(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088905
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】燻煙剤組成物
(51)【国際特許分類】
A01N 25/18 20060101AFI20240626BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20240626BHJP
A01N 59/16 20060101ALI20240626BHJP
A01N 31/08 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
A01N25/18 103A
A01P3/00
A01N59/16 A
A01N31/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203948
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】那須 万里奈
(72)【発明者】
【氏名】山名 一綱
(72)【発明者】
【氏名】亀山 周平
(72)【発明者】
【氏名】山岸 弘
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AA01
4H011AA03
4H011BB03
4H011BB18
4H011BC03
4H011BC08
4H011BC14
4H011BC18
4H011BC20
(57)【要約】
【課題】ホコリや汚れに潜む菌に対する除菌効果に優れ、燻煙処理によって発生する白色汚染を低減し、発生した白色汚染を容易に除去できる燻煙剤組成物を提供すること。
【解決手段】有機発泡剤(A)、吸油量40mL/100g以上の水不溶性のけい素含有無機化合物(B)、非イオン界面活性剤(C)、及び薬剤(D)を含有し、前記(C)成分の含有量が、燻煙剤組成物の総質量に対し、11~25質量%であり、(B)成分/(C)成分で表される質量比が0.26~1.10である、燻煙剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機発泡剤(A)、吸油量40mL/100g以上の水不溶性のけい素含有無機化合物(B)、非イオン界面活性剤(C)、及び薬剤(D)を含有し、
前記(C)成分の含有量が、燻煙剤組成物の総質量に対し、11~25質量%であり、
(B)成分/(C)成分で表される質量比が0.26~1.10である、燻煙剤組成物。
【請求項2】
前記(B)成分の含有量が、燻煙剤組成物の総質量に対し、6~18質量%である、請求項1に記載の燻煙剤組成物。
【請求項3】
前記(C)成分がオキシプロピレンとオキシエチレンとの共重合型非イオン界面活性剤類である、請求項1又は2に記載の燻煙剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燻煙剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
燻煙処理は、薬剤を含んだ煙が密閉した空間内に充満することで、手の届きにくいところまで簡便に処理することができる。燻煙剤は一般に、アゾジカルボンアミド(以下、「ADCA」ともいう。)等の有機発泡剤(以下、「発煙剤」ともいう。)と防カビ剤等の薬剤とを含み、外部から加熱を受けて有機発泡剤が発煙することで、その煙と共に薬剤が空間中に飛散し、細菌やカビ等の有害生物の防除を可能としている。
【0003】
このような燻煙技術は、様々な空間における衛生維持に貢献することが期待される。しかしながら、従来技術では、リビング、キッチン、玄関、トイレ、寝室、書斎、押入れ等の居住空間における手が届き難く普段の掃除がしにくい場所(例えば、換気扇、床の隅、エアコン、通気口、カーテンレール、家具及び家電の裏側や下側等)に存在する、ホコリや汚れの中に潜む菌に対する効果が不十分である。非イオン界面活性剤を増量することによりこのような掃除がしにくい場所に潜む菌への効果を向上させられるが、発煙剤由来の白色分解物(燃焼灰、以下、「白色汚染」ともいう。)の壁や床等への付着量が増え、さらに除去もし難くなる。特に、水や洗浄液等で白色汚染を洗い流すことが困難なリビング、トイレ、寝室、書斎、押入れ等の空間では、白色汚染が残存しやすく処理面の外観が損なわれてしまう。そこで白色汚染を除去しやすくして残存するのを軽減するためにADCAを使用しないことが考えられるが、発煙剤であるADCAを除くと空間全体に薬剤がいきわたらず効果が不十分となってしまう。
【0004】
特許文献1は、平均粒子径が1~9μm、且つ細孔容積が1.0mL/g以下である水不溶性無機化合物(A)と、有機発泡剤(B)と、薬剤(C)と、香料(D)と、を含有し、前記(A)成分/前記(B)成分で表される質量比が0.12~0.30である、燻煙剤組成物について提案している。特許文献1の組成物によれば、香料の含有量が少なくても、燻煙時に香料の香り立ちを十分に感じることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の燻煙剤組成物が、ホコリや汚れに潜む菌に対する除菌効果に優れ、燻煙処理によって発生する白色汚染を低減し、発生した白色汚染を容易に除去できるかどうかの検討はなされていない。また、特許文献1の組成物は、燻煙時の香料の香り立ちを増加させることを課題としているため、白色汚染の発生を低減するためホコリ中の除菌効果向上するための技術として特許文献1の組成物を使用すると、かえってホコリや汚れ中の菌への除菌効果が低下してしまうおそれがあると推察される。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、ホコリや汚れに潜む菌に対する除菌効果に優れ、燻煙処理によって発生する白色汚染を低減し、発生した白色汚染を容易に除去できる燻煙剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の態様を有する。
