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特開2024-88956路面すべり摩擦調整構造体、調整機、調整方法
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  • 特開-路面すべり摩擦調整構造体、調整機、調整方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088956
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】路面すべり摩擦調整構造体、調整機、調整方法
(51)【国際特許分類】
   E01C 7/18 20060101AFI20240626BHJP
【FI】
E01C7/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204020
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】590002482
【氏名又は名称】株式会社NIPPO
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤谷 雅嘉
【テーマコード(参考)】
2D051
【Fターム(参考)】
2D051AA08
2D051AB02
2D051AF01
2D051AG01
2D051AH01
(57)【要約】
【課題】路面の研磨効率を向上し、路面の深い部分まで研磨し、車両走行による摩耗のすべりと略同じ状態で、路面を研磨できる、路面すべり摩擦調整構造体、調整機、調整方法を提供する
【解決手段】摩擦調整構造体2は、角パイプ4、5(フレーム)と、角パイプ4、5に支持される減速機付きモーター11、および、発電機9で構成される原動機と、鉛直方向に軸線が延び、原動機により回転されるシャフト13と、シャフト13の回転に連動して、シャフト13の周りを公転し、かつ、自転する3つのタイヤ23と、を備え、3つのタイヤ23を、角パイプ4、5および原動機の荷重がかかった状態で、路面Gの同一円周上を転動させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、
前記フレームに支持される原動機と、
鉛直方向に軸線が延び、前記原動機により回転されるシャフトと、
前記シャフトの回転に連動して、前記シャフトの周りを公転し、かつ、自転する複数のタイヤと、を備え、
前記複数のタイヤを、前記フレームおよび前記原動機の荷重がかかった状態で、路面の同一円周上を転動させる、
路面すべり摩擦調整構造体。
【請求項2】
前記シャフトから放射状に延びる複数のアームを有し、前記複数のアームにホルダーを介して前記タイヤが支持される、
請求項1に記載の路面すべり摩擦調整構造体。
【請求項3】
前記タイヤは車軸を介して支持され、前記車軸は前記アームと平行に、かつ、前記アームの回転方向後方にずらして配置される、
請求項2に記載の路面すべり摩擦調整構造体。
【請求項4】
前記ホルダーは前記車軸の向きを調整可能に形成される、
請求項3に記載の路面すべり摩擦調整構造体。
【請求項5】
前記タイヤは、スタッドレスタイヤである、
請求項1に記載の路面すべり摩擦調整構造体。
【請求項6】
請求項1から5の何れかに記載の路面すべり摩擦調整構造体を、路面上で牽引または押動する動力機を有し、
前記路面すべり摩擦調整構造体を動作するときには、前記複数のタイヤに前記フレームおよび前記原動機の荷重がかかった状態とするため、前記動力機と前記路面すべり摩擦調整構造体との連結を解除する、
路面すべり摩擦調整機。
【請求項7】
フレームと、
前記フレームに支持される原動機と、
鉛直方向に軸線が延び、前記原動機により回転されるシャフトと、
前記シャフトの回転に連動して、前記シャフトの周りを公転し、かつ、自転する複数のタイヤと、を備える、路面すべり摩擦調整構造体を準備し、
前記複数のタイヤを、前記フレームおよび前記原動機の荷重がかかった状態で、路面の同一円周上を転動させながら、同時に、路面すべり摩擦調整構造体を路面上で牽引または押動して、路面すべり摩擦を調整する、
