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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088886
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】入力装置及び時計
(51)【国際特許分類】
   G04G 21/00 20100101AFI20240626BHJP
   H01H 13/04 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
G04G21/00 304B
H01H13/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203902
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002022
【氏名又は名称】弁理士法人コスモ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】船原 由紀夫
【テーマコード(参考)】
2F002
5G206
【Fターム(参考)】
2F002AA02
2F002AB01
2F002AC01
2F002AC03
2F002BA04
5G206AS10N
5G206AS10Z
5G206AS27H
5G206AS27J
5G206AS27Z
5G206CS04H
5G206DS02K
5G206GS06
5G206HU12
5G206HW14
5G206HW33
5G206HW44
5G206HW74
5G206KS14
5G206NS02
5G206NS05
(57)【要約】
【課題】ボタンの鍔部を支持する支持領域の薄肉成形性に優れた入力装置、及びそのような入力装置を備える時計を提供する。
【解決手段】計算機付時計10は、時計モジュール20が収容されるケース30と、押圧操作可能とされるキーボタン部52、及びキーボタン部52の外周面から鍔状に延びる鍔部54を有し、時計モジュール20にキーボタン部52の押圧操作を入力するキーボタン50と、を備え、ケース30は、時計モジュール20の外観を構成する外観部材32、及びケース30に対して鍔部54を支持する支持部材36を有し、外観部材32と支持部材36とは、互いに異なる材質で形成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モジュールが収容されるケースと、
押圧操作可能とされる押圧ボタン、及び該押圧ボタンの外周面から鍔状に延びる鍔状領域を有し、前記モジュールに前記押圧ボタンの押圧操作を入力する押圧部材と、を備え、
前記ケースは、前記モジュールの外観を構成する外観領域、及び前記ケースに対して前記鍔状領域を支持する支持領域を有し、
前記外観領域と前記支持領域は、互いに異なる材質で形成されている、
入力装置。
【請求項2】
前記外観領域は、表面にめっき処理が施されており、
前記支持領域は、表面にめっき処理が施されていない、
請求項1に記載の入力装置。
【請求項3】
前記外観領域を構成する外観部材と前記支持領域を構成する支持部材とは分離可能な別部材であり、
前記支持部材は前記外観部材に配置されている、
請求項1に記載の入力装置。
【請求項4】
前記支持領域は、前記押圧ボタンが押圧方向に摺動される貫通孔を有し、前記外観領域よりも前記押圧ボタンに対する摺動性が高い材質で設けられている、請求項1に記載の入力装置。
【請求項5】
前記支持部材の材質は、ポリアセタールである、請求項3に記載の入力装置。
【請求項6】
前記外観領域と前記支持領域とは、二色成形で一体成形される、請求項1に記載の入力装置。
【請求項7】
前記支持領域の材質は、ポリカーボネイトである、請求項6に記載の入力装置。
【請求項8】
前記押圧部材は、複数の前記押圧ボタンを有し、
前記押圧部材の前記鍔状領域は、隣り合う複数の前記押圧ボタンの間を接続する略シート状に形成されている、請求項1に記載の入力装置。
【請求項9】
前記モジュールが時計モジュールとされるとともに数値及び時刻を表示する表示領域を有する請求項1~8のいずれか1項に記載の入力装置を備える時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力装置及び時計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モジュールが収容されるケースを備え、弾性変形することにより押圧操作可能とされてモジュールに押圧操作を入力するボタン等が設けられた入力装置が知られている。例えば特許文献1には、モジュールが収容されるケースと、押圧操作可能なキーボタンと、を備え、キーボタンの外周面に、弾性変形するキーボタンが所定の深さ以上に押し込まれないよう、キーボタンの外周面に鍔状に延びる鍔部が設けられた計算機付携帯時計(入力装置)が開示されている。この計算機付携帯時計では、キーボタンが所定の深さまで押圧操作された状態でキーボタンの鍔部と当接するキーボタン保持部が設けられている。
