(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000891
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】損傷箇所予測装置、損傷箇所予測方法、損傷箇所予測プログラム及び学習済みモデル生成方法
(51)【国際特許分類】
E01C 23/01 20060101AFI20231226BHJP
【FI】
E01C23/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099867
(22)【出願日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】505398952
【氏名又は名称】中日本高速道路株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391024825
【氏名又は名称】ジオ・サーチ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清 文雄
(72)【発明者】
【氏名】久野 剛直
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 史典
(72)【発明者】
【氏名】森田 英明
(72)【発明者】
【氏名】小澤 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】山根 博之
(72)【発明者】
【氏名】山下 真理子
(72)【発明者】
【氏名】太田 雅彦
【テーマコード(参考)】
2D053
【Fターム(参考)】
2D053AA32
2D053AB06
2D053AD01
2D053FA02
(57)【要約】
【課題】舗装の損傷が発生しそうな箇所を予測することを可能とする。
【解決手段】舗装された道路を走行しながら前記道路に向けて照射されたマイクロ波の反射波のデータに基づいた入力データを取得する取得部101と、前記入力データ及び前記道路において損傷が発生する可能性のある特徴を示す箇所の情報を教師データとして機械学習を行って、前記入力データを入力すると前記道路において損傷が発生する可能性が有る箇所を出力する学習済みモデルを用いて、前記入力データから前記道路において損傷が発生する可能性が有る箇所を予測する予測部102と、予測部102の予測の結果を提示する提示部103と、を備える、予測装置10が提供される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
舗装された道路を走行しながら前記道路に向けて照射されたマイクロ波の反射波のデータに基づいた入力データを取得する取得部と、
前記入力データ及び前記道路において舗装の損傷が発生する可能性のある特徴を示す箇所の情報を教師データとして機械学習を行って、前記入力データを入力すると前記道路において損傷が発生する可能性が有る箇所を出力する学習済みモデルを用いて、前記入力データから前記道路において舗装の損傷が発生する可能性が有る箇所を予測する予測部と、
前記予測部の予測の結果を提示する提示部と、
を備える、損傷箇所予測装置。
【請求項2】
前記予測部は、車輪が道路に接地する領域において前記箇所を予測する、請求項1に記載の損傷箇所予測装置。
【請求項3】
前記予測部は、前記入力データが前記道路の走行方向にスライスされた複数のデータ、前記入力データが前記道路の横断方向にスライスされた複数のデータ、前記道路の深さ方向にスライスされた複数のデータの少なくともいずれかを用いて前記箇所を予測する、請求項1又は請求項2に記載の損傷箇所予測装置。
【請求項4】
前記予測部は、前記入力データが前記道路の深さ方向にスライスされた複数のデータを用いた予測の結果である第1の結果と、前記入力データが前記道路の横断方向にスライスされた複数のデータを用いた予測の結果である第2の結果とを組み合わせて、前記箇所を予測する、請求項3に記載の損傷箇所予測装置。
【請求項5】
前記予測部は、前記第1の結果と前記第2の結果との論理積により前記箇所を予測する、請求項4に記載の損傷箇所予測装置。
【請求項6】
前記予測部は、前記第1の結果と前記第2の結果との同時確率による絞り込みにより前記箇所を予測する、請求項4に記載の損傷箇所予測装置。
【請求項7】
プロセッサが、
舗装された道路を走行しながら前記道路に向けて照射されたマイクロ波の反射波のデータに基づいた入力データを取得し、
前記入力データ及び前記道路において舗装の損傷が発生する可能性のある特徴を示す箇所の情報を教師データとして機械学習を行って、前記入力データを入力すると前記道路において舗装の損傷が発生する可能性が有る箇所を出力する学習済みモデルを用いて、前記入力データから前記道路において損傷が発生する可能性が有る箇所を予測し、
前記予測の結果を提示する、
処理を実行する、損傷箇所予測方法。