[1] 有機発泡剤(A)、吸油量40mL/100g以上の水不溶性のけい素含有無機化合物(B)、非イオン界面活性剤(C)、及び薬剤(D)を含有し、
前記(C)成分の含有量が、燻煙剤組成物の総質量に対し、11~25質量%であり、
(B)成分/(C)成分で表される質量比が0.26~1.10である、燻煙剤組成物。
[2] 前記(B)成分の含有量が、燻煙剤組成物の総質量に対し、6~18質量%である、[1]に記載の燻煙剤組成物。
[3] 前記(C)成分がオキシプロピレンとオキシエチレンとの共重合型非イオン界面活性剤類である、[1]又は[2]に記載の燻煙剤組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明の燻煙剤組成物によれば、ホコリや汚れに潜む菌に対する除菌効果に優れ、燻煙処理によって発生する白色汚染を低減し、発生した白色汚染を容易に除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る燻煙装置の断面図である。
【
図2】実施例において、<白色燃焼灰の発生抑制度合い・残存度合い(除去し易さ)の評価>に使用した評価室の斜視図である。
【
図3】実施例において、<ホコリに混在するカビへの除菌効果の評価>に使用した評価室の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
≪燻煙剤組成物≫
本発明の燻煙剤組成物は、以下の(A)~(D)成分を含有する。
本明細書において、「居住空間」とは、人が生活する空間であり、特にここでは屋内のことを指す。例えば、玄関やリビング、寝室、書斎、キッチン、トイレ、押入れ等が挙げられる。
数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0011】
<(A)成分>
(A)成分は、有機発泡剤である。
(A)成分は、加熱により熱分解して多量の熱を発生すると共に、炭酸ガスや窒素ガス等(以下、総じて発泡ガスという)を発生させることで、燻煙剤組成物中に配合された成分を煙化・揮散させる。
(A)成分としては、例えば、アゾジカルボンアミド、p,p’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。中でも、分解温度、発泡ガスの発生量等の観点から、アゾジカルボンアミドが好ましい。
これらの(A)成分は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0012】
(A)成分の含有量は、(A)成分の種類や他の成分を勘案して決定することができる。(A)成分の含有量は、燻煙剤組成物の総質量に対し、50~75質量%が好ましく、59~72質量%がより好ましい。(A)成分の含有量が上記下限値以上であると、効率よく煙化させて組成物の空間全体への揮散、隅々まで除菌性能を発揮しやすくなる。(A)成分の含有量が上記上限値以下であると、その他(B)成分及び(C)成分の配合量を十分に確保でき、ホコリや汚れ中の菌に対する除菌効果や白色汚染の付着・除去効率を良好にしやすくなる。
【0013】
<(B)成分>
(B)成分は、吸油量40ml/100g以上の水不溶性のけい素含有無機化合物である。
(B)成分は、(A)成分の分解によって発生した燃焼灰と(C)成分とを吸着することで燃焼灰自体を減少させ、且つ燃焼灰表面の液体成分を減少させ、壁や床等の硬表面への燃焼灰の付着を弱める。これにより、白色汚染の発生を低減させるとともに、その汚染の除去効率を向上させる。
「水不溶性」とは、25℃において、水1Lに対して無機化合物10gを加え攪拌した際に、完全に透明な均一液体とならないことを意味する。
(B)成分としては、例えば、二酸化けい素やけい酸塩から成る非晶質シリカ、珪藻土、タルク、ゼオライト等を含む、吸油量が40ml/100g以上のけい素含有無機化合物が好ましい。なかでも、外部からの熱を伝えやすく短時間での煙化を阻害しないことで煙の噴出力が高く、(D)成分や(C)成分を広範囲に飛散させられるため除菌効果に優れるという点で、非晶質の二酸化けい素を主成分として含む非晶質シリカや珪藻土がより好ましい。
【0014】
(B)成分の吸油量は、白色汚染の除去効率とホコリや汚れ中の菌に対する除菌効果向上が両立できる範囲として、40ml/100g以上であり、40~400ml/100gが好ましく、55~280ml/100gがより好ましく、95~180ml/100gがさらに好ましい。(B)成分の吸油量が上記下限値以上であると、液体成分の吸着により白色汚染の除去効率を向上させやすくなる。(B)成分の吸油量が上記上限値以下であると、ホコリや汚れ中の菌に対する除菌効果を向上させやすくなる。
(B)成分の吸油量の測定方法は、JIS K5101-13-1(精製あまに油法)に準じるものである(精製あまに油の代用として富士フィルム和光純薬(株)製のあまに油を使用)。
【0015】
(B)成分の嵩密度は、0.05~0.39g/mlが好ましく、0.14~0.38g/mlがより好ましく、0.26~0.34/mlがさらに好ましい。(B)成分の嵩密度が上記下限値以上であると、ホコリや汚れ中の菌に対する除菌効果を向上させやすくなる。(B)成分の嵩密度が上記上限値以下であると、加熱によって発生した(A)成分の分解物を効率的に吸着することで白色汚染の付着を低減させやすくなる。
(B)成分の嵩密度の測定方法は、JIS K5101-12-1に準ずるものであり、測定容器に試料を振動・圧縮を加えずにあふれるまで入れ、測定容器上端から盛り上がった粉末をすり切った際の測定容器中の試料重量から得られる密度である。
【0016】
(B)成分の含有量は、燻煙剤組成物の総質量に対し、6~18質量%が好ましく、9~18質量%がより好ましく、10.5~18質量%がさらに好ましい。(B)成分の含有量が上記下限値以上であると、白色汚染の付着を低減あるいは除去効果を向上させやすくなる。(B)成分の含有量が上記上限値以下であると、(C)成分によってホコリや汚れ中の菌に対する除菌効果を向上させやすくなる。
【0017】
