(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089099
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】熱動形過負荷継電器
(51)【国際特許分類】
H01H 61/00 20060101AFI20240626BHJP
H01H 61/01 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
H01H61/00 U
H01H61/01 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204256
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】508296738
【氏名又は名称】富士電機機器制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】小野木 悠真
(72)【発明者】
【氏名】三浦 颯斗
(72)【発明者】
【氏名】李 守連
(72)【発明者】
【氏名】鴨崎 武雄
(57)【要約】
【課題】組み立ての簡素化を図って自動組み立てを実現することが可能な熱動形過負荷継電器を提供する。
【解決手段】複数のバイメタル13U,13V,13Wに変位方向の一方及び他方から係合して変位する押しシフタ14及び引きシフタ15を備えている。押しシフタには変位方向に長穴が形成されており、引きシフタにも変位方向に長穴が形成されている。ケース12の隔壁の端面から突出する突起部45a1,45b1,45a2,45b2には、押しシフタ及び引きシフタの長穴に嵌合して変位方向に移動したときに、押しシフタ及び引きシフタの脱落を防止するシフタ脱落防止部48b,49bが形成されている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースの内側に設けた複数の隔壁と、
前記複数の隔壁の間に配置され、加熱されたときに湾曲する複数のバイメタルと、
前記複数の隔壁の端部を覆うように取付けられ、前記バイメタルが湾曲したときに、前記バイメタルに押されて変位するシフタと、
前記シフタの変位に押されて回動するレバーと、
前記レバーの回動に押されて接点を反転させる反転機構と、を備えた熱動形過負荷継電器において、
前記シフタの変位方向に長手方向が延在して形成された複数の長穴と、
前記複数の隔壁の端面から突出して前記複数の長穴が摺動自在に嵌合しており、前記シフタの変位を案内する複数の突起部と、
前記複数の突起部に前記複数の長穴が篏合した前記シフタを変位方向に移動することで前記隔壁からの前記シフタの脱落を防止するシフタ脱落防止部と、を設けていることを特徴とする熱動形過負荷継電器。
【請求項2】
前記シフタ脱落防止部は、
前記複数の突起部において所定の突起部の先端に形成され、前記変位方向に対して同一平面内で直交する方向に隆起している頭部と、
前記所定の突起部に篏合する前記長穴の端部に形成され、前記頭部が通過可能な装着穴と、を備えており、
前記装着穴で前記頭部を通過させた前記シフタを前記変位方向に移動させることで、前記頭部が前記突起部の前記長穴からの抜けとめとして機能することを特徴とする請求項1記載の熱動形過負荷継電器。
【請求項3】
前記レバーは、前記変位方向に対して同一平面内で直交する方向から前記シフタに係合したときに、前記ケースの壁部に係合して前記レバーの脱落を防止するレバー脱落防止部を設けていることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱動形過負荷継電器。
【請求項4】
前記レバー脱落防止部は、前記ケースの壁部を挟持する前記レバーに形成した一対の対向板であることを特徴とする請求項3記載の熱動形過負荷継電器。
【請求項5】
前記シフタは、複数の前記バイメタルに前記変位方向の一方及び他方から係合して変位する押しシフタ及び引きシフタであり、
