(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088826
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】浮遊物観測装置
(51)【国際特許分類】
G01N 15/0227 20240101AFI20240626BHJP
C02F 1/00 20230101ALI20240626BHJP
【FI】
G01N15/02 B
C02F1/00 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203811
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松永 晃
(72)【発明者】
【氏名】チャン ティタントゥイ
(72)【発明者】
【氏名】布 光昭
(72)【発明者】
【氏名】権 大維
(72)【発明者】
【氏名】上中 哲也
(57)【要約】
【課題】復元力を増大させることと重心を下げることを両立させることが可能な浮遊物観測装置を提供する。
【解決手段】観測対象液2の液面5に浮いた状態で観測対象液2中の浮遊物4を観測する浮遊物観測装置11であって、第1方向に流れる観測対象液2に交差する第2方向6において相対向する一対の浮体12,13と、浮体12,13に支持されて液面5の上方から液面下の浮遊物4を撮像する撮像装置14とを有し、浮体12,13は、液面5と交差する第1浮体部21と、第1浮体部21から下方に延びて液面下に没している第2浮体部22とを有し、第1浮体部21の水平断面積が第2浮体部22の水平断面積よりも広く設定され、観測対象液2は一対の浮体12,13間を第1方向に流れる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
観測対象液の液面に浮いた状態で観測対象液中の浮遊物を観測する浮遊物観測装置であって、
第1方向に流れる観測対象液に交差する第2方向において相対向する一対の浮体と、浮体に支持されて液面の上方から液面下の浮遊物を撮像する撮像装置とを有し、
浮体は、液面と交差する第1浮体部と、第1浮体部から下方に延びて液面下に没している第2浮体部とを有し、
第1浮体部の水平断面積が第2浮体部の水平断面積よりも広く設定され、
観測対象液は一対の浮体間を第1方向に流れることを特徴とする浮遊物観測装置。
【請求項2】
第1浮体部は喫水線の上下方向の変動幅以上の高さを有し、
第1浮体部の水平断面積が少なくとも喫水線の上下方向の変動幅にわたって一定であることを特徴とする請求項1記載の浮遊物観測装置。
【請求項3】
第2浮体部の上下方向の長さが第1浮体部の上下方向の長さよりも長いことを特徴とする請求項2記載の浮遊物観測装置。
【請求項4】
浮体は第1方向に流れる観測対象液の上流側に向いた先端部が尖っていることを特徴とする請求項1記載の浮遊物観測装置。
【請求項5】
第1浮体部は対向する隣りの浮体に向かって第2浮体部の上端から第2方向へ張り出す張出部を有し、
張出部の下方に、浮体の浮力を調節するバラスト装置が設けられていることを特徴とする請求項1記載の浮遊物観測装置。
【請求項6】
撮像装置は、液面下の撮像範囲における浮遊物を撮像する撮像機器と、撮像範囲の周りを取り囲んで液面の波を遮る波除け部材とを有し、
波除け部材は、第1方向に流れる観測対象液の上流側に開口する流入口と、第1方向に流れる観測対象液の下流側に開口する流出口とを有していることを特徴とする請求項1記載の浮遊物観測装置。
【請求項7】
撮像装置はシートレーザ光を液面の上方から液面下の浮遊物に照射する光源を有し、
撮像機器は、液面下の撮像範囲においてシートレーザ光で照射された浮遊物を、液面の上方から撮像し、
撮像範囲は波除け部材の内側に形成されていることを特徴とする請求項6記載の浮遊物観測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観測対象液の液面に浮いた状態で観測対象液中の浮遊物を観測する浮遊物観測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の浮遊物観測装置としては、例えば下記特許文献1に記載されているように、浄水場の処理水槽内の水面に浮いた状態で水中のフロックを観測するものがある。この浮遊物観測装置は、下端が開口した遮光フードと、遮光フード内に設けられたカメラと、遮光フード内に設けられた照明と、遮光フードに設けられた浮体とを有している。浮体は長方形の断面形状を有している。
