(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089051
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】逆入力遮断クラッチ
(51)【国際特許分類】
F16D 41/08 20060101AFI20240626BHJP
【FI】
F16D41/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204168
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100207789
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 良平
(72)【発明者】
【氏名】畑中 和幸
(57)【要約】
【課題】従来技術と比較して製造コストの増加を抑制しつつ、耐久性を向上できる逆入力遮断クラッチを提供する。
【解決手段】逆入力遮断クラッチは、ハウジングと、入力部材と、出力部材と、一対の係合子5と、弾性部材6と、を備える。弾性部材6は、出力部材と係合子5との間で弾性的に挟持され、係合子5が被押圧面に近づくように係合子5を第一方向D1の外側に向かって付勢する。弾性部材6は、係合子5における凸部50の基端部に形成された隅部との接触を回避する回避部を有し、かつ凸部50の側面57に当接することにより弾性部材6の位置決めをする位置決め部63を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に被押圧面を有するハウジングと、
前記被押圧面よりも径方向の内側に設けられた入力側係合部を有し、前記被押圧面と同軸に配置される入力部材と、
前記被押圧面よりも前記径方向の内側かつ前記入力側係合部よりも前記径方向の内側に配置された出力側係合部を有し、前記被押圧面と同軸に配置される出力部材と、
前記被押圧面に対向する押圧面、前記入力側係合部と係合可能な入力側被係合部、及び前記出力側係合部と係合可能な出力側被係合部を有し、前記径方向に沿う第一方向に互いに相対移動可能な一対の係合子と、
を備え、
前記第一方向は一対の前記係合子の近接離間方向と一致する方向であり、
前記入力部材に回転力が入力されると、一対の前記係合子は、前記入力側係合部と前記入力側被係合部との係合に基づいて、前記第一方向の内側に向かって互いに近づくように移動し、かつ前記出力側係合部と前記出力側被係合部との係合に基づいて、前記回転力を前記出力部材に伝達し、
前記出力部材に回転力が逆入力されると、一対の前記係合子は、前記出力側係合部と前記出力側被係合部との係合に基づいて、前記第一方向の外側に向かって互いに離間するように移動し、前記被押圧面と前記押圧面とを摩擦係合させ、
前記係合子は、他方の前記係合子側に向かって突出する凸部を有し、
前記出力部材と前記係合子との間で弾性的に挟持され、前記係合子が前記被押圧面に近づくように前記係合子を前記第一方向の外側に向かって付勢する弾性部材を備え、
前記弾性部材は、前記係合子における前記凸部の基端部に形成された隅部との接触を回避する回避部を有し、かつ前記凸部の側面に当接することにより前記弾性部材の位置決めをする位置決め部を有する、
逆入力遮断クラッチ。
【請求項2】
前記凸部は、前記第一方向及び前記被押圧面の軸方向と直交する第二方向において互いに離間して一対設けられており、
前記弾性部材は、
一対の前記凸部の間に設けられ、平板状に形成される本体部と、
前記本体部と接続される前記位置決め部と、
前記本体部と接続され、前記本体部から前記第二方向の外側に向けて延びるとともに、前記凸部に対して前記軸方向の両側に配置される第二の位置決め部と、
を有する、
請求項1に記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項3】
前記回避部は、前記隅部の曲率半径よりも大きな曲率半径を有する湾曲形状に形成されており、
前記位置決め部は、前記回避部のうち前記凸部に近い側の端部に接続され、前記凸部の側面に当接する当接部を有する、
請求項1又は請求項2に記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項4】
前記当接部は、前記凸部の側面と面接触するように形成された平面部である、
請求項3に記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項5】
前記当接部は、前記位置決め部のうち当接する前記凸部と近い位置に設けられるとともに前記凸部の頂部よりも低い位置に設けられる端部である、
請求項3に記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項6】
前記当接部は、当接する前記凸部とは反対側に円弧中心を有する円弧状に形成された弧状部である、
請求項3に記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項7】
前記回避部は、曲率半径が互いに異なる複数の円弧を複合した形状となっている、
請求項1又は請求項2に記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項8】
前記位置決め部は、前記凸部の頂部よりも前記係合子の底面側に位置する、
請求項1又は請求項2に記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項9】
前記弾性部材は、プレス加工により形成されており、
前記プレス加工における打ち抜き工程による発生するバリの方向は、前記係合子の前記凸部の突出方向と一致する、
請求項1又は請求項2に記載の逆入力遮断クラッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆入力遮断クラッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駆動源などの入力機構に接続される入力部材と、減速機などの出力機構に接続される出力部材と、を備え、入力部材から出力部材への回転力の伝達を許可するとともに出力部材から入力部材への回転力の逆入力を遮断する逆入力遮断クラッチの構成が知られている。これらの逆入力遮断クラッチでは、逆入力遮断クラッチの性能を向上するための技術が種々提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、被押圧面を有する被押圧部材と、被押圧面の径方向内側において互いに同軸に設けられた入力部材及び出力部材と、正面視で入力部材及び出力部材の間に介在し、径方向に移動可能な一対の係合子と、を有する逆入力遮断クラッチの構成が開示されている。特許文献1に記載の技術によれば、出力部材に回転力が逆入力されると、係合子と出力部材との係合に基づき係合子が被押圧面に近づく方向に移動して被押圧面と摩擦係合することにより、出力部材に逆入力された回転力を遮断できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の従来技術においては、組み立て作業性及び逆入力遮断クラッチの動作性を確保する観点から、入力部材及び出力部材のいずれにも回転力が入力されていない中立状態で、出力部材と係合子との間に隙間が設けられている。このため、隙間に起因したがたつきが生じ、騒音や振動が発生するおそれがあった。
【0006】
