(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008897
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】フレキシブルフィルム付きコーティングモジュール
(51)【国際特許分類】
B05C 5/02 20060101AFI20240112BHJP
B05D 1/28 20060101ALI20240112BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20240112BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20240112BHJP
B05C 17/00 20060101ALI20240112BHJP
B05C 1/08 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
B05C5/02
B05D1/28
B05D3/00 C
B05C11/10
B05C17/00
B05C1/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023110846
(22)【出願日】2023-07-05
(31)【優先権主張番号】22315137
(32)【優先日】2022-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】523224763
【氏名又は名称】アルモア
【氏名又は名称原語表記】ARMOR
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ピノー ピエール-オリビエ
(72)【発明者】
【氏名】クローネ クラウス ペーター
(72)【発明者】
【氏名】シュネーベルガー ニクラウス
(72)【発明者】
【氏名】ザウラー アラン
(72)【発明者】
【氏名】バッホフナー カイ
(72)【発明者】
【氏名】マインベルガー マーク
【テーマコード(参考)】
4D075
4F040
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
4D075AC02
4D075AC21
4D075AC52
4D075AC62
4D075AC74
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4F042BA04
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4F042BA08
4F042BA25
4F042DD11
4F042DD16
4F042DD17
4F042DF19
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、リブの出現に対処するためのフレキシブルフィルム付きコーティングモジュールを提供し、それによってコーティング層の均質性と品質を改善することを目的とする。
【解決手段】本発明は、基材(4)の外面にコーティング組成物(6)の層を塗布するコーティングデバイス(2)と、コーティングされた基材(4)と接触するように設計された遠位部分(54)を備えるフレキシブルフィルム(5)と、を備える、コーティング組成物で基材(4)をコーティングするコーティングモジュール(1)に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材(4、37)をコーティング組成物でコーティングするためのコーティングモジュール(1)であって、
前記基材(4、37)の第1表面にコーティング組成物(6)の層を塗布するためのコーティングデバイス(2)と、
保持エレメント(53)に機械的に接続された少なくとも1つの近位端(52)と、前記基材(4)の前記第1表面のコーティング組成物(6)の前記層と接触するように構成された自由遠位部分(54)と、を備えるフレキシブルフィルム(5)と、
を備えるコーティングモジュール(1)。
【請求項2】
前記外面と反対側の前記基材の第2表面によって前記基材(4)を支持し輸送するコンベヤシステム(3)をさらに備える、請求項1に記載のコーティングモジュール(1)。
【請求項3】
前記コンベヤシステムは支持ローラを備える、請求項2に記載のコーティングモジュール。
【請求項4】
前記コンベヤシステムは、前記基材(4)の一部を加熱又は冷却するように構成された温度調節器を備える、請求項2又は3に記載のコーティングモジュール(1)。
【請求項5】
前記フレキシブルフィルム(5)は開口部(56)、溝、あるいはファイバをさらに備える、請求項1~4のいずれか1項に記載のコーティングモジュール。
【請求項6】
前記フレキシブルフィルム(5)の前記遠位部分(54)に圧力を加える手段(55、57)をさらに備える、請求項1~5のいずれか1項に記載のコーティングモジュール。
【請求項7】
保持エレメント(53)とフレームとをさらに備え、前記フレキシブルフィルム(5)は前記保持エレメント(53)に固定され、前記保持エレメント(53)は1つ又は2つの側端によって機械的にフレームに接続されている、請求項1~6のいずれか1項に記載のコーティングモジュール。
【請求項8】
前記保持エレメントは前記フレームから取り外し可能である、請求項7に記載のコーティングモジュール。
【請求項9】
さらに、前記フレキシブルフィルムの前記遠位部分の下に前記コーティング組成物を照射するように配置された電磁放射線の源を備え、かつ、前記フレキシブルフィルムは、前記源によって放出されるこのような電磁放射線に対して透明である、請求項1~8のいずれか1項に記載のコーティングモジュール。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載のコーティングモジュールと、基材(4、37)と、を備えるコーティングシステムであって、前記コーティングデバイスは前記基材の表面をコーティングするように配置され、前記フレキシブルフィルムは、その遠位部分がコーティングされた前記基材(4、37)と接触するように配置される、コーティングシステム。
【請求項11】
請求項10に記載のコーティングシステム(1)であって前記基材(4)がエンドレスなリボンである、コーティングシステム(1)と、
経路に沿って前記基材(4)を輸送するためのローラのセット(3,201,204)を備えるコンベヤシステムと、
前記基材(4)の少なくとも一部の外面と接触して印刷支持体(202)を輸送するための印刷ローラ(203)と、
前記基材(4)の前記第1表面から前記基材(4)と接触している前記印刷支持体に前記コーティング組成物の一部を熱転写するように配置された印刷ヘッド(101)と、
を備える熱転写印刷装置(200)。
【請求項12】
請求項10に記載のコーティングシステムを備え、エンドレスリボンを製造するためのシステムであって、前記基材は、シリンダを備えるコーティングドラム(37)と、前記シリンダの縦軸(A)の周りに前記コーティングドラムを回転させる手段と、を備える、システム。
【請求項13】
基材(4)をコーティングする方法であって、
請求項1~9のいずれか1項に記載のコーティングモジュールを提供すること、
前記コーティングデバイスでコーティング組成物(6)の層を形成するために、コーティング組成物で前記基材の第1表面をコーティングすること、及び、
前記フレキシブルフィルムの一部が、コーティング組成物の前記層の上にその固化前、乾燥前、あるいは完全硬化前に横たわるように、予め定められた経路に沿って前記基材を輸送すること、
を備える、基材(4)をコーティングする方法。
【請求項14】
コーティングのステップが、前記基材の第1表面を、互いに1つずつ分離された少なくとも2層のコーティング組成物で平行にコーティングすることを備え、前記コーティングモジュールは少なくとも2つのフレキシブルフィルムを備え、各フレキシブルフィルムは、1層のコーティング組成物の上に重なるように配置される、請求項13に記載の基材(4)をコーティングする方法。
【請求項15】
基材(4)をコーティングする方法であって、
請求項1~9のいずれか1項に記載のコーティングモジュールを提供すること、
前記コーティングデバイスで、前記基材の第1表面をコーティング組成物でコーティングし、コーティングデバイスでコーティング組成物(6)の層を形成すること、及び、
前記フレキシブルフィルムの一部が、コーティング組成物の前記層の上にその固化前、乾燥前、あるいは完全硬化前に横たわるように、予め定められた経路に沿って前記コーティングデバイス及び前記フレキシブルフィルムを輸送すること、
を備える、基材(4)をコーティングする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、コーティングの品質が改善された、基材をコーティングするためのコーティングモジュールに関し、また関連する方法に関する。本発明はさらに、このようなコーティングモジュールを備える熱転写印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
自由表面コーティングフローを使用する多くのコーティング技術は、熟練者からよく知られており、ローラ、スプレー、スロットダイ、スクリーン印刷、押し出し、ナイフ、ブレード、バー・・・などを使用してコーティング組成物で基材がコーティングされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、単層/多層法(すなわち、ディップコーティング、ロッドコーティング、ナイフコーティング、ブレードコーティング、エアーナイフコーティング、グラビアコーティング、順・逆ロールコーティング、スロット・押出コーティング、スライドコーティング、カーテンコーティングなどである。)では、基材に塗布されたコーティング組成物は、コーティング層の均一性に影響を与える流動不安定性を受ける可能性が高く、コーティング技術やコーティング組成物の性質に関係なく、コーティング表面上では、リブ(うね織り模様)と呼ばれる周期的で波状のコーティング厚さの変動が一般的に観察される。したがって、リブとそれに伴う欠陥の出現を制限することは常に課題である。
