(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088898
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】型締装置の型締方法、型締装置、および竪型射出成形機
(51)【国際特許分類】
B22D 17/26 20060101AFI20240626BHJP
B29C 45/06 20060101ALI20240626BHJP
B29C 45/80 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
B22D17/26 J
B29C45/06
B29C45/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203933
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100097696
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(72)【発明者】
【氏名】森崎 基裕
(72)【発明者】
【氏名】川北 聖人
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AM08
4F206AP06
4F206AR02
4F206AR07
4F206JA07
4F206JC02
4F206JC08
4F206JL02
4F206JM02
4F206JN31
4F206JQ81
4F206JQ83
4F206JT33
(57)【要約】
【課題】ターンテーブルによって下側金型が切り換えられても、適切な型締力が得られる型締方法を提供する
【解決手段】竪型射出成形機(1)において、固定盤(9)には複数個の下側金型(18)が設けられたターンテーブル(15)が設けられ、上可動盤(10)に設けられている上側金型(17)に対し、型締対象の下側金型(18)を切り換えられるようになっている。型締方法の準備段階では複数の下側金型(18)に対して、型閉時のクロスヘッド位置である型閉クロスヘッド位置を得、記憶する。次いで最小の型厚の下側金型(18)に対して型締力調整を実施する。型締方法の運転段階では、型締対象の下側金型(18)の型閉クロスヘッド位置に応じて型締時クロスヘッド位置を決定し、クロスヘッド(20)を駆動して型締めする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定盤と、
前記固定盤の上方に設けられている上可動盤と、
前記固定盤の下方に設けられている下可動盤と、
前記上可動盤と前記下可動盤とを連結している複数本のタイバーと、
前記固定盤と前記下可動盤の間に設けられクロスヘッドを備えているトグル機構と、
前記固定盤の上面に回転自在に設けられているターンテーブルと、を備え、
前記上可動盤には1個の上側金型が、そして前記ターンテーブルには複数個の下側金型がそれぞれ設けられ、前記ターンテーブルの回転位置に応じて複数個の前記下側金型のいずれかが前記上側金型と整合して型締対象になる型締装置の型締方法であって、
前記型締方法は、準備段階と、運転段階とを備え、
前記準備段階は、型閉時クロスヘッド位置取得工程と、型締力調整工程と、を備え、
前記型閉時クロスヘッド位置取得工程は、前記型締装置において予めタイバー有効長を短くして型厚減に調整しておき、前記ターンテーブルの回転により複数個の前記下側金型のそれぞれを順次型締対象にして前記上側金型と型閉じし、型閉じ時のクロスヘッド位置を得、前記下側金型毎に型閉時クロスヘッド位置として記憶するようにし、
前記型締力調整工程は、前記型閉時クロスヘッド位置が最も小さい前記下側金型に適するようにタイバー有効長を調整する型締力調整を実施するようにし、
前記運転段階は、前記ターンテーブルの回転位置に基づいて決定される型締対象の前記下側金型について前記クロスヘッドを駆動して型締めするとき、前記下側金型に対して記憶されている前記型閉時クロスヘッド位置に基づいて型締め時のクロスヘッド位置である型締時クロスヘッド位置を決定するようにする、型締装置の型締方法。
【請求項2】
前記準備段階は、前記型締力調整工程後に実施する型閉時クロスヘッド位置再取得工程を備え、
前記型閉時クロスヘッド位置再取得工程は、前記ターンテーブルの回転により複数個の前記下側金型のそれぞれを順次型締対象にして前記上側金型と型閉じし、型閉じ時のクロスヘッド位置を得、前記下側金型毎の前記型閉時クロスヘッド位置を更新するようにする、請求項1に記載の型締装置の型締方法。
