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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088863
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】測長装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 17/20 20060101AFI20240626BHJP
   B26D 7/01 20060101ALI20240626BHJP
   G01B 5/02 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
B23Q17/20 A
B26D7/01 C
G01B5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203872
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】599047228
【氏名又は名称】菅機械産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121773
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 正
(72)【発明者】
【氏名】菅 英治
【テーマコード(参考)】
2F062
3C021
3C029
【Fターム(参考)】
2F062AA02
2F062AA21
2F062GG46
2F062GG52
3C021BB07
3C029BB05
(57)【要約】
【課題】ねじ送り機構による微調整が可能な測長装置において、ねじ送り機構の遊びによる位置ずれの発生を防ぐことのできる測長装置を提供する。
【解決手段】測長装置1は、スライドレール15と、スライドレール15にスライド自在に設置されたスライド部3であって、スライド本体30と、スライド本体30のスライドレール15に対するスライド距離を測定する測長器80と、仮固定体40と、スライド本体30と仮固定体40とをスライド方向において相対的に移動可能に連結する送りねじ51を有する微調整機構50と、スライド本体30を固定するための第一クランプ35と、仮固定体40を固定するための仮固定クランプ45と、を有するスライド部3と、を備え、微調整機構50は、スライド本体30と仮固定体40とが常に押し合う又は引き合うように、送りねじ51と同軸にこれらの間に設置された圧縮コイルバネ57を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク加工装置と組み合わせて使用され、前記ワーク加工装置により加工されるワークの長さを測定する測長装置において、
測長時に前記ワーク加工装置に対して相対的に固定されるスライドレールと、
前記スライドレールにスライド自在に設置されたスライド部であって、
前記スライドレールにスライド自在に取り付けられたスライド本体と、
前記スライド本体の前記スライドレールに対するスライド距離を測定する測長器と、
仮固定体と、
前記スライド本体と前記仮固定体とを前記スライド本体のスライド方向において相対的に移動可能に連結する送りねじを有する微調整機構と、
前記スライド本体を前記スライドレールに対して固定するための第一クランプと、
前記仮固定体を前記スライドレールに対して固定するための仮固定クランプと、を有するスライド部と、を備え、
前記微調整機構は、前記スライド本体と前記仮固定体とが常に押し合う又は引き合うように、前記送りねじと同軸に前記スライド本体と前記仮固定体との間に設置された圧縮コイルバネを備えることを特徴とする測長装置。
【請求項2】
前記送りねじは、フランジが形成され、前記スライド本体は、フランジ溝が形成され、前記フランジ溝に前記フランジが嵌まることで、前記スライド方向における前記送りねじと前記スライド本体との相対位置が固定されており、
前記フランジ溝において、前記フランジと前記スライド本体との間であって、前記圧縮コイルバネにより前記フランジが前記スライド本体に押し付けられる場所にオイルレスワッシャーが設置されていることを特徴とする請求項1記載の測長装置。
【請求項3】
前記仮固定体は、その一部が前記スライド本体によって囲まれた空間内に設置され、前記スライド方向における前記スライド本体に対する相対的な移動範囲が、前記スライド本体によって制限されると共に、前記圧縮コイルバネも前記空間内に設置され、
