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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088828
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】車体前部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20240626BHJP
   B62D 25/08 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
B62D25/20 D
B62D25/08 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203814
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】前田 祥宏
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BB35
3D203BB54
3D203CA57
3D203CA67
3D203CB21
(57)【要約】
【課題】車両前方側から衝突が発生した際の車体前部の剛性を保ちつつ、車体前部を軽量化する。
【解決手段】アッパートーボード210の車両下側辺部と、ロアトーボード220の車両上側辺部と、が重ね合わせられて結合されているトーボード部200と、車幅方向両側に延在されたメインフレーム110と、トーボード部200の車幅方向両側外側に、車両上下方向に延在されたフロントピラー160と、を備え、トーボード部200には、アッパートーボード210と、ロアトーボード220と、を重ね合わせられた箇所に、メインフレーム110とトーボード部200との結合部WJの断面積よりも広い面積を有して車両前後方向に突出し、車幅方向両側に向けて延在した閉断面TCが形成され、閉断面TCの車幅方向両端部は、フロントピラー160と結合され、メインフレーム110は、車両正面視において、閉断面TCに重複する位置にトーボード部200と結合されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前部と車室とを隔て、車両上方側に配設されたアッパートーボードの車両下側辺部と、車両下方側に配設されたロアトーボードの車両上側辺部と、が重ね合わせられて結合されているトーボード部と、
前記車体前部の車幅方向両側に設けられ、車両前後方向に延在するメインフレームと、
前記トーボード部の車幅方向両側外側に、車両上下方向に延在されたフロントピラーと、
を備え、
前記トーボード部には、前記アッパートーボードと、前記ロアトーボードと、を重ね合わせた箇所に、前記メインフレームと前記トーボード部との結合部の断面積よりも広い面積を有して車両前後方向に突出し、車幅方向両側に向けて延在された閉断面が形成され、
前記閉断面の車幅方向両端部は、前記フロントピラーに結合され、
前記メインフレームは、車両正面視において、前記閉断面と重複する位置にトーボード部と結合されていることを特徴とする車体前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両の前面衝突においては、乗員への影響を低減させるために、乗員の搭乗空間であるキャビンを変形させない事が効果的であり、そのための様々な手段が設けられている。
これらの手段のひとつとして、近年、キャビンより前方の車体前部に設けられた構造体によって、衝突エネルギーを吸収させる構造が採用されている。
また、キャビンと車体前部との間にトーボード(ダッシュパネル)を配設させ、キャビンと車体前部とを隔てるとともに、車体前部の剛性を向上させることによって、車両が走行している際に発生する振動、騒音を減少させ、車両が衝突した際にキャビンが変形することを防止する構造も導入されている。
【0003】
例えば、特許文献1においては、ダッシュアッパパネル(アッパートーボード)とダッシュロアパネル(ロアトーボード)とで車両幅方向に見た断面視で閉断面を成しかつ車両幅方向に延在する閉断面構造部が構成されており、ダッシュパネル(トーボード)の全体の剛性が確保されている。また、ダッシュパネルに設けられた第1補強ビード部によって、ダッシュパネルに発生する車両前後方向の振動を抑制することができる。さらに、第1補強ビード部の一端部が閉断面構造部に接続されているため、第1補強ビード部の一端部を閉断面構造部で支持する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-64732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術においては、車体前部の骨格を構成するフロントサイドクロスメンバは、トルクボックスを介してフロントピラーと連結され、トーボードは、フロントピラーの間に構成されているために、車両前面から衝突エネルギーが伝達された場合には、トーボードに形成されたダッシュクロスメンバとしての閉断面が、キャビンの変形に対して機能しない虞があるという課題があった。また、第1補強ビード部を設けることによって、重量が増加する虞があるという課題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、車両前方側から衝突が発生した際の車体前部の剛性を保ちつつ、車体前部を軽量化する車体前部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
