(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088809
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】皮膚の引締め、皮膚の固定、及び皺の減少のための美容又は医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/89 20060101AFI20240625BHJP
A61K 8/894 20060101ALI20240625BHJP
A61K 8/58 20060101ALI20240625BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
A61K8/89
A61K8/894
A61K8/58
A61Q19/08
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024068111
(22)【出願日】2024-04-19
(62)【分割の表示】P 2022113705の分割
【原出願日】2017-09-20
(31)【優先権主張番号】102016117728.8
(32)【優先日】2016-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】519091812
【氏名又は名称】マイゼル ファーマ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】MAYSER PHARMA AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】ブッシュ、クラウス-ウベ
(57)【要約】
【課題】従来技術から公知の調製物よりも皮膚の引締め及び/若しくは固定、並びに/又は皮膚の皺の深さ及び程度を減じるのに適した組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、少なくとも1種のポリマー前駆物質を含有する美容又は医薬組成物であって、特に、少なくとも1種の重合触媒をさらに含有し、その存在下、該少なくとも1種のポリマー前駆物質が光の作用下で重合することを特徴とする組成物を提案する。また、皮膚の引締め、皮膚の固定、及び/又は皺の減少の方法も提案し、該方法では、ポリマー前駆物質及び重合触媒が治療対象である皮膚部位に局所適用され、続いて治療対象である皮膚部位が光に曝露されると、弾性の装着可能なポリマー層が皮膚上に形成される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のポリマー前駆物質を含有し、さらに、少なくとも1種の重合触媒を含有し、前記少なくとも1種の重合触媒は前記少なくとも1種のポリマー前駆物質を光の作用下で架橋ポリマーとする重合を触媒する能力を有し、前記少なくとも1種のポリマー前駆物質がシロキサンであることを特徴とする、皮膚に局所適用される美容又は医薬組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1種のポリマー前駆物質はポリエーテル変性シロキサンであることを特徴とする請求項1に記載の美容又は医薬組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1種のポリマー前駆物質が、下記a)およびb)から選択されることを特徴とする請求項1または2に記載の美容又は医薬組成物。
a)少なくとも1つの下記i)と少なくとも1つの下記ii)との組合せ:
i)以下の構造を有するポリオルガノヒドロシロキサン:
【化1】
(式中、R
8はアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、エポキシド基、イソシアナート基、アミノ基、アルコール基、エーテル基、エステル基、及び水素からなる群より選択される独立したラジカルを表し、ただし前記シロキサンの全R
8基のうちの少なくとも2つは水素原子であるが半分以下であるものとし、mは0、1、2、又は3であり、nは1~3000の値の数字である。)
ii)以下の構造を有するポリオルガノシロキサン:
【化2】
(式中、R
6は非ハロゲン化又はハロゲン化エチレン部不飽和基、非ハロゲン化又はハロゲン化アルキル基、非ハロゲン化又はハロゲン化シクロアルキル基、エポキシド基、イソシアナート基、アミノ基、アルコール基、エーテル基、エステル基、フェニル基からなる群より選択される独立したラジカルを表し、ただし全R
6基の少なくとも70%はビニル基又は他のアルケニル基を含むものとし、hは1~3000の値の数字であり、gは0、1、2、又は3である。)
b)以下の構造を有する少なくとも1つのポリオルガノヒドロシロキサン:
【化3】
(式中、R
8はアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、エポキシド基、イソシアナート基、アミノ基、アルコール基、エーテル基、エステル基、水素、及び非ハロゲン化又はハロゲン化エチレン部不飽和基からなる群より選択される独立したラジカルを表し、ただし、前記シロキサンの全R
8基のうちの少なくとも2つは水素原子であるが半分以下であるものとし、さらに前記R
8基の少なくとも2つはビニル基又はアルケニル基を含むものとし、mは0、1、2、又は3であり、nは1~3000の値の数字である。)
【請求項4】
前記重合触媒が一般式(I)で表される化合物であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の美容又は医薬組成物。
【化4】
(式中、n=1~8であり、o=0~2であり、p=1~3であり、o+p=3であり、
置換基R
1は、同種または異種であり、それぞれについて、互いに独立であり、一価の、非置換又は置換、直鎖、環式、又は分岐炭化水素ラジカルであり、前記ラジカルは脂肪族が飽和及び不飽和のラジカル又は芳香族ラジカルを含み、1~30個の炭素原子を有し、個々の炭素原子はO、N、S、又はP原子で置換されていてもよく、
置換基R
2は、水分解性官能基であり、互いに同種または異種であり、一般式‐O-C(O)R
4のカルボキシ、一般式‐O-N=CR
4
2のオキシム、一般式‐OR
4のアルコキシ、一般式‐O-R
6のアルケニルオキシ、一般式‐NR
4-C(O)R
5のアミド、一般式‐NR
4R
5のアミン、一般式‐O-NR
4R
5のアミンオキシであり、
ラジカルR
4は、同種または異種であり、それぞれについて、互いに独立であり、H、アルキル、アリール、アリールアルキル、又はアルキルアリールであり、
置換基R
5は、同種または異種であり、それぞれについて、互いに独立であり、アルキル、アリール、アリールアルキル、又はアルキルアリールであり、
