IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーエプソン株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-印刷装置及び印刷方法 図1
  • 特開-印刷装置及び印刷方法 図2
  • 特開-印刷装置及び印刷方法 図3
  • 特開-印刷装置及び印刷方法 図4
  • 特開-印刷装置及び印刷方法 図5
  • 特開-印刷装置及び印刷方法 図6
  • 特開-印刷装置及び印刷方法 図7
  • 特開-印刷装置及び印刷方法 図8
  • 特開-印刷装置及び印刷方法 図9
  • 特開-印刷装置及び印刷方法 図10
  • 特開-印刷装置及び印刷方法 図11
  • 特開-印刷装置及び印刷方法 図12
  • 特開-印刷装置及び印刷方法 図13
  • 特開-印刷装置及び印刷方法 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089025
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】印刷装置及び印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240626BHJP
【FI】
B41J2/01 103
B41J2/01 451
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204118
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】青▲柳▼ 俊一
(72)【発明者】
【氏名】小林 崇
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA07
2C056EA08
2C056EB27
2C056EC12
2C056EC34
2C056FA03
2C056FA04
2C056FA10
2C056HA58
(57)【要約】
【課題】印刷装置において印刷品質を調整するために印刷するテストパターンについて、その確認方法への依存性を低減させる。
【解決手段】本発明の一態様にかかる印刷装置1は、第1面と、第1面の裏面に位置する第2面と、を有する媒体に対して、印刷を行う印刷ヘッド11と、印刷ヘッドによる印刷を制御する制御部10と、を備える。制御部10は、第1面に、第1方向においてそれぞれ印刷特性の異なる複数のテストパターンを形成し、第2面に、上記複数のテストパターンと重なる領域に一様な特性のベタパターンを形成するように、印刷ヘッド11による印刷を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と、前記第1面の裏面に位置する第2面と、を有する媒体に対して、印刷を行う印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドによる印刷を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記第1面に、第1方向においてそれぞれ印刷特性の異なる複数のテストパターンを形成し、前記第2面に、前記複数のテストパターンと重なる領域に一様な印刷特性のベタパターンを形成するように、前記印刷ヘッドによる印刷を制御することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記ベタパターンを1つの一連のパターンとして形成するように、前記印刷ヘッドによる印刷を制御することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記ベタパターンを、少なくとも前記複数のテストパターンにおける前記第1面上での印刷結果が変化し得る領域に重なるように形成させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記ベタパターンの色あるいは階調の少なくとも一方を変更する変更部をさらに備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記媒体における前記第1面に印刷された前記テストパターンを検知する検知部と、
前記テストパターンを前記検知部で検知することで確認する第1の確認方法と前記テストパターンを目視で確認する第2の確認方法とのいずれかを選択する選択部と、
を備え、
前記制御部は、前記選択部にて前記第2の確認方法が選択された場合に、前記選択部にて前記第1の確認方法が選択された場合に比べて前記ベタパターンの階調値が低くなるように、前記印刷ヘッドによる印刷を制御することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記媒体における前記第1面に印刷された前記テストパターンを検知する検知部と、
前記テストパターンを前記検知部で検知することで確認する第1の確認方法と前記テストパターンを目視で確認する第2の確認方法とのいずれかを選択する選択部と、
を備え、
前記制御部は、前記選択部にて前記第2の確認方法が選択された場合に、前記ベタパターンを形成せずに前記複数のテストパターンのみを形成するように、前記印刷ヘッドによる印刷を制御することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の印刷装置。
【請求項7】
第1面と、前記第1面の裏面に位置する第2面と、を有する媒体に対して、印刷を行う印刷ヘッドを備えた印刷装置を用い、テストパターン印刷を行う印刷方法であって、
前記第1面に、第1方向においてそれぞれ印刷特性の異なる複数のテストパターンを形成し、
前記第2面に、前記複数のテストパターンと重なる領域に一様な印刷特性のベタパターンを形成するように、前記印刷ヘッドによる印刷を制御することを特徴とする印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置及び印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置においては、印刷品質を調整するためにテストパターンを印刷して確認することがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、インクを吐出するための複数のノズルが所定方向に沿って配列されたノズル列を複数有する記録ヘッドについて、不吐ノズルを特定し、ノズル列を記録動作に使用するか否かを判定する技術が開示されている。特許文献1に記載の技術では、1つの記録ヘッドのすべての吐出口からシートにインクを吐出させてテストパッチを記録し、記録したテストパッチ上で画像の抜けがある箇所を光学センサまたはユーザーによる目視にて認識している。そして、特許文献1に記載の技術では、その抜けがある箇所に対応する吐出口を、不良吐出口として、つまり不吐ノズルとして特定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-88151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、テストパターンの確認を光学センサ等の検知部を用いて実施する場合とユーザーによる目視で行う場合とで、確認結果に大きな差異が生じることがある。そして、確認方法に依存して確認結果に大きな差異が生じると、印刷品質の調整にも大きな差異が生じてしまうことになる。
【0006】
よって、印刷装置において印刷品質を調整するために印刷するテストパターンについて、その確認方法への依存性を低減させる技術の開発が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様にかかる印刷装置は、第1面と、前記第1面の裏面に位置する第2面と、を有する媒体に対して、印刷を行う印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドによる印刷を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記第1面に、第1方向においてそれぞれ印刷特性の異なる複数のテストパターンを形成し、前記第2面に、前記複数のテストパターンと重なる領域に一様な印刷特性のベタパターンを形成するように、前記印刷ヘッドによる印刷を制御することを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様にかかる印刷方法は、第1面と、前記第1面の裏面に位置する第2面と、を有する媒体に対して、印刷を行う印刷ヘッドを備えた印刷装置を用い、テストパターン印刷を行う印刷方法であって、前記第1面に、第1方向においてそれぞれ印刷特性の異なる複数のテストパターンを形成し、前記第2面に、前記複数のテストパターンと重なる領域に一様な印刷特性のベタパターンを形成するように、前記印刷ヘッドによる印刷を制御することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態にかかる印刷装置の一例を示すブロック図である。