<(C)成分>
(C)成分は、非イオン界面活性剤である。
(C)成分を配合することにより、燻煙処理により揮散させた(D)成分を、ホコリや汚れ中の菌にまで浸透させることで除菌効果を高めることができる。
(C)成分としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル類、グリセリン脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸類、ショ糖脂肪酸エステル類、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、グリセリンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレン(POE)付加型非イオン界面活性剤類等が挙げられる。POE付加型非イオン界面活性剤類としては、例えば、POE-ソルビタン脂肪酸エステル類、POE-グリセリン脂肪酸エステル類、POE-プロピレングリコール脂肪酸エステル類、POE-アルキルエーテル類、POE・ポリオキシプロピレン(POP)-アルキルエーテル類、アルカノールアミド類、オキシプロピレンとオキシエチレンの共重合型非イオン界面活性剤類等が挙げられる。
(C)成分としては、薬剤をホコリや居住空間内に発生しうる有機汚れ(油汚れ・皮脂汚れ・微生物由来の汚れ・排泄物汚れ等)中に浸透させる効果に優れることから、ポリオキシエチレン(POE)付加型非イオン界面活性剤が好ましく、オキシプロピレンとオキシエチレンの共重合型非イオン界面活性剤類がより好ましい。
(C)成分は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0018】
オキシプロピレンとオキシエチレンの共重合型非イオン界面活性剤類としては、一般式(c1)で表されるPO(プロピレンオキシド)ブロックがEO(エチレンオキシド)ブロックで挟まれたEO-PO-EO型非イオン界面活性剤、一般式(c2)で表されるEOブロックがPOブロックで挟まれたPO-EO-PO型非イオン界面活性剤等が挙げられる。
R1-O-(EO)a-(PO)b-(EO)c-R2 ・・・(c1)
R1-O-(PO)d-(EO)e-(PO)f-R2 ・・・(c2)
【0019】
式(c1)及び式(c2)中、R1及びR2はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~6の炭化水素基を表し、両者とも水素原子が好ましい。
【0020】
一般式(c1)中、aはEOの平均繰返し数(平均付加モル数)を表し、5~150の数が好ましく、6~80の数がより好ましい。bはPOの平均繰返し数(平均付加モル数)を表し、5~250の数が好ましく、40~150の数がより好ましい。cはEOの平均繰返し数(平均付加モル数)を表し、5~150の数が好ましく、6~80の数がより好ましい。また、a+b+cは、20~500の数であることが好ましい。市販品としては、例えば「PluronicPE9200(BASFジャパン(株)製)」「PluronicPE9400(BASFジャパン(株)製)」「PluronicPE6400(BASFジャパン(株)製)」等が挙げられる。
【0021】
一般式(c2)中、dはPOの平均繰返し数(平均付加モル数)を表し、5~150の数が好ましく、10~50の数がより好ましい。eはEOの平均繰返し数(平均付加モル数)を表し、5~250の数が好ましく、10~100の数がより好ましい。fはPOの平均繰返し数(平均付加モル数)を表し、5~150の数が好ましく、10~50の数がより好ましい。d+e+fは、20~500の数であることが好ましい。市販品としては、例えば「PluronicRPE1740(BASFジャパン(株)製)「PluronicRPE2035(BASFジャパン(株)製)」「PluronicRPE3110(BASFジャパン(株)製」等が挙げられる。
【0022】
オキシプロピレンとオキシエチレンの共重合型非イオン界面活性剤類としては、殺カビ効果及び防カビ効果の持続性に優れる点で、式(c2)で表されるPO-EO-PO型非イオン界面活性剤等がより好ましい。
【0023】
(C)成分の含有量は、燻煙剤組成物の総質量に対し、11~25質量%であり、13~23質量%が好ましく、15~21質量%がより好ましい。(C)成分の含有量が下限値以上であると、ホコリや汚れ中の菌に対する除菌効果を高めやすくなる。(C)成分の含有量が上限値以下であると、液体成分に対して(B)成分を十分量配合できることで燃焼灰による白色汚染の除去効率を高めやすくなるとともに、処理対象空間における疎水性の物品(例えば、壁紙、カーテン、床材等)に白色汚染とともに付着し白色汚染が除去し難くなるのを防ぎやすくなる。
【0024】
(B)成分/(C)成分で表される質量比(以下、「B/C比」ともいう。)は、0.26~1.10であり、0.54~1.03が好ましく、0.63~0.95がより好ましい。B/C比が上記下限値以上であると、白色汚染の付着の低減あるいは除去効率を向上させやすくなる。B/C比が上記上限値以下であると、ホコリや汚れ中の菌に対する除菌効果を向上させやすくなる。
【0025】
<(D)成分>
(D)成分は、薬剤である。
(D)成分は、除菌、抗菌、防カビ効果等を発揮する微生物制御剤として配合される。
(D)成分としては、例えば、無機系抗菌剤、有機系抗菌剤等が挙げられる。これらの中でも、効果の持続性に優れる点から、無機系抗菌剤が好ましい。
(D)成分は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0026】
無機系抗菌剤としては、例えば、有効成分に除菌、殺菌、抗菌、防カビ、抗カビ、消臭作用を有する銀を含む化合物が挙げられる。銀含有化合物には、銀単体;酸化銀;塩化銀、硝酸銀、硫酸銀、炭酸銀、スルホン酸銀塩、無機銀塩等の銀を含有する無機系抗菌剤が挙げられる。また、前記の銀化合物をゼオライト、シリカゲル、低分子ガラス、リン酸カルシウム、ケイ酸塩、酸化チタン等の物質(以下、「担体」ともいう。)に担持させた担持体を用いてもよい。担持体としては、例えば銀単体、酸化銀、無機銀塩、有機銀塩等の銀化合物を担持したリン酸カルシウム系抗菌剤、ゼオライト系抗菌剤、シリカゲル系抗菌剤、酸化チタン系抗菌剤、ケイ酸塩系抗菌剤等が挙げられる。
