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特開2024-89061プラント制御方法及びプラント制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089061
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】プラント制御方法及びプラント制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/18 20060101AFI20240626BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
H02J3/18
H02J3/38 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204183
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】村上 洋平
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 雅浩
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066FA01
5G066FB11
(57)【要約】
【課題】無効電力を供給しながらも、従来に比べて有効電力の減少量を減らすことが可能なプラント制御方法及びプラント制御装置を提供する。
【解決手段】発電機120,121,…に関する発電機情報を集約する情報集約工程と、情報集約工程で集約した2つ以上の発電機情報を元に指令信号を出す先の発電機120,121,…の優先順位を設定する順位設定工程と、順位設定工程で設定した優先順位に基づき、発電機120,121,…の力率を変更する指令信号を出力する発電機120,121,…群指令工程と、を有する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つ以上の発電機を含むプラントの制御方法であって、
前記発電機に関する発電機情報を集約する情報集約工程と、
前記情報集約工程で集約した2つ以上の前記発電機情報を元に指令信号を出す先の前記発電機の優先順位を設定する順位設定工程と、
前記順位設定工程で設定した前記優先順位に基づき、前記発電機の力率を変更する前記指令信号を出力する発電機群指令工程と、を有する
プラント制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載のプラント制御方法において、
前記情報集約工程では、前記発電機情報として2つ以上の前記発電機の可能出力曲線の形状に関する情報を集約する
プラント制御方法。
【請求項3】
請求項2に記載のプラント制御方法において、
前記可能出力曲線の形状に関する情報を、力率曲線の定格容量での遅れ無効電力の供給量の限界値よりも無効電力の供給量が大きい領域に関する情報とする
プラント制御方法。
【請求項4】
請求項3に記載のプラント制御方法において、
前記領域に関する情報を、前記定格容量での遅れ力率限界での有効電力をP、無効電力をPとし、変化後の有効電力をP’、P’としたとき、有効電力の減少量に対する無効電力の増加量である(P’-P)/(P’-P)に関する情報とする
プラント制御方法。
【請求項5】
請求項4に記載のプラント制御方法において、
前記順位設定工程では、異なる前記発電機の前記(P’-P)/(P’-P)の絶対値を比較し、前記優先順位を前記有効電力の減少量に対する前記無効電力の増加量の絶対値が大きい順で設定する
プラント制御方法。
【請求項6】
請求項1に記載のプラント制御方法において、
前記情報集約工程では、2つ以上の前記発電機が接続される変電所からみた前記発電機までのインピーダンスの情報を集約する
プラント制御方法。
【請求項7】
請求項6に記載のプラント制御方法において、
前記発電機までのインピーダンスの情報として、送電線のインピーダンスを用いる
プラント制御方法。
【請求項8】
請求項6に記載のプラント制御方法において、
前記発電機までのインピーダンスの情報として、前記発電機の主変圧器のインピーダンスを用いる
プラント制御方法。
【請求項9】
請求項6に記載のプラント制御方法において、
前記発電機までのインピーダンスの情報として、前記発電機の主変圧器のトランスのインピーダンスを用いる
プラント制御方法。
【請求項10】
請求項6に記載のプラント制御方法において、
前記順位設定工程では、前記優先順位を前記インピーダンスの値が小さい順で設定する
プラント制御方法。
【請求項11】
2つ以上の発電機を含むプラントの制御装置であって、
前記発電機に関する発電機情報を集約する情報集約部と、
前記情報集約部において集約された2つ以上の前記発電機情報を元に指令信号を出す先の前記発電機の優先順位を設定する順位設定部と、
前記順位設定部において設定された前記優先順位に基づき、前記発電機の力率を変更する前記指令信号を出力する発電機群指令部と、を有する
プラント制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラント制御方法及びプラント制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
