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特開2024-89050推定装置、推定方法及び推定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089050
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】推定装置、推定方法及び推定プログラム
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20240626BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240626BHJP
   H01M 10/6563 20140101ALI20240626BHJP
   H01M 10/633 20140101ALI20240626BHJP
【FI】
H01M10/48 Z
H01M10/613
H01M10/6563
H01M10/633
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204164
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】宮村 晃司
【テーマコード(参考)】
5H030
5H031
【Fターム(参考)】
5H030AA06
5H030AS08
5H030FF51
5H031KK08
(57)【要約】
【課題】二次電池の内圧の推定精度を向上させることが可能な推定装置、推定方法及び推定プログラムを提供すること。
【解決手段】推定装置10は、二次電池を冷却する送風機の回転部の回転数、送風機に供給された電流、及び送風機に供給された電圧のいずれかに基づき、送風機が発生させた第1の風量を算出する第1の風量算出部132と、二次電池に関する情報に基づき、二次電池の内圧の推定値である内圧推定値を算出する内圧推定値算出部131と、内圧推定値と回転数に基づき、1以上の二次電池を収容した容器内の風量である第2の風量を算出する第2の風量算出部133と、第1の風量と第2の風量との差に基づき、内圧推定値を補正するための補正値を算出する補正値算出部136と、補正値を用いて内圧推定値を補正する内圧推定値補正部137とを含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の内圧を推定する推定装置であって、
前記二次電池を冷却する送風機の回転部の回転数、前記送風機に供給された電流、及び前記送風機に供給された電圧のいずれかに基づき、前記送風機が発生させた第1の風量を算出する第1の風量算出部と、
前記二次電池に関する情報に基づき、前記二次電池の内圧の推定値である内圧推定値を算出する内圧推定値算出部と、
前記内圧推定値算出部によって算出された前記内圧推定値と、前記回転数に基づき、1以上の前記二次電池を収容した容器内の風量である第2の風量を算出する第2の風量算出部と、
前記第1の風量算出部によって算出された前記第1の風量と、前記第2の風量算出部によって算出された前記第2の風量との差に基づき、前記内圧推定値を補正するための補正値を算出する補正値算出部と、
前記補正値算出部によって算出された前記補正値を用いて、前記内圧推定値算出部によって算出された前記内圧推定値を補正する内圧推定値補正部と
を含む、推定装置。
【請求項2】
前記第2の風量算出部は、前記内圧の変化に起因する前記第2の風量の変化を示す風量変化率と、前記回転数に基づいて算出された、前記二次電池が膨張していない状態における前記容器内の風量である第3の風量とを乗算することにより、前記第2の風量を算出する、請求項1に記載の推定装置。
【請求項3】
前記内圧と前記風量変化率の既知の対応関係に基づき、前記内圧推定値算出部によって算出された前記内圧推定値に対応する前記風量変化率を算出する風量変化率算出部をさらに含む、請求項2に記載の推定装置。
【請求項4】
前記回転数と前記第3の風量の既知の対応関係に基づき、前記回転数に対応する前記第3の風量を算出する第3の風量算出部をさらに含む、請求項2に記載の推定装置。
【請求項5】
前記補正値算出部は、前記内圧と正の相関関係を有する係数と、前記第1の風量から前記第2の風量を減算した値とを乗算することにより、前記補正値を算出する、請求項1~4のいずれか1項に記載の推定装置。
【請求項6】
前記内圧推定値補正部は、前記内圧推定値に前記補正値を加算することにより、前記内圧推定値を補正する、請求項5に記載の推定装置。
【請求項7】
二次電池の内圧を推定する推定方法であって、コンピュータが、
前記二次電池を冷却する送風機の回転部の回転数、前記送風機に供給された電流、及び前記送風機に供給された電圧のいずれかに基づき、前記送風機が発生させた第1の風量を算出し、
前記二次電池に関する情報に基づき、前記二次電池の内圧の推定値である内圧推定値を算出し、
算出された前記内圧推定値と、前記回転数に基づき、1以上の前記二次電池を収容した容器内の風量である第2の風量を算出し、