このような課題への対策として、例えば出力部材と係合子との間に弾性部材を配置する方法がある。弾性部材は、係合子を径方向の外側(被押圧面側)に向かって弾性的に押し付ける。これにより逆入力遮断クラッチのがたつきを抑制することができる。また、弾性部材により係合子が常に径方向の外側に押し付けられるので、出力部材に回転力が逆入力された場合に係合子を確実に被押圧面に押圧させることができる。よって、逆入力をより効果的に遮断できる点においても、弾性部材を設けるメリットがある。
【0007】
図9は、従来技術における係合子5及び弾性部材906を組み合わせた状態の斜視図である。
図10は、
図9のX部を拡大した正面図及びその上面図である。従来技術の逆入力遮断クラッチ901にあっては、例えば
図9に示すように、係合子5の底面52に設けられた一対の凸部50の間に、全体が平板状に形成された弾性部材906が設けられている。弾性部材906の両端部には、弾性部材906の長手方向の内側に向かって凹む凹部991が設けられている。係合子5の凸部50がこの凹部991に入り込むことにより、係合子5に対する弾性部材906の第二方向D2(弾性部材の長手方向に沿う方向)及び軸方向(弾性部材の短手方向に沿う方向)への位置決めがなされる。
【0008】
しかしながら、上述の従来技術にあっては、
図10に示すように、凸部50と係合子5の底面52との接続部である凸部50の基端部に隅部58が存在する。このため、隅部58に弾性部材906が乗り上げることにより、設計時の想定位置と比べて弾性部材906が係合子5の底面52から離間した位置(
図10に示す例では、係合子5の底面52に対して上方に離間した位置)に配置される場合がある。弾性部材906が係合子5の底面52から離間した位置に配置されると、弾性部材906に作用するバネ荷重が想定値よりも大きくなる。その結果、弾性部材906が劣化し易くなり、弾性部材906の耐久性が低下するおそれがあった。そこで、弾性部材906の隅部58への乗り上げを防止する方法として、例えば隅部58の曲率半径R1を極力小さくするように加工する方法や、隅部58と対応する位置に、係合子5の内側に凹むように逃げ部992を形成する方法等が考えられる。しかしながらこのような加工を行う場合には、係合子5の加工が煩雑となるとともに加工コストが増加するおそれがあった。また、弾性部材906の乗り上げを防止する他の方法として、例えば一対の凸部50間の距離に対して弾性部材906の長手方向の長さを短く形成する方法が考えられるが、この場合には弾性部材906の位置が定まりにくくなるおそれがあった。
したがって、従来技術においては、逆入力遮断クラッチの製造に係るコストを低減しつつ、各構成部品(特に弾性部材)の耐久性を向上する点において改善の余地があった。
【0009】
そこで、本発明は、従来技術と比較して製造コストの増加を抑制しつつ、耐久性を向上できる逆入力遮断クラッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の第一の態様に係る逆入力遮断クラッチは、内周面に被押圧面を有するハウジングと、前記被押圧面よりも径方向の内側に設けられた入力側係合部を有し、前記被押圧面と同軸に配置される入力部材と、前記被押圧面よりも前記径方向の内側かつ前記入力側係合部よりも前記径方向の内側に配置された出力側係合部を有し、前記被押圧面と同軸に配置される出力部材と、前記被押圧面に対向する押圧面、前記入力側係合部と係合可能な入力側被係合部、及び前記出力側係合部と係合可能な出力側被係合部を有し、前記径方向に沿う第一方向に互いに相対移動可能な一対の係合子と、を備え、前記第一方向は一対の前記係合子の近接離間方向と一致する方向であり、前記入力部材に回転力が入力されると、一対の前記係合子は、前記入力側係合部と前記入力側被係合部との係合に基づいて、前記第一方向の内側に向かって互いに近づくように移動し、かつ前記出力側係合部と前記出力側被係合部との係合に基づいて、前記回転力を前記出力部材に伝達し、前記出力部材に回転力が逆入力されると、一対の前記係合子は、前記出力側係合部と前記出力側被係合部との係合に基づいて、前記第一方向の外側に向かって互いに離間するように移動し、前記被押圧面と前記押圧面とを摩擦係合させ、前記係合子は、他方の前記係合子側に向かって突出する凸部を有し、前記出力部材と前記係合子との間で弾性的に挟持され、前記係合子が前記被押圧面に近づくように前記係合子を前記第一方向の外側に向かって付勢する弾性部材を備え、前記弾性部材は、前記係合子における前記凸部の基端部に形成された隅部との接触を回避する回避部を有し、かつ前記凸部の側面に当接することにより前記弾性部材の位置決めをする位置決め部を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の逆入力遮断クラッチによれば、従来技術と比較して製造コストの増加を抑制しつつ、耐久性を向上できる逆入力遮断クラッチを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態に係る逆入力遮断クラッチの断面図。
【
図4】第1実施形態に係る係合子及び弾性部材を組み合わせた状態の斜視図。
【
図7】第2実施形態に係る係合子と弾性部材の第二方向移動規制部との位置関係を示す拡大図。
【
図8】第3実施形態に係る係合子と弾性部材の第二方向移動規制部との位置関係を示す拡大図。
【
図9】従来技術における係合子及び弾性部材を組み合わせた状態の斜視図。
【
図10】
図9のX部を拡大した正面図及びその上面部。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下の説明において、軸方向、径方向、および周方向とは、特に断らない限り、逆入力遮断クラッチ1の中心軸線Cの軸方向、径方向、および周方向をいう。
【0014】
(第1実施形態)
(逆入力遮断クラッチ)
図1は、第1実施形態に係る逆入力遮断クラッチ1の断面図である。
図2は、
図1のII-II線に沿う断面図である。
図3は、
図1のIII-III線に沿う断面図である。
図1から
図3に示すように、逆入力遮断クラッチ1は、入力部材2と、出力部材3と、ハウジング4と、1対の係合子5と、弾性部材6と、を備える。逆入力遮断クラッチ1は、入力部材2に入力される回転力を出力部材3に伝達する。一方、逆入力遮断クラッチ1は、出力部材3に逆入力される回転力を遮断して入力部材2に伝達しない、またはその一部のみを入力部材2に伝達して残部を遮断する逆入力遮断機能を有する。
【0015】
(入力部材)
図1に示すように、入力部材2は、不図示の電動モータなどの入力機構に接続される。入力部材2には、入力機構からの回転力が入力される。
図1から
図3に示すように、本実施形態において、入力部材2は、入力軸本体21と、一対の腕部23と、を有する。入力軸本体21は、軸方向の入力機構側に設けられている。入力軸本体21は、中心軸線Cを中心とする円柱状(又は円筒状)に形成されている。以下の説明において、入力部材2のうち入力機構と接続される側を軸方向の第一側といい、その反対を軸方向の第二側という場合がある。
【0016】
一対の腕部23は、入力軸本体21から軸方向の第二側に向かって延びている。腕部23は、入力軸本体21と一体形成されている。腕部23は、入力軸本体21の径方向の両端に一対設けられている。よって腕部23は、入力軸本体21よりもやや径方向の外側にオフセットした位置に設けられている。
図2に示すように、腕部23は、軸方向から見て、一辺が湾曲した台形状に形成されている。具体的に腕部23は、径方向の内側に面する入力側係合部25と、径方向の外側に面する曲面部26と、入力側係合部25及び曲面部26の端部同士を接続する2つの側面部27と、を有する。曲面部26は、中心軸線Cを中心とする円弧状に形成されている。
【0017】
