(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088945
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】ダクト火災予防装置
(51)【国際特許分類】
F24F 7/06 20060101AFI20240626BHJP
F24F 13/02 20060101ALI20240626BHJP
F24F 13/14 20060101ALI20240626BHJP
B08B 3/02 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
F24F7/06 101
F24F13/02 Z
F24F13/14 J
B08B3/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204004
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390010342
【氏名又は名称】エア・ウォーター防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(74)【代理人】
【識別番号】100228669
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 愛規
(72)【発明者】
【氏名】外村 賢昭
(72)【発明者】
【氏名】後藤 秀晃
【テーマコード(参考)】
3B201
3L058
3L080
3L081
【Fターム(参考)】
3B201AA13
3B201AB53
3B201BB22
3B201BB62
3B201BB92
3B201CD42
3B201CD43
3L058BE01
3L058BK06
3L080AE03
3L080AE04
3L080AE05
3L081AA04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】調理部から吸引した煙に含まれる油脂成分のダクト内壁への付着を抑制防止してダクト内での火災の発生を予防する。
【解決手段】ダクト火災予防装置は、食材を加熱調理するロースター10などの調理部14で発生した油脂成分を含む煙を吸引して外部に排出する吸引ダクト16及び排気ダクト18の火災を抑制及び予防する。吸引ダクト16と排気ダクト18の間には防火ダンパ15が設けられ、吸引ダクト16内にノズル30が配置される。ノズル30は、ダクト内の気流の向きに対向する成分を含まない向きとなる所定の放射範囲に向けて洗浄液の微粒子群を放出し、気流中の油脂成分を含む煙の微粒子が洗浄液の微粒子群に捕捉されて油脂成分を加水分解した状態で搬送されて排気されることで、ダクト内壁への油脂成分の付着を抑制して火災の発生を予防する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食材を加熱調理する調理部で発生した油脂成分を含む煙を吸引して外部に排出するダクトの火災を予防するダクト火災予防装置であって、
ダクト内に配置され、前記ダクト内を通る気流の向きに対向する成分を含まない向きとなる所定の放射範囲で洗浄液の微粒子群を放出するノズルと、
前記ノズルに前記洗浄液を供給して放出させる洗浄液供給部と、
が設けられたことを特徴とするダクト火災予防装置。
【請求項2】
請求項1記載のダクト火災予防装置に於いて、
前記ノズルは、前記ダクト内の通路の中央部に、前記洗浄液の放射軸が気流方向となるように配置されたことを特徴とするダクト火災予防装置。
【請求項3】
請求項1記載のダクト火災予防装置に於いて、
前記ノズルは、前記ダクトの内壁の対向する位置の各々に配置され、各ノズルからの洗浄液の放射範囲を、対向するノズルに対して放出する向きを含む範囲としたことを特徴とするダクト火災予防装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載のダクト火災予防装置に於いて、
前記ノズルは、平均粒子径が数十μm~数百μmの範囲である前記洗浄液の微粒子群を放出することを特徴とするダクト火災予防装置。
【請求項5】
請求項1乃至3の何れかに記載のダクト火災予防装置に於いて、
前記調理部の使用中に、前記洗浄液供給部から前記ノズルに前記洗浄液を供給し、前記ノズルから前記洗浄液の微粒子群を放出することを特徴とするダクト火災予防装置。
【請求項6】
請求項1乃至3の何れかに記載のダクト火災予防装置に於いて、
前記洗浄液供給部は、
前記洗浄液を収納した洗浄液収納部と、
前記洗浄液収納部に前記洗浄液を前記ノズルに供給させるための圧力を加える圧力源と、
前記洗浄液収納部から前記ノズルに対する前記洗浄液の供給経路を開閉させる制御弁と、
前記制御弁を開閉制御する制御部と、
を備えたことを特徴とするダクト火災予防装置。
【請求項7】
請求項6記載のダクト火災予防装置に於いて、