【請求項8】
コンピュータに、
舗装された道路を走行しながら前記道路に向けて照射されたマイクロ波の反射波のデータに基づいた入力データを取得し、
前記入力データ及び前記道路において舗装の損傷が発生する可能性のある特徴を示す箇所の情報を教師データとして機械学習を行って、前記入力データを入力すると前記道路において舗装の損傷が発生する可能性が有る箇所を出力する学習済みモデルを用いて、前記入力データから前記道路において舗装の損傷が発生する可能性が有る箇所を予測し、
前記予測の結果を提示する、
処理を実行させる、損傷箇所予測プログラム。
【請求項9】
プロセッサが、
舗装された道路を走行しながら前記道路に向けて照射されたマイクロ波の反射波のデータに基づいた入力データ及び前記道路において舗装の損傷が発生する可能性のある特徴を示す箇所の情報を教師データとして機械学習を行い、
該機械学習により、前記入力データを入力すると前記道路において舗装の損傷が発生する可能性が有る箇所を出力するための学習済みモデルを生成する、
学習済みモデル生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、損傷箇所予測装置、損傷箇所予測方法、損傷箇所予測プログラム及び学習済みモデル生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
日々車両が走行する道路は、車両から受ける荷重の作用、道路が施設された場所の温度変化、道路への雨水の影響により舗装が損傷する。舗装の損傷の具体例には、ひび割れ、ポットホール等がある。ポットホールとは、道路の表層が剥がれて出来る丸い穴又は凹みである。このような道路の損傷を迅速に把握し、道路を維持管理するために、道路の路面性状を把握する作業が日常的に行われており、特許文献1には、低コストで精度良く路面性状の判定を行えることを目的とした学習済みモデル生成方法および路面性状判定装置の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1で開示された技術は、ポットホール等の路面性状の有無を判定することは可能であるが、今後舗装の損傷が発生しそうな箇所を予測するものではない。
【0005】
本開示は、上記の点に鑑みてなされたものであり、舗装の損傷が発生しそうな箇所を予測することが可能な損傷箇所予測装置、損傷箇所予測方法、損傷箇所予測プログラム及び学習済みモデル生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係る損傷箇所予測装置は、舗装された道路を走行しながら前記道路に向けて照射されたマイクロ波の反射波のデータに基づいた入力データを取得する取得部と、前記入力データ及び前記道路において舗装の損傷が発生する可能性のある特徴を示す箇所の情報を教師データとして機械学習を行って、前記入力データを入力すると前記道路において損傷が発生する可能性が有る箇所を出力する学習済みモデルを用いて、前記入力データから前記道路において舗装の損傷が発生する可能性が有る箇所を予測する予測部と、前記予測部の予測の結果を提示する提示部と、を備える。
【0007】
本発明の第2態様に係る損傷箇所予測装置は、第1態様に係る損傷箇所予測装置であって、前記予測部は、車輪が道路に接地する領域において前記箇所を予測する。
【0008】
本発明の第3態様に係る損傷箇所予測装置は、第1態様又は第2態様に係る損傷箇所予測装置であって、前記予測部は、前記入力データが前記道路の走行方向にスライスされた複数のデータ、前記入力データが前記道路の横断方向にスライスされた複数のデータ、前記道路の深さ方向にスライスされた複数のデータの少なくともいずれかを用いて前記箇所を予測する。
【0009】
本発明の第4態様に係る損傷箇所予測装置は、第3態様に係る損傷箇所予測装置であって、前記予測部は、前記入力データが前記道路の深さ方向にスライスされた複数のデータを用いた予測の結果である第1の結果と、前記入力データが前記道路の横断方向にスライスされた複数のデータを用いた予測の結果である第2の結果とを組み合わせて、前記箇所を予測する。
【0010】
本発明の第5態様に係る損傷箇所予測装置は、第4態様に係る損傷箇所予測装置であって、前記予測部は、前記第1の結果と前記第2の結果との論理積により前記箇所を予測する。
【0011】
本発明の第6態様に係る損傷箇所予測装置は、第4態様に係る損傷箇所予測装置であって、前記予測部は、前記第1の結果と前記第2の結果との同時確率による絞り込みにより前記箇所を予測する。
【0012】
本発明の第7態様に係る損傷箇所予測方法は、プロセッサが、舗装された道路を走行しながら前記道路に向けて照射されたマイクロ波の反射波のデータに基づいた入力データを取得し、前記入力データ及び前記道路において舗装の損傷が発生する可能性のある特徴を示す箇所の情報を教師データとして機械学習を行って、前記入力データを入力すると前記道路において舗装の損傷が発生する可能性が有る箇所を出力する学習済みモデルを用いて、前記入力データから前記道路において損傷が発生する可能性が有る箇所を予測し、前記予測の結果を提示する、処理を実行する。