前記スライド本体は、前記圧縮コイルバネの破損を防止するために、前記仮固定体の前記圧縮コイルバネを縮める方向への移動範囲を制限する、前記空間内に突出する移動制限凸部を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の測長装置。
【請求項4】
前記圧縮コイルバネは、前記送りねじの前記仮固定体よりも先端側に設置されていることを特徴とする請求項1記載の測長装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工装置により加工されるワークの長さを測定する測長装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被加工物であるワークに対して、切断、穴開け、線引き等の各種加工を行う加工装置が広く知られている。このような加工装置において、ワークに対して正確な切断位置、穴開け位置、線引き位置等の加工位置で加工を行うために、ワークの所望の場所から加工位置までの長さを正確に測定する必要がある。
【0003】
また、加工装置により加工されるワークの長さを測定する測長装置が提供されており、例えば、下記特許文献1に開示された測長装置が知られている。特許文献1には、微調整機構により正確な位置決めが可能な測長装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-155176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1に開示された測長装置では、スライド部の位置を微調整するためにねじ送り機構を採用しているため、機構の遊び(隙間、ガタ)が少なからず存在し、スライド部をクランプにより固定する際に、僅かな位置ずれが発生してしまうおそれがある。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、ねじ送り機構による微調整が可能な測長装置において、ねじ送り機構の遊びによる位置ずれの発生を防ぐことのできる測長装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る測長装置は、ワーク加工装置と組み合わせて使用され、前記ワーク加工装置により加工されるワークの長さを測定する測長装置において、測長時に前記ワーク加工装置に対して相対的に固定されるスライドレールと、前記スライドレールにスライド自在に設置されたスライド部であって、前記スライドレールにスライド自在に取り付けられたスライド本体と、前記スライド本体の前記スライドレールに対するスライド距離を測定する測長器と、仮固定体と、前記スライド本体と前記仮固定体とを前記スライド本体のスライド方向において相対的に移動可能に連結する送りねじを有する微調整機構と、前記スライド本体を前記スライドレールに対して固定するための第一クランプと、前記仮固定体を前記スライドレールに対して固定するための仮固定クランプと、を有するスライド部と、を備え、前記微調整機構は、前記スライド本体と前記仮固定体とが常に押し合う又は引き合うように、前記送りねじと同軸に前記スライド本体と前記仮固定体との間に設置された圧縮コイルバネを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る測長装置によれば、ねじ送り機構による微調整が可能な測長装置において、ねじ送り機構の遊びによる位置ずれの発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の実施形態に係る測長装置の斜視図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る測長装置の主要部の拡大斜視図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る測長装置の主要部の拡大斜視図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る測長装置の主要部の拡大図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係る測長装置の主要部の拡大図である。
図6図6は、本発明の実施形態に係る測長装置の使用状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る測長装置1について説明する。本実施形態では、ワーク加工装置である切断装置90により所定の長さに切断されるワークの長さを計測する測長装置1について説明する。
【0011】
測長装置1は、後述する切断装置90に対して固定されるベース部2と、ベース部2に対してスライド自在に設置されたスライド部3とを備えている。ベース部2は、帯板形状のベース台11と、ベース台11上に設置されたスライドレール15とを備える。
