(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088814
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】新規のマイクロジストロフィンおよび使用の関連する方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20240625BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20240625BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240625BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240625BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240625BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20240625BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240625BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
C12N15/864 100Z
A61K31/7088
A61K48/00
A61K35/76
A61P21/00
A61P9/00
A61P7/00
【審査請求】有
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024068905
(22)【出願日】2024-04-22
(62)【分割の表示】P 2022165111の分割
【原出願日】2016-01-15
(31)【優先権主張番号】62/104,537
(32)【優先日】2015-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】517075883
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ ワシントン
【氏名又は名称原語表記】University of Washington
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126354
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 尚
(72)【発明者】
【氏名】チャンバーレイン,ジェフリー エス.
(72)【発明者】
【氏名】ラモス,ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】ハウシュカ,ステファン ディー.
(57)【要約】 (修正有)
【課題】筋ジストロフィー、サルコペニア、心不全又は悪液質を有する対象を処置するための組成物および方法を提供する。
【解決手段】マイクロジストロフィン遺伝子を含むヌクレオチド配列が提供される。マイクロジストロフィン遺伝子は、機能するよう制御カセットと連結されてもよい。筋ジストロフィー、サルコペニア、心臓疾患もしくは悪液質を有するか、またはそれを発症するリスクのある対象を処置する方法も提供される。本方法は、マイクロジストロフィン遺伝子および送達媒体を含む医薬組成物を対象に投与することを含んでもよい。さらに、本方法は、医薬組成物をデュシェンヌ型筋ジストロフィーまたはベッカー型筋ジストロフィーを有する対象に投与することを含んでもよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アミノ末端アクチン結合ドメインと、
β-ジストログリカン結合ドメインと、
少なくとも4個のスペクトリン様リピートを含むスペクトリン様リピートドメインで
あって、前記少なくとも4個のスペクトリン様リピートのうちの2個は、神経型一酸化窒
素合成酵素結合ドメインを含む、スペクトリン様リピートドメインと、
を含むタンパク質をコードするマイクロジストロフィン遺伝子、および
(b)制御カセット
を含む、単離および精製されたヌクレオチド配列。
【請求項2】
前記少なくとも4個のスペクトリン様リピートは、スペクトリン様リピート1(SR1
)、スペクトリン様リピート16(SR16)、スペクトリン様リピート17(SR17
)、およびスペクトリン様リピート24(SR24)を含む、請求項1に記載の単離およ
び精製されたヌクレオチド配列。
【請求項3】
前記マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされる前記タンパク質は、ヒンジド
メインの少なくとも一部をさらに含む、請求項1または2に記載の単離および精製された
ヌクレオチド配列。
【請求項4】
前記ヒンジドメインは、ヒンジ1ドメイン、ヒンジ2ドメイン、ヒンジ3ドメイン、ヒ
ンジ4ドメイン、およびヒンジ様ドメインのうちの少なくとも1つから選択される、請求
項3に記載の単離および精製されたヌクレオチド配列。
【請求項5】
前記制御カセットは、CK8プロモーターおよび心筋トロポニンT(cTnT)プロモ
ーターから成る群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の単離および精製
されたヌクレオチド配列。
【請求項6】
前記マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされる前記タンパク質は、5個のス
ペクトリン様リピートから8個のスペクトリン様リピートの間のスペクトリン様リピート
を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の単離および精製されたヌクレオチド配列
。
【請求項7】
前記マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされる前記タンパク質は、配列番号
4のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する、請求項1~6のいずれか一
項に記載の単離および精製されたヌクレオチド配列。
【請求項8】
前記マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされる前記タンパク質は、配列番号
4のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項1~7のいずれか一
項に記載の単離および精製されたヌクレオチド配列。
【請求項9】
前記マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされる前記タンパク質は、配列番号
5のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する、請求項1~8のいずれか一
項に記載の単離および精製されたヌクレオチド配列。
【請求項10】
前記マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされる前記タンパク質は、配列番号
5のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項1~9のいずれか一
項に記載の単離および精製されたヌクレオチド配列。
【請求項11】
前記制御カセットは、CK8プロモーターであり、前記CK8プロモーターは、配列番
号19の核酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する、請求項1~10のいずれか
一項に記載の単離および精製されたヌクレオチド配列。
【請求項12】
前記制御カセットは、CK8プロモーターであり、前記CK8プロモーターは、配列番
号19の核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項1~11のいずれか
一項に記載の単離および精製されたヌクレオチド配列。
【請求項13】
前記制御カセットは、cTnTプロモーターであり、前記cTnTプロモーターは、配
列番号1の核酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する、請求項1~12のいずれ
か一項に記載の単離および精製されたヌクレオチド配列。
【請求項14】
前記制御カセットは、cTnTプロモーターであり、前記cTnTプロモーターは配列
番号1の核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項1~13のいずれか
一項に記載の単離および精製されたヌクレオチド配列。
【請求項15】
アミノ末端アクチン結合ドメインと、
スペクトリン様リピート2と直接連結されたスペクトリン様リピート1、スペクトリン
様リピート3と直接連結されたスペクトリン様リピート2、スペクトリン様リピート16
と直接連結されたスペクトリン様リピート1、スペクトリン様リピート23と直接連結さ
れたスペクトリン様リピート17、スペクトリン様リピート24と直接連結されたスペク
トリン様リピート17、およびスペクトリン様リピート24と直接連結されたスペクトリ
ン様リピート23のうちの少なくとも1つから選択される、互いに直接連結された少なく
とも2個のスペクトリン様リピートと
を含むタンパク質をコードするマイクロジストロフィン遺伝子を含む、単離および精製さ
れたヌクレオチド配列。
【請求項16】
順番に
ヒンジ1ドメイン(H1)と、
スペクトリン様リピート1(SR1)と、
スペクトリン様リピート16(SR16)と、
スペクトリン様リピート17(SR17)と、
スペクトリン様リピート24(SR24)と、
ヒンジ4ドメイン(H4)と
を含むタンパク質をコードするマイクロジストロフィン遺伝子を含む、単離および精製さ
れたヌクレオチド配列。
【請求項17】
前記H1は、前記SR1と直接連結されている、請求項16に記載の単離および精製さ
れたヌクレオチド配列。
【請求項18】
前記SR1は、前記SR16と直接連結されている、請求項16に記載の単離および精
製されたヌクレオチド配列。
【請求項19】
前記SR16は、前記SR17と直接連結されている、請求項16に記載の単離および
精製されたヌクレオチド配列。
【請求項20】
前記SR17は、前記SR24と直接連結されている、請求項16に記載の単離および
精製されたヌクレオチド配列。
【請求項21】
前記SR24は、前記H4と直接連結されている、請求項16に記載の単離および精製
されたヌクレオチド配列。
【請求項22】
前記マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされる前記タンパク質は、前記SR
1と前記SR16との間に順番にスペクトリン様リピート2(SR2)およびスペクトリ
ン様リピート3(SR3)をさらに含む、請求項16に記載の単離および精製されたヌク
レオチド配列。
【請求項23】
前記SR1は、前記SR2と直接連結され、前記SR2は、前記SR3とさらに連結さ
れている、請求項22に記載の単離および精製されたヌクレオチド配列。
【請求項24】
順番に
ヒンジ1ドメイン(H1)と、
スペクトリン様リピート1(SR1)と、
スペクトリン様リピート16(SR16)と、
スペクトリン様リピート17(SR17)と、
スペクトリン様リピート23(SR23)と、
スペクトリン様リピート24(SR24)と、
ヒンジ4ドメイン(H4)と、
を含むタンパク質をコードするマイクロジストロフィン遺伝子を含む、単離および精製さ
れたヌクレオチド配列。
【請求項25】
前記H1は前記SR1と直接連結され、前記SR1は前記SR16と直接連結され、前
記SR16は前記SR17と直接連結され、前記SR17は前記SR23と直接連結され
、前記SR23は前記SR24と直接連結され、前記SR24は前記H4と直接連結され
ている、請求項24に記載の単離および精製されたヌクレオチド配列。
【請求項26】
請求項1~25のいずれか一項に記載の単離および精製されたヌクレオチド配列、およ
び
送達媒体
を含む医薬組成物。
【請求項27】
前記送達媒体は、組換えアデノ随伴ウイルスベクターを含む、請求項26に記載の医薬
組成物。
【請求項28】
前記送達媒体は、前記マイクロジストロフィン遺伝子を発現させ、前記マイクロジスト
ロフィン遺伝子によってコードされる前記タンパク質は、配列番号4のアミノ酸配列と少
なくとも80%の配列同一性を有する、請求項26または27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記送達媒体は、前記マイクロジストロフィン遺伝子を発現させ、前記マイクロジスト
ロフィン遺伝子によってコードされる前記タンパク質は、配列番号4のアミノ酸配列と少
なくとも90%の配列同一性を有する、請求項26~28のいずれか一項に記載の医薬組
成物。
【請求項30】
前記送達媒体は、前記マイクロジストロフィン遺伝子を発現させ、前記マイクロジスト
ロフィン遺伝子によってコードされる前記タンパク質は、配列番号5のアミノ酸配列と少
なくとも80%の配列同一性を有する、請求項26~29のいずれか一項に記載の医薬組
成物。
【請求項31】
前記送達媒体は、前記マイクロジストロフィン遺伝子を発現させ、前記マイクロジスト
ロフィン遺伝子によってコードされる前記タンパク質は、配列番号5のアミノ酸配列と少
なくとも90%の配列同一性を有する、請求項26~30のいずれか一項に記載の医薬組
成物。
【請求項32】
前記制御カセットは、CK8プロモーターであり、前記CK8プロモーターは、配列番
号19の核酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する、請求項26~31のいずれ
か一項に記載の医薬組成物。
【請求項33】
前記制御カセットは、CK8プロモーターであり、前記CK8プロモーターは、配列番
号19の核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項26~32のいずれ
か一項に記載の医薬組成物。
【請求項34】
前記制御カセットは、cTnTプロモーターであり、前記cTnTプロモーターは、配
列番号1の核酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する、請求項26~33のいず
れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項35】
前記制御カセットは、cTnTプロモーターであり、前記cTnTプロモーターは、配
列番号1の核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項26~34のいず
れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項36】
前記医薬組成物は、筋強直性筋ジストロフィー、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベ
ッカー型筋ジストロフィー、肢帯型筋ジストロフィー、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー
、先天性筋ジストロフィー、眼咽頭筋型筋ジストロフィー、遠位型筋ジストロフィー、お
よびエメリードレイフス型筋ジストロフィーのうちの少なくとも1つから選択される筋ジ
ストロフィーの病理学的影響または症状を低減するよう構成される、請求項26~35の
いずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項37】
前記医薬組成物は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーおよびベッカー型筋ジストロフィ
ーのうちの少なくとも1つから選択される筋ジストロフィーの病理学的影響または症状を
低減するよう構成される、請求項26~36のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項38】
前記医薬組成物は、サルコペニア、心臓疾患および悪液質のうちの少なくとも1つの病
理学的影響または症状を低減するよう構成される、請求項26~37のいずれか一項に記
載の医薬組成物。
【請求項39】
配列番号16の核酸配列を含むマイクロジストロフィン遺伝子、および
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターまたは組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)
ベクター
を含む医薬組成物。
【請求項40】
前記AAVベクターまたは前記rAAVベクターの血清型は、血清型6、血清型8およ
び血清型9のうちの少なくとも1つから選択される、請求項39に記載の医薬組成物。
【請求項41】
配列番号4のアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするマイクロジストロフィン遺伝
子、および
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターまたは組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)
ベクター
を含む医薬組成物。
【請求項42】
前記AAVベクターまたは前記rAAVベクターの血清型は、血清型6、血清型8およ
び血清型9のうちの少なくとも1つから選択される、請求項41に記載の医薬組成物。
【請求項43】
配列番号18の核酸配列を含むマイクロジストロフィン遺伝子、および
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターまたは組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)
ベクター
を含む医薬組成物。
【請求項44】
前記AAVベクターまたは前記rAAVベクターの血清型は、血清型6、血清型8およ
び血清型9のうちの少なくとも1つから選択される、請求項43に記載の医薬組成物。
【請求項45】
配列番号5のアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするマイクロジストロフィン遺伝
子、および
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターまたは組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)
ベクター
を含む医薬組成物。
【請求項46】
前記AAVベクターまたは前記rAAVベクターの血清型は、血清型6、血清型8およ
び血清型9のうちの少なくとも1つから選択される、請求項45に記載の医薬組成物。
【請求項47】
配列番号16または配列番号18の核酸配列を含むマイクロジストロフィン遺伝子、お
よび
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターまたは組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)
ベクターであって、前記AAVベクターまたは前記rAAVベクターの血清型は、血清型
6、血清型8および血清型9のうちの少なくとも1つから選択される、アデノ随伴ウイル
ス(AAV)ベクターまたは組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター
を含む、筋ジストロフィーの処置または予防的処置において使用するための医薬組成物。
【請求項48】
配列番号16または配列番号18の核酸配列を含むマイクロジストロフィン遺伝子、お
よび
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターまたは組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)
ベクターであって、前記AAVベクターまたは前記rAAVベクターの血清型は、血清型
6、血清型8および血清型9のうちの少なくとも1つから選択される、アデノ随伴ウイル
ス(AAV)ベクターまたは組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター
を含む、筋ジストロフィーの処置または予防的処置のための医薬組成物。
【請求項49】
筋ジストロフィーを有する対象を処置する方法であって、
前記対象に制御カセットと、機能可能に連結されたマイクロジストロフィン遺伝子とを
含む治療有効量の医薬組成物を投与することを含む方法。
【請求項50】
前記制御カセットは、CK8プロモーターおよび心筋トロポニンT(cTnT)プロモ
ーターから成る群から選択される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記制御カセットは、横紋筋細胞における前記マイクロジストロフィン遺伝子の発現の
レベルが、非筋肉細胞における前記マイクロジストロフィン遺伝子の発現のレベルよりも
少なくとも100倍高くなるように前記マイクロジストロフィン遺伝子を発現させるよう
構成される、請求項49または50に記載の方法。
【請求項52】
前記医薬組成物は、前記対象において前記マイクロジストロフィン遺伝子を発現させる
