(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088889
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】腸内細菌叢におけるRomboutsia属菌低減用組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/21 20160101AFI20240626BHJP
A61K 31/718 20060101ALI20240626BHJP
A61P 1/14 20060101ALI20240626BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20240626BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240626BHJP
A61K 31/716 20060101ALI20240626BHJP
A61K 31/736 20060101ALI20240626BHJP
A23L 29/206 20160101ALI20240626BHJP
【FI】
A23L33/21
A61K31/718
A61P1/14
A61P3/04
A61P3/10
A61K31/716
A61K31/736
A23L29/206
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203906
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000188227
【氏名又は名称】松谷化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】金崎 茜
(72)【発明者】
【氏名】木村 友紀
【テーマコード(参考)】
4B018
4B041
4C086
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB02
4B018LB07
4B018LB08
4B018LB10
4B018MD33
4B018MD36
4B018MD37
4B018MD47
4B018ME01
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4B041LC10
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4C086AA01
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4C086EA20
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4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA70
4C086ZA73
4C086ZC35
(57)【要約】
【課題】腸内細菌叢におけるRomboutsia属菌、特にRomboutsia ilealis低減用組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】水溶性食物繊を有効成分として含有する組成物を摂取することにより、腸内細菌叢におけるRomboutsia属菌、特にRomboutsia ilealisを低減することができるため、上記課題は達成される。腸内細菌叢におけるRomboutsia属菌、特にRomboutsia ilealisを低減することにより、これらの細菌に起因する肥満や糖代謝関連疾患などの治療、予防、改善が期待できる。また、本発明の組成物は、食経験のある水溶性食物繊を含むため、長期摂取によっても副作用が少なく、食品及び医薬品への適用に有利である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性食物繊維を有効成分として含有する、腸内細菌叢におけるRomboutsia属菌低減用組成物。
【請求項2】
水溶性食物繊維を有効成分として含有する、腸内細菌叢におけるRomboutsia ilealis低減用組成物。
【請求項3】
前記水溶性食物繊維が、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、難消化性グルカン、イソマルトデキストリン及びグアーガム分解物からなる群より選ばれる1種以上である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
有効成分である水溶性食物繊維を体重1kg当たり0.04~2.0g/日となるよう1週間以上経口摂取させる、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が、保健機能食品、健康補助食品、機能性表示食品、特定保健用食品又は特別用途食品である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項6】
腸内細菌叢におけるRomboutsia ilealis低減による肥満及び糖代謝関連疾患の予防、改善又は治療用の、請求項1又は2に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性食物繊維を有効成分として含有する、Romboutsia属菌、特にRomboutsia ilealis低減用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
腸内細菌叢が動物の健康に密接に関連していることから、腸内環境を整えることで感染症や疾病罹患のリスクを低減できる可能性が示唆されている。
【0003】