【0003】
遮光フードと処理水槽の壁面とはリンク機構を介して連結され、浮遊物観測装置は、リンク機構を介して処理水槽の壁面に連結された状態で、水面の上下変動に追従して上下揺動可能である。
【0004】
これによると、浮遊物観測装置は浮体の浮力によって水面に浮き、この状態で、照明の光を遮光フード内の水面に照射し、カメラで遮光フード内の水面を撮影して水中のフロックを観測する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の従来形式では、水面の変動に伴って浮遊物観測装置が上下に移動する際、リンク機構と遮光フードとの接続部分が互いに摺動する。水面が想定を超えて上昇し、リンク機構と遮光フードとの接続部分の摺動部が水面下に没した場合、リンク機構と遮光フードとの接続部分の摺動部にフロック等が挟まるなどして、リンク機構がスムーズに動作しなくなり、カメラから水面までの距離を一定に保つことができない虞がある。このような不具合を防止するため、リンク機構と遮光フードとの接続部分を定期的にメンテナンスする必要がある。
【0007】
上記のように、従来形式では、浮遊物観測装置の姿勢を保つためにリンク機構を用いているが、本発明は、リンク機構を用いずに浮遊物観測装置の姿勢を保つため、復元力を増大させることと重心を下げることを両立させることが可能な浮遊物観測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本第1発明は、観測対象液の液面に浮いた状態で観測対象液中の浮遊物を観測する浮遊物観測装置であって、
第1方向に流れる観測対象液に交差する第2方向において相対向する一対の浮体と、浮体に支持されて液面の上方から液面下の浮遊物を撮像する撮像装置とを有し、
浮体は、液面と交差する第1浮体部と、第1浮体部から下方に延びて液面下に没している第2浮体部とを有し、
第1浮体部の水平断面積が第2浮体部の水平断面積よりも広く設定され、
観測対象液は一対の浮体間を第1方向に流れるものである。
【0009】
これによると、第1浮体部が液面と交差しており、第1浮体部の水平断面積が第2浮体部の水平断面積よりも広いため、浮遊物観測装置が傾いたときの復元力が増大する。
【0010】
また、第2浮体部は第1浮体部から下方に延びて液面下に没しており、第2浮体部の水平断面積が第1浮体部の水平断面積よりも小さいため、十分な浮力を得るためには第2浮体部の高さ(上下方向の長さ)を高く(長く)する必要がある。これにより、浮遊物観測装置の重心が下がり、以って、浮遊物観測装置の揺れが抑制され、浮遊物観測装置の安定性が向上する。
【0011】
本第2発明における浮遊物観測装置は、第1浮体部は喫水線の上下方向の変動幅以上の高さを有し、
第1浮体部の水平断面積が少なくとも喫水線の上下方向の変動幅にわたって一定であるものである。
【0012】
これによると、例えば浮体に重りを載せて喫水線の位置を調節する際、単位重さ当りの浮体の沈み量が一定の値に保たれる。このため、必要な重さを計算によって容易に求めることができ、喫水線の位置を容易に調節することができる。
【0013】
本第3発明における浮遊物観測装置は、第2浮体部の上下方向の長さが第1浮体部の上下方向の長さよりも長いものである。
【0014】
これによると、液面から第2浮体部の下端までの深さが増大するため、浮遊物観測装置の重心が下がり、浮遊物観測装置の安定性が向上する。
【0015】
本第4発明における浮遊物観測装置は、浮体は第1方向に流れる観測対象液の上流側に向いた先端部が尖っているものである。
【0016】
これによると、浮体が第1方向に流れる観測対象液から受ける抵抗が減少する。このため、浮遊物観測装置の安定性が向上する。
【0017】
本第5発明における浮遊物観測装置は、第1浮体部は対向する隣りの浮体に向かって第2浮体部の上端から第2方向へ張り出す張出部を有し、
張出部の下方に、浮体の浮力を調節するバラスト装置が設けられているものである。
【0018】
これによると、バラスト装置を用いて浮体の浮力を調節することにより、浮体の第1浮体部の喫水線の位置を上下に調節することができる。
【0019】
また、張出部の下方で且つ第2浮体部の内側方に形成されたスペースを有効に利用してバラスト装置を設けることができるため、浮遊物観測装置を第2方向において小型化することができる。