【0012】
スライドレール15は、スライド方向の両側面にスライド方向に伸びる一対のスライド溝16が形成されている。スライド溝16の一方の端部(図1において略右端部)には、スライド部3がスライドレール15の端から離脱するのを防ぐスライドストッパー18が設置されている。
【0013】
スライド部3は、スライド本体30と、仮固定体40と、スライド本体30と仮固定体40とのスライド方向の相対位置を微調整する微調整機構50と、アーム部60と、デジタル測長器80とを備え、スライド本体30を介して、スライドレール15上にスライド自在に設置されている。
【0014】
スライド本体30は、筐体31と、筐体31をスライドレール15に対して固定するための第一クランプ35と、筐体31の下面に固定されたリニアガイド39とを備える。筐体31は、スライド方向の両端に位置するフレーム31aと、両側のフレーム31aの間に位置する本体ブロック31bとを備えている。
【0015】
本体ブロック31bは、仮固定体40の上側部分を収容するための囲み空間341が形成されている。図4(B)は、図4(A)のA-A線断面図であり、囲み空間341の部分の水平断面図である。筐体31の囲み空間341に面する部分には、後述する微調整機構50の送りねじ51が貫通するおねじ挿通穴32が形成されている。おねじ挿通穴32の内径は、送りねじ51の軸外径よりも大きい。
【0016】
フレーム31aのおねじ挿通穴32の囲み空間341側(内側)の入口部分に、送りねじ51に形成されたフランジ53を嵌め込むためのフランジ溝321が形成されている。筐体31は、送りねじ51のフランジ53をフランジ溝321に嵌め込んだ状態で、本体ブロック31bの側面により押さえ付けることで、フランジ53がフランジ溝321から囲み空間341側に抜けないようにしている。筐体31は、後述するアーム部60を保持するためのアーム保持部345を備えている。
【0017】
また、本体ブロック31bの囲み空間341の部分には、後述する仮固定ブロック41が圧縮コイルバネ57を圧縮する方向に移動し過ぎて圧縮コイルバネ57を破損することがないように、仮固定ブロック41の移動範囲を制限するための移動制限凸部342が設置されている。
【0018】
移動制限凸部342は、本体ブロック31bの囲み空間341に面する側面を囲み空間341の側に突出させた部分であり、圧縮コイルバネ57を圧縮させる方向(図4において右方向)に移動する仮固定ブロック41は、移動制限凸部342に接触することで、それ以上、同方向には移動できない。これにより、微調整機構50の操作ミス等による圧縮コイルバネ57の破損を確実に防止することができる。
【0019】
第一クランプ35は、クランプレバー36と、挟持体37と、クランプ軸38とを備え、筐体31に固定されて設置されている。図5(C)は、図5(A)のC-C線断面図であり、第一クランプ35が設置された部分のスライド方向、すなわち測長方向に垂直な鉛直断面図である。クランプ軸38は、スライド方向と直交する方向に設置されている。
【0020】
クランプレバー36は、クランプ軸38の一端に固定設置されており、クランプレバー36をクランプ軸38の軸回りに回転させることで、クランプ軸38をその軸回りに回転させることができる。挟持体37は、クランプ軸38に軸支され、スライドレール15を挟み込むように配置された一対のブロックから構成されている。クランプ軸38には図示しないネジ溝が刻まれており、回動させることで挟持体37を構成する一対のブロックの間隔を調整することができる。
【0021】
よって、第一クランプ35は、クランプレバー36を操作することで、スライド本体30をスライドレール15に対して固定する固定状態と、スライド本体30をスライドレール15に対してスライド自在に解放する固定解除状態とを切り換えることができる。固定状態では、図5(C)に示すように、挟持体37はスライドレール15を挟み込んで挟持しており、固定解除状態では、挟持体37はスライドレール15から退避して離れている。
【0022】
リニアガイド39は、筐体31の下面に固定されており、スライドレール15に対して滑らかにスライド自在に取り付けられている(図3等参照)。
【0023】
仮固定体40は、スライド本体30の囲み空間341に配置される仮固定ブロック41と、仮固定ブロック41をスライドレール15に対して固定するための仮固定クランプ45とを備える。仮固定ブロック41は、囲み空間341内において、その上側部分がスライド本体30に対してスライド方向に相対的に移動可能な形状、サイズであり、下側部分は、スライドレール15を両側から囲むような形状となっている。
【0024】