よう構成された組換えアデノ随伴ウイルスベクターをさらに含む、請求項49~51のい
ずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも80%
の配列同一性を有するタンパク質をコードする、請求項49~52のいずれか一項に記載
の方法。
【請求項54】
前記マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも90%
の配列同一性を有するタンパク質をコードする、請求項49~53のいずれか一項に記載
の方法。
【請求項55】
前記マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも80%
の配列同一性を有するタンパク質をコードする、請求項49~54のいずれか一項に記載
の方法。
【請求項56】
前記マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも90%
の配列同一性を有するタンパク質をコードする、請求項49~55のいずれか一項に記載
の方法。
【請求項57】
前記制御カセットは、CK8プロモーターであり、前記CK8プロモーターは、配列番
号19の核酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する、請求項49~56のいずれ
か一項に記載の方法。
【請求項58】
前記制御カセットは、CK8プロモーターであり、前記CK8プロモーターは、配列番
号19の核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項49~57のいずれ
か一項に記載の方法。
【請求項59】
前記制御カセットは、cTnTプロモーターであり、前記cTnTプロモーターは、配
列番号1の核酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する、請求項49~58のいず
れか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記制御カセットは、cTnTプロモーターであり、前記cTnTプロモーターは、配
列番号1の核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項49~59のいず
れか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記マイクロジストロフィン遺伝子は、前記対象の1つまたは複数の筋肉の収縮性が向
上するように、前記1つまたは複数の筋肉においてマイクロジストロフィンタンパク質を
発現する、請求項49~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記マイクロジストロフィン遺伝子は、1つまたは複数の骨格筋のうちの少なくとも1
つの比筋力発揮能力が正常な比筋力発揮能力の少なくとも40%の範囲内まで増加させら
れるように、前記対象の前記1つまたは複数の骨格筋においてマイクロジストロフィンタ
ンパク質を発現する、請求項49~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記マイクロジストロフィン遺伝子は、基準拡張終末期容積の不足が正常な拡張終末期
容積の少なくとも40%の範囲内まで回復するように、前記対象の1つまたは複数の心筋
においてマイクロジストロフィンタンパク質を発現する、請求項49~62のいずれか一
項に記載の方法。
【請求項64】
前記マイクロジストロフィン遺伝子は、ジストロフィン糖タンパク質複合体への神経型
一酸化窒素合成酵素の局在化が前記対象において向上するように、マイクロジストロフィ
ンタンパク質を発現する、請求項49~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記筋ジストロフィーは、筋強直性筋ジストロフィー、デュシェンヌ型筋ジストロフィ
ー、ベッカー型筋ジストロフィー、肢帯型筋ジストロフィー、顔面肩甲上腕型筋ジストロ
フィー、先天性筋ジストロフィー、眼咽頭筋型筋ジストロフィー、遠位型筋ジストロフィ
ー、およびエメリードレイフス型筋ジストロフィーのうちの少なくとも1つから選択され
る、請求項49~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記筋ジストロフィーは、デュシェンヌ型筋ジストロフィーおよびベッカー型筋ジスト
ロフィーのうちの少なくとも1つから選択される、請求項49~65のいずれか一項に記
載の方法。
【請求項67】
前記医薬組成物は、前記筋ジストロフィーの病理学的影響または症状を低減する、請求
項49~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記筋ジストロフィーの病理学的影響または症状は、筋痛、筋力低下、筋肉疲労、筋萎
縮、線維症、炎症、骨格筋の平均筋線維直径の増加、心筋症、6分間歩行試験時間の減少
、歩行の減少、および心ポンプ失調のうちの少なくとも1つから選択される、請求項67
に記載の方法。
【請求項69】
前記筋ジストロフィーを有する前記対象を特定することさらに含む、請求項49~68
のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記対象は、哺乳動物である、請求項49~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記対象はヒトである、請求項49~70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
筋ジストロフィー発症するリスクのある対象に予防的処置を行うための方法であって、
機能可能に制御カセットと連結されたマイクロジストロフィン遺伝子を含む治療有効量の
医薬組成物を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項73】
前記制御カセットは、CK8プロモーターおよび心筋トロポニンT(cTnT)プロモ
ーターから成る群から選択される、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記制御カセットは、横紋筋細胞における前記マイクロジストロフィン遺伝子の発現の
レベルが、非筋肉細胞における前記マイクロジストロフィン遺伝子の発現のレベルよりも
少なくとも100倍高くなるように前記マイクロジストロフィン遺伝子を発現させるよう
構成される、請求項72または73に記載の方法。
【請求項75】
前記医薬組成物は、前記対象において前記マイクロジストロフィン遺伝子を発現させる
よう構成された組換えアデノ随伴ウイルスベクターをさらに含む、請求項72~74のい
ずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
前記マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも80%
の配列同一性を有するタンパク質をコードする、請求項72~75のいずれか一項に記載
の方法。
【請求項77】
前記マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも90%
の配列同一性を有するタンパク質をコードする、請求項72~76のいずれか一項に記載
の方法。
【請求項78】
前記マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも80%
の配列同一性を有するタンパク質をコードする、請求項72~77のいずれか一項に記載
の方法。
【請求項79】
前記マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも90%
の配列同一性を有するタンパク質をコードする、請求項72~78のいずれか一項に記載
の方法。
【請求項80】
前記制御カセットは、CK8プロモーターであり、前記CK8プロモーターは、配列番
号19の核酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する、請求項72~79のいずれ
か一項に記載の方法。
【請求項81】
前記制御カセットは、CK8プロモーターであり、前記CK8プロモーターは、配列番
号19の核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項72~80のいずれ
か一項に記載の方法。
【請求項82】
前記制御カセットは、cTnTプロモーターであり、前記cTnTプロモーターは、配
列番号1の核酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する、請求項72~81のいず
れか一項に記載の方法。
【請求項83】
前記制御カセットは、cTnTプロモーターであり、前記cTnTプロモーターは、配
列番号1の核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項72~82のいず
れか一項に記載の方法。
【請求項84】
前記マイクロジストロフィン遺伝子は、前記対象の1つまたは複数の筋肉の収縮性が向
上するように、前記1つまたは複数の筋肉においてマイクロジストロフィンタンパク質を
発現する、請求項72~83のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
前記マイクロジストロフィン遺伝子は、前記対象の1つまたは複数の骨格筋のうちの少
なくとも1つの比筋力発揮能力が正常な比筋力発揮能力の少なくとも40%の範囲内まで
増加させられるように、前記1つまたは複数の骨格筋においてマイクロジストロフィンタ
ンパク質を発現する、請求項72~84のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
前記マイクロジストロフィン遺伝子は、基準拡張終末期容積の不足が正常な拡張終末期
容積の少なくとも40%の範囲内まで回復するように、前記対象の1つまたは複数の心筋
においてマイクロジストロフィンタンパク質を発現する、請求項72~85のいずれか一
項に記載の方法。
【請求項87】
前記マイクロジストロフィン遺伝子は、前記ジストロフィン糖タンパク質複合体への神
経型一酸化窒素合成酵素の局在化が前記対象において向上するように、マイクロジストロ
フィンタンパク質を発現する、請求項72~86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
前記筋ジストロフィーは、筋強直性筋ジストロフィー、デュシェンヌ型筋ジストロフィ
ー、ベッカー型筋ジストロフィー、肢帯型筋ジストロフィー、顔面肩甲上腕型筋ジストロ
フィー、先天性筋ジストロフィー、眼咽頭筋型筋ジストロフィー、遠位型筋ジストロフィ
ー、およびエメリードレイフス型筋ジストロフィーのうちの少なくとも1つから選択され
る、請求項72~87のいずれか一項に記載の方法。
【請求項89】
前記筋ジストロフィーは、デュシェンヌ型筋ジストロフィーおよびベッカー型筋ジスト
ロフィーのうちの少なくとも1つから選択される、請求項72~88のいずれか一項に記
載の方法。
【請求項90】
前記医薬組成物は、前記筋ジストロフィーの病理学的影響または症状を発症するリスク
を低減する、請求項72~89のいずれか一項に記載の方法。
【請求項91】
前記筋ジストロフィーの病理学的影響または症状は、筋痛、筋力低下、筋肉疲労、筋萎
縮、線維症、炎症、骨格筋の平均筋線維直径の増加、心筋症、6分間歩行試験時間の減少
、歩行の減少、および心ポンプ失調のうちの少なくとも1つから選択される、請求項90
に記載の方法。
【請求項92】
前記筋ジストロフィーを発症するリスクのある前記対象を特定することをさらに含む、
請求項72~91のいずれか一項に記載の方法。
【請求項93】
前記対象は、哺乳動物である、請求項72~92のいずれか一項に記載の方法。
【請求項94】
前記対象は、ヒトである、請求項72~93のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年1月16日に出願された米国仮特許出願第62/104,537
号の利益を主張するものであり、その全体を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
連邦政府資金による研究の記載
本発明は、米国国立衛生研究所によって授与された助成金第R01 AG033610
号のもと政府の支援を受けて成された。政府は、本発明の一定の権利を有する。
【0003】
本開示は、概してマイクロジストロフィンに関する。本開示はまた、筋ジストロフィー
、サルコペニア、心不全または悪液質を有する対象を処置する方法に関する。本開示はま
た、筋ジストロフィー、サルコペニア、心不全または悪液質を発症するリスクのある対象
に予防的処置を行う方法に関する。特に、本方法は、マイクロジストロフィン遺伝子およ
び送達媒体(delivery vehicle)を含む医薬組成物を対象に投与することを含んでもよい
。特に、本方法は、医薬組成物をデュシェンヌ型筋ジストロフィーまたはベッカー型筋ジ
ストロフィーを有する対象に投与することを含んでもよい。
【背景技術】
【0004】
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は、およそ3500人に1人の男性を冒す
劣性遺伝性筋消耗疾患である。DMD患者は、ジストロフィン遺伝子に突然変異があり、
これがジストロフィンタンパク質の異常な発現または発現の欠損を引き起こす。DMD患
者は、骨格筋の進行性消耗および心機能不全を経験し、これが、歩行の減少および主に心
不全または呼吸器不全のため早期の死亡につながる。不運にも、現在利用可能な処置は、
一般にDMDの病態を遅らせることしかできない。したがって、DMDを処置するための
組成物および方法に対して差し迫ったニーズがある。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、少なくとも部分的に新規のマイクロジストロフィン、その組成物および使用
の関連する方法に基づく。
【0006】
本開示の一部の実施形態において、単離および精製されたヌクレオチド配列は、(a)
アミノ末端アクチン結合ドメインと、β-ジストログリカン結合ドメインと、少なくとも
4個のスペクトリン様リピートのうちの2個が神経型一酸化窒素合成酵素結合ドメインを
含むような少なくとも4個のスペクトリン様リピートを含むスペクトリン様リピートドメ
インとを含むタンパク質をコードするマイクロジストロフィン遺伝子;および(b)制御
カセットを含む。
【0007】
一実施形態において、少なくとも4個のスペクトリン様リピートは、スペクトリン様リ
ピート1(SR1)、スペクトリン様リピート16(SR16)、スペクトリン様リピー
ト17(SR17)、およびスペクトリン様リピート24(SR24)を含む。
【0008】
別の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされるタンパク
質は、ヒンジドメインの少なくとも一部をさらに含む。
【0009】
さらに別の実施形態において、ヒンジドメインは、ヒンジ1ドメイン、ヒンジ2ドメイ
ン、ヒンジ3ドメイン、ヒンジ4ドメイン、およびヒンジ様ドメインのうちの少なくとも
1つから選択される。
【0010】
さらに別の実施形態において、制御カセットは、CK8プロモーターおよび心筋トロポ
ニンT(cTnT)プロモーターから成る群から選択される。
【0011】
一実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされるタンパク質
は、5個のスペクトリン様リピートから8個のスペクトリン様リピートの間のスペクトリ
ン様リピートを有する。
【0012】
別の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされるタンパク
質は、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する。
【0013】
さらに別の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされるタ
ンパク質は、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する。
【0014】
さらに別の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされるタ
ンパク質は、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する。
【0015】
一実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされるタンパク質
は、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する。
【0016】
別の実施形態において、制御カセットは、CK8プロモーターであり、CK8プロモー
ターは、配列番号19の核酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する。
【0017】
さらに別の実施形態において、制御カセットは、CK8プロモーターであり、CK8プ
ロモーターは、配列番号19の核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する。
【0018】
さらに別の実施形態において、制御カセットは、cTnTプロモーターであり、cTn
Tプロモーターは、配列番号1の核酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する。
【0019】
一実施形態において、制御カセットは、cTnTプロモーターであり、cTnTプロモ
ーターは、配列番号1の核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する。
【0020】
本開示の特定の実施形態において、単離および精製されたヌクレオチド配列は、アミノ
末端アクチン結合ドメインと、スペクトリン様リピート2と直接連結されたスペクトリン
様リピート1、スペクトリン様リピート3と直接連結されたスペクトリン様リピート2、
スペクトリン様リピート16と直接連結されたスペクトリン様リピート1、スペクトリン
様リピート23と直接連結されたスペクトリン様リピート17、スペクトリン様リピート
24と直接連結されたスペクトリン様リピート17、およびスペクトリン様リピート24
と直接連結されたスペクトリン様リピート23のうちの少なくとも1つから選択される、
互いに直接連結された少なくとも2個のスペクトリン様リピートとを含むタンパク質をコ
ードするマイクロジストロフィン遺伝子を含む。
【0021】
本開示の特定の他の実施形態において、単離および精製されたヌクレオチド配列は、順
番にヒンジ1ドメイン(H1)と、スペクトリン様リピート1(SR1)と、スペクトリ
ン様リピート16(SR16)と、スペクトリン様リピート17(SR17)と、スペク
トリン様リピート24(SR24)と、ヒンジ4ドメイン(H4)とを含むタンパク質を
コードするマイクロジストロフィン遺伝子を含む。
【0022】
一実施形態において、H1は、SR1と直接連結されている。
【0023】
別の実施形態において、SR1は、SR16と直接連結されている。
【0024】
さらに別の実施形態において、SR16は、SR17と直接連結されている。
【0025】
さらに別の実施形態において、SR17は、SR24と直接連結されている。
【0026】
別の実施形態において、SR24は、H4と直接連結されている。
【0027】
さらに別の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされるタ
ンパク質は、SR1とSR16との間に、順番にスペクトリン様リピート2(SR2)お
よびスペクトリン様リピート3(SR3)をさらに含む。
【0028】
さらに別の実施形態において、SR1は、SR2と直接連結され、SR2は、SR3と
さらに連結されている。
【0029】
本開示の一部の実施形態において、単離および精製されたヌクレオチド配列は、順番に
ヒンジ1ドメイン(H1)と、スペクトリン様リピート1(SR1)と、スペクトリン様
リピート16(SR16)と、スペクトリン様リピート17(SR17)と、スペクトリ
ン様リピート23(SR23)と、スペクトリン様リピート24(SR24)と、ヒンジ
4ドメイン(H4)とを含むタンパク質をコードするマイクロジストロフィン遺伝子を含
む。
【0030】
一実施形態において、H1はSR1と直接連結され、SR1はSR16と直接連結され
、SR16はSR17と直接連結され、SR17はSR23と直接連結され、SR23は
SR24と直接連結され、SR24はH4と直接連結されている。
【0031】
本開示の特定の実施形態において、本医薬組成物は、本明細書に記載されている単離お
よび精製されたヌクレオチド配列および送達媒体を含む。
【0032】
一実施形態において、送達媒体は、組換えアデノ随伴ウイルスベクターを含む。
【0033】
別の実施形態において、送達媒体は、マイクロジストロフィン遺伝子によってコードさ
れるタンパク質が、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する
