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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089105
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】調整装置及び電子機器システム
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/14 20060101AFI20240626BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20240626BHJP
   G02B 7/04 20210101ALI20240626BHJP
   G02B 7/08 20210101ALI20240626BHJP
   G02B 7/28 20210101ALI20240626BHJP
   G03B 13/36 20210101ALI20240626BHJP
【FI】
G03B21/14 D
G03B21/00 D
G02B7/04 E
G02B7/08 B
G02B7/28 Z
G03B13/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204270
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002022
【氏名又は名称】弁理士法人コスモ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津雪 泰弘
【テーマコード(参考)】
2H011
2H044
2H151
2K203
【Fターム(参考)】
2H011AA04
2H011CA11
2H044BE02
2H044BE06
2H044BE08
2H044BE16
2H044BE20
2H044DA01
2H044DA02
2H044DB02
2H044DD01
2H151AA09
2H151FA03
2H151FA11
2K203FA02
2K203GC10
2K203GC13
2K203GC16
2K203GC17
2K203HB09
2K203KA07
2K203KA62
2K203KA64
2K203KA78
2K203KA79
2K203MA01
2K203MA23
(57)【要約】
【課題】容易に電子機器の調整部材の調整を安定して行うことができる部材を備え、電子機器に取り付けられる調整装置及び電子機器システムを提供する。
【解決手段】調整装置は、投影装置に設けられているフォーカス調整リングを物理的に動かすベース部材160を備え、ベース部材160は、投影装置に取り付けられた状態でフォーカス調整リングと下方向に当接する回転体166、回転体166を軸支する回転軸164、及び回転軸164の両端側にそれぞれ設けられ、フォーカス調整リングが回転体165に当接されることによって回転体165及び回転軸164が移動する方向と反対方向に付勢する一対の巻きバネ168、を有する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器に設けられている調整部材を物理的に動かすベース部材を備え、
前記ベース部材は、前記電子機器に取り付けられた状態で前記調整部材と当接する回転体、前記回転体を軸支する回転軸、及び前記回転軸の両端側にそれぞれ設けられ、前記調整部材が前記回転体に当接されることによって前記回転体及び前記回転軸が移動する方向と反対方向に付勢する一対の弾性部材、を有する、
調整装置。
【請求項2】
前記回転軸及び前記回転体を回転駆動する駆動機構をさらに備え、
前記回転体は、前記弾性部材の弾性変形により前記駆動機構に対して相対的に弾性移動自在である、
請求項1に記載の調整装置。
【請求項3】
前記ベース部材は、前記回転軸の軸周りに設けられた回転ギアを有し、
前記駆動機構は、前記回転ギアと噛み合う駆動ギアを有し、
前記駆動ギアは、前記回転ギアのギア周りの方向のうち、前記回転体が前記調整部材と当接する方向と略直交する方向で前記回転ギアと噛み合う、
請求項2に記載の調整装置。
【請求項4】
前記ベース部材は、少なくとも前記回転体と前記駆動機構と前記弾性部材と前記回転軸とを収容するケースを有し、
前記回転体及び前記回転軸は、前記弾性部材の弾性変形により前記駆動機構及び前記ケースに対して相対的に弾性移動する、
請求項2に記載の調整装置。
【請求項5】
前記ベース部材は、前記回転軸の両端部をそれぞれ回転可能に軸支する一対の軸受けを有し、
前記ケースと前記軸受けの各々との間に所定の間隙が設けられている、
請求項4に記載の調整装置。
【請求項6】
前記弾性部材は、巻きバネである、請求項1に記載の調整装置。
【請求項7】
前記電子機器はレンズ鏡筒を備え、
前記調整部材は、前記レンズ鏡筒におけるフォーカスレンズを調整する第1被回転体、及び前記レンズ鏡筒におけるフォーカスレンズを調整する第2被回転体を有し、
前記回転体は、前記第1被回転体及び前記第2被回転体のうちいずれか一方に当接可能である、
請求項1に記載の調整装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の調整装置と、
前記電子機器と、
を備える電子機器システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調整装置及び電子機器システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ズーム調整やフォーカス調整を手動で行うためのレンズ鏡筒に設けられるズームリングやフォーカスリング等の調整部材に圧接等されることにより、当該調整部材を調整して固定するための調整装置が提案されている。例えば、特許文献1には、撮影レンズが備えるレンズ鏡胴のズームリングを回転させるためのギアが設けられた撮影レンズの駆動装置が開示されている。この駆動装置では、駆動装置のケースにスプリングで付勢されたプレートが設けられており、プレート上にギアが支持されている。そして、ギアをスプリングの付勢力によってズームリングに押圧付勢することにより、ギアの歯とズームリングの歯との間のガタを無くし、ズーミングの精度を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-8785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示される駆動装置では、プレート上にギアと共にギアを回転するためのモータが支持されている。このため、プレートを付勢するスプリングのバネ定数の設定が難しく、また、装置が複雑化、或いは大型化する虞があった。