【0020】
本第6発明における浮遊物観測装置は、撮像装置は、液面下の撮像範囲における浮遊物を撮像する撮像機器と、撮像範囲の周りを取り囲んで液面の波を遮る波除け部材とを有し、
波除け部材は、第1方向に流れる観測対象液の上流側に開口する流入口と、第1方向に流れる観測対象液の下流側に開口する流出口とを有しているものである。
【0021】
これによると、観測対象液は、一対の浮体間を第1方向に流れながら、流入口から波除け部材の内側に流入し、波除け部材の内側を第1方向に流れて、流出口から波除け部材の外側へ流出する。
【0022】
波除け部材の内側を流れる観測対象液を撮像機器で撮像することにより、観測対象液中の浮遊物を観測することができる。この際、液面の波は波除け部材によって遮られるため、撮像範囲の周囲における波の発生を抑制することができ、波の影響を排除した状態で、浮遊物を撮像することができる。これにより、浮遊物の鮮明な画像を得ることができる。
【0023】
本第7発明における浮遊物観測装置は、撮像装置はシートレーザ光を液面の上方から液面下の浮遊物に照射する光源を有し、
撮像機器は、液面下の撮像範囲においてシートレーザ光で照射された浮遊物を、液面の上方から撮像し、
撮像範囲は波除け部材の内側に形成されているものである。
【0024】
これによると、外光(シートレーザ光以外の光)が波除け部材の外側から液面に入射して観測対象液中の浮遊物に反射しても、反射した外光は、液面下において波除け部材により遮られるので、撮像機器に届かない。これにより、外光の影響を排除して観測対象液中の浮遊物を観測することができる。
【発明の効果】
【0025】
以上のように本発明によると、浮遊物観測装置が傾いたときの復元力を増大させることと、浮遊物観測装置の重心を下げることとを両立させることが可能であり、これにより、浮遊物観測装置の揺れが抑制され、浮遊物観測装置の安定性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の第1の実施の形態における浮遊物観測装置の概略側面図であり、水路に係留されている様子を示す。
【
図4】同、浮遊物観測装置の一部切欠き側面図である。
【
図6】同、浮遊物観測装置の片方の浮体の第1浮体部の水平断面積と第2浮体部の水平断面積を示す図である。
【
図7】同、原水の流れ方向から見たときの、浮遊物観測装置の撮像装置の断面図である。
【
図8】同、水路の幅方向から見たときの、浮遊物観測装置の撮像装置の波除け部材の断面図である。
【
図9】同、浮遊物観測装置の正面図であり、浮遊物観測装置が一側方へ傾いた様子を示す。
【
図10】本発明の第1の実施の形態に対する比較例1における浮遊物観測装置の正面図である。
【
図11】本発明の第1の実施の形態に対する比較例2における浮遊物観測装置の正面図である。
【
図12】本発明の第2の実施の形態における浮遊物観測装置の正面図である。
【
図13】本発明の第3の実施の形態における浮遊物観測装置の浮体の正面図である。
【
図14】本発明の第4の実施の形態における浮遊物観測装置の浮体の正面図である。
【
図15】本発明の第5の実施の形態における浮遊物観測装置の浮体の配置を示す概略平面図である。
【
図16】本発明の第6の実施の形態における浮遊物観測装置の浮体の配置を示す概略平面図である。
【
図17】本発明の第7の実施の形態における浮遊物観測装置の浮体の配置を示す概略平面図である。
【
図18】本発明の第8の実施の形態における浮遊物観測装置の浮体の配置を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明における実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0028】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態では、
図1に示すように、浄水場等のフロック形成池には水路1が形成され、原水2(観測対象液の一例)が水路1内を第1方向3(以下、原水2の流れ方向3と称する)に流れる。水路1は屋外にあり、原水2中には多数のフロック4(浮遊物の一例)が生成されている。
【0029】
水路1内には、原水2の水面5(液面の一例)に浮いた状態で原水2中のフロック4を観測する浮遊物観測装置11が係留されている。
図2~