置換基R
6は、直鎖又は分岐の、脂肪族が不飽和のラジカルであり、
置換基R
3aは、同種または異種であり、それぞれについて、互いに独立であり、アルキル、アリール、アリールアルキル、又はアルキルアリールであり、これらは1~30個の炭素原子を有し、水素原子は‐Hal又は‐SiR
3
3で置換されていてもよく、
置換基R
3は、同種または異種であり、それぞれについて、互いに独立であり、一価の、非置換又は置換、直鎖、環式、又は分岐炭化水素ラジカルであり、
置換基R
3bは、同種または異種であり、それぞれについて、互いに独立であり、水素、又は一価の、非置換若しくは置換、直鎖若しくは分岐炭化水素ラジカルであり、これは脂肪族が飽和若しくは不飽和のラジカル又は芳香族ラジカルを含み、1~30個の炭素原子を有するが個々の炭素原子はO、N、S、又はP原子で置換されていてもよい。)
【請求項5】
前記重合触媒が一般式(II)で表される化合物であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の美容又は医薬組成物。
【化5】
(式中、Cpは白金原子とη結合したシクロペンタジエニル基を表し、前記シクロペンタジエニル基は、任意選択により、ヒドロシリル化反応を阻害しないラジカルで一置換又は多置換されており、置換基R
1、R
2、及びR
3の各々は1~18個の炭素原子を有する脂肪族基又は芳香族基を表し、R
1、R
2、及びR
3は白金原子とσ結合しており、前記組成物は、さらに、吸収した光エネルギーを前記重合触媒に渡すのに適した少なくとも1種の光増感物質を含有している。)
【請求項6】
前記少なくとも1種の光増感物質が、2~5環の多環式芳香族、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、少なくとも1つのケトン発色団を有する芳香族化合物、及びそれらの組合せからなる群より選択される化合物であることを特徴とする請求項5に記載の美容又は医薬組成物。
【請求項7】
シリコーン、デンプン及びデンプン誘導体、セルロース粉末、ポリオレフィン、ポリカルボナート、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアクリラート、ポリメタクリラート、(メタ)アクリラート、若しくは(メタ)アクリラート-ビニリデンコポリマーで構成されるポリマー粉末、又はそれらの組合せからなる群より選択される粒子からなる粒子相を更に含有することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の美容又は医薬組成物。
【請求項8】
メタリック効果のある顔料、真珠光沢顔料、蛍光顔料、天然有機顔料、又は合成有機顔料からなる群より選択される化粧用顔料及び/又は染料を含有することを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の美容又は医薬組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の美容組成物を用いた非治療的方法であって、皮膚を引き締め、皺を減じ、又は皮膚の皺、皮膚のひび割れ、乾燥皮膚、及び/若しくは皮膚の瘢痕組織、及び/若しくは色素異常を有する皮膚部位を視覚的に隠す非治療的方法。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項に記載の美容組成物を用いた非治療的方法であって、皮膚を所望の位置に整形し及び/若しくは固定し、並びに/又は、自身の毛髪、他人の毛髪、若しくは人工毛髪を整形し及び/若しくは固定する非治療的方法。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか1項に記載の美容組成物を用いた非治療的方法であって、体毛を除去する非治療的方法。
【請求項12】
請求項1~8のいずれか1項に記載の美容組成物を用いた非治療的方法であって、液体プラスター、既製の弾性プラスター、術後傷の閉じ具、水泡等用プラスター、活性成分プラスター、又はスプレー式プラスターによって前記美容組成物を皮膚に適用する非治療的方法。
【請求項13】
弾性の装着可能なポリマー層を皮膚上で生成する方法であって、
a)請求項1~8のいずれか1項に記載の美容又は医薬組成物に用いられるポリマー前駆物質を治療対象である皮膚部位に局所適用する方法ステップ、
b)請求項1~8のいずれか1項に記載の美容又は医薬組成物に用いられる重合触媒を治療対象である皮膚部位に局所適用する方法ステップ、
c)任意選択により、請求項1~8のいずれか1項に記載の美容又は医薬組成物に用いられる光増感物質を治療対象である皮膚部位に局所適用する方法ステップ、及び
d)治療対象である皮膚部位を光に曝露する方法ステップ
を備え、
前記方法ステップを実行する順は変えてもよく、ただし方法ステップd)は常に最後の方法ステップとする方法。
【請求項14】
方法ステップd)により治療対象である皮膚部位を光に曝露することが、400~800nmの波長域の可視光の照射によって実施されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚の引締め、皮膚の固定、及び皺の減少のための美容又は医薬組成物、並びに、本発明による組成物を用いての、美容のため又は医薬としての皮膚の引締め、皮膚の固定、及び皺の減少の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、種々の生理学的機能をもつ器官である。具体的には、皮膚は、例えば極端な温度、放射、又は微生物などの外的影響に対する防御の働きをする。年を経るにつれ、これらの外的要因は、ストレス、疾患、又はパーソナルケア製品や化粧品類に含まれる化学試薬類などのさらなる要因と相まって、皮膚の老化をもたらす。皮膚の老化の過程は30歳から目立ってくるようになり、皺や小皺の形成、及び皮膚の弾性や張りの消退をもたらす。
【0003】
外的要因による老化のほかにも、遺伝的に制御されて皮膚細胞の反応性が低下することによる内的な皮膚の老化もある。その結果、組織中のエラスチン及びコラーゲンが枯渇することになる。それに加えて、皮膚の水分と脂肪分とが大幅に低下し、その結果、色つやが比較的乾燥した感じになり、皮膚の皺及びひび割れが多く形成されることになる。
【0004】
皮膚の老化の過程に対抗するために及び/又は外見的な皮膚の老化現象を隠すために、様々な美容又は医薬組成物が開発されている。
【0005】
例えば、特許文献1は、皮膚に形成される皺を減じる剤として、リポソーム又はセラソームに埋め込んだ鎮痙剤を含有する水系組成物を提案している。
【0006】
