(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089104
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】成形部品及び時計
(51)【国際特許分類】
B29C 43/18 20060101AFI20240626BHJP
G04B 37/18 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
B29C43/18
G04B37/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204269
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002022
【氏名又は名称】弁理士法人コスモ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 圭四郎
(72)【発明者】
【氏名】加賀 ゆめ菜
【テーマコード(参考)】
4F204
【Fターム(参考)】
4F204AA42
4F204AC03
4F204AD03
4F204AH81
4F204FA01
4F204FB01
4F204FB11
4F204FN11
4F204FN17
(57)【要約】
【課題】機器を組み付けるための各部品を一体化することにより搬送作業を簡素化することができる成形部品、及びそのような成形部品に含まれる複数の部品が組み合わされてなる時計を提供する。
【解決手段】成形部品80は、ウレタン樹脂により成形された樹脂プレート82を備え、樹脂プレート82は、シート状のシート領域82bと時計本体20に組み付けられる複数の組み付け部品とを有し、シート領域82bと複数の組み付け部品とが一体となっており、複数の組み付け部品の各々は、シート領域82bから分離可能とされる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材料により成形された樹脂プレートを備え、
前記樹脂プレートは、シート状のシート領域とモジュール部品に組み付けられる複数の組み付け部品とを有し、前記シート領域と前記複数の組み付け部品とが一体となっており、
前記複数の組み付け部品の各々は、前記シート領域から分離可能とされる、
成形部品。
【請求項2】
前記シート領域と前記複数の組み付け部品とは一体成形されてなる、請求項1に記載の成形部品。
【請求項3】
前記複数の組み付け部品のそれぞれは、前記シート領域上にランナーで接続されている、請求項1に記載の成形部品。
【請求項4】
ランナー部品と、モジュール部品に組み付けられる複数の組み付け部品と、孔が形成された縁部と、を有し、前記ランナー部品、前記複数の組み付け部品、及び前記縁部が一体となっており、樹脂材料により成形された樹脂フレームと、
前記縁部の前記孔に嵌め込まれたモジュール部品と、
を備え、
前記複数の組み付け部品の各々は、前記ランナー部品から分離可能とされる、
成形部品。
【請求項5】
前記ランナー部品は、前記複数の組み付け部品のそれぞれを囲むように設けられた第1ランナーと、外枠を構成する第3ランナーと、隣り合う前記第1ランナーの間、及び前記第1ランナーと前記第3ランナーの間をそれぞれ接続する第2ランナーと、を有し、
前記第1ランナーと前記縁部の間、または前記第3ランナーと前記縁部との間は、前記第2ランナーによって接続される、
請求項4に記載の成形部品。
【請求項6】
前記樹脂プレートは、前記樹脂材料が圧縮成形により成形されてなる、請求項1または4に記載の成形部品。
【請求項7】
前記樹脂材料はウレタン樹脂である、請求項2に記載の成形部品。
【請求項8】
前記複数の組み付け部品の各々は、少なくとも2種類以上の異なる色で混色成形されている、請求項2に記載の成形部品。
【請求項9】
前記樹脂プレートでは、前記シート領域と前記複数の組み付け部品の各々との境界部に間欠的な切り込み線が設けられている、請求項1または4に記載の成形部品。
【請求項10】
前記モジュール部品は時計本体であり、
前記複数の組み付け部品は、前記時計本体を腕に装着するためのバンド部品と、前記時計本体を囲むように組み付けられるベゼル部品と、前記ベゼル部品の外周部に組み付けられる外装部品と、を含む、
請求項1または4に記載の成形部品。
【請求項11】
前記樹脂プレートでは、前記バンド部品及び前記ベゼル部品が連なって設けられている、請求項9に記載の成形部品。
