(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008905
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】複数の単独調整可能部分に分割されたシートアセンブリを備える自動車
(51)【国際特許分類】
B60N 2/04 20060101AFI20240112BHJP
B60N 2/06 20060101ALI20240112BHJP
B60N 2/22 20060101ALI20240112BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20240112BHJP
B60N 2/14 20060101ALI20240112BHJP
B60N 2/18 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
B60N2/04
B60N2/06
B60N2/22
B60N2/90
B60N2/14
B60N2/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023111122
(22)【出願日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】102022000014446
(32)【優先日】2022-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(71)【出願人】
【識別番号】519463178
【氏名又は名称】フェラーリ エッセ.ピー.アー.
【氏名又は名称原語表記】FERRARI S.p.A.
【住所又は居所原語表記】Via Emilia Est, 1163, 41100 MODENA, Italy
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファブリジオ ファヴァレット
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087AA02
3B087BA02
3B087BA07
3B087BA17
3B087BD04
3B087BD14
3B087DE08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】特にスポーツタイプの自動車に関し、シートを完全に構成又は調整するために必要な操作を、単純化する。
【解決手段】自動車は、構造要素(10)と、少なくとも2つの別個の独立したシート部分(15)を有するシート(6)を含み、各シート部分(15)は、ユーザの身体の一部を支持するように構成され、それぞれの直交する軸線(X、Z)に沿った平面における2つの並進、及び、前記平面に直交する別の軸線(Y)を中心とした回転を含む3つの自由度で、構造要素(10)に対して可能自在に、個別に構造要素(10)に結合される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車(1)であって、構造要素(10)と、少なくとも2つの別個の独立したシート部分(15)を備えるシート(6)とを備え、前記シート部分(15)のそれぞれが、ユーザの身体の一部を支持するように構成され、直交する軸線(X、Z)に沿った平面内での2つの並進、及び前記平面に直交する別の軸線(Y)を中心とした回転を含む3つの自由度で、前記構造要素(10)に対して可動自在に、個別に前記構造要素(10)に結合される、自動車(1)。
【請求項2】
前記シート部分(15)が、前記ユーザの下肢を支持するための、前記シート(6)の背もたれの一部、又は前記シート(6)の座面の一部である、請求項1に記載の自動車。
【請求項3】
前記シート部分(15)が、3つ以上、例えば少なくとも4つある、請求項1又は2に記載の自動車。
【請求項4】
前記シート部分(15)のうちの1つ又はそれ以上、あるいはそれぞれを移動させるように構成された、アクチュエータアセンブリ(26)を更に備え、前記アクチュエータアセンブリ(26)が、前記3つの自由度によって決定されるそれぞれの構成空間において、対応する前記シート部分(15)、又は前記シート部分(15)のそれぞれを移動させるように制御可能である、請求項1から3のいずれか一項に記載の自動車。
【請求項5】
