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特開2024-88888型締装置、竪型射出成形機、および型締方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088888
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】型締装置、竪型射出成形機、および型締方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 17/26 20060101AFI20240626BHJP
   B29C 45/06 20060101ALI20240626BHJP
   B29C 45/80 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
B22D17/26 J
B29C45/06
B29C45/80
B22D17/26 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203904
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100097696
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(72)【発明者】
【氏名】中山 清貴
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AM08
4F206AP06
4F206AP11
4F206AP20
4F206AR07
4F206AR12
4F206JA07
4F206JC02
4F206JC08
4F206JL02
4F206JM02
4F206JN31
4F206JN36
(57)【要約】
【課題】安定的に適切な型締力が得られる型締装置を提供する。
【解決手段】竪型射出成形機(1)において、固定盤(9)には複数個の下側金型(18)が設けられたロータリーテーブル(15)が設けられ、上可動盤(10)に設けられている上側金型(17)に対し、型締対象の下側金型(18)を切り換えられるようになっている。上可動盤(10)に距離センサ(37)を設け、型締対象の下側金型(18)の厚さつまり下側型厚を検出するようにする。制御装置(4)は、検出した下側型厚に基づいて型締クロスヘッド位置を決定し、トグル機構(14)のクロスヘッド(20)を決定した型締クロスヘッド位置まで駆動して型締力を発生させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定盤と、
前記固定盤の上方に設けられている上可動盤と、
前記固定盤の下方に設けられている下可動盤と、
前記上可動盤と前記下可動盤とを連結している複数本のタイバーと、
前記固定盤と前記下可動盤の間に設けられているトグル機構と、
前記固定盤の上面に回転自在に設けられているロータリーテーブルと、
制御装置と、を備え、
前記上可動盤には1個の上側金型が、そして前記ロータリーテーブルには複数個の下側金型がそれぞれ設けられ、前記ロータリーテーブルの回転位置に応じて複数個の前記下側金型のいずれかが前記上側金型と整合して型締対象になり、前記トグル機構のクロスヘッドを型締クロスヘッド位置に駆動すると前記上側金型と型締対象の前記下側金型とが型締めされて型締力が発生するようになっており、
前記上可動盤または前記上側金型には距離センサが設けられ、前記上可動盤と前記ロータリーテーブルの距離である型盤距離が規定の距離になっているとき、型締対象となる前記下側金型の金型厚さである下側型厚を検出するようになっており、
前記制御装置は、検出された前記下側型厚に応じて前記型締クロスヘッド位置を決定し、型締めを実施するようになっている、型締装置。
【請求項2】
前記タイバーには歪みセンサが設けられ、型締力が検出されるようになっている、請求項1に記載の型締装置。
【請求項3】
型締装置と、
前記型締装置の上に設けられ射出材料を射出するようになっている射出装置と、から構成され、
前記型締装置は、固定盤と、
前記固定盤の上方に設けられている上可動盤と、
前記固定盤の下方に設けられている下可動盤と、
前記上可動盤と前記下可動盤とを連結している複数本のタイバーと、
前記固定盤と前記下可動盤の間に設けられているトグル機構と、
前記固定盤の上面に回転自在に設けられているロータリーテーブルと、
制御装置と、を備え、
