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  • 特開-汎用コンバインの刈取部 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088974
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】汎用コンバインの刈取部
(51)【国際特許分類】
   A01D 57/02 20060101AFI20240626BHJP
【FI】
A01D57/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204045
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(72)【発明者】
【氏名】大原 一志
(72)【発明者】
【氏名】喜安 一春
【テーマコード(参考)】
2B081
【Fターム(参考)】
2B081AA03
2B081BB23
2B081CC11
2B081FA20
(57)【要約】
【課題】本発明は、汎用コンバインにおいて、刈取部で穀粒の収穫ロスが生じないようにすることを課題とする。
【解決手段】機体フレーム1の前部に設ける刈取部4の回転リール9で穀稈を引き起こしながら切断装置10で刈り取ってプラットホーム8内に取り込み、脱穀装置5に送り込む汎用コンバインにおいて、回転リール9のタイン14の内側に短冊状の可撓性掻き寄せ板42を吊り下げて設けたことを特徴とする汎用コンバインの刈取部とする。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体フレーム(1)の前部に設ける刈取部(4)の回転リール(9)で穀稈を引き起こしながら切断装置(10)で刈り取ってプラットホーム(8)内に取り込み、脱穀装置(5)に送り込む汎用コンバインにおいて、回転リール(9)のタイン(14)の内側に短冊状の可撓性掻き寄せ板(42)を吊り下げて設けたことを特徴とする汎用コンバインの刈取部。
【請求項2】
横に配列するタイン(14)の各個別内側に掻き寄せ板(42)を吊り下げたことを特徴とする請求項1に記載の汎用コンバインの刈取部。
【請求項3】
掻き寄せ板(42)が透明で下端切断装置(10)に届かない範囲で移動軌跡(S)を描くことを特徴とする請求項1或いは請求項2に記載の汎用コンバインの刈取部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米や麦及び大豆を刈り取って穀粒を収穫する汎用コンバインの刈取前処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
汎用コンバインは、特開2021―171004号公報に記載されているように、機体の前側に穀稈を刈り取る刈取部を設け、上方から前下方に向かって回転するタインで穀粒の稔った穀稈を引き起こしながらバリカン型の切断装置で穀稈の株元を刈り取ってプラットホーム内のオーガ装置で横送りしてエレベータで脱穀装置に送り込み、穀粒を脱穀選別してグレンタンクに貯留して収穫する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021―171004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
汎用コンバインの刈取部は、線材のタインで穀粒の稔った穀稈を引き起こしながらバリカン型の切断装置で株元を刈り取ってプラットホーム内に取り込んでいるので、タインで穀稈の一部が引きちぎられて圃場に残ったりプラットホーム内で穀粒が弾けて圃場に飛び出したりして、収穫ロスが発生する。
【0005】
本発明は、汎用コンバインにおいて、刈取部で穀粒の収穫ロスが生じないようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
【0007】
請求項1の発明は、機体フレーム1の前部に設ける刈取部4の回転リール9で穀稈を引き起こしながら切断装置10で刈り取ってプラットホーム8内に取り込み、脱穀装置5に送り込む汎用コンバインにおいて、回転リール9のタイン14の内側に短冊状の可撓性掻き寄せ板42を吊り下げて設けたことを特徴とする汎用コンバインの刈取部とする。
【0008】
請求項2の発明は、横に配列するタイン14の各個別内側に掻き寄せ板42を吊り下げたことを特徴とする請求項1に記載の汎用コンバインの刈取部とする。
【0009】