前記アクチュエータアセンブリ(26)が、3つのリニアアクチュエータ(27)及び基本構造(28)を備え、前記基本構造(28)が、前記シート部分(15)のうちの1つに対して固定され、前記リニアアクチュエータ(27)が、前記構造要素(10)にヒンジ止めされた第1の端部(29)及び前記基本構造(28)のそれぞれの点にヒンジ止めされた第2の端部(30)を有し、3つの同一平面上の別個の直線方向(R、S、T)に沿ってそれぞれ伸長可能な、それぞれのロッド要素として構成される、請求項4に記載の自動車。
【請求項6】
前記シート(6)内の前記ユーザの姿勢を検出するように構成された、検出装置(40)と、
前記検出された姿勢に対応する配置又は前記検出された姿勢に適合された配置に従って、前記シート部分(15)を配置するために、前記アクチュエータアセンブリ(26)を制御するように構成された、制御装置(ECU)と、
を更に備える、請求項4又は5に記載の自動車。
【請求項7】
前記ユーザによって操作可能であり、複数の別個の構成を有する操作手段(13)を備え、前記操作手段(13)が、前記構成のそれぞれにおいて、前記ユーザが前記アクチュエータアセンブリ(26)を制御して、前記構成空間内における前記シート部分(15)のそれぞれの姿勢を調整することを可能にする、請求項4から6のいずれか一項に記載の自動車。
【請求項8】
前記シート部分(15)の現在の配置を検出するように構成された、検出装置(40)と、
検出された現在の配置を記憶するために、ユーザによって制御可能な記憶装置(ECU)と、
前記記憶装置(ECU)によって記憶された1つ又はそれ以上の配置の中から、前記シート部分(15)の更なる配置を選択するように、前記ユーザによって操作可能な選択装置と、
前記選択装置を使用して前記ユーザによって選択された前記更なる配置に、前記シート部分(15)を配置するように、前記アクチュエータアセンブリ(26)を制御するように構成された制御装置(ECU)と
を更に備える、請求項4から7のいずれか一項に記載の自動車。
【請求項9】
前記構造要素(10)が、前記自動車(1)の車室(3)内で、前記自動車(1)の両側端部に対して中間位置にあるピラーである、請求項1から8のいずれか一項に記載の自動車。
【請求項10】
前記シート(6)が、スライド部(22)と、前記構造要素(10)によって支持され、前記スライド部(22)を前記平面内で導くように構成されたガイド装置(16)とを備え、前記シート部分(15)のうちの1つが、前記別の軸線(Y)を中心として、枢動可能に前記スライド部(22)に結合される、請求項1から9のいずれか一項に記載の自動車。
【請求項11】
本体(2)を更に備え、前記構造要素(10)が、前記本体(2)の一部である、又は前記本体(2)に対して固定される、請求項1から10のいずれか一項に記載の自動車。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本特許出願は、2022年7月8日に出願されたイタリア特許出願第102022000014446号の優先権を主張し、その全開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、自動車、特にスポーツタイプの自動車に関する。
【背景技術】
【0003】
いくつかの自動車では、シートのうちの少なくとも1つ、例えば運転席は、調整可能又は構成可能である。
【0004】
特に、ユーザ、すなわちシートに座っている人は、シートの高さ、シートの長手方向位置、並びに、背もたれ及び座面のそれぞれの傾斜を調整することができる。言い換えれば、座面とは、着座したユーザの下肢を支持するように設計された、シートの一部である。
【0005】
通常、ユーザは、調整を可能にするために、レバー又はハンドルなどの、複数の操作装置を使用する。
【0006】
これらの操作装置は、典型的には、シートに座っているユーザの四肢、すなわち手足が通常届く範囲の、それぞれの別個の領域又は位置に配置される。
【0007】
一般に、公知のシートの調整、又はコンフィギュアビリティを改善する必要がある。
【0008】
より具体的には、調整の多機能性、又はシートの人間工学性を高める必要がある。
【0009】
更に、シートを完全に構成又は調整するために必要な操作を、単純化する必要もある。
【0010】
本発明の目的は、上記の必要性の少なくとも1つを、好ましくは単純かつ信頼性のある方法で満たすことである。
【発明の概要】
【0011】
この目的は、請求項1で定義される自動車によって達成される。
【0012】
各従属請求項は、本発明の特定の実施形態を定義するものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明をよりよく理解するために、その一実施形態について、非限定的な例として添付の図面を参照して、以下に説明を行う。
