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特開2024-88966アレイアンテナ装置及びアレイアンテナ校正プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088966
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】アレイアンテナ装置及びアレイアンテナ校正プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/08 20060101AFI20240626BHJP
   H01Q 3/26 20060101ALI20240626BHJP
   H01Q 21/06 20060101ALI20240626BHJP
   H01Q 21/08 20060101ALI20240626BHJP
   H04B 7/06 20060101ALI20240626BHJP
   G01R 29/10 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
H04B7/08 982
H01Q3/26 Z
H01Q21/06
H01Q21/08
H04B7/06 982
G01R29/10 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204034
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100173716
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】勝本 達也
(72)【発明者】
【氏名】嶋村 重治
(72)【発明者】
【氏名】工藤 俊紀
【テーマコード(参考)】
5J021
【Fターム(参考)】
5J021AA05
5J021AA07
5J021AA09
5J021AA11
5J021DB02
5J021DB03
5J021FA06
5J021FA12
5J021FA26
5J021JA10
(57)【要約】
【課題】本開示は、アレイアンテナ装置の製造段階(温度変動前又は経年変動前)に、各々のサブアレイの間において、位相・振幅を校正するにあたり、遠方界距離での電波測定を不要とするとともに、各々のサブアレイと基準信号源との間の伝送線路の等長構成を不要とすることを目的とする。
【解決手段】本開示では、各々のサブアレイにおいて、受信系の位相・振幅を校正するにあたり、単一の校正用送信機を備える。そして、サブアレイのペアにおいて、単一の校正用送信機(2通り)の送信信号について、単一又は複数のアンテナ素子の受信機(2通り)の受信信号を測定する。さらに、これらの受信信号(2×2=4通り)に基づいて、サブアレイのペアにおいて、受信系の位相・振幅差を補償する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のサブアレイを備えるアレイアンテナ装置であって、
各々のサブアレイは、複数のアンテナ素子と、各々のアンテナ素子の受信機と、各々のアンテナ素子の位相・振幅調整手段(前記各々のサブアレイ内で校正済み)と、を備え、
前記アレイアンテナ装置は、その製造段階に前記各々のサブアレイの間において、各々の受信系の位相・振幅差を補償するサブアレイ間校正部を、前記複数のサブアレイの内部及び外部に渡って備え、又は、前記複数のサブアレイの内部及び外部の一方に備え、
前記各々のサブアレイは、単一の校正用送信機と、単一の校正用送信機の送信信号について、前記各々のサブアレイの単一又は複数のアンテナ素子の受信機と他のサブアレイの単一又は複数のアンテナ素子の受信機とのいずれかへ分岐するスイッチと、を備え、
前記各々のサブアレイと前記他のサブアレイとは、ケーブルで接続され、
前記サブアレイ間校正部は、前記スイッチの分岐方向を制御するスイッチ制御部と、
前記各々のサブアレイの単一の校正用送信機の送信信号について、前記各々のサブアレイの単一又は複数のアンテナ素子の受信機の第1受信信号を測定する第1受信信号測定部と、
前記他のサブアレイの単一の校正用送信機の送信信号について、前記他のサブアレイの単一又は複数のアンテナ素子の受信機の第2受信信号を測定する第2受信信号測定部と、
前記各々のサブアレイの単一の校正用送信機の送信信号について、前記他のサブアレイの単一又は複数のアンテナ素子の受信機の第3受信信号を測定する第3受信信号測定部と、
前記他のサブアレイの単一の校正用送信機の送信信号について、前記各々のサブアレイの単一又は複数のアンテナ素子の受信機の第4受信信号を測定する第4受信信号測定部と、
前記第1受信信号、前記第2受信信号、前記第3受信信号及び前記第4受信信号に基づいて、前記各々のサブアレイと前記他のサブアレイとの間において、各々の受信系の位相・振幅差を補償する位相・振幅差補償部と、
を備えることを特徴とするアレイアンテナ装置。
【請求項2】
複数のサブアレイを備えるアレイアンテナ装置であって、
各々のサブアレイは、複数のアンテナ素子と、各々のアンテナ素子の送信機と、各々のアンテナ素子の位相・振幅調整手段(前記各々のサブアレイ内で校正済み)と、を備え、
前記アレイアンテナ装置は、その製造段階に前記各々のサブアレイの間において、各々の送信系の位相・振幅差を補償するサブアレイ間校正部を、前記複数のサブアレイの内部及び外部に渡って備え、又は、前記複数のサブアレイの内部及び外部の一方に備え、
前記各々のサブアレイは、単一の校正用受信機と、単一又は複数のアンテナ素子の送信機の送信信号について、前記各々のサブアレイの単一の校正用受信機と他のサブアレイの単一の校正用受信機とのいずれかへ分岐するスイッチと、を備え、
前記各々のサブアレイと前記他のサブアレイとは、ケーブルで接続され、
前記サブアレイ間校正部は、前記スイッチの分岐方向を制御するスイッチ制御部と、
前記各々のサブアレイの単一又は複数のアンテナ素子の送信機の送信信号について、前記各々のサブアレイの単一の校正用受信機の第1受信信号を測定する第1受信信号測定部と、
前記他のサブアレイの単一又は複数のアンテナ素子の送信機の送信信号について、前記他のサブアレイの単一の校正用受信機の第2受信信号を測定する第2受信信号測定部と、
前記各々のサブアレイの単一又は複数のアンテナ素子の送信機の送信信号について、前記他のサブアレイの単一の校正用受信機の第3受信信号を測定する第3受信信号測定部と、
前記他のサブアレイの単一又は複数のアンテナ素子の送信機の送信信号について、前記各々のサブアレイの単一の校正用受信機の第4受信信号を測定する第4受信信号測定部と、
前記第1受信信号、前記第2受信信号、前記第3受信信号及び前記第4受信信号に基づいて、前記各々のサブアレイと前記他のサブアレイとの間において、各々の送信系の位相・振幅差を補償する位相・振幅差補償部と、
を備えることを特徴とするアレイアンテナ装置。
【請求項3】
前記複数のサブアレイは、1次元方向に配列され、
前記各々のサブアレイと隣接サブアレイとは、前記ケーブルで接続され、
前記サブアレイ間校正部は、前記アレイアンテナ装置の製造段階において、前記各々のサブアレイと前記隣接サブアレイとの間において、各々の受信系又は送信系の位相・振幅差を補償することにより、1次元方向に配列される前記複数のサブアレイの間において、各々の受信系又は送信系の位相・振幅差を補償する
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載のアレイアンテナ装置。
【請求項4】
前記複数のサブアレイは、1次元方向に配列され、
特定サブアレイと前記他のサブアレイとは、前記ケーブルで接続され、
前記サブアレイ間校正部は、前記アレイアンテナ装置の製造段階において、前記特定サブアレイと前記他のサブアレイとの間において、各々の受信系又は送信系の位相・振幅差を補償することにより、1次元方向に配列される前記複数のサブアレイの間において、各々の受信系又は送信系の位相・振幅差を補償する
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載のアレイアンテナ装置。
【請求項5】
前記複数のサブアレイは、2次元面内(x軸及びy軸を含む)に配列され、
前記サブアレイ間校正部は、前記アレイアンテナ装置の製造段階において、各々のx軸座標においてy軸方向に配列される前記複数のサブアレイの間において、各々の受信系又は送信系の位相・振幅差を補償したうえで、単一の又は各々のy軸座標においてx軸方向に配列される前記複数のサブアレイの間において、各々の受信系又は送信系の位相・振幅差を補償することにより、2次元面内に配列される前記複数のサブアレイの間において、各々の受信系又は送信系の位相・振幅差を補償する
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載のアレイアンテナ装置。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のアレイアンテナ装置が備える前記サブアレイ間校正部が行なう各処理ステップを、コンピュータ又はハードウェアロジック(Field Programmable Gate Array(FPGA)を含む。)に実行させるためのアレイアンテナ校正プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アレイアンテナ装置の位相・振幅を校正する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
アレイアンテナ装置は、アンテナ素子数の増加により、全体のサイズが大型化するため、1つのユニットの構成が困難になる。そこで、アレイアンテナ装置は、複数のサブアレイの配列により、各々のサブアレイが小型であっても、全体のサイズの大型化が実現される。また、アレイアンテナ装置は、サブアレイの個数を柔軟に変更し、全体のサイズを変更することで、所望の性能を有するアンテナを構成しやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平03-038548号公報