仮固定ブロック41には、後述する微調整機構50の送りねじ51がねじ込まれる、スライド方向に延在するめねじ穴42と、下側部分に設置された、仮固定クランプ45のクランプ軸48がねじ込まれる仮クランプめねじ穴43が形成されている。
【0025】
仮固定クランプ45は、クランプレバー46と、クランプ軸48と、クランプ軸48と同軸上においてクランプレバー46と仮固定ブロック41との間に挟まれて設置された仮クランプコイルバネ49とを備えている。図5(B)は、図5(A)のB-B線断面図であり、仮固定クランプ45が設置された部分のスライド方向(測長方向)に垂直な鉛直断面図である。クランプ軸48は、スライド方向と直交する方向に設置されている。
【0026】
クランプレバー46は、クランプ軸48の一端に固定設置されており、クランプレバー46をクランプ軸48の軸回りに回転させることで、クランプ軸48をその軸回りに回転させることができる。クランプ軸48には図示しないネジ溝が刻まれており、回動させることで仮固定ブロック41とのクランプ軸48の軸方向の相対位置を調整することができる。
【0027】
クランプ軸48の先端は、仮固定ブロック41の下側部分のスライドレール15に面する側に突出しており、クランプレバー46を操作することで、クランプ軸48の先端がスライドレール15に押し付けられて、仮固定ブロック41をスライドレール15に対して固定する固定状態と、クランプ軸48の先端をスライドレール15から退避させて、仮固定ブロック41をスライドレール15に対してスライド自在に解放する固定解除状態とを切り換えることができる。
【0028】
固定状態では、図5(B)に示すように、クランプ軸48の先端がスライドレール15の側面に接触しており、固定解除状態では、クランプ軸48の先端はスライドレール15から退避して離れている。なお、仮固定クランプ45は、第一固定クランプ35よりも締付力(固定力)の弱いものが使用されている。
【0029】
微調整機構50は、スライド本体30(筐体31)と仮固定体40(仮固定ブロック41)を相対的に移動可能に連結するねじ送り機構であり、おねじである送りねじ51と、送りねじ51と同軸に設置された圧縮コイルバネ57とを備えている。送りねじ51は、頭部に設置された取っ手52と、頭部近くに形成されたフランジ53と、先端側に形成されたおねじ部54と、フランジ溝321の底でフランジ53と筐体31(フレーム31a)と間に設置されたオイルレスワッシャー55とを備えている(図3及び図4等参照)。
【0030】
送りねじ51は、フランジ53がフレーム31aに形成されたおねじ挿通穴32の内側入口に形成されたフランジ溝321に嵌まった収納状態で、本体ブロック31bにより、フランジ53がフランジ溝321から抜けないように抑えられている。よって、送りねじ51は、筐体31に対して、スライド方向への移動が制限され、送りねじ51と筐体31とのスライド方向における相対位置は固定されている。
【0031】
送りねじ51のおねじ部54は、仮固定ブロック41に形成されためねじ穴42にねじ込まれており、送りねじ51が軸回りに回転すると、おねじ部54とめねじ穴42との螺合により、送りねじ51と仮固定ブロック41とが、スライド方向においてねじ送りにより相対的に移動する。
【0032】
上述したように、スライド方向において、送りねじ51と筐体31とは相対的に固定されている。よって、送りねじ51が軸周りに回転すると、スライド方向において、筐体31(スライド本体30)と仮固定ブロック41(仮固定体40)とが相対的に移動することになる。
【0033】
本実施形態では、送りねじ51が一回転すると、送りねじ51と筐体31とがスライド方向において1.25mm移動するように構成されており、送りねじ51を回転させることで、スライド本体30と仮固定体40との相対的な位置を微調整することができる。
【0034】
圧縮コイルバネ57は、スライド本体30と仮固定体40とが常に押し合うように、送りねじ51と同軸に、スライド本体30と仮固定体40との間に縮んだ状態で設置されている。送りねじ51のおねじ部54が圧縮コイルバネ57を貫通している。
【0035】
ここで、送りねじ51のおねじ部54と仮固定ブロック41のめねじ穴42との嵌合には軸方向の遊び(隙間、ガタ)が少なからず存在し、また、送りねじ51のフランジ53と筐体31のフランジ溝321との嵌合にも送りねじ51を回動可能とするために軸方向に多少の遊び(隙間、ガタ)が存在する。
【0036】
このため、後述する本固定工程において、デジタル測長器80の正確な測定値に基づき、正確な位置に第一クランプ35によりスライド本体30をスライドレール15に対して本固定する際、クランプレバー36を操作すると、スライド本体30がスライドレール15に対して僅かに移動してしまい、本固定前のデジタル測長器80の測長値と、本固定後のデジタル測長器80の測長値とが、僅かに、例えば0.1mm程度ずれてしまう場合がある。