【0014】
【
図2】調整可能なシートアセンブリを含む、
図1の自動車の車室を拡大した斜視図である。
【
図3】明瞭にするために部品を取り除いた、
図2とは反対側の視点からの、調整可能なシートアセンブリを示す図である。
【
図4】調整可能なシートアセンブリの一部分のためのガイド機構が追加された、
図3と同様の図である。
【
図7】
図1の自動車の内側からの、ダッシュボードの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1において、参照符号1は、全体として自動車を示すために使用される。
【0016】
自動車1は、自動車1のロール軸としても知られる、軸線Xによって
図2に示される、前進方向又は長手方向を有する。
【0017】
図面はまた、自動車1のピッチ軸及びヨー軸としても知られる、自動車1の他の2つの軸線、Y、Zを示す。
【0018】
軸線Yは、自動車1の前進方向に直交する、すなわち軸線Xに直交する水平軸である。軸線Zは、軸線X、Yと直交し、少なくとも1つの垂直成分を有する。一般に、軸線Zは、自動車1が走行する路面に直交する。
【0019】
自動車1は、車室3を画定する本体2を備える。
【0020】
周知のように、本体2は、自動車1の構造部品として理解されるシャシー、及び車体、すなわち自動車1の外側から審美的観点で見ることのできる部品を含む。
【0021】
特に、本体2は、ルーフ8及びフロア9を備え、より具体的には、車室3の上部カバー及び床面をそれぞれ画定する。
【0022】
図7を参照すると、自動車1は、車室3の内側に、例えばインスツルメントパネル5を含む、ダッシュボード4を備える。
【0023】
更に、
図6を参照すると、自動車1は、車室3内に、一対のシート6を備え、その一方は自動車1の運転者用であり、他方は乗員用である。
【0024】
シート6はそれぞれ、自動車1の側端又は側部、すなわち軸線Yに沿った端部に隣接して配置される。
【0025】
更に、自動車1は、車室3の内側に、軸線Yに従った自動車1の側端間の中間位置に設置された、ピラー10を備える。具体的には、ピラー10は中央部の支柱である。
【0026】
ピラー10は、本体2に対して固定されるか、又は、本体2の一体部分と考えることもできる。
【0027】
より詳細には、ピラー10は、フロア9とルーフ8との間、特にフロア9からルーフ8にかけて延在する。加えて、これとは別に、ピラー10は、軸線Yに従ってシート6の間に配置される。
【0028】
添付の図面に示す事例では、ピラー10は、軸線Xに沿って延在する基部11、並びに、基部11からルーフ8に向かって、例えばルーフ8まで延在する上部12を有する。より正確には、上部12は、基部11からルーフ8に向かって分岐している。
【0029】
特に、
図7に示すように、自動車1は基部11に操作手段13を備える。操作手段13は、以下でより明確になるように、シート6の少なくとも一方の構成を調整するために、乗員又は運転者などのユーザが操作することができる。
【0030】
操作手段13は、異なる位置にあってもよい。例えば、操作手段13は、場合によってはダッシュボード4に配置することができる。
【0031】
各シート6は同一のものであることが好ましく、説明するすべての特徴を他方のシート6にも当てはめることができるため、以下の説明では、シート6のうちの1つ、特に運転席のみを参照する。
【0032】
シート6は、複数の別個に独立したシート部分15を備える。
【0033】
部分15のそれぞれは、ユーザの身体の一部を支持するように構成される。
【0034】
更に、シート部分15は全体として、特にシート6を構成する。
【0035】
例えば、部分15の1つは、ヘッドレストを画定する、又はヘッドレストの一部である。その代わりに、又は加えて、部分15の一部は、シート6の背もたれを画定する、又は背もたれの一部である。その代わりに、又は加えて、部分15の一部は、シート6の座面部を画定する、又は座面部の一部であり、この座面部は、ユーザの下肢を支持する役割を果たす。
【0036】
図2では、合計7つの部分15がある。より一般的には、部分15は、少なくとも4つ又は3つ以上である。更により一般的には、シート6は、少なくとも2つの部分15を備えなければならない。
【0037】
部分15のそれぞれは、自動車1の構造要素、この事例ではピラー10に対して、少なくとも3つの自由度を伴って、又はより正確には、ちょうど3つの自由度を伴って、可動自在に結合される。
