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特開2024-88857モータシステム、電動車、及び、自動車を電動車に改造するための改造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088857
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】モータシステム、電動車、及び、自動車を電動車に改造するための改造方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 3/18 20060101AFI20240626BHJP
   B60L 7/22 20060101ALI20240626BHJP
   B60T 8/17 20060101ALI20240626BHJP
   B60T 7/12 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
H02P3/18 101B
B60L7/22 G
B60T8/17 B
B60T7/12 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203855
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】522143656
【氏名又は名称】Freet株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八木 則彦
(72)【発明者】
【氏名】阿賀 敏司
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 正成
【テーマコード(参考)】
3D246
5H125
5H530
【Fターム(参考)】
3D246AA08
3D246AA09
3D246BA02
3D246EA05
3D246EA20
3D246GB27
3D246GB37
3D246GC14
3D246GC16
3D246HA02A
3D246HA08A
3D246HA94A
3D246HB12A
3D246HC01
3D246JA12
3D246JB53
3D246LA15Z
3D246MA38
5H125AA01
5H125AC12
5H125CB03
5H530AA02
5H530BB24
5H530CC20
5H530CD21
5H530CE16
5H530CF02
5H530DD03
5H530DD14
5H530EE01
5H530EE05
(57)【要約】
【課題】信頼性の高い減速効果を得ることができる回生ブレーキを実現するモータシステムを提供する。
【解決手段】モータシステム1は、回転運動を電力に変換可能なモータ10と、モータ10に関する指示を外部から取得する通信部17と、モータ10により発電された電力を制御する回生制御部14と、モータ10により発電された電力を消費する電力消費部15と、通信部17によって第1の指示が取得された場合に、モータ10により発電された電力を回生制御部14に供給し、通信部17によって第2の指示が取得された場合に、モータ10により発電された電力を電力消費部15に供給する切替スイッチ13とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転運動を電力に変換可能なモータと、
前記モータに関する指示を外部から取得する通信部と、
前記モータにより発電された前記電力を制御する回生制御部と、
前記モータにより発電された前記電力を消費する電力消費部と、
前記通信部によって第1の指示が取得された場合に、前記モータにより発電された前記電力を前記回生制御部に供給し、前記通信部によって第2の指示が取得された場合に、前記モータにより発電された前記電力を前記電力消費部に供給する切替スイッチと、
を具備することを特徴とするモータシステム。
【請求項2】
前記第1の指示は、制動指示であり、
前記第2の指示は、停止指示であり、
前記回生制御部は、前記第1の指示によって指定された制動力で回生ブレーキが動作するように前記電力をバッテリに充電して前記電力を消費し、
前記電力消費部は、前記モータに回生ブレーキ力が生じるように回生電流を消費する、
ことを特徴とする請求項1記載のモータシステム。
【請求項3】
前記電力消費部は、前記回生制御部で消費可能な最大電力よりも大きい電力を消費することを特徴とする請求項2記載のモータシステム。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のうちのいずれか1項に記載のモータシステムを備えた電動車であって、
障害物との衝突の危険性を検知する衝突検知部と、
前記モータシステムの駆動に関わる指示を前記モータシステムに出力し、前記衝突検知部によって衝突の危険があることが検知された場合に、前記第2の指示を前記通信部に出力する駆動指示部と、
をさらに具備することを特徴とする電動車。
【請求項5】
自動車を電動車に改造するための改造方法であって、
前記自動車のエンジンを除去するエンジン除去工程と、
前記エンジンを除去した空間に、電力を回転動力に変換可能なモータを設置するモータ設置工程と、
車体の減速を検知する減速検知部を設置する減速検知部設置工程と、
ブレーキシステムと発光部の間に設置され、前記発光部の発光指示を検知した場合、又は、前記減速検知部が前記減速を判定した場合に、前記発光部を点灯させる発光制御部を前記自動車に設置し、前記発光部に接続されている配線を切断し、切断された前記配線のうちの前記発光部側の第1の切断部と、切断された前記配線のうちの前記第1の切断部ではない第2の切断部と、前記減速検知部と接続されている配線とを前記発光制御部に接続する発光制御部配線工程と、
を具備することを特徴とする改造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回生ブレーキで減速する機能を備えたモータシステム、モータシステムを備えた電動車、及び、自動車を電動車に改造するための改造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の分野ではガソリン車をはじめとした内燃機関車の販売禁止が法制化されるなど、温室効果ガスの排出が問題視されている。
【0003】
内燃機関車の販売禁止の法制化は、温室効果ガスの排出を実質ゼロにするための取り組みの一環である。温室効果ガス削減を達成する為には、すでに販売された内燃機関車が問題になる。つまり、すでに販売された内燃機関車がすべて電動車に切り替わるまでには相当な時間を要する。
【0004】
内燃機関車の内燃機関をモータに置き換えることで電動車に作り変えることにより、温室効果ガスの排出量削減に効果がある。
【0005】
また、安全性確保に対する社会的なニーズも高まっており、新型車では、自動ブレーキが義務化されている。もし既存の自動車を電動化しても、自動ブレーキに対応できなければ、今後の安全基準に満たない車を使い続けることになる。従って、既存の自動車を電動化するとともに、自動ブレーキに対応することの意義は非常に大きい。