【請求項12】
前記シート領域には、前記複数の組み付け部品の各々の近傍に該複数の組み付け部品の種類に応じて異なる識別表示が表示されている、請求項1に記載の成形部品。
【請求項13】
時計本体と、樹脂材料により一体となるとともに前記時計本体に組み付けられる複数の組み付け部品と、が組み合わされてなる時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形部品及び時計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、模型等を組み立てるための複数の部品を含む樹脂による成形部品が知られている。この種の成形部品は、通常、外枠を構成するランナーの内側に各部品が設けられており、各部品をランナーから取り外して模型を組み立てるようになっている。例えば特許文献1には、ランナーと複数の模型部品とが射出成形により一体成形されることで形成された樹脂成形部品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、腕時計のような機器は、複数の部品が組み付けられることで製造されており、従来は、搬送作業が煩雑になりがちであるという問題があった。一方で、このような機器を組み付けるための各部品を、樹脂材料による成形部品として一体に構成したものは、これまで提案されていなかった。
【0005】
本発明は、機器を組み付けるための各部品を一体化することにより搬送作業を簡素化することができる成形部品、及びそのような成形部品に含まれる複数の部品が組み合わされてなる時計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の成形部品は、樹脂材料により成形された樹脂プレートを備え、前記樹脂プレートは、シート状のシート領域とモジュール部品に組み付けられる複数の組み付け部品とを有し、前記シート領域と前記複数の組み付け部品とが平面状に一体となっており、前記複数の組み付け部品の各々は、前記シート領域から分離可能とされる。
【0007】
本発明の他の成形部品は、ランナー部品と、モジュール部品に組み付けられる複数の組み付け部品と、孔が形成された縁部と、を有し、前記ランナー部品、前記複数の組み付け部品、及び前記縁部が一体となっており、樹脂材料により成形された樹脂フレームと、前記縁部の前記孔に嵌め込まれたモジュール部品と、を備え、前記複数の組み付け部品の各々は、前記ランナー部品から分離可能とされる。
【0008】
本発明の時計は、時計本体と、樹脂材料により一体となるとともに前記時計本体に組み付けられる複数の組み付け部品と、が組み合わされてなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、機器を組み付けるための各部品を一体化することにより搬送作業を簡素化することができる成形部品、及びそのような成形部品に含まれる複数の部品が組み合わされてなる時計を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る腕時計を前方右側から見た全体斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る腕時計の分解斜視図である。
【
図3】第1実施形態に係る成形部品の正面図である。
【
図4】第1実施形態に係る成形部品から時計本体を取り外した正面斜視図である。
【
図5】第2実施形態に係る成形部品の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
図1~4を参照して本発明の第1実施形態について説明する。
図1及び
図2に示す腕時計(時計)10は、複数の組み付け部品(以下、単に「部品」という。)が組み付けられて金属製のネジ部材(不図示)でネジ止めされることにより構成されており、ガラス板GPを含む時計本体(モジュール部品)20、時計本体20を腕に装着するための装着部品30、腕時計10の尾錠枠を構成する尾錠枠部品42、腕時計10のつく棒を構成するつく棒部品44、装着部品30に組み付けられる4つの四隅外装部品(外装部品)50、一対の紐状部品60、一対の紐取付部品70、一対の上下外装部品72、及び一対の紐留め部品74を有している。腕時計10は、時計本体20、一対の紐状部品60、一対の紐留め部品74、及びネジ部材を除く各部品が、樹脂材料、詳しくはウレタン樹脂により形成されている。
【0012】