【0004】
流体の不安定性は本質的に複雑であり、小さな変動が大きな欠陥に伝播する可能性がある。リブの起源は、コーティング組成物内のコーティングプロセス中に発生する小さな擾乱の結果である可能性があるため、多様である可能性がある。その発生は、表面張力、粘度などのコーティング組成物の特徴、コーティング速度、圧力、粘弾性力、又は局所的に適用されるせん断速度などのコーティングプロセスパラメータ、及びコーティング機器の材料など、いくつかの要因に依存する可能性がある。
【0005】
典型的には、数グラム/平方メートル(例:重量ベース30g/m2未満)の薄い層をコーティングする場合、又は高いコーティング速度で厚さ200μm未満の最終的なコーティング層に到達する場合に発生する制限があり、これによりリブの突出した側面が強調される可能性がある。リブの現象は、硬化、乾燥、又は冷却の下流ステップで強調されたり解放されたりする可能性もあり、これにより、温度や相対湿度などの処理条件がコーティングされた商品の最終的な側面にも影響を与える可能性がある。
【0006】
一般に、リブ現象は、幅を通して波状の厚さプロファイルをもたらし、コーティング方向に多かれ少なかれ一様の不均一なコーティングを指す。リブの発生は流動の不安定性であり、コーティングの厚さが幅にわたって正弦波的に変化するため、有害であったり、許容できない永続的な欠陥につながることさえある。ストライプ又はリブは、機械の方向(輸送方向又はコーティング方向とも呼ばれる)に沿って表面に現れる。この欠陥は、コーデュロイ、レーキライン、又はフォノグラフィングと呼ばれることもある。実際には、リブの緩和は、コーティング速度、コーティング粘度、湿潤コーティング厚さの変更、又はコーティング組成物への界面活性剤の添加を伴う。これらの制限は、経済的な推進力と相反する。
【0007】
本発明は、リブの出現に対処するための新しいコーティングモジュールを提供し、それによってコーティング層の均質性と品質を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
概要
本発明は、基材の外面にコーティング組成物の層を塗布するためのコーティングデバイスを備えるコーティング組成物で基材をコーティングするコーティングモジュール、及びコーティングされた基材と接触するように設計された遠位部分(末端部分)を備えるフレキシブルフィルムに関する。
【0009】
本発明は、基材をコーティング組成物でコーティングするためのコーティングモジュールであって、基材の第1表面にコーティング組成物の層を塗布するためのコーティングデバイスと、保持エレメントに機械的に接続された少なくとも1つの近位端と、基材の第1表面のコーティング組成物の層と接触するように構成された自由遠位部分と、を備えるフレキシブルフィルム(5)と、を備えるコーティングモジュールに関する。
【0010】
1つの利点は、フレキシブルフィルムの自由遠位の部分でコーティング塗布後の基材のコーティング表面を滑らかにすることである。また、本発明が、ストリークによって引き起こされる他の欠陥の緩和と減少によって、コーティング層の全体的な品質を向上させることも観察されている。
【0011】
一実施形態によれば、コーティングモジュールは、その内面、又はその外面と反対側の基材の第2表面によって基材を支持し輸送するコンベヤシステムを備える。
【0012】
一実施形態によれば、コンベヤシステムは支持ローラを備える。
【0013】
一実施形態によれば、コンベヤシステムは、基材の一部を加熱又は冷却するように構成された温度調節器を備える。
【0014】
一実施形態によれば、フレキシブルフィルムは開口部、溝、あるいはファイバをさらに備える。
【0015】
一実施形態によれば、コーティングモジュールはフレキシブルフィルムの遠位部分に圧力を加える手段をさらに備える。
【0016】
一実施形態によれば、コーティングモジュールは保持エレメントを備え、フレキシブルフィルムは当該保持エレメントに固定され、保持エレメントは1つ又は2つの側端によって機械的にフレームに接続される。1つの利点は、遠位の自由部分がコーティングされた基材に接触している間、フレキシブルフィルムの近位端又は端の位置を維持することである。
【0017】
一実施形態によれば、保持エレメントは少なくとも1つの角度又は自由度でフレームに接続される。1つの利点は、フレキシブルフィルムの位置を調整することである。もう1つの利点は、フレキシブルフィルムとコーティングされた基材の間のストリークを除去することである。
【0018】
一実施形態によれば、保持エレメントはフレームから取り外し可能である。
【0019】
一実施形態によれば、コーティングモジュールは、フレキシブルフィルムの遠位部分を照射するように配置された電磁放射線の源を備え、フレキシブルフィルムはそのような放射線に対して透明である。1つの利点は、反応性分子に到達し、コーティング組成物の成分を配向又は分極させるために、任意の望ましい波長又は配向としての電磁波の伝達を可能にすることである。
【0020】
本発明はさらに、本発明によるコーティングモジュールと基材を備えるコーティングシステムに関する。コーティングデバイスは、基材の表面をコーティングするように配置される。フレキシブルフィルムは、コーティングされた基材と平面接触するように配置される。一実施形態によれば、フレキシブルフィルムは、その遠位部分がコーティングされた基材と平面接触するように配置される。
【0021】
本発明は、さらに熱転写印刷装置に関する。熱転写印刷装置は、基材がエンドレスなリボンである、本発明によるコーティングシステムを備える。熱転写印刷装置は、経路に沿って基材を輸送するためのローラのセットを備えるコンベヤシステムと、基材の少なくとも一部の外面と接触して印刷支持体を輸送するための印刷ローラと、コーティングされたインクの一部を基材の外面から基材と接触している印刷支持体に熱転写するように配置された印刷ヘッドと、を備える。
【0022】
本発明はさらに、本発明によるコーティングシステムを備えるエンドレスリボンを製造するためのシステムに関するものであり、ここで基材はコーティングドラムを備える。1つの利点は、例えばディップコーティング法を使用して、コーティングドラム上に厚さが均一なエンドレスリボン又はバンドを形成することである。このシステムは、シリンダと、当該シリンダの縦軸の周りにコーティングドラムを回転させるモータ又はロータ/ステータの組のような手段を備えていることも有利である。
【0023】
本発明はさらに、基材をコーティングする方法に関する。
【0024】
一実施形態では、この方法は、コーティング組成物で基材の外面をコーティングすることを備える。この方法はさらに、フレキシブルフィルムを保持エレメントに吊り下げ、フレキシブルフィルムの自由部分が、基材のコーティングされた外面の上にその固化(凝固)前、乾燥前、あるいは完全硬化前に横たわるように、予め定められた経路に沿って、その内面によって基材を輸送することを備える。
【0025】
一実施形態では、コーティングのステップは、基材の外面を、互いに1つずつ分離された少なくとも2つのバンドで平行にコーティングすることを備え、コーティングモジュールは少なくとも2つのフレキシブルフィルムを備え、各フレキシブルフィルムは、1つのコーティングのバンドの上に重なるように配置される。
【0026】
別の代替的な実施形態では、方法は、コーティングデバイスを用いてコーティング組成物で基材の外面をコーティングすることと、フレキシブルフィルムの一部が、コーティング組成物の層の上にその固化前、乾燥前、あるいは完全硬化前に横たわるように、予め定められた経路に沿ってコーティングデバイス及びフレキシブルフィルムを輸送することを備える。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、スロットダイコーティングデバイスを使用した本発明の第1の実施形態によるコーティングモジュールの概略断面図である。
【
図2】
図2は、コーティングデバイスがインクローラを備える、本発明の第2の実施形態によるコーティングモジュールの概略断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態によるコーティングシステムのフレキシブルフィルムの概略断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の別の実施形態によるコーティングシステムのフレキシブルフィルムの斜視図であり、ここで、当該フレキシブルフィルムは開口部を備え、コーティングモジュールは、コーティング組成物のコーティング層と接触するフレキシブルフィルムの遠位部分を維持する手段を備える。
【
図5】
図5は、本発明の別の実施形態によるコーティングシステムのフレキシブルフィルムの概略断面図であり、ここで、当該フレキシブルフィルムの2つの縦方向端部は、保持エレメントに機械的に接続されている。
【
図6a】
図6aは、顕微鏡によって捉えられたリブ現象を示すコーティング層の図である。
【
図6b】
図6bは、フレキシブルフィルムが厚さ12μmでポリエステル製である、本発明のある実施形態によるコーティングモジュールでコーティングされたコーティング層を顕微鏡で捉えた図である。
【
図6c】
図6cは、フレキシブルフィルム無しのコーティングモジュールでコーティングされたコーティング層を顕微鏡で捉えた図であり、コーティングデバイスは表面欠陥を備えるインクローラを備える。