これらの中でも、銀を含有する化合物としては、銀単体、酸化銀、硝酸銀等の無機銀塩、又はこれらを担体に担持させた担持体が好ましい。特に銀単体、酸化銀、硝酸銀等の無機銀塩等の銀化合物を担持したリン酸カルシウム系抗菌剤、ゼオライト系抗菌剤が好ましい。
無機系抗菌剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0027】
有機系抗菌剤としては、例えば、3-メチル-4-イソプロピルフェノール(IPMP)、3-ヨード-2-プロピニルブチルカーバメイト(IPBC)、o-フェニルフェノール(OPP)、安息香酸ナトリウム、グルタルアルデヒド、ポリヘキサメチレンビグアニジン塩酸塩等が挙げられる。
有機系抗菌剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0028】
(D)成分の含有量は、(D)成分の種類や有効成分濃度、燻煙剤に求める機能に応じて決定される。例えば、銀化合物の場合、(D)成分の含有量は、燻煙剤組成物の総質量に対し、燻煙剤組成物中の銀濃度が0.001~0.5質量%となる量が好ましく、0.04~0.1質量%となる量がより好ましい。(D)成分の含有量が上記下限値以上であると、(D)成分の効能が向上しやすい。(D)成分の含有量が上記上限値以下であると、(D)成分の揮散率が低下することを防ぎやすくなる。
一方、有機系薬剤(IPMP等)の場合、(D)成分の含有量は、燻煙剤組成物の総質量に対し、1~15質量%が好ましく、5~10質量%がより好ましい。(D)成分の含有量が上記下限値以上であると、(D)成分の効能が向上しやすい。(D)成分の含有量が上記上限値以下であると、(D)成分の揮散率の低下を防ぎやすくなる。
【0029】
<任意成分>
本発明の燻煙剤組成物は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分のいずれにも該当しない成分(任意成分)をさらに含有してもよい。
任意成分としては、従来公知の燻煙剤組成物に使用可能な添加剤、例えば、結合剤、賦形剤、発熱助剤、安定剤、効力増強剤、酸化防止剤、賦香剤、溶剤等が挙げられる。
これらの任意成分は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0030】
結合剤としては、例えば、セルロース系化合物、デンプン系化合物、天然物系化合物、合成高分子系化合物等が挙げられる。
セルロース系化合物としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースとそのカルシウム塩及びナトリウム塩、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)等が挙げられる。
デンプン系化合物としては、例えば、デンプン、α化デンプン、デキストリン、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム塩等が挙げられる。
天然物系化合物としては、例えば、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、トラガント、ゼラチン等が挙げられる。
合成高分子系化合物としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム等が挙げられる。
【0031】
賦形剤としては、例えば、糖、糖アルコール等が挙げられる。糖としては、例えば、ショ糖、ブドウ糖等が挙げられる。糖アルコールとしては、例えば、マルチトール、ソルビトール、キシリトール等が挙げられる。
発熱助剤としては、例えば、酸化亜鉛、リン酸カルシウム、メラミン等が挙げられる。
安定剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドキシアニソール、没食子酸プロピル(プロピル-3,4,5-トリヒドロキシベンゾエート)、エポキシ化合物等が挙げられる。エポキシ化合物としては、例えば、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油等が挙げられる。
効力増強剤としては、例えば、ピペロニルブトキシド(5-[2-(2-ブトキシエトキシ)エトキシメチル]-6-プロピル-1,3-ベンゾジオキソール)、S-421(ジ(2,3,3,3-テトラクロロプロピル)エーテル)等が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、トコフェロール等が挙げられる。
賦香剤としては、各種香料が挙げられる。香料は、燻煙剤組成物を使用した際の香りの付与、燻煙剤臭気のマスキングを付与することができる。香料成分は特に限定されないが、使用できる香料原料のリストは、様々な文献に記載されている。例えば、以下の文献に記載された香料等が挙げられる。
「Perfume and Flavor Chemicals」,Vol.Iand II,Steffen Arctander,Allured Pub.Co.(1994)、
「合成香料化学と商品知識」、印藤元一著、化学工業日報社(1996)、
「Perfume and Flavor Materials of Natural Origin」,Steffen Arctander,Allured Pub.Co.(1994)、
「香りの百科」、日本香料協会編、朝倉書店(1989)、
「Perfumery Material Performance V.3.3」,Boelens AromaChemical Information Service(1996)、
「Floweroils and Floral Compounds In Perfumery」,Danute Lajaujis Anonis,Allured Pub.Co.(1993)等。