前記上可動盤には1個の上側金型が、そして前記ロータリーテーブルには複数個の下側金型がそれぞれ設けられ、前記ロータリーテーブルの回転位置に応じて複数個の前記下側金型のいずれかが前記上側金型と整合して型締対象になり、前記トグル機構のクロスヘッドを型締クロスヘッド位置に駆動すると前記上側金型と型締対象の前記下側金型とが型締めされて型締力が発生するようになっており、
前記上可動盤または前記上側金型には距離センサが設けられ、前記上可動盤と前記ロータリーテーブルの距離である型盤距離が規定の距離になっているとき、型締対象となる前記下側金型の金型厚さである下側型厚を検出するようになっており、
前記制御装置は、検出された前記下側型厚に応じて前記型締クロスヘッド位置を決定し、型締めを実施するようになっている、竪型射出成形機。
【請求項4】
前記タイバーには歪みセンサが設けられ、型締力が検出されるようになっている、請求項3に記載の竪型射出成形機。
【請求項5】
固定盤と、
前記固定盤の上方に設けられている上可動盤と、
前記固定盤の下方に設けられている下可動盤と、
前記上可動盤と前記下可動盤とを連結している複数本のタイバーと、
前記固定盤と前記下可動盤の間に設けられているトグル機構と、
前記固定盤の上面に回転自在に設けられているロータリーテーブルと、
制御装置と、を備え、
前記上可動盤には1個の上側金型が、そして前記ロータリーテーブルには複数個の下側金型がそれぞれ設けられ、前記ロータリーテーブルの回転位置に応じて複数個の前記下側金型のいずれかが前記上側金型と整合して型締対象になり、前記トグル機構のクロスヘッドを型締クロスヘッド位置に駆動すると前記上側金型と型締対象の前記下側金型とが型締めされて型締力が発生するようになっている、型締装置において型締めを実施する型締方法であって、
前記上可動盤または前記上側金型に距離センサを設けるようにし、
前記ロータリーテーブルを回転して型締対象となる前記下側金型を切り換える第1のステップと、
前記上可動盤と前記ロータリーテーブルの距離である型盤距離を規定の距離にして、前記距離センサによって型締対象の前記下側金型の金型厚さである下側型厚を検出する第2のステップと、
検出した前記下側型厚に応じて前記型締クロスヘッド位置を決定して型締めを実施する第3のステップと、を備えている型締方法。
【請求項6】
前記タイバーに歪みセンサを設けるようにし、前記第3のステップにおいて前記歪みセンサによって型締力を検出する、請求項5に記載の型締方法。
【請求項7】
型締方法は、事前作業工程を備え、
前記事前作業工程は、複数個の前記下側金型のそれぞれの前記下側型厚のうち最小の下側型厚に基づいて型厚調整を実施するようにする、請求項5または6に記載の型締方法。
【請求項8】
型締方法は、事前作業工程を備え、
前記事前作業工程は、複数個の前記下側金型のそれぞれの前記下側型厚の平均の下側型厚に基づいて型厚調整を実施するようにする、請求項5または6に記載の型締方法。
【請求項9】
前記型締方法は、事前作業工程を備え、
前記事前作業工程は、複数個の前記下側金型のそれぞれについて予め前記下側型厚を得ると共に、型締めを実施して前記歪みセンサによって検出される型締力が所望の型締力になる前記クロスヘッドの位置を前記型締クロスヘッド位置であるとし、複数個の前記下側金型ごとに前記下側型厚と前記型締クロスヘッド位置とを関連付けて前記制御装置に記憶させるようにし、
前記第3のステップは、検出した前記下側型厚に関連して記憶されている前記型締クロスヘッド位置を前記制御装置から読み出して、前記型締クロスヘッド位置に基づいて型締めするようにする、請求項6に記載の型締方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トグル機構によって上下に型開閉される型締装置、そのような型締装置と射出装置とからなる竪型射出成形機、および竪型射出成形機の型締方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トグル式の竪型射出成形機は、上下方向に型開閉される型締装置と射出装置とを備えている。型締装置は、フレームに固定されている固定盤と、この固定盤の上方に設けられている上可動盤と、下方に設けられている下可動盤とを備えている。上可動盤と下可動盤は複数本のタイバーで連結され、下可動盤と固定盤の間にトグル機構が設けられている。固定盤の上には回転自在なロータリーテーブルが設けられている。上可動盤には上側金型が、そしてロータリーテーブルには複数個の下側金型が設けられている。ロータリーテーブルを回転し、いずれかの下側金型を上側金型と整合させる。トグル機構を駆動すると上側金型と下側金型が型締めされる。射出装置は上可動盤に設けられ、金型に射出材料を射出するようになっている。