ようなマイクロジストロフィン遺伝子を発現させる。
【0034】
さらに別の実施形態において、送達媒体は、マイクロジストロフィン遺伝子によってコ
ードされるタンパク質が、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を
有するようなマイクロジストロフィン遺伝子を発現させる。
【0035】
さらに別の実施形態において、送達媒体は、マイクロジストロフィン遺伝子によってコ
ードされるタンパク質が、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を
有するようなマイクロジストロフィン遺伝子を発現させる。
【0036】
別の実施形態において、送達媒体は、マイクロジストロフィン遺伝子によってコードさ
れるタンパク質が、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する
ようなマイクロジストロフィン遺伝子を発現させる。
【0037】
本開示の一部の実施形態において、本明細書に記載されている医薬組成物は、制御カセ
ットがCK8プロモーターであり、CK8プロモーターが配列番号19の核酸配列と少な
くとも80%の配列同一性を有するような制御カセットを含む。
【0038】
本開示の特定の実施形態において、本明細書に記載されている医薬組成物は、制御カセ
ットがCK8プロモーターであり、CK8プロモーターが配列番号19の核酸配列と少な
くとも90%の配列同一性を有するような制御カセットを含む。
【0039】
本開示の一部の実施形態において、本明細書に記載されている医薬組成物は、制御カセ
ットがcTnTプロモーターであり、cTnTプロモーターが配列番号1の核酸配列と少
なくとも80%の配列同一性を有するような制御カセットを含む。
【0040】
本開示の特定の実施形態において、本明細書に記載されている医薬組成物は、制御カセ
ットがcTnTプロモーターであり、cTnTプロモーターが配列番号1の核酸配列と少
なくとも90%の配列同一性を有するような制御カセットを含む。
【0041】
本開示の一部の実施形態において、本医薬組成物は、筋強直性筋ジストロフィー、デュ
シェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー、肢帯型筋ジストロフィー、
顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー、先天性筋ジストロフィー、眼咽頭筋型筋ジストロフィ
ー、遠位型筋ジストロフィー、およびエメリードレイフス型筋ジストロフィーのうちの少
なくとも1つから選択される筋ジストロフィーの病理学的影響または症状を低減するよう
構成される。
【0042】
本開示の特定の実施形態において、本医薬組成物は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー
およびベッカー型筋ジストロフィーのうちの少なくとも1つから選択される筋ジストロフ
ィーの病理学的影響または症状を低減するよう構成される。
【0043】
本開示の一部の実施形態において、本医薬組成物は、サルコペニア、心臓疾患および悪
液質のうちの少なくとも1つの病理学的影響または症状を低減するよう構成される。
【0044】
本開示の特定の実施形態において、本医薬組成物は、配列番号16の核酸配列を含むマ
イクロジストロフィン遺伝子およびアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターまたは組換え
アデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターを含む。特定の実施形態において、AAVベク
ターまたはrAAVベクターの血清型は、血清型6、血清型8および血清型9のうちの少
なくとも1つから選択される。
【0045】
本開示の一部の実施形態において、本医薬組成物は、タンパク質が配列番号4のアミノ
酸配列を含むようなタンパク質をコードするマイクロジストロフィン遺伝子およびアデノ
随伴ウイルス(AAV)ベクターまたは組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター
を含む。特定の実施形態において、AAVベクターまたはrAAVベクターの血清型は、
血清型6、血清型8および血清型9のうちの少なくとも1つから選択される。
【0046】
本開示の特定の実施形態において、本医薬組成物は、配列番号18の核酸配列を含むマ
イクロジストロフィン遺伝子およびアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターまたは組換え
アデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターを含む。一部の実施形態において、AAVベク
ターまたはrAAVベクターの血清型は、血清型6、血清型8および血清型9のうちの少
なくとも1つから選択される。
【0047】
本開示の特定の実施形態において、本医薬組成物は、タンパク質が配列番号5のアミノ
酸配列を含むようなタンパク質をコードするマイクロジストロフィン遺伝子およびアデノ
随伴ウイルス(AAV)ベクターまたは組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター
を含む。一部の実施形態において、AAVベクターまたはrAAVベクターの血清型は、
血清型6、血清型8および血清型9のうちの少なくとも1つから選択される。
【0048】
本開示の一部の実施形態において、筋ジストロフィーの処置または予防的処置への使用
に適した医薬組成物は、配列番号16または配列番号18の核酸配列を含むマイクロジス
トロフィン遺伝子と、AAVベクターまたはrAAVベクターの血清型が血清型6、血清
型8および血清型9のうちの少なくとも1つから選択されるようなアデノ随伴ウイルス(
AAV)ベクターまたは組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターとを含む。
【0049】
本開示の特定の実施形態において、筋ジストロフィーの処置または予防的処置に適した
医薬組成物は、配列番号16または配列番号18の核酸配列を含むマイクロジストロフィ
ン遺伝子と、AAVベクターまたはrAAVベクターの血清型が血清型6、血清型8およ
び血清型9のうちの少なくとも1つから選択されるようなアデノ随伴ウイルス(AAV)
ベクターまたは組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターとを含む。
【0050】
本開示の特定の実施形態において、筋ジストロフィーを有する対象を処置するための方
法は、機能可能に制御カセットと連結されたマイクロジストロフィン遺伝子を含む治療有
効量の医薬組成物を対象に投与することを含む。
【0051】
一実施形態において、制御カセットは、CK8プロモーターおよび心筋トロポニンT(
cTnT)プロモーターから成る群から選択される。
【0052】
別の実施形態において、制御カセットは、横紋筋細胞におけるマイクロジストロフィン
遺伝子の発現のレベルが、非筋肉細胞におけるマイクロジストロフィン遺伝子の発現のレ
ベルよりも少なくとも100倍高くなるようにマイクロジストロフィン遺伝子を発現させ
るよう構成される。
【0053】
本開示の特定の実施形態において、本明細書に記載されている医薬組成物は、対象にお
いてマイクロジストロフィン遺伝子を発現させるよう構成された組換えアデノ随伴ウイル
スベクターをさらに含む。
【0054】
一実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号4のアミノ酸配列と
少なくとも80%の配列同一性を有するタンパク質をコードする。
【0055】
別の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号4のアミノ酸配列
と少なくとも90%の配列同一性を有するタンパク質をコードする。
【0056】
さらに別の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号5のアミノ
酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するタンパク質をコードする。
【0057】
さらに別の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号5のアミノ
酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するタンパク質をコードする。
【0058】
一実施形態において、制御カセットは、CK8プロモーターであり、CK8プロモータ
ーは、配列番号19の核酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する。
【0059】
別の実施形態において、制御カセットは、CK8プロモーターであり、CK8プロモー
ターは、配列番号19の核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する。
【0060】
さらに別の実施形態において、制御カセットは、cTnTプロモーターであり、cTn
Tプロモーターは、配列番号1の核酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する。
【0061】
さらに別の実施形態において、制御カセットは、cTnTプロモーターであり、cTn
Tプロモーターは、配列番号1の核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する。
【0062】
一実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は、1つまたは複数の筋肉の収縮
性が向上するように、対象の1つまたは複数の筋肉においてマイクロジストロフィンタン
パク質を発現する。
【0063】
別の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は、1つまたは複数の骨格筋の
うちの少なくとも1つの比筋力発揮能力が正常な比筋力発揮能力の少なくとも40%の範
囲内まで増加させられるように、対象の1つまたは複数の骨格筋においてマイクロジスト
ロフィンタンパク質を発現する。
【0064】
さらに別の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は、基準拡張終末期容積
の不足が正常な拡張終末期容積の少なくとも40%の範囲内まで回復するように、対象の
1つまたは複数の心筋においてマイクロジストロフィンタンパク質を発現する。
【0065】
さらに別の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は、ジストロフィン糖タ
ンパク質複合体への神経型一酸化窒素合成酵素の局在化が対象において向上するように、
マイクロジストロフィンタンパク質を発現する。
【0066】
一部の実施形態において、筋ジストロフィーは、筋強直性筋ジストロフィー、デュシェ
ンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー、肢帯型筋ジストロフィー、顔面
肩甲上腕型筋ジストロフィー、先天性筋ジストロフィー、眼咽頭筋型筋ジストロフィー、
遠位型筋ジストロフィー、およびエメリードレイフス型筋ジストロフィーのうちの少なく
とも1つから選択される。
【0067】
特定の実施形態において、筋ジストロフィーは、デュシェンヌ型筋ジストロフィーおよ
びベッカー型筋ジストロフィーのうちの少なくとも1つから選択される。
【0068】
本開示の一部の実施形態において、本医薬組成物は、筋ジストロフィーの病理学的影響
または症状を低減する。
【0069】
特定の実施形態において、筋ジストロフィーの病理学的影響または症状は、筋痛、筋力
低下、筋肉疲労、筋萎縮、線維症、炎症、骨格筋の平均筋線維直径の増加、心筋症、6分
間歩行試験時間の減少、歩行の減少、および心ポンプ失調のうちの少なくとも1つから選
択される。
【0070】
一部の実施形態において、本明細書に記載される方法は、筋ジストロフィーを有する対
象を特定することを含む。
【0071】
特定の実施形態において、対象は、哺乳動物である。
【0072】
特定の実施形態において、対象はヒトである。
【0073】
本開示の一部の実施形態において、筋ジストロフィー発症するリスクのある対象に予防
的処置を行うための方法は、機能可能に制御カセットと連結されたマイクロジストロフィ
ン遺伝子を含む治療有効量の医薬組成物を対象に投与することを含む。
【0074】
一実施形態において、制御カセットは、CK8プロモーターおよび心筋トロポニンT(
cTnT)プロモーターから成る群から選択される。
【0075】
さらに別の実施形態において、制御カセットは、横紋筋細胞におけるマイクロジストロ
フィン遺伝子の発現のレベルが、非筋肉細胞におけるマイクロジストロフィン遺伝子の発
現のレベルよりも少なくとも100倍高くなるようにマイクロジストロフィン遺伝子を発
現させるよう構成される。
【0076】
特定の実施形態において、本医薬組成物は、対象においてマイクロジストロフィン遺伝
子を発現させるよう構成された組換えアデノ随伴ウイルスベクターをさらに含む。
【0077】
特定の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号4のアミノ酸配
列と少なくとも80%の配列同一性を有するタンパク質をコードする。
【0078】
別の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号4のアミノ酸配列
と少なくとも90%の配列同一性を有するタンパク質をコードする。
【0079】
一部の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号5のアミノ酸配
列と少なくとも80%の配列同一性を有するタンパク質をコードする。
【0080】
さらに別の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号5のアミノ
酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するタンパク質をコードする。
【0081】
特定の実施形態において、制御カセットは、CK8プロモーターであり、CK8プロモ
ーターは、配列番号19の核酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する。
【0082】
別の実施形態において、制御カセットは、CK8プロモーターであり、CK8プロモー
ターは、配列番号19の核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する。
【0083】
さらに別の実施形態において、制御カセットは、cTnTプロモーターであり、cTn
Tプロモーターは、配列番号1の核酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する。
【0084】
さらに別の実施形態において、制御カセットは、cTnTプロモーターであり、cTn
Tプロモーターは、配列番号1の核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する。
【0085】
特定の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は、1つまたは複数の筋肉の
収縮性が向上するように、対象の1つまたは複数の筋肉においてマイクロジストロフィン
タンパク質を発現する。
【0086】
別の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は、1つまたは複数の骨格筋の
うちの少なくとも1つの比筋力発揮能力が正常な比筋力発揮能力の少なくとも40%の範
囲内まで増加させられるように、対象の1つまたは複数の骨格筋においてマイクロジスト
ロフィンタンパク質を発現する。
【0087】
一部の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は、基準拡張終末期容積の不
足が正常な拡張終末期容積の少なくとも40%の範囲内まで回復するように、対象の1つ
または複数の心筋においてマイクロジストロフィンタンパク質を発現する。
【0088】
特定の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は、ジストロフィン糖タンパ
ク質複合体への神経型一酸化窒素合成酵素の局在化が対象において向上するように、マイ
クロジストロフィンタンパク質を発現する。
【0089】
特定の実施形態において、筋ジストロフィーは、筋強直性筋ジストロフィー、デュシェ
ンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー、肢帯型筋ジストロフィー、顔面
肩甲上腕型筋ジストロフィー、先天性筋ジストロフィー、眼咽頭筋型筋ジストロフィー、
遠位型筋ジストロフィー、およびエメリードレイフス型筋ジストロフィーのうちの少なく
とも1つから選択される。
【0090】
一部の実施形態において、筋ジストロフィーは、デュシェンヌ型筋ジストロフィーおよ
びベッカー型筋ジストロフィーのうちの少なくとも1つから選択される。
【0091】
特定の実施形態において、本明細書に記載されている医薬組成物は、筋ジストロフィー
の病理学的影響または症状を発症するリスクを減少させる。
【0092】
一実施形態において、筋ジストロフィーの病理学的影響または症状は、筋痛、筋力低下
、筋肉疲労、筋萎縮、線維症、炎症、骨格筋の平均筋線維直径の増加、心筋症、6分間歩
行試験時間の減少、歩行の減少、および心ポンプ失調のうちの少なくとも1つから選択さ
れる。
【0093】
本開示の一部の実施形態において、本明細書に記載される方法は、筋ジストロフィーを
発症するリスクのある対象を特定することをさらに含む。
【0094】
一実施形態において、対象は、哺乳動物である。
【0095】
別の実施形態において、対象はヒトである。
【0096】
本開示の他の特徴および利点が、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかに
なるであろう。
【0097】
本明細書中で開示される実施形態は、添付の図面と併せて、以下の説明および添付の特
許請求の範囲から完全にさらに十分に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【
図1A】本明細書中で開示される切断型ジストロフィン構築物の実施形態のタンパク質構造図である。NT、アミノ末端ドメイン;H、ヒンジ;R、スペクトリン様リピート;nNOS BD、神経型一酸化窒素合成酵素結合ドメイン;CR、システインリッチドメイン;CT、カルボキシル末端ドメイン;Syn、シントロフィン結合ドメイン;Db BD、ジストロブレビン結合ドメイン;何も記されていない領域はR15とR16との間の20個のアミノ酸を示す;aa、アミノ酸;およびkDa、キロダルトン。
【
図1B】ジストロフィーmdx
4cvマウスに5×10
10ベクターゲノム(vg)のrAAV/CMV-μDysを一方の前脛骨(TA)筋に注射した結果を示すウエスタンブロットの写真であり、反対側の筋肉は内的な未処置対照の役割を果たす。試験したすべての構築物の発現を、TA筋ライセートのウエスタンブロット分析によって野生型および未処置mdx
4cv対照とともに処置の4週後に検証した。グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)は、内的ローディングコントロールの役割を果たす。
【
図1C】それぞれ処置の4週または12週後のジストロフィン発現および中心核形成に関するTA断面からの筋線維の定量化を示すグラフである(各時点に対してコホート当たりN=3~5、平均値±S.E.M.)。μDysH3は、性能の比較基準の役割を果たす。μDys6およびμDys7は、広く普及しているサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターを使用してAAV発現ベクターにクローン化されるには大き過ぎたため、効率的なパッケージングおよびインビボ評価を可能にするためにCMVプロモーターを筋特異的CK8プロモーターで置き換えた。したがって、μDysH3を、CK8制御発現カセットを用いて再評価した。記号は、野生型マウスに基づく有意性を指す。*はP<0.05、**はP<0.01、***はP<0.001、#はP<0.0001である。
【
図1D】それぞれ処置の4週または12週後のジストロフィン発現および中心核形成に関するTA断面からの筋線維の定量化を示すグラフである(各時点に対してコホート当たりN=3~5、平均値±S.E.M.)。μDysH3は、性能の比較基準の役割を果たす。μDys6およびμDys7は、広く普及しているサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターを使用してAAV発現ベクターにクローン化されるには大き過ぎたため、効率的なパッケージングおよびインビボ評価を可能にするためにCMVプロモーターを筋特異的CK8プロモーターで置き換えた。したがって、μDysH3を、CK8制御発現カセットを用いて再評価した。記号は、野生型マウスに基づく有意性を指す。*はP<0.05、**はP<0.01、***はP<0.001、#はP<0.0001である。