前記制御部は、予め定められた設定に従って前記制御弁の開閉制御し、前記ノズルから前記洗浄液を放出させることを特徴とするダクト火災予防装置。
【請求項8】
請求項1乃至3の何れかに記載のダクト火災予防装置に於いて、
前記ノズルは、前記所定の放射範囲で前記洗浄液の微粒子群を放出させるために、前記ダクト内を通る気流の向きに対向する成分を含む向きへの前記洗浄液の放出を防ぐ返し構造を備えることを特徴とするダクト火災予防装置。
【請求項9】
請求項1乃至3の何れかに記載のダクト火災予防装置に於いて、更に、
火災が発生した場合に、前記ノズルに消火剤を供給して放出させる消火剤供給部が設けられたことを特徴とするダクト火災予防装置。
【請求項10】
請求項1乃至3の何れかに記載のダクト火災予防装置に於いて、更に、
前記ダクトの途中に設けられ、火災が発生した場合にダクト通路を閉鎖する防火ダンパが設けられ、
前記ノズルは、前記調理部と前記防火ダンパの間のダクト内に配置されたことを特徴とするダクト火災予防装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食材を加熱調理するロースターなどの調理部で発生した煙を吸引して外部に排出するダクトでの火災を予防するダクト火災予防装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、利用客が食材を加熱して調理しながら食す焼肉店などの飲食店では、ダクト式のロースターが使用されている。
【0003】
ダクト式のロースターは、例えばテーブルの天板に設けられた調理部のコンロ収納部にガスコンロが配置され、コンロ収納部にダクトが接続されている。ロースターのダクトには、煙に含まれる油脂成分を除去するためのグリスフィルタや、火災を防止するための防火ダンパが設けられている。
【0004】
しかし、グリスフィルタを設けても煙に含まれる油脂成分を完全に除去できないため、ダクトに油脂成分を含む煙が流れ込み、ロースターを長期間使用した場合、ダクトの内壁に油脂成分が堆積し、ロースターから吸引した高温の空気により引火して火災が発生する危険性が高まる。このため、ダクトの内部を定期的に清掃する必要があるが、ダクトの内部を清掃するにはダクトを取り外してダクト内の油脂成分を除去することから、手間と時間が掛かる問題がある。また、防火ダンパが作動する前に油脂が燃焼してダクト内に火災が伝播するため、火災を防止することが出来ない。
【0005】
この問題を解決するため、特許文献1のロースターにあっては、吸引した油脂成分を含む煙を水などの液体中に導いて撹拌して接触混合させることにより、煙に含まれる油脂成分を液体に吸収させて除去し、油脂成分が除去された空気をダクトにより外部へ排気している。
【0006】
また、特許文献2の厨房等の油分離機にあっては、吸引経路に設けたシャワーノズルから吸引した油脂成分を含む煙に横方向から水を放出して水幕を形成し、水滴と混合された煙を円錐状のサイクロン内管に沿って下降させながら旋回させることで、油脂成分を下部の攪拌室の液中に落下させて攪拌することで除去し、攪拌室の上部に溜まった油脂成分が除去された空気を排気ファンで排出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011-237108号公報
【特許文献2】特開平11-2414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような従来の煙に含まれる油脂成分を液体と攪拌して接触混合させることで除去する装置にあっては、油脂成分を除去する液体を常に補充すると共に、使用により汚れた液体を定期的に交換して清掃する必要があり、油脂成分を除去する液体の管理に手間と時間が掛かる問題がある。
【0009】
また、シャワーノズルにより水幕を形成して油脂成分を含む煙を攪拌室に落下させる装置にあっては、シャワーノズルから放出した水幕の一部が上方にも飛散することが考えられ、調理部の火源や調理中の食材に接触する恐れがあり、食材への液体の付着による衛生問題等の問題に繋がるため、調理中には洗浄を行わない等の対策を取る必要があり効率の良い油脂成分の洗浄が行えない問題もある。
【0010】
本発明は、液体との攪拌混合を必要とすることなく、調理部から吸引した煙に含まれる油脂成分のダクト内壁への付着を抑制してダクト内での火災の発生を予防するダクト火災予防装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(ダクト火災予防装置)
本発明は、食材を加熱調理する調理部で発生した油脂成分を含む煙を吸引して外部に排出するダクトの火災を予防するダクト火災予防装置であって、
ダクト内に配置され、ダクト内を通る気流の向きに対向する成分を含まない向きとなる所定の放射範囲内で洗浄液の微粒子群を放出させるノズルと、
ノズルに洗浄液を供給して放出する洗浄液供給部と、
が設けられたことを特徴とする。
【0012】
(通路中央部に配置されたノズル)
ノズルは、ダクト内の通路の中央部に、洗浄液の放射軸が気流方向となるように配置される。