【0003】
トグル式の型締装置において適切な型締力を発生させるには、上側金型と下側金型とがタッチするときにトグル機構のクロスヘッドが適切なクロスヘッド位置、つまり金型タッチ位置になっている必要がある。クロスヘッドが金型タッチ位置にあるときに上側金型と下側金型がタッチすれば、クロスヘッドをさらに駆動して型締クロスヘッド位置にしたときに、適切に型締力が得られる。
【0004】
上側金型と下側金型とがタッチするとき、クロスヘッドが金型タッチ位置になるようにするには、上可動盤とロータリーテーブルの距離、つまり型盤距離を上側金型と下側金型の型厚に適合するように調整する必要がある。トグル式の竪型射出成形機において、例えば特許文献1に記載されているように、複数本のタイバーは、その下端部にタイバーナットが設けられている。これらのタイバーナットは下可動盤に回転自在に収納されるようになっており、タイバーと下可動盤はタイバーナットを介して連結されている。これらのタイバーナットを回転すると、タイバー有効長つまり上可動盤と下可動盤の距離を調整することができる。タイバー有効長を調整すると、上可動盤とロータリーテーブルの距離、つまり型盤距離が調整され、型厚調整ができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-30152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ロータリーテーブルには複数個の下側金型が設けられており、それぞれの下側金型はロータリーテーブルの回転位置に応じて、上側金型と整合し、型締めすることができるようになっている。ところで複数個の下側金型は、必ずしもその金型の厚さ、つまり下側型厚が同じであるとは限らない。加工精度等により、完全に同じ寸法にすることは難しいからである。そうすると、いずれかの下側金型について型厚調整を実施して、その下側金型については適切な型締力が得られるとしても、寸法が異なる他の下側金型では適切な型締力が得られない、という問題がある。
【0007】
本開示において、ロータリーテーブルによって下側金型が切り換えられても、安定的に適切な型締力が得られる型締装置、竪型射出成形機、および型締方法を提供する。
【0008】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
型締装置は、固定盤と上可動盤と下可動盤とを備え、上可動盤と下可動盤とが複数本のタイバーに接続され、下可動盤と固定盤の間にトグル機構が設けられている。上可動盤には上側金型が設けられ、固定盤にはロータリーテーブルが回転自在に載せられ、このロータリーテーブルに複数個の下側金型が設けられている。ロータリーテーブルを回転すると、いずれかの下側金型が上側金型と整合する型締対象になる。本開示は、上可動盤または上側金型に距離センサを設ける。上可動盤とロータリーテーブルの距離である型盤距離が規定距離になっているときに、距離センサによって型締対象の下側金型の厚さつまり下側型厚を検出する。型締装置の制御装置は、型締対象の下側金型に対し、検出した下側型厚に基づいて型締クロスヘッド位置を決定する。型締時は、トグル機構のクロスヘッドを決定された型締クロスヘッド位置まで駆動して型締力を発生させる。
【発明の効果】
【0010】
本開示は、ロータリーテーブルによって切り換えられる複数個の下側金型に対して、適切な型締力が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施形態に係る竪型射出成形機の正面図である。
図2】第1の実施形態に係る竪型射出成形機の一部を示す側面図である。
図3】第1の実施形態に係る準備作業を示すフローチャートである。
図4】第1の実施形態に係る型厚調整方法を示すフローチャートである。
図5】第1の実施形態に係る型締方法を示すフローチャートである。
図6】第1の実施形態の変形例に係る型締方法を示すフローチャートである。
図7】第1の実施形態の変形例に係る準備作業を示すフローチャートである。
図8】第2の実施形態に係る準備作業を示すフローチャートである。