【
図6d】
図6dは、本発明の一実施形態によるフレキシブルフィルムをさらに備える、
図6cによるコーティングモジュールでコーティングされたコーティング層を光度計で捉えた図である。
【
図7】
図7は、フレキシブルフィルム及び本発明の一実施形態による保持エレメントの概略断面図であり、ここで、コーティングモジュールは、フレキシブルフィルムの少なくとも1つの部分を格納するための巻き取りエレメントを備える。
【
図8】
図8は、本発明の一実施形態による熱転写印刷装置の概略図である。
【
図9】
図9は、本発明の一実施形態によるコーティングモジュールの概略図であり、ここで、コーティングされる基材はコーティングドラムを備える。
【
図10】
図10は、本発明の一実施形態によるコーティングモジュールの概略図であり、ここで、コーティングされる基材はコーティングドラムを備え、さらにコーティングデバイスはナイフコーティングデバイスを備える。
【
図11】
図11は、本発明の一実施形態によるコーティングモジュールの概略図であり、ここで、コーティングデバイスとフレキシブルフィルムは可搬式である。
【
図12A】
図12Aは、フレキシブルフィルムと、当該フレキシブルフィルムをクリーニングするクリーニング手段の概略図である。
【
図12B】
図12Bは、一実施形態による、保持エレメントに取り付けられたフレキシブルフィルムの概略図であり、ここで、フレキシブルフィルムがエンドレスフィルムであり、コーティングモジュールがさらにフレキシブルフィルムの予備部分を洗浄する手段を備える。
【発明を実施するための形態】
【0028】
詳細説明
本出願において、「内面」という用語は、任意にコンベヤシステムと接触する基材の表面として理解されるべきである。反対に、「外面」という用語は、コーティング組成物を受ける基材の表面として理解されるべきである。
【0029】
本明細書では、「基材」、「コーティング基材」、「コーティング層(コーティングする層)」、又は「コーティング層(コーティングされた層)」は、フレキシブルフィルムと接触して、コーティング組成物を受ける任意の表面を指すために、区別なく使用される。このような表面は、プレコート、スキンコート、トップコート、バックコート、カバーリング、ニス塗り、仕上げ、フィルムラミネート用接着剤・・・などのような任意の種類のコーティング又はラミネートを生成するように設計されたフリーフローコーティング組成物を備える。
【0030】
図1は、本発明の一実施形態によるコーティングモジュール1の第1例を示す。
【0031】
コーティングモジュール1は、コンベヤシステム3によって予め決められた経路に沿って輸送されている間に、基材4の外面にコーティング組成物6を塗布するためのコーティングデバイス2を備える。コーティングモジュール1は、さらにフレキシブルフィルム5を備える。
【0032】
コーティングモジュール1は、あらゆる種類のコーティングデバイスを包含することができ、フレキシブルフィルムは、フレキソグラフィ、フリーフロー及びカーテンコーティング、ディップコーティング、ブラッシング、ロールコーティング(順ロールコーティング、逆ロールコーティング・・・など)、スプレー、ペインティング、ブラッシング/ワイピング、押し出しコーティング・・・などの直接又は転写(間接)コーティングのための、熟練者が利用可能なあらゆるコーティング技術に準拠するように作られている。
【0033】
このコーティングモジュール内のフレキシブルフィルムの使用は、あらゆる連続コーティングプロセスに埋め込むことができた。本発明は、最終的なコーティング表面が均一で滑らかでなければならないフリーフローコーティングに特に適応している。
【0034】
コーティングデバイスは、基材の上面にコーティング組成物を分配するために使用される。コーティング組成物は、全体又は部分的な領域をカバーするように流れる。したがって、フレキシブルフィルムは、例えばストリップコーティング又は断続コーティングのために、基材上に適用されるコーティング層の均一性を完全に又は部分的に改善するように設計することができる。
【0035】
コーティングプロセスは、単一のコーティングステップ又は複数ステップのコーティングで構成することができ、これにより、一連のコーティング組成物を、タックフリーであるかどうかにかかわらず、プレコートなどの以前のコーティング層の上に適用することができる。
【0036】
コーティングモジュールは、複数の異なるコーティング技術をマルチメソッドコーティングにおいて組み合わせることもできる。コーティングは、水平、垂直、又は斜めに角度を付けて動作させることができた。両面コーティングでは、プロセス中に内面と外面が切り替わることがある。フレキシブルフィルムは、その粘度に関係なく、当該コーティング組成物がまだ自由流動、すなわち液体、粘性のある、又は溶融している間に、コーティング組成物との接触を確保するために設置される。そのため、コーティングデバイスと冷却、硬化、あるいは乾燥の機器との間に配置されることが有利である。
【0037】
フレキシブルフィルム
コーティング中、フレキシブルフィルムはコーティングされた基材に接触することを意図している。コーティング層は基材の外面に塗布される。フレキシブルフィルムは、コーティングのレベリングが可能なままであるとき、すなわちその表面がタックフリーになる前に、コーティング組成物が硬化、乾燥、又は冷却される前に動作する。フレキシブルフィルムは、リプル、しわ、ぐらつき、及び/又は、放棄・・・などを回避して、あらゆる種類のコーティング製品の不完全さや欠陥に対処することができる。
【0038】
基材上に保持するために、フレキシブルフィルムの少なくとも一端が保持エレメントに取り付けられている。フィルムの曲げ能力は、遠位部分(末端部分)が基材に新たに塗布されたコーティング層の一部を覆うことを可能にする一方で、コーティング組成物は、均一化又はその他の方法で平滑化される適切な熱機械的挙動を示すことができる。コーティングの平坦化、レベリング、又は均一化の動作は、リブに対応し厚みのムラを除去するように配置されたプロセスウィンドウで行われる。
【0039】
一実施形態では、コーティング方向に応じた基材の動きとフレキシブルフィルムの柔軟性のために、フレキシブルフィルムの遠位部分が当該基材によって引きずられる。したがって、コーティング層はフレキシブルフィルムの遠位部分の下又はそれに沿ってスライドする。
【0040】
フレキシブルフィルムは、フレキシブルフィルムの遠位部分の面が基材のコーティング層と接触するように、好ましくは平面接触するように、配置及び設計される。
【0041】
「平面接触」により、フレキシブルフィルムの遠位部分が基材の上部コーティング層の上に横たわっているか、重なっているか、又は並置していることを理解すべきである。フレキシブルフィルムの遠位部分54の面は、基材のコーティング層と接触する表面を示す。
【0042】
フレキシブルフィルムの長さは、遠位部分とコーティング層との平面接触を確保するのに十分な長さに設計されている。フレキシブルフィルムの遠位部分の長さは、0.5mmよりも長い可能性があり、コーティング方向に応じて1cm以上が望ましい。
【0043】
一実施形態では、コーティングモジュールは、基材の幅の少なくとも2つの部分を同時にコーティングすることができ、少なくとも2つのバンド又はコーティングのストライプを形成する。一例によると、コーティングモジュールはシムを備える。シムは、少なくとも2つの開口部を備え、基材の表面上に少なくとも2つの別個のコーティングのバンド又はストライプを形成するように、当該開口部を介してコーティング組成物をガイドするように配置される。
【0044】
一実施形態では、コーティングモジュールは、少なくとも2つのフレキシブルフィルムを備える。好ましくは、少なくとも2つのフレキシブルフィルムは、保持エレメントに固定された同一平面に配置され、各フレキシブルフィルムは、基材の幅の一部に重なるように配置される。好ましくは、それぞれのフレキシブルフィルムは、1つのコーティングのバンドの上、外側のコーティング層又は基材の上に配置される。
【0045】
単端固定
図3に示す第1の実施形態では、フレキシブルフィルム5の近位端52が保持エレメント53に機械的に接続されている。当該保持エレメント53は、コーティングモジュールのフレームに機械的に接続されていることが望ましい。フレキシブルフィルムの近位端は、自由度ゼロで保持エレメント53に機械的に接続されていることが望ましい。
【0046】
言い換えれば、フレキシブルフィルムは、コンベヤシステムによって輸送されるコーティングされた基材4の上の近位端によって、保持エレメント53に固定され、吊り下げられる。フレキシブルフィルム4の長さは、保持エレメント53とコーティングされた基材4の間の距離よりも長いため、フレキシブルフィルムの遠位部分54は、上部コーティング層6の一部と重なって、屈曲してコーティングされた基材4の上に横たわる。
【0047】
両端固定
図5に示す第2の実施形態では、フレキシブルフィルム521,522の両端が保持エレメント53に機械的に接続されている。この実施形態では、フレキシブルフィルム5は閉ループを形成している。保持エレメントから離れた遠位部分54は、コーティング層6と接触するように配置される。第1の利点は、フレキシブルフィルムの、結果として起こるミスカット又は鋭い終端58による欠陥を防ぐことである。第2の利点は、フレキシブルフィルムとコーティングされた基材の間の接触を失うリスクを減らすことであり、フィルムが基材の上にたわむときにわずかな圧力を加える。第3の利点は、フレキシブルフィルム5の遠位部分54と基材の間のミスアライメントのリスクを減らすことである。
【0048】
第1の実施形態と第2の実施形態の両方で、フレキシブルフィルムは、コーティングデバイスからできるだけ近く基材に接触するように配置することができた。
