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特開2024-8907自動車サスペンションストラットのアッパーマウント組立品、および該組立品を備えるサスペンションストラット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008907
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】自動車サスペンションストラットのアッパーマウント組立品、および該組立品を備えるサスペンションストラット
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/54 20060101AFI20240112BHJP
   B60G 3/28 20060101ALI20240112BHJP
   B60G 15/06 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
F16F9/54
B60G3/28
B60G15/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023111298
(22)【出願日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】2206987
(32)【優先日】2022-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】508275098
【氏名又は名称】エヌティエヌ・ヨーロッパ
【氏名又は名称原語表記】NTN EUROPE
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【弁理士】
【氏名又は名称】笹沼 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100225026
【弁理士】
【氏名又は名称】古後 亜紀
(74)【代理人】
【識別番号】100230248
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 圭二
(72)【発明者】
【氏名】バウドゥ・アレクサンドレ
(72)【発明者】
【氏名】プロイ-ソラリ・バンサン
【テーマコード(参考)】
3D301
3J069
【Fターム(参考)】
3D301AA03
3D301AA04
3D301AA05
3D301CA09
3D301DA08
3D301DA33
3D301DB17
3J069AA50
3J069CC34
3J069DD47
(57)【要約】      (修正有)
【課題】滑り軸受または転がり軸受、および車両への取付前に予め荷重をかけておくことが可能な緩衝ブロックを含む緩衝用仮組立部品を備える、自動車サスペンションストラットのアッパーマウント組立品を提供する。
【解決手段】同組立品は、軸受(2)と、軸受と当接する緩衝用仮組立部品(10)と、を備える。緩衝用仮組立部品は、緩衝ブロック(20)、緩衝ブロックの下面に当接する中央部および周部を有する下側支持体(30)、ならびに緩衝ブロックの上面に当接する中央部および下側支持体の環状の周部に当接する周部を有するカバー(40)を含む。カバーの周部には、軸受の径方向外側に位置して緩衝用仮組立部品を車両の車体要素に固定する留め固定開口が設けられている。緩衝ブロックが予備緊張させられた状態で、留め固定開口とは独立して、カバーが下側支持体に留め固定手段によって留め固定される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車サスペンションストラットのアッパーマウント組立品(100)であって、
回転軸心(A2)を規定する滑り軸受または転がり軸受(2)と、
前記軸受(2)と直接または間接的に当接する緩衝用仮組立部品(10)と、
を備え、前記緩衝用仮組立部品(10)は、
-エラストマー系材料からなり、基準軸心(A1)に沿って延びるとともに、前記サスペンションストラットのダンパ(106)のロッド(102)の一端部の固定(21)を行う連結部を有する、緩衝ブロック(20)と、
-前記緩衝ブロック(20)と前記軸受(2)との間に位置しており、前記緩衝ブロック(10)の下面(22)に当接するとともに前記ダンパ(106)の前記ロッド(102)の前記端部のための通路(33)が軸方向に通ずる環状の中央部(31)、当該中央部(31)を取り囲む環状の周部(32)、前記緩衝ブロック(20)に面する上面(35)、および前記サスペンションのショックパッド(104)のための反対側の下面(36)を有する、緩衝ブロック下側支持体(30)と、
-前記緩衝ブロック(20)の上面(23)に当接する中央部(41)、および当該中央部(41)を取り囲むとともに前記下側支持体(30)の前記環状の周部(32)に当接する周部(42)を有し、当該周部(42)に、前記軸受(2)の径方向外側に位置しているとともに前記緩衝用仮組立部品(10)を前記自動車の車体要素(103)に留め固定するように構成された留め固定開口(44)が設けられている、緩衝ブロックカバー(40)と、
-前記緩衝ブロックが前記下側支持体(30)と前記緩衝ブロックカバー(40)との間で予備緊張させられた状態で、前記留め固定開口(44)とは独立して前記カバー(40)を前記緩衝ブロック下側支持体(30)に固定する、留め固定手段と、
を含む、アッパーマウント組立品(100)。
【請求項2】
請求項1に記載のアッパーマウント組立品(100)において、前記緩衝ブロック下側支持体(30)が、
-中間支持部品(70)または前記軸受(2)の円筒部(72,5A)に嵌合調節させられるように構成された円筒状のスカート部(39A)と、
-前記中間支持部品(70)または前記軸受(2)の上面(73,5B)に当接する外側の横方向肩部(39B)と、
を有することを特徴とする、アッパーマウント組立品(100)。
【請求項3】
請求項1または2に記載のアッパーマウント組立品(100)において、前記緩衝ブロック下側支持体(30)が、金属の単一物からなることを特徴とする、アッパーマウント組立品(100)。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のアッパーマウント組立品(100)において、前記緩衝ブロックカバー(40)が、少なくとも1種のプラスチック系材料からなり、任意で、補強材またはインサートを具備していることを特徴とする、アッパーマウント組立品(100)。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のアッパーマウント組立品(100)において、前記カバー(40)を前記緩衝ブロック下側支持体(30)に固定する前記留め固定手段が、
