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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088827
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】車体前部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20240626BHJP
   B62D 21/00 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
B62D25/08 E
B62D21/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203813
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】前田 祥宏
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203AA31
3D203AA33
3D203BA06
3D203BA16
3D203BB16
3D203BB17
3D203BC14
3D203CA23
3D203CA40
3D203CA53
3D203CA66
3D203DB07
(57)【要約】
【課題】車両前方側から衝突が発生した際に、駆動用モータユニットを保護する。
【解決手段】モータユニット部20と、メインフレーム部110と、ストラットタワーリインフォース部230と、車両上方側にモータユニット部20を固定するモータサポートビーム310と、モータサポートビーム310をメインフレーム部110およびストラットタワーリインフォース部230に固定するサポートビームブラケット320と、を備え、サポートビームブラケット320は、締結部FX1によって、モータサポートビーム310に固定され、締結部FX2によって、サポートビームブラケット320の車両下方側がメインフレーム部110に固定され、締結部FX3によって、サポートビームブラケット320の車両上方側がストラットタワーリインフォース部230に固定されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を駆動するモータユニット部と、
車幅方向両側に設けられ、車両前後方向に延在するメインフレーム部と、
前輪のサスペンションを支持するストラットタワー部の車両前方側において車両上下方向に延在し、ストラットタワー部の剛性を補強するストラットタワーリインフォース部と、
平面視において、投影面積が前記モータユニット部よりも大きく、車両上方側に前記モータユニット部を固定するモータサポートビームと、
前記モータサポートビームを前記メインフレーム部およびストラットタワーリインフォース部に固定するサポートビームブラケットと、
を備え、
前記サポートビームブラケットは、第1の締結部により、前記モータサポートビームに固定され、第2の締結部により、前記サポートビームブラケットの車両下方側が前記メインフレーム部に固定され、第3の締結部により、前記サポートビームブラケットの車両上方側が前記ストラットタワーリインフォース部に固定されていることを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記メインフレーム部の車両上方側に、車体前部の外周部を囲むように配設されているアッパーフレーム部をさらに備え、
前記ストラットタワーリインフォース部は、前記ストラットタワー部の車両前方側に配設され、前記ストラットタワーリインフォース部の車両上方部は、前記アッパーフレーム部に結合され、前記ストラットタワーリインフォース部の車両下方部は、前記メインフレーム部に結合されていることを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記モータサポートビームの車両前方側辺には、前記モータユニット部の車両前方側に屈曲した保護壁が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車体前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両の前面衝突においては、乗員の傷害を低減させる手段として乗員の搭乗空間であるキャビンを変形させない事が重要であり、キャビンより前方の車体前部構造で衝突エネルギーを吸収する構造が広く採用されている。
【0003】
一方で、車両がハイブリッド車両や電気自動車等の場合には、車体前部構造に駆動用モータユニットが収容されている場合がある。
駆動用モータユニットには、車両を駆動させる高電圧を伴う電力が供給されており、車両の前面衝突等により駆動用モータユニットに変形や断線が発生し、車両の車体あるいは衝突物に接触した場合には、急激な異常反応を生じる虞もある。したがって、高電圧がかかっている電気ユニットが、車両の車体あるいは衝突物と干渉しない構造が求められている。
【0004】
