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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088959
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】免震装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/04 20060101AFI20240626BHJP
   F16F 1/40 20060101ALI20240626BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
F16F15/04 P
F16F1/40
E04H9/02 331A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204026
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉井 靖典
(72)【発明者】
【氏名】馮 徳民
(72)【発明者】
【氏名】三浦 靖史
【テーマコード(参考)】
2E139
3J048
3J059
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AC19
2E139CA02
2E139CC11
3J048AA01
3J048BA08
3J048DA01
3J048EA38
3J059AB13
3J059BA43
3J059DA50
3J059GA42
(57)【要約】
【課題】免震装置において、ボルトに作用する応力の低減を図る。
【解決手段】積層ゴム(免震用積層ゴム)11と、積層ゴム11の端部に設けられて上部構造物101と下部構造物111にそれぞれ取付けられる取付プレート12,13と、取付プレート12,13の外縁部側で上部構造物101と下部構造物111にそれぞれの取付面に対向する位置に設けられる切欠部16,16A,16Bとを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免震用積層ゴムと、
前記免震用積層ゴムの端部に設けられて支持部材に取付けられる取付プレートと、
前記取付プレートの外縁部側で前記支持部材の取付面に対向する位置に設けられる切欠部と、
を備える免震装置。
【請求項2】
前記取付プレートは、周方向に間隔を空けて複数の取付孔が設けられ、前記切欠部は、前記取付孔より外縁部側に設けられる、
請求項1に記載の免震装置。
【請求項3】
前記取付プレートは、前記免震用積層ゴムの上部に設けられて上部支持部材に取付けられる上部取付プレートと、前記免震用積層ゴムの下部に設けられて下部支持部材に取付けられる下部取付プレートとを有し、
前記切欠部は、前記上部取付プレートと前記下部取付プレートの少なくともいずれか一方に設けられる、
請求項1または請求項2に記載の免震装置。
【請求項4】
前記切欠部は、前記上部取付プレートに設けられる上部切欠部と、前記下部取付プレートに設けられる下部切欠部とを有する、
請求項3に記載の免震装置。
【請求項5】
前記切欠部は、前記取付プレートの全周に連続して設けられる、
請求項1に記載の免震装置。
【請求項6】
前記切欠部は、前記支持部材に対する対向面と前記支持部材の取付面との距離が前記取付プレートの外縁部側に向けて大きくなるテーパ形状をなす、
請求項1に記載の免震装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免震装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄塔、タワー、高層建物などの建築物は、地震動による力を受けたりすることで大きな揺れを生じやすい。そのため、建築物に入力する振動エネルギーを吸収するものとして免震装置が知られている。免震装置は、例えば、基礎と建築物との間に配置される。免震装置は、一般的に、複数のゴム板と鋼板とが複数重ね合わされて構成された積層ゴムを有する。免震装置は、積層ゴムの上下にそれぞれ取付プレートが固定されて構成される。そして、免震装置は、上下の取付プレートの外周部が複数のボルトによりそれぞれ基礎や建築物に締結される。このような免震装置としては、例えば、下記特許文献に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-115468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