【0006】
一般的に、自動ブレーキには、油圧式ブレーキが用いられる。自動ブレーキとして油圧式ブレーキが用いられる理由は、停止動作の信頼性が高いためである。自動車の電動化において、ブレーキ系統の改造まで含めることはコストアップにつながる。一方で電動車では、モータによる回生ブレーキを制動力として用いることができる。しかしながら、回生ブレーキは、モータからの回生電力を消費しなければブレーキとして機能しないため、ブレーキ効果の安定性及び信頼性の保証が困難であり自動ブレーキとしての適用に課題がある。
【0007】
電動車で回生ブレーキを利用した自動ブレーキに関する技術として、下記の特許文献1が開示されている。特許文献1には、電気自動車等の回生ブレーキシステムにおいて、障害物検出手段を設け、障害物の存在を検出した場合に警報信号を発生し、警報信号の発生により回生電流制御手段で界磁コイルの電流を最大値まで増加させるように制御し、自動ブレーキングを行うことで、回生ブレーキのブレーキング効果を得ることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6―165304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記の特許文献1には、警報信号発生時に回生電流制御手段がどのように回生電流を消費するかについての具体的な開示は無い。
【0010】
一般的に、電動車では回生ブレーキで生じる回生電流は、バッテリなどの蓄電手段に蓄電し、駆動の際に必要な電力に使用することで燃費効率を高めている。この場合、バッテリの蓄電容量に空きがある場合はよいが、空きが無い状態でさらに充電を行うと過充電になりバッテリの破裂又は発火などの原因になる。このため、過充電を防止する必要がある。このような場合に、回生ブレーキは使用できなくなるが、警報信号発生時のブレーキングは確実に作動する必要がある。さらに、急制動時に流される大電流は確実に消費される必要がある。
【0011】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、信頼性の高い減速効果が得られる回生ブレーキを実現するモータシステム、電動車、及び、自動車を電動車に改造するための改造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のモータシステムは、モータと、通信部と、回生制御部と、電力消費部と、切替スイッチとを備える。モータは、回転運動を電力に変換可能である。通信部は、モータに関する指示を外部から取得する。回生制御部は、モータにより発電された電力を制御する。電力消費部は、モータにより発電された電力を消費する。切替スイッチは、通信部によって第1の指示が取得された場合に、モータにより発電された電力を回生制御部に供給し、通信部によって第2の指示が取得された場合に、モータにより発電された電力を電力消費部に供給する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、信頼性の高い減速効果が得られる回生ブレーキを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施形態に係るモータシステムの構成の一例を示すブロック図。
図2】駆動制御部の構成の一例を示すブロック図。
図3】インバータの構成の一例を示すブロック図。
図4】インバータが生成する三相交流波形の例を示す図。
図5】回生制御部の構成の一例を示すブロック図。
図6】パルス生成回路の動作の例を示す図。
図7A】パルス生成回路におけるパルスデューティと回生電流との関係の一例を示すグラフ。
図7B】回生電流と制動力との関係の一例を示すグラフ。
図8A】電力消費部の構成の第1の例を示す図。
図8B】電力消費部の構成の第2の例を示す図。
図8C】電力消費部の適用例を示す図。
図9A】駆動制御の処理の流れの一例を示すフローチャート。
図9B】回転制御の処理の流れの一例を示すフローチャート。
図9C】制動制御の処理の流れの一例を示すフローチャート。
図9D】停止制御の処理の流れの一例を示すフローチャート。
図10】第2の実施形態に係る電動車の構成の一例を示すブロック図。
図11】駆動指示部の構成の一例を示すブロック図。
図12】VCUの構成の一例を示すブロック図。
図13】第3の実施形態に係る電動車に搭載するモータシステムの構成の一例を示すブロック図。
図14A】第3の実施形態に係る電動車に改造する前の自動車の構成の一例を示すブロック図。
図14B】第3の実施形態に係る電動車の構成の第1の例を示すブロック図。
図15A】発光制御部の構成の第1の例を示す回路図。
図15B】発光制御部の構成の第2の例を示す回路図。
図16】発光部の構成の一例を示す回路図。
図17】第3の実施形態に係る電動車の構成の第2の例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1の実施形態:概要>
本発明の第1の実施形態は、回生ブレーキ機能を備えたモータシステムであり、外部からの駆動指示および制動指示に加えて停止指示を受け付ける。
【0016】
停止指示を受け付けた場合は、回生ブレーキを最大の制動力で機能させる。
【0017】
この時、内部に備えた電力消費部で回生電流を消費することにより確実な減速が行える。
【0018】
<第1の実施形態(主に請求項1に対応):構成>
図1は、第1の実施形態に係るモータシステム1の構成の一例を示すブロック図である。モータシステム1は、モータ10と、インバータ11と、バッテリ12と、切替スイッチ13と、回生制御部14と、電力消費部15と、駆動制御部16と、通信部17とを有する。駆動指示部2は、モータシステム1の外部から、駆動、制動、停止を指示する。
【0019】
<請求項1:請求項との対応>
請求項1記載のモータは、モータ10が対応し、請求項1記載の回生制御部は回生制御部14が対応し、請求項1記載の電力消費部は、電力消費部15が対応し、請求項1記載の切替スイッチは切替スイッチ13が対応し、請求項1記載の通信部は、通信部17が対応する。
【0020】
<第1の実施形態:構成 モータ>
「モータ」10は電力を回転力に変換する。具体的にはインバータ11で生成された交流波形により回転駆動する。
【0021】
また、モータ10は、外部からの回転力を電力に変換可能である。この時発生した電力により流れる電流を回生電流という。回生電流の消費によりモータ10は回転を減速する制動力を生じる。この制動力を回生ブレーキと称する。
【0022】
第1の実施形態に係るモータ10は、単相モータでも多相モータでも構わない。以降は一般的な三相モータを例として説明する。
【0023】
<第1の実施形態:構成 駆動制御部>
図2は、駆動制御部16の構成の一例を示すブロック図である。
【0024】