腕部23は、後述する係合子5の数に応じて複数設けられる。本実施形態では、一対の係合子5が設けられることに応じて、一対の腕部23が設けられている。なお、腕部23の数は2個に限られず、係合子5の数に応じて、腕部23の数を1個とする、あるいは、3個以上としてもよい。
【0018】
(出力部材)
図1に示すように、出力部材3は、不図示の減速機などの出力機構に接続され、回転力(回転トルク)を出力する。出力部材3は、入力部材2と同軸上に配置されている。
図1から
図3に示すように、出力部材3は、出力軸本体31と、挿入部32と、を有する。出力軸本体31は、軸方向の出力機構側(軸方向の第二側)に設けられている。出力軸本体31は、中心軸線Cを中心とする円柱状(又は円筒状)に形成されている。
【0019】
挿入部32は、出力軸本体31の軸方向の第一側の端部から軸方向の第一側に向かって延びている。挿入部32は、出力軸本体31と一体形成されている。挿入部32は、後述する一対の係合子5間に挿入される部分であり、入力部材2の一対の腕部23よりも径方向内側に配置されている。
図1から
図3に示すように、挿入部32のうち一対の係合子5間に挿入される基端部(例えば止め輪39よりも軸方向の第二側に位置する部分)は、出力軸本体31よりも外形が小さい板状に形成されている。挿入部32の先端部(例えば止め輪39よりも軸方向の第一側に位置する部分)は、円柱状に形成されている。挿入部32の先端部は、ベアリング46を介して入力部材2に相対回転可能に嵌合している。ベアリング46は、例えば転がり軸受や滑り軸受等である。挿入部32の基端部における外周面は、挿入部32の厚み方向(
図2の上下方向)の両側にそれぞれ面する一対の出力側係合部35と、一対の出力側係合部35の端部同士を接続する一対の側面36と、を有する。
【0020】
各出力側係合部35は、挿入部32の短軸方向に対して直交する平坦面により構成されている。各出力側係合部35は、一対の係合子5にそれぞれ面している。出力側係合部35は、入力部材2の平面部74よりも径方向の内側に設けられている。一対の側面36は、出力側係合部35の両側にそれぞれ配置されている。側面36は、緩やかな円弧状に形成されている。なお、側面36は、出力側係合部35の端部同士を接続する平面状に形成されてもよい。
【0021】
挿入部32の出力側係合部35及び側面36は、後述する係合子5の数に応じて複数設けられる。本実施形態では、一対の係合子5が設けられることに応じて、一対の出力側係合部35及び側面36が設けられている。なお、出力側係合部35の数は2個に限られず、係合子5の数に応じて、出力側係合部35の数を1個とする、あるいは、3個以上としてもよい。
【0022】
(ハウジング)
ハウジング4は、中空の円盤状に形成されている。ハウジング4は、図示しない他の部材に固定されて、その回転が拘束されている。ハウジング4は、入力部材2及び出力部材3と同軸上に配置されている。ハウジング4は、入力部材2、出力部材3、及び一対の係合子5を収容している。ハウジング4は、第一収容孔41と、第二収容孔42と、被押圧面40と、を有する。
【0023】
図1に示すように、第一収容孔41は、ハウジング4を軸方向に貫通している。第一収容孔41は、中心軸線Cと同軸となるように形成されている。第一収容孔41は、ハウジング4のうち軸方向の第二側に設けられている。第一収容孔41の内側には、出力部材3の出力軸本体31が収容されている。第一収容孔41の内径は、出力部材3における出力軸本体31の外形よりも大きい。第一収容孔41は、ベアリング45を介して出力部材3を回転可能に保持している。
【0024】
第二収容孔42は、ハウジング4を軸方向に貫通している。第二収容孔42は、中心軸線Cと同軸となるように形成されている。第二収容孔42は、第一収容孔41よりも軸方向の第一側に設けられている。第二収容孔42の内径は、第一収容孔41の内径よりも大きい。第二収容孔42の内側には、入力部材2の腕部23が収容されている。第二収容孔42の内側であって腕部23のさらに内側には、出力部材3の挿入部32が収容されている。第二収容孔42の内径は、入力部材2における一対の腕部23の外形よりも大きい。第二収容孔42の内側では、ハウジング4に対して入力部材2が相対回転可能に収容されている。
【0025】
第二収容孔42の内周面は、被押圧面40とされている。よって、被押圧面40は、中心軸線Cと同軸となるように形成されている。換言すれば、被押圧面40は、入力部材2及び出力部材3と同軸に設けられている。また、被押圧面40の径方向内側には、入力部材2の入力側係合部25及び出力部材3の出力側係合部35が設けられている。
【0026】
(係合子)
図2及び
図3に示すように、一対の係合子5は、半円形状に構成されており、ハウジング4の径方向内側に配置されている。一対の係合子5は、径方向に沿う第一方向D1(
図2及び
図3の矢印D1参照)において互いに近接離間するように移動可能に構成されている。第一方向D1は、ハウジング4の径方向に沿う方向であって、かつ一対の係合子5の対向方向である。また、径方向に沿う方向であって第一方向D1と直交する方向を第二方向D2(
図2及び
図3の矢印D2参照)という場合がある。第一方向D1及び第二方向D2のうち径方向の外側を向く方向を第一方向D1の外側や第二方向D2の外側等と言う場合がある。
一対の係合子5はそれぞれ、押圧面51と、底面52と、入力側被係合部55と、出力側被係合部56と、一対の凸部50と、を有する。
【0027】
押圧面51は、ハウジング4の被押圧面40を押し付ける径方向外側の面であり、円弧状の凸面となっている。なお、被押圧面40と面する係合子5の外周面の一部が押圧面51とされていてもよい。押圧面51は、逆入力遮断クラッチ1のロック状態(出力部材3からの逆入力が遮断された状態)において、被押圧面40を押圧する。押圧面51の曲率半径は、被押圧面40の曲率半径以下となっている。押圧面51は、1個の係合子5において2箇所設けられ、楔効果により係合子5と被押圧面40間の摩擦係合力が大きくなるように形成されている。2個の押圧面51は、互いに係合子5の周方向に離間した位置に設けられている。なお、押圧面51は、係合子5の外周面全体又は一部によって直接構成してもよいし、係合子5のその他の部分に比べて摩擦係数の大きい表面性状を有するように形成してもよい。例えば押圧面51は、係合子5に貼着や接着などにより固定した摩擦材によって構成してもよい。係合子5の各押圧面51は、ハウジング4の径方向外側を向いている。
【0028】
係合子5の底面52は、押圧面51より径方向の内側に設けられている。底面52は、詳しくは後述する係合子5の出力側被係合部56とともに、半円形状の係合子5の直線部分を形成している。本実施形態において、底面52は、後述する一対の凸部50を除いてほぼ平坦面状に形成されている。一対の係合子5の底面52は、径方向において互いに対向している。
一対の係合子5をハウジング4の径方向内側に配置した状態で、被押圧面40と押圧面51との間、および、一対の底面52と出力部材3の間の少なくとも一方に隙間が存在するように、被押圧面40の内径寸法と係合子5の外形寸法が設定されている。
【0029】
図2及び
図3に示すように、入力側被係合部55は、係合子5の正面視における係合子5の中央部を軸方向に貫通する孔である。入力側被係合部55は、第二方向D2に長い長孔である。入力側被係合部55には、入力部材2の腕部23が挿入されている。入力側被係合部55は、腕部23と係合する。入力側被係合部55は、入力部材2の腕部23を緩く挿入できる大きさを有している。具体的に、入力側被係合部55の内側に入力部材2の腕部23を挿入した状態で、腕部23と入力側被係合部55の内面との間に隙間が存在するように形成されている。よって、腕部23は、入力側被係合部55(つまり係合子5)に対して入力部材2の回転方向への微小な変位が可能であり、係合子5は、腕部23に対して第一方向D1への微小な変位が可能である。