形態1;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、車体前部と車室とを隔て、車両上方側に配設されたアッパートーボードの車両下側辺部と、車両下方側に配設されたロアトーボードの車両上側辺部と、が重ね合わせられて結合されているトーボード部と、前記車体前部の車幅方向両側に設けられ、車両前後方向に延在するメインフレームと、前記トーボード部の車幅方向両側外側に、車両上下方向に延在されたフロントピラーと、を備え、前記トーボード部には、前記アッパートーボードと、前記ロアトーボードと、を重ね合わせた箇所に、前記メインフレームと前記トーボード部との結合部の断面積よりも広い面積を有して車両前後方向に突出し、車幅方向両側に向けて延在された閉断面が形成され、前記閉断面の車幅方向両端部は、前記フロントピラーに結合され、前記メインフレームは、車両正面視において、前記閉断面と重複する位置にトーボード部と結合されている車体前部構造を提案している。
【発明の効果】
【0008】
本発明の1またはそれ以上の実施形態によれば、車両前方側から衝突が発生した際の車体前部の剛性を保ちつつ、車体前部を軽量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る車体前部を上方から見た斜視図である。
図2図1に示された車体前部を前輪とパワーユニットをはずして上方から見た斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る車体前部のトーボード部の分解図である。
図4】本発明の実施形態に係る車体前部のトーボード部とメインフレームとを上方から見た斜視図である。
図5図4に示されたA-A線における車両上下方向の断面をA方向から見た断面図である。
図6図4に示されたB-B線における車両上下方向の断面をB方向から見た断面図である。
図7】本発明の実施形態に係る車体前部に、車両前方側から衝突が発生した際の前部フレーム部を上方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1から図7を用いて、本実施形態に係る車体前部構造Sが適用された車両Vについて説明する。なお、図面に適宜示される矢印FRは、図1に示す車両前方(正面)を示し、矢印UPは正面視上方を示し、矢印LHは正面視左方を示している。また、以下の説明において、上下、前後、左右の方向を用いて説明するときには、特に断りのない限り、正面視での上下方向、正面視での前後方向、正面視での左右方向を示すものとする。
【0011】
<実施形態>
図1から図6を用いて、車両Vに備えられた、本実施形態に係る車体前部構造Sの構成について説明する。
【0012】
<車両Vの構成>
車両Vは、例えば、内燃エンジンあるいはモータを駆動源とした自動車である。なお、車両Vは、例えば、内燃エンジンとモータとの複数の駆動源を有するハイブリッド自動車であってもよい。
【0013】
<車体前部構造Sの構成>
車体前部構造Sは、車幅方向において左右対称に構成されている。
車体前部構造Sは、図1に示すように、前輪10と、パワーユニット部20と、ストラットタワー部30と、前部フレーム部100と、トーボード部200と、を含んで構成されている。トーボード部200の車両上方側には、フロントガラスFGが配設されている。
【0014】
パワーユニット部20は、前輪10を駆動する図示しないモータ、変速機、クラッチ、駆動軸等で構成された駆動装置である。パワーユニット部20は、前部フレーム部100に囲まれて前部フレーム部100に載置され、固定されている。
【0015】
ストラットタワー部30は、サスペンションを取付ける車体側の支えであり、後述するトーボード部200の車両前方側の車幅方向両側に設けられている。ストラットタワー部30は、車幅方向上部外側から、車両下部内側に向けて傾斜を有した骨格であり、高剛性を有する金属等により形成されている。ストラットタワー部30は、車両上部外側において、前部フレーム部100と結合している。
【0016】
(前部フレーム部100について)
前部フレーム部100は、車体前部FSの剛性を保つ骨格であり、車体前部構造Sにおいて車体前部FSの外周部に配設されている。前部フレーム部100には、高剛性の金属等の部材で形成された閉断面を有する鋼材が、車両上下方向および車両前後方向にそれぞれ設けられ、溶接等により相互に結合されている。
図2に示すように、前部フレーム部100は、メインフレーム110と、バンパビーム120と、アッパーフレーム130と、補助ビーム140と、フロントピラー160と、バルクヘッドフロント150と、トーボード部200と、を含んで構成されている。
【0017】