-前記下側支持体(30)の前記環状の周部(32)から突設された、前記下側支持体(30)の留め固定を行う少なくとも1つのフラップ部(50)と、
-前記下側支持体(30)の前記留め固定フラップ部(50)に対応し、対応する前記留め固定フラップ部(50)の基端部(51)が軸方向に通らせられる、前記カバー(40)の前記周部(42)の少なくとも1つの留め固定口部(60)と、
を有し、前記対応する留め固定フラップ部(50)の先端部(52)が、軸方向と直交する成分に少なくとも沿って延在せしめられて前記下側支持体(30)の前記周部(32)とは反対側になる前記カバー(40)側の突き合わせ面と重なることにより、前記カバー(40)が前記下側支持体ブロック支持体(30)に確実に留め固定されることを特徴とする、アッパーマウント組立品(100)。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のアッパーマウント組立品(100)において、前記カバー(40)を前記緩衝ブロック下側支持体(30)に固定する前記留め固定手段が、ねじによる少なくとも1つの留め固定部を有することを特徴とする、アッパーマウント組立品(100)。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のアッパーマウント組立品(100)において、前記周部(42)が、前記下側支持体(30)を取り囲むことを特徴とする、アッパーマウント組立品(100)。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のアッパーマウント組立品(100)において、さらに、
前記軸受(2)に当接する剛体状の中間支持部品(70)であって、前記緩衝用仮組立部品(10)を支持する支持架台を形成する、中間支持部品(70)、
を備えることを特徴とする、アッパーマウント組立品(100)。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のアッパーマウント組立品(100)において、さらに、
前記サスペンションのコイルスプリング(105)のための、前記軸受(2)とは反対側に面した突き合わせ面(81)を形成する、環状の支承支持体(80)、
を備え、前記中間支持部品(70)と前記支承支持体(80)が、前記軸受(2)の環状の空間(3)の少なくとも一部を画定していることを特徴とする、アッパーマウント組立品(100)。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のアッパーマウント組立品(100)において、前記緩衝ブロックカバー(40)が、密封ジグザグ部(83)を画定するように前記支承支持体(80)の外側の周面(82)の径方向外側に且つ少なくとも部分的に当該周面(82)と対向して設けられた外側の保護スカート部(49)を形成していることを特徴とする、アッパーマウント組立品(100)。
【請求項11】
請求項10に記載のアッパーマウント組立品(100)において、前記バッフル部(83)により、前記自動車の前記車体要素(103)への取付前に、前記支承支持体(80)と前記カバー(40)とが弾性的に一まとめに取り付けられていることを特徴とする、アッパーマウント組立品(100)。
【請求項12】
請求項8から11のいずれか一項に記載のアッパーマウント組立品(100)において、前記中間支持部品(70)または前記支承支持体(80)が、前記軸受(2)の径方向内側に設けられた内側のスカート部(71,84)を有し、好ましくは、当該内側のスカート部(71,84)が、前記ショックパッド(104)の上端部に対するフック形状を有することを特徴とする、アッパーマウント組立品(100)。
【請求項13】
コイルスプリング(105)と、
テレスコピック式ダンパ(106)と、
ショックパッド(104)と、
を備える、自動車のサスペンションストラットにおいて、さらに、
請求項1から12のいずれか一項に記載のアッパーマウント組立品(100)、
を備えることを特徴とする、サスペンションストラット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、自動車サスペンションの技術分野に関するものである。
【0002】
本発明は、詳細には、緩衝用仮組立部品を備えた、自動車サスペンションのアッパーマウント組立品、および該マウント組立品を組み込んだサスペンションストラットに関する。
【背景技術】
【0003】
テレスコピック式ダンパに巻設されたコイルスプリングを備える自動車サスペンションストラットは、サスペンションアッパーマウントと称される多機能連結部、具体的には、車体への留め固定、車輪操舵時の回転中のコイルスプリングおよび/またはサスペンションストラットの上端部の回転案内、テレスコピック式ダンパのロッドの保持(任意で、振動緩衝機能付き)、さらには、テレスコピック式ダンパ本体の移動終点のショックパッドの支承といった機能が組み込まれた連結部で、車両の車体に連結される。このようなマウントは、多数の部品を必要とする。該部品の一部は、車両への取付前に仮組立することが可能であるのに対し、残りは、車両への取付時に組立を行う必要がある。
【0004】
前述の種類のサスペンションストラットアッパーマウントは、EP1591691A1(特許文献1)により一例が与えられる。該マウントは、上側ワッシャ、下側ワッシャ、および上側ワッシャと下側ワッシャとに形成された軌道面上を循環するボールを含む転がり軸受と、板金のプレス成型品で構成された剛体状の多機能部品と、上側ワッシャと多機能部品との間に位置したエラストマー系緩衝ブロックと、を備える。多機能部品は、下方に向いた支承壁に各自開口する複数の留め固定孔を有する。多機能部品のうち、当該留め固定孔の延長上にある支持壁に、ナットが溶接されている。これにより、留め固定孔に挿通させたねじをナットに螺合させることで、同アッパーマウントを車両の車体に固定することが可能になる。同マウントは、車両への取付前の時点で一まとめになっていない。そのほか、金属製である多機能部品が腐食しないように対策を講じておく必要がある。
【0005】
DE 10-2009-059 168 A1(特許文献2)に示されているサスペンションストラットアッパーマウント組立品は、特に、多機能部品が、ねじ部付きの金属製インサートを留め固定孔の箇所に具備したプラスチック系材料の成形品からなるという点で、上記のものと異なる。当該部品は、板金のものよりも軽量であり得るともに、金属製インサートを除けば腐食の影響を比較的受けにくい。実用面では、射出成形型による金属製インサートのオーバーモールド成形によって多機能部品を製造した場合、衝撃減衰力に対する塑性変形抵抗が低くなってしまう。
【0006】