特許文献2は、皮膚の皺を減じる美容組成物を説明しており、この組成物は、スフィンゴリピド及び/又はガラクトリピドで構成される活性成分担体中、ヒアルロン酸とβ-グルカンとで構成される活性成分の組合せを含有している。
【0007】
特許文献3は、インターポリマーを用いて皺及び小皺をのばす美容法を開示している。この組成物は、少なくとも1種のポリウレタン、及びビニルピロリドンとシリコーンモノマーの少なくとも1つのコポリマーを含有している。
【0008】
特許文献4は、水中油型乳剤中シリコーンエラストマーにより光学的に皺を隠す美容組成物に関する。
【0009】
特許文献5は、シリコーンエラストマーを含有するスキンケア用組成物を説明している。これらは、皮膚の肌理及び皮膚の色の不均整を含め哺乳類の皮膚の目に見える及び/又は埋められる不均整を治療として万全に整える。
【0010】
非特許文献1は、弾性の装着可能な架橋ポリマー層の皮膚上の使用を開示しており、この層は、正常な若々しい皮膚の特性を再現することができる。架橋ポリシロキサン系材料は、それらの弾性及び引張強さに関して的を絞って調節することができる。白金化合物(Karstedt触媒)が重合触媒として用いられ、重合及び架橋を開始するために2番目の適用ステップで適用される。
【0011】
従来技術から公知の様々な調製物の効果は、期待したほどは満足が得られないことが多く、既にある皮膚の皺の深さ及び程度を恒久的に減じるには適さないことも多い。それに加えて、シリコーン化合物を含有する従来の美容組成物は、適用するのに非常に手間がかかるうえ、長期間の適用の場合は問題も多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】独国特許発明第10308852号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102009001710号明細書
【特許文献3】欧州特許第2259765号明細書
【特許文献4】欧州特許第2382961号明細書
【特許文献5】欧州特許第1299080号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Langerら著 Nature Materials,15,911-918(2016)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、従来技術から公知の調製物よりも皮膚の皺の深さ及び程度を減じるのに適した美容又は医薬組成物の需要があり、従って、本発明の目的は、それに応じて改良された組成物を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的は、始めに説明されるタイプの美容又は医薬組成物により、本発明によって達成され、この組成物は、皮膚への局所適用に適しており、さらに、少なくとも1種のポリマー前駆物質と少なくとも1種の重合触媒とを含有しており、該少なくとも1種の重合触媒の存在下、該少なくとも1種のポリマー前駆物質が光の作用下で重合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
局所適用後、本発明による組成物は、数分以内に、好ましくは数秒以内に、付け心地が極めて快適なポリマー層を皮膚上に生成するのに適している。このポリマー層は、とりわけ、治療された皮膚部位において皮膚を引き締め、又は皺及び/若しくは小皺を隠すのに抜群に適している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明により得られるポリマー層は、皮膚に装着可能であり、すなわち数時間(好ましくは少なくとも6時間、少なくとも12時間、又は少なくとも24時間)、及び数日間(最高1日、最高3日、又は最高7日でも)にわたり皮膚に使用しても皮膚の負の反応なしに忍容される。本発明により得られるポリマー層は、この目的のために、好ましくは弾性がある。
【0018】
本明細書では「美容組成物」という用語は、美容用途に適した化学物質の組合せという意味で理解される。本明細書では「医薬組成物」という用語は、医薬用途に適した化学物質の組合せという意味で理解される。
【0019】
使用される美容組成物は、単にパーソナルケア及び美的ケアのため、又は、人間の体の、本発明の場合は特に皮膚の美の獲得、回復、若しくは増進に役立つ。これに対し、医薬組成物は主として疾患状態の予防若しくは治癒に、又は少なくともその症状の除去又は緩和に役立つ。純粋に美容用の組成物と違って、医薬組成物は相応の活性成分を含有し、薬事法の管轄下にある。
【0020】
本発明による組成物は皮膚への局所適用を意図しており、したがってこの目的にも適している。本発明の意味においては、「皮膚への局所適用」とは、美容又は医薬組成物を治療対象である皮膚部位に適用することを意味する。
【0021】
「皮膚」という用語は、生物の、特に人間の皮膚を指し、本発明の文脈では、表皮、真皮、及び皮下組織の皮膚層の全体又はその都度各々と、例えば毛髪、爪、皮脂腺、及び汗腺などの皮膚付属物の全体又はその都度各々の、両方を包含する。本発明の好ましい実施形態では、この用語は、体表の皮膚及び/又は体表の皮膚付属物だけを指す。
【0022】
本発明による美容又は医薬組成物は、重合触媒の存在下、光の作用下で重合する少なくとも1種のポリマー前駆物質を含有している。
【0023】
本発明の意味においては、「ポリマー前駆物質」は、ある数の、少なくとも1種のモノマーであり、触媒される重合反応において反応性である基を少なくとも2つ含んでおり、それから重合反応でポリマーを形成する。
【0024】
本発明の意味においては、「重合触媒」は化学物質であり、その存在下で、重合触媒の非存在下の場合と比べて、重合反応がより速く、及び/又はより低い温度で、及び/又はより少ないエネルギー照射の作用下で進行する。重合触媒が存在することで、美容用途で皮膚に使用するのに適した温度条件下、数分以内に、又は好ましくは数秒以内にポリマーを形成することができる。
【0025】
本明細書では「重合」という用語は、ポリマーが形成される過程を表すものとして理解される。本発明の意味においては、ポリマーは、重合度が少なくとも5、好ましくは少なくとも10、さらに好ましくは少なくとも20で形成される。
【0026】
ポリマー分子中のモノマー単位の数は、重合度と呼ばれる。これはポリマーの平均モル質量及びその繰返し単位のモル質量の比率と同じである。
【0027】
好ましい一実施形態では、形成されたポリマーは、架橋ポリマーであり、したがって、そのポリマー分子が少なくとも部分的には三次元ネットワークに結合しているポリマーである。
【0028】
重合反応は、本発明により、重合触媒の存在下、及び光の同時作用の下で生じる。
【0029】