【0038】
ピラー10のこの特定の実施例は、必ずしも限定するものとして理解されるべきではない。むしろ、この構造要素は別のものであってもよく、例えば本体2の一部であってもよく、又は本体2に対して固定された、追加のシャシー部品であってもよい。より正確には、構造要素は、例えばフロア9に固定され、シート6を取り囲むように配置された、本体2に対する固定フレームであってもよい。場合によっては、このフレームは、本体2に対して固定される代わりに、例えば、特に軸線X、Zに沿った本体2に対するフレームの並進、並びに、特に軸線X、Zによって画定される平面内で、1つ又はそれ以上の回転を可能にするガイド機構によって、本体2に対して可動自在に結合することさえできる。
【0039】
したがって、以下の説明は、ピラー10を具体的に参照するが、しかし、このピラーは、別の適切な構造要素によって置き換えることができる。
【0040】
部分15のそれぞれは、好ましくは、対応するガイド装置16によって、特に軸線X、Zによって画定される並進平面において、並進するように拘束される。
【0041】
図4では、簡略化のためにただ1つのガイド装置16を示してある。しかし、部分15のそれぞれに対し、対応するガイド装置をガイド装置16と同一のものにすることができる。したがって、1つのガイド装置16についてのみ、詳細な説明を行う。
【0042】
ガイド装置16は、シート6の一部であり、ピラー10によって支持される。
【0043】
より詳細には、ガイド装置16は、並進平面に属する2つの直交軸を伴う、デカルト運動学的機構20を備える。
【0044】
特に、ガイド装置16は、ピラー10に対して固定された1つ又はそれ以上の支持体17、並びに、支持体17に対して固定された位置で、支持体17によって支持され、機構20の軸の1つに従って延在する、第1の直線ガイド部18を備える。
【0045】
更に、ガイド装置16は、ガイド部18に沿って摺動可能にガイド部18に結合された、第1のスライド部19を備える。ガイド部18は、機構20の軸の1つに沿って、スライド部19を導くように構成される。
【0046】
更に、ガイド装置16は、スライド部19に対して固定された位置でスライド部19によって支持され、機構20のもう一方の軸に従って延在する、第2の直線ガイド部21を備える。
【0047】
更に、シート6は、ガイド部21に沿って摺動可能にガイド部21に結合された、第2のスライド部22を備える。ガイド部21は、機構20のもう一方の軸に沿って、スライド部22を導くように構成される。より一般的には、スライド部22は、ガイド装置16自体の特定の構造的形態にかかわらず、ガイド装置16によって機能的に導かれる。
【0048】
したがって、概して、ガイド装置16は、スライド部22を並進平面内で導くように構成される。実際に、スライド部22は、ガイド装置16によって並進平面内で並進するように拘束される。より正確には、スライド部22は、ガイド部21に沿って直接摺動することによって、機構20の軸の1つに沿って並進し、ガイド部21及びスライド部19はガイド部18に沿って一緒に並進するため、スライド部22は、間接的に機構20のもう一方の軸に沿って並進する。
【0049】
場合によっては、対応するガイド装置16によって導かれるシート部分15は、並進平面に直交する軸線Hを中心として、旋回可能にスライド部22に結合される。このようにして、シート部分15は、軸線Hを中心として回転することができ、また、特にスライド部22に対して回転することができる。
【0050】
具体的には、シート6は、特に管状のアーム又はロッド23を備える。ロッド23は、特にガイド装置16によって導かれる、シート部分15に対して固定された端部23a、並びに、スライド部22にヒンジ止めされた端部23bを有する。以下でより明らかになるように、ロッド23の存在は、ガイド装置16の有無とは無関係のものである。言い換えれば、ロッド23は、ガイド装置16が存在しない、又はガイド装置16が異なる構造であっても、特にその端部23aがシート部分15に固定された状態で存在することができる。
【0051】
図示の実施形態では、ロッド23は、軸線Yに平行にピラー10と交差しており、それによって、ピラー10は、軸線Yに沿った貫通孔24を有する。
【0052】
端部23a、23b、したがってスライド部22及びシート部分15は、軸線Yに従って、孔24及びピラー10の両側にある。
【0053】
更に、シート部分15のそれぞれは、軸線Yに従って、特にピラー10の対応する貫通孔24を通過する、対応するロッド23に固定される。