図2図1の印刷装置における印刷ヘッドを搭載したキャリッジの一例を、媒体と共に模式的に示す図である。
図3図1の印刷装置において媒体に対して印刷したテストパターン及びベタパターンの一例を示す模式図である。
図4図3の印刷結果を表面から見た様子を示す模式図である。
図5図1の印刷装置において媒体に対して印刷したテストパターン及びベタパターンの他の例を示す模式図である。
図6図5の印刷結果を表面から見た様子を示す模式図である。
図7図1の印刷装置における印刷動作の一例を示すフローチャートである。
図8図1の印刷装置で印刷したテストパターンと比較例にかかる印刷装置で印刷したテストパターンとについて、筋強度を測定した結果の例を示すグラフである。
図9図1の印刷装置における印刷動作の他の例を示すフローチャートである。
図10図9の例において、テストパターン及びベタパターンの印刷の設定時に使用されるユーザーインターフェイスの一例を示す図である。
図11図1の印刷装置において媒体に対して印刷したテストパターン及びベタパターンの他の例を示す模式図である。
図12図11の印刷結果を表面から見た様子を示す模式図である。
図13図1の印刷装置において媒体に対して印刷したテストパターン及びベタパターンの他の例を示す模式図である。
図14図13の印刷結果を表面から見た様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図は、本実施の形態を説明するための例示に過ぎない。例えば、印刷結果等の図面において比率や形状や濃淡が正確でなかったり、互いに整合していなかったり、一部が省略されていたりする場合がある。
【0011】
(実施の形態)
図1は、実施の形態にかかる印刷装置の一例を示すブロック図である。図2は、図1の印刷装置における印刷ヘッドを搭載したキャリッジの一例を、媒体と共に模式的に示す図である。
【0012】
図1に示す印刷装置1は、制御部10及び印刷ヘッド11を備える。また、印刷装置1は、キャリッジ12、搬送部13、記憶部14、表示部15、操作受付部16、通信部17、及び検知部18を備えることができる。
【0013】
印刷装置1のうち、主に制御部10及び印刷ヘッド11における印刷の制御にかかる部分で、本実施の形態にかかる印刷装置の一例が構成できる。なお、印刷装置1は、図示しない検出器群を備えることができ、この検出器群により印刷装置1内の状況を監視し、制御部10がその検出結果に基づいて各部を制御することができる。以下、印刷装置1がインクジェット方式で印刷を行うインクジェットプリンターであることを前提として、各構成要素について説明する。
【0014】
制御部10は、コントローラーと称することもでき、印刷装置1の制御を行う。この制御には、印刷ヘッド11による印刷制御を含むものとし、この印刷制御にはテストパターン及びベタパターンを印刷する印刷制御を含むものとする。このテストパターン及びベタパターンの印刷における印刷制御は本実施の形態の主たる特徴の1つであり、その具体例は図3以降を参照しながら後述する。
【0015】
制御部10は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等の演算処理装置と、作業用メモリーと、制御用のプログラムやパラメーター等を記憶する記憶装置とを含んで構成されることができる。制御部10は、SoC(System on a Chip)として構成することもできる。これらの例からも分かるように、制御部10は、制御用のプログラムを実行可能な状態で記憶する構成とすることができる。但し、制御部10は、制御用のプログラムをFPGA(field-programmable gate array)のように回路構成として記憶する構成とすることや、あるいは専用の回路として構成することもできる。上記のプログラムは、以下に説明するような印刷制御を行うプログラムを含むことができる。
【0016】
印刷ヘッド11は、制御部10による制御下でインクジェット方式により液体を媒体へ吐出して印刷を行う。印刷ヘッド11が吐出する液滴をドットと言う。液体とは主にインクであり、以下では液体がインクであることを前提として説明する。また、印刷ヘッド11はインク吐出ヘッドと称することができる。また、印刷ヘッド11は、媒体に記録を行うためのものであり、記録ヘッドと称することができる。同じの理由から、印刷装置1は記録装置と称することもできる。
【0017】
印刷ヘッド11には、その下面において、1又は複数の色のインクを吐出するノズルを搬送方向に所定の間隔おきに並べたノズル列が複数形成されている。なお、この所定の間隔はノズルピッチと称される。また、各色のノズルは、対応する色のインクが充填されたインク室に連通し、そのインク室から対応する色のインクが供給される。ノズルからのインク吐出方式は、駆動素子(ピエゾ素子)に電圧をかけてインク室を膨張、収縮させることによりノズルからインクを吐出させるピエゾ方式でもよい。また、ノズルからのインク吐出方式は、発熱素子を用いてノズル内に気泡を発生させ、その気泡によってノズルからインクを吐出させるサーマル方式でもよい。
【0018】
印刷ヘッド11は、例えば、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)といった各色のインクを吐出可能であり、図2で例示するように、それぞれの色のインクを媒体30に対して吐出するノズル列11C、11M、11Y、11Kを備えている。ここで、媒体30は、例えば用紙であるが、液体による印刷の対象となり得る媒体であればよく、フィルムや生地等、紙以外の素材であってもよい。
【0019】
キャリッジ12は、制御部10による制御下で、印刷ヘッド11を所定の主走査方向D1に沿って往復移動させる。この往復移動のために、キャリッジ12は印刷ヘッド11を搭載している。よって、キャリッジ12の移動は印刷ヘッド11の移動と同義である。なお、キャリッジ12と印刷ヘッド11とをまとめて印刷ヘッドと捉えてもよい。また、この往復移動のために、印刷装置1は、図示しないガイドレール、移動機構、及びキャリッジモーターを備えることができる。ガイドレールは、キャリッジ12を主走査方向D1に移動させるガイドの機能を果たすレールであり、移動機構は、キャリッジモーターを動力として、ガイドレールに沿わせてキャリッジ12を主走査方向D1に移動させる機構である。
【0020】
主走査方向D1は、媒体30の幅方向、つまりキャリッジ12において印刷ヘッド11を移動させる方向を指すことができる。なお、便宜上、図2で示す主走査方向D1の向きを往路、逆の向きを復路とし、往路及び復路の双方で印刷を行うことを前提とするが、往路又は復路の一方のみで印刷を行い、他方でキャリッジ12の位置を戻すだけの移動とすることができる。
【0021】
以下、主走査方向D1に沿った一方側から他方側への移動を往路移動、他方側から一方側への移動を復路移動と称する。また、キャリッジ12による主走査方向D1に沿う印刷ヘッド11の移動に伴う、印刷ヘッド11によるインク吐出は「走査」あるいは「パス」と称することができる。また、往路移動によるパスを往路パス、復路移動によるパスを復路パスと称することができる。往路パス及び復路パスによる印刷が双方向印刷であり、往路パスと復路パスとのいずれか一方のみによる印刷が単方向印刷であり、以下では便宜上双方向印刷を前提として説明することになる。
【0022】
搬送部13は、制御部10による制御下で媒体30を所定の搬送経路に沿って印刷可能な位置まで搬送し、印刷時には搬送方向である副走査方向D2に所定の搬送量で媒体30を搬送する。搬送部13は、例えば、回転して媒体30を搬送するローラーや、回転の動力源としてのモーター等を備えることができる。また、搬送部13は、モーターで動くドラムやベルトやパレットに媒体30を搭載して媒体30を搬送する機構であってもよい。
【0023】
また、媒体30は第1面と第1面の裏面に位置する第2面とを有し、印刷ヘッド11は、媒体30に対して印刷を行うために設けられる。そして、印刷ヘッド11により媒体30の第1面と第2面との双方に印刷を実行するために、搬送部13は、印刷ヘッド11側に第1面を向けた状態から第2面を向けた状態へと媒体30を反転する機構を備えておくことができる。このような媒体の反転は、制御部10が搬送部13を制御することにより実行させることができる。
【0024】
ここで、図2に基づき、印刷ヘッド11と媒体30との関係性について補足的に説明する。図2には、印刷ヘッド11と媒体30との関係性を上方からの視点により簡易的に示している。主走査方向D1と副走査方向D2とは交差している。ここで言う交差は、直交或いはほぼ直交である。主走査方向D1に交差する方向である副走査方向D2は搬送方向となる。
【0025】