図9】第2の実施形態に係る型締方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、以下の実施の形態に限定される訳ではない。説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜簡略化されている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。また、図面が煩雑にならないように、ハッチングが省略されている部分がある。
【0013】
[第1の実施形態]
<竪型射出成形機>
第1の実施形態に係る竪型射出成形機1は、図1に示されているように、型締装置2と、この型締装置2の上部に設けられている射出装置3と、これらを制御する制御装置4と、を備えている。
【0014】
<型締装置>
型締装置2は、ベッド7に固定されている固定盤9と、この固定盤9の上方に設けられている上可動盤10と、ベッド7内に設けられている下可動盤11とを備えている。上可動盤10と下可動盤11は本実施の形態では3本のタイバー12、12、…で連結されている。タイバー12、12、…の下端部と下可動盤11とは型厚調整機構24を介して連結されているが、これについては後で詳しく説明する。型締装置に2において下可動盤11と固定盤9の間にはトグル機構14が設けられ、そして固定盤9の上にはロータリーテーブル15が設けられている。ロータリーテーブル15は、図1において中央の1本のタイバー12を中心に回転するようになっている。ロータリーテーブル15は、図示されないサーボモータによって駆動されるようになっており、サーボモータのエンコーダによりロータリーテーブル15の回転位置が検出されるようになっている。
【0015】
上可動盤10には1個の上側金型17が、そしてロータリーテーブル15には複数個の、この実施の形態では2個の下側金型18、18が設けられている。ただし、図1において2個の下側金型18、18は作図上重なった配置になっているので、1個のみが示されている。一方、図2の側面図には下側金型18、18が2個示されている。
【0016】
トグル機構14は、クロスヘッド20を備えており、クロスヘッド20は駆動機構21によって駆動されるようになっている。クロスヘッド20を駆動すると、トグル機構14が屈伸する。トグル機構14が屈伸すると、上側金型17と、この上側金型17に整合している1個の下側金型18とが型開閉される。
【0017】
<型厚調整機構>
型厚調整機構24について説明する。複数本のタイバー12、12、…には、図1に示されているように、それぞれ下端部近傍に所定長さに渡って雄ネジが形成されている。このような雄ネジに、タイバーナット25、…が設けられている。下可動盤11には、タイバー12、12、…が挿入され貫通する貫通孔26、…が開けられており、貫通孔26の一部は拡径されたタイバーナット収納穴28、…になっている。タイバーナット25、…は、それぞれタイバーナット収納穴28に入れられている。このようにして、タイバー12、12、…と下可動盤11とが、タイバーナット25、…を介して連結されている。
【0018】
タイバーナット25、…にはスプロケット29、…が固着されている。図1に示されていないが、全てのスプロケット29、…に対して共通の1本のチェーンが掛け回され、図示されない駆動機構によって同期して回転されるようになっている。つまり、複数個のタイバーナット25、…は同期して回転されるようになっている。型厚調整機構24は、これらタイバーナット25、…、スプロケット29、…等から構成されている。駆動機構により同期してタイバーナット25、…を回転すると、タイバー12、12、…の有効長、つまり上可動盤10と下可動盤11の距離が変化する。
【0019】
<射出装置>
射出装置3は、型締装置2の上可動盤10の上に設けられている。射出装置3は、加熱シリンダ31と、加熱シリンダ31内に設けられているスクリュ32と、スクリュ32を駆動するスクリュ駆動機構33と、射出装置3全体を昇降する昇降装置35と、を備えている。射出装置3は、スクリュ32を回転して射出材料を溶融し、スクリュ32を軸方向に駆動して射出材料を射出するようになっている。
【0020】
<制御装置>
制御装置4は、竪型射出成形機1を制御するようになっている。後で説明する準備作業、および型締方法を制御する。
【0021】
<距離センサ>