前記押しシフタ及び前記引きシフタの各々に前記シフタ脱落防止部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱動形過負荷継電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱動形過負荷継電器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱動形過負荷継電器(サーマルリレー)は、過電流が流れ続けるときに、熱によってバイメタルが湾曲することでトリップ動作し、電磁接触器や配線用遮断器を遮断させることで主回路を過負荷から保護する。熱動形過負荷継電器は、特許文献1に示されるように、バイメタルが加熱されて湾曲すると、シフタを押すことで反転機構を作動させ、トリップ状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱動形過負荷継電器には、主回路を過負荷及び欠相から保護する2E(二要素)形式があり、ケース12の内部に、U・V・Wの三相のバイメタル、押しシフタ、引きシフタ、レバー、反転機構などが配置されている。
この2E形式の熱動形過負荷継電器の組み立ては、押しシフタ、引きシフタ及びレバーを一体に組み立てた後、押しシフタ及び引きシフタをバイメタルの自由端部に係合し、レバーを反転機構の補償バイメタルに係合する工程を行っている。しかし、押しシフタ、引きシフタ及びレバーの組み立て手順が複雑であるとともに、バイメタルの自由端部への押しシフタ及び引きシフタの位置合わせ、補償バイメタルへのレバーの位置合わせが困難であった。
【0005】
本発明の目的は、組み立ての簡素化を図って自動組み立てを実現することが可能な熱動形過負荷継電器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る熱動形過負荷継電器は、ケースの内側に設けた複数の隔壁と、複数の隔壁の間に配置され、加熱されたときに湾曲する複数のバイメタルと、複数の隔壁の端部を覆うように取付けられ、バイメタルが湾曲したときに、バイメタルに押されて変位するシフタと、シフタの変位に押されて回動するレバーと、レバーの回動に押されて接点を反転させる反転機構と、を備えた熱動形過負荷継電器において、シフタの変位方向に長手方向が延在して形成された複数の長穴と、複数の隔壁の端面から突出して複数の長穴が摺動自在に嵌合しており、シフタの変位を案内する複数の突起部と、複数の突起部に複数の長孔が篏合したシフタを変位方向に移動することで隔壁からのシフタの脱落を防止するシフタ脱落防止部と、を設けている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の熱動形過負荷継電器によれば、シフタがケースから脱落するのを防止するシフタ脱落防止部を設けたことで、組み立ての簡素化を図って自動組み立てを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る第1実施形態の熱動形過負荷継電器をカバーを外した状態で示す図である。
【
図7】押しシフタ、引きシフタ及び差動レバーの配置位置を示す図である。
【
図9】引きシフタをケースに取付けた状態を示す図である。
【
図10】押しシフタをケースに取付けた状態を示す図である。
【
図11】差動レバーをケースに取付けた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図面は模式的なものであって、現実のものとは異なる場合がある。また、以下の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものでない。すなわち、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。以下の説明では、互いに直交する三方向を、便宜的に、縦方向、幅方向、及び奥行方向とする。
【0010】
図1は、本発明に係る第1実施形態の熱動形過負荷継電器11を示す図である。
熱動形過負荷継電器11は、過負荷及び欠相から保護する三素子構造の2E(二要素)形式の装置である。
熱動形過負荷継電器11は、
図1及び
図2に示すように、ケース12の内部に、U・V・Wの三相のバイメタル13U,13V,13Wと、押しシフタ14と、引きシフタ15と、差動レバー16と、反転機構24と、リセット棒25と、が配置されている。ここで、差動レバー16は、本発明ではレバーとして記載されている。
【0011】
三相のバイメタル13U,13V,13Wは、奥行方向に延び、縦方向及び奥行方向に沿った板状に形成されており、奥行方向の手前側が固定端となり、奥側が自由端である。各バイメタル13U,13V,13Wは、奥行方向の手前側が主端子に接続され、奥行方向の奥側がヒータ26の一端に接合されている。ヒータ26は、各バイメタル13U,13V,13Wに巻き付けられ、他端が奥行方向の手前側で接続端子27に接合されている。