【0003】
図6に、このようなキーボタンの鍔部を支持するための構成が設けられた従来の計算機付時計の一例を示す。図6に示す計算機付時計(入力装置)210は、時計モジュール220が収容されるケース230と、ゴム製のキーボタン250と、を備えている。キーボタン250は、上下に延びる本体部252、及び本体部252の外周面から側方に鍔状に延びる鍔部254を有しており、その上部がケース230から露出している。キーボタン250と時計モジュール220の間には、導電性を有する接点シート260が設けられている。この計算機付時計210では、ケース230の一部にキーボタン250の鍔部254を支持するための支持領域236が鍔部と接点シートの間に介在する形で設けられている。このため、計算機付時計210では、ケース230に対してキーボタン250が安定して支持されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭56-6192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような入力装置では、キーボタンが弾性変形して座屈することによりその操作性が損なわれないよう、キーボタンの厚み寸法をなるべく小さくする必要があり、そのために、キーボタンの鍔部を支持する支持領域をなるべく薄く設けることが要求される。しかしながら、図6に示すような計算機付時計210では、支持領域236が計算機付時計210の外観を構成するケース230と一体に設けられているため、成形条件の観点から支持領域236の寸法精度とケース230の外観部分の寸法精度とを両立させることが難しく、支持領域236を薄肉とすることが困難であった。
【0006】
本発明は、ボタンの鍔部を支持する支持領域の薄肉成形性に優れた入力装置、及びそのような入力装置を備える時計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の入力装置は、モジュールが収容されるケースと、押圧操作可能とされる押圧ボタン、及び該押圧ボタンの外周面から鍔状に延びる鍔状領域を有し、前記モジュールに前記押圧ボタンの押圧操作を入力する押圧部材と、を備え、前記ケースは、前記モジュールの外観を構成する外観領域、及び前記ケースに対して前記鍔状領域を支持する支持領域を有し、前記外観領域と前記支持領域とは、互いに異なる材質で形成されている。
【0008】
本発明の時計は、前記モジュールが時計モジュールとされるとともに数値及び時刻を表示する表示領域を有する上記の入力装置を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ボタンの鍔部を支持する支持領域の薄肉成形性に優れた入力装置、及びそのような入力装置を備える時計を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る計算機付時計を上方側から見た全体斜視図である。
図2】第1実施形態に係る計算機付時計の分解斜視図である。
図3】第1実施形態に係る計算機付時計の断面図であって、図1におけるIII-III断面の断面図である。
図4】第1実施形態に係る計算機付時計の一部を拡大した断面図であって、図1におけるIV-IV断面の断面図である。
図5】第2実施形態に係る計算機付時計の一部を拡大した断面図である。
図6】従来の計算機付時計の一部を拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
図1~4を参照して本発明の第1実施形態について説明する。図1及び図2に示すように、第1実施形態に係る計算機付時計(入力装置、時計)10は、計算機機能が設けられた時計であり、時計モジュール(モジュール)20と、時計モジュール20が収容されるケース30と、ボタンパネル40と、キーボタン(押圧部材)50と、接点シート60と、ガスケット70と、裏蓋80と、を備えている。ケース30の裏蓋80が設けられた側とは反対側には、キーボタン50の一部とガラスパネルGPが露出している。また、ケース30の一方の側面とその反対側の側面にはバンド開口部34bが設けられている。
【0012】