【0013】
本発明の第8態様に係る損傷箇所予測プログラムは、コンピュータに、舗装された道路を走行しながら前記道路に向けて照射されたマイクロ波の反射波のデータに基づいた入力データを取得し、前記入力データ及び前記道路において舗装の損傷が発生する可能性のある特徴を示す箇所の情報を教師データとして機械学習を行って、前記入力データを入力すると前記道路において舗装の損傷が発生する可能性が有る箇所を出力する学習済みモデルを用いて、前記入力データから前記道路において舗装の損傷が発生する可能性が有る箇所を予測し、前記予測の結果を提示する、処理を実行させる。
【0014】
本発明の第9態様に係る学習済みモデル生成方法は、プロセッサが、舗装された道路を走行しながら前記道路に向けて照射されたマイクロ波の反射波のデータに基づいた入力データ及び前記道路において舗装の損傷が発生する可能性のある特徴を示す箇所の情報を教師データとして機械学習を行い、該機械学習により、前記入力データを入力すると前記道路において舗装の損傷が発生する可能性が有る箇所を出力するための学習済みモデルを生成する。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、舗装の損傷が発生しそうな箇所を予測することが可能な損傷箇所予測装置、損傷箇所予測方法、損傷箇所予測プログラム及び学習済みモデル生成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態に係る予測装置を含んだ損傷箇所予測システムの概略構成を示す図である。
【
図2】反射応答波形の検出を説明するための図である。
【
図3】電磁波装置から照射された電磁波の反射の様子を示す図である。
【
図4】予測装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図5】予測装置の機能構成の例を示すブロック図である。
【
図6】学習装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図7】学習装置の機能構成の例を示すブロック図である。
【
図8】予測装置による予測処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】Yボリュームデータ及びZボリュームデータの基となる画像の例を示す図である。
【
図10】Yボリュームデータ及びZボリュームデータを説明する図である。
【
図11】予測装置による予測結果の提示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一または等価な構成要素および部分には同一の参照符号を付与している。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0018】
図1は、本実施形態に係る予測装置を含んだ損傷箇所予測システムの概略構成を示す図である。
図1に示すように、本実施形態に係る損傷箇所予測システム1は、車両90に搭載されている。
【0019】
損傷箇所予測システム1は、アスファルト等で舗装された道路80の舗装の損傷が生じそうな箇所、例えばホットポールが発生しそうな箇所を予測するシステムである。損傷箇所予測システム1は、予測装置10と、電磁波装置30とを含んで構成される。予測装置10は、道路80の舗装の損傷が生じそうな箇所を予測するための装置である。
【0020】
電磁波装置30は、ライン上に複数設けられた電磁波照射部及び受信部を備える。電磁波装置30は、車両90の進行方向が橋軸方向、電磁波装置30のライン方向が橋軸直角方向となるように、例えば車両90の後方下部等に設けられる。電磁波照射部は、マイクロ波等の電磁波を道路80に向かって照射する。受信部は、道路80の舗装内部の各部において反射された反射波を受信する。
【0021】
電磁波照射部としては、公知の電磁波レーダーシステムを特に限定無く用いることができるが、送受信センサを多数並設したレーダーシステムを用いることが、作業効率と精度の点で好ましい。また送受信センサは、アレイ状のアンテナであるアレイアンテナを用いることが、作業効率の点で好ましい。
【0022】
図2に示すように、電磁波装置30は、道路80の評価対象範囲95を車両進行方向に走査しながら、表面から道路80の内部(深さ)方向へ電磁波を照射し、その反射波を受信する。これにより、評価対象範囲95の各グリッドについて、深度に応じた反射波強度を検出する。1グリッドは、例えば、1cm×1cmであり、1ライン幅は2.0mとすることができる。この場合、1ラインにつき200グリッド分の反射応答波形が検出される。
【0023】