このような要求に伴って、例えば、特許文献1においては、車室内空間と該車室内空間よりも下側の空間とを仕切るフロアパネルと、車室内空間と該車室内空間よりも前側の空間とを仕切るダッシュパネルと、該ダッシュパネルの前方においてそれぞれ前後方向に延設された左右一対のフロントサイドフレーム(メインフレーム)と、該左右のフロントサイドフレーム間の空間に配設された駆動用モータと、該モータに電力を供給するバッテリとを備えた車両において、バッテリを、少なくとも一部がモータに正面視で重複するように該モータの後方に配設し、前方から所定の大きさ以上の衝撃荷重を受けたときに、駆動用モータを、バッテリの下方へ後退するように設ける技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-152841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術においては、例えば、電信柱のようなメインフレームにラップしない衝突物に車両が前面衝突した場合に、駆動用モータ等の高電圧が供給されている電気部品が、衝突時の衝撃によって車両の車体あるいは衝突物と接触してしまう虞があるという課題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、車両前方側からの衝突が発生した際に、駆動用モータユニットを保護する車体前部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
形態1;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、車両を駆動するモータユニット部と、車幅方向両側に設けられ、車両前後方向に延在するメインフレーム部と、前輪のサスペンションを支持するストラットタワー部の車両前方側において車両上下方向に延在し、ストラットタワー部の剛性を補強するストラットタワーリインフォース部と、平面視において、投影面積が前記モータユニット部よりも大きく、車両上方側に前記モータユニット部を固定するモータサポートビームと、前記モータサポートビームを前記メインフレーム部およびストラットタワーリインフォース部に固定するサポートビームブラケットと、を備え、前記サポートビームブラケットは、第1の締結部により、前記モータサポートビームに固定され、第2の締結部により、前記サポートビームブラケットの車両下方側が前記メインフレーム部に固定され、第3の締結部により、前記サポートビームブラケットの車両上方側が前記ストラットタワーリインフォース部に固定されている車体前部構造を提案している。
【0009】
形態2;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記メインフレーム部の車両上方側に、車体前部の外周部を囲むように配設されているアッパーフレーム部をさらに備え、前記ストラットタワーリインフォース部は、前記ストラットタワー部の車両前方側に配設され、前記ストラットタワーリインフォース部の車両上方部は、前記アッパーフレーム部に結合され、前記ストラットタワーリインフォース部の車両下方部は、前記メインフレーム部に結合されている車体前部構造を提案している。
【0010】
形態3;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記モータサポートビームの車両前方側辺には、前記モータユニット部の車両前方側に屈曲した保護壁が形成されている車体前部構造を提案している。
【発明の効果】
【0011】
本発明の1またはそれ以上の実施形態によれば、車両前方側から衝突が発生した際に、駆動用モータユニットを保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る車体前部構造における車体前部を上方から見た斜視図である。
図2図1に示された車体前部を前輪とパワーユニットをはずして上方から見た斜視図である。
図3図2に示されたA-A線における車両上下方向の断面をA方向から見た断面図である。
図4】本発明の実施形態に係る車体前部構造において車両前方側から衝突が発生した場合の車体前部構造の変形を上方から見た斜視図であり、(a)は衝突前の斜視図であり、(b)および(c)は前面衝突時の変形を時系列で示した斜視図である。
図5】本発明の実施形態に係る車体前部構造において車両前方側から電信柱が衝突した場合の車体前部構造の変形を上方から見た斜視図であり、(a)は衝突前の斜視図であり、(b)および(c)は前面衝突時の変形を時系列で示した斜視図である。
図6図1に示されたSU部を、パワーユニットをはずして上方から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1から図6を用いて、本実施形態に係る車体前部構造Sが適用された車両Vについて説明する。なお、図面に適宜示される矢印FRは、図1に示す車両前方(正面)を示し、矢印UPは正面視上方を示し、矢印LHは正面視左方を示している。また、以下の説明において、上下、前後、左右の方向を用いて説明するときには、特に断りのない限り、正面視での上下方向、正面視での前後方向、正面視での左右方向を示すものとする。
