IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大成建設株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-墨出しシステム及び墨出し方法 図1
  • 特開-墨出しシステム及び墨出し方法 図2
  • 特開-墨出しシステム及び墨出し方法 図3
  • 特開-墨出しシステム及び墨出し方法 図4
  • 特開-墨出しシステム及び墨出し方法 図5
  • 特開-墨出しシステム及び墨出し方法 図6
  • 特開-墨出しシステム及び墨出し方法 図7
  • 特開-墨出しシステム及び墨出し方法 図8
  • 特開-墨出しシステム及び墨出し方法 図9
  • 特開-墨出しシステム及び墨出し方法 図10
  • 特開-墨出しシステム及び墨出し方法 図11
  • 特開-墨出しシステム及び墨出し方法 図12
  • 特開-墨出しシステム及び墨出し方法 図13
  • 特開-墨出しシステム及び墨出し方法 図14
  • 特開-墨出しシステム及び墨出し方法 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088824
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】墨出しシステム及び墨出し方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/02 20060101AFI20240626BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
G01C15/02
G01C15/00 103C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203809
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 崇
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一貴
(72)【発明者】
【氏名】大川 洋
(72)【発明者】
【氏名】竹内 圭二
(57)【要約】
【課題】施工現場において、施工図の映像を、実際の現場の実寸通りに、短時間で、かつ正確に投影することができる、墨出しシステム及び墨出し方法を提供する。
【解決手段】撮影装置3は、墨出し作業を行う投影面に墨出しされた親墨(現場)L1、L2と、第1の親墨上に配置されたタグT1、T2とを撮影する。検出部23は、撮影装置3により撮影された撮影画像内のタグT1、T2に基づいて、撮影画像内の親墨(現場)L1、L2を特定する。データ補正部24は、検出部23により特定された親墨(現場)L1、L2に基づいて、墨出しの施工図を補正する。投影装置4は、データ補正部24で補正された施工図の映像を投影面に投影する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
墨出し作業を行う投影面に墨出しされた第1の親墨と前記第1の親墨上に配置されたタグとを撮影する撮影装置と、
前記撮影装置により撮影された撮影画像内の前記タグに基づいて、前記撮影画像内の前記第1の親墨を特定する検出部と、
前記検出部により特定された前記第1の親墨に基づいて、前記墨出しの施工図を補正するデータ補正部と、
前記データ補正部で補正された前記施工図の映像を前記投影面に投影する投影装置と、
を備える、墨出しシステム。
【請求項2】
前記検出部は、
前記撮影装置により撮影された前記撮影画像から前記タグを検出するタグ検出部と、
前記タグ検出部により検出された前記タグが載っている周辺のエリアを通過する線分を、前記第1の親墨として特定する親墨特定部と、を備える請求項1に記載の墨出しシステム。
【請求項3】
前記検出部は、前記タグに交差する線分を検出し、検出した線分の3点の座標から直線近似によって前記第1の親墨を特定する、請求項2に記載の墨出しシステム。
【請求項4】
前記タグは、エイプリルタグである、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の墨出しシステム。
【請求項5】
前記撮影装置は、前記投影面外に配置された既知の長さを有する基準尺を撮影し、
前記データ補正部は、前記基準尺に基づいて、前記投影面に投影する前記施工図を実寸大になるように前記施工図を拡縮する、請求項1に記載の墨出しシステム。