分散型電源の連系時もしくは解列時において配電線電圧が不適切な状態となることを解決するために、特許文献1には、配電線に対して連系若しくは解列される発電機と当該発電機を制御する発電機制御装置とを有した分散型電源システムの運用方法において、発電機が連系状態から解列状態へと移行した場合の連系点における電圧変動制限量を設定しておき、発電機制御装置によって、発電機の出力変動量及び連系点の電圧変動量を取得し、発電機の出力及び連系点の電圧が同一の割合で変動するものと見なして、発電機の基準出力と出力変動量の比と、電圧変動量とに基づき、発電機が連系状態から解列状態へと移行した場合における連系点の電圧降下推定量を求め、電圧降下推定量が電圧変動制限量の範囲内であるか否かを判定し、電圧降下推定量が電圧変動制限量の範囲外である旨を判定した場合、電圧降下推定量を電圧変動制限量の範囲内へと収めるべく発電機の運転力率を調整すること、が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-053866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
2015年の第21回気候変動枠組条約締結会議(COP21:Conference Of the Parties 21)において「パリ協定」が採択され、2020年以降の温室効果ガス排出削減等のための新たな国際的な枠組みが示された。日本はこの中で、2030年度に温室効果ガス排出量を2013年度比で26.0%、2050年に80%削減することを目標としている。
【0005】
この目標を達成するために、資源エネルギー庁では2015年の「長期エネルギー需給見通し」で、中期目標として2030年度の電源構成におけるRE比率を22-24%とする方針である。
【0006】
この方針の下、日本では太陽光、風力、バイオマス、地熱および水力発電といった再生可能エネルギー(RE:Renewable Energy)の導入が進んでいる。日本におけるREの全発電電力量に占める割合は、2014年度の12%から2019年度には16%まで増えており、今後もこの割合は増加する見通しである。
【0007】
しかしながら、REが連結される電力系統には、需給バランス、送電容量超過、電圧変動、周波数変動、安定性などの様々な課題が生じることが予想されている。これは、太陽光や風力発電などの変動型再生可能エネルギー(VRE:Variable Renewable Energy)の出力が時々刻々と変化する気象状況に影響されることや、火力の同期発電機の数が減少することで系統慣性が小さくなること、また太陽光や風力発電の適地が限定的であるため、VREの発電地から需要地まで電力を届ける際の送電容量が増加し、局所的な送電線の過負荷が生じやすいことなどに起因している。
【0008】
こうした課題に対し、VREによる電力を供給地から需要地まで安定に届けるための系統増強が計画されているが、これらの系統増強計画にかかる費用が膨大になることが課題となっている。このように、単純にVREの比率を高めるだけではなく、安定性や経済性も同時に考慮する必要のある状況において、既存設備の制御を高度化することで、投資を抑えつつ電力系統の安定性を確保することが今後重要となる。
【0009】
既設設備の制御高度化として、発電機の力率調整が挙げられる。力率調整とは、電源が発電する電力の内、有効電力と無効電力の供給割合を調節することである。
【0010】
有効電力とは、例えば家電製品を動作させるために消費される電力のことである。これに対し、無効電力は、電力としては消費されないが、系統の状況に応じて電源から出し入れすることにより、電力系統の電圧を維持する効果を有する。
【0011】
本来、電力会社は売電を目的としているため、有効電力の割合をなるべく高めるよう運転する。しかしながら、VRE増加に伴う電力系統の安定性の低下に対し、無効電力による系統安定性の向上が今後重要になると考えられる。
【0012】
特許文献1には、分散型電源の発電機出力や配電線に対する連系状態から、連系点の電圧降下推定量を求め、風力発電機の運転力率を調整する分散型電源システムが記載されている。
【0013】
上述の通り、既存発電機の力率を調節することは、再生可能エネルギーの接続量増加に伴う無効電力の供給量不足といった課題に対し、新規設備の設置よりも廉価で実現できるという利点がある。
【0014】
しかしながら、前述のようにこれまでの発電機はなるべく有効電力を多く発電し売電に活用していたため、有効電力の代わりに無効電力を供給するという事は、発電事業者にとっては売電機会を逸し経済性が悪化することなる、というデメリットがある。そこで、無効電力を供給しながらも、なるべく有効電力の減少量は減らすことが求められる。
【0015】