【
図2】処置の6か月後の代表的な腓腹筋断面を示す一連の顕微鏡写真である。示したとおり、ジストロフィンおよびDAPI染色核を左列に示し、β-ジストログリカンおよびDAPIを中央列に示し、神経型一酸化窒素合成酵素(nNOS)を右列に示す。各行は、野生型マウス、処置mdx
4cvマウスおよび未処置mdx
4cvマウスのコホートの代表的な結果を示す。スケールバーは200μmである。ジストロフィン糖タンパク質複合体(DGC)メンバーの動員は、μDys構築物内の結合ドメインに一般に依存する。14日齢のジストロフィーmdx
4cvマウスに、1×10
13vgのrAAV6/CK8-μDysを後眼窩静脈叢より注射した。処置の3か月および6か月後、DGCメンバーに関して骨格筋を免疫染色した。
【
図3A】処置の3か月後における全身的処置の評価を示すグラフである。新規のμDys構築物の性能を判定するために腓腹筋(
図3Aおよび3B)および横隔膜筋(
図3Cおよび3D)を評価した。ジストロフィン発現および中心に核のある筋線維に関して筋肉断面を定量した。ジストロフィン発現を示す筋線維および/または中心核形成を示す筋線維のレベルをパーセンテージとして表わす(
図3Aおよび3C)。腓腹筋細片に関してインサイチュで(
図3B)および横隔膜細片に関してインビトロで(
図3D)比筋力発揮を測定した。各コホートに関するn値を
図3Dの棒に列挙する。括弧でくくられていない記号に関して、野生型に基づき、*はP<0.05、**はP<0.01、***はP<0.001である。μDys2で処置したマウスに基づき、^はP<0.05、^^はP<0.01、^^^はP<0.001である。μDys5で処置したマウスに基づき、#はP<0.05、##はP<0.01、###はP<0.001である。
【
図3B】処置の3か月後における全身的処置の評価を示すグラフである。新規のμDys構築物の性能を判定するために腓腹筋(
図3Aおよび3B)および横隔膜筋(
図3Cおよび3D)を評価した。ジストロフィン発現および中心に核のある筋線維に関して筋肉断面を定量した。ジストロフィン発現を示す筋線維および/または中心核形成を示す筋線維のレベルをパーセンテージとして表わす(
図3Aおよび3C)。腓腹筋細片に関してインサイチュで(
図3B)および横隔膜細片に関してインビトロで(
図3D)比筋力発揮を測定した。各コホートに関するn値を
図3Dの棒に列挙する。括弧でくくられていない記号に関して、野生型に基づき、*はP<0.05、**はP<0.01、***はP<0.001である。μDys2で処置したマウスに基づき、^はP<0.05、^^はP<0.01、^^^はP<0.001である。μDys5で処置したマウスに基づき、#はP<0.05、##はP<0.01、###はP<0.001である。
【
図3C】処置の3か月後における全身的処置の評価を示すグラフである。新規のμDys構築物の性能を判定するために腓腹筋(
図3Aおよび3B)および横隔膜筋(
図3Cおよび3D)を評価した。ジストロフィン発現および中心に核のある筋線維に関して筋肉断面を定量した。ジストロフィン発現を示す筋線維および/または中心核形成を示す筋線維のレベルをパーセンテージとして表わす(
図3Aおよび3C)。腓腹筋細片に関してインサイチュで(
図3B)および横隔膜細片に関してインビトロで(
図3D)比筋力発揮を測定した。各コホートに関するn値を
図3Dの棒に列挙する。括弧でくくられていない記号に関して、野生型に基づき、*はP<0.05、**はP<0.01、***はP<0.001である。μDys2で処置したマウスに基づき、^はP<0.05、^^はP<0.01、^^^はP<0.001である。μDys5で処置したマウスに基づき、#はP<0.05、##はP<0.01、###はP<0.001である。
【
図3D】処置の3か月後における全身的処置の評価を示すグラフである。新規のμDys構築物の性能を判定するために腓腹筋(
図3Aおよび3B)および横隔膜筋(
図3Cおよび3D)を評価した。ジストロフィン発現および中心に核のある筋線維に関して筋肉断面を定量した。ジストロフィン発現を示す筋線維および/または中心核形成を示す筋線維のレベルをパーセンテージとして表わす(
図3Aおよび3C)。腓腹筋細片に関してインサイチュで(
図3B)および横隔膜細片に関してインビトロで(
図3D)比筋力発揮を測定した。各コホートに関するn値を
図3Dの棒に列挙する。括弧でくくられていない記号に関して、野生型に基づき、*はP<0.05、**はP<0.01、***はP<0.001である。μDys2で処置したマウスに基づき、^はP<0.05、^^はP<0.01、^^^はP<0.001である。μDys5で処置したマウスに基づき、#はP<0.05、##はP<0.01、###はP<0.001である。
【
図4A】処置の6か月後における全身的処置の評価を示すグラフである。
図3A~3Dに記載されているとおりに腓腹筋(
図4Aおよび4B)および横隔膜筋(
図4Cおよび4D)を評価した。各コホートに関するn値を
図4Dの棒に列挙する。野生型に基づき、*はP<0.05、**はP<0.01、***はP<0.001である。μDys2で処置したマウスに基づき、^はP<0.05、^^はP<0.01、^^^はP<0.001である。μDys7で処置したマウスに基づき、#はP<0.05、##はP<0.01、###はP<0.001である。
【
図4B】処置の6か月後における全身的処置の評価を示すグラフである。
図3A~3Dに記載されているとおりに腓腹筋(
図4Aおよび4B)および横隔膜筋(
図4Cおよび4D)を評価した。各コホートに関するn値を
図4Dの棒に列挙する。野生型に基づき、*はP<0.05、**はP<0.01、***はP<0.001である。μDys2で処置したマウスに基づき、^はP<0.05、^^はP<0.01、^^^はP<0.001である。μDys7で処置したマウスに基づき、#はP<0.05、##はP<0.01、###はP<0.001である。
【
図4C】処置の6か月後における全身的処置の評価を示すグラフである。
図3A~3Dに記載されているとおりに腓腹筋(
図4Aおよび4B)および横隔膜筋(
図4Cおよび4D)を評価した。各コホートに関するn値を
図4Dの棒に列挙する。野生型に基づき、*はP<0.05、**はP<0.01、***はP<0.001である。μDys2で処置したマウスに基づき、^はP<0.05、^^はP<0.01、^^^はP<0.001である。μDys7で処置したマウスに基づき、#はP<0.05、##はP<0.01、###はP<0.001である。
【
図4D】処置の6か月後における全身的処置の評価を示すグラフである。
図3A~3Dに記載されているとおりに腓腹筋(
図4Aおよび4B)および横隔膜筋(
図4Cおよび4D)を評価した。各コホートに関するn値を
図4Dの棒に列挙する。野生型に基づき、*はP<0.05、**はP<0.01、***はP<0.001である。μDys2で処置したマウスに基づき、^はP<0.05、^^はP<0.01、^^^はP<0.001である。μDys7で処置したマウスに基づき、#はP<0.05、##はP<0.01、###はP<0.001である。
【
図5A】骨格筋における伸張性収縮からの筋細胞膜の保護の程度を示すグラフである。
図2および
図4A~4Dに記載されているとおりに全身的に処置したマウスに長さを増加させる伸張性収縮をさせた。伸張性収縮に先立って発揮される等尺性最大筋力に関して腓腹筋細片(
図5A)および横隔膜細片(
図5B)を測定した。収縮を刺激する間、筋肉は、その最適線維長を超えて規定される距離で伸ばされた。距離は最適線維長(L
O)を超えたパーセンテージとして報告する。L
Oを45%超えた野生型に基づいて、*はP<0.05、***はP<0.001、****はP<0.0001である。L
Oを45%超えたμDys2で処置したマウスに基づき、^^^はP<0.001、^^^^はP<0.0001である。L
Oを45%超えたμDys7で処置したマウスに基づき、∇∇∇∇はP<0.0001である。
【
図5B】骨格筋における伸張性収縮からの筋細胞膜の保護の程度を示すグラフである。
図2および
図4A~4Dに記載されているとおりに全身的に処置したマウスに長さを増加させる伸張性収縮をさせた。伸張性収縮に先立って発揮される等尺性最大筋力に関して腓腹筋細片(
図5A)および横隔膜細片(
図5B)を測定した。収縮を刺激する間、筋肉は、その最適線維長を超えて規定される距離で伸ばされた。距離は最適線維長(L
O)を超えたパーセンテージとして報告する。L
Oを45%超えた野生型に基づいて、*はP<0.05、***はP<0.001、****はP<0.0001である。L
Oを45%超えたμDys2で処置したマウスに基づき、^^^はP<0.001、^^^^はP<0.0001である。L
Oを45%超えたμDys7で処置したマウスに基づき、∇∇∇∇はP<0.0001である。
【
図6】全身的に試験した新規のμDys構築物が骨格筋においてリングバインデン表現型を誘導しないことを示す一連の顕微鏡写真である。14日齢のジストロフィーmdx
4cvマウスの後眼窩静脈叢に1×10
13vgを注射した。処置の6か月後に、腓腹筋の断面をジストロフィン、DAPI、およびα-サルコメアアクチンに関して免疫染色した。野生型マウス(パネル「a」)およびμDysH3(パネル「b」)、μDys1(パネル「c」)、μDys2(パネル「d」)、μDys5(パネル「e」)、μDys6(パネル「f」)、μDys7(パネル「g」)で処置したmdx
4cvマウスまたは未処置のmdx
4cvマウス(パネル「h」)コホートの代表的な一断面を示す。mdx
4cvバックグラウンドに関してΔR4-R23/ΔCTを発現しているトランスジェニックマウスの腓腹筋(Harper, S. Q., et al., Nature Medicine 8, 253-261, (2002)を参照)(パネル「i」)も陽性対照として免疫染色した。矢じりは、筋線維の周りのリングバインデン形成の例に印をつけている。スケールバーは50μmである。
【
図7】本明細書中で開示される新規のマイクロジストロフィン構築物の実施形態のタンパク質構造図である。上側のタンパク質構造図は、多くの既知の機能的ドメイン:NT、アミノ末端アクチン結合ドメイン;H、ヒンジ;R、スペクトリン様リピート;nNOS BD、神経型一酸化窒素合成酵素結合ドメイン;CR、システインリッチドメイン;CT、カルボキシル末端ドメイン;Dg BD、ジストログリカン結合ドメイン;Syn、シントロフィン結合ドメイン;Db BD、ジストロブレビン結合ドメイン;および何も記されていない領域はR15とR16との間の20個のアミノ酸を示す完全長ジストロフィンのものである。WWドメインはヒンジ4内にある。マイクロジストロフィンタンパク質構造を左側に、タンパク質構造図の左側に呼称を示し、概略図の右側にドメイン構造が列挙される。
【
図8】未処置(UN;n=S)対低用量(L;n=3)または高用量(H;n=3)のAAV6-L48Qに関する2週目(左)および3週目(右)における左室(LV)駆出率を示す2つのグラフである。
【
図9】示したとおり、AAV6-L48Q cTnCを注射したマウスの心臓組織(左)および未注射対照(右)に対する抗cTnCウエスタンブロットである。
【
図10】[
図10A]ローディングコントロールとしてGAPDHを用いたR1に関するウエスタンブロットである。[
図10B]ローディングコントロールとしてGAPDHを用いたR2に関するウエスタンブロットである。[
図10C]トランスフェクション心筋細胞のHPLC[dATP]を示すグラフである。
【
図11】2つのグラフである。左のグラフは、R1R2を過剰発現するマウス対対照同腹子におけるパーセンテージ短縮率(FS)の増加を示す。右のグラフは、R1R2を過剰発現するマウス対対照同腹子における左室内径(LVID)の変化を示す。d-拡張期、s-収縮期。
【
図13】[
図13A]R1およびR2に関するウエスタンブロットである。[
図13B]
図13Aのウエスタンブロットに関するローディングコントロールとしてのα-チューブリンを示す。
【
図14】rAAV6-R1R2
cTnT455を注射(4.5×10
13)したマウスおよび対照マウスの骨格筋、肺、および心臓におけるR1およびR2サブユニットの発現レベルに関する事前のウエスタンブロットの証拠を示す(パネル「A」)。
図14はまた、注射しないマウス(パネル「B」)対AAV6-アルカリホスファターゼを注射したマウス(パネル「C」)の20か月後の心臓組織に関するデータを提供し(Rafael, J. A., et al., The Journal of Cell Biology 134, 93-102 (1996)を参照)、これは、AAV6-R1R2
cTnT455が安定した長期のR1R2過剰発現をもたらす可能性があることを示唆している。
【
図15】おおよそ10倍の範囲にわたり3か月齢のマウス(1群当たりn=6)に全身注射した1.5×10
13、4.5×10
13、および1.35×10
14のrAAV6-R1R2
cTnT455ベクターゲノムまたは生理的食塩水(対照)のLV機能に対する効果を示すグラフである。
【
図16】未処置の梗塞ラットおよび未処置の偽手術されたラットと比較して心臓エコー検査によって測定される、梗塞後5日目にrAAV6-R1R2を直接心臓注射したラットにおける短縮率の変化を示す2つのグラフである。
【
図17】
図16で評価されたラットの心臓のインビトロにおけるNeelyワーキングハート測定を示すグラフである。y軸に力をg・cm/分の単位で示す。梗塞した(未処置)心臓の前負荷反応性の低下(心不全)およびベクターを与えられている梗塞心臓の前負荷反応性の、対照の梗塞していない心臓のレベルへの回復が観察され、これにより心機能の回復を実証する。
【
図18】比較的低い活性を有すると仮定される配列の除去に基づくヒト-cTnT(エンハンサー+プロモーター)制御カセットの小型化を示す図である。
【
図19】天然のヒト-cTnTエンハンサー/プロモーターと比較した
図18の欠失の転写試験を示すグラフであり、320bpバージョンが活性の約95%を保持している。
【
図20】第2の小型化エンハンサーを付加することにより、天然のエンハンサー/プロモーター、320bpバージョンおよびニワトリcTnTプロモーター/エンハンサーと比較して高められたヒト-cTnT455の活性を示すグラフである(American Journal of Physiology - Cell Physiology 280, C556-C564 (2004)を参照)。
【
図21】ジストロフィンスペクトリン様リピートの構造およびヒンジドメインとの並列の一連の略図である。上側左、個々のスペクトリン様リピートの互いに入り込んだフォールディングは、異なるアルファ-ヘリックスセグメントを強調して、3個の隣接するリピートがどのように一緒に折りたためるのかを見せるために示される(a、b、c;a’、b’、c’;およびa”、b”、c”は、3個の異なるスペクトリン様リピートのヘリックスドメインを示す)。上側右、未変性ジストロフィンおよびユートロフィンでは、一部のスペクトリン様リピートが、隣接するスペクトリン様リピートの通常の互いに入り込んだフォールディングを中断させるヒンジドメインによって分離される。上側右に示されるのは、スペクトリン様リピート18、19および20のフォールディングパターンおよびヒンジ3によるそれらの分離である。中段左、最適化したミニジストロフィンおよびマイクロジストロフィンは、スペクトリン様リピートドメインが通常のフォールディングパターンを保持するように配列される場合、一般に最高の機能活性を示し、非整数の単位のスペクトリン様リピートがミニジストロフィンまたはマイクロジストロフィンタンパク質中に存在する場合、例えば、ベッカー型筋ジストロフィー患者において全エクソンを除去する自然に生じる欠失が起こる場合に、この通常のフォールディングは崩壊している。この後者の状況は、中段右の略図に示され、これは、エクソン17~48を除去するゲノムの欠失を有する患者のジストロフィンの連結ドメインの予想される構造を表わす。下側の略図は、μDysH2(左)およびμDysH3(右)タンパク質において予想されるフォールディングパターンを示し、小型化ジストロフィンタンパク質の機能活性の予測できない性質も示す。μDysH2およびμDysH3は類似したフォールディングパターンを有するが、μDysH2は、mdxマウスの骨格筋において発現するとリングバインデンの原因となるのに対し、μDysH3はリングバインデンの原因とならない(Banks, G. B., et al., PLoS Genetics 6, e1000958, (2010)を参照)。
【
図22】抗ジストロフィン抗体を使用してジストロフィン発現に関して着色したmdx
4cvマウスの筋肉の凍結切片のイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0099】
本開示は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)を処置するための組成物および
方法を特徴とする。特に、本開示は、筋ジストロフィー、DMD、サルコペニア、心不全
および/または悪液質を有する対象を処置するためのミニジストロフィンタンパク質を生
成するための方法に関する。下で詳細に記載されるとおり、本開示は、少なくとも部分的
にジストロフィンタンパク質のタンパク質ドメイン(例えば、N末端ドメイン、H1ドメ
イン、SR1ドメイン、SR16ドメイン、SR17ドメイン、SR23ドメイン、SR
24ドメイン、H4ドメイン、およびCRドメインを含むミニジストロフィンタンパク質
)の特定の組み合わせを含むミニジストロフィンタンパク質が、ジストロフィン機能を筋
ジストロフィー、DMD、サルコペニア、心不全および/または悪液質を処置するのに十
分なレベルまで回復させることができるという予想外の発見に基づく。
【0100】
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は、およそ3500人に1人の男性を苦し
める劣性遺伝性筋消耗疾患である。DMD患者は、ジストロフィン遺伝子に突然変異をも
ち、結果としてジストロフィンタンパク質の異常な発現が生じるか、または発現しない。
DMD患者は、骨格筋の進行性消耗および心機能不全を経験し、歩行の減少および主に心
不全または呼吸器不全による早期の死亡につながる。現在利用可能な処置は、一般にDM
Dの病態を遅らせることしかできない(Emery, A. E. H. and Muntoni, F., Duchenne Mu
scular Dystrophy, Third Edition (Oxford University Press, 2003)を参照)。DMD
に対する遺伝子治療アプローチが、エクソンスキッピングのように突然変異のクラスを直
接標的とすること、またはウイルスベクターを介した送達により変異遺伝子を置換するこ
とのいずれかによってジストロフィーの動物モデルにおいて実証された(Koo, T. and Wo
od, M. J. Human Gene Therapy 24, (2013); Benedetti, S., et al., The FEBS Journa
l 280, 4263-4280, (2013);およびSeto, J. T., et al., Current Gene Therapy 12, 13
9-151 (2012)を参照)。組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターは、遺伝子治療
のための可能性のある媒体であり、これは、既にDMDおよび肢帯型筋ジストロフィーの
両方に対する臨床試験において試験されている(Mendell, J. R., et al., The New Engl
and Journal of Medicine 363, 1429-1437, (2010); Mendell, J. R., et al., Annals
of Neurology 68, 629-638 (2010);およびHerson, S., et al., Brain: A Journal of N
eurology 135, 483-492, (2012)を参照)。いくつかの血清型のアデノ随伴ウイルス(A
AV)は、横紋筋に対して高い程度の指向性を示す(Seto, J. T., et al., Current Gen
e Therapy 12, 139-151 (2012)を参照)。
【0101】
DMDに対するさらに新しい世代の治療構築物を設計および試験する前臨床試験は、お
よそ4.9kbサイズの一本鎖rAAVベクターゲノムによって制限される可能性がある
(Dong, B., et al., Molecular Therapy: The Journal of the American Society of Ge
ne Therapy 18, 87-92, (2010)およびWu, Z., et al., Molecular Therapy: The Journal
of the American Society of Gene Therapy 18, 80-86, (2010)を参照)。単一のrAA
Vカプシドに筋特異的アイソフォームのジストロフィンのおよそ13.9kbの全cDN