【請求項6】
前記データ補正部は、作業者に前記第1の親墨に対応する第2の親墨を前記施工図上に指定させ、前記施工図上の前記第2の親墨が前記第1の親墨と重なるように前記施工図を移動させる、請求項5に記載の墨出しシステム。
【請求項7】
前記データ補正部は、前記施工図上の前記第2の親墨が前記第1の親墨と重なるように、前記施工図を回転させる、請求項6に記載の墨出しシステム。
【請求項8】
前記データ補正部は、前記施工図上の前記第2の親墨が前記第1の親墨と重なるように、前記施工図を所定の領域毎にピクセル移動させる、請求項7に記載の墨出しシステム。
【請求項9】
墨出し作業を行う投影面に第1の親墨を墨出しすること、
前記第1の親墨上にタグを配置すること、
撮影装置により前記第1の親墨と前記タグとを撮影すること、
検出部により、前記撮影装置によって撮影された撮影画像内の前記タグに基づいて、前記撮影画像内の前記第1の親墨を特定することと、
データ補正部により、前記検出部によって特定された前記第1の親墨に基づいて、前記墨出しの施工図を補正することと、
投影装置により、前記データ補正部によって補正された前記施工図の映像を前記投影面に投影することと、
を含む、墨出し方法。
【請求項10】
前記タグは、エイプリルタグである、請求項9に記載の墨出し方法。
【請求項11】
前記投影装置によって前記投影面上に投影された前記施工図に基づいて、墨出し作業を行うこと、をさらに含む、請求項9又は10に記載の墨出し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、墨出しシステム及び墨出し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場においては、様々な工程で墨出し作業が行われている。墨出し作業は、施工図に基づいて、建設現場で様々な部材の位置や加工を施すべき位置を示すために行われる。墨出し作業の効率化を図るため、建設現場で、施工図の映像を、施工中の構造物に実寸で投影することが検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、施工現場の空間内に設置され、その空間の設計図面を施工現場に実寸で投影する投影装置についての構成が開示されている。これにより、施工図の映像を構造物に実寸で投影した状態で、投影された施工図上の線に沿って、墨出し作業を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-100963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、実際には、建設現場においては、親墨以外にも心墨/真墨、子墨などの線が多数引かれていたり、構造体である壁と床とのつなぎ目などが存在したりするため、施工中の構造物や、親墨などの線を目安に施工図の映像を構造物に実寸で投影することは難しく、作業者の熟練度が求められ、調整に時間がかかるという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、施工現場において、施工図の映像を、実際の現場の実寸通りに、短時間で、かつ正確に投影することができる、墨出しシステム及び墨出し方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の墨出しシステムは、墨出し作業を行う投影面に墨出しされた第1の親墨と前記第1の親墨上に配置されたタグとを撮影する撮影装置と、前記撮影装置により撮影された撮影画像内の前記タグに基づいて、前記撮影画像内の前記第1の親墨を特定する検出部と、前記検出部により特定された前記第1の親墨に基づいて、前記墨出しの施工図を補正するデータ補正部と、前記データ補正部で補正された前記施工図の映像を前記投影面に投影する投影装置と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の墨出し方法は、墨出し作業を行う投影面に第1の親墨を墨出しすること、前記第1の親墨上にタグを配置すること、撮影装置により前記第1の親墨と前記タグとを撮影すること、検出部により、前記撮影装置によって撮影された撮影画像内の前記タグに基づいて、前記撮影画像内の前記第1の親墨を特定することと、データ補正部により、前記検出部によって特定された前記第1の親墨に基づいて、前記墨出しの施工図を補正することと、投影装置により、前記データ補正部によって補正された前記施工図の映像を前記投影面に投影することと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、施工現場において、施工図の映像を、実際の現場の実寸通りに、短時間で、かつ正確に投影することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態による墨出しシステムの構成を示すブロック図である。
