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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088819
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/58 20060101AFI20240626BHJP
   B29C 43/20 20060101ALI20240626BHJP
   B29C 43/32 20060101ALI20240626BHJP
   B29C 70/10 20060101ALI20240626BHJP
   B29C 70/42 20060101ALI20240626BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20240626BHJP
【FI】
B29C43/58
B29C43/20
B29C43/32
B29C70/10
B29C70/42
B29K105:08
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021037498
(22)【出願日】2021-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 卓巳
【テーマコード(参考)】
4F204
4F205
【Fターム(参考)】
4F204AA29
4F204AA36
4F204AD08
4F204AD16
4F204AG03
4F204AR12
4F204FA01
4F204FB01
4F204FB11
4F204FF05
4F204FG02
4F204FG09
4F204FN11
4F204FN15
4F204FN17
4F205AA29
4F205AA36
4F205AD08
4F205AD16
4F205AG03
4F205AR12
4F205HA08
4F205HA14
4F205HA25
4F205HA33
4F205HA34
4F205HA37
4F205HA45
4F205HB01
4F205HC02
4F205HC06
4F205HL15
4F205HM13
(57)【要約】
【課題】連続繊維の繊維配向が特に乱れやすくなる、曲面を含んだ三次元形状の成形型を用いた場合であっても、連続繊維の乱れを抑制し、機械物性を担保できる成形体の製造方法を提供する。
【解決手段】不連続繊維と樹脂M1を含む複合材料Aと、連続繊維と樹脂M2を含む複合材料Bとを積層して圧縮成形し、成形体を製造する方法であって、
複合材料Bの成形型への配置面Xは、曲面を含んだ三次元形状であって、前記連続繊維の束幅方向に向かって曲がっており、
成形体に含まれる連続繊維の最大厚みTmaxと、最小厚みTminの関係が、1≦Tmax/Tmin≦1.5である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不連続繊維と樹脂M1を含む複合材料Aと、連続繊維と樹脂M2を含む複合材料Bとを積層して圧縮成形し、成形体を製造する方法であって、
複合材料Bの成形型への配置面Xは、曲面を含んだ三次元形状であって、前記連続繊維の束幅方向に向かって曲がっており、
成形体に含まれる連続繊維の最大厚みTmaxと、最小厚みTminの関係が、1≦Tmax/Tmin≦1.5である。
【請求項2】
前記配置面Xは、連続繊維の束幅方向に向かって、弧を描いた状態、又は折れた状態で曲がっている、請求項1に記載の成形体の製造方法。
【請求項3】
成形体における複合材料Aと複合材料Bとの層間せん断強度が30MPa以上である、請求項1又は2に記載の成形体の製造方法。
【請求項4】
樹脂M2が半硬化した熱硬化性樹脂であって、樹脂M2の複素粘度η2が8000Pa・s以上30000Pa・s以下である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の成形体の製造方法。
【請求項5】
樹脂M2が半硬化した熱硬化性樹脂であって、硬化度が50%以上である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の成形体の製造方法。
【請求項6】
成形の時に、樹脂M2を完全硬化して成形体を製造する、請求項4又は5に記載の成形体の製造方法。
【請求項7】
複合材料Bは潜在性硬化剤を含み、前記潜在性硬化剤は、イオン反応、加熱溶解、モレキュラーシーブ、マイクロカプセル、又はUV硬化の一群から選ばれる少なくとも1つを利用したものである、請求項4乃至6のいずれか1項に記載の成形体の製造方法。
【請求項8】
樹脂M1、及び樹脂M2が熱可塑性樹脂である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の成形体の製造方法。
【請求項9】
樹脂M1と樹脂M2の複素粘度が、下記の関係を満たす請求項8に記載の成形体の製造方法。
3×η1<η2<30000(Pa・s) かつ η1<500(Pa・s)
ただし、
η1(Pa・s):せん断速度2(1/s)のときの、樹脂M1の複素粘度
η2(Pa・s):せん断速度2(1/s)のときの、樹脂M2の複素粘度
である。
【請求項10】
下記式を満たす、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の成形体の製造方法。
(繊維束の最大幅Wmax-繊維束の最小幅Wmin)/繊維束の平均幅Wave<0.25
【請求項11】
複合材料Bに含まれる連続繊維は、一軸配向した連続繊維であって、複合材料Bの長手方向に配向している、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の成形体の製造方法。
【請求項12】
複合材料Bに含まれる連続繊維は、二軸配向した連続繊維であって、複合材料Bの長手方向、及び長手方向と直交した方向に配向している、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材料Aと複合材料Bとを積層して圧縮成形し、成形体を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、不連続繊維や連続繊維で強化された成形体は、機械物性に優れており、自動車等の構造部材として注目されている。
【0003】
特許文献1では、未硬化の熱硬化性マトリックス樹脂を用いた連続強化繊維プリプレグと熱可塑性樹脂シートを用い、熱可塑性樹脂シート特有の粘度範囲に合わせた金型温度に設定して成形した成形体の製造方法が記載されている。
【0004】
特許文献2では、シートモールディングコンパウド層と連続繊維による強化層との間に繊維が互いに交差する構造を有するバリア層を設けて成形した成形体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-230236号公報
【特許文献2】国際公開第2018/101245号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の連続繊維強化プリプレグは、プリプレグに含まれる熱硬化性樹脂の硬化度が10%以下と低いため、その他の材料(例えば不連続繊維強化複合材料)とともに圧縮成形すると、その他の材料の流動方向にプリプレグに含まれる連続繊維が追従してしまう。この結果、連続繊維が乱れてしまい、成形体となったときに、高い物性を保つことができない。