【0005】
本発明は、容易に電子機器の調整部材の調整を安定して行うことができる部材を備え、電子機器に取り付けられる調整装置及び電子機器システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の調整装置は、電子機器に設けられている調整部材を物理的に動かすベース部材を備え、
前記ベース部材は、前記電子機器に取り付けられた状態で前記調整部材と当接する回転体、前記回転体を軸支する回転軸、及び前記回転軸の両端側にそれぞれ設けられ、前記調整部材が前記回転体に当接されることによって前記回転体及び前記回転軸が移動する方向と反対方向に付勢する一対の弾性部材、を有する。
【0007】
本発明の電子機器システムは、上記の調整装置と、前記電子機器と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、容易に電子機器の調整部材の調整を安定して行うことができる部材を備え、電子機器に取り付けられる調整装置及び電子機器システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る電子機器システムにおいて調整装置が取り付けられた投影装置を左前方上側から視た全体斜視図である。
図2】実施形態に係る調整装置が取り付けられた投影装置から調整装置の保護カバーを取り外した状態を右前方上側から視た斜視図である。
図3】実施形態に係る投影装置を左前方上側から視た斜視図である。
図4】実施形態に係る調整装置の分解斜視図である。
図5】実施形態に係る調整装置の第1保持板金及び第2保持板金の投影装置への取り付け態様を示す斜視図であって、投影装置を左前方下側から視た斜視図である。
図6】実施形態に係る調整装置の調整ユニットを左前方下側から視た斜視図である。
図7】実施形態に係る調整装置のベース部材の分解斜視図である。
図8】実施形態に係る調整装置のベース部材の上カバーを取り外した状態を上方から見た平面図である。
図9】実施形態に係る調整装置の調整ユニットのベース部材の前後方向に沿った断面の断面図であって、図8におけるIX-IX断面の断面図である。
図10】実施形態に係る調整装置が取り付けられた投影装置の投影口周りの左右方向に沿った断面の断面図である。
図11】実施形態に係る調整装置の回転軸が傾いた状態における回転体のフォーカス調整リングへの圧接態様を示す模式図である。
図12】実施形態に係る調整装置の調整ユニットのベース部材の前後方向に沿った断面の断面図であって、調整ユニットを投影装置に取り付けた状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1に示すように、実施形態に係る電子機器システム1は、投影装置(電子機器)10及び調整装置100を備え、調整装置100は、投影装置10に取り付けられる。先に投影装置10について説明する。図3に示すように、投影装置10は、左右方向を長手方向とする略長矩形箱状に6面(上面20a、下面20b、左側面20c、右側面20d、前面20e、後面20f)を有する筐体20を備える。投影装置10は、前面20e側に投影口11を有する。投影装置10は、投影口11から投影光を出射する。なお、以下の説明においては、投影装置10における左右とは投影口11からの投影光の出射方向に対しての左右方向を示し、前後とは投影装置10の投影光の進行方向に対しての前後方向を示し、上下とは投影装置10の筐体20の厚み方向に対しての上下方向を示す。
【0011】
筐体20は、上面20aと右側面20dの一部を備える上ケース21と、下面20bと右側面20dの一部を備える下ケース22とを有する。筐体20は、前側に前側パネル23、後側に後側パネル24、左側に左側パネル25を有する。前側パネル23は、筐体20の左前角部20gまで延在し、左前角部20gは角R状である。また、前側パネル23には、投影口11の投影口開口部(投影口開口)23a、吸気口23b及び排気口23cが設けられる。後側パネル24は、左後角部20hまで延在し、左後角部20hは角R状である。後側パネル24には、図示しないが、吸気口や画像入出力用のコネクタ等の接続口が設けられる。
【0012】
投影装置10の上面20aと右側面20dとの間の縁部20i及び投影装置10の下面20bと右側面20dとの間の縁部20jは、ともに前後方向にわたって筐体20の上ケース21及び下ケース22における右側面20dとの接続部である縁部21a,22aは、角R状の曲面状である。筐体20の縁部20i、22j以外の縁部(例えば、上面20aと左側面20cとの間の縁部など)は、略直角状である。上ケース21の上面20aには、投影装置10の設定等を行うことができる操作パネル21bが設けられる。下ケース22における右側面20dには、図示しない電源プラグの接続口が設けられる。また、図5に示すように、下ケース22における下面20bの左右両端側のうちやや前方寄りの位置には、投影装置10の筐体20にチルト機構を取り付けるための複数の第1ネジ孔H1が上下方向に向けて設けられている。
【0013】
図3に示すように、投影装置10の筐体20内には、レンズ鏡筒80が収納されている。レンズ鏡筒80には、可動可能な調整部材である調整リング30(フォーカス調整リング31を有する被回転体(第1被回転体)及びズーム調整リング32を有する被回転体(第2被回転体))がレンズ鏡筒80側に設けられている。フォーカス調整リング31及びズーム調整リング32は、レンズ鏡筒80の光軸周りに、略半円弧のリング状に設けられ(図10参照)、外周にはローレットが施されている。筐体20の上面20aの左前角部には、略矩形に開口する調整開口部20a1が設けられている。