【0030】
図2及び
図3(特に
図3)に示すように、出力側被係合部56は、半円形状に形成された係合子5の直線部分(底面52)のうち、第二方向D2の中央部近傍に位置する部分である。出力側被係合部56は、一対の凸部50よりも第二方向D2の内側に設けられている。出力側被係合部56は、入力側被係合部55よりも径方向(第一方向D1)の内側に設けられている。出力側被係合部56には、出力部材3の挿入部32が係合する。出力側被係合部56は、底面52と連続する平坦面状に形成されている。本実施形態では、出力側被係合部56を含む一対の凸部50の間の部分がフラットに形成されている。
【0031】
図4は、第1実施形態に係る係合子5及び弾性部材6を組み合わせた状態の斜視図である。
図3及び
図4に示すように、凸部50は、係合子5の底面52から他方の係合子5側に向かって突出するように形成されている。凸部50は、第二方向D2に離間して一対設けられている。一対の凸部50は、第二方向D2において、底面52の最端部よりも内側かつ出力側被係合部56よりも外側に設けられている。第二方向D2において一対の凸部50の間に位置する底面52と、第二方向D2において一対の凸部50より外側に位置する底面52と、は、第一方向D1に関する高さが同等の高さとなっている。
【0032】
本実施形態において凸部50は、第一方向D1を高さ方向とする四角柱状に形成されている。より詳細には、凸部50は、底面52から第一方向D1に延びる4個の側面57と、底面52から離れた側面57の端部同士を接続する頂部59と、を有する。4個の側面57のうち軸方向に面する2個の側面57は、係合子5の軸方向を向く端面と面一となっている。4個の側面57のうち残りの2個は、第二方向D2の内側及び外側にそれぞれ面している。頂部59は、第一方向D1における他方の係合子5側に面している。また、凸部50のうち第二方向D2に面する2個の側面57と底面52との間、すなわち凸部50の基端部には、隅部58(
図6参照)が形成されている。
【0033】
一対の係合子5のうち一方の係合子5及び他方の係合子5にそれぞれ設けられた凸部50は、互いに対応する位置に設けられて第一方向D1に対向している。各凸部50の突出高さは、例えば係合子5のロック解除状態(入力部材2から出力部材3への回転力の伝達が許容された状態)において第一方向D1に対向する凸部50同士が第一方向D1に隙間を有して対向するような高さに設定されている(
図3参照)。本実施形態において、凸部50の第一方向D1に沿う突出高さは、出力軸の挿入部32における短軸寸法の1/2よりもやや小さい程度の寸法となっている。
【0034】
図1及び
図3に示すように、逆入力遮断クラッチ1が組み立てられた状態において、入力部材2の腕部23は、一対の係合子5のそれぞれの入力側被係合部55に軸方向から挿入され、かつ、出力部材3の挿入部32は、一対の係合子5の出力側被係合部56同士の間に軸方向から挿入される。すなわち、一対の係合子5は、それぞれの出力側被係合部56により、出力部材3の挿入部32を径方向外側から挟むように配置される。
【0035】
図1に示すように、係合子5の軸方向の両側には、軸方向における各部材の位置決めを行うための端板38が設けられる。また、係合子5に対して軸方向の第一側には、各部材の位置決めを行うための止め輪39が設けられている。位置決めする機能の他に、例えば係合子5と出力部材3及び入力部材2との接触を防止して摩耗を抑制する機能を有するように端板38等の部品を設けてもよい。
【0036】
(弾性部材)
図5は、第1実施形態に係る弾性部材6の斜視図である。
図2及び
図4に示すように、弾性部材6は、係合子5と出力部材3との間に弾性的に挟持されて配置されている。弾性部材6は、例えば板バネである。弾性部材6は、係合子5を径方向(第一方向D1)の外側、すなわち被押圧面40(
図2参照)に近づく方向に向かって付勢可能に設けられている。具体的に、弾性部材6は、係合子5及び出力部材3に挟持されて荷重を受けることにより変形可能に形成されており、変形時の復元力により係合子5を第一方向D1の外側へ向かって付勢する。なお、
図2及び
図4では、一対の係合子5が互いに最も近づいた状態の弾性部材6の形状を表している。一方、
図5では、一対の係合子5が互いに最も離れ、弾性部材6に作用する荷重が最も小さい状態(以下、最小負荷状態という場合がある。)における弾性部材6の形状を表している。本実施形態において、弾性部材6は、最小負荷状態であっても係合子5を付勢する。つまり、弾性部材6は常に係合子5を付勢するように形成されている。
【0037】
図4及び
図5に示すように、弾性部材6は、平板状に形成される本体部61と、本体部61と接続される軸方向移動規制部62(請求項の第二の位置決め部)と、第二方向移動規制部63(請求項の位置決め部)と、を有する。
本体部61は、一対の凸部50の間に設けられる部分であり、最小負荷状態において係合子5の底面52とほぼ平行な平板矩形状に形成されている。平面視において本体部61の中央部には、本体部61の外形よりも一回り小さい矩形状の貫通孔60が設けられている。貫通孔60は、本体部61を弾性部材6の厚み方向に貫通している。よって本体部61は、平面視で矩形枠状に形成されている。軸方向に沿う本体部61の幅寸法は、軸方向に沿う係合子5の厚み寸法よりも大きい。貫通孔60の軸方向に沿う幅寸法は、係合子5の軸方向に沿う厚み寸法と同等となっている。よって、軸方向における本体部61の両端部は、係合子5の端面よりも軸方向の外側に張り出している。
【0038】
軸方向移動規制部62は、本体部61の長手方向の両側から第二方向D2の外側に向けてそれぞれ延びている。本実施形態において、軸方向移動規制部62は、本体部61から第二方向D2の一方側へ向かって延びるとともに互いに短手方向(軸方向)に離間する一対の軸方向移動規制部62と、本体部61から第二方向D2の他方側へ向かって延びるとともに互いに短手方向(軸方向)に離間する一対の軸方向移動規制部62と、の合計4個設けられている。係合子5の一対の凸部50間に弾性部材6が配置された状態で、軸方向移動規制部62は、凸部50に対して軸方向の両側に配置される。軸方向移動規制部62は、本体部61と平行な平板状に形成されている。軸方向移動規制部62は、本体部61と一体的に設けられている。
【0039】
第二方向移動規制部63は、係合子5の一対の凸部50間に弾性部材6が配置された状態で、凸部50の基端部に形成された隅部58(
図6参照)との接触を回避する回避部65を有し、かつ凸部50の側面57に当接することにより弾性部材6の第二方向D2の位置決めをする。
具体的に、第二方向移動規制部63は、本体部61から第二方向D2の一方側及び他方側にそれぞれ延びるように設けられる。つまり第二方向移動規制部63は一対設けられている。第二方向移動規制部63は、弾性部材6の短手方向(軸方向)において一対の軸方向移動規制部62の間に設けられている。
【0040】
図6は、
図3のIV部拡大図である。
図5及び
図6に示すように、各第二方向移動規制部63は、本体部61と接続されており、本体部61と一体的に設けられている。各第二方向移動規制部63は、回避部65と、当接部66と、を有する。
【0041】
回避部65は、本体部61と接続されている。回避部65は、本体部61から凸部50の突出方向と同じ方向に向かって突出するように屈曲されている。