【0013】
(対向配置されたノズル)
ノズルは、ダクトの内壁の対向する位置の各々に配置され、各ノズルからの洗浄液の放射範囲を対向するノズルに対して放出する向きを含む範囲とする。
【0014】
(放出する洗浄液の粒子径)
ノズルは、平均粒子径が数十μm~数百μmの範囲である洗浄液の微粒子群を放出する。
【0015】
(調理部の使用中の洗浄液の放出)
調理部の使用中に、洗浄液供給部からノズルに洗浄液を供給させ、ノズルから洗浄液の微粒子群を放出させる放出制御部を備える。
【0016】
(洗浄液供給部の構成)
洗浄液供給部は、
洗浄液を収納した洗浄液収納部と、
洗浄液収納部に洗浄液をノズルに供給させるための圧力を加える圧力源と、
洗浄液収納部からノズルに対する洗浄液の供給経路を開閉させる制御弁と、
制御弁を開閉制御する制御部と、
を備える。
【0017】
(洗浄液の供給制御)
制御部は、予め定められた設定に従って制御弁の開閉制御し、ノズルから洗浄液を放出させる。
【0018】
(返し構造)
ノズルは、所定の放射範囲で洗浄液の微粒子群を放出させるために、ダクト内を通る気流の向きに対向する成分を含む向きへの洗浄液の放出を防ぐ返し構造を備える。
【0019】
(消火剤供給部)
更に、火災が発生した場合に、ノズルに消火剤を供給して放出させる消火剤供給部が設けられる。
【0020】
(防火ダンパ)
ダクトの途中に設けられ、火災が発生した場合にダクト通路を閉鎖する防火ダンパが設けられ、
ノズルは、調理部と防火ダンパの間のダクト内に配置される。
【発明の効果】
【0021】
(ダクト火災予防装置の効果)
本発明のダクト火災予防装置によれば、ダクト内に吸引された油脂成分を含む煙に対し、ダクト内に設けたノズルから洗浄液の微粒子群を放出することで、放出された洗浄液の微粒子が油脂成分を含む煙の微粒子に衝突して捕捉することで、油脂成分はダクト内に残ることなく気流に乗ってダクト内を搬送され外部に排出されるため、ダクト内壁への油脂成分の付着を抑制し、調理部からの高温の気流が通過しても引火することがなく、ダクト内での火災の発生を抑制及び予防することを可能とする。
【0022】
また、ダクト内壁には油脂成分と混合しなかった洗浄液の原成分が残留するため、ダクト内壁への油脂成分の付着を抑制し、調理部からの高温の気流が通過しても引火することがなく、ダクト内での火災の発生を抑制及び予防することを可能とする。
【0023】
また、洗浄液の微粒子に捕捉された油脂成分を含む煙の微粒子は、油脂成分が洗浄液による加水分解を受けた状態で気流に乗って搬送されるため、仮にダクト内壁に一部が付着したとしても油脂としての燃焼性は失われており、調理部からの高温の気流が通過しても引火することがなく、ダクト内での火災の発生を抑制及び予防することを可能とする。
【0024】
また、ノズルはダクト内を通る気流の向きに対向する成分を含まない向きとなる所定の放射範囲内で洗浄液の微粒子を放出させることから、調理部が位置する気流の吸込み側へ洗浄液の一部が飛散するようなことがなく、調理部の火源や食材に放出した洗浄液が掛かることを防止できる。
【0025】
(通路中央部に配置されたノズルの効果)
また、ノズルは、ダクト内の通路の中央部に、洗浄液の放射軸が気流方向となるように配置されることで、ダクト内の気流の向きの成分を含む向きに洗浄液の微粒子群を十分に高い密度で効率よく放出し、洗浄液の微粒子により油脂成分を含む煙の微粒子を捕捉して排出することを可能とする。
【0026】
(対向配置されたノズルの効果)
また、ノズルは、ダクトの内壁の対向する位置の各々に配置され、各ノズルからの洗浄液の放射範囲を、対向するノズルに対して放出する向きを含む範囲としたことで、ダクト内を通過する気流に対して洗浄液の微粒子群が対抗配置されたノズルの各々から放出されるため、より確実に洗浄液の微粒子により油脂成分を含む煙の微粒子を捕捉して排出することを可能とする。また、対向するノズルが相互に洗浄液の放出を受けることで、ノズル自体の洗浄が行われ、ノズルの放出口に対する油脂成分の付着を抑制及び予防可能とする。
【0027】
(放出する洗浄液の粒子径の効果)
また、ヘッドは、平均粒子径が数十μm~数百μmの範囲である洗浄液の微粒子を放出させており、粒子径が小さいことで、油脂成分を含む煙の微粒子を捕捉した洗浄液の微粒子は、気流に乗ってダクト内を搬送することができ、ダクト内壁に油脂成分を付着させることを抑制し、大部分を外部に排出可能とする。
【0028】
(調理部の使用中の洗浄液の放出による効果)
また、ダクト内を通る気流の向きに対向する成分を含まない向きとなる所定の放射範囲で洗浄液の微粒子群を放出することから、調理部の火源や調理中の食材に洗浄液が付着することがなく衛生面が保たれており、調理部を使用している最中であっても洗浄液によるダクト内の洗浄を行うことができ、効率の良い油脂成分の洗浄を可能とする。
【0029】
(洗浄液供給部の構成による効果)