図5に示すように、浮遊物観測装置11は、原水2の流れ方向3に直交(交差の一例)する第2方向6(以下、水路1の幅方向6と称する)において相対向する一対の浮体12,13と、両浮体12,13に支持されて水面5の上方から水面5下のフロック4を撮像する撮像装置14とを有している。
【0030】
図1,
図2に示すように、水路1の上部には梁7が架け渡されている。梁7には、水路1の幅方向6において対向する一対の支柱8,9が下向きに設けられている。一方の浮体12は一方のロープ16(索体の一例)を介して一方の支柱8に係留され、他方の浮体13は他方のロープ17(索体の一例)を介して他方の支柱9に係留されている。
【0031】
図2~
図5に示すように、浮体12,13はそれぞれ、内部が空洞になった金属(例えばステンレス等)製の箱状の部材であり、水面5と交差する(接する)第1浮体部21と、第1浮体部21から下方に延びて水面5下に没している第2浮体部22とを有している。
【0032】
原水2は一対の浮体12,13間を流れ方向3(すなわち第1方向)に流れる。
【0033】
図6に示すように、流れ方向3における第1浮体部21の長さL1は第2浮体部22の長さL2と同じに設定されている。また、第1浮体部21の幅W1は第2浮体部22の幅W2よりも大きく設定されている。これにより、
図6の斜線で示した第1浮体部21の水平断面積S1は第2浮体部22の水平断面積S2よりも広く設定されている。
【0034】
図2,
図6に示すように、第1浮体部21は、流れ方向3における上流側に向いた先端部が山形状に尖っているとともに、下流側に向いた先端部が山形状に尖っている。同様に、
図5,
図6に示すように、第2浮体部22は、流れ方向3における上流側に向いた先端部が尖っているとともに、下流側に向いた先端部が尖っている。
【0035】
図3,
図4,
図6に示すように、第1浮体部21は喫水線23の上下方向の変動幅24以上の高さH1(上下方向の長さ)を有している。第1浮体部21の水平断面積S1は第1浮体部21の高さH1にわたって一定である。
【0036】
第2浮体部22の高さH2(上下方向の長さ)は第1浮体部21の高さH1よりも高く設定されている。第2浮体部22の水平断面積S2は第2浮体部22の高さH2にわたって一定である。
【0037】
図3,
図5に示すように、一方の浮体12の第1浮体部21は、対向する他方の浮体13に向かって第2浮体部22の上端から幅方向6へ張り出す張出部21aを有している。同様に、他方の浮体13の第1浮体部21は、対向する一方の浮体12に向かって第2浮体部22の上端から幅方向6へ張り出す張出部21aを有している。
【0038】
一方の浮体12の第2浮体部22の下端と他方の浮体13の第2浮体部22の下端との間には、ブレース等の補強部材27が設けられている。
【0039】
図7に示すように、撮像装置14は、シートレーザ光30(観測光の一例)を両浮体12,13間の水面5の上方から水面5下のフロック4に照射する光源31と、水面5下の撮像範囲32においてシートレーザ光30で照射されたフロック4を水面5の上方から撮像するカメラ33(撮像機器の一例)と、光源31およびカメラ33を収容するケース34とを有している。
【0040】
シートレーザ光30は、平面視において光源31から原水2の流れ方向3へ扇状に拡がっているとともに、
図7に示すように流れ方向3から見てほぼ線状になっている。
【0041】
また、撮像範囲32とはシートレーザ光30で照射されたフロック4をカメラ33で撮像するときの範囲であり、カメラ33の焦点は撮像範囲32に合わせられている。
【0042】
尚、浮遊物観測装置11を製造する際の誤差等によって浮体12,13や撮像装置14の重さには僅かなばらつきがあり、このため、喫水線23が変動幅24の範囲内において上下に変動することがある。このように、喫水線23が変動すると、カメラ33から水面5までの距離が設計値と異なって、カメラ33で撮像した画像が不鮮明になる虞がある。このため、カメラ33から水面5までの距離が設計値と一致するように、喫水線23の位置が調節されている。
【0043】
ケース34は、両浮体12,13の上端部間に架け渡された支持フレーム35に支持されており、水面5上に露出したケース部材36と、ケース部材36の下部に設けられた波除け部材37とを有している。波除け部材37は、撮像範囲32の周りを取り囲んで水面5の波を遮るものであり、正面視において幅が下方ほど縮小している逆三角形状を有している。撮像範囲32は波除け部材37の内側に形成されている。
【0044】
図3~