【0007】
また、特許文献2に記載の複合材料は、シートモールディングコンパウンド層と連続繊維による強化層との間にバリア層を設けているため、成形体を製造するにあたって、本来必要のない層が必要となり、積層の手間が増える。更に、3つの層間での層間せん断強度の確保に問題が生じるし、層間の収縮率の違いによって得られた成形体が反ってしまう課題が生じる。
【0008】
そこで本発明の目的は、連続繊維の繊維配向が特に乱れやすくなる、曲面を含んだ三次元形状の成形型を用いた場合であっても、連続繊維の乱れを抑制し、機械物性を担保できる成形体の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
1.不連続繊維と樹脂M1を含む複合材料Aと、連続繊維と樹脂M2を含む複合材料Bとを積層して圧縮成形し、成形体を製造する方法であって、
複合材料Bの成形型への配置面Xは、曲面を含んだ三次元形状であって、前記連続繊維の束幅方向に向かって曲がっており、
成形体に含まれる連続繊維の最大厚みTmaxと、最小厚みTminの関係が、1≦Tmax/Tmin≦1.5である。
2.前記配置面Xは、連続繊維の束幅方向に向かって、弧を描いた状態、又は折れた状態
で曲がっている、前記1.に記載の成形体の製造方法。
3.成形体における複合材料Aと複合材料Bとの層間せん断強度が30MPa以上である、前記1.又は2.に記載の成形体の製造方法。
4.樹脂M2が半硬化した熱硬化性樹脂であって、樹脂M2の複素粘度η2が8000Pa・s以上30000Pa・s以下である、前記1.乃至3.のいずれか1項に記載の成形体の製造方法。
5.樹脂M2が半硬化した熱硬化性樹脂であって、硬化度が50%以上である、前記1.乃至4.のいずれか1項に記載の成形体の製造方法。
6.成形の時に、樹脂M2を完全硬化して成形体を製造する、前記4.又は5.に記載の成形体の製造方法。
7.複合材料Bは潜在性硬化剤を含み、前記潜在性硬化剤は、イオン反応、加熱溶解、モレキュラーシーブ、マイクロカプセル、又はUV硬化の一群から選ばれる少なくとも1つを利用したものである、前記4.乃至6.のいずれか1項に記載の成形体の製造方法。
8.樹脂M1、及び樹脂M2が熱可塑性樹脂である、前記1.乃至3.のいずれか1項に記載の成形体の製造方法。
9.樹脂M1と樹脂M2の複素粘度が、下記の関係を満たす前記8.に記載の成形体の製造方法。
3×η1<η2<30000(Pa・s) かつ η1<500(Pa・s)
ただし、
η1(Pa・s):せん断速度2(1/s)のときの、樹脂M1の複素粘度
η2(Pa・s):せん断速度2(1/s)のときの、樹脂M2の複素粘度
である。
10.下記式を満たす、前記1.乃至9.のいずれか1項に記載の成形体の製造方法。
(繊維束の最大幅Wmax-繊維束の最小幅Wmin)/繊維束の平均幅Wave<0.25
11.複合材料Bに含まれる連続繊維は、一軸配向した連続繊維であって、複合材料Bの長手方向に配向している、前記1.乃至10.のいずれか1項に記載の成形体の製造方法。
12.複合材料Bに含まれる連続繊維は、二軸配向した連続繊維であって、複合材料Bの長手方向、及び長手方向と直交した方向に配向している、前記1.乃至10.のいずれか1項に記載の成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
不連続繊維で強化された複合材料と、連続繊維で強化された複合材料とを積層して成形したときに、連続繊維が乱れずに成形できるため、安定して高い機械物性を有する成形体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の成形体の製造方法を描いた模式図。
図2】(a)(b)本発明の複合材料Bと、成形下型の関係を示す模式図。
図3】(a)(b)本発明の複合材料Bと、成形下型の関係を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[強化繊維]
複合材料A、又は複合材料Bに含まれる繊維に特に限定は無いが、強化繊維であることが好ましい。具体的には、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、及び玄武岩繊維からなる群より選ばれる1つ以上の強化繊維であることが好ましい。
【0013】
[炭素繊維]
本発明の複合材料A又はBに含まれる繊維は、炭素繊維であることが好ましい。炭素繊
維としては、一般的にポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、石油・石炭ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、セルロース系炭素繊維、リグニン系炭素繊維、フェノール系炭素繊維、などが知られているが、本発明においてはこれらのいずれの炭素繊維であっても好適に用いることができる。なかでも、本発明においては引張強度に優れる点でポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維を用いることが好ましい。
【0014】
[炭素繊維の繊維直径]
本発明の複合材料A又は複合材料Bに含まれる繊維が炭素繊維の場合、用いられる炭素繊維の単糸(一般的に、単糸はフィラメントと呼ぶ場合がある)の繊維直径は、炭素繊維の種類に応じて適宜決定すればよく、特に限定されるものではない。平均繊維直径は、通常、3μm~50μmの範囲内であることが好ましく、4μm~12μmの範囲内であることがより好ましく、5μm~8μmの範囲内であることがさらに好ましい。炭素繊維が繊維束状である場合は、繊維束の径ではなく、繊維束を構成する炭素繊維(単糸)の直径を指す。炭素繊維の平均繊維直径は、例えば、JIS R-7607:2000に記載された方法によって測定することができる。
【0015】
[ガラス繊維]
本発明の複合材料A又は複合材料Bに含まれる繊維は、ガラス繊維であっても良い。ガラス繊維の種類に特に限定は無く、Eガラス、AガラスまたはCガラスからなるガラス繊維のいずれをも使用することができ、また、これらを混合して使用することもできる。本発明におけるガラス繊維に特に限定は無いが、ガラス繊維の平均繊維直径は、1μm~50μmが好ましく、5μm~20μmがより好ましい。
【0016】
[サイジング剤]
本発明に用いられる炭素繊維又はガラス繊維は、表面にサイジング剤が付着しているものであってもよい。サイジング剤が付着している強化繊維を用いる場合、当該サイジング剤の種類は、強化繊維及びマトリクス樹脂の種類に応じて適宜選択することができるものであり、特に限定されるものではない。
【0017】
[複合材料A]
[複合材料Aに含まれる不連続繊維]
1.重量平均繊維長
複合材料Aに含まれる不連続繊維の重量平均繊維長は0.3mm以上が好ましく、0.3mm以上100mm以下であることがより好ましく、0.3mm以上80mm以下であることが更に好ましく、0.3mm以上50mm以下であることが一層好ましく、0.3mm以上40mm以下であることがより一層好ましい。強化繊維の重量平均繊維長が100mm以下の場合、複合材料Aの流動性が向上し、圧縮成形する際に、所望の成形体形状を得やすい。一方、重量平均繊維長が0.3mm以上の場合、成形体の機械強度が向上しやすい。