本明細書では「の存在下」という語句は、美容又は医薬組成物中のポリマー前駆物質と重合触媒とが、局所適用がなされた後はとにかく皮膚上で同一の混合物中に存在していなくてはならないことと理解される。このことは、ポリマー前駆物質と重合触媒とを既製の混合物として適用するか、又は一方の後に他方を時間差をおいて順に適用することで、実現可能である。
【0030】
本明細書では「光の作用下」という語句は、光の作用がなければ、重合触媒が触媒する重合反応が全く進行しないか、又はとにかく所望のようには進行しないか若しくは必要な速度で進行しないものと理解される。したがって、ポリマーを形成するには、美容又は医薬組成物を局所適用後に光に曝露する必要があり、この光は人工の照射源からでも自然の照射源(例えば日光)からきてもよい。
【0031】
本明細書では、「光」という用語は、波長域200nm~800nmの、好ましくは380nm~800nmの、特に好ましくは550nm~780nmの照射を意味する。200nm~400nmの域の照射ではポリマー層の形成は確実に速まるが、380nm~800nmの域の照射は、それよりもわずかに遅いものの、患者にとってはもう少し優しい重合反応を伴う。
【0032】
重合にかかる時間の表現、「数分以内」は、好ましくは15分未満、さらに好ましくは10分未満の時間を包含する。特定の実施形態では、重合は、1~10分以内に、さらに好ましくは1~5分以内に生じる。重合にかかる時間の表現、「数秒以内」は、好ましくは60秒未満、さらに好ましくは30秒未満の時間を包含する。特定の実施形態では、重合は、5~60秒以内に、さらに好ましくは5~30秒以内に生じる。
【0033】
本発明による美容又は医薬組成物では、ポリマー前駆物質はシロキサンとすることができる。好ましい一実施形態では、シロキサンはポリエーテル変性シロキサンである。
【0034】
ポリエーテル変性シロキサンの利点は、組成物の流れ及び表面滑性の向上である。
【0035】
本発明による美容又は医薬組成物の好ましい一実施形態は、ポリマー前駆物質として、下記a)またはb)のいずれかを含有している。
【0036】
a)下記i)とii)との組み合わせ。
i)以下の構造を有する、ヒドロシリル化のための反応性シラン基を有する少なくとも1つのポリオルガノヒドロシロキサン
【化1】
(式中、R
8はアルキル基、シクロアルキル基、エポキシド基、イソシアナート基、アミノ基、アルコール基、エーテル基、エステル基、フェニル基、及び水素からなる群より選択される独立したラジカルを表し、ただし前記シロキサンの全R
8基のうちの少なくとも2つは水素原子であるが半分以下であるものとし、mは0、1、2、又は3であり、nは1~3000の値の数字である)
ii)以下の構造を有する、ヒドロシリル化のための不飽和基を含む少なくとも1つのポリオルガノシロキサン
【化2】
(式中、R
6は非ハロゲン化又はハロゲン化エチレン部不飽和基、非ハロゲン化又はハロゲン化アルキル基、非ハロゲン化又はハロゲン化シクロアルキル基、エポキシド基、イソシアナート基、アミノ基、アルコール基、エーテル基、エステル基、フェニル基からなる群より選択される独立したラジカルを表し、ただし全R
6基の少なくとも70%はビニル基又は他のアルケニル基を含むものとし、hは1~3000の値の数字であり、gは0、1、2、又は3である)
【0037】
b)1分子中に不飽和官能基、及びヒドロシリル化のためのシラン基も含む、以下の構造を有する少なくとも1つのポリオルガノヒドロシロキサン
【化3】
(式中、R
8はアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、エポキシド基、イソシアナート基、アミノ基、アルコール基、エーテル基、エステル基、水素、及び非ハロゲン化又はハロゲン化エチレン部不飽和基からなる群より選択される独立したラジカルを表し、ただし、前記シロキサンの全R
8基のうちの少なくとも2つは水素原子であるが半分以下であるものとし、さらに前記R
8基の少なくとも2つはビニル基又はアルケニル基を含むものとし、mは0、1、2、又は3であり、nは1~3000の値の数字である)
【0038】
本発明による美容又は医薬組成物の好ましい一実施形態は、上述した選択肢a)にしたがいポリマー前駆物質としてi)とii)との組合せを含有しており、全R6基の少なくとも70%はビニル基又は他のアルケニル基である。
【0039】
本発明による美容又は医薬組成物の好ましい一実施形態は、上述した選択肢b)にしたがいポリマー前駆物質としてポリオルガノヒドロシロキサンを含有しており、R8基の少なくとも2つはビニル基又はアルケニル基である。
【0040】
本発明による組成物は重合触媒、つまり化学物質を含有しており、その存在下で、重合触媒の非存在下の場合と比べて、重合反応がより速く、及び/又はより低い温度で、及び/又はより少ないエネルギー照射の作用下で進行する。
【0041】
本発明の特定の実施形態では、重合触媒は、一般式(II)で表される化合物である。
【化4】
(式中、Cpは白金原子とη結合したシクロペンタジエニル基を表し、該シクロペンタジエニル基は、任意選択により、ヒドロシリル化反応を阻害しないラジカルで一置換又は多置換されており、ラジカルR
1、R
2、及びR
3の各々は1~18個の炭素原子を有する脂肪族基又は芳香族基を表し、R
1、R
2、及びR
3は白金原子とσ結合しており、前記組成物は、さらに、吸収した光エネルギーを前記重合触媒に渡すのに適した少なくとも1種の光増感物質を含有している)
【0042】
本発明の特定の実施形態では、重合触媒に加えて、本明細書で使用される域の光を吸収し、この吸収したエネルギーを、重合反応を触媒する目的に適した形態で提供することができる、光増感物質が提供されなくてはならない。
【0043】
本発明に適した光増感物質は、本発明に従い使用される域内の光を吸収でき、エネルギーを白金錯体に渡すことができる化合物である。該当する光増感物質は、好ましくは、多環式芳香族化合物、好ましくは2~5環芳香族化合物、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、及び少なくとも1つのケトン発色団を有する芳香族化合物から選択される。
【0044】
光増感物質の化合物は、光増感物質の化合物又はヒドロシリル化触媒が光を吸収してエネルギーを渡す能力を損なわない任意の所望の置換基で置換されてもよい。典型的な置換基の例は、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、アラルキル、アルカリール(alkaryl)、及びハロゲン置換基である。
【0045】