電磁波装置30から照射された電磁波は、道路80の層の境界で反射する。しかし、道路80の層の境界又は層の内部において異常があると、電磁波装置30から照射された電磁波は正常な状態とは異なるパターンで反射する。
図3は、電磁波装置30から照射された電磁波の反射の様子を示す図である。道路80がアスファルト舗装されており、表層、基層、上層路盤及び下層路盤からなる舗装がなされている場合、各層が正常な状態であれば、
図3の(a)で示したように電磁波が反射する。一方、層の境界でクラックが発生したり、層の内部で空洞が発生したりしていれば、
図3の(b)で示したように電磁波が一部乱反射する。
図3の(b)のように電磁波が乱反射している箇所は、表層の部分においては一見正常に見えるが、下の層では異常が生じているので、既に舗装が損傷している、又は今後舗装の損傷が発生すると考えられる箇所である。
【0024】
予測装置10は、道路80の舗装の損傷が生じそうな箇所を予測する際に、電磁波装置30が道路80に向けて照射した電磁波の、道路80からの反射波のデータを用いる。反射波のデータは、3次元処理されて画像データとして用いられ得る。また、予測装置10は、道路80の舗装の損傷が生じそうな箇所を予測する際に、電磁波の反射波のデータと、道路の舗装の損傷箇所の情報とを教師データとして機械学習技術により学習させて生成した学習済みモデルを用いる。予測装置10は、道路80からの反射波の情報を学習済みモデルに入力することにより、道路80の舗装の損傷が生じそうな箇所を学習済みモデルから出力させることで、道路80の舗装の損傷が生じそうな箇所を予測することができる。
【0025】
電磁波装置30は、取得した各グリッドについての反射応答波形(深度に応じた反射波強度)の情報を、予測装置10へ出力する。なお、電磁波装置30は、車両90に取り付けられている形態に限定されず、作業員に保持される形態、手押し車の形態など、他の形態でもよい。また、予測装置10も車両90の車内に搭載されている形態に限定されず、作業員に保持される形態など、他の形態でもよい。
【0026】
図4は、予測装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0027】
図4に示すように、予測装置10は、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、ストレージ14、入力部15、表示部16、光ディスク駆動部17、通信インタフェース(通信I/F)18の各構成を有する。各構成は、バス19を介して相互に通信可能に接続されている。
【0028】
CPU11は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU11は、ROM12又はストレージ14からプログラムを読み出し、RAM13を作業領域としてプログラムを実行する。CPU11は、ROM12又はストレージ14に記録されているプログラムにしたがって、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。本実施形態では、ROM12又はストレージ14には、道路80の舗装の損傷が発生する場所を予測するための予測プログラム(損傷箇所予測プログラム)が格納されている。
【0029】
ROM12は、各種プログラム及び各種データを格納する。RAM13は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ14は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する。
【0030】
入力部15は、マウス等のポインティングデバイス、及びキーボードを含み、各種の入力を行うために使用される。表示部16は、たとえば、液晶ディスプレイであり、各種の情報を表示する。表示部16は、タッチパネル方式を採用して、入力部15として機能しても良い。
【0031】
光ディスク駆動部17は、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)又はブルーレイディスクなどの各種の記録媒体に記憶されたデータの読み込み、及び記録媒体に対するデータの書き込み等を行う。
【0032】
通信インタフェース18は、他の機器と通信するためのインタフェースであり、たとえば、イーサネット(登録商標)、FDDI、Wi-Fi(登録商標)等の規格が用いられる。
【0033】
上記の予測プログラムを実行する際に、予測装置10は、上記のハードウェア資源を用いて、各種の機能を実現する。予測装置10が実現する機能構成について説明する。
【0034】
図5は、予測装置10の機能構成の例を示すブロック図である。
【0035】
図5に示すように、予測装置10は、機能構成として、取得部101、予測部102および提示部103を有する。各機能構成は、CPU11がROM12またはストレージ14に記憶された予測プログラムを読み出し、実行することにより実現される。
