(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088892
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】型締装置の型締方法、型締装置、および竪型射出成形機
(51)【国際特許分類】
B22D 17/26 20060101AFI20240626BHJP
B29C 45/06 20060101ALI20240626BHJP
B29C 45/80 20060101ALI20240626BHJP
B22D 17/32 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
B22D17/26 J
B29C45/06
B29C45/80
B22D17/26 H
B22D17/32 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203915
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100097696
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(72)【発明者】
【氏名】川北 聖人
(72)【発明者】
【氏名】森崎 基裕
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AM08
4F206AM09
4F206AP06
4F206AP11
4F206AP20
4F206AR07
4F206AR12
4F206JA07
4F206JC02
4F206JC08
4F206JL02
4F206JM02
4F206JN31
4F206JN36
4F206JP15
4F206JQ81
4F206JQ83
(57)【要約】
【課題】ターンテーブルによって下側金型が切り換えられても、安定的に適切な型締力が得られる型締方法を提供する
【解決手段】竪型射出成形機(1)において、固定盤(9)には複数個の下側金型(18)が設けられたターンテーブル(15)が設けられ、上可動盤(10)に設けられている上側金型(17)に対し、型締対象の下側金型(18)を切り換えられるようになっている。型締方法の準備段階では最小の型厚の下側金型(18)に対して型厚調整を実施する。そして型締方法の運転段階では、クロスヘッド(20)を駆動して型締めするとき、タイバーセンサ(39)によって型締力を検出し、設定型締力より大きければクロスヘッド(20)を後退させ、小さければクロスヘッド(20)を前進させる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定盤と、
前記固定盤の上方に設けられている上可動盤と、
前記固定盤の下方に設けられている下可動盤と、
前記上可動盤と前記下可動盤とを連結している複数本のタイバーと、
前記固定盤と前記下可動盤の間に設けられクロスヘッドを備えているトグル機構と、
前記固定盤の上面に回転自在に設けられているターンテーブルと、を備え、
前記タイバーには型締力を検出するタイバーセンサが設けられ、
前記上可動盤には1個の上側金型が、そして前記ターンテーブルには複数個の下側金型がそれぞれ設けられ、前記ターンテーブルの回転位置に応じて複数個の前記下側金型のいずれかが前記上側金型と整合して型締対象になる型締装置の型締方法であって、
前記型締方法は、準備段階と、運転段階とを備え、
前記準備段階は、前記型締装置を予めタイバー有効長を短くする型厚減に調整し、前記ターンテーブルの回転により複数個の前記下側金型のそれぞれを順次型締対象にして前記上側金型と型閉じし、型閉じ時のクロスヘッド位置である型閉時クロスヘッド位置を記憶するようにし、前記型閉時クロスヘッド位置が最も小さい前記下側金型に適するようにタイバー有効長を調整する型締力調整を実施し、
前記運転段階は、ターンテーブルの回転位置に基づいて決定される型締対象の前記下側金型について前記クロスヘッドを駆動して型締めするとき、前記タイバーセンサによって型締力を検出するようにし、前記型締力が設定型締力より大きければ前記クロスヘッドを後退させ、前記型締力が前記設定型締力より小さければ前記クロスヘッドを前進させ、前記型締力が前記設定型締力に達したとき前記クロスヘッドの駆動を停止する、型締装置の型締方法。
【請求項2】
前記運転段階において、前記型締力が前記設定型締力に達したときのクロスヘッド位置を型締時クロスヘッド位置Xとし、前記型締時クロスヘッド位置Xが規定値の許容型締クロスヘッド位置Yに対して、Y≧X>0の範囲からはずれているとき、型締対象の前記下側金型に対してタイバー有効長を調整する型締力調整を実施する、請求項1に記載の型締装置の型締方法。