免震装置は、基礎と建築物に対して離間する方向の荷重が作用したとき、基礎と取付プレート、建築物と取付プレートとをそれぞれ締結する各ボルトに引張応力が作用して伸長する。このとき、取付プレートは、基礎や建築物の取付面に接触する外縁部を支点として弾性変形する。すなわち、取付プレートは、外縁部がてこの支点となり、ボルトによる締結位置がてこの作用点となる。取付プレートは、板厚が薄い場合、積層ゴムの外縁部がてこの力点となり、てこの作用点にあるボルトが受ける反力が増大してしまうという課題がある。一方で、取付プレートの板厚を厚くすることが考えられるが、重量が増加してしまうと共に、製造コストが増加してしまう。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、ボルトに作用する応力の低減を図る免震装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための免震装置は、免震用積層ゴムと、前記免震用積層ゴムの端部に設けられて支持部材に取付けられる取付プレートと、前記取付プレートの外縁部側で前記支持部材の取付面に対向する位置に設けられる切欠部と、を備える。
【0007】
本発明の免震装置の望ましい態様として、前記取付プレートは、周方向に間隔を空けて複数の取付孔が設けられ、前記切欠部は、前記取付孔より外縁部側に設けられる。
【0008】
本発明の免震装置の望ましい態様として、前記取付プレートは、前記免震用積層ゴムの上部に設けられて上部支持部材に取付けられる上部取付プレートと、前記免震用積層ゴムの下部に設けられて下部支持部材に取付けられる下部取付プレートとを有し、前記切欠部は、前記上部取付プレートと前記下部取付プレートの少なくともいずれか一方に設けられる。
【0009】
本発明の免震装置の望ましい態様として、前記切欠部は、前記上部取付プレートに設けられる上部切欠部と、前記下部取付プレートに設けられる下部切欠部とを有する。
【0010】
本発明の免震装置の望ましい態様として、前記切欠部は、前記取付プレートの全周に連続して設けられる。
【0011】
本発明の免震装置の望ましい態様として、前記切欠部は、前記支持部材に対する対向面と前記支持部材の取付面との距離が前記取付プレートの外縁部側に向けて大きくなるテーパ形状をなす。
【発明の効果】
【0012】
本発明の免震装置によれば、ボルトに作用する応力の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、第1実施形態の免震装置を表す概略構成図である。
図2図2は、免震装置の取付構造を表す縦断面図である。
図3図3は、荷重が作用したときの下部取付プレートの変形状態を表す縦断面図である。
図4図4は、第2実施形態の免震装置の取付構造を表す縦断面図である。
図5図5は、第3実施形態の免震装置の取付構造を表す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。また、実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる、均等の範囲のものが含まれる。さらに、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0015】
[第1実施形態]
<免震装置の構成>
図1は、第1実施形態の免震装置を表す概略図である。
【0016】
図1に示すように、第1実施形態の免震装置10は、上部構造物(支持部材、上部支持部材)101と下部構造物(支持部材、下支持部材)111との間に配置される。免震装置10は、上部が上部構造物101の下面102に固定され、下部が下部構造物111の上面112に固定される。ここで、上部構造物101は、例えば、建築物であり、下部構造物111は、例えば、基礎(コンクリート構造物など)である。但し、上部構造物101は、建築物の下部に固定された別の構造物であってもよく、下部構造物111は、基礎の上面に固定された別の構造物であってもよい。また、免震装置10は、基礎と建築物との間に配置されるだけでなく、例えば、建築物の低層部と高層部との間など建築物の各階層の間に配置してもよい。
【0017】
免震装置10は、積層ゴム(免震用積層ゴム)11と、上部取付プレート(取付プレート)12と、下部取付プレート(取付プレート)13とを備える。
【0018】
積層ゴム11は、複数のゴム板と複数の鋼板とを厚さ方向(鉛直方向)に交互に積み重ねたものである。上部取付プレート12は、積層ゴム11の上面に一体に固定される。下部取付プレート13は、積層ゴム11の下面に一体に固定される。