【0014】
調整リング30(フォーカス調整リング31を有する第1被回転体及びズーム調整リング32を有する第2被回転体)は、調整開口部20a1から上方に露出されている。投影装置10に調整装置100等が取り付けられていない状態では、調整開口部20a1から露出されている調整リング30をレンズ鏡筒80の光軸周りに手動で時計回り及び反時計回りに回転させることができ、回転量に応じてレンズ鏡筒80のフォーカス調整やズーム調整を行うことができる。ここで、図10に示すように、調整開口部20a1の左右両側にそれぞれ対向配置される、上面20aの端縁部20a2は、調整開口部20a1に沿って前後方向に延在して設けられており、それぞれ調整リング30側に向かって下方に傾斜している。下方に傾斜する端縁部20a2の先端下面は、平坦面状に形成されており、調整リング30との間に1mm以下の隙間を有している。
【0015】
筐体20には、調整開口部20a1を覆う形で、フォーカス調整リング31及びズーム調整リング32を調整するための調整装置100が着脱自在に取り付けられる。以下、調整装置100の構成について説明する。図1及び図4に示すように、調整装置100は、保護カバー110、駆動基板120、第1保持板金130、第2保持板金140、及び調整ユニット150を備えている。このうち保護カバー110、駆動基板120、及び第1保持板金130は、筐体20の上面20a側に取り付けられ、第2保持板金140は、筐体20の左側面20c側に取り付けられ、調整ユニット150は、筐体20を上下方向に挟み込む形で筐体20の前面20e側に取り付けられる。
【0016】
図2図4、及び図5に示すように、第1保持板金130は、板金材料により一体的に形成された略L字状の板状部材であり、第1板部131と、第1板部131の右側縁部から略直角に連なる第2板部132とを有している。第1板部131は、筐体20の上面20aのうち操作パネル21bより前方側の大部分を覆う形で上面20aに載置される。第1板部131のうち筐体20の調整開口部20a1周りに対応する部分は略矩形状に切り欠かれている。このため、上面20aのうち調整開口部20a1周りの部分は、第1板部131に覆われないようになっている。
【0017】
第1板部131には、前後両端にそれぞれ、上方向に向けて第1板部131の主面から折れ曲がって突出し、且つ左右方向にわたって延びている一対の第2取付壁部131bが設けられている。一対の第2取付壁部131bの頭頂部において、略正四角形の四つの頂点に対応する位置に、対向するように互いに前方向あるいは後方向に突出した突出片が設けられ、突出片には、駆動基板120を取り付けるための第2ネジ孔H2が上下方向に貫通するようにそれぞれ設けられている。したがって、駆動基板120は、第1板部131の上面に直接接触することなく、第1板部131の板面から離間した形で、突出片に支持されている。このため、駆動基板120が駆動時に生じる熱を投影装置10の筐体20に伝搬しにくく、あるいは投影装置10の筐体20内で生じる熱を駆動基板120に伝搬しにくい構造になっている。
【0018】
第1板部131の右側部分及び前側部分の3箇所には、保護カバー110を取り付けるための第3ネジ孔H3が上下方向に貫通するように設けられている。また、第1板部131の左側縁部には、上方にわずかに立ち上がる第1取付壁部131aが設けられている。第1取付壁部131aには、第2保持板金140を取り付けるための複数の第4ネジ孔H4が左右方向に貫通するように設けられている。
【0019】
第1保持板金130の第2板部132は、第1板部131が筐体20の上面20aに載置された状態で、筐体20の右側面20dに当接される。第2板部132の下方側の先端部の一部は、筐体20の下面20b側まで延びて内側に略直角に折れ曲がっており、筐体20の下面20bと当接される第1下面当接部132aとなっている。第1下面当接部132aには、第1保持板金130を筐体20に取り付けるための複数の第5ネジ孔H5が上下方向に貫通するように設けられている。
【0020】
第2保持板金140は、板金材料により一体的に形成された略三角形状の板状部材であり、第1保持板金130と連結されることにより筐体20の左側面20cに当接される。第2保持板金140の一端側には、第1保持板金130の第4ネジ孔H4と対応する配置で複数の第6ネジ孔H6が左右方向に貫通するように設けられている。第2保持板金140は、第6ネジ孔H6が筐体20の上面20aに載置された第1保持板金130の第4ネジ孔H4と重ね合わされて外側からネジ止めされることにより、筐体20の左側面20cに当接した状態で第1保持板金130と連結される。
【0021】
第2保持板金140の下方側の先端部は、筐体20の下面20b側まで延びて筐体20の内側に略直角に折れ曲がっており、筐体20の下面20bと当接される第2下面当接部140aとなっている。第2下面当接部140aには、第2保持板金140を筐体20に取り付けるための複数の第7ネジ孔H7が上下方向に貫通するように設けられている。図5に示すように、第1保持板金130及び第2保持板金140は、互いに連結された状態で、第1下面当接部132a、第2下面当接部140aに設けられた第5ネジ孔H5、第7ネジ孔H7がそれぞれ筐体20の下面20bの一対の第1ネジ孔H1に重ね合わされて下方からネジ止めされることにより、筐体20の左右両側を上下方向に挟み込む形で筐体20に取り付けられる。
【0022】
図2に示すように、駆動基板120は、調整ユニット150を駆動するための基板であり、略四角形状をなしている。駆動基板120の四隅には、それぞれ第8ネジ孔H8が上下方向に貫通するように設けられている。駆動基板120は、各第8ネジ孔が第1保持板金130の4つの第2ネジ孔H2に重ね合わされて上方からネジ止めされることにより、第1保持板金130の第1板部131上に取り付けられる。駆動基板120の上面側には、後述する調整ユニット150の駆動モータMを駆動する駆動信号を外部(リモコン等)から受信するための受信部材122、駆動モータMと接続配線128を介して接続されるモータ接続端子124、及びその他の接続端子群126が設けられている。駆動信号は赤外線等の光が好ましく、受信部材122は、駆動信号の波長帯域の信号光を受信する受光センサが好ましい。