第1の実施形態に係る竪型射出成形機1には、図1図2に示されているように、上可動盤10に距離センサ37が設けられている。距離センサ37は、レーザ発光部と受光部とを備え、対象物との距離を測定できるようになっている。第1の実施形態に係る竪型射出成形機1において、距離センサ37は上側金型17と整合している下側金型18、つまり型締対象の下側金型18までの距離を測定する。上可動盤10とロータリーテーブル15の距離つまり型盤距離が規定の距離になっているとき、下側金型18までの距離を測定すれば、下側金型18の金型厚さつまり下側型厚を計算できる。つまり型締対象の下側金型18の下側型厚を検出できる。
【0022】
<歪みセンサ>
第1の実施形態に係る竪型射出成形機1には、図1図2に示されているように、1本のタイバー12に歪みセンサ39が設けられている。型締時にタイバー12は伸張するが、この伸張を検出するようになっている。これによってタイバー12の張力が計算され、型締力が得られるようになっている。
【0023】
<準備作業>
第1の実施形態に係る竪型射出成形機1は、ロータリーテーブル15に2個の下側金型18、18が設けられ、ロータリーテーブル15を回転することによって上側金型17と型締めされる下側金型18、つまり型締対象の下側金型18を変えるようになっている。下側金型18、18はその厚さつまり下側型厚が必ずしも同一ではない。つまり若干異なっている。そうすると型締時に発生する型締力が相違することになる。しかしながら後で説明する第1の実施形態に係る型締方法では、下側型厚が異なっていても同じ型締力を発生させることができるようになっている。第1の実施形態に係る型締方法を実施するにあたって、金型17、18、18を交換するたびに、事前に第1の実施形態に係る準備作業を実施する必要がある。これを説明する。
【0024】
第1の実施形態に係る準備作業について、図3によって説明する。制御装置4(図1参照)は、最初にステップS01を実行する。つまり型締装置2においてクロスヘッド20を駆動して上可動盤10とロータリーテーブル15の距離である型盤距離を規定の距離になるようにする。完全に型開状態にしてもよく、この場合には規定の距離は型開状態における型盤距離ということになる。次いで制御装置4はステップS02を実行する。すなわち、距離センサ37により現在の型締対象の下側金型18までの距離を測定し、規定の距離からこれを減じて下側金型18の下側型厚を計算する。すなわち下側型厚を測定する。制御装置4はこの下側金型18についての下側型厚として記憶する。このとき、ロータリーテーブル15の回転位置について関連付けて記憶しておく。
【0025】
制御装置はステップS03を実行する。つまり、ロータリーテーブル15に設けられている全ての下側金型18、18について下側型厚を測定したか否かを判定する。第1の実施形態において下側金型18、18は2個であるので、2個の下側金型18、18の下側型厚の測定が完了したか否かを判定することになる。ここではまだ1個の下側金型18についてのみ下側型厚を測定・記憶しただけであるので、NOの方向に進む。つまりステップS04を実行する。ステップS04ではロータリーテーブル15を回転し、型締対象の下側金型18を変更する。次いで、制御装置4はステップS02に戻り、ステップS02を実行する。すなわち現在の型締対象の下側金型18について下側型厚を測定し、記憶する。同様にロータリーテーブル15の回転位置について関連付けて記憶しておく。
【0026】
ステップS03において、全ての下側金型18、18について下側型厚の測定・記憶が完了したと判断したら(YES)、ステップS05に移行する。制御装置4は記憶された全ての下側金型18、18の下側型厚の中から最小の下側型厚を決定する。下側型厚を決定したらステップS06に移行する。ステップS06において、制御装置4は現在の型締対象の下側金型18が、最小の下側型厚の下側金型18であるか否かを判断する。もし最小の下側型厚の下側金型18が型締対象になっていれば、ステップS08に移行する。一方、異なっている場合には(NO)、ステップS07に移行する。ステップS07では、制御装置4はロータリーテーブル15を回転し、最小の下側型厚の下側金型18が型締対象になるようにする。すなわち、ステップS02において最小の下側型厚の下側金型18に関連付けて記憶されている回転位置にロータリーテーブル15を回転する。ステップS08に移行する。
【0027】
制御装置4はステップS08を実行する。制御装置4には、予め上側金型17の厚さ、つまり上側型厚が入力されている。この上側型厚と、最小の下側型厚とを加算して上側金型17と下側金型18の合計の厚さ、つまり型厚を計算する。型厚を計算したらステップS09に移行し、型厚調整を行う。つまり、最小の下側型厚の下側金型18について型厚調整を行うことになる。
