(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088907
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】供給ステーション
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20240626BHJP
B60L 53/54 20190101ALI20240626BHJP
B60L 53/53 20190101ALI20240626BHJP
B60L 53/57 20190101ALI20240626BHJP
F17C 5/06 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
H02J7/00 301A
H02J7/00 P
H02J7/00 303E
H02J7/00 303C
B60L53/54
B60L53/53
B60L53/57
F17C5/06
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203950
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000151346
【氏名又は名称】株式会社タツノ
(74)【代理人】
【識別番号】100106563
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 潤
(72)【発明者】
【氏名】木村 潔
(72)【発明者】
【氏名】竹島 亜弓
【テーマコード(参考)】
3E172
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172BA01
3E172BB05
3E172BB12
3E172BB17
3E172BD05
3E172DA90
5G503AA01
5G503AA04
5G503AA05
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA10
5G503DA04
5G503FA06
5G503GD03
5G503GD06
5H125AA01
5H125AC07
5H125AC12
5H125AC23
5H125BE02
5H125BE03
5H125DD02
5H125EE23
5H125EE34
5H125FF14
(57)【要約】
【課題】限られたスペースにおいても安全かつ好適に用いることのできる供給ステーションを提供する。
【解決手段】水素タンク2(2A~2D)と、水素タンクから燃料電池車23へ水素を充填する水素充填機構4と、水素タンクからの水素を電気に変換して電気自動車24へ充電する充電機構13とを備え、水素充填機構又は/及び充電機構は移動可能である供給ステーション1。水素充填機構は複数の水素タンクを備え、燃料電池車の燃料タンクの初期圧力に応じて複数の水素タンクから水素の供給を行うタンクを選択してもよく、充電機構は複数の蓄電池20(20A~20C)を備え、電気自動車の蓄電池の初期電圧に応じて複数の蓄電池から充電を行う蓄電池を選択することもできる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素タンクと、
該水素タンクから燃料電池車へ水素を充填する水素充填機構と、
前記水素タンクからの水素を電気に変換して電気自動車へ充電する充電機構とを備え、
前記水素充填機構又は/及び充電機構は移動可能であることを特徴とする供給ステーション。
【請求項2】
前記水素充填機構は複数の水素タンクを備え、前記燃料電池車の燃料タンクの初期圧力に応じて前記複数の水素タンクから水素の供給を行うタンクを選択することを特徴とする請求項1に記載の供給ステーション。
【請求項3】
前記充電機構は複数の蓄電池を備え、前記電気自動車の蓄電池の初期電圧に応じて前記複数の蓄電池から充電を行う蓄電池を選択することを特徴とする請求項1に記載の供給ステーション。
【請求項4】
前記水素充填機構及び充電機構を構成する電気使用機器は、防爆構造エリア内に設置されることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の供給ステーション。
【請求項5】