図2】本実施形態において、施工現場の投影面に対する撮影範囲及び投影範囲等を説明するための模式図である。
図3】本実施形態において、撮影画像から施工現場の投影面に墨出しした親墨(現場)を特定する方法を説明するための模式図である。
図4】本実施形態の墨出しシステムによる墨出し作業を説明するためのフローチャートである。
図5】本実施形態の墨出しシステムによる墨出し作業を説明するためのフローチャートである。
図6】本実施形態による墨出し作業における施工現場での親墨の墨出し作業を示す模式図である。
図7】本実施形態による墨出し作業における施工現場での親墨に対するタグの設置例を示す模式図である。
図8】本実施形態による墨出し作業での親墨(現場)の特定工程を説明するための模式図である。
図9】本実施形態による墨出し作業での施工図の拡縮工程を説明するための模式図である。
図10】本実施形態による墨出し作業での施工図への親墨の指定作業工程を説明するための模式図である。
図11】本実施形態による墨出し作業での親墨の交点合わせ処理動作を説明するための模式図である。
図12】本実施形態による墨出し作業での施工図の回転処理動作を説明するための模式図である。
図13】本実施形態による墨出し作業での回転処理動作後のズレを説明するための模式図である。
図14】本実施形態による墨出し作業での回転処理動作後の親墨(現場)と親墨(CAD)とのズレを補正する補正処理動作を説明するための模式図である。
図15】本実施形態による墨出しシステムによって最終的に現場の投影面に投影した施工図面に基づいて作業者が墨出し作業を行う様子を示す画像である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明による墨出しシステム及び墨出し方法を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態による墨出しシステムの構成を示すブロック図である。
墨出しシステム1は、情報処理装置2、撮影装置3及び投影装置4を備えている。情報処理装置2は、パーソナルコンピュータ等のコンピュータ装置からなる。情報処理装置2は、予め設定されたコンピュータプログラムに基づいた処理を実行することで、以下に示すような機能部を実現する。情報処理装置2は、データ記憶部21と、データ取得部22と、検出部23と、データ補正部24と、データ出力部25と、表示部26とを備えている。
【0013】
データ記憶部21は、現場の投影面(例えば、床面)に投影すべき、CAD図(又は施工図)が記憶されている。また、データ記憶部21は、現場の投影面に投影されるCAD図の縮尺を調整するための所定の基準長さを示す基準線のデータ(画像データ)を記憶している。
【0014】
データ取得部22は、外部のデータサーバ等から、インターネット、公衆電話通信網等の通信ネットワークを用いたデータ通信、又は可搬性を有したメモリを介して、建築構造物のCAD図を取得する。データ取得部22は、外部から取得したCAD図をデータ記憶部21に一時的に記憶させる。また、データ取得部22は、撮影装置3で撮影した撮影画像のデータを、LANケーブル等の通信ケーブル、Wi-Fi、ブルートゥース(登録商標)等の通信ネットワークを介して取得する。
【0015】
検出部23は、撮影装置3で撮影された撮影画像から、現場の投影面(例えば、床面)に予め墨出しされた親線(現場)(第1の親墨)上に設置されたタグを認識し、該タグの情報に基づいて、現場の投影面に墨出しされた親線(現場)を検出する。より具体的には、検出部23は、撮影画像から上記タグを検出するタグ検出部231と、検出されたタグに交差する線の3点の座標から直線近似によって線分を求め、当該線分を親線(現場)として特定する親墨(現場)特定部(直線近似部)232とからなる。
【0016】