本発明は、無効電力を供給しながらも、従来に比べて有効電力の減少量を減らすことが可能なプラント制御方法及びプラント制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、2つ以上の発電機を含むプラントの制御方法であって、前記発電機に関する発電機情報を集約する情報集約工程と、前記情報集約工程で集約した2つ以上の前記発電機情報を元に指令信号を出す先の前記発電機の優先順位を設定する順位設定工程と、前記順位設定工程で設定した前記優先順位に基づき、前記発電機の力率を変更する前記指令信号を出力する発電機群指令工程と、を有する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、無効電力を供給しながらも、従来に比べて有効電力の減少量を減らすことができる。上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施例1に係るプラント制御装置を含むプラントの構成図である。
図2】実施例1に係る発電機力率曲線の構成図である。
図3】実施例1に係る複数の発電機力率曲線の構成図である。
図4】実施例1に係る、無効電力を供給する発電機の優先順位を示す構成図である。
図5】実施例1の効果を示す構成図である。
図6】実施例1の効果を示す構成図である。
図7】実施例2に係る系統事故解析の構成図である。
図8】実施例2に係る、無効電力を供給する発電機の優先順位を示す構成図である。
図9】実施例3に係る系統事故解析の構成図である。
図10】実施例3に係る、無効電力を供給する発電機の優先順位を示す構成図である。
図11】実施例4に係る系統事故解析の構成図である。
図12】実施例4に係る、無効電力を供給する発電機の優先順位を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明のプラント制御方法及びプラント制御装置の実施例を、図面を用いて説明する。なお、本明細書で用いる図面において、同一のまたは対応する構成要素には同一、または類似の符号を付け、これらの構成要素については繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0020】
<実施例1>
本発明のプラント制御方法及びプラント制御装置の実施例1について図1乃至図6を用いて説明する。図1は実施例1に係るプラント制御装置を含むプラントの構成図、図2は発電機力率曲線の構成図、図3は複数の発電機力率曲線の構成図、図4は無効電力を供給する発電機の優先順位を示す構成図、図5及び図6は実施例1の効果を示す構成図である。
【0021】
最初に、プラント制御装置を含めたプラントの全体構成について図1を用いて説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係るプラント制御装置100を含めたプラントの構成図である。
【0022】
図1に示すプラント制御装置100は、既存の発電プラント(例えば、火力や原子力、水力、地熱などの発電プラント)の発電機120,121,…の力率変更について策定するものであり、発電機情報集約部101、順位設定回路102、発電機群指令回路103等を備えている。
【0023】
このプラント制御装置100は、例えばCPU(Central Processing Unit)とROM(Read Only Memory)とRAM(Random Access Memory)と記憶部を備えたコンピュータが、プラント制御策定プログラムを実行することによって、各部の機能が具現化される。
【0024】
プラント制御装置100において、発電機120,121,…の順位付けは、は発電機120,121,…に関する発電機情報を集約する発電機情報集約部101と、発電機情報集約部101において集約された2つ以上の発電機情報を元に指令信号を出す先の発電機120,121,…の優先順位を設定する順位設定回路102によって実現される。順位設定回路102において設定された優先順位に基づき、発電機群指令回路103は、複数の発電機120,121,…の力率を変更する指令信号を対象となる発電機120,121,…の力率変更回路104に送り、各発電機120,121,…の力率を変更する。
【0025】
これらの各部、回路のうち、発電機情報集約部101が好適には発電機120,121,…に関する発電機情報を集約する情報集約工程の実行主体となり、順位設定回路102が情報集約工程で集約した2つ以上の発電機情報を元に指令信号を出す先の発電機120,121,…の優先順位を設定する順位設定工程の実行主体となり、発電機群指令回路103が順位設定回路102で設定した優先順位に基づき、発電機120,121,…の力率を変更する指令信号を出力する発電機群指令工程の実行主体となる。
【0026】
発電機120,121,…の力率変更回路104からの信号は、通常の発電機120,121,…の制御回路に備わっている増幅回路105、パルス位相制御回路106、サイリスタ出力回路107およびダンピング回路108を通じて発電機120,121,…の出力を変更する。また、発電機群指令回路103からの信号は、電力系統である外部系統の電圧検出回路109と、電圧検出回路109で検出された電圧値と、発電機120,121,…として満たすべき基準となる電圧値との差分を比較する基準電圧比較回路110によって決定される。
【0027】
本発明では、発電機情報集約部101においてどのような情報を集約するか、順位設定回路102においてどのような指標を基に順位付けをするかが重要となる。
【0028】