【0023】
保護カバー110は、下方に開口する略箱状をなしており、駆動信号の波長帯域の信号光を透過する透明材料で設けられている。このため、受信部材122が保護カバー110に覆われた状態でも、受信部材122に信号が届くようになっている。保護カバー110の前方左側部分には、前方に開口するカバー開口110aが設けられている。カバー開口110aの上方には庇状の庇部112が設けられている。庇部112は、カバー開口110aの上方の開口端に沿って略水平に延びる形で設けられている。カバー開口110a内には、調整ユニット150の上側部分が収容される。
【0024】
保護カバー110は、調整ユニット150の後述するベース部材160、及び駆動基板120を覆うように筐体20に取り付けられる。保護カバー110のうち第1保持板金130の各第3ネジ孔H3と対応する位置には、カバー側ネジ孔(不図示)がそれぞれ上下方向に向けて設けられている。保護カバー110は、筐体20に第1保持板金130、第2保持板金140、駆動基板120、調整ユニット150が取り付けられた後、カバー側ネジ孔が第1保持板金130の第3ネジ孔H3上に重ね合わされて下方からネジ止めされることにより、筐体20に取り付けられる。すなわち、保護カバー110は、調整装置100を筐体20に取り付ける際、筐体20に最後に取り付けられる部材である。保護カバー110は、ベース部材160及び駆動基板120を覆うことによりこれらの部材を外部から保護する。
【0025】
次に、調整ユニット150の構成について詳しく説明する。図6及び図7に示すように、調整ユニット150は、後方側に開放された略凹状をなす部材であり、筐体20の上面20aと対向するように配置されるベース部材160と、ベース部材160を投影装置10に保持する保持部材170と、を備えている。調整ユニット150の前側部分には、投影口11よりも一回り大きく開口する略矩形状のユニット開口部150aが設けられている。調整ユニット150は、ユニット開口部150aが前後方向において投影口11と重なるように、筐体20を上下方向に挟み込む形で筐体20に取り付けられる(図2参照)。
【0026】
ベース部材160は、略矩形箱状の部材であり、内部に投影装置10のフォーカス調整リング31を物理的に動かして調整するための機構が設けられている。ベース部材160の構成については、後で詳しく説明する。先に保持部材170の構成について説明する。保持部材170は、投影装置10を挟持することにより、ベース部材160を投影装置10に保持する保持部材170は、第1フレーム171、第2フレーム172、防塵ガイド174、防塵パッキン175、押圧パッド176(図7参照)、及び一対のバネ部材178(図7参照)を有している。
【0027】
第1フレーム171は、金属製の略L字状のフレーム部材であり、前後方向から見て中央が開口した枠板状の第1枠状部171a、及び第1枠状部171aの上端部左右両側からそれぞれ後方に延びる一対の第1延在部171bを有しており、一対の第1延在部171bは、左右方向のいずれかから見てそれぞれ略L字状或いは略L字の鏡像の形状としている。第1枠状部171aの中央部には、ユニット開口部150aを構成する開口が設けられている。前後方向から見て第1枠状部171aの上端側には、上方に開放するように略矩形状に切り欠かれた切欠部171a1が設けられている。各第1延在部171bは、上下方向に向けられた一対の第1板面部171b1と左右方向に向けられた一対の第2板面部171b2とを有している。このうち第1板面部171b1には、ネジ孔171b3が設けられており、ベース部材160がネジ孔171b3にネジ止めされたネジによって第1フレーム171に取り付けられている。また、各第1延在部153bの前端部の内面側には、上下方向に沿って設けられる各バネ部材178の上端部がそれぞれ係合されるようになっている。
【0028】
第2フレーム172は、金属製の略L字状のフレーム部材であり、前後方向から見て中央が開口した枠板状の第2枠状部172a、第2枠状部172aの下端部から後方に延びる第2延在部172b、及び第2枠状部172aの上端側に設けられた押下部172cを有している。また、第2フレーム172は、左右方向のいずれかから見てそれぞれ略L字状或いは略L字の鏡像の形状としている。前後方向から見て第2枠状部172aの中央部には、ユニット開口部150aを構成する開口が設けられている。第2枠状部172aの中央部に設けられた開口の開口端のうち左右両側の部分には、上下方向に沿って設けられるバネ部材178の下端部がそれぞれ係合されるようになっている。
【0029】
第2延在部172bは、後方側に向けて左右方向の幅が徐々に短くされた略台形状に延びており、上方に開放された略浅皿状をなしている。第2延在部172bの上面側には、押圧パッド176が収容されて取り付けられる。押下部172cは、第2枠状部172aの上端部の後面側に設けられており、左右方向に横長の角柱状である。押下部172cの上面は、作業者が押下可能な押下面172c1となっている。押下部172cは、後述するケース161の収容空間S1に収容される。
【0030】
防塵ガイド174は、樹脂製の環状部材であり、その開口が第1枠状部171aの開口と略一致するように第1枠状部171aの後面側に当接され、第1枠状部171aにネジ止めされて取り付けられている。防塵パッキン175は、ゴム製の環状パッキンであり、その開口が防塵ガイド174の開口と一致するようにして、防塵ガイド174の後面に対して接着等により取り付けられている。防塵ガイド174及び防塵パッキン175の開口の形状及び大きさは、第1枠状部171aの開口の形状及び大きさと略一致している。第1枠状部171a及び第2枠状部172aにそれぞれ設けられた開口、防塵ガイド174、及び防塵パッキン175は、ユニット開口部150aを構成する。
