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特開2024-88882半導体製造装置用部材、プラグ及びプラグ製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088882
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】半導体製造装置用部材、プラグ及びプラグ製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20240626BHJP
   B28B 7/34 20060101ALI20240626BHJP
   B28B 7/16 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
H01L21/68 R
B28B7/34 A
B28B7/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203898
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 英明
(72)【発明者】
【氏名】大野 正
(72)【発明者】
【氏名】芦田 宙大
【テーマコード(参考)】
4G053
5F131
【Fターム(参考)】
4G053AA07
4G053CA07
4G053CA20
4G053EA47
4G053EB01
4G053EB17
5F131AA02
5F131CA09
5F131DA33
5F131DA42
5F131EA03
5F131EB11
5F131EB15
5F131EB16
5F131EB18
5F131EB78
5F131EB79
5F131EB81
5F131EB82
5F131EB84
(57)【要約】
【課題】ガス流路を設計通りに作製可能であり、ガス流路内でのアーク放電を抑制しつつ十分なガス流量を確保できるようにする。
【解決手段】半導体製造装置用部材10は、上面にウエハ載置部21を有するセラミックプレート20と、セラミックプレート20を上下方向に貫通するプラグ設置穴24に設置され、ガスの流通を許容するプラグ50と、を備える。プラグ50は、プラグ本体52の内部に、複数の線状流路が交差するように組み合わされて構成されたガス流路54を有する。ガス流路54は、プラグ本体52の上面及び下面に複数の開口部を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面にウエハ載置部を有するセラミックプレートと、
前記セラミックプレートを上下方向に貫通するプラグ設置穴に設置され、ガスの流通を許容するプラグと、
を備え、
前記プラグは、プラグ本体の内部に、複数の線状流路が交差するように組み合わされて構成されたガス流路を有し、
前記ガス流路は、前記プラグ本体の上面及び下面に複数の開口部を有する、
半導体製造装置用部材。
【請求項2】
前記ガス流路における上下方向の最大長さは、0.5mm以下である、
請求項1に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項3】
前記ガス流路は、上下、左右及び前後のそれぞれに直線的に延びる複数の前記線状流路が直交するように組み合わされて構成される、
請求項1又は2に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項4】
前記ガス流路は、斜め方向に直線的に延びる複数の前記線状流路が交差するように組み合わされて構成されるか、斜め方向及び水平方向のそれぞれに直線的に延びる複数の前記線状流路が交差するように組み合わされて構成される、
請求項1又は2に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項5】
前記プラグ本体は、緻密なセラミックで作製され、
前記ガス流路は、前記プラグ本体の側面に開口部を有さない、
請求項1又は2に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項6】
プラグ本体と、
前記プラグ本体の内部に、複数の線状流路が交差するように組み合わされて構成されたガス流路と、
前記ガス流路のうち前記プラグの上面及び下面に開口する複数の開口部と、
を備えたプラグ。
