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  • 特開-加熱剥離装置用コイルの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088951
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】加熱剥離装置用コイルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/36 20060101AFI20240626BHJP
【FI】
H05B6/36 C
H05B6/36 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204012
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】503208378
【氏名又は名称】ビルドメンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100194478
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 文彦
(74)【代理人】
【識別番号】100198719
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 良裕
(72)【発明者】
【氏名】石飛 愼二
(72)【発明者】
【氏名】福永 高之
【テーマコード(参考)】
3K059
【Fターム(参考)】
3K059AA08
3K059AD03
3K059CD62
(57)【要約】
【課題】空冷式による冷却によって十分に冷却することが可能な加熱剥離装置用コイルの製造方法の提供。
【解決手段】加熱剥離装置用コイルの製造方法は、巻上工程(S1)と塗布工程(S2)と抜取工程(S3)とを含む。巻上工程(S1)において、導体材料に絶縁被膜が施された複数のエナメル線を撚り合わせてなる小撚り線を更に複数撚り合わせた大撚り線をフッ素樹脂シートと共に円筒状の巻枠の外周面に巻き上げる。塗布工程(S2)において、巻き状態にある大撚り線とフッ素樹脂シートとの双方にコーキング材を塗布する。抜取工程において、コーキング材の乾燥に伴って巻き状態で硬化した大撚り線及びフッ素樹脂シートからフッ素樹脂シートのみを抜き取る。巻上工程において、フッ素樹脂シートは、大撚り線のうち巻枠の外周面を向く側とは反対側に配置された状態で大撚り線と同時に巻き上げられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体材料に絶縁被膜が施された複数のエナメル線を撚り合わせてなる小撚り線を更に複数撚り合わせた大撚り線をフッ素樹脂シートと共に円筒状の巻枠の外周面に巻き上げる巻上工程と、
巻き状態にある前記大撚り線と前記フッ素樹脂シートとの双方にコーキング材を塗布する塗布工程と、
前記コーキング材の乾燥に伴って巻き状態で硬化した前記大撚り線及び前記フッ素樹脂シートから前記フッ素樹脂シートのみを抜き取る抜取工程と、
を含む加熱剥離装置用コイルの製造方法であって、
前記巻上工程において、前記フッ素樹脂シートは、前記大撚り線のうち前記外周面を向く側とは反対側に配置された状態で前記大撚り線と同時に巻き上げられることを特徴とする加熱剥離装置用コイルの製造方法。
【請求項2】
前記巻上工程において、前記大撚り線を前記外周面に巻きやすくさせるための案内シートを前記大撚り線と前記フッ素樹脂シートとの間に配置し、前記大撚り線と前記案内シートと前記フッ素樹脂シートとを前記外周面に同時に巻き上げることを特徴とする請求項1に記載の加熱剥離装置用コイルの製造方法。
【請求項3】
前記巻上工程における巻き上げ時に、前記大撚り線には、前記巻枠の円筒軸からの半径方向に関して前記大撚り線を圧縮する圧力がかかることを特徴とする請求項1又は2に記載の加熱剥離装置用コイルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱剥離装置用コイルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表面に塗膜が形成された金属を加熱して、その塗膜を剥離し易くする加熱剥離装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1において、加熱剥離装置(1)は、導線を平面状に巻いたコイル本体(21)を形状保持体(22,23)によってその形状に保持してなるコイル部(20)と、前記コイル本体(21)に接続され高周波電圧を発生させる高周波発生器(10)と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-3932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、加熱剥離装置に用いられる巻きコイルは、使用に伴って温度が上昇する。そのため、巻きコイルが焼けないように冷却しなければならない。巻きコイルの冷却方法としては、水冷式によるものが一般的である。
【0005】
しかしながら、加熱剥離装置は屋外で移動しながら用いられるため、比較的大掛かりな水冷式を採用すると、移動し難くなり、作業性が著しく低下する。