例えば、ヒトの場合、ヒト一人の腸内には約1000種、100-1000兆個の菌が生育するといわれ、一般に、有害物質(アンモニアなど)を産生するウェルシュ菌などの微生物(有害菌)と、有用物質(有機酸など)を産生するビフィズス菌や乳酸菌などの微生物(有用菌)とが共生している。腸内環境をよりよい状態で維持するためには、有用菌を優勢種として大腸等に存在させることに加え、有害菌を減らすことが重要であると考えられている。
【0004】
近年、有害菌のひとつとしてRomboutsia属菌が同定され、肥満のヒトの80%以上がその一種であるRomboutsia ilealisを有しており、さらにRomboutsia ilealisは糖代謝を悪化させることが明らかとなっている(非特許文献1)。また、ヒトにおける様々な血液バイオマーカーと腸内細菌との相関を調べた研究では、Romboutsia属菌が体重及び血清脂質と正の相関を示すことが報告されている(非特許文献2)。そのほか、神経発達障害の患者の腸内細菌叢においても、Romboutsia ilealisの増加が確認されている(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Rodrigues et al.,Nature communications,12,101(2021)
【非特許文献2】Zeng et al.,Scientific Reports,9,1324(2019)
【非特許文献3】Bojovic et al.,Frontiers in Cellular and infection Microbiology,10,223(2020)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、腸内細菌叢におけるRomboutsia属菌、特にRomboutsia ilealis低減用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、種々検討したところ、水溶性食物繊維、特に難消化性デキストリンが、腸内細菌叢におけるRomboutsia属菌、その中でも特にRomboutsia ilealisを低減させることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
水溶性食物繊維が腸内細菌叢を変動させることは知られており、例えば、水溶性食物繊維である難消化性デキストリンが、フシカテニバクター(Fusicatenibacter)属菌やビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属菌を増加させることや、バクテロイデス(Bacteroides)属菌を減少させることは知られている(Frontiers in Microbiology Vol.13,2022)。
【0009】
しかし、これまでに難消化性デキストリンと、Romboutsia属菌やRomboutsia ilealisとの関連性を示す知見はなかった。
【0010】
本発明は、以下の[1]~[6]から構成される。
[1]水溶性食物繊維を有効成分として含有する、腸内細菌叢におけるRomboutsia属菌低減用組成物。
[2]水溶性食物繊維を有効成分として含有する、腸内細菌叢におけるRomboutsia ilealis低減用組成物。
[3]前記水溶性食物繊維が、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、難消化性グルカン、イソマルトデキストリン及びグアーガム分解物からなる群より選ばれる1種以上である、上記[1]又は[2]に記載の組成物。
[4]有効成分である水溶性食物繊維を体重1kg当たり0.04~2.0g/日となるよう1週間以上経口摂取させる、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の組成物。
[5]前記組成物が、保健機能食品、健康補助食品、機能性表示食品、特定保健用食品又は特別用途食品である、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の組成物。
[6]腸内細菌叢におけるRomboutsia ilealis低減による肥満及び糖代謝関連疾患の予防、改善又は治療用の、上記[1]~[5]のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る組成物を摂取することにより、動物の腸内細菌叢におけるRomboutsia属菌、その中でも特にRomboutsia ilealisを低減することができ、その結果、これらの細菌に起因する肥満、糖代謝関連疾患の予防・改善が期待できる。本発明に係る組成物は、食経験のある水溶性食物繊維を含むため、長期摂取によっても副作用が少なく、安全性が非常に高い点において有利である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】コントロール摂取群と難消化性デキストリン摂取群のラット糞便中におけるRomboutsia属菌の占有率を示す棒グラフである。
【
図2】コントロール摂取群と難消化性デキストリン摂取群のラット糞便中におけるRomboutsia ilealisの占有率を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
一般に、「水溶性食物繊維」には、ペクチン、コンニャクマンナン、アルギン酸、グアーガム、寒天などの高粘性の水溶性食物繊維と、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、難消化性グルカン、イソマルトデキストリン、グアーガム分解物などの低粘性の水溶性食物繊維とがあるが、本発明の「水溶性食物繊維」は、効果の観点から低粘性のものが好ましい。
【0014】
一般に、低粘性の水溶性食物繊維とは、50質量%以上の食物繊維を含有し、常温水に溶解して低粘性の溶液、おおむね5質量%水溶液で20mPa・s以下の粘度を示す溶液となる食物繊維素材を意味する。具体的には、例えば、難消化性デキストリン、イヌリン、ポリデキストロース、難消化性グルカン、イソマルトデキストリン、グアーガム分解物が挙げられるが、本発明においては、効果の観点から、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、難消化性グルカン、イソマルトデキストリン、グアーガム分解物が好ましく、そのなかでも難消化性デキストリンが最も好ましい。