【0049】
追加の実施形態
上記の第1又は第2の実施形態と併せて、その他の実施形態について説明する。
【0050】
図7に示す一実施形態では、コーティングモジュールは、フレキシブルフィルムの一部を巻き取るための少なくとも1つのユニット61又は62を備える。一実施形態では、少なくとも1つの巻き取りユニットは、一定量のフィルムを格納するように設計されている。
【0051】
更なる実施形態では、コーティングモジュールは第1ユニット62と第2ユニット61を備える。第1ユニットと第2ユニットは、保持エレメント5に機械的に接続されることが望ましい。フレキシブルフィルムは、これら第1ユニット61と第2ユニット62の間に保持され、第1ユニットから第2ユニットまでのフレキシブルフィルムの長さが第1ユニットと第2ユニットの間の距離よりも長いように、フレキシブルフィルムの格納ユニットを形成する。1つの利点は、新しくコーティングされた層6と接触するフレキシブルフィルムの遠位部分54を調整することである。
【0052】
一実施形態では、第1ユニット及び/又は第2ユニットは、少なくとも1つのワインダを備える。ユーザは、第1ユニット62からフレキシブルフィルムを巻き戻し、フレキシブルフィルムの古い部分をカットして、コーティング層と接触することを目的としたフレキシブルフィルムの遠位部分を更新することができる。一実施形態では、第1ユニット及び/又は第2ユニットは、当該ワインダとその回転速度を制御するための少なくとも1つのモータを備える。
【0053】
フレキシブルフィルムを第1ユニットから巻き上げ、第2ユニットに巻き上げると、コーティング層と接触するその遠位部分を更新することができる。第1ユニット内に格納されたフレキシブルフィルムの予備は、ロールアウトされ、コーティング層の上に広げられる。フレキシブルフィルムの巻き出された部分は、新しい遠位部分になる。1つの利点は、フレキシブルフィルムの遠位部分を継続的に交換することである。
【0054】
一実施形態では、コーティングモジュール1は、フレキシブルフィルムの劣化を測定するように設計された劣化センサをさらに制御する。劣化センサは、少なくとも1つの光学センサを備えることができる。一実施形態では、コーティングモジュールは、劣化センサによって測定された劣化が予め定められた閾値に達したときに、フレキシブルフィルムの遠位部分を自動的に交換する手段(第1及び/又は第2ユニットのモータを制御するコントローラなど)を備える。1つの利点は、フレキシブルフィルムの遠位部分を自動的に交換することである。
【0055】
保持エレメント53は、コーティングモジュール1のフレームに機械的に接続されることが望ましい。保持エレメント53は、フレキシブルフィルム5の一端又は両端を固定する固定手段を有することが有利である。
【0056】
一実施形態では、コーティングモジュール1は少なくとも2つのフレキシブルフィルム5を備え、各フレキシブルフィルム5は保持エレメント53に固定される。複数のコーティングステップでは、前述のような多数のフレキシブルフィルムのアレイを同じフレームに接続したり、独立して動作させたりすることができた。各保持エレメント53は、少なくとも1つの回転又は並進の自由度で、コーティングモジュール1のフレームに機械的に接続することができる。この自由度は、フレキシブルフィルム5の交換の容易さとともに、フレキシブルフィルムのアライメントを有利にする。
【0057】
一実施形態では、フレキシブルフィルムの少なくとも一方の端が保持エレメントに両面テープで取り付けられている。フレキシブルフィルムは、接着、クランプ、釘打ち、ネジで固定され、保持エレメント53にリベット留めされる。
【0058】
他の一実施形態では、コーティングモジュールは、フレキシブルフィルム5を容易に変更又は交換する手段を備える。一例では、第1ユニット61及び/又は第2ユニット62は、保持エレメント53又はフレームに取り外し可能に接続されている。第2例では、フレキシブルフィルムは、ネジ、トング、接着剤、又は磁気固定手段などの取り外し可能な固定手段によってフレーム又は保持エレメントに接続される。一実施形態では、保持エレメントは、後述の乾燥ユニットと結合されてもよい。
【0059】
別の代替的な実施形態では、フレキシブルフィルムと保持エレメントは、本発明に従って、地面に置くことを目的とし、フレキシブルフィルムを基材の上に吊るすことを目的とした携帯用の支持デバイスに取り付けてもよい。
【0060】
別の実施形態では、コーティングモジュールは、フレキシブルフィルムに横方向の動きを提供する手段をさらに備える。当該手段は、フレキシブルフィルムに振動を提供するための振動手段を誘導することができる。フレキシブルフィルムの振動は、コーティング層6へのリブ効果の低減を改善する可能性がある。振動のもう1つの利点は、粒子の存在、ほこり、気泡、早まって乾燥したコーティング、小さなかけら、塊によって引き起こされるストリークによって引き起こされる、又はコーティングデバイス内のニックによって引き起こされる欠陥の除去を、改善することである。したがって、コーティング層の品質は、ろ過又は実際のコーティングの前に実行されるその他の動作後に残っているコーティング組成物内のエアポケットの緩和によって改善することができた。
【0061】
一実施形態では、振動手段は、保持エレメント又は圧電エレメントを制御するモータを備えることができる。一実施形態では、コーティングモジュールは、コントローラを備える。コントローラは、振動手段を制御する。一実施形態では、コントローラは、振動手段を自動的に作動させて、定期的に、及び/又は、フレキシブルフィルムと基材との間にストリークが検出されたときに、フレキシブルフィルムに振動を提供するように構成される。
【0062】
一実施形態では、コーティングモジュールは、保持エレメント54の並進又は回転を提供する手段を備える。回転軸は、フレキシブルフィルムの長さ方向と感覚的に平行であることが望ましい。
【0063】
一実施形態では、保持エレメントは、並進及び/又は回転において少なくとも1つ又は2つの自由度を持つフレームで機械的に固定される。1つの利点は、保持エレメントがフレキシブルフィルムの位置を基材の向き及び位置に合わせて調整するために移動できることである。
【0064】
1つの例では、保持エレメントは、基材の表面に対して垂直又は感覚的に垂直な第1方向で、並進が自由である。1つの利点は、基材と接触する遠位部分の長さを調整することである。
【0065】
1つの代替的又は累積的な例では、保持エレメントは、基材の輸送方向と平行又は感覚的に平行な第2方向に自由に並進する。1つの利点は、ストリークを軽減又は除去することである。
【0066】
一実施形態では、第2方向に従った保持の動きは、コントローラによって制御される。一実施形態では、コントローラは、ストリークを除去するために、第2方向に従った保持エレメントの動き(前後の動きなど)を定期的に自動的に提供するように構成される。
【0067】
一実施形態では、コーティングモジュールは、フレキシブルフィルムと基材の間のストリークを検出するための光学センサなどのセンサを備える。センサはコントローラに接続され、コントローラは、センサ測定の機能として保持エレメントの移動を開始するように構成される。
【0068】
好ましくは、フレキシブルフィルムは、その近位端から遠位部分までのフィルムの方向が基材の輸送の方向と感覚的に一致するように保持エレメントから吊り下げられる。
【0069】
一実施形態では、フィルム5と基材4が端から端まで整列し、任意で基材4の幅がフレキシブルフィルムの幅と等しいか、感覚的に等しいようにフィルム5が配置される。フレキシブルフィルム5は、必然的にコーティング表面上で湾曲しており、コンベヤシステムによって誘発される輸送又はコーティングの方向に応じて整列又は配向する。当該設計のもう1つの利点は、基材の外面にコーティングを広げたり水平にしたり、その幅エッジを正確に制御したりすることである。
【0070】
フレキシブルフィルムの幅は、基材の幅の100%から50%の間であることが望ましい。
【0071】
別の実施形態では、コーティング組成物は基材の中央部分に適用される。このような実施形態では、フレキシブルフィルムの幅を調整して、最初の幅を超えるコーティング組成物の広がりを制御することができ、その結果、その後の幅と厚さを調節することができる。
【0072】
フレキシブルフィルムの化学組成を選択することができるが、以下のいずれかの材料又はそれらの組み合わせに限定されない。フレキシブルフィルムは、熱可塑性、熱硬化性、又はエラストマーポリマーをベースとし、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリスルホン、ポリウレタン、ビニール又はセルロース誘導体、フッ素化した又は塩素誘導体、ポリアリルエーテルケトン、ポリベンズイミダゾール、ポリエチレングリコール、ポリイミド、ポリウレタン、アクリルスチレン、アクリル共重合体、及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つのポリマーを備えることができる。フレキシブルフィルムは、有利には、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はその誘導体、ポリイミド、PTFE(「ポリテトラフルオロエチレン」)又はPEEK(「ポリエーテルエーテルケトン」)をベースとする材料で作ることができる。
【0073】