アントラセン、9-ビニルアントラセン、9,10-ジメチルアントラセン、9,10-ジクロロアントラセン、9,10-ジブロモアントラセン、9,10-ジエチルアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、2-エチル-9,10-ジメチルアントラセン、ナフタセン、ペンタセン、ベンゾ[a]アリトラセン(benz[a]arithracene)、7,12-ジメチルベンゾ[a]アントラセン、及びアズレンを、本発明に適した多環式芳香族の光増感物質の具体例として挙げることができる。
【0046】
2-クロロチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、チオキサントン、アントラキノン、ベンゾフェノン、1-クロロアントラキノン、及びビアントロンを、本発明の光増感物質として適した芳香族ケトンの具体例として挙げることができる。
【0047】
光増感物質が用いられる本発明の上述した変更形態の特定の一実施形態では、η結合のシクロペンタジエニル基を有する白金錯体が光増感物質と併せて重合の触媒反応に利用される。ヒドロシリル化の過程は可視光により誘発され、光増感物質が可視光を吸収し、エネルギーを白金錯体に渡す。
【0048】
本発明の特定の実施形態では、さらなる光増感物質を提供する必要はない。それはすなわち、重合触媒自体が本明細書で使用される域の光を吸収でき、この吸収したエネルギーを、重合反応を触媒する目的に適した形態で提供することができる場合である。
【0049】
重合反応を触媒するために吸収したエネルギーを提供する目的で自体が光を吸収することができる、本発明に適した重合触媒の一例は、米国特許第8088878号明細書で開示されているような、式(I)によるη-シクロペンタジエニル-トリ(σ-ヒドロカルビル)白金化合物であり、これが、本願の請求項4に記載されているように、加水分解性シリル基と、アルキル基によって結合している。この触媒は、可視光により刺激されてヒドロシリル化反応を触媒することができる。
【0050】
他の白金系触媒の場合は比較的小さい非極性分子が皮膚バリアを通り抜けるリスクがあるが、この触媒を用いた反応では、リガンド構造を大きく変えたり、又は触媒活性に負の影響を及ぼしたりすることなく、シリコーン基質への組込みが生じる。更に白金化合物の蒸気圧もかなり低下し、そのため微細粒子の形態で呼吸器系を通じての吸収及びそれに伴い得る毒性作用がかなり低減される。
【0051】
本発明による美容又は医薬組成物は、少なくとも1種のポリマー前駆物質と、該ポリマー前駆物質が光の作用下で重合するための重合触媒とを含有している。
【0052】
本発明の美容又は医薬組成物は、好ましくはポリマー前駆物質と重合触媒との両方を含有する物質の混合物からなり、その結果として、これらの2成分は既製の混合物の形態で同時に皮膚に適用される。一方、ある特定の実施形態では、美容又は医薬組成物は、2つ以上の別々に供される構成要素からなることもでき、その場合はポリマー前駆物質と重合触媒とは互いに別々に含有される。こうすれば、ポリマー前駆物質と重合触媒とは適用の直前まで混合されないか、又は、順に皮膚に適用されることもあり、したがって生体内の本来の場所までは、すなわち適用の直前又は適用途中までは、互いに接触せず、混ざることもない。
【0053】
特定の実施形態では、美容又は医薬組成物は、乳化剤、抗老化剤、粒子相、油-水担体相、抗酸化剤、塩、又はそれらの組合せをさらに含有することができる。
【0054】
本発明による美容又は医薬組成物は、ゲル、クリーム、膏薬、スプレー、ローション、油-水乳剤、ヒドロゲル、バルサム、溶液、又は懸濁液の形態とすることができる。
【0055】
本発明の特定の一実施形態では、美容又は医薬組成物は水中油型乳剤の形態であり、組成物の全重量には5~70重量%の油相が含まれる。油相は、環式又は直鎖ジアルキルシロキサン、アルキルアリールシロキサン、及びアリールシロキサンから選択される1種以上のシリコーン油を含有することができる。その例は、シクロペンタシロキサン、ジメチルポリシロキサン、フェニルフェニルポリシロキサン、及びメチルフェニルポリシロキサンである。
【0056】
油相はまた、1種以上のエステル油を含有することができ、直鎖又は分岐C5-25アルカノールを有する安息香酸のエステル油が特に好ましい。
【0057】
油相に含有され得るさらなる化粧用油は、液体パラフィン油、イソパラフィン油、及び、例えばC5-25の鎖長のジ-n-アルキルエーテルなどの合成炭化水素である。
【0058】
本発明による、美容又は医薬組成物に含有され得るさらなる油は、6~30個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐、飽和若しくは不飽和脂肪アルコール、又は、例えばオリーブ油、大豆油、ゴマ油、ヘーゼルナッツ油、コーン油、若しくはホホバ油などの植物油である。
【0059】
本発明による美容又は医薬組成物は、さらに、その全重量に対し10~40重量%の分散粒子相を含有することができる。粒子相の粒子は、数平均の粒径が1~100μm、好ましくは2~50μm、特に好ましくは5~25μmである。この分散粒子相の基本成分はシリコーンエラストマーであり、水相中又は乳剤中に分散した状態で存在し、油相を増粘することはない。このタイプのシリコーンエラストマーは、欧州特許第2382961号明細書にさらに詳しく説明されており、本発明による組成物の皺を隠す能力をかなり向上させる。
【0060】
本発明のさらなる特定の実施形態は、シリコーン粒子に加えて、粒子相が、デンプン及びデンプン誘導体、セルロース粉末、ポリオレフィン、ポリカルボナート、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアクリラート、ポリメタクリラート、(メタ)アクリラート、若しくは(メタ)アクリラート-ビニリデンコポリマーで構成されるポリマー粉末、テフロン(登録商標)、又はこれらの組合せから選択されるさらなる粒子を含有することを特徴とする。
【0061】
本発明によるさらなる一実施形態では、組成物は、本発明による組成物の総重量に対し、40~85重量%の、好ましくは50~75重量%の、特に好ましくは51~60重量%の水相を含有している。
【0062】
水に加えて、水相は、例えば1,2-プロピレングリコール、グリセロール、ブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、又はポリエチレングリコールなどのジオール又はポリオール、並びにこれらの組合せを含有することができる。水相はさらに、例えば塩化ナトリウムなどの無機塩及び/又は例えば水酸化ナトリウムなどの塩基を含有することができる。
【0063】
本発明による組成物は、少なくとも1種の乳化剤を含有することができ、本発明による組成物の総重量に対し全部で0.01~1重量%の、好ましくは0.1~0.5重量%の、特に好ましくは0.2~0.4重量%の乳化剤が含有される。
