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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089047
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】エキシマランプ及び紫外線照射装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 65/00 20060101AFI20240626BHJP
   A61L 2/10 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
H01J65/00 B
A61L2/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204156
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】十川 博行
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 一樹
(72)【発明者】
【氏名】吉池 勝大
(72)【発明者】
【氏名】阿部 友則
【テーマコード(参考)】
4C058
【Fターム(参考)】
4C058BB02
4C058KK02
(57)【要約】
【課題】放電中に発生した熱を外部へと効率良く放熱させることを可能としたエキシマランプを提供する。
【解決手段】放電ガスが封入された放電管2と、放電管2を外側から挟み込む一対の電極3と、電極3と熱的に接続された蓄熱部4とを備え、一対の電極3の間で放電管2内に電圧を印加することにより、放電ガスが励起されて紫外線Lを外部へ照射し、放電管2の放電中に発生した熱を蓄熱部4に蓄熱しながら外部へと放熱する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電ガスが封入された放電管と、
前記放電管を外側から挟み込む一対の電極と、
前記電極と熱的に接続された蓄熱部とを備え、
前記一対の電極の間で前記放電管内に電圧を印加することにより、前記放電ガスが励起されて紫外線を外部へ照射し、
前記放電管の放電中に発生した熱を前記蓄熱部に蓄熱しながら外部へと放熱することを特徴とするエキシマランプ。
【請求項2】
前記蓄熱部は、前記電極よりも熱容量が大きいことを特徴とする請求項1に記載のエキシマランプ。
【請求項3】
前記蓄熱部は、前記電極よりも容積が大きいことを特徴とする請求項1に記載のエキシマランプ。
【請求項4】
前記蓄熱部の容積は、前記電極の容積よりも3.3倍以上大きいことを特徴とする請求項1に記載のエキシマランプ。
【請求項5】
前記蓄熱部と熱的に接続された放熱部を備え、
前記放熱部を介して前記蓄熱部に蓄熱された熱を外部へと放熱することを特徴とする請求項1に記載のエキシマランプ。
【請求項6】
前記放熱部は、前記蓄熱部の少なくとも表面の一部を覆うように設けられていることを特徴とする請求項5に記載のエキシマランプ。
【請求項7】
前記放熱部は、黒色であることを特徴とする請求項5に記載のエキシマランプ。
【請求項8】
請求項1~7の何れか一項に記載のエキシマランプと、
前記エキシマランプの通電を制御する通電制御部とを備え、
前記通電制御部は、前記エキシマランプの点灯時に、前記一対の電極に対する通電のオンとオフとを周期的に切り替える制御を行うことを特徴とする紫外線照射装置。
【請求項9】
前記エキシマランプを内側に収容する筐体と、
前記筐体の内面に設けられた伝熱部とを備え、
前記伝熱部を介して前記エキシマランプから放熱された熱を前記筐体へと伝熱することを特徴とする請求項8に記載の紫外線照射装置。
【請求項10】
前記筐体の内側から前記エキシマランプを吊り下げた状態で支持する絶縁性の支持部材を備えることを特徴とする請求項9に記載の紫外線照射装置。
【請求項11】
前記伝熱部の熱放射率は、前記蓄熱部の熱放射率よりも高いことを特徴とする請求項9に記載の紫外線照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エキシマランプ及び紫外線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放電ガスが封入された放電管と、放電管を外側から挟み込む一対の電極とを備え、一対の電極の間に高周波高電圧を印加することによって、放電管内で放電を開始し、放電ガスの励起により発生した紫外線を外部へと照射するエキシマランプがある(例えば、下記特許文献1,2を参照。)。