時計本体20の正面側には、表示部20aが設けられている。表示部20aは、時刻や日付、曜日等の情報を表示することができ、ガラス板GPを介して視認することができる。以下では、腕時計10を腕に装着して視認側から腕時計10を見たときの上側(
図1における上側)を上、下側を下、左側を左、右側を右とする。また、視認側を正面側ともいい、その反対側(腕側)を裏面側又は背面側という。また、腕時計10を腕に装着したときの腕側を内側といい、内側の反対側を表側として説明する。
【0013】
図2に示すように、時計本体20は、略正八角形の角筒状のケース22、ケース22の四隅部にそれぞれ設けられた4つのリューズ22a、及びケース22の背面側に設けられた裏蓋24を有している。ケース22の内部には、図示しない時計モジュールが設けられている。時計モジュールは、上述した表示部20aに時刻等の情報を表示するよう電気的に駆動する回路部などの時計機能に必要な各種の精密部品を備えている。ガラス板GPは、ケース22の内側に設けられている。
【0014】
装着部品30は、腕に装着されるバンド部(バンド部品)32、時計本体20が嵌め込まれるベゼル部(ベゼル部品)34、及び一対の接続部36を有している。バンド部32は、時計本体20の上側に設けられる第1バンド部32a、時計本体20の下側に設けられる第2バンド部32bを含んでいる。第1バンド部32aの先端部32a1寄りの位置には、第2バンド部32bの先端部32b1を通すための定革部32cが設けられている。第1バンド部32aの先端部32a1には、尾錠枠部品42が設けられている。尾錠枠部品42の内側には、第2バンド部32bに設けられた複数の小穴32b2に挿通されてバンド部32の長さを調整するためのつく棒部品44が設けられている。
【0015】
図2に示すように、ベゼル部34は、時計本体20の外周に沿った略正八角形の角筒状をなし、時計本体20よりも一回り大きくされている。ベゼル部34は、前後方向に開口する開口部34aを有しており、その内側に後方から時計本体20が嵌め込まれることにより時計本体20を囲むように組み付けられる。
図1に示すように、ベゼル部34に時計本体20が嵌め込まれることにより、時計本体20の表示部20aが開口部34aから前方側に露出する。また、ベゼル部34の四隅部には、時計本体20に設けられた各リューズ22aが挿通される第1リューズ孔34bがそれぞれ設けられている。
【0016】
一対の接続部36は、それぞれベゼル部34と第1バンド部32aの間、及びベゼル部34と第2バンド部32bの間を接続するように設けられている。即ち、装着部品30では、バンド部32とベゼル部34が接続部36を介して連なって設けられている。各接続部36には、それぞれ紐取付部品70を取り付けるための2つの取付孔36aが設けられている。2つの取付孔36aは、前後方向に貫通しており、左右に並列に設けられている。各接続部36のうち取付孔36aが設けられた部位は他の部位と比べて薄肉とされており、これにより、第1バンド部32a及び第2バンド部32bをベゼル部34に対して後方側に曲げ易いようになっている。
【0017】
4つの四隅外装部品50は、それぞれベゼル部34の外周部の四隅に沿った形状をなしており、互いに同形状とされている。四隅外装部品50は、ベゼル部34の外周部に前方側から凹凸嵌合等により嵌め込まれるようになっている。四隅外装部品50は、例えば、装着部品30と異なる色で着色されており、また、4つの四隅外装部品50の間でも異なる色が着色されている。これにより、腕時計10の装飾性が高められている。また、各四隅外装部品50には、時計本体20に設けられた各リューズ22aが挿通される第2リューズ孔50aがそれぞれ設けられている。
【0018】
一対の紐取付部品70は、一対の紐状部品60を装着部品30に取り付けるための部材とされる。各紐取付部品70は、略厚板状の板状部70a、及び板状部70aに設けられた2つの紐挿通孔70bを有している。各紐挿通孔70bは、左右方向に貫通する略アーチ状をなしており、板状部70aの前側の面から前方に突出するように設けられている。各紐取付部品70は、紐挿通孔70bが取付孔36aに対して後方側から挿通されて前方側に露出した形で、各接続部36に対してその後方側から組み付けられている。
【0019】