【0012】
押しシフタ14及び引きシフタ15は、厚み方向が同一平面となるようにケース12に支持されている。過負荷状態になると、三相のバイメタル13U,13V,13Wが湾曲することで押しシフタ14が幅方向の他方側に変位し、押しシフタ14の変位とともに引きシフタ15及び差動レバー16が変位する。また、欠相発生時になると、欠相の生じた相の湾曲しないバイメタルが引きシフタ15の変位を規制し、押しシフタ14が過負荷状態と同様に変位するようにしている。
【0013】
反転機構24は、過負荷を検出したときに接点を反転させる、つまりa接点を閉じ、b接点を開く機構であり、補償バイメタル31と、釈放レバー32と、引張りばね33と、可動板34と、板ばね35と、連動板36と、を備える。反転機構24は、実施形態の主要な構成ではないため概略を説明する。
補償バイメタル31は、奥行方向に延び、奥行方向及び縦方向に沿った平板状に形成され、奥行方向の手前側が釈放レバー32に固定され、奥行方向の奥側が自由端となり、レバー16に係合している。
釈放レバー32は、奥行方向に延び、奥行方向及び縦方向に沿った板状に形成され、縦方向に沿った支軸によって回動可能に支持されており、奥行方向の奥側が引張りばね33に接触している。引張りばね33は、可動板34を奥行方向の奥側へと引っ張っている。
【0014】
可動板34は、奥行方向及び縦方向に沿った平板状であり、奥行方向の奥側を支点にして奥行方向の手前側が幅方向に変位可能である。可動板34は、直立している位置が死点となり、幅方向の一方側又は他方側への力が作用するときに、引張りばね33の引張力によって幅方向の一方側又は他方側へ傾く。そして、通常時には、幅方向の一方側に傾いているが、過負荷状態になると、補償バイメタル31を介して釈放レバー32によって押されることで、幅方向の他方側に傾く。可動板34は、奥行方向の奥側が補助端子の一方に接続されており、奥行方向の手前側に可動接点が形成されている。
【0015】
板ばね35は、奥行方向に延び、奥行方向及び縦方向に沿った平板状であり、奥行方向の奥側が補助端子の他方に接続され、可動板34に対向した奥行方向の手前側には固定接点が形成されている。通常時には、板ばね35の固定接点に対して可動板34の可動接点が離間しているが、過負荷状態になると、可動板34が幅方向の他方側に傾くことで、板ばね35の固定接点に可動板34の可動接点が接触する。これら固定接点及び可動接点がa接点を構成し、a接点が閉じるときにトリップ状態となる。
【0016】
連動板36は、幅方向及び奥行方向に沿った板状に形成され、縦方向に沿った支軸によって回動可能に支持されており、奥行方向の奥側が可動板34に係合している。連動板36は、可動板34に連動して回動することで、図には表れない連動板36の裏側で、接点の開閉を行なう。すなわち、通常時には固定接点に可動接点が接触しているが、過負荷状態になると、連動板36が回動することで、固定接点に対して可動接点が離間する。これら固定接点及び可動接点がb接点を構成し、b接点が開くときにトリップ状態となる。
【0017】
リセット棒25は、トリップ状態から復旧させるための操作子であり、奥行方向を軸方向とする略円柱状に形成され、ケース12のうち、縦方向の他方側で、幅方向の他方側に配置されている。リセット棒25は、奥行方向に変位可能で、且つ軸周りに回動可能な状態で、ケース12に支持され、さらに縦方向に延びる板ばね35によって奥行方向の手前側に付勢されている。リセット棒25には、初期位置と、手動リセット位置と、自動リセット位置と、がある。初期位置は、奥行方向の手前側がケース12よりも突出した位置である。手動リセット位置は、初期位置から奥行方向の奥側に押されただけの位置である。自動リセット位置は、初期位置から奥行方向の奥側に押され、且つ奥行方向の手前側から見て時計回りに約90度だけ回されることで奥行方向の位置が保持される位置である。
【0018】
ケース12は、