FR 3-112-101 A1(特許文献3)には、高い生産速度に対応したまま車両への最終取付工程を最小限に抑えたサスペンションストラットアッパーマウント組立品が記載されている。この構成は、多機能部品の各留め固定連結部を、該多機能部品の周壁の留め固定開口溝からなるものとして且つ留め固定要素の少なくとも一部をロッドの留め固定軸心に対して傾いた方向で受け入れるように構成したものである。該溝同士のこのような配置構造により、組立中における該溝からの留め固定要素の脱落が確実になくなる。同文献に記載された構成によれば、車両への取付前に留め固定要素を多機能部品へと、特には、溶接やオーバーモールド成形によって恒久的に留め固定するという工程を省略することが可能になる。
【0007】
JP2010014133(特許文献4)には、自動車の非操舵サスペンションストラットの緩衝用仮組立部品であって、下側支持体とカバーとの間で予備緊張させられた緩衝ブロック、および下側支持体とカバーとに挿通されて支持体をカバー下部に留め固定するとともに車両への取付に先立って緩衝ブロックを予備緊張させてから同組立部品を自動車の車体要素に確実に留め固定する留め固定要素を備える、緩衝用仮組立部品が記載されている。このような装置には、支持体をカバー下部に留め固定するためのリベットを構成する頭部および車両の車体要素の上側に配されたナットに対するねじ部を含む本体部からなる、二重機能の留め固定スタッドが必要となる。この設計は、緩衝用仮組立部品とサスペンションストラットのスプリングとの間に滑り軸受または転がり軸受を介設しなければならない操舵輪サスペンションストラットに適していない。
【0008】
EP1564037A2(特許文献5)にも同様の組立品が提案されているが、同組立品は、シンプルなねじ留め固定要素により、車両への当該組立品の留め固定の時点になってから緩衝ブロックを緊張させることができるようにしたものとなっている。
【0009】
DE102014218800A1(特許文献6)には、自動車サスペンションストラット用の緩衝用仮組立部品であって、下側支持体とカバーとの間に予備緊張されることなく配置された緩衝ブロック、下側支持体とカバーとの間のスナップ留め固定要素、およびカバーを車両の車体要素に留め固定するための留め固定ねじを備える、緩衝用仮組立部品が開示されている。しかしながら、この装置は、軸受を組み込むように設計されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1591691号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102009059168号明細書
【特許文献3】仏国特許出願公開第3112101号明細書
【特許文献4】特開2010-14133号公報
【特許文献5】欧州特許出願公開第1564037号明細書
【特許文献6】独国特許出願公開第102014218800号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、自動車サスペンションストラットのアッパーマウント組立品であって、滑り軸受または転がり軸受、および車両への取付前に予め荷重をかけておくことが可能な緩衝ブロックを含む緩衝用仮組立部品を備える、アッパーマウント組立品を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
これを行うために、本発明の第1の態様に係る自動車サスペンションストラットのアッパーマウント組立品は、
回転軸心を規定する滑り軸受または転がり軸受と、
前記軸受と直接または間接的に当接する緩衝用仮組立部品と、
を備え、前記緩衝用仮組立部品は、
-エラストマー系材料からなり、基準軸心に沿って延びるとともに、前記サスペンションストラットのダンパのロッドの一端部の固定を行う連結部を有する、緩衝ブロックと、
-前記緩衝ブロックと前記軸受との間に位置しており、前記緩衝ブロックの下面に当接するとともに前記ダンパのロッドの前記端部のための通路が軸方向に通ずる環状の中央部、当該中央部を取り囲む環状の周部、前記緩衝ブロックに面する上面、および前記サスペンションのショックパッドのための反対側の下面を有する、緩衝ブロック下側支持体と、
-前記緩衝ブロックの上面に当接する中央部、および当該中央部を取り囲むとともに前記下側支持体の前記環状の周部に当接する周部を有し、当該周部に、前記軸受の径方向外側に位置しているとともに前記緩衝用仮組立部品を前記自動車の車体要素に留め固定するように構成された留め固定開口が設けられている、緩衝ブロックカバーと、
-前記緩衝ブロックが前記下側支持体と前記緩衝ブロックカバーとの間で予備緊張させられた状態で、前記留め固定開口とは独立して前記カバーを前記緩衝ブロック下側支持体に固定する、留め固定手段と、
を含む。
【0013】
前記組立品によれば、前記留め固定開口に留め固定要素を挿入することが必要となる前記カバーの前記車両の車体への留め固定とは独立して、前記カバーを前記下側支持体に前記留め固定手段によって留め固定することが可能になる。前記留め固定開口が前記軸受の外側に位置していることで空いた空間に、前記軸受を収容することが可能となっている。
【0014】
好ましくは、前記留め固定開口は、前記緩衝ブロック下側支持体の径方向外側に位置している。
【0015】
一実施形態において、前記緩衝ブロック下側支持体は、
-前記組立品の中間支持部品または軸受の円筒部に嵌合調節させられるように構成された円筒状のスカート部と、
-前記組立品の前記中間支持部品または前記軸受の上面に当接する外側の横方向肩部と、
を有する。
【0016】
一実施形態において、前記緩衝ブロック下側支持体は、金属の単一物からなる。
【0017】
一実施形態において、前記緩衝ブロックカバーは、少なくとも1種のプラスチック系材料からなり、任意で、補強材またはインサートを具備している。
【0018】
一実施形態において、前記カバーを前記緩衝ブロック下側支持体に固定する前記留め固定手段が、
-前記下側支持体の前記環状の周部から突設された、前記下側支持体の留め固定を行う少なくとも1つのフラップ部と、
-前記下側支持体の前記留め固定フラップ部に対応し、対応する前記留め固定フラップ部の基端部が軸方向に通らせられる、前記カバーの前記周部の少なくとも1つの留め固定口部と、
を有し、前記対応する留め固定フラップ部の先端部が、軸方向と直交する成分に少なくとも沿って延在せしめられて前記下側支持体の前記周部とは反対側になる前記カバー側の突き合わせ面と重なることにより、前記カバーが前記下側支持体ブロック支持体に確実に留め固定される。
【0019】
一実施形態において、前記留め固定手段の、前記緩衝ブロック下側支持体への前記カバーの確実な留め固定を行う各留め固定フラップ部は、前記緩衝ブロックとは反対側になる前記カバー側で当該カバーに対して加締めされることで、前記カバーを前記緩衝ブロック下側支持体に確実に固定する。つまり、加締め手法によって先端部が基端部に対して曲げられる留め固定フラップ部となっている。好ましくは、留め固定フラップ部が複数ある場合、留め固定フラップ部一式が加締めされる。