「駆動制御部」16は、通信部17から取得される駆動指示に基づいて、駆動動作または回生動作をモータシステム1の各部に通知し制御する。
【0025】
駆動制御部16は、CPU(Central Processing Unit)161と、バス162と、フラッシュメモリ163と、メモリ164と、PIO(Port Input Output)165とで構成される。
【0026】
CPU161は、不揮発性メモリであるフラッシュメモリ163に格納されたプログラムを読出し実行する。フラッシュメモリ163はプログラムの他に、各部を制御するためのパラメータなども保持する。メモリ164は、書込みおよび読出しが可能な記憶素子であり、CPU161がプログラムを実行する際にワーキングメモリとして使用される。PIO165は、モータシステム1の各部に指示を与えるためのポートで、CPU161からの書込みによりポートをHighレベルまたはLowレベルの何れかに設定される。また、CPU161が外部信号のレベルを取得することも可能である。バス162は、CPU161が周辺の各部とデータ通信を行うためのパラレルのデータラインである。また、バス162は通信部17にも接続されている。
【0027】
上記構成により、CPU161は、プログラムを実行しながら通信部17を経由して取得される駆動指示に基づいて、PIO165を介して、モータシステム1の各部を制御する。
【0028】
<第1の実施形態:構成 インバータ>
「インバータ11」は、駆動動作と回生動作を有し、駆動動作が選択された場合は、直流電力を交流電力に変換し、モータ10を回転させる。一方、回生動作が選択された場合は、モータ10からの交流電力を直流電力に変換する。
【0029】
図3はインバータ11の回路構成の一例を示すブロック図である。
【0030】
インバータ11は、制御回路111と、FET112と、電力切替スイッチ113と、平滑コンデンサ114と、で構成される。
【0031】
制御回路111は、駆動動作及び回生動作に応じて、FET112のON、OFFを制御する。FET112はペアで直列に接続されたハーフブリッジ回路を構成し、ハイサイド側FET(112-UH、112-VH、112-WH)のドレインが直流電力の+側に接続され、ローサイド側(112-UL、112-VL、112-WL)のFET112のソースが直流電力の-側に接続される。ハイサイド側FET112のソースとローサイド側のFET112のドレインが接続され、さらに、モータ10の端子に接続される。FET112-UHとFET112-ULはモータ10のU相に接続され、FET112-VHとFET112-VLはモータ10のV相に接続され、FET112-WHとFET112-WLはモータ10のW相に接続される。
【0032】
電力切替スイッチ113は、駆動制御部16からの駆動動作または回生動作の指示に基づいて切り替わる。電力切替スイッチ113は、駆動動作が選択された場合は、B+端子側に接続され、バッテリ12の+端子と導通する。電力切替スイッチ113は、回生動作が選択された場合は、R+端子側に接続され、切替スイッチ13と導通する。
【0033】
平滑コンデンサ114は、回生動作時に、インバータ11内で、モータ10が発電した交流電力を、直流電力に変換するが、変換された直流電力の電圧変動を安定化させる。
【0034】
<第1の実施形態:作用 インバータ>
次に、インバータの作用について説明する。
【0035】
図4は、インバータ10が生成する三相交流波形の例を示す図であり、より具体的には、駆動動作時にインバータ10が生成する交流波形又は回生動作時にモータ10から出力される交流波形を例示している。
【0036】
駆動制御部16によって駆動動作が選択されると、インバータ11は、電力切替スイッチ113をB+端子側に接続する。これにより、バッテリ12から直流電力が、FET112のドレイン側に供給される。制御回路111は、バッテリ12から供給された直流電力が、図4に示すような交流波形として出力されるように、FET112のゲートにパルス信号を供給し、ON/OFFの切り替えを行う。この時の制御回路111が生成するパルスは、PWM又はPDMなど様々な制御方法があるが、適宜最適な方法を選択すればよい。
【0037】
駆動制御部16から回生動作が選択されると、電力切替スイッチ113はR+端子側に接続される。制御回路111はモータ10から供給される図4に示すような交流電力を、ハイサイド側FET112のドレインと、ローサイド側FET112のソース間の電圧差が一定になるように、パルスを出力してFET112を制御する。この時の制御回路111が生成するパルスは、PWM又はPDMなど様々な制御方法があるが、適宜最適な方法を選択すればよい。
【0038】
<第1の実施形態:構成 通信部>
「通信部」17は、外部の駆動指示部2から駆動指示を取得するための通信を行う。
【0039】
通信部17は、例えばCAN(Controller Area Network)、UART(Universal Asynchronous Receiver/Transmitter)、又は、SPI(Serial Peripheral Interface)などのシリアル通信により通信を行う。
【0040】
通信部17は、USB(Universal Serial Bus)などの高度なプロトコルを備えた通信規格を用いてもよく、モータ10の駆動指示に必要な情報のやり取りができればどのような通信を用いてもよい。
【0041】
<第1の実施形態:構成 回生制御部>
「回生制御部」14は、回生電流として流れる電流の量を制御する。
【0042】
図5は、回生制御部の構成の一例を示す回路図である。
【0043】
回生制御部14は、FET(Feild Effect Transistor)141と、パルス生成回路142で構成される。
【0044】
回生制御部14は、駆動指示部2からの駆動指示として制動指示を受けた場合、モータ10で発電された回生電流をVin+からVout+に流す。
【0045】
「駆動指示」は、例えば、回生ブレーキを発動するか否かを示す制動指示と、制動力を示す数値を含むとしてもよい。
【0046】
制動力を示す数値とは、例えば0%~100%といった数値でもよい。また、制動指示は、制動力を示す数値を含むとしてもよい。
【0047】
回生制御部14は、例えば、制動力を示す数値が0%の場合は制動指示なしで、1~99%の場合は制動指示ありと判断してもよい。
【0048】
<第1の実施形態:構成 回生制御部 パルス生成回路>
「パルス生成回路」142は、回生電流の流れる量を制御するためのパルス信号を生成する。生成したパルス信号は後述するFET141のON/OFFに使用される。
【0049】
図6は、パルス生成回路142の動作の例を示す図である。
【0050】
制動指示は、回生ブレーキを機能させるか否かを示す情報を含んでおり、Highで回生ブレーキON、Lowで回生ブレーキOFFを示している。
【0051】