一対の紐状部品60は、一対の上下外装部品72を装着部品30に取り付けるためのループ状の短い紐部材であり、各接続部36の前方側に露出する2つの紐挿通孔70bに挿通されている。即ち、1つの紐取付部品70に対して一つの紐状部品60が取り付けられている。一対の上下外装部品72は、略円筒状の部材であり、その内側に紐状部品60が挿通されることによりそれぞれ保持されている。また、各上下外装部品72は、表示部20aの上下に位置するような配置で保持されている。表示部20aの上下に保持された各上下外装部品72の前面には、例えばロゴ等を表示することができ、腕時計10の装飾性を高めることができる。
【0020】
一対の紐留め部品74は、略角筒状の部材であり、その内側に、紐状部品60のうち上下外装部品72が保持されていない側の端部が重ねて挿通されることによりそれぞれ保持されている。紐留め部品74と上下外装部品72の間には、紐挿通孔72bが介在している。また、紐状部品60は、上下外装部品72が保持された部分の両側が、ベゼル部34と四隅外装部品50の間に挟み込まれており、動かし難くなっている。このため、紐留め部品74の位置を紐挿通孔72b側にずらすことにより、紐留めをして紐のたるみを解消することができるようになっている。
【0021】
次に、
図3及び
図4を参照して、本実施形態に係る成形部品80について説明する。
図3及び
図4に示すように、成形部品80は、ウレタン樹脂が圧縮成形されて一体成形されることによりその全体が設けられており、略矩形状の樹脂プレート82を有している。樹脂プレート82は、外縁を構成する外縁領域(第3ランナー)82aと、外縁領域82aの内側に設けられたシート状のシート領域82bと、を有している。外縁領域82aは、樹脂プレート82の外枠に位置している。また、外縁領域82aは、
図3及び
図4の左右における上側において、一部が切れた形状になっている。外縁領域82aで全て囲ってしまうと樹脂の流れが悪くなり、成形不良が起こるため、樹脂の流れを良くするために、外縁領域82aの一部に隙間を設けている。このように、どこかに樹脂の流れを作る場所が必要である。
図4に示すように、シート領域82b上には、上述した腕時計10を構成する各部品のうち、時計本体20、一対の紐状部品60、一対の紐留め部品74、及びネジ部材を除く各部品が設けられている。以下では、シート領域82b上に設けられて互いに組み付けられていない状態の各部品については、上述した各部品の符号にアルファベットMを付すものとする。
【0022】
具体的には、
図4に示すように、シート領域82b上には、装着部品30M、尾錠枠部品42M、つく棒部品44M、四隅外装部品50M1,50M2、一対の紐取付部品70M、及び一対の上下外装部品72Mが、それぞれ間隔を空けてシート領域82bから分離可能に設けられている。さらに、シート領域82b上には、時計本体20が設けられている(
図3参照)。時計本体20は、成形部品80の一部ではなく、成形部品80の成形後に、シート領域82b上の嵌め込み縁部84内の嵌め込み孔84aに嵌め込まれる。なお、時計本体20に組み付けられる四隅外装部品50M1,50M2は4つとされるが、本実施形態では、シート領域82b上に互いに色の異なる四隅外装部品50M1,50M2が設けられている。
【0023】
また、成形部品80は、複数種類の異なる色で混色成形されることにより設けられている。本実施形態では、例えば、装着部品30Mがシート領域82bと共に灰色とされ、尾錠枠部品42M及びつく棒部品44Mが赤色とされ、8つの四隅外装部品50M1,50M2のうちシート領域82bの上側に設けられた4つの四隅外装部品50M1が青色、シート領域82bの下側に設けられた4つの四隅外装部品50M2が緑色とされ、一対の紐取付部品70Mが黒色とされ、一対の上下外装部品72Mが紫色とされる。
【0024】
シート領域82b上に設けられた各部品(時計本体20を除く)の周りには、各部品を囲むように第1ランナーL1が設けられている。また、シート領域82b上には、隣り合う第1ランナーL1の間、及び外縁領域(第3ランナー)82aと第1ランナーL1の間をそれぞれ接続する第2ランナーL2が略格子状に設けられている。なお、外縁領域82aは、第1ランナーL1および第2ランナーL2よりも太く形成されている。各部品と第1ランナーL1の境界部には、切り込み線C1が間欠的に設けられている。このため、各部品を後方側に押すことにより、各部品をシート領域82bから容易に取り外して分離できるようになっている。第1ランナーL1及び第2ランナーL2は、太線状の形状をなしており、各部品をシート領域82bから取り外す際にシート領域82bに破れ等が生じることを防止するための補強リブとして設けられている。