請求項3の発明は、掻き寄せ板42が透明で下端切断装置10に届かない範囲で移動軌跡Sを描くことを特徴とする請求項1或いは請求項2に記載の汎用コンバインの刈取部とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明で、汎用コンバインは前進走行しながら機体フレーム1の前に設ける刈取部4のタイン14の回転によって倒伏した穀稈を引き起こしながら切断装置10で株元を切断してプラットホーム8に取り込むが、タイン14によって支えられた幅のある掻き寄せ板42で穀稈が掻き起されるので、穀稈がちぎれ難く、プラットホーム8内で穀稈から穀粒が弾けても幅のある掻き寄せ板42が圃場への飛び出しを防いで穀粒の損失を防ぐ。
【0011】
請求項2の発明で、刈取部4でタイン14と掻き寄せ板42が引き起こす穀稈の多少に応じて各個別に撓みながら掻き揚げることで短い穀稈であっても確実に引き起こされて穀粒がちぎれ難くプラットホーム8内へ送り込まれる。
【0012】
請求項3の発明で、請求項1及び請求項2の効果に加えて、掻き寄せ板42が透明であることで、操縦席に居る作業者が穀稈の引き起こし状態を確認し易く、引き起こしミスを少なく出来、掻き寄せ板42の下端が切断装置10に届かない移動軌跡Sなので、接触して破損摩耗することが無い。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態にかかるコンバインの全体左側面図である。
図2】同コンバインの全体平面図である。
図3】同コンバインにおける、刈取部の左側面図である。
図4】(a)、(b)同コンバインの切断装置の平面図である。
図5】同コンバインの切断装置の拡大側断面図である。
図6】同コンバインの別実施形態(1)の切断装置の拡大側断面図である。
図7】同コンバインの別実施形態(2)の切断装置の拡大側断面図である。
図8】同コンバインの回転リール部を示す左側面図である。
図9】(a)、(b)同コンバインの回転リール部の拡大左側面図とタインの拡大図である。
図10】同コンバインの切断装置の部分拡大平面図である。
図11】同コンバインのエレベータの拡大左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を汎用コンバインの実施例で、図面に基づいて説明する。
【0015】
(コンバインの全体構成)
図1図2に示すように、汎用コンバインは、稲や麦や豆類などを収穫するものであって、走行機体としての機体フレーム1と、機体を支持する左右一対のクローラ式の走行装置2と、機体フレーム1の前部に駆動軸45で上下揺動可能に支持されたエレベータ3と、エレベータ3の前端に連結された刈取部4と、機体フレーム1の左側に配設された脱穀装置5と、脱穀装置5の右横側に配設されたグレンタンク50と、エレベータ3及び脱穀装置5の右側かつグレンタンク50の前側に配設された運転部6とを備えている。なお、駆動軸45に刈取部4を駆動する電動モータと発電機を設ける構成では、刈取部4が軽負荷で駆動される場合に、発電機で発生する電力をバッテリーに蓄電して利用できるようにするとバッテリーを長持ち利用できる。
【0016】
刈取部4は、左右一対の分草杆7と、プラットホーム8と、収穫物掻き込み用の回転リール9と、プラットホーム8の前端において左右の分草杆7に亘って配設されたバリカン型の切断装置10と、プラットホーム8の上に配設され、左右方向向きの軸芯回りに回転する回転リール9とを備えている。
【0017】
機体フレーム1とエレベータ3との間に油圧シリンダを配備し、エレベータ3が左右方向の軸芯回りに脱穀装置5に対して上下に揺動操作可能にもうけられている。エレベータ3が上下揺動操作されると、刈取部4は、プラットホーム8が地面近くに下降した作業状態と、プラットホーム8が地面から高く上昇した非作業状態とになる。
【0018】
回転リール9は、刈取部4に対して揺動軸芯P回りに上下揺動可能に支持されたリールアーム12に回転自在に支持され、該リールアーム12に支持される回転体13に常に下方を向くように支持され、植立穀稈を掻き込む複数のタイン14と掻き寄せ板42を備えている。なお、回転リール9は、油圧シリンダ9aにて上下動自在に支持され、リールアーム12は、内部にベルト伝動機構を内蔵したケース体である。
【0019】