前記水素充填機構及び充電機構を構成する電気使用機器は、前記充電機構から給電されることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の供給ステーション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車への充電と燃料電池車への水素充填の両方に対応することができる供給ステーションに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題に配慮し、内燃エンジンを搭載した自動車に代えて電気自動車や燃料電池車が急速に普及することが見込まれている。しかし、脱エンジンを巡る世界的な潮流の中で、今後、電気自動車又は燃料電池車のいずれが主導権を握るのか明らかではない。このような状況の中で、国は車両の購入補助と供給装置の設置補助等により電気自動車と燃料電池車の両方の普及を支援している。
【0003】
このような状況下で、本出願人も充填ホース等の取り扱いが容易で、かつ燃料ガスの急速充填が可能でコンパクトなガス充填装置を提案している(特許文献1参照)。この提案も有効であるが、水素ステーションの場合には建設費用及び運営費用が高く、次世代車の普及に伴って必要な供給装置等のインフラ整備の足かせになっている。
【0004】
また、特許文献2には、電気自動車への充電と、燃料電池車への水素充填とを同時又は個別に実行可能で、電気自動車及び燃料電池車の需要に応じて充電と水素充填と動的に調整することができる供給ステーションが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-109350号公報
【特許文献2】特表2021-517549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、例えば、次世代車の試乗等を行うイベント会場等においても各車両へ充電や水素充填を行う必要があるが、安全性や設置スペースを考慮すると、上記特許文献に記載の供給ステーション等を常設するのは現実的ではない。
【0007】
そこで、本発明は、限られたスペースにおいても安全かつ好適に用いることのできる供給ステーションを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は供給ステーションであって、水素タンクと、該水素タンクから燃料電池車へ水素を充填する水素充填機構と、前記水素タンクからの水素を電気に変換して電気自動車へ充電する充電機構とを備え、前記水素充填機構又は/及び充電機構は移動可能であることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、水素充填機構又は/及び充電機構を移動可能としたため、多様な場所での水素充填及び電気充電を可能とし、設置スペースを最小限に抑えることができる。
【0010】
前記供給ステーションにおいて、前記水素充填機構は複数の水素タンクを備え、前記燃料電池車の燃料タンクの初期圧力に応じて前記複数の水素タンクから水素の供給を行うタンクを選択することで、最適な水素タンクより供給可能となり供給効率が向上する。
【0011】
また、前記充電機構は複数の蓄電池を備え、前記電気自動車の蓄電池の初期電圧に応じて前記複数の蓄電池から充電を行う蓄電池を選択することで、最適な蓄電池より充電可能となり供給効率が向上する。
【0012】
さらに、前記水素充填機構及び充電機構を構成する電気使用機器を防爆構造エリア内に設置することで、電気回路に発生する火花や熱が水素ガスに点火するなどの事故を防止することができて安全である。
【0013】
また、前記水素充填機構及び充電機構を構成する電気使用機器へ前記充電機構から給電することで、送電ロスがなく効率的である。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、限られたスペースにおいても安全かつ好適に用いることのできる供給ステーションを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る供給ステーションの一実施形態を示す全体構成図である。
【
図2】
図1の供給ステーションの水素充填動作を示すフローチャートである。
【
図3】
図1の供給ステーションの充電動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明に係る供給ステーションの一実施の形態を示し、この供給ステーション1は、水素タンク2(2A~2D)と、水素タンク2から燃料電池車23へ水素を充填する水素充填機構4と、水素タンク2からの水素を電気に変換して電気自動車24へ充電する充電機構13等を備える。これら水素タンク2、水素充填機構4及び充電機構13はトレーラ22の台座に固定されている。
【0018】
水素充填機構4は、充填する水素の流路を切り換えるための第1切換手段5と、コンプレッサー6と、蓄圧機7と、充電機9と、脱圧弁10とを備える。電気使用機器としてのコンプレッサー6と蓄圧機7は、電気回路に発生する火花や熱が水素ガスに点火するなどの事故を防止するため防爆構造エリア8に配置される。