溶剤としては、例えば、水、1価アルコール等が挙げられる。1価アルコールとしては、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール等が挙げられる。
(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分と、これら任意成分との合計量は、燻煙剤組成物の総質量を100質量%として、100質量%を超えない。
【0032】
≪燻煙剤組成物の製造方法≫
本発明の燻煙剤組成物は、(A)成分と、(B)成分と、(C)成分と、(D)成分と、必要に応じて任意成分とを、混合することにより得られる。
本発明の燻煙剤組成物は、粉状、粒状、錠剤等の固形製剤として調製される。
燻煙剤組成物の製造方法としては、目的とする剤形に応じて、公知の製造方法が用いられる。例えば、粒状の製剤とする場合は、押出し造粒法、圧縮造粒法、撹拌造粒法、転動造粒法、流動層造粒法等の公知の造粒物の製造方法が用いられる。
【0033】
押出し造粒法による製造方法の具体例としては、燻煙剤組成物の各成分を、ニーダー等により混合し、必要に応じて適量の水を加えて混合し、得られた混合物を任意の開孔径を有するダイスを用い、前押出しあるいは横押出し造粒機で造粒する方法が挙げられる。得られた造粒物をさらにカッター等で任意の大きさに切断し、水分除去のための乾燥を行ってもよい。
【0034】
乾燥方法としては、例えば、従来公知の乾燥機を用いた加熱乾燥法が挙げられる。
乾燥温度は、特に限定されないが、香料等の揮発を抑制する点から、50~80℃が好ましい。乾燥温度が上記下限値以上であると、燻煙剤組成物中の水分含量を抑制できる。乾燥温度が上記上限値以下であると、燻煙剤組成物中の成分の分解を抑制できる。
乾燥時間は、乾燥温度に応じて適宜決定される。
乾燥した後の燻煙剤組成物の水分含量は、特に限定されないが、例えば、燻煙剤組成物の総質量に対して、5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、0質量%であってもよい。燻煙剤組成物の水分含量が上記上限値以下であると、燻煙剤組成物の揮散率が良好となる。
水分含量は、例えば、乾燥後の燻煙剤組成物をすりつぶし、105℃、20分間の条件にて、水分計で測定できる。水分計としては、例えば、(株)島津製作所製の水分計「MOC-120H」が挙げられる。
【0035】
≪燻煙剤組成物の使用方法(燻煙方法)≫
本発明の燻煙剤組成物は、加熱されることにより(A)成分が熱分解し、白色の煙状物が発生するとともに各成分が飛散する。燻煙剤組成物の加熱温度は、200℃~700℃であれば燻煙することが可能で、250℃~450℃が好ましい。
本発明の燻煙剤組成物の燻煙方法としては、直接加熱方式や間接加熱方式等が挙げられる。直接加熱方式は、点火具等を使用し燻煙剤組成物を直接燃焼させ燻煙する方法である。間接加熱方式は、燻煙剤を燃焼させることなく、(A)成分の熱分解に必要な温度(熱エネルギー)を、伝熱部(例えば、前記燻煙剤を収容した容器の壁(側壁や底壁)、前記容器の空間等)を介して供給し燻煙する方法である。
燻煙方法としては、簡便且つ汚染防止効果に優れることから、間接加熱方式による燻煙が好ましい。
【0036】
間接加熱方式としては、(A)成分が熱分解し得る温度まで燻煙剤組成物に熱エネルギーを供給できるものであればよく、間接加熱方式の燻煙方法に通常用いられる公知の加熱方法を採用できる。例えば、水と接触して発熱する物質を水と接触させ、その反応熱を利用する方法、金属と前記金属よりイオン化傾向の小さい金属酸化物又は酸化剤とを混合(例えば、鉄粉と酸化剤(塩素酸アンモニウム等)とを混合)し、その酸化反応により生じる熱を利用する方法、電熱線のような電気的な力(例えば、ホットプレート等)によって発生した熱を利用する方法等が挙げられる。これらの中でも、実用性の観点から、水と接触して発熱する物質(以下、「発熱剤」ともいう。)を水と接触させ、その反応熱を利用する方法が好ましい。
発熱剤としては、例えば、酸化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化カルシウム、塩化鉄等が挙げられる。なかでも、発熱剤としては、実用性の点から、酸化カルシウムが好ましい。
【0037】
≪燻煙装置≫
本発明の燻煙剤組成物は、燻煙装置に充填し、公知の燻煙方法にて使用できる。
燻煙装置は、燻煙剤組成物を収容した全量噴射型容器を備える燻煙装置の一実施形態である。
以下に、
図1を参照して、本発明の一実施形態に係る燻煙装置について説明する。
【0038】
図1に示すように、燻煙装置10は、筐体12と、筐体12の内部に設けられた加熱部20と、筐体12の内部に設けられた燻煙剤部32とを備える。筐体12は略円筒状の本体14と、底部16と、本体14の上部に設けられた蓋部18とで構成されている。筐体12内には、燻煙剤容器30が設けられ、燻煙剤容器30に燻煙剤組成物が充填されて燻煙剤部32が形成されている。燻煙剤容器30は、加熱部20の上方に位置する。
燻煙装置10は、間接加熱型の燻煙装置の一例である。
【0039】
蓋部18は、貫通孔を有するものであり、メッシュ、パンチングメタル、格子状の枠体等が挙げられる。蓋部18の材質は、例えば、金属、セラミック等が挙げられる。
本体14の材質は蓋部18と同じである。
【0040】
燻煙剤容器30は、燻煙剤部32を充填する容器として機能するとともに、加熱部20で生じた熱エネルギーを燻煙剤部32に伝える伝熱部として機能するものである。燻煙剤容器30は、例えば、金属製の容器等が挙げられる。
【0041】
加熱部20は、特に限定されず、燻煙剤部32の煙化に必要な熱量を考慮して適宜決定できる。加熱部20としては、発熱剤を充填して形成したものが好ましく、酸化カルシウムを充填して形成したものが特に好ましい。また、加熱部20は、鉄粉と酸化剤とを仕切り材で仕切って充填して形成してもよく、金属と前記金属よりイオン化傾向の小さい金属酸化物又は酸化剤とを仕切り材で仕切って充填して形成してもよい。