印刷ヘッド11は、インクを吐出可能な複数のノズル20を備え、図2に示す白丸の1つ1つが個々のノズル20である。つまり、図2の例において、ノズル列11C,11M,11Y,11Kのそれぞれでは、副走査方向D2におけるノズル20同士の間隔であるノズルピッチが一定或いはほぼ一定の複数のノズル20が並んでいる。
【0026】
ノズル列11Cは、Cインクを吐出する複数のノズル20が並ぶノズル群である。同様に、ノズル列11Mは、Mインクを吐出する複数のノズル20が並ぶノズル群であり、ノズル列11Yは、Yインクを吐出する複数のノズル20が並ぶノズル群であり、ノズル列11Kは、Kインクを吐出する複数のノズル20が並ぶノズル群である。複数のノズル列11C,21M,21Y,21Kは、主走査方向D1に沿って並んでおり、副走査方向D2におけるノズル20の位置は互いに同一である。図2では、同じノズル列を構成する複数のノズル20が並ぶノズル並び方向を、副走査方向D2と平行としているが、ノズル並び方向は副走査方向D2に対して斜めに交差していてもよい。副走査方向D2におけるノズル列の長さ、つまりノズル群の長さは、ノズル群長と称することができる。
【0027】
以下では、印刷ヘッド11が図2に示す印刷ヘッド11である例を挙げて説明するが、印刷ヘッド11は、望む画質の画像を媒体に印刷できるものであればよい。つまり、印刷ヘッド11において、各色のノズルの数、ノズルピッチ、インクの色、色数などは例示するものに限らず、またインク以外の液体を吐出可能であってもよい。また、印刷ヘッド11は、使用頻度が高いブラックなどのインクについて、1つの色につき複数箇所のノズル列を形成させておくこともできる。また、インクは、紫外線を照射すると硬化するUV(Ultra Violet)硬化型インク等の光硬化型インクであってもよく、その場合、印刷装置1に紫外線照射のための照射部が設けられることになる。
【0028】
キャリッジ12は、上述したように印刷ヘッド11を搭載し、主走査方向D1に印刷ヘッド11と共に往復移動可能となっている。搬送部13は、副走査方向D2の矢印が示すように、副走査方向D2の上流から下流へ媒体30を搬送する。なお、副走査方向D2、即ち搬送方向D2の上流、下流を、単に上流、下流と称して説明する。また、パスとパスとの間に搬送部13が実行する下流への所定距離の搬送は「紙送り」と称することができる。制御部10は、パスと紙送りとを交互に繰り返すことにより、媒体30に2次元の画像を印刷する。
【0029】
なお、印刷装置1は、印刷ヘッド11を搭載したキャリッジ12を、主走査方向D1に沿う往復移動だけでなく、副走査方向D2に沿う往復移動も実行できるように構成しておくこともできる。つまり、印刷ヘッド11は、パスとパスとの間に、紙送りの替わりとなる上流側への所定距離の移動を行うことで、媒体30に2次元の画像を印刷するとしてもよい。
【0030】
記憶部14は、例えば、ハードディスクドライブや、ソリッドステートドライブや、その他のメモリーによる記憶装置である。制御部10が備えるメモリーの一部を記憶部14と捉えてもよい。記憶部14を、制御部10の一部と捉えることもできる。
【0031】
表示部15は、情報を表示するための部位であり、例えば、液晶ディスプレイや、有機ELディスプレイ等の表示装置により構成される。表示部15は、ディスプレイと、ディスプレイを駆動するための駆動回路と、を含む構成とすることもできる。
【0032】
操作受付部16は、ユーザーによる操作や入力を受け付ける部位である。操作受付部16は、例えば、物理的なボタン、表示部15に搭載したタッチパネル、ポインティングデバイス、及びキーボード等のいずれか1又は複数によって実現されることができる。操作受付部16がタッチパネルを備える構成では、表示部15及びタッチパネルを含めて、印刷装置1の操作パネルと称することもできる。
【0033】
通信部17は、印刷装置1が所定の通信規格を含む所定の通信プロトコルに準拠して有線又は無線で1又は複数の外部装置と通信を実行するための1又は複数の通信インターフェイスとすることができる。外部装置は、例えば、パーソナルコンピューター(PC)、サーバー、スマートフォン、タブレット型端末等の通信機能を備えた装置である。また、この外部装置は、印刷装置1に画像を印刷させるための印刷データを印刷装置1に出力することができ、この印刷データを受信した印刷装置1は媒体に印刷を行うことができる。また、この外部装置は、印刷装置1における各種設定を行うことができる。
【0034】
検知部18は、印刷装置1によって後述するテストパターンを印刷した後の媒体30からテストパターンを光学的に読み取って検知する部位であり、スキャナーあるいは測色器などとすることができる。なお、検知部18はスキャナー部と称することもできる。また、検知部18は、上記の外部装置の1つとしての画像読み取り装置とすることができ、その場合、画像読み取り装置は、通信部17を介して印刷装置1に接続されることができる。
【0035】
図2を参照して説明したような、印刷ヘッド11が主走査方向D1に沿って移動しながらパスを実行し、パスとパスとの間に媒体30が副走査方向D2に紙送りされる印刷方式を、シリアル方式と呼ぶ。一方、印刷ヘッド11が、主走査方向D1に沿って移動しながらパスを実行し、パスとパスとの間に紙送りに替わって副走査方向D2に沿って移動する印刷方式を、ラテラル方式と呼ぶ。以下では、シリアル方式を前提として説明を続けるが、当然に、ラテラル方式に置き換えて説明を解釈してもよい。
【0036】
<TPの印刷例>
次に、制御部10によるテストパターンにかかる印刷制御の一例について、図3及び図4を参照しながら説明する。図3は、印刷装置1において媒体に対して印刷したテストパターン及びベタパターンの一例を示す模式図である。図4は、図3の印刷結果を表面から見た様子を示す模式図である。なお、図3及び図4をはじめとする印刷例の図面では、左開き又は上開き用の長辺綴じで印刷する例を示している。但し、例えば上開き又は左開き用の短辺綴じなどの他の綴じ方で印刷されることもでき、綴じ方に合わせて両面の印刷領域の位置合わせを行えばよい。
【0037】
制御部10は、次のようなパターンを形成するように、印刷ヘッド11による印刷を制御することが可能となっている。即ち、制御部10は、媒体30の第1面に、第1方向においてそれぞれ印刷特性の異なる複数のテストパターンを形成させ、その媒体30の第2面に、上記複数のテストパターンと重なる領域に一様な印刷特性のベタパターンを形成させる。以下、テストパターンをTPと称し、ベタパターンをSPと称して説明を行う。
【0038】
図3の例に示すように、制御部10は、媒体30の第1面30Aに、主走査方向D1においてそれぞれ印刷特性の異なる5つのTP41~45を形成させる。主走査方向D1は第1方向の一例である。なお、図3では、TPを主走査方向D1に5つ、間欠的に印刷する例を挙げている。但し、第1方向は副走査方向D2や斜めの方向などであってもよく、またTPの数は5に限らず2以上であればよく、また間欠的ではなく連続的に印刷することもできる。
【0039】
媒体30の第1面30Aに形成させるTP41~45について説明する。TP41,42,43,44,45はいずれも、下流側の第1パッチ40a及び上流側の第2パッチ40bにより形成されている。図3では、TP43以外のTP41,42,44,45については、符号40a,40bの記載を省略している。第1パッチ40a及び第2パッチ40bは、同じ或いはほぼ同じ形状である。以下では、上流から下流を向く視点を基準とした右、左を、単に右、左と言う。
【0040】
1つのTPを形成する複数のパッチ40a,40bは、それぞれ異なるパスにより印刷されている。つまり、TP41,42,43,44,45は、それぞれが2回のパスにより印刷されている。また、TP41,42,43,44,45は、互いに第1パッチ40aと第2パッチ40bとの位置関係が異なるように形成されている。以下では、例として、TP41,42,43,44,45それぞれに関する、第1パッチ40aと第2パッチ40bとの位置調整値が-2α、-α、0、+α、+2αである場合を挙げて説明する。ここで、αは所定距離を意味する数値である。
【0041】
TP41,42,43,44,45のうち、中央に位置するTP43の位置調整値は0であり、これは第1パッチ40aと第2パッチ40bとの位置を調整していないことを意味する。つまり、第1パッチ40aと第2パッチ40bとの位置を調整していないTP43は、第1パッチ40aを印刷したパスの後、予め定められた1回分の紙送り量である「基準送り量」の指示に応じた紙送りを経て、次のパスにより第2パッチ40bが印刷されている。
【0042】
説明を簡単にするために、第1パッチ40aや第2パッチ40bの副走査方向D2における長さは、ノズル群長に相当するものとする。つまり、第1パッチ40aや第2パッチ40bは、それぞれが印刷ヘッド11の1回のパスで印刷されるバンド画像である。基準送り量は、ノズル群長よりも所定ノズル数分だけ短い距離であるとする。なお、基準送り量がノズル群長よりも所定ノズル数分だけ短い距離とした理由は、連続するパスそれぞれで印刷した画像間に副走査方向D2において隙間が生じないようにするためである。