図2に示すように、ケース12の内側に隔壁41~43と、桁板44と、が形成されている。ここで、桁板44は、ケースの壁部として記載されている。隔壁41~43の縦方向の他方側には、複数の突起部45a1,45b1が幅方向に沿って並んで形成されている。隔壁41,43に形成されている突起部45a1は柱状に突出している。隔壁42に形成されている突起部45b1は、隔壁42から突出する柱部48aと、柱部48aの先端から縦方向の他方側に隆起している頭部48bとが形成されている。隔壁41~43の縦方向の一方側にも幅方向に並んで複数の突起部45a2,45b2が形成されている。隔壁41,43に形成されている突起部45a2は柱状に突出している。隔壁42に形成されている突起部45b2は、隔壁42から突出する柱部49aと、柱部49aの先端から縦方向の他方側に隆起している頭部49bとが形成されている。
【0019】
押しシフタ14は、
図3に示すように、幅方向の一方側に、隔壁41の突起部45a1が嵌り合う長穴51が形成され、幅方向の他方側に、隔壁42の突起部45b1、及び隔壁43の突起部45a1が嵌り合う長穴52が形成されている。ここで、長穴52の幅方向の一方側の穴幅は、突起部45b1の頭部の48b縦方向の寸法より大きく、長穴52の幅方向の他方側の穴幅は、突起部45b1の頭部48bの縦方向の寸法より小さく、突起部45b1の柱部48aの縦方向の寸法より大きく形成されている。この長穴52の幅方向の一方側が、本発明に記載されている装着穴に対応している。また、押しシフタ81には、縦方向の一方側に係合片53~55が形成されている。
【0020】
引きシフタ15は、幅方向が長辺となり、縦方向が短辺となる略方形の絶縁体である。引きシフタ15には、
図4に示すように、幅方向の一方側に、隔壁41の突起部45a2が嵌り合う長穴85が形成され、幅方向の他方側に、隔壁43の突起部45b2が嵌まり合う長穴86が形成され、長穴85及び長穴86の間であって縦方向の一方側に長穴87が形成されている。ここで、長穴87の幅方向の他方側の穴幅は、突起部45b2の頭部49aの縦方向の寸法より大きく、長穴87の幅方向の一方側の穴幅は、突起部45b2の頭部49aの縦方向の寸法より小さく、突起部45b2の略円柱状に突出している部分の縦方向の寸法より大きく形成されている。この長穴87の幅方向の他方側が、本発明に記載されている装着穴に対応している。また、引きシフタ82には、縦方向の他方側に係合片88~90が形成されているとともに、引きシフタ82の幅方向の他方側には、縦方向の他方側で開口して一方側に延在する係合溝91が形成されている。
【0021】
図5は差動レバー16を示す斜視図であり、
図6(a)は差動レバー16を幅方向の他方側から見た図であり、
図6(b)は(a)のA-A断面を示している。
差動レバー16は、縦方向の一方側に、一対の対向板92,93が形成されている。一対の対向板92,93は、縦方向及び幅方向に沿った平板状に形成され、奥行方向に離間した状態で互いに対向し、奥行方向に延びる円柱状の支軸94によって連結されている。一対の対向板92,93の離隔距離は、ケース12の桁板44の厚さよりも僅かに大きく、支軸94の直径は、引きシフタ82の係合溝91の溝幅よりも僅かに小さい。差動レバー16の縦方向の他方側には、幅方向の一方側を向いて縦方向及び奥行方向に沿った平面とした端面95が形成されている。また、差動レバー16の縦方向の他方側には、幅方向の他方側に向かって凸となる奥行方向に沿った曲面である端面96が形成されている。
【0022】
押しシフタ14は、
図7に示すように、長穴51がケース12の隔壁41の突起部45a1に嵌め合わされ、長穴52が隔壁42の突起部45b1及び隔壁43の突起部45a1に嵌め合わされることで、幅方向に沿って変位可能に配置されている。長穴52の幅方向の一方側に隔壁42の突起部45b1があるときには、頭部48bが通過可能な穴幅とされているので、押しシフタ14の取外しが可能となる。長穴52の幅方向の他方側に、隔壁42の突起部45b1があるときには、突起部45b1の頭部48bが抜け止めとなり、押しシフタ14の取外しが不可となる。また、押しシフタ14の係合片53は、U相のバイメタル13Uの自由端に幅方向の他方側から係合し、係合片54は、V相のバイメタル13Vの自由端に幅方向の他方側から係合している。係合片55は、W相のバイメタル13Wの自由端に幅方向の他方側から係合し、幅方向の他方側に向かう先端56に差動レバー16が係合する。
【0023】
引きシフタ15は、