【0054】
更に、各ロッド23は、それぞれのガイド装置16によって導かれる、対応するスライド部22にヒンジ止めすることができるが、簡略化のために、図では、ただ1つのスライド部22及びただ1つのガイド装置16を示してある。
【0055】
概して、シート部分15のそれぞれは、他のシート部分15と同様に移動する。すなわち、並進平面の別個の領域ではあるが、同様の自由度を有する。このようにして、シート部分15は、互いに重なり合ったり貫通したりすることがない。
【0056】
孔24は、対応するシート部分15が並進することができる領域の境界を定める。すなわち、並進平面内における対応するシート部分15の並進について、限界又は境界を設定する。
【0057】
図では、簡略化のために1つのアクチュエータアセンブリ26のみを示してあるが、好都合には、自動車1は、シート部分15の1つ又はそれぞれのためのアクチュエータアセンブリ26を備える。他のアクチュエータアセンブリ26は、例えば、図示のアクチュエータアセンブリ26と同一のものにすることができる。更に、その代わりに、自動車1は、シート部分15のいくつかのために、それぞれのアクチュエータアセンブリ26を備えてもよい。
【0058】
各アクチュエータアセンブリ26は、関連するシート部分15を移動させるための、単一の全体的なアクチュエータアセンブリ26の一部と考えることもできる。
【0059】
言い換えれば、自動車1は、全体として、シート部分15の一部又はそれぞれを、そのそれぞれの自由度に従って移動させるように構成された、アクチュエータアセンブリ26を備えることができる。
【0060】
簡潔にするために、図示されているアクチュエータアセンブリ26のみについて詳細な説明を行うが、その特徴は、図示されていない他のアクチュエータアセンブリに個別に当てはめることができる。
【0061】
アクチュエータアセンブリ26は、シート部分15の3つの自由度によって決定される構成空間内で、対応するシート部分15を移動させるように制御することができる。構成空間は、すべてのベクトル、ここでは具体的には三次元のユークリッド空間であり、シート部分15の姿勢を完全かつ十分に表現するものである。ここで、特に、構成空間の各ベクトルは、並進平面内における点の2つのデカルト座標、及び、並進平面に直交する軸を中心とした回転角度によって定義される。したがって、ベクトルの各要素は、シート部分15の3つの自由度のいずれかに対応する。
【0062】
当技術分野では、対応するシート部分15を移動させるためにアクチュエータアセンブリ26を採用するという考え自体が、機能的観点から革新的なものであるが、一平面内での並進、及びその平面内での回転を構造的に実行することができるアクチュエータアセンブリは多くあり、周知のものである。
【0063】
ここで、特に、アクチュエータアセンブリ26は、3つのリニアアクチュエータ27、及び、対応するシート部分15に対して固定された、基本構造28を備える。
【0064】
より具体的には、基本構造28は、並進平面と平行に延在する。
【0065】
例えば、基本構造28は、ロッド23に固定される。より正確には、基本構造28は、ロッド23に装着される。言い換えれば、基本構造28には、軸線Yに平行に、ロッド23が貫通し、交差する。
【0066】
特に、基本構造28は、軸線Yに従って、スライド部22とピラー10との間に配置される。
【0067】
リニアアクチュエータ27は、3つの異なる直線方向R、S、及びTに延在することができる、ロッド要素又はロッドとして、組織的に配列する、又は表すことができる。
【0068】
言い換えれば、リニアアクチュエータ27は、それぞれの支持体29、並びに、対応する直線方向R、S、及びTに沿って並進するように、支持体29によってそれぞれ導かれる、それぞれの可動体30を備える。
【0069】
特に、リニアアクチュエータ27は、電動リニアアクチュエータ、又はより好ましくは、公知のタイプの油圧シリンダとすることができ、したがって詳細な説明は行わない。
【0070】
好都合には、方向R、S、及びTは、互いに同一平面上にある。
【0071】
より詳細には、支持体29は、ピラー10にヒンジ止めされ、一方、可動体30は、基本構造28の3つの箇所で、それぞれヒンジ止めされる。
【0072】
あるいは、リニアアクチュエータ27を組織的に配列する伸縮可能なロッドのそれぞれは、ピラー10にヒンジ止めされた第1の端部、並びに、基本構造28の対応する点にヒンジ止めされた第2の端部を有する。
【0073】
したがって、方向R、S、及びTは、理想的には、ピラー10のヒンジ点を中心に回転する。