そこで本発明者らは、一例として、発電機情報集約部101において発電機情報として2つ以上の発電機120,121,…の可能出力曲線の形状に関する情報として、力率曲線の定格容量での遅れ無効電力の供給量の限界値よりも無効電力の供給量が大きい領域に関する情報を集約し、有効電力の減少量に対する無効電力の増加量が大きい発電機120,121,…から無効電力を供給する、という順位付けを順位設定回路102で実施することを考案した。
【0029】
図2は、発電機120,121,…の可能出力曲線200と呼ばれる、発電機120,121,…の有効電力と無効電力の割合の変更可能範囲を示している。横軸が有効電力、縦軸が無効電力を示している。
【0030】
有効電力と無効電力との割合は、遅れ供給量201および進み供給量202を、発電機120,121,…の固定子の励磁電流を変更することで調節することができる。ここで、発電機120,121,…の初期値203が図2に示すような位置にあったとしても、力率変更の指令により、図2中のABCDの半円内部であれば、例えば変更値204の値の場所に変更することが可能である。
【0031】
ここで、ABCDは、ABにおいては発電機120,121,…の回転子コイルが流せる励磁電流の最大値、BCは固定子コイルが流せる電機子電流の最大値、CDは固定子鉄心、固定子鉄心端部の温度上昇など、発電機120,121,…の機器特性によって決まることが一般的である。
【0032】
発電機120,121,…の可能出力曲線200は、発電機120,121,…毎にその形状が異なることが知られている。図3は二つの発電機120,121の可能出力曲線の違いを示している。
【0033】
発電機120の可能出力曲線において、例えば発電機120の力率曲線301AのAからBの曲線を結ぶ領域においては、発電機120の事故時に流れる短絡電流の大きさからその曲線の形状が決定される。またCからDを結ぶ曲線の領域においては、発電機120に備わる鉄心の耐熱温度から決定される。
【0034】
これに対し、BからCを結ぶ領域においては、発電機120,121,の力率曲線の原点を中心に引かれる円弧として決定されており、発電機120,121,…毎の違いはない。すなわち、発電機120,121,…の力率曲線301A,301Bにおける実線部分に関しては、有効電力の出力が減少した際の無効電力の増加量が異なる。
【0035】
そこで、この発電機120,121,…毎の違いを発電機情報集約部101に格納し、順位設定回路102において無効電力を供給する発電機120,121,…を選択する。
【0036】
具体的には図3に示す通り、発電機120の力率曲線301Aにおける実線領域において、有効電力が減少した際の無効電力の増加分をについて、点Aの座標を(A、A)、点Bの座標を(B、B)、点Eの座標を(E、E)したとき、有効電力の減少量に対する無効電力の増加量である(A-E)/(B-E)を算出する。
【0037】
同様に、発電機121の力率曲線301Bにおける点A’の座標を(A’、A’)、点Bの座標を(B’、B’)、点Eの座標を(E’、E’)とした際、有効電力が減少した際の無効電力の増加分である(A’-E’)/(B’-E’)を算出する。
【0038】
この各々の発電機120,121,…に対して算出された値を発電機情報集約部101に格納し、(A-E)/(B-E),(A’-E’)/(B’-E’),…の大きさに応じて順位設定回路102は無効電力を供給する発電機120,121,…を選択する。
【0039】
図4は順位設定回路102の具体的な表示部である順位表示部400を示す。
【0040】
順位表示部400は、無効電力を供給する発電機120,121,…の順位を表示する個別発電機順位表示部401と、個別発電機順位表示部401に対応する発電機名称を表示する個別発電機名表示部402と、有効電力の減少量に対する無効電力の増加量の情報403から構成される。
【0041】
この順位表示部400に従い、発電事業者は無効電力を供給する発電機120,121,…を選択することで、有効電力の減少量に対してより多くの無効電力を供給できる発電機120,121,…を選択することができる。
【0042】
図5は、本実施例の構成によって得られる効果について説明している図である。
【0043】
図5に示すように、発電機120,121,…からの無効電力の供給量は、無効電力の変化500に示す通り、外部系統からの変更指示501に従い、変更前無効電力502から変更後無効電力503までその値が変化する。これに従い、有効電力504は、従来の構成では変更前有効電力505から変更後有効電力506に変化するが、本実施例の構成では変更前有効電力505から変更後有効電力507に変化するため、変更前有効電力505からの変化量が従来に構成に比べて小さくできることが判る。
【0044】
最後に、本実施例の構成に関する電力系統の観点での効果について図6を用いて説明する。
【0045】
図6に示すように、電力系統の電圧600は、変更指令602に従って、従来の構成では変更前電圧601から変更後電圧604に変化するのに対し、本実施例の構成では変更後電圧603に変化する。このとき、従来の構成における変更後電圧604では運用目標値605を下回るが、本実施例の構成では運用目標値605より低下することを防ぐことができる。
【0046】
次に、本実施例の効果について説明する。
【0047】