別の実施形態では、フレキシブルフィルムは、アルミニウムなどの金属の箔又はシートである。別の実施形態では、フレキシブルフィルムは、ポリマー層と金属層の組み合わせで構成される。別の実施形態では、フレキシブルフィルムは、粉末、ファイバ、ホイスカ、粒子、ナノシート・・・などの中から選択された少なくとも1つの充填剤を含む。充填剤は、炭素、カーボンブラック、グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ、活性カーボンナノチューブ、活性カーボンファイバ、非活性カーボンナノファイバ、メタルフレーク、メタルパウダ、メタルパウダ、メタルファイバの中から選択することができる。
【0074】
フレキシブルフィルムの材料と厚さは、フレキシブルフィルムが遠位部分に沿って基材と接触することを可能にし、当該遠位部分は移動中の基材によって支持される。
【0075】
一実施形態では、フィルムは電磁場に対して透明又は不透明になるように調整される。フレキシブルフィルムは、UV硬化性組成物が使用される場合に光化学反応を引き起こすために、紫外線(UV)放射に対して透明である場合がある。この実施形態は、厚いコーティングに特に有利である。実際、固化(凝固)の反応は、有利なことに、深部で引き起こされる可能性がある(深部貫通硬化)。そのため、表面が液体のままバルクコーティング内で反応を開始することができ、これによりフレキシブルフィルムが上部コーティング層の品質を向上させることができる。逆に、フィルムはそのような電磁波をブロックして、例えば発光環境でコーティングデバイスの近くでの早期硬化を防ぐことができる。
【0076】
別の実施形態では、フレキシブルフィルムは、電子ビーム、レーザ、プラズマ、コロナ・・・などの他の種類の放射線に対して透明、透過性、又は多孔性である可能性がある。フレキシブルフィルムは、また、コーティング組成物をその場で偏光させるために使用される直線状、円形、又は楕円の波などの電磁波に対しても透明であり、送信することができる。
【0077】
一実施形態では、フレキシブルフィルムのヤング率は10GPaよりも低く、5GPa以下が望ましい。フレキシブルフィルムの厚さは1μmよりも厚い。フレキシブルフィルムの厚さは、3μmから50μmの範囲が望ましく、3μmから15μmの範囲が望ましい。フレキシブルフィルムのこの厚さは、薄い層(例えば、100μmの薄さより薄い層)のコーティングに有利に適合する。
【0078】
別の実施形態では、フレキシブルフィルムの厚さは50μmよりも厚いか、望ましくは100μmよりも厚い。フレキシブルフィルムのこの厚さは、フレキシブルフィルムをより簡単に手動で扱うことができ、フレキシブルフィルムとコーティングされた基材との接触を維持するのに役立つという利点がある。
【0079】
必要に応じて、フレキシブルフィルムの基準重量をウェットコーティングの基準重量よりも低くすることができる。1つの利点は、コーティング層の厚さの均一性をよりよく制御できることである。一実施形態では、フレキシブルフィルムの基本重量は30g/m2により軽く、好ましくは20g/m2より軽い。フレキシブルフィルムの機械的性質と化学的/物理的特徴の組み合わせは、保持エレメントとコーティングと平面的に接触する遠位部分との間にフレキシブルフィルムの自由で浮遊する湾曲の形成を確実にするように選択又は調整することができる。
【0080】
一実施形態では、フレキシブルフィルム5の少なくとも1つの表面にテクスチャが施されている。
【0081】
一実施形態では、フレキシブルフィルムは限られた領域上のテクスチャを備える。好ましくは、溝は保持エレメントに最も近い領域にわたって分布し、遠位部分の最後の部分が基材と接触できるようにする。1つの利点は、フレキシブルフィルムをコーティング層上に滑らかにするプログレッシブ効果である。
【0082】
一実施形態では、フレキシブルフィルムはパターン又はランダムに飾られる溝で構成される。
【0083】
溝はレーザーアブレーションによって作られることが望ましい。溝は基材の輸送方向と平行でない方向に伸びる複数の溝を備えることが望ましい。
【0084】
1つの利点は、この斜めの溝によって基材4上にコーティング層6の摂動を作り出すことができることである。したがって、複雑なコーティング組成物のレベリングが他の方法では達成しにくい場合には、この溝によってリブが有利に減少する。
【0085】
一実施形態では、基材の輸送方向と10°から30°の角度を示す方向に沿って、この溝がフレキシブルフィルム5の表面に沿って伸びている。驚くことに、この溝の特定の向きによって、コーティングの品質がさらに向上することが発明者によって発見されている。実際、このような配置は、上部のコーティング層にさらなるせん断を誘発し、リブ効果の大幅な減少につながる。
【0086】
一実施形態では、当該溝の深さは1から10μmの範囲である。一実施形態では、当該溝の幅は0.5から10μmの範囲である。
【0087】
図4に示す一実施形態では、フレキシブルフィルム5は少なくとも1つの開口部56又は複数の開口部56を備える。開口部は、遠位部分54の間の部分にフレキシブルフィルム5上に配置されることが望ましい。より好ましくは、開口部56は、コーティング層6と接触するフレキシブルフィルム5の遠位部分54の近傍に配置される。
【0088】
開口部56は、遠位部分54と基材上のコーティング層との接触を維持するのに有利である。
【0089】
実際、基材4の速度を上げると、フレキシブルフィルム5に対する空気の抵抗により、フレキシブルフィルム5がコーティング層6から剥離し、そのためコーティングの品質が低下する可能性がある。さらに、開口部は、上述のように、放射線が通過してコーティング組成物に到達するための、フレキシブルフィルムに孔、穴を提供する可能性もある。
【0090】
開口部56は、フレキシブルフィルムの二面に沿った貫通穴であることが望ましい。この開口部の表面は、1μm2から10μm2の範囲であることが望ましい。
【0091】
一実施形態では、フレキシブルフィルム5は異なる表面エネルギーを持つ2つの面を示す。必要に応じて、コーティング層6と接触するフレキシブルフィルムの表面は、コーティング層と接触する基材4の外面よりも親油性又は親水性が高く、その逆も同様である。好ましくは、フレキシブルフィルム5は親油性材料で作られ、基材の外面は親油性材料で作られる。コーティング組成物に応じてフレキシブルフィルムの表面張力を調整することで、遠位部分との接触を高める。一実施形態では、フィルムの表面エネルギーは両側で精度良く50mN/mである。したがって、フィルムの遠位部分とコーティング層の有効接触は毛細管力によって強化され、流体内のせん断によって均一化効果が生じる。
【0092】
一実施形態では、フレキシブルフィルムは、その幅にわたってコーティング組成物の広がりを調整し、その分布を制御するように設計されている。
【0093】
一実施形態では、フレキシブルフィルムは繊維構造(ファイバ構造)を備える。一実施形態では、繊維構造は布地に配置される。この布地は、織布、不織布、編物、編組布、又はその他のあらゆる種類の開口又は密閉の構造を備えることができる。
【0094】
図4に示されている一実施形態では、コーティングモジュール1はさらに、フレキシブルフィルムの遠位部分に圧力をかけて、コーティング層との接触を維持する手段を備える。
【0095】
一実施形態では、これらの手段は、外面又はフレキシブルフィルム5と平面的に接触することを目的としたプレート55を備え、さらに、フレキシブルフィルム5の遠位部分54の上から基材4に向かう力を当該プレート55に発生させるアーム57を備えることができる。したがって、このプレート55は、フレキシブルフィルム5とコーティング層6との間の接触を維持するために、フレキシブルフィルム5を有利に押す。アーム57は、基材4に向かってプレート55による力を発生させるために、コーティングモジュール1のフレームに関して並進移動及び/又は回転移動することができる。
【0096】
別の実施形態では、フレキシブルフィルムの遠位部分に圧力を加える手段は、フレキシブルフィルムの遠位部分に向かって空気流を発生させるように配置されたファンを備える。この場合、圧力は空気によって加えられる。別の実施形態では、圧力を加える手段は、ローラのような任意の種類の押圧エレメントを備える。
【0097】
一実施形態では、プレート55は、フレキシブルフィルムに固定する手段を備える。当該プレート55は、フレキシブルフィルムに結合、連結、貼り付け、又は接着する手段を備えることができる。
【0098】
例えば、プレート55は、接着剤、又は吸引システムを備えることができる。これらの手段は、アーム57がプレート55を取り外すときに、プレート55がフレキシブルフィルムを取り外すことを有利に可能にする。
【0099】
1つの利点は、コーティング組成物がフレキシブルフィルムに沿ってスライドする間に、幅のコーティング分布をより良く制御することである。実際のところ、フレキシブルフィルムがコーティング組成物と関連する濡れ特性を示すことを考えると、基材のより狭い部分をコーティングし、コーティング層を幅方向に広げることができる。このセットアップは、フレキシブルフィルムをコーティング層に維持又は押し付けるために適用される圧力と組み合わせて有利に使用することができた。基材上に注がれたり適用されたりするコーティングの量を少なくするために、コーティング幅が拡大され、厚みを完璧に下げることができ、新しいプロセスウィンドウが開き、コーティングストライプや断続的なコーティングの管理が可能になる。
【0100】
プレート55は電気を伝導し、システムアースに接続することもできる。1つの利点は、静電分散を改善し、スパークや火災のリスクを減らすことである。一実施形態では、プレート55は金属製又は導電性プラスチック製である。
【0101】
別の改良された実施形態では、フレキシブルフィルムは導電性材料で作られ、コーティングモジュールはフレキシブルフィルムに電流を流す手段を備える。
【0102】