【請求項7】
請求項6に記載のプラグを製造する方法であって、
(a)前記プラグの前駆体である成形体と同形状の成形用空間を有し、前記ガス流路に対応する中子が一体化された成形型を有機材料で作製する工程と、
(b)セラミックスラリーを前記成形型の前記成形用空間に注入して固化させることにより前記成形体を前記成形型内に作製する工程と、
(c)前記成形型と前記成形体とが一体化した一体物から前記成形型を消失させて前記成形体を得る工程と、
(d)前記成形体を焼成して前記プラグを得る工程と、
を含むプラグ製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置用部材、プラグ及びプラグ製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造装置用部材としては、上面にウエハ載置部を有する静電チャックを備えたものが知られている。例えば、特許文献1の静電チャックは、ウエハを吸着保持するセラミックプレートと、セラミックプレートに形成された貫通孔と、貫通孔に配置された多孔質プラグと、セラミックプレートの下面に接着された導電性の冷却プレートとを備えたものが開示されている。ウエハ載置部に載置されたウエハをプラズマで処理する場合、冷却プレートとウエハの上部に配置される平板電極との間に高周波電力を印加してウエハの上部にプラズマを発生させる。それと共に、ウエハとセラミックプレートとの熱伝導を向上させるため、熱伝導ガスであるヘリウムを多孔質プラグを介してウエハの裏面に供給する。熱伝導ガスは、多孔質プラグの内部に存在する多数の気孔を通過する。そのため、多孔質プラグでは多数の気孔がガス流路の役割を果たす。一方、特許文献2では、緻密なプラグ本体の内部に螺旋状のガス流路を備えたプラグを利用した半導体製造装置用部材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-29384号公報
【特許文献2】特許第7144603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、ガス流路として多孔質プラグ内の多数の気孔(すなわち粒子間の隙間)を利用しているため、設計通りにガス流路を作製することが困難であった。そのため、多孔質プラグごとにガス流路が異なってしまい、品質が安定しにくいという課題があった。一方、特許文献2では、1本の螺旋状のガス流路を利用しているため、設計通りにガス流路を作製することができるものの、ガス流路を細くすると十分なガス流量が得られないことがあった。また、ガス流路を太くすると、十分なガス流量は得られるものの、プラズマ発生時にガス流路内でアーク放電が起きてウエハの品質が低下することがあった。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、ガス流路を設計通りに作製可能であり、ガス流路内でのアーク放電を抑制しつつ十分なガス流量を確保できるようにすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明の半導体製造装置用部材は、
上面にウエハ載置部を有するセラミックプレートと、
前記セラミックプレートを上下方向に貫通するプラグ設置穴に設置され、ガスの流通を許容するプラグと、
を備え、
前記プラグは、プラグ本体の内部に、複数の線状流路が交差するように組み合わされて構成されるガス流路を有し、
前記ガス流路は、前記プラグ本体の上面及び下面に複数の開口部を有する、
ものである。
【0007】
この半導体製造装置用部材では、プラグは、プラグ本体の内部に、複数の線状流路が交差するように組み合わされて構成されるガス流路を有し、ガス流路は、プラグ本体の上面及び下面に複数の開口部を有する。ここでは、ガス流路は、気孔で構成されるのではなく、複数の線状流路が交差するように組み合わされて構成される。そのため、ガス流路を設計通りに作製することができる。また、線状流路を細くすることによりガス流路内でのアーク放電を抑制することができる。更に、線状流路が細くても本数やその開口部を増やすことにより十分なガス流量を確保することができる。
【0008】