【0003】
例えば、放電ガスにKrClを用いたエキシマランプは、ピーク波長が222nmの紫外線(UVC)を励起させるため、254~290nmの他のUVCよりも人体に対する許容可能暴露量が多く、除菌やウイルスの不活性化などに用いられている(例えば、下記特許文献3を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-22784号公報
【特許文献2】特許第3282798号公報
【特許文献3】特開2022-83826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したエキシマランプを用いた紫外線照射装置では、放電中にランプ表面温度が上昇することで、紫外線の照度維持率が低下することがわかっている。
【0006】
このため、紫外線照射装置では、エキシマランプの点灯時に、通電のオン(ON)とオフ(OFF)とを周期的に切り替えることで、ランプの温度上昇を抑制することが行われている。また、ランプの温度上昇を抑制することで、ランプ寿命を延ばすことが可能である。
【0007】
一方、従来のエキシマランプでは、1分程度の短時間のパルス信号による通電であっても、ランプ表面温度が大きく上昇することが確認されている。このため、エキシマランプでは、放電中に放電管から発生した熱を外部へと効率良く放熱させることが求められている。
【0008】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、放電中に放電管から発生した熱を外部へと効率良く放熱させることを可能としたエキシマランプ、並びにそのようなエキシマランプを用いることによって、ランプ温度の上昇を抑制し、ランプ寿命を更に延ばすことを可能とした紫外線照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
〔1〕 放電ガスが封入された放電管と、
前記放電管を外側から挟み込む一対の電極と、
前記電極と熱的に接続された蓄熱部とを備え、
前記一対の電極の間で前記放電管内に電圧を印加することにより、前記放電ガスが励起されて紫外線を外部へ照射し、
前記放電管の放電中に発生した熱を前記蓄熱部に蓄熱しながら外部へと放熱することを特徴とするエキシマランプ。
〔2〕 前記蓄熱部は、前記電極よりも熱容量が大きいことを特徴とする前記〔1〕に記載のエキシマランプ。
〔3〕 前記蓄熱部は、前記電極よりも容積が大きいことを特徴とする前記〔1〕に記載のエキシマランプ。
〔4〕 前記蓄熱部の容積は、前記電極の容積よりも3.3倍以上大きいことを特徴とする前記〔1〕に記載のエキシマランプ。
〔5〕 前記蓄熱部と熱的に接続された放熱部を備え、
前記放熱部を介して前記蓄熱部に蓄熱された熱を外部へと放熱することを特徴とする前記〔1〕に記載のエキシマランプ。
〔6〕 前記放熱部は、前記蓄熱部の少なくとも表面の一部を覆うように設けられていることを特徴とする前記〔5〕に記載のエキシマランプ。
〔7〕 前記放熱部は、黒色であることを特徴とする前記〔5〕に記載のエキシマランプ。
〔8〕 前記〔1〕~〔7〕の何れか一項に記載のエキシマランプと、
前記エキシマランプの通電を制御する通電制御部とを備え、
前記通電制御部は、前記エキシマランプの点灯時に、前記一対の電極に対する通電のオンとオフとを周期的に切り替える制御を行うことを特徴とする紫外線照射装置。
〔9〕 前記エキシマランプを内側に収容する筐体と、
前記筐体の内面に設けられた伝熱部とを備え、
前記伝熱部を介して前記エキシマランプから放熱された熱を前記筐体へと伝熱することを特徴とする前記〔8〕に記載の紫外線照射装置。
〔10〕 前記筐体の内側から前記エキシマランプを吊り下げた状態で支持する絶縁性の支持部材を備えることを特徴とする前記〔9〕に記載の紫外線照射装置。