【特許文献2】特公平04-010994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、アレイアンテナ装置は、その製造段階(温度変動前又は経年変動前)に、各々のサブアレイ内において、そして、各々のサブアレイの間において、受信系又は送信系の回路全体(増幅器、周波数変換器及びプリント基板等)にばらつきが元々存在するため、受信系又は送信系の回路全体の位相・振幅を校正する必要がある。アレイアンテナ装置の位相・振幅を校正する技術が、特許文献1、2等に開示されている。
【0005】
特許文献1では、アレイアンテナ装置は、空間に電波を放射したうえで、REV法(Rotating element Electric field Vector method)を適用する。そして、アレイアンテナ装置は、各々のサブアレイ内と同様に、各々のサブアレイの間においても、同様の方法を適用することができる。しかし、アレイアンテナ装置の全体のサイズが大型化したときに、遠方界距離での電波測定が必要となるため、電波測定に必要な施設が大型化し、既存の施設で電波測定が困難になる。
【0006】
特許文献2では、アレイアンテナ装置は、その製造段階に、送受信信号の一部をループバックさせ、送受信信号の一部と基準信号との間の相関結果に基づいて、位相・振幅を校正する。そして、アレイアンテナ装置は、各々のサブアレイ内と同様に、各々のサブアレイの間においても、同様の方法を適用することができる。しかし、各々のサブアレイと単一の基準信号源との間の伝送線路が等長に構成される必要があるため、アレイアンテナ装置の全体のサイズが大型化したときに、上記の方法の適用が困難になる。
【0007】
そこで、前記課題を解決するために、本開示は、アレイアンテナ装置の製造段階(温度変動前又は経年変動前)に、各々のサブアレイの間において、位相・振幅を校正するにあたり、遠方界距離での電波測定を不要とするとともに、各々のサブアレイと基準信号源との間の伝送線路の等長構成を不要とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、各々のサブアレイにおいて、受信系の位相・振幅を校正するにあたり、単一の校正用送信機を備える。そして、サブアレイのペアにおいて、単一の校正用送信機(2通り)の送信信号について、単一又は複数のアンテナ素子の受信機(2通り)の受信信号を測定する。さらに、これらの受信信号(2×2=4通り)に基づいて、サブアレイのペアにおいて、受信系の位相・振幅差を補償する。ここで、サブアレイのペアの間のケーブルの伝達係数と、各々のサブアレイの単一の校正用送信機の送信信号の位相・振幅とは、受信系の位相・振幅差の補償に影響しない。
【0009】
具体的には、本開示は、複数のサブアレイを備えるアレイアンテナ装置であって、
各々のサブアレイは、複数のアンテナ素子と、各々のアンテナ素子の受信機と、各々のアンテナ素子の位相・振幅調整手段(前記各々のサブアレイ内で校正済み)と、を備え、
前記アレイアンテナ装置は、その製造段階に前記各々のサブアレイの間において、各々の受信系の位相・振幅差を補償するサブアレイ間校正部を、前記複数のサブアレイの内部及び外部に渡って備え、又は、前記複数のサブアレイの内部及び外部の一方に備え、
前記各々のサブアレイは、単一の校正用送信機と、単一の校正用送信機の送信信号について、前記各々のサブアレイの単一又は複数のアンテナ素子の受信機と他のサブアレイの単一又は複数のアンテナ素子の受信機とのいずれかへ分岐するスイッチと、を備え、
前記各々のサブアレイと前記他のサブアレイとは、ケーブルで接続され、
前記サブアレイ間校正部は、前記スイッチの分岐方向を制御するスイッチ制御部と、
前記各々のサブアレイの単一の校正用送信機の送信信号について、前記各々のサブアレイの単一又は複数のアンテナ素子の受信機の第1受信信号を測定する第1受信信号測定部と、
前記他のサブアレイの単一の校正用送信機の送信信号について、前記他のサブアレイの単一又は複数のアンテナ素子の受信機の第2受信信号を測定する第2受信信号測定部と、
前記各々のサブアレイの単一の校正用送信機の送信信号について、前記他のサブアレイの単一又は複数のアンテナ素子の受信機の第3受信信号を測定する第3受信信号測定部と、
前記他のサブアレイの単一の校正用送信機の送信信号について、前記各々のサブアレイの単一又は複数のアンテナ素子の受信機の第4受信信号を測定する第4受信信号測定部と、
前記第1受信信号、前記第2受信信号、前記第3受信信号及び前記第4受信信号に基づいて、前記各々のサブアレイと前記他のサブアレイとの間において、各々の受信系の位相・振幅差を補償する位相・振幅差補償部と、
を備えることを特徴とするアレイアンテナ装置である。
【0010】
この構成によれば、アレイアンテナ装置の製造段階(温度変動前又は経年変動前)に、各々のサブアレイの間において、受信系の位相・振幅を校正するにあたり、遠方界距離での電波測定を不要とするとともに、各々のサブアレイと他のサブアレイとの間の伝送線路の等長構成を不要とする(伝達係数の影響除去)ことができる。
【0011】
前記課題を解決するために、各々のサブアレイにおいて、送信系の位相・振幅を校正するにあたり、単一の校正用受信機を備える。そして、サブアレイのペアにおいて、単一又は複数のアンテナ素子の送信機(2通り)の送信信号について、単一の校正用受信機(2通り)の受信信号を測定する。さらに、これらの受信信号(2×2=4通り)に基づいて、サブアレイのペアにおいて、送信系の位相・振幅差を補償する。ここで、サブアレイのペアの間のケーブルの伝達係数と、各々のサブアレイの単一の校正用受信機の受信伝達係数とは、送信系の位相・振幅差の補償に影響しない。
【0012】
具体的には、本開示は、複数のサブアレイを備えるアレイアンテナ装置であって、
各々のサブアレイは、複数のアンテナ素子と、各々のアンテナ素子の送信機と、各々のアンテナ素子の位相・振幅調整手段(前記各々のサブアレイ内で校正済み)と、を備え、
前記アレイアンテナ装置は、その製造段階に前記各々のサブアレイの間において、各々の送信系の位相・振幅差を補償するサブアレイ間校正部を、前記複数のサブアレイの内部及び外部に渡って備え、又は、前記複数のサブアレイの内部及び外部の一方に備え、
前記各々のサブアレイは、単一の校正用受信機と、単一又は複数のアンテナ素子の送信機の送信信号について、前記各々のサブアレイの単一の校正用受信機と他のサブアレイの単一の校正用受信機とのいずれかへ分岐するスイッチと、を備え、
前記各々のサブアレイと前記他のサブアレイとは、ケーブルで接続され、
前記サブアレイ間校正部は、前記スイッチの分岐方向を制御するスイッチ制御部と、
前記各々のサブアレイの単一又は複数のアンテナ素子の送信機の送信信号について、前記各々のサブアレイの単一の校正用受信機の第1受信信号を測定する第1受信信号測定部と、
前記他のサブアレイの単一又は複数のアンテナ素子の送信機の送信信号について、前記他のサブアレイの単一の校正用受信機の第2受信信号を測定する第2受信信号測定部と、
前記各々のサブアレイの単一又は複数のアンテナ素子の送信機の送信信号について、前記他のサブアレイの単一の校正用受信機の第3受信信号を測定する第3受信信号測定部と、
前記他のサブアレイの単一又は複数のアンテナ素子の送信機の送信信号について、前記各々のサブアレイの単一の校正用受信機の第4受信信号を測定する第4受信信号測定部と、
前記第1受信信号、前記第2受信信号、前記第3受信信号及び前記第4受信信号に基づいて、前記各々のサブアレイと前記他のサブアレイとの間において、各々の送信系の位相・振幅差を補償する位相・振幅差補償部と、
を備えることを特徴とするアレイアンテナ装置である。
【0013】
この構成によれば、アレイアンテナ装置の製造段階(温度変動前又は経年変動前)に、各々のサブアレイの間において、送信系の位相・振幅を校正するにあたり、遠方界距離での電波測定を不要とするとともに、各々のサブアレイと他のサブアレイとの間の伝送線路の等長構成を不要とする(伝達係数の影響除去)ことができる。
【0014】
また、本開示は、前記複数のサブアレイは、1次元方向に配列され、
前記各々のサブアレイと隣接サブアレイとは、前記ケーブルで接続され、
前記サブアレイ間校正部は、前記アレイアンテナ装置の製造段階において、前記各々のサブアレイと前記隣接サブアレイとの間において、各々の受信系又は送信系の位相・振幅差を補償することにより、1次元方向に配列される前記複数のサブアレイの間において、各々の受信系又は送信系の位相・振幅差を補償する
ことを特徴とするアレイアンテナ装置である。
【0015】
この構成によれば、複数のサブアレイが1次元方向に配列されるときに、各々のサブアレイと隣接サブアレイとがケーブルで接続されるため、アレイアンテナ装置でのケーブルの配列が簡便になり、アレイアンテナ装置でのケーブルの長さが短縮される。
【0016】
また、本開示は、前記複数のサブアレイは、1次元方向に配列され、
特定サブアレイと前記他のサブアレイとは、前記ケーブルで接続され、
前記サブアレイ間校正部は、前記アレイアンテナ装置の製造段階において、前記特定サブアレイと前記他のサブアレイとの間において、各々の受信系又は送信系の位相・振幅差を補償することにより、1次元方向に配列される前記複数のサブアレイの間において、各々の受信系又は送信系の位相・振幅差を補償する
ことを特徴とするアレイアンテナ装置である。
【0017】
この構成によれば、複数のサブアレイが1次元方向に配列されるときに、特定サブアレイと他のサブアレイとがケーブルで接続されるため、あるサブアレイのペアでの位相・振幅の校正誤差が、他のサブアレイのペアでの位相・振幅の校正に波及しない。
【0018】
また、本開示は、前記複数のサブアレイは、2次元面内(x軸及びy軸を含む)に配列され、