【0031】
押圧パッド176は、樹脂製の厚板状の部材である。押圧パッド176は、第2フレーム172の第2延在部172bの上面側にネジ止めにより取り付けられる。第2フレーム172に取り付けられた押圧パッド176は、第2フレーム172の一部であり、調整ユニット150により筐体20を挟持する際に筐体20の下面20bと当接する。一対のバネ部材178は、外部応力に応じて上下方向に伸縮自在のいわゆる巻きバネであり、一端が第1フレーム171の第1延在部171bの前端部の内面側に係合され、他端が第2フレーム172の第2枠状部172aの左右両側に係合されている。一対のバネ部材178は、左右方向において防塵ガイド174及び防塵パッキン175を間に挟むように設けられている。
【0032】
次に、図6図9を参照して、ベース部材160の構成について詳しく説明する。ベース部材160は、実質的にその外形をなすケース161、ケース161の上側を閉じる蓋体であるケースカバー162、駆動機構163、回転軸164、回転ギア165、回転体(ゴムローラ)166、軸受け167、一対の巻きバネ(弾性部材)168、及び一対のバネ取付ネジ169を有している。ベース部材160は、ケース161の内部に設けられた収容空間S1内に、駆動機構163の一部、回転軸164、回転ギア165、回転体166、一対の軸受け167、及び一対の巻きバネ168が収容されている。ケース161の上方に位置するケースカバー162は、ケースカバー162に設けられた取付ネジ孔162aに図示しないネジでケース161にネジ止めされている。このため、ベース部材160の上方がケースカバー162によって閉じられる構成となっている。
【0033】
ケース161自体は、上方に開放されて内部に収容空間S1が設けられた略矩形箱状をなしており、前壁を構成する前壁部161a、後壁を構成する後壁部161b、両側壁を構成する一対の側壁部161c、底壁を構成する底壁部161dを有している。両側壁部161c及び底壁部161dは前壁部161aよりもわずかに前方側に張り出しており、前壁部161a、両側壁部161c、及び底壁部161dにより囲まれた空間が、第2フレーム172の押下部172cが収容される押下空間S2である。後壁部161bの右側部分には、上方に開放されて収容空間S1と連通する縦長の切欠きS1aが設けられている。また、収容空間S1内の略中央部には、前方又は後方に向けて凹状であり、上方に開放された一対の凹部S1bが設けられている。
【0034】
図6に示すように、ケース161の底壁部161dの略中央部には、略矩形状に開口するとともに回転体166の一部が露出するケース開口部161eが設けられている。また、底壁部161dは、前後方向におけるケース開口部161eの周縁に、図9に示すように、調整ユニット150(ベース部材160)がまだ投影装置10の筐体20に取り付けられていない状態で、後述する一対の軸受け167の下端がそれぞれ接触する一対の載置面167fを有している。ケース開口部161eの周りには、下方側に向けて突起状に設けられた係合突起161e1が設けられている(図6参照)。係合突起161e1は、筐体20の調整開口部20a1の開口端(後方側を除く)に沿うように設けられており、開口端の左右両側において前後方向に沿って延びる一対の突起と、開口端の後方左右両側において突出する突起と、開口端の前方において左右方向に沿って円弧状に切り欠かれ、下方に突出している突起とを有している。ベース部材160は、ケース161の係合突起161e1が調整開口部20a1の開口端に係合されることにより、調整開口部20a1周りの部分を覆うように筐体20に取り付けられる。
【0035】
ケースカバー162は、略矩形板状の板状部材であり、その板面上にケースカバー162をケースに取り付けるための複数のネジ孔162bが設けられている。また、ケースカバー162の略中央部には、後述する一対のバネ取付ネジ169を挿通させるための一対の取付ネジ孔162aが設けられている。
【0036】
駆動機構163は、後方右側に設けられた駆動モータM、前方左側に設けられて駆動モータMの駆動により回転する駆動軸163a、駆動軸163aの前端側の軸周りに取り付けられて駆動軸163aと共に回転する駆動ギア163b、及び駆動モータMと駆動軸163aの間に設けられてケース161に取り付けられる略横長直方体状のモータ取付部163cを有している。駆動モータMは、その後端部が接続配線128を介してモータ接続端子124と接続され、駆動基板120から駆動信号が入力されることにより駆動する。駆動機構163は、ケース161の収容空間S1内に駆動軸163a及び駆動ギア163bが収容される形でケース161に取り付けられて固定されている。
【0037】
回転軸164は、回転ギア165及び回転体166を軸支する軸状部材であり、ケース161内の略中央部に設けられている。回転ギア165は、回転軸164の軸周りに固着されており、回転軸164が回転することにより回転する。回転ギア165は、駆動ギア163bの径より一回り大きな径で設けられている。回転ギア165の前面には、図示しない凸部が設けられている。回転体166は、ゴム等の弾性部材からなり、中央部に貫通孔が設けられた略円環状のいわゆるゴムローラであり、回転軸164の軸周りに固着されて回転軸164が回転することにより回転する。回転体166は、回転ギア165の径よりわずかに大きな径で設けられている。
【0038】
回転体166の貫通孔には、回転ギア165の凸部が嵌め込まれて固定されている。これにより、回転体166と回転ギア165は、ケース161内において回転体166を前側として前後方向に隣接した形で配置されている。また、回転体166は、その下側部分がケース開口部161eからケース161の下側にわずかに露出している。回転体166は、調整ユニット150が筐体20に取り付けられた状態で、調整開口部20a1から露出するフォーカス調整リング31と上下方向において重なるような配置で収容空間S1内に設けられている。
【0039】