【0018】
不連続繊維は繊維長が互いに異なる強化繊維を併用してもよい。換言すると、強化繊維は、重量平均繊維長に単一のピークを有するものであってもよく、あるいは複数のピークを有するものであってもよい。
【0019】
強化繊維の平均繊維長は3mm以上であれば、例えば、成形体から無作為に抽出した100本の繊維の繊維長を、ノギス等を用いて1mm単位まで測定し、下記式(a)に基づいて求めることができる。平均繊維長の測定は、重量平均繊維長(Lw)で測定する。
【0020】
個々の強化繊維の繊維長をLi、測定本数をjとすると、数平均繊維長(Ln)と重量平均繊維長(Lw)とは、以下の式(a)、(b)により求められる。
Ln=ΣLi/j・・・式(a)
Lw=(ΣLi)/(ΣLi)・・・式(b)
なお、繊維長が一定長の場合は数平均繊維長と重量平均繊維長は同じ値になる。
成形体から強化繊維の抽出は、例えば、成形体に対し、500℃×1時間程度の加熱処理を施し、炉内にて樹脂を除去することによって行うことができる。
【0021】
[複合材料Aの繊維体積割合VfA]
本発明において、複合材料Aに含まれる繊維体積割合VfAは下記式(c)で定義される。
繊維体積割合(VfA)=100×繊維体積/(繊維体積+複合材料Aの樹脂体積) ・・・ 式(c)
より具体的には、繊維体積割合(VfA)は10Vol%以上50Vol%以下であることが好ましく、15Vol%以上45Vol%以下であることがより好ましく、20Vol%以上40Vol%以下であれば更に好ましい。
【0022】
強化繊維体積割合(VfA)が10Vol%以上の場合、所望の機械特性が得られやすい。一方で、強化繊維体積割合(VfA)が50Vol%を超えない場合、プレス成形等に使用する際の流動性が良好で、所望の成形体形状を得られやすい。
【0023】
[複合材料Aに含まれる不連続繊維の繊維形態]
1.束形態
強化繊維は繊維長が5mm以上の不連続繊維であって、繊維束0.3mm未満の炭素繊維a1と、束幅0.3mm以上3.0mm以下の炭素繊維束a2とを含んでいることが好ましい。複合材料Aに含まれる強化繊維に対する強化繊維束a2の体積割合は、5Vol%以上95Vol%未満が好ましく、10Vol%以上90Vol%未満がより好ましい。
【0024】
2.分散
複合材料Aにおいて、強化繊維は面内方向に分散していることが好ましい。面内方向とは、成形体の板厚方向に直交する方向であり、板厚方向に直交する平行な面の不定の方向を意味している。
【0025】
更に、強化繊維は面内方向に2次元方向にランダムに分散していることが好ましい。複合材料Aを流動させずに圧縮成形した場合、成形前後で強化繊維の形態はほぼ維持されるため、複合材料Aを成形した成形体に含まれる強化繊維も同様に、成形体の面内方向に2次元ランダムに分散していることが好ましい。
【0026】
ここで、2次元ランダムに分散しているとは、強化繊維が、成形体の面内方向において一方向のような特定方向ではなく無秩序に配向しており、全体的には特定の方向性を示すことなくシート面内に配置されている状態を言う。この2次元ランダムに分散している不連続繊維を用いて得られる複合材料Aは、面内に異方性を有しない、実質的に等方性の複合材料Aである。
【0027】
なお、2次元ランダムの配向度は、互いに直交する二方向の引張弾性率の比を求めることで評価する。成形体の任意の方向、及びこれと直交する方向について、それぞれ測定した引張弾性率の値のうち大きいものを小さいもので割った(Eδ)比が5以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1.5以下であれば、強化繊維が2次元ランダムに分散していると評価できる。成形体は形状を有しているため、面内方向への2次元ランダム分散の評価方法としては、複合材料Aに含まれる樹脂が熱可塑性樹脂の場合、軟化温度以上に加熱して平板形状に戻して固化すると良い。この際、複合材料Aと複合材料Bは分離し、
複合材料Aのみ取り出す。その後、試験片を切り出して引張弾性率を求めると、2次元方向のランダム分散状態を確認できる。
【0028】
[複合材料Aに含まれる樹脂M1]
複合材料Aに含まれる樹脂M1に特に限定は無く、熱硬化性樹脂であっても、熱可塑性樹脂であっても良い。
【0029】
1.熱可塑性樹脂
複合材料Aに含まれる好ましい樹脂M1は、熱可塑性樹脂である。熱可塑性樹脂の種類は特に限定されるものではなく、所望の軟化点又は融点を有するものを適宜選択して用いることができる。上記熱可塑性のマトリクス樹脂としては、通常、軟化点が180℃~350℃の範囲内のものが用いられるが、これに限定されるものではない。
【0030】
熱可塑性樹脂の種類としては、例えば、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル-スチレン系樹脂(AS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系樹脂(ABS樹脂)、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、各種の熱可塑性ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、ポリブチレンナフタレート系樹脂、ボリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンエーテ系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂などが挙げられる。
【0031】
熱可塑性樹脂は、結晶性樹脂であっても、非晶性樹脂であっても良い。結晶性樹脂の場合、好ましい結晶性樹脂は、具体的にはナイロン6などのポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂などを挙げる事ができる。中でも、ポリアミド系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂は、耐熱性や機械的強度に優れるなど好適に用いられる。
【0032】
ポリアミド系樹脂の一つであるナイロン(以下「PA」と略記することがある)としては、PA6(ポリカプロアミド、ポリカプロラクタム、ポリε-カプロラクタムとも称される)、PA26(ポリエチレンアジパミド)、PA46(ポリテトラメチレンアジパミド)、PA66(ポリヘキサメチレンアジパミド)、PA69(ポリヘキサメチレンアゼパミド)、PA410(ポリテトラメチレンセバカミド)、PA610(ポリヘキサメチレンセバカミド)、PA611(ポリヘキサメチレンウンデカミド)、PA612(ポリヘキサメチレンドデカミド)、PA11(ポリウンデカンアミド)、PA12(ポリドデカンアミド)、PA1212(ポリドデカメチレンドデカミド)、PA6T(ポリヘキサメチレンテレフタルアミド)、PA6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)、PA912(ポリノナメチレンドデカミド)、PA1012(ポリデカメチレンドデカミド)、PA9T(ポリノナメチレンテレフタラミド)、PA9I(ポリノナメチレンイソフタルアミド)、PA10T(ポリデカメチレンテレフタラミド)、PA10I(ポリデカメチレンイソフタルアミド)、PA11T(ポリウンデカメチレンテレフタルアミド)、PA11I(ポリウンデカメチレンイソフタルアミド)、PA12T(ポリドデカメチレンテレフタラミド)、PA12I(ポリドデカメチレンイソフタルアミド)、ポリアミドMXD6(ポリメタキシリレンアジパミド)からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0033】