【0014】
<実施形態>
図1から図3を用いて、車両Vに備えられた、本実施形態に係る車体前部構造Sの構成について説明する。
【0015】
<車両Vの構成>
車両Vは、例えば、駆動用モータユニットとしてのモータユニット部20を駆動源とした電気自動車である。なお、車両Vは、例えば、エンジンとモータユニット部20との複数の駆動源を有するハイブリッド自動車であってもよい。
【0016】
<車体前部構造Sの構成>
車体前部構造Sは、車両車幅方向において左右対称に構成されている。
車体前部構造Sは、図1に示すように、前輪10と、モータユニット部20と、前部フレーム部100と、ストラットタワー部200と、モータ保持部300と、を含んで構成されている。また、前部フレーム部100の車両後部上方側には、フロントガラスFGが配設されている。
【0017】
モータユニット部20は、回転軸AXによってモータユニット部20と締結された前輪10を駆動する図示しないモータ、変速機、クラッチ等で構成された駆動用モータユニットである。モータユニット部20は、前部フレーム部100に囲まれて後述するモータ保持部300に懸架され、固定されている。モータユニット部20には、車両Vの動作時において、高電圧が印可される。
【0018】
(前部フレーム部100について)
前部フレーム部100は、図2に示すように、車体前部FSの剛性を保つ骨格であり、車体前部構造Sにおいて車体前部FSの外周部に配設されている。前部フレーム部100には、高剛性の金属等の部材で形成された閉断面を有する鋼材が、車両上下方向および車両前後方向にそれぞれ設けられ、溶接等により相互に結合されている。
前部フレーム部100は、メインフレーム部110と、バンパビーム120と、アッパーフレーム部130と、補助ビーム140と、バルクヘッドフロント150と、フロントピラー160と、トーボード部170と、を含んで構成されている。
【0019】
メインフレーム部110は、高剛性を有する金属等により形成され、略矩形閉断面形状をなし、車体前部FSの車幅方向両側に車両前後方向に延在して配設されている。車幅方向両側におけるメインフレーム部110の車両前方側端部には、車幅方向に延在しているバンパビーム120が溶接等により結合されている。メインフレーム部110の車両後方側端部には、後述するトーボード部170が溶接等により結合されている。また、メインフレーム部110の車両後方側部には、トーボード部170の車両前方側においてストラットタワー部200の車両下方側部が結合されている。また、メインフレーム部110は、トーボード部170の車両下方側に屈曲し、さらに車両後方側に向けて延在することによって、メインフレーム部110aを形成している。
【0020】
アッパーフレーム部130は、高剛性を有する金属等により形成され、略矩形閉断面形状をなし、メインフレーム部110の車両上方側に、車体前部FSの外周部を囲むように配設されている。アッパーフレーム部130の車両前方側部には、アッパーフレーム部130の車両下面側に、車両下方側に向かって延在している補助ビーム140が結合されている。補助ビーム140は、その車両下方側に配設されているメインフレーム部110およびバンパビーム120と、アッパーフレーム部130と、を強固に結合させている。アッパーフレーム部130の車両後方側部には、ストラットタワー部200が結合されている。ストラットタワー部200は、車両下方側に配設されているメインフレーム部110と、アッパーフレーム部130と、を強固に結合させている。
【0021】
バルクヘッドフロント150は、トーボード部170の車両上部前側に車幅方向に延在し、トーボード部170に溶接等により結合されている。バルクヘッドフロント150の車両後部上方側には、フロントガラスFGが配設されている。バルクヘッドフロント150は、鋼板等の部材により車両下方側を開放したコの字状に形成されている。また、バルクヘッドフロント150の車幅方向両側外側部は、アッパーフレーム部130と溶接等により結合されている。
【0022】
フロントピラー160は、トーボード部170の車幅方向両側外側に、車両上下方向に延在されて配設されている。フロントピラー160は、トーボード部170に溶接等により結合されている。フロントピラー160の車両上方側端部には、アッパーフレーム部130の車両後方端部およびAピラーAPが溶接等により結合されている。フロントピラー160の車両下部後方面側には、サイドシル180の車両前方端部が溶接等により結合されている。
【0023】
トーボード部170は、キャビンCAの車両前方側において車幅方向に延在し、キャビンCAと、モータユニット部20等が収容されている車体前部FSと、を区切る隔壁である。トーボード部170は、キャビンCAの車両前方側において車両上下方向に立ち上げられ、前部フレーム部100に溶接等により結合されている。
【0024】
(ストラットタワー部200について)