【請求項3】
複数個の前記下側金型のうち前記型閉時クロスヘッド位置が最小の前記下側金型を基準下側金型とすると共に最小の前記型閉時クロスヘッド位置を基準型閉時クロスヘッド位置とするようにし、
前記運転段階は、型締対象になっている前記下側金型の前記型閉時クロスヘッド位置から前記基準型閉時クロスヘッド位置を減じた値を前記型締時クロスヘッド位置として決定する、請求項1または2に記載の型締装置の型締方法。
【請求項4】
前記型閉時クロスヘッド位置は、前記クロスヘッドを駆動する型開閉用サーボモータのトルクを基準トルク以下にして前記クロスヘッドを型閉じ方向に駆動して、前記クロスヘッドが停止したときのクロスヘッド位置として決定する、請求項1または2に記載の型締装置の型締方法。
【請求項5】
前記ターンテーブルの回転位置は、前記ターンテーブルを駆動するターンテーブル用サーボモータのエンコーダによって得るようにする、請求項1または2に記載の型締装置の型締方法。
【請求項6】
固定盤と、
前記固定盤の上方に設けられている上可動盤と、
前記固定盤の下方に設けられている下可動盤と、
前記上可動盤と前記下可動盤とを連結している複数本のタイバーと、
前記固定盤と前記下可動盤の間に設けられクロスヘッドを備えているトグル機構と、
前記固定盤の上面に回転自在に設けられているターンテーブルと、
制御装置と、を備え、
前記上可動盤には1個の上側金型が、そして前記ターンテーブルには複数個の下側金型がそれぞれ設けられ、前記ターンテーブルの回転位置に応じて複数個の前記下側金型のいずれかが前記上側金型と整合して型締対象になるようになっており、
前記制御装置は、準備段階と、運転段階の制御を実施するようになっており、
前記準備段階は、予めタイバー有効長を短くする型厚減に調整し、
前記ターンテーブルの回転により複数個の前記下側金型のそれぞれを順次型締対象にして前記上側金型と型閉じして型閉じ時のクロスヘッド位置を得、前記下側金型毎に型閉時クロスヘッド位置として記憶するようにし、前記型閉時クロスヘッド位置が最も小さい前記下側金型に適するようにタイバー有効長を調整する型締力調整を実施し、
前記運転段階は、前記ターンテーブルの回転位置に基づいて決定される型締対象の前記下側金型について前記クロスヘッドを駆動して型締めするとき、前記下側金型に対して記憶されている前記型閉時クロスヘッド位置に基づいて型締め時のクロスヘッド位置である型締時クロスヘッド位置を決定するようにする、型締装置。
【請求項7】
前記準備段階は、前記型締力調整後に、前記ターンテーブルの回転により複数個の前記下側金型のそれぞれを順次型締対象にして前記上側金型と型閉じして型閉じ時のクロスヘッド位置を得、前記下側金型毎の前記型閉時クロスヘッド位置を更新するようにする、請求項6に記載の型締装置。
【請求項8】
複数個の前記下側金型のうち前記型閉時クロスヘッド位置が最小の前記下側金型を基準下側金型とすると共に最小の前記型閉時クロスヘッド位置を基準型閉時クロスヘッド位置とするようにし、
前記運転段階は、型締対象になっている前記下側金型の前記型閉時クロスヘッド位置から前記基準型閉時クロスヘッド位置を減じた値を前記型締時クロスヘッド位置として決定する、請求項6または7に記載の型締装置。
【請求項9】
前記型閉時クロスヘッド位置は、前記クロスヘッドを駆動する型開閉用サーボモータのトルクを基準トルク以下にして前記クロスヘッドを型閉じ方向に駆動して、前記クロスヘッドが停止したときのクロスヘッド位置として決定する、請求項6または7に記載の型締装置。
【請求項10】
前記ターンテーブルの回転位置は、前記ターンテーブルを駆動するターンテーブル用サーボモータのエンコーダによって得るようにする、請求項6または7に記載の型締装置。
【請求項11】
型締装置と、
射出装置と、
制御装置と、から構成され、
前記型締装置は、固定盤と、
前記固定盤の上方に設けられている上可動盤と、
前記固定盤の下方に設けられている下可動盤と、
前記上可動盤と前記下可動盤とを連結している複数本のタイバーと、
前記固定盤と前記下可動盤の間に設けられクロスヘッドを備えているトグル機構と、
前記固定盤の上面に回転自在に設けられているターンテーブルと、を備え、
前記上可動盤には1個の上側金型が、そして前記ターンテーブルには複数個の下側金型がそれぞれ設けられ、前記ターンテーブルの回転位置に応じて複数個の前記下側金型のいずれかが前記上側金型と整合して型締対象になるようになっており、
前記制御装置は、準備段階と、運転段階の制御を実施するようになっており、
前記準備段階は、前記型締装置において予めタイバー有効長を短くする型厚減に調整し、