前記サブアレイ間校正部は、前記アレイアンテナ装置の製造段階において、各々のx軸座標においてy軸方向に配列される前記複数のサブアレイの間において、各々の受信系又は送信系の位相・振幅差を補償したうえで、単一の又は各々のy軸座標においてx軸方向に配列される前記複数のサブアレイの間において、各々の受信系又は送信系の位相・振幅差を補償することにより、2次元面内に配列される前記複数のサブアレイの間において、各々の受信系又は送信系の位相・振幅差を補償する
ことを特徴とするアレイアンテナ装置である。
【0019】
この構成によれば、複数のサブアレイが2次元面内に配列されるときであっても、複数のサブアレイが1次元方向に配列されるときを応用して、x軸方向及びy軸方向に沿って、各々のサブアレイの間において、位相・振幅を校正することができる。
【0020】
また、本開示は、以上に記載のアレイアンテナ装置が備える前記サブアレイ間校正部が行なう各処理ステップを、コンピュータ又はハードウェアロジック(Field Programmable Gate Array(FPGA)を含む。)に実行させるためのアレイアンテナ校正プログラムである。
【0021】
この構成によれば、以上の効果を有するプログラムを提供することができる。
【0022】
なお、上記各開示の発明は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0023】
このように、本開示は、アレイアンテナ装置の製造段階(温度変動前又は経年変動前)に、各々のサブアレイの間において、位相・振幅を校正するにあたり、遠方界距離での電波測定を不要とするとともに、各々のサブアレイと基準信号源との間の伝送線路の等長構成を不要とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】製造段階でのアレイアンテナ装置の構成を示す図である。
図2】製造段階でのアレイアンテナ装置の構成を示す図である。
図3】製造段階での受信系のサブアレイ間校正処理の手順を示す図である。
図4】製造段階での受信系のサブアレイ間校正処理の具体例を示す図である。
図5】製造段階での送信系のサブアレイ間校正処理の手順を示す図である。
図6】製造段階での送信系のサブアレイ間校正処理の具体例を示す図である。
図7】1次元方向に配列されたアレイアンテナ装置の構成を示す図である。
図8】1次元方向に配列されたアレイアンテナ装置の構成を示す図である。
図9】2次元面内に配列されたアレイアンテナ装置の構成を示す図である。
図10】第1の変形例のサブアレイの構成を示す図である。
図11】第2の変形例のサブアレイの構成を示す図である。
図12】運用段階でのアレイアンテナ装置の構成を示す図である。
図13】運用段階でのアレイアンテナ装置の構成を示す図である。
図14】運用段階での受信系のサブアレイ間校正処理の手順を示す図である。
図15】運用段階での受信系のサブアレイ間校正処理の具体例を示す図である。
図16】運用段階での受信系のサブアレイ位相・振幅調整処理の具体例を示す図である。
図17】運用段階での送信系のサブアレイ間校正処理の手順を示す図である。
図18】運用段階での送信系のサブアレイ間校正処理の具体例を示す図である。
図19】運用段階での送信系のサブアレイ位相・振幅調整処理の具体例を示す図である。
図20】1次元方向に配列されたアレイアンテナ装置の構成を示す図である。
図21】1次元方向に配列されたアレイアンテナ装置の構成を示す図である。
図22】2次元面内に配列されたアレイアンテナ装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
添付の図面を参照して本開示の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本開示の実施の例であり、本開示は以下の実施形態に制限されるものではない。
【0026】
(製造段階でのアレイアンテナ装置の構成)
製造段階でのアレイアンテナ装置の構成を図1、2に示す。アレイアンテナ装置Aは、サブアレイS-1、S-2を備える。サブアレイS-1は、アンテナ素子1-11、・・・、1-1Nと、送受信機2-11、・・・、2-1Nと、位相調整器3-11、・・・、3-1N及び振幅調整器4-11、・・・、4-1Nを備える。サブアレイS-2は、アンテナ素子1-21、・・・、1-2Nと、送受信機2-21、・・・、2-2Nと、位相調整器3-21、・・・、3-2N及び振幅調整器4-21、・・・、4-2Nを備える。
【0027】
送受信機2-11、・・・、2-1N、位相調整器3-11、・・・、3-1N及び振幅調整器4-11、・・・、4-1Nは、「サブアレイS-1内」で、特許文献1、2等の従来技術を用いて校正済みである。送受信機2-21、・・・、2-2N、位相調整器3-21、・・・、3-2N及び振幅調整器4-21、・・・、4-2Nは、「サブアレイS-2内」で、特許文献1、2等の従来技術を用いて校正済みである。
【0028】
アレイアンテナ装置Aは、その製造段階(温度変動前又は経年変動前)に、「サブアレイS-1、S-2の間」において、送受信機2-11、・・・、2-1N、位相調整器3-11、・・・、3-1N及び振幅調整器4-11、・・・、4-1Nと、送受信機2-21、・・・、2-2N、位相調整器3-21、・・・、3-2N及び振幅調整器4-21、・・・、4-2Nと、の間の位相・振幅差を補償するサブアレイ間校正部Iを、サブアレイS-1、S-2の内部及び外部に渡って備え、又は、サブアレイS-1、S-2の内部及び外部の一方に備える(図1では、前者の場合を示し、図2では、後者の場合を示す。)。
【0029】
サブアレイS-1は、校正用送受信機5-1と、スイッチ6-1と、を備える。スイッチ6-1は、校正用送受信機5-1の送信信号について、送受信機2-11(又は送受信機2-11、・・・、2-1N)と送受信機2-21(又は送受信機2-21、・・・、2-2N)とのいずれかへ分岐し、送受信機2-11(又は送受信機2-11、・・・、2-1N)の送信信号について、校正用送受信機5-1と校正用送受信機5-2(後述)とのいずれかへ分岐する。
【0030】
サブアレイS-2は、校正用送受信機5-2と、スイッチ6-2と、を備える。スイッチ6-2は、校正用送受信機5-2の送信信号について、送受信機2-21(又は送受信機2-21、・・・、2-2N)と送受信機2-11(又は送受信機2-11、・・・、2-1N)とのいずれかへ分岐し、送受信機2-21(又は送受信機2-21、・・・、2-2N)の送信信号について、校正用送受信機5-2と校正用送受信機5-1(前述)とのいずれかへ分岐する。
【0031】
サブアレイS-1、S-2は、ケーブルC-1で接続される。図1では、サブアレイS-1は、スイッチ制御部7(トリガ信号を外部又はサブアレイS-1、S-2のうちの1つから受け取る。)、第1受信信号測定部8及び第4受信信号測定部11を備え、サブアレイS-2は、スイッチ制御部7(トリガ信号を外部又はサブアレイS-1、S-2のうちの1つから受け取る。)、第2受信信号測定部9及び第3受信信号測定部10を備え、サブアレイ間校正部Iは、位相・振幅差補償部12を備える。図2では、サブアレイ間校正部Iは、スイッチ制御部7、第1受信信号測定部8、第2受信信号測定部9、第3受信信号測定部10、第4受信信号測定部11及び位相・振幅差補償部12を備える。サブアレイ間校正部Iは、図3、5に示すアレイアンテナ校正プログラムを、コンピュータにインストールすることにより、又はハードウェアロジック(Field Programmable Gate Array(FPGA)を含む。)により、実現することができる。
【0032】
このように、各々のサブアレイにおいて、「受信系」の位相・振幅を校正するにあたり、単一の校正用送信機を備える。そして、サブアレイのペアにおいて、単一の校正用送信機(2通り)の送信信号について、単一又は複数のアンテナ素子の受信機(2通り)の受信信号を測定する。さらに、これらの受信信号(2×2=4通り)に基づいて、サブアレイのペアにおいて、「受信系」の位相・振幅差を補償する。ここで、サブアレイのペアの間のケーブルの伝達係数と、各々のサブアレイの単一の校正用送信機の送信信号の位相・振幅とは、「受信系」の位相・振幅差の補償に影響しない。
【0033】
あるいは、各々のサブアレイにおいて、「送信系」の位相・振幅を校正するにあたり、単一の校正用受信機を備える。そして、サブアレイのペアにおいて、単一又は複数のアンテナ素子の送信機(2通り)の送信信号について、単一の校正用受信機(2通り)の受信信号を測定する。さらに、これらの受信信号(2×2=4通り)に基づいて、サブアレイのペアにおいて、「送信系」の位相・振幅差を補償する。ここで、サブアレイのペアの間のケーブルの伝達係数と、各々のサブアレイの単一の校正用受信機の受信伝達係数とは、「送信系」の位相・振幅差の補償に影響しない。
【0034】
まず、製造段階での「受信系」のサブアレイ間校正処理の手順について、図3、4を用いて説明する。次に、製造段階での「送信系」のサブアレイ間校正処理の手順について、図5、6を用いて説明する。次に、様々な配列のアレイアンテナ装置の構成(「受信系」及び「送信系」に適用可能)について、図7~11を用いて説明する。
【0035】
(製造段階での受信系のサブアレイ間校正処理の手順)
製造段階での受信系のサブアレイ間校正処理の手順を図3に示す。製造段階での受信系のサブアレイ間校正処理の具体例を図4に示す。サブアレイS-1において、校正用送受信機5-1の送信レベルはCであり、(位相調整器3-11の伝達係数×振幅調整器4-11の伝達係数×送受信機2-11の受信伝達係数)はPである。サブアレイS-2において、校正用送受信機5-2の送信レベルはCであり、(位相調整器3-21の伝達係数×振幅調整器4-21の伝達係数×送受信機2-21の受信伝達係数)はPである。サブアレイS-1、S-2の間において、ケーブルC-1の伝達係数はBである。
【0036】
スイッチ制御部7は、図4の左欄に示したように、スイッチ6-1、6-2の分岐方向を制御し、サブアレイS-1、S-2内の送受信を実現する。第1受信信号測定部8は、サブアレイS-1の校正用送受信機5-1の送信信号について、サブアレイS-1の送受信機2-11の受信信号i=Cを測定する(ステップS1)。