2.熱硬化性樹脂
複合材料Aに含まれる樹脂M1は、熱硬化性樹脂であっても良い。熱硬化性樹脂の場合、不飽和ポリエステル系樹脂、ビニルエステル系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などが用いられる。熱硬化性樹脂としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。より具体的には、複合材料Aは、強化繊維と熱硬化性樹脂を含んだシートモールディングコンパウンド(SMCと呼ぶ場合がある)であっても良い。
【0034】
3.その他の剤
本発明で用いる複合材料Aには、本発明の目的を損なわない範囲で、有機繊維または無機繊維の各種繊維状または非繊維状のフィラー、難燃剤、耐UV剤、安定剤、離型剤、顔料、軟化剤、可塑剤、界面活性剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0035】
[複合材料B]
[複合材料Bに含まれる連続繊維]
1.全般
本発明における複合材料Bは連続繊維を含む。該連続繊維は連続繊維束でもあり、束幅を有する。繊維束の幅と厚みは、互いに直交する3つの直線(x軸、y軸、及びz軸とする)を考えた場合に、繊維束の繊維方向をx軸方向とし、それに直交するy軸方向の長さの最大値ymaxとz軸方向の長さの最大値zmaxとのうち長い方を幅とし、短い方を厚みとする。
【0036】
連続繊維は、織編物、ストランドの一方向配列シート状物及び多軸織物等のシート状であっても良い。なお、多軸織物とは、一般に、一方向に引き揃えた繊維強化材の束をシート状にして角度を変えて積層したもの(多軸織物基材)を、ポリアミド糸、ポリエステル糸、ガラス繊維糸等のステッチ糸で、この積層体を厚さ方向に貫通して、積層体の表面と裏面の間を表面方向に沿って往復しステッチした織物をいう。
【0037】
2.一軸配向
本発明における複合材料Bに含まれる連続繊維は、一軸配向した連続繊維であることが好ましい。一軸配向した連続繊維とは、配向方向が一つのみであり、他の方向には配向していないことを意味する。一軸配向した連続繊維を用いた場合、成形する時に繊維幅が広がってしまう課題が、より顕著になる。複合材料Bに含まれる連続繊維は、一軸配向した連続繊維であって、複合材料Bの長手方向に配向していることがより好ましい。
【0038】
3.二軸配向
複合材料Bに含まれる連続繊維は、二軸配向した連続繊維であって、複合材料Bの長手方向、及び長手方向と直交した方向に配向していることが好ましい。このとき、複合材料Bは一軸配向した連続繊維プリプレグを積層して二軸配向とすれば良い。これは、長手方向と直交した方向に配向している連続繊維によって、長手方向の連続繊維の乱れを抑制するためである。なお、二軸配向した場合、本発明における「連続繊維の配向の乱れ」とは、「複合材料Bの長手方向の連続繊維の乱れ」を指す。
【0039】
[複合材料Bの繊維体積割合(VfB)]
本発明において、複合材料Bに含まれる繊維体積割合VfBは下記式(d)で定義される。
繊維体積割合(VfB)=100×繊維体積/(繊維体積+複合材料Bの樹脂体積) ・・・ 式(d)
より具体的には、繊維体積割合(VfB)は10Vol%以上60Vol%以下であることが好ましく、30Vol%以上60Vol%以下であることがより好ましく、40Vol%以上60Vol%以下であればさらに好ましい。
【0040】
強化繊維体積割合(VfB)が10Vol%以上の場合、所望の機械特性が得られやすい。一方、強化繊維体積割合(VfB)が60Vol%を超えない場合、強化繊維周辺に樹脂が一定量存在し、複合材料Aの樹脂M1と複合材料Bの樹脂M2を安定して密着させることができるため高い物性を維持し易くなる。
【0041】
[複合材料Bに含まれる樹脂M2]
1.熱硬化性樹脂
1.1 種類
複合材料Bに含まれる樹脂M2は、熱硬化性樹脂であっても良い。複合材料Bに含まれる熱硬化性樹脂は、不飽和ポリエステル系樹脂、ビニルエステル系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などが用いられるが、接着性、耐熱性の観点からエポキシ樹脂が好ましい。熱硬化性樹脂としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
1.2 硬化度
複合材料Bに含まれる樹脂M2は、熱硬化性樹脂であることが好ましく、半硬化した熱硬化性樹脂であることがより好ましい。半硬化樹脂の硬化度は50%以上が好ましく、55%以上がより好ましく、60%以上が更に好ましく、65%以上が一層好ましく、70%以上がより一層好ましい。
【0043】
硬化度の調整方法は、1種類の硬化剤を使用して加熱温度を調整する方法、反応温度の異なる2種類以上の硬化剤を使用し、低温側で反応する硬化剤のみを反応させて調整する方法などがある。
【0044】
熱硬化性樹脂の硬化度は、未反応の熱硬化性樹脂に対して硬化剤を混ぜて反応させ、反応熱量を測定する(示差走査熱量計、DSCを用いる)ことによって決定できる。具体的には、未反応の熱硬化性樹脂に対して、様々な配合量で硬化剤を添加したサンプルを作製し、熱硬化性樹脂を硬化させたときの反応熱量をDSCで測定する。特定の配合量以上で硬化剤を添加すると反応熱量が一定となるので、反応熱量が一定となった時の硬化剤の配合量を基準量とする(硬化度100%とすることが出来る、硬化剤の配合量とする)。基準量に対して投入した添加量の割合で硬化度を決定する。例えば、基準量に対して投入した硬化剤の添加量が50%であれば、硬化度50%となる。
【0045】
半硬化した熱硬化性樹脂を用いることで成形の時に複合材料Bに含まれる連続繊維の配向方向への直進性が保持されやすくなり、配置面Xが三次元形状であっても、連続繊維の最大厚みTmaxと、最小厚みTminの関係が、1≦Tmax/Tmin≦1.5となる成形体を製造するのが容易となる。
【0046】
1.3 硬化剤
1.3.1 1種類の硬化剤
硬化剤の種類に特に限定はないが、硬化度の調整を行いやすいものが好ましい。1種類の硬化剤を使用する場合には、広範囲の温度域で緩やかに硬化反応が進むものが好ましい。
【0047】
1.3.2 2種類の硬化剤
2種類の硬化剤を使用する場合には、後述する2段階硬化に利用するため、硬化反応が進行する温度域に十分な差がある組合せが好ましい。2種類の硬化剤を使用する場合、それぞれの硬化剤の反応が開始する温度域が30℃以上離れていることが好ましく、50℃以上離れていることがより好ましい。
【0048】
低温側で反応させる硬化剤は常温~100℃までの温度範囲で硬化出来ることが好まし
い。
【0049】