【0025】
シート領域82bでは、各部品の傍に各部品の種類を識別するための識別表示IDが付されている。識別表示IDは、「(アルファベット)-(数字)」の形で表示されている。識別表示IDのうち、(アルファベット)の部分は、A~Fのいずれかで表示されて部品の種類を表しており、(数字)の部分は、01又は02のいずれかで表示されている。また、シート領域82bでは、ベゼル部34の外周の四隅に、嵌め付けられる各四隅外装部品50の識別表示IDと対応する案内表示(不図示)がそれぞれ表示されている。
【0026】
図4に示すように、シート領域82b上の一部には、時計本体20が嵌め込まれる嵌め込み孔84aが設けられている。嵌め込み孔84aは、時計本体20の輪郭に沿った形状とされ、時計本体20が隙間なく確実に嵌め込まれるようになっている。嵌め込み孔84aの周りには、嵌め込み孔84aを囲むようにシート領域82b上から隆起する嵌め込み縁部84が設けられている。これにより、嵌め込み孔84aに時計本体20が嵌め込まれた際に、時計本体20の重さ等によりシート領域82b上の嵌め込み孔84aの周りに変形や破れ等が生じ難いように耐久性が高められる。
【0027】
次に、ユーザが本実施形態の成形部品80を用いて腕時計10を組み立てる際の組み立て手順について説明する。本実施形態の成形部品80は、時計本体20が嵌め込まれた状態で、一対の紐状部品60、一対の紐留め部品74、及びネジ部材と共に、例えば「腕時計の組み立てセット」として一つの製品として販売される。この製品を入手したユーザは、成形部品80のシート領域82bから各部品及び時計本体20を取り外して、シート領域82b上に設けられていない他の部品と共に自由に組み付けて、腕時計10の組み立て作業を進めることができる。
【0028】
このとき、上下外装部品72Mをベゼル部34の前方に取り付けるための各部品、即ち一対の上下外装部品72M、一対の紐状部品60、一対の紐取付部品70、及び一対の紐留め部品74を、各四隅外装部品50よりも前に、装着部品30に組み付ける。その後、各四隅外装部品50M1,50M2を装着部品30に組み付けることにより、紐状部品60の一部をベゼル部34と四隅外装部品50M1,50M2の間に挟み込ませることができる。シート領域82b上に設けられた2色で着色された8つの四隅外装部品50M1、50M2はいずれも同形状とされているため、ユーザは、8つの四隅外装部品50M1,50M2のうち4つを選択して、ベゼル部34の外周部の四隅に対して自由な配置で組み付けることができる。このため、ユーザは、所望のカラーリングとなるように四隅外装部品50M1,50M2を組み付けて楽しむことができる。
【0029】
このようにして全ての部品を組み付け、各部品の組み付け箇所をネジ部材でネジ止めすることにより、腕時計10を組み立てることができる。各部品が取り外された後に残る成形部品80の端材は、製品の販売元が回収し、再利用してもよい。これにより、環境負荷を軽減することができる。なお、成形部品80は、圧縮成形により一体成形されて設けられるため、成形時に外周部にバリが発生することがあるが、外周部は腕時計10の組み立て後に端材とされる部分であるため、仮にバリが発生した場合でも製品として問題が生じることはない。
【0030】
以上説明したように、本実施形態の成形部品80は、ウレタン材料により成形された樹脂プレート82を備え、樹脂プレート82は、シート状のシート領域82b、及び時計本体20に組み付けられる複数の組み付け部品を有し、シート領域82bと複数の組み付け部品とが平面状に一体成形されてなり、複数の組み付け部品の各々は、シート領域82bから分離可能とされる。このように、時計本体20に組み付けられる各部品を、同一のウレタン樹脂で一体成形された成形部品80のシート領域82b上に分離可能な形で一括して設けることにより、時計等の機器の製造過程における各部品の材料コストや流通コストを削減することができ、環境負荷を軽減することができる。さらに、シート領域82b上から各部品が取り外された後に残る成形部品80の端材は、回収して再利用することができるため、この点からも環境負荷を軽減することができる。
【0031】
また、腕時計のような機器は、複数の部品が組み付けられることで製造されており、最終製品として完成するまでに複数の製造過程を経るため、材料コストや流通コストが嵩み、製造過程で生じる廃棄部品により環境に負荷がかかるものであったが、このような機器を組み付けるための各部品を、再利用が可能な樹脂材料による成形部品80として一体成形して構成することで、環境負荷を低減することができる。