なお、本明細書では、上下、左右、前後などを用いて本発明を説明することがあるが、上下、左右、前後は、相対的な位置関係に過ぎない。そのため、半導体製造装置用部材の向きを変えた場合には上下が左右になったり左右が上下になったりすることがあるが、そうした場合も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0009】
[2]上述した半導体製造装置用部材(前記[1]に記載の半導体製造装置用部材)において、前記ガス流路における上下方向の最大長さは、0.5mm以下であってもよい。こうすれば、ガス流路内でのアーク放電を十分抑制することができる。
【0010】
[3]上述した半導体製造装置用部材(前記[1]又は[2]に記載の半導体製造装置用部材)において、前記ガス流路は、左右、前後及び上下のそれぞれに直線的に延びる複数の前記線状流路が直交するように組み合わされて構成されていてもよい。こうすれば、ガス流路を比較的容易に設計することができる。
【0011】
[4]上述した半導体製造装置用部材(前記[1]又は[2]に記載の半導体製造装置用部材)において、前記ガス流路は、斜め方向に直線的に延びる複数の前記線状流路が交差するように組み合わされて構成されていてもよいし、斜め方向及び水平方向のそれぞれに直線的に延びる複数の前記線状流路が交差するように組み合わされて構成されていてもよい。こうしても、ガス流路を比較的容易に設計することができる。
【0012】
[5]上述した半導体製造装置用部材(前記[1]~[4]のいずれかに記載の半導体製造装置用部材)において、前記プラグ本体は、緻密なセラミックで作製されていてもよく、前記ガス流路は、前記プラグ本体の側面に開口部を有さなくてもよい。こうすれば、プラグの外周面とプラグ設置穴の内周面とを接着剤で接着する際にプラグに接着剤が染み込むことがない。そのため、プラグの外周面とプラグ設置穴の内周面とを接着する接着層に空隙が生じるのを防止することができる。
【0013】
[6]本発明のプラグは、
プラグ本体と、
前記プラグ本体の内部に、複数の線状流路が交差するように組み合わされて構成されたガス流路と、
前記ガス流路のうち前記プラグの上面及び下面に開口する複数の開口部と、
を備えたものである。
【0014】
このプラグは、上述した半導体製造装置用部材のプラグとして利用することができる。
【0015】
[7]本発明のプラグ製造方法は、
上述したプラグ(前記[6]に記載のプラグ)を製造する方法であって、
(a)前記プラグの前駆体である成形体と同形状の成形用空間を有し、前記ガス流路に対応する中子が一体化された成形型を有機材料で作製する工程と、
(b)セラミックスラリーを前記成形型の前記成形用空間に注入して固化させることにより前記成形体を前記成形型内に作製する工程と、
(c)前記成形型と前記成形体とが一体化した一体物から前記成形型を消失させて前記成形体を得る工程と、
(d)前記成形体を焼成して前記プラグを得る工程と、
を含むものである。
【0016】
こうすれば、プラグ本体の内部に、複数の線状流路が交差するように組み合わされて構成されるガス流路を有するプラグを、簡易且つ精度よく製造することができる。
【0017】
工程(a)では、成形型を3Dプリンタを用いて作製し、3Dプリンタでは、モデル材として、硬化後に所定の洗浄液及びセラミックスラリーに含まれる成分に不溶な材料を使用し、サポート材として、硬化後に所定の洗浄液に可溶な材料を使用してもよい。本明細書で「不溶」とは、全く溶けない場合のほか、所望の形状を保持できる程度に溶ける場合も含むものとする。こうすれば、中子が一体化された成形型を比較的容易に作製することができるし、成形型がセラミックスラリーに含まれる成分によって形状を保持できないほど溶出してしまうおそれもない。
【0018】
工程(b)では、セラミックスラリーとしてセラミック粉末とゲル化剤とを含むスラリーを用い、セラミックスラリーを成形型に注入したあとゲル化剤を化学反応させてセラミックスラリーをゲル化させることにより成形体を成形型内に作製してもよい。こうすれば、中子が一体化された成形型の成形用空間にセラミックスラリーが隙間なく充填されるため、成形体は成形用空間の形状と精度よく一致する。
【0019】
工程(c)で成形型を消失させる方法は、特に限定されるものではなく、例えば、成形型を溶融除去することにより消失させてもよいし、成形型を化学分解(例えば熱分解などを含む)により消失させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】半導体製造装置用部材10の縦断面図。