以下では、ケース30におけるキーボタン50及びガラスパネルGPが露出する側(図1における手前側、図2における上側)を計算機付時計10の上側、その反対側(裏蓋80が設けられた側)を下側とし、ケース30をガラスパネルGP側から見たときの下側の側面に設けられたバンド開口部34b側(図1における下側、図2における左下側)を計算機付時計10の前側、その反対側(第1開口部が設けられた側)を後側とし、図1に示すように、ケース30を上側から見たときの右側(図1における右側、図2における右下側)を計算機付時計10の右側、その反対側を左側として説明する。
【0013】
図2に示すように、時計モジュール20は、四隅が角R状とされた略直方体状をなし、時計及び計算機を構成する機構が内蔵された筐体22を有している。筐体22の前側及び後側の側面には、筐体22をケース30に係合して取り付けるための爪状の係合部24がそれぞれ設けられている(後側の係合部は不図示)。筐体22の右側の側面には、計算機付時計10の時計機能を操作するための2つのボタン25が前後に並んで設けられている。筐体22は、上面22aの後側略半分の領域に、表示領域26を有している。表示領域26には、時計機能使用時における時刻表示や計算機機能使用時における数値表示がデジタル表示される液晶パネルが設けられている。筐体22の上面22aの前側略半分の領域には、図示しない配線基板が設けられている。
【0014】
ケース30は、計算機付時計10の外観を構成する外観部材32、及び外観部材32から分離されて別部材とされた支持部材36を有している。外観部材32は、下方に開放された略箱状の箱状部34により構成され、ABS樹脂により成形されて設けられている。箱状部34の上面側の後側略半分の領域には、箱状部34との間で気密が確保された状態でガラスパネルGPが溶着されている。箱状部34の上面側の前側略半分の領域には、略横長矩形板状に上下方向に開口し、支持部材36やキーボタン50が収容されて保持されるボタン開口部34aが設けられている。ボタン開口部34aの内周部には、支持部材36が載置される段差とされた段差部34a1が設けられている。また、ボタン開口部34aと連通する箱状部34の内側の空間は、筐体22が収容される収容空間Sとなっている(図3参照)。
【0015】
箱状部34の前方側及び後方側の側面には、前後方向に開口するバンド開口部34bがそれぞれ設けられている。各バンド開口部34b近傍の左右両側の側面には、一対のバンド留め孔34b1が設けられている。一方側の一対のバンド留め孔34b1、他方側の一対のバンド留め孔34b1には、計算機付時計10を腕時計として使用する際に、腕に装着されるバンドの一方側、他方側がそれぞれ留められる。また、箱状部34の右側の側面には、各ボタン25が挿通されて外側に露出されるボタン挿通孔34cが設けられている。なお、外観部材32の箱状部34の表面には、金めっき(めっき)処理が施されている。
【0016】
支持部材36は、略横長矩形板状の板状部38により構成され、外観部材32とは異なる樹脂材料、具体的にはゴム材料に対する摺動性に優れたポリアセタール樹脂により成形されて設けられている。板状部38には、板状部38の板面を貫通する形で、キーボタン50の一部が上下方向に挿通されて摺動する複数のボタン挿通孔(貫通孔)38aが行列状に等間隔で設けられている。詳しくは、板状部38には、前後方向に4列、左右方向に4列の計16個のボタン挿通孔38aが設けられている。
【0017】
板状部38の外周部には、板状部38から上方にわずかに段差をなして外側に張り出す張出部39が設けられている。支持部材36は、張出部39が箱状部34の段差部34a1に載置されることにより箱状部34に支持され、ケース30の一部とされる(図3参照)。なお、支持部材36の表面には、外観部材32の表面とは異なり、金めっき処理が施されていない。また、ボタン挿通孔38aの開口の大きさは、後述するキーボタン50の鍔部54より下側の部分の外周の大きさよりもわずかに大きくされており、各キーボタン部52とボタン挿通孔38aとの間にはわずかな隙間が設けられている。
【0018】
裏蓋80は、薄い浅皿状の金属製部材であり、外周に設けられた縁部82と縁部82の内側で下方に凹んでなる凹部84とを有している。縁部82の四隅にはそれぞれネジ孔82aが設けられている。凹部84は、筐体22の下側部分が嵌め込まれるような形状及び大きさとなっている。裏蓋80は、凹部84に筐体22の下側部分が嵌め込まれた状態で、各ネジ孔82aに挿通されたネジ部材(不図示)によりケース30の箱状部34の下側にネジ止めされて取り付けられる。ガスケット70は、ゴム製のリング状の部材であり、筐体22を囲むように箱状部34と裏蓋80の縁部82との間に配置されることにより、収容空間S内を密閉するためのパッキンとして機能する(図3参照)。
【0019】