また、洗浄液供給部は、洗浄液を収納した洗浄液収納部として、例えば洗浄液収納容器を備えることで、使用した洗浄液の交換や補充が簡単にできる。また、洗浄液収納部に洗浄液をノズルに供給させるための圧力を加える圧力源として例えば炭酸ガスボンベやコンプレッサーを使用することで、簡単に洗浄液を加圧供給することを可能とする。また、洗浄液収納部からノズルに対する洗浄液の供給経路を開閉させる制御弁を設けたことで、制御部により必要に応じた洗浄液を放出する制御を可能とする。
【0030】
(洗浄液の供給制御の効果)
また、制御部は、予め定められた設定、例えば時間スケジュールに従った制御弁の開閉制御によりノズルから洗浄液を放出させることで、例えば、調理部の使用中は、所定周期ごとに所定時間だけ放出し、また、調理部が未使用の場合には、例えば、1日に1回、所定時間だけ放出させるといった任意の設定による制御を可能とする。
【0031】
(返し構造の効果)
ノズルは、所定の放射範囲で洗浄液の微粒子群を放出させるために、ダクト内を通る気流の向きに対向する成分を含む向きへの洗浄液の放出を防ぐ返し構造を備えたことで、ダクト内を通る気流の向きに対向する成分を含む向きである調理部側へ放出する放出口を持つノズルであっても返し構造により防ぐことができるため、調理部の火源や食材に放出した洗浄液が掛かることを防止できる。また採用できるノズルの選択肢が増え、設計の幅を広げることができる。
【0032】
(消火剤供給部の効果)
また、ダクト火災予防装置に、火災が発生した場合に、ノズルに消火剤を供給して放出させる消火剤供給部が設けたことで、万一、ダクト火災が発生しても、ノズルから消火剤がダクト内に放出されることで、発生したダクト火災の抑制消火を可能とする。また、ダクト内の油脂成分は水溶化されるために、消火効果が期待できる。
【0033】
(防火ダンパの効果)
また、ダクトの途中に設けられ、火災が発生した場合にダクト通路を閉鎖する防火ダンパが設けられ、ノズルは、調理部と防火ダンパの間のダクト内に配置されることで、火災の際には防火ダンパが作動することで防火ダンパより先のダクトへの火災を抑制できるため、ノズルは最低限調理部と防火ダンパの間のダクト内壁への油脂成分の付着を抑制することができればよく、防火ダンパとの組み合わせにより、ノズルによってダクト内での火災の発生を予防する領域を削減することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】ロースターに設けたダクト火災予防装置の実施形態を示した説明図である。
【
図2】
図1のダクトに配置したノズルを取り出して示した説明図である。
【
図3】ノズル配置の他の実施形態を示した説明図である。
【
図4】消火剤供給部を備えたダクト火災予防装置の他の実施形態を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に、本発明に係るダクト火災予防装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態により、本発明が限定されるものではない。
【0036】
[実施形態の基本的な概念]
まず、実施形態の基本的概念について説明する。実施形態は、概略的に、調理部で発生した油脂成分を含む煙を吸引して外部に排出するダクトの火災を予防するダクト火災予防装置に関するものである。
【0037】
ここで、「調理部」とは、肉、野菜などの食材を加熱調理するものであり、その種類や構造は任意であるが、例えば、コンロ収納部にガスコンロが配置されたテーブルを含むものである。また、「ダクト」とは、調理部で発生した油脂成分を含む煙や蒸気などを外部に排出して調理箇所の環境を清浄に保つものであり、調理部の下側から吸引して外部に排出する下引きダクト、または、調理部の上方空間から吸引して外部に排出する上引きダクトを含む概念である。また、「ダクト火災」とはダクト内で発火して周囲に燃え広がる火災であり、本実施形態にあっては、ダクト内壁に付着した油脂成分が調理部から吸引された高温の気流に晒されることで発火する火災を含む概念である。
【0038】
本実施形態のダクト火災予防装置は、ノズル及び洗浄液供給部で構成されるものである。
【0039】
また、「ノズル」とは、ダクト内に配置され、ダクト内を通る気流の向きに対向する成分を含まない向きとなる所定の放射範囲で洗浄液の微粒子群を放出させるものである。
【0040】
また、ダクト内でのノズルの配置として、ダクト内の通路の中央部に洗浄液の放射軸が気流方向となるような配置や、各ノズルからの洗浄液の放射範囲を対向するノズルに対して放出する向きを含む範囲としてダクトの内壁の対向する位置の各々配置するものを含む。
【0041】
また、ノズルは、気流の向きに対向する成分を含まない向きとなる所定の放射範囲で洗浄液の微粒子群を放出させるために、ダクト内を通る気流の向きに対向する成分を含む向きへの洗浄液の放出を防ぐ返し構造を備えても良い。
【0042】