図6の3種の出力パルスは、それぞれ、制動力の指示が、低レベル(低減速)の場合(例えば1~30%)、中レベル(中減速)の場合(例えば31%~60%)、高レベル(高減速)の場合(例えば61%~100%)を示している。
【0052】
出力パルスが、Highの場合FET141が電流を流し、Lowの場合は電流を流さない。従って、出力パルスがHighになる時間で、FET141に流れる電流量を制御できる。
【0053】
<第1の実施形態:構成 回生制御部 パルスのデューティと回生電流の関係>
図7Aは、パルス生成回路142で生成されるパルスのデューティと回生電流との関係の一例を示すグラフである。
【0054】
デューティが大きく(パルスのHigh期間が長く)なると、それに比例して回生電流は増加する。
【0055】
<第1の実施形態:構成 回生制御部 回生電流と制動力の関係>
図7Bは、回生電流と、モータ10が生じる回生ブレーキの制動力との関係の一例を示すグラフである。
【0056】
回生電流が増加すると、それに比例して回生ブレーキの制動力も大きくなる。
【0057】
以上のことから、駆動指示により指定された制動力に応じてパルスのデューティを変化させ、回生電流の流れる量を制御することで回生ブレーキの制動力を制御できる。
【0058】
<第1の実施形態:構成 回生制御部 FET>
「FET」141は、入力されるパルスに応じて、回生電流を流すか否かを切り替える。
パルス生成回路142によりゲートに電圧が印可されると、ソース(Vin+端子側)とドレイン(Vout+端子側)が導通状態となり電流が流れる。ゲートに電圧が印可されていない場合は、ソースとドレインは絶縁状態となり電流は流れない。
【0059】
このように、FET141の状態を切り替えることでVin+からVout+への電流の流れを制御する。
【0060】
ここでは、FET141としたが、電流を流したり、止めたりできる構成であれば他の部材を用いてもよい。例えば、FET141に代えて物理的な切り替えを行うリレーが用いられてもよいし、サイリスタが用いられてもよい。
【0061】
<第1の実施形態:構成 バッテリ>
「バッテリ」12は、モータ10を駆動するための電力を蓄電するとともに、回生制御部14で制御された回生電力を蓄電する。
【0062】
バッテリ12は、例えばリチウムイオン電池などが一般的である。
【0063】
また、モータ10を駆動する電力を蓄電するバッテリ12と、回生電流を蓄電するバッテリ12は一体である必要は無く、別体でもよい。
【0064】
この場合、モータ10を駆動するための電力を蓄電するバッテリ12は、モータシステム1の外部の構成としてもよい。また、回生電流を蓄電するバッテリ12は、キャパシタでもよい。
【0065】
バッテリ12は、蓄電容量一杯まで充電された場合、それ以上充電すると危険な状態になるため、充電を停止する必要がある。
【0066】
この場合、バッテリ12側で強制的に充電を停止するようにしてもよいが、回生ブレーキが利かなくなるため、駆動制御部16でバッテリ12の充電状態を監視し、充電量が所定レベル以上の場合(例えば一杯の場合)は回生ブレーキを使用しない様に制御してもよい。また、バッテリ12に充電出来ない場合は、後述する電力消費部15で回生電力を消費してもよい。
【0067】
<第1の実施形態:構成 電力消費部>
「電力消費部」15は、モータ10の回生ブレーキで自動ブレーキに必要な制動力が得られるように、例えば回生電流をバッテリ12に蓄電することなく消費する。
【0068】
電力消費部15は、例えば電力を熱に変換して消費する負荷抵抗などが考えられる。負荷抵抗は、消費する電力に対して十分な容量を確保する必要がある。このため、電力消費部15は、例えば、回生制御部14で消費可能な最大電力よりも大きい電力を消費するとしてもよい。
【0069】
図8Aは、電力消費部15aの構成の例を示す図である。
【0070】
電力消費部15aは、負荷抵抗151と、冷却手段152とを備える。負荷抵抗151で電力が消費されるため、消費された電力は熱になる。
【0071】
モータ10の出力にもよるが、緊急停止などの用途を考えると、電力消費部15aは、瞬間的に大きな電力を消費可能であることが好ましい。このため、電力消費部15aの発熱量も大きくなる。従って、電力消費部15aでは、冷却手段152によって温度を下げる。
【0072】
冷却手段152は、例えばヒートシンクでもよく、ラジエターでもよい。
【0073】
図8Bは、電力消費部15の変形例で、電力消費部15bの構成の例を示す図である。
【0074】
電力消費部15bは、負荷抵抗153と、キャパシタ154で構成される。
【0075】
電力消費部15bは、瞬間的に生じる回生電流を一旦キャパシタに蓄電し、その後、徐々に、負荷抵抗153で消費する。この場合、負荷抵抗の容量を小さくでき、コスト及び物理的な大きさを抑えることができる。
【0076】
なお、キャパシタ154に蓄電した電力を、モータ10の駆動で消費してもよいが、必要な時に必ず使用出来なければならない。従って、キャパシタ154に蓄電された電力は最も優先的に使用されるように制御され、電力消費部15bで回生電力を消費する必要が生じるタイミングで、キャパシタ154は完全に放電されるように電力を消費する。
【0077】
図8Cは、冷却手段を備えた電力消費部15Cの適用例を示す図である。
【0078】
電力消費部15Cは、タンク形状で内部に冷却水156を蓄える構造となっている。冷却水156が蓄えられた場合、負荷抵抗151は冷却水156に浸される。自動ブレーキが作動した場合、負荷抵抗151は発熱するが、冷却水156が蒸発することで放熱される。排気弁155は、通常は弁により封止されて冷却水156がこぼれることは無いが、内部の圧力がある程度以上に高まった場合は弁が開き、タンク内の気体を放出する。つまり、負荷抵抗151が発熱し、冷却水が蒸発した場合に、タンク内の気圧が高まり、排気弁155の弁が開き、水蒸気を排出する。冷却水156が規定量よりも下回った場合は、給水口157から水が補充され常に一定量をタンク内に貯水する。
【0079】
なお、本適用例の電力消費部15Cは、燃料電池車に好適である。これは、燃料電池は、水素と酸素を反応させて発電するが、発電の際に水が発生する。この水を、冷却水156が不足した場合は、給水口157から補給する。これにより、利用者は冷却水156の量に、注意を払う必要がなくなる。
【0080】
<第1の実施形態:電力消費部 消費エネルギーの計算>
電力消費部15の容量について説明する。
【0081】
一例として、本モータシステム1を搭載した5tの電動車が、30Km/hで走行中に回生ブレーキで停止させる場合について考える。
【0082】
この時の車の運動エネルギーKは、下記の式で求められ173.6KJである。
【0083】
【数1】
【0084】
この時、3秒で停止するように制動する場合の仕事率Pは、下記の式で求められ57.9Wである。
【0085】
【数2】

従って、電力消費部15として約60KWの容量があればよいと言える。
【0086】