Aをパッケージングすることはできないため、筋特異的アイソフォームのジストロフィン
cDNAの小型化された合成版を使用することができる。ミニジストロフィンまたは完全
長ジストロフィンコード配列を送達するための2つおよび3つのrAAVベクターゲノム
のインビボ組換えが実証されたが(Odom, G. L., et al., Molecular Therapy: The Jour
nal of the American Society of Gene Therapy 19, 36-45, (2011); Lostal, W., et a
l., Human Gene Therapy, (2014);およびKoo, T., et al., Human Gene Therapy 25, 98
-108, (2014)を参照)、完全長ジストロフィンを再構成するための複数のベクターの送達
効率は最適状態には及ばない場合もあり、ベクターを送達するために必要とされるウイル
スカプシドタンパク質の全用量を増加させる可能性がある。しかしながら、rAAVを介
する有益な遺伝子治療が、遺伝子内にインフレーム欠失をもつ軽症のベッカー型筋ジスト
ロフィー患者で発現するmRNAに部分的に基づく合理的に設計された小型版のジストロ
フィンcDNAを使用して達成された(Beggs, A. H., et al., American Journal of Hu
man Genetics 49, 54-67 (1991); Koenig, M., et al., American Journal of Human Ge
netics 45, 498-506 (1989); Goldberg, L. R., et al., Annals of Neurology 44, 971
-976, (1998);およびEngland, S. B., et al., Nature 343, 180-182 (1990)を参照)。
さまざまなジストロフィントランケーションを発現するトランスジェニックの、ベクター
処理されたジストロフィーマウスにおける研究が、機能的なマイクロジストロフィン(μ
Dys)に存在している可能性のあるジストロフィン遺伝子のいくつかのエレメントを特
定した(Harper, S. Q., et al., Nature Medicine 8, 253-261, (2002)を参照)。
【0102】
完全長横紋筋アイソフォームのジストロフィンは、収縮力を、筋細胞膜を通じて細胞外
基質へと伝達することに関与している可能性がある。細胞内骨格と膜結合ジストロフィン
糖タンパク質複合体(DGC)との間の機械的連結の維持に加えて、ジストロフィンは、
シグナル伝達タンパク質のための足場である可能性もある(Ozawa, E. in Myology (ed.
Franzini-Armstrong C Engel A) 455-470 (McGraw-Hill, 2004); Winder, S. J. Journa
l of Muscle Research and Cell Motility 18, 617-629 (1997);およびCampbell, K. P.
and Kahl, S. D. Nature 338, 259-262, (1989)を参照)。ジストロフィンのアミノ末端
ドメインはまた、細胞内骨格のF-アクチンフィラメントと結合することができる(Way,
M., et al., FEBS Letters 301, 243-245 (1992); Hemmings, L., et al., The Journa
l of Cell Biology 116, 1369-1380 (1992); Fabbrizio, E., et al., Biochemistry 32
, 10457-10463 (1993);およびPavalko, F. M. and Otey, C. A. Proceedings of the So
ciety for Experimental Biology and Medicine 205, 282-293 (1994)を参照)。中央の
ロッドドメインが最も大きく、24のスペクトリン様リピート(SR)から構成され、ス
ペクトリン様リピートは、両側に少なくとも4個のヒンジサブドメインがあり、それらが
点在している。ロッドドメインは、筋肉の収縮中に筋細胞膜の完全性を維持するためにジ
ストロフィンに弾性および柔軟性をもたらすことができる(Winder, S. J. Journal of M
uscle Research and Cell Motility 18, 617-629 (1997)を参照)。さまざまなSRは、
細胞内骨格、筋細胞膜ならびにDGCのメンバーのための付加的な結合部位として働くこ
とが可能な固有の領域を提供する(Rybakova, I. N., et al., The Journal of Cell Bio
logy 135, 661-672 (1996); Warner, L. E., et al., Human Molecular Genetics 11, 1
095-1105 (2002); Metzinger, L., et al., Human Molecular Genetics 6, 1185-1191 (
1997); Lai, Y., et al., The Journal of Clinical Investigation 119, 624-635, (20
09)を参照)。特に、システインリッチドメインおよび隣接するヒンジ4領域は、β-ジ
ストログリカン結合ドメイン(Dg BD)を形成する(Blake, D. J., et al., Physio
logical Reviews 82, 291-329, (2002); Ishikawa-Sakurai, M., et al., Human Molecu
lar Genetics 13, 693-702, (2004)を参照)一方で、カルボキシ末端ドメインは、付加的
なDGC構成要素のための足場である(Abmayr S, in Molecular Mechanisms of Muscula
r Dystrophies (ed. Winder, S. J.) 14-34 (Landes Biosciences, 2006)を参照)。
【0103】
部分的に機能的なマイクロジストロフィンは、収縮により引き起こされる損傷から筋細
胞膜を保護することおよび力を発揮する能力を増加させることによって横紋筋におけるジ
ストロフィーの病態を改善することができる。これらのパラメーターは、アミノ末端ドメ
インおよびDg BDを介してF-アクチンフィラメントおよびβ-ジストログリカンと
結合することによって達成することができる(Harper, S. Q., et al., Nature Medicine
8, 253-261, (2002); Warner, L. E., et al., Human Molecular Genetics 11, 1095-1
105 (2002); Cox, G. A., et al., Nature Genetics 8, 333-339, (1994); Greenberg,
D. S., et al., Nature Genetics 8, 340-344, (1994); Gardner, K. L., et al., Gen
e Therapy 13, 744-751, (2006); Corrado, K., et al., The Journal of Cell Biology
134, 873-884 (1996);およびRafael, J. A., et al., The Journal of Cell Biology 1
34, 93-102 (1996)を参照)。いずれかの特定の理論に縛られることなく、先の研究は、
これらの2個のドメインが中心のロッドドメインの少なくとも4個のSRによって連結さ
れなければならないが、少なくとも4個のSRを含む小型化ジストロフィンが構築され得
る数々の方法が存在することを示している。SRのいくつかの組み合わせがジストロフィ
ーの病態生理を改善することが示されたが、他の組み合わせは顕著な機能的能力を有する
タンパク質をもたらさなかった(Harper, S. Q., et al., Nature Medicine 8, 253-261,
(2002)およびAbmayr S, in Molecular Mechanisms of Muscular Dystrophies (ed. Wind
er, S. J.) 14-34 (Landes Biosciences, 2006)を参照)。μDysの設計における特定
のSRの選択により、付加的なDGC構成要素を筋細胞膜に戻すことができる。神経型一
酸化窒素合成酵素(nNOS)はシグナル伝達タンパク質であり、これは、筋肉の収縮活
動に応じた血管拡張に関与している可能性があり(Stamler, J. S. and Meissner, G. Ph
ysiological Reviews 81, 209-237 (2001); Brenman, J. E., et al., Cell 82, 743-75
2 (1995); Kobayashi, Y. M., et al., Nature 456, 511-515, (2008);およびTorelli,
S., et al., Neuropathology and Applied Neurobiology 30, 540-545, (2004)を参照)
、SR16および17の存在がnNOSのDGCとの適切な結合に関与している可能性が
ある(28 Lai, Y. et al., The Journal of Clinical Investigation 119, 624-635, (20
09)およびLai, Y., et al., Proceedings of the National Academy of Sciences of the
United States of America 110, 525-530, (2013)を参照)。
【0104】
スペクトリン様リピート20~24ならびにヒンジ4内の配列は、ジストロフィンの微
小管との適切な結合に関与している可能性があり、これは、骨格筋における細胞内構造お
よびトルク産生を維持するために重要な可能性がある(Prins, K. W. et al., The Journ
al of Cell Biology 186, 363-369, (2009)およびBelanto, J. J., et al., Proceedings
of the National Academy of Sciences of the United States of America 111, 5723-5
728, (2014)を参照)。それにもかかわらず、カルボキシ末端ドメインおよび大半のSR
ドメインは、なくても横紋筋の健全な状態を極度に損なうことがないことがわかった(Mc
Cabe, E. R., et al., The Journal of Clinical Investigation 83, 95-99, (1989); C
rawford, G. E., et al., The Journal of Cell Biology 150, 1399-1410 (2000);およ
びDunckley, M. G., et al., FEBS Letters 296, 128-134 (1992)を参照)。
【0105】
今までに試験された最良のマイクロジストロフィンのいくつかは、DMDに関するジス
トロフィーマウスおよびイヌモデルに対して収縮により引き起こされる損傷から筋肉を保
護し、一般にすべてではないが、比筋力発揮能力のいくらかを回復させることができる(
Seto, J. T., et al., Current Gene Therapy 12, 139-151 (2012)およびWang, Z., et a
l., Frontiers in Microbiology 2, 201, (2011)を参照)。SRおよびヒンジのさまざま
な組み合わせをもつその他のマイクロジストロフィンは、ジストロフィー筋では十分に機
能していない場合もあり、機能性の差に対する理由は明らかでない。しかしながら、いず
れかの特定の理論に縛られることなく、これらは、マイクロジストロフィンの弾性、フォ
ールディング、安定性および立体障害なくDGCの小部分を組み立てる能力に対する影響
に関連している可能性もある。
【0106】
本開示は、概してマイクロジストロフィンに関する。マイクロジストロフィンは、機能
するよう制御カセットと連結されてもよい。本開示はまた、筋ジストロフィー、サルコペ
ニア、心不全または悪液質を有する対象を処置する方法に関する。さらに、本開示は、筋
ジストロフィー、サルコペニア、心不全または悪液質を発症するリスクのある対象に予防
的処置を行う方法に関する。筋ジストロフィー、サルコペニア、心不全もしくは悪液質を
有するか、またはそれを発症するリスクのある対象を処置するための方法は、マイクロジ
ストロフィン遺伝子および送達媒体を含む医薬組成物を対象に投与すること含んでもよい
。
【0107】
概して本明細書に記載されているとおりの実施形態は例となるものであることが容易に
理解されるであろう。各種実施形態の以下のさらに詳細な説明は、本開示の範囲を限定す
ることを意図せず、各種実施形態の単なる代表的なものである。さらに、本明細書中で開
示される方法のステップまたは動作の順序は、本開示の範囲から逸脱することなく当業者
によって変更されてもよい。言い換えると、実施形態の適切な操作のためにステップまた
は動作の特定の順序が必要とされない限り、特定のステップまたは動作の順序または使用
は変更されてもよい。
【0108】
別に明確に定義されていない限り、本明細書中で使用される技術用語は、当該技術分野
において理解されるとおりの通常の意味を有する。理解しやすいように例を用いて以下の
用語を明確に定義する。
【0109】
本明細書中で使用される場合、「ペプチド」および「ポリペプチド」は、サブユニット
アミノ酸の配列を指すその最も広い意味で使用されてもよい。本開示のペプチドまたはポ
リペプチドは、L-アミノ酸、D-アミノ酸(インビボにおいてL-アミノ酸に特異的な
プロテアーゼに抵抗性であることがある)またはD-アミノ酸およびL-アミノ酸の組み
合わせを含んでもよい。ペプチドおよびポリペプチドという用語は、同義に使用すること
ができる。本明細書に記載されているペプチドおよびポリペプチドは、化学合成されても
、または組換え発現されてもよい。ペプチドおよびポリペプチドは、所与の目的のために
有用だと考えられる任意のその他の部分と結合されてもよい。そのような結合は、当業者
によって理解されるような共有結合または非共有結合を含んでもよい。
【0110】
本明細書中で開示されるアミノ酸残基は、全般的なポリペプチド構造および/または機
能を保持する、または実質的に保持する保存的置換によって改変されてもよい。本明細書
中で使用される場合、「保存的アミノ酸置換」とは、疎水性アミノ酸(すなわち、Ala
、Cys、Gly、Pro、Met、Val、IleおよびLeu)が、他の疎水性アミ
ノ酸で置換されてもよく、大きな側鎖を有する疎水性アミノ酸(すなわち、Phe、Ty
rおよびTrp)が、大きな側鎖を有する他の疎水性アミノ酸で置換されてもよく、正電
荷側鎖を有するアミノ酸(すなわち、Arg、His、およびLys)が、正電荷側鎖を
有する他のアミノ酸で置換されてもよく、負電荷側鎖を有するアミノ酸(すなわち、As
pおよびGlu)が、負電荷側鎖を有する他のアミノ酸で置換されてもよく、極性無電荷
側鎖を有するアミノ酸(すなわち、Ser、Thr、Asn、およびGln)が、極性無
電荷側鎖を有する他のアミノ酸で置換されてもよいことを示す。
【0111】
対象の処置は、対象(例えば、患者)に有効量を与えること、または予防的処置および
/または治療的処置を与えること含んでもよい。「有効量」は、対象に所望の生理的変化
をもたらすことができる化合物の量である。有効量はまた、研究目的のために投与されて
もよい。
【0112】
「予防的処置」は、処置が疾患または状態をさらに発症するリスクを減少させる、予防
するおよび/または低減するため、あるいは疾患または状態を発症するリスクを減少させ
る、予防するおよび/または低減するために施されるような、疾患もしくは状態の徴候も
しくは症状を示さない対象または疾患もしくは状態の初期の徴候もしくは症状のみを示す
対象に施される処置を含む。したがって、予防的処置は、疾患または状態に対する予防処
置として機能してもよい。
【0113】
「治療的処置」は、疾患または状態の症状または徴候を示す対象に施される処置を含み
、治療的処置は、疾患または状態の症状または徴候を減少させるか、あるいは除去するた
めに対象に施される。
【0114】
「治療有効量」は、予防的処置および/または治療的処置をもたらす量を含む。治療有
効量はまた、疾患または状態を完全に予防するか、または治す必要はないが、発症の遅延
あるいは疾患または状態の少なくとも1つの症状の緩和または改善などの部分的な利益を
もたらしてもよい。
【0115】
投与に関して、有効量および治療有効量(本明細書において用量とも称される)は、イ
ンビトロアッセイおよび/または動物モデル試験の結果に基づいてまず推定することがで
きる。例えば、細胞培養において求められたIC50を含む血中濃度範囲を達成するため
の用量が動物モデルに関して配合されてもよい。そのような情報は、目的とする対象にお
いて有用な用量をさらに正確に決定するために使用することができる。
【0116】
特定の対象に投与される実際の用量は、医師、獣医師または研究者が以下に限定される
ものではないが、体重、状態の重症度、病気の種類、以前もしくは併用の治療的介入、対
象の特発性疾患および/または投与経路を含む身体的および生理的要因などのパラメータ
ーを考慮して決定することができる。
【0117】
用量は、1×108ベクターゲノム/kg(vg/kg)から1×1015vg/kg
、1×109vg/kgから1×1014vg/kg、1×1010vg/kgから1×
1013vg/kg、または1×1011vg/kgから1×1012vg/kgまで変
動してもよい。その他の非限定例において、用量は、約1×108vg/kg、約1×1
09vg/kg、約1×1010vg/kg、約1×1011vg/kg、約1×101
2vg/kg、約1×1013vg/kg、約1×1014vg/kgまたは約1×10
15vg/kgを含んでもよい。治療有効量は、処置計画の過程(すなわち、日、週、月
など)において単回または複数用量を投与することによって達成されてもよい。
【0118】
本明細書中で開示の化合物の薬学的に許容される塩、互変異性体および異性体も使用さ
れてもよい。例となる塩としては、これらに限定されるものではないが、硫酸塩、クエン
酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、
酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、
オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、重酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク
酸塩、マレイン酸塩、ベシル酸塩、ゲンチシネート(gentisinate)、フマル酸塩、グル
コン酸塩、グルカロネート(glucaronate)、糖酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン
酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエン
スルホン酸塩、およびパモ酸塩(すなわち、1,1’-メチレン-ビス-(2-ヒドロキ
シ-3-ナフトアート))を挙げることができる。
【0119】
本明細書に記載されている製剤は、以下に限定されないが、注射、注入、灌流、吸入、
洗浄、および/または摂取によって投与することができる。投与の経路としては、これら
に限定されるものではないが、静脈内、皮内、動脈内、腹腔内、病巣内、頭蓋内、関節腔
内、前立腺内、胸膜内、気管内、鼻腔内、硝子体内、腟内、直腸内、局所、腫瘍内、筋肉
内、小胞内、心膜内、臍帯内、眼内、粘膜、経口、皮下および/または結膜下を挙げるこ
とができる。その他の非限定例において、投与は、筋肉内注射、血管内注射、腹腔内注射
または筋系へのベクターの送達に適したその他の任意の方法によって行うことができる。
【0120】
一部の実施形態において、注射用製剤は、Hanks液、リンゲル液、および/または
生理的食塩水を含むが、それらに限定されない緩衝液中の水溶液として生成されてもよい
。溶液は、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤などの製剤に関連する薬剤を含んでも
よい。あるいは、製剤は、使用前に適した媒体制御(vehicle control)(例えば、滅菌
パイロジェンフリー水)で構成するための凍結乾燥および/または粉末形態であってもよ
い。
【0121】
本明細書中で開示されるあらゆる製剤は、研究、予防的処置および/または治療的処置
かにかかわらず、投与の利益より勝る可能性のある著しく有害な反応、アレルギー反応ま
たはその他の都合の悪い反応をもたらさないものを含むその他の薬学的に許容される任意
の担体(複数可)を有利に含んでもよい。例となる薬学的に許容される担体および製剤は