一方、高温側で反応させる硬化剤は、製造効率上の観点から、特定の温度以上の領域で反応する潜在性硬化剤が好ましい。潜在性硬化剤は、イオン反応、加熱溶解、モレキュラーシーブ、マイクロカプセル、又はUV硬化の一群から選ばれる少なくとも1つを利用することが好ましい。未硬化の熱硬化性樹脂材料と連続繊維とを複合化したものに、潜在性硬化剤を添加し、複合材料Bとすると良い。潜在性硬化剤として、モレキュラーシーブやマイクロカプセルなどに封入しておけば、特定のトリガーで硬化剤を溶出できる。また、エポキシ樹脂硬化剤においてはイオン反応を利用したルイス酸錯体、加熱による溶解を利用したジシアンジアミドやイミダゾール化合物などが挙げられる。
【0050】
1.4 2段階硬化
複合材料Bの作製過程で1段階目の硬化を行うことで半硬化樹脂とし、その後、複合材料Aと複合材料Bとを積層して成形体を製造する際に2段階目の硬化を行うことが好ましい(2段階硬化)。
【0051】
複合材料Bとして、一軸配向した連続繊維を用いた場合、複合材料Bは引抜成形によって作成され、半硬化させたものが好ましい。引抜成形であればダイ内で未反応の熱硬化性樹脂を含浸させながら半硬化させることが可能であり、繊維目付や樹脂割合も所望のものを製造することが容易である。この時、半硬化させるための温度に特に制限はなく、使用する硬化剤の特性に合わせた温度とすれば良い。半硬化させるための好ましい温度範囲は100℃以下である。100℃以下とすることで2段階目の硬化加熱温度のプロセスウィンドウ(加工の条件幅)を広く保つことができる。複合材料Bに含まれる半硬化した熱硬化性樹脂は、複合材料Aと積層して成形する際に硬化を完了させることができる。すなわち、成形の時に樹脂M2を完全硬化して成形体を製造することができる。言い換えると半硬化状態の複合材料Bは、成形工程で賦形可能である。樹脂M2を成形する際に硬化を完了させる場合、前記潜在性硬化剤を用いると良い。
【0052】
1.5 複合材料Bに含まれるマイクロカプセル硬化剤
複合材料Bには、マイクロカプセル型の硬化剤を含んでいても良い。マイクロカプセル硬化剤は、特定の温度領域においてカプセルが崩壊し、中に含まれる硬化成分がマトリクス中に溶出する機構を持つ。
【0053】
(1)2段階硬化のうち1段階目の硬化での使用
樹脂M2を2段階で硬化させる場合、マイクロカプセル硬化剤を1段階目の硬化に用いても良い。この場合、室温ではマイクロカプセルは崩壊せず、複合材料Bの製造時の温度領域でマイクロカプセルを崩壊させればよい。
【0054】
(2)2段階硬化のうち2段階目の硬化での使用
樹脂M2を2段階で硬化させる場合、マイクロカプセル硬化剤を2段階目の硬化に用いても良い。この場合、複合材料Bの製造工程ではマイクロカプセルが崩壊しないことが好ましく、言い換えるとマイクロカプセルは120度以上の温度領域で崩壊することが好ましい。
【0055】
一方、プレス成形する際には半硬化樹脂を完全硬化させることが好ましい。プレス成形の際にマイクロカプセルが崩壊し、マイクロカプセル中に含まれる硬化剤が溶出し、成形型内で硬化が進んで完全硬化させることが好ましい。この場合、完全硬化させる温度は、プレス成形の成形型温となる。
【0056】
(3)2段階硬化のうち1段階目及び2段階目での使用
2種類のマイクロカプセル硬化剤を用いることで、(1)一段階目の硬化と、(2)二段階目の双方において、樹脂M2をマイクロカプセル硬化剤によって硬化させることができる。
【0057】
1.6 樹脂M2の複素粘度(η2(Pa・s))
本発明における樹脂M2は、樹脂M2が半硬化した熱硬化性樹脂であって、複素粘度η2が8000Pa・s以上30000Pa・s以下であることが好ましい。この範囲を満たすことで、複合材料Aと複合材料Bとを積層して成形した際に、成形型の形状(特に曲面を含んだ三次元形状)に沿うように複合材料Bを賦形しやすくなるし、成形する時に複合材料Bに含まれる連続繊維の直進性も担保できるため、賦形性と高い機械物性とを両立できる製造方法を提供できる。
【0058】
より好ましくは、樹脂M2が半硬化した熱硬化性樹脂であって、複素粘度η2は、8000Pa・s以上20000Pa・s以下がより好ましく、10000Pa・s以上16000Pa・s以下が更に好ましい。
【0059】
2.熱可塑性樹脂
樹脂M2は熱可塑性樹脂であっても良い。より具体的には、樹脂M1、及び樹脂M2が熱可塑性樹脂であって、樹脂M1と樹脂M2の複素粘度が下記の関係を満たすと、より好ましい。
3×η1<η2<30000(Pa・s) かつ η1<500(Pa・s)
ただし、
η1(Pa・s):せん断速度2(1/s)のときの、樹脂M1の複素粘度
η2(Pa・s):せん断速度2(1/s)のときの、樹脂M2の複素粘度
である。
【0060】
複合材料Aは成形体の端部に欠け(ショートショットと呼ぶ場合がある)を発生させないために流動し易い材料であることが好ましく、一方、複合材料Bは部分補強するため、複合材料Aに比べて流動しにくいことが好ましい。
【0061】
3×η1<η2<30000(Pa・s)かつη1<500(Pa・s) を満たすことで、複合材料Aと、複合材料Bとの間で、成形時の流動性に大きな差を設けることができ、樹脂M1は樹脂M2に比べて大きな流動性を確保できる。3×η1<η2あれば、複合材料Aに比べて複合材料Bの樹脂M2は流動し難くなり、成形体における連続繊維による補強が容易になる。
【0062】
樹脂M1がナイロン6(融点:約225℃、PA6と呼ぶ場合がある)の場合、複素粘度は245℃で500Pa・sであり、これ以上の温度に加熱した状態で成形することが好ましい。
【0063】
樹脂M2が、PA66(ポリヘキサメチレンアジパミド、融点:約260℃)の場合、複素粘度は263℃で1550Pa・sである。融点付近では粘度が大きく変化するため、厳格な温度管理のもと成形する必要がある。また、PA66以外にも、樹脂M2はMXD6-PA(融点:約240℃)、PA410(ポリテトラメチレンセバカミド、融点:約240℃)、なども用いることが可能である。
【0064】
3.紫外線硬化樹脂
温度上昇による影響を受けにくくするためには、紫外線硬化性樹脂を、複合材料Bに含まれる樹脂M2として用いても良い。
【0065】
[圧縮成形]
本発明の成形体は、複合材料Aと複合材料Bとを積層して圧縮成形して製造する。
圧縮成形はプレス成形と呼ばれることが多いが、プレス成形には主にコールドプレス成形とホットプレス成形の2種類がある。
【0066】
1.コールドプレス成形
コールドプレス成形は、樹脂M1が熱可塑性樹脂である場合に適用される方法である。このとき、樹脂M2は熱可塑性樹脂であっても、熱硬化性樹脂であっても良い。
【0067】
樹脂M1を賦形可能な温度以上に予備加熱し(工程A1)、成形型は樹脂M1が固化する温度で一定温度に制御し成形する。複合材料Aは予備加熱された状態における温度が最も高く、(工程A2)では温度が一方的に下がっていく。すなわち、複合材料Aは成形型内では加熱されずに冷却され続ける。コールドプレス成形は少なくとも以下の(工程A1)~(工程A3)を含んでいる。
【0068】
(工程A1)
複合材料Aを、第1の所定温度に加熱する工程である。例えば樹脂M1の成形可能な温度以上(軟化点以上)に加熱すると良い。
複合材料Bに含まれる樹脂M2が熱可塑性樹脂の場合、複合材料Bは加熱しても加熱しなくても良い。複合材料Bを加熱する場合、成形可能な温度以上に加熱することが好ましい。複合材料Bを加熱しない場合、複合材料Aと複合材料Bを積層したときに、複合材料Aから熱を受けることで、複合材料Bを加熱すれば良い。