<第1の実施形態:構成 切替スイッチ>
「切替スイッチ13」は、駆動制御部16からの駆動指示に基づいて、モータ10で発電した回生電力を、回生制御部14で消費するか電力消費部15で消費するかを切り替える。
【0087】
駆動制御部16は、駆動指示部2から制動指示を受けた場合は、回生電力を回生制御部14で消費するように切替スイッチ13を設定し、停止指示を受けた場合は、回生電力を電力消費部15で消費するように切替スイッチ13を設定する。
【0088】
具体的には、駆動制御部16はポート信号を制御し、例えば、回生制御部14を選択する場合は、ポート信号をHighで出力し、電力消費部15で消費する場合は、ポート信号をLowで出力する。
【0089】
切替スイッチ13は、例えば機械的なリレースイッチでもよいし、FETなどの半導体のスイッチ素子を組み合わせて構成してもよい。
【0090】
FETを使用した場合、切替スイッチ13は、Highが入力された場合は、回生制御部14側のスイッチ素子をONし、電力消費部15側のスイッチ素子をOFFし、回生制御部14に回生電流を流す。切替スイッチ13は、Lowが入力された場合は、電力消費部15側のスイッチ素子をONし、回生制御部14側のスイッチ素子をOFFし、電力消費部15に回生電流を流すようにする。
【0091】
<第1の実施形態:構成 回転停止部>
インバータ11は、回転停止部として機能するように構成してもよい。
【0092】
回転停止部として機能するインバータ11は、駆動指示部2から停止指示があった場合に、インバータ11を回生動作に切り替えて、モータ10の回転を低下させ、モータ10が所定の回転数を下回ったら、モータ10を駆動しながら回転数を低下させ、回転を完全に停止する。
【0093】
回生ブレーキは、モータの回転を止めるように働くが、回転が低下するとともに制動力も低下していく。従って、慣性力により完全に停止するまでには時間がかかる。
【0094】
従って、回生ブレーキにより所定の回転数以下まで回転数が低下したら、インバータ11を駆動動作に切り替えて、インバータ11により回転駆動しながら回転数を低下させ回転を停止する。
【0095】
<第1の実施形態:処理の流れ>
図9Aから図9Dは、駆動制御部16での処理の流れの例を示すフローチャートである。
【0096】
以下説明する処理の流れは、プログラムとして駆動制御部16内のフラッシュメモリ162に格納され、CPU161で実行されてもよい。
【0097】
<第1の実施形態:処理の流れ 駆動制御>
図9Aに示す駆動制御は、駆動指示部2からの駆動指示を受けて、回転制御(S3)、制動制御(S5)、停止制御(S7)の何れかの制御を行う。
【0098】
先ず、駆動制御部16は、通信部17を介して駆動指示部2と通信を行い、駆動指示を取得する(S1)。次に、駆動制御部16は、取得した駆動指示が回転指示か否かを判定する(S2)。駆動制御部16は、駆動指示が回転指示であった場合(S2で「YES」を選択)は、回転制御(S3)に移行する。駆動指示が回転指示ではなかった場合(S2で「NO」を選択)は、駆動指示が制動指示か否かの判定を行う(S4)。
【0099】
駆動制御部16は、駆動指示が制動指示であった場合(S4で「YES」を選択)は、制動制御(S5)に移行する。駆動制御部16は、駆動指示が制動指示ではなかった場合(S4で「NO」を選択)は、駆動指示が停止指示か否かの判定を行う(S6)。駆動制御部16は、駆動指示が停止指示であった場合(S6で「YES」を選択)は、停止制御(S7)に移行する。駆動制御部16は、駆動指示が停止制御ではなかった場合(S6で「NO」を選択)は、制御終了判定に移行する(S8)。駆動制御部16は、制御を終了するか否かを判定し(S8)、駆動制御を終了する場合(S8で「YES」を選択)は、そのまま終了し、駆動制御を継続する(S8で「NO」を選択)場合は、もう一度駆動指示取得S1から実行する。
【0100】
<第1の実施形態:処理の流れ 回転制御>
図9Bは、回転制御(S3)の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0101】
回転制御(S3)が開始されると、先ず、駆動制御部16は、駆動動作指示(S31)でインバータ11に対して駆動動作を指示する。これにより、電力切替スイッチ113が、B+側に設定される。
【0102】
次に、駆動制御部16は、回転数指示(S32)でモータ10の回転数を指定する。これによりインバータ11は指定された回転数になるように制御回路111で、交流波形の周波数と振幅とのうちの少なくとも一方を切り替える。
【0103】
<第1の実施形態:処理の流れ 制動制御>
図9Cは、制動制御(S5)の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0104】
制動制御(S5)が開始されると、駆動制御部16は、先ず回生動作指示(S51)を実行し、インバータ11に回生動作を指示する。これにより、電力切替スイッチ113が、R+側に設定される。
【0105】
次に、駆動制御部16は、回生制御部選択(S52)を実行し、インバータ11の出力が回生制御部14と接続するように切替スイッチ13を設定する。その後、駆動制御部16は、制動力指示(S53)を実行し、回生制御部14に制動力を通知する。これにより、回生制御部14は、指定された制動力で回生ブレーキが動作するように、回生電力をバッテリ12に充電して消費する。
【0106】
図9Dは、停止制御(S7)の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0107】
停止制御(S7)が開始されると、駆動制御部16は、先ず、回生動作指示(S71)を実行して、インバータ11に回生動作を指示する。これにより、電力切替スイッチ113が、R+側に設定される。駆動制御部16は、電力消費部選択(S72)を実行して、インバータ11の出力が電力消費部15に接続するように切替スイッチ13を設定する。この接続により、モータ10から発電される電力が、電力消費部15で消費され、モータ10に回生ブレーキ力が生じて回転数が低下していく。その後、駆動制御部16は、モータ10の回転数を確認しながら、所定回転数以下になるのを待つ(S73)。その後、駆動制御部16は、モータ10の回転数が所定の回転数以下になった場合は、駆動動作指示(S74)を実行して、インバータ11を駆動動作に切り替える。これにより、電力切替スイッチ113が、B+側に設定される。その後、駆動制御部16は、回転停止(S75)でインバータ11を制御し、モータ10の回転数が低下するように駆動して、モータ10の回転を停止する。
【0108】
<第1の実施形態:効果>
以上、述べてきたように、第1の実施形態に係るモータシステム1によれば、外部からの停止指示に基づいて、電力消費部15で回生電力を消費して確実にモータ10の回転を減速することができる。
【0109】