〔11〕 前記伝熱部の熱放射率は、前記蓄熱部の熱放射率よりも高いことを特徴とする前記〔9〕に記載の紫外線照射装置。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によれば、放電中に放電管から発生した熱を外部へと効率良く放熱させることを可能としたエキシマランプ、並びにそのようなエキシマランプを用いることによって、ランプ温度の上昇を抑制し、ランプ寿命を更に延ばすことを可能とした紫外線照射装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るエキシマランプを備えた紫外線照射装置の構成を示す平面図である。
図2図1中に示す線分A-Aによる紫外線照射装置の断面図である。
図3】蓄熱部の形状を説明するための断面図である。
図4】ランプ表面温度と照射維持率との関係を示すグラフである。
図5】エキシマランプの通電制御を説明するための図であり、(A)は通電のON/OFFを示すグラフ、(B)は通電によるランプ表面温度を示すグラフである。
図6】ランプ表面温度を測定した結果を示すグラフである。
図7】エキシマランプの変形例を例示した断面図である。
図8】紫外線照射装置の変形例を示す断面図である。
図9】(A)は比較例1のエキシマランプの構成を示す断面図、(B)は実施例1のエキシマランプの構成を示す断面図である。
図10】実施例1及び比較例1の通電時間に対するランプ表面温度の変化を示すグラフである。
図11】実施例1及び実施例2の45℃からの経過時間に対するランプ表面温度の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面においては、各構成要素を模式的に示すことがあり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0013】
本発明の一実施形態として、例えば図1図8に示すエキシマランプ1を備えた紫外線照射装置100について説明する。
【0014】
なお、図1は、エキシマランプ1を備えた紫外線照射装置100の構成を示す平面図である。図2は、図1中に示す線分A-Aによる紫外線照射装置100の断面図である。図3は、蓄熱部の形状を説明するための断面図である。図4は、ランプ表面温度と照射維持率との関係を示すグラフである。図5は、エキシマランプ1の通電制御を説明するための図であり、(A)は通電のON/OFFを示すグラフ、(B)は通電によるランプ表面温度を示すグラフである。図6は、ランプ表面温度を測定した結果を示すグラフである。図7は、エキシマランプ1の変形例を例示した断面図である。図8は、紫外線照射装置100の変形例を示す断面図である。
【0015】
本実施形態のエキシマランプ1は、図1及び図2に示すように、放電ガスが封入された放電管2と、放電管2を外側から挟み込む一対の電極3と、電極3と熱的に接続して一体に形成された蓄熱部4と、蓄熱部4と熱的に接続された放熱部5とを備えている。
【0016】
放電管2は、例えば放電ガスとしてKrClを封入した硼珪酸ガラス製の円筒管からなる。KrClの放電ガスは、ピーク波長が222nmの紫外線Lを励起させる。
【0017】
一対の電極3は、例えばアルミニウム(Al)や銅(Cu)などの導電金属からなり、互いに対称な形状を有して、放電管2を挟んだ幅方向の両側に互いに対向して配置されている。
【0018】
また、一対の電極3は、放電管2の軸線方向(長さ方向)に延在しながら、互いに対向する側(内側)の面が放電管2の外周面に沿って凹状に湾曲した形状を有している。
【0019】
これにより、一対の電極3は、放電管2の外周面に沿って放電管2を挟み込みながら、放電管2の両端部分を除く中央部分を保持している。
【0020】
蓄熱部4は、上述した電極3と同じ材質のものからなり、各電極3の外側に各電極3と一体に設けられている。
【0021】
また、各電極3と一体に設けられた蓄熱部4は、互いに対称な形状を有している。本実施形態では、放電管2の軸線方向と直交する方向の断面(鉛直断面)において、矩形状に形成されている。
【0022】
具体的に、この蓄熱部4は、電極3よりも熱容量が大きいことが好ましい。本実施形態では、図3に示すように、電極3の寸法a’,b’よりも蓄熱部4の寸法a,bが大きくなっている。
【0023】
すなわち、この蓄熱部4は、その鉛直断面において、電極3の断面積よりも大きい断面積を有している。なお、図3において、放熱部5は図示を省略している。
【0024】