【0020】
変形例である他の実施形態において、前記カバーを前記緩衝ブロック下側支持体に固定する前記留め固定手段は、ロックワッシャを有し、前記下側支持体および前記カバーのうちの一方を第1要素とし、前記下側支持体および前記カバーのうちの残りを第2要素としたときに、前記第1要素は前記ロックワッシャと前記第2要素との軸方向の間に位置しており、前記ロックワッシャおよび前記第2要素のうちの一方に形成された各フラップ部に前記ロックワッシャおよび前記第2要素のうちの他方に形成された切欠部の一つが対応するようにしてフラップ部および切欠部が前記ロックワッシャおよび前記第2要素に形成されており、前記ロックワッシャは前記第2要素に対して:
-相対接近位置と相対相互貫通位置との間を、当該相対相互貫通位置にて前記留め固定フラップ部がそれぞれ対応する前記切欠部に貫通するように前記基準軸心に沿って前記ロックワッシャと前記第2要素とを相対的に並進運動させることで移動可能であり、かつ、
-前記相対相互貫通位置と相対組付位置との間を、当該相対組付位置にて前記留め固定フラップ部がそれぞれ対応する前記切欠部の周方向延長部内に収容されて当該対応する切欠部のへりに軸方向に当接した状態で軸方向に保持されるように前記基準軸心周りに前記ロックワッシャと前記第2要素とを相対的に回転運動させることで移動可能である。
【0021】
一実施形態において、前記カバーを前記緩衝ブロック下側支持体に固定する前記留め固定手段は、ねじによる少なくとも1つの留め固定部を有する。
【0022】
一実施形態において、前記周部は、前記下側支持体を取り囲む。
【0023】
前記軸受が規定する前記回転軸心は、前記基準軸心と交差するものであってもよいし、前記基準軸心と平行であってもよく、特には、前記基準軸心と合致していてもよい。
【0024】
一実施形態において、前記アッパーマウント組立品は、さらに、前記軸受に当接する剛体状の中間支持部品であって、前記緩衝用仮組立部品を支持する支持架台を形成する、中間支持部品、を備える。
【0025】
一実施形態において、前記アッパーマウント組立品は、さらに、前記サスペンションのコイルスプリングのための、前記軸受とは反対側に面した突き合わせ面を形成する環状の支承支持体、を備え、前記中間支持部品と前記支承支持体が、前記軸受の環状の空間の少なくとも一部を共同で画定している。
【0026】
一実施形態において、前記緩衝ブロックカバーは、密封ジグザグ部を画定するように前記支承支持体の外側の周面の径方向外側に且つ少なくとも部分的に当該周面と対向して設けられた外側の保護スカート部を形成している。好ましくは、前記ジグザグ部により、前記自動車の前記車体要素への取付前に、前記支承支持体と前記カバーとが弾性的に一まとめに取り付けられている。
【0027】
一実施形態において、前記中間支持部品または前記支承支持体は、前記軸受の径方向内側に設けられた内側のスカート部を有し、好ましくは、当該内側のスカート部が、前記ショックパッドの上端部に対するフック形状を有する。
【0028】
本発明は、さらに、コイルスプリングと、テレスコピック式ダンパと、ショックパッドと、を備えるとともに、前述したアッパーマウント組立品、をさらに備えるという点で際立った、自動車のサスペンションストラットに関する。
【0029】
本発明のその他の特徴および利点については、添付の図面を参照しながら行う以下の説明を参酌することで明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】第1の実施形態における、自動車サスペンションストラットおよび該サスペンションストラットのサスペンションアッパーマウント組立品の上部を示す断面図である。
図2図1の組立品の等角斜視図である。
図3】第2の実施形態における、自動車サスペンションストラットおよび該サスペンションストラットのサスペンションアッパーマウント組立品の上部を示す等角分解斜視図である。
図4】第2の実施形態における、自動車サスペンションストラットおよび該サスペンションストラットのサスペンションアッパーマウント組立品の上部を示す断面図である。
図5】上記第2の実施形態における、下側支持体をカバーに留め固定する前の、前記サスペンションストラットのサスペンションアッパーマウント組立品の等角斜視断面図である。
図6】上記第2の実施形態における、下側支持体の留め固定フラップ部をカバーのうちの対応する留め固定口部に挿通させた加締め前の自由状態の、前記サスペンションストラットのサスペンションアッパーマウント組立品の等角斜視断面図である。
図7】上記第2の実施形態における、留め固定フラップ部が緩衝ブロックとは反対側になるカバー側で当該カバーに対して加締めされることでカバーが下側支持体ブロック支持体に固定されている、前記サスペンションストラットのサスペンションアッパーマウント組立品の等角斜視断面図である。
図8】上記第2の実施形態における、留め固定フラップ部を加締めする前の下側支持体を示す図である。
図9】留め固定フラップ部を加締めした後の、図8の下側支持体を示す図である。
図10】上記第2の実施形態に適した変形例としての、留め固定フラップ部を加締めする前の下側支持体の一実施形態を示す図である。
図11】留め固定フラップ部を加締めした後の、図10の下側支持体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
分かり易くするために、同一または同様の構成/構成要素は全ての図をとおして同一の参照符号で特定している。
【0032】
図1に、車両の車体要素103に支承されたサスペンションストラットの上部を示す。本例において、車体要素103は、逆円錐台形状の椀状部の形態である。前記サスペンションストラットは、コイルスプリング105、コイルスプリング105内部に配置されたテレスコピック式ダンパ106、ならびにコイルスプリング105およびテレスコピック式ダンパ106と車体103との間の連結部となるサスペンションアッパーマウント組立品100を備える。
【0033】
図2にも示すアッパーマウント組立品100は、軸受2およびショックパッド104を備える。軸受2は、環状の支承支持体80に載設されている。支承支持体80は、コイルスプリング105の上側巻線部に載設されるスプリング緩衝要素に基づいたものである。組立品100は、支承支持体80の径方向内側に位置する取付用部品を有する。当該取付用部品は、軸受2の径方向内側に設けられた内側のスカート部84からなる。内側のスカート部84は、ダンパ106の保護用ベローズ(図示せず)の上端部に対するフック形状を有する。
【0034】