【0019】
積層ゴム11は、鉛直軸線Oを中心とする円柱形状をなす。上部取付プレート12および下部取付プレート13は、鉛直軸線Oを中心とする円板形状をなす。上部取付プレート12および下部取付プレート13は、外径が積層ゴム11の外径より大きい。但し、積層ゴム11は、円柱形状に限らず、角柱形状であってもよい。また、上部取付プレート12および下部取付プレート13は、円板形状に限らず、多角形板形状であってもよい。
【0020】
免震装置10は、上部取付プレート12の上面が上部構造物101の下面102に密着し、複数の上部ボルト14により上部構造物101に締結される。複数の上部ボルト14は、上部取付プレート12の外周部に周方向に間隔を空けて複数配置され、上部取付プレート12を貫通して上部構造物101に螺合する。また、免震装置10は、下部取付プレート13の下面が下部構造物111の上面112に密着し、複数の下部ボルト15により下部構造物111に締結される。複数の下部ボルト15は、下部取付プレート13の外周部に周方向に間隔を空けて複数配置され、下部取付プレート13を貫通して下部構造物111に螺合する。
【0021】
地震発生時、上部構造物101と下部構造物111との間に水平方向などの相対変位が発生する。免震装置10は、積層ゴム11によって水平方向などに変位する上部構造物101の揺れを吸収し、下部構造物111から上部構造物101への振動エネルギーの伝達を遮断し、上部構造物101の揺れを低減する。
【0022】
<免震装置の取付構造>
図2は、免震装置の取付構造を表す縦断面図である。
【0023】
以下で、免震装置10の取付構造について説明するが、ここでは、積層ゴム11の下部に固定された下部取付プレート13と下部構造物111との間の取付構造について説明する。なお、積層ゴム11の上部に固定された上部取付プレート12と上部構造物101との間の取付構造についてもほぼ同様の構造である。
【0024】
図2に示すように、第1実施形態の免震装置10は、積層ゴム11と、上部取付プレート12と、下部取付プレート13とに加えて、下部切欠部(切欠部)16を備える。
【0025】
下部構造物111は、上面112に鉛直方向の下方に凹む凹部113が形成される。凹部113は、鉛直軸線O(図1参照)を中心とする円板形状をなす。凹部113は、外径が下部取付プレート13より大きい。アンカープレート21は、鉛直軸線O(図1参照)を中心とするリング形状または円板形状をなす。アンカープレート21は、外径が下部取付プレート13より大きく、凹部113とほぼ同径である。なお、上部取付プレート12が多角形板形状であった場合、凹部113とアンカープレート21も上部取付プレート12と同形状であることが好ましい。この場合であっても、アンカープレート21の外縁部が下部取付プレート13の外縁部より径方向の外側に位置する。アンカープレート21は、下部構造物111の凹部113に配置されて固定される。本実施形態では、アンカープレート21は、上面21aが下部構造物111の上面112と鉛直方向に段差なく平坦面として連続している。但し、アンカープレート21は、上面21aと下部構造物111の上面112との間に鉛直方向の段差があってもよい。
【0026】
なお、下部構造物111に凹部113やアンカープレート21を設けなくてもよく。下部構造物111の上面112に免震装置10の下部取付プレート13を直接密着させて締結してもよい。
【0027】
下部取付プレート13は、円板形状をなし、外径が積層ゴム11の外径より大きい。下部取付プレート13は、積層ゴム11より径方向の外方である外周部に鉛直方向に沿う取付孔31が形成される。取付孔31は、鉛直軸線O1を中心とする円形孔であり、下部取付プレート13を板厚方向に貫通する。取付孔31は、鉛直軸線O(図1参照)を中心とする周方向に間隔(好ましくは、等間隔)を空けて複数形成される。
【0028】
下部構造物111は、アンカープレート21の下方に袋ナット41が埋設される。袋ナット41は、円筒形状をなし、鉛直方向の上方が開口し、鉛直方向の下方が閉塞する。袋ナット41は、内周面に雌ねじ部41aが形成される。袋ナット41は、下部取付プレート13に形成された複数の取付孔31とほぼ同位置に配置される。すなわち、複数の袋ナット41は、鉛直軸線O1に沿って設けられ、取付孔31と同様に、鉛直軸線O(図1参照)を中心とする周方向に間隔(好ましくは、等間隔)を空けて形成される。なお、本実施形態では、袋ナット41を突起付き袋ナットとしたが、この構成に限るものではなく、例えば、突起付きボルトなどであってもよい。また、一般的なナットであってもよい。