データ補正部24は、撮影画像とCAD図とを同一縮尺で重ね合わせ、該合成画像上で、撮影画像の親墨(現場)と、CAD図上に指定された親墨(CAD)(第2の親墨)とが重なるように、CAD図に対して拡縮、移動、回転、ピクセル移動を行うことで、実際の現場の実寸通りになるようにCAD図を補正する。なお、親墨(CAD)は、親墨(現場)に相当する親墨であり、親墨(現場)に基づいて作業者によりCAD図面上に指定(又は新規に入力)される。また、画像処理としては、CAD図面を拡縮して撮影画像の縮尺に合わせる拡縮機能と、CAD図面を平行移動させる移動機能と、CAD図面を回転させる回転機能と、CAD図面を所定の範囲毎に、x、y方向にピクセル単位で移動させるずれ補正機能とを含む。データ補正部24は、補正されたCAD図を、データ記憶部21に記憶させる。
【0017】
データ出力部25は、データ記憶部21に記憶されている、所定の基準長さを示す基準線(画像データ)や、補正されたCAD図などを、投影装置4に出力する。投影装置4は、情報処理装置2のデータ出力部25から出力される基準線(画像データ)や、補正されたCAD図などの映像を、現場の投影面に投影する。表示部26は、所謂モニタであり、撮影装置3により撮影された撮影画像や、情報処理装置2で実行されるCAD図に対する画像処理の過程などを表示する。
【0018】
撮影装置3は、建築構造物の投影面を撮影するカメラである。撮影装置3は、投影装置4で投影する映像のピクセル数(解像度)と同等以上のピクセル数を有しているのが好ましい。投影装置4は、建設現場で施工される建築構造物の投影面(例えば、床面)に、CAD図の映像を実寸大で投影して表示させる。
【0019】
図2は、本実施形態において、施工現場の投影面に対する撮影範囲及び投影範囲等を説明するための模式図である。図2において、撮影装置3による撮影範囲10は、ほぼ現場の投影面20と同等の領域をカバーしており、投影装置4による投影範囲11は、撮影範囲10よりやや小さめの領域をカバーしている。現場の投影面20には直交する2本の親墨(現場)L1、L2(第1の親墨)が墨出しされている。また、投影範囲11外で、かつ撮影範囲10内には、基準尺12が配置されている。基準尺12は、既知の長さを有するスケールである。
【0020】
図3は、本実施形態において、撮影画像から施工現場の投影面に墨出しした親墨(現場)を特定する方法を説明するための模式図である。なお、図3では、親墨(現場)L2についてのみ説明しているが、親墨(現場)L1についても同様の方法を適用するようになっている。
【0021】
本実施形態では、施工現場の投影面に墨出しした親墨(現場)L1、L2を、撮影装置3が撮像した撮影範囲10の撮影画像から認識する必要がある。しかしながら、施工現場においては、親墨(現場)L1、L2以外にも心墨/真墨、子墨などの線が多数引かれていたり、構造体である壁と床とのつなぎ目などが存在したりするため、撮影画像から親墨(現場)L1、L2を認識することは容易でない。そこで、本実施形態では、図3に示すように、親墨(現場)L2上にタグTを設置し、タグ検出部231により、撮影装置3が撮像した撮影範囲10の撮影画像からタグTを認識することで、タグTに交差する線を親墨(現場)L2として特定する。
【0022】
また、現場の投影面は、平坦とは限らず、上下方向に数mmの不陸があることが多い。このように凹凸がある投影面の表面に墨出しされた親墨(現場)L1、L2の線は、凹凸に倣って歪んだ状態で撮影されるため、親墨(現場)L1、L2を正確に認識することが困難となってしまう。そこで、本実施形態では、親墨(現場)特定部(直線近似部)232により、タグTの位置に基づいて検出した線の3点の座標から直線近似によって直線からなる親墨(現場)L1、L2を特定するようになっている。
【0023】
タグTとしては、文字や数字、あるいは二次元コードなどの画像であってもよい。特に、本実施形態では、タグTとして、図3に示すような、エイプリルタグ(Apriltag)を用いる。エイプリルタグの大きさは10cm×10cmを想定しているが、これに限らず、現場の状況に応じて適宜変更してもよい。
【0024】
図4及び図5は、本実施形態の墨出しシステムによる墨出し作業を説明するためのフローチャートである。なお、図4及び図5において、作業者が行う作業については点線のブロックで示し、墨出しシステム1により実行する動作を実線のブロックで示す。また、図6乃至図15は、本実施形態の墨出しシステムによる墨出し作業を説明するための画像である。
【0025】