【0037】
スイッチ制御部7は、図4の左欄に示したように、スイッチ6-1、6-2の分岐方向を制御し、サブアレイS-1、S-2内の送受信を実現する。第2受信信号測定部9は、サブアレイS-2の校正用送受信機5-2の送信信号について、サブアレイS-2の送受信機2-21の受信信号i=Cを測定する(ステップS2)。
【0038】
スイッチ制御部7は、図4の右上欄に示したように、スイッチ6-1、6-2の分岐方向を制御し、サブアレイS-1、S-2間の送受信を実現する。第3受信信号測定部10は、サブアレイS-1の校正用送受信機5-1の送信信号について、サブアレイS-2の送受信機2-21の受信信号e21=Cを測定する(ステップS3)。
【0039】
スイッチ制御部7は、図4の右下欄に示したように、スイッチ6-1、6-2の分岐方向を制御し、サブアレイS-1、S-2間の送受信を実現する。第4受信信号測定部11は、サブアレイS-2の校正用送受信機5-2の送信信号について、サブアレイS-1の送受信機2-11の受信信号e12=Cを測定する(ステップS4)。
【0040】
位相・振幅差補償部12は、受信信号i、i、e21、e12に基づいて、サブアレイS-1、S-2の間において、送受信機2-11、位相調整器3-11及び振幅調整器4-11と、送受信機2-21、位相調整器3-21及び振幅調整器4-21と、の間の位相・振幅差を補償する(ステップS5)。サブアレイS-1は、送受信機2-11、位相調整器3-11及び振幅調整器4-11の位相・振幅の調整に伴って、他の送受信機2-1N等、他の位相調整器3-1N等及び他の振幅調整器4-1N等の位相・振幅の調整も行なう。サブアレイS-2は、送受信機2-21、位相調整器3-21及び振幅調整器4-21の位相・振幅の調整に伴って、他の送受信機2-2N等、他の位相調整器3-2N等及び他の振幅調整器4-2N等の位相・振幅の調整も行なう。
【0041】
ここで、位相・振幅差補償部12は、受信信号i、i、e21、e12に基づいて、送受信機2-11、位相調整器3-11及び振幅調整器4-11の伝達係数Pと、送受信機2-21、位相調整器3-21及び振幅調整器4-21の伝達係数Pと、の間の伝達係数差P/Pを計算する(数式1)。そして、位相・振幅差補償部12は、ケーブルC-1の伝達係数Bと、校正用送受信機5-1の送信レベルCと、校正用送受信機5-2の送信レベルCと、の影響を除去する。
【数1】
【0042】
このように、アレイアンテナ装置Aの製造段階(温度変動前又は経年変動前)に、各々のサブアレイの間において、受信系の位相・振幅を校正するにあたり、遠方界距離での電波測定を不要とするとともに、各々のサブアレイと他のサブアレイとの間の伝送線路の等長構成を不要とする(伝達係数の影響除去)ことができる。
【0043】
(製造段階での送信系のサブアレイ間校正処理の手順)
製造段階での送信系のサブアレイ間校正処理の手順を図5に示す。製造段階での送信系のサブアレイ間校正処理の具体例を図6に示す。サブアレイS-1において、(送受信機2-11の送信レベル×位相調整器3-11の伝達係数×振幅調整器4-11の伝達係数)はPであり、校正用送受信機5-1の受信伝達係数はCである。サブアレイS-2において、(送受信機2-21の送信レベル×位相調整器3-21の伝達係数×振幅調整器4-21の伝達係数)はPであり、校正用送受信機5-2の受信伝達係数はCである。サブアレイS-1、S-2の間において、ケーブルC-1の伝達係数はBである。
【0044】
スイッチ制御部7は、図6の左欄に示したように、スイッチ6-1、6-2の分岐方向を制御し、サブアレイS-1、S-2内の送受信を実現する。第1受信信号測定部8は、サブアレイS-1の送受信機2-11の送信信号について、サブアレイS-1の校正用送受信機5-1の受信信号i=Pを測定する(ステップS6)。
【0045】
スイッチ制御部7は、図6の左欄に示したように、スイッチ6-1、6-2の分岐方向を制御し、サブアレイS-1、S-2内の送受信を実現する。第2受信信号測定部9は、サブアレイS-2の送受信機2-21の送信信号について、サブアレイS-2の校正用送受信機5-2の受信信号i=Pを測定する(ステップS7)。
【0046】
スイッチ制御部7は、図6の右上欄に示したように、スイッチ6-1、6-2の分岐方向を制御し、サブアレイS-1、S-2間の送受信を実現する。第3受信信号測定部10は、サブアレイS-1の送受信機2-11の送信信号について、サブアレイS-2の校正用送受信機5-2の受信信号e12=Pを測定する(ステップS8)。
【0047】
スイッチ制御部7は、図6の右下欄に示したように、スイッチ6-1、6-2の分岐方向を制御し、サブアレイS-1、S-2間の送受信を実現する。第4受信信号測定部11は、サブアレイS-2の送受信機2-21の送信信号について、サブアレイS-1の校正用送受信機5-1の受信信号e21=Pを測定する(ステップS9)。
【0048】
位相・振幅差補償部12は、受信信号i、i、e12、e21に基づいて、サブアレイS-1、S-2の間において、送受信機2-11、位相調整器3-11及び振幅調整器4-11と、送受信機2-21、位相調整器3-21及び振幅調整器4-21と、の間の位相・振幅差を補償する(ステップS10)。サブアレイS-1は、送受信機2-11、位相調整器3-11及び振幅調整器4-11の位相・振幅の調整に伴って、他の送受信機2-1N等、他の位相調整器3-1N等及び他の振幅調整器4-1N等の位相・振幅の調整も行なう。サブアレイS-2は、送受信機2-21、位相調整器3-21及び振幅調整器4-21の位相・振幅の調整に伴って、他の送受信機2-2N等、他の位相調整器3-2N等及び他の振幅調整器4-2N等の位相・振幅の調整も行なう。
【0049】
ここで、位相・振幅差補償部12は、受信信号i、i、e12、e21に基づいて、送受信機2-11、位相調整器3-11及び振幅調整器4-11の伝達係数Pと、送受信機2-21、位相調整器3-21及び振幅調整器4-21の伝達係数Pと、の間の伝達係数差P/Pを計算する(数式2)。そして、位相・振幅差補償部12は、ケーブルC-1の伝達係数Bと、校正用送受信機5-1の受信伝達係数Cと、校正用送受信機5-2の受信伝達係数Cと、の影響を除去する。
【数2】
【0050】
このように、アレイアンテナ装置Aの製造段階(温度変動前又は経年変動前)に、各々のサブアレイの間において、送信系の位相・振幅を校正するにあたり、遠方界距離での電波測定を不要とするとともに、各々のサブアレイと他のサブアレイとの間の伝送線路の等長構成を不要とする(伝達係数の影響除去)ことができる。
【0051】
(様々な配列のアレイアンテナ装置の構成)
1次元方向に配列されたアレイアンテナ装置の構成を図7に示す。サブアレイS-1、S-2、・・・、S-Nは、この順序で1次元方向に配列される。各々のサブアレイと隣接サブアレイとは、ケーブルで接続される。サブアレイS-1、S-2は、ケーブルC-1で接続され、サブアレイS-2、S-3(不図示)は、ケーブルC-2で接続され、・・・、サブアレイS-(N-1)(不図示)、S-Nは、ケーブルC-Nで接続される。
【0052】
サブアレイ間校正部Iは、アレイアンテナ装置Aの製造段階において、各々のサブアレイと隣接サブアレイとの間において、受信系又は送信系の位相・振幅差を補償することにより、1次元方向に配列される複数のサブアレイの間において、受信系又は送信系の位相・振幅差を補償する(図3、4又は図5、6と同様)。
【0053】
ここで、位相・振幅差補償部12は、受信信号i、ik+1、ek(k+1)、e(k+1)kに基づいて、サブアレイS-kの伝達係数Pと、サブアレイS-(k+1)の伝達係数Pk+1と、の間の伝達係数差Pk+1/Pを計算する(数式3)。
【数3】
【0054】
そして、位相・振幅差補償部12は、数式3を繰り返し適用し、数式4を導出する。
【数4】
【0055】
このように、複数のサブアレイが1次元方向に配列されるときに、各々のサブアレイと隣接サブアレイとがケーブルで接続されるため、アレイアンテナ装置Aでのケーブルの配列が簡便になり、アレイアンテナ装置Aでのケーブルの長さが短縮される。
【0056】
1次元方向に配列されたアレイアンテナ装置の構成を図8にも示す。サブアレイS-1、S-2、・・・、S-Nは、この順序で1次元方向に配列される。特定サブアレイと他のサブアレイとは、ケーブルで接続される。サブアレイS-1、S-2は、ケーブルC-1で接続され、・・・、サブアレイS-1、S-Nは、ケーブルC-Nで接続される。
【0057】
サブアレイ間校正部Iは、アレイアンテナ装置Aの製造段階において、特定サブアレイと他のサブアレイとの間において、受信系又は送信系の位相・振幅差を補償することにより、1次元方向に配列される複数のサブアレイの間において、受信系又は送信系の位相・振幅差を補償する(図3、4又は図5、6と同様)。
【0058】
ここで、位相・振幅差補償部12は、受信信号i、i、e1k、ek1に基づいて、サブアレイS-1の伝達係数Pと、サブアレイS-kの伝達係数Pと、の間の伝達係数差P/Pを計算する(数式5)。
【数5】
【0059】
このように、複数のサブアレイが1次元方向に配列されるときに、特定サブアレイと他のサブアレイとがケーブルで接続されるため、あるサブアレイのペアでの位相・振幅の校正誤差が、他のサブアレイのペアでの位相・振幅の校正に波及しない。
【0060】
2次元面内に配列されたアレイアンテナ装置の構成を図9に示す。複数のサブアレイは、2次元面内(x軸及びy軸を含む)に配列される。図9では、各々のx軸座標又はy軸座標において、各々のサブアレイと隣接サブアレイとが、ケーブルで接続されている(図7と同様)。変形例として、各々のx軸座標又はy軸座標において、特定サブアレイと他のサブアレイとが、ケーブルで接続されてもよい(図8と同様)。
【0061】