上述した本発明の実施例1の2つ以上の発電機120,121,…を含むプラントの制御方法は、発電機120,121,…に関する発電機情報を集約する情報集約工程と、情報集約工程で集約した2つ以上の発電機情報を元に指令信号を出す先の発電機120,121,…の優先順位を設定する順位設定工程と、順位設定工程で設定した優先順位に基づき、発電機120,121,…の力率を変更する指令信号を出力する発電機群指令工程と、を有する。
【0048】
これによって、発電機120,121,…の機器特性に応じての順位づけを実現し、無効電力を供給しながらも、従来に比べて有効電力の減少量を減らすことができるようになることから、発電事業者としては売電機会の損失を抑えつつ、無効電力を供給し再生可能エネルギーの接続量増加に貢献することが出来るようになる。
【0049】
<実施例2>
本発明の実施例2のプラント制御方法及びプラント制御装置について図7及び図8を用いて説明する。図7は実施例2に係る系統事故解析の構成図、図8は無効電力を供給する発電機の優先順位を示す構成図である。
【0050】
実施例1では、順位表示部400で表示する発電機120,121,…の順位付けとして、有効電力の減少量に対する無効電力の増加量を用いた。一方、電力系統の安定性の向上への貢献との観点では、外部系統の構成によって無効電力の供給に対する電圧維持機能が変わることから、外部系統の構成によっても起動する発電機120,121,…の順位付けが変わることが予想される。
【0051】
そこで、本実施例では、発電機情報集約部101において、2つ以上の発電機120,121,…が接続される変電所からみた発電機120,121,…までのインピーダンスの情報を集約し、順位設定回路102で、優先順位をインピーダンスの値が小さい順で設定することとする。例えば、発電機120,121,…までのインピーダンスの情報として、送電線701,703のインピーダンスを用いることとする。これにより、順位表示部400において発電機120,121,…の順位を表示する際に、発電機120,121,…が接続される外部系統の構成から、無効電力が供給しやすくなる優先順位付けを表示するものとする。
【0052】
図7に、実施例2に関して一例を示す。一例として、発電機120,121,…が電力系統を繋ぐ送電線701,703の長さおよび線種によって決まるインピーダンスを用いて、発電機120,121,…の順位付けをする方法が考えられる。
【0053】
例えば図1においては、発電機120は送電線Aのインピーダンス702を介して系統に接続されている。また、発電機121は、送電線Bのインピーダンス704となる送電線を通じて電力系統に接続している。
【0054】
無効電力の供給のしやすさはインピーダンスの逆数で決定されることから、仮に送電線Aのインピーダンス702が、送電線Bのインピーダンス704よりも小さく、かつ発電機120と発電機121が同じ無効電力の供給量であった場合、発電機120から系統に届けられる無効電力は、発電機121から供給される無効電力量よりも多くなるため、発電機120を無効電力の供給源として選択したほうが、より効率的に無効電力を系統に供給することが可能となる。
【0055】
図8は順位設定回路102の具体的な表示部である順位表示部800を示す。順位表示部800は、無効電力を供給する発電機120,121,…の順位を表示する個別発電機順位表示部801と、個別発電機順位表示部801に対応する発電機名称を表示する個別発電機名表示部802と、発電機120,121,…が接続されている送電線のインピーダンス803から構成される。
【0056】
この順位表示部800に従い、発電事業者は無効電力を供給する発電機120,121,…を選択することで、有効電力の減少量に対してより多くの無効電力を供給できる発電機120,121,…を選択することができる。
【0057】
その他の構成・動作は前述した実施例1のプラント制御方法及びプラント制御装置と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0058】
本発明の実施例2のプラント制御方法及びプラント制御装置のように、2つ以上の発電機120,121,…が接続される変電所からみた発電機120,121,…までのインピーダンスの情報を集約することにより、発電事業において、発電機120,121,…の電力系統との接続方法により上記の順位づけをすることを可能となり、無効電力を供給しながらも、従来に比べて有効電力の減少量を減らすことができる。
【0059】
<実施例3>
本発明の実施例3のプラント制御方法及びプラント制御装置について図9及び図10を用いて説明する。図9は実施例3に係る系統事故解析の構成図、図10は無効電力を供給する発電機の優先順位を示す構成図である。
【0060】
実施例2では、順位表示部400で表示する発電機120,121,…の順位付けとして、発電機120,121,…が接続される送電線のインピーダンスを用いた。これに対し、発電機120,121,…が系統に接続される際には、発電所内の主変圧器を介する必要があることから、主変圧器のインピーダンスも無効電力の供給量に影響すると考えらえる。
【0061】
そこで、本実施例では、発電機120,121,…までのインピーダンスの情報として、発電機120,121,…の主変圧器のインピーダンスを用いることとし、順位設定回路102で順位付けをする。
【0062】
図9に示すように、発電機900は主変圧器のインピーダンス901を介して送電線に接続されている。