図7に示すように、長穴85がケース12の隔壁41及び突起部45a2に嵌め合わされ、長穴86が隔壁43の突起部45a2に嵌め合わされ、長穴87が隔壁42の突起部b2に合わされることで、幅方向に沿って変位可能に配置されている。長穴58の幅方向の他方側に隔壁42の突起部45b2があるときには、頭部49bが通過可能な穴幅とされているので、引きシフタ82の取外しが可能となる。長穴58の幅方向の一方側に、隔壁42の突起部45b2があるときには、突起部45b2の頭部49bが抜け止めとなり、引きシフタ15の取外しが不可となる。また、引きシフタ15の係合片88は、U相のバイメタル13Uの自由端に幅方向の一方側から係合し、係合片89は、V相のバイメタル13Vの自由端に幅方向の一方側から係合している。係合片90は、W相のバイメタル13Wの自由端に幅方向の一方側から係合している。
【0024】
差動レバー16は、
図7及び
図8に示すように、一対の対向板92,93がケース12の桁板44を挟み、支軸94が係合溝91に嵌り合うことで、ケース12に支軸94を中心として回動可能に支持されている。差動レバー16の幅方向の一方側を向いている端面95は、押しシフタ14の係合片55の先端56に係合する。差動レバー16の幅方向の他方側を向いている端面96には、反転機構24の補償バイメタル31の自由端が係合している。
【0025】
第1実施形態の熱動形過負荷継電器11は、過負荷状態になると、三相のバイメタル13U,13V,13Wが湾曲することで押しシフタ14及び引きシフタ15が幅方向の他方側に変位する。差動レバー16は、押しシフタ14及び引きシフタ15が幅方向の他方側へ変位することで、端面95が係合片55の先端に押され、支軸93を回転中心として反時計回りに回動する。これにより、反転機構24は、補償バイメタル31の自由端側が幅方向の他方側へ変位することで、a接点を閉じ、b接点を開いたトリップ状態となる。
【0026】
また、三相のバイメタル13U,13V,13Wの何れかに欠相が生じた場合について説明する。例として、U相のバイメタル13Uが欠相とすると、バイメタル13Uは他の相のバイメタル13V,13Wに対して加熱されず低温となるので、湾曲変位が発生しないか、湾曲変位が発生したとしても他のバイメタル13V,13Wに対して小さくなる。このように三相のバイメタル13U,13V,13W湾曲変位量が相ごとに変化すると、押しシフタ14は、最も湾曲変位が大きいバイメタル13V,13Wの変位量だけ補償バイメタル31側に変位するが、引きシフタ15は最も湾曲変位が小さいバイメタル13Uの変位量しか変位せず、押しシフタ14と引きシフタ15の変位量に差が生じる。このような差動が生じると、支軸94回りとした差動レバー16の反時計回りの回動量が、過負荷状態と比較して大きくなる。この差動レバー16の回動によって、差動レバー16の変位量が押しシフタ14の変位量よりも大きくなる。これにより、欠相が生じた場合には、過負荷電流が流れたときより早くトリップ状態となる。
【0027】
次に、第1実施形態の熱動形過負荷継電器80を構成する押しシフタ14、引きシフタ15及び差動レバー16の組付けについて説明する。
先ず、引きシフタ15の組付けについて
図9を参照して説明する。引きシフタ82を、隔壁41~43の突起部45a2、突起部45b2を設けている側に、奥行き方向の奥側から手前側に向けて移動していく。そして、引きシフタ15の長穴85,86に突起部45a2を嵌め合わせ、長穴87の幅方向の他方側(装着穴)に突起部45b2の頭部49bを嵌め合わせる。次いで、引きシフタ15を幅方向の他方側に向けてスライド(
図9で示す矢印S1方向)していく。このとき、係合片88~90が三相のバイメタル13U,13V,13Wの自由端に幅方向の一方側から係合して、引きシフタ15の位置合わせが完了する。この引きシフタ15の位置合わせが完了した際に、突起部45b2が長穴87の幅方向の一方側に移動し、突起部45b2の頭部49bが長穴87の幅方向の一方側に対して抜け止めとされ、引きシフタ15が、奥行き方向の奥側への脱落が防止された状態でケース12に組付けられる。
【0028】
次に、押しシフタ14の組付けについて
図10を参照して説明する。押しシフタ14を、隔壁41~43の突起部45a1、突起部45b1を設けている側に、奥行き方向の奥側から手前側に向けて移動していく。そして、押しシフタ14の長穴51に突起部45a1を嵌め合わせ、長穴52の幅方向の一方側(装着穴)に突起部45b1の頭部48bを嵌め合わせる。次いで、押しシフタ14を幅方向の一方側に向けてスライド(