利点は、電流の通過がコーティング組成物又は導電性フィラーの極性分子を方向付けることである。コーティングモジュールは、好ましくは、当該フレキシブルフィルムを介して電磁場を伝達するために、フレキシブルフィルムに接続された発電機を備える。
【0103】
一実施形態では、コーティングモジュール1は、基材又はコーティング層からフレキシブルフィルム5を除去する手段をさらに備える。別の実施形態では、フレキシブルフィルムは、例えばメンテナンス作業の性能として、交換のために任意に除去することができる。
【0104】
コンベヤシステム
コーティングモジュールは、コンベヤシステム3を備えることができる。コンベヤシステムは、予め決められた経路に沿って基材4を支持し輸送するように設計されている。好ましくは、コンベヤシステムは、基材をコーティングデバイスからフレキシブルフィルムに駆動するように設計されている。
【0105】
コンベヤシステムは、好ましくは、コーティング中に制御された方法で基材の相対速度を駆動するように設計されている。
【0106】
一実施形態では、コンベヤシステム3は、基材4を予め決められた経路に沿ってその内面によって保持し、搬送するように設計されている。
【0107】
コンベヤシステム3は、少なくとも1つのローラ30を備えることができる。一実施形態では、コンベヤシステム3は、少なくとも1つの駆動ローラを備える。駆動ローラは、モータに接続され、当該駆動ローラを回転させる。駆動ローラの回転は、基材を有利に駆動する。
【0108】
コーティングモジュール1は、さらに、コンベヤシステムの駆動ローラを回転させるためのモータと、駆動ローラの回転を発生させる当該モータに結合された速度コントローラを備えることができる。その後、その経路に沿った基材の速度は、コンベヤシステムの駆動ローラの回転速度に関連し、速度コントローラによって制御される。
【0109】
一実施形態では、少なくとも1つのバッテリー又は電気的アリミネーションをコンベヤシステムに実装して、モータに電源を供給することができる。
【0110】
別の図示されていない実施形態では、支持ローラ30は、基材4をその内面によって案内し支持するためのガイドに置き換えられることができる。ガイドは、曲線ガイド又は部分的に丸みを帯びた形状ガイドであることが望ましい。ガイドは、コーティングモジュールのフレームに対して静的である。このガイドは、基材4の動きをガイドするために、平面であっても、曲面であっても構わない。
【0111】
コーティング組成物
コーティング組成物は、溶液、スラリー、分散液、エマルション、ペースト、インク、スラリー、又は任意の液体、流体、溶媒ベース、溶融、又は粘性の組成物、又は任意の種類の化学組成物であり得る。コーティング組成物は、基材の外面に塗布され、フレキシブルフィルムの下を通過した後に、固化、乾燥、硬化、又は冷却することを目的としている。コーティング組成物は、ゾル-ゲル組成物を備えることも、流体と固体の間の任意の過渡的組成物又は高分子組成物を備えることもできる。
【0112】
コーティング組成物は、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、エラストマー、及びそれらの混合物から選択された1つ以上のポリマーを備えることができる。
【0113】
熱可塑性ポリマーの例には、ポリオレフィン(ポリエチレン又はポリプロピレンを含む)のような脂肪族又は環状脂肪族ビニルモノマーの重合に由来するポリマー、ポリスチレンのような芳香族ビニルモノマーの重合に由来するポリマー、アクリル及び/又は(メタクリル酸)アクリル酸モノマーの重合に由来するポリマー、ポリアミド、ポリエーテルケトン、ポリイミドが含まれるが、これらに限定されない。
【0114】
熱硬化性ポリマーの例には、熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂など)が含まれ、ポリウレタン又はポリエーテルポリオールと任意に混合される。
【0115】
エラストマー性ポリマーの例には、天然ゴム、合成ゴム、スチレン-ブタジエン共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、シリコーンが含まれるが、これらに限定されない。
【0116】
コーティング組成物は1つ以上の充填剤を備えることができる。
【0117】
充填剤の例には、炭素、グラファイト、グラフェン、金属、酸化物、セラミックが含まれるが、これらに限定されない。
【0118】
充填剤の形状は、あらゆる寸法範囲の粒子、フレーク、粉末、ファイバ、ナノファイバ、ナノチューブ、ホイスカ、凝集体、シートであり得るが、これらに限定されない。
【0119】
コーティング組成物は、上記全ての任意の組み合わせであってもよい。
【0120】
一実施形態では、コーティング組成物は溶媒を備え、当該溶媒の蒸発はコーティング組成物の乾燥又は固化をもたらす。当該実施形態では、コーティングモジュールは熱源やエアブローなどの溶媒の蒸発を促進する手段を備えることができる。当該熱源又はエアフローは、基材がフレキシブルフィルムに沿って通過した後、基材のコーティングされた外面の方向に向くことが望ましい。
【0121】
代替的な実施形態では、コーティング組成物は溶融インクを備える。溶融インクは、コーティング後に冷却されて固化することが意図されている。一実施形態では、コーティングモジュールは、冷却器などのコーティング層の固化を促進する手段を備える。一実施形態では、冷却器は、
図8に示すように冷却ローラ201を備えることができる。当該冷却ローラ201は、基材の内面を支持するように配置され、基材を介してコーティングされた組成物を冷却する。好ましくは、フレキシブルフィルムは、コーティングデバイスとクーラー又は冷却ローラの間でコーティングされた基材の上をスライドするように配置される。
【0122】
別の代替的な実施形態では、コーティング組成物は、分極性分子又は光開始剤のような電磁場と反応する化学化合物を備える。光開始剤の例では、これらの化合物は、UV放射時にコーティング組成物をUV硬化させることができる。この実施形態では、コーティングモジュールは、コーティング層を放射線に暴露する硬化ユニットを備える。一例では、硬化ユニットは、前述のように光反応を開始するために、フレキシブルフィルムを介してコーティング層を紫外線に暴露するように配置される。この実施形態では、前に説明したように、フレキシブルフィルムはそのような放射線に対して透明であるか又は透過性をもつ。
【0123】
いずれの場合も、フレキシブルフィルムの物理的、化学的、又は機械的な特徴は、コーティング組成物によって選択される。
【0124】
基材
基材4はコーティングするために任意の表面にすることができる。必要に応じて、金属、ガラス、紙、布地、プラスチックなどの平らな表面にすることもできる。一実施形態では、基材はシート又は箔である。一実施形態では、基材はポリイミドリボンなどのリボンを備える。リボンは、バンドであってもエンドレスなリボンであってもよい。
図9に示す一実施形態では、基材は、以下の説明で説明するように、コーティングドラム37である。
【0125】
コーティングデバイス
コーティングデバイス2は、基材上に流体の層をコーティングすることができるあらゆる種類のコーティングデバイスであってもよい。コーティングデバイスは、基材の外面上にコーティング組成物の層を塗布するように設計及び配置されており、望ましくはウェットコーティングの基材の重量が30g/m2より小さく、及び/又は望ましくは厚さが100μmより薄い層である。
【0126】
コーティングデバイスは、コーティングモジュールのフレームに機械的に接続されていることが望ましい。
【0127】
コーティングデバイスは、基材の外面にコーティング組成物の層を塗布することを目的としている。コーティングデバイスは、いわゆる「コーティングゾーン」内の基材に当該コーティング組成物を塗布するように配置される。「コーティングゾーン」は、コーティングデバイスの一部に接触する基材の部分、又はコーティング組成物が塗布される基材の部分によって定義される。この「コーティングゾーン」は、コーティングデバイスから新しいインクを受け取る基材の長さに相当する場合がある。
【0128】
一実施形態では、コーティングデバイスは基材の両面をコーティングするように設計されている。コーティング組成物は、数千センチポアズまでの粘度と同様に、水に近い非常に低い粘度を示す可能性がある。コーティング組成物は、溶媒ベース又は水ベースの組成物の乾燥、重合又は架橋反応の誘発、放射線硬化性組成物のトリガー、又は溶融したコーティング組成物の冷却などの従来の技術を使用して硬化又は固化される。
【0129】
フレキシブルフィルムは、フレキシブルフィルムの遠位部分が上部のコーティング層と接触するように配置されることが望ましい。
【0130】
図6bに示すように、フレキシブルフィルムを用いた本発明によるコーティングモジュールを用いて得られたコーティング層の品質は、
図6aに示すようなフレキシブルフィルムを用いずに得られたものよりも均質である。実際、
図6bのコーティング層の表面様相は、ポリエステルを備える厚さ12μm、長さ22mmのフレキシブルフィルムで得られている。
【0131】
図6a及び
図6bでは、白いピクセルはコーティングの厚さが低い表面を示し、黒いピクセルの表面はコーティングの厚さが高い表面を示している。
【0132】
本発明は、例えば、熱転写印刷用途のインクドナーリボンをコーティングするために特に有利な、基材上のコーティングの均一性を有利に改善することがわかった。
【0133】
フレキシブルフィルムのもう1つの利点は、インクローラの外面上の欠陥によって誘発されるコーティング層から欠陥を除去することである。
【0134】
発明者たちはさらに驚くべきことに、このようなフレキシブルフィルムは、インクローラの外面上の欠陥の影響を制限するのに非常に効率的であることを発見した。
【0135】