【0074】
特に、基本構造28のそれぞれの点は、理想的には正三角形の頂点を形成するように配置される。更に、具体的には、これが必須ではないが、伸縮可能なロッドの長さ、すなわち各ヒンジ点の間の距離が互いに等しい場合、方向R、S、及びTは、それぞれその正三角形の辺に直交する。
【0075】
その代わりに、又は加えて、支持体29又は第1の端部がピラー10にヒンジ止めされる点は、理想的には、更なる正三角形の頂点を形成する。
【0076】
概して、アクチュエータアセンブリ26はまた、基本構造28、及び/又は、ロッド23、及び/又は、対応するシート部分15の重量を単独で支持し、それらを現在の位置に保つことができる。したがって、ガイド装置16は、有利ではあるが、任意選択的なものであると考えることができる。これにより、ロッド23の存在はガイド装置16の有無とは無関係であることが確認される。
【0077】
好ましくは、ユーザが操作することのできる操作手段13は、複数の別個の構成を有する。
【0078】
各構成における操作手段13により、ユーザが対応するアクチュエータアセンブリ26を制御して、構成空間におけるそれぞれのシート部分15の姿勢を調整することが可能となる。
【0079】
あるいは、自動車1は、それぞれのシート部分15の一部又は全部の姿勢を調整するための、複数の別個の、ユーザが操作することのできる制御装置を備えることができる。
【0080】
操作手段13は、ユーザがシート6に座っている間に手が届く範囲の、任意の位置に配置することができる。例えば、操作手段13は、ダッシュボード4、又は非限定的に
図7に示すように、ピラー10の基部11に配置することができる。
【0081】
具体的には、操作手段13は、操作手段13の各構成に対応する複数の位置の間で、例えば軸線Zに平行な直線方向Wに沿って移動することができる、可動本体31を備える。本体31の位置の数は、それぞれのアクチュエータアセンブリ26によって、又は例えばアクチュエータアセンブリ26によって形成されるアクチュエータアセンブリ全体によって移動され得る、シート部分15の数と等しい。本体31の位置の数は、例えば、シート部分の数と同じ、すなわち7個である。
【0082】
場合によっては、操作手段13は、本体31の位置に対応する方向Wに沿って、複数のシート(図示せず)を備え、本体31は、それぞれの位置でスナップロックし、それにより、例えば、方向Wに沿ってユーザが押しつける、又は持ち上げることによって、その位置に達すると停止する。言い換えれば、本体31は、それぞれの位置のシートにスナップロックするように構成される。
【0083】
好ましくは、各位置又は構成において、方向Wに直交する様々な方向、すなわち方向Wに直交する平面を形成する様々な方向のそれぞれに沿って、本体31を手動で移動させることができ、かつ/又は、方向Wを中心として回転させることができる。
【0084】
したがって、本体31の位置又は構成に対応するシート部分15は、本体31の移動に応じて、それぞれのアクチュエータアセンブリ26によって移動する。
【0085】
より正確には、操作手段13は、その位置又は構成のうちの1つにおける、本体31の移動に関する、1つ又はそれ以上の信号を発するように構成される。
【0086】
したがって、自動車1は、操作手段13から信号を受信し、アクチュエータアセンブリ26を制御するように構成されたECU制御装置を備え、その結果、アクチュエータアセンブリ26は、その移動に応じて、又はその位置又は構成における本体31の移動に呼応して、本体31の位置又は構成に対応するシート部分15を移動させる。
【0087】
特に、本体31の移動、及び結果として生じるシート部分15の移動との間の対応関係は、直線的であり得る。すなわち、言い換えれば、本体31が方向Wに直交する方向に沿って移動する場合、シート部分15は、本体31の移動に比例して、並進平面内の対応する方向に沿って並進する。また、本体31が方向Wを中心に回転する場合、シート部分15は、本体31の回転に比例して回転する。
【0088】
好都合には、自動車1は、シート部分15の現在の配置を記憶するように構成された記憶装置、例えばECU制御装置のメモリユニットを、更に備えることができる。
【0089】
その代わりに、又は加えて、自動車1は、シート部分15の現在の配置を検出するように構成された、検出装置を備えてもよい。
【0090】