図10で示す矢印S2方向)していく。このとき、係合片53~55が三相のバイメタル21U,21V,21Wの自由端に幅方向の他方側から係合して、押しシフタ81の位置合わせが完了する。この押しシフタ14の位置合わせが完了した際に、突起部45b1が長穴52の幅方向の他方側に移動し、突起部45b1の頭部48bが長穴52の他方側に対して抜け止めとされ、押しシフタ14が、奥行き方向の奥側への脱落が防止された状態でケース12に組付けられる。
【0029】
次に、差動レバー16の組付けについて
図18及び
図11を参照して説明する。一対の対向板92,93が引きシフタ15の係合溝91及び桁板44に当接する位置まで、差動レバー16を縦方向の一方側(
図11で示す矢印S3方向)に移動する。これにより、差動レバー16は、
図8に示すように、一対の対向板92,93が桁板44を挟み込んだ状態で配置され、奥行き方向の奥側への脱落が防止された状態でケース12に組付けられる。
なお、上述した押しシフタ14、引きシフタ15及び差動レバー16の組立手順では、引きシフタ15、次いで押しシフタ14の順でケース12に組付けていったが、押しシフタ14、次いで引きシフタ15の順でケース12への組み付けも可能である。
【0030】
次に、第1実施形態の熱動形過負荷継電器11の主要な作用について説明する。
押しシフタ14は、奥行き方向の奥側から手前側に向けて移動することで長穴51に突起部45a1を嵌め合わせ、長穴52の幅方向の一方側(装着穴)に突起部45b1の頭部48bを嵌め合わせた後、幅方向の一方側に向けてスライドする。これにより、押しシフタ14の係合片53~55が三相のバイメタル13U,13V,3Wの自由端に係合して位置合わせが完了する。この位置合わせが完了した押しシフタ14は、突起部45b1の頭部48bが長穴52の他方側からの抜け止めとして機能し、脱落が防止された状態でケース12に組付けられる。
【0031】
また、引きシフタ15は、奥行き方向の奥側から手前側に向けて移動することで長穴85,86に突起部45a2を嵌め合わせ、長穴87の幅方向の他方側(装着穴)に突起部45b2の頭部49bを嵌め合わせた後、幅方向の他方側に向けてスライドする。これにより、押しシフタ14の係合片88~90が三相のバイメタル13U,13V,13Wの自由端に係合して位置合わせが完了する。この位置合わせが完了した引きシフタ15も、突起部45b2の頭部49bが長穴87の幅方向の一方側からの抜け止めとして機能し、脱落が防止された状態でケース12に組付けられる。
【0032】
また、差動レバー16は、縦方向の一方側に移動することで支軸94が引きシフタ82の係合溝91に嵌り合い、幅方向の一方側を向いている端面95が押しシフタ14の係合片55の先端56に係合し、幅方向の他方側を向いている端面96が反転機構24の補償バイメタル31に係合した状態で位置合わせが完了する。この位置合わせが完了した差動レバー16は、一対の対向板92,93がケース12の桁板44を挟むことで脱落が防止された状態でケース12に組付けられる。
したがって、押しシフタ14、引きシフタ15及び差動レバー16の各々の部品は、個別にケース12にスライドして組付けることができるので、組み立て手順の簡素化を図ることができる。
【0033】
また、押しシフタ14、引きシフタ15及び差動レバー16の組付けは、3次元方向に直交する奥行き方向、縦方向及び幅方向の移動で組付けることができるので、ロボットハンドによる自動組み立てを実現することができる。
さらに、半製品状態の熱動形過負荷継電器11をライン上に搬送しても、押しシフタ14、引きシフタ15及び差動レバー16をケース12からの脱落を確実に防止することができるので、生産能率を向上させることができる。
【0034】
以上、限られた数の実施形態を参照しながら説明したが、権利範囲はそれらに限定されるものではなく、上記の開示に基づく実施形態の改変は、当業者にとって自明のことである。
【符号の説明】
【0035】
11 熱動形過負荷継電器
12 ケース
13U,13V,13W バイメタル
14 押しシフタ
15 引きシフタ
16 差動レバー
24 反転機構
25 リセット棒
26 ヒータ
27 接続端子
31 補償バイメタル
32 釈放レバー
33 引張りばね
34 可動板
35 板ばね
36 連動板
41~43 隔壁
44 桁板
45a1,45b1 突起部
48a 柱部
48b 頭部
45a2,45b2 突起部
49a 柱部
49b 頭部
51 長穴
52 長穴
53~55 係合片
85~87 長穴
88~90 係合片
91 係合溝
92,93対向板
94 支軸
95,96 端面