【請求項3】
前記運転段階において型締力調整を実施後、規定の成形サイクル数以内において再度型締力調整が必要になったとき、警報メッセージを出力し、もしくは前記型締装置を停止する、請求項2に記載の型締装置の型締方法。
【請求項4】
前記運転段階において、前記型締力が前記設定型締力に達したときのクロスヘッド位置を型締時クロスヘッド位置Xとし、前記型締時クロスヘッド位置Xが規定値の許容型締クロスヘッド位置Yに対して、Y≧X>0の範囲からはずれているとき、警報メッセージを出力し、もしくは前記型締装置を停止する、請求項1に記載の型締装置の型締方法。
【請求項5】
固定盤と、
前記固定盤の上方に設けられている上可動盤と、
前記固定盤の下方に設けられている下可動盤と、
前記上可動盤と前記下可動盤とを連結している複数本のタイバーと、
前記固定盤と前記下可動盤の間に設けられクロスヘッドを備えているトグル機構と、
前記固定盤の上面に回転自在に設けられているターンテーブルと、
制御装置と、を備え、
前記タイバーには型締力を検出するタイバーセンサが設けられ、
前記上可動盤には1個の上側金型が、そして前記ターンテーブルには複数個の下側金型がそれぞれ設けられ、前記ターンテーブルの回転位置に応じて複数個の前記下側金型のいずれかが前記上側金型と整合して型締対象になるようになっており、
前記制御装置は、準備段階と、運転段階の制御を実施するようになっており、
前記準備段階は、前記制御装置が予めタイバー有効長を短くする型厚減に調整し、前記ターンテーブルの回転により複数個の前記下側金型のそれぞれを順次型締対象にして前記上側金型と型閉じし、型閉じ時のクロスヘッド位置である型閉時クロスヘッド位置を記憶するようにし、前記型閉時クロスヘッド位置が最も小さい前記下側金型に適するようにタイバー有効長を調整する型締力調整を実施するようにし、
前記運転段階は、前記制御装置がターンテーブルの回転位置に基づいて決定される型締対象の前記下側金型について前記クロスヘッドを駆動して型締めするとき、前記タイバーセンサによって型締力を検出するようにし、前記型締力が設定型締力より大きければ前記クロスヘッドを後退させ、前記型締力が前記設定型締力より小さければ前記クロスヘッドを前進させ、前記型締力が前記設定型締力に達したとき前記クロスヘッドの駆動を停止するようにする、型締装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記運転段階において前記型締力が前記設定型締力に達したときのクロスヘッド位置を型締時クロスヘッド位置Xとし、前記型締時クロスヘッド位置Xが規定値の許容型締クロスヘッド位置Yに対して、Y≧X>0の範囲からはずれているとき、型締対象の前記下側金型に対してタイバー有効長を調整する型締力調整を実施する、請求項5に記載の型締装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記運転段階において型締力調整を実施後、規定の成形サイクル数以内において再度型締力調整が必要になったとき、警報メッセージを出力し、もしくは前記型締装置を停止する、請求項6に記載の型締装置。
【請求項8】
前記制御装置は、前記型締力が前記設定型締力に達したときのクロスヘッド位置を型締時クロスヘッド位置Xとし、前記型締時クロスヘッド位置Xが規定値の許容型締クロスヘッド位置Yに対して、Y≧X>0の範囲からはずれているとき、警報メッセージを出力し、もしくは前記型締装置を停止する、請求項5に記載の型締装置。
【請求項9】
型締装置と、
射出装置と、
制御装置と、から構成され、
前記型締装置は、固定盤と、
前記固定盤の上方に設けられている上可動盤と、
前記固定盤の下方に設けられている下可動盤と、
前記上可動盤と前記下可動盤とを連結している複数本のタイバーと、
前記固定盤と前記下可動盤の間に設けられクロスヘッドを備えているトグル機構と、
前記固定盤の上面に回転自在に設けられているターンテーブルと、を備え、
前記タイバーには型締力を検出するタイバーセンサが設けられ、
前記上可動盤には1個の上側金型が、そして前記ターンテーブルには複数個の下側金型がそれぞれ設けられ、前記ターンテーブルの回転位置に応じて複数個の前記下側金型のいずれかが前記上側金型と整合して型締対象になるようになっており、
前記制御装置は、準備段階と、運転段階の制御を実施するようになっており、
前記準備段階は、前記制御装置が前記型締装置を予めタイバー有効長を短くする型厚減に調整し、前記ターンテーブルの回転により複数個の前記下側金型のそれぞれを順次型締対象にして前記上側金型と型閉じし、型閉じ時のクロスヘッド位置である型閉時クロスヘッド位置を記憶するようにし、前記型閉時クロスヘッド位置が最も小さい前記下側金型に適するようにタイバー有効長を調整する型締力調整を実施するようにし、