【0028】
第1の実施形態に係る準備作業において実施する型厚調整方法を、図4のフローチャートによって説明する。制御装置4はステップS11を実行する。つまり、型厚調整機構24(図1参照)を駆動してタイバーナット25、…を回転し、タイバー有効長を大きくする。このようにして、ステップS08(図3参照)で計算した型厚より、若干大きな型厚になるようにする。
【0029】
次いでステップS12を実行する。すなわち制御装置4(図1参照)はクロスヘッド20を駆動してクロスヘッド位置を金型タッチ位置にする。クロスヘッド20は型締クロスヘッド位置に駆動して型締力を発生させる。型締クロスヘッド位置に駆動したときに所望の型締力が得られるようにするには、トグル機構14は上側金型17と下側金型18とがタッチするとき適切な屈曲状態になっている必要がある。この適切な屈曲状態にするクロスヘッド位置が、金型タッチ位置である。
【0030】
クロスヘッド位置を金型タッチ位置にしたら、ステップS13を実行する。つまりタイバーナット25、…(図1参照)を回転してタイバー有効長を小さくなるようにする。つまり型厚減方向に駆動する。上側金型17と下側金型18のタッチを検出したらステップS13を完了する。なお、上側金型17と下側金型18のタッチは、歪みセンサ39によってわずかな型締力が発生したか否かによって検出する。あるいは、タイバーナット25、…を回転する駆動機構にサーボモータが設けられている場合には、サーボモータのトルクを監視して検出してもよい。ステップS13が完了したら型厚調整を終了する。第1の実施形態に係る準備作業が完了する。以上から明らかなように、第1の実施形態に係る準備作業は、最小の下側型厚に適合するように型厚調整を実施している。
【0031】
<型締方法>
第1の実施形態に係る型締方法を図5によって説明する。竪型射出成形機1(図1)において、型締装置2は型開状態になっており、上可動盤10とロータリーテーブル15の型盤距離が規定の距離になっているものとする。制御装置4は図5に示されているステップS21を実行する。すなわち距離センサ37により、型締対象になっている下側金型18について下側型厚を測定する。
【0032】
次いで、制御装置4はステップS22を実行して型締クロスヘッド位置を決定する。具体的には次のようにする。制御装置4には、前に説明した準備作業において最小の下側型厚が記憶されている。この最小の下側型厚を基準の下側型厚とする。基準の下側型厚に対してステップS21で測定した下側型厚を比較する。もし、一致していれば型締クロスヘッド位置は、竪型射出成形機1において設定されている標準の型締クロスヘッド位置を採用し、変更しない。一方、測定した下側型厚が基準の下側型厚と異なっている場合には、標準の型締クロスヘッド位置からその差の分だけずらしたクロスヘッド位置を型締クロスヘッド位置として決定する。
【0033】
制御装置4はステップS23により型締工程を実行する。つまり、クロスヘッド20(図1参照)を決定された型締クロスヘッド位置に駆動する。そうすると所望の型締力が得られる。ステップS24により射出・保圧工程を実行する。つまり射出装置3(図1参照)においてスクリュ32を駆動して射出材料を射出し、保圧する。上側金型17と下側金型18に射出した射出材料が固化したら、制御装置4はステップS25を実行する。つまり型締装置2において型開きする。型開きにあたっては、上可動盤10とロータリーテーブル15の型盤距離を規定の距離になるようにする。次いでステップS26を実行してロータリーテーブル15を回転する。これによって型締対象の下側金型18が変更される。成形品が形成された下側金型18は操作側、つまり図1において紙面手前側に移動する。成形品を突き出し、取り出す。
【0034】
制御装置4はステップS27を実行する。つまり成形サイクルを継続する場合(YES)にはステップS21に戻る。ステップS21では、新たに型締対象となった下側金型18について下側型厚を測定する。以下、同様に処理を実行する。一方、ステップS27においてオペレータにより成形サイクルの停止の要求が入っていたら(NO)、処理を終了する。
【0035】
<第1の実施形態:型締方法の変形例>
第1の実施形態に係る型締方法は色々変形することができる。図6には変形例に係る型締方法が示されている。変形例に係る型締方法も、図1に示されている第1の実施形態に係る竪型射出成形機1によって実施するので竪型射出成形機1の説明を省略する。図6に示されているように、第1の実施形態の変形例に係る型締方法におけるステップS21、S22、S23については、図5に示されている第1の実施形態に係る型締方法と同様の処理である。したがってこれらの処理についての説明を省略する