例えば、この検出装置は、ECU制御装置自体であってもよい。実際には、ECU制御装置は、アクチュエータアセンブリ26、又は例えばアクチュエータアセンブリ26によって形成されるアクチュエータアセンブリ全体によって、その現在の配置を制御するものであるため、ECU制御装置には、シート部分15の現在の配置が分かっている。
【0091】
あるいは、検出装置は、シート部分15の現在の配置を表す画像を提供するように準備された、カメラ40、並びに、カメラ40によって提供された画像から現在の配置を特定するように構成された、例えばECU制御装置の一部を形成する、画像処理装置41を備えることができる。
【0092】
加えて、検出装置は、シート部分15のそれぞれに対して、1つ又はそれ以上の位置センサを備えることができる。
【0093】
したがって、記憶装置は、検出装置が検出した、現在の配置を記憶することができる。
【0094】
加えて、記憶装置は、場合によっては、必ずしも検出装置によって検出されるわけではない現在の配置を記憶するために、ユーザによって制御可能であってもよい。例えば、ユーザは、キー又は音声コマンドなどの図示されていない公知のコマンド装置を介して、現在の配置を記憶することを命令することができる。
【0095】
明確にするために、シート部分15の配置は、シート部分15の全体的な配置として理解される。言い換えれば、より正確には、姿勢のセット、すなわち、例えばピラー10に対するすべてのシート部分15の位置及び向きとして理解される。
【0096】
自動車1はまた、特にダッシュボード4上、ピラー10の基部11上、又はユーザから届く範囲の任意の位置に配置された、オンボードコンピュータ、キーボード、タッチパッドなどの、図示されていない選択装置を備える。この選択装置は、記憶装置によって記憶された配置を選択するように、ユーザが操作できるものである。
【0097】
実際には、記憶装置は、必ずしも上述したようにシート部分15の現在の配置を記憶しなくてもよく、むしろ、1つ又はそれ以上の所定の配置のみを記憶することもある。更に、例えば検出装置によって検出され、記憶された現在の配置に加えて、所定の配置を記憶装置に提供することができる。
【0098】
ECU制御装置は、選択装置によってユーザが選択した配置にシート部分15を配置するために、例えば、アクチュエータアセンブリ26、又は、複数のアクチュエータアセンブリ26によって形成されるアクチュエータアセンブリ26全体を、制御するように構成される。
【0099】
このようにして、ユーザは、自分の好みの配置を保存し、次いで最も好都合な時に、選択装置を使用してそれらを設定することができる。
【0100】
加えて、自動車1は、シート6内のユーザの姿勢を検出するために、例えばカメラ40及び画像処理装置41を含む、検出装置を備えることが好ましい。
【0101】
例えば、画像処理装置は、例えば人工知能アルゴリズムによってユーザの姿勢を特定するために、カメラ40からのユーザの姿勢の画像を、姿勢モデルと比較することができる。
【0102】
したがって、ECU制御装置は、検出された姿勢に対応する、又は適合された配置に従って、シート部分15を配置するように、例えば、アクチュエータアセンブリ26、又は、複数のアクチュエータアセンブリ26によって形成されるアクチュエータアセンブリ全体を、制御するように構成される。
【0103】
例えば、ECU制御装置は、シート部分15の配置をユーザに想定される姿勢に関連付ける、例えば補間可能なテーブルの形態の、マッピングを記憶することができる。
【0104】
このようにして、シート部分15の配置は、シート6内のユーザの姿勢に、リアルタイムで自動的に適合するようになる。
【0105】
上述したことから、本発明による自動車1の利点は明らかである。
【0106】
実際、シート6は、ユーザによって選択されたあらゆる実現可能な姿勢に完全に適応するまで、極めて応用自在な方法で調整することができる。
【0107】
各シート部分15は、完全に独立しており、それぞれが3つの自由度で移動可能である。このようにして、実現可能なシート部分15の配置は多岐にわたる。したがって、シート6の構成を高水準にカスタマイズできる。
【0108】
更に、シート6は複数の独立したシート部分15に分割されているが、シート6の全体的な寸法は、従来のソリューションと比較して実質的に変わらないままである。
【0109】
更に、シート部分15を移動させるための構成要素は、単純であり、市場で容易に入手可能なものである。
【0110】
最後に、本発明による自動車1に、修正及び変形を加えられることは明らかであり、そのために、特許請求の範囲によって定義される保護の範囲から逸脱することはない。
【外国語明細書】