図6に示すように、回避部65は、係合子5の凸部50の隅部58における曲率半径R1よりも大きな曲率半径R2を有する湾曲形状に形成されている(R2>R1)。本実施形態において、回避部65は、曲率半径が互いに異なる複数の円弧を複合した形状となっている。このとき、回避部65を構成する複数の円弧のうち全ての円弧の曲率半径が、隅部58の曲率半径R1よりも大きくなるように設定されていることが好ましい。
【0042】
当接部66は、回避部65の先端部(本体部61と接続される側とは反対側の端部)と接続されている。当接部66は、回避部65と一体的に設けられている。本実施形態において、当接部66は、回避部65の先端部からさらに凸部50の突出方向(
図6における上方)に向かって延びている。当接部66は、凸部50の側面57に当接する。本実施形態の当接部66は、凸部50の側面57と面接触するように形成された平面部74となっている。換言すれば、当接部66は、凸部50の側面57とほぼ平行となるように形成されている。よって、当接部66が凸部50の側面57と接触することにより、弾性部材6の第二方向D2への移動が規制され、弾性部材6を第二方向D2について位置決めすることが可能となる。さらに、係合子5の一対の凸部50間に弾性部材6が配置された状態で、当接部66のうち最も底面52から離れた先端部(
図6における当接部66の上端部)は、凸部50の頂部59よりも係合子5の底面52側に位置する。よって、弾性部材6の第二方向移動規制部63は、第一方向D1において凸部50よりも外側に突出しない高さに形成されている。
【0043】
ここで、
図6に示すように、一対の凸部50のうち第二方向D2の内側を向く側面57同士の距離を凸部間距離L1とし、弾性部材6の当接部66のうち凸部50と対向する面同士の距離を当接部間距離L2とする。本実施形態において、当接部間距離L2は、凸部間距離L1よりもわずかに小さい値となるように形成されている(L2<L1)。なお、当接部間距離L2とは、例えば弾性部材6を一対の凸部50間に配置する前の状態(無負荷状態)での当接部66間の距離である。
【0044】
図5に示すように、上述の弾性部材6は、例えばプレス加工等により形成されている。具体的には、板状の部材から弾性部材6をパンチにより打ち抜く打ち抜き工程と、打ち抜き工程で発生したバリ80を取るためのバレル研摩工程と、第二方向移動規制部63を形成するための曲げ工程と、を実施することで弾性部材6が形成される。バレル研摩工程の後には、バリ80があった部分に、形状崩れや盛り上がりによるエッジ部80が残る場合がある(
図5では、バリ80又はエッジ部80を同一の符号で表示し、かつ誇張して表示している。)。このとき、打ち抜き工程で発生したバリ80の突出方向とバレル研摩工程後に残ったエッジ部80の突出方向とは同一である。さらに、バレル研摩工程後に残ったエッジ部80(すなわち、バリ80)の突出方向が、係合子5の凸部50の突出方向と一致するように形成される。つまり本実施形態においては、エッジ部80(バリ80)の発生方向と、第二方向移動規制部63の突出方向と、が一致するように曲げ工程における曲げ加工を行うことにより弾性部材6が形成される。そして、弾性部材6の全周にエッジ部80が発生した場合には、弾性部材6のうち出力部材3と当接する第二方向D2中央部のエッジ部80を少なくとも除去する。弾性部材6のうち出力部材3と当接する第二方向D2中央部以外の部分は、他の部品と接触しない。よって、弾性部材6の第二方向D2中央部のみエッジ部80の処理を行うことで、エッジ部80の除去に係る手間を削減しつつ、エッジ部80の発生による機能性への影響を抑制することが可能である。
【0045】
(逆入力遮断クラッチの動作)
次に、本実施形態の逆入力遮断クラッチ1の動作について
図2を参照しながら説明する。
まず、入力部材2に入力機構から回転力が入力された場合について説明する。入力部材2に回転力が入力されると、入力側被係合部55の内側で、入力部材2の腕部23が中心軸線Cを中心として入力部材2の回転方向(例えば、反時計方向)に回転する。すると、腕部23における入力側係合部25と側面部27との間の角部(
図2のポイントP1参照)が入力側被係合部55の内面を径方向の内側に向けて押圧し、一対の係合子5を、被押圧面40から離れる方向にそれぞれ移動させる。つまり、一対の係合子5は、入力側被係合部55を介して入力部材2からの回転力が作用することにより、径方向の内側に向かって互いに近接するように移動する。具体的に、
図2の上側に位置する係合子5を下方に移動させ、
図2の下側に位置する係合子5を上方に移動させる。これにより、一対の係合子5の底面52が互いに近づく方向に移動し、一対の出力側被係合部56が出力部材3の挿入部32を径方向の両側から挟持する。
【0046】
これにより、出力部材3における挿入部32の出力側係合部35と係合子5の底面52とが平行となり、挿入部32と一対の出力側被係合部56とをがたつきなく係合させる。よって、入力部材2に入力された回転力は、一対の係合子5を介して出力部材3に伝達され、出力部材3から出力される。
なお、入力部材2を時計方向に回転させた場合についても、同様の動作が行われる。つまり、本実施形態の逆入力遮断クラッチ1は、入力部材2に回転力が入力されると、入力部材2の回転方向に関係なく、一対の係合子5を、被押圧面40から離れる方向にそれぞれ移動させる。そして、入力部材2の回転方向にかかわらず、入力部材2に入力された回転力を、一対の係合子5を介して、出力部材3に伝達する。
【0047】
次に、出力部材3に出力機構から回転力が逆入力された場合を説明する。出力部材3に回転力が逆入力されると、出力部材3の挿入部32が、一対の出力側被係合部56同士の内側で、出力部材3の回転方向(例えば、反時計方向)に回転する。すると、挿入部32の出力側係合部35及び側面36との間の角部(
図2のポイントP2参照)が出力側被係合部56を径方向の外側に向けて押圧する。加えて、挿入部32と出力側被係合部56との間に挟持された弾性部材6に生じている復元力により、弾性部材6は、係合子5の出力側被係合部56をさらに径方向の外側に向けて押圧する。これにより、一対の係合子5を被押圧面40に近づく方向にそれぞれ移動させる。つまり、一対の係合子5は、出力部材3と出力側被係合部56との係合に基づいて、径方向の外側に向かって互いに離間するように移動する。具体的に、
図2の上側に位置する係合子5を上方に移動させ、
図2の下側に位置する係合子5を下方に移動させる。これにより、一対の係合子5のそれぞれの押圧面51を、ハウジング4の被押圧面40に対して押し付ける。このとき、押圧面51と被押圧面40とは、押圧面51の周方向に関する全範囲または少なくとも一部で摩擦係合する。
【0048】
この結果、出力部材3に逆入力された回転力が、不図示の他の部材に固定されたハウジング4に伝わることで完全に遮断されて入力部材2に伝達されないか、或いは、出力部材3に逆入力された回転力の一部のみが入力部材2に伝達され残部が遮断される。
【0049】
出力部材3に逆入力された回転力を完全に遮断して入力部材2に伝達されないようにするには、例えば押圧面51が被押圧面40に対して摺動(相対回転)しないように、一対の係合子5を挿入部32とハウジング4との間で突っ張らせ、出力部材3をロックする。これに対し、出力部材3に逆入力された回転力のうちの一部のみが入力部材2に伝達され残部が遮断されるようにするには、例えば押圧面51が被押圧面40に対して摺動するように、一対の係合子5を挿入部32とハウジング4との間で突っ張らせ、出力部材3を半ロックする。出力部材3が半ロックした状態でさらに出力部材3に回転力が逆入力されると、一対の係合子5が、出力部材3の挿入部32と出力側被係合部56との係合に基づいて、押圧面51を被押圧面40に対して摺動させつつ、中心軸線Cを中心として回転する。一対の係合子5が回転すると、入力側被係合部55の内面が入力部材2の腕部23の径方向内側の面を周方向(回転方向)に押圧して、入力部材2に回転力の一部が伝達される。