ストラットタワー部200は、サスペンションを取付ける車体側の支えであり、トーボード部170の車両前方側の車幅方向両側に設けられている。ストラットタワー部200は、車両上部外側から、車両下部内側に向けて傾斜を有した骨格であり、高剛性を有する金属等により形成されている。ストラットタワー部200は、車両上部外側において、アッパーフレーム部130と結合されている。また、ストラットタワー部200は、車両下方部において、メインフレーム部110と結合されている。
ストラットタワー部200は、複数の部材が結合されて構成されており、トップマウント部210と、ブラケットフロントサスロア部220と、ストラットタワーリインフォース部230と、を含んで構成されている。
【0025】
トップマウント部210は、高剛性を有した鋼板等の部材で形成され、ストラットタワー部200の車両上方部を形成している。トップマウント部210の車両上方側面には、前輪用サスペンションの車両上方部を支持する、トップマウント部210を車両上下方向に貫通して開口された略円形の貫通孔が形成されている。トップマウント部210の車幅方向外側は、アッパーフレーム部130に溶接等により結合されている。
【0026】
ブラケットフロントサスロア部220は、高剛性を有した鋼板等の部材で形成され、ストラットタワー部200の車幅方向内側から車両内部前方側に回り込んで車両上下方向に延在している。ブラケットフロントサスロア部220の車両上方側は、トップマウント部210と溶接等により結合されている。ブラケットフロントサスロア部220の車両後方側は、トーボード部170およびバルクヘッドフロント150に溶接等により結合されている。
【0027】
ストラットタワーリインフォース部230は、ブラケットフロントサスロア部220の車両前方側の剛性を補剛する車両上下方向に延在する剛性壁である。ストラットタワーリインフォース部230は、高剛性を有した鋼板等の部材で形成されている。ストラットタワーリインフォース部230は、ストラットタワー部200の車両前方側に配設され、車両上方部は、トップマウント部210およびアッパーフレーム部130に結合され、車幅方向内側は、ブラケットフロントサスロア部220に溶接等により結合されている。車両下方部は、メインフレーム部110に結合されている。また、ストラットタワーリインフォース部230の車幅方向内側には、後述するサポートビームブラケット320が固定されている。
【0028】
(モータ保持部300について)
モータ保持部300は、モータユニット部20を前部フレーム部100に固定するビームであり、モータサポートビーム310、サポートビームブラケット320と、を含んで構成されている。
【0029】
モータサポートビーム310は、平面視において、投影面積がモータユニット部20よりも大きく、車両下方側には、モータユニット部20が懸架され、固定されている。
モータサポートビーム310とモータユニット部20との間には、ブッシュBSが設けられている。モータサポートビーム310は、高剛性を有した鋼板等の部材で形成され、車両上下方向に板厚方向とし、車幅方向を長手方向とする略矩形板状に形成されている。また、モータサポートビーム310は、その車幅方向外側の車両前後方向略中央部において、サポートビームブラケット320にボルト等によって固定されている。
また、モータサポートビーム310の車両前方側辺には、モータユニット部20の車両前方側を覆うように、略L字形状に屈曲した保護壁PWが形成されている。
【0030】
サポートビームブラケット320は、モータサポートビーム310をメインフレーム部110およびストラットタワーリインフォース部230に固定する、硬度の高い金属等を鋳造等により形成された強固な固定部品である。サポートビームブラケット320には、第1の締結部としての締結部FX1により、モータサポートビーム310に固定され、第2の締結部としての締結部FX2により、サポートビームブラケット320の車両下方側がメインフレーム部110に固定され、第3の締結部としての締結部FX3により、サポートビームブラケット320の車両上方側がストラットタワーリインフォース部230に固定されている。サポートビームブラケット320は、硬度の高い金属等を鋳造等により形成されている。また、サポートビームブラケット320は、車幅方向内側から見て、車両上方部から車両下方部に向かって、車両前後方向に幅が広がる略三角形状に形成され、車両下方側面には、メインフレーム部110の車両上方側面と密接する平面が形成されている。
具体的には、図3に示すように、サポートビームブラケット320は、車両上方部には、車幅方向外側に向かって突出した締結部FX3が形成されており、車幅方向に貫通孔が形成されている。サポートビームブラケット320の車幅方向外側面は、ストラットタワーリインフォース部230に密接する形状が形成されている。
また、サポートビームブラケット320における車両下方部の車両前後方向両端部には、車両前後方向に突出した締結部FX2が形成されており、車両上下方向に貫通孔が形成されている。そして、サポートビームブラケット320の車幅方向内側面には、車幅方向内側に突出した締結部FX1が形成されており、車両上下方向に貫通孔が形成されている。