図2】セラミックプレート20の平面図。
図3】プラグ50の斜視図。
図4】プラグ50の参考斜視図。
図5図3のA-A断面図。
図6】成形体80の斜視図。
図7】成形型70の斜視図。
図8】プラグ50の変形例を示す断面図。
図9】プラグ150の参考斜視図。
図10】プラグ250の参考斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて説明する。図1は半導体製造装置用部材10の縦断面図、図2はセラミックプレート20の平面図、図3はプラグ50の斜視図、図4はプラグ50の参考斜視図(本来、ガス流路54は隠れ線(点線)で示すべきところ、便宜上、実線で示した斜視図)、図5図3のA-A断面図である。
【0022】
半導体製造装置用部材10は、セラミックプレート20と、冷却プレート30と、接合層40と、プラグ50と、絶縁管60とを備えている。
【0023】
セラミックプレート20は、アルミナ焼結体や窒化アルミニウム焼結体などのセラミック製の円板(例えば直径300mm、厚さ5mm)である。セラミックプレート20は、電極22を内蔵している。セラミックプレート20のウエハ載置部21には、図2に示すように、外縁に沿ってシールバンド21aが形成され、全面に複数の円形小突起21bが形成されている。シールバンド21a及び円形小突起21bは同じ高さであり、その高さは例えば数μm~数10μmである。電極22は、静電電極として用いられる平面状のメッシュ電極であり、直流電圧を印加可能となっている。この電極22に直流電圧が印加されるとウエハWは静電吸着力によりウエハ載置部21(具体的にはシールバンド21aの上面及び円形小突起21bの上面)に吸着固定され、直流電圧の印加を解除するとウエハWのウエハ載置部21への吸着固定が解除される。なお、ウエハ載置部21のうちシールバンド21aや円形小突起21bの設けられていない部分を、基準面21cと称する。
【0024】
プラグ設置穴24は、セラミックプレート20を上下方向に貫通する円筒状の貫通穴である。プラグ設置穴24は、セラミックプレート20の複数箇所(例えば図2に示すように周方向に沿って等間隔に設けられた複数箇所)に設けられている。プラグ設置穴24には、後述するプラグ50が設置される。
【0025】
冷却プレート30は、セラミックプレート20の下面に接合されている。冷却プレート30は、熱伝導率の良好な円板(セラミックプレート20と同じ直径かそれよりも大きな直径の円板)である。冷却プレート30の内部には、冷媒が循環する冷媒流路32やガスをプラグ50へ供給するガス穴34が形成されている。冷媒は、液体が好ましく、電気絶縁性であることが好ましい。電気絶縁性の液体としては、例えばフッ素系不活性液体などが挙げられる。冷媒流路32は、平面視で冷却プレート30の全面にわたって入口から出口まで一筆書きの要領で形成されている。ガス穴34は、円筒状の穴であり、プラグ設置穴24に対向する位置に設けられている。冷却プレート30の材料は、例えば、金属材料や金属とセラミックとの複合材料などが挙げられる。金属材料としては、Al、Ti、Mo又はそれらの合金などが挙げられる。金属とセラミックとの複合材料としては、金属マトリックス複合材料(MMC)やセラミックマトリックス複合材料(CMC)などが挙げられる。こうした複合材料の具体例としては、Si,SiC及びTiを含む材料、SiC多孔質体にAl及び/又はSiを含浸させた材料、Al23とTiCとの複合材料などが挙げられる。Si,SiC及びTiを含む材料をSiSiCTiといい、SiC多孔質体にAlを含浸させた材料をAlSiCといい、SiC多孔質体にSiを含浸させた材料をSiSiCという。冷却プレート30の材料としては、セラミックプレート20の材料と熱膨張係数の近いものを選択するのが好ましい。冷却プレート30は、RF電極としても用いられる。具体的には、ウエハ載置部21の上方には上部電極(図示せず)が配置され、その上部電極と冷却プレート30とからなる平行平板電極間に高周波電力を印加するとプラズマが発生する。
【0026】