算出された前記第1の風量及び前記第2の風量との差に基づき、前記内圧推定値を補正するための補正値を算出し、
算出された前記補正値を用いて、算出された前記内圧推定値を補正する
推定方法。
【請求項8】
二次電池の内圧を推定する推定プログラムであって、コンピュータに対し、
前記二次電池を冷却する送風機の回転部の回転数、前記送風機に供給された電流、及び前記送風機に供給された電圧のいずれかに基づき、前記送風機が発生させた第1の風量を算出させ、
前記二次電池に関する情報に基づき、前記二次電池の内圧の推定値である内圧推定値を算出させ、
算出された前記内圧推定値と、前記回転数に基づき、1以上の前記二次電池を収容した容器内の風量である第2の風量を算出させ、
算出された前記第1の風量及び前記第2の風量との差に基づき、前記内圧推定値を補正するための補正値を算出させ、
算出された前記補正値を用いて、算出された前記内圧推定値を補正させる
推定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二次電池の内圧を推定する推定装置、推定方法及び推定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、電気自動車やハイブリッド車、プラグインハイブリッド車等の電力を駆動力として利用する車両では、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池等の二次電池が使用されている。このような二次電池の内圧を推定する種々の技術が提案されている。
【0003】
特許文献1が開示する内圧推定システムは、ニッケル水素電池の正極における酸素ガス発生量と、負極である水素吸蔵合金に取り込まれた水素と酸素ガスとの反応による酸素ガス吸収量とから酸素圧を算出し、算出された酸素圧と、水素吸蔵合金の水素平衡圧を用いて、ニッケル水素電池の内圧を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-91790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、二次電池は、その内圧が変化することによって膨張及び収縮する。しかしながら、特許文献1が開示する内圧推定システムは、このような二次電池の内圧の変化が考慮されていないため、二次電池の内圧の推定精度を向上させる余地があった。
【0006】
本開示は、上述した課題を解決すべく、二次電池の内圧の推定精度を向上させることが可能な推定装置、推定方法及び推定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係る二次電池の内圧を推定する推定装置は、
二次電池を冷却する送風機の回転部の回転数、送風機に供給された電流、及び送風機に供給された電圧のいずれかに基づき、送風機が発生させた第1の風量を算出する第1の風量算出部と、
二次電池に関する情報に基づき、二次電池の内圧の推定値である内圧推定値を算出する内圧推定値算出部と、
内圧推定値算出部によって算出された内圧推定値と、回転数に基づき、1以上の二次電池を収容した容器内の風量である第2の風量を算出する第2の風量算出部と、
第1の風量算出部によって算出された第1の風量と、第2の風量算出部によって算出された第2の風量との差に基づき、内圧推定値を補正するための補正値を算出する補正値算出部と、
補正値算出部によって算出された補正値を用いて、内圧推定値算出部によって算出された内圧推定値を補正する内圧推定値補正部とを含む。
【0008】
第2の風量算出部は、内圧の変化に起因する第2の風量の変化を示す風量変化率と、回転数に基づいて算出された膨張していない状態の容器内の風量である第3の風量とを乗算することにより、第2の風量を算出し得る。
【0009】
また、推定装置は、内圧と風量変化率の既知の対応関係に基づき、内圧推定値算出部によって算出された内圧推定値に対応する風量変化率を算出する風量変化率算出部をさらに含み得る。
【0010】
さらに、推定装置は、回転数と第3の風量の既知の対応関係に基づき、回転数に対応する第3の風量を算出する第3の風量算出部をさらに含み得る。
【0011】
補正値算出部は、内圧と正の相関関係を有する係数と、第1の風量から第2の風量を減算した値とを乗算することにより、補正値を算出し得る。
【0012】
内圧推定値補正部は、内圧推定値に補正値を加算することにより、内圧推定値を補正し得る。
【0013】
一実施形態に係る二次電池の内圧を推定する推定方法は、コンピュータが、
二次電池を冷却する送風機の回転部の回転数、送風機に供給された電流、及び送風機に供給された電圧のいずれかに基づき、送風機が発生させた第1の風量を算出し、
二次電池に関する情報に基づき、二次電池の内圧の推定値である内圧推定値を算出し、
算出された内圧推定値と、回転数に基づき、1以上の二次電池を収容した容器内の風量である第2の風量を算出し、
算出された第1の風量及び第2の風量との差に基づき、内圧推定値を補正するための補正値を算出し、
算出された補正値を用いて、算出された内圧推定値を補正する。
【0014】