【0036】
取得部101は、電磁波装置30が道路80に向けて照射した電磁波の反射波のデータを取得する。取得部101は、電磁波の反射波のデータが3次元処理されて生成された画像データを取得してもよい。
【0037】
予測部102は、取得部101が取得した反射波のデータを、予め学習させた学習済みモデル21に入力し、学習済みモデル21から予測結果を出力させることで、道路80の舗装の損傷が生じそうな箇所を予測する。予測部102は、電磁波の反射波のデータを3次元処理して画像データに変換して、画像データを学習済みモデル21に入力してもよい。また、電磁波の反射波のデータが3次元処理されて生成された画像データを取得部101が取得した場合、予測部102は、取得部101が取得した画像データを学習済みモデル21に入力してもよい。
【0038】
予測部102が予測に使用する学習済みモデル21は、道路に向けて照射された電磁波の反射波のデータから生成された画像データを入力すると、当該道路において損傷が生じる可能性がある場所を抽出して出力するよう、予め学習されたモデルである。例えば、学習済みモデル21は、損傷が生じる可能性がある確率が所定の閾値を超えたものを損傷が生じる可能性がある場所として出力するように、予め学習されたモデルである。
【0039】
なお、予測部102は、道路80に電磁波が照射された領域の全てについて道路80の舗装の損傷が生じそうな箇所を予測してもよいが、車両の車輪が道路80に接地する領域において、道路80の損傷が生じそうな箇所を予測してもよい。車両の車輪が道路80に接地する領域とは、車両の通常の走行により主に車輪が道路80に接地する領域をいい、多くの車両が走行した後で轍となりうる領域をいう。
【0040】
画像データを学習済みモデル21に入力することで予測する場合、予測部102は、3次元画像を所定方向にスライスした画像データを学習済みモデル21に入力して、学習済みモデル21に予測させてもよい。道路80における車両90の走行方向をX方向、X方向に垂直であって水平な方向、すなわち道路80の横断方向をY方向、道路80の深さ方向をZ方向とする。そして、Y方向にスライスした画像をYスライス画像とし、複数のYスライス画像の集まりをYボリュームデータとする。また、Z方向にスライスした画像をZスライス画像とし、複数のZスライス画像の集まりをZボリュームデータとする。
【0041】
この場合において、予測部102は、Yボリュームデータ及びZボリュームデータを学習済みモデル21に入力し、学習済みモデル21が抽出した結果を絞り込んでもよい。予測部102は、絞り込み処理として、双方の抽出箇所の論理積による絞り込みを行ってもよい。また、予測部102は、絞り込み処理として、同時確率による絞り込み処理を行ってもよい。同時確率は、(Zボリュームデータの確度×Yボリュームデータの確度)1/2で求まる。絞り込み処理を行うことで、予測部102は、誤検出等の不要な抽出箇所の削減を図ることができる。
【0042】
なお、学習済みモデル21は、Yボリュームデータ及びZボリュームデータに加え、X方向にスライスした画像であるXスライス画像の集まりであるXボリュームデータをさらに用いて学習されたモデルであってもよい。
【0043】
図5の例では、学習済みモデル21は予測装置10の外部に存在するが、学習済みモデル21は予測装置10の内部に存在してもよい。
【0044】
提示部103は、予測部102が予測した、道路80の舗装の損傷が生じそうな箇所の情報を表示部16に提示する。
【0045】
予測装置10は、係る構成を有することにより、電磁波装置30が道路80に向けて照射した電磁波の反射波のデータに基づいて、道路80の舗装の損傷が生じそうな箇所の情報を予測し、予測した結果を提示することができる。
【0046】
続いて、予測装置10が予測に用いる学習済みモデルを学習させて、学習済みモデルを生成する学習装置について説明する。
【0047】
図6は、学習装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0048】
図6に示すように、学習装置20は、CPU21、ROM22、RAM23、ストレージ24、入力部25、表示部26、光ディスク駆動部27、通信インタフェース(通信I/F)28の各構成を有する。各構成は、バス29を介して相互に通信可能に接続されている。
【0049】
CPU21は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU21は、ROM22又はストレージ24からプログラムを読み出し、RAM23を作業領域としてプログラムを実行する。CPU21は、ROM22又はストレージ24に記録されているプログラムにしたがって、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。本実施形態では、ROM22又はストレージ24には、道路80の舗装の損傷が発生する場所を予測するためのモデルを学習させて学習済みモデルを生成する学習プログラムが格納されている。