複合材料Bに含まれる樹脂M2が熱硬化性樹脂の場合、加熱しても加熱しなくても良い。
【0069】
(工程A2)
複合材料Aと、複合材料Bを、第2の所定温度に調節された成形型に配置し加圧する工程。
このときの成形圧力については特に限定はしないが、成形型キャビティ投影面積に対して20MPa未満が好ましく、10MPa以下であるとより好ましい。20MPa未満とすることで、大きな成形体の製造においても大規模な成形設備をもたなくてよい。成形型キャビティ投影面積に対して20MPa未満であれば、成形の時に複合材料Bの連続繊維の直進性を維持しやすくなる。
【0070】
(工程A3)
保圧し、複合材料Aおよび複合材料Bが十分に固化させる工程。樹脂M2が半硬化した熱硬化性樹脂である場合、成形型や複合材料Aの熱を受けことで硬化が進み、半硬化状態から完全硬化状態とすることが出来る。
【0071】
(工程A1)~(工程A3)の工程を行うことで、成形体を製造する。
【0072】
(他の工程)
上記の(工程A1)~(工程A3)の各工程は、上記の順番で行う必要があるが、各工程間に他の工程を含んでもよい。
(i)他の工程とは、例えば、(工程A2)の前に(工程A2)で利用される成形型と別の賦形型を利用して、成形型のキャビティの形状に予め賦形する賦形工程がある。
(ii)(工程A2)において、真空にしながら圧縮成形する真空プレス成形を用いてもよい。
【0073】
2.ホットプレス成形
ホットプレス成形は、成形型内で樹脂M1が加熱される成形方法である。
例えば、樹脂M1と樹脂M2とが、熱硬化性樹脂の場合について、(工程B1)~(工程B4)を説明する。
(工程B1) 複合材料A、及び複合材料Bを積層し、成形型へ配置する工程。
(工程B2) 成形型上に載置された複合材料A、及び複合材料Bを加熱し、加圧する工程。
成形型上に載置された複合材料A、及び複合材料Bとを、硬化が開始される温度以上に加熱する。成形型内で樹脂M1と樹脂M2は型締めされて加圧され、賦形される。加熱されることで硬化が進められ、同時に賦形が完了する。 樹脂M2が半硬化した熱硬化性樹脂である場合、工程B2で硬化が進み、半硬化状態から完全硬化状態とすることができる。
(工程B3) 目標圧力で保圧する工程。目標圧力は0.1MPa~20MPaであり、好ましくは0.2MPa~10MPaである。保圧する時間の目安は1~20分である。(工程B4) 冷却する工程。
【0074】
(工程B1)から(工程B2)の工程を行うことで、成形を完結できる。
上記の各工程は、上記の順番で行う必要があるが、他の工程を含んでもよい。
【0075】
[配置面X]
1.形状
本発明の成形体の製造方法は、不連続繊維と樹脂M1を含む複合材料Aと、連続繊維と樹脂M2を含む複合材料Bとを積層して圧縮成形し、成形体を製造する方法であって、
複合材料Bの成形型への配置面Xは、曲面を含んだ三次元形状であって、前記連続繊維の束幅方向に向かって曲がっている。複合材料Aと複合材料Bとが積層された後は、複合材料Bは積層体の表層に存在していても良いし、複合材料Aに挟まれて複合材料Bが積層体の中央に存在していても良い。
【0076】
1.1 三次元形状
配置面Xとは、複合材料Bが成形型へ配置される面であり、必ずしも成形型への接触面ではない。すなわち複合材料Aと複合材料Bとが積層された後、複合材料Bが積層体の表層に存在している場合は、複合材料Bの成形型への配置面は、成形型への接触面となる。一方、複合材料Aに挟まれて複合材料Bが積層体の中央に存在している場合、複合材料Bは複合材料Aを介して成形型に配置されるため、複合材料Bは成形型に接触しない。成形型に配置後、複合材料Bは成形されるため、成形型の配置面の形状は、そのまま成形体の形状となる。配置面は、例えば図1の103に示される。
【0077】
三次元形状は、屈曲した面(折れ曲がっている面)や、湾曲した面(弓なりに曲がった面)を含んでいても良い。三次元形状は、平面の領域を含んでいても良い。
【0078】
屈曲した面の場合、例えば図3の301で示された面が挙げられる。屈曲は角度が3°以上であることが好ましく、5°以上であることがより好ましく、7°以上が更に好ましい。3°以上の傾きがあることで圧縮力の5%以上が複合材料Bに含まれる連続繊維の束幅方向に加わるため本発明の課題がより顕著になる。屈曲の角度は、図3のθ1で示される。
【0079】
湾曲した面の場合、例えば半球状面、球状面が挙げられる。より詳しくは、例えば、球体や楕円体の表面を構成する曲面の一部分が挙げられ、具体的には図2の201で示される。 曲率の半径や長さには特に制限はないが、配置面Xの接線と、水平面とのなす角が3度以上あると、繊維束が乱れる課題が顕著になる。これは、圧縮力の一部が、複合材料Bに含まれる連続繊維の束方向に加わってしまうためである。配置面Xの接線と、水平面
とのなす角は、3度以上が好ましく、5度以上がより好ましく、7度以上が更に好ましい。
【0080】
1.2 配置面Xは連続繊維の束幅方向に向かって曲がる
配置面Xは、曲面を含んだ三次元形状であって、複合材料Bに含まれる連続繊維の束幅方向に向かって曲がっている。言い換えると、配置面Xは、曲面を含んだ三次元形状であって、前記連続繊維の束幅方向に向かって前記曲面は曲がっている(図1の103)。 複合材料Bは、予め加熱するか、又は成形型内で加熱し、連続繊維の束幅方向に向かって曲がった形状である三次元形状の状態に変形させる。加熱前の複合材料Bは平板形状であり、成形後に三次元形状となるのが好ましい。連続繊維の束幅方向とは、例えば図1図2図3でいうX軸方向である。
【0081】
配置面Xは、連続繊維の束幅方向に向かって、弧を描いた状態、又は折れた状態で曲がっていることが好ましい。図2では、連続繊維の束幅方向に向かって弧を描いた状態が描かれており、図3では、連続繊維の束幅方向に向かって折れた状態が描かれている。
【0082】
連続繊維として、例えば特許文献1(特開2008-230236号)に記載のものを使用すると、配置面Xで、連続繊維の配向が乱れやすい。これは、特許文献1(特開2008-230236号)に記載の連続繊維が含まれた熱硬化性樹脂プリプレグの硬化度は10%以下と低く、成形時の粘度が低すぎるためである。例えば図2の201や図3の301に示される場所に、特許文献1(特開2008-230236号)に記載の連続繊維を含んだ熱硬化性樹脂プリプレグを配置した場合、圧縮成形したとき、連続繊維が束幅方向へ圧縮力を受けることに加え、不連続繊維を含む複合材料Aの成形流動に引き摺られてしまい、連続繊維の配向が乱れが発生する。
【0083】
配置面Xは、連続繊維の束幅方向に向かって、弧を描いた状態、又は折れた状態で曲がっている場合、従来の課題はより顕著になる。このような形状を持つ場合、複合材料Bに含まれる連続繊維の束幅方向に、成形の圧縮力が加わるため連続繊維がより乱れやすくなる。本発明の製造方法では連続繊維は乱れず、安定して高い機械物性を有する成形体を製造することができる。
【0084】
1.3 配置面Xと積層面
成形体を製造するための、複合材料Aと複合材料Bの具体例としては、例えば図1のような場合が挙げられる。図1は大きな曲率を持つ成形型に、平板形状の複合材料Aと複合材料Bを積層して配置する場合である。
【0085】
複合材料Aと複合材料Bを成形型に配置したとき、複合材料Aと複合材料Bとの積層面と、配置面Xとは一致していても良い。言い換えると、複合材料Bは複合材料Aと、部分的な積層ではなく、完全に積層されていても良い。