一実施形態に係る二次電池の内圧を推定する推定プログラムは、コンピュータに対し、
二次電池を冷却する送風機の回転部の回転数、送風機に供給された電流、及び送風機に供給された電圧のいずれかに基づき、送風機が発生させた第1の風量を算出させ、
二次電池に関する情報に基づき、二次電池の内圧の推定値である内圧推定値を算出させ、
算出された内圧推定値と、回転数に基づき、1以上の二次電池を収容した容器内の風量である第2の風量を算出させ、
算出された第1の風量及び第2の風量との差に基づき、内圧推定値を補正するための補正値を算出させ、
算出された補正値を用いて、算出された内圧推定値を補正させる。
【発明の効果】
【0015】
本開示により、二次電池の内圧の推定精度を向上させることが可能な推定装置、推定方法及び推定プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】二次電池パックの一例を示す図である。
図2】推定装置の構成の一例を示すブロック図である。
図3】送風機の回転部の回転数と第3の風量との関係を示す図である。
図4】二次電池の内圧と風量変化率との関係を示す図である。
図5】二次電池の内圧と係数Kとの関係を示す図である。
図6】推定装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図7】第2の風量を算出する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、種々の実施形態について説明する。図1は、二次電池パック1の一例を示す図である。二次電池パック1は、1以上の二次電池が配列して収容された容器を備える。二次電池パック1には、容器内の二次電池を冷却する冷却風を発生させる送風機2が隣接して配置される。容器内には、二次電池を冷却する冷却風の流路が形成される。この流路は、容器内の二次電池の膨張及び収縮によって縮小及び拡張され得る。
【0018】
図2は、一実施形態に係る推定装置10の構成を示すブロック図である。推定装置10は、二次電池の内圧を推定する装置である。推定装置10の具体例として、例えば、車両に設置されるECU(Electronic Control Unit)等が挙げられる。
【0019】
推定装置10は、通信インタフェース(I/F)11と、記憶装置12と、演算装置13とを備える。通信I/F11は、推定装置10と、車両に設置された二次電池及び他の装置との間で、信号の送受信を行うインタフェースである。
【0020】
記憶装置12は、演算装置13が実行する推定プログラム、演算装置13が処理する種々の情報が保存される記憶装置である。
【0021】
演算装置13は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等の演算装置である。演算装置13は、記憶装置12に保存された推定プログラムを実行することにより、二次電池の内圧を推定する推定方法を実行する。推定プログラムには、取得部130、内圧推定値算出部131、第1の風量算出部132、第2の風量算出部133、第3の風量算出部134、風量変化率算出部135、補正値算出部136、及び内圧推定値補正部137が含まれる。なお、FPGA(Field-Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の集積回路が、これらのプログラムを実行してもよい。
【0022】
取得部130は、送風機2に関する情報及び二次電池に関する情報を取得するプログラムである。送風機2に関する情報には、送風機2が備える回転部(例えば、ブロアやファン等)の回転数、及び送風機2に供給される電流が含まれる。取得部130は、送風機2の回転部の回転数を検出するセンサから通信I/F11を介して、当該回転数を取得できる。また、取得部130は、送風機2へ供給される電流を検出する電流センサ(図示せず)から送風機2に供給される電流の値を取得できる。さらに、取得部130は、送風機2へ供給される電圧を検出する電圧センサ(図示せず)から送風機2に供給される電圧の値を取得できる。
【0023】
二次電池に関する情報には、二次電池の電流、電圧及び温度が含まれる。取得部130は、二次電池の電流を検出する電流センサ(図示せず)から二次電池の電流を取得できる。また、取得部130は、二次電池の電圧を検出する電流センサ(図示せず)から二次電池の電圧を取得できる。さらに、取得部130は、二次電池パック1内の温度を検出する温度センサ(図示せず)から二次電池の温度を取得できる。
【0024】
内圧推定値算出部131は、二次電池に関する情報に基づき、二次電池の内圧の推定値である内圧推定値を算出するプログラムである。例えば、ニッケル水素電池の内圧を推定する場合、内圧推定値算出部131は、下記数式1に基づき、二次電池パック1内の推定酸素圧pOkを算出することができる。なお、内圧推定値算出部131は、ニッケル水素電池等のアルカリ二次電池以外に、例えば、リチウムイオン電池等の非水電解液二次電池の内圧を推定することができる。
【数1】