一対の軸受け167は、略角柱状の部材であり、それぞれ回転軸164の両端部側に設けられ、回転軸164の両端部を回転可能に軸支する。各軸受け167の上端部には、巻きバネ168の下端部が取り付けられるバネ取付部167aが設けられている。一対の巻きバネ168は、その伸縮方向が上下方向に沿った形で収容空間S1内に収容される。一対のバネ取付ネジ169は、ケースカバー162にネジ止めされて取り付けられる。一対のバネ取付ネジ169の下端部には、ケースカバー162を介して各巻きバネ168の上端部が取り付けられる。
【0040】
次に、調整ユニット150を構成するベース部材160と保持部材170の組み付け態様について説明する。先に保持部材170の組み付け態様について説明する。第1フレーム171と第2フレーム172の間は、バネ部材178を介して上下に連結される。第1フレーム171及び第2フレーム172に係合されたバネ部材178は、上下方向に復元力を有し、復元力に抗するように反対側の方向に向けた外力に応じて伸長あるいは収縮する。これにより、第1フレーム171と第2フレーム172がバネ部材178を介して連結され、バネ部材178の復元力が第1フレーム171及び第2フレーム172に付与される。
【0041】
次に、ベース部材160の組み付け態様について説明する。まず、回転軸164に回転体166及び回転ギア165が取り付けられ、回転軸164の両端部が一対の軸受け167に軸支される。そして、各軸受け167がケース161の収容空間S1内の各凹部S1bに嵌め込まれる形で取り付けられる。一方、駆動機構163は、駆動軸163aがケース161の切欠きS1a内に嵌め込まれた状態で、モータ取付部163cがケース161の後壁部161bにネジ止めされて取り付けられる。これにより、駆動モータM及びモータ取付部163cがケース161の後方右側に露出し、収容空間S1内に駆動軸163a及び駆動ギア163bが収容される。
【0042】
このように、回転軸164を軸支する各軸受け167及び駆動機構163が収容空間S1内に収容されることにより、図8に示すように、回転ギア165と駆動機構163が左右方向に噛み合った状態である。回転ギア165と駆動機構163が噛み合うことにより、駆動機構163が駆動すると、回転体166が回転駆動される。ここで、後述するように、調整ユニット150が投影装置10の筐体20に取り付けられる際、回転体166はフォーカス調整リング31に対して下方向に圧接される(当接する)ことから、駆動機構163は、回転ギア165周りの方向のうち、下方向と略直交する方向において回転ギア165と噛み合うということができる。
【0043】
次に、各軸受け167のバネ取付部167aに巻きバネ168の下端部がそれぞれ取り付けられる。そして、各巻きバネ168と各バネ取付ネジ169との間にケースカバー162を挟み込む形で各巻きバネ168の上端部に各バネ取付ネジ169が取り付けられ、ケースカバー162がケース161の上側にネジ止めされて取り付けられる。各バネ取付ネジ169は、ケース161及びケースカバー162に対して固定される。これにより、回転体166の前後方向(回転軸164の軸方向)の両側に巻きバネ168が設けられた状態となり、回転体166は、各巻きバネ168により回転軸164を介して下方向(回転体166がフォーカス調整リング31と当接する方向)に効果的に付勢される。以上のようにしてベース部材160が組み付けられる。
【0044】
各巻きバネ168において、上下方向の自然長をL1とし、図9に示すように、ケース161とケースカバー162とに挟み込まれ、且つベース部材160がまだ投影装置10の筐体20に取り付けられていない状態で、軸受け167の下端が載置面167fに接触している場合の上下方向の長さである取付長をL2とすると、各巻きバネ168は、取付長L2が自然長L1(図7参照)より短いように設定されている。このため、図9の状態では、軸受け167の下端と載置面167fとの間には隙間がない。
【0045】
一方、図12に示すように、調整ユニット150(ベース部材160)が投影装置10の筐体20に取り付けられている状態では、フォーカス調整リング31が接触することによって回転体166が押し上がるとともに回転軸164、回転ギア165及び軸受け167が押しあがっているため、軸受け167の下端と載置面167fとの間に間隙Gを生じる。つまり、この状態における各巻きバネ168の上下方向の長さである調整長をL3とすると、調整長L3は、常に取付長L2より短い。
【0046】
このようにして組み付けられたベース部材160は、図9に示す状態では、各巻きバネ168が上に収縮して軸受け167及び軸受け167に軸支された各部材がケース161に対して上に移動することが許容される。そして、図12に示す状態では、フォーカス調整リング31が押し上げることによって各巻きバネ168が弾性変形し、これらの各部材が上方に移動することによって、回転体166とフォーカス調整リング31との間の?合力が過度に増加することを防止できる。
【0047】
ベース部材160と保持部材170は、第2フレーム172の押下部172cが押下空間S2に収容されるようにして、ケース161の上面の左右両側が第1フレーム171の各第1延在部153bにネジ止めされることにより組み付けされる。その後、保持部材170に防塵ガイド174、防塵パッキン175、押圧パッド176をそれぞれ組付けることにより、調整ユニット150が完成する。
【0048】
以上のような構成の調整ユニット150は、次のようにして投影装置10に対して取り付けることができる。まず、第2フレーム172の押下面172c1を下方に押下することにより、各バネ部材178がその復元力に抗って下方に引き延ばされ、ケース161の底壁部161dと押圧パッド176の上下方向における距離が広がる。この状態で、投影口開口部23aの前方側からケース161の底壁部161dと押圧パッド176の間に筐体20を挟み込む。このとき、図10に示すように、ケース161の係合突起161e1を調整開口部20a1の開口端に係合させつつ、回転体166をフォーカス調整リング31に圧接させる。
【0049】