アッパーマウント組立品100は、さらに、緩衝用仮組立部品10を備える。緩衝用仮組立部品10は、軸受2のカバーも形成している。緩衝用仮組立部品10は、エラストマー系材料からなる緩衝ブロック20、緩衝ブロック20の剛体状の単一物の下側支持体30、および緩衝ブロック20のカバー40を形成している。緩衝ブロック20は、径方向および軸方向で緩衝用仮組立部品10の内部に位置している。下側支持体30は、緩衝ブロック20と軸受2との間に位置し、具体的には、緩衝ブロック20と軸受2との間に介設されている。
【0035】
軸受2は、コイルスプリング105が収縮または緩和した際や車輪の操舵時に、支承支持体80を回転軸心A2周りに回転案内させることによってコイルスプリング105の前記上側巻線部を回転させることができるという機能を有する。本例の軸受2は、転がり軸受であり、板金のプレス成型品からなる下側ワッシャ4、板金のプレス成型品からなるとともに回転軸心A2を規定する上側ワッシャ5、および下側ワッシャ4と上側ワッシャ5とに形成された軌道面7,8上を転動して下側ワッシャ4を上側ワッシャ5に対して回転軸心A2周りに回転案内させる転動体6を有する。本例の転動体6は、ボールである。転がり軸受2は、アンギュラコンタクト型であり、転動体6が、上側ワッシャ5の軌道面8の径方向外側領域と下側ワッシャ4の軌道面7のうちの回転軸心A2を基準として該外側領域よりも径方向内方にある径方向内側領域とに接触している。前記ボール同士は、保持器6’によって隔離されて略等間隔に保持されている。
【0036】
前記サスペンションストラットは、組立品100の大部分が車体103の「下側」に位置するように、かつ、コイルスプリング105の少なくとも一部が組立品100の「下側」に位置するように向きが設定されている。
【0037】
環状の支承支持体80は、補強用インサート付きまたは無しで、例えば、プラスチックや金属合金からなるものであってもよく、例えば、加圧注入されたアルミニウムからなり、回転軸心A2を基準として軸受2とは軸方向反対側に向いた環状の平坦な突き合わせ面および径方向外側に向いた円筒状の案内面を形成している。
【0038】
緩衝ブロック支持体30と支承支持体80は、軸受2の環状の密閉空間を共同で画定している。緩衝ブロックカバー40は、支承支持体80の外側の周面82の径方向外側に且つ少なくとも部分的に当該周面82と対向して設けられた外側の保護スカート部49を形成している。
【0039】
緩衝ブロック20は、エラストマー系材料で構成され、基準軸心A1に沿って延びるとともに、サスペンションストラット106のテレスコピック式緩衝ロッド102の一端部の固定を行う連結部21を有する。ロッド102は、ショックパッド104に形成された内腔部および支持体30の通路33に挿通される。
【0040】
緩衝ブロック支持体30は、例えば、加圧注入された鋼、アルミニウム等で構成される金属合金からなり得て、好ましくは、単一物(すなわち、一体品)である。好ましくは、支持体30は、板金のプレス成型品からなる鋼製である。緩衝ブロック支持体30は、壁34を有する。壁34は、前記緩衝ブロックに面する上面35および前記サスペンションのショックパッド104に突き合わされる反対側の下面36を有する。より厳密には、緩衝ブロック支持体30が、緩衝ブロック20の下面22に当接するとともに緩衝106ロッド102の前記端部のための通路33が軸方向に通ずる環状の中央部31、および環状の中央部31を取り囲む環状の周部32を有する。
【0041】
本実施形態において、緩衝ブロック20の、剛体状の一体品である支持体30は、軸受2の径方向内側に設けられて当該軸受2に径方向に接触する、緩衝ブロック20の収容椀状部と、軸受2に載設されて当該椀状部を取り囲む鍔部とを形成する、板金のプレス成型品によって構成される。より厳密には、緩衝ブロック下側支持体30は、組立品100の軸受2の円筒部5Aに嵌合調節させられるように構成された円筒状のスカート部39A、および同軸受2の上面5Bに当接する外側の横方向肩部39Bを有しており、これにより、緩衝用仮組立部品10が軸受2に直接当接している。
【0042】
円筒状のスカート部39Aおよび外側の横方向肩部39Bは、環状の中央部31と環状の周部32との間をつなぐ環状の中間部312に保持されている。円筒状のスカート部39Aが円筒状の心合わせ部を形成する一方で、横方向肩部39Bは軸受2に対する平坦な直接または間接的な突き合わせ部を形成する。
【0043】
緩衝ブロック20を収容する前記椀状部は、底部35を有する。底部35は、緩衝ブロック20とショックパッド104との間の中間壁を構成する。当該中間壁の下面は、前記サスペンションのショックパッド104に対する支持部である。当該中間壁の上面は、緩衝ブロック20に接触し、底部35は、緩衝ブロック20の下面22と軸方向に当接して当該緩衝ブロック20を受け止める。
【0044】
支持体30緩衝ブロック(本例では、特に、剛体状の一体品である支持体30を構成する板金)は、環状であり、前記椀状部の底部35は、テレスコピック式ダンパ106のロッド102の前記端部のための通路33を形成する中央開口を有している。緩衝ブロック支持体30は、基準軸心A1を中心として回転対称になっている。基準軸心A1は、基準位置にあるときのテレスコピック式ダンパ106、ショックパッド104および緩衝ブロック20の基準軸心とも合致する。本例のこの対称軸心A1は、軸受2の回転軸心A2と平行で合致しているが、別の構成、具体的には、基準軸心A1が軸受2の回転軸心A2と交差するという構成(例えば、図3を参照して示す実施形態等を参照のこと)も考えられ得る。
【0045】
緩衝ブロックカバー40により、車両への取付以前の時点で、緩衝ブロック20を下側支持体30と当該緩衝ブロックカバー40との間で予備緊張させられるようにして圧縮することが可能となる。カバー40は、例えば、剛体状のプラスチック系材料からなり得て、任意で、補強材またはインサートを具備している。緩衝ブロックカバー40は、緩衝ブロック20の上面23に当接する中央部41、および中央部41を取り囲むとともに下側支持体30の環状の周部32に当接する周部42を有する。緩衝ブロックカバー40は、さらに、軸受2を保護するための密封ジグザグ部(バッフル部)83を画定するように支承支持体80の外側の周面82の径方向外側に且つ少なくとも部分的に当該周面82と対向して設けられた外側の保護スカート部49を有している。
【0046】