また、ノズルからの洗浄液の微粒子群の放出は気流の向きに対向する向きには放出しないため、調理部の使用中に、洗浄液供給部からノズルに洗浄液を供給し、ノズルから洗浄液の微粒子群を放出しても良い。
【0043】
ここで、「洗浄液」とは、油脂成分に接触した場合に、水との加水分解を促進して油脂として粘性や燃焼性などの性質を失わせるものであり、油脂の洗浄を目的とした公知の洗浄剤、例えば、アルカリ性の洗浄剤が使用されるものである。
【0044】
また、「洗浄液の微粒子群」とは、洗浄液をノズルから放出した場合に微細な粒子の集まりであり、例えば、平均粒子径が数十μm~数百μmの範囲である洗浄液の微粒子群を放出させるものである。
【0045】
このように洗浄液を微粒子群として放出させると、ダクト内を通過する気流に含まれる油脂成分を含む煙の微粒子と衝突して捕捉し、粒子径が小さいことから捕捉した油脂成分を含む煙の粒子と共に気流に乗ってダクト内を搬送され、ダクト内壁に付着することなく外部に排気されることを可能とし、ダクト内壁への付着が大幅に抑制されることで、調理部からの高温の気流に晒されても堆積した油脂成分による発火を予防することを可能とするものである。
【0046】
「洗浄液供給部」とは、ノズルに洗浄液を供給して放出させるものであり、その構成や機能は任意であるが、例えば、洗浄液収納部、圧力源、制御弁及び制御部で構成されるものである。
【0047】
ここで、「洗浄液収納部」とは、例えば洗浄液を収納した容器で、外部からの圧力供給を受けて収納した洗浄液をノズルに供給するものであり、洗浄液の使用に対し補充や容器交換を容易に可能とするものである。また、「圧力源」とは、洗浄液収納部に洗浄液をノズルに供給させる圧力を加えるものであり、その種類や構造は任意であるが、例えば、圧力媒体として炭酸ガスを供給する炭酸ガス収納容器や圧縮された空気を供給するコンプレッサーなどが含まれる。
【0048】
また、「制御弁」とは、洗浄液収納部からノズルに対する洗浄液の供給経路を開閉させるものであり、例えば制御信号により開動作又は閉動作させる弁であり、その種類や構造は任意であるが、例えば、電磁弁が使用される。また、「制御部」とは、制御弁を開動作又は閉動作させる制御するものであり、その機能や構成は任意であるが、コントローラや制御回路などを含むが概念である。本実施形態にあっては、制御部は、予め定められた設定、例えば時間スケジュールに従った制御弁の開閉制御によりノズルから洗浄液を放出させるものが含まれ、また時間スケジュール以外に手動操作による制御も含むものである。
【0049】
また、本実施形態のダクト火災予防装置は、更に、消火剤供給部を設けることを可能とするものであり、消火剤供給部は、ダクト内で火災が発生した場合に、ノズルに消火剤を供給して放出させることで、ダクト内で発生した火災を抑制消火するものである。
【0050】
また、本実施形態のダクト火災予防装置は、更に、ダクトの途中に設けられ、火災が発生した場合にダクト通路を閉鎖する防火ダンパを設けることを可能とするものであり、防火ダンパを設けた場合には、ノズルは調理部と前記防火ダンパの間のダクト内に配置されるものである。
【0051】
ここで、「防火ダンパ」とは、ダクトの途中に設けられ、ダクト内で発生した火災による熱を受けてダクト内の通路を閉鎖するものであり、その種類や構造は任意であるが、ダンパ羽根を開放位置で温度ヒューズ(火災温度で溶融する金属)に固定しており、火災による熱を受けて温度ヒューズが解けた場合にダンパ羽根の閉鎖を解除してバネなどの力により閉鎖位置に作動させるものであり、公知の防災機器である。
【0052】
以下、具体的な実施形態を説明する。以下に示す具体的な実施形態では、「ダクト火災予防装置」が「ロースターに設けられた下引きダクトのダクト火災予防装置」であり、「ノズル」が平均粒子径を数十μm~数百μm程度の範囲の洗浄剤の微粒子群を放出し、返し構造を備えるものであり、「洗浄液収納部」が「洗浄液収納容器」であり、「圧力源」が「炭酸ガス収容容器」である場合について説明する。また、防火ダンパより調理部側のダクトを「吸引ダクト」と、防火ダンパより排気側のダクトを「排気ダクト」と名称して説明している。
【0053】
[実施形態の具体的内容]
ダクト火災予防装置の実施形態について、より詳細に説明する。その内容については以下のように分けて説明する。
a.ロースター
b.ダクト火災予防装置
c.ノズル
d.洗浄液供給部
d1.洗浄液収納部
d2.圧力源
d3.制御弁
d4.制御装置
e.対向配置されたノズル
f.消火剤供給部を備えたダクト火災予防装置の実施形態
g.本発明の変形例
【0054】
[a.ロースター]
下引きダクト式のロースターについて、より詳細に説明する。
図1はロースターを対象としたダクト火災予防装置の実施形態を示した説明図である。
【0055】
図1に示すように、ロースター10は、肉、野菜などの食材を利用者が加熱調理する調理部14を構成するものであり、その種類や構造は任意であるが、例えば、焼肉店などに設置されたテーブル12に設けられる。
【0056】
