスレットが取り付け
られるミドル部10cがあるケーシング4がある。このブレスレットは、このデュワーデ
バイス1のユーザーがこのデュワーデバイス1を着用できるようにする。このケーシング
4には、さらに、この場合は上記のクリスタル10aと裏部10bである光透過性の外側
要素がある。このデュワーデバイス1において、クリスタル10aには、好ましくは、携
行型時計3のケース6のクリスタル11よりも実質的に大きい又は厳密に大きい面がある
【0024】
上記のように、このデュワーデバイス1のクリスタル10a、ミドル部10c及び裏部
10bは、携行型時計3のケース6を受けることができる、このケーシング4のエンクロ
ージャ5を一緒に形成する。ケーシング4のこれらの3つの要素10a~10c、すなわ
ち、ミドル部10c、クリスタル10a及び裏部10bは、このエンクロージャ5を形成
するように一緒に結合される別個の要素であることができる。代わりに、ケーシング4の
ミドル部10cと裏部10bが、一体的なキャストを一緒に形成して、この一体的なキャ
ストが裏部10bとは反対側の開口を形成し、この開口を可逆的かつ不浸透的な形態でク
リスタル10aによって閉じることができるようにすることができる。代替的実施形態に
おいて、携行型時計3のケーシング4のミドル部10cとクリスタル10aは、一体的な
キャストを一緒に形成して、この一体的なキャストが、クリスタル10aの反対側にある
開口を形成し、この開口が、同様に可逆的で不浸透的な形態で、裏部10bによっても閉
じることができるようにすることができる。
【0025】
また、ミドル部10c又は裏部の10bも、クリスタル10aのように、デュワーデバ
イスのケーシング4の光透過性の外側要素であることができる。このような構成において
、ミドル部10cの周壁12及び裏部10bの内面を、銀層のような金属性又は同様の反
射性のコーティングで被覆することができる。
【0026】
しかし、ミドル部10c又は裏部10bは、好ましくは、金属性材料、又は炭素又はガ
ラス繊維で強化された熱硬化性又は熱可塑性のポリマー樹脂、又はセラミックス材料によ
って作られていることができる。
【0027】
また、デュワーデバイス1には、干渉フィルターがあることができ、この干渉フィルタ
ーは、ケーシング4の外面全体上、すなわち、ミドル部10cの外周壁上、及び/又はこ
のケーシング4のクリスタル10a及び裏部10bの外面上、に配置される。この干渉フ
ィルターは、ケーシング4のこの外面全体上にコーティングを形成するグリッド又は格子
であることができる。このグリッド又は格子には、電磁スペクトルの特定の所定の波長、
典型的には可視範囲の波長、のみを通過させるような寸法構成を有するメッシュがある。
このグリッドは、少なくとも1種類の紫外線、及び/又は赤外線又は近赤外線(NIR)
を反射することができる。
【0028】
また、デュワーデバイス1が空気を含む環境において用いられることを意図されている
場合、携行型時計ケース6が入ったケーシング4のエンクロージャ5は、真空下又はほぼ
真空下にある。すなわち、このエンクロージャにおいて、このケース6と、ミドル部10
cの内周壁12、裏部10b及びクリスタル10aとの間に形成される空間には、材料が
空であるかほとんど空である。なお、このデュワーデバイス1が空気のない又はほぼ空気
のない環境において用いられる場合において、そのエンクロージャは必ずしも真空下にあ
る必要はなく、また逆に、真空下又は真空に近い状態であることもできる。
【0029】
したがって、このデュワーデバイス1を装備する、この場合はクリスタルである、外側
要素は、携行型時計ケース6内に配置されたコンポーネントからの長期間にわたる放射に
起因する熱損失を低減又は防ぐことによって、携行型時計3の機械的及び/又は機能的コ
ンポーネント2に、外部環境からの断熱性を非常に良好にすることに寄与する。したがっ
て、デュワーデバイス1の外側の温度が、典型的には-125~+125℃のオーダーで
ある、極端な値に達しても、エンクロージャ5内の温度は、典型的には20℃のオーダー
であるケーシング4内に携行型時計3のケース6が配置されるときに携行型時計3のケー
ス6内の温度と実質的に同じままである。なお、デュワーデバイス1の環境において発生
する温度条件が何であれ、携行型時計3のケース6内にて発生する温度は、携行型時計の
適切な機能を妨げない温度にしかならない。この温度は、極端な温度が発生する環境に携
行型時計ケースが直接位置しているときに(すなわち、デュワーデバイスのケーシングの
外側に位置しているときに)、携行型時計ケースがそのコンポーネント2の動作温度を維
持することができる期間よりも5~18倍長い期間にわたって維持される。したがって、
このような構成は、携行型時計3の機械的及び/又は機能的コンポーネント2を保護する
ことを可能にし、それらが極端な外部温度の条件下で最適に機能することを確実にするこ
とに寄与すると考えられる。
【符号の説明】
【0030】