メインフレーム110は、高剛性を有する金属等により形成され、略矩形閉断面形状をなし、車体前部FSの車幅方向両側に車両前後方向に延在して配設されている。車幅方向両側におけるメインフレーム110の車両前方側端部には、車幅方向に延在するバンパビーム120が溶接等により結合されている。メインフレーム110の車両後方側端部は、後述するトーボード部200と、結合部WJにおいて溶接等により結合されている。また、メインフレーム110の車両後方側部には、トーボード部200の車両前方側においてストラットタワー部30の車両下方側部が結合されている。また、メインフレーム110は、トーボード部200の車両下方側に屈曲し、さらに車両後方側に向けて延在することによって、メインフレーム110aを形成している。
【0018】
アッパーフレーム130は、高剛性を有する金属等により形成され、略矩形閉断面形状をなし、車体前部FSの車両上方側において、車体前部FSの外周部を囲むように配設されている。アッパーフレーム130の車両前方側部には、アッパーフレーム130の車両下面側に、車両下方側に向かって延在している補助ビーム140が結合されている。補助ビーム140は、車両下方側に配設されているバンパビーム120と、アッパーフレーム130と、を強固に結合させている。アッパーフレーム130の車両後方側部には、ストラットタワー部30が結合されている。ストラットタワー部30は、車両下方側に配設されているメインフレーム110と、アッパーフレーム130と、を強固に結合させている。
【0019】
バルクヘッドフロント150は、トーボード部200の車両上部前側に車幅方向に延在し、トーボード部200に溶接等により結合されている。バルクヘッドフロント150は、鋼板等の部材により車両上方側を開放したコの字状に形成されている。また、バルクヘッドフロント150の車幅方向両側外側部は、アッパーフレーム130と溶接等により結合されている。
【0020】
フロントピラー160は、トーボード部200の車幅方向両側外側に、車両上下方向に延在されて配設されている。フロントピラー160は、トーボード部200に溶接等により結合されている。フロントピラー160の車両上方側端部には、アッパーフレーム130の車両後方端部およびAピラーAPが溶接等により結合されている。フロントピラー160の車両下部後方側には、サイドシル170の車両前方端部に溶接等により結合されている。
【0021】
サイドシル170は、車幅方向両側の側方底面に設けられている。サイドシル170は、車両前後方向に延在された骨格であり、高剛性を有する金属等により形成され、略矩形閉断面形状を成している。サイドシル170は、車室としてのキャビンCAの両側の底辺を構成している。
【0022】
(トーボード部200について)
トーボード部200は、車室としてのキャビンCAの車両前方側において車幅方向に延設され、キャビンCAと、前輪用サスペンション等が収容されている車体前部FSと、を区切る隔壁である。トーボード部200は、キャビンCAの車両前方側において車両上下方向に立ち上げられ、前部フレーム部100に溶接等により結合されている。
【0023】
具体的には、図3に示すように、トーボード部200は、アッパートーボード210の車両下側辺部とロアトーボード220の車両上側辺部とが重ねあわされ、溶接等により相互に結合されることによって形成されている。アッパートーボード210とロアトーボード220とは、板厚が異なる鋼板等の部材によりプレス成型等により形成され、車幅方向に延設されている。また、ロアトーボード220は、例えば、ホットプレス加工等によって複雑な形状が形成されている。また、トーボード部200は、アッパートーボード210とロアトーボード220とによって上下に分割されているため、トーボード部200を構成しているそれぞれの部品サイズは、小さく形成されている。
【0024】
また、図4に示すように、アッパートーボード210と、ロアトーボード220が、重ねあわされた箇所に、メインフレーム110とトーボード部200との結合部WJの断面積よりも広い面積を有して車両前後方向に突出し、車幅方向両側に向けて延在した閉断面TC(図4のドットハッチング部)が形成されている。
具体的には、図5に示すように、アッパートーボード210とロアトーボード220とは、閉断面TCのメインフレーム110の車両上面側において、溶接等により結合されている。また、メインフレーム110の車両下面側よりも車両下方側において、アッパートーボード210とロアトーボード220とは、溶接等により結合されている。閉断面TCは、アッパートーボード210が車両後方側に突出し、ロアトーボード220が車両前方側に突出することにより形成されている。また、ロアトーボード220には、ビードBDが形成されている。
【0025】
また、図6に示すように、メインフレーム110とトーボード部200とは、結合部WJにおいて、車両正面側から見て閉断面TCに重複して結合されている。閉断面TCの車幅方向両側端においては、フロントピラー160が溶接等により結合されている。そして、トーボード部200の車両上方側には、バルクヘッドフロント150が車幅方向に延在してトーボード部200およびフロントピラー160が溶接等により結合されている。