前記ターンテーブルの回転により複数個の前記下側金型のそれぞれを順次型締対象にして前記上側金型と型閉じして型閉じ時のクロスヘッド位置を得、前記下側金型毎に型閉時クロスヘッド位置として記憶するようにし、前記型閉時クロスヘッド位置が最も小さい前記下側金型に適するようにタイバー有効長を調整する型締力調整を実施し、
前記運転段階は、前記ターンテーブルの回転位置に基づいて決定される型締対象の前記下側金型について前記クロスヘッドを駆動して型締めするとき、前記下側金型に対して記憶されている前記型閉時クロスヘッド位置に基づいて型締め時のクロスヘッド位置である型締時クロスヘッド位置を決定するようにする、竪型射出成形機。
【請求項12】
前記準備段階は、前記型締力調整後に、前記ターンテーブルの回転により複数個の前記下側金型のそれぞれを順次型締対象にして前記上側金型と型閉じして型閉じ時のクロスヘッド位置を得、前記下側金型毎の前記型閉時クロスヘッド位置を更新するようにする、請求項11に記載の竪型射出成形機。
【請求項13】
複数個の前記下側金型のうち前記型閉時クロスヘッド位置が最小の前記下側金型を基準下側金型とすると共に最小の前記型閉時クロスヘッド位置を基準型閉時クロスヘッド位置とするようにし、
前記運転段階は、型締対象になっている前記下側金型の前記型閉時クロスヘッド位置から前記基準型閉時クロスヘッド位置を減じた値を前記型締時クロスヘッド位置として決定する、請求項11または12に記載の竪型射出成形機。
【請求項14】
前記型閉時クロスヘッド位置は、前記クロスヘッドを駆動する型開閉用サーボモータのトルクを基準トルク以下にして前記クロスヘッドを型閉じ方向に駆動して、前記クロスヘッドが停止したときのクロスヘッド位置として決定する、請求項11または12に記載の竪型射出成形機。
【請求項15】
前記ターンテーブルの回転位置は、前記ターンテーブルを駆動するターンテーブル用サーボモータのエンコーダによって得るようにする、請求項11または12に記載の竪型射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下側金型を切り換えるターンテーブルを備えると共にトグル機構によって上下に型開閉される竪型の型締装置における型締方法、型締装置および竪型射出成形機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トグル式の竪型射出成形機は、上下方向に型開閉される型締装置と射出装置とを備えている。型締装置は、フレームに固定されている固定盤と、この固定盤の上方に設けられている上可動盤と、下方に設けられている下可動盤とを備えている。上可動盤と下可動盤は複数本のタイバーで連結され、下可動盤と固定盤の間にトグル機構が設けられている。固定盤の上には回転自在なターンテーブルが設けられている。上可動盤には上側金型が、そしてターンテーブルには複数個の下側金型が設けられている。ターンテーブルを回転し、いずれかの下側金型を上側金型と整合させる。トグル機構を駆動すると上側金型と下側金型が型締めされる。射出装置は上可動盤に設けられ、金型に射出材料を射出するようになっている。
【0003】
トグル式の型締装置において適切な型締力を発生させるには、いわゆる型締力調整を実施する必要がある。トグル式の竪型射出成形機は、例えば特許文献1に記載されているように、複数本のタイバーの下端部にタイバーナットが設けられている。これらのタイバーナットは下可動盤に回転自在に収納されるようになっており、タイバーと下可動盤はタイバーナットを介して連結されている。これらのタイバーナットを回転すると、タイバーにおける上可動盤と下可動盤の間の距離、すなわちタイバーの有効長を調整することができる。上側金型と下側金型の型厚に合わせてタイバー有効長を調整する。すなわち型締力調整を実施する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ターンテーブルには複数個の下側金型が設けられており、それぞれの下側金型はターンテーブルの回転位置に応じて、上側金型と整合し、型締めすることができるようになっている。ところで複数個の下側金型は、必ずしもその金型の厚さ、つまり下側型厚が等しいとは限らない。加工精度等により、完全に同じ寸法にすることは難しいからである。そうすると、いずれかの下側金型について型締力調整を実施して、その下側金型について適切な型締力が得られるとしても、寸法が異なる他の下側金型では適切な型締力が得られない、という問題がある。
【0006】