【0050】
本実施形態の逆入力遮断クラッチ1は、上述の動作が可能となるように、各構成部材間の隙間の大きさが調整されている。
例えば、出力部材3に回転力が逆入力されることによって係合子5の押圧面51が被押圧面40に接触した状態(ロック状態)において、入力部材2が中立位置に位置する。入力部材2の中立位置とは、腕部23の入力側係合部25が入力側被係合部55と平行となる位置である。換言すれば、腕部23の入力側係合部25と入力側被係合部55の内面との間に、出力部材3の挿入部32の角部(ポイントP2)が出力側被係合部56を押圧することに基づいて押圧面51が被押圧面40を押圧することを許容する隙間が存在するようにしている。これにより、出力部材3に回転力が逆入力された場合に、係合子5が径方向の外側に移動するのを腕部23によって阻止されることがないようにしている。さらに、押圧面51が被押圧面40に接触した後も、押圧面51と被押圧面40との接触部に作用する面圧が、出力部材3に逆入力された回転力の大きさに応じて変化するようにすることで、出力部材3のロックまたは半ロックが適正に行われるようにしている。
【0051】
特に本実施形態の逆入力遮断クラッチ1では、弾性部材6を設けることにより、上述した出力部材3をロックする動作をより確実に実施可能となるように形成されている。すなわち、例えば弾性部材6を有しない場合には、出力部材3から回転力が逆入力された際に、出力部材3は係合子5に力を伝達するが、係合子5が径方向外側に移動せず、力を入力部材2に伝達してしまいロックされない可能性がある。これに対して本実施形態の構成では、弾性部材6を設けることにより、係合子5を径方向外側に移動しやすくし、確実にロックさせることが可能となる。また、出力部材3から回転力が逆入力されたときに、早い段階で押圧面51と被押圧面40とが係合し易くなるとともに、一対の係合子5が挿入部32とハウジング4との間で突っ張る力を大きくし、押圧面51と被押圧面40との接触部に作用する面圧が大きくなる。その結果、押圧面51が被押圧面40に対して摺動(相対回転)し難くなり、ロックの確実性を高めることが可能である。
なお、例えば弾性部材6の弾性力を弱めることにより、出力部材3が半ロックするように調整してもよい。
【0052】
(作用、効果)
本実施形態の逆入力遮断クラッチ1によれば、逆入力遮断クラッチ1は、出力部材3と係合子5との間で弾性的に挟持される弾性部材6を有する。弾性部材6の付勢力により、各部品同士の隙間に起因したがたつきの発生を抑制できる。またこれにより、がたつきの発生による騒音や振動の発生をも抑制できる。弾性部材6は、係合子5が被押圧面40に近づくように係合子5を径方向外側に向かって付勢する。これにより、出力部材3から回転力が逆入力された場合に、係合子5が径方向の外側に移動し易くなる。よって、回転力が逆入力された場合に、より確実に係合子5の回転をロックすることができる。
弾性部材6の第二方向移動規制部63は、凸部50の側面57に当接するように形成される。これにより、係合子5に対する弾性部材6の長手方向(第二方向D2)の位置決めができる。第二方向移動規制部63は、係合子5の隅部58との接触を回避する回避部65を有するので、弾性部材6の隅部58への乗り上げを抑制できる。これにより、弾性部材6に作用する荷重の大きさを安定させることができる。よって、弾性部材6に想定値以上の荷重が作用することを抑制し、弾性部材6の劣化を抑制することにより、弾性部材6の耐久性を向上できる。また、隅部58への乗り上げを抑制できるので、従来技術と比較して隅部58の曲率半径R1を大きく形成することができる。これにより、例えば隅部58を極力小さく形成したり、逃げ部992(
図10参照)を形成する従来技術と比較して、係合子5の製造を容易にできる。よって、係合子5の製造に係るコストを削減できる。
したがって、従来技術と比較して製造コストの増加を抑制しつつ、耐久性を向上できる逆入力遮断クラッチ1を提供できる。
【0053】
弾性部材6は、平板状の本体部61と、第二方向移動規制部63と、軸方向移動規制部62と、を有する。軸方向移動規制部62は、本体部61から第二方向D2の外側に向けて延びるとともに、凸部50に対して軸方向の両側に配置される。これにより、係合子5に対する弾性部材6の軸方向への位置決めができる。弾性部材6を板バネ等の平板状の部材で形成することができるので、弾性部材6を容易に形成できる。よって、板バネの製造に係るコストの増加を抑えることができる。
【0054】
第二方向移動規制部63は、回避部65と、当接部66と、を有する。回避部65は、係合子5の凸部50における隅部58の曲率半径R1よりも大きな曲率半径R2を有する湾曲形状に形成される。これにより、弾性部材6の第二方向移動規制部63が隅部58と接触することを抑制できる。よって、弾性部材6の隅部58への乗り上げを抑制し、弾性部材6に作用する荷重の大きさを安定させることができる。また、例えば板バネの一部を曲げ加工することにより回避部65を形成できるので、回避部65を設けるために新たな部品を追加する必要が無い。よって、弾性部材6の第二方向移動規制部63(特に回避部65)を容易に形成できる。さらに、回避部65により隅部58への乗り上げが抑制できるので、弾性部材6と係合子5の凸部50との位置関係に関する自由度を高めることができる。例えば従来技術のように、一対の凸部50の間の距離に比べて凸部50間に位置する弾性部材6の第二方向D2の長さを極端に短くする必要が無い。よって、弾性部材6の第二方向D2への位置ずれを抑制し、弾性部材6に作用する荷重の大きさを安定させることができる。
【0055】
当接部66は、回避部65に接続され、凸部50の側面57に当接する。当接部66が凸部50の側面57に当接することにより、係合子5に対する弾性部材6の第二方向D2の位置決めができる。当接部66は、回避部65と同様に、例えば板バネの一部を曲げ加工することにより形成される。よって、簡素な構成により係合子5に対する位置決めが可能な弾性部材6を形成できる。したがって、コストの増加を抑えつつ、隅部58への乗り上げの抑制及び係合子5に対する容易な位置決めを実現できる。
【0056】
当接部66は、凸部50の側面57と面接触するように形成された平面部74とされている。当接部66が平面となっているので、弾性部材6の当接部66と係合子5の凸部50とを安定的に当接させることができる。よって、第二方向D2において係合子5に対する弾性部材6の位置ずれをより効果的に抑制できる。
【0057】
回避部65は、曲率半径が互いに異なる複数の円弧を複合した形状となっている。これにより、回避部65の形状の自由度を高めつつ容易に隅部58への接触を回避させることができる。さらに、隅部58の曲率半径R1を大きく形成した場合であっても、隅部58を回避するような形状の回避部65を容易に形成できる。よって、弾性部材6の汎用性を高めることができる。
【0058】
弾性部材6の第二方向移動規制部63は、凸部50の頂部59よりも係合子5の底面52側に位置する。これにより、弾性部材6が凸部50よりも上方に飛び出さないので、一対の係合子5にそれぞれ設けられた一対の弾性部材6同士が干渉することを抑制できる。特に、弾性部材6が変形した状態であっても第二方向移動規制部63が凸部50より飛び出さないように形成することで、より安定的に弾性部材6を保持できる。よって、弾性部材6に作用する荷重の大きさを安定させることができる。