【0043】
この場合、印刷ヘッド11が、1回のパスで第1パッチ40aを印刷した後、搬送部13が基準送り量の紙送りを1回実行し、印刷ヘッド11が、次の回のパスで第2パッチ40bを印刷すると、次のようになる。即ち、このような印刷により、紙送りに誤差が無ければ、第1パッチ40aの上流側の端部と第2パッチ40bの下流側の端部とが若干重なることになる。
【0044】
第1パッチ40aの上流側の端部と第2パッチ40bの下流側の端部とが重なる重複部の量が必要以上に多くなると、重複部の濃度が高くなり、暗い筋状のムラとして視認され易くなる。一方、第1パッチ40aと第2パッチ40bとの間で、重複部の量が少な過ぎたり、重複部が無く隙間が生じたりすると、第1パッチ40aと第2パッチ40bとの間の濃度が低くなり、明るい筋状のムラが視認され易くなる。以下では、パッチの色と比べて暗い筋状のムラを「黒筋」と称し、パッチの色と比べて明るい筋状のムラを「白筋」と称する。
【0045】
図3において、TP43の左隣に印刷されたTP42の位置調整値は-αである。これは、第1パッチ40aを印刷したパスの後、「基準送り量-α」の指示に応じた紙送りを経て、次のパスで第2パッチ40bが印刷されて、TP42が形成されたことを意味する。つまり、TP42は、TP43に比べて副走査方向D2における第1パッチ40aと第2パッチ40bとの距離がαだけ近いため、TP43に比べて重複部が増えて黒筋が生じやすい。TP42の左隣に印刷されたTP41の位置調整値は-2αである。これは、第1パッチ40aを印刷したパスの後、「基準送り量-2α」の指示に応じた紙送りを経て、次のパスで第2パッチ40bが印刷されて、TP41が形成されたことを意味する。従って、TP41は、TP42よりも副走査方向D2における第1パッチ40aと第2パッチ40bとの距離が近い。例えば、図3において、TP41、TP42においてそれぞれ黒筋41st、黒筋42stが生じ、黒筋41stは黒筋42stより副走査方向D2の幅が大きい様子が見て取れる。
【0046】
図3において、TP43の右隣に印刷されたTP44の位置調整値は+αである。これは、第1パッチ40aを印刷したパスの後、「基準送り量+α」の指示に応じた紙送りを経て、次のパスで第2パッチ40bが印刷されて、TP44が形成されたことを意味する。TP44は、TP43に比べて副走査方向D2における第1パッチ40aと第2パッチ40bとの距離がαだけ遠いため、TP43に比べて重複部が減って白筋が生じやすい。TP44の右隣に印刷されたTP45の位置調整値は+2αである。これは、第1パッチ40aを印刷したパスの後、「基準送り量+2α」の指示に応じた紙送りを経て、次のパスで第2パッチ40bが印刷されて、TP45が形成されたことを意味する。従って、TP45は、TP44よりも副走査方向D2における第1パッチ40aと第2パッチ40bとの距離が遠い。例えば、図3において、TP44、TP45においてそれぞれ白筋44st、白筋45stが生じ、白筋45stは白筋44stより副走査方向D2の幅が大きい様子が見て取れる。
【0047】
TP41,42,43,44,45は、主走査方向D1におけるそれらの並び順に従い、第1パッチ40aと第2パッチ40bとの位置関係が徐々に変化している。このように、5つのTP41~45でなるTP群は、主走査方向D1に沿って、パッチ40a,40bの位置関係が漸次的に変化する順序で並んで媒体30の第1面30Aに印刷されている。
【0048】
図3では、TP43には黒筋や白筋が発生せず、TP43より左側のTP41,42に黒筋が発生し、TP43より右側のTP44,45に白筋が発生している例を示している。また、左端のTP41の黒筋は、TP42の黒筋よりも濃度が高く、右端のTP45の白筋は、TP44の白筋よりも濃度が低い。ただし、プリンターは、個体毎に媒体30の搬送精度が異なる。そのため、位置調整値が0のTP43であっても、紙送りに誤差が載れば、その印刷結果に黒筋や白筋が生じることは当然に考えらえる。また、搬送精度次第では、例えば、TP43に白筋が生じてTP42に白筋も黒筋も殆ど生じないことや、逆に、TP43に黒筋が生じてTP44に白筋も黒筋も殆ど生じないことも有り得る。
【0049】
そして、例えば、5つの位置調整値-2α、-α、0、+α、+2αのうち、いずれの調整値が好ましい調整値であるかを、第1面30Aに実際に印刷したTP41~45におけるパッチ40a,40b間の位置関係を確認することで決定することができる。ここで、位置関係の確認は筋の濃度の確認により行うことができる。筋の濃度の理想的な値は、筋とパッチ41a,40bとで濃度差が無い状態、つまり実質的に黒筋も白筋も見えない状態を指す。位置関係の決定の手法は問わず、最も単純な例を挙げると、上記濃度差が最も無い状態の調整値を5つの中から選択することができる。あるいは、位置関係の決定の手法として、例えば5つの調整値に対する筋の濃度をグラフ上にプロットして決定する手法を採用することもできる。この方法では、このグラフにおいて、これら濃度の近似直線を最小二乗法等により算出し、この近似直線が筋の濃度が無い状態、つまり筋とパッチ41a,40bとで濃度差が無い状態を与えるときの位置調整値βを、好ましい調整値として算出する。
【0050】
そして、印刷装置1では、紙送り量、つまり媒体30の搬送量を、このようにして決定した好ましい調整値に設定することができ、これにより好ましい調整値に調整された印刷が可能となる。つまり、このような設定により、各パスで媒体30に印刷された各バンド画像のつなぎ目に黒筋や白筋が発生しない良好な印刷画質が得られるようになる。
【0051】
また、TP41~45それぞれの第2パッチ40bを印刷する方法は、各第2パッチ40bを共通の1回のパスで印刷する第1方法と、各第2パッチ40bをそれぞれ異なるパスで印刷する第2方法との、いずれを採用することもできる。第1方法によれば、制御部10は、TP毎にパッチの印刷に使用するノズル20の搬送方向D2における範囲を異ならせることにより、TP毎にパッチ40a,40bの位置関係を異ならせる。第2方法によれば、制御部10は、パッチをそれぞれに印刷するパスとパスとの間に搬送部13に実行させる搬送の距離を、TP毎に異ならせることにより、TP毎にパッチ40a,40bの位置関係を異ならせる。
【0052】
また、TP41,42,43,44,45の上流など、TPとの対応付けが可能な位置に、位置調整値-2α、-α、0、+α、+2αを併せて印刷することもでき、これにより目視による確認の際に分かり易くなる。
【0053】
なお、隣り合うTP間の位置調整値の差をいずれもαとした例を挙げて説明したが、これに限ったものではなく、P間の位置調整値の差を一部又は全部で異ならせることもできる。
【0054】
また、TP41~45の並びは図3で例示した並びに限ったものではなく、例えば左からTP41,45,44,43,42の並び等のように、パッチ40a,40b間の位置関係が漸次的に変化する順序とは異なる順序、つまり順不同の並びとすることもできる。なお、順不同の場合でも図3で例示した並びについて説明した様々な応用例が適用できる。
【0055】
実際、図3を参照した例では、第1パッチ40aの印刷のためのパスと第2パッチ40bの印刷のためのパスとの間の紙送りにおいて、媒体30のスキューによる誤差等、調整対象以外の誤差が生じないことを前提としている。しかし、例えば媒体30のスキューによる誤差が発生した場合に、上述したような手法で位置関係を決定すると、例えば左端のTP41や右端のTP45がスキューの影響をより強く受けるため、位置調整値が好ましい値に決定できないことがある。このように、先の走査によりパッチ40aを印刷する処理と、後の走査によりパッチ40bを印刷する処理との間に、調整対象の搬送量以外の誤差が発生すると、TP41~45の印刷結果から搬送量を正確に把握できず、適切な調整もできなくなる。
【0056】
一方で、TP41~45の並びを順不同の並びとすることで、先の走査による印刷と後の走査による印刷との間に調整対象以外の誤差が生じたとしても、この誤差の影響をできるだけ除去することができる。そして、このようにして複数の走査で印刷された結果から、必要な情報を正しく取得できるようにすることができる。ここで、調整対象以外の誤差は、媒体のスキューの発生によるものなどが挙げられるが、これに限らない。
【0057】
ここで、順不同の並びとした場合の誤差の影響を除去できる効果について簡単に説明する。順不同の並びとしたTP群について、TP毎にスキュー有り筋濃度を確認すると、スキュー無し筋濃度と異なる値となる。しかし、近似直線を算出する上では、TP群におけるTPの順不同の並びに起因して、グラフ上でのスキュー無し筋濃度からスキュー有り筋濃度への変化を、各TPで相殺することができる。例えば左からTP41,45,44,43,42の並びでは、それぞれ位置調整値が-2α、+2α、+α、0、-αとなるが、TP41とTP42との間と、TP43とpTP45との間とで相殺することができる。これにより、スキュー有りの場合の近似直線は、図3の並びで且つスキュー無しの場合の近似直線とほぼ一致させることができる。よって、制御部10は、順不同の並びとしたTP群の印刷結果に基づいて、スキューの影響を除去した適切な位置調整値を取得することができる。