本開示において、ターンテーブルによって下側金型が切り換えられても、適切な型締力が得られる型締方法、型締装置、および竪型射出成形機を提供する。
【0007】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
型締装置は、固定盤と上可動盤と下可動盤とを備え、上可動盤と下可動盤とが複数本のタイバーに接続され、下可動盤と固定盤の間にトグル機構が設けられている。上可動盤には上側金型が設けられ、固定盤にはターンテーブルが回転自在に載せられ、このターンテーブルに複数個の下側金型が設けられている。ターンテーブルを回転すると、いずれかの下側金型が上側金型と整合する型締対象になる。本開示に係る型締方法は、準備段階と運転段階とから構成する。準備段階では複数個の下側金型について、型閉じして上側金型とタッチするクロスヘッド位置を型閉時クロスヘッド位置として記憶する。そして最も型厚が小さい下側金型すなわち型閉時クロスヘッド位置が最も小さい下側金型に対して型締力調整を実施する。運転段階は、ターンテーブルの回転位置に基づいて決定される型締対象の下側金型について型閉時クロスヘッド位置に基づいて型締時クロスヘッド位置を決定する。型締は、決定した型締時クロスヘッド位置になるようにクロスヘッドを駆動する。
【発明の効果】
【0009】
本開示は、ターンテーブルによって切り換えられる複数個の下側金型に対して、適切な型締力が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施の形態に係る竪型射出成形機の正面図である。
【
図2】本実施の形態に係る竪型射出成形機の一部を示す側面図である。
【
図3A】本実施の形態に係る型締方法の準備段階を示すフローチャートである。
【
図3B】本実施の形態に係る型締方法の準備段階の型閉時クロスヘッド位置取得工程を示すフローチャートである。
【
図3C】本実施の形態に係る型締方法の準備段階の型締力調整工程を示すフローチャートである。
【
図4】本実施の形態に係る型締方法の運転段階を示すフローチャートである。
【
図5A】本実施形態の変形例に係る型締方法の準備段階を示すフローチャートである。
【
図5B】本実施形態の変形例に係る型締方法の準備段階の型閉時クロスヘッド位置再取得工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、以下の実施の形態に限定される訳ではない。説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜簡略化されている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。また、図面が煩雑にならないように、ハッチングが省略されている部分がある。
【0012】
[本実施の形態]
<竪型射出成形機>
本実施の形態に係る竪型射出成形機1は、
図1に示されているように、型締装置2と、この型締装置2の上部に設けられている射出装置3と、これらを制御する制御装置4と、を備えている。
【0013】
<型締装置>
型締装置2は、ベッド7に固定されている固定盤9と、この固定盤9の上方に設けられている上可動盤10と、ベッド7内に設けられている下可動盤11とを備えている。上可動盤10と下可動盤11は本実施の形態では3本のタイバー12、12、…で連結されている。タイバー12、12、…の下端部と下可動盤11とは型厚調整機構24を介して連結されているが、これについては後で詳しく説明する。型締装置に2において下可動盤11と固定盤9の間にはトグル機構14が設けられている。
【0014】
型締装置2において固定盤9の上にターンテーブル15が設けられている。ターンテーブル15は、
図1において示されている中央の1本のタイバー12を中心に回転するようになっている。
図2に示されているように、ターンテーブル15はターンテーブル用サーボモータ16によって駆動されるようになっている。ターンテーブル用サーボモータ16はエンコーダを備えており、ターンテーブル15の回転位置を検出するようになっている。
【0015】
上可動盤10には1個の上側金型17が、そしてターンテーブル15には複数個の、この実施形態では2個の下側金型18、18が設けられている。ただし、
図1において2個の下側金型18、18は作図上重なった配置になっているので、1個のみが示されている。一方、
図2の側面図には下側金型18、18が2個示されている。
【0016】