前記運転段階は、前記制御装置がターンテーブルの回転位置に基づいて決定される型締対象の前記下側金型について前記クロスヘッドを駆動して型締めするとき、前記タイバーセンサによって型締力を検出するようにし、前記型締力が設定型締力より大きければ前記クロスヘッドを後退させ、前記型締力が前記設定型締力より小さければ前記クロスヘッドを前進させ、前記型締力が前記設定型締力に達したとき前記クロスヘッドの駆動を停止するようにする、竪型射出成形機。
【請求項10】
前記制御装置は、前記運転段階において前記型締力が前記設定型締力に達したときのクロスヘッド位置を型締時クロスヘッド位置Xとし、前記型締時クロスヘッド位置Xが規定値の許容型締クロスヘッド位置Yに対して、Y≧X>0の範囲からはずれているとき、型締対象の前記下側金型に対してタイバー有効長を調整する型締力調整を実施する、請求項9に記載の竪型射出成形機。
【請求項11】
前記制御装置は、前記運転段階において型締力調整を実施後、規定の成形サイクル数以内において再度型締力調整が必要になったとき、警報メッセージを出力し、もしくは前記型締装置を停止する、請求項10に記載の竪型射出成形機。
【請求項12】
前記制御装置は、前記型締力が前記設定型締力に達したときのクロスヘッド位置を型締時クロスヘッド位置Xとし、前記型締時クロスヘッド位置Xが規定値の許容型締クロスヘッド位置Yに対して、Y≧X>0の範囲からはずれているとき、警報メッセージを出力し、もしくは前記型締装置を停止する、請求項9に記載の竪型射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下側金型を切り換えるターンテーブルを備えると共にトグル機構によって上下に型開閉される竪型の型締装置における型締方法、型締装置および竪型射出成形機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トグル式の竪型射出成形機は、上下方向に型開閉される型締装置と射出装置とを備えている。型締装置は、フレームに固定されている固定盤と、この固定盤の上方に設けられている上可動盤と、下方に設けられている下可動盤とを備えている。上可動盤と下可動盤は複数本のタイバーで連結され、下可動盤と固定盤の間にトグル機構が設けられている。固定盤の上には回転自在なターンテーブルが設けられている。上可動盤には上側金型が、そしてターンテーブルには複数個の下側金型が設けられている。ターンテーブルを回転し、いずれかの下側金型を上側金型と整合させる。トグル機構を駆動すると上側金型と下側金型が型締めされる。射出装置は上可動盤に設けられ、金型に射出材料を射出するようになっている。
【0003】
トグル式の型締装置において適切な型締力を発生させるには、いわゆる型締力調整を実施する必要がある。トグル式の竪型射出成形機は、例えば特許文献1に記載されているように、複数本のタイバーの下端部にタイバーナットが設けられている。これらのタイバーナットは下可動盤に回転自在に収納されるようになっており、タイバーと下可動盤はタイバーナットを介して連結されている。これらのタイバーナットを回転すると、タイバーにおける上可動盤と下可動盤の間の距離、すなわちタイバーの有効長を調整することができる。上側金型と下側金型の型厚に合わせてタイバー有効長を調整する。すなわち型締力調整を実施する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ターンテーブルには複数個の下側金型が設けられており、それぞれの下側金型はターンテーブルの回転位置に応じて、上側金型と整合し、型締めすることができるようになっている。ところで複数個の下側金型は、必ずしもその金型の厚さ、つまり下側型厚が等しいとは限らない。加工精度等により、完全に同じ寸法にすることは難しいからである。そうすると、いずれかの下側金型について型締力調整を実施して、その下側金型について適切な型締力が得られるとしても、寸法が異なる他の下側金型では適切な型締力が得られない、という問題がある。
【0006】
本開示において、ターンテーブルによって下側金型が切り換えられても、安定的に適切な型締力が得られる型締方法、型締装置、および竪型射出成形機を提供する。
【0007】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