刈取部4を下降させた作業状態で、コンバインを前進走行させると、植立穀稈が分草杆7によって刈取り対象と非刈取り対象とに分草され、回転リール9の回転駆動によって刈取り対象の植立穀稈が、タイン14によって支えられる掻き寄せ板42でプラットホーム8に掻き込まれながら株元が切断装置10で刈取られる。すなわち、穀稈が掻き寄せ板42に当たったことで撓むが後ろのタイン14が支える構造となっている。なお、掻き寄せ板42は図のように平板に限らず、可撓性を有する曲面板でもよい。また、掻き寄せ板42はタイン14に直接固定あるいは吊下げられる構造以外に、回転リールのフレームに固定あるいは吊下げられていてもよい。プラットホーム8に掻き込まれた刈取穀稈は、オーガ11によってエレベータ3の前方に横送りされる。刈取穀稈はエレベータ3内で後上方に搬送され、刈取穀稈の株元から穂先までの全体が脱穀装置5に投入される。
【0020】
脱穀装置5は、投入された刈取穀稈を回転する扱胴によって脱穀処理する。脱穀処理された穀粒は、グレンタンク50に送られて一旦貯留され、随時、排出用オーガ15にてグレンタンク50から穀粒タンクに排出される。
【0021】
(プラットホーム)
プラットホーム8は、上板8aと底板8bと左右側板8cと後壁8dからなる前方が開口したケース形状をしており、底板8bの前端部に切断装置10を設け、内部に左右側板8cに軸支された左右方向向きの軸回りに駆動回転するオーガ11が設けられている。なお、オーガ11は、エレベータ3前部の右側部分と左側部分に螺旋である左右スパイラ16,16を備え、エレベータ3の前方まで刈取穀稈を横送りし、掻き込み杆17によってエレベータ3前部内に掻き込む。
【0022】
切断装置10は、図5に示すように、底板8bの前端部にボルト及びナット18にて固定した切断装置装着フレーム19に装着されており、該切断装置装着フレーム19に固定された固定刃10aと左右往復駆動機構10bにて左右往復移動する可動刃10cにて構成されており、固定刃10aに対して可動刃10cが左右往復駆動機構10bにて左右往復移動することにより穀稈が切断されるバリカン型の構成である。
【0023】
そして、切断装置10後部から底板8b前端上に臨むように、すなわち覆うように、前傾面20aと後傾面20bより構成される側面視でへ字状のガード板20が設けられている。また、該ガード板20は、底板8b前端の左右幅全域に亘る長さに設けられている。
【0024】
ガード板20は、その前傾面20aが、切断装置装着フレーム19の上面にボルト及びナット21にて固定したステー22に、ボルト及びナット23にて固定されている。そして、前傾面20aの下端縁は、切断装置10の上面に近接した位置に配置している。なお、切断装置装着フレーム19と、ガード板20を固定するステー22とは一体形成しても良い。
【0025】
更に、切断装置10が適正に作動するように切断装置10の上面を押える刃押え24の基部を切断装置装着フレーム19に固定し、ガード板20の前傾面20a下端には、刃押え24が前方に延設できるように切欠き25が形成されており、刃押え24を回避しつつ、更に、前傾面20aの下端縁は、切断装置10の上面に近接した位置に配置できる構成となっている。
【0026】
また、可動刃10cに固設した杆払い板のステー26が、ステー22内部空間で左右往復動できる構成となっている。
【0027】
また、図3に示すように、切断装置10の前端近接位置を前記回転リール9のタイン14下端が軌跡Rを描いて通過し、ガード板20の前傾面20aの傾斜角度は、該軌跡Rに沿った角度に設定している。さらに、図9(a)、(b)に示すようにタイン14の内側に共に吊り下げた短冊状の掻き寄せ板42の下端が軌跡Rより内側の軌跡Sを描いて通過する。切断装置10の切断装置装着フレーム19には前下方に向けて穀稈の株元を掬い上げるピアノ線材のガイドピック43を横一定間隔で設けている。ガイドピック43には圃場面を滑るソリ体44を設けてガイドピック43の先端が圃場面に突き刺さらないようにしている。なお、掻き寄せ板42は各タイン14の内側で幅が広く個別に撓んで穀稈が前下方に落下するのを防ぐ。掻き寄せ板42の幅はは各タイン14に個別に対応して、幅は例えば10cmである。 また、図4(a)、(b)に示すように、ガード板20の前傾面20aの下端縁の左端部には、切断装置10の可動刃10cの左右往復駆動機構10bとの干渉を防ぐ為に、切欠き27が形成されている。
【0028】
プラットホーム8の底板8b前端に設けた切断装置10後部から底板8b前端上に臨むように前傾面20aと後傾面20bより構成される側面視でへ字状のガード板20を設けたので、刈取作業中に泥土が切断装置10上を越えてプラットホーム8内に侵入しようとするのをガード板20の前傾面20aが防止し、プラットホーム8の収穫物に泥土が付着して汚粒となって品質が低下することを防止することができる。