また、サポートビームブラケット320は、締結部FX3において、ボルト等によってストラットタワーリインフォース部230の車幅方向内側に強固に固定されている。また、サポートビームブラケット320は、締結部FX2において、ボルト等によってメインフレーム部110の車両方向上面側に強固に固定されている。
【0031】
<作用・効果>
上記のように構成された本実施形態に係る車体前部構造Sは、車両前方側からの衝突が発生した場合には、図4(a)に示すように、衝突物FB1は、矢印AR1に示す方向から衝突する。以下、図4を用いて車両前方側から衝突物としての衝突物FB1が衝突した場合の作用について説明する。
【0032】
(車両前方側から衝突が発生した場合について)
車両前方側からの衝突が発生した場合には、バンパビーム120およびアッパーフレーム部130の車両前方側部を介して、メインフレーム部110およびアッパーフレーム部130に衝突エネルギーが伝達される。
【0033】
図4(b)に示すように、メインフレーム部110には、矢印AR2に示す方向に衝突エネルギーが伝達され、メインフレーム部110は、衝突エネルギーによって圧壊される。また、アッパーフレーム部130には、矢印AR3に示す方向に衝突エネルギーが伝達され、アッパーフレーム部130は、衝突エネルギーによって圧壊される。
そして、衝突エネルギーは、メインフレーム部110およびアッパーフレーム部130の車両後方側端に結合されているストラットタワー部200、バルクヘッドフロント150と、フロントピラー160と、トーボード部170およびメインフレーム部110aに伝達される。
トーボード部170に伝達された衝突エネルギーは、トーボード部170を変形させながら、トーボード部170に結合されているバルクヘッドフロント150と、フロントピラー160と、サイドシル180を介して、図示しない車両後方側のフレームに分散される。また、メインフレーム部110aに伝達された衝突エネルギーは、矢印AR4に示すように、メインフレーム部110aを介して、車両後方側のフレームに分散される。
また、メインフレーム部110およびアッパーフレーム部130は、衝突エネルギーに圧壊されることによって、衝突エネルギーは、メインフレーム部110およびアッパーフレーム部130に吸収される。
【0034】
一方、メインフレーム部110およびアッパーフレーム部130を介して、ストラットタワー部200に伝達された衝突エネルギーは、ストラットタワー部200を車両後方側に押しながら、ストラットタワー部200に結合されているモータ保持部300を、車両後方側に移動させる。
【0035】
さらに衝突エネルギーが伝達されると、図4(c)に示すように、メインフレーム部110およびアッパーフレーム部130の圧壊が進む。メインフレーム部110およびアッパーフレーム部130が車両後方側に押し込まれることによって、矢印AR3に示すように、サポートビームブラケット320が固定されているメインフレーム部110およびストラットタワーリインフォース部230も車両後方側に向かって変形しながら移動する。そして、モータサポートビーム310に懸架されているモータユニット部20は、モータサポートビーム310の移動とともに衝突物FB1から遠ざかる方向に移動する。
また、衝突物FB1が、モータ保持部300のモータサポートビーム310の車両前面側に接触した場合には、衝突物FB1は、モータサポートビーム310を車両後方側に押し込む。このとき、モータサポートビーム310は、平面視において、モータユニット部20よりも大きい投影面積を持つため、モータユニット部20は、モータサポートビーム310の移動とともに、矢印AR5に示すように、衝突物FB1から遠ざかる方向に移動する。
また、モータサポートビーム310の車両前方側辺には、モータユニット部20の車両前方側を覆うように、略L字形状に車両下方側に屈曲した保護壁PWが形成されている。保護壁PWは、車両前方側からの衝突が発生し、衝突物が、モータサポートビーム310の車両前方側辺に向かってきた場合に、衝突物がモータユニット部20の車両前方側へ侵入することを防ぐ。
【0036】
以上のように、車両前方側から衝突が発生した場合には、衝突エネルギーは、メインフレーム部110と、バンパビーム120と、アッパーフレーム部130と、補助ビーム140と、フロントピラー160と、トーボード部170と、が結合されて形成されている環状かつ井桁形状を有した強固な骨格に分散されるとともに、骨格の変形によって吸収される。
【0037】
衝突エネルギーの入力が終了すると、メインフレーム部110およびアッパーフレーム部130への衝突エネルギー伝達が終了して、車体前部構造Sによる衝突エネルギーの吸収は終了する。
【0038】
(車両前方側から電信柱が衝突した場合について)
以下、図5を用いて車両前方側から衝突物としての電信柱FB2が衝突した場合の作用について説明する。
【0039】