【0036】
変形例に係る型締方法ではステップS23の次にステップS29を実行する。ステップS29では制御装置4は歪みセンサ39(図1参照)で検出される歪みにより型締力を計算する。型締力が所望の大きさになっているか否かを判定し、なっていれば(YES)、ステップS24に移行する。ステップS24、…、S27については図5によって説明した第1の実施形態に係る型締方法と同様であるので、説明を省略する。ステップS29において、型締力が所望の大きさでないと判定したとき(NO)、異常が発生したとして処理を終了する。所望の型締力が得られない原因として、例えば金型17、18の温度変化が考えられる。温度変化により上側型厚、下側型厚が変化すると、所望の型締力が得られない。対策として、例えばオペレータの要求により制御装置4を操作して、すでに説明した第1の実施形態に係る準備作業を実施する。
【0037】
<第1の実施形態:準備作業の変形例>
第1の実施形態に係る準備作業についても変形することができる。第1の実施形態に係る準備作業では、複数個の下側金型18、18のうち最小の下側型厚に合わせて型厚調整を実施していた。しかしながら、第1の実施形態の変形例に係る準備作業では複数個の下側金型18、18について平均の下側型厚を求め、平均の下側型厚に合わせて型厚調整するようにする。図7によって説明する。
【0038】
制御装置4(図1参照)は図7に示されているステップS31を実行して上可動盤10とロータリーテーブル15の型盤距離を規定の距離にする。次いでステップS32を実行し、距離センサ37により型締対象の下側金型18の下側型厚を測定し、記憶する。制御装置4はステップS33を実行し、全ての下側金型18、18について下側型厚の測定・記憶が完了したか否かを判定する。完了していなければ(NO)ステップS34を実行してロータリーテーブル15を回転し、型締対象の下側金型18を変更する。次いでステップS32に戻る。一方、全ての下側金型18、18について完了したと判断したら(YES)、ステップS35に移行する。制御装置4は複数の下側金型18、18について下側型厚の平均を計算する。
【0039】
次いで、制御装置4(図1参照)はステップS36を実行して型厚を計算する。具体的には、次のようにする。制御装置4には、予め上側金型17の厚さ、つまり上側型厚が入力されている。この上側型厚と、平均の下側型厚とを加算して上側金型17と下側金型18の厚さつまり型厚を計算する。型厚が計算されたらステップS37を実行して型厚調整を行う。このステップS37における型厚調整は、図4によって説明した型厚調整とは異なっている。制御装置4には、型厚が与えられると、与えられた型厚に基づいてタイバーナット25、…の回転の回数を決定して、タイバーナット25、…を回転する機能が備えられている。つまり型締装置2を型開状態に維持したままで型厚調整を実施できる。ステップS37ではこのようにして型厚調整を実行する。準備工程を完了する。
【0040】
第1の実施形態の変形例に係る準備工程を実施した場合、型締装置2は平均の下側型厚に基づいて型厚調整を実施したことになる。この場合には、図5によって説明した、第1の実施形態に係る型締方法において、ステップS22の処理が若干変更される。つまり、ステップS22では、型締対象の下側金型18の下側型厚について、制御装置4に記憶されている最小の下側型厚と比較するように説明した。つまり比較の対象となる基準の下側型厚は、最小の下側型厚であった。しかしながら、第1の実施形態の変形例に係る準備工程を実施した場合には、基準の下側型厚は平均の下側型厚になる。制御装置4には予め平均の下側型厚を基準の下側型厚として記憶させておく。そして型締方法におけるステップS22では、型締対象の下側金型18の下側型厚について、この基準の下側型厚と比較すればよい。
【0041】
[第2の実施形態]
次に第2の実施形態について説明する。第1の実施形態では、準備作業で下側金型18、18、…のうち、下側型厚が最小のものに対して型厚調整を行うと共に、最小の下側型厚を記憶していた。そして型締方法では、型締対象の下側金型18について下側型厚を測定し、記憶されている最小の下側型厚との差を計算し、この差に基づいて型締クロスヘッド位置を決定し、型締めしていた。これに対し、第2の実施形態では、準備作業で、複数個の下側金型18、18、…のそれぞれについて、下側型厚を測定するとともに適切な型締力が発生する型締クロスヘッド位置を探して、これらを対にして記憶する。そして型締時において、型締対象の下側金型18について下側型厚を測定し、対応して記憶されている型締クロスヘッド位置に基づいて型締するようになっている。以下、詳しく説明する。