【0058】
以上のようにして、媒体30の第1面30Aに印刷したTPを確認することができる。しかしながら、このようなTPの確認は、検知部18あるいは外部装置に設けられた同様の検知部で行うこと、あるいは目視により行うことができ、採用する確認方法によって確認結果が異なってしまうことがある。そして、確認方法に依存して確認結果に大きな差異が生じると、つまり取得される搬送量の情報に大きな差異が生じると、確認方法に依存して現在の設定からの補正値又は設定される値も大きく異なってしまい、印刷品質が大きく異なってきてしまう。
【0059】
<SPの印刷例>
このような確認方法の差への依存性を低減するために、本実施の形態では、第2面30BにSPの印刷を実行しておく。つまり、本実施の形態における制御部10は、媒体30を反転させて第2面30Bを印刷ヘッド11に向け、第2面30Bに、上記5つのTP41~45と重なる領域に一様な印刷特性のSP51を形成させる。以下、TP41~45の後にSP51を印刷する例を挙げるが、無論、第2面30BにSP51を形成させた後、媒体30を反転させ、第1面30Aに上記5つのTP41~45を形成させることもできる。
【0060】
図3の例に示すように、制御部10は、媒体30の第2面30Bに、上記5つのTP41~45と重なる領域に一様な印刷特性のSP51を形成させる。この重なる領域の例について、図3を参照しながら説明するが、無論、重なる領域はTPの印刷領域により異なることになる。
【0061】
図3で図示するように、TP41~45の印刷の開始点及び終了点は以下のような点になるように制御されるものとする。即ち、TP41~45の印刷の開始点は、第1面30Aの左上端部から、主走査方向D1に距離xsだけ離れ、副走査方向D2に距離ysだけ離れた点となっている。また、TP41~45の印刷の終了点は、第1面30Aの左上端部から、主走査方向D1に距離xs+5Px+4Ixだけ離れ、副走査方向D2に距離ys+Pyだけ離れた点となっている。ここで、Pxは各TP41~45の主走査方向D1の長さ、Ixは隣り合うTP間の主走査方向D1の間隔を示している。なお、媒体30の幅をWとすると、xs+5Px+4Ix=W-xeとなる。また、説明の簡略化のため、各TP41~45の副走査方向D2での長さはPyとして説明しているが、実際には搬送量の違いにより各TP41~45に応じて異なることになる。なお、これらの距離での印刷の開始や終了は対応する座標に基づき制御されることができる。
【0062】
制御部10は、SP51として1つの一連のパターンを形成するように、印刷ヘッド11による印刷を制御する。具体的には、制御部10は、上述のようなTP41~45に対し、SP51の印刷の開始点及び終了点が以下のような点になるように制御することができる。即ち、SP51の印刷の開始点は、第2面30Bの左上端部から、主走査方向D1に距離xeだけ離れ、副走査方向D2に距離ysだけ離れた点となる。また、SP51の印刷の終了点は、第2面30Bの左上端部から、主走査方向D1に距離xe+5Px+4Ixだけ離れ、副走査方向D2に距離ys+Pyだけ離れた点となる。なお、xe+5Px+4Ix=W-xsとなる。また、SP52についても、これらの距離での印刷の開始や終了は対応する座標に基づき制御されることができる。
【0063】
このようにして、媒体30の第1面30Aと第2面30Bとに印刷を行うことで、第1面30A側から見た様子は、例えば図4に示すように、TP41~45の印刷領域とSP51の印刷領域とが重なることになる。よって、SP51を第2面30Bに印刷することで、TP41~45の確認方法の差への依存性を低減することができる。なお、図4では、SP51が裏写りした様子を便宜上、斜線領域で示しているが、図4を図示した目的は裏写りする事実があることを示すことに過ぎず、図4が実際の裏写りの程度を示すものではない。後述する図6図12、及び図14でも同様である。
【0064】
<SPの他の印刷例>
次に、SPの他の印刷例について、図5及び図6を参照しながら説明する。図5は、印刷装置1において媒体30に対して印刷したTP41~45及びSPの他の例を示す模式図である。図6は、図5の印刷結果を表面から見た様子を示す模式図である。図5及び図6では、第1面30Aに印刷されるTP41~45は、図3及び図4におけるTP41~45と同じで、SPのみが異なる例を挙げる。
【0065】
図5の例に示すように、制御部10は、媒体30の第2面30Bに、上記5つのTP41~45と重なる領域を少なくとも含むように一様な印刷特性のSP52を形成させる。SP52は、図5及び図6に示すように、SP51の印刷範囲より若干広く形成されている。
【0066】
制御部10は、SP52として1つの一連のパターンを形成するように、印刷ヘッド11による印刷を制御する。具体的には、制御部10は、上述のようなTP41~45に対し、SP52の印刷の開始点及び終了点が以下のような点になるように制御することができる。即ち、SP52の印刷の開始点は、第2面30Bの左上端部から、主走査方向D1に距離xe-0.5Ixだけ離れ、副走査方向D2に距離ys-0.5Iyだけ離れた点となる。また、SP52の印刷の終了点は、第2面30Bの左上端部から、主走査方向D1に距離xe+5Px+4Ix+0.5Ixだけ離れ、副走査方向D2に距離ys+Py+0.5Iyだけ離れた点となる。ここでは、SP52がSP51に比べて主走査方向D1、副走査方向D2にそれぞれIx、Iyだけ広く形成されている例を挙げたが、これに限らない。また、SP52についても、これらの距離での印刷の開始や終了は対応する座標に基づき制御されることができる。
【0067】
このようにして、媒体30の第1面30Aと第2面30Bとに印刷を行うことで、第1面30A側から見た様子は、例えば図6に示すように、SP52の印刷領域はTP41~45の印刷領域より広くなる。よって、SP52を第2面30Bに印刷することでも、TP41~45の確認方法の差への依存性を低減することができる。
【0068】
また、SPは、第2面30Bの全ての領域、あるいは第2面30Bの余白領域を除く全ての領域に印刷させることもできる。
【0069】
また、図3及び図4の例や図5及び図6の例では、制御部10が、SP51、SP52で例示したように、SPを1つの一連のパターンとして形成するように、印刷ヘッド11による印刷を制御した例を挙げた。このようにSPを1つの一連のパターン、つまり1つの連続するパターンとして形成した方が、SP間で印刷品質の差異が生じ難くなる。但し、SPは、これらの例に限ったものではなく、例えば、SPは複数のパターンで構成されることもできるし、それらのパターンが離間していてもよい。
【0070】
<印刷動作の例>
次に、図7を参照しながら印刷装置1における印刷動作の一例について説明する。図7は、印刷装置1における印刷動作の一例を示すフローチャートであり、本実施の形態にかかる印刷方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【0071】
まず、印刷装置1は、媒体の第1面に第1方向においてそれぞれ印刷特性の異なる複数のTP、例えばTP41~45を形成する(ステップS1)。次いで、印刷装置1は、媒体の第2面に、複数のTPと重なる領域に一様な印刷特性のSP、例えばSP51又はSP52を形成し(ステップS2)、動作を終了する。ステップS1,S2の動作はいずれも、制御部10による印刷ヘッド11等の制御により実行される。なお、ステップS1とステップS2との順序は逆であってもよい。
【0072】
<SPの印刷による効果>
図6を参照しながら、SP51を印刷したことによる効果について説明する。なお、SP51の代わりにSP52を印刷した場合にも同様である。図8は、印刷装置1で印刷したTPと比較例にかかる印刷装置で印刷したTPとについて、筋強度を測定した結果の例を示すグラフである。筋強度は、例えば、パッチ40a,40b間に生じる筋のRGB値などで定義付けられ、上述したように白筋の場合にプラス、黒筋の場合にマイナスで表記している。なお、図8に示すグラフは、便宜上、TP41~45のうちTP43及びTP44のみについての測定結果を示している。
【0073】
図8に示すグラフは、図4における第1面30AのTP43,44に対し、スキャナーを用いて測定した筋強度を示している。ここで、SP51としては黒色のベタパターンを用いた。また、スキャナーは、検知部18の例又は外部装置としての検知部の例であり、スキャナーを用いて測定するとはスキャナーで画像を読み込んでその画像を解析することを意味することができる。また、図8に示すグラフでは、比較例として、図3の第1面30AにTP43,TP44を印刷し、SP51を第2面30Bに印刷しなかった場合についても、同様にスキャナーを用いて測定した筋強度を示している。