【0037】
本実施形態では、圧縮コイルバネ57を設置し、微調整機構50により連結されたスライド本体30と仮固定体40とをスライド方向において弾性力で押し合うように設置しておくことで、このような微調整機構50の遊びによる本固定工程の際の僅かな位置ずれを防止することができる。
【0038】
また、圧縮コイルバネ57を設置することで、送りねじ51のフランジ53がフランジ溝321の底に押し付けられることになり、送りねじ51がスムーズに軸回りに回転できなくなるおそれがあるが、本実施形態では、フランジ溝321内のフランジ53と本体ブロック31bとの間であって、圧縮コイルバネ57によってフランジ53が本体ブロック31bに押し付けられる場所、すなわちフランジ溝321の底にオイルレスワッシャー55を設置することで、送りねじ51のスムーズな操作を可能としている。
【0039】
なお、本実施形態では、圧縮コイルバネ57を、送りねじ51の仮固定ブロック41よりも先端側(図4において右側)において、仮固定ブロック41と本体ブロック31bとの間に設置し、両者(の送りねじ51との嵌合部分)が押し合うように構成したが、仮固定ブロック41の取っ手52の側(図4において左側)において、仮固定ブロック41と本体ブロック31bとの間に圧縮コイルバネ57を設置し、両者(の送りねじ51との嵌合部分)が引き合うように構成しても良い。但し、圧縮コイルバネ57を仮固定ブロック41よりも先端側に設置した方が、スライド部3の組立作業が容易である。
【0040】
続いて、微調整機構50によりスライド位置を微調整しながら、スライド本体30をスライドレール15の所望の位置に位置決め固定する手順について詳細に説明する。
【0041】
まず、仮固定工程として、スライド部30をスライドレール15の所望の位置の近傍に仮固定する。具体的には、デジタル測長器80の表示部82の測定値を確認しながら、リニアガイド39を介してスライド本体30をスライドレール15に対しておおよそ所望の長さとなる位置まで手作業でスライドさせる。
【0042】
所望の位置の近傍までスライド本体30を移動させると、仮固定体40の仮固定クランプ45を閉じて、仮固定体40をスライドレール15に対してしっかりと固定する。このとき、仮固定体40は、微調整機構50を介してスライド本体30と連結されているため、スライド本体30もスライドレール15に対して間接的に仮固定された状態となる。
【0043】
次に、微調整工程として、微調整機構50によりスライド本体30のスライドレール15に対するスライド位置を微調整し、所望のスライド位置に正確に位置決めする。具体的には、再度、表示部82の測定値を確認しながら、取っ手52を回すことで、ねじ送り機構によりスライドレール15に固定された仮固定体40に対して、スライド本体30をスライド方向、すなわち、測長方向に微少距離移動させる。
【0044】
そして、表示部82の測定値が所望の長さにちょうど一致した場所でネジ送りによる微調整を終了し、第一クランプ35を閉じて、スライド本体30をスライドレール15に対して固定させる(本固定工程)。これにより、スライド本体30を所望の位置に正確にしっかりと固定することができる。
【0045】
このとき、本実施形態では、圧縮コイルバネ57により仮固定体40とスライド本体30とをスライド方向において常に押し合うよう構成しているため、微調整機構50の遊びによる僅かな位置ずれを防止することができる。
【0046】
このように、仮固定工程、微調整工程及び本固定工程を備える本実施形態によれば、仮固定工程では、手動でスライド部20を素早く移動させ、その後、微調整工程において、スライド位置の微調整を行うことで、全体として短時間で正確な位置決め(本固定工程)をすることができる。
【0047】
また、本実施形態では、仮固定体40は、スライド本体30の筺体31の中央付近に形成された囲み空間341内に配置されている(図2図4(B)等参照)。このため、微調整機構50によって仮固定体40とスライド本体30とがスライド方向において相対位置を微調整される際、仮固定体40の相対的な移動範囲は、囲み空間341内に制限される。これにより、送りねじ51の回しすぎによって送りねじ51がめねじ穴42から外れてしまうのを防止することができる。
【0048】
もちろん、仮固定体40の設置場所は、微調整機構50によってスライド本体30とスライド可能に連結可能な位置であれば適宜変更可能であり、例えば、スライド本体30の筐体31と隣り合わせに設置してもよい。
【0049】