テーブル12に設けられた調理部14は、テーブル面の中央の開口されたコンロ収納部22に内筒23が収納され、内筒23の中に例えばガスコンロ24が配置され、ガスコンロ24の上部を覆って肉や野菜などの食材を載せて加熱調理するための焼き網25が配置される。
【0057】
コンロ収納部22の底部には吸引ダクト16の上端が接続され、調理部14で発生した煙等を、コンロ収納部22と内筒23との間の周囲空間を介して吸引可能としている。また、コンロ収納部22の底部にはグリスフィルタ26が配置され、調理部14での焼肉などの調理に伴い発生した煙に含まれる一定の油脂成分を除去可能としている。
【0058】
コンロ収納部22に接続された吸引ダクト16の下端は防火ダンパ15の入口に接続されている。防火ダンパ15は、例えば床面に沿った横方向に出口があり、出口に床面に沿って施設された排気ダクト18の一端が接続されている。防火ダンパ15は、例えば、出口側にダンパ羽根15aを備える。ダンパ羽根15aは通常状態で図示の開放位置に温度ヒューズ等の低温溶融金属で保持されており、火災の発生による熱を受けて温度ヒューズが溶融すると保持が解除され、バネの力などにより防火ダンパ15の出口を塞ぐ。
【0059】
防火ダンパ15の出口には、床面に沿って敷設された排気ダクト18の一端が接続され、排気ダクト18の他端は換気ファン装置20に接続されている。他のテーブルから引き出された排気ダクトも換気ファン装置20に連結されている。
【0060】
換気ファン装置20は、吸引ダクト16、防火ダンパ15及び排気ダクト18を介してロースター10の調理部14で発生した調理に伴う煙等を吸引して外部に排出するものであり、臭気を除去するための脱臭フィルタ等の脱臭装置が設けられており、ロースター10が設置された店内環境を清浄に保つ。
【0061】
[b.ダクト火災予防装置]
ダクト式のロースターを対象としたダクト火災予防装置について、より詳細に説明する。ダクト火災予防装置は、吸引ダクト16内に設けられたノズル30と、ノズル30に洗浄液を供給して放出させる洗浄液供給部32で構成される。
【0062】
[c.ノズル]
吸引ダクト16内に設けられたノズル30について、より詳細に説明する。ノズル30は、ダクト内に洗浄液を放出させるものであり、その構成や機能は任意であるが、ロースター10の調理部14で発生した煙を含む吸引ダクト16内を通過する気流に対し洗浄液を放出させる。
【0063】
図2は吸引ダクト16内に配置したノズル30を取り出して示している。
図2に示すように、ノズル30は、吸引ダクト16の内の通路の中央部に、洗浄液の放出軸52が気流方向50となるように配置されており、洗浄液配管40から供給された洗浄液を、ダクト内を通る気流の向きに対向する成分を含まない向きとなる所定の放射範囲、つまり
図2では当該気流方向50に直交する放出限界54よりも下側の範囲内に向けて放出させる。このようにノズル30は洗浄液の放出範囲を放出限界54よりも下側の範囲内とすることで、放出された洗浄液の一部が調理部14側へ飛散するようなことがなく、調理部14のガスコンロや調理中の食材にかかることを防止できる。尚、
図2では点線により洗浄液の放出を表現しているが
図2は一例であり、ダクト内を通る気流の向きに対向する成分を含まない向きとなる所定の放射範囲に洗浄液を放出するのであれば、その放射範囲は任意であり、例えばフルコーン(円錐状)やホロコーン(空円錐状)に洗浄液を放出するもの等が含まれる。
【0064】
また、ノズル30の洗浄液の放出口の上側に返し構造として、カバー31を設けており、ノズル30の放出口から放出される洗浄液が調理部14側に飛散するのを防止している。なお、カバー31は設けなくても放出限界54より上側に洗浄液を放出することがないのであれば、必ず設ける必要はない。
【0065】
また、ノズル30は平均粒子径が数十μm~数百μm程度の範囲に分布する微粒子群を放出するものであるため、ノズル30からダクト内を通過する気流に対し洗浄液の微粒子群を放出することで、気流中の油脂成分を含む煙の微粒子がノズル30から放出された洗浄液の微粒子の衝突を受けて捕捉され、軽い微粒子の集まりであることから、気流に乗って吸引ダクト16から排気ダクト18に搬送され、ダクト内壁に油脂成分がほとんど付着することなく、排気ファン装置20によって外部に排出される。このため、油脂成分を含む煙粒子のダクト内壁への付着が抑制され、調理部14からの高温の気流が通過しても引火することがなく、吸引ダクト16内での火災の発生を抑制及び予防することを可能とする。
【0066】
また、ノズル30から放出された洗浄液の微粒子に捕捉された煙の微粒子に含まれる油脂成分は、洗浄液により加水分解(脂肪酸とグリセリンに分解)された状態で気流に乗って搬送され、仮にダクト内壁に一部が付着したとしても加水分解により油脂としての燃焼性は失われており、調理部14からの高温の気流が通過しても引火することがなく、吸引ダクト16内での火災の発生を予防することを可能とする。
【0067】
[d.洗浄液供給部]