1 デュワーデバイス
2 機械的及び/又は機能的コンポーネント
3 携行型時計
4 ケーシング
5 エンクロージャ
6 ケース
7 固定用デバイス
11 クリスタル
10a クリスタル
10b 裏部
10c ミドル部
図1
【手続補正書】
【提出日】2024-04-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
携行型時計(3)の機械的及び/又は機能的コンポーネント(2)のためのデュワーデバイス(1)であって、
前記デュワーデバイス(1)には、ブレスレットとケーシング(4)があり、
前記ケーシング(4)内には、エンクロージャ(5)が形成されており、
前記エンクロージャ(5)内に前記携行型時計(3)のケース(6)を配置することができ、
2つの固定用デバイス(7)が、前記エンクロージャ(5)を形成する前記ケーシング(4)の要素のセット(10a、10b、10c)から前記ケース(6)を離しつつ、前記携行型時計(3)の前記ケース(6)を前記ケーシング(4)の前記エンクロージャ(5)内にて固定し、前記固定用デバイス(7)は、前記エンクロージャ内にて互いに反対側に配置され、
前記要素のセット(10a、10b、10c)には、光透過性のセラミックス材料によって作られた少なくとも1つの光透過性の外側要素(10a)があり、
前記携行型時計(3)の前記ケース(6)は、前記エンクロージャ(5)内に配置されており、前記携行型時計(3)の前記ケース(6)のクリスタル(11)が、前記ケーシング(4)の前記光透過性の外側要素(10a)に対向するように配置され、前記ケース(6)は、前記ケーシング(4)と別体であ
ことを特徴とするデュワーデバイス(1)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの光透過性の外側要素(10a)は、実質的に酸窒化アルミニウムを含むセラミックス材料によって作られている
ことを特徴とする請求項1に記載のデュワーデバイス(1)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの光透過性の外側要素(10a)は、実質的にアルミナ-マグネシアを含むセラミックス材料によって作られている
ことを特徴とする請求項1に記載のデュワーデバイス(1)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの光透過性の外側要素(10a)は、実質的に酸化イットリウムを含むセラミックス材料によって作られている
ことを特徴とする請求項1に記載のデュワーデバイス(1)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの光透過性の外側要素(10a)は、実質的にイットリウムアルミニウムガーネットを含むセラミックス材料によって作られている
ことを特徴とする請求項1に記載のデュワーデバイス(1)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの光透過性の外側要素(10a)は、粗い材料体を焼結することによって作られ、
全体的な形状が、前記外側要素の形状と同様であり、
前記粗い材料体は、実質的に酸窒化アルミニウム、アルミナ-マグネシア、酸化イットリウム及び/又はイットリウムアルミニウムガーネットを含むセラミックス材料の粉末又は粉末混合体によって実質的に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のデュワーデバイス(1)。
【請求項7】
前記少なくとも1つの光透過性の外側要素(10a)のビッカース硬度は、1223~1632kgf・mm-2の範囲内である
ことを特徴とする請求項1に記載のデュワーデバイス(1)。
【請求項8】
前記少なくとも1つの光透過性の外側要素(10a)は、可視スペクトルにおける光透過率が約2mmの厚みに対して約85%である
ことを特徴とする請求項1に記載のデュワーデバイス(1)。
【請求項9】
前記外側要素は、焼結と研磨の後の可視スペクトルにおける光吸収係数が65%以下である
ことを特徴とする請求項1に記載のデュワーデバイス(1)。
【請求項10】
前記少なくとも1つの光透過性の外側要素(10a)は、前記携行型時計(3)の前記ケース(6)のクリスタル(11)よりも実質的に大きい又は厳密に大きい面があるクリスタル(10a)である
ことを特徴とする請求項1に記載のデュワーデバイス(1)。
【請求項11】
前記エンクロージャ(5)は、真空下又は真空に近い状態である
ことを特徴とする請求項1に記載のデュワーデバイス(1)。
【請求項12】
前記固定用デバイス(7)が、前記エンクロージャ内における前記ケーシング(4)の内周壁(12)に接触するように配置される
ことを特徴とする請求項1に記載のデュワーデバイス(1)。
【請求項13】
前記ケーシング(4)の外面全体に配置される干渉フィルターがある
ことを特徴とする請求項1に記載のデュワーデバイス(1)。
【外国語明細書】