型締装置は、固定盤と上可動盤と下可動盤とを備え、上可動盤と下可動盤とが複数本のタイバーに接続され、下可動盤と固定盤の間にトグル機構が設けられている。上可動盤には上側金型が設けられ、固定盤にはターンテーブルが回転自在に載せられ、このターンテーブルに複数個の下側金型が設けられている。ターンテーブルを回転すると、いずれかの下側金型が上側金型と整合する型締対象になる。本開示に係る型締方法は、準備段階と運転段階とから構成する。準備段階では複数個の下側金型のうち、もっとも下側型厚の小さい下側金型に対して初期型締力調整を実施する。運転段階は、ターンテーブルの回転位置に基づいて決定される型締対象の下側金型についてクロスヘッドを駆動して型締めするとき、タイバーセンサによって型締力を検出するようにする。検出される型締力が設定型締力より大きければクロスヘッドを後退させ、型締力が設定型締力より小さければクロスヘッドを前進させ、型締力が設定型締力に達したときクロスヘッドの駆動を停止するようにする。
【発明の効果】
【0009】
本開示は、ターンテーブルによって切り換えられる複数個の下側金型に対して、適切な型締力が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施形態に係る竪型射出成形機の正面図である。
【
図2】第1の実施形態に係る竪型射出成形機の一部を示す側面図である。
【
図3】第1の実施形態に係る型締方法の準備段階を示すフローチャートである。
【
図4】第1の実施形態に係る型締方法の運転段階を示すフローチャートである。
【
図5】第2の実施形態に係る型締方法の運転段階を示すフローチャートである。
【
図6A】第2の実施形態に係る型締方法の運転段階型締力調整を示すフローチャートである。
【
図6B】第2の実施形態に係る型締方法の運転段階型締力調整を示すフローチャートである。
【
図7A】第2の実施形態の変形例に係る型締方法の運転段階型締力調整を示すフローチャートである。
【
図7B】第2の実施形態の変形例に係る型締方法の運転段階型締力調整を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、以下の実施の形態に限定される訳ではない。説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜簡略化されている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。また、図面が煩雑にならないように、ハッチングが省略されている部分がある。
【0012】
[第1の実施形態]
<竪型射出成形機>
第1の実施形態に係る竪型射出成形機1は、
図1に示されているように、型締装置2と、この型締装置2の上部に設けられている射出装置3と、これらを制御する制御装置4と、を備えている。
【0013】
<型締装置>
型締装置2は、ベッド7に固定されている固定盤9と、この固定盤9の上方に設けられている上可動盤10と、ベッド7内に設けられている下可動盤11とを備えている。上可動盤10と下可動盤11は本実施の形態では3本のタイバー12、12、…で連結されている。タイバー12、12、…の下端部と下可動盤11とは型厚調整機構24を介して連結されているが、これについては後で詳しく説明する。型締装置に2において下可動盤11と固定盤9の間にはトグル機構14が設けられ、そして固定盤9の上にはターンテーブル15が設けられている。ターンテーブル15は、
図1において中央の1本のタイバー12を中心に回転するようになっている。ターンテーブル15は、図示されないサーボモータによって駆動されるようになっており、サーボモータのエンコーダによりターンテーブル15の回転位置が検出されるようになっている。
【0014】
上可動盤10には1個の上側金型17が、そしてターンテーブル15には複数個の、この実施形態では2個の下側金型18、18が設けられている。ただし、
図1において2個の下側金型18、18は作図上重なった配置になっているので、1個のみが示されている。一方、
図2の側面図には下側金型18、18が2個示されている。
【0015】
トグル機構14は、クロスヘッド20を備えており、クロスヘッド20は駆動機構21によって駆動されるようになっている。クロスヘッド20を駆動すると、トグル機構14が屈伸する。トグル機構14が屈伸すると、上側金型17と、この上側金型17に整合している1個の下側金型18すなわち型締対象になっている下側金型18とが型開閉される。
【0016】
<型厚調整機構>
型厚調整機構24について説明する。複数本のタイバー12、12、…には、
図1に示されているように、それぞれ下端部近傍に所定長さに渡って雄ネジが形成されている。このような雄ネジに、タイバーナット25、…が設けられている。下可動盤11には、タイバー12、12、…が挿入され貫通する貫通孔26、…が開けられており、貫通孔26の一部は拡径されたタイバーナット収納穴28、…になっている。タイバーナット25、…は、それぞれタイバーナット収納穴28、…に入れられている。このようにして、タイバー12、12、…と下可動盤11とが、タイバーナット25、…を介して連結されている。