【0074】
比較例では、図8に示すように、TP43の筋強度の測定結果は-1.3となり、TP44の測定結果は1.8となった。よって、比較例では、結果的に筋強度が0に近い方のTP43が位置調整値として選択又は優位に選択されることになる。なお、優位に選択されるとは、例えば近似直線において、TP44よりTP43の値に近い近似曲線が算出され、それに基づく位置調整値が算出されることを意味する。しかし、比較例において、目視により確認した結果は、筋強度がTP44の方がTP43より筋が見え難かった。ここで示す目視した結果とは、比較例における印刷した媒体を机上に載置した場合において目視した結果を指す。
【0075】
一方で、図4の例では、図8に示すように、TP43の筋強度の測定結果は-1.5となり、TP44の筋強度の測定結果は1.4となった。よって、図4の例では、筋強度が0に近い方のTP44が位置調整値として選択又は優位に選択されることになる。なお、優位に選択されるとは、例えば近似直線において、TP43よりTP44の値に近い近似曲線が算出され、それに基づく位置調整値が算出されることを意味する。また、図4の例において、目視により確認した結果は、筋強度がTP44の方がTP43より筋が見え難かった。ここで示す目視した結果とは、図4の例における印刷した媒体30を机上に載置した場合において目視した結果を指す。
【0076】
このように、比較例では、確認方法に依存して位置調整値として選択又は優位に選択されるTPが異なった。これに対し、図4の例では、スキャナーを用いた場合と目視の場合とでいずれもTP44が位置調整値として選択又は優位に選択され、好ましいTPの選択結果が一致した。
【0077】
つまり、比較例では、異なる印刷パスのつなぎ目の濃度を最適な状態に調整するためのパッチ40a,40bに対し、つなぎ目の筋強度をスキャナーで読み込んで画像から判別することで確認する場合と目視で確認する場合とで、確認結果の差が大きくなる。その原因の1つは、スキャナーでの画像取得時にTPにスキャナーの原稿台側から光を当てるとTPの筋部分が透けて原稿裏当てが映り込んでしまうのに対し、机上で目視による確認を行う場合にはこのような現象は起きないためである。なお、原稿裏当ては、主に反射板の機能をもち、白色の素材であるため、光を当てると白地がグレーになることはないものの、筋部分も薄くなってしまう。
【0078】
一方で、図4の例では、パッチ40a,40bに対し、その裏面、つまり背面に重なる領域に黒色等のSPを印刷しているため、スキャナーの原稿台側から光を照射してもTPの筋の部分が透け難くなる。よって、図4の例では、TPのスキャンによる確認結果を目視による確認結果に近づけることができ、確認方法への依存性を低減させて安定して位置調整量、あるいはその位置調整量にするための補正量を得ることができる。また、スキャン自体も、媒体30に対して原稿カバーにより抑える場合と原稿カバーを開けたままスキャンする場合とがあるが、図4の例では、このようなスキャン時の環境への依存性も低減させることができる。
【0079】
また、他の比較例として、第1面30Aにおいて、下地としてSP51のようなSPを印刷してその上にTPを形成する手法も考えられるが、その場合、インク層を積層させて印刷をする場合にはインク同士の滲みなどの影響が生じ得る。これに対し、本実施の形態のようにSP51を第2面30Bに印刷することで、このような滲みなどの影響も生じ難くなる。
【0080】
<印刷動作の他の例>
図9図14を参照しながら、印刷装置1における印刷動作の他の例について説明する。図9は、印刷装置1における印刷動作の他の例を示すフローチャートであり、本実施の形態にかかる印刷方法の他の例を説明するためのフローチャートである。図10は、図9の例において、TP及びSPの印刷の設定時に使用されるユーザーインターフェイスの一例を示す図である。
【0081】
本例にかかる印刷装置1は、SPの種類及びTPの確認方法を変更することが可能に構成されている。この変更のために、制御部10は、SPの種類及びTPの確認方法を取得する(ステップS11)。但し、印刷装置1は、いずれか一方のみを変更可能に構成することもできる。
【0082】
まず、SPの種類の変更について説明する。本例にかかる印刷装置1は、図示しないが、SP51等のSPの色あるいは階調の少なくとも一方を変更する変更部を備える。例えば、変更部は、制御部10、記憶部14、表示部15、及び操作受付部16で構成することができる。この場合、表示部15にこの変更のための変更操作を受け付けるためのユーザーインターフェイス(以下、UI)を表示させ、操作受付部16から変更操作を受け付けるようにするとよい。そして、制御部10がその変更操作をSPの印刷設定値として記憶部14に記憶させることで、変更操作を反映させることができる。これにより、制御部10は、変更操作で受け付けた色あるいは階調の少なくとも一方についての印刷設定値を用いて、SPを第2面30Bに印刷させることができる。
【0083】
UIとしては、例えば図10に示すようなGraphical UI(以下、GUI)画像60を表示させることができる。GUI画像60は、SPについての、現在の設定色61及び変更を行うためのカラーパレット表示ボタン62と、階調値の入力を行う階調値入力欄63と、を含むことができる。また、GUI画像60は、操作した内容を反映させると共にGUI画像60を閉じるOKボタン68と、操作した内容を反映させずにGUI画像60を閉じるキャンセルボタン69と、を含むことができる。
【0084】
カラーパレット表示ボタン62が選択されると図示しないカラーパレットが表示され、SPの色を選択することができ、その色が現在の設定色61として表示される。現在の設定色61が表示され階調値入力欄63に階調値が入力された状態でOKボタン68が選択されると、制御部10は、現在の設定色61の色及び入力された階調値をSPの設定色及び階調値として設定する。
【0085】
また、変更部は、例えば無彩色でSPを印刷することを前提として、色を黒色に固定して階調のみを変更する操作を受け付けるようにすることもできる。また、変更部は、例えばTPの色と同色でSPを印刷することを前提として、色をTPの色に固定して階調のみを変更する操作を受け付けるようにすることもできる。また、変更部は、TPの色あるいは階調の少なくとも一方を変更できるように構成しておくこともできる。
【0086】
次に、確認方法の変更について説明する。本例にかかる印刷装置1は、図示しないが、TPを検知部18で検知することで確認する第1の確認方法とTPを目視で確認する第2の確認方法とのいずれかを選択する選択部を備える。例えば、選択部は、制御部10、記憶部14、表示部15、及び操作受付部16で構成することができる。この場合、選択部は、表示部15にこの選択のための選択操作を受け付けるためのUIを表示させ、操作受付部16から選択操作を受け付け、制御部10がその選択操作に応じたSPの印刷設定値を記憶部14に記憶させることで反映させることができる。これにより、制御部10は、選択操作で受け付けた確認方法に合ったSPを第2面30Bに印刷させることができる。
【0087】
選択部に関するUIとしては、図10のGUI画像60に含まれる確認方法選択に関する項目を含むようなGUIを用いることができる。GUI画像60は、確認方法の選択のためのボタン65,66,67を備える。ボタン65は、スキャナーで、つまり検知部18で自動的にTPを検知する確認方法を選択するためのボタンである。ボタン66は、机上に媒体30を載置して目視で確認する確認方法を選択するためのボタンである。ボタン67は、媒体30を手に持って目視で確認する確認方法を選択するためのボタンである。ボタン65~67のいずれか1つが選択された状態でOKボタン68が選択されると、制御部10は、SPの印刷設定値を、選択されたボタンに対応するような印刷設定値に設定する。
【0088】
このように検知部18及び選択部を備える構成においては、制御部10は例えば次のような制御を行うことができる。即ち、制御部10は、ボタン66又はボタン67により第2の確認方法が選択された場合に、ボタン65により第1の確認方法が選択された場合に比べてSPの階調値が低くなるように、印刷ヘッド11による印刷を制御する。検知部18での検知の場合、検知時の光の強度が目視の場合の外光に比べて強いため、SPの濃度を目視の場合に比べて濃くすることで、目視の場合に近づけることができる。
【0089】
また、制御部10は、ボタン67による手持ちでの確認方法が選択された場合に、ボタン66による載置での確認方法が選択された場合に比べてSPの階調値が低くなるように、印刷ヘッド11による印刷を制御する。例えば、制御部10は、ボタン67による手持ちでの確認方法が選択された場合にSPを灰色で印刷し、ボタン66による載置での確認方法が選択された場合にSPを黒色で印刷するように、印刷ヘッド11による印刷を制御する。手持ちの場合は、検知部18での検知の場合よりは裏写りがし難いものの、机上に載置する場合よりは裏写りがしやすいためである。