接合層40は、セラミックプレート20の下面と冷却プレート30の上面とを接合している。接合層40は、例えば、はんだや金属ロウ材で形成された層であってもよい。接合層40は、例えばTCB(Thermal compression bonding)により形成される。TCBとは、接合対象の2つの部材の間に金属接合材を挟み込み、金属接合材の固相線温度以下の温度に加熱した状態で2つの部材を加圧接合する公知の方法をいう。接合層40は、有機接着層(樹脂接着層)であってもよい。有機樹脂層は、例えば有機接着剤を硬化させることにより形成される。接合層40は、ガス穴34に対向する位置に接合層40を上下方向に貫通する丸穴42を有する。
【0027】
プラグ50は、緻密質セラミックで形成されたプラグ本体52と、プラグ本体52の内部に設けられたガス流路54とを有する。プラグ50は、プラグ設置穴24に設置されている。プラグ50の外周面は、プラグ設置穴24の内周面と接着層26を介して接着されている。接着層26は、有機接着層(樹脂接着層)でもよいし無機接着層でもよい。プラグ本体52は、例えばセラミックプレート20と同じセラミック材料で形成されていてもよい。ガス流路54は、ガスの流通を許容する流路であり、プラグ本体52の内部に、複数の線状流路54a,54b,54cが交差するように組み合わされて構成される。ガス流路54は、プラグ本体52の上面及び下面のそれぞれに複数の開口部54p,54qを有するが、プラグ本体52の外周面(側面)には開口部を有さない。ガス流路54における上下方向の最大長さHmax(図5の部分拡大図参照)は、0.5mm以下であることが好ましい。
【0028】
本実施形態では、ガス流路54は、左右、前後及び上下のそれぞれに直線的に延びる複数の線状流路54a,54b,54cが直交するように組み合わされて格子状に構成されている。具体的には、ある水平面において、左右方向に直線的に延びる複数の線状流路54aが前後方向に等間隔に配置されると共に、これらの線状流路54aと直交するように、前後方向に直線的に延びる複数の線状流路54bが左右方向に等間隔で配置されている。線状流路54aと線状流路54bとの交点はガスの分岐路になる。こうした水平面が上下方向に等間隔となるように複数配置されている。なお、線状流路54a,54bを配置する間隔は等間隔に限定されるものではなく、例えばランダムとしてもよい。そして、上下方向に隣接する2つの水平面の上側の線状流路54a,54bと下側の線状流路54a,54bとが上下方向に直線的に延びる複数の線状流路54cによって接続されている。こうした接続箇所もガスの分岐路になる。上下方向に延びる複数の線状流路54cは、プラグ50の全体をみたときに上下方向に一直線に並ぶのではなく、互い違いになるように設けられている。
【0029】
絶縁管60は、緻密質セラミックで形成された平面視円形の管である。絶縁管60の外周面は、接合層40の丸穴42の内周面及び冷却プレート30のガス穴34の内周面と図示しない接着層を介して接着されている。接着層は、有機接着層(樹脂接着層)でもよいし無機接着層でもよい。なお、接着層は、更に絶縁管60の上面とセラミックプレート20の下面との間に設けられていてもよい。絶縁管60の内部は、プラグ50に連通している。そのため、絶縁管60の内部にガスが導入されると、そのガスはプラグ50を通過してウエハWの裏面に供給される。
【0030】
次に、こうして構成された半導体製造装置用部材10の使用例について説明する。まず、図示しないチャンバー内に半導体製造装置用部材10を設置した状態で、ウエハWをウエハ載置部21に載置する。そして、チャンバー内を真空ポンプにより減圧して所定の真空度になるように調整し、セラミックプレート20の電極22に直流電圧をかけて静電吸着力を発生させ、ウエハWをウエハ載置部21(具体的にはシールバンド21aの上面や円形小突起21bの上面)に吸着固定する。次に、チャンバー内を所定圧力(例えば数10~数100Pa)の反応ガス雰囲気とし、この状態で、チャンバー内の天井部分に設けた図示しない上部電極と半導体製造装置用部材10の冷却プレート30との間に高周波電圧を印加させてプラズマを発生させる。ウエハWの表面は、発生したプラズマによって処理される。冷却プレート30の冷媒流路32には、冷媒が循環される。ガス穴34には、図示しないガスボンベからバックサイドガスが導入される。バックサイドガスとしては、熱伝導ガス(例えばヘリウム等)を用いる。バックサイドガスは、絶縁管60及びプラグ50を通って、ウエハWの裏面とウエハ載置部21の基準面21cとの間の空間に供給され封入される。このバックサイドガスの存在により、ウエハWとセラミックプレート20との熱伝導が効率よく行われる。