【0015】
難消化性デキストリンは、澱粉、例えば、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、コーンスターチ、小麦粉澱粉等を130℃以上で加熱分解し、これをアミラーゼでさらに加水分解し、必要に応じて分画、脱色、脱塩などをして得られる。その平均分子量は500から3000程度、好ましくは1400~2500、さらに好ましくは2000前後であり、グルコース残基がα-1,4、α-1,6、β-1,2、β-1,3、β-1,6-グルコシド結合し、還元末端の一部はレボグルコサン(1,6-アンヒドログルコース)である、分岐構造の発達したデキストリンである。市販品としては、「ニュートリオース」(ロケット社製)、「パインファイバー」、「ファイバーソル2」(松谷化学工業株式会社製)などがある。本発明の難消化性デキストリンは、還元難消化性デキストリンを包含し、その市販例として、「ファイバーソル2H」(松谷化学工業株式会社製)がある。
【0016】
ポリデキストロースは、ブドウ糖とソルビトールをクエン酸の存在下で減圧加熱して重合させ、これを必要に応じて精製等したものであり、市販品としては、例えば「ライテス」(デュポン社製)がある。
【0017】
難消化性グルカンは、難消化性のグルカン(グルコースポリマー)を意味し、DE70~100の澱粉分解物を加熱処理により縮合反応させて得られる糖縮合物であり、水溶性食物繊維画分を高度に含有する。市販品としては、例えば「フィットファイバー#80」(日本食品化工株式会社製)がある。
【0018】
イソマルトデキストリンは、でん粉にα-グルコシル転移酵素とα-アミラーゼを作用させて得られる多分岐α-グルカンであり、市販品としては、例えば「ファイバリクサ」(株式会社林原製)がある。
【0019】
グアーガム分解物は、グアーガムに酵素を作用させて部分的に分解し低粘度化させ、乾燥させて得られるものであり、市販品としては、例えば「サンファイバー」(太陽化学株式会社製)がある。
【0020】
水溶性食物繊維の含量は、例えば、衛新第13号(「栄養表示基準における栄養成分等の分析方法等について」)に記載の食物繊維の分析方法である高速液体クロマトグラフ法(酵素-HPLC法)により、難消化性成分として測定することができる。
【0021】
本発明における有効成分としての水溶性食物繊の1日当たりの摂取量は、後述のラットの実験結果などから、摂取対象の体重1kg当たり0.25g~12.5g、好ましくは0.5g~9.5g、より好ましくは1.0g~6.5gである。なお、これを「Reagan-Shaw et al.,The FASEB Journal,22:659-661,2007」に提示されている体表面積に基づく換算式(ヒト用量(mg/体重kg)=ラット摂取量(mg/体重kg)×[ラットKm値(=6)/成人ヒトKm値(=37)])を参照し、ヒト用量に換算すると、ヒト体重1kg当たり、0.04~2.0g、0.08~1.5g、又は0.16~1.0gである。
【0022】
本発明における有効成分としての水溶性食物繊維の摂取方法は、経腸摂取及び経口摂取のいずれでも構わないが、経口摂取のほうがより好ましい。また、摂取回数に特に制限はなく、上記有効摂取量を1日1回摂取させても、数回に分けて摂取させてもよい。摂取タイミングについても特に制限はなく、対象が摂取しやすい時期、例えば、食前、食中、食後、食間、運動前、運動後などのいずれのタイミングに摂取することもできる。なお、上記の水溶性食物繊の摂取量、摂取回数、摂取タイミングなどの摂取態様は、非治療目的・治療目的のいずれにも適用があり、治療目的の場合は「摂取」を「投与」に読み替えることができる。
【0023】
本発明の組成物における水溶性食物繊維の含量は、剤型、症状、体重、利便性等に応じて任意に定めることになるので、特に限定されるものでなく、0.5~99質量%の範囲であればよいが、食品組成物の場合は、0.5~70質量%、1~50質量%、2~20質量%が好ましく、剤とする場合は、摂取の利便性を考慮し、60~99質量%、75~95質量%とするのがよい。
【0024】
本発明の組成物を摂取させる対象は、哺乳動物(マウス、ラット、ハムスター、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、サル、ヒトなど)であればよい。また、本発明の組成物は、その効果をよりよく発揮させるために、少なくとも1週間以上継続的に摂取させることができ、好ましくは2週間以上、より好ましくは1ヶ月以上の継続的な摂取である。ここで、「継続的に」とは、毎日の摂取又は少なくとも2日に1回の摂取を続けることを意味する。本発明の組成物を包装形態で提供する場合は、継続的摂取のために一定期間(例えば、1週間)の有効摂取量をセットで提供してもよい。
【0025】
本発明の組成物の形態は、粉末状、顆粒状、固形状、半固形状、液状などのいずれであってもよく、また、カプセル剤などのサプリメントの形態のほか、食品の形態、例えば、パン、クッキーなどのベーカリー類、チョコレート、ゼリー、プリン、アイス、キャンディー、せんべい、まんじゅうなどの菓子類、うどん、そば、マカロニなどの麺類、ヨーグルトやクリームなどの乳製品、ジャム、飲料や濃厚流動食などとして用いることができる。また、これらは保健機能食品、健康補助食品、機能性表示食品、特定保健用食品又は特別用途食品などとして用いることもできる。
【0026】