【0029】
更に、ガード板20の後傾面20b及び掻き寄せ板42が、プラットホーム内の収穫物(米、麦、豆類)が前方にこぼれ落ちることを防止して、収穫ロスを低減することができる。
【0030】
また、ガード板20は、その前傾面20aを切断装置装着フレーム19の上面に固定したステー22に固定するので、前傾面20aの下端縁を切断装置10の上面に近接した位置に誤差なく配置することができ、適切に切断装置10に雑草や藁屑等が進入して挟まるような事態を極力回避することができる。更に、ガード板20の前傾面20a下端には、切断装置10の刃押え24が前方に延設できるように切欠き25が形成されており、刃押え24を回避しつつ、前傾面20aの下端縁を切断装置10の上面に近接した位置に配置できる。
【0031】
また、プラットホーム8の左端前端部に設けた切断装置10の可動刃10cの左右往復駆動機構10bとの干渉を防ぐ為に、ガード板20の前傾面20a左端の下端縁には切欠き27が形成されているので、切断装置10の可動刃10cの左右往復駆動機構10bを避けた状態でガード板20をプラットホーム8前端部の左右方向全幅に亘って設けることができ、前記の刈取作業中に泥土が切断装置10上を越えてプラットホーム8内に侵入しようとするのを防止する作用、及び、プラットホーム内の収穫物(米、麦、豆類)が前方にこぼれ落ちることを防止して、収穫ロスを低減する作用をより確実なものとすることができる。
【0032】
また、切断装置10の前端近接位置を前記回転リール9のタイン14下端が軌跡R及び掻き寄せ板42が軌跡Sを描いて通過するので、回転リール9のタイン14は切断装置10近傍の低い位置にある穀稈をも掻き込むことができ、且つ、ガード板20の前傾面20aの傾斜角度は、該軌跡Rに沿った角度に設定しているので、ガード板20の前傾面20aがタイン14の案内面の役割を果たして収穫物を逃がさず適切にプラットホーム8内に掻き込むことができる。
【0033】
(エレベータ)
図11に示すように、エレベータ3は、矩形筒形状の前端開口と後端開口とを有するエレベータケース体30と、エレベータケース体30に内装されたコンベヤ40とを備えている。
【0034】
コンベヤ40は、左右方向の軸芯回りに回動自在にエレベータケース体30に支持された前輪体としての前スプロケット40a及び後輪体としての後スプロケット40bと、該前スプロケット40aと後スプロケット40bとに巻き掛けられた左右一対のチェーン40cと、該左右のチェーン40cに亘って設けられた搬送体40dとを備えている。
【0035】
オーガ11の掻き込み杆17によってエレベータケース体30の前端開口に掻き込まれた刈取穀稈は、搬送体40dに引掛けられながらエレベータケース体30の底面30aとコンベヤ40との隙間を通して後方に搬送される。
【0036】
前スプロケット40aは、前横軸としての回転軸40eと一体に回転するドラム40fの外周部に一体に設けて構成される。
【0037】
後スプロケット40bは、エンジンからの駆動力にて駆動回転される駆動軸40gに軸支されて駆動回転する。
【0038】
駆動軸40gに巻付く藁屑等を掻き取るスクレーパ40hの基部が、エレベータケース体30の側壁間に固定された支軸40iに取付けられている。
【0039】
エレベータケース体30は、プラットホーム8から刈取穀稈が掻き込まれる前開口30bと脱穀装置5に刈取穀稈を送り込む後開口30cを設けた側断面四角形状のケース体であり、底面30aをなす底板30dと上板30eと左右側壁板30fにて構成されている。
【0040】
上板30eは、底板30dと略平行な平行部30e’と該平行部30e’の後端部から後傾斜する傾斜部30e’’とからなる。
【0041】
そして、平行部30e’の後端部と傾斜部30e’’前端部との接合部は、前記スクレーパ40hの支軸40iと側面視で略前後方が同じ位置になるように構成されている。従って、コンベヤ40の後部上方の空間Hが広くなるので、コンベヤ40が搬送してきた刈取穀稈を後開口30cから脱穀装置5に送り込む際に、コンベヤ40に絡み付いてコンベヤ40の上方にまで持ち回された藁屑等が溜まって詰まってしまうような事態が生じ難くなる。
【符号の説明】
【0042】
1 機体フレーム
4 刈取部
5 脱穀装置
8 プラットホーム
9 回転リール
10 切断装置
14 タイン
42 掻き寄せ板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11