【0042】
底部16は、加熱部20の機構に応じて適宜決定すればよい。例えば、加熱部20が発熱剤(酸化カルシウム等)により構成されている場合、底部16には不織布や金属製のメッシュ等を用いることができる。底部16を不織布や金属製のメッシュとすることで、底部16から水を加熱部20内に浸入させて反応熱を発生させ、燻煙剤組成物を加熱することができる。
【0043】
燻煙装置10を用いた燻煙方法について説明する。
まず、燻煙装置10を対象空間内に設置する。次いで、加熱部20の機構に応じて加熱部20を発熱させる。例えば、酸化カルシウムを充填した加熱部20が設けられている場合、底部16を水中に浸漬する。これにより、底部16から浸入した水が加熱部20で酸化カルシウムと反応し、200~450℃程度の熱が発生する。
そして、底部16から浸入した水が加熱部20で酸化カルシウムと反応して発生した熱が、燻煙剤容器30の側壁や底壁を介して燻煙剤部32に伝わり、燻煙剤部32の温度が上昇して(A)成分が熱分解して二酸化炭素が発生し、(B)成分~(D)成分と、(A)成分が熱分解して発生した二酸化炭素と、の蒸気が発生する。この、生じた蒸気とともに(B)成分~(D)成分が蓋部18の貫通孔を勢いよく通過して対象空間内に(B)成分、(C)成分及び(D)成分が拡散することで、微生物抑制効果を得ることができる。
このように、燻煙装置10を用いることで簡便に燻煙処理を施すことができる。
【0044】
対象空間としては、特に限定されず、例えば、リビング、玄関、書斎、キッチン、寝室、浴室、押入れ、トイレ等が挙げられる。燻煙処理時に伴う白色汚染を水で洗い流すことが困難な対象空間で使用することができ、例えば、リビング、寝室、書斎、押入れ、トイレ等の使用態様に適している。これらの対象空間において、白色汚染を除去する際には、白色汚染を、雑巾、モップ等を用いて除去することができる。
【0045】
本発明の燻煙剤組成物の使用量は、燻煙処理を行う空間の容積に応じて適宜設定すればよく、1m3あたり0.1~3.0gが好ましく、0.4~2.5gがより好ましい。燻煙剤組成物の使用量が上記下限値以上であると、本発明の燻煙剤組成物の効果が充分に得られやすい。燻煙剤組成物の使用量が上記上限値以下であると、コストを抑制でき、有効成分の飛散率を維持しやすい。
燻煙処理時間(燻煙開始後、対象空間の密閉を解除するまでの時間)は、特に限定されないが、15~120分間が好ましく、30~90分間がより好ましい。燻煙処理時間が上記下限値以上であると、本発明の燻煙剤組成物の効果が充分に得られやすい。燻煙処理時間が上記上限値以下であると、燻煙処理の効率を向上しやすい。
【0046】
本実施形態の燻煙剤組成物の使用量は、燻煙処理を行う空間の容積に応じて適宜設定すればよく、1m3あたり0.1~3.0gが好ましく、0.4~2.5gがより好ましい。燻煙剤組成物の使用量が上記下限値以上であると、本発明の燻煙剤組成物の効果が充分に得られやすい。燻煙剤組成物の使用量が上記上限値以下であると、コストを抑制でき、有効成分の飛散率を維持しやすい。
燻煙処理時間(燻煙開始後、対象空間の密閉を解除するまでの時間)は、特に限定されないが、15~120分が好ましく、30~90分がより好ましい。燻煙処理時間が上記下限値以上であると、本発明の燻煙剤組成物の効果が充分に得られやすい。燻煙処理時間が上記上限値以下であると、燻煙処理の効率を向上しやすい。
【実施例0047】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
表中の配合量の単位は「質量%」であり、いずれの成分も純分換算量を示す。
表中の空欄はその成分が配合されていないことを示す。
「バランス」は、各例の組成物に含まれる全配合成分の合計の配合量(質量%)が100質量%となるようにHPMCが配合されていることを意味する。
以下に、表中に示した成分について説明する。
【0048】
[使用原料]
<(A)成分>
・A-1:アゾジカルボンアミド(商品名:ダイブローAC.2040(C)、大日精化工業(株)製)。
【0049】
<(B)成分>
・B-1:非晶質シリカ1(商品名:サイリシア740、富士シリシア化学(株)製、吸油量95mL/100g、かさ密度0.34g/mL)。
・B-2:非晶質シリカ2(商品名:無水ケイ酸、多木化学(株)製、吸油量115mL/100g、かさ密度0.31g/mL)。
・B-3:非晶質シリカ3(商品名:サイリシア380、富士シリシア化学(株)製、吸油量280mL/100g、かさ密度0.14g/mL)。
・B-4:非晶質シリカ4(商品名:サイリシア350、富士シリシア化学(株)製、吸油量320mL/100g、かさ密度0.09g/mL)。
・B-5:珪藻土1(商品名:ラヂオライトSPF、昭和化学工業(株)製、吸油量110mL/100g、かさ密度0.31g/mL)。
・B-6:珪藻土2(商品名:ラヂオライト#200、昭和化学工業(株)製、吸油量140mL/100g、かさ密度0.30g/mL)。
・B-7:珪藻土3(商品名:ラヂオライト#2000、昭和化学工業(株)製、吸油量180mL/100g、かさ密度0.26g/mL)。
・B-8:タルク1(商品名:タルクFH01、(株)福岡タルク工業所製、吸油量40mL/100g、かさ密度0.37g/mL)。
・B-9:ゼオライト1(商品名:HISIV-3000 powder、ユニオン昭和(株)製、吸油量45mL/100g、かさ密度0.39g/mL)。
・B-10:ゼオライト2(商品名:13X powder、ユニオン昭和(株)製、吸油量55mL/100g、かさ密度0.38g/mL)。
・B-11:ゼオライト3(商品名:USKY-790 powder、ユニオン昭和(株)製、吸油量115mL/100g、かさ密度0.28g/mL)。
<(B’)成分:(B)成分の比較品>
・B’-1:クレー(商品名:NK-300、昭和KDE(株)製、吸油量35mL/100g、かさ密度0.50g/mL)。
【0050】
<(C)成分>
・C-1:PO-EO-PO型非イオン界面活性剤1(商品名:PluronicRPE1740、BASFジャパン(株)製)。