本発明の組成物は、腸内細菌叢におけるRomboutsia属菌、特にRomboutsia ilealis低減のために用いられる。ここでいう「Romboutsia属菌低減又はRomboutsia ilealis低減」は、例えば、Romboutsia属菌又はRomboutsia ilealisの腸内細菌叢における占有率(%)を指標として評価することができる。具体的には、水溶性食物繊摂取後の腸内細菌叢におけるRomboutsia属菌又はRomboutsia ilealisの占有率が、水溶性食物繊非摂取時の腸内細菌叢におけるRomboutsia属菌又はRomboutsia ilealisの占有率を下回る場合、好ましくは、水溶性食物繊摂取後の腸内細菌叢におけるRomboutsia属菌又はRomboutsia ilealisの占有率が、水溶性食物繊非摂取時の腸内細菌叢におけるRomboutsia属菌又はRomboutsia ilealisの占有率よりも有意に減少した場合(P<0.01)をいう。なお、「水溶性食物繊非摂取時」とは、水溶性食物繊を摂取しないときをいう。
【0027】
ここで、ある腸内細菌叢に特定の種に属する菌が存在するかどうかは、16SrRNA遺伝子配列を同定することにより判別することができる。この16SrRNA遺伝子配列の同定は以下のように行う;まず、便検体から抽出された腸内細菌叢DNAを、細菌由来16SrRNA遺伝子の特定領域(例えば、V3-V4領域)を増幅できるプライマー配列を用いたPCR法で増幅し、シーケンシング(例えば、Illumina社のMiSeqシステムを利用)により塩基配列を取得する。取得した塩基配列を16SrRNA遺伝子のデータベース(例えば、TechnoSuruga Laboratory社製TechnoSurugaLab微生物同定データベースDB-BA13.0)に登録された細菌種の配列に対して相同性検索を行い、最も相同率が高い(相同性97%以上)とされる配列を近縁な細菌種として割り当てることにより同定する。また、そのようにして同定された「種」を「属」に割り当てることにより、それぞれの「属」を同定することができる。
【0028】
本発明に係る組成物を摂取することにより、動物の腸内細菌叢におけるRomboutsia属菌、特にRomboutsia ilealisを低減することができ、その結果、それらの細菌に起因する肥満、糖代謝関連疾患の予防・改善が期待できる。ここでいう「糖代謝関連疾患」とは、糖代謝の悪化により引き起こされる諸症状をいい、例えば、糖尿病、耐糖能異常などが挙げられる。
【0029】
以下、実施例を提示して本発明を詳細かつ具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【実施例0030】
<ラットにおける難消化性デキストリン継続摂取試験>
6週齢のWistar雄性ラット(日本クレア株式会社製)12匹に、固形飼料CE-2(日本クレア株式会社製)及び純水を自由摂取させ、1週間予備飼育をした。予備飼育後、コントロール摂取群及び難消化性デキストリン摂取群の2群(1群あたり6匹)に分け、AIN-93G基準食及び次に示す各種試験飲料を自由摂取として19日間飼育した。コントロール摂取群の試験飲料は純水のみとし、難消化性デキストリン摂取群の試験飲料は、純水に5質量%となるよう難消化性デキストリン(「ファイバーソル2」松谷化学工業株式会社製)を溶かしたものとした。飼育終了時に糞便を採取し、腸内細菌叢のメタゲノム解析に供した。
【0031】
<腸内細菌叢のメタゲノム解析>
採取した糞便から抽出したDNAを試料として、MiSeq(イルミナ社製)を用いた16SrRNAシーケンス法により類似のDNA配列を有するOperational Taxonomic Unit (OTU) を決定した。配列からの菌種の同定は、TechnoSurugaLab微生物同定データベースDB-BA13.0(TechnoSuruga Laboratory社製)を用いてOTUのDNA配列の相同性(97%以上)を検索することにより実施した。菌属の同定は、同定された菌種を属に割り当てることによりおこなった。また、OTUのリード数から菌種及び菌属の占有率を算出した。得られた占有率は、平均値±標準誤差で示し、コントロール摂取群と難消化性デキストリン摂取群との比較においては、対応のあるt検定により統計解析した。
【0032】
<結果>
2群を合わせた全ラットにおける占有率の平均値が高い菌属及び菌種の上位20位を表1及び表2にそれぞれ示す。
【0033】
【0034】
【0035】
表1及び表2に示した占有率の高い菌群のうち、コントロール摂取群と難消化性デキストリン摂取群との占有率の差が最も大きかったものは、属レベルではRomboutsia属菌、種レベルではRomboutsia ilealisであった。
【0036】
次にRomboutsia属菌及びRomboutsia ilealisの占有率を
図1及び
図2に示す。Romboutsia属菌の占有率は、コントロール摂取群では21.4%、難消化性デキストリン摂取群では6.6%であり、難消化性デキストリン摂取群においてコントロール摂取群と比較して有意な減少がみられた(P<0.01、
図1)。また、Romboutsia属菌の一種であるRomboutsia ilealisの占有率についても同様に、有意な減少がみられた(P<0.01、
図2)。先述のとおり、Romboutsia属菌及びRomboutsia ilealisは肥満や糖代謝悪化と関連するとの報告があることから、難消化性デキストリンの摂取がこれらの予防、改善につながることが期待される。
【0037】
なお、本試験において難消化性デキストリンを5質量%含有する試験飲料を摂取させたときに、実際に被験ラットが摂取した難消化性デキストリンの量を算出したところ、4.2g/体重kg/日であった。これを「Reagan-Shaw et al.,The FASEB Journal,22:659-661,2007」に提示されている体表面積に基づく換算式(ヒト用量(mg/体重kg)=ラット摂取量(mg/体重kg)×[ラットKm値(=6)/成人ヒトKm値(=37)])を参照し、ヒト用量に換算すると、0.68g/体重kg/日と考えられる。