【0064】
好ましい乳化剤は、レシチン、酸化エチレン単位を有するシリコーンコポリオール、アルキルラジカルに8~22個の炭素原子を有するアルキルモノグリコシド及びアルキルオリゴグリコシド並びにそのエトキシル化類縁体、エトキシル化ステロール、2~10個のグリセロール単位を有し、飽和若しくは不飽和の直鎖若しくは分岐若しくは環式の任意選択によりヒドロキシル化されている1~4個のC8~C30脂肪酸エステルでエステル化されているポリグリセロールの部分エステル、並びにここに挙げた物質の組合せである。
【0065】
一実施形態では、美容又は医薬組成物は、抗老化剤、例えば、コラーゲン産生を刺激する剤、グリコサミノグリカンの合成及びプロテオノグリカンの合成を刺激する剤、線維芽細胞におけるインテグリンの合成を刺激する剤、フルクトサミン-3-キナーゼ及び関連タンパク質の発現を刺激する剤、テンシンの発現を刺激する剤、増殖因子の産生を促進する剤、線維芽細胞の増殖を誘発する剤、ケラチノサイトの増殖を誘発する剤、抗酸化剤、ラジカルスカベンジャー、並びにここに挙げた化合物の組合せを含有している。そのような化合物の例は、ツルハナモツヤクノキ(Butea frondosa)、キンコウボク(Magnolia champaca)、バニラ(Vanilla planifolia)、アトラスシダー(Cedrus atlantica)、カナリヤノキ(Canarium commune)、ポンツクショウガ(Zingiber cassumunar Roxb.)、ヤハズツノマタ(Chondrus crispus)、サーマスサーモフィルス(Thermus thermophilus)、エンドウ(Pisum sativum)、ツボクサ(Centella asiatica)、イカダモ(Scenedesmus)、ワサビノキ(Moringa pterygosperma)、マンサク(Hamamelis)、ヨーロッパグリ(Castanea sativa)、ローゼル(Hibiscus sabdariffa)、チューベローズ(Polyanthes tuberosa)、アルガンノキ(Argania spinosa)、アロエベラ(Aloe vera)、スイセン(Narcissus tazetta)、又はカンゾウの各植物エキス、ダイダイ(Citrus aurantium)(ネロリ)の植物油、α-ヒドロキシ酸、特にグリコール酸、乳酸、及びクエン酸、並びにそのエステル、β-ヒドロキシ酸、特にサリチル酸及びその誘導体、植物タンパク質の加水分解物、アシル化オリゴペプチド、酵母エキス、特に出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)エキス、藻類エキス、特に褐藻エキス、ビタミン及びその誘導体、特にパルミチン酸レチニル、アスコルビン酸、アスコルビルグルコシド、リン酸アスコルビルマグネシウム又はリン酸アスコルビルナトリウム、パルミチン酸アスコルビル、テトライソパルミチン酸アスコルビル、ソルビン酸アスコルビル、トコフェロール、酢酸トコフェリル及びソルビン酸トコフェリル、アスコルビン酸若しくはトコフェロールのアルキル化エステル若しくはリン酸化エステル又はそのエステル、錯体形成剤、特にEDTA塩、pH調節剤、保存料、特にパラベン及びフェノキシエタノール、並びにその組合せである。
【0066】
本発明によると、材料の重合は、純粋に光誘発の及び光駆動の過程で、又は二元重合のどちらでも生じることができる。二元重合とは、重合過程が、光に次いで化学重合によって、又はその逆の順で開始することを意味する。化学重合の機構は、縮合反応重合、付加反応重合、開環反応重合、触媒重合、及び/又はラジカル重合から選択され得る。
【0067】
本発明によると、組成物は皺の減少のために用いることができ、その場合に治療部位に適用された組成物は、皮膚の皺に浸透し、部分的に皺を埋め、重合後は、皺を好適な位置に固定し、そうすることで既にある皮膚の皺を視覚的に隠す。
【0068】
本発明によると、組成物はまた、皮膚を所望の位置で引き締め又は固定するために全般的に用いることができる。そのために、皮膚を手で所望の位置にしておいて、組成物を適用する。あるいは、まず組成物を適用し、それから皮膚を手で所望の位置にする。組成物が重合した後は、皮膚は所望の位置に留まっている。このことは、例えば、皮膚の治療部位を美的理由により引き締めるために、そしてとりわけ、そうすることでこの部位に本来存在する皺を減じるために、望ましい場合がある。一方で、なるべく皮膚を引き締め皺ができないようにしておくことが、例えば夜間に無意識的な顔の表情によって又は力学的影響(例えば枕)によって皺が形成されないように予防することが望ましい場合もある。こうすれば、顔の個々の部分を自然の形状ではない形態にすることもできる。
【0069】
上述した効果を増強するために、組成物はさらに、粘着効果のある物質を含有することができる。その例は、自己粘着性ポリウレタン、エポキシ樹脂、天然樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、アミノプラスト、フェノール樹脂、ポリ(メチル)メタクリラート、ポリシアノアクリラートである。
【0070】
本発明による組成物は、身体の整形のために、大面積に、より大きな層厚で用いることもでき、例えば、ブラジャーの機能を果たすことができる層を、本発明による組成物で形成することができる。
【0071】
本発明による組成物は、環境的な影響に対する保護層を形成するために、大面積に、より大きな層厚で用いることもできる。例えば、本発明による組成物を用いて、手の皮膚上に連続的な保護層を形成することができ、この層は寸法がぴったりの手袋の機能を果たすことができる。
【0072】
本発明によると、組成物は、メークアップ化粧品を適用し固定するのに用いることもできる。このために、組成物は、さらなる化粧用顔料又は染料を含有することができる。その例は、メタリック効果のある顔料、真珠光沢顔料、蛍光顔料、天然有機顔料、合成有機顔料である。顔料含有層又は染料含有層は、見た目のよくない瘢痕又は色素異常を有する皮膚部位を覆うのに用いることもできる。
【0073】
本発明によると、組成物は、液体プラスター又は既製の高弾性プラスターとして用いることもできる。重合の際に体積が縮むので、傷の両端部に力が加わりぴったり合わされる。こうすることで、傷の治癒が確実に向上する。そのようなプラスターは、術後傷の閉じ具、水泡等用プラスター、活性成分プラスターとして、又はスプレー式プラスターとしても、用いることができる。
【0074】