まず、作業者は、図6に示すように、現場の投影面に親墨(現場)L1、L2を墨出しする(ステップS10)。親墨(現場)L1、L2は、現場の作業者の判断により、例えば、心墨から1000mm離れた位置などに墨出しされる。次に、作業者は、図7に示すように、親墨(現場)L1、L2の上にエイプリルタグT1、T2を設置する(ステップS12)。その際、X方向、Y方向のプラス側(→)でエイプリルタグT1、T2を配置する。X方向、Y方向のみで交点を認識すると、図面を上下反転しても成立し、解が2つになってしまう。そこで、X方向の+側、Y方向の+側を定義することにより、上下反転を防ぐ。次に、作業者は、図8に示すように、投影装置4の投影範囲11から外れ、撮影装置3の撮影範囲10に入るエリアに基準尺12を設置する(ステップS14)。その後、作業者は、情報処理装置2に対して、墨出し処理の実行を指示する。
【0026】
情報処理装置2は、データ取得部22により、エイプリルタグT1、T2と親墨(現場)L1、L2を包含する投射面を撮影装置3で撮影し(ステップS16)、検出部23のタグ検出部231により、撮影装置3で撮影された撮影画像から、エイプリルタグT1、T2の位置を認識する(ステップS18)。次に、情報処理装置2は、検出部23により、エイプリルタグT1、T2の位置から、現場の投影面に墨出しされたX軸、Y軸のそれぞれの親墨(現場)L1、L2を特定する(ステップS20)。より具体的には、親墨(現場)特定部(直線近似部)232が、図9に示すように、撮影画像からエイプリルタグT1、T2が載っている周辺のエリアを通過する線を抽出し、X軸、Y軸とも抽出した線の端部、中央の約3点(P1、P2、P3)から直線近似補間し、親墨(現場)L1、L2の線分を特定する。図9には、X軸の親墨(現場)L1についてのみ示しているが、Y軸の親墨(現場)L2の線分についても同様に直線近似補間して特定する。
【0027】
次に、情報処理装置2は、データ記憶部21から所定の長さを示す基準線(データ)STLを読み出し、図9に示すように、データ出力部25により、CAD図及び基準線STLを、投影装置4から現場の投影面に投影するとともに、撮影装置3で現場の投影面を撮影する(ステップS22)。基準尺12と基準線STLとは実際に同じ長さ(例えば、800mm)である。
【0028】
情報処理装置2は、撮影画像に基づいて、基準線STLが基準尺12と同じ長さ(ドット数)になるように、CAD図の縮尺を調整する(ステップS24)。例えば、撮影画像において、基準尺12の長さが500ドットの場合、撮影装置3で撮影した撮影画像内の基準線STLに対応する線分が基準尺12の長さと同じ500ドットになるように、CAD図の拡大/縮小率を調整する。
【0029】
例えば、撮影画像における基準線STLに対応する線分が250ドットであるとすると、基準線STLを含むCAD図を2倍に拡大すればよい。情報処理装置2は、CAD図の拡大/縮小率を調整し、撮影画像内において、現場の投影面に投影した基準線STLが基準尺12と同じ長さ(同じドット数)になったか否かを判断する(ステップS26)。そして、双方が同じ長さ(同じドット数)になっていなければ(ステップS26のNO)、ステップS22に戻り、双方が重なるまで拡大/縮小率の調整、投影、及び撮影を繰り返す。
【0030】
一方、撮影画像内において、現場の投影面に投影した基準線STLが基準尺12と同じ長さ(同じドット数)になれば(ステップS26のYES)、作業者は、エイプリルタグT1、T2を撤去する(ステップS28)。この段階で、CAD図の縮尺は現場の寸法に一致する。次に、作業者は、現場の投影面に墨入れした親墨(現場)L1、L2に対応する親墨(CAD)L3、L4(第2の親墨)をCAD図上に指定する(ステップS30)。CAD図上に、親墨(現場)L1、L2に対応する線分がない場合には、図10に示すように、CAD図30上に新たに親墨(現場)L1、L2に対応する親墨(CAD)L3、L4を入力する。該親墨(CAD)L3、L4は、容易に視認できるように、例えば、赤線(図面では白点線)で表示部26に表示される。また、CAD図30上に親墨(現場)L1、L2に対応する線分がある場合には、その線分を親墨(CAD)L3、L4に指定する。親墨(CAD)L3、L4は、CAD図30上に固定されているため、後述する処理において、親墨(CAD)L3、L4に対して行う画像処理に応じて、CAD図30も同様の画像処理が実行されることになる。
【0031】