カバー40と緩衝ブロック支持体30との取付は、カバー40を支持体30に確実に留め固定する留め固定手段によって行われる。この第1の実施形態において、カバー40を緩衝ブロック下側支持体30に固定する前記留め固定手段は、下側支持体30の環状の周部32から突設されるとともに下側支持体30の留め固定を確実に行うフラップ部50を有する。当該フラップ部50は、支持体30の環状の周部32上に分布、好ましくは等間隔で分布しており、個数は6つである。当該フラップ部50は、それぞれフック形状をしており、カバー40の留め固定口部60内の留め固定位置に入り込むように構成されている。当該留め固定口部60は、カバー40の周部42に設けられているとともに下側支持体30の固定を行うフラップ部50と対応している。より厳密に述べると、前記留め固定位置では、当該留め固定口部60に、対応する留め固定フラップ部50の基端部51が軸方向に挿通している。各フラップ部50は、さらに、先端部52を有する。対応する留め固定フラップ部50の先端部52は、軸方向と直交する成分に少なくとも沿って延在せしめられて下側支持体30の周部32とは反対側になるカバー40側の突き合わせ面と重なることにより、緩衝ブロック20の予備緊張力があるにもかかわらず、カバー40を当該緩衝ブロックの下側支持体30に確実に固定する。
【0047】
緩衝用仮部品組立品10は、さらに、ロックワッシャ90を含む。本例のロックワッシャ90は、板金のプレス成型品からなる金属製である。カバー40は、組付位置にて、ロックワッシャ90と下側支持体30との軸方向の間に位置せしめられる。ロックワッシャ90および下側支持体30には、フラップ部50と切欠部96の対が形成されている。なお、本願で図示しない一変形例では、下側支持体30がロックワッシャ90とカバー40との軸方向の間に位置せしめられるという構成にされてもよい。
【0048】
下側支持体30へのカバー40の取付は、留め固定フラップ部50をバヨネット留め固定の様式で切欠部96に突き合わせることによって達成される。実際に、緩衝用仮組立部品10は、機械的な順序の適切な動作に従って組み立てられる。
【0049】
具体的に述べると、緩衝用仮組立部品10は、対応する切欠部96と協働するように構成された複数の留め固定フラップ部50を含む。前記ロックワッシャの各フラップ部50はロックワッシャ90および第2要素のうちの一方に固定されているのに対し、切欠部96はロックワッシャ90および第2要素のうちの他方に形成されている。このようにして、留め固定フラップ部50がそれぞれ、対応する切欠部96と協働することにより、下側支持体30およびカバー40のいずれかを第1要素、残りを第2要素としたときに、当該第1要素をロックワッシャ90と当該第2要素との間に介在させるようにして両者を互いに組み付けることが可能となる。
【0050】
留め固定フラップ部50と、対応する切欠部96とが協働することにより、緩衝用仮組立部品10を軸方向に少なくとも1回確実にロックすることが可能となる。この回転ロックは、特殊に適合化された弾性係止手段によって確実に行われる。
【0051】
本実施形態において、フラップ部50は、それぞれ、下側支持体30に形成されているとともに、ロックワッシャ90に形成された切欠部96のうちの一つに対応している。つまり、緩衝用仮組立部品10は、切欠部96と同数の留め固定フラップ部50を含んでいる。
【0052】
組立時の第1工程にて、カバー40は、ロックワッシャ90と下側支持体30との軸方向の間になるように配置される。ロックワッシャ90と下側支持体30は、相対接近位置と相対相互貫通位置との間で相対的に移動可能である。この移動は、前記相対相互貫通位置にて留め固定フラップ部50がそれぞれ対応する切欠部96に貫通するように基準軸心A1に沿ってロックワッシャ90と下側支持体30とを相対的に並進運動させることによって実現される。
【0053】
前記相対相互貫通位置が得られると、第2工程にて、本組立を完了させるために、ロックワッシャ90と下側支持体30は、前記相対相互貫通位置と相対組付位置との間で相対的に移動可能である。この移動は、前記相対組付位置にてフラップ部50がそれぞれ対応する切欠部96の周方向延長部内に収容されて当該対応する切欠部のへりに軸方向当接した状態で保持されるように基準軸心A1周りにロックワッシャ90と緩衝ブロック下側支持体30とを相対的に回転運動させることによって実現される。
【0054】
切欠部96の形態としては、様々なものがあり得る。ただし、切欠部96は、それぞれ、基準軸心A1と平行に延びてフラップ部50の軸方向外枠が通ずるように寸法が設定された開口の第1部位961、および第1部位961から緩衝用仮組立部品10の基準軸心A1を基準として周方向に延びる第2部位962を有するものとされる。
【0055】
前記相対接近位置の前記相対相互貫通位置への移動時には、下側支持体30の各留め固定フラップ部50のうち、フック頭部を形成する先端部52が、当該フラップ部50に対応する留め固定口部60、そして、各切欠部96に付随する第1部位961内を軸方向に通り抜けさせられる。前記相対相互貫通位置では、各留め固定フラップ部50のうち、フック基部を形成する基端部51が、各切欠部96に付随する第1部位961内に配置される。
【0056】
次に、前記相対相互貫通位置から前記相対組付位置への移動時には、各留め固定フラップ部50の基端部51が、対応する切欠部96のうち、各フラップ部50の外枠(具体的には、付随する各先端部52の外枠)よりも小さい断面を有する周方向延長部962内へと回転して収容される。切欠部96の第2部位962を形成する前記周方向延長部の断面が第1部位961よりも小さいことで、対応する留め固定フラップ部50の先端部52は、軸方向に係合を生じることになる。このように、対応する各留め固定フラップ部50の先端部52が、前記相対組付位置にて、軸方向と直交する成分に少なくとも沿って延在せしめられるとともに、下側支持体30の周部32とは反対側になるカバー側40の対応する突き合わせ面と重なる。
【0057】
本例の前記突き合わせ面は、ロックワッシャ90に保持されている。これにより、前記相対組付位置では、各留め固定フラップ部50がロックワッシャ90によって軸方向に保持される。よって、カバー40は、緩衝ブロック下側支持体30に確実に留め固定される。
【0058】
当然ながら、カバー40の留め固定口部60は、緩衝仮組立部品10が前記相対相互貫通位置から前記相対組付位置へと移動する際にこの回転運動を制限することがないように寸法が設定されており、カバー40のうち、留め固定開口60を保持している周部42は、ロックワッシャ90と下側支持体30の環状の周部32との軸方向の間に位置せしめられる。
【0059】
緩衝用仮組立部品10は、逆回転を防止するために、さらに、前記相対組付位置の回転係止手段59を含む。本実施形態において、回転係止手段59は、留め固定フラップ部50を保持しない部品、つまり、カバー40と一体的なものである。
【0060】
当該回転係止手段59は、少なくとも1つの弾性ブレード部、好ましくは複数の弾性ブレード部、好ましくはフラップ部50と同数の弾性ブレード部からなる。
【0061】