また、電極3の高さ寸法b’よりも蓄熱部4の高さ寸法bが大きくなっている。この場合、蓄熱部4は、放電管2の中心軸Oと、放電管2と接する電極3の高さ方向の両端Pとを結ぶ2つの延長線eの内側に蓄熱部4が位置することが好ましい。
【0025】
これにより、放電管2から外部へと照射される紫外線Lの一部が蓄熱部4により遮蔽されることを防ぐことができ、照度を維持することが可能である。
【0026】
一方、蓄熱部4は、少なくとも電極3との境界における高さ寸法が電極3の境界における高さ寸法と同じか、それよりも大きいことが好ましい。
【0027】
これにより、放電管2から電極3に伝わる熱を蓄熱部4へと効率良く伝熱させることが可能である。
【0028】
また、蓄熱部4は、電極3よりも容積が大きいことが好ましい。具体的に、蓄熱部4の容積は、電極3の容積よりも3.3倍以上大きいことが好ましい。
【0029】
これにより、蓄熱部4からの放熱性を高めることが可能である。
【0030】
なお、本実施形態において、蓄熱部4は、電極3を介して放電管2からの熱を蓄積する機能と放熱部5へ熱を伝達する機能以外を有していない。
【0031】
放熱部5は、蓄熱部4からの熱の放射率(放熱性)を高めるものであり、例えば黒アルマイトからなる。放熱部5は、蓄熱部4の少なくとも表面の一部を覆うように設けられている。
【0032】
本実施形態では、蓄熱部4の表面全体にアルマイト処理を施すことで、蓄熱部4の表面を覆う黒色の放熱部5が設けられている。
【0033】
本実施形態の紫外線照射装置100は、図1及び図2に示すように、上記エキシマランプ1と、エキシマランプ1を内側に収容する筐体101と、筐体101の開口部101aを閉塞するガラス基板102と、筐体101の内側からエキシマランプ1を吊り下げた状態で支持する複数(本実施形態では4つ)の支持部材103と、エキシマランプ1の通電を制御する通電制御部104とを備えている。
【0034】
筐体101は、例えば下面に開口部101aを有して、方形箱状に形成されたアルミニウム材からなる。
【0035】
ガラス基板102は、紫外線Lの透過性に優れた石英ガラスからなり、開口部101aを閉塞した状態で筐体101に取り付けられている。
【0036】
したがって、エキシマランプ1は、筐体101及びガラス基板102により密閉された空間Kに配置されている。
【0037】
なお、本実施形態の紫外線照射装置100では、持ち運び可能とするため、筐体101の上部に取手(図示せず。)が取り付けられた構成としてもよい。
【0038】
複数の支持部材103は、例えばセラミックス等の絶縁体からなり、互いに同じ長さで棒状に形成されている。一対の電極3には、それぞれ一対の支持部材103が長さ方向に並んで取り付けられており、筐体101に接続されている。
【0039】
これにより、エキシマランプ1は、複数の支持部材103を介して筐体101の内側の上面から吊り下げた状態で支持している。また、筐体101は、複数の支持部材103を介して一対の電極3とは電気的に絶縁されている。
【0040】
通電制御部104は、筐体101の外側の上面に配置された通電回路基板からなり、一対の配線105を介して一対の電極3と電気的に接続されている。
【0041】
以上のような構成を有する本実施形態のエキシマランプ1を備えた紫外線照射装置100では、外部電源(図示せず。)から通電制御部104に電力が供給される。
【0042】
また、エキシマランプ1の点灯時には、通電制御部104を介して一対の電極3の間に高周波高電圧が印加される。具体的には、ピーク電圧が約2kV、周波数が約50kHzの高周波高電圧を印加する。
【0043】
これにより、エキシマランプ1は、放電管2内で放電を開始し、放電ガスの励起により発生した紫外線Lを外部へと照射する。紫外線Lは、ガラス基板102を透過しながら照射対象物Tに向けて照射される。
【0044】
本実施形態の紫外線照射装置100は、例えば除菌やウイルスの不活性化などに好適に用いられる。
【0045】
ところで、エキシマランプ1では、図4に示すように、ランプ表面温度と照射維持率との間に相関関係があることが実測によりわかった。
【0046】
図4に示すエキシマランプは、上記エキシマランプ1から蓄熱部4及び放熱部5を省略したものを使用している。
【0047】
ランプ表面温度については、サーモグラフィを用いて、放電管2の表面温度を測定した。
【0048】