【0029】
また、アンカープレート21は、下部取付プレート13の各取付孔31と各袋ナット41の位置に貫通孔22が形成される。貫通孔22は、鉛直軸線O1に沿って貫通するように形成され、取付孔31や袋ナット41と同様に、鉛直軸線O(図1参照)を中心とする周方向に間隔(好ましくは、等間隔)を空けて形成される。すなわち、下部取付プレート13の取付孔31と、アンカープレート21の貫通孔22と、袋ナット41とは、鉛直軸線O1上に配置される。
【0030】
下部ボルト15は、頭部15aと、軸部15bと、雄ねじ部15cとを有する。下部ボルト15は、鉛直方向の上方から先端部(下端部)が下部取付プレート13の取付孔31およびアンカープレート21の貫通孔22に挿通され、雄ねじ部15cが袋ナット41の雌ねじ部41aに螺合する。下部取付プレート13が下部ボルト15により下部構造物111に締結されることで、免震装置10が下部構造物111に固定される。
【0031】
下部切欠部16は、下部取付プレート13の外縁部側で下部構造物111の取付面に対向する位置に設けられる。第1実施形態にて、下部構造物111の取付面は、アンカープレート21の上面21aである。但し、下部構造物111に凹部113やアンカープレート21がない場合、下部構造物111の取付面は、上面112である。
【0032】
下部取付プレート13は、上面13aと下面13bとが平行をなす。すなわち。下部取付プレート13は、水平方向の各位置で厚さが一定である。下部切欠部16は、下部取付プレート13の下面13bに設けられる。下部切欠部16は、下部取付プレート13における下面13bの外縁部の全周に連続して設けられる。但し、下部切欠部16は、免震装置10に作用する荷重に応じて下部取付プレート13における下面13bの外縁部における周方向の一部(180度など)に設けてもよい。下部切欠部16は、下部取付プレート13における各取付孔31より径方向の外側の外縁部側に設けられる。
【0033】
下部取付プレート13は、下面13bに水平方向に対して傾斜するテーパ形状をなすテーパ面51が形成される。下部切欠部16は、下部取付プレート13のテーパ面51により形成される。すなわち、下部切欠部16は、下部構造物111の取付面(アンカープレート21の上面21a)に対する対向面と取付面(アンカープレート21の上面21a)との距離が、下部取付プレート13の外縁部側に向けて大きくなる。
【0034】
下部切欠部16を構成するテーパ面51は、平坦面である。すなわち、下部取付プレート13は、下面13bがアンカープレート21の上面21aに接触し、外縁部側に下部切欠部16が設けられることで、下面13bに設けられたテーパ面51とアンカープレート21の上面21aとの間に鉛直方向の隙間Sが確保される。隙間Sは、下面13bとテーパ面51との交点Pから下部取付プレート13の外縁部側に向けて大きくなる。交点Pの径方向における位置は、取付孔31の内周面から交点Pまでの距離D1が、交点Pから下部取付プレート13の外縁部までの距離D2より短くなる位置が好ましい。例えば、距離D2は、1cm以上、隙間Sは、1cm以上設けることが好ましい。
【0035】
なお、下部取付プレート13と下部構造物111との間の締結構造にて、下部切欠部16について説明したが、上部取付プレート12と上部構造物101との間の締結構造にて、図示しないが、上部取付プレート12に上部切欠部が設けられる。
【0036】
<免震装置の作動>
図3は、荷重が作用したときの下部取付プレートの変形状態を表す縦断面図である。
【0037】
図2に示すように、上部構造物101と下部構造物111との間に離間する方向(例えば、水平方向)の荷重が作用すると、免震装置10は、下部構造物111に対して上方への引張応力が作用することがある。すると、免震装置10は、下部取付プレート13がこの引張応力により弾性変形する。すなわち、図3に示すように、下部ボルト15が上方への引張応力を受けて軸方向の上方に伸長すると、下部取付プレート13は、下部ボルト15により下部構造物111に締結された部分が上方に移動するように変形する。つまり、下部取付プレート13は、下面13bとテーパ面51との交点Pを支点として、図3にて時計回り方向に若干回動する。
【0038】
下部取付プレート13は、下部切欠部16が設けられ、テーパ面51とアンカープレート21の上面21aとの間に隙間Sが設けられている。そのため、下部取付プレート13は、外縁部がアンカープレート21の上面21aに接触することが抑制される。下部取付プレート13は、外縁部がアンカープレート21の上面21aに接触しないと、外縁部がてこの支点にはならず、下部取付プレート13の外縁部側に応力が作用しない。その結果、下部取付プレート13は、外縁部の変形が抑制され、下部ボルト15に作用する引張応力が低減される。