キーボタン50は、弾性変形可能なゴム製とされ、複数のキーボタン部(押圧ボタン)52、及び鍔部(鍔状領域)54を有している。複数のキーボタン部52は、それぞれ横長の略円柱状をなしており、内部が中空とされて押圧操作が可能となっている。複数のキーボタン部52は、支持部材36の複数のボタン挿通孔38aと対応する配置で行列状に16個設けられている。鍔部54は、各キーボタン部52の外周面のうち下端よりの位置から外側に向かって鍔状に水平に延びている。
【0020】
各キーボタン部52から延びる鍔部54は、隣り合うキーボタン部52の間を接続しており、全体としてシート状に設けられている。各キーボタン部52の鍔部54より下側の部分(以下、「キーボタン下部52b」という。)は、略円柱状とされ、前後方向寸法が各キーボタン部52の鍔部54より上側の部分(以下、「キーボタン上部52a」という。)と略等しくなっており(図3参照)、左右方向寸法がキーボタン上部52aと比べて小さくなっている(図4参照)。
【0021】
鍔部54は、支持部材36よりも一回り大きく設けられている。図3及び図4に示すように、鍔部54は、その下面の外周寄りの部分が支持部材36の張出部39に載置される。これにより、キーボタン50は、支持部材36により支持される構成となっている。換言すれば、支持部材36は、キーボタン50の押圧操作に伴ういわゆるボタン受け部として機能する。鍔部54が張出部39に載置された状態では、各キーボタン部52の下端部が支持部材36の各ボタン挿通孔38aに挿通される。また、鍔部54が張出部39に載置された状態では、板状部38の上面と鍔部54の下面との間にはわずかな隙間が設けられており、鍔部54が下方にわずかに撓むことが許容されている。
【0022】
ボタンパネル40は、ガラスパネルであり、厚板状のパネル部42により構成される。キーボタン上部52aが上下方向に挿通されて外部に露出する複数のパネル孔42aが設けられている。複数のパネル孔42aは、その開口が各キーボタン部52の平面視形状と対応するようにそれぞれ横長の楕円形状とされている。各パネル孔42aは、各キーボタン部52と対応する配置で行列状に16個設けられている。ボタンパネル40は、その外周部がボタン開口部34aの開口端に密着されており、ボタン開口部34a内の防塵が図られている。
【0023】
ボタン開口部34aに挿通されたキーボタン上部52aの上端側はボタンパネル40の上方に露出している。ユーザは、ボタンパネル40から露出するキーボタン上部52aを押圧操作して計算機付時計10における計算機能を実行することができる。ボタン開口部34aの開口の大きさはボタン上部52aの外周の大きさよりもわずかに大きくされており、各キーボタン部52とボタン開口部34aとの間にはわずかな隙間が設けられている。このため、ユーザは、キーボタン部52の押圧操作を円滑に行うことができる。
【0024】
接点シート60は、導電性を有するシート状の部材であり、そのシート面が支持部材36の板状部38の板面と略等しい形状及び大きさとされている。接点シート60はキーボタン50のキーボタン部52と時計モジュール20の間に設けられている。接点シート60は、その上面がボタン下部52bと接触又は近接しており、キーボタン部52が押圧されることにより時計モジュール20上に設けられた配線基板との間で通電されるようになっている。
【0025】
以上のような構成とされた本実施形態の計算機付時計10では、ケース30を構成する外観部材32と支持部材36が分離された別部材とされているため、計算機付時計10の製造時に両者を別個に成形して設けることができる。このため、外観部材32の成形条件に依存することがなく支持部材36の成形条件を設定することができ、支持部材36の成形時における寸法精度を高めることができる。その結果、支持部材36(板状部38)の薄肉化を図ることができる。このため、キーボタン部52の厚み寸法(上下方向寸法)を板状部38の厚みに応じて小さくすることができる、本実施形態では、板状部38の厚み寸法は、キーボタン部52の厚み寸法と比べて非常に薄く設けられており、例えば0.35mmとされる。
【0026】
次に、本実施形態に係る計算機付時計10の作用について説明する。ユーザがボタンパネル40から露出するキーボタン部52を下方に押圧操作すると、キーボタン部52が弾性変形し、ボタン下部52bが接点シート60を押圧して接点シート60が時計モジュール20の配線基板と導通し、押圧されたキーボタン50に対応する機能が実行される。このとき、押圧されたキーボタン部52の周囲の鍔部54は、キーボタン部52の押圧操作に伴って下方向(押圧方向)へ押圧され、支持部材36の板状部38が下方向への荷重を受ける。即ち、支持部材36は、ケース30に対して鍔部54を支持し、キーボタン部52からの荷重を受ける受け部として機能する。