【0019】
充電機構13は、減圧弁11と、バッファータンク12と、FCモジュール14と、充電回路を切り換えるための第2切換手段17と、DC-AC変換器19と、蓄電池20(20A~20C)と、充電器21とを備える。バッファータンク12には、減圧弁11を介して1MPa程度の水素が貯留される。電気使用機器としてのFCモジュール14、第2切換手段(17)、DC-AC変換器19及び蓄電池20は、水素ガスに起因する事故を防止するため防爆構造エリア18に配置される。
【0020】
制御装置3は、充填に用いる水素タンクを選択するための水素タンク選択判断手段3aと、充電に用いる蓄電池を選択するための蓄電池選択判断手段3bと、コンプレッサー6を駆動するためのコンプレッサー駆動手段3cと、充填する水素の流路を切り換えるための第1切換手段5に指令を送る第1切換手段3dと、各水素タンク2(2A~2D)と第1切換手段5又は減圧弁11との間の各バルブを開閉するためのバルブ駆動手段3eと、充電回路を切り換えるための第2切換手段17に指令を送る第2切換手段3fと、FCモジュール14を駆動するためのFCモジュール駆動手段3gと、外部電源26(例えば太陽光パネル、風力発電、商用電源)を駆動するための外部電源駆動手段3hとを備える。
【0021】
充填機9とFCモジュール14の間には、FCモジュール14を冷却するための冷却塔15と、急速充填する際に水素を冷却する冷凍機16が配置される。
【0022】
充電機構13は、災害等で停電した場合に備え、DC-AC変換器19を経由して非常用電源(家庭用又は商用の電気機器25に使用する電源等)に充電可能である。
【0023】
次に、上記構成を有する供給ステーション1の動作について図面を参照しながら説明する。まず、水素充填機構4を用いて燃料電池車23に水素を充填する動作について、
図1及び
図2を参照しながら説明する。尚、水素タンク2(2A~2D)のタンク内の圧力は、水素タンク2Aが例えば82MPa、2Bが例えば50MPa、2Cが例えば30MPa、2Dが例えば10MPaであるものとする。また、
図2のルートが分岐するステップにおいては、下方向がYes、横方向がNoに対応する。
【0024】
充填機9のステップS1において、充填ノズルが燃料電池車23の車載タンクの充填口に接続されたか否かを判断し、接続されている場合には(ステップS1;Yes)、燃料電池車23の車載タンク内の圧力が入力されたか否かを判断し(ステップS2)、入力された場合には(ステップS2;Yes)、入力された初期圧力を制御装置3に出力する。
【0025】
制御装置3は、充填機9から初期圧力の入力があると(ステップS11;Yes)、入力された初期圧力に基づいて水素タンク2A~2Dのいずれかを選択する。例えば、初期圧力が20MPaの場合には、それを超える圧力で最も低い圧力である30MPaの水素タンク2Cを選択する。
【0026】
充填に用いる水素タンクが選択されると(ステップS12;Yes)、制御装置3は、第1切換手段5によって流路をL2に切り換えると共に、水素タンク2Cからの充填を可能とするために該当するバルブを開き、充填準備が完了した旨を知らせる信号を充填機9に出力する。
【0027】
充填機9は、制御装置3から充填準備信号が入力され(ステップS4;Yes)スタートスイッチ(SW)が押圧されると(ステップS5)、水素タンク2Cから燃料電池車23の車載タンクに水素が充填され、車載タンクの圧力が充填圧力に達すると(ステップS6;Yes)、制御装置3にタンクの切換え信号を出力する(ステップS7)。
【0028】
制御装置3は、充填機9からタンクの切換え信号の入力があると(ステップS14;Yes)、充填に用いる水素タンクを水素タンク2B(その後さらに2A)に切り換えるか、コンプレッサー6を作動させ(ステップS15)、第1切換手段5によって流路をL2に維持するか、L1に切り換えると共に、充填を可能とするために該当するバルブを開く。燃料電池車23の車載タンクへの水素充填は、基本的には水素タンク2(2A~2D)と車載タンクの差圧で充填し、水素タンク2を切り換えて充填するが、満充填圧力の80MPaにする際にコンプレッサー6で昇圧して充填を完了する。
【0029】
充填機9は、車載タンクの圧力が所定の圧力に達すると(ステップS8;Yes)、充填終了信号を制御装置3に出力し(ステップS9)、動作を終了する。制御装置3は、充填機9から充填終了信号が入力されると(ステップS17;Yes)、充填のために開いていた各バルブを閉じ、脱圧弁10を開く(ステップS18)。その後、時間t1が経過すると(ステップS19;Yes)、脱圧弁10を閉じるための信号を出力し(ステップS20)、動作を終了する。