【0017】
タイバーナット25、…にはスプロケット29、…が固着されている。
図1に示されていないが、全てのスプロケット29、…に対して共通の1本のチェーンが掛け回され、図示されない駆動機構によって同期して回転されるようになっている。つまり、複数個のタイバーナット25、…は同期して回転されるようになっている。型厚調整機構24は、これらタイバーナット25、…、スプロケット29、…等から構成されている。駆動機構により同期してタイバーナット25、…を回転すると、タイバー12、12、…における上可動盤10と下可動盤11の間の距離、すなわちタイバー12、12、…の有効長が変化する。これによって型締力調整を実施するようになっている。
【0018】
<射出装置>
射出装置3は、型締装置2の上可動盤10の上に設けられている。射出装置3は、加熱シリンダ31と、加熱シリンダ31内に設けられているスクリュ32と、スクリュ32を駆動するスクリュ駆動機構33と、射出装置3全体を昇降する昇降装置35と、を備えている。射出装置3は、スクリュ32を回転して射出材料を溶融し、スクリュ32を軸方向に駆動して射出材料を射出するようになっている。
【0019】
<制御装置>
制御装置4は、竪型射出成形機1を制御するようになっている。後で説明する第1の実施形態に係る型締方法を制御する。
【0020】
<タイバーセンサ>
第1の実施形態に係る竪型射出成形機1には、
図1、
図2に示されているように、3本のタイバー12、12、…のそれぞれに歪みセンサつまりタイバーセンサ39、39、…が設けられている。型締時にタイバー12、12、…は伸張するが、この伸張を検出するようになっている。これらによってタイバー12、12、…の張力が計算され、張力の合計値として型締力が得られるようになっている。
【0021】
<型締方法>
第1の実施形態に係る型締方法について説明する。第1の実施形態に係る竪型射出成形機1は、ターンテーブル15に2個の下側金型18、18が設けられ、ターンテーブル15を回転することによって上側金型17と型締めされる下側金型18、つまり型締対象の下側金型18を切り換えるようになっている。下側金型18、18はその厚さつまり下側型厚が必ずしも同一ではない。つまり若干異なっている。そうすると型締時に発生する型締力が相違することになる。第1の実施形態に係る型締方法は、下側型厚が異なっていても同じ型締力を発生させることができるように構成されている。これを実現するために、第1の実施形態に係る型締方法は、運転の開始前に実施する準備段階と、実際に成形サイクルを実施する運転段階とから構成されている。以下説明する。
【0022】
<準備段階>
第1の実施形態に係る準備作業について、
図3によって説明する。制御装置4(
図1参照)は、最初にステップS01として型厚減を実行する。型厚調整機構を駆動して、つまりタイバーナット25、…を回転してタイバー12、12、…の有効長を調整する。そして上側金型17と下側金型18、18、…の金型厚さである型厚の公称値よりわずかに小さくなるように調整する。次いで制御装置4はステップS02によりクロスヘッド20を駆動して、上側金型17と現在の型締対象の下側金型18とがタッチする型閉じを実施し、そのときのクロスヘッド位置つまり型閉時クロスヘッド位置を得る。制御装置4は、現在の型締対象の下側金型18と関連するターンテーブル15の回転位置を記憶すると共に型閉時クロスヘッド位置を記憶する。制御装置4は型締装置2を型開きする。
【0023】
制御装置4はステップS03を実行する。つまり、ターンテーブル15に設けられている全ての下側金型18、18について型閉時クロスヘッド位置を測定・記憶したか否かを判定する。第1の実施形態において下側金型18、18は2個であるので、2個の下側金型18、18の測定・記憶が完了したか否かを判定することになる。ここではまだ1個の下側金型18についてのみ測定・記憶しただけであるので、NOに進む。つまりステップS04を実行する。ステップS04ではターンテーブル15を回転し、型締対象の下側金型18を変更する。次いで、制御装置4はステップS02に戻り、ステップS02を実行する。すなわち現在の型締対象の下側金型18について型閉時クロスヘッド位置を測定し、ターンテーブル15の回転位置と共に記憶する。
【0024】