そして、押下面172c1の押下を解除することにより、各バネ部材178の復元力により押下面172c1が上方に移動して(第2フレーム172が上方に移動して)、回転体166がフォーカス調整リング31に対して下方向に圧接されるとともに押圧パッド176が筐体20の下面20bと当接し、各回転体166と押圧パッド176の間で筐体20が挟持される。フォーカス調整リング31に圧接される回転体166は、各巻きバネ168により下方向に付勢されていることから、回転体166の径が公差等により微小に変化した場合でも、フォーカス調整リング31に対する接触圧力が一定である。このため、回転体166を常に安定した荷重でフォーカス調整リング31に圧接させることができる。
【0050】
以上のようにして、ケース161の底壁部161dと押圧パッド176の間で筐体20を挟持する形で調整ユニット150が筐体20に対して固定される。このように、調整ユニット150が筐体20に固定されることにより、防塵パッキン175と投影口開口部23aの間が前後方向に密着してシールされ、ユニット開口部150aの前方側からレンズ鏡筒80の投影口11にかけて開口周りの隙間が塞がれ、投影口11の防塵が図られる。なお、調整ユニット150が筐体20に固定された状態では、係合突起161e1が調整開口部20a1の開口端に係合されることにより、調整ユニット150の位置ずれが防止される。
【0051】
また、調整ユニット150が筐体20に固定された状態では、回転体166がフォーカス調整リング31に圧接されているので、リモコンからの駆動信号の受信に応じて、駆動モータMの駆動により回転体166が回転すると、摩擦力によりフォーカス調整リング31が回転される。これにより、フォーカス調整リング31でのフォーカスの調整を行うことができる。
【0052】
また、回転体166は、ケース161及び駆動機構163に対して上方向に相対的に弾性移動するようになっていることから、回転体166のフォーカス調整リング31に対する接触圧力に応じた巻きバネ168のバネ定数の設定を行う際、駆動機構163の質量や振動等を考慮することがなく、バネ定数の設定を容易に行うことができる。さらに、駆動機構163が巻きバネ168に付勢されないため、回転体166と共に駆動機構163が巻きバネ168によって付勢される構成を設ける場合と比べてベース部材160の小型化を図ることができる。
【0053】
調整ユニット150を筐体20に固定させた後、第1保持板金130、第2保持板金140、駆動基板120を筐体20に取り付け、最後に保護カバー110を取り付けることにより、調整装置100の全体を投影装置10に取り付けることができる。図1に示すように、投影装置10に取り付けられた調整装置100では、保護カバー110の庇部112により、調整ユニット150の押下面172c1(押下部172cの上面)が覆われる。これにより、調整装置100を投影装置10に取り付けた後に押下面172c1に触れてしまうことが防止されるため、調整ユニット150が誤って外れてしまうことが防止される。
【0054】
ここで、図11に示すように、仮に、回転体166Eの後端側と前端側の外径公差が微小に異なる略台形状の回転体166Eが用いられた場合、回転体166Eが調整リング30Eに圧接されることにより、回転軸164E及び各軸受け167Eが水平方向に対してわずかに傾くことが想定される。このため、このような場合であっても、回転体166Eの後端側における調整リング30Eに対する荷重と前端側における調整リング30Eに対する荷重との荷重差が少なくなるように、各巻きバネ168のバネ定数はなるべく低く設定されることが好ましい。
【0055】
以上説明したように本実施形態に係る調整装置100は、投影装置10に設けられているフォーカス調整リング31を物理的に動かすベース部材160を備え、ベース部材160は、投影装置10に取り付けられた状態でフォーカス調整リング31と当接する回転体166、回転体166を軸支する回転軸164、及び回転軸164の両端側にそれぞれ設けられ、フォーカス調整リング31が回転体166に当接されることによって上方向(回転体166が移動する方向)と反対方向(下方向)に付勢する巻きバネ168、を有する。
【0056】
上記のような構成の本実施形態の調整装置100では、巻きバネ168が回転軸164を介して回転体166を下方向に付勢することから、回転体166がフォーカス調整リング31と下方向に当接する際、仮に回転体166の外径公差や個体差が生じて回転体166が偏心した場合であっても、巻きバネ168が上下方向に弾性変動することにより偏心に伴ってフォーカス調整リング31に加わる応力が解消され、フォーカス調整リング31に対して当接する圧力が一定である。このため、回転体166を常に安定した荷重でフォーカス調整リング31に当接させることができ、容易にフォーカス調整リング31の調整を安定して行うことができる。
【0057】
また、本実施形態の調整装置100では、回転軸164及び回転体166を回転駆動する駆動機構163をさらに備え、回転体166は、巻きバネ168の弾性変形により駆動機構163に対して相対的に弾性移動自在である。
【0058】
この構成によれば、巻きバネ168の弾性変形により駆動機構163に対して上下方向に相対的に弾性移動することから、巻きバネ168のバネ定数の設定を行う際、駆動機構163の質量や振動等を考慮することがなく、バネ定数の設定を容易に行うことができる。また、駆動機構163が巻きバネ168の影響を受けないため、回転体166と共に駆動機構163が巻きバネ168によって付勢される構成と比べてベース部材160の複雑化、或いは大型化を回避することができる。
【0059】
また、本実施形態の調整装置100では、ベース部材160は、回転軸164の軸周りに設けられた回転ギア165を有し、駆動機構163は、回転ギア165と噛み合う駆動ギア163bを有し、駆動ギア163bは、回転ギア165のギア周りの方向のうち、下方向と略直交する左右方向で回転ギア165と噛み合う。この構成によれば、回転ギア165がフォーカス調整リング31に圧接されて上方向に弾性移動する際、駆動ギア163bが回転ギア165の上方向(下方向に沿った方向)で回転ギア165と噛み合う構成と比べて、駆動ギア163bと回転ギア165との噛み合う間隔が変化し難い。このため、駆動ギア163bから回転ギア165への駆動力の伝わり方が変化し難く、回転体166が圧接されるフォーカス調整リング31を安定して調整することができる。