第1の実施形態においては、モータシステム1内部または外部に物理的にモータ10の回転を停止させる機構を持つ必要がなく、かつ、緊急停止などの目的でも確実に回生ブレーキを機能させることができる。このため、回生ブレーキの信頼性と安定性を向上させることができる。
【0110】
<第2の実施形態:概要(主に請求項3に対応)>
第2の実施形態では、第1の実施形態に係るモータシステム1を備えた電動車を説明する。第2の実施形態に係る電動車は、モータシステム1の持つ停止機能を、自動ブレーキとして用いる。
【0111】
なお、第2の実施形態に係る電動車は、第1の実施形態に係るモータシステム1を搭載することを前提として設計されたものであっても構わないが、内燃機関であるエンジンを搭載した自動車に対して、エンジンを第1の実施形態に係るモータシステム1に乗せ換えて電動化した電動車に好適である。
【0112】
また、電動車とは、電気自動車に限らず、燃料電池車、電動二輪車、又は、電車であってもよい。電動車は、電力を動力としていればよく、例えば、人が乗って運転する乗り物でもよく、自動運転機能を備えた乗り物でもよい。
【0113】
<第2の実施形態:構成>
図10は、第2の実施形態に係る電動車Ve1の構成の一例を示すブロック図である。
【0114】
電動車Ve1は、第1の実施形態1に係るモータシステム1と、駆動指示部2と、衝突検知部(センサモジュール)3と、駆動機構4とを備える。
【0115】
請求項4記載の衝突検知部は、衝突検知部3が対応し、請求項4記載の駆動指示部は、駆動指示部2が対応する。
【0116】
<第2の実施形態:構成 モータシステム>
「モータシステム」1は、第1の実施形態に係るモータシステム1と同じ構成であり、駆動指示部2からの駆動指示に基づいて、駆動機構4に回転動力を出力する。また、回生ブレーキによる制動力を駆動機構4に出力する。
【0117】
<第2の実施形態:構成 駆動機構>
「駆動機構」4は、モータシステム1の回転動力を車輪に伝えるための、ギア及びシャフトを含む動力伝達機構である。モータシステム1の回転動力が駆動機構4により車輪に伝達され、電動車Ve1は前進及び後退可能である。
【0118】
<第2の実施形態:構成 駆動指示部>
「駆動指示部」2は、運転者の操作をモータシステム1への駆動指示に変換して出力する。
【0119】
図11は、駆動指示部2の構成の一例を示すブロック図であり、VCU(Vehicle Control Unit)1と、アクセルペダル22と、ブレーキペダル23とを備えている。
【0120】
駆動指示部2は、モータシステム1の駆動に関わる指示をモータシステム1に出力する。駆動指示部2は、衝突検知部3によって衝突の危険があることが検知された場合に、例えば停止指示をモータシステム1の通信部17に出力する。
【0121】
<第2の実施形態:構成 アクセルペダル/ブレーキペダル>
アクセルペダル22、およびブレーキペダル23は、運転者の加減速操作を電動車Ve1に指示するための構成であり、各ペダルの踏み込み量を示す信号をVCU21に出力する。
なお、アクセルペダル22およびブレーキペダル23は一体であっても構わない。
【0122】
<第2の実施形態:構成 駆動指示部 VCU>
「VCU」21は、電動車Ve1の各部に対する指示を生成し、走行に関わる動作を制御する。VCU21は、アクセルペダル22、およびブレーキペダル23の操作を駆動指示として生成し、モータシステム1に出力する。第2の実施形態ではさらに、衝突検知部3によって電動車Velが障害物と衝突する危険性があるか否かを検知する。駆動指示部2は、衝突検知部3の検知結果に基づいて、衝突の危険があると判断された場合は、モータシステム1に対して、駆動指示として停止指示を出力する。
【0123】
駆動指示は、この他、モータシステム1に出力されるだけではなく、減速及び停止するためのブレーキシステム(図示しない)にも出力される。VCU21は駆動指示の他にも、ライトの点灯、メーター表示等車の運行に関わる全般の制御も行うが、本発明の要旨とは関係無いので説明は省略する。
【0124】
なお、第1の実施形態で説明した駆動指示部2は、VCU21に含んでも構わない。この場合、モータ10の回転及び回生の制御を、VCU21が行うことになる。
【0125】
図12は、VCU21の機能の構成の一例を示すブロック図である。
【0126】
VCU21は、CPU211と、バス212と、フラッシュメモリ213と、メモリ214と、SIO215と、ペダル検知216とを備える。
【0127】
以降で、各部の機能について説明するが、第1の実施形態の図2で説明した、駆動制御部16の構成と同じものについては説明を省略する。
【0128】
<第2の実施形態:構成 駆動指示部 SIO>
「SIO(Serial Input Output)」215は、車内各部とシリアル通信でデータのやり取りを行う。
【0129】
第2の実施形態では、衝突検知部3と通信を行う。
【0130】
なお、SIOは、CAN、又は、UARTなどのシリアル通信規格を用いても構わない。
【0131】
<第2の実施形態:構成 駆動指示部 ペダル検知>
「ペダル検知」216は、運転者が操作のために踏み込んだ、アクセル及びブレーキの踏み込み量を検知する。
【0132】
ペダル検知216は、例えば、ペダルの踏み込み量に応じてアナログ信号が変化するように構成される。ペダル検知216は、例えばADC(Analog Digital Converter)などにより、ペダルの踏み込み量をデジタルデータに変換する。CPU211は、例えば、変換されたデジタル量をバス212経由で読出し、ペダルの踏み込み量を読み取る。
【0133】
また、CPU211は、一定周期でペダル検知216を読み出す制御(ポーリング)を実行してもよいし、アナログ値に変化があった場合にペダル検知216がCPU211に割込みを発生し、割込みに応じてCPU211がペダル検知216を読出す制御(イベントドリブン)を実行してもよい。
【0134】
<第2の実施形態:構成 駆動指示部 衝突検知部>
「衝突検知部」3は、車外の対象物との距離を検出するセンサを備え、物体との距離の変化から、制動しなければ衝突すると判断した場合に、衝突検知を出力する。
【0135】
衝突検知部3が備えるセンサは、例えば、ステレオカメラが考えられる。
【0136】
ステレオカメラとは、2つのカメラを所定の間隔(基線長)をあけて配置した装置である。2つのカメラに映る対象物の像のずれ量から距離を測定可能である。
【0137】
衝突検知部3は、例えば、ステレオカメラにより一定時間間隔で撮影を行い、映像に映された対象物の距離の変化を記録する。衝突検知部3は、対象物が近づくスピードと、対象物の距離と、制動可能距離とに基づいて、対象物が制動可能距離に近づいた場合に、衝突の危険があるとして衝突検知を出力する。
【0138】
衝突検知に関しては、様々な技術を用いることができる。
【0139】
<第2の実施形態:効果>
以上述べてきたように、第2の実施形態においては、衝突検知部3を備えて衝突の危険を検知した場合に、回生ブレーキによる制動力を確実に得ることができる。