ステップS03において、全ての下側金型18、18について型閉時クロスヘッド位置の測定・記憶が完了したと判断したら(YES)、ステップS05に移行する。制御装置4は記憶された全ての下側金型18、18の中から最小の型閉時クロスヘッド位置を決定する。決定したらステップS06に移行する。ステップS06において、制御装置4は現在の型締対象の下側金型18が、最小の型閉時クロスヘッド位置に関連する下側金型18であるか否かを判断する。もし最小の型閉時クロスヘッド位置の下側金型18が型締対象になっていれば(YES)、ステップS08に移行する。一方、異なっている場合には(NO)、ステップS07に移行する。ステップS07では、制御装置4はターンテーブル15を回転し、最小の型閉時クロスヘッド位置の下側金型18が型締対象になるようにする。すなわち、記憶されている回転位置にターンテーブル15を回転する。ステップS08に移行する。
【0025】
制御装置4は型締装置2が型開状態のときステップS08を実行する。型厚調整機構を駆動してタイバーナット25、…を型厚増方向に回転する。つまり、タイバー12、12、…の有効長を延長させるように調整する。次いでステップS09を実行する。トグル機構14は、上側金型17と下側金型18とがタッチする型閉時クロスヘッド位置が、適切なクロスヘッド位置つまり適正型閉時クロスヘッド位置になっているとき、クロスヘッド位置を0.0にすると所望の型締力が得られるようになっている。ステップS09において制御装置4はクロスヘッド20を駆動して適正型閉時クロスヘッド位置にする。このとき型締装置2は型開状態になっているので、クロスヘッド20を適正型閉時クロスヘッド位置にしても上側金型17と下側金型18は型閉じされない。
【0026】
制御装置4はステップS10を実施する。すなわち、型厚調整機構を駆動してタイバーナット25、…を型厚減方向に回転する。つまり、タイバー12、12、…の有効長を短縮させるように調整する。上側金型17と下側金型18とがタッチしたら型厚調整機構を停止する。すなわち、型締装置2は、クロスヘッド20が適正型閉時クロスヘッド位置になっているときに、上側金型17と下側金型18とが型閉じされたことになる。型締力調整を完了する。
【0027】
<運転段階>
運転段階について説明する。運転段階は連続的に成形サイクルを実施して成形品を成形する段階である。制御装置4は、
図4に示されているようにステップS21として型閉工程を実施する。すなわち型締装置2(
図1参照)においてクロスヘッド20を駆動して上側金型17と、現在型締対象になっている下側金型18とを型閉じする。引き続き制御装置4はステップS22として型締工程を開始する。すなわちクロスヘッド20を駆動する。型締工程を開始したら制御装置4はステップS23によりクロスヘッド位置をチェックする。クロスヘッド位置が0.0mm以下になっていなければ(NO)、ステップS24に移行する。
【0028】
ステップS24では、タイバーセンサ39、39、…によって検出される型締力つまり検出・型締力Mと、予め制御装置4に設定されている設定型締力Sとを比較する。検出・型締力Mが設定型締力Sに達していなければ(M<S)、ステップS25に移行する。すなわちクロスヘッド20を前進させる。次いでステップS23に戻る。一方、ステップS24において検出・型締力Mが設定型締力Sより大きければ(M>S)、ステップS26に移行してクロスヘッド20を後退させる。次いでステップS23に戻る。ステップS24において検出・型締力Mと設定型締力Sとが等しくなったら、あるいは所定の誤差範囲になったら実質的に等しい(M=S)と判断し、ステップS27に移行する。制御装置4は、このときのクロスヘッド位置を型締時クロスヘッド位置Xとして扱う。
【0029】
以上から理解されるように、ステップS23~S27は検出・型締力Mに基づいて設定型締力Sになるようにクロスヘッド20を操作するフィードバック制御をしていることになる。なお、このようなフィードバック制御においてステップS23においてクロスヘッド位置が0.0mm以下になったと判断したら(YES)、制御装置4はフィードバック制御を中止する。そして現在のクロスヘッド位置を型締時クロスヘッド位置Xとし、ステップS27に移行する。
【0030】
制御装置4はステップS27を実行する。すなわち型締時クロスヘッド位置を記憶する。次いで制御装置4はステップS28を実行して、残りの成形サイクルを実施する。つまり射出工程・冷却工程・計量工程、型開工程等を実施して成形品を得る。
【0031】
成形サイクルの一連の工程が完了したら制御装置4はステップS29を実行する。ステップS29では、型締時クロスヘッド位置Xが適正な範囲に入っているか否かを判断することになる。制御装置4には予め許容型締クロスヘッド位置Yが設定されている。設定型締力Sを発生させたときの型締時クロスヘッド位置Xが、この許容型締クロスヘッド位置Yより大きければ、トグル機構14(