図5および
図8に示すように、波除け部材37は、原水2の流れ方向3における上流側に開口する流入口38と、流れ方向3における下流側に開口する流出口39とを有している。流入口38は水面5下に没している。また、流出口39は水面5(すなわち喫水線23)が通る高さに形成されている。
【0045】
尚、水面5が流出口39を通るように浮体12,13の第1浮体部21の喫水線23の位置が調節されている。
【0046】
また、波除け部材37の下端部には、水面5下において開口する細長いスリット状の下部排出口40が形成されている。
【0047】
以下、上記構成における作用を説明する。
【0048】
図2,
図4および
図8に示すように、水路1内を流れる原水2は、一対の浮体12,13間を流れ方向3へ流れながら、撮像装置14の流入口38から波除け部材37の内側に流入し、波除け部材37の内側を流れ方向3に流れて、流出口39から波除け部材37の外側へ流出する。
【0049】
この状態で、
図7に示すように、光源31から水面5に向かってシートレーザ光30を照射し、カメラ33で撮像範囲32内のフロック4を撮像する。この際、水面5の波は波除け部材37によって遮られるため、波除け部材37の内側における波の発生が抑制され、波の影響を排除した状態で、原水2中のフロック4を撮像することができる。これにより、フロック4の鮮明な画像を得ることができる。
【0050】
また、水面5に浮遊しているスカムが原水2と共に流入口38から波除け部材37の内側に流入しても、
図8に示すように、流出口39は水面5が通る高さに形成されているため、スカムは波除け部材37の内側から流出口39を通って波除け部材37の外側へ容易に排出される。これにより、波除け部材37の内側にスカムが滞留するのを防止することができる。
【0051】
また、
図7に示すように、撮像範囲32は波除け部材37の内側に形成されているため、外光41(光源31から照射されるシートレーザ光30以外の外部からの光であって例えば太陽光等)が波除け部材37の外側から水面5に入射して原水2中のフロック4に反射しても、反射した外光42は、水面5下において波除け部材37により遮られるので、カメラ33のレンズに届かない。これにより、外光41,42の影響を排除して原水2中のフロック4を観測することができる。
【0052】
また、原水2と共に流入口38から波除け部材37の内側に流入したフロック4が沈降した場合、沈降したフロック4は波除け部材37の内側から下部排出口40を通って波除け部材37の下方へ排出される。これにより、フロック4が波除け部材37の内側に沈殿して滞留してしまうのを防止することができる。
【0053】
また、
図7に示すように、太陽光等の外光41はケース部材36によって遮られるため、外光41がカメラ33のレンズに入射するのを防止することができる。このように、外光41の影響を排除して原水2中のフロック4を観測することができるため、例えば透明度の高い原水2(浄水等)であっても、精度の高い観測を行うことができる。
【0054】
また、
図3に示すように浮体12,13の第1浮体部21が水面5と交差して(接して)おり、
図6に示すように第1浮体部21の水平断面積S1が第2浮体部22の水平断面積S2よりも広いため、浮遊物観測装置11が傾いたときの復元力が増大する。
【0055】
例えば、
図9に示すように、浮遊物観測装置11が水面5で形成される波の影響により一側方へ傾いて一方の浮体12がΔDだけ沈んだ場合、一方の浮体12の浮力は、「沈み量ΔD×第1浮体部21の水平断面積S1」で示される体積に相当する浮力ΔFだけ増加する。この増加した浮力ΔFを、以下、増加浮力ΔFと称する。
【0056】
浮遊物観測装置11の重心Aから増加浮力ΔFの作用点までの間の水平距離を距離Lとすると、一側方へ傾いた浮遊物観測装置11には、復元する方向へモーメントMが発生する。このモーメントMは「増加浮力ΔF×距離L」で示される。ここで、
図6に示すように第1浮体部21の水平断面積S1は第2浮体部22の水平断面積S2よりも広く、
図9に示すように水面5は第1浮体部21と交差しているため、水面5が第2浮体部22と交差している場合に比べて、より大きな増加浮力ΔFが発生する。これにより、モーメントMが増大し、浮遊物観測装置11が傾いたときの復元力が増大する。
【0057】
また、