洗浄液供給部32について、より詳細に説明する。洗浄液供給部32は、ノズル30に洗浄液を供給して放出させるものであり、その機能、構造及び種類は任意であるが、例えば、
図1に示すように、洗浄剤供給部32は、洗浄液収納部となる洗浄液収納容器34、圧力源となる炭酸ガス容器36、制御弁42及び制御部44で構成される。また、洗浄液供給部32は、ロースター10のテーブル12に一体に組み込んでも良いし、別体として配置してもよい。
【0068】
(d1.洗浄液収納部)
洗浄液収納部として機能する洗浄液収納容器34について、より詳細に説明する。洗浄液収納容器34は、洗浄液を収納するとともに外部から加わる圧力により洗浄液をノズル30に供給するものであり、その構造や種類は任意であるが、例えば、耐圧容器内を柔軟な隔膜で仕切り、容器上部の加圧口に容器弁33を介して炭酸ガス配管38を接続し、容器底部の供給口に洗浄液配管40を接続し、加圧された洗浄液を制御弁42を介してノズル30へ供給するようにしている。また、洗浄液収納容器34に収納する洗浄液の量は任意であるが、例えば、容器1本当り3~4リットル程度とし、これを例えば3本程度準備することで、9~12リットル程度の量としている。また、洗浄液収納容器34は交換可能であり、さらに、洗浄液を補充可能としている。
【0069】
洗浄液収納容器34に収納する洗浄液は、煙に含まれる油脂成分と接触した場合に加水分解させることが可能なアルカリ性の洗浄剤、もしくは油脂を加水分解させることが可能な任意の洗浄剤とする。
【0070】
(d2.圧力源)
圧力源として機能する炭酸ガス容器36について、より詳細に説明する。炭酸ガス容器36は容器弁35を介して炭酸ガス配管38により洗浄液収納容器34に接続されている。炭酸ガス容器36には、例えば飲料用などに用いられる炭酸ガスが圧縮状態で充填されており、圧力調整装置(レギュレータ)によって調整された0.05MPa~0.06MPa程度の圧力を洗浄液収納容器34に加えてノズル30から洗浄液を放出させる。ノズル30からの洗浄液の放出量は任意であるが、例えば、0.2リットル/分/m2となり、洗浄液収納容器34に収納している洗浄液の量を例えば9~12リットルとすると、45~60分の連続放出を可能とする。なお、圧力源としては、炭酸ガス容器36以外にコンプレッサーなどの圧縮された空気を供給するものであってもよい。
【0071】
(d3.制御弁)
制御弁42について、より詳細に説明する。制御弁42は、洗浄液収納容器34からノズル30に対する洗浄液の供給経路となる洗浄液配管40を開閉させるものであり、その構造や種類は任意であるが、例えば、ソレノイドの通電により開動作し、ソレノイドの通電遮断で閉動作する電磁弁などが使用される。
【0072】
(d4.制御部)
制御部44について、より詳細に説明する。制御部44は、制御弁42を開閉制御するものであり、その機能や構造は任意であるが、例えば、CPU、メモリ、各種入出力ポート、操作部、表示部などを備えたコンピュータ回路で構成され、手動操作に加え、予め定められた設定、例えば時間スケジュールに従った制御弁42の開閉制御によりノズル30から洗浄液を放出させる。
【0073】
制御部44の時間スケジュールに従った制御は任意であるが、例えば、店舗の営業時間内、ロースター10や換気ファン装置20の動作中に所定周期ごとに所定時間だけ洗浄液を放出させる制御とする。また、制御部44は、ロースター10が使用されていない場合には、営業開始と営業終了のタイミングで洗浄液を所定時間だけ放出させる制御などを行う。
【0074】
[e.対向配置されたノズル]
図2で示したノズルの配置とは別のノズル配置である吸引ダクト16内に設けられる対向配置されたノズルついて、より詳細に説明する。本実施形態にあっては、
図3に示すように、吸引ダクト16の内壁の対向する位置の各々にノズル30a,30bが配置される。ノズル30a,30bの洗浄液の放出範囲は、例えば、ノズル30aを例にとると、対向するノズル30bに対して放出する向きを放出限界54aとして、放出限界54aより下側の範囲となる。また
図3では、放出軸52aを気流方向に対して斜め方向となるようにしているが、放出限界54aより上側に放出しないものであれば、放出軸の方向は当該方向に限らない。また、
図2のノズルと同様に返し構造としてカバー31をノズル30a,30bに設けて、ノズル30a,30bの放出口から放出される洗浄液が調理部14側に飛散するのを防止しても良い。
【0075】
このようにノズル30a,30bを対向配置として、ノズル30a,30bによる洗浄液の放出範囲を対向するノズルを含む気流方向に向かう範囲としたことで、ダクト内を通過する気流に対しノズル30a,30bの双方から洗浄液の微粒子群が放出されることで粒子密度が高まり、より確実に洗浄液の微粒子により油脂成分を含む煙の微粒子を捕捉して排出することを可能とし、また対向するノズル30a,30bが相互に洗浄液の放出を受けることで、ノズル30a,30b自体の洗浄が行われ、ノズル30a,30bに対する油脂成分の付着を防止可能とする。