図1参照)が適切な伸長状態で型締力を発生させていない、と判定することになる。また型締時クロスヘッド位置Xが0.0mm以下になっているとき、これ以上クロスヘッド20と駆動できないので、型締工程における型締力が設定型締力Sに達していなかったと言える。これらをステップS29で判断する。
【0032】
ステップS29において、型締時クロスヘッド位置Xが許容型締クロスヘッド位置Y以下であり、かつ0より大きいと判断すると(Y≧X>0)、制御装置4はステップS32に移行する。すなわち型締時クロスヘッド位置Xは適切な範囲にあったと判断する。ターンテーブル15を回転して型締対象の下側金型18、18、…を切り換える。次いでステップS21に戻って次の成形サイクルを開始する。
【0033】
一方、ステップS29において、型締時クロスヘッド位置Xが許容型締クロスヘッド位置Yより大きいと判断したとき(X>Y)、制御装置4はステップS30に移行する。あるいは、型締時クロスヘッド位置Xが0.0mm以下であると判断したとき(X≦0)、制御装置4はステップS31に移行する。ステップS30も、ステップS31も、型締時クロスヘッド位置Xが適正な範囲に入っていないときに処理するステップであり、制御装置4は竪型射出成形機1の運転を停止する。あるいは、型締力調整をし直すように警報を出力する。もしくは、竪型射出成形機1の運転の停止をすると共に警報を出力する。
【0034】
[第2の実施形態]
第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、型締方法についてのみ第1の実施形態と相違しており、第2の実施形態に係る型締方法も、第1の実施形態に係る竪型射出成形機1(
図1、
図2参照)によって実施するようになっている。したがって、竪型射出成形機1の説明を省略する。
【0035】
<型締方法>
第2の実施形態に係る型締方法も、第1の実施形態に係る型締方法と同様に、準備段階と運転段階とから構成されている。第2の実施形態に係る型締方法における準備段階は、
図3で説明した第1の実施形態に係る型締方法の準備段階と同様に実施するようになっている。したがって、第2の実施形態に係る型締方法の準備段階の説明を省略する。
【0036】
<運転段階>
第2の実施形態に係る型締方法の運転段階は、
図5に示されているように実施される。
図5から理解されるように、ステップS21~S28については第1の実施形態に係る型締方法の運転段階(
図4参照)と同様になっている。したがって、ステップS21~S28についての説明を省略し、ステップS29から説明する。第2の実施形態において、制御装置4はステップS29によって型締時クロスヘッド位置Xが適正な範囲に入っているか否かを判断する。
【0037】
ステップS29で、型締時クロスヘッド位置Xが許容型締クロスヘッド位置Y以下であり、かつ0より大きいと判断すると(Y≧X>0)、制御装置4はステップS32に移行する。すなわち型締時クロスヘッド位置Xは適切な範囲にあったと判断する。ターンテーブル15を回転して型締対象の下側金型18、18、…を切り換える。次いでステップS21に戻って次の成形サイクルを開始する。
【0038】
一方、ステップS29において、型締時クロスヘッド位置Xが許容型締クロスヘッド位置Yより大きいとき(X>Y)、制御装置4はステップS35に移行する。ステップS35は型厚増の型締力調整を実施する処理であり、
図6Aに示されている。制御装置4はステップS41によりタイバーナット25、…(
図1参照)を回転して現在型締対象の下側金型18(
図1、
図2参照)より型厚を増やすようにタイバー有効長を大きくする。このとき型締装置2は型開状態になっている。次いで制御装置4はステップS42を実行し、クロスヘッド20を駆動して適正型閉時クロスヘッド位置にする。制御装置4はステップS43を実行する。つまり型厚調整機構24を駆動してタイバーナット25を回転し、型厚減させる。上側金型17と下側金型18がタッチしたら型締力調整を完了する。
図5に示されているように、すでに処理内容について説明したステップS32に移行する。
【0039】
ステップS29において、型締時クロスヘッド位置Xが0.0mm以下であると判断(X≦0)したら制御装置4はステップS36に移行する。ステップS36は型厚減の型締力調整を実施する処理であり、
図6Bに示されている。制御装置4はステップS45によりクロスヘッド20を駆動して適正型閉時クロスヘッド位置にする。次いでステップS46を実行する。つまり型厚調整機構24を駆動してタイバーナット25を回転し、型厚減させる。上側金型17と下側金型18がタッチしたら型締力調整を完了する。
図5に示されているように、すでに処理内容について説明したステップS32に移行する。
【0040】
[第2の実施形態の変形例]