【0030】
次に、充電器21を用いて電気自動車24に充電する動作について、
図1及び
図3を参照しながら説明する。尚、蓄電池20(20A~20C)の蓄電量は、蓄電池20Aが例えば60kWh、蓄電池20Bが例えば40kWh、蓄電池20Cが例えば20kWhであるものとする。また、
図3のルートが分岐するステップにおいては、下方向がYes、横方向がNoに対応する。
【0031】
充電器21のステップS21において、充電カプラが電気自動車24の充電コネクタに接続されたか否かを判断し、接続されている場合には(ステップS21;Yes)、制御装置3にその旨を知らせる信号を出力する(ステップS22)。次に、車載バッテリーの電圧の入力があると(ステップS23;Yes)、制御装置3に初期電圧を出力する(ステップS24)。
【0032】
制御装置3は、充電器21から充電カプラが接続された旨を知らせる信号の入力があると(ステップS31;Yes)、充電カプラをロックし(ステップS32)、初期電圧の入力があると(ステップS33;Yes)、充電に用いる蓄電池20A~20Cのいずれかを選択する(ステップS34)。例えば、初期電圧より高い電圧で充電することができる蓄電池20Bを選択する。
【0033】
充電に用いる蓄電池が選択されると(ステップS34;Yes)、第2切換手段17によって充電回路を急速充電を行うL3に切換え、充電器21に電力を供給し、充電準備が完了した旨を知らせる信号を充電器21に出力する(ステップS35)。
【0034】
充電器21は、制御装置3から充電準備信号が入力され(ステップS25;Yes)スタートスイッチ(SW)が押圧されると(ステップS26)、蓄電池20Bから電気自動車24の車載バッテリーに充電される。車載バッテリーが充填電圧に達すると(ステップS27;Yes)、充電器21は制御装置3に蓄電池の切換え信号を出力する(ステップS28)。
【0035】
制御装置3は、充電器21から蓄電池の切換え信号の入力があると(ステップS36;Yes)、蓄電池を蓄電池20Aに切り換えるか、蓄電池20Aの蓄電量が不足する場合には、FCモジュール14を作動させ(ステップS37)、第2切換手段17によって充電回路をL3又はL4に切換え、充電器21から電気自動車24に充電する。充電は、初期電圧に応じて蓄電池20A~20Cを選択して充電し、徐々に蓄電量の多い蓄電池20に切り換え、満充電にする際にFCモジュール14経由で充電を行う。また、低圧となり水素充填に使用できなくなった水素タンク2の水素をFCモジュール14経由で電気充電として使用することもできる。
【0036】
充電器21は、車載バッテリーの電圧が所定の電圧に達すると(ステップS29;Yes)、充電終了信号を制御装置3に出力し(ステップS30)、動作を終了する。制御装置3は、充電器21から充電終了信号が入力されると(ステップS39;Yes)、充電カプラのロックを解除し(ステップS40)、動作を終了する。
【0037】
上記実施の形態においては、水素タンク2、水素充填機構4及び充電機構13をトレーラ22の台座に固定して移動可能としたが、水素充填機構4又は充電機構13のいずれか一つをトレーラ22の台座に固定したり、トレーラ22以外の移動手段を用いることもできる。
【0038】
また、水素充填機構4における電気使用機器としてのコンプレッサー6及び蓄圧機7、充電機構13におけるFCモジュール14、第2切換手段17及びDC-AC変換器19に充電機構13から給電することで送電ロスがなく、効率的に電気を使用することができる。
【0039】
さらに、制御装置3から充填機9への充填準備信号が入力されていない場合に、低圧となり水素充填に使用できなくなった水素タンク2内の水素をバッファータンク12、FCモジュール14経由で無駄なく有効利用することができる。
【0040】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術範囲を限定する趣旨の記述ではない。
【符号の説明】
【0041】
1 供給ステーション
2(2A~2D) 水素タンク
3 制御装置
4 水素充填機構
5 第1切換手段
6 コンプレッサー
7 蓄圧機
8 防爆構造エリア
9 充填機
10 脱圧弁
11 減圧弁
12 バッファータンク
13 充電機構
14 FCモジュール
15 冷却塔
16 冷凍機
17 第2切換手段
18 防爆構造エリア
19 DC-AC変換器
20(20A~20C) 蓄電池
21 充電器
22 トレーラ
23 燃料電池車
24 電気自動車
25 電気機器
26 外部電源