【0031】
次に、プラグ50の製造例について説明する。プラグ50は、工程(a)~(d)をこの順に実施することにより製造される。図6に示す成形体80は、焼成後にプラグ50になるものであり、成形体80の寸法は焼成時に焼き締まることを考慮してプラグ50の寸法に基づいて決定されている。成形体80は、焼成後にガス流路54となる中空部分84を成形体本体82の内部に有している。中空部分84は、成形体本体82の上面及び下面に開口している。
【0032】
・工程(a)
工程(a)では成形型70を作製する。成形型70は、図7に示すように、有底筒状の成形型本体72と、成形体80の中空部分84に対応する中子74とを備えている。成形型70は、成形体80と同形状の成形用空間71を有している。成形用空間71は、成形型本体72の内側の円筒空間から中子74を除いた空間である。中子74の下端は成形型本体72の底面に一体化されている。中子74の上端は自由端になっている。成形型70は、周知の3Dプリンタを用いて作製される。3Dプリンタは、ヘッド部から硬化前流動物をステージに向かって吐出して硬化前層状物を形成し、その硬化前層状物を硬化させるという一連の操作を繰り返すことにより、構造物を造形する。3Dプリンタは、硬化前流動物として、成形型70のうち最終的に必要な部位を構成する材料であるモデル材と、成形型70のうちモデル材を支える基礎部分であって最終的に除去される部位を構成する材料であるサポート材とを備えている。ここでは、モデル材として、硬化後に所定の洗浄液(水、有機溶剤、酸、アルカリ溶液など)及び後述のセラミックスラリーに含まれる成分に不溶な材料(例えばパラフィンロウなどのワックス)を使用し、サポート材として、硬化後に所定の洗浄液に可溶な材料(例えばヒドロキシ化ワックス)を使用する。所定の洗浄液の一例としては、イソプロピルアルコールが挙げられる。3Dプリンタは、成形型70の下から上へ所定間隔ごとに水平方向に層状にスライスしたスライスデータを用いて構造物を造形する。スライスデータは、CADデータを加工することにより作製される。スライスデータの中には、モデル材とサポート材とが混在したスライスデータもあれば、モデル材のみのスライスデータもある。3Dプリンタで造形された構造物は、イソプロピルアルコールに浸漬して硬化後のサポート材を溶かして除去することにより、硬化後のモデル材のみからなる物体すなわち成形型70が得られる。
【0033】
・工程(b)
工程(b)では成形体80を成形型70内に作製する。ここでは成形体80をモールドキャスト成形で作製する。モールドキャスト成形では、成形型70の成形用空間71に、セラミック粉体、溶媒、分散剤及びゲル化剤を含むセラミックスラリーを注入し、ゲル化剤を化学反応させてセラミックスラリーをゲル化させることにより、成形型70内に成形体80を作製する。モールドキャスト成形は、特許文献2に記載された内容に準じて行うことができる。
【0034】
・工程(c)
工程(c)では成形型70と成形体80とが一体化した一体物から成形型70を消失させて成形体80を得る。成形型70の材料として成形体80の乾燥温度以下の融点(融点が温度範囲をもって表される場合にはその上限温度)を持つ材料を用いた場合には、成形体80を乾燥する際にその乾燥温度で成形型70を溶融除去することができる。例えば成形型70の材料として70℃で溶融するワックスを用いた場合には、成形体80を80℃で乾燥する際に成形型70を溶融除去して成形体80を得ることができる。
【0035】
・工程(d)
工程(d)では成形体80を脱脂し、その後焼成してプラグ50を作製する。脱脂温度や焼成温度(最高到達温度)は成形体80に含まれるセラミック粉体が焼結する温度を考慮して適宜設定すればよい。また、脱脂雰囲気や焼成雰囲気は、大気雰囲気、不活性ガス雰囲気、真空雰囲気、水素雰囲気などから適宜選択すればよい。
【0036】
以上詳述した半導体製造装置用部材10では、プラグ50は、プラグ本体52の内部に、複数の線状流路54a,54b,54cが交差するように組み合わされて構成されるガス流路54を有し、ガス流路54は、プラグ50の上面及び下面に複数の開口部54p,54qを有する。ガス流路54は、気孔で構成されるのではなく、複数の線状流路54a,54b,54cが交差するように組み合わされて構成される。そのため、ガス流路54を設計通りに作製することができ、プラグ50の品質が安定する。また、線状流路54a,54b,54cを細くすることによりガス流路54内でのアーク放電を抑制することができる。更に、線状流路54a,54b,54cが細くても本数を増やしたり開口部54p,54qの数を増やしたりすることで十分なガス流量を確保することができる。加えて、ガス流路54の流路長も十分長くすることができるため、プラグ50の耐電圧が高くなる。