図3に示すように、第2浮体部22は第1浮体部21から下方に延びて水面5下に没しており、第2浮体部22の水平断面積S2が第1浮体部21の水平断面積S1よりも小さいため、十分な浮力を得るためには第2浮体部22の高さH2を高くする必要がある。これにより、水面5から第2浮体部22の下端までの深さが増大するため、浮遊物観測装置11の重心Aが下がり、浮遊物観測装置11の揺れが抑制され、浮遊物観測装置11の安定性が向上する。
【0058】
また、
図2,
図5に示すように、浮体12,13は流れ方向3における上流側に向いた先端部が尖っているため、浮体12,13が水路1内を流れる原水2から受ける抵抗は減少する。このため、浮遊物観測装置11の安定性がさらに向上する。
【0059】
上記のようなことから、浮遊物観測装置11が傾いたときの復元力を増大させることと、浮遊物観測装置11の重心Aを下げることとを両立させることが可能であり、これにより、浮遊物観測装置11の揺れが抑制され、浮遊物観測装置11の安定性が向上する。
【0060】
また、カメラ33から水面5までの距離を設計値に合わせるため、浮体12,13上に重りを載せて、
図3に示すように第1浮体部21の喫水線23の位置を調節することがある。
【0061】
このような喫水線23の調節を行う場合、第1浮体部21の水平断面積S1は第1浮体部21の高さH1にわたって一定であるため、単位重さ当たりの両浮体12,13の沈み量A[mm/kg]は一定の値に保たれる。このため、必要な重さを容易に求めることができ、喫水線23の位置を容易に調節することができる。
【0062】
例えば、上記沈み量Aが2[mm/kg]である場合、水面5に浮かんでいる浮体12,13をさらに4mmだけ沈めて喫水線23を4mmだけ上昇させるには、両浮体12,13上に2kgの重りを載せればよい。
【0063】
或いは、2kgの重りを載せた状態から浮体12,13を2mmだけ浮き上がらせて喫水線23を2mmだけ下降させるには、両浮体12,13上に載せた2kgの重りのうちの1kg分の重りを両浮体12,13上から取り除けばよい。
【0064】
このようにして第1浮体部21の喫水線23の位置を調節することにより、カメラ33から水面5までの距離を設計値に容易に合わせることができる。
【0065】
(比較例1)
上述した第1の実施の形態では、
図3に示すように、両浮体12,13はそれぞれ第1浮体部21と第2浮体部22とを有しているが、以下に説明する比較例1では、
図10に示すように、両浮体12,13はそれぞれ、第1浮体部21を有しているが、第2浮体部22を有していない。
【0066】
上述した第1の実施の形態では、第1浮体部21の水平断面積S1が第2浮体部22の水平断面積S2よりも広く設定されている。このため、比較例1では、水面5から浮体12,13の下端までの深さDを第1の実施の形態のものよりも浅くして、必要な浮力を確保することができる。
【0067】
これにより、比較例1では、浮遊物観測装置11が傾いたときの復元力は第1の実施の形態のものと同様に増大するが、浮遊物観測装置11の重心Aが第1の実施の形態のものよりも高い位置になる。このため、浮遊物観測装置11は第1の実施の形態のものと比べて揺れ易くなり、浮遊物観測装置11の安定性は第1の実施の形態のものと比べて低下する。
【0068】
(比較例2)
上述した第1の実施の形態では、
図3に示すように、両浮体12,13はそれぞれ第1浮体部21と第2浮体部22とを有しているが、以下に説明する比較例2では、
図11に示すように、両浮体12,13はそれぞれ、第2浮体部22を有しているが、第1浮体部21を有していない。
【0069】
上述した第1の実施の形態では、第2浮体部22の水平断面積S2は第1浮体部21の水平断面積S1よりも小さく設定されている。このため、比較例2において、必要な浮力を確保するためには、水面5から浮体12,13の下端までの深さDが第1の実施の形態のものよりも深くなる。
【0070】
これにより、比較例2では、浮遊物観測装置11の重心Aが第1の実施の形態のものよりも低い位置になり、第1の実施の形態のものと同様に、浮遊物観測装置11の揺れが抑制され、浮遊物観測装置11の安定性が向上する。
【0071】
しかしながら、上記のように水平断面積S2が水平断面積S1よりも小さいので、比較例2では、浮遊物観測装置11が一方向へ傾いた際の増加浮力ΔFは第1の実施の形態のものよりも小さくなり、このため、復元する方向のモーメントMも第1の実施の形態のものより小さくなる。従って、浮遊物観測装置11が傾いたときの復元力は第1の実施の形態のものと比べて低下する。