【0090】
実際、TPの見え方は、手持ちで確認する場合でも机上に載置する場合でも外光の色に応じて変わるため、印刷装置1においてSPの種類を上述したように任意に変更可能に構成しておくことは有益となる。また、TPの見え方は、使用する媒体30の色及び厚みなどでも変わるため、この点を考慮しても、印刷装置1においてSPの種類を上述したように任意に変更可能に構成しておくことは有益であると言える。また、上述したように、印刷装置1は、SPだけでなくTPも色及び階調値の少なくとも一方を変更できる構成とすることができる。このような構成により、机上に載置して確認する場合でも、手に持って透ける状態で確認する場合でも外光や媒体30の厚み等に応じて柔軟に設定を行うことができる。
【0091】
また、図10のGUI画像60のようなUIでは、確認を行う環境や印刷を行う媒体に対して最適なSPを形成するために、SPの印刷設定値を変更することができる。但し、GUI画像60の例では、ユーザーは確認方法のみ選択し、SPの選択のための入力はユーザーに委ねられている。
【0092】
一方で、例えば外光が電球色、温白色、白色、昼白色、昼光色のいずれに該当するか、印刷させる媒体30の厚みが厚め、普通、薄めのいずれに該当するか、印刷させる媒体30の色が白色、黄色のいずれに該当するかなどをユーザーに選択させることもできる。そのためには、これらの項目について選択できるようなGUI画像をユーザーに提供すればよい。なお、各項目の選択肢は例示したものに限らず、例えば外光については蛍光灯か電球色かを選択させるだけでもよいし、媒体30の色もより多くの色の中から選択させてもよい。
【0093】
この場合、制御部10が、これらの項目について選択された結果に基づき、自動的にSPの色や階調値、あるいはSP及びTPの色や階調値を設定する。また、ユーザーがUIを用いて印刷媒体又は確認環境を入力する例を挙げているが、印刷媒体や確認環境はそれらの情報を取得するためのセンサを印刷装置1に設けておくことでも、取得することができる。この場合、制御部10が、センサでの検出結果に基づき自動的にSPやTPの印刷に関する設定を変更するとよい。これにより、印刷媒体や確認環境に合ったSPやTPの印刷が可能となるだけでなく、ユーザーが設定を行う手間を省略することができる。
【0094】
また、GUI画像60は、省インク設定ボタン64を備えることができる。省インク設定ボタン64が選択された状態でOKボタン68が選択されると、制御部10は、SPとして、図11及び図12あるいは図13及び図14を参照して以下に説明するように、インクの節約を行うためのSPを印刷する印刷設定を行う。
【0095】
インクを節約する例を挙げる。制御部10は、SPを、少なくとも複数のTPにおける第1面30A上での印刷結果が変化し得る領域に重なるように形成させることができる。以下、この領域を変化領域と称する。変化領域は、図3の例では、各TP41~45について、第1パッチ40aと第2パッチ40bとが重なり得る領域を指すことができる。この変化領域は、例えば次のようにして予め決定しておくことができる。即ち、印刷装置1において、動作の設定として採用し得る印刷特性の全てについて、印刷特性を変更しながら印刷を行い、変化領域を決定しておくことができる。このようなSPの印刷制御を採用することで、SPの形成に必要なインクを節約することができる。
【0096】
このようなSPの印刷例について、図11及び図12を参照しながら説明する。図11は印刷装置1において媒体30に対して印刷したTP及びSPの更なる他の例を示す模式図で、図12図11の印刷結果を表面から見た様子を示す模式図である。図11及び図12では、第1面30Aに印刷されるTP41~45は、図3及び図4におけるTP41~45と同じで、SPのみが異なる例を挙げる。
【0097】
図11の例に示すように、制御部10は、媒体30の第2面30Bにおいて、5つのTP41~45における第1面30A上での印刷結果が変化し得る領域に重なるように一様な印刷特性のSP53を形成させる。SP53は、図11及び図12に示すように、SP51の印刷範囲より狭い範囲に形成されており、インクの消費量が少なく済むのが分かる。
【0098】
具体的には、制御部10は、上述のようなTP41~45に対し、SP53の印刷の開始点及び終了点が以下のような点になるように制御することができる。即ち、SP53の印刷の開始点は、第2面30Bの左上端部から、主走査方向D1に距離xeだけ離れ、副走査方向D2に距離ys+Iyaだけ離れた点となる。また、SP53の印刷の終了点は、第2面30Bの左上端部から、主走査方向D1に距離xe+5Px+4Ixだけ離れ、副走査方向D2に距離ys+Iya+Iybだけ離れた点となる。ここでは、TP41~45の変化領域の副走査方向D2での範囲がいずれも、第1面30Aの左上端部から、副走査方向D2に距離ys+Iyaだけ離れた位置から距離ys+Iya+Iybだけ離れた位置までであった例を挙げている。但し、上述したようにこれに限らず予め決定しておけばよい。なお、SP53についても、これらの距離での印刷の開始や終了は対応する座標に基づき制御されることができる。
【0099】
このようにして、媒体30の第1面30Aと第2面30Bとに印刷を行うことで、第1面30A側から見た様子は、例えば図12に示すように、SP53の印刷領域はTP41~45の印刷領域における変化領域に重なっている。よって、SP53を第2面30Bに印刷することでも、TP41~45の確認方法の差への依存性を低減することができる。
【0100】
特に、制御部10は、図11及び図12の印刷例のように、SPを、複数のTPにおける第1面30A上での変化領域のみに重なるように形成させることもできる。このようなSPの印刷制御を採用することで、SPの形成に必要なインクをさらに節約することができる。
【0101】
このようなSPの印刷例について、図13及び図14を参照しながら説明する。図13は印刷装置1において媒体30に対して印刷したTP及びSPの更なる他の例を示す模式図で、図14図13の印刷結果を表面から見た様子を示す模式図である。図13及び図14では、第1面30Aに印刷されるTP41~45は、図3及び図4におけるTP41~45と同じで、SPのみが異なる例を挙げる。
【0102】
図13の例に示すように、制御部10は、媒体30の第2面30Bにおいて、5つのTP41~45における第1面30A上での印刷結果が変化し得る領域のみに重なるように一様な印刷特性のSP54-1~54-5を形成させる。SP54-1~54-5は、それぞれTP41~45について、印刷結果が変化し得る領域のみと重なる位置に形成されることになる。SP54-1~54-5で形成されるSPの印刷領域は、図13及び図14に示すように、SP53の印刷範囲より狭い範囲に形成されており、インクの消費量が少なく済むのが分かる。
【0103】
具体的には、制御部10は、上述のようなTP41~45に対し、SP54-1~54-5の印刷の開始点及び終了点が以下のような点になるように制御することができる。即ち、SP54-1の印刷の開始点は、第2面30Bの左上端部から、主走査方向D1に距離xeだけ離れ、副走査方向D2に距離ys+Iyaだけ離れた点となる。また、SP54-1の印刷の終了点は、第2面30Bの左上端部から、主走査方向D1に距離xe+Pxだけ離れ、副走査方向D2に距離ys+Iya+Iybだけ離れた点となる。SP54-2~54-5についても、SP54-1と同様であるが、TP41に対してそれぞれTP42~45が主走査方向D1にずれている分だけ開始点や終了点もずれた点となる。例えば、TP41に対してTP42が主走査方向D1にずれている分とは、開始点において距離Ix、終了点において距離Ix+Pxで表現される分となる。
【0104】
ここでも、TP41~45の変化領域の副走査方向D2での範囲がいずれも、第1面30Aの左上端部から、副走査方向D2に距離ys+Iyaだけ離れた位置から距離ys+Iya+Iybだけ離れた位置までであった例を挙げているが、上述したようにこれに限らず予め決定しておけばよい。なお、SP54-1~54-5についても、これらの距離での印刷の開始や終了は対応する座標に基づき制御されることができる。
【0105】
このようにして、媒体30の第1面30Aと第2面30Bとに印刷を行うことで、第1面30A側から見た様子は、例えば図14に示すように、SP54-1~54-5の印刷領域はそれぞれTP41~45の印刷領域における変化領域のみに重なっている。よって、SP54-1~54-5を第2面30Bに印刷することでも、TP41~45の確認方法の差への依存性を低減することができる。
【0106】