【0027】
また、ボタンパネル40の厚み寸法は支持部材36の板状部38の厚み寸法に比べて厚くされているため、キーボタン部52が押圧操作された際、キーボタン上部52aがボタン開口部34aの内面と干渉することによりキーボタン上部52aが平面方向にぶれることが抑制される。さらに、支持部材36がゴム部材に対する摺動性に優れたポリアセタール樹脂で成形されて設けられていることから、キーボタン部52が押圧操作された際にキーボタン下部52bがボタン挿通孔に引っ掛かることがなく、キーボタン部52の押圧操作を円滑に行うことができるようになっている。
【0028】
以上説明したように本実施形態に係る計算機付時計10は、時計モジュール20が収容されるケース30と、押圧操作可能とされるキーボタン部52、及びキーボタン部52の外周面から鍔状に延びる鍔部54を有し、時計モジュール20にボタン部52の押圧操作を入力するキーボタン50と、を備え、ケース30は、時計モジュール20の外観を構成する外観部材32、及びケース30に対して鍔部54を支持する支持部材36を有し、外観部材32と支持部材36は、異なる材質で設けられている。
【0029】
この構成によれば、外観部材32と支持部材36とを別個の条件で成形して設けることができるため、計算機付時計10の外観の寸法精度を保ちつつ、支持部材36の寸法精度を外観部材32の寸法精度に依存することなく高めることができる。このように、外観部材32の寸法精度と支持部材36の寸法精度を両立できることにより、支持部材36を薄く設けることができ、これに伴いキーボタン部52の厚み寸法を小さくすることができる。その結果、キーボタン50が下方に押圧されて座屈することによりその操作性が損なわれることを抑制することができる。以上のように本実施形態では、キーボタン50の鍔部54を支持する支持部材36の薄肉成形性に優れた計算機付時計10を実現することができる。
【0030】
また、計算機付時計10では、外観部材32は、表面に金めっき処理が施されており、支持部材36は、表面に金めっき処理が施されていない。仮に、従来のように支持部材36が外観部材32と一体としてケース30の一部として設けられている場合、外観部材32の表面にめっき処理を施すと、支持部材36の表面にもめっき処理が施される虞がある。本実施形態のように外観部材32と支持部材36とが別部材とされることにより、計算機付時計10の製造過程において、外観部材32のみに金めっき処理を施し、支持部材36に金めっき処理を施さないようにすることができる。このため、支持部材36の表面にめっき処理が施されることによる支持部材36の寸法精度の低下を防止することができ、さらに、従来の構成と比べてめっき処理が施される表面積を減少させることができるため、めっき処理に伴う製造コストを削減することができる。
【0031】
また、計算機付時計10では、ケース30は、外観領域を構成する外観部材32、及び支持領域を構成し、外観部材32から分離された支持部材36を有する。このように、支持部材が外観部材とは別部材とされることにより、外観部材32と支持部材36とを別個に製造することができるため、支持部材36の寸法精度を外観部材32の寸法精度とは別個に設定することができ、支持部材36の薄肉化を効果的に図ることができる。
【0032】
また、計算機付時計10では、支持部材36は、キーボタン部52が下方向に摺動されるボタン挿通孔38aを有し、外観部材よりもキーボタン部52に対する摺動性が高い材質で設けられている。これにより、キーボタン部52が下方向に押圧された際に、キーボタン部52がボタン挿通孔38aに引っ掛かり難くなるため、キーボタン部52の押圧操作の操作性を向上させることができる。
【0033】
また、計算機付時計10では、支持部材36の材質は、ポリアセタールである。これにより、支持部材36を摺動性に優れたものとするための具体的な材質を提供することができる。
【0034】
また、計算機付時計10では、キーボタン50は、複数のキーボタン部52を有し、鍔部54は、隣り合う複数のキーボタン部52の間を接続する略シート状に設けられている。この構成によれば、複数のキーボタン部52を有するキーボタン50を備える計算機付時計10において、支持部材36の薄肉化を図ることができ、キーボタン50の操作性が損なわれることを抑制することができる。
【0035】
また、本実施形態の計算機付時計10は、モジュールとして時計モジュール20を備え、時計モジュール20が数値及び時刻を表示する表示領域26を有する。これにより、数値及び時刻を表示する表示領域26を備える計算機付時計10においてキーボタン50の操作性に優れた構成を実現することができる。
【0036】