【0072】
上記のように、比較例1と比較例2では、浮遊物観測装置11が傾いたときの復元力を増大させることと、浮遊物観測装置11の重心Aを下げることとを同時に両立させることは困難である。
【0073】
(第2の実施の形態)
上記第1の実施の形態では、浮体12,13上に重りを載せて、第1浮体部21の喫水線23の位置を調節しているが、以下に説明する第2の実施の形態では、
図12に示すように、重りの代わりにバラストタンク26(バラスト装置の一例)が一方の浮体12の張出部21aの下方と他方の浮体13の張出部21aの下方とにそれぞれ設けられている。バラストタンク26には、バラスト水をバラストタンク26に対して注入および排出するための配管43が接続されている。
【0074】
これによると、配管43を通してバラスト水をバラストタンク26に注入したりバラストタンク26から排出してバラストタンク26内のバラスト水の量を調節することにより、浮遊物観測装置11全体の重量を調節して、浮体12,13の第1浮体部21の喫水線23の位置を上下に調節することができる。
【0075】
また、張出部21aの下方で且つ第2浮体部22の内側方に形成されたスペース44を有効に利用してバラストタンク26を設けることができるため、浮遊物観測装置11を幅方向6において小型化することができる。
【0076】
尚、上記第2の実施の形態では、バラストタンク26を、浮体12,13の外部に取り付けているが、浮体12,13の内部に取り付けてもよい。
【0077】
(第3および第4の実施の形態)
上記第1の実施の形態では、
図3,
図6に示すように、浮体12,13の第2浮体部22は一定の水平断面積S2を有しているが、第3の実施の形態として、
図13に示すように、第2浮体部22を、その水平断面積S2が下方ほど連続的に徐々に小さくなるような形状にしてもよい。
【0078】
また、第4の実施の形態として、
図14に示すように、第2浮体部22を、その水平断面積S2が下方ほど段階的に小さくなるような形状にしてもよい。
【0079】
(第5~第8の実施の形態)
上記第1の実施の形態では、
図2に示すように、両浮体12,13が平行に配置されているが、第5の実施の形態では、
図15に示すように、両浮体12,13が「ハ」の字状に配置されて、両浮体12,13の間隔は原水2の流れ方向3における上流側が下流側よりも拡大されている。
【0080】
また、第6の実施の形態では、
図16に示すように、両浮体12,13が逆「ハ」の字状に配置されて、両浮体12,13の間隔は原水2の流れ方向3における下流側が上流側よりも拡大されている。
【0081】
また、第7の実施の形態では、
図17に示すように、一方の浮体12が、流れ方向3(前後方向)において、上流側の分割浮体12aと下流側の分割浮体12bとに二分割されている。同様に、他方の浮体13も上流側の分割浮体13aと下流側の分割浮体13bとに二分割されている。上流側の両分割浮体12a,13aの間隔は原水2の流れ方向3における下流側が上流側よりも拡大されている。また、下流側の両分割浮体12b,13bの間隔は原水2の流れ方向3における上流側が下流側よりも拡大されている。
【0082】
また、第8の実施の形態では、
図18に示すように、上流側の両分割浮体12a,13aの間隔は原水2の流れ方向3における上流側が下流側よりも拡大されている。また、下流側の両分割浮体12b,13bの間隔は原水2の流れ方向3における下流側が上流側よりも拡大されている。
【0083】
上記各実施の形態では、浮遊物観測装置11をフロック形成池の水路1に係留しているが、フロック形成池以外、例えば沈殿池等に設けてもよい。また、浮遊物の一例であるフロック4を浮遊物観測装置11で観測しているが、フロック4以外の粒子を観測してもよい。
【符号の説明】
【0084】
2 原水(観測対象液)
3 流れ方向(第1方向)
4 フロック(浮遊物)
5 水面(液面)
6 幅方向(第2方向)
11 浮遊物観測装置
12,13 浮体
14 撮像装置
21 第1浮体部
21a 張出部
22 第2浮体部
23 喫水線
24 変動幅
26 バラストタンク(バラスト装置)
30 シートレーザ光
31 光源
32 撮像範囲
33 カメラ(撮像機器)
37 波除け部材
38 流入口
39 流出口
H1 第1浮体部の高さ(上下方向の長さ)
H2 第2浮体部の高さ(上下方向の長さ)
S1 第1浮体部の水平断面積
S2 第2浮体部の水平断面積