【0039】
[第2実施形態]
図4は、第2実施形態の免震装置の取付構造を表す縦断面図である。なお、上述した第1実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0040】
図4に示すように、第2実施形態の免震装置10Aは、積層ゴム11と、上部取付プレート12と、下部取付プレート13と、下部切欠部(切欠部)16Aをと備える。ここで、積層ゴム11と上部取付プレート12と下部取付プレート13は、第1実施形態と同様であり、説明は省略する。
【0041】
下部切欠部16Aは、下部取付プレート13の外縁部側で下部構造物111の取付面に対向する位置に設けられる。第2実施形態にて、下部構造物111の取付面は、アンカープレート21の上面21aである。
【0042】
下部切欠部16Aは、下部取付プレート13の下面13bに設けられる。下部切欠部16Aは、下部取付プレート13における下面13bの外縁部の全周に連続して設けられる。切欠部16Aは、下部取付プレート13における各取付孔31より径方向の外側の外縁部側に設けられる。
【0043】
下部切欠部16Aは、湾曲形状をなし、水平方向に対して傾斜するテーパ面52である。すなわち、下部切欠部16Aは、下部構造物111の取付面(アンカープレート21の上面21a)に対する対向面と取付面(アンカープレート21の上面21a)との距離が、下部取付プレート13の外縁部側に向けて大きくなる。
【0044】
下部切欠部16Aは、テーパ面52が湾曲形状をなす円弧面である。すなわち、下部取付プレート13は、下面13bがアンカープレート21の上面21aに接触し、外縁部側に下部切欠部16Aが設けられることで、下面13bに設けられたテーパ面52とアンカープレート21の上面21aとの間に鉛直方向の隙間Sが確保される。隙間Sは、下面13bとテーパ面52との交点Pから下部取付プレート13の外縁部側に向けて大きくなる。テーパ面52は、鉛直方向の下方に円弧状に突出する形状をなす。テーパ面42は、例えば、下部取付プレート13の上方に中心O3が位置する円弧である。なお、テーパ面52は、鉛直方向の上方に円弧状に凹む湾曲形状であってもよい。
【0045】
なお、免震装置10Aの作動は、第1実施形態の免震装置10の作動とほぼ同様であり、説明は省略する。
【0046】
[第3実施形態]
図5は、第3実施形態の免震装置の取付構造を表す縦断面図である。なお、上述した第1実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0047】
図5に示すように、第3実施形態の免震装置10Bは、積層ゴム11と、上部取付プレート12と、下部取付プレート13と、下部切欠部(切欠部)16Bをと備える。ここで、積層ゴム11と上部取付プレート12と下部取付プレート13は、第1実施形態と同様であり、説明は省略する。
【0048】
下部切欠部16Bは、下部取付プレート13の外縁部側で下部構造物111の取付面に対向する位置に設けられる。第2実施形態にて、下部構造物111の取付面は、アンカープレート21の上面21aである。
【0049】
下部切欠部16Bは、下部取付プレート13の下面13bに設けられる。下部切欠部16Bは、下部取付プレート13における下面13bの外縁部の全周に連続して設けられる。切欠部16Bは、下部取付プレート13における各取付孔31より径方向の外側の外縁部側に設けられる。
【0050】
下部切欠部16Bは、矩形の切欠形状をなす切欠面53である。すなわち、下部切欠部16Bは、下部構造物111の取付面(アンカープレート21の上面21a)に対する対向面と取付面(アンカープレート21の上面21a)との距離が、下部取付プレート13の外縁部側に向けて一定である。
【0051】
下部切欠部16Bは、切欠面53が水平切欠面53aと鉛直切欠面53bとから構成される。すなわち、下部取付プレート13は、下面13bがアンカープレート21の上面21aに接触し、外縁部側に下部切欠部16Bが設けられることで、下面13bに設けられた切欠面53とアンカープレート21の上面21aとの間に鉛直方向の隙間Sが確保される。隙間Sは、下面13bと切欠面53との交点Pから下部取付プレート13の外縁部側に向けて一定である。水平切欠面53aは、下部取付プレート13の下面13bと段差をもった面であり、鉛直切欠面53bは、下部取付プレート13の下面13bと直交する面である。なお、切欠面53にて、水平切欠面53aは、第1実施形態および第2実施形態のテーパ面51,52であってもよい。また、鉛直切欠面53bは、鉛直方向に対して傾斜した面であってもよい。