トグル機構14は、クロスヘッド20を備えており、クロスヘッド20は駆動機構21によって駆動されるようになっている。駆動機構21は型開閉用サーボモータ22を備えており、所望のトルクで駆動できるようになっている。型開閉用サーボモータ22を回転してクロスヘッド20を駆動すると、トグル機構14が屈伸する。トグル機構14が屈伸すると、上側金型17と、この上側金型17に整合している1個の下側金型18すなわち型締対象になっている下側金型18とが型開閉される。
【0017】
<型厚調整機構>
型厚調整機構24について説明する。複数本のタイバー12、12、…には、
図1に示されているように、それぞれ下端部近傍に所定長さに渡って雄ネジが形成されている。このような雄ネジに、タイバーナット25、…が設けられている。下可動盤11には、タイバー12、12、…が挿入され貫通する貫通孔26、…が開けられており、貫通孔26の一部は拡径されたタイバーナット収納穴28、…になっている。タイバーナット25、…は、それぞれタイバーナット収納穴28、…に入れられている。このようにして、タイバー12、12、…と下可動盤11とが、タイバーナット25、…を介して連結されている。
【0018】
タイバーナット25、…にはスプロケット29、…が固着されている。
図1に示されていないが、全てのスプロケット29、…に対して共通の1本のチェーンが掛け回され、図示されない駆動機構によって同期して回転されるようになっている。つまり、複数個のタイバーナット25、…は同期して回転されるようになっている。型厚調整機構24は、これらタイバーナット25、…、スプロケット29、…等から構成されている。駆動機構により同期してタイバーナット25、…を回転すると、タイバー12、12、…における上可動盤10と下可動盤11の間の距離、すなわちタイバー12、12、…の有効長が変化する。これによって型締力調整を実施するようになっている。
【0019】
<射出装置>
射出装置3は、型締装置2の上可動盤10の上に設けられている。射出装置3は、加熱シリンダ31と、加熱シリンダ31内に設けられているスクリュ32と、スクリュ32を駆動するスクリュ駆動機構33と、射出装置3全体を昇降する昇降装置35と、を備えている。射出装置3は、スクリュ32を回転して射出材料を溶融し、スクリュ32を軸方向に駆動して射出材料を射出するようになっている。
【0020】
<制御装置>
制御装置4は、竪型射出成形機1を制御するようになっている。次に説明する本実施の形態に係る型締方法を制御する。
【0021】
<型締方法>
本実施の形態に係る型締方法について説明する。本実施の形態に係る竪型射出成形機1は、ターンテーブル15に2個の下側金型18、18が設けられ、ターンテーブル15を回転することによって上側金型17と型締めされる下側金型18、つまり型締対象の下側金型18を切り換えるようになっている。下側金型18、18はその厚さつまり下側型厚が必ずしも同一ではない。つまり若干異なっている。そうすると型締時に発生する型締力が相違することになる。本実施の形態に係る型締方法は、下側型厚が異なっていても同じ型締力を発生させることができるように構成されている。これを実現するために、本実施の形態に係る型締方法は、運転の開始前に実施する準備段階と、実際に成形サイクルを実施する運転段階とから構成されている。以下説明する。
【0022】
<準備段階>
本実施の形態に係る型締方法の準備段階は
図3Aに示されているように型閉時クロスヘッド位置取得工程P01と、その後に実施する型締力調整工程P02とからなる。
【0023】
<型閉時クロスヘッド位置取得工程>
型閉時クロスヘッド位置取得工程P01の処理を
図3Bによって説明する。制御装置4(
図1参照)は、最初にステップS01として型厚減を実行する。型厚調整機構24を駆動して、つまりタイバーナット25、…を回転してタイバー12、12、…の有効長を調整する。そして上側金型17と下側金型18、18、…の金型厚さである型厚の公称値よりわずかに小さくなるように、たとえば5mm程度小さくなるように調整する。
【0024】
次いで制御装置4はステップS02によりクロスヘッド20を駆動して、上側金型17と現在の型締対象の下側金型18とがタッチする型閉じを実施する。より詳しく説明すると、型開閉用サーボモータ22(
図1参照)を予め設定されている基準トルク以下で駆動して上側金型17と下側金型18とをタッチさせる。制御装置4は、そのときのクロスヘッド位置を得、型閉時クロスヘッド位置とする。制御装置4は、現在の型締対象の下側金型18と関連してターンテーブル15の回転位置を記憶すると共に型閉時クロスヘッド位置を記憶する。制御装置4は型締装置2を型開きする。
【0025】