なお、実測は、室温環境において、エキシマランプ及びサーモグラフィを設置し、エキシマランプの表面をサーモグラフィと対向して設置し、送風ファンをエキシマランプの表面に当たるようにして行った。
【0049】
ここで、送風ファンは、エキシマランプの表面温度がそれぞれ約70℃、約80℃、約120℃となるように風速を調整している。
【0050】
実測により、ランプ表面温度が70℃を超えないようにすることで、連続5,000時間の点灯でも、照射維持率を70%以上に維持することが可能である。
【0051】
そこで、本実施形態の紫外線照射装置100では、図5(A)に示すように、エキシマランプ1の点灯時に、通電制御部104により一対の電極3に対する通電のオン(ON)とオフ(OFF)とを周期的に切り替える制御を行う。
【0052】
具体的には、照射対象物Tに対して、1箇所当たり、数秒~数分の間隔で通電をONからOFFへと切り替える。なお、パルス周期は、約50kHzである。
【0053】
一方、従来のエキシマランプでは、例えば1分程度の短い通電時間であっても、ランプ表面温度の上昇が確認されたことから、本実施形態のエキシマランプ1では、上述した放電管2の放電中に発生した熱を一対の電極3から蓄熱部4に蓄熱しながら外部へと放熱する。
【0054】
図6は、エキシマランプ1の蓄熱部4を省略し、電極3の寸法a’を1.5mm、b’を6.5mmとし、図5(A)の通電条件に従って、ランプ表面温度を実測した際に得られたグラフである。
【0055】
なお、ランプ表面温度については、サーモグラフィを用いて、放電管2の表面温度を実測した。また、実測は、室温環境において、密閉容器内にエキシマランプ及びサーモグラフィを設置し、エキシマランプの表面をサーモグラフィと対向して設置して行った。
【0056】
図6に示すグラフから、紫外線照射装置100を2分間駆動させたときに、ランプ表面温度が70℃以下の条件を満たすように、初期の温度勾配に基づいて、蓄熱部4の容積を求めた。
【0057】
その結果、蓄熱部4の容積は、電極3の容積の3.3倍以上大きくすることで実現できることがわかった。
【0058】
また、新型コロナウィルスやインフルエンザ等の人体に有害な菌は、波長約222nmで4~5秒間暴露されることによって不活化されることが知られている。
【0059】
本発明者らは、殺菌を行うにあたり、十分な駆動時間として2分間を条件として設定し、その時にランプ表面温度が70℃以下となる蓄熱部4の条件を実測により見出した。
【0060】
本実施形態のエキシマランプ1では、電極3と熱的に接続された蓄熱部4による熱容量の増加によって、放電管2から一対の電極3に伝わる熱が蓄熱部4へと蓄熱されるため、放電管2の温度上昇を抑制することが可能である。
【0061】
さらに、本実施形態のエキシマランプ1では、上述した放熱部5を介して蓄熱部4に蓄熱された熱を外部へと効率良く放熱させることが可能である。
【0062】
これにより、本実施形態1のエキシマランプ1では、ランプ表面温度が70℃を超えないようにすることが可能である。
【0063】
したがって、本実施形態の紫外線照射装置100では、このようなエキシマランプ1を用いることによって、ランプ温度の上昇を抑制し、ランプ寿命を更に延ばすことが可能である。
【0064】
なお、本発明は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0065】
具体的に、上記エキシマランプ1については、上述した構成に必ずしも限定されるものではなく、例えば図7(A)~(D)に示すような構成とすることも可能である。
【0066】
このうち、図7(A)に示す構成は、断面略円形状の蓄熱部4Aが一対の電極3の外側に接続された構成である。蓄熱部4Aでは、このような形状とすることで、放電管2から外部へと照射される紫外線Lの一部が遮蔽されることを防ぐことが可能である。
【0067】
一方、図7(B)に示す構成は、断面略台形状の蓄熱部4Bが一対の電極3の外側に接続された構成である。また、蓄熱部4Bは、電極3との境界における高さ寸法が電極3と同じで、その境界から外側に向かって高さ寸法が漸次大きくなっている。
【0068】
蓄熱部4Bでは、このような形状とすることで、放電管2から外部へと照射される紫外線Lの一部が遮蔽されることを防ぐことが可能である。
【0069】