【0052】
なお、免震装置10Bの作動は、第1実施形態の免震装置10の作動とほぼ同様であり、説明は省略する。
【0053】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態の免震装置は、積層ゴム(免震用積層ゴム)11と、積層ゴム11の端部に設けられて上部構造物101と下部構造物111にそれぞれ取付けられる取付プレート12,13と、取付プレート12,13の外縁部側で構造物101,111の取付面に対向する位置に設けられる切欠部16,16A,16Bとを備える。
【0054】
本実施形態の免震装置によれば、免震装置10に対して引張応力が作用し、例えば、下部取付プレート13が変形すると、下部取付プレート13は、下面13bと下部切欠部16,16A,16Bとの交点Pを支点として回動する。このとき、下部取付プレート13は、切欠部16,16A,16Bによりアンカープレート21の上面21aに対する外縁部の接触が抑制される。その結果、下部取付プレート13は、外縁部がてこの支点となることはなく、外縁部側の変形が抑制され、下部ボルト15に作用する応力の低減を図ることができる。
【0055】
本実施形態の免震装置は、取付プレート12,13に周方向に間隔を空けて複数の取付孔31が設けられ、切欠部16,16A,16Bが取付孔31より外縁部側に設けられる。そのため、取付プレート12,13の外縁部とアンカープレート21の上面21aとの接触を効果的に抑制することができる。
【0056】
本実施形態の免震装置は、積層ゴム11の上部に設けられて上部構造物101に取付けられる上部取付プレート12と、積層ゴム11の下部に設けられて下部構造物111に取付けられる下部取付プレート13とを有し、切欠部16,16A,16Bが上部取付プレート12と下部取付プレート13の少なくともいずれか一方に設けられる。そのため、上部取付プレート12と下部取付プレート13の少なくともいずれか一方側で外縁部側の変形が抑制され、ボルト14,15に作用する応力を低減することができる。
【0057】
本実施形態の免震装置は、上部取付プレート12に設けられる上部切欠部と、下部取付プレート13に設けられる下部切欠部16,16A,16Bとを有する。そのため、免震装置10,10A,10Bは、上部取付プレート12側と下部取付プレート13側の両方で、ボルト14,15に作用する応力を低減することができる。
【0058】
本実施形態の免震装置は、切欠部16,16A,16Bが取付プレート12,13の全周に連続して設けられる。そのため、免震装置10,10A,10Bに作用する荷重の方向にかかわらず、ボルト14,15に作用する応力を低減することができる。
【0059】
本実施形態の免震装置は、切欠部16,16A,16Bにて、構造物101,111に対する対向面と構造物101,111の取付面との距離が取付プレート12,13の外縁部側に向けて大きくなるテーパ形状をなす。そのため、取付プレート12,13自体の剛性の低下を抑制することができる。
【0060】
なお、上述した実施形態では、上部取付プレート12に上部切欠部を設け、下部取付プレート13に下部切欠部16,16A,16Bを設けたが、上部取付プレート12と下部取付プレート13の少なくともいずれか一方に設けられていればよい。例えば、上部構造物101と下部構造物111のうちの強度が低い側の構造物に適用することが望ましい。
【0061】
また、上述した実施形態では、下部取付プレート13に下部切欠部16,16A,16Bを設けることで、下部取付プレート13と下部構造物111との間に空間部を設けている。この場合、この空間部に下部取付プレート13の変形に伴って変形可能な軟質部材を配置してもよい。なお、上部切欠部についても同様である。
【符号の説明】
【0062】
10,10A,10B 免震装置
11 積層ゴム(免震用積層ゴム)
12 上部取付プレート(取付プレート)
13 下部取付プレート(取付プレート)
14 上部ボルト
15 下部ボルト
16,16A,16B 下部切欠部(切欠部)
21 アンカープレート
21a 上面(取付面)
22 貫通孔
31 取付孔
41 袋ナット
51,52 テーパ面
53 切欠面
101 上部構造物
102 下面
111 下部構造物
112 上面
113 凹部
図1
図2
図3
図4
図5