まず、サブアレイ間校正部Iは、アレイアンテナ装置Aの製造段階において、「各々」のx軸座標においてy軸方向に配列される、以下の複数のサブアレイの間において、受信系又は送信系の位相・振幅差を補償する:(S-11、CY-11、S-21、CY-21、・・・、CY-N1、S-N1)、(S-12、CY-12、S-22、CY-22、・・・、CY-N2、S-N2)、・・・(S-1M、CY-1M、S-2M、CY-2M、・・・、CY-NM、S-NM)(Sはサブアレイ、CYはケーブル)。
【0062】
次に、サブアレイ間校正部Iは、「単一」の又は「各々」のy軸座標においてx軸方向に配列される、以下の「いずれか」又は「すべて」の複数のサブアレイの間において、受信系又は送信系の位相・振幅差を補償する:(S-11、CX-11、S-12、CX-12、・・・、CX-1M、S-1M)、(S-21、CX-21、S-22、CX-22、・・・、CX-2M、S-2M)、・・・、(S-N1、CX-N1、S-N2、CX-N2、・・・、CX-NM、S-NM)(Sはサブアレイ、CXはケーブル)。
【0063】
すると、サブアレイ間校正部Iは、2次元面内に配列される複数のサブアレイの間において、受信系又は送信系の位相・振幅差を補償することができる。
【0064】
このように、複数のサブアレイが2次元面内に配列されるときであっても、複数のサブアレイが1次元方向に配列されるときを応用して、x軸方向及びy軸方向に沿って、各々のサブアレイの間において、位相・振幅を校正することができる。
【0065】
第1の変形例のサブアレイの構成を図10に示す。図1~9の実施形態では、サブアレイS-1(他のサブアレイS-N等も同様。)は、可変の位相調整器3-11、・・・、3-1N及び可変の振幅調整器4-11、・・・、4-1Nを備える。図10の変形例では、図1~9の実施形態に加えて、サブアレイS-1(他のサブアレイS-N等も同様。)は、発振器13-1及び送受信機2-11、・・・、2-1Nのミキサを備える、あるいは、送受信機2-11、・・・、2-1NのD/A変換器及びA/D変換器を備える。
【0066】
ここで、発振器13-1及び送受信機2-11、・・・、2-1Nのミキサは、発振信号の位相を調整し、サブアレイS-1全体の位相を調整する。あるいは、送受信機2-11、・・・、2-1NのD/A変換器及びA/D変換器は、ディジタル信号の位相・振幅を調整し、個々の受信系又は送信系の位相・振幅を調整する。
【0067】
第2の変形例のサブアレイの構成を図11に示す。図1~9の実施形態では、サブアレイS-1(他のサブアレイS-N等も同様。)は、スイッチ6-1を備える。図11の変形例では、図1~9の実施形態に加えて、サブアレイS-1(他のサブアレイS-N等も同様。)は、スイッチ6-1及びスイッチ又は分配機14-1を備える。
【0068】
ここで、スイッチ又は分配機14-1は、校正用送受信機5-1又は他の校正用送受信機5-2等の送信信号について、送受信機2-11、・・・、2-1Nへ分配し、送受信機2-11、・・・、2-1Nの送信信号について、校正用送受信機5-1又は他の校正用送受信機5-2等へ供給する。そして、位相・振幅差補償部12は、各受信信号i、i、e21、e12等について、N種類の信号を得てこれらの平均に基づいて、サブアレイS-1と他のサブアレイS-2等の間において、受信系又は送信系の位相・振幅差を補償する。
【0069】
(運用段階でのアレイアンテナ装置の構成)
運用段階でのアレイアンテナ装置の構成を図12、13に示す。アレイアンテナ装置Aは、サブアレイS-1、S-2を備える。サブアレイS-1は、アンテナ素子1-11、・・・、1-1Nと、送受信機2-11、・・・、2-1Nと、位相調整器3-11、・・・、3-1N及び振幅調整器4-11、・・・、4-1Nを備える。サブアレイS-2は、アンテナ素子1-21、・・・、1-2Nと、送受信機2-21、・・・、2-2Nと、位相調整器3-21、・・・、3-2N及び振幅調整器4-21、・・・、4-2Nを備える。
【0070】
送受信機2-11、・・・、2-1N、位相調整器3-11、・・・、3-1N及び振幅調整器4-11、・・・、4-1Nは、「サブアレイS-1内」で、特許文献1、2等の従来技術を用いて校正済みである。送受信機2-21、・・・、2-2N、位相調整器3-21、・・・、3-2N及び振幅調整器4-21、・・・、4-2Nは、「サブアレイS-2内」で、特許文献1、2等の従来技術を用いて校正済みである。ただし、アレイアンテナ装置Aの運用段階では、REV法を適用することは現実的に困難である。
【0071】
アレイアンテナ装置Aは、その運用段階(温度変動後又は経年変動後)に、「サブアレイS-1、S-2の間」において、送受信機2-11、・・・、2-1N、位相調整器3-11、・・・、3-1N及び振幅調整器4-11、・・・、4-1Nと、送受信機2-21、・・・、2-2N、位相調整器3-21、・・・、3-2N及び振幅調整器4-21、・・・、4-2Nと、の間の位相・振幅差を補償するサブアレイ間校正部Iを、サブアレイS-1、S-2の内部及び外部に渡って備え、又は、サブアレイS-1、S-2の内部及び外部の一方に備える(図12では、前者の場合を示し、図13では、後者の場合を示す。)。
【0072】
サブアレイS-1は、校正用送受信機5-1と、スイッチ6-1と、を備える。スイッチ6-1は、校正用送受信機5-1の送信信号について、送受信機2-11(又は送受信機2-11、・・・、2-1N)と送受信機2-21(又は送受信機2-21、・・・、2-2N)とのいずれかへ分岐し、送受信機2-11(又は送受信機2-11、・・・、2-1N)の送信信号について、校正用送受信機5-1と校正用送受信機5-2(後述)とのいずれかへ分岐する。
【0073】
サブアレイS-2は、校正用送受信機5-2と、スイッチ6-2と、を備える。スイッチ6-2は、校正用送受信機5-2の送信信号について、送受信機2-21(又は送受信機2-21、・・・、2-2N)と送受信機2-11(又は送受信機2-11、・・・、2-1N)とのいずれかへ分岐し、送受信機2-21(又は送受信機2-21、・・・、2-2N)の送信信号について、校正用送受信機5-2と校正用送受信機5-1(前述)とのいずれかへ分岐する。
【0074】
サブアレイS-1、S-2は、ケーブルC-1で接続される。図12では、サブアレイS-1は、スイッチ制御部7(トリガ信号を外部又はサブアレイS-1、S-2のうちの1つから受け取る。)、第1受信信号測定部8及び第4受信信号測定部11を備え、サブアレイS-2は、スイッチ制御部7(トリガ信号を外部又はサブアレイS-1、S-2のうちの1つから受け取る。)、第2受信信号測定部9及び第3受信信号測定部10を備え、サブアレイ間校正部Iは、位相・振幅差補償部12を備える。図13では、サブアレイ間校正部Iは、スイッチ制御部7、第1受信信号測定部8、第2受信信号測定部9、第3受信信号測定部10、第4受信信号測定部11及び位相・振幅差補償部12を備える。サブアレイ間校正部Iは、図14、17に示すアレイアンテナ校正プログラムを、コンピュータにインストールすることにより、又はハードウェアロジック(Field Programmable Gate Array(FPGA)を含む。)により、実現することができる。
【0075】
このように、各々のサブアレイにおいて、「受信系」の位相・振幅を校正するにあたり、単一の校正用送信機を備える。そして、サブアレイのペアにおいて、単一の校正用送信機(2通り)の送信信号に関する、単一又は複数のアンテナ素子の受信機(2通り)の受信信号について、アレイアンテナ装置Aの温度変動前後又は経年変動前後の信号比率を測定する。さらに、これらの信号比率(2×2=4通り)に基づいて、サブアレイのペアにおいて、「受信系」の位相・振幅差を補償する。ここで、サブアレイのペアの間のケーブルの伝達係数と、各々のサブアレイの単一の校正用送信機の送信信号の位相・振幅とは、「受信系」の位相・振幅差の補償に影響しない。
【0076】
あるいは、各々のサブアレイにおいて、「送信系」の位相・振幅を校正するにあたり、単一の校正用受信機を備える。そして、サブアレイのペアにおいて、単一又は複数のアンテナ素子の送信機(2通り)の送信信号に関する、単一の校正用受信機(2通り)の受信信号について、アレイアンテナ装置Aの温度変動前後又は経年変動前後の信号比率を測定する。さらに、これらの信号比率(2×2=4通り)に基づいて、サブアレイのペアにおいて、「送信系」の位相・振幅差を補償する。ここで、サブアレイのペアの間のケーブルの伝達係数と、各々のサブアレイの単一の校正用受信機の受信伝達係数とは、「送信系」の位相・振幅差の補償に影響しない。
【0077】
まず、運用段階での「受信系」のサブアレイ間校正処理の手順について、図14~16を用いて説明する。次に、運用段階での「送信系」のサブアレイ間校正処理の手順について、図17~19を用いて説明する。次に、様々な配列のアレイアンテナ装置の構成(「受信系」及び「送信系」に適用可能)について、図20~22を用いて説明する。
【0078】
(運用段階での受信系のサブアレイ間校正処理の手順)
運用段階での受信系のサブアレイ間校正処理の手順を図14に示す。運用段階での受信系のサブアレイ間校正処理の具体例を図15に示す。以下では、アレイアンテナ装置Aが温度変動する場合について説明するが、アレイアンテナ装置Aが経年変動する場合についても同様である。アレイアンテナ装置Aの温度変動前において、サブアレイS-1の温度はtであり、サブアレイS-2の温度もtであり、ケーブルC-1の温度もtである。アレイアンテナ装置Aの温度変動後において、サブアレイS-1の温度はtであり、サブアレイS-2の温度はtであり、ケーブルC-1の温度はtである。
【0079】
サブアレイS-1において、アレイアンテナ装置Aの温度変動前後を比べて、校正用送受信機5-1の送信レベルのレベル比率はΔC=C(t)/C(t)であり、(位相調整器3-11の伝達係数×振幅調整器4-11の伝達係数×送受信機2-11の受信伝達係数)の伝達係数比率はΔP=P(t)/P(t)である。
【0080】
サブアレイS-2において、アレイアンテナ装置Aの温度変動前後を比べて、校正用送受信機5-2の送信レベルのレベル比率はΔC=C(t)/C(t)であり、(位相調整器3-21の伝達係数×振幅調整器4-21の伝達係数×送受信機2-21の受信伝達係数)の伝達係数比率はΔP=P(t)/P(t)である。