【0032】
また、成形部品80では、樹脂プレート82は、樹脂材料が圧縮成形により成形されてなる。仮に射出成形で成形部品80を設けた場合、ランナー(第1ランナーL1、第2ランナーL2)上に各部品が繋がった状態となり、各部品を1枚のシート(シート領域82b)上に設けることができない。圧縮成形により成形部品80を設けることにより、各部品をシート領域82b上に一括して設けることができるため、環境負荷の軽減に寄与することができる。
【0033】
また、成形部品80では、樹脂材料がウレタン樹脂である。このように、成形部品80を構成する樹脂材料が圧縮成形に適したウレタン樹脂とされることにより、成形部品80を圧縮成形により効果的に設けることができる。
【0034】
また、成形部品80では、複数の組み付け部品の各々は、少なくとも2種類以上の異なる色で混色成形されている。これにより、ユーザが異なる色の部品を時計本体20に対して所望の配置に自由に組み付けてカラーリングを楽しむことができる。
【0035】
また、成形部品80の樹脂プレート82では、シート領域82bと複数の組み付け部品の各々との境界部に間欠的な切り込み線C1が設けられている。これにより、ユーザがシート領域82bから各組み付け部品を取り外す際に、各組み付け部品を押すことで各組み付け部品を切り込み線C1に沿って取り外し易くすることができる。
【0036】
また、成形部品80では、モジュール部品が時計本体20であり、複数の組み付け部品は、時計本体20を腕に装着するためのバンド部32と、時計本体20を囲むように組み付けられるベゼル部34と、ベゼル部34の外周部に組み付けられる四隅外装部品50と、を含む。この構成によれば、成形部品80に設けられた各部品を時計本体20に組み付けることにより時計(腕時計10)を製造することができ、時計(腕時計10)の製造過程における環境負荷を軽減することができる。
【0037】
また、成形部品80では、樹脂プレート82では、バンド部32及びベゼル部34が連なって設けられている。この構成によれば、時計本体20に組み付ける各部品を成形部品80に設ける場合に、バンド部32とベゼル部34を分割して設ける場合に比べてバンド部32とベゼル部34をシート領域82bから取り外した後に生じる端材の量を抑えることができ、時計の製造過程における環境負荷を一層軽減することができる。
【0038】
また、成形部品80では、シート領域82bには、複数の組み付け部品の各々の近傍に複数の組み付け部品の種類に応じて異なる識別表示IDが表示されている。このため、各部品をシート領域82bから取り外して時計本体20等に組み付ける際に、各部品の種類の違いを識別することができ、組み付け易くすることができる。
【0039】
また、本実施形態の腕時計10は、時計本体20と、ウレタン樹脂により一体成形されるとともに時計本体20に組み付けられる複数の組み付け部品と、が組み合わされてなる。これにより、腕時計10の製造過程における材料コストや流通コストを削減できるとともに製造過程で生じる端材を再利用することができ、環境負荷の軽減に寄与できる腕時計10を実現することができる。
【0040】
また、本実施形態では、成形部品がプレート状のため、複数の組み付け部品のそれぞれを別々に梱包する必要が無いため、コンパクトにまとめることができる。このため、流通コストを低減することができる。さらに、このような機器を組み付けるための各部品を、樹脂材料による成形部品として一体化したので、煩雑になりがちな搬送作業を簡素化することができる。
【0041】
(第2実施形態)
次に、
図5を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。
図5に示すように、第2実施形態に係る成形部品180は、樹脂材料が射出成形されて一体成形されることによりその全体が設けられており、フレーム状の樹脂フレーム182を備えている。樹脂フレーム182では、時計本体(モジュール部品)120に組み付けられる複数の組み付け部品が、外枠を構成する第3ランナーL3により囲まれた形で設けられている。第3ランナーL3の内側には、第1実施形態の成形部品80と同様に、装着部品130M、尾錠枠部品142M、つく棒部品144M、四隅外装部品150M1,150M2、一対の紐取付部品170M、及び一対の上下外装部品172Mが、それぞれ間隔を空けて樹脂フレーム182から分離可能に設けられている。