本発明によると、組成物は、体毛及び/又は人工毛の整形及び/又は固定にも用いることができる。自身の、他人の、又は人工の毛髪に直接適用された本発明による組成物の層を、整形のために、更に任意選択によりカラーリングのためにも、用いることができる。一方、自身の皮膚又は自身の毛髪に適用された本発明による組成物の層に他人の地毛又は人工毛を植え込んで、このような毛髪を自身の皮膚又は自身の毛髪に取り付けることもできる。
【0075】
さらに、本発明による組成物は、脱毛に用いることもできる。このために、組成物は皮膚部位に適用され、重合後、形成した層が剥ぎ取られる。上述した粘着特性のある添加剤は、この効果を高めるために利用することができる。
【0076】
本発明によると、組成物は、皮膚の老化及び皮膚の老化に伴う症状の治療並びに皮膚細胞の延命に適した医薬調製物を製造するために、活性成分と組み合わせて用いることができる。本発明の意味においては、医薬組成物は、例えば、さらに、例えばケルセチン、ピセタノール、レスベラトロール、又はイソニコチンアミドなどのサーチュイン活性因子を含有することができる。
【0077】
製剤は、美容又は医薬調製物に通常使用されるあらゆるアジュバント及び添加剤を含有することができる。具体的には、活性成分及び/若しくはベシクルの物理特性及び安定性に影響を与える、並びに/又は、組成物若しくは活性成分組成物の保存に役立つ添加剤が、本発明の文脈では「アジュバント」という用語で表される。そのようなアジュバントの例は、油、アルコール、ポリオール、ゲル形成剤、バッファー、保存料、殺菌剤及び殺菌消毒剤、錯体形成剤、増粘剤、又は粘稠剤である。
【0078】
当然ながら、本発明による組成物、活性成分組成物、及び製剤の全構成要素は、製薬上、美容上、又は皮膚科学的に忍容される物質である。本発明の意味においては、ある物質が非毒性であり、使用者に望ましくない、例えば発赤又は掻痒感が出るなどの生理学的反応を自然発症的に又はしばらく経ってから起こさせることなく、大半の潜在的使用者に局所適用することができる場合に、製薬上、美容上、又は皮膚科学的に忍容される。
【0079】
本発明による組成物は、純粋に美容のため(非治療用)、純粋に医薬として(治療用)、又は二者(美容と医薬と)の組合せのいずれかに用いることができる。好ましくは、上述した目的の一つ、例えば皮膚の皺及びひび割れ及び乾燥を視覚的に隠すために、純粋に美容組成物として用いられる。
【0080】
上述した使用目的の一つのために、弾性の装着可能なポリマー層を皮膚上に提供するためには、本発明により、
a)ポリマー前駆物質を治療対象である皮膚部位に局所適用する方法ステップ、
b)重合触媒を治療対象である皮膚部位に局所適用する方法ステップ、
c)任意選択により、光増感物質を治療対象である皮膚部位に局所適用する方法ステップ、及び
d)治療対象である皮膚部位を光に曝露する方法ステップ、
を実行することが提案され、
これらの方法ステップを実行する順は変えてもよく、ただし方法ステップd)は常に最後の方法ステップとする。
【0081】
ポリマー前駆物質と重合触媒とが既製の混合物中に存在している本発明による組成物が、好ましく用いられる。
【0082】
これらの場合、方法は、
a)治療対象である皮膚部位への同時又は逐次の光増感物質の局所適用を任意選択により伴う、ポリマー前駆物質と重合触媒とを含有する混合物を治療対象である皮膚部位に局所適用するステップ、及び
b)治療対象である皮膚部位を光に曝露するステップ
だけを実行すればよいという事実によって、簡略化される。
【0083】
二つの方法のどちらを用いるかに関わらず、治療対象である皮膚部位を光に曝露するステップは、本発明による組成物の光の作用下での重合に関して挙げた波長域で実施される。
【0084】
新規な開示の目的で、本明細書及び請求項から当業者には明らかになる全ての特徴は、それらが特定のさらなる特徴との関係のみに特定して説明されているとしても、単独で、及び任意の所望の組合せとしての両方で、本明細書で開示された他の特徴又は特徴群と組み合わせることができることを指摘しておくが、それが明白に否定されている場合、又は化学的、物理化学的、美容上、製薬上、又は皮膚科学的な状況によりそのような組合せが不可能又は無意味である場合は、その限りではない。本明細書がただ簡潔で読みやすくなるようにという理由から、考えられる全特徴の組合せの全部の明白な記載は、本明細書では割愛する。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のポリマー前駆物質を含有し、
前記少なくとも1種のポリマー前駆物質はシロキサンであり、さらに、少なくとも1種の重合触媒を含有し、前記少なくとも1種の重合触媒は前記少なくとも1種のポリマー前駆物質
の架橋ポリマーシリコーン基質への光の作用下
における重合を触媒する能力を有し、
前記重合触媒が一般式(I)で表される化合物であり、前記重合触媒との反応において前記重合触媒が前記架橋ポリマーシリコーン基質に組み込まれることを特徴とする、皮膚に局所適用される美容又は医薬組成物。
【化1】
(式中、n=1~8であり、o=0~2であり、p=1~3であり、o+p=3であり、
置換基R
1
は、同種または異種であり、それぞれについて、互いに独立であり、一価の、非置換又は置換、直鎖、環式、又は分岐炭化水素ラジカルであり、前記ラジカルは脂肪族が飽和及び不飽和のラジカル又は芳香族ラジカルを含み、1~30個の炭素原子を有し、個々の炭素原子はO、N、S、又はP原子で置換されていてもよく、
置換基R
2
は、加水分解性官能基であり、互いに同種または異種であり、一般式-O-C(O)R
4
のカルボキシ、一般式-O-N=CR
4
2
のオキシム、一般式-OR
4
のアルコキシ、一般式-O-R
6
のアルケニルオキシ、一般式-NR
4
-C(O)R
5
のアミド、一般式-NR
4
R
5
のアミン、一般式-O-NR
4
R
5
のアミンオキシであり、
ラジカルR
4
は、同種または異種であり、それぞれについて、互いに独立であり、H、アルキル、アリール、アリールアルキル、又はアルキルアリールであり、
置換基R
5
は、同種または異種であり、それぞれについて、互いに独立であり、アルキル、アリール、アリールアルキル、又はアルキルアリールであり、
置換基R
6
は、直鎖又は分岐の、脂肪族が不飽和のラジカルであり、
置換基R
3a
は、同種または異種であり、それぞれについて、互いに独立であり、アルキル、アリール、アリールアルキル、又はアルキルアリールであり、これらは1~30個の炭素原子を有し、水素原子は‐ハロゲン又は‐SiR
3
3
で置換されていてもよく、
置換基R
3
は、同種または異種であり、それぞれについて、互いに独立であり、一価の、非置換又は置換、直鎖、環式、又は分岐炭化水素ラジカルであり、
置換基R
3b
は、同種または異種であり、それぞれについて、互いに独立であり、水素、又は一価の、非置換若しくは置換、直鎖若しくは分岐炭化水素ラジカルであり、これは脂肪族が飽和若しくは不飽和のラジカル又は芳香族ラジカルを含み、1~30個の炭素原子を有するが個々の炭素原子はO、N、S、又はP原子で置換されていてもよい。)