第2の実施形態に係る型締方法は変形することができる。第2の実施形態の変形例に係る型締方法を説明する。なお、この型締方法を実施するのは、
図1、
図2に示されている第1の実施形態に係る竪型射出成形機1であるので、竪型射出成形機1に関する説明は省略する。また第2の実施形態の変形例に係る型締方法は、
図5によって説明した第2の実施形態に係る型締方法において、一部だけ、つまりステップS35とステップS36のみ相違しており、他の処理は全て同じになっている。したがって、相違しているステップS36とステップS36についてのみ説明する。
【0041】
第2の実施形態の変形例に係る型締方法において、
図5に示されているステップS35を実施する場合について説明する。このステップS35は、すでに説明したようにステップS29によって、型締時クロスヘッド位置Xが許容型締クロスヘッド位置Yより大きいと判断され、型締力調整が必要になったときに実施される。
【0042】
第2の実施形態の変形例において、ステップS35は、
図7Aに示されている処理を実行する。まず、制御装置4はステップS51を実施する。制御装置4は、予め制御装置4内に設定されている規定成形サイクル数を判断の基準として、前回に実施した型締力調整の成形サイクルから今回必要になった型締力調整までの成形サイクル数がこの基準を超えているか否かを判断する。もし、再度の型締力調整が必要になったのが規定成形サイクル数以内でなければ(NO)、ステップS41に移行する。つまり、型締力調整の頻度は正常な範囲であると判断した場合である。ステップS41~ステップS43については、
図6Aによって説明した第2の実施形態に係る型締方法と同様であるので説明を省略する。
【0043】
一方、ステップS51において、規定成形サイクル数以内に再度の型締力調整が必要になったのと判断したら(YES)、ステップS52に移行する。これは型締力調整の頻度が高いときの処理になっている。制御装置4は、ステップS52によって竪型射出成形機1の運転を停止する。あるいは、型締力調整の頻度が高い旨警報を出力する。もしくは、竪型射出成形機1の運転の停止をすると共に警報を出力する。
【0044】
次に、第2の実施形態の変形例に係る型締方法において、
図5に示されているステップS36を実施する場合について説明する。このステップS36は、すでに説明したようにステップS29によって、型締時クロスヘッド位置Xが0.0mm以下であると判断され、型締力調整が必要になったときに実施される。
【0045】
第2の実施形態の変形例において、ステップS36は、
図7Bに示されている処理を実行する。まず、制御装置4はステップS53を実施する。制御装置4は、前回に実施した型締力調整の成形サイクルから今回必要になった型締力調整までの成形サイクル数が規定成形サイクル数を超えているか否かを判断する。もし、再度の型締力調整が必要になったのが規定成形サイクル数以内でなければ(NO)、ステップS45に移行する。つまり、型締力調整の頻度は正常な範囲であると判断した場合である。ステップS45、ステップS46については、
図6Bによって説明した第2の実施形態に係る型締方法と同様であるので説明を省略する。
【0046】
一方、ステップS53において、規定成形サイクル数以内に再度の型締力調整が必要になったのと判断したら(YES)、ステップS54に移行する。これは型締力調整の頻度が高いときの処理になっている。制御装置4は、ステップS54によって竪型射出成形機1の運転を停止する。あるいは、型締力調整の頻度が高い旨警報を出力する。もしくは、竪型射出成形機1の運転の停止をすると共に警報を出力する。
【0047】
<他の変形例>
第1、第2の実施形態はさらに色々な変形が可能である。例えば、これらの実施形態において下側金型18、18は2個であるように説明したが、下側金型18、18は3個以上であってもよい。また、タイバーセンサ39は、3本のタイバー12、12、…に設けられているように説明したが、1本のタイバー12のみに設けられていてもよい。
【0048】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。以上で説明した複数の例は、適宜組み合わせて実施されることもできる。
【符号の説明】
【0049】
1 竪型射出成形機 2 型締装置
3 射出装置 4 制御装置
7 ベッド 9 固定盤
10 上可動盤 11 下可動盤
12 タイバー 14 トグル機構
15 ターンテーブル 17 上側金型
18 下側金型 20 クロスヘッド
21 駆動機構 24 型厚調整機構
25 タイバーナット 26 貫通孔
28 タイバーナット収納穴 29 スプロケット
31 加熱シリンダ 32 スクリュ
33 スクリュ駆動機構 35 昇降装置
39 タイバーセンサ