【0076】
[f.消火剤供給部を備えたダクト火災予防装置の実施形態]
続いて、消火剤供給部を備えたダクト火災予防装置の実施形態について、より詳細に説明する。
図4は消火剤供給部を備えたダクト火災予防装置の実施形態を示したものであり、
図1に示した実施形態に、消火剤供給部60を追加したものである。
【0077】
消火剤供給部60は、ダクト火災が発生した場合に、ノズル30に消火剤を供給して放出させるものであり、その構成や機能は任意であるが、例えば、消火剤収納容器62、起動装置66、消火剤配管68及び消火制御弁70で構成される。
【0078】
消火剤収納容器62は消火剤を、例えば0.9MPaの加圧状態で充填したものであり、例えば、二酸化炭素や油火災に対応したカリウムを含む強化消火剤が加圧充填され、容器弁64を介して起動装置66に配管接続している。起動装置66は制御部44からの起動信号により動作して開栓する装置であり、例えば、封止板を突き破って開く針弁などが使用される。
【0079】
消火剤配管68はノズル30に消火剤を供給する配管であり、途中に消火制御弁70が設けられ、消火制御弁70の二次側を、制御弁42の二次側となる洗浄液配管40に接続している。
【0080】
制御部44は、
図1の実施形態による洗浄液の放出制御に加え、ダクト火災が発生した場合の消火起動操作あるいはセンサの火災検出に基づき、制御弁42を閉制御してノズル30からの洗浄液の放出を停止し、続いて、起動装置66を動作して開栓するとともに消火制御弁70を開制御し、消火剤収納容器62から消火剤配管68を介して供給された消火剤をノズル30からダクト内に放出し、ダクト内で発生している火災を抑制消火する。
【0081】
ここで、火災が吸引ダクト16から防火ダンパ15の間の内壁で発生した場合、ノズル30からの消火剤は火災箇所となる内壁に直接放出されて効率よく抑制消火される。また、火災が防火ダンパ15より先の排気ダクト18の内壁で発生した場合には、防火ダンパ15の温度ヒューズが作動してダクト入口を閉鎖するまでに時間遅れがあり、その間、ノズル30から放出された消火剤の微粒子群は、気流に乗って防火ダンパ15から排気ダクト18に送り込まれ、ダクト内で発生している火災が抑制消火される。
【0082】
[g.本発明の変形例]
本発明によるダクト火災予防装置の変形例について、より詳細に説明する。本発明のダクト火災予防装置は、上記の実施形態以外に、以下の変形を含むものである。
【0083】
(上引きダクトのダクト火災予防装置)
上記の実施形態は、調理部の下側にダクトを配置した下引きダクトのダクト火災予防装置を例にとるものであったが、これに限定されず、例えば、調理部の上側の空間にダクトを配置した上引きダクトのダクト火災予防装置を含むものである。調理部の上引きダクトは、例えば天井側に沿って配置されたダクト主管から下向きに接続されたダクト枝管の先端に防火ダンパが設けられ、防火ダンパの入口に固定ダクトが接続され、固定ダクトの先端(下側)に、吸込み口を備えた可動ダクトが上下方向に伸縮自在に配置されたものである。
【0084】
このような構造の上引きダクトのダクト火災予防装置としては、例えば、防火ダンパの下に接続している固定ダクト内に、洗浄剤を放出するノズル30を、
図2のノズル配置と同様に、ノズル30の放射軸52を気流方向となるように配置し、ノズル30から放出した洗浄液が可動ダクト側の吸入口側に吸引されるようにして調理部に上からかからないようにする。また、
図4のノズル配置としてもよいし、カバー31のような返し構造を設けてもよい。
【0085】
(消火剤供給部)
図4に示した実施形態は、専用の消火剤供給部60を設けているが、これに替えて消火器を使用できるようにしてもよい。例えば、消火剤配管68の消火制御弁70を洗浄剤の流出を阻止する逆止弁とし、消火剤配管68の入口に消火器のホースを接続する公知のホースコネクタを設ける。ダクト火災が発生した場合には、消火器をホースコネクタによって消火剤配管68に接続し、消火器の安全ピンを抜いてレバーを押し下げることで、消火剤をノズル30からダクト内に放出させて、ダクト火災を抑制消火させるようにしてもよい。
【0086】
(その他)
また、本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0087】
10:ロースター
12:テーブル
14:調理部
15:防火ダンパ
16:吸引ダクト
18:排気ダクト
20:換気ファン装置
22:コンロ収納部
23:内筒
24:ガスコンロ
25:焼き網
26:グリスフィルタ
30,30a,30b:ノズル
31:カバー
32:洗浄液供給部
34:洗浄液収納容器
33,35,64:容器弁
36:炭酸ガス容器
38:炭酸ガス配管
40:洗浄液配管
42:制御弁
44:制御部
50:気流方向
52,52a:放出軸
54,54a:放出限界
60:消火剤供給部
62:消火剤収納容器
66:起動装置
68:消火剤配管
70:消火制御弁