【0037】
また、ガス流路54における上下方向の最大長さHmaxは0.5mm以下であることが好ましい。こうすれば、ガス流路54内でのアーク放電を十分抑制することができる。アーク放電は、熱伝導ガスがヘリウムの場合、プラズマ発生時、ガス穴34からプラグ50に供給されたヘリウムが電離するのに伴って生じた電子が加速して別のヘリウムに衝突することにより起きると考えられる。ガス流路54における上下方向の最大長さHmaxが0.5mm以下であれば、電子が十分加速することなく(換言すればエネルギー不足の状態で)別のヘリウムに衝突するため、アーク放電を防止することができる。更にアーク放電の防止効果を高めたい場合には、最大長さHmaxを0.3mm以下にすることが好ましい。
【0038】
更に、ガス流路54は、上下、左右及び前後のそれぞれに直線的に延びる複数の線状流路54a,54b,54cが直交するように組み合わされて構成されている。そのため、ガス流路54を比較的容易に設計することができる。
【0039】
更にまた、プラグ本体52は、緻密なセラミックで作製され、ガス流路54は、プラグ本体52の外周面(側面)に開口部を有していない。そのため、プラグ本体52の外周面とプラグ設置穴24の内周面とを接着剤で接着する際にプラグ本体52に接着剤が染み込むことがない。したがって、プラグ本体52の外周面とプラグ設置穴24の内周面とを接着する接着層26に空隙が生じるのを防止することができる。こうした空隙はアーキングの原因になるため好ましくない。また、プラグ本体52は多孔質体でないため脱粒することがない。
【0040】
そしてまた、プラグ50の製造方法は、上述した工程(a)~(d)を含む。そのため、プラグ本体52の内部に、複数の線状流路54a,54b,54cが交差するように組み合わされて構成されるガス流路54を有するプラグ50を、簡易且つ精度よく製造することができる。
【0041】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に
属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0042】
上述した実施形態では、ガス流路54を有するプラグ50を採用したが、特にこれに限定されない。例えば、図8A図8Cに示すように変形したプラグ50を採用してもよい。図8A図8Cでは、上述した実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付した。図8Aのプラグ50は、ガス流路54を構成する線状流路54a,54bを水平方向に延長してプラグ本体52の外周面(側面)に開口するようにしたものである。なお、線状流路54a,54bの一方のみを水平方向に延長してプラグ本体52の外周面に開口するようにしてもよい。図8Bに示すプラグ50は、プラグ本体52の全体に線状流路54a,54b,54cを格子状に設けることによりガス流路54を構成したものである。図8Cに示すプラグ50は、プラグ本体52にガス流路54を複数系統設けたものである。
【0043】
あるいは、上述した実施形態のプラグ50に代えて、図9に示すプラグ150を採用してもよい。図9はプラグ150の参考斜視図(本来、ガス流路154は隠れ線(点線)で示すべきところ、便宜上、実線で示した斜視図)である。プラグ150は、緻密質のプラグ本体152の内部にガス流路154を有する。ガス流路154は、斜め方向に直線的に延びる複数の線状流路154a,154b,154c,154dが交差するように組み合わされて格子状に構成され、プラグ本体152の上面及び下面のそれぞれに複数の開口部を有する。線状流路154aは、左に向かって水平面に対して所定角度(例えば45°とか60°)斜めになるように形成され、線状流路154bは、右に向かって水平面に対して所定角度斜めになるように形成され、線状流路154cは、前に向かって水平面に対して所定角度斜めになるように形成され、線状流路154dは、後に向かって水平面に対して所定角度斜めになるように形成されている。こうしたガス流路154も比較的容易に設計することができる。また、上述した工程(a)~(d)によって比較的容易に製造することができる。ガス流路154における上下方向の最大長さHmaxは、図9の部分拡大図に示すように斜め方向に延びる線状流路154a同士が交差している部分の高さになるが、このHmaxも0.5mm以下であることが好ましく、0.3mm以下であることがより好ましい。こうすれば、ガス流路154内でのアーク放電を十分抑制することができる。