(第2実施形態)
次に、図5を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。図5に示すように、第2実施形態に係る計算機付時計110は、ケース130が、計算機付時計110の外観を構成する外観領域132、及び外観領域132と一体に設けられた支持領域136を有する点で、第1実施形態の計算機付時計10と異なっている。その他の構成については、第1実施形態の計算機付時計10と同様であるため、その説明を省略又は簡素化する。
【0037】
第2実施形態に係る計算機付時計110では、支持領域136は、第1実施形態の計算機付時計10における支持部材36が設けられる領域と同じ領域に、外観領域132と一体に設けられている。このため、外観領域132と支持領域136との間に隙間が設けられることはなく、支持領域136は、境界部Bを介して外観領域132から連なる形で設けられている。支持領域136は、第1実施形態の支持部材36と同様に、略横長矩形板状の板状部138により構成されており、ケース130に対して鍔部54を支持する領域として機能する。
【0038】
第2実施形態では、ケース130の外観領域132と支持領域136が、異なる樹脂(異なる材質)や色の違う樹脂を組み合わせて1回の成形サイクルで一体化させる成形法である二色成形により一体成形されて設けられている。このように、二色成形が行われることにより、外観領域132と支持領域136は異なる樹脂により別条件で成形されて設けられている。具体的には、外観領域132は、第1実施形態の外観部材と同様にABS樹脂により成形されて設けられており、支持領域136は、めっき処理が施され難いポリカーボネイト樹脂により成形されて設けられている。このため、外観領域132には金めっき処理が施されており、支持領域136には金めっき処理が施されることが回避されている。
【0039】
以上説明したように本実施形態の計算機付時計110では、外観領域132と支持領域136とが二色成形で一体成形されることにより異なる材質とされているため、製造過程において支持領域136の成形条件を外観領域132の成形条件とは別条件に設定することができる。このため、第1実施形態の計算機付時計10と同様に、支持領域136の成形時における寸法精度を高めることができ、支持領域136の薄肉化を図ることができる。その結果、キーボタン50が下方に押圧されて座屈することによりその操作性が損なわれることを抑制することができる。
【0040】
また、第2実施形態に係る計算機付時計110では、支持領域136の材質は、ポリカーボネイトである。これにより、支持領域136にめっき処理が施され難くなるため、外観領域132にめっき処理を施す際に支持領域136にめっき処理が施されることを回避することができる。このため、支持領域136の表面にめっき処理が施されることによる支持領域136の寸法精度の低下を防止しながら、従来の構成と比べてめっき処理が施される表面積を減少させることができ、めっき処理に伴う製造コストを削減することができる。
【0041】
以上説明した各実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。例えば上記の各実施形態では、支持部材及び支持領域がそれぞれポリアセタール樹脂、ポリカーボネイト樹脂により成形されて設けられた構成を例示したが、支持部材及び支持領域を構成する樹脂材料は限定されない。また、上記の各実施形態では、外観部材及び外観領域に金めっき処理が施された構成を例示したが、外観部材及び外観領域に施されるめっき処理の材料は限定されない。
【符号の説明】
【0042】
10 計算器付時計 20 時計モジュール
22 筐体 22a 上面
24 係合部 25 ボタン
26 表示領域 30 ケース
32 外観部材 34 箱状部
34a ボタン開口部 34a1 段差部
34b バンド開口部 34b1 バンド留め孔
34c ボタン挿通孔 36 支持部材
38 板状部 38a ボタン挿通孔
39 張出部 40 ボタンパネル
42 パネル部 42a パネル孔
50 キーボタン 52 キーボタン部
52a キーボタン上部 52b キーボタン下部
54 鍔部 60 接点シート
70 ガスケット 80 裏蓋
82 縁部 82a ネジ孔
84 凹部 110 計算器付時計
130 ケース 132 外観領域
136 支持領域 138 板状部
210 計算器付時計 220 時計モジュール
230 ケース 236 支持領域
250 キーボタン 252 本体部
254 鍔部 260 接点シート
B 境界部 GP ガラスパネル
S 収容空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6