ここで、kは正の整数である。pOk-1は、k-1回目、すなわち、直前の推定酸素圧の算出処理によって算出された推定酸素圧である。pOgeneは、二次電池が発生する酸素の圧力(以下、「発生酸素圧」とする。)である。OCVは二次電池の電圧である。Tは二次電池の温度である。Iは二次電池の電流である。pOabsは、二次電池が吸収する酸素の圧力(以下、「吸収酸素圧」とする。)である。OCVは二次電池の電圧である。pk-1は、k-1回目、すなわち、直前の内圧推定値の算出処理によって算出された内圧推定値である。発生酸素圧pOgeneの算出式pOgene(OCV,T,I)は、発生酸素圧pOgene、電圧OCV、温度T及び電流Iの計測データに基づいて導出することができる。吸収酸素圧pOabsの算出式pOabs(pk-1,T)は、吸収酸素圧pOabs、内圧推定値pk-1及び温度Tの計測データに基づいて導出することができる。
【0025】
次いで、内圧推定値算出部131は、下記数式2に基づき、内圧推定値pを算出することができる。
【数2】
ここで、pは、二次電池の温度Tに依存する水素平衡圧である。水素平衡圧は、ニッケル水素電池の水素吸蔵合金に吸蔵される水素量と放出される水素量とが釣り合うときの水素分圧である。
【0026】
第1の風量算出部132は、二次電池を冷却する送風機2の回転部の回転数、送風機に供給された電流、及び送風機に供給された電圧のいずれかに基づき、送風機2が発生させた第1の風量を算出するプログラムである。より詳細には、第1の風量算出部132は、送風機2の回転部の回転数を取得する。そして、第1の風量算出部132は、送風機2の回転部の回転数と第1の風量との既知の対応関係に基づき、取得した回転数に対応する第1の風量を算出する。回転数と第1の風量との対応関係は、様々な回転数の送風機2が出力する第1の風量を測定することによって得ることができる。また、回転数と第1の風量との対応関係は、数式によって表すことでき、また、グラフ等のマップによって表すことができる。
【0027】
また、第1の風量算出部132は、送風機2に供給された電流又は電圧に基づき、第1の風量を算出することもできる。具体的には、第1の風量算出部132は、送風機2に供給された電流又は電圧の値を取得する。そして、第1の風量算出部132は、送風機2に供給された電流又は電圧の値と第1の風量との既知の対応関係に基づき、取得した電流又は電圧の値に対応する第1の風量を算出する。電流値又は電圧値と第1の風量との対応関係は、様々な大きさの電流又は電圧が供給された送風機2の第1の風量を測定することによって得ることができる。
【0028】
第2の風量算出部133は、内圧推定値算出部131によって算出された内圧推定値と、送風機2の回転部の回転数に基づき、1以上の二次電池を収容した容器内の風量である第2の風量を算出するプログラムである。第2の風量算出部133は、数式3に示す通り、二次電池の内圧の変化に起因する第2の風量の変化を示す風量変化率と、二次電池が膨張していない状態における容器内の風量である第3の風量とを乗算することにより、第2の風量を算出することができる。
【数3】
ここで、Qestは第2の風量である。Qequは第3の風量である。Corは風量変化率である。
【0029】
第3の風量算出部134は、送風機2の回転部の回転数に基づき、第3の風量を算出するプログラムである。第3の風量算出部134は、数式4に示す通り、送風機2の回転部の回転数と第3の風量の既知の対応関係に基づき、取得部130が取得した回転数に対応する第3の風量を算出することができる。
【数4】
ここで、Nは送風機2の回転部の回転数を示す。g(N)は、第3の風量を規定する近似式である。図3は、送風機2の回転部の回転数と第3の風量との関係を示す図である。送風機2の回転部の回転数と第3の風量との関係は、近似式g(N)によって定義できる。近似式g(N)は、送風機2の回転部の種々の回転数に基づく第3の風量を測定することによって導出することができる。
【0030】
風量変化率算出部135は、二次電池の内圧の変化に起因する第2の風量の変化を示す風量変化率を算出するプログラムである。風量変化率算出部135は、数式5に示す通り、二次電池の内圧と風量変化率の既知の対応関係に基づき、内圧推定値算出部131によって算出された内圧推定値に対応する風量変化率を算出することができる。
【数5】
ここで、f(p)は、風量変化率を規定する近似式である。図4は、二次電池の内圧と風量変化率との関係を示す図である。二次電池の内圧と風量変化率との関係は、近似式f(p)によって定義できる。近似式f(p)は、二次電池の種々の内圧に基づく風量変化率を測定することによって導出することができる。風量変化率は、二次電池が膨張していない状態の二次電池の内圧である基準内圧において1となる。
【0031】
補正値算出部136は、第1の風量算出部132によって算出された第1の風量と、第2の風量算出部133によって算出された第2の風量との差に基づき、内圧推定値算出部131によって算出された内圧推定値を補正するための補正値を算出するプログラムである。より詳細には、補正値算出部136は、数式6に示す通り、二次電池の内圧と正の相関関係を有する係数と、第1の風量から第2の風量を減算した値とを乗算することにより、補正値を算出することができる。