【0050】
ROM22は、各種プログラム及び各種データを格納する。RAM23は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ24は、HDD又はSSDにより構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する。
【0051】
入力部25は、マウス等のポインティングデバイス、及びキーボードを含み、各種の入力を行うために使用される。表示部26は、たとえば、液晶ディスプレイであり、各種の情報を表示する。表示部26は、タッチパネル方式を採用して、入力部25として機能しても良い。
【0052】
光ディスク駆動部27は、CD-ROM又はブルーレイディスクなどの各種の記録媒体に記憶されたデータの読み込み、及び記録媒体に対するデータの書き込み等を行う。
【0053】
通信インタフェース28は、他の機器と通信するためのインタフェースであり、たとえば、イーサネット(登録商標)、FDDI、Wi-Fi(登録商標)等の規格が用いられる。
【0054】
上記の学習プログラムを実行する際に、学習装置20は、上記のハードウェア資源を用いて、各種の機能を実現する。学習装置20が実現する機能構成について説明する。
【0055】
図7は、学習装置20の機能構成の例を示すブロック図である。
【0056】
図7に示すように、学習装置20は、機能構成として、取得部201及び学習部202を有する。各機能構成は、CPU21がROM22またはストレージ24に記憶された学習プログラムを読み出し、実行することにより実現される。
【0057】
取得部201は、モデルを学習して学習済みモデル21を生成するための教師データを取得する。学習済みモデル21の生成のための教師データは、電磁波装置30が道路80に向けて照射した電磁波の反射波のデータに基づいて生成された3次元画像データと、その道路80において損傷が発生している箇所の情報と、の組を含む。
【0058】
学習部202は、取得部201が取得した教師データを用いてモデルを学習して学習済みモデル21を生成する。学習部202は、学習済みモデル21が予測した、道路80において損傷が発生する可能性がある特徴を示す箇所と、道路80において実際に損傷が発生した箇所との誤差が少なくなる方向に学習することで、学習済みモデル21を生成する。モデルの学習のための教師データの数は所定の数に限定されないが、過学習が起きない程度の数とすることが望ましい。
【0059】
学習部202によるモデルの学習のアルゴリズムは特定のものに限定されない。本実施形態のような教師あり学習で用いられるモデル又はアルゴリズムとしては、回帰分析、決定木、サポートベクターマシン(SVM)、ニューラルネットワーク、アンサンブル学習、ランダムフォレスト等が挙げられる。また、事前にクラス分類を行ってから、各クラスに対して教師あり学習を行ってもよい。その際のクラス分類は教師ありでもよく、教師なしでもよい。
図7の例では、学習済みモデル21は学習装置20の外部に存在するが、学習済みモデル21は学習装置20の内部に存在してもよい。
【0060】
学習部202は、学習済みモデル21を生成する際に、Xボリュームデータ、Yボリュームデータ及びZボリュームデータの少なくともいずれかを教師データとする。学習部202は、1つのボリュームデータのみを用いてモデルを学習させてもよいが、複数のボリュームデータを用いてモデルを学習させることで、1つのボリュームデータのみを用いて学習させる場合と比較して予測の精度を向上させることができる。
【0061】
学習装置20が生成した学習済みモデル21を用いることで、予測装置10は、電磁波装置30が道路80に向けて照射した電磁波の反射波のデータに基づいて、道路80の舗装の損傷が生じそうな箇所の情報を予測し、予測した結果を提示することができる。
【0062】
次に、予測装置10の作用について説明する。
【0063】
図8は、予測装置10による予測処理の流れを示すフローチャートである。CPU11がROM12又はストレージ14から予測プログラムを読み出して、RAM13に展開して実行することにより、予測処理が行なわれる。
【0064】
CPU11は、ステップS101において、電磁波装置30が道路80に向けて照射した電磁波の反射波のデータを取得する。
【0065】
反射波のデータを取得すると、続いてCPU11は、ステップS102において、反射波のデータを学習済みモデルに入力して、道路80の舗装の損傷が生じそうな箇所を予測する。
【0066】
CPU11は、道路80の舗装の損傷が生じそうな箇所を予測する際に、Yボリュームデータ及びZボリュームデータを学習済みモデル21に入力してもよい。