前記弾性ブレード部は、それぞれ、一つの留め固定フラップ部50の周方向近傍に位置決めされるものであり、かつ、基部からブレード頭部へと延設されていて、対応するフラップ部50側に軸方向に突出するように周方向に且つ軸方向成分に沿って延びている。このとき、前記フラップ部はカバー40の留め固定口部60、さらに、切欠部96内を軸方向に貫通しているが、対応する当該留め固定口部60の周縁から周方向に延出した対応する各ブレード部も、対応する切欠部96に同じく貫通することになり、これにより、前記相対組付位置にあるときのロックワッシャ90の回転の妨げとなる。前記ブレード部は、プレス成型によって形成される。
【0062】
前記相対相互貫通位置では、各フラップ部50が、対応する切欠部96の第1部位961を貫通するのに対し、前記弾性ブレード部は、ロックワッシャ90の下面に拘束される。前記相互貫通位置から前記相対組付位置への基準軸心A1周りの回転移動時には、各フラップ部50の基端部51が切欠部96の第2部位962内へと回転して収容されることで切欠部96の第1部位961内の面部が開放され、前記弾性ブレード部が前記相対組付位置にて当該面部と対峙することになる。この弾性的な開放により、切欠部96の第1部位961が形成する空間内へと、対応する前記ブレード部が配される。この位置では、各係止ブレード部59の頭部が、対応する切欠部96内での妨害物となるほか、それぞれロックワッシャ90の肉厚内に位置することになるので、前記相対組付位置から前記相互貫通位置へとロックワッシャ90を動かすようなあらゆる回転が阻止される。
【0063】
本組立方法では、前記相対接近位置から前記相対相互貫通位置への移動過程時に、カバー40と支持体30とが並進し、これら2つの部品の間に緩衝ブロック20が位置するようにして接近する。この過程において、緩衝ブロック20がカバー40および下側支持体30によって圧縮される。これにより、緩衝ブロック20は、下側支持体30と緩衝ブロックカバー40との間で予備緊張させられる。前記相対相互貫通位置から前記相対組付位置への移動時にカバー40と下側支持体30とが相対的に回転することで緩衝用仮組立部品10と圧縮状態の緩衝ブロック20とが軸方向にロックされるので、前記予備緊張を維持することが可能となっている。
【0064】
つまり、まとめると、前記緩衝用仮組立部品は、下側支持体30およびカバー40のうちの一方を第1要素とし、下側支持体30およびカバー40のうちの残りを第2要素としたときに、前記第1要素はロックワッシャ90と前記第2要素との軸方向の間に位置しており、ロックワッシャ90および前記第2要素のうちの一方に形成された各留め固定フラップ部50にロックワッシャ90および前記第2要素のうちの他方に形成された切欠部96の一つが対応するようにしてフラップ部50および切欠部96がロックワッシャ90および前記第2要素に形成されており、緩衝用仮組立部品10を組み立てる方法は、少なくとも、下記の工程を備える:
-前記第1および第2要素のうちの一方に強固に連結した留め固定フラップ部50のうちの一つに対応するようにして前記第1および第2の要素のうちの他方にそれぞれ付随している切欠部96に、対応する留め固定フラップ部50を貫通させるようにして組付軸心A1に沿って前記第1要素と前記第2要素とを相対的に並進運動させることで、前記相対接近位置から前記相対相互貫通位置へと移動させる工程、ならびに
-組付軸心A1周りに前記第1要素と前記第2要素とを相対的に回転運動させることで前記相対組付位置にて留め固定フラップ部50がそれぞれ前記相対相互貫通位置と対応する切欠部96の周方向延長部内に収容されて軸方向に保持されるようにし、それにより、カバー40が緩衝ブロック下側支持体30に固定されるように、前記相対相互貫通位置から前記相対組付位置へと移動させる工程。
【0065】
図示の実施形態では、前記第1要素がカバー40であり、前記第2要素が下側支持体30である。しかしながら、図示しない一変形例として、前記第1要素が支持体30であってもよく、前記第2要素は緩衝ブロックカバー40となる。この場合、自動車の車体要素103の環状部1031は、カバー40の環状の周部とロックワッシャ90とによって軸方向に挟持されることになる。
【0066】
同じく図示しない他の変形例として、留め固定フラップ部50および切欠部96が、前記第1および第2要素の両方に分布していてもよい。
【0067】
本実施形態において、緩衝用仮組立部品10の最終組付は、車体要素103への当該緩衝用仮組立部品10の留め固定に伴って行われる。このため、緩衝用仮組立部品10は、事前に部分的に組み立てられてフラップ50の外周面とカバー40の留め固定口部60の内周面との径方向の干渉によって定位置に保持される。
【0068】
留め固定開口44が軸受2の径方向外側、好ましくは緩衝ブロック下側支持体30の外側に位置していることから(開口44を通過するあらゆる軸方向平面上にて下側支持体30が基準軸心A1と当該開口44との間に位置しているという意味)、カバー40と支持体30との間の留め固定は、自動車の車体要素103への緩衝用仮組立部品10の留め固定とは独立して行われる。
【0069】
カバー40は、アッパーマウント組立品100を車両の車体103に留め固定するのに適している。この目的のために、カバー40は、外周に分布した複数の留め固定連結部、本実施形態では3つの留め固定連結部(但し、これより少なくても多くてもよい)を有する。当該留め固定連結部は、それぞれ、開口44を有する。本実施形態において、開口44は、留め固定ねじを受け入れるように構成されたナットの機能的役割を果たすねじ穴である。しかしながら、開口44は、任意で、例えばリベット等の別の留め固定手段を受け入れるための孔であってもよいし、あるいは、ねじ/ナット組立品であってもよい。ナットとして機能するねじ部付き前記連結部は、前記留め固定ねじを確実に強固に留め固定するために、カバー40のプラスチック系材料の各開口44に局所的に取り付けられたインサートによる金属製とされている。
【0070】
本実施形態において、留め固定要素を形成する前記ナットは、断面視で「T」字状である。これにより、カバー40のプラスチック系材料に埋め込まれた当該ナットの構造極度が最大限に高まる。変形例として、例えば、平行六面体状等の様々な形状の留め固定要素が想定され得る。
【0071】
図3図11に、第2の実施形態を示す。この第2の実施形態は、留め固定フラップ部50が、ある順序の特定の動作に従って取り付けられるように設けられているのではなく、緩衝ブロック20とは反対側になるカバー40側で当該カバー40に対して加締めされることによって当該カバー40を緩衝ブロック下側支持体30に固定するという点で、第1の実施形態と本質的に異なる。
【0072】