【0059】
弾性部材6はプレス加工により形成され、プレス加工の打ち抜き工程で発生するバリ80又はその後のバレル研摩工程で発生するエッジ部80の突出方向と、係合子5の凸部50の突出方向と、が一致するように形成される。ここで、弾性部材6のうち凸部50の突出方向とは反対側の面(弾性部材6の裏面)には、長手方向のほぼ全体に亘って係合子5が接触又は干渉可能なほど近接する。このため、弾性部材6の裏面に向かってエッジ部80(バリ80、以下同様)が突出する場合には、弾性部材6のほぼ全体に亘ってエッジ部80を除去する必要がある。特に湾曲形状に形成された第二方向移動規制部63のエッジ部80を除去する必要があるので、作業が煩雑となり易い。一方、弾性部材6のうち凸部50の突出方向を向く面(弾性部材6の表面)には、長手方向の中央部においてのみ出力部材3が当接する。このため、弾性部材6の表面にエッジ部80が生じた場合には、出力部材3と当接する本体部61の中央部のみエッジ部80を除去すればよい。よって、弾性部材6の裏面にエッジ部80が形成される場合と比較して、エッジ部80の除去に係る作業を簡素化できる。特に第二方向移動規制部63のエッジ部80を除去しなくても他部品とエッジ部80との干渉を抑制できるので、弾性部材6を容易に形成できる。よって、弾性部材6の形成に係る手間及びコストを削減できる。
【0060】
弾性部材6の当接部間距離L2は、凸部間距離L1よりもわずかに小さい値となるように形成されている。これにより、係合子5に対して弾性部材6を容易に組み付けることができる。特に、当接部間距離L2と凸部間距離L1との差が小さくなるほど、弾性部材6から係合子5へ作用する力の第二方向D2における位置(作用点)が左右均等になる。よって、より均等に力を分散できる点で、当接部間距離L2と凸部間距離L1との差が小さいほど好ましい。
【0061】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述した第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して適宜説明を省略する。なお、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
図7は、第2実施形態に係る係合子5と弾性部材6の第二方向移動規制部263との位置関係を示す拡大図である。
図7は、上述した第1実施形態の
図6に対応する箇所の拡大図である。本実施形態では、弾性部材6における第二方向移動規制部263の形状が上述した第1実施形態と相違している。
【0062】
第2実施形態において、弾性部材6の第二方向移動規制部263は、回避部265と、当接部266と、を有する。回避部265は、第1実施形態と同様、本体部61から凸部50の突出方向と同じ方向に向かって突出するように屈曲されている。第2実施形態における回避部265の曲率半径R3は、第1実施形態における回避部65の曲率半径R2よりも大きい。なお、第2実施形態においても、回避部265は、曲率半径が互いに異なる複数の円弧を複合した形状となっていてもよい。
【0063】
当接部266は、回避部265の先端部(本体部61と接続される側とは反対側の端部)と接続されている。第2実施形態において、当接部266は、回避部265の先端部から凸部50の側面57に対して斜め方向に向かって延びている。よって、第2実施形態の当接部266は、凸部50の頂部59よりも低い位置に設けられ、斜め方向から凸部50の側面57に当接する端部275となっている。これにより、当接部266は、凸部50の側面57に対して面ではなく辺で接触する。第1実施形態と同様に、当接部266(端部275)が凸部50の側面57と接触することにより、弾性部材6の第二方向D2への移動が規制され、弾性部材6を第二方向D2について位置決めすることが可能となる。係合子5の一対の凸部50間に弾性部材6が配置された状態で、当接部266の上端部は、凸部50の頂部59よりも係合子5の底面52側に位置する。
【0064】
第2実施形態の逆入力遮断クラッチ201によれば、当接部266は、凸部50と近い位置に設けられるとともに凸部50の頂部59よりも低い位置に設けられる端部275とされている。端部275が凸部50の側面57に当接することで、弾性部材6の第二方向D2への位置決めができる。よって、弾性部材6の汎用性を高めることができる。また、当接部266を平面部74(
図6参照)とする場合と比較して、当接部266の形成時における寸法精度を比較的緩く設定することができる。よって、当接部266を容易に形成でき、弾性部材6の形成に係るコストの増加をより一層抑制できる。
【0065】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。以下の説明において、上述した第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して適宜説明を省略する。
図8は、第3実施形態に係る係合子5と弾性部材6の第二方向移動規制部363との位置関係を示す拡大図である。
図8は、上述した第1実施形態の
図6に対応する箇所の拡大図である。本実施形態では、弾性部材6における第二方向移動規制部363の形状が上述した各実施形態と相違している。
【0066】
第3実施形態において、弾性部材6の第二方向移動規制部363は、回避部365と、当接部366と、を有する。回避部365は、第1実施形態と同様、本体部61から凸部50の突出方向と同じ方向に向かって突出するように屈曲されている。
【0067】
当接部366は、回避部365の先端部(本体部61と接続される側とは反対側の端部)と接続されている。第3実施形態において、当接部366は、回避部365の先端部から、回避部365と滑らかに連続する渦巻き状に形成されている。当接部366は、当接する凸部50とは反対側に円弧中心を有する円弧が複数連なって渦巻き状に形成された弧状部376となっている。これにより、当接部366は、凸部50の側面57に対して面ではなく辺で接触する。第1実施形態と同様に、当接部366(弧状部376)が凸部50の側面57と接触することにより、弾性部材6の第二方向D2への移動が規制され、弾性部材6を第二方向D2について位置決めすることが可能となる。係合子5の一対の凸部50間に弾性部材6が配置された状態で、弧状部376の最も上方に位置する部分は、凸部50の頂部59よりも係合子5の底面52側に位置する。
【0068】
第2実施形態の逆入力遮断クラッチ301によれば、当接部366は、凸部50とは反対側に円弧中心を有する円弧が複数連なって形成された弧状部376とされている。弧状部376が凸部50の側面57に当接することで、弾性部材6の第二方向D2への位置決めができる。よって、弾性部材6の汎用性を高めることができる。また、当接部366が円弧状に形成されるので、例えば弾性部材6が変形することにより当接部366と凸部50との接触位置が変化した場合であっても、当接部366を凸部50の側面57に安定的に当接させることができる。また、湾曲形状に形成された回避部365と弧状部376とを滑らかに接続するように形成することで、回避部365と弧状部376(当接部366)とを同一行程で形成できる。よって、弾性部材6の形成に係る手間及びコストを削減できる。
【0069】
なお、本発明の技術範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述の第1実施形態では、一対の係合子5が互いに最も離間した状態(最小負荷状態)において弾性部材6が係合子5を付勢する構成としたが、これに限られない。例えば係合子5が互いに最も離間した状態では弾性部材6が係合子5を付勢しない構成としてもよい。