図9は、Yボリュームデータ及びZボリュームデータの基となる画像の例を示す図である。
図9の(a)がZボリュームデータの基となるZスライス画像の例であり、
図9の(b)がYボリュームデータの基となるYスライス画像の例である。また
図10は、3次元画像をスライスして得られるYボリュームデータ及びZボリュームデータの例を示す図である。
図10の(a)が複数のZスライス画像からなるZボリュームデータの例であり、
図10の(b)が複数のYスライス画像からなるYボリュームデータの例である。
【0067】
そして、CPU11は、Yボリュームデータ及びZボリュームデータを学習済みモデル21に入力し、学習済みモデル21が抽出した結果を絞り込んでもよい。CPU11は、絞り込み処理として、双方の抽出箇所の論理積による絞り込みを行ってもよい。また、CPU11は、絞り込み処理として、同時確率による絞り込み処理を行ってもよい。同時確率は、(Zボリュームデータの確度×Yボリュームデータの確度)1/2で求まる。絞り込み処理を行うことで、CPU11は、誤検出等の不要な抽出箇所の削減を図ることができる。
【0068】
道路80の舗装の損傷が生じそうな箇所の情報を予測すると、続いてCPU11は、ステップS103において、予測結果を提示する。
【0069】
図11は、予測装置10による予測結果の提示例を示す図である。
図11の(a)は、Yボリュームデータを学習済みモデル21に入力した結果の例であり、
図11の(b)は、Zボリュームデータを学習済みモデル21に入力した結果の例である。
図11に示したように、電磁波の反射波のデータに基づいて生成した画像データを学習済みモデル21に入力することで、予測装置10は、道路80の舗装に損傷が生じていると実際に解析者が検出した場所と同様の場所を抽出することができる。
【0070】
予測装置10は、係る処理を実行することにより、電磁波装置30が道路80に向けて照射した電磁波の反射波のデータに基づいて、道路80の舗装の損傷が生じそうな箇所の情報を予測し、予測した結果を提示することができる。
【0071】
予測装置10及び学習装置20は、ハードウェア構成としてCPU11、21を備えているが、さらにGPU(Graphics Processing Unit)を備えていてもよい。予測装置10及び学習装置20は、CPU11、21に加えてGPUを備えていることで、CPU11、21とGPUとで、予測処理及び学習処理について並列処理を行うことができる。予測装置10及び学習装置20は、CPU11、21とGPUとで、予測処理及び学習処理について並列処理を行うことで、舗装内の損傷箇所の検出処理速度の向上、及び学習モデルの学習処理速度の向上が期待できる。
【0072】
学習装置20は、予測装置10が学習済みモデル21を用いて出力した予測結果を用いて、学習済みモデル21を追加学習させてもよい。例えば、舗装の損傷が発生する可能性がある特徴を示す箇所において、予測部102で検出ができない箇所がある場合は、学習装置20は、検出できなかった箇所のデータを入力として追加学習を行うことで検出精度を向上させてもよい。学習装置20は、学習済みモデル21を追加学習させることで学習済みモデル21の精度を向上させることが可能となる。
【0073】
また、各々の地域の道路において、道路の構造、気象環境、交通量その他の環境条件の違いにより、舗装に損傷が発生する可能性がある特徴について変化することが考えられる。従って、学習装置20は、地域又は路線毎に学習済みモデル21を作成して舗装の損傷予測の最適化を行っても良い。地域又は路線毎に学習済みモデル21が作成されることで、予測装置10は、地域又は路線毎の違いが考慮されていない学習済みモデル21を用いた場合と比べ、舗装に損傷が発生する可能性がある場所を精度よく検出することができる。
【0074】
なお、上記各実施形態でCPUがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した学習処理及び予測処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、学習処理及び予測処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0075】
また、上記各実施形態では、学習処理及び予測処理のプログラムがROMまたはストレージに予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。プログラムは、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の非一時的(non-transitory)記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【符号の説明】
【0076】
10 予測装置
20 学習装置
30 電磁波装置
80 道路
90 車両