続いて、アーム部60は、スライド本体30のアーム保持部345に保持されるアーム支持軸61と、スプリング63と、ワーク当接アーム65とを備える。ワークを測長する際には、ワーク当接アーム65の先端部分が切断装置やワークに接触する。
【0050】
ワーク当接アーム65は、スライド方向に延在するアーム支持軸61によってスライド方向にスライド可能に軸支されている。スプリング63は、アーム支持軸61に同軸設置され、ワーク当接アーム65をその先端方向に付勢しており、ワーク当接アーム65の先端が衝突した際の衝撃を吸収する。
【0051】
以上、測長装置1の構成について説明したが、続いて、測長装置1によりワークの長さを計測しながら、切断装置90によりワークを所定の長さに切り出す際の手順について説明する。図6は、本実施形態に係る測長装置の使用状態を示す斜視図である。
【0052】
本実施形態では、測長装置1を切断装置90と組み合わせて使用しており、測長装置1により測長を行うことで、切断装置90は、所望の切断位置(加工位置)において所望の長さでワークを切り出すことができる。
【0053】
具体的には、ワークの設置前に、アーム部60のワークに当接する先端部分を加工位置である切断位置(切断装置90の切断刃91の側面に接触する位置)に位置させたうえで、デジタル測長器80の測定値を0にリセットする。
【0054】
続いて、ワークを所望の長さで切り出せるように、スライド部3を切断位置から所望の長さ離れるようにスライドさせる。このとき、スライド部3をスライドさせると、デジタル測長器80の表示部82にリセット位置(切断位置)からの移動距離が表示される。
【0055】
そして、表示部82の測定値が所望の長さの値となる位置でスライド部3を固定する。スライド部3の固定にあたっては、まず、上述した仮固定工程により、表示部82の測定値が所定の値の付近となった状態で、仮固定クランプ45により、仮固定体40をスライドレール15に対して固定する。このとき、表示部82の測定値が所望の長さの値と一致していなくても良い。
【0056】
続いて、上述した微調整工程により、表示部82の測定値が所望の長さの値に正確に一致するように位置させた状態で、本固定工程において、第一クランプ35により、スライド本体30をスライドレール15に対して固定する。このとき、スライド本体30は、圧縮コイルバネ57により、仮固定体40と常に押し合うように設置されており、本固定の際に、微調整機構50の遊びによる位置ずれを防止することができる。
【0057】
これにより、切断位置からワーク当接アーム65の先端部分までの距離が所望の長さになるため、一端がワーク当接アーム65の先端に接するようにワークを切断位置に設置すると、ワークを所望の長さで切断することができる。
【0058】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。例えば、本実施形態に係る測長装置を構成する各部材の形状やサイズ、素材等は適宜変更可能である。
【0059】
また、本実施形態では、測長装置を組み合わせて使用する加工装置として、切断装置を例に挙げて説明したが、ワークの所定の場所に穴を開ける穴開け装置や、ワークの所定の場所に線を引く線引き装置など、他の様々な加工装置を組み合わせて使用することができる。
【0060】
また、上記実施形態では、測長装置を、ワーク加工装置に直接固定して設置する構成としたが、測長装置は、ワーク加工装置の傍でワークの長さを測長できるようにワーク加工装置に対して安定して相対的に固定できる構成であれば良く、ワーク加工装置の傍の床面上に設置される自立式の測長装置であっても良い。
【符号の説明】
【0061】
1 測長装置
2 ベース部
11 ベース台
15 スライドレール
16 スライド溝
18 スライドストッパー
3 スライド部
30 スライド本体
31 筐体
31a フレーム
31b 本体ブロック
32 おねじ挿通穴
321 フランジ溝
341 囲み空間
342 移動制限凸部
345 アーム保持部
35 第一クランプ
36 クランプレバー
37 挟持体
38 クランプ軸
39 リニアガイド
40 仮固定体
41 仮固定ブロック
42 めねじ穴
43 仮クランプめねじ穴
45 仮固定クランプ
46 クランプレバー
48 クランプ軸
49 仮クランプコイルバネ
50 微調整機構
51 送りねじ
52 取っ手
53 フランジ
54 おねじ部
55 オイルレスワッシャー
57 圧縮コイルバネ
60 アーム部
61 アーム支持軸
63 スプリング
65 ワーク当接アーム
80 デジタル測長器
82 表示部
90 切断装置
91 切断刃
92 ワーク支持部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6