図6cと
図6dを比較しながら例を示す。どちらの場合も、
図2に示すように、インクローラ24を備えるコーティングデバイスによってコーティング層がコーティングされている。上部コート層の品質をチェックするために、顕微鏡又はバックライト付きテレセントリックカメラシステムを使用して、同じコーティング部分が記録されている。
【0136】
実際のところ、インクローラ24が外面にいくつかの欠陥を示すと、その後の傷がコーティング層に現れる。このような傷は、
図6cに示されているように、インクロール上の圧痕の異常な存在によって、コーティング層に発生する。本発明によるフレキシブルフィルムを使用する場合、発明者は、
図6dに示されているように、このような欠陥65の衝撃が消滅することを観察した。インクロールの欠陥は、コーティングされた基材の同じ部分上のコーティング層に傷を生じさせるが、当該フレキシブルフィルムを使用すると消える。そのため、コーティングのリブが緩和されただけでなく、インクローラの外面上の欠陥による傷も緩和された。
【0137】
したがって、フレキシブルフィルムを使用することで、コーティング層の高品質を維持しながら、損傷したインクローラの交換を制限することができた。したがって、本発明は、インクローラの交換を制限し、コーティングモジュールの使用を増加させ、プロセス全体のスループットと歩留まりを向上させることができるという利点がある。
【0138】
一実施形態によれば、コーティング組成物を軟化又は溶融する必要がある場合、コーティングモジュール1は追加の加熱手段を備える。追加の加熱手段は、コーティング層6がフレキシブルフィルム5の遠位部分54に到達するまで、当該コーティング層6の温度がコーティング組成物の融点よりも高いか、又はコーティング組成物のガラス転移温度よりも高いことを保証する。
【0139】
この追加の加熱手段は、コーティング組成物がフレキシブルフィルムの遠位部分54に接触して歪むのに十分な液体又は粘性に保たれることを有利に保証する。追加の加熱手段は、毛細管力がフィルムと基材の間の相互作用を可能にできるように、コーティング組成物を十分に低い粘度に保つのに有利である。したがって、フレキシブルフィルムは、毛細管力がフレキシブルフィルムと基材の間の相互作用を管理できるような、柔軟性のレベルに達するように設計されることが望ましい。
【0140】
図3に示すように、フレキシブルフィルム5の遠位部分54は、支持ローラなどの支持エレメント30によって支持されたコーティング層6に接触している。フレキシブルフィルム5の遠位部分54は、コーティング層6と接触しており、コンベヤシステム3又は支持ローラ30によって支持されていることが望ましい。一実施形態では、支持ローラ30は、当該支持ローラ30の表面に接触している基材4を加熱する電気抵抗などの加熱手段を備える。
【0141】
支持ローラ30は、少なくともコーティングゾーンからフレキシブルフィルム5の遠位部分54まで基材4を支持するように配置することが好ましく、少なくともコーティングゾーンからフレキシブルフィルム5の遠位部分54までコーティング層6を加熱するように設計されている。
【0142】
一実施形態では、コーティングモジュール1は、放射線によってコーティング層6を加熱する手段を備える。
【0143】
当該手段は、赤外線源、又はフレキシブルフィルム5を加熱するように配置されたその他の熱放射源を備えることができる。当該実施形態では、フレキシブルフィルム5は、熱放射源から放出される放射を熱に変換する材料で作られている。この目的のために、フレキシブルフィルム5は、金シートやチタンシートなどのメタルシートから作られていてもよい。
【0144】
別の実施形態では、熱放射源を、コーティング層の深さで重合又は網状化を開始することができるUV源などの放射源に置き換えてもよい。
【0145】
このような実施形態では、フレキシブルフィルム5は、放射源又は熱放射源から放出される放射に対して透明な材料で作られる。
【0146】
例1:スロットダイコーティングデバイス
図1は、本発明によるコーティングモジュールの一実施形態を示す。コーティングデバイス2は、スロットダイコーティングデバイス21を備える。スロットダイコーティングデバイス21は、コーティング組成物6を基材4上に溶融して分配するように設計されている。スロットダイコーティングデバイス21は、コーティング組成物の主な供給源を保存するための流体リザーバと、スロットダイヘッド21の入口23を介してコーティング組成物を駆動するためのポンプを備えることもできる。スロットダイはさらに、コーティング組成物の量を測定するように設計された基材4にコーティング組成物を塗布するために形成されたスロット22を備え、例えば、基準重量が10g/m
2でウェットコーティングの厚さが1.5μm前後の2μmの箔基材に塗布する。
【0147】
コーティング組成物がスロットダイから押し出されている間、スロットダイチップと基材の間に流れの不安定性が生じる可能性のあるメニスカスが形成される。フレキシブルフィルム5の存在は、このような流れの不安定性によって引き起こされるリブを防ぎ、薄いコーティング層を水平にする。
【0148】
さらに、スロットダイコーティングは、コーティング方向に沿ってストライプを生成するためにしばしば選択される。フレキシブルフィルム5のいくつかのセクションを基材の幅にわたって配列して使用することにより、コーティング組成物のレベリングと、各コーティングされたストライプの端部のシャープネスを可能にする。そのため、ストライプが重なり合うリスクが大幅に低減され、コーティングのきれいさが向上する。
【0149】
コンベヤシステム3は、スロットダイコーティングデバイス21に対する基材4の相対速度を駆動するように設計されている。
【0150】
図1に示す実施形態では、コンベヤシステム3は、スロットダイコーティングデバイス21の両側で基材4を支持するように示された少なくとも2つのローラ30を備える。
【0151】
例2:インクローラコーティングデバイス
図2は、本発明によるコーティングモジュール1の別の実施形態を示している。この実施形態では、コーティングデバイス2はインクローラ24を備える。インクローラ24は、自身で回転するように取り付けられており、インクを円周面上に搬送する。インクローラの円周面が基材に接触している間にコーティングが行われ、所定の厚さでコーティング組成物が転写される。
【0152】
一実施形態では、インクローラ24の円周面は刻印されており、規則的に配置されたくぼみからなり、一連の溝、空洞又はパターンを形成する。当該くぼみの深さは5μmから50μmの間で構成される。当該くぼみは、インクローラ24が基材4と接触するまでコーティング組成物を輸送するのに有利である。
【0153】
インクローラは、アニロックスローラ又はフレキソ印刷用ローラである場合がある。
【0154】
例3:熱転写印刷装置
別の側面では、本発明は、エンドレスリボンを備えた熱転写印刷装置200に関する。このような熱転写印刷装置200について、
図8を参照して説明する。
【0155】
熱転写印刷装置は、任意の種類のコーティングデバイスであり得るコーティングモジュール1を備える。この例では、コーティングデバイスは、溶融したインクをコーティング基材に押し付けるように設計されたインクローラである。基材は、ポリイミドベースのリボンのようなエンドレスリボンであり、その内側により、ローラの配置によって定義される経路に沿ってコンベヤシステムによって駆動される。
【0156】
熱転写印刷装置200は、コーティング層6の一部をリボンから印刷支持体202に熱転写するための印刷ヘッド101を備える。その後、エンドレスリボン4が印刷ヘッド101からコーティングデバイス1に輸送され、再コーティングされる。
【0157】
熱転写印刷装置200は、このエンドレスリボン4を保持して輸送する複数のローラ201,204をさらに備える。
【0158】
一実施形態では、熱転写印刷装置は冷却エレメントをさらに備える。冷却エレメントは、印刷ヘッド101とコーティングデバイス1の間のリボン上のコーティング層6を能動的に冷却するように設計されている。好ましくは、フレキシブルフィルム5は、コーティングデバイス1と冷却エレメント201の間の基材4に接触するように配置される。
【0159】
前述のように、冷却エレメントは、基材4の内面に接触する冷却ローラを備えることができる。
【0160】
印刷装置200は、印刷ヘッド101を備える。好ましい一実施形態では、印刷ヘッド101は熱転写印刷ヘッドである。
【0161】
第1のモードでは、印刷ヘッド101はリボン4の内面と接触し、リボン4の外面に位置するインクの熱転写を可能にする。この印刷プロセスの間、リボン4の外面は、印刷支持体202を印刷するためのインクの部分を転写するために、紙シート(本明細書では「印刷支持体」と呼ばれる)のような基材202と接触(できれば加圧接触)する。
【0162】
第2のモードでは、印刷ヘッド101は、エンドレスリボン4と接触しない。このモードは、印刷装置のスイッチがオフになったとき、又は連続した2回の印刷シーケンス中に作動することがある。第1モードと第2モードの交代は、印刷モードによって設定することができる。
【0163】
熱転写が発生している間、少なくとも1つの印刷ローラ203又は印刷プレートを使用して、リボン4に接触する印刷支持体202を輸送することができる。熱転写印刷ヘッド101は、ホットメルトインクをリボン4から印刷支持体202に転送するように設計されている。印刷ヘッド101、リボン4、及び印刷支持体202の間の配置は、必要な印刷精度に応じて正確に設定された機械部品によって保証される場合がある。少なくとも印刷ヘッド101とリボン4の間の予め決められた配置を保証するために、いくつかのガイド及び位置制御コンポーネントが実装される場合がある。
【0164】