制御装置4はステップS03を実行する。つまり、ターンテーブル15に設けられている全ての下側金型18、18について型閉時クロスヘッド位置を測定・記憶したか否かを判定する。本実施の形態において下側金型18、18は2個であるので、2個の下側金型18、18の測定・記憶が完了したか否かを判定することになる。ここではまだ1個の下側金型18についてのみ測定・記憶しただけであるので、NOに進む。つまりステップS04を実行する。ステップS04ではターンテーブル15を回転し、型締対象の下側金型18を変更する。次いで、制御装置4はステップS02に戻り、ステップS02を実行する。すなわち現在の型締対象の下側金型18について型閉時クロスヘッド位置を測定し、ターンテーブル15の回転位置と共に記憶する。
【0026】
ステップS03において、全ての下側金型18、18について型閉時クロスヘッド位置の測定・記憶が完了したと判断したら(YES)、型閉時クロスヘッド位置取得工程P01を完了する。
【0027】
<型締力調整工程>
型締力調整工程P02(
図3A参照)では、制御装置4は記憶された全ての下側金型18、18の中から最小の型厚の下側金型18、つまり型閉時クロスヘッド位置が最小の下側金型18について型締力調整を実施することになる。具体的には
図3Cで示されているように実行する。
【0028】
ステップS11において、制御装置4は現在の型締対象の下側金型18が、型閉時クロスヘッド位置が最小の下側金型18であるか否かを判断する。もし型閉時クロスヘッド位置が最小の下側金型18になっていれば(YES)、ステップS13に移行する。一方、異なっている場合には(NO)、ステップS12に移行する。ステップS12では、制御装置4はターンテーブル15を回転し、型閉時クロスヘッド位置が最小の下側金型18が型締対象になるようにする。すなわち、記憶されている回転位置にターンテーブル15を回転する。ステップS13に移行する。
【0029】
制御装置4は型締装置2が型開状態のときステップS13を実行する。型厚調整機構24を駆動してタイバーナット25、…を型厚増方向に回転する。つまり、タイバー12、12、…の有効長を延長させるように調整する。次いでステップS14を実行する。トグル機構14は、上側金型17と下側金型18とがタッチするときのクロスヘッド位置が、適切なクロスヘッド位置つまり適正型閉時クロスヘッド位置になっているとき、クロスヘッド位置を0.0にすると所望の型締力が得られるようになっている。ステップS14において制御装置4はクロスヘッド20を駆動して適正型閉時クロスヘッド位置にする。このとき型締装置2は型開状態になっているので、クロスヘッド20を適正型閉時クロスヘッド位置にしても上側金型17と下側金型18は型閉じされない。
【0030】
制御装置4はステップS15を実施する。すなわち、型厚調整機構24を駆動してタイバーナット25、…を型厚減方向に回転する。つまり、タイバー12、12、…の有効長を短縮させるように調整する。上側金型17と下側金型18とがタッチしたら型厚調整機構24を停止する。すなわち、型締装置2は、クロスヘッド20が適正型閉時クロスヘッド位置になっているときに、上側金型17と下側金型18とが型閉じされたことになる。型締力調整工程を完了する。
【0031】
<運転段階>
運転段階について説明する。運転段階は連続的に成形サイクルを実施して成形品を成形する段階である。制御装置4は、
図4に示されているようにステップS31を実行する。つまり、現在型締対象となっている下側金型18について型締時クロスヘッド位置を決定する。具体的には次のようにする。全ての下側金型18、18、…についての型閉時クロスヘッド位置の中から最小の型閉時クロスヘッド位置を基準型閉時クロスヘッド位置とする。そして、現在型締対象となっている下側金型18の型閉時クロスヘッド位置から基準型閉時クロスヘッド位置を減じた値を型締時クロスヘッド位置とする。
【0032】
現在型締対象となっている下側金型18が最小の下側型厚である場合、つまり型閉時クロスヘッド位置が最小の型閉時クロスヘッド位置になっている場合、型締時クロスヘッド位置は0になる。これに対して、現在型締対象となっている下側金型18の型厚が最小で無い場合、つまり型閉時クロスヘッド位置が最小で無い場合、型締時クロスヘッド位置は0以上の値になる。
【0033】
制御装置4は、
図4に示されているようにステップS32として型締工程を実行する。つまりクロスヘッド20を、ステップS31で決定した型締時クロスヘッド位置まで駆動する。そうすると所望の型締力が得られる。制御装置4は、ステップS33により成形サイクルの残りの工程を実行する。つまり射出工程、冷却工程、計量工程、型開工程を実施して、成形品を得る。制御装置4はステップS32を実行する。つまりターンテーブル15を回転して型締対象の下側金型18、18、…を切り換える。再びステップS31に戻って成形サイクルを実行する。