トーボード部200には、閉断面TCと、車両上方側のバルクヘッドフロント150と、車幅方向両側のフロントピラー160と、によって、環状の骨格が形成されている。
【0026】
上記したように、トーボード部200には、アッパートーボード210と、ロアトーボード220と、閉断面TCと、バルクヘッドフロント150と、フロントピラー160と、により、車幅方向に延設し、キャビンCAと車体前部FSとを分離する強固な隔壁が形成されている。
【0027】
また、トーボード部200の車幅方向中央部下方側には、フロアトンネル部FTが形成されている。フロアトンネル部FTは、車両底部において、車両上方側の車室内側に張り出し車両下方側が開放された略U字形状を成し、車幅方向中央部の車両前後方向に延設されている。フロアトンネル部FTの車両下方側には、図示しないプロペラシャフト等が収容されている。
【0028】
<作用・効果>
上記のように構成された本実施形態に係る車体前部構造Sにおいて、図5図7を用いて、トーボード部200の作用について説明する。
【0029】
(トーボード部200の軽量構造について)
トーボード部200は、キャビンCAと車体前部FSと、を区切る隔壁であり、乗員搭乗空間であるキャビンCAを変形させないように、強固な骨格として構成されている。
【0030】
図5に示すように、トーボード部200は、アッパートーボード210の車両下側辺部とロアトーボード220の車両上側辺部とが重ねあわされ、溶接等により相互に結合されることによって形成されている。アッパートーボード210とロアトーボード220とは、板厚が異なる鋼板等の部材によりプレス成型等により形成され、車幅方向に延設されている。例えば、ロアトーボード220には、アッパートーボード210よりも板厚が厚い鋼板を用いて形成させるとともに、ビードBD等を形成させることによって、ロアトーボード220の剛性を高めている。また、ロアトーボード220には、ホットプレス加工等によって、複雑な形状を形成させている。例えば、ブラケット形状をロアトーボード220に形成させ、他の部材をトーボード部200に直接接合させている。また、アッパートーボード210とロアトーボード220とが重ねあわされることによって、アッパートーボード210が車両後方側に突出し、ロアトーボード220が車両前方側に突出することにより形成された閉断面TCが形成されている。
【0031】
また、図6に示すように、閉断面TCは、メインフレーム110とトーボード部200との結合部WJの断面積よりも広い面積を有して車両前後方向に突出し、車幅方向両側に向けて延在して形成されている。閉断面TCは、前輪10の車両後方側にも形成されているため、車両Vが走行中に、前輪10が巻き上げた異物がトーボード部200に当たった際に発生する騒音が軽減される。また、さらに車両外部からの騒音を下げ、トーボード部200の曲げ強度をあげるために、閉断面TC内部に発泡剤を充填させてもよい。
【0032】
そして、トーボード部200には、アッパートーボード210と、ロアトーボード220と、閉断面TCと、バルクヘッドフロント150と、フロントピラー160と、により、車幅方向に延設し、環状の骨格が形成された強固な隔壁が形成されている。そのため、トーボード部200には、例えば、クロスメンバあるいはトルクボックス等の車幅方向に延在する骨格となるフレームは構成しなくてもよい。
【0033】
(車両前方側から衝突が発生した場合について)
上記のように構成された本実施形態に係る車体前部構造Sは、車両前方側からの衝突が発生した場合には、図7に示すように、衝突物FBは、矢印AR1に示す方向から衝突する。このとき、車体前部構造Sは、乗員搭乗空間であるキャビンCAを変形させないように、キャビンCAより前方の車体前部FSにおいて衝突エネルギーを吸収させる。以下、前方からの衝突が発生した場合の作用について説明する。なお、車両Vの正面視左側の作用について例示して説明する。
【0034】
車両前方側からの衝突が発生した場合には、バンパビーム120およびアッパーフレーム130の車両前方辺部を介して、メインフレーム110およびアッパーフレーム130に衝突エネルギーが伝達される。
【0035】
メインフレーム110には、矢印AR2に示す方向に衝突エネルギーが伝達され、メインフレーム110の車両後方側においては、衝突エネルギーは、車両後方側端に結合されているトーボード部200に伝達される。トーボード部200には、アッパートーボード210と、ロアトーボード220と、閉断面TCと、バルクヘッドフロント150と、フロントピラー160と、により、車幅方向に延設し、キャビンCAと車体前部FSとを分離する環状の強固な骨格が形成されている。そして、メインフレーム110は、メインフレーム110とトーボード部200との結合部WJの断面積よりも広い面積を有する閉断面TCに結合されているため、伝達された衝突エネルギーは、矢印AR3およびAR4に示すように、閉断面TCを介して閉断面TCに結合されている骨格に分散される。
また、メインフレーム110は、衝突エネルギーに圧壊されることによって、衝突エネルギーは、メインフレーム110に吸収される。
【0036】