【0086】
複合材料Aと複合材料Bとをそれぞれ成形して両者を接合すれば、三次元形状へ連続繊維を配置させた成形体を製造できるが、製造プロセスが長くなって製造コストが増加してしまう。本発明によれば、複合材料Aと複合材料Bを一体成形できるため、製造コストを低減できる。
【0087】
[成形体に含まれる連続繊維の最大厚みと最小厚み]
本発明の成形体に含まれる連続繊維の最大厚みTmaxと、最小厚みTminの関係は、1≦Tmax/Tmin≦1.5である。ここで、成形体に含まれる連続繊維とは、複合材料Bに含まれていた連続繊維と同一の繊維であって、成形された状態にあるものをいう。
【0088】
すなわち、本発明は、
不連続繊維と樹脂M1を含む複合材料Aと、連続繊維と樹脂M2を含む複合材料Bとを積層して圧縮成形し、成形体を製造する方法であって、
複合材料Bの成形型への配置面Xは、曲面を含んだ三次元形状であって、前記連続繊維の束幅方向に向かって曲がっており、
成形体に含まれる前記連続繊維の最大厚みTmaxと、最小厚みTminの関係が、1≦Tmax/Tmin≦1.5である。
ともいえる。
【0089】
好ましくは、1≦Tmax/Tmin<1.3であり、より好ましくは1≦Tmax/Tmin<1.2であり、更に好ましくは1≦Tmax/Tmin<1.1である。
【0090】
Tmax/Tmin≦1.5であれば、連続繊維が配向方向へ乱れることなく揃っていることを意味し、高い機械物性を有する成形体を得ることができる。
【0091】
成形体に含まれる連続繊維は、成形前の複合材料Bに含まれていた連続繊維であり、連続繊維の最大厚みTmaxと、最小厚みTminの測定は、成形後の成形体を観察して行う。成形前の複合材料Bに含まれる連続繊維に対して測定するものではない。
【0092】
連続繊維の最大厚みTmaxと、最小厚みTminの測定は後述するが、繊維方向100mm以内の場所を測定することが好ましい。
【0093】
[複合材料Aと複合材料Bとの層間せん断強度]
成形体における複合材料Aと複合材料Bとの層間せん断強度が30MPa以上であることが好ましい。「成形体における」とは、成形した後の、複合材料Aと複合材料Bの層間せん断強度を意味する。成形前に複合材料Aと複合材料Bであった箇所を見分けるには、成形体に含まれる繊維を観察すれば良い。不連続繊維が含まれている箇所は複合材料Aであった場所であり、連続繊維が含まれている箇所は複合材料Bであった場所である。層間せん断強度が30MPa以上であれば、複合材料Bの補強効果を高く発現することができる。樹脂M1と樹脂M2が共に熱可塑性樹脂である場合、樹脂M1と樹脂M2の相溶性を高くすることで、層間せん断強度を高くできる。
【0094】
樹脂M2が熱硬化性樹脂である場合、樹脂M2が半硬化した熱硬化性樹脂を用いることで、成形の時に、樹脂M2は樹脂M1と架橋して層間せん断強度を高くできる。つまり、樹脂M2が半硬化した熱硬化性樹脂であれば、圧縮成形による連続繊維の乱れを防ぐとともに複合材料Aとの層間せん断強度を高めることができる。
【0095】
なお、成形体における複合材料Aと複合材料Bとの層間せん断強度は、平面となって積層されている部分を測定すれば良い。
【0096】
[繊維束幅の変動率]
複合材料Bの連続繊維の乱れは、連続繊維束の束幅を計測し、下記式で評価できる。
(繊維束の最大幅Wmax-繊維束の最小幅Wmin)/繊維束の平均幅Wave
本発明においては、繊維束幅の変動率は0.25未満とすることが好ましい。繊維束幅の変動率を0.25未満とすることで繊維幅が安定し、成形体に含まれる連続繊維の乱れを抑制できていることを意味する。この場合、高い機械物性を維持できる。
(繊維束の最大幅Wmax-繊維束の最小幅Wmin)/繊維束の平均幅Waveは、0.20未満が好ましく、0.15未満がより好ましく、0.10未満が更に好ましい。
【実施例0097】
以下、本発明について実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0098】
1.材料
1.1 炭素繊維
帝人社製の炭素繊維“テナックス”(登録商標)STS40-24K(平均繊維径7μm、単繊維数24,000本)
1.2 熱可塑性樹脂
・ポリアミド6(ユニチカ株式会社製A1030、PA6と略する場合がある)。
1.3 熱硬化性樹脂組成物
・エポキシ樹脂(コニシ株式会社製エポキシ樹脂E206S)
・硬化剤
三菱ケミカル社製硬化剤ST15(1段階目の硬化剤)
四国化成工業製硬化剤2E4MZ-CN(2段階目の硬化剤)
【0099】
2.各種測定
本実施例における各値は、以下の方法に従って求めた。
(1)複合材料に含まれる繊維体積割合(VfA、VfB)の測定
複合材料A(又は複合材料B)から100mm×100mmのサンプルを切り出し、サンプルを550℃に加熱した電気炉(ヤマト科学株式会社製FP410)の中で窒素雰囲気下で、1時間加熱してマトリクス樹脂等の有機物を焼き飛ばした。
焼き飛ばし前後のサンプルの重量を秤量することによって強化繊維と熱可塑性樹脂の重量を算出した。次に、各成分の比重を用いて、強化繊維の体積割合を算出した。
繊維体積割合(VfA)=100×繊維体積/(繊維体積+複合材料Aの樹脂体積) ・・・ 式(c)
繊維体積割合(VfB)=100×繊維体積/(繊維体積+複合材料Bの樹脂体積) ・・・ 式(d)
【0100】
(2)最大厚みTmaxと、最小厚みTmin
作成した成形体から、連続繊維の繊維方向の断面を観察できるように、複合材料Bの断面を観察した。繊維方向に100mmの範囲で、均等に10カ所の断面を観察することによって、成形体となった後の、複合材料Bに含まれていた連続繊維の厚みの最小厚みと最大厚みを測定した。
Tmin: 複合材料Bに含まれていた、成形後の連続繊維の最小厚み
Tmax: 複合材料Bに含まれていた、成形後の連続繊維の最大厚み
得られたTminとTmaxから、連続繊維の形状維持力を下記式で評価した。
Tmax/Tmin: 連続繊維の形状維持力
Tmax/Tminの値が1に近いほど形状維持力が高く、数字が大きくなるほど形状維持力が小さいことを表している。
【0101】
(3)複合材料Aと複合材料Bの層間におけるせん断強度
複合材料Aと複合材料Bの層間せん断強度の指標として層間せん断強度を用いた。層間せん断試験方法はJIS K7078に基づいて行い下記式(e)により算出した。層間せん断強度は複合材料Aと複合材料Bとが積層されて、平面を形成している箇所を測定した。
τ = 3P/4bh ・・・式(e)
τ: 層間せん断強度(MPa)
P: 破壊荷重(N)
b: 試験片の幅(mm)
h: 試験片n厚さ(mm)
【0102】
(4)複合材料Bの樹脂M2の複素粘度
複合材料Bに含まれる樹脂M2の複素粘度の測定には、レオメータ(TAインスツルメンツ製、DiscoveryHR30)を使用した。
樹脂M2が熱硬化性樹脂である場合、加熱による粘度低下と、硬化による粘度上昇とが、どちらも起こりえるため、樹脂M2を周波数2Hzで常温から200℃まで5℃毎分の昇温速度で加熱して複素粘度を測定し、昇温測定の間で最も低かった複素粘度の値を、樹脂M2の複素粘度とした。
【0103】
(5)繊維束幅の変動率
複合材料Bに含まれていた、成形後の連続繊維の乱れを評価するため、連続繊維の繊維束幅の変動係数を測定した。