路面すべり摩擦調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面すべり摩擦調整構造体、調整機、調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ブレーキ性能を確認するための走行試験路は、路面が所定のμ値を有する路面に仕上げられる。特許文献1は、フロアポリッシャ(業務用床洗浄機)などを用いて走行試験路を所定のμ値を有する路面(以下、「特定路面」という場合がある。)に仕上げる技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平3-96331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、路面の研磨効率が低く、研磨に要する時間が長くなる。また、路面の深い部分まで研磨できない。さらに、実際の車両走行による摩耗のすべりと略同じ状態で、路面を研磨できない、等の課題がある。
本発明は、路面の研磨効率を向上し、路面の深い部分まで研磨し、車両走行による摩耗のすべりと略同じ状態で、路面を研磨できる、路面すべり摩擦調整構造体、調整機、調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、フレームと、前記フレームに支持される原動機と、鉛直方向に軸線が延び、前記原動機により回転されるシャフトと、前記シャフトの回転に連動して、前記シャフトの周りを公転し、かつ、自転する複数のタイヤと、を備え、前記複数のタイヤを、前記フレームおよび前記原動機の荷重がかかった状態で、路面の同一円周上を転動させる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、路面の研磨効率を向上し、路面の深い部分まで研磨し、車両走行による摩耗のすべりと略同じ状態で、路面を研磨できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】路面すべり摩擦調整機を示す概略図。
図2図1のII-II断面図。
図3】アームを示す平面図。
図4図2のIV-IV断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[1.実施形態の構成]
図1は、路面すべり摩擦調整機1を示す概略図である。図2は、図1のII-II断面図である。なお図2では、後述の減速機付きモーター11を省略して示している。
図1に示すように、路面すべり摩擦調整機(以下、摩擦調整機という。)1は、路面すべり摩擦調整構造体(以下、摩擦調整構造体という。)2と、この摩擦調整構造体2を、路面G上で牽引または押動するフォークリフト(動力機)3と、を備える。
この摩擦調整機1は、走行試験路(テストコース)用の路面において、路面のμ値を調整するときに使用される。
対象となる路面はμ=0.3以下のいわゆる低μ路面に限定されず、例えば、中μ路面にも適用が可能であり、μ=0.9程度のいわゆる高μ路面にも適用が可能である。
摩擦調整構造体2は、図2に示すように、互いに平行に延びる一対の角パイプ(フレーム)4、5を備え、一対の角パイプ4、5は連結板10により連結される。一対の角パイプ4、5には、図1に示すように、荷台12が取付けられ、荷台12にはエンジン駆動式の発電機9が載置される。摩擦調整構造体2は、図1及び図2に示すように、一対の角パイプ4、5に連結され、内側の各機器類を保護するための、環状に形成されるガードパイプ7を備える。また、一対の角パイプ4、5には、発電機9の電力で駆動される減速機付きモーター11が支持される。減速機付きモーター11と、エンジン駆動式の発電機9と、が原動機を構成する。
【0009】
一対の角パイプ4、5を連結する連結板10には、シャフト13が回転自在に支持される。シャフト13は、鉛直方向に延びる軸線周りを回転する。シャフト13の下端には、大径ギア14が取付けられ、大径ギア14は、動力伝達用のチェーン15を介して、減速機付きモーター11の出力用の小径ギア16に連結される。
【0010】
図3は、アーム17を示す平面図、図4は、図2のIV-IV断面図である。
シャフト13には、該シャフト13から放射状に延びる複数のアーム17が取付けられる。これらアーム17は、平面視で120°等間隔で配置される。複数のアーム17の先端部には、鉛直方向に延びる支持軸19が回転自在に支持され、支持軸19には、図4に示すように、ホルダー21が取付けられる。ホルダー21はL字状であり、ホルダー21の下端部には、路面Gの仕上げを行い、特定路面を形成するためのタイヤ23が配置される。タイヤ23は、車軸23Aを介してホルダー21に支持される。3つのタイヤ23には、路面研磨性に優れるスタッドレスタイヤが好適である。この構成では、タイヤ23は、シャフト13の回転に連動して、アーム17を介して、シャフト13の周りを公転し、かつ、車軸23Aに支持されて、車軸23Aの周りを自転する。
【0011】