【0044】
あるいは、上述した実施形態のプラグ50に代えて、図10に示すプラグ250を採用してもよい。図10はプラグ250の参考斜視図(本来、ガス流路254は隠れ線(点線)で示すべきところ、便宜上、実線で示した斜視図)である。プラグ250は、緻密質のプラグ本体252の内部にガス流路254を有する。ガス流路254は、斜め方向に直線的に延びる複数の線状流路254a,254bと、水平方向に直線的に延びる複数の線状流路254cが組み合わされて格子状に構成されたものであり、プラグ本体252の上面及び下面のそれぞれに複数の開口部を有する。線状流路254aは、右に向かって水平面に対して所定角度斜めになるように形成され、線状流路254bは、左に向かって水平面に対して所定角度斜めになるように形成されている。線状流路254aと線状流路254bとは、前後方向に交互に間隔を空けて互いに平行に配置されている。線状流路254cは、前後方向に水平になるように形成され、交互に配置された線状流路254a,254bと交差している。こうしたガス流路254も比較的容易に設計することができる。また、上述した工程(a)~(d)によって比較的容易に製造することができる。ガス流路254における上下方向の最大長さHmaxも、0.5mm以下であることが好ましく、0.3mm以下であることがより好ましい。こうすれば、ガス流路154内でのアーク放電を十分抑制することができる。
【0045】
上述した実施形態では、所定方向に直線的に延びる線状流路54a,54b,54c(つまり直線流路)を例示したが、特にこれに限定されない。例えば、線状流路54a,54b,54cは直線流路ではなく湾曲流路であってもよい。
【0046】
上述した実施形態において、線状流路54a,54b,54cの直径は0.5mm以下が好ましい。特に、線状流路54a,54b,54cの直径は、0.5mm以下で、且つ、ガス流路54内の上下方向の最大長さHmaxが0.5mm以下になるように決定するのが好ましい。これらの直径や最大長さHmaxは0.3mm以下であることがより好ましい。
【0047】
上述した実施形態では、絶縁管60を設けたが、絶縁管60を省略してもよい。また、冷却プレート30にガス穴34を設ける代わりに、ガスチャネル構造を設けてもよい。ガスチャネル構造として、冷却プレート30の内部(冷却流路43の上方)に設けられ平面視で冷却プレート30と同心円のリング部と、冷却プレート30の裏面からリング部へガスを導入する導入部と、リング部から各プラグ50へガスを分配する分配部とを備える構造を採用してもよい。導入部の数は、分配部の数よりも少なく、例えば1本としてもよい。
【0048】
上述した実施形態において、セラミックプレート20に内蔵される電極22として、静電電極を例示したが、特にこれに限定されない。例えば、電極22に代えて又は加えて、セラミックプレート20にヒータ電極(抵抗発熱体)を内蔵してもよいし、RF電極を内蔵してもよい。
【符号の説明】
【0049】
10 半導体製造装置用部材、20 セラミックプレート、21 ウエハ載置部、21a シールバンド、21b 円形小突起、21c 基準面、22 電極、24 プラグ設置穴、26 接着層、30 冷却プレート、32 冷媒流路、34 ガス穴、40 接合層、42 丸穴、50 プラグ、52 プラグ本体、54 ガス流路、54a,54b,54c 線状流路、54p,54q 開口部、60 絶縁管、70 成形型、71 成形用空間、72 成形型本体、74 中子、80 成形体、82 成形体本体、84 中空部分、150 プラグ、152 プラグ本体、154 ガス流路、154a,154b,154c,154d 線状流路。
図1
図2
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図9
図10