【0034】
[本実施の形態の変形例]
本実施の形態に係る型締方法は変形することができる。例えば準備段階を
図5Aに示されているように変形することができる。本実施形態の変形例に係る型締方法の準備段階は、上で説明した型締力調整工程P02の後に、型閉時クロスヘッド位置再取得工程P03を実施するようになっている。つまり型閉時クロスヘッド位置を、再度取得して更新する処理になっている。なお、型閉時クロスヘッド位置取得工程P01と型締力調整工程P02については、本実施の形態に係る型締方法で説明したので説明を省略し、型閉時クロスヘッド位置再取得工程P03についてのみ
図5Bによって説明する。
【0035】
<型閉時クロスヘッド位置再取得工程>
制御装置4(
図1参照)はステップS21を実行する。すなわち、トグル機構14を駆動して、上側金型17と現在型締対象となっている下側金型18とを型閉じする。そして制御装置4は、そのときのクロスヘッド位置、つまり型閉時クロスヘッド位置を得る。下側金型18に対してすでに記憶されている型閉時クロスヘッド位置があるが、これを更新する。
【0036】
制御装置4はステップS22を実行する。つまり、ターンテーブル15に設けられている全ての下側金型18、18、…について型閉時クロスヘッド位置を更新・記憶したか否かを判定する。本実施の形態において下側金型18、18は2個であるので、2個の下側金型18、18の測定・記憶の更新が完了したか否かを判定することになる。ここではまだ1個の下側金型18についてのみ測定・記憶の更新をしただけであるので、NOに進む。つまりステップS23に移行する。ステップS23ではターンテーブル15を回転し、型締対象の下側金型18を変更する。次いで、制御装置4はステップS21に戻り、ステップS21を実行する。すなわち現在の型締対象の下側金型18について型閉時クロスヘッド位置を測定し、記憶を更新する。
【0037】
ステップS32において全ての下側金型18、18、…について処理が完了した(YES)と判断したら型閉時クロスヘッド位置再取得工程P03(
図5A参照)を完了する。つまり準備段階を完了する。本実施形態の変形例に係る型締方法は、運転段階についてはすでに説明した本実施の形態に係る型締方法と同様になっている。説明を省略する。
【0038】
<他の変形例>
本実施の形態は他にも色々な変形が可能である。例えば、本実施の形態において下側金型18、18は2個であるように説明したが、下側金型18、18は3個以上であってもよい。また、タイバー12、12、…に、歪みセンサ等を設けるようにして型締工程における型締力を測定するようにしてもよい。
【0039】
本実施の形態に係る型締方法の運転段階も変形することができる。
図4におけるステップS31では、型締時クロスヘッド位置を決定している。この決定は次のようにするように説明した。すなわち最小の型閉時クロスヘッド位置を基準型閉時クロスヘッド位置とし、現在型締対象となっている下側金型18の型閉時クロスヘッド位置から基準型閉時クロスヘッド位置を減じた値を型締時クロスヘッド位置とする、である。これについて例えば、次のように変形してもよい。まず、最小の型閉時クロスヘッド位置を基準型閉時クロスヘッド位置とする。そして現在型締対象となっている下側金型18の型閉時クロスヘッド位置から基準型閉時クロスヘッド位置を減じた値に、所定の割合、例えば0.9を乗じたものを型締時クロスヘッド位置とするようにする。このように決定した型締時クロスヘッド位置によって型締めしてもよい。
【0040】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。以上で説明した複数の例は、適宜組み合わせて実施されることもできる。
【符号の説明】
【0041】
1 竪型射出成形機 2 型締装置
3 射出装置 4 制御装置
7 ベッド 9 固定盤
10 上可動盤 11 下可動盤
12 タイバー 14 トグル機構
15 ターンテーブル 16 ターンテーブル用サーボモータ
17 上側金型 18 下側金型
20 クロスヘッド 21 駆動機構
22 型開閉用サーボモータ 24 型厚調整機構
25 タイバーナット 26 貫通孔
28 タイバーナット収納穴 29 スプロケット
31 加熱シリンダ 32 スクリュ
33 スクリュ駆動機構 35 昇降装置
39 タイバーセンサ