【0081】
サブアレイS-1、S-2の間において、アレイアンテナ装置Aの温度変動前後を比べて、ケーブルC-1の伝達係数の係数比率はΔB=B(t)/B(t)である。なお、位相・振幅差補償部12は、アレイアンテナ装置Aの温度変動前において、C(t)、P(t)、C(t)、P(t)及びB(t)をメモリに格納している。
【0082】
スイッチ制御部7は、図15の左欄に示したように、スイッチ6-1、6-2の分岐方向を制御し、サブアレイS-1、S-2内の送受信を実現する。第1受信信号測定部8は、サブアレイS-1の校正用送受信機5-1の送信信号に関する、サブアレイS-1の送受信機2-11の受信信号i=Cについて、アレイアンテナ装置Aの温度変動前後の信号比率Δi=ΔCΔPを測定する(ステップS1)。
【0083】
スイッチ制御部7は、図15の左欄に示したように、スイッチ6-1、6-2の分岐方向を制御し、サブアレイS-1、S-2内の送受信を実現する。第2受信信号測定部9は、サブアレイS-2の校正用送受信機5-2の送信信号に関する、サブアレイS-2の送受信機2-21の受信信号i=Cについて、アレイアンテナ装置Aの温度変動前後の信号比率Δi=ΔCΔPを測定する(ステップS2)。
【0084】
スイッチ制御部7は、図15の右上欄に示したように、スイッチ6-1、6-2の分岐方向を制御し、サブアレイS-1、S-2間の送受信を実現する。第3受信信号測定部10は、サブアレイS-1の校正用送受信機5-1の送信信号に関する、サブアレイS-2の送受信機2-21の受信信号e21=Cについて、アレイアンテナ装置Aの温度変動前後の信号比率Δe21=ΔCΔPΔBを測定する(ステップS3)。
【0085】
スイッチ制御部7は、図15の右下欄に示したように、スイッチ6-1、6-2の分岐方向を制御し、サブアレイS-1、S-2間の送受信を実現する。第4受信信号測定部11は、サブアレイS-2の校正用送受信機5-2の送信信号に関する、サブアレイS-1の送受信機2-11の受信信号e12=Cについて、アレイアンテナ装置Aの温度変動前後の信号比率Δe12=ΔCΔPΔBを測定する(ステップS4)。
【0086】
位相・振幅差補償部12は、信号比率Δi、Δi、Δe21、Δe12に基づいて、サブアレイS-1、S-2の間において、送受信機2-11、位相調整器3-11及び振幅調整器4-11と、送受信機2-21、位相調整器3-21及び振幅調整器4-21と、の間の位相・振幅差を補償する(ステップS5)。サブアレイS-1は、送受信機2-11、位相調整器3-11及び振幅調整器4-11の位相・振幅の調整に伴って、他の送受信機2-1N等、他の位相調整器3-1N等及び他の振幅調整器4-1N等の位相・振幅の調整も行なう。サブアレイS-2は、送受信機2-21、位相調整器3-21及び振幅調整器4-21の位相・振幅の調整に伴って、他の送受信機2-2N等、他の位相調整器3-2N等及び他の振幅調整器4-2N等の位相・振幅の調整も行なう。
【0087】
ここで、位相・振幅差補償部12は、信号比率Δi、Δi、Δe21、Δe12に基づいて、送受信機2-11、位相調整器3-11及び振幅調整器4-11の伝達係数比率ΔPと、送受信機2-21、位相調整器3-21及び振幅調整器4-21の伝達係数比率ΔPと、の間の伝達係数差ΔP/ΔPを計算する(数式6)。そして、位相・振幅差補償部12は、ケーブルC-1の伝達係数比率ΔBと、校正用送受信機5-1の送信レベル比率ΔCと、校正用送受信機5-2の送信レベル比率ΔCと、の影響を除去する。さらに、位相・振幅差補償部12は、送受信機2-11、位相調整器3-11及び振幅調整器4-11の伝達係数P(t)と、送受信機2-21、位相調整器3-21及び振幅調整器4-21の伝達係数P(t)と、が等しいことを考慮して、数式7を導出する。
【数6】
【数7】
【0088】
このように、アレイアンテナ装置Aの運用段階(温度変動後又は経年変動後)に、各々のサブアレイの間において、受信系の位相・振幅を校正するにあたり、遠方界距離での電波測定を不要とするとともに、各々のサブアレイと他のサブアレイとの間の伝送線路の特性維持及び等長構成を不要とする(伝達係数の影響除去)ことができる。
【0089】
ところで、アレイアンテナ装置Aの運用段階(温度変動後又は経年変動後)に、サブアレイS-2の受信系の位相・振幅が、サブアレイS-1の受信系の位相・振幅と等しくなっても、サブアレイS-1の受信系の位相・振幅が、アレイアンテナ装置Aの温度変動又は経年変動により、変動する可能性がある。
【0090】
そこで、図12では、アレイアンテナ装置Aは、基準送信機13と基準受信機14とスイッチ15とスイッチ制御部7と第2受信信号測定部9と第3受信信号測定部10を有する基準ユニットRを備える。そして、図13では、アレイアンテナ装置Aは、基準送信機13と基準受信機14とスイッチ15とを有する基準ユニットRを備える。基準送信機13は、アレイアンテナ装置Aの温度変動又は経年変動によらず、一定の送信レベルを有し、及び/又は、基準受信機14は、アレイアンテナ装置Aの温度変動又は経年変動によらず、一定の受信伝達係数を有する。スイッチ15は、基準送信機13の送信信号について、基準受信機14と送受信機2-11とのいずれかへ分岐し、校正用送受信機5-1の送信信号について、基準受信機14へ導く。
【0091】
そして、サブアレイ間校正部Iは、アレイアンテナ装置Aの温度変動又は経年変動によらず、サブアレイS-1において、受信系の位相・振幅が変動しないように、基準ユニットRをリファレンスとして、サブアレイS-1において、受信系の位相・振幅を調整する位相・振幅調整部16を備える。さらに、基準ユニットRとサブアレイS-1とは、スイッチ15、6-1を介して、ケーブルC-0で接続される。
【0092】
なお、基準ユニットRは、校正の取れている測定器、アナログ部を最小限とした構成、常に一定の温度に保った送受信機、又は、温度変動による位相・振幅変動に関するデータを取得したサブアレイ等により、実現することができる。
【0093】
運用段階での受信系のサブアレイ位相・振幅調整処理の具体例を図16に示す。基準ユニットRにおいて、アレイアンテナ装置Aの温度変動前後を比べて、基準送信機13の送信レベルのレベル比率はΔC=C(t)/C(t)(=1に維持可能)であり、基準受信機14の受信伝達係数の伝達係数比率はΔP=P(t)/P(t)(=1に維持可能)である。基準ユニットRとサブアレイS-1との間において、アレイアンテナ装置Aの温度変動前後を比べて、ケーブルC-0の伝達係数の係数比率はΔB=B(t)/B(t)である。なお、位相・振幅調整部16は、アレイアンテナ装置Aの温度変動前において、C(t)、P(t)及びB(t)をメモリに格納している。
【0094】
スイッチ制御部7は、図16の左欄に示したように、スイッチ6-1、15の分岐方向を制御し、基準ユニットRとサブアレイS-1内の送受信を実現する。第2受信信号測定部9は、基準ユニットRの基準送信機13の送信信号に関する、基準ユニットRの基準受信機14の受信信号i=Cについて、アレイアンテナ装置Aの温度変動前後の信号比率Δi=ΔCΔPを測定する(ステップS11)。
【0095】
スイッチ制御部7は、図16の左欄に示したように、スイッチ6-1、15の分岐方向を制御し、基準ユニットRとサブアレイS-1内の送受信を実現する。第1受信信号測定部8は、サブアレイS-1の校正用送受信機5-1の送信信号に関する、サブアレイS-1の送受信機2-11の受信信号i=Cについて、アレイアンテナ装置Aの温度変動前後の信号比率Δi=ΔCΔPを測定する(ステップS12)。
【0096】
スイッチ制御部7は、図16の右上欄に示したように、スイッチ6-1、15の分岐方向を制御し、基準ユニットRとサブアレイS-1間の送受信を実現する。第4受信信号測定部11は、基準ユニットRの基準送信機13の送信信号に関する、サブアレイS-1の送受信機2-11の受信信号e10=Cについて、アレイアンテナ装置Aの温度変動前後の信号比率Δe10=ΔCΔPΔBを測定する(ステップS13)。
【0097】
スイッチ制御部7は、図16の右下欄に示したように、スイッチ6-1、15の分岐方向を制御し、基準ユニットRとサブアレイS-1間の送受信を実現する。第3受信信号測定部10は、サブアレイS-1の校正用送受信機5-1の送信信号に関する、基準ユニットRの基準受信機14の受信信号e01=Cについて、アレイアンテナ装置Aの温度変動前後の信号比率Δe01=ΔCΔPΔBを測定する(ステップS14)。
【0098】
位相・振幅調整部16は、信号比率Δi、Δi、Δe10、Δe01に基づいて、サブアレイS-1において、アレイアンテナ装置Aの温度変動によらず、受信系の位相・振幅が変動しないように調整する(ステップS15)。位相・振幅調整部16が、サブアレイS-1でステップS11~S15を実行した後に、位相・振幅差補償部12は、サブアレイS-1、S-2の間でステップS1~S5を実行する。
【0099】
ここで、位相・振幅調整部16は、基準受信機14の受信伝達係数の伝達係数比率ΔP=1であるときには、数式7を参照して数式8を導出する。そして、位相・振幅調整部16は、基準受信機14の受信伝達係数P(t)と、送受信機2-11、位相調整器3-11及び振幅調整器4-11の伝達係数P(t)と、が等しいことを考慮して、数式8の第2式を導出する。よって、位相・振幅調整部16は、サブアレイS-1を製造段階と同じ状態に戻すことができる。
【数8】
【0100】
一方で、位相・振幅調整部16は、基準送信機13の送信レベルのレベル比率ΔC=1であるときには、数式7を参照して数式9を導出する。そして、位相・振幅調整部16は、基準受信機14の受信伝達係数P(t)と、送受信機2-11、位相調整器3-11及び振幅調整器4-11の伝達係数P(t)と、が等しいことを考慮して、数式9の第2式を導出する。よって、位相・振幅調整部16は、サブアレイS-1を製造段階と同じ状態に戻すことができる。
【数9】
【0101】