【0060】
また、本実施形態の調整装置100では、ベース部材160は、少なくとも回転体166と駆動機構163と巻きバネ168と回転軸164とを収容するケース161を有し、回転体166及び回転軸164は、巻きバネ168の弾性変形により駆動機構163及びケース161に対して相対的に弾性移動する。この構成によれば、巻きバネ168がケース161に固定されることにより、回転体166を巻きバネ168の弾性変形により駆動機構163に対して上下方向に相対的に弾性移動可能とするための具体的な構成を実現することができる。なお、図9に示す状態において、図12に示す隙間隙Gを設けるように設計し、一対の巻きバネ168によって各部材(回転軸164、回転ギア165、回転体166、軸受け167)が上下方向にフローティングしてもよいが、この場合、軸受け167の下端がフォーカス調整リング31の回転によって引っ張られ、軸受け167の下端の位置が不安定になり、回転体166が一定の力でフォーカス調整リング31を?合することを維持することが難しくなる虞がある。
【0061】
また、本実施形態の調整装置100では、ベース部材160は、回転軸164の両端部をそれぞれ回転可能に軸支する一対の軸受け167を有し、ケース161と軸受け167の各々との間に所定の間隙Gが設けられている。この構成によれば、各巻きバネ168が弾性変形して軸受け167及び軸受け167に軸支された各部材がケース161に対して間隙Gが設けられた方向に移動することが許容される。これにより、軸受け167及び軸受け167に軸支された各部材を、ケース161及びケース161に固定された駆動機構163に対して相対的に弾性移動可能とするための具体的な構成を実現することができる。
【0062】
また、本実施形態の調整装置100では、弾性部材として巻きバネ168を備えている。これにより、回転体166をフォーカス調整リング31に圧接される方向に弾性移動可能とするための具体的な弾性部材を提供することができる。
【0063】
また、本実施形態の調整装置100では、投影装置10はレンズ鏡筒80を備え、調整リング30は、レンズ鏡筒80におけるフォーカスレンズを調整するフォーカス調整リング31、及びレンズ鏡筒80におけるフォーカスレンズを調整するズーム調整リング32を有し、回転体166は、フォーカス調整リング31及びズーム調整リング32のうちいずれか一方に当接可能である。この構成によれば、フォーカス調整リング31又はズーム調整リング32のいずれか一方の調整を安定して行うことが可能な調整装置100を提供することができる。
【0064】
また、本実施形態の電子機器システム1は、投影装置10及び上記の調整装置100を備える。これにより、簡単な構成でありながら、投影装置10のフォーカス調整リング31の調整を安定して行うことが可能な電子機器システム1を実現することができる。
【0065】
なお、以上説明した実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0066】
例えば、上記の実施形態では、ベース部材における回転体が投影装置のフォーカス調整リングに圧接される構成を例示したが、回転軸に設けられた回転体及び回転ギアを後方側にずらして上下方向において投影装置のズーム調整リングと重なる位置に設定することにより、回転体がズーム調整リングに圧接される構成としてもよい。この場合、調整システムが投影装置に取り付けられることにより、ズーム調整リングの調整を安定して行うことができる。
【符号の説明】
【0067】
1 電子機器システム 10 投影装置
11 投影口 20 筐体
20a 上面 20a1 調整開口部
20a2 端縁部 20b 下面
20c 左側面 20d 右側面
20e 前面 20f 後面
20g 左前角部 20h 左後角部
20i 縁部 20j 縁部
21 上ケース 21a 縁部
21b 操作パネル 22 下ケース
22a 縁部 22j 縁部
23 前側パネル 23a 投影口開口部
23b 吸気口 23c 排気口
24 後側パネル 25 左側パネル
30 調整リング 30E 調整リング
31 フォーカス調整リング 32 ズーム調整リング
80 レンズ鏡筒 100 調整装置
110 保護カバー 110a カバー開口
112 庇部 120 駆動基板
122 受信部材 124 モータ接続端子
126 接続端子群 128 接続配線
130 第1保持板金 131 第1板部
131a 第1取付壁部 131b 第2取付壁部
132 第2板部 132a 第1下面当接部
140 第2保持板金 140a 第2下面当接部
150 調整ユニット 150a ユニット開口部
160 ベース部材 161 ケース
161a 前壁部 161b 後壁部
161c 側壁部 161d 底壁部
161e ケース開口部 161e1 係合突起
162 ケースカバー 162a 取付ネジ孔
163 駆動機構 163a 駆動軸
163b 駆動ギア 163c モータ取付部
164 回転軸 164E 回転軸
165 回転ギア 166 回転体
166E 回転体 167 軸受け
167f 載置面 167E 軸受け
168 巻きバネ 169 バネ取付ネジ
170 保持部材 171 第1フレーム
171a 第1枠状部 171a1 切欠部
171b 第1延在部 171b1 第1板面部
171b2 第2板面部 171b3 ネジ孔
172 第2フレーム 172a 第2枠状部
172b 第2延在部 172c 押下部
172c1 押下面 174 防塵ガイド
175 防塵パッキン 176 押圧パッド
178 バネ部材 G 間隙
H1~H8 第1~第8ネジ孔 L1 自然長
L2 取付長 L3 調整長
M 駆動モータ S1 収容空間
S1a 切欠き S1b 凹部
S2 押下空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12