【0140】
電動車Ve1は、内燃系のエンジンのように、エンジンブレーキ及び排気ブレーキが無いため、回生ブレーキを利かせない場合、油圧式のブレーキのみで減速及び停止する必要がある。
【0141】
第2の実施形態においては、衝突の危険を回避するための緊急ブレーキにおいて、確実で高い制動力を得ることができ、ブレーキの信頼性と安定性を向上させることができる。
【0142】
第2の実施形態は、内燃系のエンジン車のエンジンを本モータシステム1に乗せ換えて電動化した場合に好適である。
【0143】
改造前のエンジン車に、自動ブレーキシステムを搭載していない場合、第2の実施形態に係るモータシステム1を採用することで、自動ブレーキへの対応が可能になる。
【0144】
<第3の実施形態:概要>
第3の実施形態は、内燃系のエンジンを搭載した自動車を、第3の実施形態に係るモータシステム1及び発光制御部を搭載することで電動車に改造するための改造方法である。
【0145】
<第3の実施形態:構成 モータシステム>
図13は、第3の実施形態に係るモータシステム1の構成の一例を示すブロック図である。
【0146】
第3の実施形態に係るモータシステム1は、モータ10と、インバータ11と、バッテリ12と、回生制御部14と、駆動制御部16と、通信部17と、減速検知部18とを備え、外部の駆動指示部2からの駆動指示に基づいてモータ10を駆動する。
【0147】
以降、各部の詳細を説明するが、第1の実施形態と重複する構成の説明は省略し、異なる構成に関してのみ説明する。
【0148】
<第3の実施形態:構成 減速検知部>
「減速検知部」18は、モータシステム1を搭載した電動車の減速度が所定の値を超えたことを検知した場合に減速判定を出力する。
【0149】
所定の減速度とは、例えば、国土交通省が規定する「道路運送車両の保安基準」に定められた1.3m/sとしてもよい。
【0150】
減速検知部18は、例えば、回生制御部14で消費する回生電流を監視し、所定の減速度に相当する電力消費を検出した場合に減速判定を出力するようにしてもよい。
【0151】
また、減速検知部18は、自動車に加速度センサを搭載し、加速度センサが所定の減速度を検出した場合に減速判定を出力してもよい。
【0152】
減速検知部18は、減速検知結果を、例えば発光制御部8に出力する。
【0153】
<第3の実施形態:構成 自動車>
図14Aは、第3の実施形態に係るモータシステム1を用いた改造を施す前の自動車Viの構成の一例を示すブロック図である。
【0154】
自動車Viは、エンジン1iと、駆動指示部2と、駆動機構4と、ブレーキシステム5と、発光部6と、燃料タンク7aとを備える。自動車Viにおいて、ブレーキシステム5と発光部6との間は、例えば配線19により電気的に接続されている。
【0155】
<第3の実施形態:自動車 各構成の説明>
駆動指示部2は、運転者のアクセルペダル及びブレーキペダルの踏み込み量に応じて、エンジン1i及びブレーキシステム5への駆動出力及び制動力を指示する。
【0156】
エンジン1iは、ガソリン、軽油、メタノールなどの燃料を燃焼し、動力に変換する。
【0157】
駆動機構4は、例えば、エンジンで発生した動力を車輪に伝達するためのギア及びシャフトである。
【0158】
ブレーキシステム5は、例えば油圧式ブレーキであり、ブレーキペダルを踏み込むと、ブレーキパッドがディスクを圧迫し、その摩擦により車輪の回転を減速及び停止する。
【0159】
発光部6は、例えばブレーキランプとして車体に設置され、ブレーキの作動によりブレーキシステム5から発光指示を受けて発光し、後方の運転者に減速の注意喚起を行う。
【0160】
燃料タンク7aは、エンジン1iの燃料となる例えばガソリン、軽油、エタノールなどを格納する。
【0161】
<第3の実施形態:自動車 各部の作用>
運転者によりアクセルペダルが踏み込まれると、駆動指示部2は、アクセルの踏み込み量に応じて燃料タンク7aからエンジン1iへの燃料供給量を増加し、エンジン1iの出力を増加させる。また、アクセルが緩められ踏み込み量が低下すると、駆動指示部2は、燃料タンク7aからエンジン1iへの燃料供給量を減少し、エンジン1iの出力を低下する。エンジン1iで生じた動力は、駆動機構4を経由して車輪に伝達され車体が動く。
【0162】
また、運転者によりブレーキペダルが踏まれると、踏み込み量に応じてブレーキが車輪を減速及び停止するように作用する。
【0163】
ブレーキが作動するとブレーキシステム5は、配線19を経由して発光部6に対して発光を指示し、発光部6が発光する。
【0164】
<第3の実施形態:構成 電気自動車>
図14Bは、図14Aの自動車Viを電気自動車Ve2に改造した場合の構成の一例を示すブロック図である。
【0165】
電気自動車Ve2は、モータシステム1と、駆動指示部2と、駆動機構4と、ブレーキシステム5と、発光部6と、発光制御部8とで構成される。
【0166】
<第3の実施形態:電気自動車 各構成の説明>
以降、各構成を説明するが、自動車Viと重複する構成については説明を省略する。
【0167】
駆動機構4、ブレーキシステム5、発光部6及びその他の車体等は、自動車Viの構成をそのまま利用する。
【0168】
駆動指示部2は、自動車Viに備えられたものをそのまま利用してもよいし、新たに載せ替えてもよい。駆動指示部2をそのまま使用する場合は、駆動指示部2からの駆動指示をモータシステム1内の通信部17で取得可能とする。
【0169】
自動車Viのエンジン1i及び燃料タンク7aが除去され、モータシステム1は、エンジンli及び燃料タンク7aを除去して空いた空間に設置される。
【0170】
モータシステム1は、内部に備えたバッテリ12の電力により動力を発生する。
【0171】
発光制御部8は、新たに備え付けられ、ブレーキシステム5からの発光指示と、モータシステム1からの減速判定を取得し、発光指示と減速判定のうちの少なくとも一方が有効の場合に、発光部6に対して発光を指示する。より具体的には、発光制御部8は、自動車のブレーキシステム5と発光部6の間に設置される。発光制御部8は、発光部6の発光指示を検知した場合、又は、モータシステム1の減速検知部18が減速を判定した場合に、発光部6を点灯させる。発光部6に接続されている配線19は切断される。発光制御部8は、切断された配線19のうちの発光部6側の第1の切断部19Aと、切断された配線19のうちの第1の切断部19Aではない第2の切断部19Bと、モータシステム1の減速検知部18と接続されている配線20と接続される。
【0172】
<第3の実施形態:構成詳細 発光制御部>
「発光制御部」18は、ブレーキランプの点灯を指示する信号の入力と、モータシステム1での回生ブレーキの作動を示す減速判定の入力を受ける。そして、発光制御部18は、ブレーキランプの点灯を指示する信号により点灯が指示されたか、減速判定を受け付けた場合のどちらかでブレーキランプの点灯を指示する。
【0173】
図15Aは、発光制御部8の回路構成の一例を示す回路図である。