ホルダー21には、図3及び図4に示すように、円盤25が取付けられ、円盤25には同一円周上に複数の開口26が形成される。また、アーム17には固定片27が固定され、固定片27の開口孔28と、円盤25の一つの開口26とにピン29が嵌められ、固定片27と円盤25とが連結される。
【0012】
タイヤ23を支持する車軸23Aは、図2及び図3に示すように、アーム17と略平行に配置される。また、車軸23Aは、図4に示すように、支持軸19の中心からアーム17の幅の半分の幅Wだけ、アーム17の回転方向後方にずらして配置される。これは他の2つのタイヤ23の車軸23Aについても、同様である。
仮に、支持軸19と車軸23Aとの間に幅Wのずれがなく、平面視で重なる位置にある場合には、図3に示すように、アーム17を矢印Fで示す方向に回転させると、3つのタイヤ23は、二点鎖線で示す円Rの上を転動する。この際のタイヤ23の転動はタイヤ23と路面Gの摩擦が相対的に少ない状態である。
【0013】
本実施形態では、車軸23Aが、支持軸19の中心から後方に幅W分ずれるため、タイヤ23は、円Rの接線方向に対して常に傾いた状態となり、路面Gに対して擦れるように走行し、タイヤ23と路面Gの摩擦が大きくなり、路面Gの研磨効率が向上する。
【0014】
本実施形態では、路面Gの研磨の効率をさらに向上させる場合、ピン29を抜いて、円盤25を回転させて、円盤25の別の開口26と、固定片27の開口孔28とを揃えて、再び、ピン29で結合させる。
これによれば、ホルダー21の向きが変更され、車軸23Aとアーム17とが平行でなくなり、タイヤ23の向きは、二点鎖線で示す円Rの接線方向に揃わなくなる。
円盤25を回転させる量を大きく設定すればするほど、3つのタイヤ23の向きは、それぞれ円Rの接線方向から大きく離れる。
この状態で、アーム17を矢印Fで示す方向に回転させると、3つのタイヤ23は横滑りしながら、二点鎖線で示す円Rの上を転動し、タイヤ23と路面Gの摩擦がさらに大きくなり、路面Gの研磨効率をさらに向上できる。
【0015】
次に、動作を説明する。
路面G上の研磨範囲において、フォークリフト3を移動させて、研磨範囲の所定の列に摩擦調整機1を移動させる。ついで、角パイプ4、5に差し込まれたフォークリフト3のフォークが僅かに下げられると、角パイプ4、5の内側でフォークが遊んで、フォークリフト3と、摩擦調整構造体2との連結が解除される。
【0016】
この連結が解除されると、摩擦調整構造体2は路面Gに接地し、角パイプ4、5に支持された減速機付きモーター11と、エンジン駆動式の発電機9と、を含むすべての荷重が、3つのタイヤ23にかかる。
【0017】
3つのタイヤ23に、すべての荷重をかけた状態で、発電機9を駆動し、減速機付きモーター11を駆動すると、シャフト13が回転し、シャフト13と一体に複数のアーム17が回転し、アーム17にホルダー21を介して連結されるタイヤ23が転動する。
この状態で、フォークリフト3を前進させる。フォークリフト3に押された摩擦調整構造体2は、タイヤ23を転動させながら前進する。
【0018】
このとき、摩擦調整構造体2は、タイヤ23が、シャフト13の周りを公転しつつ、かつ、自転しながら、フォークリフト3によって強制的に引きずられるように押されて移動する。これによれば、タイヤ23は、シャフト13の周りを公転しつつ、自転し、さらに、フォークリフト3に引きずられて移動するため、タイヤ23と路面Gの摩擦が大きくなり、路面Gの研磨効率を向上できる。
所定の列を研磨したのち、摩擦調整構造体2は、フォークリフト3で隣接する列に移動され、上記動作が繰り返される。
【0019】
本実施の形態によれば、この動作を研磨範囲で繰り返すことで、所望の摩擦係数μである路面を路面G上に形成できる。例えば、路面Gの状態の計測と、摩擦調整機1による施工とを組み合わせて実行することにより、路面Gを所望の摩擦係数μに仕上げることができる。
本実施の形態によれば、タイヤ23は横滑りしながら路面Gの上を走行することになるため、路面Gを研磨する効率がよい。
【0020】
走行試験路用の路面Gには、アスファルトと、粗骨材とを含むアスファルト混合物が用いられる。路面Gは凹凸形状であり、凸部に粗骨材が露出しており、凹部にアスファルトの層が露出している。ブレーキ性能を確認するための走行試験路において、走行試験に用いる車両は質量が大きいため、タイヤは凹部であるアスファルト層まで弾性変形して潜り込む。摩擦調整構造体2の全体の質量は、車両の質量に近い。そのため、路面Gの深い部分まで研磨し、車両走行による摩耗のすべりと略同じ状態で、路面Gを研磨できる。タイヤ23は、タイヤが潜り込む深さの該凹部まで研磨することができ、摩擦調整構造体2は特定路面の構築に好適である。