また、衝突エネルギーは、トーボード部200の車両下方側に屈曲し、さらに車両後方側に向けて延在しているメインフレーム110aに伝達され、矢印AR5に示すように、メインフレーム110aを介して、図示しない車両後方側のフレームに分散される。また、トーボード部200の車両下方側中央部に結合されているフロアトンネル部FTを介して、矢印AR6に示すように、衝突エネルギーは、車両後方側のフレームに分散される。
【0037】
アッパーフレーム130には、矢印BR2に示す方向に衝突エネルギーが伝達され、アッパーフレーム130の車両後方側において、衝突エネルギーは、矢印BR3に示すように、車両後方側端に結合されているバルクヘッドフロント150に分散される。また、矢印BR4に示すように、フロントピラー160に分散され、矢印BR5に示すように、サイドシル170にも分散される。また、アッパーフレーム130は、衝突エネルギーに圧壊されることによって、衝突エネルギーは、アッパーフレーム130に吸収される。
【0038】
以上のように、車両前方側から衝突が発生した場合には、衝突エネルギーは、メインフレーム110と、バンパビーム120と、アッパーフレーム130と、補助ビーム140と、フロントピラー160と、バルクヘッドフロント150と、トーボード部200と、トーボード部200に構成されている閉断面TCと、が結合されて形成されている環状かつ井桁形状を有した強固な骨格に分散されるとともに、骨格の変形によって吸収される。
【0039】
衝突エネルギーの入力が終了すると、メインフレーム110およびアッパーフレーム130への衝突エネルギー伝達が終了して、車体前部構造Sによる衝突エネルギーの吸収は終了する。
【0040】
以上、本実施形態に係る車体前部構造Sは、車体前部FSとキャビンCAとを隔て、車両上方側に配設されたアッパートーボード210の車両下側辺部と、車両下方側に配設されたロアトーボード220の車両上側辺部と、が重ね合わせられて結合されているトーボード部200と、車体前部FSの車幅方向両側に設けられ、車両前後方向に延在するメインフレーム110と、トーボード部200の車幅方向両側外側に、車両上下方向に延在されたフロントピラー160と、を備え、トーボード部200には、アッパートーボード210と、ロアトーボード220と、を重ね合わせた箇所に、メインフレーム110とトーボード部200との結合部WJの断面積よりも広い面積を有して車両前後方向に突出し、車幅方向両側に向けて延在した閉断面TCが形成され、閉断面TCの車幅方向両端部は、フロントピラー160と結合され、メインフレーム110は、車両正面視において、閉断面TCと重複する位置にトーボード部200と結合されている。
つまり、トーボード部200には、アッパートーボード210と、ロアトーボード220と、閉断面TCと、フロントピラー160と、により、車幅方向に延設し、キャビンCAと車体前部FSとを分離する環状の骨格が形成された強固な隔壁が形成されている。そして、メインフレーム110がトーボード部200に形成されている閉断面TCと重複する位置に結合されているため、車両前方側から衝突が発生した場合には、メインフレーム110からの衝突エネルギーを効率よく閉断面TCに伝達させ、閉断面TCに結合されているフロントピラー160を介して、車両後方部へ衝突エネルギーを分散させることによって、車体前部構造Sの剛性を高く保つことができる。
また、トーボード部200は、アッパートーボード210とロアトーボード220とを重ね合わせられて形成されていることによって、トーボード部200を構成するそれぞれの部品サイズを小さく形成させることができる。そして、例えば、ロアトーボード220をホットプレス加工にて複雑な形状を一体成型させることが可能になり、周囲に必要な部材をロアトーボード220に一体化させることによって、車体前部構造Sを構成する部品点数を少なくさせることができる。また、アッパートーボード210とロアトーボード220との板厚を変更させることによって、車体前部構造Sを構成する部品を軽量化させることができる。また、トーボード部200には、アッパートーボード210と、ロアトーボード220と、閉断面TCと、バルクヘッドフロント150と、フロントピラー160と、により、車幅方向に延設し、環状の骨格が形成された強固な隔壁が形成されている。したがって、トーボード部200には、例えば、クロスメンバあるいはトルクボックス等の車幅方向に延在する骨格となるフレームは構成しなくてもよいため、車体前部構造Sを軽量化させることができる。
そのため、車両前方側から衝突が発生した際の車体前部の剛性を保ちつつ、車体前部を軽量化することができる。
【0041】
以上、この発明の実施形態につき、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0042】
10;前輪
20;パワーユニット部
30;ストラットタワー部
100;前部フレーム部
110;メインフレーム
120;バンパビーム
130;アッパーフレーム
160;フロントピラー
200;トーボード部
210;アッパートーボード
220;ロアトーボード
CA;キャビン(車室)
FS;車体前部
FB;衝突物
S;車体前部構造
TC;閉断面
V;車両
WJ;結合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7