、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th Ed., Mack Printing Company, 1990に
開示されており、それらに関するその教示が参照により本明細書に組み込まれる。さらに
、製剤は、生物学的基準および品質管理の米国FDAの部門および/またはその他の関連
した米国および外国の規制当局によって要求される無菌性、発熱性、一般的な安全性およ
び純度基準を満たすよう調製することができる。
【0122】
例となる一般に使用される薬学的に許容される担体は、これらに限定されるものではな
いが、増量剤または充填剤、溶媒または共溶媒、分散媒、コーティング、界面活性剤、酸
化防止剤(例えば、アスコルビン酸、メチオニン、およびビタミンE)、保存料、等張化
剤、吸収遅延剤、塩、安定剤、緩衝剤、キレート剤(例えば、EDTA)、ゲル、結合剤
、崩壊剤および/または滑沢剤を含んでもよい。
【0123】
例となる緩衝剤は、これらに限定されるものではないが、クエン酸緩衝剤、コハク酸緩
衝剤、酒石酸緩衝剤、フマル酸緩衝剤、グルコン酸緩衝剤、シュウ酸緩衝剤、乳酸緩衝剤
、酢酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、ヒスチジン緩衝剤、および/またはトリメチルアミン塩を
含んでもよい。
【0124】
例となる保存料は、これらに限定されるものではないが、フェノール、ベンジルアルコ
ール、メタクレゾール、メチルパラベン、プロピルパラベン、オクタデシルジメチルベン
ジルアンモニウムクロリド、ハロゲン化ベンザルコニウム、ヘキサメトニウムクロリド、
アルキルパラベン(メチルもしくはプロピルパラベンなど)、カテコール、レゾルシノー
ル、シクロヘキサノール、および/または3-ペンタノールを含んでもよい。
【0125】
例となる等張化剤は、以下に限定されるものではないが、三価以上の糖アルコール(例
えば、グリセリン、エリトリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、およ
び/またはマンニトール)を含む多価糖アルコールを含んでもよい。
【0126】
例となる安定剤は、これらに限定されるものではないが、有機糖、多価糖アルコール、
ポリエチレングリコール、硫黄含有還元剤、アミノ酸、低分子量ポリペプチド、タンパク
質、免疫グロブリン、親水性ポリマー、および/またはポリサッカライドを含んでもよい
。
【0127】
製剤はまた、デポ剤であってもよい。一部の実施形態において、そのような長時間作用
性製剤は、以下に限定されないが、植込み(例えば、皮下もしくは筋肉内)または筋肉内
注射によって投与されてもよい。したがって、例えば、化合物は、適したポリマー材料お
よび/もしくは疎水性材料(例えば、許容できる油中のエマルジョンとして)またはイオ
ン交換樹脂とともに、あるいはやや可溶性の誘導体として(例えば、やや可溶性の塩とし
て)製剤化されてもよい。
【0128】
さらに、さまざまな実施形態において、化合物は、少なくとも1つの化合物を含む固体
ポリマーの半透性マトリックスなどの持続放出システムを使用して送達することができる
。さまざまな持続放出材料が確立され、当業者によく知られている。持続放出カプセルは
、その化学的性質に応じて、投与後、数週間から最大100日を超えて化合物を放出する
ことができる。
【0129】
遺伝子治療方法は、特定のタンパク質を患者または対象に(例えば、持続性レベルで)
送達するために使用することができる。これらの方法は、技術者が目的とする遺伝子をコ
ードするDNAを直接患者もしくは対象(インビボ遺伝子治療)または患者、対象もしく
はドナーから単離された細胞(エクスビボ遺伝子治療)に導入することを可能にする。導
入されたDNAは、その後、患者もしくは対象自身の細胞または移植細胞に所望のタンパ
ク質産物を産生するよう指示する。したがって、遺伝子送達は、毎日の注射の必要性を回
避することができる。遺伝子治療はまた、治療のために技術者が特定の臓器または細胞標
的(例えば、筋肉、肝臓、血液細胞、脳細胞など)を選択することを可能にする。
【0130】
DNAは、対象の細胞にいくつかの方法で導入することができる。リン酸カルシウム沈
殿およびリポソームによるトランスフェクションなどの化学的方法、ならびにエレクトロ
ポレーションなどの物理的方法含むトランスフェクション方法がある。一般に、トランス
フェクション方法は、インビボ遺伝子送達に適していない。組換えウイルスを使用する方
法もある。現在のウイルスによる遺伝子送達方法としては、レトロウイルス、アデノウイ
ルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルスおよびアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクタ
ーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0131】
遺伝子送達に使用されてきたウイルスシステムの1つは、アデノ随伴ウイルス(AAV
)である。AAVは、デペンドパルボウイルス(Dependoparvovirus)属に属するパルボ
ウイルスである。AAVは、他のウイルスには見られないいくつかの魅力的な特徴を有す
る。第1に、AAVは、非分裂細胞を含む広い範囲の宿主細胞に感染することができる。
第2に、AAVは、異なる種由来の細胞に感染することができる。第3に、AAVは、あ
らゆるヒトまたは動物疾患と関連しておらず、組込み時に宿主細胞の生物学的特性を変え
ないようである。実際に、ヒト母集団の80~85%がこのウイルスに曝露されていると
推定される。最後に、AAVは、広い範囲の物理的および化学的条件において安定であり
、これは、製造、保管および輸送要件に役立つ。
【0132】
AAVゲノムは、4681のヌクレオチドを含む直線的な一本鎖DNA分子である。A
AVゲノムは、一般に両末端に末端逆位配列(ITR)が隣接する内側の非反復ゲノムを
含む。ITRは、およそ145塩基対(bp)の長さである。ITRは、DNA複製の開
始点としておよびウイルスゲノムのためのパッケージングシグナルとしてなど複数の機能
を有する。
【0133】
ゲノムの内側の非反復部分は、AAV複製(rep)遺伝子およびカプシド(cap)
遺伝子として知られる2個の大きなオープンリーディングフレームを含む。rep遺伝子
およびcap遺伝子は、ウイルスがウイルスゲノムを複製し、ビリオンにパッケージング
するのを可能にするウイルスタンパク質をコードする。特に、それらの見かけの分子量に
従って名づけられたRep78、Rep68、Rep52およびRep40の少なくとも
4つのウイルスタンパク質のファミリーがAAVのrep領域から発現される。AAVの
cap領域は、少なくとも3つタンパク質、VP1、VP2およびVP3をコードする。
【0134】
AAVは、ヘルパー依存性ウイルスであり、すなわち、AAVは、AAVビリオンを形
成するためにヘルパーウイルス(例えば、アデノウイルス、ヘルペスウイルスまたはワク
チニア)の共感染が必要である。ヘルパーウイルスの共感染がないと、AAVは、ウイル
スゲノムが宿主細胞の染色体に挿入されるが、感染性ビリオンは産生されない潜伏状態を
確立する。後のヘルパーウイルスの感染が組み込まれたゲノムを「レスキュー」し、それ
により、AVVが、そのゲノムを複製し、感染性AAVビリオンにパッケージングするの
を可能にする。AAVは異なる種由来の細胞に感染することができるが、ヘルパーウイル
スは宿主細胞と同じ種のものでなければならない。したがって、例えば、ヒトAAVは、
イヌアデノウイルスに共感染したイヌ細胞において複製することになる。
【0135】
「遺伝子導入」または「遺伝子送達」は、外来DNAを宿主細胞に挿入するための方法
またはシステムを含む。遺伝子導入は、組み込まれていない導入DNAの一過性の発現、
染色体外複製、および導入レプリコン(例えば、エピゾーム)の発現または宿主細胞のゲ
ノムDNAへの導入遺伝物質の組込みをもたらす。
【0136】
「ベクター」は、以下に限定されるものではないが、プラスミド、ファージ、トランス
ポゾン、コスミド、染色体、人工染色体、ウイルス、ビリオンなどの任意の遺伝エレメン
トを含み、これは、適切な制御エレメントと結合されると複製することができ、細胞間で
遺伝子配列を移すことができる。したがって、この用語は、クローニング媒体および発現
媒体ならびにウイルスベクターを含む。
【0137】
「AAVベクター」は、以下に限定されないが、AAV1、AAV2、AAV3、AA
V4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、およびAAV9を含むアデノ随伴ウイ
ルス血清型由来のベクターを含む。AAVベクターは、全体または一部が除去された1つ
または複数のAAV野生型遺伝子、例えば、rep遺伝子および/またはcap遺伝子を
有してもよいが、機能的な隣接するITR配列を保持する。機能的なITR配列は、レス
キュー、複製およびAAVビリオンのパッケージングのために必須である。したがって、
AAVベクターは、本明細書においてはウイルスの複製およびパッケージング(例えば、
機能的なITR)のためにシス位置に必要とされる少なくともそれらの配列を含むと定義
される。ITRは、野生型ヌクレオチド配列である必要はなく、配列が機能的レスキュー
、複製およびパッケージングをもたらす限り、例えば、ヌクレオチドの挿入、欠失または
置換によって改変されてもよい。
【0138】
「組換えAAVベクター」または「rAAVベクター」は、AAV ITRが両側に隣
接した目的とする異種のヌクレオチド配列を被包するAAVタンパク質殻から構成される
感染性で複製に欠陥のあるウイルスを含む。rAAVベクターは、AAVベクター、AA
Vヘルパー機能および付属の機能を含む適切な宿主細胞において生成される。この手法で
は、宿主細胞が、続く遺伝子送達のためにAAVベクター(目的とする組換えヌクレオチ
ド配列を含む)を感染性の組換えビリオン粒子にパッケージングするために必要とされる
AAVポリペプチドをコードすることができるようにされる。
【0139】
本開示の第1の態様は、タンパク質をコードするマイクロジストロフィン遺伝子を含む
ヌクレオチド配列に関する。ヌクレオチド配列はまた、制御カセットも含んでよい。さら
に、ヌクレオチド配列は、単離および/または精製されてもよい。
【0140】
一部の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされるタンパ
ク質は、アミノ末端アクチン結合ドメイン、ジストログリカン結合ドメイン、および/ま
たはスペクトリン様リピートドメインを含んでもよい。スペクトリン様リピートドメイン
は、少なくとも4個のスペクトリン様リピートまたは少なくとも4個のスペクトリン様リ
ピートの一部を含んでもよい。少なくとも4個のスペクトリン様リピートのうちの2個は
、神経型一酸化窒素合成酵素結合ドメインを含んでもよい。言い換えれば、少なくとも4
個のスペクトリン様リピートは、スペクトリン様リピート16および17またはそれらの
一部を含んでもよい。一部の実施形態において、少なくとも4個のスペクトリン様リピー
トは、スペクトリン様リピート1および24またはそれらの一部を含んでもよい。代替的
実施形態において、少なくとも4個のスペクトリン様リピートは、その他の適したスペク
トリン様リピートまたはそれらの一部(例えば、スペクトリン様リピート2、3、4、5
、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、18、19、20、21、2
2、および/または23)を含んでもよい。
【0141】
特定の実施形態において、スペクトリン様リピートドメインは、4個、5個、6個、7
個、8個以上のスペクトリン様リピートまたはそれらの一部を含んでもよい。特定の他の
実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされるタンパク質は、
5個のスペクトリン様リピートから8個のスペクトリン様リピートの間のスペクトリン様
リピート(例えば、5個、6個、7個または8個スペクトリン様リピート)を含んでもよ
い。さらに特定の他の実施形態において、スペクトリン様リピートドメインは、別の適し
た数のスペクトリン様リピートまたはそれらの一部を含んでもよい。
【0142】
一部の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされるタンパ
ク質は、ヒンジドメインまたはその一部をさらに含んでもよい。例えば、マイクロジスト
ロフィン遺伝子によってコードされるタンパク質は、ヒンジ1ドメイン、ヒンジ2ドメイ
ン、ヒンジ3ドメイン、ヒンジ4ドメインおよび/またはヒンジ様ドメインの少なくとも
1つから選択されるヒンジドメインの少なくとも一部を含んでもよい(スペクトリン様リ
ピート15(配列番号20)から下流の配列およびスペクトリン様リピート23(配列番
号21)内の配列によってコードされるヒンジ様ドメインなど)。
【0143】
さまざまな実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号16の核酸
配列の一部を含んでもよい。さまざまな他の実施形態において、マイクロジストロフィン
遺伝子は、配列番号16の核酸配列と少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも
40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、
少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくと
も80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%
、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なく
とも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93
%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少な
くとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有してもよい。さらにさまざまな
他の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号16の核酸配列と1
00%の配列同一性を有してもよい。
【0144】
一部の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされるタンパ
ク質は、配列番号4のアミノ酸配列の一部を含んでもよい。一部の他の実施形態において
、マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされるタンパク質は、配列番号4のアミ
ノ酸配列と少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%
、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なく
とも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81
%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少な
くとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも9
0%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少
なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少な
くとも99%の配列同一性を有してもよい。さらにいくつかの他の実施形態において、マ
イクロジストロフィン遺伝子によってコードされるタンパク質は、配列番号4のアミノ酸
配列と100%の配列同一性を有してもよい。
【0145】
特定の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号18の核酸配列
の一部を含んでもよい。特定の他の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は
、配列番号18の核酸配列と少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、
少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくと
も76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%
、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なく
とも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89
%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少な
くとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも9
8%、または少なくとも99%の配列同一性を有してもよい。さらにさまざまな他の実施
形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号18の核酸配列と100%の
配列同一性を有してもよい。
【0146】
さまざまな実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされるタ
ンパク質は、配列番号5のアミノ酸配列の一部を含んでもよい。さまざまな他の実施形態
において、マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされるタンパク質は、配列番号
5のアミノ酸配列と少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくと
も50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも76%
、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なく
とも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85
%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少な
くとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも9
4%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、ま
たは少なくとも99%の配列同一性を有してもよい。さらにさまざまな他の実施形態にお
いて、マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされるタンパク質は、配列番号5の
アミノ酸配列と100%の配列同一性を有してもよい。
【0147】
さらに、マイクロジストロフィン遺伝子は、1つまたは複数の配列番号11~18の核
酸配列の一部を含んでもよい。特定の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子
によってコードされるタンパク質は、1つまたは複数の配列番号3~10のアミノ酸配列
の一部を含んでもよい。特定の他の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子に
よってコードされるタンパク質は、
図7のタンパク質構造図に示される1つまたは複数の
タンパク質の一部を含んでもよい(例えば、μDysH3およびμDys1~μDys1
6)。
【0148】
一部の実施形態において、制御カセットは、CK8プロモーター、心筋トロポニンT(
cTnT)プロモーターおよび/または別の適した制御カセットの少なくとも1つから選
択されてもよい。特定の実施形態において、制御カセットは、CK8プロモーターであっ
てもよく、CK8プロモーターは、配列番号19の核酸配列の一部を含んでもよい。特定
の他の実施形態において、制御カセットは、CK8プロモーターであってもよく、CK8
プロモーターは、配列番号19の核酸配列と少なくとも20%、少なくとも30%、少な
くとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも7
5%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少
なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも
84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、
少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくと
も93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%