複合材料Bに含まれていた、成形体となった連続繊維を観察し、連続繊維に沿って100mm長さを対象エリアとした。
【0104】
対象エリアでの繊維束の最大幅、最小幅、繊維束の平均幅を用いて下記式(f)により算出した。
(Wmax-Wmin)/Wave ・・・式(f)
Wmax:繊維束の最大幅
Wmin:繊維束の最小幅
Wave:繊維束の平均幅
【0105】
[実施例1]
1.複合材料Aの準備
炭素繊維として、繊維長20mmにカットした帝人社製の炭素繊維“テナックス”(登録商標)STS40-24K(平均繊維径7μm、単繊維数24,000本)を使用し、樹脂として、ユニチカ社製のナイロン6樹脂A1030を用いて、米国特許第8946342号に記載された方法に基づき二次元ランダムに炭素繊維が配向した炭素繊維およびナイロン6樹脂の複合材料を作成した。得られた複合材料を270℃に加熱したプレス装置にて、2.0MPaにて5分間加熱し、幅250mm×長さ250mm×平均厚み2.5mmの板状の複合材料Aを得た。
板状の複合材料Aに含まれる炭素繊維の解析を行ったところ、炭素繊維体積割合(Vf)は35%、炭素繊維の繊維長は一定長であり、重量平均繊維長は20mmであった。
【0106】
2.複合材料Bの準備
2.1 熱硬化性樹脂組成物の準備
熱硬化性樹として、コニシ株式会社製エポキシ樹脂E206Sを準備し、これに対して三菱ケミカル社製硬化剤ST15を14.7phr、四国化成工業製硬化剤2E4MZ-CNを5.0phrの割合で混合した。硬化剤ST15の配合割合は、硬化剤ST15単独でエポキシ樹脂E206Sを完全硬化するのに必要な量に対して50%となる添加量であった。硬化剤2E4MZ-CNの配合割合は、硬化剤2E4MZ-CN単独でエポキシ樹脂E206Sを完全硬化するのに必要な量に対して50%以上となる添加量であった。なお、phr(per hundred resin)は、樹脂混合物中におけるエポキシ樹脂の重量を100としたときの重量の割合を示す。
【0107】
ここで、完全硬化に必要な硬化剤の添加量とは、エポキシ樹脂に対して硬化剤の添加量を様々な配合比で加えたサンプルを作製しDSC(SIIナノテクノロジー社製X-DSC7000)で硬化時の反応熱量を測定した際、硬化剤をある配合比以上で添加すると反応熱量が一定となり、反応熱量が一定となった時の硬化剤の添加量を指す。
【0108】
2.2 複合材料Bの作製
炭素繊維として帝人株式会社製の炭素繊維“テナックス”(登録商標)STS40-48K(平均繊維径7μm、繊度3200tex、密度1.77g/cm)を使用し、20mm×0.5mmの断面積を有する引抜ダイを通過させ、引抜ダイ内で熱硬化性樹脂を含浸させた。得られた熱硬化性樹脂を含浸させた炭素繊維を100mm長さにカットし、オーブンで20分間80℃で加熱し、硬化剤ST15のみを反応させることで、樹脂M2が半硬化した熱硬化性樹脂を含む幅20mm×長さ100mm×厚み0.5mm複合材料Bを得た。硬化剤ST15のみを反応させたため、樹脂M2の硬化度は50%であった。
【0109】
3.成形型および成形条件
複合材料Bの成形型への配置面Xは、曲面を含んだ三次元形状であり、連続繊維の束幅方向に向かって曲がっているときの連続繊維の繊維乱れを評価できるよう、半径75mmの半球状の金型を準備した(図1)。
【0110】
150℃に加熱した金型に、270℃に加熱した複合材料Aを載置し、半球の頂点に室温(25℃)状態の複合材料Bを積層した後に型締めし、20MPaの圧力で3分間保持した後に成形体を採取した。結果を表1に示す。
【0111】
なお、層間せん断強度測定用として、図1で作成した成形体とは別にサンプルを準備した。具体的には、幅250mm×長さ250mm×平均厚み2.5mmの板状の複合材料Aと、幅20mm×長さ100mm×厚み0.5mm複合材料Bとを、積層して平面形状の成形体を作製した。複合材料Aと複合材料Bが積層された平面部分を切り出し、層間せん断強度を測定した。
【0112】
[実施例2乃至6]
表1に記載されたように、硬化剤の添加量を変えることで、硬化度を変更した以外は、実施例1と同様にして成形体を製造した。結果を表1に示す。
【0113】
[実施例7]
複合材料Bとして、一軸配向した連続繊維(配向方向が一つのみであり、他の方向には配向していない)と、PA66をマトリックス樹脂とした材料(DSMエンジニアリングマテリアル株式会社製Akulon(登録商標) PA66-HC12)を使用こと以外は、実施例1と同様にして成形体を作製した。結果を表1に示す。
【0114】
[実施例8]
複合材料Bとして、一軸配向した連続繊維(配向方向が一つのみであり、他の方向には配向していない)と、PA6をマトリクス樹脂とした材料(DSMエンジニアリングマテリアル株式会社製Akulon(登録商標) PA6-HC10UD)を用い、複合材料Bの長手方向及び、長手方向と直交した方向に連続繊維が配向するようにした。また、当該材料(DSMエンジニアリングマテリアル株式会社製Akulon(登録商標) PA6-HC10UD)は厚み0.25mmであり、長手方向に二層、長手方向と直交する方向に一層を積層し、複合材料Bとした。これ以外は、実施例1と同様にして成形体を作製した。結果を表1に示す。
【0115】
[比較例1乃至2]
表1に記載されたように、硬化度を変更した以外は、実施例1と同様にして成形体を製造した。結果を表1に示す。
【0116】
【表1】
【0117】
[参考例1]
複合材料Bとして、一軸配向した連続繊維(配向方向が一つのみであり、他の方向には配向していない)と、PA6をマトリクス樹脂とした材料(DSMエンジニアリングマテリアル株式会社製Akulon(登録商標) PA6-HC10UD)を用いたこと以外
は、実施例1と同様にして成形体を作製した。結果を表2に示す。
【0118】
[参考例2]
複合材料Bとして、一軸配向した連続繊維(配向方向が一つのみであり、他の方向には配向していない)と、PA-MXD6をマトリックス樹脂とした材料(三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製レニーテープ)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして成形体を作製した。結果を表2に示す。
【0119】
[参考例3]
複合材料Bとして、一軸配向した連続繊維(配向方向が一つのみであり、他の方向には配向していない)と、PA410をマトリックス樹脂とした材料(DSMエンジニアリングマテリアル株式会社製Eco-Paxx(登録商標) PA410-HC12UD)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして成形体を作製した。結果を表2に示す。
【0120】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明の成形体及びこれを成形して得られた成形体は、各種構成部材、例えば自動車の構造部材、また各種電気製品、機械のフレームや筐体等、衝撃吸収が望まれるあらゆる部位に用いられる。特に好ましくは、自動車部品として利用できる。
【符号の説明】
【0122】
101:成形型(上型)
102:成形型(下型)
103:配置面X
A:複合材料A
B:複合材料B
201:湾曲した面
301:屈曲した面
θ1:屈曲の角度
図1
図2
図3