【0042】
さらに、樹脂フレーム182には、時計本体20が設けられている。時計本体120は、成形部品180の一部ではなく、成形部品180の成形後に、樹脂フレーム182の嵌め込み縁部(縁部)184内の嵌め込み孔に嵌め込まれる。
【0043】
樹脂フレーム182に設けられた複数の組み付け部品の周りには、複数の組み付け部品のそれぞれを囲むように第1ランナーL1が設けられている。また、樹脂フレーム182には、隣り合う前記第1ランナーL1の間、及び第1ランナーL1と第3ランナーL3との間をそれぞれ接続する第2ランナーL2が略格子状に設けられている。第1ランナーL1と嵌め込み縁部184との間、及び第3ランナーL3と嵌め込み縁部184との間は、第2ランナーL2によって接続されている。
【0044】
複数の組み付け部品、第1ランナーL1、第3ランナーL3、第2ランナーL2、嵌め込み縁部184は樹脂材料によって一体に形成されている。各部品と第1ランナーL1の境界部には、切り込み線C1が間欠的に設けられている。このため、各部品を後方側に押すことにより、各部品を樹脂フレーム182から容易に取り外して分離できるようになっている。
【0045】
以上のような構成とされた本実施形態の成形部品180においても、時計本体120に組み付けられる各部品を、同一の樹脂材料で一体成形された成形部品80の樹脂フレーム182に分離可能な形で一括して設けているので、腕時計10等の機器の製造過程における各部品の材料コストや流通コストを削減することができ、環境負荷を軽減することができる。さらに、このような機器を組み付けるための各部品を、再利用が可能な樹脂材料による成形部品180として一体成形して構成することからも、環境負荷を低減できる。
【0046】
また、本実施形態の成形部品180は、第1ランナーL1、第3ランナーL3、第2ランナーL2、と、時計本体120に組み付けられる複数の組み付け部品と、嵌め込み孔が形成された嵌め込み縁部184と、を有し、第1ランナーL1、第3ランナーL3、第2ランナーL2、複数の組み付け部品及び嵌め込み縁部184が一体となっており、樹脂材料により成形された樹脂フレーム182と、嵌め込み縁部184の嵌め込み孔に嵌め込まれた時計本体120と、を備えており、複数の組み付け部品の各々は、第1ランナーL1、第3ランナーL3、第2ランナーL2から分離可能とされる。このように、複数の組み付け部品の各々を、樹脂材料による成形部品として一体化したので煩雑になりがちな搬送作業を簡素化することができる。
【0047】
なお、以上説明した実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。例えば上記の各実施形態では、モジュール部品の一例として時計本体を例示したが、本発明の成形部品に設けられた各部品が組み付けられることにより製造される機器は、時計に限定されず他の機器であってもよい。また、例えば上記の各実施形態では、成形部品を構成する樹脂材料としてウレタン樹脂の例を示したが、これに限定されない。他の樹脂材料を用いてもよい。
【符号の説明】
【0048】
10 腕時計(時計) 20 時計本体
20a 表示部 22 ケース
22a リューズ 24 裏蓋
30 装着部品 30M 装着部品
32 バンド部 32a 第1バンド部
32a1 先端部 32b 第2バンド部
32b1 先端部 32b2 小穴
32c 定革部 34 ベゼル部
34a 開口部 34b 第1リューズ孔
36 接続部 36a 取付孔
42 尾錠枠部品 42M 尾錠枠部品
44 つく棒部品 44M つく棒部品
50 四隅外装部品 50M1 四隅外装部品
50M2 四隅外装部品 50a 第2リューズ孔
60 紐状部品 70 紐取付部品
70a 板状部 72 上下外装部品
72M 上下外装部品 72b 紐挿通孔
74 紐留め部品 80 成形部品
82 樹脂プレート 82a 外縁領域
82b シート領域 84 嵌め込み縁部
84a 嵌め込み孔 120 時計本体
130M 装着部品 142M 尾錠枠部品
144M つく棒部品 150M1 四隅外装部品
150M2 四隅外装部品 170M 紐取付部品
172M 上下外装部品 180 成形部品
182 樹脂フレーム 184 嵌め込み縁部
C1 切り込み線 GP ガラス板
L1 第1ランナー L2 第2ランナー
L3 第3ランナー ID 識別表示