、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有してもよい。さらに特定
の他の実施形態において、制御カセットは、CK8プロモーターであってもよく、CK8
プロモーターは、配列番号19の核酸配列と100%の配列同一性を有してもよい。
【0149】
さまざまな実施形態において、制御カセットは、cTnTプロモーターであってもよく
、cTnTプロモーターは、配列番号1の核酸配列の一部を含んでもよい。さまざまな他
の実施形態において、制御カセットは、cTnTプロモーターであってもよく、cTnT
プロモーターは、配列番号1の核酸配列と少なくとも20%、少なくとも30%、少なく
とも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75
%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少な
くとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも8
4%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少
なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも
93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、
少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有してもよい。さらにさまざ
まな他の実施形態において、制御カセットは、cTnTプロモーターであってもよく、c
TnTプロモーターは、配列番号1の核酸配列と100%の配列同一性を有してもよい。
【0150】
本開示の別の態様は、上記のとおりのヌクレオチド配列を含む医薬組成物に関する。一
部の実施形態において、本医薬組成物は、送達媒体をさらに含んでもよい。例えば、本医
薬組成物は、制御カセットおよびタンパク質をコードするマイクロジストロフィン遺伝子
を含むヌクレオチド配列を含んでもよく、医薬組成物は、送達媒体をさらに含んでもよい
。本医薬組成物のヌクレオチド配列は、単離および精製されたヌクレオチド配列であって
もよい。
【0151】
さまざまな実施形態において、送達媒体は、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターま
たは組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターを含んでもよい。AAVベクターは
、血清型6のAAV(AAV6)であってもよい。同様に、rAAVベクターは、血清型
6のrAAV(rAAV6)であってもよい。AAVベクターは、血清型8のAAV(A
AV8)であってもよい。同様に、rAAVベクターは、血清型8のrAAV(rAAV
8)であってもよい。AAVベクターは、血清型9のAAV(AAV9)であってもよい
。同様に、rAAVベクターは、血清型9のrAAV(rAAV9)であってもよい。r
AAVベクターは、AAV血清型6由来のカプシドタンパク質でシュードタイピングした
AAV2ゲノム末端逆位配列(ITR)(rAAV2/6)から構成されてもよい。AA
VまたはrAAVのその他の適した血清型も、本開示の範囲内にある。
【0152】
一部の実施形態において、上記のとおり、送達媒体は、マイクロジストロフィン遺伝子
を発現させてもよく、またはそれを発現させるよう構成されてもよい。さまざまな実施形
態において、マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号16の核酸配列の一部を含んで
もよい。さまざまな他の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号
16の核酸配列と少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも
50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも76%、
少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくと
も81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%
、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なく
とも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94
%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、また
は少なくとも99%の配列同一性を有してもよい。さらにさまざまな他の実施形態におい
て、マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号16の核酸配列と100%の配列同一性
を有してもよい。
【0153】
一部の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされるタンパ
ク質は、配列番号4のアミノ酸配列の一部を含んでもよい。一部の他の実施形態において
、マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされるタンパク質は、配列番号4のアミ
ノ酸配列と少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%
、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なく
とも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81
%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少な
くとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも9
0%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少
なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少な
くとも99%の配列同一性を有してもよい。さらにいくつかの他の実施形態において、マ
イクロジストロフィン遺伝子によってコードされるタンパク質は、配列番号4のアミノ酸
配列と100%の配列同一性を有してもよい。
【0154】
特定の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号18の核酸配列
の一部を含んでもよい。特定の他の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は
、配列番号18の核酸配列と少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、
少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくと
も76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%
、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なく
とも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89
%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少な
くとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも9
8%、または少なくとも99%の配列同一性を有してもよい。さらに特定の他の実施形態
において、マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号18の核酸配列と100%の配列
同一性を有してもよい。
【0155】
さまざまな実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされるタ
ンパク質は、配列番号5のアミノ酸配列の一部を含んでもよい。さまざまな他の実施形態
において、マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされるタンパク質は、配列番号
5のアミノ酸配列と少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくと
も50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも76%
、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なく
とも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85
%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少な
くとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも9
4%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、ま
たは少なくとも99%の配列同一性を有してもよい。さらにさまざまな他の実施形態にお
いて、マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされるタンパク質は、配列番号5の
アミノ酸配列と100%の配列同一性を有してもよい。
【0156】
また、上記のとおり、制御カセットは、CK8プロモーター、心筋トロポニンT(cT
nT)プロモーターおよび/または別の適した制御カセットの少なくとも1つから選択さ
れてもよい。特定の実施形態において、制御カセットは、CK8プロモーターであっても
よく、CK8プロモーターは、配列番号19の核酸配列の一部を含んでもよい。特定の他
の実施形態において、制御カセットは、CK8プロモーターであってもよく、CK8プロ
モーターは、配列番号19の核酸配列と少なくとも20%、少なくとも30%、少なくと
も40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%
、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なく
とも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84
%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少な
くとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも9
3%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少
なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有してもよい。さらに特定の他
の実施形態において、制御カセットは、CK8プロモーターであってもよく、CK8プロ
モーターは、配列番号19の核酸配列と100%の配列同一性を有してもよい。
【0157】
さまざまな実施形態において、制御カセットは、cTnTプロモーターであってもよく
、cTnTプロモーターは、配列番号1の核酸配列の一部を含んでもよい。さまざまな他
の実施形態において、制御カセットは、cTnTプロモーターであってもよく、cTnT
プロモーターは、配列番号1の核酸配列と少なくとも少なくとも20%、少なくとも30
%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少な
くとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも7
9%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少
なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも
88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、
少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくと
も97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有してもよい。さ
らにさまざまな他の実施形態において、制御カセットは、cTnTプロモーターであって
もよく、cTnTプロモーターは、配列番号1の核酸配列と100%の配列同一性を有し
てもよい。
【0158】
一部の実施形態において、本医薬組成物は、筋ジストロフィーの病理学的影響または症
状を低減するよう構成されてもよい。筋ジストロフィーは、筋強直性筋ジストロフィー、
デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー、肢帯型筋ジストロフィ
ー、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー、先天性筋ジストロフィー、眼咽頭筋型筋ジストロ
フィー、遠位型筋ジストロフィー、エメリードレイフス型筋ジストロフィー、および/ま
たは別の適した筋ジストロフィーのうちの少なくとも1つから選択されてもよい。一部の
他の実施形態において、本医薬組成物は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーおよび/また
はベッカー型筋ジストロフィーのうちの少なくとも1つから選択される筋ジストロフィー
の病理学的影響または症状を低減するよう構成されてもよい。特定の実施形態において、
本医薬組成物は、サルコペニア、心臓疾患および/または悪液質のうちの少なくとも1つ
の病理学的影響または症状を低減するよう構成されてもよい。
【0159】
本開示の別の態様は、筋ジストロフィー、サルコペニア、心臓疾患および/または悪液
質を有する対象を処置するための方法に関する。本方法は、対象に制御カセットと連結さ
れたマイクロジストロフィン遺伝子を含む医薬組成物を投与することを含んでもよい。本
方法は、対象に治療有効量の医薬組成物を投与することを含んでもよい。さらに、マイク
ロジストロフィン遺伝子は、機能可能に制御カセットと連結されてもよい。
【0160】
一部の実施形態において、本方法は、対象に医薬組成物を投与することを含んでもよく
、医薬組成物は、AAVベクター、rAAVベクターおよび/または別の適した送達媒体
をさらに含む。送達媒体は、対象においてマイクロジストロフィン遺伝子を発現させても
よく、またはそれを発現させるよう構成されてもよい。
【0161】
上記のとおり、さまざまな実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は、配列
番号16の核酸配列の一部を含んでもよい。さまざまな他の実施形態において、マイクロ
ジストロフィン遺伝子は、配列番号16の核酸配列と少なくとも20%、少なくとも30
%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少な
くとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも7
9%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少
なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも
88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、
少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくと
も97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有してもよい。さ
らにさまざまな他の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号16
の核酸配列と100%の配列同一性を有してもよい。
【0162】
一部の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされるタンパ
ク質は、配列番号4のアミノ酸配列の一部を含んでもよい。一部の他の実施形態において
、マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされるタンパク質は、配列番号4のアミ
ノ酸配列と少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%
、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なく
とも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81
%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少な
くとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも9
0%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少
なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少な
くとも99%の配列同一性を有してもよい。さらにいくつかの他の実施形態において、マ
イクロジストロフィン遺伝子によってコードされるタンパク質は、配列番号4のアミノ酸
配列と100%の配列同一性を有してもよい。
【0163】
特定の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号18の核酸配列
の一部を含んでもよい。特定の他の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は
、配列番号18の核酸配列と少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、
少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくと
も76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%
、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なく
とも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89
%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少な
くとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも9
8%、または少なくとも99%の配列同一性を有してもよい。さらに特定の他の実施形態
において、マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号18の核酸配列と100%の配列
同一性を有してもよい。
【0164】
さまざまな実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされるタ
ンパク質は、配列番号5のアミノ酸配列の一部を含んでもよい。さまざまな他の実施形態
において、マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされるタンパク質は、配列番号
5のアミノ酸配列と少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくと
も50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも76%
、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なく
とも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85
%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少な
くとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも9
4%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、ま
たは少なくとも99%の配列同一性を有してもよい。さらにさまざまな他の実施形態にお
いて、マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされるタンパク質は、配列番号5の
アミノ酸配列と100%の配列同一性を有してもよい。
【0165】