【0063】
図10は順位設定回路102の具体的な表示部である順位表示部1000を示す。順位表示部1000は、無効電力を供給する発電機120,121,…の順位を表示する個別発電機順位表示部1001と、個別発電機順位表示部1001に対応する発電機名称を表示する個別発電機名表示部1002と、発電機120,121,…の主変圧器のインピーダンス1003から構成される。
【0064】
この順位表示部1000に従い、発電事業者は無効電力を供給する発電機120,121,…を選択することで、有効電力の減少量に対してより多くの無効電力を供給できる発電機120,121,…を選択することができる。
【0065】
その他の構成・動作は前述した実施例2のプラント制御方法及びプラント制御装置と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0066】
本発明の実施例3のプラント制御方法及びプラント制御装置においても、前述した実施例2のプラント制御方法及びプラント制御装置とほぼ同様な効果が得られる。
【0067】
<実施例4>
本発明の実施例4のプラント制御方法及びプラント制御装置について図11及び図12を用いて説明する。図11は実施例4に係る系統事故解析の構成図、図12は無効電力を供給する発電機の優先順位を示す構成図である。
【0068】
実施例2では、順位表示部400で表示する発電機120,121,…の順位付けとして、発電機120,121,…が接続される送電線のインピーダンスを用いた。しかしながら、電力系統という観点では、送電線のインピーダンスのほかに、変圧器のトランスのインピーダンス1100を考慮することが望まれる。
【0069】
そこで、本実施例では、発電機120,121,…までのインピーダンスの情報として、発電機120,121,…の主変圧器のトランスのインピーダンスを用いる。
【0070】
図11に変圧器のトランスのインピーダンス1100を図示する。変圧器のトランスのインピーダンス1100は下位電圧系統から上位電圧系統に接続される際に電圧を昇圧する仕組みを持つ。ここで下位電圧系統から上位電圧系統とは、例えば220kV系統から500kV系統へ昇圧することを意味している。この変圧器のトランスのインピーダンスを活用して、順位設定回路102で順位付けをする。
【0071】
図12は順位設定回路102の具体的な表示部である順位表示部1200を示す。順位表示部1200は、無効電力を供給する発電機120,121,…の順位を表示する個別発電機順位表示部1201と、個別発電機順位表示部1201に対応する発電機名称を表示する個別発電機名表示部1202と、トランスのインピーダンス1003から構成される。
【0072】
この順位表示部1000に従い、発電事業者は無効電力を供給する発電機120,121,…を選択することで、有効電力の減少量に対してより多くの無効電力を供給できる発電機120,121,…を選択することができる。
【0073】
その他の構成・動作は前述した実施例2のプラント制御方法及びプラント制御装置と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0074】
本発明の実施例4のプラント制御方法及びプラント制御装置においても、前述した実施例2のプラント制御方法及びプラント制御装置とほぼ同様な効果が得られる。
【0075】
<その他>
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記の実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0076】
また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることも可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【符号の説明】
【0077】
100…プラント制御装置
101…発電機情報集約部
102…順位設定回路
103…発電機群指令回路
104…力率変更回路
105…増幅回路
106…パルス位相制御回路
107…サイリスタ出力回路
108…ダンピング回路
109…電圧検出回路
110…基準電圧比較回路
120,121,900…発電機
200…発電機の可能出力曲線
201…遅れ供給量
202…進み供給量
203…発電機の初期値
204…変更値
301A,301B…力率曲線
400,800,1000,1200…順位表示部
401,801,1001,1201…個別発電機順位表示部
402,802,1002,1202…個別発電機名表示部
403…有効電力の減少量に対する無効電力の増加量の情報
500…無効電力の変化
501…外部系統からの変更指示
502…変更前無効電力
503…変更後無効電力
504…有効電力
505…変更前有効電力
506…従来の変更後有効電力
507…本発明の変更後有効電力
600…電力系統の電圧
601…変更前電圧
602…変更指令
603…本発明の変更後電圧
604…従来の変更後電圧
605…運用目標値
701,703…送電線
702,704,803,901,1003,1100,1203…インピーダンス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12