電信柱FB2が車両Vに衝突する場合には、図5(a)に示すように、矢印BR1に示す方向から車両Vに対して、衝突エネルギーが発生する。衝突物が電信柱FB2の場合には、メインフレーム部110の車両前方端部にはラップせず、車幅方向両側のメインフレーム部110の間に電信柱FB2が侵入してくる場合がある。
【0040】
図5(b)に示すように、バンパビーム120およびアッパーフレーム部130には、矢印BR2に示す方向に衝突エネルギーが伝達され、バンパビーム120およびアッパーフレーム部130の車体前部車幅方向中央部が車両後方側に向かって変形する。メインフレーム部110およびアッパーフレーム部130の車幅方向外側部は、車幅方向外側から内側に向けて引っ張られることによって、車幅方向内側に向かって変形する。このとき、メインフレーム部110およびアッパーフレーム部130が車幅方向内側に引っ張られることによって、ストラットタワーリインフォース部230が、矢印BR3に示す向きに回転する。そして、サポートビームブラケット320が車両後方側に向かって回転することによって、モータサポートビーム310は、矢印BR4に示すように、車両後方側に向かって移動する。
【0041】
そして、図5(c)に示すように、電信柱FB2は、モータサポートビーム310の車両前方側と接触する。モータサポートビーム310は、電信柱FB2に車両後方側に押されることにより、サポートビームブラケット320を変形させながら、矢印BR4に示すように、車両後方側に移動する。電信柱FB2から伝達された衝突エネルギーは、バンパビーム120、アッパーフレーム部130、メインフレーム部110およびアッパーフレーム部130の変形により吸収される。また、矢印BR2の方向に向かって引っ張られることによって、電信柱FB2から伝達された衝突エネルギーは、前部フレーム部100が有する骨格によって分散されると共に、吸収される。
また、モータサポートビーム310に懸架されているモータユニット部20は、モータサポートビーム310とともに車両後方側に向かって移動する。このとき、モータサポートビーム310は、平面視において、モータユニット部20よりも大きい投影面積を持つため、モータユニット部20は、モータサポートビーム310の移動とともに電信柱FB2から遠ざかる方向に移動する。
また、モータサポートビーム310の車両前方側辺には、モータユニット部20の車両前方側を覆うように、略L字形状の車両下方側に屈曲した保護壁PWが形成されている。保護壁PWは、車両前方側からの衝突が発生し、衝突物が、モータサポートビーム310の車両前方側辺に向かってきた場合に、衝突物がモータユニット部20の車両前方側へ侵入することを防ぐ。
【0042】
以上のように、車両前方側から衝突が発生した場合には、衝突エネルギーは、メインフレーム部110と、バンパビーム120と、アッパーフレーム部130と、補助ビーム140と、フロントピラー160と、トーボード部170と、が結合されて形成されている環状かつ井桁形状を有した強固な骨格に分散されるとともに、骨格の変形によって吸収される。モータサポートビーム310に懸架されているモータユニット部20は、モータサポートビーム310とともに車両後方側に向かって移動することによって、衝突物から遠ざかる。
【0043】
衝突エネルギーの入力が終了すると、モータサポートビーム310への衝突エネルギー伝達が終了して、車体前部構造Sにおける衝突エネルギーの吸収は終了する。
【0044】
以上、本実施形態に係る車体前部構造Sは、車両Vを駆動するモータユニット部20と、車幅方向両側に設けられ、車両前後方向に延在するメインフレーム部110と、前輪10のサスペンションを支持するストラットタワー部200の車両前方側において車両上下方向に延在し、ストラットタワー部200の剛性を補強するストラットタワーリインフォース部としてのストラットタワーリインフォース部230と、平面視において、投影面積がモータユニット部20よりも大きく、車両上方側にモータユニット部20を固定するモータサポートビーム310と、モータサポートビーム310をメインフレーム部110およびストラットタワーリインフォース部230に固定するサポートビームブラケット320と、を備え、サポートビームブラケット320は、第1の締結部としての締結部FX1により、モータサポートビーム310が固定され、第2の締結部としての締結部FX2により、サポートビームブラケット320の車両下方側がメインフレーム部110に固定され、第3の締結部としての締結部FX3により、サポートビームブラケット320の車両上方側がストラットタワーリインフォース部230に固定されている。
つまり、車体前部構造Sは、モータユニット部20を懸架させているモータサポートビーム310を強固な固定部品であるサポートビームブラケット320によって、車体前部構造Sの骨格をなすメインフレーム部110およびストラットタワーリインフォース部230に固定させることによって、車体前部構造Sの骨格を強固にさせることができる。