・C-2:PO-EO-PO型非イオン界面活性剤2(商品名:PluronicRPE3110、BASFジャパン(株)製)。
・C-3:EO-PO-EO型非イオン界面活性剤1(商品名:PluronicPE6400、BASFジャパン(株)製)。
・C-4:EO-PO-EO型非イオン界面活性剤2(商品名:PluronicPE9200、BASFジャパン(株)製)。
・C-5:ソルビタン脂肪酸エステル(商品名:エマゾールO-10V、花王(株)製)。
【0051】
<(D)成分>
・D-1:銀担持リン酸カルシウム系無機抗菌剤 (商品名:アパサイダーAW、銀含量2.3質量%、(株)サンギ製)。
・D-2:4-イソプロピルー3-メチルフェノール(IPMP)(商品名:4-Isopropyl-3-methylphenol、東京化成工業(株)製)。
・D-3:銀担持ゼオライト系無機抗菌剤(商品名:ゼオミックAJ10N、銀含量2.5質量%、シナネンゼオミック社製)。
【0052】
<任意成分>
・ZnO(商品名:日本薬局方 酸化亜鉛、堺化学工業(株)製)。
・HPMC(商品名:メトローズ60SH-50、信越化学工業(株)製)。
(その他成分)
・酸化カルシウム(商品名:CAg、ロータリーキルン炉焼成品(葛生産)、嵩比重0.80g/cm3(20℃)、吉澤石灰工業(株)製)。
・水。
【0053】
[実施例1~42、比較例1~11]
<燻煙剤組成物の調製方法>
以下の手順で製造した。実施例・比較例(表1~6)の各成分の配合量の単位は質量%である。
室温(25℃)条件下において、実施例・比較例(表1~6)に示す組成に従い、各成分をニーダー(株式会社モリヤマ製、「S5-2G型」)で攪拌混合した後、組成全量を100質量部として10~20質量部の水を加えて混合し混合物を得た。得られた混合物を直径3mmの開孔を有するダイスの前押し出し造粒機(株式会社不二パウダル製、「EXK-1」)を用いて造粒し、造粒物を得た。得られた造粒物をフラッシュミル(株式会社不二パウダル製、「FL300」)により長さ2~5mmに切断し、70℃に設定した乾燥機(アルプ株式会社製、「RT-120HL」)により2時間乾燥させ、顆粒状の燻煙剤組成物を得た。
【0054】
<燻煙装置の作製>
図1に示す燻煙装置10と同様の構成の燻煙装置を次に記す手順で作製した。
ライオン(株)製「ルックプラスおふろの防カビくん煙剤」に使用されているブリキ缶(直径52mm×高さ67mm)の加熱部20に、加熱剤として酸化カルシウム(商品名:CAg、吉澤石灰工業(株)製)を56g充填し、専用の底蓋16を取り付け、各例の燻煙剤組成物5.0gを内容器(燻煙剤容器30)に収容した後、蓋18を取り付け燻煙装置10とした。
【0055】
<白色燃焼灰の発生抑制度合い・残存度合い(除去し易さ)の評価>
(1)供試用スライドガラスの作製
1.
図2に示す密閉可能な評価室100(L1=1.6m、L2=1.6m、H1=2.0m)の床隅102に、スライドガラス120(松浪硝子工業(株)製)を設置した。
2.評価室100の床中央部に23mLの水を入れた給水用プラスチック容器110を設置した。
3.各例に従って作製した燻煙装置10を給水用プラスチック容器110に入れて燻煙を開始した。発煙が開始してから30分間評価室100を密閉後、20分間排気した。
4.上記3.の燻煙処理を10回繰り返して得たスライドガラス120を白色汚染の発生抑制度合い・残存度合いの評価に使用した。
【0056】
(2)白色燃焼灰の発生抑制度合いの評価
上記(1)で作製した各例の供試用スライドガラス120を分光光度計((株)日立ハイテクサイエンス製、U-2910)の光路上に取り付け、660nmにおける光線透過率を測定した。白色汚染の抑制率は下記式(i)により算出した。
白色汚染の抑制率(%)={(燻煙処理後の透過率)/(燻煙未処理の透過率)}×100 ・・・(i)
【0057】
(3)白色燃焼灰の残存度合い(除去し易さ)の評価
1.ティッシュペーパーを2枚重ねて4つに裁断し、それぞれ4つ折りした。
2.1.のティッシュペーパーを用いて、上記(1)で作製した各例の燻煙処理後の供試用スライドガラス120を300~500gの荷重をかけて1方向に5回拭き取った。
3.拭き取った供試用スライドガラス120を分光光度計((株)日立ハイテクサイエンス製、U-2910)の光路上に取り付け、660nmにおける光線透過率を測定した。白色汚染の残存率は下記式(ii)にて算出した。
白色汚染の残存率(%)={(燻煙未処理の透過率)-(燻煙処理・拭き取り後の透過率)}/{(燻煙未処理の透過率)-(燻煙処理後の透過率)}×100 ・・・(ii)
【0058】
(4)判定基準
上記(1)~(3)の結果から、下記の評価基準に従い、白色燃焼灰の発生抑制度合い・残存度合い(除去し易さ)を評価した。
[白色燃焼灰の発生抑制度合い]
〇〇〇:白色汚染の抑制率95%以上。
〇〇 :白色汚染の抑制率90%以上95%未満。
〇 :白色汚染の抑制率85%以上90%未満。
× :白色汚染の抑制率85%未満。
[白色燃焼灰の残存度合い(除去し易さ)]
〇〇〇:白色汚染の残存率10%未満。
〇〇 :白色汚染の残存率10%以上30%未満。
〇 :白色汚染の残存率30%以上50%未満。
× :白色汚染の残存率50%以上。
【0059】
<ほこりに混在するカビへの除菌効果の評価>
(1)除菌試験用プラスチック板の作製
ポテトデキストロース寒天(Difco社製)の斜面培地にて25℃、10日間培養したCladosporium cladosporioides HMC1064(浴室分離菌)を、滅菌した0.05%Tween80(関東化学(株)製)水溶液にて約106CFU/mLの胞子液を調製した。次いで、ほこり230(15軒の一般家庭の居室の床、壁、天井、家具を拭き取って採取したものを混合、UV殺菌したもの)0.05gをプラスチック板220(FRP板、50mm×50mm)にのせ、ほこり230の内部に胞子液を0.4mL接種し、室温にて一晩乾燥固定した(菌数は約106CFU)。
【0060】
(2)燻煙による除菌試験
1.