【0174】
発光制御部8は、トランジスタ81と、ORゲート82とを備える。
【0175】
図15Aの回路図は、発光部6に電圧を印可し、電流が流れた場合に発光することを前提とした構成である。
【0176】
INAには、ブレーキシステム5からのブレーキランプの点灯を指示する信号が入力される。INBには、モータシステム1からの減速検出が入力される。
【0177】
ORゲート82は、INAからの入力またはINBからの入力のうちいずれか一方または両方がHighになった場合にHighが出力される。
【0178】
トランジスタ81は、ゲート入力にHighが入力された場合に導通状態となりVddの電圧がOUTから出力される。
【0179】
図15Bは、発光制御部8の回路構成の変形例を示す回路図である。
【0180】
発光制御部8は、2つのトランジスタ81aと81bを備える。
【0181】
ブレーキランプの点灯を指示する信号を伝える配線は、トランジスタ81aのINAに接続される。ブレーキシステム1からの減速検出信号を伝える配線は、トランジスタ81bのINBに接続される。2つのトランジスタ81a,81bの出力は結線されOUT端子に接続される。トランジスタ81a,81bのうちの少なくとも一方が導通状態となるとOUTからVddの電圧が出力される。
【0182】
以上に示した発光制御部8の回路図は一例であり上記に限定されるものではない。発光部6の点灯を指示する信号又はモータシステム1の減速判定のどちらかが有効になったことにより発光部6が点灯できる構成であればすべて本願発明の範囲に含まれる。
【0183】
<第3の実施形態:構成詳細 発光部>
「発光部」6は、後続車に減速を視認させるためのブレーキランプであり、発光を指示する信号の入力により発光する。
【0184】
図16は、発光部6の構成の一例を示す回路図である。
【0185】
発光部6は、LED61と、電気抵抗62とを備える。
【0186】
LED61は、電流が流れることで発光する。電気抵抗62は、LED61に流れる電流量を調整するための負荷である。
【0187】
IN端子に、Highレベルが入力され、電流が流れるとLED61が発光する。
【0188】
発光部6は以上に述べた構成に限定されるものではなく、例えばLEDをハロゲンランプに置き換えでもよい。発光部6は適切な発光が得られるデバイスであれば特に限定されない。また、電気抵抗62は発光部6が適切な抵抗値を備えていれば省略してもよい。
【0189】
図16で例示した回路では、Highレベルが入力されて発光する構成であったが、Lowレベルが入力されて発光するように構成としてもよい。この場合、LED61のアノード側にVddが接続され、カソード側にINが接続される。
【0190】
<第3の実施形態:電気自動車 作用>
運転者がアクセルペダルを踏みこむと、駆動指示部2はアクセルペダルの踏み込み量に応じて、モータシステム1に駆動指示を送る。モータシステム1は、駆動指示に基づいて所定の回転数でモータ10を回転させる。モータ10の回転動力は、駆動機構4を介して車輪に伝達され、車輪が回転することで車体が動く。
【0191】
ブレーキに関わる動作は自動車Viと同じであるが、ブレーキシステム5から出力された発光指示は、発光制御部8に入力される。
【0192】
ブレーキシステム5から発光指示が出力されると、発光制御部8を介して発光部6が発光する。また、モータシステム1で回生ブレーキが作動し、減速判定を出力した場合、発光制御部8を介して発光部6が発光する。
【0193】
このように、ブレーキシステム5とモータシステム1とのうちの少なくとも一方で制動力が生じた場合に、発光部6は発光する。
【0194】
<第3の実施形態:構成 燃料電池車>
図17は、自動車Viを燃料電池車Vfに改造した場合の構成の一例を示すブロック図である。
【0195】
燃料電池車Vfは、モータシステム1と、駆動指示部2と、駆動機構4と、ブレーキシステム5と、発光部6と、発光制御部8と、燃料タンク7bと、燃料電池9と、を備える。
【0196】
<第3の実施形態:燃料電池車 各構成の説明>
以降、各構成の説明をするが、自動車Viと重複する構成については説明を省略する。
【0197】
駆動機構4、ブレーキシステム5、発光部6及びその他の車体等は、自動車Viの構成をそのまま利用する。
【0198】
駆動指示部2は、電気自動車Ve2と同様に、自動車Viに備えられたものをそのまま利用してもよいし、新たに載せ替えてもよい。
【0199】
燃料電池9は、水素と酸素を反応させて発電を行う。燃料電池9は、水素を直接供給する構成であってもよいし、内部に改質器を備えて、エタノールなどの燃料から水素を発生させるように構成してもよい。発電された電力は、モータシステム1により動力に変換される。
【0200】
燃料タンク7bは、燃料電池の燃料を格納する。燃料が水素の場合、自動車Viの燃料タンク7aは取り外し、新たに水素格納用のタンクを燃料タンク7bとして取り付ける。
【0201】
燃料がエタノールなどの液体燃料の場合、燃料タンク7aをそのまま使用してもよいし、燃料タンク7aに腐食防止などの加工を施してから使用してもよい。
【0202】
<第3の実施形態:燃料電池車 作用>
運転者がアクセルペダルを踏み込むと、踏み込み量に応じて駆動指示部2は、駆動指示をモータシステム1に出力する。駆動指示に応じて燃料タンク7bから燃料電池9に燃料が供給され、燃料電池9で発電が行われ、モータシステム1は必要な電力の供給を受ける。燃料電池9から供給された電力でモータシステム1は回転動力を発生する。回転動力は、駆動機構4を介して車輪に伝達され、車輪が回転することで車体が動く。
【0203】
ブレーキ系統の作用に関しては、電気自動車Ve2と同様のため説明を省略する。
【0204】
<第3の実施形態:効果>
第3の実施形態によれば、内燃系のエンジンを搭載した自動車を電動車に改造した場合に、従来のブレーキシステムが機能した場合でも、改造したモータによる回生ブレーキを機能させた場合でも、どちらでも発光部6が点灯するので、走行時の安全性を確保できる。
【符号の説明】
【0205】
1…モータシステム、2…駆動指示部、3…衝突検知部、4…駆動機構、10…モータ、11…インバータ、13…切替スイッチ、14…回生制御部、15…電力消費部、16…駆動制御部、17…通信部、21…VCU、22…アクセルペダル、23…ブレーキペダル、111…制御回路、112…FET、113…電力切替スイッチ、141…FET、142…パルス生成回路、151,153…負荷抵抗、152…冷却手段、154…キャパシタ、155…排気弁、156…冷却水、157…給水口、161…CPU、162…バス、163…フラッシュメモリ、164…メモリ、165…PIO
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図9D
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15A
図15B
図16
図17