【0070】
上述の第1実施形態では、回避部65は、曲率半径が互いに異なる複数の円弧を複合した湾曲形状に形成されたが、これに限られない。回避部65は、単一の曲率半径を有する円弧状に形成されてもよい。
第二方向移動規制部63,263,363の形状は、上述した各実施形態の形状に限定されない。
【0071】
係合子5の形状は本実施形態の形状に限定されない。例えば係合子5の外周部にグリスを保持するためのグリス溜め部等(不図示)を設けてもよい。また、入力側被係合部55の孔の形状についても本実施形態の形状に限定されない。
係合子5の凸部50及び底面52の構成(位置や形状等)は、上述した各実施形態の構成に限定されない。例えば上述の第1実施形態では、凸部50が第二方向D2において底面52の最端部よりも内側に位置する構成について説明したが、凸部50は底面52の最端部と対応する位置に設けられてもよい。換言すれば、第二方向D2において凸部50の外側に底面52が無い係合子5を採用してもよい。また例えば、凸部50が第二方向D2において底面52の最端部よりも内側に位置する場合において、一対の凸部50より第二方向D2の内側に位置する底面52と、一対の凸部50より第二方向D2の外側に位置する底面52と、の第一方向D1に沿う高さが異なっていてもよい。
【0072】
上述の第1実施形態では、弾性部材6の当接部間距離L2が凸部間距離L1よりもわずかに小さい値となるように形成されたが、これに限られない。例えば当接部間距離L2が凸部間距離L1よりも大きい値となるように弾性部材6が形成されてもよい。この場合、一対の凸部50間に弾性部材6が配置された状態で、弾性部材6が弾性変形して第二方向D2に突っ張るようにして配置されてもよい。また、弾性部材6に作用する荷重が小さいときには弾性部材6が第二方向D2に突っ張り、かつ弾性部材6に作用する荷重が大きいときには当接部間距離L2が凸部間距離L1より小さくなるように(すなわち弾性部材6が第二方向D2に突っ張らず、当接部66と凸部50との間に隙間が生じるように)、係合子5及び弾性部材6の寸法値が設定されてもよい。第2実施形態及び第3実施形態の当接部66(端部275及び弧状部376)についても同様である。
【0073】
ハウジング4は、例えば複数のハウジング部材により形成されてもよい。例えば第一収容孔41が形成された第一ハウジングと、第二収容孔42が形成された第二ハウジングと、を互いに接合又は締結することで1個のハウジング4を構成してもよい。
【0074】
上述の各実施形態では、入力部材2の入力軸本体21及び腕部23が一体形成された構成について説明したが、これに限られない。入力部材2は、複数の部品を組み合わせることにより構成されてもよい。同様に、出力部材3の出力軸本体31及び挿入部32が別々の部材を組み合わせることにより形成されてもよい。
腕部23の形状は上述した実施形態の形状に限定されない。
【0075】
上述の各実施形態では、逆入力遮断機構としてリンク構造を用いないリンクレス方式の逆入力遮断クラッチ1,201,301を例に説明したが、これに限られない。逆入力遮断機構として公知技術であるリンク機構を用いたリンク方式の逆入力遮断クラッチにおいて、上述した弾性部材6を有する構成を採用してもよい。
【0076】
なお、本開示は、以下のような構成の組み合わせであってもよい。
(1)
内周面に被押圧面を有するハウジングと、
前記被押圧面よりも径方向の内側に設けられた入力側係合部を有し、前記被押圧面と同軸に配置される入力部材と、
前記被押圧面よりも前記径方向の内側かつ前記入力側係合部よりも前記径方向の内側に配置された出力側係合部を有し、前記被押圧面と同軸に配置される出力部材と、
前記被押圧面に対向する押圧面、前記入力側係合部と係合可能な入力側被係合部、及び前記出力側係合部と係合可能な出力側被係合部を有し、前記径方向に沿う第一方向に互いに相対移動可能な一対の係合子と、
を備え、
前記第一方向は一対の前記係合子の近接離間方向と一致する方向であり、
前記入力部材に回転力が入力されると、一対の前記係合子は、前記入力側係合部と前記入力側被係合部との係合に基づいて、前記第一方向の内側に向かって互いに近づくように移動し、かつ前記出力側係合部と前記出力側被係合部との係合に基づいて、前記回転力を前記出力部材に伝達し、
前記出力部材に回転力が逆入力されると、一対の前記係合子は、前記出力側係合部と前記出力側被係合部との係合に基づいて、前記第一方向の外側に向かって互いに離間するように移動し、前記被押圧面と前記押圧面とを摩擦係合させ、
前記係合子は、他方の前記係合子側に向かって突出する凸部を有し、
前記出力部材と前記係合子との間で弾性的に挟持され、前記係合子が前記被押圧面に近づくように前記係合子を前記第一方向の外側に向かって付勢する弾性部材を備え、
前記弾性部材は、前記係合子における前記凸部の基端部に形成された隅部との接触を回避する回避部を有し、かつ前記凸部の側面に当接することにより前記弾性部材の位置決めをする位置決め部を有する、
逆入力遮断クラッチ。
(2)
前記凸部は、前記第一方向及び前記被押圧面の軸方向と直交する第二方向において互いに離間して一対設けられており、
前記弾性部材は、
一対の前記凸部の間に設けられ、平板状に形成される本体部と、
前記本体部と接続される前記位置決め部と、
前記本体部と接続され、前記本体部から前記第二方向の外側に向けて延びるとともに、前記凸部に対して前記軸方向の両側に配置される第二の位置決め部と、
を有する、
(1)に記載の逆入力遮断クラッチ。
(3)
前記回避部は、前記隅部の曲率半径よりも大きな曲率半径を有する湾曲形状に形成されており、
前記位置決め部は、前記回避部のうち前記凸部に近い側の端部に接続され、前記凸部の側面に当接する当接部を有する、
(1)又は(2)に記載の逆入力遮断クラッチ。
(4)
前記当接部は、前記凸部の側面と面接触するように形成された平面部である、
(3)に記載の逆入力遮断クラッチ。
(5)
前記当接部は、前記位置決め部のうち当接する前記凸部と近い位置に設けられるとともに前記凸部の頂部よりも低い位置に設けられる端部である、
(3)に記載の逆入力遮断クラッチ。
(6)
前記当接部は、当接する前記凸部とは反対側に円弧中心を有する円弧状に形成された弧状部である、
(3)に記載の逆入力遮断クラッチ。
(7)
前記回避部は、曲率半径が互いに異なる複数の円弧を複合した形状となっている、
(1)から(6)のいずれか1つに記載の逆入力遮断クラッチ。
(8)
前記位置決め部は、前記凸部の頂部よりも前記係合子の底面側に位置する、
(1)から(7)のいずれか1つに記載の逆入力遮断クラッチ。
(9)
前記弾性部材は、プレス加工により形成されており、
前記プレス加工における打ち抜き工程による発生するバリの方向は、前記係合子の前記凸部の突出方向と一致する、
(1)から(8)のいずれか1つに記載の逆入力遮断クラッチ。
【符号の説明】
【0077】
1,201,301 逆入力遮断クラッチ
2 入力部材
3 出力部材
4 ハウジング
5 係合子
6 弾性部材
25 入力側係合部
35 出力側係合部
40 被押圧面
50 凸部
51 押圧面
52 底面
55 入力側被係合部
56 出力側被係合部
57 (凸部の)側面
58 隅部
59 頂部
61 本体部
62 軸方向移動規制部(第二の位置決め部)
63,263,363 第二方向移動規制部(位置決め部)
65,265,365 回避部
66,266,366 当接部
74 平面部
80 バリ(エッジ部)
275 端部
376 弧状部
D1 第一方向
D2 第二方向