図9のフローチャートの説明に戻る。ステップS11の後、制御部10は、ステップS11で入力された結果がスキャンで検知、つまり検知部18で検知する方法を示しているか否かを判定し(ステップS12)、YESの場合にはステップS13へ、NOの場合にはステップS17へ進む。
【0107】
ステップS13では、制御部10が第1面30AにTP41~45で例示される複数のTPを形成させる。ここでは、設定されたTPの印刷設定値に基づきTPが形成されることができる。次いで、制御部10が、後述するステップS18に比して、第2面30Bに濃度の高いSPを形成する(ステップS14)。
【0108】
ステップS14では、例えば、図3のSP51又は図5のSP52を形成する。また、ステップS14では、もしGUI画像60において色や階調値が指定されていれば、その指定に従いSPを形成するとよい。また、省インク設定ボタン64が選択されていた場合には、SPとして、図11で例示したSP53又は図13で例示したSP54-1~54-5のように印刷範囲の狭いSPを採用する。
【0109】
次いで、制御部10は、このようにして印刷がなされた第1面30Aを検知部18にスキャンさせて、筋強度を測定する(ステップS15)。スキャンは、印刷後に搬送部13で第1面30Aがスキャンできるように自動的に搬送してもよいし、ユーザーが手動で原稿台に設置してスキャン操作を行うことで実行してもよい。次いで、制御部10が、その測定結果である筋強度に基づき、パッチ40a,40b間での媒体30の搬送量を調整し(ステップS16)、処理を終了する。
【0110】
ステップS17では、制御部10が第1面30AにTP41~45で例示される複数のTPを形成させる。ここでは、設定されたTPの印刷設定値に基づきTPが形成されることができる。次いで、制御部10が、ステップS14に比して、第2面30Bに濃度の薄いSPを形成する(ステップS18)。
【0111】
ステップS18では、例えば、図3のSP51又は図5のSP52に比べて濃度の薄いSPを形成する。また、ステップS18では、もしGUI画像60において色や階調値が指定されていれば、その指定に従いSPを形成するとよい。また、省インク設定ボタン64が選択されていた場合には、SPとして、図11で例示したSP53又は図13で例示したSP54-1~54-5のように印刷範囲の狭いSPを採用する。
【0112】
次いで、このようにして印刷がなされた第1面30Aをユーザーが目視し、図示しないGUI画像などから目視による筋強度の確認結果を選択させる。制御部10は、操作受付部16からこの選択操作に基づく筋強度を入力する(ステップS19)。次いで、制御部10が、その入力結果である筋強度に基づき、パッチ40a,40b間での媒体30の搬送量を調整し(ステップS16)、処理を終了する。
【0113】
また、検知部18及び選択部を備える構成では、代替的な制御として、制御部10は次のような制御を行うこともできる。即ち、制御部10は、選択部にて第2の確認方法が選択された場合に、SPを形成せずに複数のTPのみを形成するように、印刷ヘッド11による印刷を制御する。このような制御でも、スキャン画像で代表される検知部18での検知による確認結果を、TPを目視する場合の確認結果と近づけることができ、TPを目視する場合と同等の調整を行うことができる。
【0114】
(その他の変形例)
本発明は、上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、本実施の形態にかかる印刷装置は、図1に示した印刷装置1の構成要素のうち、一部を備えない構成とすることもでき、印刷ヘッド11及び印刷ヘッド11による印刷制御のための制御部10を備えていればよい。例えば、印刷装置1は、記憶部14、表示部15、操作受付部16、通信部17、及び検知部18のうちの1又は複数を備えない構成を採用することもできる。
【0115】
また、以上の説明では、異なるパス間の搬送方向D2のずれ量を取得可能なTPを媒体30の第1面30Aへ印刷させた例を挙げた。一方で、双方向印刷を前提とするが、搬送方向D2のずれ量である以外に、主走査方向D1のずれ量を取得可能なTPを第1面30Aへ印刷することもできる。異なるパス間の主走査方向D1のずれとは、往路パスによる印刷と復路パスによる印刷とのずれ、つまり双方向印刷のずれである。
【0116】
また、以上の説明では、印刷装置1が用紙の搬送量を取得するためのTPを印刷する例を挙げて説明した。しかし、TPやそれに対応するSPの形状、印刷範囲などは例示したものに限ったものではないことは言及するまでもなく、またTPの用途も搬送量の取得以外の用途とすることができる。例えば、キャリッジを走査して印刷する印刷方式において、往復の走査を行う場合には、往路と復路とでキャリッジの速度の影響でノズルから斜め方向にドットが吐出されて着弾することになる。このような吐出時の着弾位置の特性についても、キャリッジの速度等を調整することで調整することができる。この調整のために、例えば複数本の罫線を表現するパターンをTPとして印刷させておき、そのTPから着弾の位置の取得を行うことができる。
【0117】
また、以上の説明では、印刷装置1が単体の装置として構成されることを前提として説明したが、印刷装置1は、分散させた複数台の装置や機器が互いに通信可能に接続することにより実現される印刷システムとして構成されることもできる。この印刷システムは、例えば、主に制御部10の役割を担う情報処理装置と、搬送部13やキャリッジ12や印刷ヘッド11を含んで情報処理装置による制御下で印刷を実行するプリンターとを含むことができる。この場合、情報処理装置を、印刷制御装置や画像処理装置等として把握することができる。表示部15や操作受付部16や記憶部14は、情報処理装置又はプリンターの一部とすることや、あるいは、情報処理装置又はプリンターに接続された周辺機器とすることができる。
【0118】
また、以上の説明では、印刷装置1がインクジェットプリンターであることを前提に説明したが、レーザープリンター等の他の印刷方式の印刷装置であっても、媒体への両面印刷が可能な印刷装置であれば同様に適用できる。なお、レーザープリンターにおける印刷ヘッドは感光体ドラムに光を照射する部品となる。また、本実施の形態に係る印刷装置は、複写機、ファクシミリ、これらの機能を備えた複合機等に広く適用できる。
【0119】
また、上述したプログラムは、コンピューターに読み込まれた場合に、実施の形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピューターに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピューター可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピューター可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリー、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリー技術を含む。また、限定ではなく例として、コンピューター可読媒体又は実体のある記憶媒体は、CD-ROM、digital versatile disc(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピューター可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピューター可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、またはその他の形式の伝搬信号を含む。
【0120】
以上、本発明を上記実施の形態に即して説明したが、本発明は上記実施の形態の構成にのみ限定されるものではなく、本願特許請求の範囲の請求項の発明の範囲内で当業者であればなし得る各種変形、修正、組み合わせを含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0121】
D1…主走査方向、D2…副走査方向(搬送方向)、1…印刷装置、10…制御部、11…印刷ヘッド、11C…シアンのノズル列、11M…マゼンタのノズル列、11Y…イエローのノズル列、11K…ブラックのノズル列、12…キャリッジ、13…搬送部、14…記憶部、15…表示部、16…操作受付部、17…通信部、18…検知部、30…媒体、30A…第1面、30B…第2面、40a…第1パッチ、40b…第2パッチ、41…テストパターン、41st…黒筋、42…テストパターン、42st…黒筋、43…テストパターン、44…テストパターン、44st…白筋、45…テストパターン、45st…白筋、51…ベタパターン、52…ベタパターン、53…ベタパターン、54-1…ベタパターン、54-2…ベタパターン、54-3…ベタパターン、54-4…ベタパターン、54-5…ベタパターン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14