このように、アレイアンテナ装置Aの運用段階(温度変動後又は経年変動後)に、各々のサブアレイの間において、受信系の位相・振幅が等しくなるようにするのみならず、アレイアンテナ装置Aの温度変動又は経年変動によらず、各々のサブアレイにおいて、受信系の位相・振幅が変動しないようにすることができる。
【0102】
(運用段階での送信系のサブアレイ間校正処理の手順)
運用段階での送信系のサブアレイ間校正処理の手順を図17に示す。運用段階での送信系のサブアレイ間校正処理の具体例を図18に示す。以下では、アレイアンテナ装置Aが温度変動する場合について説明するが、アレイアンテナ装置Aが経年変動する場合についても同様である。アレイアンテナ装置Aの温度変動前において、サブアレイS-1の温度はtであり、サブアレイS-2の温度もtであり、ケーブルC-1の温度もtである。アレイアンテナ装置Aの温度変動後において、サブアレイS-1の温度はtであり、サブアレイS-2の温度はtであり、ケーブルC-1の温度はtである。
【0103】
サブアレイS-1において、アレイアンテナ装置Aの温度変動前後を比べて、(送受信機2-11の送信レベル×位相調整器3-11の伝達係数×振幅調整器4-11の伝達係数)の伝達係数比率はΔP=P(t)/P(t)であり、校正用送受信機5-1の受信伝達係数の伝達係数比率はΔC=C(t)/C(t)である。
【0104】
サブアレイS-2において、アレイアンテナ装置Aの温度変動前後を比べて、(送受信機2-21の送信レベル×位相調整器3-21の伝達係数×振幅調整器4-21の伝達係数)の伝達係数比率はΔP=P(t)/P(t)であり、校正用送受信機5-2の受信伝達係数の伝達係数比率はΔC=C(t)/C(t)である。
【0105】
サブアレイS-1、S-2の間において、アレイアンテナ装置Aの温度変動前後を比べて、ケーブルC-1の伝達係数の係数比率はΔB=B(t)/B(t)である。なお、位相・振幅差補償部12は、アレイアンテナ装置Aの温度変動前において、P(t)、C(t)、P(t)、C(t)及びB(t)をメモリに格納している。
【0106】
スイッチ制御部7は、図18の左欄に示したように、スイッチ6-1、6-2の分岐方向を制御し、サブアレイS-1、S-2内の送受信を実現する。第1受信信号測定部8は、サブアレイS-1の送受信機2-11の送信信号に関する、サブアレイS-1の校正用送受信機5-1の受信信号i=Pについて、アレイアンテナ装置Aの温度変動前後の信号比率Δi=ΔPΔCを測定する(ステップS6)。
【0107】
スイッチ制御部7は、図18の左欄に示したように、スイッチ6-1、6-2の分岐方向を制御し、サブアレイS-1、S-2内の送受信を実現する。第2受信信号測定部9は、サブアレイS-2の送受信機2-21の送信信号に関する、サブアレイS-2の校正用送受信機5-2の受信信号i=Pについて、アレイアンテナ装置Aの温度変動前後の信号比率Δi=ΔPΔCを測定する(ステップS7)。
【0108】
スイッチ制御部7は、図18の右上欄に示したように、スイッチ6-1、6-2の分岐方向を制御し、サブアレイS-1、S-2間の送受信を実現する。第3受信信号測定部10は、サブアレイS-1の送受信機2-11の送信信号に関する、サブアレイS-2の校正用送受信機5-2の受信信号e12=Pについて、アレイアンテナ装置Aの温度変動前後の信号比率Δe12=ΔPΔCΔBを測定する(ステップS8)。
【0109】
スイッチ制御部7は、図18の右下欄に示したように、スイッチ6-1、6-2の分岐方向を制御し、サブアレイS-1、S-2間の送受信を実現する。第4受信信号測定部11は、サブアレイS-2の送受信機2-21の送信信号に関する、サブアレイS-1の校正用送受信機5-1の受信信号e21=Pについて、アレイアンテナ装置Aの温度変動前後の信号比率Δe21=ΔPΔCΔBを測定する(ステップS9)。
【0110】
位相・振幅差補償部12は、信号比率Δi、Δi、Δe12、Δe21に基づいて、サブアレイS-1、S-2の間において、送受信機2-11、位相調整器3-11及び振幅調整器4-11と、送受信機2-21、位相調整器3-21及び振幅調整器4-21と、の間の位相・振幅差を補償する(ステップS10)。サブアレイS-1は、送受信機2-11、位相調整器3-11及び振幅調整器4-11の位相・振幅の調整に伴って、他の送受信機2-1N等、他の位相調整器3-1N等及び他の振幅調整器4-1N等の位相・振幅の調整も行なう。サブアレイS-2は、送受信機2-21、位相調整器3-21及び振幅調整器4-21の位相・振幅の調整に伴って、他の送受信機2-2N等、他の位相調整器3-2N等及び他の振幅調整器4-2N等の位相・振幅の調整も行なう。
【0111】
ここで、位相・振幅差補償部12は、信号比率Δi、Δi、Δe12、Δe21に基づいて、送受信機2-11、位相調整器3-11及び振幅調整器4-11の伝達係数比率ΔPと、送受信機2-21、位相調整器3-21及び振幅調整器4-21の伝達係数比率ΔPと、の間の伝達係数差ΔP/ΔPを計算する(数式10)。そして、位相・振幅差補償部12は、ケーブルC-1の伝達係数比率ΔBと、校正用送受信機5-1の受信伝達係数比率ΔCと、校正用送受信機5-2の受信伝達係数比率ΔCと、の影響を除去する。さらに、位相・振幅差補償部12は、送受信機2-11、位相調整器3-11及び振幅調整器4-11の伝達係数P(t)と、送受信機2-21、位相調整器3-21及び振幅調整器4-21の伝達係数P(t)と、が等しいことを考慮して、数式11を導出する。
【数10】
【数11】
【0112】
このように、アレイアンテナ装置Aの運用段階(温度変動後又は経年変動後)に、各々のサブアレイの間において、送信系の位相・振幅を校正するにあたり、遠方界距離での電波測定を不要とするとともに、各々のサブアレイと他のサブアレイとの間の伝送線路の特性維持及び等長構成を不要とする(伝達係数の影響除去)ことができる。
【0113】
ところで、アレイアンテナ装置Aの運用段階(温度変動後又は経年変動後)に、サブアレイS-2の送信系の位相・振幅が、サブアレイS-1の送信系の位相・振幅と等しくなっても、サブアレイS-1の送信系の位相・振幅が、アレイアンテナ装置Aの温度変動又は経年変動により、変動する可能性がある。
【0114】
そこで、図12では、アレイアンテナ装置Aは、基準送信機13と基準受信機14とスイッチ15とスイッチ制御部7と第2受信信号測定部9と第3受信信号測定部10を有する基準ユニットRを備える。そして、図13では、アレイアンテナ装置Aは、基準送信機13と基準受信機14とスイッチ15とを有する基準ユニットRを備える。基準送信機13は、アレイアンテナ装置Aの温度変動又は経年変動によらず、一定の送信レベルを有し、及び/又は、基準受信機14は、アレイアンテナ装置Aの温度変動又は経年変動によらず、一定の受信伝達係数を有する。スイッチ15は、基準送信機13の送信信号について、基準受信機14と校正用送受信機5-1とのいずれかへ分岐し、送受信機2-11の送信信号について、基準受信機14へ導く。
【0115】
そして、サブアレイ間校正部Iは、アレイアンテナ装置Aの温度変動又は経年変動によらず、サブアレイS-1において、送信系の位相・振幅が変動しないように、基準ユニットRをリファレンスとして、サブアレイS-1において、送信系の位相・振幅を調整する位相・振幅調整部16を備える。さらに、基準ユニットRとサブアレイS-1とは、スイッチ15、6-1を介して、ケーブルC-0で接続される。
【0116】
なお、基準ユニットRは、校正の取れている測定器、アナログ部を最小限とした構成、常に一定の温度に保った送受信機、又は、温度変動による位相・振幅変動に関するデータを取得したサブアレイ等により、実現することができる。
【0117】
運用段階での送信系のサブアレイ位相・振幅調整処理の具体例を図19に示す。基準ユニットRにおいて、アレイアンテナ装置Aの温度変動前後を比べて、基準送信機13の送信レベルのレベル比率はΔC=C(t)/C(t)(=1に維持可能)であり、基準受信機14の受信伝達係数の伝達係数比率はΔP=P(t)/P(t)(=1に維持可能)である。基準ユニットRとサブアレイS-1との間において、アレイアンテナ装置Aの温度変動前後を比べて、ケーブルC-0の伝達係数の係数比率はΔB=B(t)/B(t)である。なお、位相・振幅調整部16は、アレイアンテナ装置Aの温度変動前において、C(t)、P(t)及びB(t)をメモリに格納している。
【0118】
スイッチ制御部7は、図19の左欄に示したように、スイッチ6-1、15の分岐方向を制御し、基準ユニットRとサブアレイS-1内の送受信を実現する。第2受信信号測定部9は、基準ユニットRの基準送信機13の送信信号に関する、基準ユニットRの基準受信機14の受信信号i=Cについて、アレイアンテナ装置Aの温度変動前後の信号比率Δi=ΔCΔPを測定する(ステップS16)。
【0119】
スイッチ制御部7は、図19の左欄に示したように、スイッチ6-1、15の分岐方向を制御し、基準ユニットRとサブアレイS-1内の送受信を実現する。第1受信信号測定部8は、サブアレイS-1の送受信機2-11の送信信号に関する、サブアレイS-1の校正用送受信機5-1の受信信号i=Cについて、アレイアンテナ装置Aの温度変動前後の信号比率Δi=ΔCΔPを測定する(ステップS17)。
【0120】
スイッチ制御部7は、図19の右上欄に示したように、スイッチ6-1、15の分岐方向を制御し、基準ユニットRとサブアレイS-1間の送受信を実現する。第4受信信号測定部11は、基準ユニットRの基準送信機13の送信信号に関する、サブアレイS-1の校正用送受信機5-1の受信信号e01=Cについて、アレイアンテナ装置Aの温度変動前後の信号比率Δe01=ΔCΔCΔBを測定する(ステップS18)。
【0121】
スイッチ制御部7は、図19の右下欄に示したように、スイッチ6-1、15の分岐方向を制御し、基準ユニットRとサブアレイS-1間の送受信を実現する。第3受信信号測定部10は、サブアレイS-1の送受信機2-11の送信信号に関する、基準ユニットRの基準受信機14の受信信号e10=Pについて、アレイアンテナ装置Aの温度変動前後の信号比率Δe10=ΔPΔPΔBを測定する(ステップS19)。