次に、作業者は、撮影画像内の親墨(現場)L1とCAD図上に記入した親墨(CAD)L3とを紐付け、撮影画像内の親墨(現場)L2とCAD図上に記入した親墨(CAD)L4とを紐付ける(ステップS32)。具体的には、親墨(現場)L1がどれかを質問させ、作業者が親墨(CAD)L3を指定し、同様に、親墨(現場)L2がどれかを質問させ、作業者が親墨(CAD)L4を指定する。
【0032】
情報処理装置2は、撮影装置3の投影範囲11のどの位置に親墨(現場)L1、L2の交点があるのかを座標上で特定する(ステップS34)。原点を左上とし、撮影画像が2K映像の場合は、右下が(1920ピクセル、1080ピクセル)となるので、これを元に、親墨(現場)L1、L2の交点の(ピクセル)位置を特定する。次に、情報処理装置2は、図11に示すように、親墨(現場)L1、L2の交点の位置に親墨(CAD)L3、L4の交点を移動させる(ステップS36)。親墨(CAD)L3、L4は、CAD図30上の線分として指定されているので、データ上は、親墨(CAD)L3、L4を移動させることでCAD図30も移動することになる。
【0033】
次に、情報処理装置2は、親墨(現場)L1、L2と親墨(CAD)L3、L4との一部でも重なったか否かを判断し(ステップS38)、重なっていない場合には(ステップS38のNO)、親墨(現場)L1、L2と親墨(CAD)L3、L4が重なるように、図12に示すように、親墨(CAD)L3、L4の交点を中心に親墨(CAD)L3、L4を回転させる(ステップS40)。その際、親墨(CAD)L3、L4だけを表示部26に表示させ、それ以外(CAD図)を非表示にする。但し、データ上は、親墨(CAD)L3、L4を回転させることでCAD図30(不図示)も回転する。そして、親墨(現場)L1、L2と親墨(CAD)L3、L4の一部でも重なるまで、ステップS38、S40を繰り返す。
【0034】
一方、親墨(現場)L1、L2と親墨(CAD)L3、L4の一部でも重なると(ステップS38のYES)、情報処理装置2は、親墨(現場)L1、L2と親墨(CAD)L3、L4とにズレがあるか否かを判断する(ステップS42)。どこかを基準にして重なるように補正したとしても、全ての箇所が完全に重なる可能性は低く、それをズレと称する。例えば、図13に示すように、交点を中心に親墨(CAD)L3、L4を回転させた場合、X軸の一部(左端)で、親墨(現場)L1と親墨(CAD)L3の一部が重なっているが、その他の箇所では重ならず、ズレが生じている。このような場合、親墨(現場)L1、L2と親墨(CAD)L3、L4とにズレがあると判断し(ステップS42のYES)、図14に示すように、その部分だけCAD図30(不図示)を所定の領域毎にピクセル単位で変形させる(ステップS44)。
【0035】
そして、ズレがなくなり(所定の許容範囲内になり)、CAD図の変形が終了すると(ステップS42のNO)、情報処理装置2は、データ出力部25から投影装置4により、CAD図を現場の投影面に投影する(ステップS46)。その後、作業者は、図15に示すように、投影面に投影されたCAD図面に従って墨出し作業を行う。また、異なる施工現場に移動して墨出しを行う盛替えがある場合には、上述したステップS10から再度行う。
【0036】
上述した実施形態によれば、現場の投影面に墨出しを行った親墨(現場)L1、L2上にエイプリルタグT1、T2を配置することで、撮影装置3で撮影された撮影画像から認識されたエイプリルタグT1、T2の位置から撮影画像内の親墨(現場)L1、L2を容易に、かつ正確に特定することができるので、特定した親墨(現場)L1、L2に基づいてCAD図(施工図)を適切に補正することが可能となり、CAD図(施工図)を実際の現場の実寸通りに、短時間で、かつ正確に投影することができる。
【0037】
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 墨出しシステム
2 情報処理装置
3 撮影装置
4 投影装置
10 撮影範囲
11 投影範囲
12 基準尺
20 投影面(例えば、床面)
21 データ記憶部
22 データ取得部
23 検出部
231 タグ検出部
232 親墨(現場)特定部(直線近似部)
24 データ補正部
25 データ出力部
26 表示部
30 CAD図面
L1、L2 親墨(現場)
L3、L4 親墨(CAD)
T1、T2 タグ(エイプリルタグ)
STL 基準線(データ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15