【請求項2】
前記少なくとも1種のポリマー前駆物質はポリエーテル変性シロキサンであることを特徴とする請求項1に記載の美容又は医薬組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1種のポリマー前駆物質が、下記a)およびb)から選択されることを特徴とする請求項1または2に記載の美容又は医薬組成物。
a)少なくとも1つの下記i)と少なくとも1つの下記ii)との組合せ:
i)以下の構造を有するポリオルガノヒドロシロキサン:
【化2】
(式中、R
8はアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、エポキシド基、イソシアナート基、アミノ基、アルコール基、エーテル基、エステル基、及び水素からなる群より選択される独立したラジカルを表し、ただし前記シロキサンの全R
8基のうちの少なくとも2つは水素原子であるが半分以下であるものとし、mは0、1、2、又は3であり、nは1~3000の値の数字である。)
ii)以下の構造を有するポリオルガノシロキサン:
【化3】
(式中、R
6は非ハロゲン化又はハロゲン化エチレン部不飽和基、非ハロゲン化又はハロゲン化アルキル基、非ハロゲン化又はハロゲン化シクロアルキル基、エポキシド基、イソシアナート基、アミノ基、アルコール基、エーテル基、エステル基、フェニル基からなる群より選択される独立したラジカルを表し、ただし全R
6基の少なくとも70%はビニル基又は他のアルケニル基を含むものとし、hは1~3000の値の数字であり、gは0、1、2、又は3である。)
b)以下の構造を有する少なくとも1つのポリオルガノヒドロシロキサン:
【化4】
(式中、R
8はアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、エポキシド基、イソシアナート基、アミノ基、アルコール基、エーテル基、エステル基、水素、及び非ハロゲン化又はハロゲン化エチレン部不飽和基からなる群より選択される独立したラジカルを表し、ただし、前記シロキサンの全R
8基のうちの少なくとも2つは水素原子であるが半分以下であるものとし、さらに前記R
8基の少なくとも2つはビニル基又はアルケニル基を含むものとし、mは0、1、2、又は3であり、nは1~3000の値の数字である。)
【請求項4】
前記重合触媒が一般式(II)で表される化合物であ
り、さらに前記組成物は吸収した光エネルギーを前記重合触媒に渡すのに適した少なくとも1種の光増感物質を含有していることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の美容又は医薬組成物。
【化5】
(式中、Cpは白金原子とη結合したシクロペンタジエニル基を表し、前記シクロペンタジエニル基は、任意選択により、ヒドロシリル化反応を阻害しないラジカルで一置換又は多置換されており、置換基R
1、R
2、及びR
3の各々は1~18個の炭素原子を有する脂肪族基又は芳香族基を表し、R
1、R
2、及びR
3は白金原子とσ結合
している。)
【請求項5】
前記少なくとも1種の光増感物質が、2~5環の多環式芳香族、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、少なくとも1つのケトン発色団を有する芳香族化合物、及びそれらの組合せからなる群より選択される化合物であることを特徴とする請求項4に記載の美容又は医薬組成物。
【請求項6】
シリコーン、デンプン及びデンプン誘導体、セルロース粉末、ポリオレフィン、ポリカルボナート、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアクリラート、ポリメタクリラート、(メタ)アクリラート、若しくは(メタ)アクリラート-ビニリデンコポリマーで構成されるポリマー粉末、又はそれらの組合せからなる群より選択される粒子からなる粒子相を更に含有することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の美容又は医薬組成物。
【請求項7】
メタリック効果のある顔料、真珠光沢顔料、蛍光顔料、天然有機顔料、又は合成有機顔料からなる群より選択される化粧用顔料及び/又は染料を含有することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の美容又は医薬組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の美容組成物を用いた非治療的方法であって、皮膚を引き締め、皺を減じ、又は皮膚の皺、皮膚のひび割れ、乾燥皮膚、及び/若しくは皮膚の瘢痕組織、及び/若しくは色素異常を有する皮膚部位を視覚的に隠す非治療的方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の美容組成物を用いた非治療的方法であって、皮膚を所望の位置に整形し及び/若しくは固定し、並びに/又は、自身の毛髪、他人の毛髪、若しくは人工毛髪を整形し及び/若しくは固定する非治療的方法。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項に記載の美容組成物を用いた非治療的方法であって、体毛を除去する非治療的方法。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか1項に記載の美容組成物を用いた非治療的方法であって、液体プラスター、既製の弾性プラスター、術後傷の閉じ具、水泡等用プラスター、活性成分プラスター、又はスプレー式プラスターによって前記美容組成物を皮膚に適用する非治療的方法。
【請求項12】
弾性の装着可能なポリマー層を皮膚上で生成する方法であって、
a)請求項1~8のいずれか1項に記載の美容又は医薬組成物に用いられるポリマー前駆物質を施術対象である皮膚部位に局所適用する方法ステップ、
b)請求項1~8のいずれか1項に記載の美容又は医薬組成物に用いられる重合触媒を施術対象である皮膚部位に局所適用する方法ステップ、
c)任意選択により、請求項5または6に記載の美容又は医薬組成物に用いられる光増感物質を施術対象である皮膚部位に局所適用する方法ステップ、及び
d)施術対象である皮膚部位を光に曝露する方法ステップ
を備え、
前記方法ステップを実行する順は変えてもよく、ただし方法ステップd)は常に最後の方法ステップとする方法。
【請求項13】
方法ステップd)により施術対象である皮膚部位を光に曝露することが、400~800nmの波長域の可視光の照射によって実施されることを特徴とする請求項13に記載の方法。