【0021】
なお、他の実施形態として、一対の角パイプ4、5の配置の間隔は、フォークリフト3のフォークの間隔に依存して設定される。例えば、一対の角パイプ4、5の両外側に、別の一対の角パイプ(不図示)を配置すれば、フォークの間隔が異なる2種のフォークリフトを有効に利用できる。また、一対の角パイプ4、5と、フォークリフト3のフォークと、の間を連結する連結具(不図示)を設ければ、フォークリフト3により、摩擦調整構造体2を押動させるだけでなく、牽引が可能になる。
【0022】
以上説明したように、本実施形態では、摩擦調整構造体2は、角パイプ4、5(フレーム)と、角パイプ4、5に支持される減速機付きモーター11、および、発電機9で構成される原動機と、鉛直方向に軸線が延び、原動機により回転されるシャフト13と、シャフト13の回転に連動して、シャフト13の周りを公転し、かつ、自転する3つのタイヤ23と、を備え、3つのタイヤ23を、角パイプ4、5および原動機の荷重がかかった状態で、路面Gの同一円周上を転動させる。
これによれば、路面Gの研磨効率を向上し、路面Gの深い部分まで研磨し、車両走行による摩耗のすべりと略同じ状態で、路面Gを研磨できる。
【0023】
また、本実施形態においては、シャフト13から放射状に延びる3つのアーム17を有し、3つのアーム17にホルダー21を介してタイヤ23が支持されていてもよい。
これによれば、タイヤ23を安定した状態で支持できる。
【0024】
また、本実施形態においては、タイヤ23は車軸23Aを介して支持され、車軸23Aはアーム17と平行に、かつ、アーム17の矢印F(回転方向)後方にずらして配置されていてもよい。
これによれば、タイヤ23は矢印F(回転方向)に対して常に傾いた状態となり、路面Gに対して擦れるように走行するため、路面Gの研磨の効率がよい。
【0025】
また、本実施形態においては、ホルダー21は車軸23Aの向きを調整可能に形成されていてもよい。
これによれば、タイヤ23をスリップさせた状態で転動させることができ、研磨の状態を適宜変更できる。
【0026】
また、本実施形態においては、タイヤ23、スタッドレスタイヤであってもよい。
これによれば、路面Gの研磨効率が向上する。
【0027】
また、本実施形態においては、摩擦調整機1は、摩擦調整構造体2を、路面G上で牽引または押動するフォークリフト3(動力機)を有し、摩擦調整構造体2を動作するときには、3つのタイヤ23に角パイプ4、5および原動機の荷重がかかった状態とするため、フォークリフト3と摩擦調整構造体2との連結を解除する。
これによれば、路面Gの研磨効率を向上し、路面Gの深い部分まで研磨し、車両走行による摩耗のすべりと略同じ状態で、路面Gを研磨できる。
【0028】
また、本実施形態においては、路面すべり摩擦調整方法は、角パイプ4、5(フレーム)と、角パイプ4、5に支持される減速機付きモーター11、および、発電機9で構成される原動機と、鉛直方向に軸線が延び、原動機により回転されるシャフト13と、シャフト13の回転に連動して、シャフト13の周りを公転し、かつ、自転する3つのタイヤ23と、を備える摩擦調整構造体2を準備し、3つのタイヤ23を、角パイプ4、5および原動機の荷重がかかった状態で転動させながら、同時に、路面すべり摩擦調整構造体2を路面上で牽引または押動して、路面すべり摩擦を調整する。例えば、路面すべり摩擦を、摩擦が小さくなるように調整する。
これによれば、路面Gの研磨効率を向上し、路面Gの深い部分まで研磨し、車両走行による摩耗のすべりと略同じ状態で、路面Gを研磨できる。
【0029】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0030】
上述した実施形態では、3つのアーム17は同様の長さとして形成されていたが、それぞれ異なる長さで形成されていてもよい。
また、上述した実施形態では、動力機としてフォークリフト3を用いて摩擦調整構造体2を押動または牽引したが、摩擦調整構造体2が移動する構成を有していてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 摩擦調整機
2 摩擦調整構造体
3 フォークリフト(動力機)
4、5 角パイプ(フレーム)
10 連結板
11 減速機付きモーター
12 荷台
13 シャフト
17 アーム
19 支持軸
21 ホルダー
23 タイヤ
23A 車軸
F 矢印(回転方向)
G 路面
W 幅
図1
図2
図3
図4