【0006】
一方で、加熱剥離装置に設けられる巻きコイルは、密着した状態で巻かれているため、空冷式を採用すると、巻きコイルを十分に冷却できないという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、空冷式による冷却によって十分に冷却することが可能な加熱剥離装置用コイルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、導体材料に絶縁被膜が施された複数のエナメル線を撚り合わせてなる小撚り線を更に複数撚り合わせた大撚り線をフッ素樹脂シートと共に円筒状の巻枠の外周面に巻き上げる巻上工程と、巻き状態にある前記大撚り線と前記フッ素樹脂シートとの双方にコーキング材を塗布する塗布工程と、前記コーキング材の乾燥に伴って巻き状態で硬化した前記大撚り線及び前記フッ素樹脂シートから前記フッ素樹脂シートのみを抜き取る抜取工程と、を含む加熱剥離装置用コイルの製造方法であって、前記巻上工程において、前記フッ素樹脂シートは、前記大撚り線のうち前記外周面を向く側とは反対側に配置された状態で前記大撚り線と同時に巻き上げられることを特徴とする加熱剥離装置用コイルの製造方法を提供している。
【0009】
ここで、前記巻上工程において、前記大撚り線を前記外周面に巻きやすくさせるための案内シートを前記大撚り線と前記フッ素樹脂シートとの間に配置し、前記大撚り線と前記案内シートと前記フッ素樹脂シートとを前記外周面に同時に巻き上げるのが好ましい。
【0010】
また、前記巻上工程における巻き上げ時に、前記大撚り線には、前記巻枠の円筒軸からの半径方向に関して前記大撚り線を圧縮する圧力がかかるのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の加熱剥離装置用コイルの製造方法によれば、抜取工程において、コーキング材の乾燥に伴って巻き状態で硬化した大撚り線及びフッ素樹脂シートからフッ素樹脂シートのみが抜き取られる。そのため、巻き状態で硬化した大撚り線には抜き取られたフッ素樹脂シートの厚み分の隙間が形成される。その結果、大撚り線に形成された隙間にファンから送風された空気が通り、大撚り線を確実に冷却することが可能である。つまり、本発明の加熱剥離装置用コイルの製造方法によれば、空冷式による冷却によって加熱剥離装置用コイルを十分に冷却することが可能である。
【0012】
なお、空冷式による冷却によって十分に冷却することが可能な加熱剥離装置用コイルの製造方法の具体的工程は、上述した特許文献1には全く記載されていない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る加熱剥離装置用コイルの製造方法の各工程を示すフローチャート。
図2】コイルが巻枠の外周面に巻き上げられる様子を示す概略図。
図3】巻枠に巻き上げられた大撚り線、案内シート及びフッ素樹脂シートを示す断面図。
図4図3からフッ素樹脂シートを抜き取った状態を示す断面図。
図5】加熱剥離装置用コイルの製造方法によって製造された加熱剥離装置用コイルの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<1.実施形態>
本発明の実施形態による加熱剥離装置用コイルの製造方法について図1から図5に基づき説明する。なお、本発明による加熱剥離装置用コイルの製造方法は、表面に塗膜が形成された金属を加熱して、その塗膜を剥離し易くする加熱剥離装置に特化したコイルの製造方法である。
【0015】
図1に示すように、加熱剥離装置用コイルの製造方法は、ステップS1の巻上工程と、ステップS2の塗布工程と、ステップS3の抜取工程とを含む3つの工程で構成されている。
【0016】
巻上工程(S1)は、後に詳述するコイル2を巻枠に対して円盤状に巻き上げる工程である。図2に示すように、円筒状の巻枠1を所定方向に回転させることで、コイル2が巻枠1の外周面11に巻き上げられる。図5に示すように、複数回(複数ターン)巻き上げられたコイル2は、側面視円盤状に形成される。
【0017】
巻上工程(S1)において、巻枠1の外周面11に巻き上げられるコイル2には、導体材料に絶縁被膜が施された複数のエナメル線を撚り合わせてなる小撚り線を更に複数撚り合わせた大撚り線が用いられる。なお、本実施形態において、コイル2は、本発明に係る「大撚り線」の一例である。
【0018】
本実施形態では、小撚り線として、1200本のエナメル線を撚り合わせたものが採用されている。また、大撚り線として、9本の小撚り線を撚り合わせたものが採用されている。
【0019】
巻上工程(S1)において、コイル2(大撚り線)は、案内シート3及びフッ素樹脂シート4と共に巻枠1の外周面11に巻き上げられる。
【0020】
案内シート3は、巻枠1の外周面11に巻きやすくさせるためのシートである。案内シート3には、例えば、耐熱性を有するポリイミドテープ(ポリイミドシート)などが用いられる。
【0021】
フッ素樹脂シート4は、後述の抜取工程(S3)において抜き取られることで、巻き上げられたコイル2に隙間を形成するためのシートである。ここでは、フッ素樹脂シート4は、約1mm(ミリメートル)の厚さを有している場合を例示する。
【0022】