印刷ローラ203は、印刷プロセスが行われるときに印刷支持体202をリボン4に接触させ続けるために、印刷支持体202に十分な圧力を確保する。この構成では、当該リボン4は、印刷プロセス中に印刷支持体202と印刷ヘッド101の間の移動するサンドイッチ層に維持される。印刷支持体202の移動は、印刷ヘッド101付近のリボン4の変位方向と同じ方向での移動である。印刷ヘッド付近のこの移動は、直線移動であることが望ましい。
【0165】
印刷装置200のリボン4は、その外面において、インクをコーティングモジュール1から印刷ヘッド101まで輸送することを可能にする。
【0166】
印刷プロセスは、連続ループプロセスを形成するように実装される。印刷中、印刷ヘッド101はリボン4の内面に接触し、リボン4の外面にあるインクを印刷支持体202に熱転写できるようにする。印刷後、エンドレスリボン4は印刷ヘッド101からコーティングデバイス1に輸送され、再コーティングされる。その後、残留インクが回収され、コーティングデバイスによってコーティング層が補充される。この構成により、印刷されていない部分的に空になったインク層の回復と若返りが可能になる。インクは、リボン4の次のターンで有利に再利用することができる。
【0167】
例4:コーティングドラムへのコーティング
図9に示す一実施形態では、基材はコーティングドラム37である。コーティングドラム37は、回転シリンダなどのシリンダを備える。コンベヤシステムは、コーティングドラム37のシリンダの縦軸Aを中心にコーティングドラムを回転させる手段を備える。
【0168】
コンベヤシステムは、コーティングドラム37を回転駆動する駆動軸38を備えることができる。コーティングドラム37は、駆動軸38に接続されたモータによって回転駆動される。
【0169】
コーティングデバイス2は、コーティングドラムが回転している間に、コーティングドラム37の外面をコーティングするように配置されている。フレキシブルフィルム5は、本明細書で説明されているように、コーティング層に接するように配置されている。
【0170】
コーティングドラムは、1つ又は複数のコーティング層を使用してバンド又はエンドレスリボンを生成するように設計された1つ又は複数のコーティング層を支持するために使用される。このような基材は、表面の側面が改善されたコーティング組成物でシームレスなバンド又はエンドレスリボンを作成することを有利に可能にする。このバンドは、前述のサーマルプリンタでコーティングするための基材として使用することができた。
【0171】
例5:ナイフコーティング
図10は、本発明の一実施形態によるコーティングドラム37の別の実施形態を示している。
【0172】
この例示された実施形態では、コーティングドラムは、コーティング組成物で満たされたタンク28内に部分的に浸漬される。固定式のナイフコーティングデバイス2が提供され、コーティングドラム内のコーティング層の厚さが制御される。
【0173】
コーティング組成物内のコーティングドラムの回転は、基材とナイフの間に立っているメニスカスを継続的に供給する。基材の動きは、それがナイフを通過するときに層の堆積を確実にする。コーティング層の厚さは、ナイフと基材の間のギャップサイズに関係し、ある程度は基材速度にも関係する。ナイフコーティングは、広範囲の均一な層の堆積に適しており、高速(>10m/s)で行うことができる。
【0174】
フレキシブルフィルムも提供され、フレキシブルフィルムの遠位部分がコーティングドラム37のコーティング表面に接触するように配置される。
【0175】
例6:可動コーティングモジュール
図11に示す一実施形態では、コーティングデバイス2とフレキシブルフィルム5はアーム29によって機械的に接続されている。アーム28は可動ベース18に接続されている。可動ベースは地上で移動可能である。一実施形態では、可動ベース18は、地上で並進移動するための1又は複数の車輪を備える。
【0176】
当該実施形態では、基材4は固定されている。一例では、基材は固定支持体17上に配置されている。
【0177】
コーティング中、ベース18は、コーティングデバイスとフレキシブルフィルムの両方が基材4に沿って、又は基材4を横切って移動するように、軌道に沿って移動する。当該実施形態では、「基材の輸送方向」は、コーティングデバイス2に関する基材の方向として理解されるべきである。
【0178】
例7:クリーニング手段
図12A及び
図12Bに示す一実施形態では、コーティングモジュールは、フレキシブルフィルム5の部分59をクリーニングするクリーニング手段591を備える。一実施形態では、クリーニング手段591は、フレキシブルフィルム5の表面に接触するように配置されたフォーム又はスポンジを備える。1つの利点は、基材のコーティング層に接触していた表面をクリーニングすることである。したがって、フレキシブルフィルム5を再利用することができ、コーティングモジュールの寿命が有利に改善される。
【0179】
別の実施形態では、クリーニング手段591は、フレキシブルフィルムがクリーニング液を通過するように配置されたクリーニング液が満たされたタンクを備える。好ましくは、クリーニング液の組成は、フレキシブルフィルムからインクを除去するように設計される。
【0180】
図12Aに示すように、クリーニング手段591は、遠位部分54と第1ユニット61の間に配置され、フレキシブルフィルムを巻き取る。フレキシブルフィルム5が第1ユニット61内に巻き取られると、クリーニング手段591によってフレキシブルフィルム5がクリーニングされる。フレキシブルフィルム5が第1ユニット61から巻き出され、第2ユニット62内に巻き取られると、クリーニング手段を2回通過した後、フレキシブルフィルム5の新しい遠位部分がクリーニングされる。好ましくは、コーティングモジュールは、クリーニング手段591と第1ユニット61との間のエンドレスリボンをガイドするローラ63を備える。
【0181】
図12Bに示す別の実施形態では、フレキシブルフィルム5はループを形成するエンドレスフレキシブルフィルムである。ループを形成するフレキシブルフィルムの経路は、いくつかの支持エレメント531,532の位置によって予め決められており、クリーニング手段は、フレキシブルフィルムの一部をクリーニングするように配置されている。
【0182】
好ましくは、クリーニング手段591は、遠位部分54とフレキシブルフィルム5を支持する支持エレメント532との間の当該エンドレスフレキシブルフィルムの一部に接触している。1つの利点は、支持エレメントに接触する前にフレキシブルフィルムをクリーニングすることである。このような支持エレメントがインクやコーティング組成物の残りで汚れるリスクを低減するのに有利である。
【0183】
一実施形態では、クリーニング手段591は保持エレメント53に埋め込まれるか、固定される。
【0184】
コーティングモジュールは、クリーニング手段591を通過する予め決められた経路に沿ってフレキシブルフィルムを駆動するための追加のコンベヤシステムを備えることが望ましい。当該コンベヤシステムは、フレキシブルフィルムを駆動するためのローラ531及び/又は駆動ローラ532を備えることができる。
【0185】
一実施形態では、コーティングモジュールは、第1及び/又は第2のユニットを制御するためのコントローラ、又はクリーニング手段591を通るフレキシブルフィルム5の通過を制御するための追加のコンベヤシステムを備える。
【0186】
実施されたプロセス
別の側面によると、本発明は基材をコーティングするプロセスを指す。本明細書によると、このプロセスはコーティングモジュール及び/又はフレキシブルフィルムで実施されることが望ましい。
【0187】
このプロセスは、基材の外面をコーティング組成物でコーティングする第1ステップを備える。コーティング組成物は、コーティングデバイス及び/又は保持エレメント53に関して相対速度で基材を駆動しながら、コーティングデバイスによってコーティングされる。
【0188】
以前に説明したように、コーティングは、スロットダイコーティングデバイス、ナイフコーティングデバイス、インクローラなど、あらゆるコーティングデバイスで行うことができる。
【0189】
第2ステップでは、基材内のウェットコーティング層を、フレキシブルフィルム5の遠位部分54と接触する予め決められた経路に沿って駆動する。
【0190】
好ましくは、コーティング層は、5mmを超える距離で、好ましくは1cmを超える距離で、フレキシブルフィルムの遠位部分に沿ってスライドしている。
【0191】
このプロセスは、さらに、フレキシブルフィルムの下を通過した後に、コーティング層を乾燥、冷却、又は硬化させる下流ステップを備えることができる。コーティング組成物の乾燥又は固化は、フレキシブルフィルムの遠位部分に沿ってスライド動作するステップの後に発生することがある。この固化は、コーティング組成物中に存在する溶媒の蒸発によって、又はコーティング組成物をそのガラス転移温度以下に冷却することによって達成される。
【0192】
1つの代替的な実施形態では、コーティングデバイス2及びフレキシブルフィルムの遠位部分54は、基材の外面と接触する予め決められた経路に沿って駆動される。いずれの場合も、基材は、コーティングデバイス及び/又はフレキシブルフィルムの保持エレメントに対して相対的に移動している。
【0193】
コーティング組成物の冷却は、基材と冷却ローラ、又はファンを含む前述の他の冷却デバイスとの接触によって達成することができる。
【0194】
このプロセスは、基材面を切り替える手段をさらに備えることができる。両面に基材をコーティングするように、コーティングデバイスに関して、内面が外面となり、外面が内面となる。この実装では、少なくとも1つのフレキシブルフィルムを使用して、相対的な上部コーティング層を滑らかにすることができる。
【外国語明細書】