一方、車両前方側から衝突が発生した場合には、衝突エネルギーは、メインフレーム部110およびストラットタワー部200等が結合されて形成されている環状かつ井桁形状を有した強固な骨格に分散されるとともに、骨格の変形によって吸収させることができる。また、モータサポートビーム310に懸架されているモータユニット部20は、骨格の変形にともなってモータサポートビーム310とともに車両後方側に向かって移動させることによって、モータユニット部20を衝突物FB1から遠ざけることができる。また、衝突物が電信柱FB2の場合においても、モータサポートビーム310に電信柱FB2を接触させ、モータユニット部20を車両後方側に向かって移動させることにより、モータユニット部20を衝突物としての電信柱FB2から遠ざけることができる。
そのため、車両前方側から衝突が発生した際に、駆動用モータユニットを保護することができる。
【0045】
また、本実施形態に係る車体前部構造Sは、メインフレーム部110の車両上方側に、車体前部の外周部を囲むように配設されているアッパーフレーム部130をさらに備え、ストラットタワーリインフォース部230は、ストラットタワー部200の車両前方側に配設され、ストラットタワーリインフォース部230の車両上方部は、アッパーフレーム部130に結合され、車両下方部は、メインフレーム部110に結合されている。
つまり、衝突物が電信柱FB2の場合において、メインフレーム部110の車両前方端部にはラップせず、車幅方向両側のメインフレーム部110の間に電信柱FB2が侵入してくる場合には、メインフレーム部110およびアッパーフレーム部130の車幅方向外側部は、バンパビーム120およびアッパーフレーム部130の車体前部車幅方向中央部が車両後方側に向かって変形することによって、車幅方向内側に向かって変形する。このとき、メインフレーム部110およびアッパーフレーム部130が車幅方向内側に引っ張られることによって、ストラットタワーリインフォース部230は、車幅方向内側に向かって回転する。ストラットタワーリインフォース部230が車幅方向内側に向かって回転することによって、モータサポートビーム310は、車両後方側に向かって移動する。そして、モータサポートビーム310は、モータユニット部20を衝突物としての電信柱FB2から遠ざけることができる。
そのため、車両前方側から衝突が発生した際に、駆動用モータユニットを保護することができる。
【0046】
また、本実施形態に係る車体前部構造Sは、モータサポートビーム310の車両前方側辺には、モータユニット部20の車両前方側に屈曲した保護壁PWが形成されている。
つまり、車両前方側からの衝突が発生し、衝突物FB1あるいはFB2が、モータサポートビーム310の車両前方側辺に向かってきた場合に、モータユニット部20の車両前方側を覆うように、モータサポートビーム310の車両前方側辺に形成された保護壁PWによって、衝突物がモータユニット部20の車両前方側へ侵入することを防ぐことができる。
そのため、車両前方側から衝突が発生した際に、駆動用モータユニットを保護することができる。
【0047】
なお、本発明の実施形態として、モータユニット部20とモータサポートビーム310との間に、ブッシュBSを設けて固定する実施形態を例示したが、サポートビームブラケット320とメインフレーム部110との間あるいはサポートビームブラケット320とストラットタワーリインフォース部230との間にブッシュを配設させてもよい。この場合には、車両前方側から衝突が発生した際に、駆動用モータユニットを保護するとともに、さらに車両Vの走行中における耐振性および耐静音性を向上させることができる。
【0048】
また、図6に示すように、モータサポートビーム310を固定するサポートビームブラケット320における締結部FX1および締結部FX3を、前輪10の回転軸AXと同軸としての軸RX上に設けてもよい。
モータサポートビーム310は、前輪10を駆動するモータと、前輪10の回転軸AXとが、車両上下方向において軸RX上に配設させることによって、モータユニット部20の重量の重心を、前輪10の回転軸AX上に位置させて固定することができる。
そのため、車両前方側から衝突が発生した際に、駆動用モータユニットを保護するとともに、さらに車両Vの走行中における走行安定性および運動性能を向上させることできる。
【0049】
以上、この発明の実施形態につき、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0050】
10;前輪
20;モータユニット部
100;前部フレーム部
110;メインフレーム部
120;バンパビーム
130;アッパーフレーム部
200;ストラットタワー部
220;ブラケットフロントサスロア部
230;ストラットタワーリインフォース部
300;モータ保持部
310;モータサポートビーム
320;サポートビームブラケット
AX;回転軸
CA;キャビン(車室)
FB1;衝突物
FB2;電信柱
FS;車体前部
FX1;締結部
FX2;締結部
FX3;締結部
PW;保護壁
RX;軸
S;車体前部構造
V;車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6