一部の実施形態において、制御カセットは、横紋筋細胞におけるマイクロジストロフィ
ン遺伝子の発現のレベルが、非筋肉細胞におけるマイクロジストロフィン遺伝子の発現の
レベルよりも少なくとも100倍高くなるようにマイクロジストロフィン遺伝子を発現さ
せてもよく、または発現させるよう構成されてもよい。例えば、マイクロジストロフィン
遺伝子の発現のレベルは、対象の肺細胞においてよりも対象の横紋筋細胞において少なく
とも100倍高くてもよい。一部の他の実施形態において、制御カセットは、横紋筋細胞
におけるマイクロジストロフィン遺伝子の発現のレベルが、非筋肉細胞におけるマイクロ
ジストロフィン遺伝子の発現のレベルよりも少なくとも50倍高いレベルから150倍高
いレベルの間、少なくとも75倍高いレベルから125倍高いレベルの間または少なくと
も90倍高いレベルから110倍高いレベルの間であるようにマイクロジストロフィン遺
伝子を発現させてもよく、または発現させるよう構成されてもよい。
【0166】
上記のとおり、制御カセットは、CK8プロモーター、心筋トロポニンT(cTnT)
プロモーターおよび/または別の適した制御カセットの少なくとも1つから選択されても
よい。特定の実施形態において、制御カセットは、CK8プロモーターであってもよく、
CK8プロモーターは、配列番号19の核酸配列の一部を含んでもよい。特定の他の実施
形態において、制御カセットは、CK8プロモーターであってもよく、CK8プロモータ
ーは、配列番号19の核酸配列と少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40
%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少な
くとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも8
0%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少
なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも
89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、
少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくと
も98%、または少なくとも99%の配列同一性を有してもよい。さらに特定の他の実施
形態において、制御カセットは、CK8プロモーターであってもよく、CK8プロモータ
ーは、配列番号19の核酸配列と100%の配列同一性を有してもよい。
【0167】
さまざまな実施形態において、制御カセットは、cTnTプロモーターであってもよく
、cTnTプロモーターは、配列番号1の核酸配列の一部を含んでもよい。さまざまな他
の実施形態において、制御カセットは、cTnTプロモーターであってもよく、cTnT
プロモーターは、配列番号1の核酸配列と少なくとも20%、少なくとも30%、少なく
とも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75
%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少な
くとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも8
4%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少
なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも
93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、
少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有してもよい。さらにさまざ
まな他の実施形態において、制御カセットは、cTnTプロモーターであってもよく、c
TnTプロモーターは、配列番号1の核酸配列と100%の配列同一性を有してもよい。
【0168】
一部の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は、1つまたは複数の筋肉の
収縮性が向上するか、または増加するように対象の1つまたは複数の筋肉においてマイク
ロジストロフィンタンパク質を発現してもよく、または発現するよう構成されてもよい。
特定の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は、1つまたは複数の骨格筋の
うちの少なくとも1つの比筋力発揮能力が正常な比筋力発揮能力の少なくとも10%、少
なくとも20%、少なくとも30%または少なくとも40%の範囲内まで向上するか、ま
たは増加するように対象の1つまたは複数の骨格筋においてマイクロジストロフィンタン
パク質を発現してもよく、または発現するよう構成されてもよい。特定の他の実施形態に
おいて、マイクロジストロフィン遺伝子は、基準拡張終末期容積の不足が、正常な拡張終
末期容積の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%または少なくとも4
0%の範囲内まで回復するように対象の1つまたは複数の心筋においてマイクロジストロ
フィンタンパク質を発現してもよく、または発現するよう構成されてもよい。さまざまな
実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は、ジストロフィン糖タンパク質複合
体への神経型一酸化窒素合成酵素の局在化が対象において向上するか、または増加するよ
うにマイクロジストロフィンタンパク質を発現してもよく、または発現するよう構成され
てもよい。
【0169】
一部の実施形態において、上記のとおり、本方法は、筋強直性筋ジストロフィー、デュ
シェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー、肢帯型筋ジストロフィー、
顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー、先天性筋ジストロフィー、眼咽頭筋型筋ジストロフィ
ー、遠位型筋ジストロフィー、エメリードレイフス型筋ジストロフィー、および/または
別の適した筋ジストロフィーのうちの少なくとも1つを有する対象を処置することを含ん
でもよい。一部の他の実施形態において、本方法は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーお
よび/またはベッカー型筋ジストロフィーのうちの少なくとも1つを有する対象を処置す
ることを含んでもよい。
【0170】
特定の実施形態において、本医薬組成物は、筋ジストロフィー、サルコペニア、心臓疾
患および/または悪液質の病理学的影響または症状を低減してもよく、または低減するよ
う構成されてもよい。筋ジストロフィーの病理学的影響または症状は、筋痛、筋力低下、
筋肉疲労、筋萎縮、線維症、炎症、骨格筋の平均筋線維直径の増加、心筋症、6分間歩行
試験時間の減少、歩行の減少、心ポンプ失調、および/または1つまたは複数のその他の
適した病理学的影響または症状のうちの少なくとも1つから選択されてもよい。サルコペ
ニアの病理学的影響または症状は、筋消耗および/または筋力低下のうちの少なくとも1
つから選択されてもよい。心臓疾患の病理学的影響または症状は、心筋症、血行動態の低
下、および/または不整脈のうちの少なくとも1つから選択されてもよい。悪液質の病理
学的影響または症状は、筋消耗および/または筋力低下のうちの少なくとも1つから選択
されてもよい。
【0171】
筋ジストロフィーを有する対象を処置する方法は、筋ジストロフィーを有する対象を特
定することをさらに含んでもよい。同様に、サルコペニア、心臓疾患および/または悪液
質を有する対象を処置する方法は、それぞれサルコペニア、心臓疾患および/または悪液
質を有する対象を特定することをさらに含んでもよい。一部の実施形態において、対象は
、哺乳動物であってもよい。特定の実施形態において、対象は、ヒトであってもよい。
【0172】
本開示の別の態様は、筋ジストロフィー、サルコペニア、心臓疾患および/または悪液
質を発症するリスクのある対象に予防的処置を行うための方法に関する。本方法は、筋ジ
ストロフィー、サルコペニア、心臓疾患および/または悪液質を有する対象を処置する方
法に関して上記のとおりの医薬組成物を対象に投与すること含んでもよい。
【0173】
一部の実施形態において、本方法は、筋強直性筋ジストロフィー、デュシェンヌ型筋ジ
ストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー、肢帯型筋ジストロフィー、顔面肩甲上腕型
筋ジストロフィー、先天性筋ジストロフィー、眼咽頭筋型筋ジストロフィー、遠位型筋ジ
ストロフィー、エメリードレイフス型筋ジストロフィー、および/または別の適した筋ジ
ストロフィーのうちの少なくとも1つを発症するリスクのある対象を処置することを含ん
でもよい。一部の他の実施形態において、本方法は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーお
よび/またはベッカー型筋ジストロフィーのうちの少なくとも1つを発症するリスクのあ
る対象を処置することを含んでもよい。
【0174】
特定の実施形態において、本医薬組成物は、筋ジストロフィー、サルコペニア、心臓疾
患および/または悪液質の病理学的影響または症状を発症するリスクを低減してもよく、
または低減するよう構成されてもよい。筋ジストロフィー、サルコペニア、心臓疾患およ
び/または悪液質を発症するリスクのある対象を処置する方法は、それぞれ筋ジストロフ
ィー、サルコペニア、心臓疾患および/または悪液質を発症するリスクのある対象を特定
することをさらに含んでもよい。一部の実施形態において、対象は、哺乳動物であっても
よい。特定の実施形態において、対象は、ヒトであってもよい。
【0175】
本開示の別の態様は、医薬組成物(例えば、マイクロジストロフィン遺伝子)の発現を
向上させる、かつ/または標的とするエンハンサーおよび/またはプロモーターを含む制
御カセットに関する。一部の実施形態において、医薬組成物の発現を向上させる、かつ/
または標的とするためのエンハンサーまたはプロモーターは、遺伝子、ペプチド、ポリペ
プチドおよび/または調節性RNAの少なくとも一部を含んでもよい。医薬組成物の発現
を標的とすることは、対象の特定の細胞タイプ、組織、および/または臓器における医薬
組成物の発現を含んでもよい。例えば、cTnT455(配列番号1)は、心臓特異的な
発現に使用することができる。
【0176】
特定の実施形態において、エンハンサーまたはプロモーターは、ペプチドを含む医薬組
成物を発現させてもよく、発現させるよう構成されてもよい。さまざまな実施形態におい
て、エンハンサーまたはプロモーターは、発生中の筋肉、損傷を受けた筋肉および/また
は病気の筋肉(すなわち、再生している可能性のある筋肉)においてペプチドを発現させ
てもよく、または発現させるよう構成されてもよい。ヒトcTnT455 RC(配列番
号1)は、安定状態の成熟骨格筋において転写活性がなくてもよい。
【0177】
上記のとおり、エンハンサーおよび/またはプロモーターは、機能するよう、すなわち
、医薬組成物の発現を向上させる、かつ/または医薬組成物を標的とするため医薬組成物
と連結されてもよい。さらに、本医薬組成物は、機能するよう1つ以上のエンハンサーお
よび/またはプロモーターと連結されてもよい。一部の実施形態において、本明細書中に
おいて開示される医薬組成物の発現は、心筋を再生する助けとなる場合もある。例えば、
ヒトcTnT455 RC(配列番号1)は、傷ついた心筋および/または再生している
心筋において医薬組成物の一過性の発現を向上させてもよく、またはそれを標的としても
よい。一部の実施形態において、本明細書中で開示される医薬組成物の発現は、心筋およ
び/または心筋細胞の減少を予防する助けとなる場合もある。特定の実施形態において、
本明細書中において開示される医薬組成物の発現は、骨格筋を再生する助けとなる場合も
ある。さまざまな実施形態において、本明細書中で開示される医薬組成物の発現は、骨格
筋の壊死および/または消耗を予防する助けとなる場合もある。
【0178】
本開示の別の態様は、マイクロジストロフィン遺伝子を含むヌクレオチド配列に関し、
マイクロジストロフィン遺伝子は、互いに直接連結された少なくとも2個のスペクトリン
様リピートを含むタンパク質をコードしてもよい。一部の実施形態において、互いに直接
連結された少なくとも2個のスペクトリン様リピートは、スペクトリン様リピート2(S
R2)と直接連結されたスペクトリン様リピート1(SR1)、スペクトリン様リピート
3(SR3)と直接連結されたSR2、スペクトリン様リピート16(SR16)と直接
連結されたSR1、スペクトリン様リピート23(SR23)と直接連結されたスペクト
リン様リピート17(SR17)、スペクトリン様リピート24(SR24)と直接連結
されたSR17、および/またはSR24と直接連結されたSR23のうちの少なくとも
1つから選択されてもよい。マイクロジストロフィン遺伝子はまた、アミノ末端アクチン
結合ドメインおよび/またはβ-ジストログリカン結合ドメインを含むタンパク質をコー
ドしてもよい。
【0179】
本開示の別の態様は、マイクロジストロフィン遺伝子を含むヌクレオチド配列に関し、
マイクロジストロフィン遺伝子は、順番にヒンジ1ドメイン(H1)、SR1、SR16
、SR17、SR24、および/またはヒンジ4ドメイン(H4)を含むタンパク質をコ
ードしてもよい。一部の実施形態において、H1は、SR1と直接連結されてもよい。さ
まざまな実施形態において、SR1は、SR16と直接連結されてもよい。特定の実施形
態において、SR16は、SR17と直接連結されてもよい。一部の実施形態において、
SR17は、SR24と直接連結されてもよい。さまざまな実施形態において、SR24
は、H4と直接連結されてもよい。
【0180】
一部の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされるタンパ
ク質は、順番にSR2およびSR3をさらに含んでもよく、SR2およびSR3は、SR
1とSR16との間に配置されてもよい。さらに、SR1は、SR2と直接連結されても
よく、SR2は、SR3とさらに連結されてもよい。
【0181】
本開示の別の態様は、タンパク質をコードするマイクロジストロフィン遺伝子を含むヌ
クレオチド配列に関し、マイクロジストロフィン遺伝子は、順番にH1、SR1、SR1
6、SR17、SR23、SR24、および/またはH4を含むタンパク質をコードして
もよい。一部の実施形態において、H1は、SR1と直接連結されてもよい、SR1は、
SR16と直接連結されてもよい、SR16は、SR17と直接連結されてもよい、SR
17は、SR23と直接連結されてもよい、SR23は、SR24と直接連結されてもよ
く、かつ/またはSR24は、H4と直接連結されてもよい。
【0182】
本開示の別の態様は、配列番号16の核酸配列を含むマイクロジストロフィン遺伝子と
、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターまたは組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)
ベクターとを含んでもよい医薬組成物に関する。一部の実施形態において、AAVベクタ
ーまたはrAAVベクターの血清型は、血清型6、血清型8、血清型9または別の適した
血清型のうちの少なくとも1つから選択されてもよい。
【0183】
本開示の別の態様は、配列番号4のアミノ酸配列を含んでもよいタンパク質をコードす
るマイクロジストロフィン遺伝子と、AAVベクターまたはrAAVベクターとを含んで
もよい医薬組成物に関する。特定の実施形態において、AAVベクターまたはrAAVベ
クターの血清型は、血清型6、血清型8、血清型9または別の適した血清型のうちの少な
くとも1つから選択されてもよい。
【0184】
本開示の別の態様は、配列番号18の核酸配列を含むマイクロジストロフィン遺伝子と
、AAVベクターまたはrAAVベクターとを含んでもよい医薬組成物に関する。さまざ
まな実施形態において、AAVベクターまたはrAAVベクターの血清型は、血清型6、
血清型8、血清型9または別の適した血清型のうちの少なくとも1つから選択される。
【0185】
本開示の別の態様は、配列番号5のアミノ酸配列を含んでもよいタンパク質をコードす
るマイクロジストロフィン遺伝子と、AAVベクターまたはrAAVベクターとを含んで
もよい医薬組成物に関する。一部の実施形態において、AAVベクターまたはrAAVベ
クターの血清型は、血清型6、血清型8、血清型9または別の適した血清型のうちの少な
くとも1つから選択される。
【0186】
本開示の別の態様は、筋ジストロフィー、サルコペニア、心不全、および/または悪液
質の処置または予防的処置に使用するための医薬組成物に関する。一部の実施形態におい
て、本医薬組成物は、マイクロジストロフィン遺伝子を含んでもよい。特定の実施形態に
おいて、マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号16または配列番号18の核酸配列
と、AAVベクターまたはrAAVベクターとを含んでもよい。さまざまな実施形態にお
いて、AAVベクターまたはrAAVベクターの血清型は、血清型6、血清型8、血清型
9または別の適した血清型のうちの少なくとも1つから選択されてもよい。
【0187】
本開示の別の態様は、筋ジストロフィー、サルコペニア、心不全、および/または悪液
質の処置または予防的処置のための医薬組成物に関する。一部の実施形態において、本医
薬組成物は、マイクロジストロフィン遺伝子を含んでもよい。特定の実施形態において、
マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号16または配列番号18の核酸配列と、AA
VベクターまたはrAAVベクターとを含んでもよい。さまざまな実施形態において、A
AVベクターまたはrAAVベクターの血清型は、血清型6、血清型8、血清型9または
別の適した血清型のうちの少なくとも1つから選択されてもよい。
[実施例]
【0188】
以下の実施例は、開示されている方法および組成物の説明のためのものである。本開示
に照らして、当業者は、過度の実験を行うことなく、開示されている方法および組成物の
これら例および他の例の変形が可能であろうことを認識するであろう。
【実施例0189】
マイクロジストロフィンの開発
改善された性能を有するマイクロジストロフィンを開発するために、コード領域のおよ
そ80%を占めるジストロフィンの中心のロッドドメインのさまざまな構造的変更を評価
した。完全長タンパク質に存在する24のスペクトリン様リピート(SR)のうちの4個
から6個の間のスペクトリン様リピートならびに内部のヒンジドメインのあり、またはな
しの固有の組み合わせを含む新規の構築物を形成した。これらの新規のマイクロジストロ
フィンを、ジストロフィーmdxマウスにrAAVにより送達し、続いて3か月および6
か月後に骨格筋の病態生理学的分析を行うことによって評価した。
【0190】
μDysクローンのいくつかの種類を、ジストロフィン糖タンパク質複合体(DGC)
のより完全な回復を可能にすると同時に機能活性を増加させることに重点を置いて設計し
た。設計したμDysクローンを、mdxマウスの横紋筋において高度に機能的であり得
る予め特徴づけられたΔH2-R23+H3/ΔCTクローン、μDysH3と比較した
(Banks, G. B., et al., PLoS Genetics 6, e1000958, (2010)を参照)。これらの構築
物の設計は、この構築物を発現する筋肉の収縮性を改善し、DGCへの神経型一酸化窒素
合成酵素(nNOS)の局在化を回復させるために少なくとも部分的に中心のロッドドメ
インに焦点を合わせた(Lai, Y., et al., The Journal of Clinical Investigation 119
, 624-635, (2009)およびLai, Y., et al., Proceedings of the National Academy of S
ciences of the United States of America 110, 525-530, (2013)を参照)。機能的能力
および4個、5個または6個のSRを有するより大きな構築物を送達する能力も試験した
。これらのより大きなμDysクローンの安定したパッケージングを可能にするために、
筋肉クレアチンキナーゼ遺伝子から改変された小さな遺伝子制御カセット(RC)を組み
込んだ。このCK8 RCは、筋肉に限定された高い発現を示すことができるが、このC
K8 RCは500bps未満のサイズである(Goncalves, M. A., et al., Molecular
Therapy: The Journal of the American Society of Gene Therapy 19, 1331-1341, (201
1)およびMartari, M., et al., Human Gene Therapy 20, 759-766, (2009)を参照)。