図3に示すように、巻上工程(S1)の巻き上げ時、巻枠1の外周面11から外側に向かってコイル2、案内シート3、フッ素樹脂シート4の順に重ねた状態で同時に巻き上げられる。
【0023】
つまり、巻上工程(S1)において、案内シート3及びフッ素樹脂シート4は、コイル2のうち巻枠1の外周面11を向く側とは反対側に配置される。なお、案内シート3は、コイル2とフッ素樹脂シート4との間に配置される。そして、コイル2、案内シート3及びフッ素樹脂シート4が巻枠1の外周面11に対して同時に巻き上げられる。
【0024】
また、巻上工程(S1)において、コイル2には、巻枠1の円筒軸13からの半径方向に関してコイル2を圧縮する圧力がかかる。その結果、図3に示すように、当初は断面円状を有していたコイル2が、巻枠1の円筒軸13からの半径方向に圧縮され、断面略長方形状に整形される。圧縮後のコイル2は、圧縮方向が約4.5mm(ミリメートル)、幅方向が約12mm(ミリメートル)になる。
【0025】
また、本実施形態では、巻上工程(S1)において、13ターンほど巻き上げられるものとする。つまり、コイル2は、巻枠1の円筒軸13からの半径方向に関して13層に形成される。
【0026】
再度図1を参照する。塗布工程(S2)は、巻上工程(S1)で巻き上げられ、巻き状態にあるコイル2、案内シート3及びフッ素樹脂シート4にシリコンコーキング材を塗布する工程である。
【0027】
塗布工程(S2)において、コイル2、案内シート3及びフッ素樹脂シート4を隅々までシリコンコーキング材で浸した後、丸一日程度自然乾燥させる。シリコンコーキング材が自然乾燥すると、巻き状態にあるコイル2、案内シート3及びフッ素樹脂シート4が硬化する。
【0028】
抜取工程(S3)において、コーキング材の乾燥に伴って巻き状態で硬化したコイル2、案内シート3及びフッ素樹脂シート4からフッ素樹脂シート4のみを抜き取る。なお、フッ素樹脂シート4には、剥離性があるため、比較的容易に抜き取ることができる。
【0029】
上述したとおり、フッ素樹脂シート4は約1mm(ミリメートル)の厚さを有する。そのため、フッ素樹脂シート4が抜き取られると、図4に示すように、巻き状態で硬化したコイル2には約1mm(ミリメートル)の隙間SPが形成される。なお、案内シート3は、コイル2に残ったままになる。
【0030】
図5では、上記で説明した加熱剥離装置用コイルの製造方法(ステップS1からS3)で製造されたコイル2の一例が示されている。図5に示すように、コイル2は、13層の側面視円盤状に構成される。また、コイル2の各層の間には、約1mm(ミリメートル)の隙間SPが形成されている。
【0031】
上述した実施形態に係る加熱剥離装置用コイルの製造方法によれば、抜取工程(S3)において、シリコンコーキング材の乾燥に伴って巻き状態で硬化したコイル2、案内シート3及びフッ素樹脂シート4からフッ素樹脂シート4のみが抜き取られる。
【0032】
そのため、巻き状態で硬化したコイル2の各層の間には抜き取られたフッ素樹脂シート4の厚み分の隙間SPが形成される。その結果、コイル2の各層の間に形成された隙間にファンなどの冷却装置から送風された空気が通り、コイル2を確実に冷却することが可能である。つまり、上述した実施形態に係る加熱剥離装置用コイルの製造方法によれば、空冷式による冷却によって加熱剥離装置用コイルを十分に冷却することが可能である。
【0033】
ところで、本実施形態において、コイル2には、上述したように小撚り線を更に複数撚り合わせた大撚り線が用いられる。大撚り線を構成する複数の小撚り線の間には隙間があるため、圧力を掛けて巻き上げると、まっすぐ巻けない(崩れる)可能性がある。この点、本実施形態では、案内シート3がコイル2とフッ素樹脂シート4との間に配置された状態で、コイル2と案内シート3とフッ素樹脂シート4とが巻枠1の外周面11に同時に巻き上げられる。そのため、コイル2を巻枠1の外周面11に対して真っ直ぐに巻き上げることが可能である。
【0034】
また、上述した実施形態によれば、巻枠1の円筒軸13からの半径方向に関してコイル2を圧縮する圧力がかかり、断面円状のコイル2は、巻枠1の円筒軸13からの半径方向に圧縮され、断面略長方形状に整形される。その結果、コイル2の密度が上がり、自己発熱性を向上させることが可能になる。また、最終的な側面視円盤状のコイル2の直径を短縮できる。
【0035】
<2.変形例>
本発明による加熱剥離装置用コイルの製造方法は上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。
【0036】
例えば、上述した実施形態では、案内シート3をコイル2とフッ素樹脂シート4との間に配置し、コイル2と案内シート3とフッ素樹脂シート4とを巻枠1の外周面11に同時に巻き上げる場合を例示したが、これに限定されない。上述した実施形態において、案内シート3は、本発明にとって必ずしも必須の構成要素ではない。そのため、例えば、コイル2とフッ素樹脂シート4との間に案内シート3を配置することなく、コイル2及びフッ素樹脂シート4のみを巻枠1の外周面11に同時に巻き上げるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 巻枠
2 コイル
3 案内シート
4 フッ素樹脂シート
11 外周面
13 円筒軸
SP 隙間
図1
図2
図3
図4
図5