【0122】
位相・振幅調整部16は、信号比率Δi、Δi、Δe01、Δe10に基づいて、サブアレイS-1において、アレイアンテナ装置Aの温度変動によらず、送信系の位相・振幅が変動しないように調整する(ステップS20)。位相・振幅調整部16が、サブアレイS-1でステップS16~S20を実行した後に、位相・振幅差補償部12は、サブアレイS-1、S-2の間でステップS6~S10を実行する。
【0123】
ここで、位相・振幅調整部16は、基準受信機14の受信伝達係数の伝達係数比率ΔP=1であるときには、数式11を参照して数式12を導出する。そして、位相・振幅調整部16は、基準送信機13の送信伝達係数C(t)と、送受信機2-11、位相調整器3-11及び振幅調整器4-11の伝達係数P(t)と、が等しいことを考慮して、数式12の第2式を導出する。よって、位相・振幅調整部16は、サブアレイS-1を製造段階と同じ状態に戻すことができる。
【数12】
【0124】
一方で、位相・振幅調整部16は、基準送信機13の送信レベルのレベル比率ΔC=1であるときには、数式11を参照して数式13を導出する。そして、位相・振幅調整部16は、基準送信機13の送信伝達係数C(t)と、送受信機2-11、位相調整器3-11及び振幅調整器4-11の伝達係数P(t)と、が等しいことを考慮して、数式13の第2式を導出する。よって、位相・振幅調整部16は、サブアレイS-1を製造段階と同じ状態に戻すことができる。
【数13】
【0125】
このように、アレイアンテナ装置Aの運用段階(温度変動後又は経年変動後)に、各々のサブアレイの間において、送信系の位相・振幅が等しくなるようにするのみならず、アレイアンテナ装置Aの温度変動又は経年変動によらず、各々のサブアレイにおいて、送信系の位相・振幅が変動しないようにすることができる。
【0126】
(様々な配列のアレイアンテナ装置の構成)
1次元方向に配列されたアレイアンテナ装置の構成を図20に示す。サブアレイS-1、S-2、・・・、S-Nは、この順序で1次元方向に配列される。各々のサブアレイと隣接サブアレイとは、ケーブルで接続される。サブアレイS-1、S-2は、ケーブルC-1で接続され、サブアレイS-2、S-3(不図示)は、ケーブルC-2で接続され、・・・、サブアレイS-(N-1)(不図示)、S-Nは、ケーブルC-Nで接続される。
【0127】
サブアレイ間校正部Iは、アレイアンテナ装置Aの運用段階において、各々のサブアレイと隣接サブアレイとの間において、受信系又は送信系の位相・振幅差を補償することにより、1次元方向に配列される複数のサブアレイの間において、受信系又は送信系の位相・振幅差を補償する(図14、15又は図17、18と同様)。
【0128】
ここで、位相・振幅差補償部12は、信号比率Δi、Δik+1、Δek(k+1)、Δe(k+1)kに基づいて、サブアレイS-kの伝達係数比率ΔPと、サブアレイS-(k+1)の伝達係数比率ΔPk+1と、の間の伝達係数差ΔPk+1/ΔPを計算する(数式14)。そして、位相・振幅差補償部12は、サブアレイS-kの伝達係数P(t)と、サブアレイS-(k+1)の伝達係数Pk+1(t)と、が等しいことを考慮して、数式14の第2式を導出する。
【数14】
【0129】
そして、位相・振幅差補償部12は、数式14を繰り返し適用し、数式15を導出する。
【数15】
【0130】
このように、複数のサブアレイが1次元方向に配列されるときに、各々のサブアレイと隣接サブアレイとがケーブルで接続されるため、アレイアンテナ装置Aでのケーブルの配列が簡便になり、アレイアンテナ装置Aでのケーブルの長さが短縮される。
【0131】
そして、サブアレイ間校正部Iは、アレイアンテナ装置Aの温度変動又は経年変動によらず、サブアレイS-1において、受信系又は送信系の位相・振幅が変動しないように、基準ユニットRをリファレンスとして、サブアレイS-1において、受信系又は送信系の位相・振幅を調整する(図14、16又は図17、19と同様)。
【0132】
1次元方向に配列されたアレイアンテナ装置の構成を図21にも示す。サブアレイS-1、S-2、・・・、S-Nは、この順序で1次元方向に配列される。特定サブアレイと他のサブアレイとは、ケーブルで接続される。サブアレイS-1、S-2は、ケーブルC-1で接続され、・・・、サブアレイS-1、S-Nは、ケーブルC-Nで接続される。
【0133】
サブアレイ間校正部Iは、アレイアンテナ装置Aの運用段階において、特定サブアレイと他のサブアレイとの間において、受信系又は送信系の位相・振幅差を補償することにより、1次元方向に配列される複数のサブアレイの間において、受信系又は送信系の位相・振幅差を補償する(図14、15又は図17、18と同様)。
【0134】
ここで、位相・振幅差補償部12は、信号比率Δi、Δi、Δe1k、Δek1に基づいて、サブアレイS-1の伝達係数比率ΔPと、サブアレイS-kの伝達係数比率ΔPと、の間の伝達係数差ΔP/ΔPを計算する(数式16)。そして、位相・振幅差補償部12は、サブアレイS-1の伝達係数P(t)と、サブアレイS-kの伝達係数P(t)と、が等しいことを考慮して、数式16の第2式を導出する。
【数16】
【0135】
このように、複数のサブアレイが1次元方向に配列されるときに、特定サブアレイと他のサブアレイとがケーブルで接続されるため、あるサブアレイのペアでの位相・振幅の校正誤差が、他のサブアレイのペアでの位相・振幅の校正に波及しない。
【0136】
そして、サブアレイ間校正部Iは、アレイアンテナ装置Aの温度変動又は経年変動によらず、サブアレイS-1において、受信系又は送信系の位相・振幅が変動しないように、基準ユニットRをリファレンスとして、サブアレイS-1において、受信系又は送信系の位相・振幅を調整する(図14、16又は図17、19と同様)。
【0137】
2次元面内に配列されたアレイアンテナ装置の構成を図22に示す。複数のサブアレイは、2次元面内(x軸及びy軸を含む)に配列される。図22では、各々のx軸座標又はy軸座標において、各々のサブアレイと隣接サブアレイとが、ケーブルで接続されている(図20と同様)。変形例として、各々のx軸座標又はy軸座標において、特定サブアレイと他のサブアレイとが、ケーブルで接続されてもよい(図21と同様)。
【0138】
まず、サブアレイ間校正部Iは、アレイアンテナ装置Aの運用段階において、「各々」のx軸座標においてy軸方向に配列される、以下の複数のサブアレイの間において、受信系又は送信系の位相・振幅差を補償する:(S-11、CY-11、S-21、CY-21、・・・、CY-N1、S-N1)、(S-12、CY-12、S-22、CY-22、・・・、CY-N2、S-N2)、・・・(S-1M、CY-1M、S-2M、CY-2M、・・・、CY-NM、S-NM)(Sはサブアレイ、CYはケーブル)。
【0139】
次に、サブアレイ間校正部Iは、「単一」の又は「各々」のy軸座標においてx軸方向に配列される、以下の「いずれか」又は「すべて」の複数のサブアレイの間において、受信系又は送信系の位相・振幅差を補償する:(S-11、CX-11、S-12、CX-12、・・・、CX-1M、S-1M)、(S-21、CX-21、S-22、CX-22、・・・、CX-2M、S-2M)、・・・、(S-N1、CX-N1、S-N2、CX-N2、・・・、CX-NM、S-NM)(Sはサブアレイ、CXはケーブル)。
【0140】
すると、サブアレイ間校正部Iは、2次元面内に配列される複数のサブアレイの間において、受信系又は送信系の位相・振幅差を補償することができる。
【0141】
このように、複数のサブアレイが2次元面内に配列されるときであっても、複数のサブアレイが1次元方向に配列されるときを応用して、x軸方向及びy軸方向に沿って、各々のサブアレイの間において、位相・振幅を校正することができる。
【0142】
そして、サブアレイ間校正部Iは、アレイアンテナ装置Aの温度変動又は経年変動によらず、サブアレイS-11において、受信系又は送信系の位相・振幅が変動しないように、基準ユニットRをリファレンスとして、サブアレイS-11において、受信系又は送信系の位相・振幅を調整する(図14、16又は図17、19と同様)。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本開示のアレイアンテナ装置及びアレイアンテナ校正プログラムは、アレイアンテナ装置の製造段階(温度変動前又は経年変動前)に、各々のサブアレイの間において、位相・振幅を校正するにあたり、遠方界距離での電波測定を不要とするとともに、各々のサブアレイと基準信号源との間の伝送線路の等長構成を不要とすることができる。
【符号の説明】
【0144】
A:アレイアンテナ装置
S-1、S-2、S-N:サブアレイ
S-11、S-12、S-1M、S-21、S-22、S-2M、S-N1、S-N2、S-NM:サブアレイ
C-1、C-2、C-N:ケーブル
CX-11、CX-12、CX-1M、CX-21、CX-22、CX-2M、CX-N1、CX-N2、CX-NM、CY-11、CY-12、CY-1M、CY-21、CY-22、CY-2M、CY-N1、CY-N2、CY-NM:ケーブル
I:サブアレイ間校正部
1-11、1-1N、1-21、1-2N、1-N1:アンテナ素子
2-11、2-1N、2-21、2-2N、2-N1:送受信機
3-11、3-1N、3-21、3-2N、3-N1:位相調整器
4-11、4-1N、4-21、4-2N、4-N1:振幅調整器
5-1、5-2、5-N:校正用送受信機
6-1、6-2、6-N:スイッチ
7:スイッチ制御部
8:第1受信信号測定部
9:第2受信信号測定部
10:第3受信信号測定部
11:第4受信信号測定部
12:位相・振幅差補償部
13-1:発振器
14-1:スイッチ又は分配機
13:基準送信機
14:基準受信機
15:スイッチ
16:位相・振幅調整部
図1
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