【数6】
ここで、Kは係数である。図5は、二次電池の内圧と係数Kとの関係を示す図である。図5に示す通り、二次電池の内圧と係数Kは、正の相関関係を有する。補正値算出部136は、二次電池の内圧と係数Kの既知の対応関係に基づき、内圧推定値算出部131によって算出された内圧推定値に対応する係数Kを採用することができる。
【0032】
内圧推定値補正部137は、補正値算出部136によって算出された補正値を用いて、内圧推定値算出部131によって算出された内圧推定値を補正するプログラムである。より詳細には、内圧推定値補正部137は、数式7に示す通り、内圧推定値に補正値を加算することにより、内圧推定値を補正することができる。
【数7】
ここで、pは補正前の内圧である。p’は補正後の内圧である。
【0033】
図6は、推定装置10が実行する処理の一例を示すフローチャートである。ステップS1では、取得部130が、送風機2に関する情報を取得する。ステップS2では、取得部130が、二次電池に関する情報を取得する。ステップS3では、第1の風量算出部132が、第1の風量Qmeansを算出する。ステップS4では、内圧推定値算出部131が、内圧推定値pを算出する。ステップS5では、第2の風量算出部133が、第2の風量Qestを算出する。ステップS6では、補正値算出部136が、補正値Corを算出する。ステップS7では、内圧推定値補正部137が、ステップS6で算出された補正値Corを用いて、ステップS4で算出された内圧推定値pを補正する。
【0034】
図7は、第2の風量Qestを算出する処理の一例を示すフローチャートである。ステップS11では、風量変化率算出部135が、風量変化率Corを算出する。ステップS12では、第3の風量算出部134が、第3の風量Qequを算出する。ステップS13では、第2の風量算出部133が、ステップS11で算出された風量変化率Corと、ステップS12で算出された第3の風量Qequを用いて、第2の風量Qestを算出する。
【0035】
上述した実施形態では、第1の風量算出部132は、二次電池を冷却する送風機2の回転部の回転数、送風機に供給された電流、及び送風機に供給された電圧のいずれかに基づき、送風機2が発生させた第1の風量を算出する。内圧推定値算出部131は、二次電池に関する情報に基づき、二次電池の内圧の推定値である内圧推定値を算出する。第2の風量算出部133は、内圧推定値算出部131によって算出された内圧推定値と、送風機2の回転数に基づき、1以上の二次電池を収容した容器内の風量である第2の風量を算出する。補正値算出部136は、第1の風量算出部132によって算出された第1の風量と、第2の風量算出部133によって算出された第2の風量との差に基づき、内圧推定値を補正するための補正値を算出する。内圧推定値補正部137は、補正値算出部136によって算出された補正値を用いて、内圧推定値算出部によって算出された内圧推定値を補正する。
【0036】
第2の風量は、1以上の二次電池が収容された容器内の風量であり、当該容器内の冷却風の流路の縮小及び拡張によって変化する。このような冷却風の流路の縮小及び拡張は、二次電池の内圧の変化によって生じた二次電池の膨張及び収縮に起因する。したがって、冷却風の流路の縮小及び拡張による影響を反映した第2の風量に基づいて補正値を算出し、当該補正値を用いて内圧推定値を補正することにより、このような二次電池の内圧の変化を反映した内圧推定値を導出することができる。そのため、二次電池の内圧の推定精度を向上させることができる。特に、本開示の技術は、内圧推定値を再帰的に使用して内圧を推定する場合でも、二次電池の内圧の推定精度を向上させることができる。このように二次電池の内圧の推定精度を向上させることにより、二次電池の内圧の上昇による二次電池の封止弁の開弁を事前に予測することができ、封止弁が開弁するのを防ぐことができる。
【0037】
上述した推定プログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、digital versatile disk(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、又はその他の形式の伝搬信号を含む。コンピュータには、ECUの他、PC(Personal Computer)、サーバ、CPU、MPU、FPGA、ASIC等の種々の装置が含まれる。
【0038】
本開示は上述した実施形態に限られたものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 二次電池パック
2 送風機
10 推定装置
11 通信I/F
12 記憶装置
13 演算装置
130 取得部
131 内圧推定値算出部
132 第1の風量算出部
133 第2の風量算出部
134 第3の風量算出部
135 風量変化率算出部
136 補正値算出部
137 内圧推定値補正部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7