一方、図7(C)に示す構成は、複数のフィン部40を有した蓄熱部4Cが一対の電極3の外側に接続された構成である。フィン部40は、その間に切欠き部を有し、いわゆるヒートシンクとしての役割を果たす。
【0070】
蓄熱部4Cでは、このようなフィン部40を設けることで、放熱性を高めることが可能である。
【0071】
一方、図7(D)に示す構成は、電極3とは別体の蓄熱部4Dが一対の電極3の外側に接続された構成である。蓄熱部4Dは、電極3とは別体とすることで、上述した電極3と同じ材質のものに限らず、電極3とは異なる材質のものを用いることが可能である。
【0072】
蓄熱部4Dと電極3との接続方法については、蓄熱部4Dと電極3との間の熱伝導性を妨げないようにすればよく、例えば熱伝導性の接着材Sを用いることが可能である。それ以外にも、例えば、溶接や溶着、はんだなどの接合方法を用いたり、嵌合やネジ止めなどの固定方法を用いたりすることが可能である。
【0073】
また、上記紫外線照射装置100では、上述した構成以外にも、例えば図8に示すように、筐体101の内面に伝熱部106を設け、この伝熱部106を介してエキシマランプ1から放射された熱を筐体101へと伝熱する構成としてもよい。
【0074】
伝熱部106は、例えば黒アルマイトからなり、筐体101の蓄熱部4と対向する内側の側面を覆うように設けられている。これに対して、放熱部5は、蓄熱部4の外側の面を覆うように設けられている。
【0075】
この構成の場合、放熱部5から放射(輻射)された熱を伝熱部106が吸収しながら、この伝熱部106から筐体101側へと熱を逃がすことが可能である。
【0076】
これにより、放熱部5から放射(輻射)された熱が筐体101の内面で反射して、エキシマランプ1側に放射(輻射)されることを抑制することが可能である。
【0077】
また、この構成により、伝熱部106の熱放射率は、放熱部5の放射率よりも高くなる。これは、筐体101に放熱性の高い材料を構成することにより条件を満たすことができ、例えばアルミニウムを用いている。通電制御部にヒートシンクを追加した構造とすることで、筐体101の放熱性をさらに高くすることができる。
【実施例0078】
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0079】
本実施例では、先ず、比較例1として、図9(A)に示すように、上記エキシマランプ1の構成のうち、蓄熱部4及び放熱部5を省略したエキシマランプと、実施例1として、図9(B)に示すように、上記エキシマランプ1と同じ構成のエキシマランプとを準備した。
【0080】
そして、これら実施例1及び比較例1のエキシマランプについて、通電しながら、ランプ表面温度の測定を行った。その測定結果を図10に示す。
【0081】
なお、ランプ表面温度については、サーモグラフィを用いて、放電管2の表面温度を測定した。また、本測定は、室温環境において、密閉容器内にエキシマランプ及びサーモグラフィを設置し、エキシマランプの表面をサーモグラフィと対向して設置して行った。
【0082】
図10に示すように、実施例1のエキシマランプは、通電開始から1分後に約44℃までランプ表面温度の上昇したのに対して、比較例1のエキシマランプは、通電開始から1分後に約66℃までランプ表面温度が上昇した。
【0083】
このように、実施例1のエキシマランプは、比較例1のエキシマランプよりも、通電時間に対するランプ表面温度の上昇が低いことがわかる。
【0084】
次に、実施例2として、上記エキシマランプ1の構成のうち、放熱部5を省略したエキシマランプを準備し、実施例1及び実施例2のエキシマランプについて、通電開始から通電をOFFとした後、ランプ表面温度が45℃となった時点を0秒として、ランプ表面温度の変化を測定した。その測定結果を図11に示す。
【0085】
図11に示すように、実施例1のエキシマランプは、実施例2のエキシマランプよりも、ランプ表面温度の低下が速いことがわかる。
【符号の説明】
【0086】
1…エキシマランプ 2…放電管 3…電極 4…蓄熱部 5…放熱部 100…紫外線照射装置 101…筐体 102…ガラス基板 103…支持部材 104…通電制御部 105…配線 106…伝熱部 L…紫外線
図1
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図11