【0042】
第2の実施形態に係る竪型射出成形機の構成については、第1の実施形態に係る竪型射出成形機1(図1参照)と同じになっている。したがって、第2の実施形態に係る竪型射出成形機についての説明を省略し、以下では竪型射出成形機1として説明する。第2の実施形態に係る竪型射出成形機1において実施する、第2の実施形態に係る準備作業と、第2の実施形態に係る型締方法について詳しく説明する。
【0043】
<準備作業>
第2の実施形態に係る準備作業を図8によって説明する。制御装置4(図1参照)はステップS41を実行し、上可動盤10とロータリーテーブル15の型盤距離が規定の距離になるようにする。次いでステップS42を実行し、現在の型締対象の下側金型18について下側型厚を測定し、記憶する。次いでステップS43を実行する。ステップS43では実際に型締を行う。歪みセンサ39によって型締力を検出しながら、クロスヘッド20をゆっくりと駆動する。ステップS44において所望の型締力が得られたらクロスヘッド20の駆動を停止し、このときのクロスヘッド位置をその下側金型18に対する型締クロスヘッド位置であると決定する。制御装置4は、ステップS42において記憶した下側型厚と関連させて、この型締クロスヘッド位置を記憶する。
【0044】
制御装置4は、ステップS45において、全ての下側金型18、18について上で説明した処理が完了したか否かを判定する。完了していなければ(NO)、ステップS46に移行する。すなわちロータリーテーブル15を回転し、型締対象の下側金型18を変更する。次いでステップS42に戻る。一方、完了したと判定(YES)したら、準備作業を完了する。この第2の実施形態に係る準備作業を実施すると、制御装置4には、全ての下側金型18、18について、その下側型厚と型締クロスヘッド位置とが対になって記憶されることになる。
【0045】
<型締方法>
第2の実施形態に係る型締方法を図9によって説明する。制御装置4はステップS51を実行し、型締対象の下側金型18の下側型厚を測定する。次いで、ステップS52を実行し、記憶した全ての下側金型18、18についての下側型厚の中から、測定した下側型厚に一致するものを探す。そして一致した下側型厚に関連して記憶されている型締クロスヘッド位置を読み出す。ステップS53を実行し、クロスヘッド20(図1参照)を、読み出した型締クロスヘッド位置に駆動する。すなわち型締工程を実行する。ステップS54によって射出保圧工程を実行し、ステップS55によって型開工程を実行する。ステップS56により、ロータリーテーブル15を回転し、成形品を取り出す。ステップS57において成形サイクルを継続するか否かを判定する。継続する(YES)場合、ステップS51に戻る。一方、成形サイクルを終了する場合(NO)、処理を終了する。
【0046】
<他の変形例>
第1、第2の実施形態はさらに色々な変形が可能である。例えば、これらの実施形態において下側金型18、18は2個であるように説明したが、下側金型18、18は3個以上であってもよい。また、歪みセンサ39は、1本のタイバー12に設けられているように説明したが、タイバー12、12、…の全てに設けられていてもよい。さらには、距離センサ37は上可動盤10に設けられているように説明したが、上側金型17に設けるようにしてもよい。
【0047】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。以上で説明した複数の例は、適宜組み合わせて実施されることもできる。
【符号の説明】
【0048】
1 竪型射出成形機 2 型締装置
3 射出装置 4 制御装置
7 ベッド 9 固定盤
10 上可動盤 11 下可動盤
12 タイバー 14 トグル機構
15 ロータリーテーブル 17 上側金型
18 下側金型 20 クロスヘッド
21 駆動機構 24 型厚調整機構
25 タイバーナット 26 貫通孔
28 タイバーナット収納穴 29 スプロケット
31 加熱シリンダ 32 スクリュ
33 スクリュ駆動機構 35 昇降装置
37 距離センサ 39 歪みセンサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9