本実施形態においても、自動車サスペンションストラットのアッパーマウント組立品100は、回転軸心A2を規定する滑り軸受または転がり軸受2と緩衝用仮組立部品10とを同じく備えているが、ここでの緩衝用仮組立部品10は軸受2と間接的に当接するものとなっている。
【0073】
同理由としては、この第2の実施形態の組立品100が、軸受2に当接する剛体状の中間支持部品70を備えており、この中間支持部品70が緩衝用仮組立部品10を支持する支持架台を形成しているからである。具体的に述べると、緩衝ブロック下側支持体30は、組立品100の中間支持部品70の円筒部72に嵌合調節させられるように構成された円筒状のスカート部39A、および組立品100の当該中間支持部品70の上面73に当接する外側の横方向肩部39Bを有する。
【0074】
中間支持部品70は、単一物のプラスチック系材料、好ましくは金属製インサートを具備しない単一物のプラスチック系材料からなり、軸受2の上側ワッシャ5に当接し、緩衝ブロック20の単一物の環状の下側支持体30に対する支持体として機能している。これにより、中間支持部品70は、緩衝用仮組立部品10の下側支持体30の回転軸心A1の、軸受2の回転軸心A2からの相対的な位置を定めるようになっている。好ましくは、緩衝ブロック20の下側支持体30(場合によっては、さらに、緩衝ブロックカバー40)に対する支持体として機能する中間支持部品70の上面は、回転対称軸心と合致する離型軸心に沿って軸方向に型抜きができるようにアンダーカットなしで形成されている。
【0075】
先述した実施形態と同様に、組立品100は、環状の支承支持体80を備える。支承支持体80は、前記サスペンションのコイルスプリング105のための、軸受2とは軸方向の反対側に面した直接のまたは間接的な突き合わせ面81を形成している。
【0076】
中間部品70が存在することで、軸受2の環状の空間3の少なくとも一部は、中間支持部品70と支承支持体80との間に画定される。
【0077】
中間支持部品70は、さらに、軸受2の径方向内側に設けられた内側のスカート部71を有する。好ましくは、内側のスカート部71は、ショックパッド104の上端部に対するフック形状を有する。
【0078】
緩衝用仮組立部品10は、さらに、カバー40を緩衝ブロック下側支持体30に確実に留め固定する留め固定手段を含む。
【0079】
前記留め固定手段は、前と変わらず留め固定フラップ部50を有する。しかしながら、本例の留め固定フラップ部50は、加締め手法によって実施される。
【0080】
より厳密には、緩衝用仮組立部品10は、下側支持体30の環状の周部32に一様に分布した複数の、図示の実施形態では8つの留め固定フラップ部50を含む。なお、どの実施形態であっても、当該フラップ部の個数は変更されてよい。フラップ部50の個数は、下限が3つ、好ましくは6つであり、上限が12個、好ましくは10個である。これにより、製造対象の組立品が、シンプルながら高い信頼性のものに維持される。
【0081】
各留め固定フラップ部50は、緩衝ブロック20とは反対側になるカバー40側で当該カバー40に対して加締めされることで、カバー40を緩衝ブロック下側支持体30に固定する。つまり、加締めによって先端部52が基端部51に対して曲げられる留め固定フラップ部となっている。
【0082】
カバー40は、各々の留め固定フラップ部50ごとに、対応する留め固定フラップ部50の少なくとも先端部52が折り畳まれた状態で当該カバー40に完全に収納するように構成されたフラップ部収納部43を有する。一構成として、緩衝ブロックカバー40は、車両の車体要素103に対する支承上面45を有する。車体要素103は、緩衝ブロックカバー40に当接することによって当該緩衝ブロックカバー40を覆う。留め固定フラップ部50の収納部43があるため、緩衝ブロック下側支持体30は、この突き合わせ上面45よりも飛び出さないように維持される。
【0083】
緩衝ブロックカバー40は、さらに、周部42を有する。周部42には、軸受2の径方向外側に設けられて緩衝用仮組立部品10を自動車の車体要素103に直接または間接的に固定するように構成された留め固定開口44が設けられている。本例の留め固定開口44は、下側支持体30の留め固定フラップ部50に対応する留め固定口部60とは独立したものとなっている。本例の緩衝ブロック20も、下側支持体30と緩衝ブロックカバー40との間で予備緊張させられる。
【0084】
緩衝ブロックカバー40の中央部41は、緩衝ブロック20の上面23に軸方向に当接する底部47および環状の側壁48を有する椀状部を形成している。側壁48は、好ましくは円筒状、円錐状または円錐台形状であり、かつ、適宜、緩衝ブロック20の環状の周面24に径方向に当接する。この径方向の圧力は、局所化されたもの、さらには、時折のものであり得る。具体的には、当該圧力により、基準軸心A1に対する心合わせを自動的に行うことが可能となる。
【0085】
同様に、下側支持体30の環状の中央部31も、緩衝ブロック20の下面22に軸方向に当接する底部35および緩衝ブロック20の環状の周面24に径方向に当接する環状の側壁を有する椀状部を形成している。好ましくは、当該環状の側壁は、円筒状である。
【0086】
よって、緩衝用仮組立部品10を組み立てる方法は、少なくとも、下記の工程を備える:
-それぞれ基端部51と先端部52が対で前記基準軸心と平行な軸心に沿って略並んだものである留め固定フラップ部50を、カバー40のうちの対応する留め固定口部60へと、未加締めの自由状態で貫通させるように組付軸心A1に沿って支持体30とカバー40とを相対的に並進運動させることで、前記相対接近位置から前記相対相互貫通位置へと移動させる工程、および
-前記留め固定フラップ部をそれぞれ加締めすることで、対応する当該留め固定部50の各先端部52がカバー40に保持された前記突き合わせ面に対して折り曲げられて当該カバー40のうちの対応する収納部43内に収容され、それにより、カバー40が軸方向に保持されることで当該カバー40が緩衝ブロック下側支持体30に固定されるようにして、前記相対相互貫通位置から前記相対組付位置へと移動させる工程。
【0087】
当然ながら、本発明についてのこれまでの説明は、例示に過ぎない。当業者であれば、本発明の範囲を逸脱しない範疇で、本発明の各種変更形態を作り出すことができるという点を理解されたい。
【0088】
例えば、前記切欠部は、同じ機能のまま形状を変えてもよい。
【0089】
本開示内容、図面および添付の特許請求の範囲から当業者に対して教示される全構成は、その他の所定の構成との関連で具体的に説明したものであるが、単独の構成でも任意の構成群としても、明確に排除されるようなものや技術的条件として不可能または理にかなわない組合せにならないかぎり本明細書で開示した別の構成や構成群と組み合わせられてもよい。
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【外国語明細書】