図3に示す密閉可能な評価室200(L11=1.6m、L12=1.6m、H11=2.0m)の床隅202に、上記(1)の方法で作成した除菌評価用プラスチック板220(ほこり230の内部に菌を接種したもの)を、菌を接種した面を上側に向けて設置した。
2.評価室200の床中央部に23mLの水を入れた給水用プラスチック容器210を設置した。
3.各例に従って作製した燻煙装置10を給水用プラスチック容器210に入れて燻煙を開始し、評価室200を密閉した。
4.発煙が開始してから30分後に排気し、回収したプラスチック板220にGPLP液体培地(日本製薬株式会社製)10mLを添加し菌を洗い出し、その液をポテトデキストロース寒天培地(関東化学(株)製)に塗抹接種して、25℃にて5日間培養した後のコロニー数を計測し、生菌数を算出した。
5.燻煙処理していないプラスチック板から菌を回収し、ポテトデキストロース寒天培地に塗抹接種して、25℃にて5日間培養した後のコロニー数を計測した。除菌率は下記式(iii)より算出した。
除菌率(%)={(処理前生菌数-処理後生菌数)/(処理前生菌数)}×100 ・・・(iii)
【0061】
(3)判定基準
上記(1)及び(2)の結果から、下記の評価基準に従い、除菌性能を評価した。
〇〇〇:除菌率90%以上。
〇〇 :除菌率70%以上90%未満。
〇 :除菌率50%以上70%未満。
× :除菌率50%未満。
【0062】
上記白色燃焼灰の発生抑制度合い・残存度合いの評価結果、及び上記ほこりに混在するカビへの除菌性能の評価結果を、表1~6に示す。
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
表1~6の結果から、本発明を適用した実施例1~42は、燻煙処理による白色汚染の発生を低減することができ、発生した白色汚染を容易に除去することができ、ほこりや汚れに潜む菌に対して優れた除菌効果を示した。
(B)成分を含まない比較例1及び2は、ホコリや汚れに潜む菌に対して優れた除菌効果を示したが、燻煙処理による白色汚染の発生を低減することができず、且つ発生した白色汚染を容易に除去することができなかった。
(B)成分として(B’)成分を使用した比較例3は、比較例1及び2と同様に、ホコリや汚れに潜む菌に対して優れた除菌効果を示したが、燻煙処理による白色汚染の発生を低減することができず、且つ発生した白色汚染を容易に除去することができなかった。
(C)成分を含まない比較例4は、燻煙処理による白色汚染の発生を低減することができ、発生した白色汚染を容易に除去することができたが、ホコリや汚れに潜む菌に対する除菌効果が不十分であった。
(C)成分の含有量が11質量%未満であり、且つB/C比が1.10超である比較例5及び6は、燻煙処理による白色汚染の発生を低減することができ、発生した白色汚染を容易に除去することができたが、ホコリや汚れに潜む菌に対する除菌効果が不十分であった。
(C)成分の含有量が25質量%超である比較例7は、発生した白色汚染を容易に除去することができなかった。
(D)成分を含まない比較例8は、燻煙処理による白色汚染の発生を低減することができ、発生した白色汚染を容易に除去することができたが、ホコリや汚れに潜む菌に対する除菌効果が不十分であった。
B/C比が0.26未満である比較例9は、ホコリや汚れに潜む菌に対して優れた除菌効果を示したが、燻煙処理による白色汚染の発生を低減することができず、且つ発生した白色汚染を容易に除去することができなかった。
B/C比が1.10超である比較例10は、燻煙処理による白色汚染の発生を低減することができ、発生した白色汚染を容易に除去することができたが、ホコリや汚れに潜む菌に対する除菌効果が不十分であった。
(C)成分の含有量が11質量%未満であり、且つB/C比が1.10超である比較例11は、燻煙処理による白色汚染の発生を低減することができ、発生した白色汚染を容易に除去することができたが、ホコリや汚れに潜む菌に対する除菌効果が不十分であった。